【資料1-1】大型放射光施設評価作業部会(第3回)(案)

平成25年5月15日

【福山主査】
 それでは、定刻よりもちょっと前ですけれども、始めさせていただきます。
 今日も御参集ありがとうございます。この作業部会、今日3回目です。本日、小松、唯、水木、各委員、御欠席です。
 今回はポテンシャルユーザーとしての御意見を頂きたく、東京工業大学地球生命研究所の廣瀬敬所長にも御出席いただいております。廣瀬所長、どうぞ今日よろしくお願いいたします。
 また、5月1日から新たに基盤研究課長に就任された前田課長から御挨拶いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
【前田課長】
 本日は御多忙中のところ、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。今御紹介ございましたように、5月1日付で基盤研究課長かわりまして、私、前田が担当することになりました。よろしくお願いいたします。
 5月1日付と申しましたけれども、4月1日に、私、基盤研究課の中で材料の方の担当をすることになっております。SPring-8今日の主たるテーマであるところのSPring-8ですが、これもそうですし、それから、それを含めた光とか、中性子とか、こういう話、私自身、知ってはいたんですが、材料分野の研究者の方々、この1か月半ぐらい、いろんな方に聞くと、やっぱり光とか、中性子とか、結構大きく研究を進める鍵になるんじゃないかと言う方が何人もいらっしゃいまして、そういう意味では、今日議題であるところのSPring-8も、ユーザー側にとっても多分ものすごく大きな期待があるんだろうなと私自身もある意味再発見したところでございます。
 そういったことで、SPring-8からたくさんの研究成果が多く出されることは私どもも期待しておりますし、皆様も多分そういう視点で、そういう期待の中、今日の評価というのをしていただいていると認識してございます。
 本日の作業部会は、3回目ということでございまして、ある意味折り返し地点ということで、本日は、ユーザーからの視点を中心に利用者支援とか利用者拡大に向けた取り組みについて、現状の評価と今後の方針を御検討いただくというふうに聞いてございます。実際に施設を利用するユーザーの御意見というのは、やはりより使いやすい環境を整えていくために不可欠だと思っておりますので、共用とか、専用、あるいは設置者という3種類のビームラインというのはあるわけですけれども、その種類の違いにとらわれず、施設全体として取り組むべき事項について忌たんのない御意見をいただければと思っております。
 本日と、あと予備日を含めて残り4回ということですが、引き続き皆様方からたくさんの御意見をちょうだいいたしまして、SPring-8が我が国における科学技術イノベーションの創出に貢献するために何が必要か、是非とも前向きな御意見をたくさんいただければ幸いと考えております。
 どうぞ本日はよろしくお願いいたします。
【福山主査】
 前田課長、どうもありがとうございました。7月までに是非、いいリポートをまとめられるように頑張りたいと思います。
 それでは、事務局より配付資料等の確認をお願いいたします。
【神部補佐】
 それでは、配付資料の確認をさせていただきたいと思います。議事次第をごらんください。議事次第のとおり、配付資料としまして、資料1-1から資料3-3まで、また、参考資料としまして、参考1から参考4までを配付させていただいております。
 参考1から4につきましては、前回も配付しました資料と同じものでございますが、議論の参考になるような定量データ等でございますので、改めて配付させていただいております。
 欠落等がございましたら、事務局までお声がけください。
【福山主査】
 さて、これから議題に入りたいと思います。前回の議論の概要及び今後の進め方について、これも事務局から御説明をお願いいたします。
【神部補佐】
 まず資料1-1を御覧ください。既にメールにて御確認をいただいているものでございますが、前回の議事録の全体版でございます。もし修正意見の反映漏れ等ございましたら、本日の会議終了までに事務局に御教示ください。
 また、次に資料1-2でございますが、この資料1-2は、前回、平成19年7月の評価における指摘事項とその対応状況をまとめている資料でございます。左が前回評価における指摘事項でございます。前回のこの中間評価作業部会におきまして、設置者または登録機関の方から対応状況について説明がございましたが、その内容につきまして右の欄に反映してございます。
 また、1枚めくっていただきますと、赤字になっている部分がございますが、こちらが本日の議題に関係している部分でございます。こちらの内容につきましては、後ほど登録機関から説明がございますが、本日の説明を受けまして、後ほどこの赤字の欄につきましても対応状況を埋めていくことで、前回評価における対応をフォローしていきたいと考えております。
 次に、資料1-3の説明をさせていただきます。資料1-3でございますが、こちらは第2回、前回の作業部会における主なトピックでございます。委員の方々にいろいろと御意見を頂きましたものをまとめておりますが、例えば施設・設備及び高度化につきましては、SPring-8の刷新というのが1つ説明として挙がりましたが、こちらにつきましては、日本の放射光施設全体で整備計画を考えていく必要があるといった御指摘や、またユーザー受入れについては、各施設で閉じるのではなく、我が国の放射光施設全体でどう役割分担していくのか、そういった視点が重要であるといった御指摘を頂いております。
 また、2ポツ、ビームラインの整備・高度化につきましては、専用ビームラインは、課題解決型の重要性は間違いないが、共用ビームラインが全ビームラインの半数以下というのは、共用ビームラインの割合が少ないのではないかといった御指摘を頂いております。また、その御指摘につきましては、新しい共用ビームラインを増やすのか、若しくは運転時間を延ばすことによって共用の利用時間を延ばすのかといった方向性があると思いますが、それらにつきましては、どういったやり方が国費の投入に見合う成果が得られるのかといったことを検討すべきという御指摘も頂いておりますので、こちらにつきましては、また次回以降に対応できるような資料を準備していきたいと考えてございます。
 また4ポツの、利用者拡大につきましては、産業界と学術との関係というものをいかに友好的に築いていくかという点につきまして、産業界全体で共通する課題解決にアカデミアが対応する仕組みを作っていくべきであるといった御指摘を頂いてございます。
 2枚目でございますが、飛びまして、8ポツ、研究成果の公開・社会への還元につきましては、研究の成果の質をいかに評価するかといった観点で、いかに論文が引用されているかといった観点が重要であるといった御指摘を頂いてございます。こちらにつきましても、次回以降、そのような状況、どれくらい引用されているのかといった状況が説明できる、評価できる資料を準備として今作業を進めているところでございます。
 続きまして、資料1-4につきましても説明させていただきます。資料1-4でございますが、作業部会の進め方をまとめている資料でございます。本日が第3回ということで、利用者支援、利用者の拡大、利用者研究課題の選定につきまして、議論をしていただくことになります。
 こちらにつきましては、まずこの3つの議題につきまして、登録機関の方から現状の取り組み状況及び今後の方向性の考え方につきまして説明いただきます。
 また、実際のユーザーの声ということで、先ほど御紹介いただきました廣瀬所長、また、産業界の声ということで森委員、また、ユーザーの団体、SPRUCの会長としまして雨宮委員からそれぞれプレゼンを頂く予定となってございます。
 最後に、資料1-5でございますが、こちらはこれまで配付した資料と中身は同じでございますが、本日議論いただきます利用者支援、利用者拡大、利用者研究課題の選定につきまして、これまでまとめました評価の項目及び視点というものを改めて確認できるようにということで資料を用意してございます。
 以上でございます。
【福山主査】
 どうもありがとうございました。いかがでしょうか。今まで、前回までどういうことをしてきたか、それから、今日どういうことがターゲットになるかという、そういう位置づけです。
 議事録、資料の1-1、御覧いただいて、この中の何枚目かな、宿題があった。熊谷さんの方から共用ビームラインごとの論文発表数の御紹介が前回あって、これは2枚目の裏の方、真ん中からちょっと下に、論文発表数に関しては、共用ビームラインに限らず、全てのビームラインで同じことが必要だろうという、そういう議論があって、その話の同じ脈絡で、この議事録の後ろから3枚目の表の一番下の方、それから次のページにわたって、要するに、前回ここでお話しした、SPring-8というのはどういう成果を出しているのか、どういう成果があるかということが結局は全てだと。それに関して、サイエンスのコミュニティーからどういう雑誌に出たかということで、これは話題にしていいかもしれないけれども、一番大事なのは、どれだけコミュニティーにとって役に立っているか。つまり引用、サイテーションが大事だという、そういう議論がございました。
 実はこれに関して、その後、事務局で現在進行形で準備しておられますけれども、要するに、SPring-8のマシーンを使ってパブリッシュされた論文がどれだけ引用されているか、全てに関して。これがわかると、SPring-8のサイテーションインデックス、これができると、APSのサイテーションインデックスと比べることができる。サイテーションに関する。そういうことが、僕、大変かなと思ったんですけれども、事務局の御尽力で、そういう方向で整理が進んでおります。それに関して、今日、事務局の方からも御説明があった資料1-3の2枚目の項目8、要するにサイテーション、引用がどうなっているかということでの分析が具体的な形ででき、そういうことでの議論が次回以降、どこかの段階でできるだろうと思います。
 それと資料1-2ですけれども、まずこれは前回、先ほど御紹介ございましたけれども、平成19年7月にあった評価の段階で御指摘いただいたことに関して、前回のこのワーキンググループで当事者が御説明くださったこと、それは実は19年の評価に関してのコメントというか、レスポンス、反応、回答になるわけですね。それがここに書いてあるという、そういうことになります。
 今日、これから3回、4回で同様なことが行われて、その結果が資料1-2の第3回、赤い字、第4回、このブルーの字、そこにつけ加わっていくという、そういう形になると思います。
 という位置づけでございます。よろしいでしょうか。これが今までの経緯に関してです。
 ここまでよろしいですかね。
 それでは、本日のメーンとなる議題、関係者からのプレゼンをお願いしたいと思います。JASRIの熊谷理事、廣瀬所長、森委員、雨宮委員、4人の先生方からプレゼンをしていただきます。それぞれのお話を、プレゼンは5分と予定されております。その後、10分程度の議論。
【神部補佐】
 すみません。登録機関は、ちょっとボリュームがありますので、20分ぐらいで。
【福山主査】
 ごめんなさい。失礼しました。そういうことで、各プレゼンの後に議論を10分程度で行って、全部プレゼンテーションが終わった後、まとめてもう一度議論するという、そういう形をとりたいと思います。
 それでは、熊谷さん、よろしくお願いします。
【熊谷理事】
 資料ナンバー2に基づいて説明させていただきます。
 最初の中身ですが、1から3までありまして、利用者の支援、利用者の拡大について、利用研究課題の選定についてということになります。
 1ページめくっていただくと、その1項目です。次のページ、3ページ目に行っていただければと思うんですが、利用者支援におけるユーザーとの関係。これは現在はSPring-8ユーザー協同体(SPRUC)と、それから、もう一つ、SPring-8の利用推進協議会、これは産業界の集まりですが、その2つがユーザーとしてあります。ただ、SPRUCの中にSPring-8利用推進協議会が代表機関として入っておりますので、一本化されていると。そういうユーザー協同体の御意見やニーズをきちっと我々が受けとめて、利用支援の高度化に向けて作業するということになります。
 我々SPring-8の中のスタッフがこういう先端的な研究機関、施設の中で、常に最先端の研究環境を利用者に提供するということで、常にスキルアップする必要があるということが基本にあります。そういう我々自身のスキルアップと、それから利用者のニーズをきちっと受けとめて研究開発をし、それを利用者にフィードバックをして、非常にいい回転をさせるということで、今、対応しております。
 その利用者の支援体制ですが、これは世界的によく比較されるわけですけれども、現在SPring-8の利用者対応の体制としては、利用研究促進部門と産業利用推進室と、その2つが利用者と直接的に関係する部署としてあります。
 ビームラインは、専用ビームラインを除いて共用ビームラインが26本ありますが、この26本に1本ずつに人数を張りつけると、ほとんど2人とか、そのぐらいになってしまいますので、左にありますが、グループ、構造物性、構造物性1、2と、これ、すいません、1の下が2ですね、というふうに、機能だとか分野に分けてまとめて今対応しております。
 現在は、利用促進部門に関しては、そこにありますように、9つのチームに分かれて対応している。人数はそれぞれのグループで大体10人前後ということになります。
 産業利用推進室、これは3本のビームラインを持っておりますが、現状13名で対応している。これはスタッフの数で、このほかにポスドクを入れると93名ほどになりますが、そういう人数で対応していると。
 その次のページ、5ページになりますが、利用支援の研究員の育成・強化ということで、これは常に我々自身が高い研究環境を提供するという必要性がありますので、そういう内部のスタッフの方の育成をしている。
 1つは、共用促進法の12条、これは、登録機関のスタッフがきちっとした研究活動をすることで適切な利用ができるという理念に基づいて、登録機関のスタッフが研究調査をする。
 その中に、GIGNOというプロジェクトで、若手の研究者を育成するためのプログラムがあったりします。
 それから、もう一つは、外部の競争的資金を登録機関のスタッフが積極的にとりに行くことによってスキルアップする。
 そういう3つの柱で今運用されています。
 そういう登録機関の中のスタッフが、現状、登録機関の中、SPring-8の中でとどまるのではなくて、外に積極的にプロモーションするということで、現状は、そこにありますが、2009年から2012年の4年間で、定年制職員の方が7名、それから、任期付き、ポスドクですが、13名の方が外に転出しているということです。
 それから、パワーユーザーの活動状況。これはポテンシャルユーザーと言った方がいいのかもしれませんが、先ほどお話しした支援要員の不足を補うと。利用者の方に一部手助けをしてもらうというような意味合いもあるパワーユーザー制度というのがありますが、これを積極的に今活用して、運用しております。
 パワーユーザーは、3つほどの選定基準があります。1は、優れた研究成果を輩出する、創出できるグループであること。
 2番が、実験ステーションの整備、高度化への協力。これは共用ビームラインの支援要員が不足している分を補ってもらう。
 それから、その分野の利用研究の拡大、推進、利用者の支援も同時に行っていただく。
 特に2と3について期待をしている部分です。
 現状、これ、二千何年だったか、忘れましたけれども、今までこのパワーユーザーの方が16課題ほど、18だったかな、それくらい選定されて、活動をされておりまして、それなりに評価、中間評価とか事後評価できちっとこの3つの目的を達成しているという評価を受けております。
 次の7ページが調査研究活動の波及効果と。そういういろんなことを登録機関としてやっているわけですが、それがユーザーへどういうふうに還元しているかというものを見た図です。これは、SPring-8の利用者のための調査研究活動というのは、当然ユーザーの方の意見等を聞いた上で、その方向性をきちっと整理した上で実施するということが前提になっております。真ん中から外側に向けていろんな利用の環境整備というようなところに行っております。
 次のページ、8ページですが、利用者の拡大についてということで、9ページ目に移っていただければと思います。9ページ目は、以前もお見せしたかとは思いますが、利用者の新規拡大状況とその取り組みということで、ピンクの部分が新規に利用をされた方、それから、黄色の部分が既存、1回でも使った方は既存になるわけで、既存の利用者が年々増えているのか、それとも停滞しているのかということが1つ重要になります。これを見ていただくと、停滞はしていないけれども、微増でとどまっているというようなこと。それから、新規の部分に関しては、ピンク色の部分ですが、内訳は、産業界で新規に入ってくる方が17%、学というのは、大学院の学生が68%、官の新規の方が5%、海外が10%ということで、毎年毎年ほぼ同じような数の新規の利用者がいらっしゃると。ただ、残って、黄色のところに足されていく部分が、黄色の自然減とほぼコンパラか、ちょっと微増しているということで、これは今後きちっと分析しないといけないということだとは思います。
 次のページの10ページになりますが、新規利用者の拡大ということで、ここでは特に産業利用というのが1つの例題として挙げてあります。これは新規の利用者の拡大を、運転時間とか、そういう条件を一定にした上、まあ、現状はほぼ一定になっているわけですが、その上で新規利用者の拡大は一体どういうふうにしたら増えるのかということで、1つは、測定代行のような部分を持ち込む、または遠隔測定のようなシステムを持ち込むというようなことが考えられます。
 この10ページには、測定代行分野の手法の拡大ということで、これは産業利用の測定代行の年次、2007Bから2012Aまでどのように変わっていったかを見たものですが、測定代行に関しては右肩上がりになっていることがおわかりかと思います。今後、産業利用以外のところにもこういう利用の仕方が増えていくことが考えられます。
 それから、分野・手法の拡大のほかにも、随時受け付けだとか、2時間単位で、8時間シフトですが、測定代行の場合はもう少し細切れにできるとか、いろんな施策をして増やそうとしております。
 次に、ページが11ページに移っていただきたいのですが、新規利用の促進策。先ほどの測定代行もそうですが、これから人の数がそれほど増加するわけでもなく、時間もそれほど増えるわけでもない。まあ、上限があるわけです。そういう環境の中で、利用課題、利用者の方の要望を満たすようなシステムの構築というのが必要になってくるかと思います。
 キーワードは、そこにありますが、試料の自動交換とか、自動計測だとか、遠隔アクセス、いわゆる遠隔から実験ができるようなシステムを導入するということで、現状3本ほどのビームラインで今遠隔利用の試行実験がされています。これは2010年に理研のたんぱくだったかとは思うんですが、和光からリモートで実験をする。最近では台湾から遠隔でリモートをする試行実験が行われております。
 そういう遠隔測定をするためには、試料の自動交換だとか計測器の自動化というものが中途半端だとうまくいかないということで、先ほどの12条を使って、スタッフがそういう高度化に対応していると。
 それから、新規利用の促進策としてもう一つは、あと2つほどありますが、産業利用促進を目的とした「光ビームプラットフォーム」への参画。これは日本にある放射光施設をきちっと丸くつなげて、各々のいいところを使っていくというようなネットワーク。それからもう一つは、放射光とか、中性子とか、対象としているものは物質の構造機能という、同じようなものですので、そういういろんなアプローチの仕方、試料を探索するいろんなアプローチの仕方、放射光、光を使ったり、中性子を使ったり、それから、そういうデータを京でシミュレーションと一致させて、計算科学で推定して、またフィードバックすると、そういう3つの先端的施設をリンケージすることで更に利用者のニーズを満足させて拡大するというようなことも今手をつけつつあります。
 次のページの12ページは、普及活動になりますが、これは講習会、今までの成果、それから、高度化で実用になったいろんな技術的な手法の成果を広くユーザーの方に知っていただくというようなこととして、講習会、研修会、それから夏の学校、SPring-8シンポジウム、産業利用報告会等々をして普及活動をしております。
 それから、若手利用研究者の発掘。13ページになりますが、先ほどのGIGNOは、登録機関の中、SPring-8の中のお話ですが、外の若手、これから日本の科学技術を担っていく若い人たちをエンカレッジするということで、ほう芽的研究課題、支援課題というものを実施しております。これは実験の消耗品代だとか旅費はある程度、そこにありますが、1課題まで学生2名は支援しますよという課題です。最初は博士課程だけでしたが、修士課程まで拡大して現在この制度を進めております。
 現在までにかなりの数、そこに表がありますが、これが課題数ですが、いろんな方がこのほう芽的研究で実験をされて学位をとったり、いろんなところに転出したりされております。これは後の参考資料の方に載っけてあるとは思いますので、そこを参照していただければとは思います。
 3番目が、14ページになりますが、利用研究課題の選定ということで、次の1枚めくっていただくと、15ページになります。利用研究課題の選定の概要というものがありますが、この理念は、公平・公正に利用者を選定するということが基本になっております。それから、成果専有課題の秘密保持というのもあります。
 選定に関しては、SPring-8の選定委員会というところに専用施設審査委員会、パワーユーザー審査委員会、SPring-8利用研究課題審査委員会という委員会がくっついていまして、そのSPring-8利用研究課題審査委員会の下に各分科会があります。これは長期利用、生命、散乱、XAFSの手法に関するものが3つ、それから産業利用の分科会、グリーン/ライフ分科会、グリーン/ライフは重点の方になりますが、そういう枠を適時決めて審査をしているということになります。
 次のページの16ページになりますが、重点研究課題、その中の重点研究課題の概要ということで、この表は前回もお見せしてあると思うんですが、重点課題制度の変遷と、応募採択率の関係ということですが、上は1997年のSPring-8のスタートから2013年までの今日までどのような重点研究課題が実施されたかという表になります。日の丸の国旗が打ってあるのは、これは国の施策を反映して行ったもの。それから、タンパク3000のように国直轄のものもありますが、重点ナノテクとか、それから、産業利用に関するものだとか、そういうものは国の施策として行われている。その後、その施策が終わった後に、まだ必要だということで、例えば産業利用に関しては、JASRI及び利用者の意見を聞きながら、JASRIがこの重点課題を指定して継続しているというような部分もあります。
 その下が、いろんな重点化をしたものと、それからその課題採択がどういうふうな関係にあるのかというものを、横軸もほぼ1997年から2012年の間で合わせたものです。あまりよく見えない、これからすると見えないのですが、1つだけ、2007年のところに課題数が少しジャンプしているところがあります。これは産業利用で、登録機関の中に産業利用推進室というものを設け、なおかつ、その支援要員も、3本のビームラインに対して22人と、かなり充実させてスタートした課題というのか、施策があります。その施策をとったことで、やっぱり産業利用に関する利用が増えて、課題が増えてきているということが言えます。あとの細かいいろんな課題を、重点課題をした結果がどうなっているかというのは、この中ではほとんど統計誤差の中に埋もれて見えていません。
 17ページになりますが、分科会の変遷です。1996年から2011年までの間にどういう分科会が立ち上がって、どういう分科会が消えていってというものを見たものです。最初から現在まで、1996年の運用開始から現在まで残っているのが、生命科学、散乱解析、XAFS、分光というところ。それから、当初あった実験技術方法は、2003年ぐらいのところで消えて、左の4つの中に吸収されていると理解しております。それから、途中から産業利用が入ってきまして、2007年、産業利用推進室、それから、長期利用の部分だとか、ナノテク、バイオ、それからグリーン/ライフという重点に対応する分科会が設けられているということになっております。
 次の18ページですが、これは前回分野別応募採択の状況で、応募数だけを示しましたけれども、採択率と課題数、採択課題数はどうなっているのかという御質問があったものに対応しております。
 これを見ていただくと、採択課題、左下の図になりますが、産業利用と化学に関しては、採択課題が年次とともに、2007年から12年にかけて徐々に増えている。それに対して、生命科学と医学利用は減りつつあるというような感じになっております。物質・材料に関してはほぼ横ばいか、微減ということで、共用ビームラインの課題数に関してはこういう状態になっている。
 採択率に関しては、ほぼ70から80%程度のところに、ほぼどの分野も値をとりますが、1つ環境科学というのが、普通の環境科学と物質・材料、医学応用の採択率が多少厳しくなっているという傾向にあります。この原因がどこにあるのかというのは今後だと思います。
 最後になりますが、19ページが、専用ビームラインの選定の概要です。専用ビームラインの選定については、そこにありますように、1から5番に従っていろんな手続があります。まずは設置計画の趣意書を出していただいて、実行計画書を受け入れた後、専用施設の設置契約、審査をした後に設置契約をして、原則10年が設置になりますので、中間の5年目に評価をして、撤去するのか、継続するのか。10年になって、期間満了で撤去ということになりますが、その後どうするのかというのもあります。
 選定基準に関しては、1から5までありますが、この専用ビームラインの選定基準の詳しいもの、それから共用ビームラインの選定の細かいものは、参考資料の最後についておりますので、参照していただければと思います。
 この専用ビームラインが、現在ここに挙がっている部分、この数だけありますが、ここで、兵庫県のIT、それから産業界専用、それから創薬、兵庫県BL、それからフロンティアソフトマター、豊田BL、これだけの数が、どちらかというと産業利用に主に使われているビームラインということで、共用ビームラインの3本のほかに、専用ビームラインではかなり産業利用に特化したビームライン、専用ビームラインの利用の仕方が顕著になっているということです。
 以上が私の説明ですが、その後に参考資料として、参考の1から8までございますので、これは後で見ていただければと思います。
 以上です。
【福山主査】
 どうもありがとうございました。いろいろな活動、利用者支援の在り方、御紹介いただきました。御質問、御意見、いかがでしょうか。
【西島委員】
 パワーユーザーのことなんですけれども、おそらく、学関係者の方が多いと思うんですけれども、このパワーユーザーというか、ポテンシャルユーザーの方は、ほとんどSPring-8にいらっしゃるということなんですかね。
【熊谷理事】
 いや、それも少し違っているとは思います。
【西島委員】
 どのぐらい含まれるんでしょうね。これ、どこまでやるかですけれども。
【熊谷理事】
 まあ、いろんな支援の仕方があるんだとは思います。
【西島委員】
 3番目のビームタイムの約50%に参画とか、結構縛りがあるので、その人の気持ちもあるでしょうけれども。
【熊谷理事】
 ですね。
【西島委員】
 実際どのぐらいにSPring-8に。というのは、これ、そもそもあれですよね、ビームタイムを専有に使えて、協力するということですから。
【熊谷理事】
 はい、そうですね。
【西島委員】
 変な話、その人の手当みたいなのがないわけですよね。
【熊谷理事】
 このパワーユーザーの方には、ある程度のというわけで、今20%、50シフトぐらいがこのために与えられているわけです。ですので、相当な割合SPring-8に滞在しているということではあるとは思いますが、大学の先生ですので、本務をお持ちなので。
【西島委員】
 ですよね。
【熊谷理事】
 常にその先生がいらっしゃるというわけではないとは思いますが、ただ、スタッフの方がいる可能性もあるんだとは思います。
 それから、そのビームラインを使うに当たって、どういう支援をユーザーの方が求めているかということがあると思うんですね。機器を使いたいんだけれども、それに対して実験、どういうふうにしたらいいかという相談に乗るとか、いろんな仕方があるとは思いますが、今、廣瀬先生がいらっしゃいますので、パワーユーザーとしてどういう活動をされているかは。
【西島委員】
 これは公募するときに、当然ですけれども、グリーンイノベーションとか、ライフイノベーションとか、環境とか、バランスよくとっているということなんですよね。
【熊谷理事】
 今、パワーユーザーの中にグリーンとかあれはなかったような気もします。
【西島委員】
 ないんですか。
【熊谷理事】
 ええ。どちらかというと、SPring-8でちょっと弱そうな部分だとか、そういうところを対応していただいているというような方がいいのかもしれない。
【西島委員】
 そのときの時代の流れとか今後に対して、テーマによって戦略的にパワーユーザーを採択するというわけじゃなくて、ポテンシャルユーザーの方だったら結構ウェルカムという感じですか。
【熊谷理事】
 戦略的に考えている部分もあると思います。これは例えば地球科学とか惑星科学みたいなところは、ある意味じゃ戦略的にこれから重要だよということで、高圧とか高温に対するところは戦略的にパワーユーザーを選定していると。それから、非常に難しい実験装置があって、それをきちっとユーザーの方に還元したいと。で、なおかつ、そのことがパワーユーザーの方のメリット、いいことにもつながると。まあ、いろんなカテゴリーがあるんだと思います。
【西島委員】
 ここ10年ぐらいをおしなべて見ると、パワーユーザーの方は、最近、公募して、手を挙げてくる方が少ないとか、多いとか、そういうことはあるんですか。満遍なく常に必要な方がそれなりに集まってきている状況なんでしょうか。というのは、インセンティブにも配慮というのが最後にあるんですけれども、インセンティブを与えなきゃいけない状態なのか、その状態の中に十分パワーユーザーがもう集まっている状況なのかというのは?
【熊谷理事】
 現状6人か7人ほどいらっしゃるんですが、最近募集しても入っていなかったような気もしますよね。で、年度によっては6人の方が手を挙げてという場合もありますし、全部の全てのビームラインをパワーユーザーで埋めるわけにもいかないので、ある適切な割合があるんだとは思います。
【福山主査】
 今の点、ポテンシャルユーザーはどういうプロセスで決められる? 決定はどこでどういうふうに?
【熊谷理事】
 先ほどの選定の枠組みの中で、パワーユーザー審査委員会、失礼、15ページを見ていただければと思います。
【福山主査】
 これはかなりいろんな座標軸を考慮して選定するという、かなりいろいろ難しいというか、いろいろな議論が起こるところですか。
【熊谷理事】
 具体的にはちょっと私もこの選定のときにはまだこれに関与していなかったので、何とも言いにくいんですが、皆さんにお配りしている資料の一番後ろの方に、現在のパワーユーザーの方一覧が。
【福山主査】
 ちなみに、この審査委員会、メンバーは何人ですか。
【熊谷理事】
 これは何人ですか。10人ぐらい。10人程度の審査委員の中でやっています。
 参考資料の3のところを見ていただくと、指定期間が2009年から2013年、今年度までということですが、この方々が6名いらっしゃいます。ということは、2009年に募集したときに6名の方が手を挙げた。その後、2010年から14年というところで入舩さんがいらっしゃいますが、その後、現在までのところ、パワーユーザーの方がいらっしゃらない。これはビームラインとしてBL0にB1とかB2、XUという、ある特定のビームラインを少し活性化するという狙いもあるので、埋まってしまっているというふうに理解することもできるとは思いますが。こういう方々に現状はお願いしていると。
【福山主査】
 かなりSPring-8全体のビームラインの使い方からすると、戦略的な要素が随分ある。
【熊谷理事】
 あるとは思いますけど。
【福山主査】
 それをどういうふうにうまくストラテジー立てて、それを実行するか、しているか。
【廣瀬教授】
 東工大の廣瀬ですが、我々、パワーユーザーをさせていただいております。10番の場合は、高圧ビームラインということなんですけれども、我々がパワーユーザーを始める前は、高圧の研究はやっていたんだけれども、高圧と高温、同時に発生するという研究はやっていなかったわけです。そこに我々が呼ばれまして、パワーユーザーとして、高温実験のシステムを入れて、そのことによって、実は今まで10番というのは地球科学の人は誰も使っていなかったんですけれども、高温、高圧というのは地球科学の重要なトピックスなので、今では50%以上のビームタイムが地球科学の高温、高圧の実験に共用されていると。我々は、高温の加熱するところですね、そこを広く一般ユーザーに支援を行っている。ここに書いてある50%というのは、我々は常に50%の時間、そこにいるというわけでは決してないんですけれども、その我々の導入したシステムを使っていただいて、維持管理も含めて50%以上のビームタイムに参画していると、そういうことです。
【西島委員】
 波及効果があったということですか。
【廣瀬教授】
 少なくとも10番に関しては、それまで誰も地球科学の人は使っていなかったわけですから、私が最初に使い始めて、今では半分以上のユーザーは地球科学だということです。
【福山主査】
 そういう意味では、ポテンシャルユーザーという、これ、サクセスストーリー、だから、今日これからお話を伺うということになっていると思うんですけれども。さっきのご発言では、呼ばれて、高温、高圧装置を作ることになったそうですが、誰がお呼びになったんですかね。そこは戦略的な決定があったはずで。
【廣瀬教授】
 非常に具体的に言うと、下村先生。
【福山主査】
 何かコミュニティーでいろいろ相談されて方向性を出されたんですかね。
【廣瀬教授】
 基本的には今まで、それまで地球科学のビームラインは4番だけだったので、それを10番にまで、また別の高圧装置を使って拡大しようという、そういう流れがコミュニティーの中にありまして。私、たまたまアメリカから帰ってきたばっかりだったということもあるんですけれども、それで、それ以来使わせていただいています。
【福山主査】
 想像するに、コミュニティーの何か強い要望があって、まとまった要望があって、それをSPring-8の先ほどの委員会のレベルで受けとめて、決断したという。
【廣瀬教授】
 その辺のところはちょっと僕も、当時若かったので、あまり存じていません。
【福山主査】
 非常に重要なこういう大きな施設の特定のビームライン、特徴あるビームラインをいかにうまく使うかという、これ、戦略的な決断なので、それがうまくいっている例。それがあちこちいろいろ、ビームライン、そういうのが増えれば、それはそれでまたプラスが大きい。
【高尾委員】
 最初は多分指名だったんですよね。途中から公募に変わったんですよね。
【廣瀬教授】
 そうです。
【高尾委員】
 だから、最初は戦略的に指名されて、廣瀬先生とか、何人かの方がされて、2009年に公募に変わって、で、なったので、最初は、だから、多分一本釣りだったんだと思うんです。
【福山主査】
 だから、それはこの委員会の中でいろいろ議論されて、方向性を出されて、それで。
【高尾委員】
 公募にやるところはやっぱりオープンだということになって、そうなったんだと思いますけど。
【福山主査】
 そういうこともあって、廣瀬さんのお話を、次、廣瀬さんになっていますよね。お話を伺いましょう。
【廣瀬教授】
 はい。じゃあ、資料3-1というこの1ペラ、ペラ紙のものをごらんください。
 私、今、話をしたように、10番、ビームライン10番でパワーユーザーをさせていただいております。同時に、ビームライン10番以外のビームラインで、一般ユーザーとしても10番と相補的な実験を同時にさせていただいております。
 そういう観点から、一般ユーザーの視点、それからパワーユーザーに特化したような視点、それから、今、これ、大きな話題だと思いますけれども、SPRUCというものをどうやって活用していくのかというところ、その辺について幾つかコメントさせていただきたいと思っています。
 最初に、これは一般ユーザーとして見ていった場合に、10番ではこういうことはしていないんですけれども、ほかのビームラインで、よくポスドクにユーザー支援をしていただいていると。先ほどユーザー支援の話もありまして、何人いらっしゃるとか、SPring-8でもポスドクが何人いるとか、SERFでは何人いるとか、ポスドク側の支援要員の中に入っていると。実際に夜中はポスドクが支援しているとか、そういう実態があるわけですけれども、これ、僕個人の大学にいる教育者としての観点も含めてですけれども、ポスドクのキャリアパスとしてユーザー支援というのを大きなウエートを占めるような形でポスドクを雇うというのは、これはよくないのではないかと。もちろんいろんな御意見があると思います。SPring-8の非常に細かなところまで理解して、その後のキャリアに生かせる、そういう御意見ももちろんあると思いますけれども、一般論として、そのまま放射光の業界でずっとやっていく人ばかりではないと思いますし、一般論として、ユーザーの支援をポスドクにさせるというのはいかがなものかなというふうに個人的には思っています。
 スタッフとして多くの人を既に抱えられていて、さらなる増員が難しいというのはよく理解しておりますけれども、パワーユーザー制度というのはそれを補うためにあるんだと理解しています。我々のところでも、随時50%のビームタイムに常に誰か人をやっている、もちろん僕が50%そこにいるというわけではありませんけれども、我々はある意味そのためにパワーユーザーをやっているので、できれば、例えばパワーユーザーをもうちょっと拡大するとか、そういう方向も考えていただいて、そのかわりにポスドクのユーザー支援というのは少し控えてはいかがかなと思っています。
 同時に、パワーユーザーが今20%ビームタイムを頂いておりますけれども、これが例えば15%になったら、皆さん手を挙げないかと言われると、多分そういうことはないと僕は思っています。それが1つです。
 2つ目は、そのパワーユーザーの問題ですけれども、我々のところは、ほかのビームラインのことはよくわかりませんが、10番については、私が今までとってきた科研費、それから、大学若しくは海洋機構から出ているお金をかなり10番にはつぎ込んでいます。と同時に、我々が導入した装置の維持管理、そういうものを全部引き受けているわけですね。
 私は全くパワーユーザー制度に文句があるわけではなくて、お互い相補的に非常にうまくやっていると思いますけれども、今後もパワーユーザーとしてお互いいい協力関係でありたいと強く思っています。
 少しせこい話なんですけれども、1つどうかなと思うことは、今年からパワーユーザー経費というのが10万円しかないと。実は去年までは百何十万あったはずなんです。当然我々、持ち込んでいる装置は、僕らは20%ビームタイム使っているわけですけれども、残り30%はほかのユーザーが僕の装置を使っているわけですね。僕はそれに対して一切の見返りを求めていません。今までほかのグループの論文に僕が共著として入ったことは一度もないわけです。
 そういう使い方をしている以上、修理費若しくは維持費、そういったものも全部こちらで持っているわけですけれども、それが10万円に減らされると、それはもちろん大分僕としては直接お財布に響いてくるところなので、10万円のことだけではないんですけれども、パワーユーザーとしての活動自体のものをもうちょっと評価していただいてもいいんじゃないかというふうに、パワーユーザー経費の削減に関しては強くそう思っております。
 それから、新規ユーザーの開拓というところで、新しい人が今なかなか入ってこない状況になっている、若しくは伸び悩んでいるというお話がありました。これに関しては、僕、前々から思っていることは、新規ユーザーとして新しいビームラインに入っていくときに、どのぐらいのことがどのぐらいのペースでできるかというのは非常にわかりにくいところがあります。たとえ人に聞いても、実際やってみると大分違ったりするので、新規ユーザーに限定したお試しタイムみたいな、そういうビームタイムがもしあれば、こちらとしても、恐らくお試しタイムは多分1日とか、そのぐらいもあれば十分だと思うので、逆に言うと、そのぐらいでしたら、パワーユーザーとして支援、フルにサポートすることも十分可能ですし、まずは4日、5日のビームタイムを与える前に、お試しタイムというので試させてもいいんじゃないかと。それに関してはパワーユーザーとしては支援する用意がありますよということです。
 それから、3つ目のSPRUCの問題点として、この組織を一体今後どうやって使っていくのかというのが1つの大きな課題だと思います。私が今感じていることは、必ずしもこのSPRUCの活動自体が活発ではないなと思います。その1つ、まあ、2つ理由があると思うんですけれども、1つは、まずなかなか集まるのが難しい。実際SPRUCの下に幾つか研究会があって、我々のところは毎年1回研究会をやっていますけれども、旅費がほとんどないんですね。そうすると、皆さん、手弁当で例えば北大から来なきゃいけなかったりとかしますので、旅費がもうちょっとあると集まりやすいんじゃないかなと思っています。
 それから、もう一つは、これが一番大事なところだと思うんですけれども、じゃあ、本当にSPRUCで一体何議論するんだといったときに、一番やっぱり気になるのは高度化ですよね。今、10番の高度化というのは、たまたま私も、それからもう一方、東北大の大谷先生も、特別推進を持っていますので、10番の高度化というのは基本的にその2人の特別推進でやっているんですけれども、それはもしかすると、当然特別推進のために高度化している部分がありますので、必ずしもユーザー全体の要望を反映しているということには恐らくならないんだろうと思っています。
 一番SPRUCで皆さんの関心があるのが、とにかく次にどういう実験をしたいのか、どういう実験をできるようにするのか。それには当然お金の問題がつきまとってくるわけですけれども、今のところ、少なくともそういう要望があったときに、一体それをどこに上げるのか。今のところは、各個人、ユーザーの結局は競争的資金に頼らざるを得ないと。何かやりたいことがあるんだったら自分でお金をとってきなさいと、そういうスタンスだと思うんですけれども、そういうスタンスである限り、じゃあ、集まっても意味がないじゃないかということになりかねないのかなと感じています。
 提案としては、例えばSPRUCである程度要望をまとめたものをどこかでちゃんと検討していただいて、評価していただいて、これこれこういう理由で難しいとか、若しくは、このぐらいの金額であれば、こういう方向で支援することができそうですよとか、そういうSPRUCで検討したことを上に上げる。本当は文科省に直接上げてもいいんじゃないかと僕は思いますけれども、まずは、例えば理研とかJASRIとか、そういうところと、ちゃんと要望書を上げて、ちゃんと検討していただいて、評価していただいて、その回答をちゃんと頂くと、そういう仕組みが必要なのではないかと思っています。
 それから、あと、高度化ということに関しては、とにかくSPRUCと一体で議論を進めていくということが必ず必要だろうなと考えています。
 長くなりましたけれども、以上です。
【福山主査】
 どうもありがとうございました。いろいろ問題点、御指摘がございました。いかがでしょうか。
【南波委員】
 新規のユーザーの部分に関連して、実は先ほどの熊谷さんの御説明にも関連するんですけれども、熊谷さんの資料を見ますと、新規ユーザーの部分のところが利用者の3分の1近くに実はなっているんですね。だから、一千何百人かが毎年新規として入っているのかなと。これに対する判断、先ほどの廣瀬先生がおっしゃったように、新規ユーザーが来るんだけれども、定着しないという問題なのか、それとも、これはひょっとして学生さんか何かで、短期間に1年だけ来て、次はその人自身がいなくなっているような類いのものなのか、ちょっとこの中身の議論にもなってしまうと思うんですけれども、ここを教えていただけますか。
【熊谷理事】
 そのことの1つの資料として、参考資料の5ページと6ページを見ていただきたいんですが、ほう芽的研究支援というのをやっているんですが、そのときに、その人たちが実施した年度から1年ごとにSPring-8に来ているのか、来ていないのかというのを追跡したものが6というところです。これを見ると、だんだんだんだん来る回数が減っていってしまって、リピート率というので見ると、大体3割ちょっとしか残っていない。このほう芽的研究というのは、どちらかというと、放射光にかなり直接的に密接に関係しているような人をピックアップしているので、普通の人だと、これよりもっと少ないんじゃないかなという感じがします。
 じゃあ、この残っている人たちがどういうところに就職しているか、そうなっているかというものを見たのが5です。これは全部を今分析するのは、追っかけることは大変難しいので、ちょうど2012年から5年前、ポスドクが終わって、ほとんどどこかの定職についているだろうと思われる2007年の46名をピックアップして、使った人の追跡をしたものです。大学の教員で残っている人が19名、研究員として、企業も含めて研究員、国研も含めて13名、それから、医師、出版、特許庁というのが4人、ポスドクがまだ7人。不明は、追跡しきれなかったところが5名いらっしゃるということで、これを見ると、ほう芽的研究支援で46名中のかなりの部分がこの放射光界わいに就職しているんですが、その人たちでも多分そんなにはリピート率は高くないと。たまたまなのかもしれないです、これは、わからないんですが。
 ですから、普通の人の、1,700人のうち、大学院の学生の、千何百人の6割は大学院の学生だと、関係のあれだといっても、この数字を見ると、既存の自然に減衰していく、減少していく部分を単に補っているぐらいでバランスをとっているという可能性の方が高いかなとは思っています。これからこれをどうしたらいいのかというのは少し悩ましいところだとは思うんですが、先ほど廣瀬さんの方で、私もそう思うんですが、新規ユーザーが面白いと、この分野は面白いと思わせるようなことが必要なのかなと。ですから、お試しバージョンで、はまり込んだらそこにずっとというような人を増やしていくというのが必要かなとは思いますし、逆に、こういうところで研究活動をした人が別の分野で活躍している可能性も高いわけで、何とも言い難いとは思います。
【福山主査】
 よろしいですか。事実としてそうだということ。
【西島委員】
 廣瀬先生のお話を聞いて、私も先ほどパワーユーザーのことを質問して、特にパワーユーザーの視点から見たら、大変これはもっともだと思います。やっぱりパワーユーザーが、広く公募してJASRIが指定しているというのであるならば、先ほどの経費の問題も含めて、それをちょっと戦略的に考える必要があると思うんです。
 ただ、一方において、廣瀬先生は大変パワーユーザーの中でも優等生だと思うんですけれども、そのパワーユーザーの選考システムの透明化とか、公正化とか、それから、選んだシステムが戦略的に行われて、十分に波及化が望めるであろうとか、そういうことがあるし、もちろん評価として定量的に波及化をどれぐらいやったというような形の評価というものをきっちりするということを整備し直して、パワーユーザーの維持管理とか何とかに厚く手当もするという、両方行われていくべきなのかなと思ったので、整理するいい機会なんじゃないかなと思ってお話を聞きました。大変よかったと思います。
【福山主査】
 ほかにいかがでしょうか。その問題はまた後で総合的な議論を是非したいと思います。続いてお話を伺いましょう。製薬協の森さん。
【森委員】
 森でございます。製薬協の方から来ておりますので、私自身、ユーザーではないんですけれども、製薬業界の方での利用に関して少しいろいろ聞いてまいりましたので、御紹介申し上げたいと思います。
 ということで、私自身、ちょっと認識違いだとか補足等々もあるかもしれませんけれども、ちょうど横に西島さんがいらっしゃって、同じ業界におられますので、また場合によったら補足をお願いしたいなと思います。
 歴史的な流れがあって、私以上に御存じの方の方が多いのかもしれませんけれども、SPring-8の利用、共用開始当時から、製薬業界でももちろんたんぱく質の構造解析をしたいというようなニーズはあったわけであります。
 そのときの認識としましては、課題申請をして、審査を通過しなければ利用できない。ということで、当時、アカデミアの先生方、成果の公表を前提とする形で、同じ土俵で審査されるんじゃないのかというようなことを多分思っていたんだろうと思うんですね。それで、ニーズはあったわけですけれども、成果の全てを公表することを前提としていない製薬会社としては、なかなか審査に応募するのにかなり高いハードルを意識していたんじゃないかなと思います。言葉で書きますと非常に大層な感じがするんですけれども、実際には、社内でこういうことをSPring-8に行ってやりたいんですよという話をする、ないしは書面で社内に出す。それを審査応募しますので、このぐらいの情報出していいですかということになると、「それ全部出さないとできないの?」みたいなことを上司がぽっと言うと、なかなか担当の研究員がやりにくい。そのぐらいの意味だと御理解いただいたからいいと思うんですけれども、そんなような状況だったのかなと思います。
 それで、そういうところで、各社そうだったのかなと思うんですけれども、コンソーシアムを作って、そういう原則に縛られない、専用ビームラインを作って運用していけば比較的自由に業界の希望に応じた形でできるんじゃないかということで、2001年になりますかね、日本製薬工業協会、製薬協で「蛋白質構造解析コンソーシアム」という名称で、タンパクコンソと呼んでいますけれども、を発足させていただいたということです。
 当初22社で始めましたということですけれども、その後、業界で結構合併があったり、その他多少の出入りもあったようで、一応10年間させていただいて、12年3月の時点で参加企業が19社という感じでありました。
 それで、JASRIさん、それから、理研播磨研究所さんの御支援のもと、ビームラインを設置、保有して、その後いろいろ、ハード、ソフト面の高度化を図ってきたと聞いているわけですけれども、当初目的であったたんぱく質の構造解析のみならず、その後低分子の結晶構造解析、それから医薬品、原薬の結晶多型の研究、粉末のX線構造解析、そういうニーズがすごく高まってきたということもありまして、それらの目的でアタッチメントの工夫をしていただいて、錠剤そのものの中の測定ができるとか、それ以外、いろんな低分子結晶の測定に関しても、幾つかのアタッチメントが装置開発等されて高度化が図られてきたと伺っています。
 2012年、設置終了という表現されていたと思うんですけれども、10年が終わる段階で、今後どんなふうにしようかなという議論が出てきたんですけれども、その当時少し専用ビームラインを持っていて、一番当初のたんぱく質の構造解析だけじゃなくて、いろんなニーズが業界の中でも出てきたということで、1つのビームラインだけで対応するというのが少し不自由を感じているような部分もあったように聞いています。
 その辺を何とか改善できないかというんですけれども、当初22社、最後でも19社というので、それぞれの要望、各社の状況というのもかなり違いますし、そういうことで、その後どうするかという議論が2011年ですかね、終了の1年前ぐらいから議論されまして、で、後継の組織として創薬産業構造解析コンソーシアムという形で、コンソーシアムは続けていくという形。で、専用ビームラインの方は自分たちで維持しない形でやりたいということで、前のタンパクコンソの参加企業及び製薬協の会員企業に呼びかけまして、現在16社で、創薬コンソですかね、の締結がされて、現在もお世話になっているという感じだろうと思います。
 現在、その代表幹事、アステラス製薬の深川正夫さんがされていまして、JASRIさんの利用の規則にのっとってやっていますし、SAIさんが事務的なことをやってくださるという形で、利用のサポートをしていただくという形で運営されているということです。
 それで、現在のところ、たんぱく質構造解析、それから粉末X線の構造解析、低分子の結晶構造解析、結構様々なニーズがあるんですけれども、弊社のユーザーに聞きましても、それから、その他のところも少し聞いておりますけれども、大体うまくスムーズに利用できる状態にしていただいているということで、前のタンパクコンソの後期にあった不満というのもかなり解消されているんじゃないかな、うまく運営されているんじゃないかなと理解しております。
 私、ちょっと前回欠席させていただいたので、直接伺ってはいないですけれども、議事録を拝見したり、1回目のときも大分話は出てきていますけれども、利用状況とか、それから使用実績を何ではかるかというのは、今日の議論でも出てきますけれども、非常に難しいかなという気はしております。
 課題数なんかは、先ほども熊谷先生が出されたデータを見ていますと、産業界の方は、微増、ほとんど変わっていないという感じに見えるんですけれども、課題の出し方というのが、一番最初の課題申請して審査されるときもそうだったわけですけれども、どんな形で出すのかというところにもかなりよってくるんじゃないかなという気がいたします。例えば医薬品全体の構造解析というぐらいのテーマで出してしまうと何でもありで、そのテーマだけでいろんなことができてしまうという部分もあるでしょうし、それから、例えばターゲットたんぱくの構造解析をしたいというようなテーマで出したときに、じゃあ、それをもうちょっとどこまで出すのか、こういう病態のこういう病気に対するターゲットになるものだというところまで書かないといかんのか、そうでないのかというような出し方にもよると思いますので、課題数だけで見ていってもなかなか難しいんじゃないかなという気はしております。
 それから、あと、ビームの実際の利用時間ですね、ビームタイムで見ていくというのが1つの方法なんだろうかなと思うので、そういう話も少し社内でしてみますと、当時、例えば2000年の中ごろだと夜中までかかってやっていたことが、やっぱり装置そのものの性能も上がってきている、高度化されてきているということで、結構早い時間でとれる。同じ時間やれば、今までよりもデータはたくさんとれていますよという声も出てきていますので、必ずしもビームタイムだけでも判断しづらいのかなということで、前回、前々回の議論の中でも、産業利用がどうだというところで、少し停滞気味なのかなという声もあったかと思うんですけれども、なかなかそういうものでもないのかなと。聞かせていただく中では、こういう分子の構造解析に関しては、結構業界ではそこそこ進んでいっている、効率よく進んでいっているんじゃないかなと思っております。
 それで、あと、それ以外の使い方ということになるかなと思うんですけれども、SPring-8から利用された報告なんかを伺っていますと、結構バイオイメージング、例えば通常のX線のCTではなかなかナノ組織の微小構造なんかは見にくいわけでしょうけれども、例えばマウスの、小さな動物の血管造影ができたとか、そのような報告も出てきておるようでありますので、そういうバイオイメージングにかかわるところというのは今後我々の業界でも期待されるところじゃないかなと思っています。製薬会社が積極的にやっているところはそれほど多くないかもしれませんけれども、製薬会社の中でも、結構前臨床試験の中では、遺伝子改変マウスを利用するということも増えてきています。どうしてもやっぱり動物が小さいものなので、なかなかどういうものをもって評価していけばよいのかというところなんかは結構悩んでいるところがあると思います。そういう意味では、こういうSPring-8を利用したバイオイメージングというのも1つ、今後もっと産業界にも利用できるような形に技術開発、技術を進歩させていただきますと、非常に有り難いのかなというふうに私自身は考えております。
 大体そのようなぐらいで、製薬業界から。
【福山主査】
 ありがとうございました。タンパクの構造解析についてです。いかがでしょうか。
【南波委員】
 通常だと共用ビームラインでやって非常にいいから、じゃあ、自分の自前のビームラインが欲しいといって専用ビームラインに行くというような流れもあるのかなと思ったんですが、今回のはある意味でその逆のパターン。で、今のお話を伺ってなるほどと思ったのは、共用ビームラインも含めて、多様なビームラインが利用できるので、こういう形にできるんだと。
 それで1つお伺いしたいんですが、このタンパクコンソの使用のビームラインの参考資料のところにあるんですが、BL32のライン以外のビームラインを使っていくときの使い方なんですが、これは成果専有といいますか、成果非公開の課題としてこちら側の方を使っているような位置づけになってくるんでしょうか。
【森委員】
 ちょっと私、その分析のデータを今持ち合わせていないんですけれども。
【熊谷理事】
 産業界の使っている課題数の半分近くが今は成果専有になっています。ので、その中で多分医薬関係は結構大きいかなと思います。
【西島委員】
 9割ぐらい。
【熊谷理事】
 ええ。
【森委員】
 全体、32以外のところでという分け方ではないんですけれども、最後の図、これを見ていただきますと、専有と非専有の割合が入っていますけれども、ほとんどの部分が成果専有で使わせてもらっている。これはもちろん32も含めてのデータになりますけれども。
【南波委員】
 そうすると、ある意味で、かなり技術として汎用化されているものであれば、共用ビームラインのところで今までの専用ビームラインのやっていた役割を担っていけるという、そういうことになってくるということですか?
【熊谷理事】
 ただ、成果専有で利用されるというのは産業活動としては非常にいいことなんだとは思うんですが、やっぱりそれがあまりにも割合が大きくなると、この一般利用の方を圧迫するので、今は全体のビームラインの20%程度だったか、ある一定の割合がかかっている。ですので、今後、例えば製薬会社の成果専有が増えたときに、じゃあ、駄目よと言うのか、いやいや、もうちょっとそれは何か仕組みを変えたらいいんじゃないのという議論は必要だとは思います。今後だと思いますけれども。
【福山主査】
 まだその議論が必要な段階にはなっていない?
【熊谷理事】
 なっていないとは思いますが。
【福山主査】
 ほかに何か。確かに専用ビームラインから出発して、共用の方にと。はい、わかりました。
【雨宮委員】
 質の高いサポートによるスムーズな利用も両立するとのことですが、共用ビームラインを利用した方がサポートを得られるという意味だと思いますが、誰がサポートしているのですか。特に成果専有課題を共用ビームラインでやる場合は。
【福山主査】
 共用でやる場合、ここはどうなっているんですかね。
【石川センター長】
 今、特にこのたんぱくに関してはロボット化が非常に進んでいまして、大体の場合には、ロボット、サンプルを用意しておくとロボットがやってくれるような形になりつつあります。先ほどの専用ビームラインから共用ビームラインというところも、多分、最初お選びになったのは、ベンディングのビームラインでお作りになって、その後、アンジュレーターのたんぱくのビームラインというのは、共用、理研、いろいろ出てきて、そうすると、データの算出量が圧倒的に違うということがございまして、これはベンディングで頑張っているよりは、アンジュレーターをお使いになった方がいいという御判断をなされたんだというふうに理解しています。
 ですから、サポートのお答えは、誰がというよりも、技術革新によって人のサポートが少ない分野にたんぱく構造解析がなっているということが非常に大きい。
 もう一つは、専用から共用に行った。まあ、共用だけでなくて、ターゲットたんぱくの32番も多分使われていると思うんですが、それはベンディングソースからアンジュレーターソースという、ずっと明るいものがよそで使えるからという要因が大きいという、一般的な方向とはまたちょっと違うと思うんですが、そういう流れになっています。
【福山主査】
 技術がどんどん進んできていると。面白い経過ですね。よろしいでしょうか。また後でまとめて議論する時間もありますので。
 最後、そうしたら、SPRUCの視点からお話。
【雨宮委員】
 それでは、資料の3-3についてお話し申し上げます。
 2枚目のところにSPRUCの組織図がありますが、SPRUCというのは、SPring-8ユーザーコミュニティーの略です。2枚目、3枚目をセットにして説明します。
 このグリーンのところがSPRUCの会員、SPring-8を利用する全ユーザーで、今、1万名から1万2,000名という規模です。
 このSPRUCができたのは昨年の4月で、ちょうど1年たつわけですけれども、それまではSPring-8利用者懇談会というのがありました。3枚目にその改編の要点が書いてありますが、SPring-8利用者懇談会はSPring-8が1997年にできる前からありまして、主に建設時の有志という者が集まって結成していたわけですが、定常利用が進んで、SPring-8利用者懇談会の会員を募って、活性化し続けたにもかかわらず、1,200名という会員数に飽和していたと。これは必ずしも会員にならなくてもSPring-8が順調に使えるということのあらわれでもあったんですが、SPring-8を実際に利用している頭数が1万から1万2,000クラスと考えたときに、そのかい離というものが非常に大きな問題になってきたわけです。それが改編の要点の1番目です。
 それから、ミッションについては、SPring-8利用者懇談会は会員個々人の研究活動であったものを、そういうものではやはり限界があるということで、SPring-8の利用、有効な利活用動向調査のための会員間の情報交換と、1つミッションをきっちり持ったコミュニティーにするということにしました。
 それから、運営ですけれども、上の図に戻っていただくと、グリーンのところの組織というのは、会長、評議員、幹事という執行部のもとに、各種委員会、といっても、具体的には、研究会があって、それぞれの研究会でボトムアップ的な議論をなして、各学会、協会とのいろんな意見、情報交換をしていたわけです。
 それに対して、ここでは、SPRUCでは、代表機関というのを作りまして、その中の代表を集めて、代表機関会議というものを作りました。すなわち、ユーザー数が1万人規模になると。これは会費をとっていません。会費をとっていないので、帰属意識というものができにくい組織なのですから、かなり組織を維持するための骨みたいなものをきっちりと入れる必要があるということで、代表機関会議というものを作りました。代表機関というのは、多くのユーザーが所属する機関で、そこに書いてある、主な国立大学、研究所、それからビームラインを所有する組織からなります。そして、運営としては、研究会を中心とするボトムアップ的な運営だけではなくて、代表機関会議によるトップダウン的なこともバランスさせて、その2つがバランスするセルフマネジメントができるような組織へ、ということを目指して立ち上げています。
 課題として、立ち上げたはいいんですが、活動資金をどう確保するかということがすごく大きな課題です。昨年度は、利用動向を調査するといったところで、その代価として100万円弱の予算を確保してやっていますが、今後、持続的に活動するという意味では大きな検討事項になっています。この点は、後ほど改めて説明します。
 次ですが、3ページ目の一番下のところにありますように、組織改編の効果としては、多様化するユーザー、新規ユーザーの利用動向を常に把握して、サイレントマジョリティーの声を的確に活動にフィードバックする仕組みが可能になるということ。
 それから、利用制度・組織の壁、利用分野の壁を取り払ったコミュニティーの融合を加速することができるということが効果として我々が期待しているところです。
 次、4枚目に行きます。具体的に昨年度どういうことを行ったかということを簡単に申し上げると、SPring-8シンポジウム2012というのを開きました。SPring-8シンポジウムはしばらく開かれていなかったんですが、SPRUCができたと同時に開始しました。そこでは、新しいYoung Scientist Awardを作って表彰するというとか、バネルディスカッションで「放射光科学のグランドデザインとSPRUCの果たすべき役割」と、こういう視点で議論するというパネル討論を持ちました。
 次、下には、SPring-8利用動向調査報告書というのを1年かけて、各研究会で集まってきた意見をまとめて、現在のSPring-8に対する要望、将来計画に対する要望をまとめています。
 次のページに行きまして、今年度は第2回のSPring-8シンポジウム2013というのを京都大学で行うことを考えています。昨年は阪大、今年は京大で行いまして、来年は東大の予定ですが、2ページ目にある代表機関に毎年ホストになってもらってやろうという形で進めています。
 ここまでは既存の取組ですが、実はまだ1年間やってきて、シンポジウムを開催し、動向調査報告をまとめ、そしてSPRUCの組織を整えているとはいえ、いろいろまだまだこれからアクションしなきゃならないことが多いわけです。そこで、企画委員会&作業部会(ワーキンググループ)の設置ということをこの4月から行っています。
 具体的にどういうことかといいますと、その下の図にありますように、新たにSPRUCの中に企画委員会というものを作りまして、その企画委員会の中に随時検討すべき項目ごとのワーキンググループ、作業部会を時限付きで作っていくと。
 具体的にどういうものがあるか、これから説明しますが、先ほど廣瀬先生の方から、各研究会でいろんなことを議論して、それがどういうふうな形でSPring-8側に伝わるか、若しくは行政側に伝わるかということのメカニズムというようなことも御指摘ありましたけれども、大型整備のこととか、高度化のこととか、こういう企画委員会というものを受皿にして、各研究会で議論されたことを取りまとめるという仕組みもこの中に入れることになります。
 具体的に企画委員会の中に設けられるワーキンググループ、作業部会としてどういうことが進行しているか、また進行しようとしているかということについては、次のページで、作業部会「放射光科学将来ビジョン」というものがありまして、この目的は、日本の放射光科学/施設のグランドデザインとSPring-8の将来計画の位置づけについて議論して、SPRUCとしての意見集約を行うと。SPring-8の将来計画、SPring-8Ⅱというものを議論する上で、それをオールジャパンの視点、グランドデザインとの視点で考えるべきであろうという観点で、SPRUCとして意見集約を行っています。これについてはかなり議論ができていまして、別の機会に報告する機会があれば御紹介したいと思います。
 下のページに行きまして、今これから立ち上げよう、今年度に開催しようとしている作業部会なんですが、「研究会組織検討」作業部会です。このSPRUCにおいて研究会というのは活動の足腰になるわけで、そこをいかに活性化するということが非常に重要なわけです。活性化して、施設の高度化の意見集約を行う仕組み、それから、ビームラインの様々な問題点、また、スクラップ・アンド・ビルドに必要なユーザーの意見というものをきっちりと集約するための仕掛けがこの研究会活動として非常に重要だということなので、こういう分野ごと、それからビームラインごとのこのマトリックス的なものを作りながら、研究会の所期の目的を果たせるような仕組みづくりということを今考えようということで作業部会を立ち上げているところです。
 次のページに行きまして、次は、もう一つの作業部会は、「大学院連合検討」作業部会ということで、基本的には人材育成をいかにするかということですが、SPring-8という場は、若手、また大学院生を教育する、非常に必要なものがそろっている環境にあるわけです。今まで各それぞれの大学院の教育プログラムで行われてきたカリキュラムをうまく連携させながらカリキュラムを作ること、そして、更にオン・ザ・リサーチ・トレーニング、そういう実地も含めた教育活動ができる仕組みというものを考えていこうということで、こういう作業部会を考えています。
 下に「大学院連合」を実現するための検討課題というものがありまして、いろいろな問題、ハードルを越えなきゃならない問題がたくさんありますけれども、このようなことを検討していこうと考えているところです。
 その次のページに行きまして、めくっていただきまして、「ビームタイム活用検討」に関する作業部会です。先ほど熊谷さんの話から12条課題というものがありましたけれども、JASRIのスタッフが、高度化のために、将来計画のためにいろいろ技術開発を行うわけですが、これまでは文科省へ報告するということは義務づけられているわけですが、必ずしもユーザーへ、コミュニティーへフィードバックさせる仕組みというのが十分であったと言えないところもあると。そういうことも含めて、ビームタイムの活用を最適化する上でどういうことを考えなければならないか、ということを検討する作業部会を考えようとしているところです。
 このようにSPRUCとしてやるべきことというのは随分あるわけですが、このようなことを今年度は進めていきたいと考えています。
 最後に、施設概要への要望ということですが、ユーザーへの情報開示と意見交換ということで、スクラップ・アンド・ビルドや将来計画について、JASRI、それから理研と定期協議を行う場が必要であろうと。
 そして、そのことを通して、SPring-8の運営、また外部評価に関しても、SPRUCが情報交換をなし、それに関与していくというようなSPRUCを目指しています。
 そして、課題選定に関しても、SPRUCがユーザーコミュニティーの代表として参加するということが必要だと考えています。
 一番下に、もう一度書きましたが、ユーザーコミュニティーの継続的な発展のためには、どうやって資金を確保するかということが非常に大きな問題で、これは3枚目、2枚目の頭に戻りますが、今までの制度的なボトルネックをいかに解決するかということだと思っています。ユーザーコミュニティーということで、コミュニティーというのは、ある意味で法律的に考えれば、法人でもなければ、個人でもないので、どういうように予算を確保するかといことが非常に難しいという、組織的、制度的なボトルネックがあるかと思います。かといって、これを会員制にした場合には、これは全ユーザーが入って会員制度をとるということは不可能であるということは利用懇で実証済みなので、会費をとらずに全ユーザーを組織化するコミュニティーをどうやってコーディネートして、コミュニティーとして果たすべき役割を果たすような仕掛けを作っていくかということが重要だと考えています。
 具体的には、施設と対峙して執行するミッションを行って、その対価としての資金を得るということになるのかと思いますが、これを具体的にどうやっていくか、ということが非常に大きな問題と考えています。
 長くなりましたけれども、以上です。
【福山主査】
 大変ありがとうございます。SPRUC、これの非常にシステマティックな、かつ戦略的な活動状況、活動目標設定、御紹介ありました。いかがでしょうか。
【西島委員】
 SPring-8は多分非常に利用者の数も多いし、ある意味では成熟している部分だと思います。実は私、J-PARCの利用者懇談会とNMR利用者懇談会、両方立ち上げたんですが、私は会費をとるという形で続けています。その理由は、例えば会員数が1,200人から1万2,000人に増えたときに、会員数は増えているけれども、自動的に入っているということで、自分が会員になったという意識で何かをやっていこうという参加意識が非常に薄れるのは困ります。たとえば、J-PARCとNMRの場合、無料で自動的に全員が会員になると、総会等を開催した時、ほとんど誰も総会には出ない。しかし、会費2,000円でもとっていると、2,000円がどういうふうに使われたか気になるので、非常に細かいことに対しての質問も出るということで、そういう部分もあるということで、当面、立ち上げた幹事メンバーとしては、J-PARCとNMRについては会費をとるという形を考えています。
 これは1つの試みだと思うんですが、大きな作業部会になると、1万2,000人の中の誰がやるかというと、1,200人から1万2,000人に増えたんだけれども、実は1万2,000人の会員の中で参加意識を持ってやっているのは1,200人のときよりも少なくなってしまって、ごく一部の代表機関の同じメンバーが頑張っていて、あとはみんな、まあ、お金は払ってないんだから、やってくれと、任せますよというようなことにならないかということを私はいつも危惧しているんですけれども、その点はどうなんでしょうか。
【雨宮委員】
 そういう点は可能性としてはあると思います。しかし、実質的に関心を持って参加する人数が1,200人程度であるとしても、その一人一人が自分の背後にはその10倍、若しくは20倍のユーザーがいるという意識を持って活動するのか、それとも、単に個人として学会に参加し、自分の研究だけを考える意識で参加するのか、その辺の会員の意識が変わってくると思います。
 また、会員がそういう意識改革ができるSPRUCをいかに組織化するかということが重要だと私は考えております。
【西島委員】
 私はこれを高く実は評価しているんですよ。つまり、SPring-8だからこそ、会員数を増やせると。やがてJ-PARCとNMRの方も、これと同じように無料にしていきたいと思うので、これがいい形になって続くこと、御成功を祈っているというのが本音なんですよ。
 でも、実際問題、難しい部分があるんだろうなと思って、作業部会とか何とかというと、結構大きな金額が必要ですよね。だから、施設側の、さっきお金の問題も、資金獲得を目指すと一言書くのは簡単ですけれども、これはなかなか難しいですよね。この懇談会の位置づけというのは、要するに任意で集まった団体ですよね。それが資金獲得を目指して動かしているのが、実際には代表機関の中のごく一部の人が兼務してやっているとなると、これは逆に言うと、ある意味ではなかなか施設側も出しにくいとか、国側も支援しにくいというので、その一体感というのをどうするかというのが課題だなと思って、いろいろまた勉強させてもらおうと思います。
【雨宮委員】
 ここで皆様に是非お知恵を拝借したいということがあるわけです。こういう仕組みが必要なことはわかっているのだけれども、前例のない仕組みなわけです。最初申し上げたように、法人とか、個人に対しては予算をつける仕組みがありますが、コミュニティーに予算をつける仕組みがあるのかどうかですね。じゃあ、コミュニティーというのは要らないのかというと、そんなことはないわけです。今までとは違った予算をとる仕組みが必要だと考えております。
【福山主査】
 山縣さん。
【山縣委員】
 1つは、1万2,000人のときに、一度役員を選んでくださいとかというのも来ましたよね。それに対して答えられた人は、以前の1,200人のときと今とではどうなのかということと、あと、資金獲得を目指すということで、先ほど言われた、動向調査をされて100万円確保したと。これはJASRIかどこかが100万円を出してくださったんでしょうか。
【雨宮委員】
 最初の御質問に関しては、いろいろな意見を出す実質の頭数というのは、増えていません。しかし、選出される人の顔ぶれが大きく変わりました。
 昨年度どこから予算をもらったかに関しては、JASRIからです。JASRIの業務の一部をSPRUCが下請するという形でやった代価です。
【福山主査】
 いかがでしょうか。今の問題にちょっと突っ込んでよろしいでしょうかね。まず、SPRUCのアクティビティー、発足から1年、ともかく狙い、ターゲットをきちっとさせて、すぐには実現できないかもしれないけど、その方向性に関して随分いろいろ具体的にアクションターゲットも決められて、ワーキングして、作られて、それぞれ実現に向けて動いている。そういう点、非常に印象的に思いますし、そういう方向、これからますます周囲のサポートが展開されることを期待したいと思うんですけれども、非常に大事なことなので。その際に、ユーザーコミュニティーということでSPRUCがまとまった。今日のプレゼンテーションの最後、施設側への要望というところ、共用ビームライン、専用ビームライン、それからJASRIのビームライン、全部を対象として、そこを使っているユーザーという位置づけになっている。一方で、施設は、それを受けとめる側は、法人としては別の2つがある。理研とJASRI。これは違う組織。で、この施設側へとこういう要望書を出したときに、それをコミュニティーの方はSPRUCとして一体化しているけど、受けとめる方はどこまで一体的な意識を持っているか、持てているか。実は、そのことは、今日、先ほど廣瀬さんからSPRUCへの要望等々があって、そういうことと関連して、JASRIの熊谷さんの説明資料、15ページ、この組織で、選定委員会、SPring-8の選定委員会があって、その下に専用ビームライン、それからポテンシャルユーザー、それから利用研究課題、これは共用ビームだけなんでしょうね。つまり、SPring-8として見たときに、この選定委員会は、JASRI、理研が全体として一体として対応、向き合っている仕組みになっているかどうか。ユーザーの方は一本化されてきている、SPRUCで。明確に言っておられる。共用ビームライン、専用ビームライン、それからJASRI、SPring-8全てのビームラインが対象になっている、SPRUCでは。一方、施設、メッセージを発する相手側の施設の方は2つですよね。その2つが施設として一体的に対応できるような仕組みがあるかどうか、そこはどうなっているか。
 実はこのことは、前回のサイエンスの発表のときに既に問題になったことで、SPring-8の成果は何かと問われたときに、外から問う人は、それが専用ビームラインか、共用かなんて関係ないですよね。SPring-8として世界に誇る成果は何かと絶えず聞く、聞いているはず。それを答えるときに、共用ビームラインだから、専用ビームラインだからという答え方は元来してはいけないはず。その問題とこれはつながっているんじゃないかと。先ほどの廣瀬さんの話、それから、基本的には、雨宮さんの今の、ずっとワーキンググループを作ってまでいろいろ進めておられたこと、それから最後の施設側の要望という、これ、対応しているように、伺っていて思った。コミュニティーは時間をかけて見事にここまで来ていると、ユーザーの方は。それに応える理研とJASRIの施設設置者、それから登録機関の一体的な活動パターン、それは仕組みとして何があるんでしょうかね。
【石川センター長】
 よろしいでしょうか。そこは非常に大切なところで、ただ、今日お話あったユーザーのお話も、あと利用のお話も、放射光として現在考えられているものの中で、その範囲の中でどう利用を拡大していくか。そのユーザーたち、今いるユーザーをどう組織化するかというところが今日のお話だったと思います。
 確実に抜け落ちているのは、サイエンスがどんどん変わっていく。どんどん新しいものかできてきて、新しいものが入っていくところをどうするか。もちろん、言い方としては、縮んでいくサイエンスもある。新しいものが入ってきて、縮んでいくサイエンスがある。その循環の仕組みをどうするかというところは、今日はあまり議論されなくて、今あるものの中でどうしていくかというところが議論されていたんだと思います。これはいつも、共用法自体の仕組みがそうなっているので、仕方がないところがあって、共用法というのは、でき上がったものをどう使っていただくかというところが主眼ですから、そこは仕方がないところがあるんですが、だけれども、サイエンス全体を考えると、そこまで含んでちゃんと考えておかなければいけなくて、それはJASRI、理研でこれからちゃんと作っていかなければいけない。残念ながら、今、それができているかと言えば、できていないところだと思っています。
【福山主査】
 恐らく前回からずっとここを議論してきて、そういうことがだんだんはっきりしてきて、これはこの評価部会の一番大きなテーマ、根底にあることの1つだろうと。つまり、石川さんの言うように、サイエンス、結局SPring-8もサイエンスのファシリティーなので、それを使って何ぼ、どういうサイエンスができて何ぼ、なので、その中身がどうのこうのというのは、もちろん当事者、内部では工夫しなきゃいけないけれども、社会に説明するときに、そんな違いはいらない。使えない。
 そのときに、サイエンスの活動をするという観点から、一体的な協力体制、それがまず施設としてきちっとそういう連携、仕組みがないといけない。残念ながら、共用法で設置者と登録機関と別の組織になっている。これはしようがない。だけど、それがそうだからといって、いつまでもばらばらにやっているわけにはいかない。サイエンスのためにはそれをやっちゃいけない。それを克服するのにどうするか。
 端的な例が、私は何年か前、JASRIの方に随分いろいろ対応したことがありますが、外部評価、国際外部評価、非常に印象的な経験をしました。JIACというのをやりました。これはJASRI側なんですね。つくづく思いました。同じSPring-8なのにJASRIの視点からしか外部評価、国際化の評価ができない。これは国際的に通用しない。理研が専用ビームライン、それが一応議論の対象になるんですけれども、本当に一体的なSPring-8、マシーン全体としての評価とやっぱり違ってきている。
 ですけど、具体的に、これからはSPring-8の国際外部評価を受けるときには、一体で受けなきゃいけない。そのためには、理研とJASRIがどういう研究の上での一体活動できるような仕組みを作るかどうか。で、一緒になって、国際的に成果を報告する。
 実はSPRUCは、私は今日の説明を伺っていて、1年前からの様子を伺って、ユーザーとしてはそういう方向でSPring-8全体を見ている。確かに明記してあります。確かにそれは当然。施設の方でやはりそれに対応した仕組みづくり。これはお金の問題じゃなくて、ちょっとした工夫すればいいだけじゃないかと。組織なんて新たに作るような、そんな話じゃない。サイエンスがちゃんと進む、いいプログラムをピックアップして、それを実施して、外に伝える、その仕組みですね。一体として。これが確かに今までのをずっと見ていて、そこの視点がほとんどないんじゃないかと。
 繰り返しますけれども、ユーザーの方はその問題点を克服しようとしてSPRUCとして今日御説明があった。恐らくワーキンググループうんぬんというところ、それから、要望事項うんぬんのところを拝見すると、そういうことをおっしゃっている背景には、先ほど熊谷さんの方から御説明があったSPring-8の選定委員会、これとの関係、そのほかに幾つか委員会がある。そこで例えば将来のビームラインをどうするかとか等々も議論され、そういうところとコミュニティーがどう向き合うか、連携がとれるか。きちっとした議論されて、今がいい、それがピックアップされる。それが当事者、施設とコミュニケーションされる。雨宮さんがいろいろ今日言っておられるのはそういう方向かなと思ったんですけれども、どうでしょうかね。
【雨宮委員】
 私はSPring-8側という感じを、ここの最初の絵も、2枚目の絵も、SPring-8ということで、私はそこが理研だとかJASRIだとかというストラクチャーは意識してないんです。
【福山主査】
 ないですよね。それが先ほど確認したんですけれども、最後の紙の施設への要望というときに、全部を含めて対象にしていますよね。
【雨宮委員】
 ええ。
【福山主査】
 だから、ユーザーはそういうスタンス。施設がそれをどう受けとめて、それを日常的な業務のところで、それで、更にそれの向かっている先は、サイエンティフィックなアクティビティー、いいテーマはいいテーマでピックアップする。で、それを広報する。そのとき、確かに理研とJASRIは組織が違うから、違うのは違う。これはしようがない。だけど、そこを、法律の許される範囲でとことん実質的に連携して、サイエンティフィックなオーガナイゼーションとしては一体的に動く。結局SPRUCで希望しているのはそういうことじゃないかなと想像したんですけれども、違うんですか、雨宮さん。
【雨宮委員】
 そこを期待しているということよりも、具体的にここで申し上げていることを要望している、ということですね。特にそこで一体化を希望しているというニュアンスだと、ちょっとニュアンスが違ってきますけれども、一体だと思って対応しています。
【福山主査】
 思っているということですよね。
【雨宮委員】
 思って対応しているということです。ええ。
【福山主査】
 だから、その点で、ユーザー側はそう思ってここ書いておられるんだから、それに対して、ここで熊谷さんが言う施設、それは2つある。厳然として違う2つがいかにそれに対応するか。
【石川センター長】
 1つですよ。
【熊谷理事】
 いいところなんですけどね、OSは2つの組織があるんですが、石川さんとか私は、多分それは一本化して一元化して運用しないとSPring-8としては機能しないだろうとは思っているんです。なかなか法律上の話があるので、まあ、ちょっとそこはというのはありますけど。
【福山主査】
 確かにそこは組織が違うからしようがないですよね。
【熊谷理事】
 利用者本位ということを考えたら、やっぱりそこは何か知恵を出すしかないんだと思います。
【福山主査】
 そうですよね。山田さん。
【山田委員】
 先ほどから議論を聞いていると、J-PARCのMLFが全く同じ問題を抱えていまして、ずっとその問題を考えているんですが、先ほど福山先生がおっしゃった、組織は別なんだけど、何かサイエンスとして一体感のあるアクティビティーを出せないかというので、まずMLFで考え始めているのが、やはり現場のサイエンティストが現場でもって一緒に研究をするというのが結局は一番重要なポイントなんじゃないかな、と。それを組織として、ここに属しているんだからこれをやるんだとか、そんなことも言わずに、一番いいサイエンスをJ-PARCから出そうやというのをやっぱり現場の若いスタッフが一体感を持って考えるというのが一番重要かなと今は思っています。将来的には組織が、CROSS、JAEA、それからKEK、茨城県とか、いっぱいあって、本当に複雑なんですが、やはり現場の研究者が自分たちはいいサイエンスをやるんだと、一緒になってやろうという、そこをうまく既存の組織が邪魔をしないようにするというところが一番大事じゃないかなと。
【福山主査】
 実はそのことで、前からSPring-8に関しては、JASRIと理研、で、研究のハイライト、SPring-8全体として同じことを、J-PARCとCROSS、一緒になって研究のハイライト、そういうのを公開のところで紹介する場を定期的に設けると、今の問題の、かなりのところがクリアになるんですね。結局山田さんが今提示されたように、いい成果が出れば、みんなが注目するし、寄ってくる。中でも、協力研究が始まる。
 だから、組織は大事なんだけれども、結局はいい研究成果が出てくれば、で、出てきたときに、それに社会がアプリシエイトするような仕組みが、社会にアピールできて、そこからアプリシエイトされるという、そういう仕組みがあれば、中の組織的な違いの問題は、多くの場合、完全とは思わないですけれども、今までの経験からすると、多くの場合、バリアは下がるということで、言いたいのは、まず光だったらSPring-8、J-PARC、そういうようなところで、研究のハイライトに関しても、とにかく一体として外にサイエンスのメッセージを出す、紹介する機会を。
 で、更に進むと、これ、結局両方とも、広い意味での物質・材料のファシリティーなので、今度それが一緒になって、この年の物質・材料の研究成果はこれだというのを、それこそどこかで共通に紹介したらいい。そこには本当にいいものしか選ばれませんよね。施設としても恥ずかしいから、変なもの出したら。それは施設としてかなり、研究施設としてのめり張りをつけますよね。そういう場は、そういうのを作ろうと思えば、お金はそんなかからない。
 ということで、実は別の方向で、元素戦略って、新元素の拠点の話があって、ああいう研究活動がいろいろ着目されていて、そういうのを社会に紹介するような機会。そのときに、SPring-8もJ-PARCも必ずいつも絡む。当然あと京が絡む。そういうのをちゃんと社会に紹介する機会。したがって、社会がそれを理解する。そういう機会が作られるだけで大分違うんじゃないかなと。そういう機会を設けると、JASRIだ、理研だなんて言っていないですよね。MLF、CROSSだなんて言ってられないですよね。SPring-8として問われるから。J-PARCとして問われるから。そういうことを想像しているんですけど。
【熊谷理事】
 コメントだけさせていただくと、石川さんがお話しするのが一番いいのかもしれないんですが、SPring-8は、今、JASRIだ、理研だという法律上のあれがありますけれども、SACLAというのは、理研が文科省からお金をとってきてあれしているわけですが、実際の建設だとか利用のところに関しては、JASRIと理研のスタッフがほとんど一体化しているんですよ。ですので、そういうものを1つの足がかりとして、今福山さんがおっしゃったような方向、またはグローバルに日本全体を考えていくということになるんだと思います。
【福山主査】
 コンストラクションのステージから既にそういうふうになっている。
【熊谷理事】
 ええ。
【福山主査】
 それはいいエグザンプルですね。だけど、そういうことをやると、きっと研究者なんて現金なものだから、面白い話が聞ける、それから紹介できるということになれば、ちょっとした困難なんか乗り越えて、協力しますよね。そういう場の設定を、まずはそれぞれのSPring-8、J-PARC。その背後にはいつも京がサポーターになっているはずで、で、将来的にはその2つを同時進行でいいのかもしれません。そういうもののハイライトを聞く、紹介していただく機会があると随分違うんじゃないですかね。そうすると、文科省も随分安心、楽になるんじゃないでしょうか。
【神部補佐】
 まず共用法の考え方としまして、理研がSPring-8を設置者として持っているということで、その業務の中の一部、利用促進業務の一部を登録機関に代行するということになっておりますので、共用法として見ているのはSPring-8を1つとして見ているというのが、まず大前提としてあって、業務を効率的に進めるという観点で、今2つに分けているということなので、やはりそのパフォーマンスとしてSPring-8を一体的に1つ見ていくということ自体は、共用法の考え方としても必要なことだと思いますし、文科省としてもそういうことができればいいというふうには考えるところではございます。
【福山主査】
 サポートしていただくと、いいものであれば。
【神部補佐】
 そうですね。
【福山主査】
 SPring-8の場合は、誕生の経緯が、JAEAと理研で最初あって、後でやむなく、やむなくと言ったら怒られるのかな、両親がいて、その子供ということでJASRIがあったわけで、歴史的にそういう経緯も踏まえているから、どうしても履歴が残りますよね。まあ、J-PARCも似たようなところがある。
 それから、登録機関、共同利用のこういう仕組み、非常にすばらしい枠組みなんだけれども、同時に、本当に研究活動しようという点では、時にはちょっとやりにくいこともあるけれども、それはできるだけバリアをダウンして、そうすることで、さっきの話、SPRUC、例えば雨宮さん、いろいろ御検討していただいていることが、理研、JASRIの連合体にメッセージが伝えやすい、意見交換できると。田島さん、どうですか。
【田島委員】
 ちょっと雨宮先生のお話のところに戻るんですけれども、このSPRUCの活動、大変すばらしいと思うんですけれども、これだけユーザーコミュニティーの意見をまとめる組織ができ上がっていて、直接これと理研、あるいはJASRIとオフィシャルに接点を持つというものがまだないということなんですか。私はそれがちょっとびっくりしたんですけれども。
【雨宮委員】
 利用者懇談会のときには任意団体の1,200名だったので、そこまで施設側から評価されていない組織であったと。そんな組織では意味がないということで、全ユーザーコミュニティーとしてSPRUCを立ち上げました。SPRUCに対する御理解は、SPring-8側からは非常によくいただいていると思っています。
 最後は施設側への要望と申し上げているのは、あえてオフィシャルにこういう形でSPRUCとしてやっていきますのでということで、今までこういうことが全然できていないということを言っているというよりも、改めてこういうオフィシャルな場でよく認識してほしいということです。
 私のSPRUC会長としての一番の意識は、さっき石川さんも言われたように、ユーザーというのは出入りがあるわけで、だから、やわらかい組織じゃないといけないということです。かたい、固定した組織は駄目なわけです。やわらかい組織、しかもなおかつ規模感のある組織、それをどういうふうにオーガナイズするかと、セルフマネジメントするかと。でも、これをどこかでやっておかないといけない。そのために、皆さんからお知恵を借りたいということが私の希望です。
【福山主査】
 問題は共通だと思いますね。
【田島委員】
 この委員会にもユーザーが何名か入っていて、こういう委員会で、SPring-8の将来についてそれぞれ個人としての意見を述べているわけですけれども、非常に多くの1万何千人のユーザーの声を常に吸い上げる努力は当然理研もJASRIもされているだろうとは思うんですけれども、そうしたチャンネルは別途お持ちですか、ユーザーの声を吸い上げるチャンネルというのか。
【石川センター長】
 いろいろなサイエンス分野でユーザーの声は上がってくるわけですけれども、どうしてもある程度網羅的にやっておかないと抜け落ちるところがある。そういう意味で、全ユーザーが会員であるSPRUCというところからは、フィルターがかからない、バイアスのかからない声が上がってくる組織として非常に期待しているところです。
【田島委員】
 そうですよね。だから、むしろJASRIも理研も利用されたらいいという感じのものだと思うので。
【福山主査】
 この問題は大きいというか、いろんな側面があって、このワーキンググループの中でこれからも、あと何回かのうちにこの問題がまた浮上する可能性もありますね。今日の段階ではこの程度でいいですかね。
 今日いろいろなお話を伺いました。JASRI、熊谷さん、それから廣瀬さん、高温、高圧ビームライン、それから森さん、雨宮さん、それぞれのお立場からのメッセージを頂きました。一応時間ですので、これで終えてよろしいでしょうか。最後何か、是非というコメントございましたら。
【田島委員】
 1点ちょっと。先ほど廣瀬さんのお話にもあったんですけれども、ポスドクにユーザー支援をさせていたという問題と、それからもう一つ、支援員、圧倒的に数が足りないという問題と両方だと思うんですが、24時間実験をやっている施設で、誰がどうサポートするかという問題がありますよね。労働基本法があって、労基法違反の働き方はやっぱりできない、サービス残業はできないという状況。私、実は今朝SPring-8から来たんですけれども、貼ってあるんですね、SPring-8の中に。支援員は労基法の中にありますので御理解ください、と。ユーザーに対してそういうエクスキューズが書いてあるんですね。ですから、ずっと24時間、皆さんのために張りついてはいませんよというふうに書いてあるわけです。実際、でも、それで回っていくところもあるでしょうし、厳しい状況のところもある。実態としては、そこを補うところにポスドクが使われているのかなと思うんですけれども、制度的に言えば、そこで何か事故があったら元も子もないわけですから、そこを考えながら回していくということで、原則ポスドクは支援員として使うのは問題だろうとは思います。ある程度そこを考えつつ、支援員の足りないところを補うことをちょっと認める格好で、まあ、部分的にですね、ポスドクの100%エフォートを使うのではなく、一部使うということを認めるぐらいのことはしないと多分回らないんじゃないかなと私は思います。
【福山主査】
 確かにこの問題も、もともとサポートするスタッフが少ないという問題、これは積年の問題ですけど、それと関係していますね。
 今日、いろいろ御意見ありがとうございました。それでは、最後、事務局の方から一言お願いします。
【神部補佐】
 事務局より御連絡させていただきます。次回につきましては、既にお伝えしましたとおり、5月28日、火曜日、3時から5時を予定しております。会場は本日と同じ文科省3階第2特別会議室でございます。
 また、本日会議の議事録につきましては、作成次第、皆様に御確認をいただきまして、文科省ホームページに掲載させていただきたいと思います。
 本日の資料につきましては、お手元の封筒にお名前を御記入の上、机上に残していただければ、後日郵送させていただきます。
 また、旅費の手続を済まされていない方がいらっしゃいましたら、この後、事務局までお申し出てください。以上でございます。
【福山主査】
 ちょっとオーバーしましたけれども、これで閉会といたします。どうも御協力ありがとうございました。

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