研究開発プラットフォーム委員会 先端計測分析技術・システム開発小委員会(第6回) 議事録

1.日時

平成26年7月17日(木曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 3F2特別会議室

3.議題

  1. 先端計測分析技術・機器開発プログラム平成27年度のプログラム実施の重要事項について
  2. その他

4.出席者

委員

長我部委員、尾嶋委員、二瓶主査、飯島委員、江原委員、小野委員、佐藤主査代理、菅野委員、杉沢委員、杉山委員、瀬藤委員、中村委員、藤宮委員、森川委員、柳沢委員、山科委員

文部科学省

川上科学技術・学術政策局長、弦本研究開発基盤課長、三宅研究開発基盤課課長補佐

オブザーバー

JST小原理事、JST齊藤執行役、JST林開発主監、JST市川総合評価分科会長、JST久保先端計測室室長、JST山下先端計測室調査役、JST菅原先端計測室調査役

5.議事録

科学技術・学術審議会 先端研究基盤部会
研究開発プラットフォーム委員会
先端計測分析技術・システム開発小委員会(第6回)

平成26年7月17日


【二瓶主査】定刻になりましたので、本日の会議を始めさせていただきたいと思います。本日は、第6回の先端計測分析技術・システム開発小委員会でございます。
 本日の議題は、お手元の議事次第にございますとおり、「先端計測分析技術・機器開発プログラム平成27年度のプログラム実施の重要事項について」とさせていただきました。
 それでは、事務局から資料の御説明等をお願いします。

○三宅研究開発基盤課課長補佐より、出席者の紹介と配付資料の確認があった。

【二瓶主査】ありがとうございます。よろしいでしょうか。
 それでは、本日の議事に入らせていただきます。
 本日の議題は先ほど申し上げたとおりでございますが、まず資料1につきましての御説明を申し上げ、先生方の御意見を頂きたいということでございます。言うなれば、本日の議事の主な部分はこの案件でございまして、その次に資料2について御説明いただき、御議論いただく、そういう手順でございます。
 まず、資料1を御覧ください。冒頭にプログラムの目次が書いてありますが、第一部と第二部に分かれておりまして、第一部が本プログラムの10年の成果。昨年度までで正味10年という期間、本事業を続けてきた、その10年を区切りとして全体をまとめてみようという目論見でございます。第二部は、それに対応して、これからの今後の展望ということで資料を準備してございます。第一部に関しましては主として私がまとめさせていただきまして、第二部は佐藤主査代理がおまとめいただいたという手順です。したがいまして、本日は、第一部は私が説明申し上げ、第二部は佐藤先生から御説明いただくという手順とさせていただきたいと思っております。
 まず、目次を御覧ください。第一部、10年分の成果をまとめてみました。この種の事業は極めてユニークで、今まで計測分析という領域の装置開発を政府主導で行った事業は実は初めてでございます。一言で言えば、10年間でこれだけの成果を上げたのであるから、いろいろな観点から見直しは行うにしても今後も続けていただきたいという気持ちを込めて前半の成果をまとめた次第です。この部分は事前配付させていただきましたけれども、本日の資料は、細かい点で若干、更に付け加えたことがございますので、それも御覧いただければと思います。
 構成は、「はじめに」の後、第2章は、この事業が発足した当初、どういう目論見を持っていたかをまとめてございます。委員の皆様、御記憶かと思いますが、正確に言うと11年前、本事業に関するシンポジウムを学術会議で行いまして、そのときに物理系、化学系、生命系等の各学会の皆様方から御支持を頂いて、一方、産業界の皆様からもこういう分野が重要であるということをお話しいただきました。ポイントは、田中耕一先生のノーベル賞受賞がきっかけになって、この分野が世界的に大変高く評価されていることが出発点でありますが、ちょうど11年前の5月に学術会議でシンポジウムを開催し、その後、文科省の当時の田中敏課長主導で準備の会合をして、文書を作って方針を決めた。それが第2章であります。
 第3章は、その後、10年間ですからその間にいろいろな変遷と進歩があった。一つは学術政策の進展で、数えてみますと第2期、第3期、第4期と科学技術基本計画が出ております。社会・経済的な情勢もいろいろな意味で関係いたします。そのようなことで、幾つかのプログラムが新たに追加され、後ほど申しますが、社会的な情勢、学術的な方針の変更に対応してプログラム編成が少し変更されました。
 第4章、本事業の成果は大変大切な内容ですが、それでは一体どんな成果が出たのかについて記述してあります。ポイントは4-2)各種研究分野における特記すべき研究開発成果です。いろいろ考えましたが、表1という形で30件の代表的な成果を取り上げ、それに関して説明を加えると方法をとりました。終わりの方にありますA3の大きな折り込みのページが、その議論をまとめて表にしたものです。もちろん成果は大変重要項目ですので、4-2)で研究開発成果を全体的に見ていただいて、4-3)は方法論としての進歩で、何がポイントか、これも表1に書き込んでありますが、各項目に対して書き込んでみました。
 4-4)の研究環境と人材育成は、この事業の進行過程においてもいろいろ議論がございました。実は、直接的成果は技術と機器のアウトプットである。完成したものを世の中に出していくということが直接的成果です。しかしながら、一方、先ほど申し上げたこういう非常にユニークなプログラムが実施されることによって、学術あるいは社会、企業の研究環境もそれに呼応して変化し、かつ進歩したのではないか。特に学術の世界における人材育成への貢献は重要であり、装置、機器のインストゥルメンテーションをきちんとやるきっかけになったということを強調してございます。
 御承知かもしれませんが、科学研究費補助金は全分野の学術の研究をサポートするファンドでありますが、その中に昔は試験研究というのがありました。一言で言えば試験法の開発ですから、例えば分析法の新しいものを作るのは要素技術に相当するもの、中には装置を作るという課題が科研費でサポートされていました。ところが、90年代にそれが途中で廃止され、独立した分科細目ではなくなった。そういう状況で、特に大学における装置作りが下火になってしまった。それに対して、このプログラムは再活性化を図ったという意味で意義があるということでございます。
 第5章は評価に関することですが、評価手法と事業評価をいろんな観点でまとめました。5-5)、波及効果に関する評価手法についてです。本事業は波及効果が大きいのだということをしきりに申し上げてきたのですが、では、どのくらいの波及効果があるのか。例えば100億円の国家財政から支出したとすると、世の中にどれだけの価値を生み出したかを乗数効果と申します。要するに投資額に対して、2倍だとか5倍という効果が各種事業に応じてある。しかし、この分野の投資資金はどれだけの価値をもって世の中に定着するのかについて、世の中に対して説明ができるほど定量化されていない、現状でまだ十分ではないというのが結論です。ですから、例えば佐藤先生の第二部では、この波及効果をもっと定量化する努力をすべきだという御指摘がありますが、全くそのように思います。
 もう一つが国際的な視点、各国でどんなことをやっているのか。計測分析機器開発はアメリカでもヨーロッパでも、中国でもやっております。それに対して我が国では果たして有効な体制が組まれているのかを、外国の事例を参考にして議論した。結論から言いますと、アメリカは極めて巨大な予算を使っております。ヨーロッパでも相当な研究費と資金をこの分野に投入しているのが事実です。それに比べて日本はどうかと、そういう観点の参考としたいと考えている。
 6章の「おわりに」では、本事業の性格をまとめ、更に現時点で本事業にどのような課題があるのかを、過去10年間並びに外国の事例等を踏まえてまとめたという構成です。
 実際には短時間で御説明するのは難しいですが、要点だけ申します。第一部の第2章は、事業開始時の制度設計です。ただ、これをあえてかなり詳細にここに書きましたのは、制度設計の段階で相当いろんな議論をいたしましたことを思い出していただきたいという気持ちがあります。御一読していただければと思います。
 第3章ではその後の制度的な変遷について記述してあります。まず学術政策の進展についてですが、第2期科学技術基本計画では、実は知的基盤ですとか計量標準、計測・分析・試験評価方法などが大事であると、数行程度触れてあるという時代です。第3期になりますと、重点推進4分野と推進4分野、計8分野と言われて、分野ごとに重点政策を打った5年間でして、もちろん各分野に大変大きな前進がありますが、横串が通っていない。私どもの事業は典型的な横串でありまして、基盤を形成する分野でございますから、そこが欠けているという言い方になります。第4期では、幸いに御担当の課長が基盤政策を良く御存じでして、横串重視と第4期のもう一つの特徴として課題解決型の研究開発が重要であるということが強調されました。つまり、科学技術政策から科学技術イノベーション政策への転換が謳われたのです。現時点では第4期科学技術基本計画に沿って政策が立案実施されています。
 第4章では成果についてまとめてあります。10ページから、まず成果の考え方についてまとめてございます。といいますのは、先ほど御説明しましたように、第4期基本計画からイノベーション重視の考え方が入りました。事業開始時では、基礎研究から新しく世界的にすぐれた方法論を構築するという立場でありましたから、我々はいわゆるオンリーワン・ナンバーワン路線でやってきました。後半、その路線に加えて、世の中が抱えている課題の解決に応えるための計測分析法の開発という路線が加わりました。したがって、全体10年を通しますと、その両者の合わせ技が必要になりますので、その経過を御理解いただきたいという意味であります。11ページ、4-2)が本体となる本事業の成果、4-3)が方法論としての進歩・成果でございます。
 ここで、表1を御覧いただきたいと思います。表1は、1ページにまとめてありますが、JSTの皆さんに大変御努力いただきまして、多くの貴重な情報がまとめてあります。
 ここでは、特記すべき研究開発成果として30件、選んであります。ブルーのところが医療・生命科学計測のための機器、オレンジの2番目が材料計測のための機器、グリーンが環境計測のための機器、一番下のレンガ色が放射線計測のための機器です。結局、下の2つがイノベーション重視により加えられた重点領域において研究開発された成果で、上の2つの分野はオンリーワン・ナンバーワン路線を中心に開発してきた成果ということです。なぜこの30件かというのは……、先生方は皆さん、成果集はお持ちなのでしょうか。

【三宅研究開発基盤課課長補佐】本日は資料としては配布しておりません。

【二瓶主査】それでは後日で結構ですから、先生方に送ってください。
 成果集にはこの30課題について、1件当たり2ページのスペースを使って非常に丁寧に説明してございます。これはJSTの開発総括の皆さんを中心に、研究開発現場を、審査、事前評価、中間評価、事後評価の過程をすべてよく御存じの専門家が選んだ課題です。
 表の中には項目が幾つもありますが、特に赤字で書いてありますところは、オンリーワンタイプ、ナンバーワンタイプ、イノベーションタイプと、あえて3分類した評価項目です。オンリーワンタイプとは革新性・新規性・独創性が高いオリジナルの技術・機器、ナンバーワンタイプは類似技術・機器よりも格段に高性能・高機能である成果、イノベーションタイプは特にニーズ志向が強く、市場性が高いという観点の評価です。その3項目の下に二重丸、一重丸、印なしという形で書いてあります。もちろん、一般の方が見るという前提で作ってありますから、細かい議論はともかくとして、全体の傾向がお分かりいただけると思います。
 それから、世の中に対して普及させるためのプログラムに組み込んであるものが、赤印の項目の右手にあります。その更に右手に、方法論としての特徴・評価という項目を作ってあります。考え方を御説明しますと、1、原理的な進歩、2、装置的な進歩、3、測定対象が拡大できる、4、新しく生み出された機能、5、新しく開拓された応用に分類して、もちろん複数に対応するのがたくさんあるのですけれども、各成果がどれに対応するのかを評価しました。更に右側に、具体的に何がそういう評価の対象なのかというキーワードを記載しました。例えば、一番上は親指サイズの超小型赤外分光断層イメージング装置の開発でありますが、これは原理的にすぐれているという評価で、対象が生体組織で、無侵襲で3D分光イメージング、生体組織の一定の深さを二次元的にイメージングする機能がありますよという意味です。一番右の備考欄には、世の中で既に受賞等により評価されている事例などが記載してあります。
 次に、その後にある図を御紹介いたします。図1は論文掲載件数、図2は特許出願件数で、累計で図にいたしました。一口で言えば順調に伸びていますねということが分かります。
 次に図3を見てください。灰色のバーが本事業に対する投下予算の累計です。16年度から始まって、ちょうど10年プロットをしてありますが、もちろん累計予算は着実に増えています。それに対して、赤色のバーは売上額で、この事業で開発し市場に出した装置がどのくらい売れているか、累計総額が記載されています。大事なポイントは平成25年度で投資総額とイーブン(同程度)になったということでして、当然、26年では赤色バーの方が高くなり、累計予算を確実に上回ると予想しております。また、事業が始まって4年目にちょっと赤色バーが見えますが、本格的に売上げが増えてきたのは6年目からなのですね。実用化された機器の市場での売上げ動向は機器の性格によっていろいろ異なります。
 大分時間が進んでしまいましたが、あと5章と6章があります。5章を御覧ください。
 5-2)は、このプログラムでどんな評価を実際にしているかという評価基準です。5-3)は学術的・社会経済的評価で、このあたりのオンリーワン・ナンバーワン路線の位置付けはもちろん重要項目です。それから、この事業が非常に幅広く世の中に貢献するということを定性的に書いてあるのですが、それをもう少し定量的にしたいということで、波及効果に注目しました。
 5-5)波及効果に関する評価手法については、いささか長いのですが、18ページのAは、1990年9月旧科学技術庁の政策研究所が行った「科学技術連関モデルの開発-研究開発のダイナミクス-」の紹介です。一言で言いますと、日本のR&D経費の上位50社に対してアンケートを採り、その企業のR&D投資額とその成果についてかなり詳細にまとめたレポートです。企業での実績を基に、各種業界における実態から分かったことがいろいろ指摘してあります。ここでも乗数効果という表現が出ています。当然、投資R&D経費に対して、売上げや利益にどのくらいの乗数効果ではね返ってくるかという議論がされております。
 20ページのBはイノベーション測定手法の開発に向けた調査研究です。波及効果に関するなるべく新しいレポートをと考え探しますと、もうイノベーションの測定評価となり、突然、非常に幅広くなります。したがって、大変難しいのですが、文科省になって科学技術政策研究所が2008年にまとめたレポートで見つかりました。幾つかの業種別にいろんな議論がされておりますが、イノベーションですから、横の広がりといいますか、世の中にどういう規模で恩恵、貢献が広がっていくかが大変大事になってきまして、問題が桁違いに難しくなります。単なるR&D投資とその売上げとの関係のように、縦のある閉じたグループで解析することは、既に各企業で皆さんやっていることです。ですが、イノベーションとなると企業単位でできることではありませんから、ぐっと難しくなる。
 21ページのCは「Measuring Science, Technology, and Innovation: A Review」というタイトルのアメリカで2012年5月に報告された文献です。どんな内容を議論しているのだろうと思い、その概要をここにまとめて見ました。タイトルのとおり、やはり本格的に定量的に評価しようとすれば当然なのですが、大変なデータベースが必要になる。アメリカは、さすがに日本に比べて格段にデータベースが整っているようですが、イノベーション全体を議論するまでにはまだ十分ではない、というのがこのレポートの結論です。
 このような議論を下敷きにして、私は以前から本事業は波及効果が大きいのだと皆さんに言ってきましたので、自分なりに考察してみたいと考えました。それが22~24ページです。ここでは、議論の入り口程度なのですが、まだまだこれから検討することが必要です。
 24ページ半ばからは国際的視点からの事業評価についてです。Aでは米国の例、25ページにEU、ヨーロッパの例や中国の例が書いてあります。
 28ページ第6章の「おわりに」では本事業の課題を2つに分けました。前半の(1)事業の背景における課題では、例えば大学での物づくり環境が劣化して大学のアウトプット能力が低下していることも指摘しました。
 一方、(2)本事業の課題では、10年の事業推進の経過を振り返った上で掲げた課題について、上で述べた諸外国の事例を参考にして明示しました。
 29ページから記していますが、一番重要なことはアメリカでは七、八年前ですが、NISTが非常に大規模に計測分析技術のニーズを徹底的に調べました。それを基に議論をすすめている点はすばらしいし、日本に欠けています。また、ヨーロッパと比較しますと、ヨーロッパではいわゆるテクノロジープラットフォームをもう十数年前から作っています。一言で言えば、ある計測分析技術を世界一にするために研究費を投入して開発研究をやったという歴史を持っています。現在でいえばNMRが世界のトップとなったのも、その流れなのです。つまり重点特化して伸ばしたのがヨーロッパです。
 中国は、生命科学に特化してこの分野の育成をしています。我々が学ぶべきは、装置化研究基盤としてのプラットフォームをもう既に創っています。そんなことで、中国にも我々が学ぶべきものがあることを書いてまとめとしました。
 以上でございます。

【三宅研究開発基盤課課長補佐】  すみません。事務局からよろしいでしょうか。先ほど二瓶先生から御紹介いただきました成果集につきまして、御用意できましたので、今から配付させていただきます。
【二瓶主査】  ありがとうございます。成果集を見ていただきますと、2ページにわたって書いてありますから、随分詳しく書いてございます。
 きょうは佐藤先生の議論が中心かと思っておりますので、私の方はこの場で議論するというよりは個々に御指摘いただく方がよろしいかと思っているのですが、何か御意見があれば、よろしくお願いいたします。
【尾嶋委員】  大変よくまとめていただいていると思います。
 先ほどの表1は、基本的にこのJST成果集をまとめたものと考えてよろしいでしょうか。
【二瓶主査】  そうですね。ただ、オンリーワン・ナンバーワンの議論をもう少し具体的に事例で示したいということで、付け加えてあります。その他の部分は、JST開発総括の皆さんの意見が入っているのですか。
【菅原副調査役】  この課題の選定ですか。
【二瓶主査】  そうです。二重丸、一重丸についてです。
【菅原副調査役】  二重丸、一重丸というのは、議論を基に事務局で印を付けさせていただいたものです。この成果集に載っている課題の選定は、開発総括の先生が全体的に選定されています。
【尾嶋委員】  なるほど。それで、分析計測は先ほどの乗数効果が非常に大事だと思うのですが、何か特に乗数効果が大きかった例が1つか2つ、具体的なイグザンプルがあると分かりやすいという印象を持ちました。一番売上げが大きかった製品とか。一般的な表だけだと、なかなか見にくいので具体例を示すのが良いと思います。
【二瓶主査】  そうなのですね。今、ありました乗数効果を具体例として示していないというのは御指摘のとおりですが、例えば売上げが非常に大きいものは、先生方も既に御存じだと思いますが、3次元断層画像(CT)を光で見るOCTです。目は当然、光が通る構造になっておりますから、網膜の断層構造がこのOCT装置により秒単位で見えてしまう。この装置は、実は眼科の医師がすぐに採用し、使っているようなのですね。大変な普及率です。医療機器の専門家によれば、最近、開発された診断装置としては画期的であり、革命的と言ってよいと評価されています。ただ、これはイノベーションというと、ちょっと眼科に特化しているのですね。同じ原理が、例えば他のデバイスや工業材料に適用できるという広がりが出てくると、イノベーション効果なのです。原理としては、当然、そういうポテンシャルはある。しかし、現在は眼科医療の立場の皆さんに評価され、大変大きな売上げになっています。
【尾嶋委員】  なるほど。
【二瓶主査】  よろしゅうございますか。
 それでは、第二部の議論に移らせていただきたいと思います。佐藤先生、よろしくお願いします。
【佐藤主査代理】  私からは、先生の大作といいますか、労作といいますか、10年間のこの事業の成果をまとめていただいたのですが、これは次の10年を考えるためには、これまでの事業について10年の成果あるいはまとめがないと展開できないですねということから始まったものです。それを受けて、第二部で今後の展望ということで、この事業をどういうふうに展開していけばいいのか、私自身は、経験は浅いのですけれども、客観的に見るような立場でまとめさせていただきました。
 本文のページで見ながら、第二部の1ページから見ていただきたいのですけれども、時間が余りないので簡単に説明させていただきます。
 初めに、二瓶先生が今、まとめてくれましたので今までの事業の詳細は省略しますけれども、さすがに大作なので、結局、何を目標に何の成果が出たのだろうというのを一言で言うとどうなるのかなと私なりにまとめてみました。2-1)で挙げてあるのですけれども、主要目標としては1から5ぐらいかなと。1は、まさにオンリーワン・ナンバーワンとイノベーション創出支援、途中で少し目標を変えましたけれども、それを入れて両輪でこの事業を進めてきたということだと思います。こういう分野に対して限界を突破する。突破する研究をやれば、当然、論文や特許は出せるわけで、そういうものを目標にする。製品化も当然、それに対応して出てくるでしょう。そういうことをやっていけば世界市場への展開は図れるのではないかということで、それも目標に挙げられるか。それ以外に、研究環境の整備や人材育成が付随的な効果として期待できるのではないかということで挙げられています。
 それに対して、主要な成果は、まとめてみると1から6ぐらいまであるのです。1は今言った表1に相当するようなものだと思うのですけれども、Sで評価されたものがオンリーワン・ナンバーワンだとすると、36件ぐらい出ています。製品化という意味では52件で、なかなか評価が難しいので件数は挙げていないのですけれども、ベストセラー製品も出ている。学術論文・特許に関しては、論文は3,000件近く、特許は1,000件を超える。賞に関して件数はまだまとめられていないのですけれども、先ほどの表の備考欄を見ますと分かるように、かなりたくさんの賞を頂いている。費用対効果に関しては12年度ではなくて13年度に修正していただきたいのですが、非常に大きな成果を上げています。
 定性的にしか表せない成果としては、間接的には研究基盤の強化とイノベーションの創出支援に貢献しているということです。直接的には、途中で入れた国家的な課題の領域選定、グリーンイノベーションや放射線計測、ライフイノベーション領域に対してイノベーション創出支援を行ってきたことが挙げられます。
 これは表せられる成果ですけれども、先ほど先生も言いましたように教育・研究や産業に連関した波及効果がやはり評価できていないので、これを含めると、10倍になるのか100倍になるのか、物すごい効果になるのだろうと考えます。それだけこの事業が非常に重要な事業であるし、今後もあり続けるのではないかと考えられるわけです。
 そういうふうに非常に大きな成果を上げてきているのですけれども、やはり問題点が出てきていまして、いろいろあるのですけれども、2-3)で2つに集約できるかなと思います。1つは世界市場への展開不足、結果として世界の市場のシェアが低下していること、それから先ほど言った波及効果を含めた事業の評価、評価手法の未確立が大きな問題です。国民の税金を使って事業をやる限りは、やはりどれだけの効果が出ているかを正当に評価して示すべきで、それによってこの事業の価値が恐らく評価できると思いますので、それもちゃんとやるべきじゃないかということで、大きくはその2つの問題が出たのではないか。
 世界市場への展開不足という意味では、二瓶先生が言われました最初の事業をやるきっかけ、もともとのモチベーションが、日本の計測分析機器の海外依存度が非常に高い、こんな状態で世界最先端の研究が生まれるのですか、生まれないでしょう、やっぱりオンリーワン・ナンバーワンという先端計測分析技術・機器を開発しないと世界最先端の研究もリードできないのではないかということでしたから、もしそれができるならば国際競争力ももちろん付くはずで、それも目標に挙げられていたので、そういう意味では世界市場への展開不足が少しあったかなと思うわけです。
 評価に関しては、もう先ほど来、言っていますのでいいと思うのですけれども、では、何でこういう課題が生まれてきたかという原因を私なりにいろいろ分析してみたのが2-4)です。まず、全体的に言うと、やはり世界市場あるいは日本の現場のニーズを詳細に調査し切れていたかというところが問題かなと。世界がどこに向かって、どういうことをこの分野に対して求めたかに基づいて事業を少しずつ見直しながらやっていくことが多分、必要だと思うのですけれども、かなりやられていると思うのですけれども、結果としてはその辺りが不足していたかなと思います。
 それから、イノベーション創出に対して国家的な課題の解決が重要なのですけれども、それに対するこの分野のニーズ掘り下げ不足があったかなと思います。
 国際競争力という意味では、ユーザビリティや高効率研究開発、いわゆるコストパフォーマンスを含めた開発が必要なのですけれども、それを支えるプラットフォーム戦略が不足していたのではないか。
 それから、先ほどの表で見て分かりますように、オンリーワン・ナンバーワン技術は非常に開発されているのですけれども、それがもし本当にいい技術あるいは装置であるならば、世界のベストセラーに持っていくような取り組み方があったのではないか、その辺の取り組み方をもう少しやるべきなのかなと思います。
 また、この事業は今、ボトムアップで進めていて、それでいいのですけれども、そこに重点課題に対するトップダウン型の考え方を少し入れて事業をやることが必要だったかもしれないという原因推定をしております。
 その下、産業競争力の定義は非常に難しいのですけれども、私なりに考えてみますと、オンリーワン・ナンバーワン技術とユーザビリティとコストパフォーマンスの、3つの項目の掛け算が最大になっていかないと世界のベストセラー機は出てこないかもしれない。
 そういう観点で見ますと、次のページで、この事業は、やっぱりオンリーワン・ナンバーワン技術は非常に重要なので、基礎科学、基礎から実用化まで一気通貫型の事業をやってきたという意味では非常にすばらしい事業戦略なのですけれども、どちらかというと基礎科学を重視して重点が置かれたために、ユーザビリティやコストパフォーマンスの向上という意味ではちょっと意識が不十分だったかもしれないというのが私なりの分析です。関係した一部の先生方といろいろディスカッションして、外部の有識者を呼んで産業界のニーズなどを少しヒアリングした結果、今、求められていることは何かを特徴付けて表したニーズが1、2、3の3つです。
 
 1は、右上の図にあります解析対象のサイズと解析情報を空間分解能とエネルギー分解能で表すと、近未来の解析技術領域は0.1ナノメーター×0.1エレクトロンボルトのあたりが要求されているということが出てきまして、これは結構ハードルが高い、かなり先を行ったところが要求されているのだなと分かりました。また、ナノから原子オーダーの局所構造・物理化学的な特性分析が、受託分析も含めて相当やられている、要望されていることが分かりました。
 2で、ミクロだけではなくて、マクロとミクロをつなぐ三次元空間あるいはエネルギー分布の立体構造可視化が重要だと言われている。
 3は、単に分析をするのではなくて、分析した結果で解析して、これはこういうことを言っていますね、こういうことですねというソリューションを与えてくれるようなエキスパートシステムが必要だよと言われまして、これは究極ですねと。今、医療の分野でもコンピューター診断みたいなことがアメリカ等を中心に盛んに進んでいますけれども、そういうことがこの分野に対しても言われている。なぜそうかというと、ビッグデータを含めた膨大なデータで人間ではやっぱり評価が難しいという段階に入ってきますから、それを超えた価値を出そうとすると、こういうことが必要になる。あるいは、ノウハウを次の世代に伝えていくことが非常に難しくなってきているので、それをこういう方法で賄ってやる、あるいは支援してやることが必要なんじゃないかなという意味で、3番も非常に重要なニーズと考えられました。そういうことが挙がってきたので、それらを含めて今後の展開は考えていかなくちゃいけない。
 
 その中のコストパフォーマンスの向上が本事業では余りそぐわないのですけれども、産業競争力の強化と言い始めたら、コストパフォーマンスの向上を図らないととてもできないので、結局、ここに行き着いてしまうのですね。そうすると、計測分析機器の開発の流れは、物づくりという観点で見ると、結局、ハードもソフトもコンポーネント化して、それをうまく組み合わせる、新しく開発したものは、更に開発してコンポーネント化して今まで作ったコンポーネントに組み上げていくというプラットフォーム構想で実は作られてきているのですね。それによって再利用性や設計生産性、ユーザビリティの向上が図られているので、日本はこの分野だけでなく、いろんな分野でこの辺が遅れてきているのですけれども、この辺をキャッチアップしないと、なかなか世界での産業競争力をこの分野で高めるのは難しいかなと思います。現実に、いろんな分野でこういう取り組み方がなされてきています。
 大体そういう分析をしまして、3章で、では、今後に向けてどういう施策を打っていくのかを少しまとめました。これはまだ案の段階で、関係の先生方と議論した上で私なりにまとめたものです。
 まず、基本方針としては、27年度に関しては、新たな方向性を取り込みながら、今までの事業はすばらしい事業をやってきているので、基本的にはこれを継承すべきではないか。ただ、2の新たな方向性のところで、重点課題を特定領域として設置して、テクノロジープラットフォーム的なことを先行事業で開始したらどうか。27年度以降に関しては、新しいタスクフォークで、更にこの事業の理想的な追求の仕方を検討すべきじゃないかと考えました。
 27年度の施策に対して、では、具体的にどうするのですかという話は、(2)の1から4までの項目ぐらいが要るかなと思います。
 1は、課題に挙げた調査機能の強化を少しやるべきかもしれない。これも、それぞれの分野によって、研究開発しているところと生産・量産しているところと教育・研究しているところでニーズがかなり違いますので、そこをちゃんと明確にしながらニーズを明らかにして、どういう課題設定をしていくかをやるべきじゃないか。
 連携の強化はライフのところで相当やろうとしていますから、その辺を図っていく。
 プラットフォーム形成に関しては、何もない状態ではできないので、例えば電子顕微鏡やNMR、MSという先端計測として非常に重要な機器に関してフラッグシップ機を選定して、それに対してプラットフォーム化ができないかという検討。あわせて、では、具体的に何をするのですかという話になると、これはまだ案の段階ですけれども、例えばニーズで出ている立体構造観察顕微鏡、トモグラフィ顕微鏡やFIB・MALDIという次世代の質量分析、あるいはナノ領域の極限計測分析を対象にしてはどうか。応用分野としては、特に今、ヨーロッパでバイオ電子顕微鏡をフラッグシップ機で作ろうという動きがあって、それをやられると大変なことになりますので、こういうことを展開できるような取り組み方ができないか。あるいは、デバイス・構造として、今、エネルギーやインフラ、構造材など、いろんな問題が出てきていますので、それに対して貢献できる、応用できるような開発をやる必要があるのではないか。これは案ですから、またいろいろ揉んでいかなくてはいけないと思います。
 4番目に評価機能の強化を挙げて、次のページに、簡単なのですけれども、現状の案に対して27年度の案を示して、赤の部分、今までの領域に横断するような形で特定領域があってもいいかな、それから、右下の調査・評価機能強化の部分を少し強化することを考える必要があるかなということを入れた事業計画で進めてはどうかというのが、まず27年度に関してです。
 次がまた問題なのですけど、3-2)のところで、今後の10年についてどうあるべきなのかというところを少しまとめてみました。ここも(1)から(6)くらいまでのことが必要なのではないかというふうに表したのですけれども、標準・認証だとか、それから、フラッグシップ的な開発を強化していくだとか、もちろん今までの新原理とか新発見、そういうものはやっていくのですけれども、そういうことを含めて、全体的に統括できるような拠点形成まで含めて考えていかないと、将来的には国際的にこの分野をリードしていくには難しいのではないかと考えております。
 それを次の10ページのところで図で示したのですけれども、ちょっとビジーな図なので申し訳ないのですが、言いたいことは、今までの取り組み方は基礎科学技術の分野で、ここはもちろん今まで同じようにやる。ただし、課題、ニーズを明解にして、なるべくそれにひも付けされるような形のところを、できるところはもちろんシーズ研究がこの中にあって、されないものはそれでやるのですけれども、されるものはちゃんとひも付けをして明解にしていく必要があるのではないかと。と同時に、中間にプラットフォーム構築という項目を入れたのは、結局、何でもかんでも開発する必要はなくて、今までのベースの上に新しいことだけを組み上げていけばいいわけで、そういう開発効率のいい方法を取れるような、そういうプラットフォームを構築していくべきではないかと考えて、意識としては、開発の事業をやる人は余り意識しなくてもプラットフォームがどんどん形成できてくるような仕組みというのができないかなと、できればすばらしいと思いますので、そういう取り組み方を更にする必要があるのではないかと。
 この事業をNIST等、海外のやり方と比較していると、この事業を定着させて発展させるという意味では、やはりかなりしっかりした拠点が要るのではないかなと。それをベースにしながらファンディング事業をやるということを考えていかないと、開発した技術はどこへ行ってしまったのだとかいう話になりかねないので、そういう拠点を形成しながらやっていくということが要るのではないかなと考えました。
 11ページの中段から少し下の方で、NISTの今やっている事業を少しだけ紹介します。皆さん知っていると思うのですけれども、私なりに調べてみますと、やはり、すごいことをやっていると。予算は年間約1,100億円です。人員は約3,000名いて、外部の研究者、これはファンディングをしているのだと思うのですけれども、ファンディングしている分と受け入れている分と合わせて2,700名。だから、5,700名ぐらいの陣容でやっていると。公式任務は、そこに書いてあるように、産業競争力、あるいは技術革新強化のための経済の強化、あるいは生活の質を高めるという意味での計測、規格、産業技術を促進することとあるのですけれども、活動範囲がすごい範囲。6つの研究で、度量衡の標準化、認証をはじめとして標準物質、あるいは標準計測・分析測定法、ソフトウエア品質保証だとかそれらの基礎研究。対象はまたすごくて、バイオサイエンス、ヘルス、建築・インフラ、エレクトロニクス、エネルギー、環境/気候、情報技術、製造業、材料科学、ナノテク、公共安全、セキュリティー、品質、交通という物すごい範囲にわたっていて、何を言いたいかというと、いかに先端計測分析技術あるいは機器システムの分野が、アメリカにおいては極めて国家戦略的に重要な分野であるということをこれは物語っているわけで、同じようなことが先ほど二瓶先生からもありましたけど、EUで1,000億円前後の予算でプラットフォーム構想を組みながら戦略的な先端計測機器を開発しているということで、やはり、この分野の重要性というのが世界的にはちゃんと認識されているのではないかと。
 日本はこのままいくと大変なので、ただ、1,000億円も使う予算はとてもないので、量ではなく質で勝負をして、質で勝負するしか手はないのですけれども、世界をそれでリードするという意味で、「Beyond NIST」みたいなことを最終目標に上げて、少し夢を持ってこの事業を推進してはどうかというふうに考えてまとめた次第です。
 どうもすいません。以上でございます。
【二瓶主査】  ありがとうございます。10年後の夢といいますか、ありたい姿、これ、さすがに佐藤先生、企業にいらした御経験が長いものですから、常に目標を提示しないと組織というのは前進しませんので、そういう手法で10年後の目標、そのあたりを中心にお考えいただいたと思っております。いかがでしょうか、何か御意見いただければ有り難いのですが。どうぞ。
【山科委員】  大変慎重に深くお考えになったすばらしい報告書ができあがっておりますので、それを今ちょっと聞いただけの印象で何か申し上げるのは大変僣越なのですけれども、一部、二部を分けなくちゃならないのかどうかという、そういう問題が1つあるのではないかと思います。むしろ、「10年の成果と今後の展望」ということにするならば、一部と二部を合体してはいかがでしょうか。それとさっき御意見があったかと思いますけれども、第一部の4項、本事業の成果の部分ですが、せっかく随分、苦労されて表1枚になっていますけれども、あの中に物すごくたくさんの情報が凝縮されて、例えば表の真ん中辺にカタログ製品化と星がぽちぽちぽちと付いているだけで、その内容をもう少し、星1つではなくて、こういうところにこれだけ出ていって、こういう成果が出ているのだとか、代表的なものだけでもいいですから、もう少し具体的な例を挙げて膨らませてはいかがかと思います。それから、第一部の6章、「おわりに」というところを、「おわりに」ではなくて1つの柱にして、タイトルを今後の展望とかに改変して4章と6章を連動させるようにしていけば分かりいい全体像を示すものになるのではないかなというのが、今伺った直感的な印象です。
【二瓶主査】  ありがとうございます。全く御指摘のとおりでございまして。どうぞ。
【飯島委員】  質問させていただいてよろしいでしょうか。両先生のすごい御努力の跡がにじんでいる報告書ですばらしいと思います。二部に関して質問させていただきたいと思うのですけれども、非常にクリアな解析の上に新しい御提案だと理解いたしました。特にプラットフォームの構築というところが、このお話の大変なみそだと思うのですけれども、今、佐藤先生がおっしゃったように、限られた予算の中でこのプラットフォーム構築をするというのは、非常に理想的な形でこの絵が描かれておりますけれども、かなり難しい課題ではないかと思います。今までは、先端技術というのはボトムアップでやってこられたけれども、このところは、ある程度トップダウンで領域を決められたり、専門家を集められたりするとお考えになっているのでしょうか。そうすると、また少し全体としてのプランの構築の仕方が変わるのではないかと思うのですけれども、いかがでございますでしょうか。
【佐藤主査代理】  御指摘のとおりで、ここが一番大変で、ここができたら多分世界を制することができるだろうというふうに考えているのですけれども、では、どうやって作るのですかという話で非常に難しいと。
 それで、もちろんヒアリングをいろいろしたのですけれども、専門家もそれなりに少しずつ出てきているので、そういう人たちの力を借りながら作るということと同時に、トップダウン的な、ただ、先端計測事業の中でやるので、先端計測事業の中に絡めてやらないと意味がないと思うので、それを絡めながらこういうふうに考えればプラットフォームとしてつながっていくのではないかというやり方を取ったらどうかというのが1点。
 それから、やはり、大学の産官学のいろんな先生方、研究者の方々の力でもって、それを集積しないとプラットフォームはできていかないです。だから、プラットフォームをどういう形で、どういうフォーマットで、デジタルにした方がいいけど、どういうふうにして組み上げていけばプラットフォームになるのですかということをデザインして、それを応募してきた先生方に対しては、それなりに支援するみたいなことをやっていかないと無理なのではないか。予算も含めて支援というのはどういう形でできるのかなというのはまだイメージはないのですけれども、具体的にはそういう支援をやっていかないと、現実的には難しいでしょうねということを併せて、上からやるのと下のものをどんどんここに入れていくという形の取り組み方をして、終わってみれば自動的にプラットフォームができていますねという形に本当はしたいのですね。それをやらないと、プラットフォームを作りますというふうにしてやり始めたらみんな引いてしまいますから、多分できないと思うのです。だから、そういううまい仕掛けを作るところが、最初の仕掛けを作るところが重要だなと。この辺は、もしこういうことを考えてやるとしたら、JSTの協力とかをもらいながら一緒にやらないと駄目だと思うのです。そういう考え方です。
【二瓶主査】  ほかにいかがでしょうか。長我部先生、いかがですか。
【長我部委員】  私も、非常に深い考察に基づいてできていると思いますが、幾つか伺っていて思うところがあります。まず、課題のところで述べられているシェアの低下の話です。もともとこの先端計測は、研究に使われる計測器がかなり輸入品に頼っているというところから立てられたプログラムでした。10年間の比較ですが、なかなか難しいところがあるのではないかと思います。比較すべき対象は、現在のシェアというよりも、この10年間で他の国から出てきた計測器に対して、このプロジェクトから生み出したものを比較すべきだと思います。既存製品のシェアの上がり下がりは、個々の企業によってしまいます。先ほどの御説明で売上げが立っているのがプログラムを始めて6年目からとありました。したがって、世界市場でシェアとして意味を持つのは、もうちょっと後年にならないと結論できないと思います。
 それから、コストパフォーマンスの話が挙がっていています。このあたりは、官の役割と民の役割をどう考えるかというところの整理が必要と思います。当然ながら、このあたりはかなり民間がやるべきところであり、それに対して、このプロジェクトとしては、テクノロジーの面でコストを下げるアイデアであるとか、あるいはもっと大きな仕掛けを考えるとかその辺を、民と官という観点からもうちょっと整理した方がいいのかなという気がしました。
 3番目は、プラットフォームですが、確かに必要であるというイメージはあるのですけれども、それをどう実現するかが重要です。人材やナレッジが個々のプロジェクト単位ではなく、全体的に共通化されて次に生きていくようなイメージだと思うのですけれども。例えば、今、ナノテク材料で、マテリアルゲノムと称して、データベース的な考え方で、材料、シミュレーションの開発結果をデータベース化あるいはナレッジデータベースのような形にして新規の開発に生かそうとしています。一種の多分プラットフォーム化ということで、しかも、かなりバーチャルな形なのですよね。材料と計測機器の開発というのはちょっと毛色が違うので、ナレッジの集約の仕方がなかなか難しいますが。場所を作って人を集めてしまえば簡単と言えば簡単なのですけど、それを最初からやるというと、さっき佐藤主査代理がおっしゃったように困難でしょうし10年たったらできていたという形にするようなことかと思います。そういう知識の集約の方法をもうちょっと深掘りするようなタスクが必要なのではないかなというふうに思いました。
 以上です。
【二瓶主査】  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。杉山委員、いかがですか。
【杉山委員】  私も、これからの10年をみた計画の部分など、非常によくまとまっていると思います。特に4ページに、企業ニーズといいますか、特徴的なニーズとして3点挙げられているところは、材料系の企業メンバーとしての立場からは、非常に的を射た3つのポイントだと思っております。
 その上で、今、長我部委員からもお話がありましたプラットフォームに関して、7ページのところに、「フラッグシップ機器のコンポーネント化」というワードが出ています。これは非常に大事だと思います。やはり拠点を作っても、なかなか大きく作ると難しいところがあるので、一番重要なのは、フラッグシップ機器、これは電子顕微鏡やNMRのような装置だと考えておりますが、そこに人が集まる工夫が重要だと思っております。
 アメリカは莫大な予算を使って、多くの研究所が連携して動く点が特徴ですし、ヨーロッパは基礎研究が強いというのも特徴だと思います。またコンセプト形成が強い。それに対して日本の特徴は何かと考えますと、平均的なポテンシャルが非常に高いと思うのです。ただすぐれた研究者が埋もれている可能性がある。そこで計測機器に関わる部分ですと、技術オリンピック制度みたいなものを考えても良いと思います。プログラム開発などに対して国内でオリンピックをやると、かなり安い予算で興味深いプログラム提案がたくさん出てくるという話を聞いたこともあります。同じように、個々のフラッグシップ機器に関わる要素技術であれば、「こんな技術を開発したいが良いアイデアはないか」ということでオリンピック競技をすればいろんな面白い技術が出てくる可能性があると思います。
 つまり、人材という点においては、我が国はかなりの財産があるのではないかと思います。そのような人のアイデアを含めた技術が集まる仕組み、それを、やはり幾つかのフラッグシップ機器では必要だと思います。ここをプラットフォームの1つの考え方にしてはどうかと思います。
【二瓶主査】  今のお話は、どちらかというと、ヨーロッパ流のテクノロジープラットフォーム的な、小ぶりでもいいからそういうものを幾つか作って、より普遍的なプラットフォームの前段にすると、そんな感じですか。
【杉山委員】  そうですね。我が国の予算規模も考えますと。
【二瓶主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょう。
【森川委員】  森川です。私もこの委員会に参加させていただき9年間やらせていただいて、二瓶先生がまとめられた第一部を非常に印象深く昨日拝読していました。その上で、少し私の方から1つの切り口として御提案申し上げたいのは、やはり、評価に対してなかなか定量化が難しいというのですけれども、先ほど、一部の最後のところに、論文や特許の件数もありましたけれども、そこにもう1つ、私はベンチャー創出の件数というのは必要あるのではないか。というのは、民間サイドから、産業側から見ると、国家予算を投入して大学に研究開発をお願いして、基礎的にあるいは高度な研究をする、そこからベンチャーを創出して、それを今度、ハイテク企業あるいは大企業が買収していくというようなモデルになっていく必要があるのではないか。もちろん、このプログラムの中をオンリーワンとナンバーワンとそれにイノベーションタイプと分けているのですけれども、広い意味で言うと、ニーズ志向のイノベーションタイプというのですけど、このプログラム全体が、もっと大きな枠で見るとシーズになっていく可能性もあって、そういう意味で、共有プラットフォームというのは次の論点としてあると思うのです。
 それから、私は、特許の件数も重要なのですけど、今、問題になっているのは休眠特許というのがあって、結局、特許を出しても活用されてないといけないと。ということは、いかに民間企業が興味を持ってベンチャー、ベンチャーは別に小さい企業という意味ではなくて、大企業の切り出しのベンチャーであってもいいわけですから、そういうことを少し評価の1つのポイントとして考えるべきではないかと。
 といいますのは、私は、経済同友会で科学技術・イノベーション委員会というのに所属していまして、そちらでも、ドイツのフラウンホーファーモデルを今、考えているのですけれども、要するに、2,700億のうち7割は民間資金を持ってくるわけですね。1,900億ぐらい持ってくるわけです。それが今非常に成功していて、ドイツのベンチャーというのは、中小ベンチャーなのだけれども世界でベスト3に入るとかそういう企業が多い、これは圧倒的にドイツが強いわけなのですけれども、その辺りを同友会では注目して、経産省にいろいろ提案していった、昨日も実は片瀬局長をお招きしてディスカッションをしたのです。
 また、その問題意識というのは、今、民間から、産総研にしても理研にしても、そういうところが持ってくる金額は全体で890億円しかない、これは圧倒的に少ないと。要するに、我が国の研究開発費の8割は民間なので、その人たちが、このせっかくの政府の研究に参画するような、それが1つの形としてはベンチャー創出につながっていくのではないかと思うのです。ですから、そういう観点からちょっと評価というものもあってもいいではないか。
 だから、オンリーワン・ナンバーワンを作ったからイノベーションが起きるかというと、私は、ここは非連続だと思っています。五、六年前だったと思うのですけれども、この委員会でも、ちょうどiPodの時代です。要するに、オンリーワン・ナンバーワンをやっていって、エレメンツ企業はたくさん作っていくのだけど、結局、その半分以上はアンブレラ企業であるアップルが持ってしまう。今、我々も議論しているのはもうiPodじゃなくて、iPadでありiPhoneであって、それは必ずしもオンリーワン・ナンバーワンの技術をアップルが開発したわけでなくて、アップルの研究開発は、総額で年間2,500億ぐらいしかないので、少なくはないですけど、トップではないわけですよね。そういうところが作っていくと。
 だから、このイノベーションの議論の中でも、ニーズをと考えているのですけれども、やっぱり、スティーブ・ジョブズがやったのはニーズじゃなくてウォンツなので。ウォンツというのは、ニーズオリエンテッドでやったからできるかというとそうじゃなくて、やっぱり、共有じゃなくて、もう一つ上の融合みたいなのものがあるべきじゃないか。そうすると、共有プラットフォーム、一部における二瓶先生の分析の中でも、なかなか政権のいろいろなことがあって進まないというのもあるのですけど、それは、やはり、佐藤先生の御指摘のように、中核拠点が明確ではないといけないと。先ほど頂いたこの資料の中で、ナノテクプラットフォームは物材研が中心になっておられるということがありますけど、やはり、既存のところをうまく改編しながらやっていくと、理研は今いろいろあるかもれませんけど、逆に私は変革のチャンスであって、こういう観点から改編していくというような御提案を申し上げることも、決して今の時期、タイミングが悪いとばかりは言えないのではないかという問題意識がございます。
 ただ、今度、フラウンホーファーは応用研究で、基礎研究はマックス・プランクなので、今後の調査の中には、基礎研究と応用研究がドイツでどういうふうに分かれているのかとか。あと、同友会ではもう一つ、DARPAも注目して、DARPAにおけるプロジェクトマネジャーの育成の仕方とか、それから、ステージゲート方式で、こちらのプログラムも中間評価とかやっていますけれども、もうちょっときめ細かにステージごとに強化しながら見直していくということも、いろいろまだ学ぶべき点があるのかなと、雑駁ですが少しそのようなことを思いました。
【二瓶主査】  ありがとうございます。今のお話にございますけど、ベンチャーの位置付けというのが、どうも日本の現状でうまく機能してない。一度、ベンチャー企業のお立場の御講演を頂いたこと、たしか、タスクフォース会議だったかなと思うのですけれども、なかなか大学発のベンチャーというのは、大分、形になって表へ出てきたのですけど、森川委員のおっしゃる先ほどの流れの中のベンチャーは、日本で考えるとどんな形なのでしょうか。
【森川委員】  先ほど私も申し忘れましたけれども、今回の科学技術白書でも、世界で最もイノベーションに適した国へというのが副題で、その中で、簡単にしか触れられておられませんけれども、オープンイノベーションというのが必要になってくると思うのです。ベンチャーという、大学発ベンチャーが雨後のタケノコのようにできて、それが失敗したということで、すごく今悪いイメージがあるのですけれども、しかし、これも同友会で統計を取っているのですが、日本は2004年をピークに、もう5年前ぐらいに戻ってしまっているのですけど、やはり、依然としてアメリカのベンチャー創出力というのは右肩上がりに上がっているのです。ですから、ベンチャー悪玉論みたいなことで、私が先ほど少し申し上げたのは、ベンチャーイコールスモールカンパニーではなくて、大学発ですと大学だけやってしまうと、そこに民間が賛同するようなプロジェクトになったときのベンチャー創出力というのは、私はパワーがあるのではないかと。その辺りは是非、ちょっとドイツなどのリサーチもしていただいたらいいと思います。
 同友会も、昨年フラウンホーファーとかに視察に行った上でそういう提案をし、それで、経産省にお願いしているのは、そういうふうに民間から、例えば、産総研とか理研とかにお金を出すときの控除率が今低いわけですよね、日本は12%だと。フラウンホーファーだと6割の控除率ですから。ですから、リスクを取るということを、政府のお金を頂くことでリスクを回避するのと、お金も頂くけれども、自分たちでオウンリスクを出した人の税金の控除率を下げるということも、モラルハザードを防ぐ1つの方法だと私は思っているわけで、少しそういう意味では、従来のベンチャー論とは違ったアプローチがまだあり得るのではないかと、私は今回の今年の科学技術白書も拝見した上で、その辺りをもう少し見直してもよろしいのではないかどうかと。
 それから、この本プログラムの評価の意味でも、論文と特許と売上げだけじゃなくて、イノベーション創出といったときに、オンリーワン・ナンバーワンの延長線上だけだと、その定量性はなかなか難しいという意味で、そういう指標も加味していただいたらいかがかなと、そう思うわけです。
【尾嶋委員】  すみません。
【二瓶主査】  どうぞ。
【尾嶋委員】  いや、もうまさにおっしゃるとおりで、イノベーションとベンチャーは非常に関係あると思うのですが、具体的にこの10年間で、この先端計測のプログラムに関係したプロジェクトから生まれたベンチャーというのはどのぐらいあるのでしょうか。ほとんどないのでしょうか。
【久保室長】  ほとんどないというのが現状です。本プログラムは、産学連携が提案時に受皿として、企業が既にあることを前提として実施しております。ベンチャー創出という観点では、もう創出しているのが前提で応募していただくという形になっています。ただ、参画企業としてベンチャーは相当数が参画しております。例えば、大学発ベンチャーを設立した後、提案していただいているというのが現状でございます。
【尾嶋委員】  だから、ある意味では、生まれた赤ちゃんみたいなベンチャーをどれだけ小学生とか中学生レベルまで育てたという統計になるかもしれないということですか。
【久保室長】  はい。そういう統計のものは、幾つかのベンチャー企業の数として出てくるという形になるかと思います。
【尾嶋委員】  まず第1段階としてそれを統計に入れるというのが1つのやり方で、それで、10年後の目標として、ベンチャーの数を更に増やしていって、育てていくというのが、国家戦略のイノベーションと非常に合致しているのでいいのかなという感じを持ちました。
 それから、もう一つちょっとよろしいでしょうか。これは、全般的に見て、10年間で先端計測の新しい技術、新しい機器開発がいろんな分野で行われてきた、ということが非常によく分かる。じゃ、今後どうするのかということです。やはり、ヨーロッパとアメリカで1,000億円ぐらい使っているのに比べて、日本では何十億円というか……。
【二瓶主査】  50億レベル。
【尾嶋委員】  50億円ですね。そういう状況なので、やっぱり、全部にばらまくというのは、もう、これは国の戦略としてはちょっと無理じゃないかなという印象を私は持っております。今回、プラットフォームというのが非常にいろんなところでも出ており、10年後に、我々の第2期としてやっていったときに何を評価としていくのかなと考えます。第1期はいろんな新しい技術が生まれたというのでよかったと思うのですが、第2期は、基本的にはテクノロジープラットフォーム、共有プラットフォームが、このプログラムがあったからちゃんとできましたと、言いたい。分野は4つぐらいしかないかもしれませんけれどもという、それができたかどうかで、我々が歴史から評価されるわけです。逆に言うと、テクノロジープラットフォームにつながらないテーマというのは、全体の採択のうちの半分ぐらいにし、そこにつながらないテーマはもう採択しない、という方針もあろうかと思います。ちょっと極論を申し上げています。やはりシーズを積み上げるのは非常に大事だと思いますので、要素技術はやはりある程度残しておくにしても、何か大胆な切り口の変換があってもいいのかなと考えています。議論を起こすための議論かもしれませんが、そういう観点も大事かなと思いました。
【市川分科会長】  我々はどちらかというと、新しいシーズをずっと育てようということでやってきました。結構、売上げが上がっているのもそのシーズから全部派生しているのです。それで来ていますので、その部分は絶対、死守しなくてはいけないというのが我々の方針です。ですから、戦略的にやるのは、どちらかというと重点領域でやるので、世の中のその時点での流れなどを見ているつもりです。重点領域として、例えばグリーンイノベーションやライフイノベーションをやっているのですが、我々としては、やはり新しい先端技術を育てるということを第一に考えたいと思います。
 先ほど、プラットフォームというものが非常に議論されているのですけれども、このために、今、活用・普及促進というプログラムを同時にやっています。それは、ここで開発されたものをいかにうまく世の中に普及させようかということを、3年ぐらい前に始めていますが、余り予算がないので実は非常に困っている面があるのですけれども。非常に面白いテーマに関しては、そこでいろんな人が参加してもらって、この技術は非常に使えるということをなるべく世の中に広めようと努めています。今のところ活用・普及促進が、どれだけ役立っているかというのがまだ定量的には分かっていないのですけれども、そういうものが少しずつ認識され始めています。
 ただ、問題がありまして、性能が非常にすばらしいので、世の中に広まれば物すごくいいものがあって、最終的にはどこかで製品にしなくてはいけない技術がありますが、日本の企業はもうからないからというので腰が引けているのです。
 ところが、海外の企業は興味を持っているのです。そういう問題が起こったときに、プラットフォームを利用して我々が日本の技術を非常によくするためには、どうでしたら良いかを考える必要があります。つまり、売上げを伸ばすだけだったら、海外の企業に是非全部ノウハウとか特許とかも上げますよということであると、多分、海外の企業は非常にいいものだから、いろんなものと組み合わせて売ると思います。日本は何かせいぜい部品レベルに留まり、最終的な製品として要素技術をうまく使った装置は結局海外企業が売り出すというはめになるのではないかと心配しています。だから、そこら辺も含めて、何か、プラットフォームというか、日本の技術を非常に強くするようなうまい仕組みを作る必要があると思います。結局は、先ほど議論になったiPhoneと同じで、部品レベルでは日本は強いのですけど、最終製品は全部海外に持っていかれるということになりかねないのではと思います。何かそこら辺をうまくやらないといけないなというのが今の感想です。活用、普及の促進では、少ない予算を使いながらやっていますけれども、そこら辺を含めた戦略を考えてやらないと、結局は海外の計測メーカーにもうけをというか、全ていいところをみんなさらわれるということになるのではないかと思いますので、そこら辺も含めて、将来像を考えるということが必要かなと私は思っております。
【二瓶主査】  ありがとうございます。確かに、ライフイノベーション絡みでも、結構そういうのはありますよね。まだ、それこそ幼稚園か小学生ぐらいの技術なのですけれども、もう、どんどん外国の企業が唾を付けに来て、それなら金を出すからやろうというパターンがとても多いのです。ですから、せっかく文部科学省としては一生懸命やっているけど、その後のあたりが結構問題点だと思います。いや、手っ取り早く言えば、もう外国企業で花を咲かせようと思えば咲いてしまうのではないかという感じを持ちますよね。
【市川分科会長】  いや、それでいいのだということであればそういうふうにやりますけれども、やっぱり、それだとまずいのではないかと私は思います。
【二瓶主査】  どうぞ。
【杉山委員】  今、市川先生のお話を伺いまして、そういうすばらしい技術を作っていくのがプラットフォームの1つの姿だと思っています。
 例えば、ここでも電子顕微鏡とか、放射光というキーワードが挙がっていますが、そういうカテゴリーでフラッグシップ機器なりフラッグシップ領域を我が国が持っていれば、そこで生まれた新しい技術をどう生かすのか、また新しい技術を追加していくために、そこに人が集まる工夫をどうすればよいのか?を考えればよいのです。現状よりも、これをもっとトップダウン的に大きく推進していくことがプラットフォームの1つの姿だと思っています。そして、そこでの技術開発は必ずオープンイノベーションが大事だと思います企業の研究活動では、何か新しい装置開発に関するアイデアがあったときに声を掛けると、積極的なのは海外メーカーの方が多いと感じます。ただ、そういう海外の機器メーカーは、根幹となる要素技術情報は、非常にオープンな印象を持ちます。つまり、要素技術情報はオープンにして、その上で最先端の技術を誰がどこで開発しているのかということをいち早く知るとことが競争事項のように感じます。そのようなスタイルを生かしたプラットフォームを、日本でも作れるはずだと思います。
【二瓶主査】  どうぞ。
【飯島委員】  今、おっしゃったことは、すごくよく起こることだと思うのです。海外の、リスクを取るということが日本の企業は非常に下手なので。いや、本当にリスクマネジメントというところができないので、かなり完成してこないとやらないというところがあります。そこは、仕組みとしては、本当はいろんなオプションがあるのではないかなと思います。
 国際的に、閉鎖的になって国内だけでやろうとするとやはりすごく無理があるので、そこは、権利関係をどうやって日本のために維持して、海外の力を逆に利用できるかということを、もう一歩踏み込んで考えないと、取り残されてしまったらせっかくいい技術も使えないし、海外に評価されることも大切なので、その辺りのやり方は、経産省が考えることかもしれませんけど、本当はもう少し踏み込んで考えるべきだと思います。さっき、ベンチャーの議論がありましたけど、日本のベンチャーは、やはり、ちゃんとしたベンチャーキャピタリストが育ってないから、ベンチャーは育たないのです。要するに、やはり日本の中ではリスクを冒す人がいないということなのです。なので、そこはもう官主導のベンチャーでも本当はいいのではないでしょうか。
 私の記憶では、ライフサイエンス関係におけるドイツの初期のベンチャーは、みな官主導で、相当官の補助を出していました。いや、もちろん民からもお金を取るのですけど、民間だけにやらせようとすると、やはりリスクテークできない部分があるから、1つだけのオプションじゃなくて、いろんなオプションを考えて、その中で一番うまくいく方法論というのを考える時期なのではないでしょうか。単に閉鎖したから、ただ単に日本だけで積み上げようとしようとすると、それは少し現代の技術環境じゃ難しいのではないかと思うのですけど。
【尾嶋委員】  もう一つ極論を言えば、私は、プラットフォームの中に海外企業も入ってもいいのではないかなと思います。要するに、日本の企業は部品の作るところまでは得意、と言われていますが、やはり、実際には本当にもうけるところまでいくのを怖がっていると。よく、日本のサッカーはシュートを打たない、と言われており、それで負けたとは言わないのですけれども、やはりプラットフォームの中に外国の企業も入れて、場合によっては日本人も外国に行って、そこも含めたプラットフォームにしていく、そこでどんどんシュートを打って、ベンチャーを作って、失敗してもちゃんと面倒を見てあげますよというメンタリティーの改革をやらないとまずい。そういう大きな変革を、第2期の先端計測で行い、1つのいいイグザンプルとして、もっとシュートを打つ、売上げにつながる技術開発をやりましょうというきっかけになる、そういうプラットフォームになればいいのではないかという印象を持っています。
【二瓶主査】  どうぞ。
【長我部委員】  いろいろお話があったように、日本の企業の経営者に何が大事かというのを、ここ何年かずっとアンケートを採って海外と比較していたと思います。海外の経営者は、イノベーションがずっと上にあって、日本の経営者のアンケートでは、数年前は、低位にあったのですけれども、今年は2位ぐらいになっていたと思います。一般的にはバブル崩壊の後遺症が残っていて積極性が欠けていたのだと思います。しかし、それは回復傾向にあるのは間違いなくと思います。リスクテイキングは、やっぱり自分の体の中に刻まれたものが大きくてバブル崩壊以降に企業活動に参加した人のマインドセットというのは、縮み志向になる傾向があったと思われます。それを嘆いていてもしようがないわけで、それをどうするかということで、リスクテイキングとかベンチャリングスピリットというのは、さっき森川委員がおっしゃったように、西海岸タイプのベンチャーだけかというと、そうでもありません。イノベーションを創出するということにおいて、中堅企業や大企業の中にもあります。最近、『シリアル・イノベーター』という本が邦訳されたのですけれども、それは大企業の中で起こったイノベーションが多数紹介されています。そこにはシリアル・イノベーターと呼ばれる、ベンチャーを自分で作るようなマインドセットの人が企業の中にいて、マーケティングや技術を動かし、新しい製品を仕上げる、あるいは、従来の製品を画期的に変革するような、いわゆるベンチャーがやるような仕事を内部でやっているというところにもスポットを当てています。必ずしも、西海岸タイプのベンチャーや、エンジェルや、キャピタルからお金を得てやるものだけではない。
 そういう意味で、渡し手というのはいろいろな形があって、ベンチャーというのは、余り狭い意味だけで捉えない方がよくて、じゃ、そのベンチャリングスピリットをどうやって担保するかというと、先ほど、これも森川委員から出たように、税制とか、いろいろな目で、もうちょっと複合的に、国としては、本当はそういう制度を作るべきだと思います。もう一つ、この委員会との絡みで言うと、やはり圧倒的に情報量なのですね。海外の企業がアクセスしてくるというのは、全部事業にしたいからじゃなくて、情報をとにかく得て、その中から、最終的には、いろいろいいものがあると言っても、大体は駄目で、何かの課題を解決するものにならない限りは、やはりずっと存続する計測機器にならないので。でも、そのために、相当必死になって情報を集めるので、いろいろなところにアクセスするし、情報を得るためには、お金を掛けてもいると思います。その辺の最終的にいい計測装置を生み出すためのシーズ技術の探索に掛ける意欲、それと、課題を捕まえてきて、最終的に製品に仕上げなきゃいけないので、そういうイノベータースピリット。そういう人は、さっきの統計に表れているようにだんだん増えてきているので、やっぱりここで準備できることは、情報といいますか、シーズ技術をどうやってうまく発信して、それを企業の側にとっても、もうちょっとそれをちゃんと受け取れるようにするというあたりですかね。こういうのは経済省の仕事なのかもしれないのですけれども、やっぱり情報量がすごく大きいと思います。
【佐藤主査代理】  だから、そのやり方でうまくいくかというのが、みんなまだね。本当にそれでうまくいきますかねというのが、今まで10年間やってきて感じているところなので。
【長我部委員】  でも、そこは、さっきの大きなヒストリーから言えば、やっぱりバブル後の縮んだところから上向いたとすれば、今がチャンスなんじゃないですか。
【佐藤主査代理】  なるほど。
【森川委員】  一言、いいですか。
【二瓶主査】  どうぞ。
【森川委員】  ベンチャーはというと、本当にベンチャラスという感じなのですけれども、アントレプレナーだと思うのですね。それは別に、小企業、スモールカンパニーでも、ビックカンパニーでもあると。長我部さんに申し訳ないのですけれども、大企業の場合には、マーケットがある程度ないといけないと。だから、日立も、100億以上の市場じゃなかったら投資しないと川村前社長はおっしゃっていましたけれども、やはりそういうふうになってしまうと、ここで要素技術から始まって生み出していくようなところには、なかなか難しいと思うのですね。
 ですから、私はプラットフォームが終点だとは思わなくて、そこを基盤に、そこから産業化、ベンチャー企業になるのでしょうけれども、そういう出口があって、そこからそれが産業化していくと。それをまた大企業が評価して、吸収していくという。だから、先ほどベンチャーキャピタルは存在していないというのですけれども、大企業自体が大きなファンドなのですね。そういう、もっと大きなサイクルの中で、このプログラムをどう位置付けていくかという戦略的視点もよろしいのではないかと思います。
【二瓶主査】  ありがとうございました。大変有益な議論が続いておりますけれども、今月中、もう一回、この委員会がありますから、今のような大事な議論は、次回も恐らく必要になろうかという気がしております。
 実は、本日、もう一つ、お願いしたいことがありまして、資料2でございますけれども。
【佐藤主査代理】  資料1について、大筋として、流れがこういう方向でいいかどうかということだけ、皆さんに確認していただけますか。
【二瓶主査】  今、佐藤先生から、要するに、きょうの原案、第二部に関して、いろいろ御意見を頂きましたが、大筋、この方向でいいかどうかという御意見を承りたいということですがいかがでしょうか。ただいま出た御意見を組み込んでいただいて、お進めいただければよろしいとおもいますがいかがでしょうか。
 いや、皆さんの御意見は非常にポジティブな御意見ですから、いろいろな意味で新しい視点を入れて、特に尾嶋先生のチャレンジングな発言とかも入れて。(笑)
【尾嶋委員】  いやいや、危ない発言すぎてすみません。(笑)
【二瓶主査】  確かに、議論の軸としてはあり得るということで、お考えいただければいいのではないかと思います。
 ありがとうございました。それでは、資料2について、御説明いただきたいと思います。

○三宅研究開発基盤課課長補佐より、資料2に基づき説明があった。

【二瓶主査】  ありがとうございました。
 それでは、ただいま御説明に先立って、今後のこの案件の取扱いについての御説明、要するに、今回はこの資料を御覧いただいて、御意見を頂きたい。メールベースで御意見を頂ければ、次回、再度その内容を取り込んだバージョンで御審議いただきたいということですね。
 ただ、次回にこの議案は日付を打って決定事項とするということになります。
【三宅研究開発基盤課課長補佐】  はい。
【二瓶主査】  ということでございますので、よろしくお願い申し上げます。
 それでは、以上で、きょう準備したものは一通り御議論いただきました。事務局からまとめてください。

○三宅研究開発基盤課課長補佐より、今後のスケジュールの確認があった。

【二瓶主査】  私、1点、御紹介し損なっておりますが、資料1の最後に参考資料を付けるということで、現在、検討しております。今付いておりますのは、参考資料2、たまたま番号はそのままですが、これはJSTが4年前におまとめになった「先端計測分析技術・機器開発 在り方検討委員会報告書」のレポートに「国内及び海外における先端計測分析技術・機器開発の類似制度」という資料がございまして、これを御覧いただきたいと思います。もしよろしければ、現時点でこの情報は大変役立つと思いますので、今回のレポートの参考資料に付けたいと考えております。
 それから、これ以外も参考資料を幾つか準備しておりまして、今回、お示しいたしませんでしたが、平成22年度発行の「我が国の知的創造基盤の強化に向けて」の参考資料の一部も、現在の時点に更新して付けたいと考えておりますので、次回、御意見、御審議いただければと思っております。以上でございます。
 本日の会議は、これにて終了させていただきたいと思います。よろしゅうございますか。
 それでは、どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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