防災分野の研究開発に関する委員会(第54回) 議事録

1.日時

平成22年2月10日(水曜日) 13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省 3F 2特別会議室

3.議題

  1. 東南海・南海地震等海溝型地震に関する調査研究の事後評価について(非公開)
  2. 首都直下地震防災・減災特別プロジェクトの中間評価について
  3. 平成22年度予算案の概要について
  4. 防災分野の重要事項について
  5. 防災分野における研究開発の国際展開
  6. その他

4.出席者

委員

濱田主査、天野委員、荒卷委員、今井委員、岡田委員、折坂委員、国崎委員、重川委員、清水委員、武井委員、田中委員、中尾委員、林委員、松澤委員

文部科学省

森本審議官、鈴木地震・防災研究課長、南山防災科学技術推進室長 他

5.議事録

【事務局】

  定刻になりましたので、「防災分野の研究開発に関する委員会(第54回)」を開催いたします。本日は、委員21名中、14名(予定)にご出席いただいており、定足数を満たしております。また、本日の議題1「東南海・南海地震等海溝型地震に関する調査研究の事後評価について」は事業評価に関わる議題となっておりますので、非公開の議題となります。議題1審議後13時50分を目処に傍聴者にご入室いただく予定です。

 続いて、お手元の資料の確認をさせていただきます。

 (資料の確認)

 よろしければ、これ以後の議事進行を濱田先生にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

【濱田主査】

 それでは、以下の議事の進行をさせていただきます。お忙しいところ、委員の先生方にはお集まりいただきまして、ありがとうございます。 議事の進行につきまして、よろしくご協力のほどをお願いしたいと思います。

【 議題1 東南海・南海地震等海溝型地震に関する調査研究の事後評価について 】

 - 非公開 -

【 議題2 首都直下地震防災・減災特別プロジェクトの中間評価について 】

【濱田主査】

 それでは、2番目の議題は、「首都直下地震防災・減災特別プロジェクトの中間評価について」です。

 これにつきましては、昨年の8月だったと思いますが、林委員と事務局から、このプロジェクトの内容につきまして中間報告をいただきました。このプロジェクトは平成19年度から始まり、平成23年度に終了となっております。この内容につきまして中間評価を6月の委員会で実施するということになっております。

 今日は、中間評価の実施要領を事務局で作成していただきましたので、これについてご審議をいただきます。

 傍聴者の方に、お入りいただきます。

 それでは、資料54-4につき事務局からご説明していただきたいと思います。お願いします。

【南山室長】

 (資料54-4の説明)

【濱田主査】

 どうもありがとうございました。7ページ目に、私と岡田先生には、参加しないことになっていますが、議事の進行はやって良いのですね。不可能であれば他の方を指名しますが。

(委員の異議なし)

 それでは、議事の進行はするが、シートには書き込まないということでよろしいですね。

【事務局】

はい、そのようにお願いいたします。

【濱田主査】

 それから、この評価の方法はいつもと同じでと思うのですが、非常に短時間で説明を受けて、それからまた短時間でその場で書けということになります。できれば、事前に説明用の資料が入手できるんであれば、委員の先生方に送って、お目通しいただいていたほうが、よりご理解をいただけると思います。日程が許せば、できるだけそうしていただきたいと思います。いかがでしょうか。

【事務局】

 できるだけ速やかに事前の資料を入手し、取りそろい次第、各委員にお送りさせていただきたいと思っております。

【岡田委員】

 東南海・南海の研究については事前にお送りしていただきました。

【濱田主査】

 そうですね。この評価の方法等につき、ご意見があれば、お出しいただきたいと思います。いかがでございましょうか。よろしいでしょうか。

 では、この方法で評価をするということで、委託先の研究代表者の方々にお伝えして、準備を始めていただくようにお願いしていただきます。

【南山室長】

 はい、承知しました。

【 議題3 平成22年度予算案の概要について 】

【濱田主査】

 それでは、3番目の議題になります。3番目の議題は平成22年度予算案の概要についてです。これも昨年の8月の委員会で、いわゆる概算要求にかかわる課題について説明していただき、委員の方々からご意見をいただいたのですが、最終的に予算案が閣議決定されておりますので、その内容についてご報告をいただきたいと思います。それでは、資料54-5をご説明いただきたいと思います。

【南山室長】

 (資料54-5の説明)

【濱田主査】

 どうもありがとうございました。

 もう予算は、決まっているから、今から意見を言っても、別にどうということはないんですが、概算要求のときに色々な意見をいただいたので、それが具体的にどう反映されるようなことになったか。十分反映されているのだと思いますけれども、どうなんでしょうか。それも含めて委員の先生方からご発言いただきたいと思います。

【天野委員】

 言ってもしようがないということですけれども、一応言っておきます。災害リスク情報プラットフォーム関係の予算がこんなに減ってしまったということについて。リスク評価とか利活用システムの開発を縮小して、実際の情報をまず集めましょうということだと思うんですが。私たちのように既に具体的にやっている者からは、こういう情報を集めても、それをどうするんだというのがないと、本当に無駄になってしまうのがわかっているんですよね。なので、先にやれとは言いませんけれども、やはり同時にやらないと、本当に将来、困った状況になるんじゃないかなという気がします。

 私どもの会社も年に一回、大々的な防災訓練をするんですけれども、そのときは、そういう情報と実際の対応というのを照らし合わせるいい機会なんです。一生懸命やっているんですが、その情報をうまく使えていないということを毎年身にしみて感じています。ぜひ国のレベルでも、ご検討よろしくお願いしたいと思います。

【濱田主査】

 ほかにいかがでしょうか。

 ちょっと私からお聞きしますけれども、一番最後のMPレーダーの件です。これは、委員からご意見があって、国交省との協力ということがありました。具体的には、どういう協力体制を組まれるわけでしょうか。

【事務局】

 国交省で、三大都市圏でMPレーダーをもう整備しつつあるところです。今現在、防災科研でMPレーダーで予測しているのは、既存のMPレーダーを用いて関東地方に限った予測技術を研究しているところです。他の大都市圏、大阪と名古屋地方については、地形特性とか気候特性が関東地方と若干異なっており、関東地方についての技術がそのまま使えるかどうか、まだちょっとわからない状況です。そういったところも含めて、三大都市圏全体について研究、さらに将来的には、その他の地域にも展開していくような研究開発も進めていくということを考えております。

【鈴木課長】

 国交省が整備したMPレーダーのデータを提供いただいて、今ある基本的なものをそこの地域に合ったものにするということで、国交省と防災科研が連携する研究として必要な額を計上しています。

【濱田主査】

 ほかにいかがでしょう。よろしいでしょうか。

 それでは、この件については、今、天野委員からご意見が出ましたけれども、そのことを今後念頭に置いていただいて、次年度からは、こういうことに力を入れていけるようにしていただきたいと思います。よろしいでしょうか。

【 議題4 防災分野の重要事項について 】

【濱田主査】

 それでは、本日の4番目の議題は「防災分野の重要事項について」です。

 これにつきましては、今年度、かなり長い時間をかけまして委員の先生方からご意見をいただき、それを事務局がまとめてきたものであります。

 資料54-6について、事務局に説明していただきます。これは文部科学省内の基本計画特別委員会へ既に提出済みでありあます。これをもとに、文部科学省全体でまとめて、第4期科学技術基本計画の策定のための資料とされるものであり、また、総合科学技術会議に既に出ていると思います。

 資料54-6の資料を見ていただきますと、だれが出したのかわからないような形になっております。今日、再度これをご紹介いただいて、委員会としての報告であるという位置づけにしたいと思います。ほとんど前回紹介された内容と変わっていないのではと思いますが、改めて事務局からご説明をいただき、重ねて委員の方からご意見をいただきたいと思います。

 それでは、資料54-6をご説明ください。

【事務局】

 (資料54-6の説明)

【濱田主査】

 どうもありがとうございます。

 まず、資料54-6については、毎回これを議題にしてご説明をしてきたので、委員会での検討の報告だという位置づけをさせていただき、また、今後、我々が基本的な計画等を議論するときのベースになっていくものであると理解をしております。ここで議論したことが文科省全体、先ほどの参考資料2の中に、十分にかどうかわかりませんが、取り入れられているということです。資料54-6には委員会の名前が下につくことになるんでしょうか。公開はされるのでしょうか。

【事務局】

 委員会資料として、既にホームページにて公開はされております。

【濱田主査】

 公開されているんですね。今度は委員会名がついて出ていくということになります。長時間かけて委員の方一人一人にプレゼンテーションしていただいて、それを総合化したということだと思いますが、何かご意見があれば、お願いしたいと思います。いかがでしょうか。

【中尾委員】

 質問になりますけれども、最後にご説明のあった位置づけについて。特に科学技術計画の、昔、重点4分野、その下にまた4つありましたよね。防災は、その中に入っていたんですけれども、それが政権がかわって見直されるという話をちょっと聞きました。その全体の枠組みの中での位置づけというのは、最後にご説明があったこれがまさにそれだと思っていいんでしょうか。

【鈴木課長】

 そういう点では、参考資料2は、文部科学省の科学技術・学術審議会が新しい基本計画策定に向けて文部科学省としてどういうふうに科学技術基本計画の中身にしていったらいいのかというのを省として取りまとめして出したものです。要は、総合科学技術会議に文部科学省としてというか、委員会としてですけれども、こういうふうに考えていますよというのを出したということになります。政府としては、次の基本計画の検討というのは総合科学技術会議で検討が行われていく、今も始まっているという認識でいます。

 そういう中で、今、中尾委員からお話しありました重点4分野について、今回は、こういう重要政策課題というものを決めてやっていくべきだということになります。要は、文科省の科学技術・学術審議会において、文科省としてはこれだということではなくて、例として、それにふさわしいようなものを整備したものとして、こういう資料が出ました。そういう点では、質の高い国民生活の実現という重要政策課題、それから国際的な課題などに、防災分野が重要な課題として例として挙がったということになります。この後、実際上どうなるかというところは、総合科学技術会議での検討の後、政府としての位置づけ、方針が決まっていくことになります。

 今回、委員会でこういう形に重要事項をまとめていただき、地震防災をあずかる私どもとしては、この上の基本計画特別委員会の報告の中にいろいろ盛り込まれて非常によかった、また、重要性を委員会にご理解いただけたと思っております。先生方には大変感謝しています。

【林委員】

 この最後の参考資料2を拝見していると、いろんな分野にいろんな形で書いていただいたことはとてもよかったと思います。

 今、課長おっしゃったように、これは文部科学省の出した案ということだから、基本的には、これは全部、文部科学省の中でやっつけたいと思っている。先程の資料での地震調査研究の推進、防災科学技術研究開発の推進を、上(前者)が内局、下(後者)は防災科研でやるとしたときに、ここで出てくるようないろいろな研究のバラエティーにこの体制で対応できるんだろうかと思う。

 内局では地震研究しかしないというのは、ちょっと難しいんじゃないか。あるいは、もうちょっと実態に合わせるような何か枠組みのとり方というのがあってもいいんじゃないかと。そうでないと、内局は地震しかできないことになるし、それ以外は全部、防災科研の力量にかかるというのは、正直、大丈夫かなという気がしないでもない。研究の推進から言えば、もう少し多様性を持たせないと、まずいんじゃないかというような気がするので、その辺についてどうお考えでしょうか。

【鈴木地震・防災研究課長】

 林委員がおっしゃられた点につきましては、やはり進めていく柱ごとに我々のほうの業務の体制、防災科研の体制も含めて考えていくべきことだと思っています。これからの総合学術会議での議論を見ながら、我々の仕事の体制も、進めていく課題に合わせた形とするだろうと思います。

【濱田主査】

 よろしいですか。では、ほかに。どうぞ。

【田中委員】

 今の余りにも大きな話の中で大変恐縮です。これまで個別なところだけ見ていて、余り基本認識とかをちゃんと読んでいなかったのですが、資料54-6の基本認識の2段落目の2行目に「竜巻、ゲリラ豪雨」と出てきます。

 ゲリラ豪雨というのは、気象学的に定義がないんです。メカニズムが全然違うものがごっちゃに入っていて、現象としてむしろ記載されているので、「局地的豪雨」とかにしておいていただいたほうがよいかなと。逆に言うと、地震に関してはかなりきっちり見通しているけれども、その他の災害に関しては意外にアバウトな議論をしてきたのかなと改めて思ってしまった。

【濱田主査】

 これは、先ほどから申し上げているように、委員会としての報告ということになります。ほとんどでき上がっていると私は理解しているんですが、もう一度、先生方にお目通しいただいて、やはりこれはぐあいが悪いんじゃないのというようなところがあれば、お申しで下さい。

【林委員】

 あえて田中先生に異を唱えると、私は、ゲリラ豪雨というキーワードは残しておいてもいいように思います。この「竜巻、ゲリラ豪雨」というのが併記されているのは、それこそ、鹿島(建設の現場事務所)がやられた北海道での竜巻災害があり、さらに、いろんなところで起こっているゲリラ豪雨という、ある意味での社会ニーズにこたえているということのメッセージでもある。研究者の中では「あいつ、素人っぽいね」と言われるよりは、それこそ予算獲得なり、あるいはそのプレゼンスにつながるほうが良いのでは。学問的良心ということに従うなら、ゲリラ豪雨を括弧で囲んだらどうか。いわゆる括弧つきのゲリラ豪雨。世の中で言うゲリラ豪雨。それで研究開発の対象課題として入っているというスタンスがクリアになるということなら、僕はこのゲリラ豪雨というネーミングを大事に、こういう文章の中に残しておいてもいいという気はします。

【濱田主査】

 文言が適正であるかどうかをここで議論し始めたら大変ですけれども、どうですか。

【田中委員】

私は「ゲリラ豪雨と言われる」とかとしておけばいいなと思います。

【濱田主査】

 「局地豪雨?」。

【田中委員】

 いや、「ゲリラ豪雨と呼ばれる現象」でもいいと。ゲリラ豪雨というのは現象面よりは社会的なインパクトとして出てきている言葉なので、それはそういう表現でよいと。そういう面では、括弧つきにしなくても「呼ばれる」でもいい。どちらでもいいということです。

【濱田主査】

 わかりました。学術的にきちっとした用語の使い方というのも重要ですし、社会への発信性も十分に考慮して、事務局で検討してください。

 先ほども申し上げましたけれども、委員会としての報告ということになりますので、お忙しいところ申しわけありませんが、もう一度お目通しいただいて、早い時期に事務局にご意見をいただければ、事務局と私で相談しましょう。それで最終版を仕上げるという形にしたいと思います。

 第4期基本計画の情報というのは全然ないんですか、何か。まだまだこれからなんでしょうか。

【鈴木地震・防災研究課長】

 そういう点では、成長戦略との関連で、現在先行してグリーン・イノベーションとライフ・イノベーションについては早い段階で検討が行われるという情報は得ていますけれども、全体については、今の段階では情報は得ておりません。

【濱田主査】

 ほかに「防災分野の重要事項について」という議題につきましてご質問、ご意見がありましたら、お願いしたいと思います。どうぞ。

【林委員】

 余計なことかもしれませんけれども、今のグリーンという言葉を聞いて。ここで言うのは適切かどうかわからないんですけれども。最近、首都直下地震の問題構造の解明というのを内輪でメンバーが集まってやっている中で、防災とグリーンの世界との関係みたいなものをもう少しクリアにしてもいいんじゃないかというような意見が出ます。なぜつながるかというと、例えば首都直下地震は、大規模な面的な破壊が起こるわけです。それをうまくマネッジして復興していくというのは、実は、東京首都において多分、唯一無二の面的なグリーンの転換を促進する契機だろう。ところが、それについて無自覚的にやってしまえば、グリーンという観点から言えば、また非常に効率の悪いものが無秩序に再生されてしまう。せっかくのチャンスを失う。だから、グリーンシティーというのを実現する非常に重要な問題点として首都直下地震を位置づける。

 大変語弊のあるような言い方ですが、逆に言えば、そういうものの危険がこれだけ宣伝されているならば、単に命を守る云々は重要な議論ですが、それに加えて、破壊された街をどう計画的に再生し、その中でグリーンな都市というものを実現するかに対して、もっと積極的にプランニングしていくというようなことをうたえないかというようなことを今内々で言っています。そういう意味で防災はグリーンとは関係ないという自己定義ではなくて、むしろ面的な破壊というものが既存の都市環境の中でグリーンシティーへの変換を実現させる非常に重要なモメントであるという位置づけをしてはどうか。ここにそれを書けとは言いませんけれども、ちょっとご紹介・議論させていただければ。以上です。

【濱田主査】

 おっしゃることはわかりますが、今まで我々の議論というのは防災、減災といいますか、災害をいかに軽減するかということで議論をしてきて、それが非常に緊急の事項になっていると、私は認識しています。災害が起こった後、どう復興するかという議論も、これももちろん重要です。ただ、グリーンという言葉はよく使われるんですけれども、その実態は一体何なのかというようなこともきちっと共通認識を持ってからやらないと、議論が発散するであろうと思います。例えば災害が起こった後、いかに復旧していくかというようなことを、この委員会で取り上げて一つの議論の対象としていってもいいと思います。今までは、災害を軽減するということを重要な視点として審議を進めて来ました。その先のことももちろん審議課題にしなければいけないと思います。 この件に関してご意見、どうぞ言ってください。どうぞ。

【重川委員】

 グリーンというか、日本の都市防災でこれだけ地震、地震と言い始めたのはそんなに歴史は長くなくて、江戸時代、明治、大正。日本の都市にとってのハザードというのはやっぱり水と火災。都市防災を先駆的に始められた先生たちの研究も基本的には、そういう都市構造を、例えば緑とか水を配置して、あるいは建物の不燃化をして都市構造の転換を図っていくという、水と緑のまちづくりとずっと言われていました。実は、そういうものが脈々とあって、そういうことからこの分野に来られている先生たちというのはたくさんいらっしゃると思います。

 いろいろな分野でそこら辺が大変手薄になってきているんです。潜在的な危険性としての地震に起因する市街地対策とかということも。地震が第一の要因であるということがあるのかもしれないけれども、首都直下のプロジェクトをやっていても一番被害というか、起きた後に大変だなというのは、延焼火災危険性。第二次大戦後に乱開発された地域の潜在的な危険というのはとても高くて、そこの復旧、復興をどう図っていくかということと、次にその場所をどう安全性を高めるための復興を図るか、それから下町の軟弱地盤、ゼロメートル地帯以下の基本的な都市構造をどう変えていくかということは非常に大きく考えなきゃいけないことだろうなと思っています。

【濱田主査】

 どうもありがとうございました。どうぞ。

【天野委員】

 先ほど申し上げましたリスク評価というのは、突き詰めれば、次をどうするかというところに行き着くはずだと思っています。というのは、現状でどれだけのリスクを負っているか、それが地震でどうかなってしまうかということを考えると、その後、どういうふうにしていくのかという議論は絶対、リスク評価の中で出てくるはずなんですね。なので、やっぱり先を見越したというところ、自然現象をつかまえるというところは、もちろん一つの、ある意味、設計荷重でしかないと思うんですよ。だけど、日本という国をどう組み立てていくかというようなところを考えるためには、やっぱりリスクから始まるような将来を見据えた考え方の構築というのはぜひとも必要ですし、ここの分野で関係ないというよりは、ここが出発点だというような位置づけなんじゃないかなと思います。

【濱田主査】

 どうもありがとうございました。ほかにどうでしょうか。

 林先生言われた、天野さんもそうだと思いますけれども、防災のことを議論すると、いつも出てくるのは国土計画、土地利用計画、都市計画。そういうことを含めて、ここで議論をすべきだと私は思います。だけど、それは国土審議会というのがあるじゃないかと、国交省に、そういうところで議論しているんじゃないかと。しかし、様々なところで議論していいんじゃないですかね。ここは少なくとも防災の委員会ですから、防災全体に対して議論を進めていくとしたほうがいいだろうと思いますね、単に地震だけ、津波だけじゃなくて。アウトプットがどう伝わっていくかということは考えなくちゃいけませんが、防災に関する広い議論をさせていただきたいとは思っております。

【天野委員】

 いや、それに関しては、役目が違うと思うんですよ。というのは、メーンの防災委員会や何かは、会社で言うと、総務部の担当なんですよ。総務は、例えば会社のBCPを考えるときに、現実にどういうことが起こるかを定量化をするところ。定量化するツールを技術開発でつくり、実際のデータに当てはめてリスク分析しないと、総務部は考えられないわけですよ。なので、国のほうで定性的な大きな流れをつくっていただくのは当然なんですけれども、それを補佐するというか、定量化する役目がこちらにあると思います。

【濱田主査】

 何か文科省のほうからご意見ございますか。 どうぞ。

【事務局】

 委員会でどのような形でご議論いただくのがいいのか、少し検討をさせていただければと思います。ここで、何らかの形で世の中に貢献できるような形で議論をしていただくのに、我々としてどのような情報を提供できて、どんな形でというのを少し整理させていただいて、ご相談させていただきたいと思います。

【濱田主査】

 よろしいでしょうか。

 ちょっと予定の時間も過ぎておりますので、次の議題に移ります。

【 議題5 防災分野における研究開発の国際展開 】

【濱田主査】

 次の議題、「防災分野における研究開発の国際展開」ということで、実は、これが本日の主要議題となります。少し時間をかけてご議論いただきたいと思いますが、先ほどの資料54-6でも大項目として掲げてあったと思いますが、資料54-6の4ページ目に先頭に丸が3つございます。「防災科学技術分野で強いリーダーシップを発揮し、国際的に尊敬される国づくり」というのを大テーマとして打ち出しているわけであります。実際にこれを実現していくには、どういう道筋があるかというようなことをこの委員会として何回か議論をしていきたいと思います。

 まず、事務局のほうでどういうことをお考えなのかというようなことを、資料54-7でご説明いただいて、議論を始めたいと思います。

【事務局】

(資料54-7の説明)

【濱田主査】

 どうもありがとうございます。

 本日、突然こういうテーマが掲げられて、これからこれで議論をするということですが、非常に大きなテーマでもありますし、なかなかつかみどころのないテーマでもあるんですが、きょうは今後どういうふうに議論を進めていくかというようなこととか、それから皆さんもいろいろ国際協力に携わってこられていると思いますので、その中で感じたこと、常日ごろ思っていることでも何でもいいと思いますので自由に御発言下さい。

 さらに、後でメモで結構ですから、こういうところは具合悪いとか何か、こういうことをやったらどうかとか、そういうご意見があれば、事務局にお寄せいただいて、それをもとに、この議論をどう進めていくかというようなことを次回までにまとめたいと思います。今日はどんどん言っていただきたいと思います。

【中尾委員】

 では、まず質問なんですけれども、いただいた資料の、一覧表が最後に載っていますよね。これは何の費用でやっているのですか、ここにリストアップされているのは。

【鈴木課長】

 これはJSTとJICAの共同の事業でして、JSTが我が国内の研究費を持っていまして、相手国の分はJICAの経費でやるという枠組みです。相手国の先生が政府レベルで上げてくるというのが必要になります。

【中尾委員】

 そういう意味では、そういう枠組みでやっているものだけのリストだよ、そう理解していいわけですね。

【鈴木課長】

 そうです。このほかにも、科研費とか、それから、それぞれの例えば研究所で独自で海外とやられたりというものがあるのは承知はしておるんですけれども、全体として、どこで何をしているというのについては、今の段階ではございません。

【濱田主査】

 ただ、ここでの議論としては、いわゆる防災の国際協力。ODAについてはJICAが様々な支援事業を行っていますが、それらも含めてレビューをして、どうあるべきかという議論をしていったほうがいいと思います。そこら、大変な作業にはなると思いますが。

 どうぞ。何かご意見。

【林委員】

 ODAのレビューをやりましょう。

 実は、あるときにODAについて調べなきゃいけない必要性がありました。戦後から、流れを見ていると、大体10年から15年ぐらいでその方向性が非常に変わっている。それはアメリカの動向が大きいのかもしれませんけれども、日本も基本的にはそれに追従していけていないところもある。

 一番最初のODAというのはやはり大型インフラを相手に持っていく、発電所をつくるだとかダムの堤防みたいなやつだった。それが次のレベルになったときに、今度は、向こうでのある種のキャパシティービルディングにつながると思うんですけれども、大学だとか病院だとか、そういう向こうの社会機能の向上のための中核施設の建設のようなものに移行していった。今はまだ3期だと思っていますけれども、3期になったときに本来は向こうの中核人材の育成みたいなことをやろうというようなところになってきている。ですから、プロジェクトの規模がぐっと小さくなって、どちらかというと、向こうがリクエストを上げて、こちらが技術支援をする。そこにこっちが人を送っていくような、そういうものに世界のODAそのものが移行している。だから、例えばワールドバンクなりアジアディベロップメントバンクだとかのファンディングのスキームが基本的に10年あるいは15年単位で大きく変化している。

 2000年に入ったころ、一生懸命そんなことを必要だと調べたりしていたんですけれども、結局、相手のコミュニティーに入って、そこのニーズを考えて、キャパシティービルディングをして、そこの固有の技術も含めてやるというようなところの展開が、残念ながら、おくれている。それを担えるような人材が極めて不足している。だから、日本のODAそのものが、世界のODA事業の下請化している。道路をつくる部分とか、何かの物をつくるところだけ日本に回ってくる。だけど、プロジェクトそのものはほとんど全部、欧米が握っているというような状況になっていて、先行きは暗いというのが、あのときの私自身の認識でした。

【天野委員】

 私が東大の生研の都市基盤安全工学国際研究センターでの客員教授を3年間やっていたときの体験から言うと、東南アジアの国々と非常に連携を持とうということでの取っかかりは、名前のとおり、アジア工科大学だった。

 雑駁なことで申し上げますけれども、アジア工科大学というのは、アメリカがアメリカ寄りのエンジニアをつくろうということで、10年間援助しますということで、アジア工科大学の運営にかなりアメリカは資金を出した。10年間終わって、もうかなり中堅どころのアメリカ寄りのエンジニアがたくさんでき上がって、「もういいから、手を引くから」、そのときに日本に「やらないか」という話があったらしい。それで日本の東大生研のICUSという私のいたところがあるところで受けようとしていたんですが、うまくいかなかった。実際のアジア工科大学にはお金を出せなかったんですけれども、ネットワークを持ちましょうということで、タイと東大のICUSがまず連携を持って、次々とそのネットワークを広めて、私が覚えているだけで、インド、韓国、中国、オーストラリア、シンガポール、その辺の非常に多くのところと研究者間のネットワークをつくっているんです。その中でお互いに、東大のICUSが毎年のシンポジウムの主催者となりながら、いろいろな国の研究者の方と一緒に毎年シンポジウムをやり、その中に共同研究の話もあるし、いろいろな若い方の研究に対する奨励みたいなのもありますし、物すごくネットワークが広がっている段階です。

 たまたま私は東大のICUSにいたので、その状況はわかっているんですけれども、きっとほかの大学の先生方、東大でも田中先生のところもあると思いますけれども、いろいろなネットワークをお持ちだと思うんです。さっきの費用の、どこのお財布でという話はあったと思うんですけれども、そういうことに限らず、いろいろな今あるネットワークを一度見る。まとめることは難しいと思うんですけれども、少なくとも情報だけは文科省が持っておられるといいんじゃないかなというふうに思う。

 もう一つは、土木学会ですけれども、毎年、国際貢献賞というのを必ず出している。若手には活動奨励賞というのが出ていて、貢献賞の方はもうかなりキャリアのある方に。活動奨励賞の方たちはゼネコンの人間も含めて中堅どころの人間が六、七名でしょうか、選ばれるわけなんですが、この方たちの活動内容を見るだけでも物すごい協力体制であり、賞をもらうぐらいですから、いろいろ成果をお出しになっている。

 そういう土木学会の国際貢献賞なんかをひもとくだけでも、結構いろんなものが出てくるだろう。

 3つ目、最後になりますけれども、最近の地震や何かが起こったとき、中国の四川地震なんか非常に代表的だと思うんですが、地盤工学会と中国の方がとても連携が強かったので、まず地盤工学会の方たちが飛んでいった。その後、土木学会とか建築学会とか地震工学会とか、五、六個の学会が束になって中国政府と連携して、いろいろ四川の後処理をしましょうみたいな動きになった。最近のいろいろな海外での地震や何かが起こった後の学会の動きというのは物すごく速いし、物すごく成果を出しているところもあると思うんです。なので、切り口はいっぱいあると思うんです。一度そういう情報をある程度集められて、どんなふうに整理していくかをお考えになるといいんじゃないかなと思います。

【濱田主査】

 どこからでも結構でございますから。どうぞ。

【中尾委員】

 先ほどの林先生の話の補足というか、僕は、基本的に賛成なんですけれども、今までの特に防災の海外技術の協力の仕事というのは、いわゆる理系の研究というスタンスが強かったんですよね。この会議も大分変わってきていますけれども、私はここでも何遍も言っていますように、防災というのはあくまで総合学問だと言っています。従来は、そういう考え方でやっていたので、ここに「研究開発&社会実装」と書いてありますが、その下にあるいろんな項目で、自然現象を解明し、観測網を整備し、観測データを共有しまではかなり昔から、何か起きたとき、あるいは起きないときでも、日本はすごくよくやっていると思います。この前の津波だってそうだったですしね。ところが、それから先の早期検知/警報とかハザード/リスク評価、防災対策立案、対策普及活動になると、これはお手上げなんですよ。

 実際の自然現象を解明する研究者が行って、警報システムとかはそれなりにつくるんですけれども、先ほど林さんが言われた向こうのニーズと合っていないものをつくっていた。そこの文化レベルとか社会の経済状態とかとうまくマッチングするようなものをつくるということがなかった。そういう情報を持っていないですから、日本で考えたものをつくって置いてきて、それがすぐ壊れちゃって、そのままになるとか。JICAで評判が悪いのは、そういうところが非常に多いから。それは、社会人文系の研究を一体としてやっていなかったというのが一番大きな理由だという気がします。

 だから、観測データ共有までの貢献だと、向こうの社会にはそれが見えない。研究者はわかるかもしれないけれども、一生懸命日本がやっているにもかかわらず、そういうプレゼンスが少ない。一般の人のわかるような成果を形として残せなかったというのが一番大きな課題ではないかと思います。だから、ここで文科省がこういう方針で、ずっと下までやるんだというのは、最近の風潮というか、この委員会でもそうですが、やっぱり自然関係が防災だよというのではなくて、総合学問として取り組まない限り、ここまで持っていけないという気がします。

【濱田主査】

 「尊敬される国づくり」という言葉が第4期科学基本計画(案)の中に書かれましたよね。私いつも思うんだけれども、「尊敬される国づくり」って一体何の話だと。皆さん、どう思いますか。

【林委員】

 結果としてついてくるものですよね、本来は。尊敬というのは、結果としてついてくるものだから、それを目指してやっていくのはちょっとよこしまだと思うんです。

【濱田主査】

 そういうことも含めて、どうぞ、ほかの委員の方からご意見をいただければと思います。きょうは取っかかりですから、何でも。

【山岡委員】

 この間のスマトラの地震の後の例えばタイのいろんな防災システムなんかを見ると、どうも、アメリカというのは足が速くて、とにかくパッケージで物を持っていって、これを使えば、ちゃんと、いろんな防災システム、それから検知もできますというのがある。けれども、なかなかそこから先がうまくいかないというところがある。例えばJICAなんかが、現地に入り込んで、キャパシティービルディングをきちんとやっていて、地元政府、かなりローカルなガバメント、ローカルなところでいろんなコミュニティーをつくっていって、世界の防災力をアップするというような、割と息の長いこともやっているという話の学位論文の審査をやった。

 そのときの問題は何だったかというと、とにかくJICAの動きというのは現地から要望がないと動けない。現地から要望があって、かつ、その後に予算要求をして、それから動くということになるので、実際に地震が起きてから動き始めるまで1年以上かかるというような問題。だから、災害対応なんかをもしやるとしたら、もうちょっとクイックなやつが必要になるので、その辺、素早く動けるようなことも国としては考えておいたほうがよい。そうしないと、いいところだけさらわれて、目に見えてアピールするところだけさらわれて、本当に大事で、じっくりやることは実は日本もやっているんだけれども、それがなかなかアピールしないということも聞いてはいる。そういうことは、先ほどの文系の、人文社会の話じゃないですけれども、大事なことかなということを感じました。これはD論からの情報ですけれども。

【林委員】

 では、いいでしょうか、3点ほど。今のJICAに関して言うと、新しいスキームをJICAが持つべきじゃないかというふうに思っているんですね。災害が起こった後の日本からの国際支援はJICAを通してやっていますけれども、基本的には、今のところ、3つしかない。1つはサーチ・アンド・レスキューに消防の人たちを出す。それから、次はDMATを出す。そこまではほぼルーチンで出ています。今回、ハイチはサーチ・アンド・レスキューは出ない。それから、3つ目は、ちょっとおくれて、短気あるいは長期専門家派遣という枠の中で、壊れたまちの都市計画系の人を出すという、この3つだけなんですね。

 1回だけトルコの地震の後に、1999年でしたから、兵庫県と神戸市の復興を担った職員のチームを出したことがあるんですよね。だけど、愚かなことで、発災から10日目に復興のミッションを出してしまった。トルコが受ける用意がまだ全然できていない中で、そんなものも出したので、外務省の評価としては、失敗だったと思っている、。そういうことがあるというので、ミッションの形をつくれば、あり得るだろうと思うんですよね。

 地道にやっているのは、草の根支援という枠で、大体1件1,000万円ぐらいのものを現地のJICAの人が、あるいは現地の大使館の人たちが中心になって進められる枠があるので、それは非常にいいものをやっています。それは間違いないです。だけど、それは出先の人たちの、能力にほぼ依存しているもので、国としてのオペレーションの安定性というか、一貫性はまだそこまでいっていない。

 だから、その草の根をうまく使うような形で。例えば、僕が見たのでは、コロンビアで地震が起こったときに、そこは手摘みでコーヒー豆を摘むことが非常に付加価値が高いので、何をしていたかというと、幼稚園をつくる、保育所をつくる。そうすると、手摘みしているお母さんたちが子どもをそこに預けて、地元の産業復興みたいなことをやってみたというのがある。そういう今あるものをミッション化していくというか、スキーム化するというのはあるだろうと。これが第1点です。

 それから、第2点は、最近、僕、力が落ちてきているんだと思っているんです、いろんな国際関係。それはなぜかというと、世の中、世知辛くなってきたせいじゃないかとつくづく思っているんですけれども、プロジェクトベースでしか物が動けなくなってきているので、極めて安定性がないんですよね。ですから、金の切れ目が縁の切れ目みたいなことがいっぱいあって、せっかく盛り上がったけれども、この次どうしようかと言ったら、チョンみたいなものがやっぱりいっぱいある。では、今の走っている5つが次どうなるだろうかと考えると、なかなか難しい。

 それを補っていたのは、例えば、さっきの東大の例もそうなんですけれども、それは個々の先生方が頑張る。例えば天野先生はすごく頑張っているお一人ですけれども、日常的に学会交流のような形で、あるいは国際学会のようなことの定期開催のようなことで、ネタがなくても、何とか人が集まる、顔つなぎをする、意見交換をする、その中に必ず一緒に共同研究をやろうねと言って終わる。

 その後、幾つか日本がお金を出して、プロジェクトを始めたときに、その人たちが褒め言葉で言ってくれたのは、今までは国際学会をやって、ペーパーのやりとりだけだったんだけれども、本当に今回は一緒に仕事ができたみたいなことを言う。けれども、まずお花畑をちゃんと耕して、お水をやっておかないと、いざというときに花は咲かないという意味の水やりとか畑の管理というものが今だんだんにおろそかになってきている。いつまでも天野先生がやっていろというのもなかなか言えないから、次の世代がそれを引き受けなきゃいけないんだけれども、なかなかそこがうまくいっていないというのが実態かなと。それが2つ目のポイント。

 それから、3つ目は、アメリカはNSFがかなり長期にわたって日本と共同研究をやろうというような枠組みをつくって、日本もオールジャパンキャストみたいなリサーチチームをつくって、割かしずっとやってきているような経緯もある。そういう日米関係と国際関係というものを考えていく中で、日本が単独で何かを張っていくという考え方はちょっと難しいかもしれない。日米なら日米を、ここで日米同盟をしろと言うつもりはないけれども、防災にかかわるすべてのフェーズを一応内省化できていて、かつ、さまざまな自然災害のハザードを経験しているという意味から言うと、日本とアメリカというのは世界の中で特異な位置にあるだろうと。それが競争的に関係を結ぶのがいいのか、共同的に結ぶのがいいのかというその中で、世界に対してのスタンスのとり方はあるんじゃないか。国際関係の中の機軸に防災面でも日米関係というのがあって、そういうところについてちゃんと耕して、人を育てて、顔つなぎをさせていくというような努力もあっていい。

 それからやはり2つ目は、どこをターゲットにするかということで言えば、僕は対アジアだと思うんですね。やっぱりアメリカは中南米を離さないだろうし、アフリカは基本的には英仏の、中東まではそこへ入るだろうと。そうすると、世界から見て、一番わけがわからないし、かつ災害が集中しているというのはアジアの部分。せっかく僕らはアジアに属しているわけですから、八紘一宇とは言いませんけど、アジアをやっぱりターゲットにして、アジアの安全・安心の向上。それからアジア的なマインドだとかハートだとかというものも踏まえたアジアターゲット。今、国連との絡みがあって、日本はアフリカと一生懸命やろうとしているんだと思いますけれども、防災という面で言えば、やっぱりアジアがターゲット違うことをしっかり目の前に立てていく国家戦略があってもいいんじゃないか。

 そうなると、ODAよりも、日本との貿易収支のことも考え、漢字文化圏で対等なパートナーシップで中国とか韓国とか台湾を入れたような枠組みもあるだろう。それから、もうちょっと南のほうの、プレート境界の火山地震国で、台風も多いフィリピンだとかインドネシアが中心になる防災課題を国際的な連携での解決。そんな戦略を持ったらいいんじゃないかと個人的には思っています。以上です。

【濱田主査】

 どうもありがとうございます。どんなことでも結構ですから、ご発言いただいて、最初の出発点ですので。どうぞ。

【田中委員】

 ちょっと似たような発言がたくさんあった中で、5年って、ある意味、長いようだけれども、結構短い。プロジェクトがうまくいくためには、かなりその前の留学生の受け入れだったり、共同研究であったり、そのプロジェクトの前提条件のところをやっぱり育てていかないと、かなり難しい。何となく花開きそうなところに最後、ぼんと5年間やれば、うまくいくんだけれども、さあ、研究テーマとしておもしろいから、やりましょうとコミュニケーションをとるところから始めていかなきゃいけないというと、あっという間に終わってしまう感じなんですね。

 そういう意味で、プロジェクトは一つの手法として、別の手法をどう組み合わせていくのかということが本質的だなという気がしています。実際に、(災害)直後に入るときも、留学生がいるかいないかで違う。そういう部分は文科省の世界でもあるので、とても大事にされるべきではないかという気がいたします。

【濱田主査】

 どうもありがとうございます。いかがでしょうか。

 これは、このリストのプロジェクトについては具体的に担当者からお話を伺うということなんですが、相手方の意見も聞きたいですね。だから、手紙を書いていただいて、その結果と地域社会への影響はどうだったのか。アンケートの内容を考えていただいて、どうその国の災害軽減に貢献をしたのか。それをどう思うかとか。何かそういうのを聞いたらどうでしょうか。どうですか。国際協力というのは相手方の言うこともやっぱり聞かないと、我々だけで議論したって、しようがないだろうと思います。

【荒巻委員】

 おっしゃるとおりだと思うんですが、私も実は消防庁にいるときにJICAを通じて研修生を相当受け入れてきました。本当にこの人たちの身になっているのかなという疑問を感じたことは多々あります。実際に協力という部分で実績は相当つくったとは思うんですけれども、自己満足になっている可能性があるんじゃないかなと思えるんですね。ですから、まさしく相手方が本当に何を求めて、どういうふうにその成果を生かしたのかということはしっかりと聞き取っていかなきゃいけないんじゃないかなと思います。

 それと、「尊敬される国づくり」という部分では、私なんかまさしく素人的な発想なんですけれども、日本の高い防災技術を生かした認証制度みたいなものというのも国際貢献としてあるんじゃないかなと思えるんですね。協力というよりも、防災技術の国際的な底上げという部分があるんじゃないかな。以前からちょっと思っているんですけれども、いかがでしょうか。

【濱田主査】

 どうもありがとうございます。 どうぞ。どちらでも結構ですから、どうぞ。

【今井委員】

 いろいろ議論をお聞きしていて思ったのは、防災科学技術といっても、この場でご議論いただいているとおり、観測・予測から始まって、防災・減災、それから復旧・復興とか人材育成など、かなり広いですよね。国際協力の中でトータルでやっていくのか、あるいはセグメントごとにやっていくのかだけでも、どのように国際協力をやっていくかという上ではかなり大きな問題、課題だと思います。

 それから、先ほど天野さんから土木学会の国際協力の例として、表彰などの制度が紹介されていましたけれども、土木学会に限らず、理学系、工学系あるいは社会科学系の学会など、多数、防災に関する学会がありますので、そういった学会が活動あるいは研究の中で国際協力をどういうふうにやっているか、これを一度整理してみるだけでも国際協力のやり方はどうするべきかというヒントになるのかなと思いました。

 学会に限らず、もちろん国、省庁がそれぞれどんなことをやっているとか、あるいは企業、あるいは関係機関、いろんな防災関係の機関はあると思いますので、そういったところが、例えば共同研究、人の受け入れ協力というやり方でやっていたりしている。システムを構築して、置いてきて、後で現地の人が使えなくて、だめになってしまう例をおっしゃっている先生がいらっしゃいましたけれども、どんな国際協力の仕方をしているか、それぞれのセグメントとか、どういう機関がやるかによってかなり違うと思います。それらを一度整理してみるといいのかなと思います。

【濱田主査】

 今、学協会の話が出ましたけれども、1月18日に阪神・淡路の15周年のフォーラムをやったんですが、13学協会が集まったんですよ。そんなにあるのかと私もびっくりしたんですが、防災関連でもそのぐらいある。今まで、そういう学協会が国際協力も含め何をしてきたか、それから、これからどういう方向を探っていくべきかというようなことを、3月31日に学術会議で会合をやりますので、ぜひご参加いただきたいと思います。その中で、この防災の国際協力ということも主要なテーマとして取り上げたいと思っております。

【国崎委員】

 今までのご意見に加えて、学協会だけでなく、NPOもそれぞれの活動の中で国際協力をしておりますので、そういった事業も吸い上げていただきたいと思います。

 私自身も国際協力について個人的に思いますのは、日本とは違って、防災、いつ来るかわからない地震よりも、あすの生活をどうするかという国に被害があって、たくさんの命が奪われるということがこれまでにも多くありました。そういった国に対して例えば技術面のことで、家はこう建てたほうがいいよ、橋はこういうふうにかけたほうがいいよという話をしても、なかなか、お金の面とか、意識の面もあって、難しいというような話もあるように思います。

 私自身は、まず研究開発で、調査研究において、さまざまな事業が行われておりますけれども、具体的にどれほど日本がリーダーシップを発揮して社会貢献できているのかというところの実態をやっぱり把握することが必要で、先ほど濱田先生からも相手方の意見を聞かないといけないというのは、まさにそのとおりだと思います。荒巻委員もおっしゃっていたように、やはり自己満足になってしまわないようにという意味で、まずはそういった相手方の意見というものも吸い上げていく必要があるように思います。

 それから、研究開発から社会実装という中で学会なり大学がすべてを担うということは難しい。NPOはNPOの得意なところというものもあります。例えば、5年かけて出てきた研究成果、調査研究の成果を今度はNPOに橋渡しをしていただいて、継続的な草の根活動ができるような、そういったパッケージが長期的視野のもとにできたらいいのではないかと思っております。

 インドネシア一つにとってもたくさんの、今の話の中にもありましたとおり、学協会なりNPOなりというような国際協力の事業がなされている中で、その成果の共有というのが余りなされていなかったようにも思います。ですので、国として、今までの事業をどのように日本がリーダーシップを発揮して提供していくのか、長期的な視野を持って貢献していくのかというような対策も必要ではないかと思います。

【濱田主査】

 どうもありがとうございます。どうぞ、どこからでも結構でございますので、いかがでしょうか。

【岡田委員】

 相手国にどういう効果があったかと聞くのは確かに効果あると思うんですが、ただ単に聞くと、きっとすごくよかったと言うのは決まっているんですよね。うちの研究所でも2030年間ぐらい防災関係技術セミナーというのを実際やっていまして、JICAが10年ごとぐらいに見直しをするんですが、あるときから隔年にして、それも今はやめてしまいました。人のつながりでネットワークは残っているので、その国へ行くと、昔のよしみで、いろいろ便宜供与してもらうというようなことはあるんですけれども、実際にこちらで教えたことが何の役に立っているかと言われても、それはなかなか見えないんですね。

 ただ、日本に来るような人というのは結構、向こうで有力なポストになっている人が多いので、多分間接的にはいろんな役には立っているんだろうと思います。けれども、相手が本当にどうだったかというのを、ただどうでしたかと聞いても、多分役に立たないので、聞き方が非常に難しい。本音を聞き出すというのは、よほど相手とコミュニケーションがとれていないと、酒飲み話でもしないと、本当の本音はわからないかもしれませんし、調査といっても、通り一遍にやっては多分だめだと思います。

【濱田主査】

 今の岡田先生のお話で、防災関係の研修は、日本でもいろんな公的機関でやっていますよね。そういう方は、研修を受けて、帰りますね、母国へ。その後のネットワークというのはどうなんでしょうかね。やっぱりきちっと把握をされてということになっているんでしょうか。大学は、例えば研究室ごとに、卒業生は今、何々国の何をやっているというのはわかるんですけれども、防災関連で多くの留学生が来ていますけれども、その全体像はよくわかりませんね。国に帰って何をされているかというのがよくわからない。

 これもまさに文科省の全体の問題だと思いますが、全体的にどうなっているかは把握されていないんじゃないですかね。話をしていると、「おっ、何々研究室の卒業生か」という話になるんですよ。だから、日本は、そういう意味では相当、人材を今まで育成はしてきているけれども、そういうものをネットワークとして生かしているか。余り日本のために役に立つということは前面に出したくはありませんけれども、やっぱりそういうネットワークをきちっと押さえておくことは国益にもなるだろうというふうには思いますね。

【重川委員】

 たまたま資料に今回は地球規模課題対応の協力事業というのが並んでいたので、ちょっとこれに関してなんですが、今までいろんな委員がおっしゃったとおり、ここに載っているプロジェクトあるいは担当されている研究代表機関というのは、非常に長い時間、留学生の受け入れとか、あるいは別途いろんな研究費をとって共同研究なり何なりを進めてきたという、そもそもその長いおつき合いの歴史とか、研究の準備状況とか、十分に準備は整っているという状況でスタートされているものばかりだと思います。

 このプロジェクトは多分、予算額が、JICAの予算額は知らないんですけれども、我々から見ると、結構大きな予算なものです。まず相手国にとってどれぐらい役に立つかということもありますが、地球規模課題なので、単に相手国だけではなくて、地球規模的に見て、いろんな安全防災技術に寄与するかということ、当然、日本にとっても役に立つかということ、それから、さらに社会実装性があるかとか、物すごくたくさんのことを要求されているんですね。

 こういうご時勢ですから、特に予算が大きくなればなるだけ要求事項も多いですし、レベルも高い。そうやっていくと、実際に走り出したときに、今、現実に出ているように、相手国の状況に合わせてとか相手国のレベルに合わせて満足しているのかとか、もっと低いレベルという言い方はおかしいんですけれども、余り高望みし過ぎて、せっかく予算もつき、今までの協力関係ができたところで進めていけるんだけれども、ちょっと現実と乖離してしまうような結果になってしまうのではないかという懸念をすごく感じています。研究計画書だけでもこんな分厚いバインダー1冊分ぐらいのものを皆さん用意されてきて、多分、報告書とかに追われてしまっているのではないかなと。

 むしろ今、さっき国崎委員おっしゃったように、NPOとか、いろんなレベルの人がもっと地に足をついたような形で活用しやすいような国際協力の予算の枠組みを外務省とか文科省とかJICAですとかというところで見直すことも必要なのではないかなという気がいたしております。

【濱田主査】

 どうもありがとうございます。

 重川さんがおっしゃるとおりだと思うんです。私もNPOを1つやっていますけども、支えていくのが大変ですよね、特に予算的にも。あるところにはお金はあるんでしょうけれども、なかなかそういう草の根的な活動、非常に有効な活動には余り潤沢には回ってこないというのが現状かと思います。そういうことも我々言及していってもいいんじゃないかというふうに思います。どうでしょう。

 この議論が何かある方向にまとまって、この委員会として一つの方向性というか、提言までいくかどうかはよくわかりませんが、まとまればいいとは思いますけれども、非常に難しい問題で、そこまでまとめ切れるかというのはなかなか数カ月で難しいだろうと思います。ただ、皆さんから、それぞれの分野でいろいろおやりになっているわけですから、皆さんの意見を、私は、最終的には羅列するだけでも社会へ発信する情報としては有効であろうというふうに思います。どうでしょうか。

 冒頭申し上げたように、いきなり言っても、なかなか。きょうの議論もふまえて、帰ってから皆さんのお考えを、できれば、半ページでも1ページでも結構でございますので、こんなことを考えているというようなことでお出しいただければ、事務局と私でまとめて、少し固めていきたいというふうに思います。いかがでしょうかね。

【事務局】

 はい、そのようにさせていただければと思います。あと、調査については、研究協力を対象とした様式になっていますけれども、少し幅広に、いろいろ情報を集める手だてを考えたいと思います。

【濱田主査】

 そうですね。よろしいでしょうか、そういう決め方で。

 私自身も、この防災分野での国際協力、特にアジア地域に対する協力というのは我が国の国際協力の根幹にするべきものだと、常日ごろ、感じています。ただ、防災分野の協力だけで事が済むかと言うと、決してそうではないですね。それは社会基盤整備をきちっと、特に防災基盤がきちっとしていなければ、災害は減らないわけで、そういうものを含めて議論していく必要があると思います。

 それから、私、よくインドネシアとかフィリピンに行きますけれども、日本に対する期待感は極めて大きい。ですから、やっぱりそれにいかにこたえていくかということを議論していくことが重要な課題だと思います。難しい課題でありますけれども、重要な課題でありますので、今後の議論を活発にしていきたいと思いますので、ご協力いただきたいと思います。

【 議題6 その他 】

【濱田主査】

 本日の議題はここまでで。後は事務局から何かあれば。

【事務局】

 どうも活発なご議論ありがとうございました。

 次の委員会は、3月9日火曜日、13時30分から15時30分、同じこの会場で開催を予定しております。どうぞよろしくお願いいたします。詳細につきましては、また概要をご連絡申し上げたいと思っております。 事務局からは、以上でございます。

【濱田主査】

 それでは、本日の議事が終了しましたので、委員会を閉会にしたいと思います。どうもありがとうございました。

以上

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課防災科学技術推進室

(研究開発局地震・防災研究課防災科学技術推進室)