【資料1-1】大型放射光施設評価作業部会における主なトピックス

1.施設及び設備の整備・高度化について

○ SPring-8 2への改造を行う期間は運転が停止するが、その間の受け皿となるであろうPFも老朽化が進んでいるという問題があり、ユーザーのニーズを満たせない可能性がある。日本の放射光施設全体で、整備計画を考えていく必要がある。
○ SPring-8 2へ改造されれば、新しいユーザーが生まれる。装置のポテンシャルとして既存のSPring-8ユーザー全てを受入れられるよう設計は行うものの、ユーザー受入れについては各施設で閉じるのではなく、我が国の放射光施設全体でどう役割分担をしていくのか、という視点で検討すべき。
○ SPring-8を利用した研究成果による新しい材料が、SACLAの実現を支え、更に新しい施設における研究成果に繋がるという良いサイクルの例になる。

2.ビームラインの整備・高度化について

○ 課題解決型である専用ビームラインの役割の重要性を否定はしないが、全ビームラインの半数以下が共用ビームラインという今の割合は少ないのではないか。
○ 専用ビームラインは失敗するリスクのある分野を切り開いていくことがミッションの一つ。限られたシフト数の範囲内で成果を出さなくてはならない共用ビームラインにおいて、このような実験ができない状態は問題ではないか。
○ 新しいビームラインを更に増やす方向が良いのか、運転時間を延ばしてビームのユーザータイムを増やす方向が良いのか、その前提として国費投入に見合う成果が得られる見通しがあるのか、検討すべき。
○ 専用ビームラインのビームタイムの一部を共用できる仕組みになっているが、ビームライン等の破損などに対する保証の問題と、共用利用時にサポートスタッフが手当できないという問題が大きなハードルになっており、共用が進んでいない。共用ビームラインの不足の解消を考えたとき、有効なリソースとなり得るのではないか。
○ 高度化については、SPRUCと一体で議論を進めていく仕組みが必要。SPRUCが書いたプロポーザルを理研とJASRIが評価・回答する仕組みがあると良い。
←SPRUCとしては要望を吸い上げ、施設側へ要求する仕組みを構築予定。
○ 蛋白関連のビームラインについては、ロボットによる無人計測技術の発達や、ベンディングソースよりもデータ算出量の多いアンジュレーターソースのビームラインの整備が進んだことで、計測環境が大きく変わった。

3.利用者支援について

○ キャリア形成の面からポスドクにユーザー支援を行わせることは本当に良いのか。見直しを検討すべき。
○ スタッフの不足への対応という意味では、パワーユーザーの拡大を検討してはどうか。インセンティブとして与えられるビームタイムを20%から15%に減らし、パワーユーザー数は増やすことを考えても良いのではないか。
○ パワーユーザー制度を整理するタイミングがきているのではないか。選考の透明化やパワーユーザーの評価制度を整理したうえで、パワーユーザーが所有する装置の保守・高度化に関する予算を手厚くするなど、経費面を含めて戦略的に行うべき。

4.利用者拡大について

○ インダストリーとアカデミアの間のギャップを自主的に埋めるには、インダストリーの現場で何が問題かということをアカデミアの研究者が直接聞くこと。これを確かなシステムにできれば、我が国全体にとってもインパクトが大きい。
○ 従来は個別の企業の相談に対応してきたが、これからは業界全体で共通に解決すべき課題に、アカデミアが対応する仕組みを作っていくべき。企業の抱える課題の情報をSPring-8の中でオープンにすることで、インダストリーとアカデミアのマッチメーキングをする場が形成できるのではないか。
○ 新規ユーザーに限ったトライアルユースを実施すべき。

5.利用研究課題の選定について

○ 重点課題設定においては、国の方針を踏まえつつ、選定委員会において議論されたものを国が認可しており、適切に設定されている。また、個別の課題について、その課題の特性に応じて、適当なビームラインで実験できる状態である。
○ 重点課題の割合が大きくなりすぎて、一般課題の割合が少なくなるのは問題だが、現状では、バランスがとれている。
○ 課題の採択数とともに、応募数も一括して推移が比較できる資料が必要。
○ 課題数が頭打ちという議論があるが、一つの課題に多くの実験が含まれるケースや、施設やビームラインの高度化によって時間あたりの得られるデータ量が年々増加していることを考慮すると、利用が停滞しているとはいえないのではないか。

6.施設の運用・運転について

○ 以前は国家プロジェクトを受け入れる際、プロジェクト毎に個別の運転費が充当されるケースがあったが、現在は共用補助金として一本化されており非常に運営しやすくなっている。継続するべき。
○ ユーザー側がSPRUCとして一体となった一方、施設側は理研とJASRIという二つの組織が存在する。SPring-8として施設設置者と登録機関の一体的なった活動パターンの仕組みはあるのか。
←大前提として共用法はSPring-8を1つとして見ている。理研がSPring-8を設置者として所有しており、その業務の中の一部である利用促進業務を登録機関が代行するという仕組み。業務を公平かつ効率的に進めるという観点で分割しているが、施設のパフォーマンスとしてはSPring-8を一体的に見ることは必要。
○ 今後、SPring-8の国際評価などについては理研とJASRIが研究の上で一体として活動し一体として評価をうけるべき。また、SPring-8としての研究ハイライトについても、一体となって社会へ紹介していく場が必要。
○ SPring-8におけるサイエンスは、新しいサイエンスが生まれる一方、相対的に縮んでいるサイエンスもある。それを循環させる仕組みについては、理研とJASRIが一体となって取り組まなければいけない課題。完成した施設の運用に重きを置いた共用法の性質上、発展的な検討は難しい面もあるが、サイエンス面からみると、この検討は必ずやらなければならない。
○ 利用料収入について、高度化だけでなく、利用者へのサービスの開拓や支援員の人件費に充てることはできないのか
←現状、ユーザー全員に対して平等に利用料を還元できるという意味で、施設高度化のために使うのが最も有効であると考える。
○ 業務委託契約を見直し、コストを抑えているようだが、未だにスプリングエイトサービスが受託している業務が多い。もっと競争性があっても良いのではないか。
○ ベンディングとアンジュレーターのビームラインではフォトン数が異なるためスループットに差がある。その点を考慮して、ビーム利用料を差別化することを検討する。その際、ビームラインの利用状況も考慮する必要がある。
○ 施設が年々高度化され、測定効率があがる一方で、利用料金は一定に保たれている。ユーザーとしてはありがたいが、性能に見合った金額に値上げし、その分で利用者支援を充実させてはどうか。
○ 海外動向を踏まえると、今後、企業による測定代行の成果専有利用が増えることが予想される。料金を下げてユーザー数を増やすか、料金を上げてユーザー数は一定にとどめつつ施設を高度化するか、検討しなければならない。また、成果専有利用が一般の共用利用を圧迫することがないよう、バランスを考えることが重要。
○ 専用ビームラインのビームタイムの20%を共用に出すにあたっては、共用に出している間に生じた故障の保証や人身事故の保証と責任体制の整備が必要である。また、民間専用のビームライン、独法専用ビームラインで実態が異なることを念頭に置く必要がある。

7.先端研究拠点の形成・人材育成について

○ SPring-8という場は、若手、また大学院生を教育するにあたって必要なツールのそろった環境。今まで大学院単位で個別に行われてきたカリキュラムを連携させながら、実地研修も含めた教育活動ができる仕組みを作るべき。
○ 大型施設はスタート時に若手を大量雇用するが、その後のキャリアパス形成が非常に難しい。大学もキャリアパスの一つとしたい一方で、メールインサービスの拡充など企業がビームライン研究者を内製化しない方向に働く動きもある。
○ 登録機関間連携として、JASRIとCROSS間での人事交流や相互利用課題の選定など具体的取組は既に実施されているが、特に相互利用課題の選定については、選定の際に一定の配慮を示すか否か、今後検討する必要がある。

8.研究成果の公開・社会への還元について

○ 研究課題数がサチュレートしたとしても、研究の質が向上していれば構わない。サイテーションインデックスという切り口で成果を評価するべき。
SPring-8全体のサイテーションインデックスの平均は15.86であり、東大と同等以上の数値であった。

その他

○ 本作業部会の議論においては共用ビームライン、専用ビームライン問わず、SPring-8全体を絶えず見ていく必要がある。
○ 施設側からユーザーコミュニティへの情報開示と意見交換が必要。具体的には将来計画について、理研・JASRIと定期協議を行う場や、JASRIによる12条課題で行われた研究内容のフィードバック、SPring-8課題選定委員会へのSPRUC代表者出席が必要と思われる。
○ SPRUCの活動資金は、施設側と対峙し執行するミッションへの対価として資金を得ることが望ましいが、ユーザー組織という法人などではないコミュニティへ予算を分配する仕組みについては、今後検討が必要。

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研究振興局基盤研究課量子放射線研究推進室

(研究振興局基盤研究課量子放射線研究推進室)