資料45-2-2

ODAとの連携を通じた科学技術外交強化施策の基本的な考え方

平成19年12月13日
文部科学省
科学技術・学術政策局
国際交流官付

 我が国は、平成18年に策定した第3期科学技術基本計画において、アジア地域における科学技術協力の推進を重要事項と位置付けている。また、総合科学技術会議の有識者議員ペーパー「科学技術外交の強化に向けて」(平成19年4月)において、「ODAを活用した科学技術協力の強化」及び「海外科学技術協力隊(仮称)の創設」の必要性が述べられ、環境・エネルギー、感染症、防災等の地球規模課題を解決し、持続可能な社会を実現するために、これまでの活動に加え、政府開発援助(以下「ODA」という)と連携した形でアジア・アフリカ諸国との科学技術協力を大幅に拡充する必要性が指摘されている。これを受けて創設する科学技術協力の新たな枠組みの基本的な考え方は以下のとおり。

1.施策の趣旨と概要

 我が国の科学技術ポテンシャルの向上を図るとともに、途上国における科学技術に関する知見の蓄積と人材育成を促進するため、国際協力機構(以下「JICA(ジャイカ)」という)のODA事業と連携した途上国協力の新たな枠組を創設する。
 具体的には、JICA(ジャイカ)を通じて途上国側との十分な連携を図る仕組みを導入し、途上国のニーズを踏まえた科学技術協力の案件形成を行い、環境・エネルギー、防災、感染症等の分野において、我が国にとっても重要な地球規模課題の解決に貢献する共同研究を実施するとともに、途上国の大学・研究機関等のキャパシティビルディングを行うために我が国の研究者を派遣する。

2.本施策の基本的要件

(1)対象

 開発途上国の開発戦略及び我が国の援助戦略に基づくODAとしての協力ニーズと我が国の科学技術戦略に基づく研究開発ニーズが合致するテーマを対象とする。この際、途上国政府からのODAの要請がなされるとともに、我が国の研究者(研究機関)から科学技術予算の申請がなされることを前提とする。尚、JICA(ジャイカ)には、途上国ニーズの発掘にあたり、既存のODA制度を活用しつつ、先方政府の技術協力担当省庁を加えること、及び本施策に関する予算を別枠とすることを要請する。

(2)研究成果及び途上国への貢献と終了後の継続性

 本施策は、一定の期間に研究成果が見込まれ、かつ開発途上国の研究者(研究機関)の持続的、自立的(人材、資金の面)な活動に貢献することを目的とする。
 また、ODAと連携した本施策が終了した後も、引き続き本邦と途上国双方の大学・研究機関の協力関係を維持し、継続的に途上国の科学技術の発展に寄与することを念頭に置く。さらに、ODAによって培われた協力の成果を活用しつつ、我が国の科学技術振興政策の効率的な展開を図る。

(3)対象国・地域

 東南アジア、南西アジア、及びアフリカの諸国を主な対象国としつつ、かつODAの技術協力の対象となっている諸国。

3.協力の枠組みを構成する新制度

(1)地球規模課題対応型プロジェクト

(基本的考え方)

 環境・エネルギー、防災、感染症等の分野において、本邦の大学・研究機関等とJICA(ジャイカ)が連携して、技術の開発・応用や新しい知見の獲得のための共同研究と、共同研究を通じた途上国の大学・研究機関等のキャパシティビルディングを行う制度。

(研究テーマ)

 我が国の政府開発援助戦略(ODA大綱、ODA中期政策、国別援助計画等)及び科学技術戦略(総合科学技術会議有識者ペーパー「科学技術外交の強化に向けて」、文部科学省「研究開発の推進方策」等)に基づき、かつ当該途上国の政策的・社会的ニーズにも合致すると思われるテーマ。多数の大学・研究機関等の参画を得て実施。

(実施体制)

 科学技術振興機構(以下「JST」という)が領域・サブ領域を設定のうえ公募を実施。大学・研究機関等は設定された領域・サブ領域の下で、途上国側の研究者(研究機関)と調整のうえ課題を応募。領域・サブ領域全体及び課題間のマネージメント(企画・立案、運営支援、JICA(ジャイカ)との調整等)はJSTが実施。

(費用の分担)

  • 1JICA(ジャイカ)負担:共同研究を行うために途上国側で必要な経費
    • 日本からの研究者派遣費(滞在費を含む)
    • 研修員の受入費及び途上国側での研究費
    • 機材整備費等の途上国における研究実施体制整備費、等
  • 2文科省負担:共同研究を行うために日本側で必要な経費
    • 日本側の大学・研究機関等の本邦における研究に係る経費
    • 日本側の大学・研究機関等の本邦における研究の協力実施体制整備費、等

(2)科学技術研究員派遣制度

(基本的考え方)

 環境・エネルギー、防災、感染症等の分野において、ODAにより本邦の大学・研究機関等の研究員を途上国に派遣し、途上国の大学・研究機関等のキャパシティビルディングを行う制度。
 さらに、本制度を有効に機能させるために、我が国の研究者のニーズと外務省・JICA(ジャイカ)が把握した途上国のニーズをマッチングさせるためのデータベースを構築し、マッチング支援を行う。

(対象案件)

 我が国の政府開発援助戦略(ODA大綱、ODA中期政策、国別援助計画等)及び科学技術戦略(総合科学技術会議有識者ペーパー「科学技術外交の強化に向けて」、文部科学省「研究開発の推進方策」等)を踏まえたうえで、途上国の大学・研究機関等のニーズと我が国の研究者のニーズが合致する案件。

(実施体制)

 科学技術振興調整費「アジア・アフリカ科学技術協力の戦略的推進」により、実施主体を公募。選定された実施主体は国内外の大学・研究機関を対象としたニーズ調査、マッチング支援を実施。

(費用の分担)

  • 1JICA(ジャイカ)負担:研究員の派遣及び現地での活動に必要な経費
    • 日本からの研究者派遣費(滞在費を含む)
    • 途上国に派遣する研究者の人件費(半額を上限に補填)
    • 途上国側での研究費
  • 2文科省負担:研究員の派遣を支援するために日本側で必要な経費
    • マッチング機能に係る経費

以上