資料58-3 防災分野の研究開発における重点事項 -各委員からの意見の集約-

防災分野における研究開発の国際展開

-これまでの議論のとりまとめ-

 

1.現在実施中の国際研究事業等

・現在、実施されている国際研究事業には、地球規模課題対応国際科学技術協力事業、科学技術振興調整費等の競争的資金が存在。これらの枠組みには防災について枠が設定されているものも存在。

・個々の研究者、研究チームがこれらの競争的資金に応募し、採択された研究課題が実施。(現在実施中の国際研究事業の一覧を別紙1に示す。)

 

2.現状における課題

(1)個別に実施していることによる問題

・個々の研究のみで相互の連携がなく相手国の防災力向上に結びつきにくい。

・相手国内で、防災力向上に貢献している我が国全体の印象がない。

・単独の研究者、研究分野では相手国のニーズに応えられない。

・各国の社会状況(文化、経済等)に応じた目標設定がなされていない。

・国情に応じた防災情報伝達を前提としていないことがある。

・海外における防災研究の全体像を踏まえず、国際的な防災研究の方向性を見据えた研究が行われていない。

・相手国の行政との結びつきが希薄で、現地に根付かない。

 

(2)国際共同研究(PJ)を促進する仕組み・体制がないことによる問題

・国際共同研究を主導できる人材が少ない。

・相手国との調整や研究グループのとりまとめなど研究以外の業務量が多い。

・プロジェクト研究のほかに国際共同研究を行う場がない。

・プロジェクト型研究のみでは相手国の研究者との継続的な関係づくりが困難。

・発災後、直ちに研究を行うと大きな成果が見込めるテーマでも、現在の枠組みでは、災害が発生してから研究を開始するまで1年以上かかる。

 

3.効果的な国際展開の方向性

(1)国内の関係者の連携促進

・相手国の防災力向上を実現するには、研究の企画段階から防災に関わる研究分野の連携が必要。

・さらに、相手国における社会実装を実現するには共同研究に着手する段階から国内の行政機関との連携も必要。また、国際共同研究の推進体制に相手国の行政機関の参画を求めることも必要。

・相手国の実情に応じて、国際共同研究の目標やマスタープランを策定して国際共同研究を推進する必要。

・以上のような取り組みを可能とするには、共同研究などの国際的な取り組みに関する情報の共有、取り組みの連携・共同化が容易となるプラットフォームの確立、国内外からの国際共同研究に関するコンタクトポイントの明確化が必要。

 

(2)国際共同研究しやすい環境づくり

・国際共同研究には語学力もむろん、相手国の実情を把握し、適切なマネージメントができる研究者が必要であり、我が国の防災分野において、国際共同研究を主導できる人材を育成することが重要。

・複数の国にまたがる研究をマネージメントするには研究以外の業務が多く存在しており、国際共同研究を強化するには研究者をサポートする体制が必要。

・また、防災分野の国際共同研究の強化には、相手国の研究者等(留学生を含む)との継続的な情報交換の実施など共同研究や研究者のフォローアップの強化が必要。

・将来的には、国際的な共同研究拠点や共同観測研究の枠組みを設立し、国際的な研究者の交流を促進する必要。

・国際共同研究を進めるには留学生支援や研究の国際化の推進などの科学技術政策や、国際協力などの他省庁の政策との連携を進めることが必要。

 

4.当面進めるべき施策(国内の防災研究の取組や情報の集約)

・理学・工学、社会科学分野の研究を包括的に進めるハザード・リスク評価研究を推進。その際、防災に関する知識や行動など人に関する研究も実施。

・防災に関わる研究分野の人材、研究実施状況、研究成果等の情報プラットフォームを整備。あわせて、相手国に関する情報も収集・提供。

・情報プラットフォームの管理、防災分野の国際共同研究のサポート、研究機関間の連携促進を行う拠点を設立。

 

5.今後の中長期的視点での推進方策

(1)国際的枠組みの構築にむけた取り組み

・我が国が実施するハザードリスク評価研究の国際的情報発信と国際標準化を目指した提案の実施(ISO等)

・総合的国際災害研究拠点、国際的観測・モニタリング・緊急観測などの体制の構築に関する提案の実施

・E-ディフェンスなど国際的先端施設を活用した人材獲得

 

(2)国際共同研究課題(委員から提案のあった課題)

・Forensic Investigationの実体化

・気象変動に起因する風水害とその軽減等に関する国際共同研究

・異常気象現象と気候変動研究・衛星観測監視法の開発

・気象温暖化による湿雪研究、高標高地観測

・モデル地域における災害予測と災害軽減策の研究

・広域波及災害研究

・ハザード評価

・シミュレーションモデルの開発

・災害危険度評価方法の確立

・災害情報即時伝達システム構築(緊急地震速報等)

・相手国における制度構築や人材育成等、政策的な研究PJの創設

 

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課防災科学技術推進室

(研究開発局地震・防災研究課)