資料6 先端計測分析技術・機器開発プログラム平成26年度におけるプログラム実施の基本方針(案)

先端計測分析技術・機器開発プログラム
平成26年度におけるプログラム実施の基本方針
(案)

平成26年月日
科学技術・学術審議会
先端研究基盤部会
研究開発プラットフォーム委員会
先端計測分析技術・システム開発小委員会

独立行政法人科学技術振興機構(以下、「JST」)の研究成果展開事業 先端計測分析技術・機器開発プログラム(以下、「プログラム」)の平成26年度の実施にあたっては、以下の事項を踏まえた上で推進することが求められる。

1.プログラムの現状
先端的な計測分析技術・機器は、最先端かつ独創的な研究開発成果や、社会的重要課題の達成に資する革新的技術などを創出するための重要なキーテクノロジーであり、我が国の科学技術の共通基盤である。プログラムの実施を通じて、オンリーワン・ナンバーワンの計測分析技術に基づく機器を生み出し、現場に普及させ、科学技術イノベーションを牽引していくことが重要である。
本プログラムは、平成24年度より開発者とユーザーとの連携を強めることを目的として、ターゲット指向型の開発取組の強化(重点開発領域の設定)と、JSTにおける推進体制の再構築を行ってきたところであり、平成26年度においても引き続き開発取組の強化と効率化(重点開発領域の最適化)を実施し、府省連携に係る取組を踏まえつつ、ユーザーを意識した計測分析技術・機器・システムの開発取組を強化していくことが重要となる。
一方、革新的な計測分析技術を絶え間なく創出し、新しい科学の潮流を生み出していくためには、一般領域における、革新的な技術シーズを着実に製品化までステップアップさせていく取組も引き続き強化していくことが重要である。さらに、様々な計測機器から得られる大量の情報から新しい価値を生みだすといった、世界の動向を睨んだ重要な基礎技術の芽が生まれる機会を逃さないことも念頭に、ターゲット指向型の重点開発領域とシーズ指向型の一般領域をバランス良く推進・強化していくことが重要となる。

2.重点開発領域について
  本プログラムでは、現在、重点開発領域として「ライフイノベーション領域」、「グリーンイノベーション領域」及び「放射線計測領域」を設定している。
「ライフイノベーション領域」においては、医療分野の研究開発の司令塔機能に係る政府全体の議論の進展を踏まえつつ対応することとするが、本領域の重要性については、科学技術イノベーション総合戦略等からも明らかであり、府省連携に係る取組においても重要な領域であることに変わりはなく、引き続きユーザーを意識した計測分析技術・機器・システムの開発取組を強化していくことが重要となる。
「グリーンイノベーション領域」においては、日本再興戦略で提言された、「インフラ環境の改善」、「インフラビジネスの競争力強化」及び「クリーンエネルギー社会の実現」や、PM2.5等を始めとする環境汚染物質等による健康影響等が懸念されている社会状況を踏まえ、環境・エネルギー分野に関するこれまで以上の発展・強化が求められている。このため、重点開発領域として、本領域を拡充し、新たに「環境問題解決領域」を設定し、府省連携に係る取組の状況を踏まえつつも、より広範囲の環境・エネルギー問題に取り組めるよう強化する。本領域の公募及び開発推進にあたって、本領域を拡充し、新たに「環境問題解決領域分科会」をJST推進委員会の下に設置し、事業推進することが求められる。
「放射線計測領域」においては、平成26年度の新規採択は実施しないが、被災地域の復旧・復興及び被災者の暮らしの再生に直結する必要性が求められていることから、本領域において実施されている課題の成果をどのように社会に実装していくかを検討していくことが重要である。
重点開発領域において設定する具体的な開発対象課題は、社会や研究現場からのニーズに対応し、第4期科学技術基本計画、日本再興戦略に直結する取組である。このため、重点開発領域の推進にあたっては、開発者とユーザーに加えて、関係府省とも密に連携した体制の下で取組を推進していくこと求められる。

2-1.ライフイノベーション領域について
  医療分野の研究開発の司令塔機能に係る政府全体の議論の進展を踏まえつつ、医療現場等のユーザーニーズに適合し、検査・診断技術の向上、患者の負担軽減及び医療費の抑制に貢献することを可能とする計測分析技術・機器・システムの開発の継続課題を引き続き実施する。
  また、医療分野の研究開発の司令塔機能に係る政府全体の取組における、本領域の最適化については、情報収集を行うとともに引き続きライフイノベーション領域において革新的な検査・診断技術・機器の開発に最重点を置くことができるよう働きかけ、調整することが望まれる。
 
2-2.環境問題解決領域について
地球規模の気候変動への対応と持続可能なクリーンエネルギーの確保といった社会的課題に対応するため、引き続き、太陽光発電、蓄電池、燃料電池の飛躍的な性能向上と低コスト化を推進するための計測分析技術・機器・システムの開発を行うとともに、新たに微小粒子状物質(PM2.5等)等の他、大気汚染、土壌汚染、水質汚濁等を引き起こす環境汚染物質の構造・状態等を計測分析する技術・機器・システムの開発を実施する。
また、インフラ環境の改善等を実施するため、構造物の非破壊検査、モニタリング等を効果的・効率的に実施し、構造物の劣化・損傷等を点検・診断・評価する先端的な計測分析技術・機器・システムの開発を、府省連携の議論の進展を踏まえつつ対応することとする。

<具体的な開発対象課題>
・太陽光発電、蓄電池、燃料電池の飛躍的な性能向上と低コスト化を目指した優れた研究開発成果創出を図る上でボトルネックとなっている計測分析技術・機器の開発とシステム化に重点を置きつつ、環境問題解決領域分科会での更なる検討結果を踏まえた上で、公募要領等に明示していくことが望まれる。
・微小粒子状物質(PM2.5等)等の環境汚染物質に関する計測分析技術・機器の開発とシステム化に重点を置きつつ、環境問題解決領域分科会での更なる検討結果を踏まえた上で、公募要領等に明示していくことが望まれる。
・構造物の劣化・損傷等を点検・診断する計測分析技術・機器の開発とシステム化に重点を置きつつ、環境問題解決領域分科会での更なる検討結果を踏まえた上で、公募要領等に明示していくことが望まれる。

(想定される開発課題例)
・太陽電池の不純物や欠陥の可視化・定量化、蓄電池・バッテリーの発熱現象や発煙・発火機構の解明、燃料電池の作動環境での異相界面現象等の解明に貢献する技術・機器・システム
・大気汚染物質(PM2.5等)、土壌汚染物質、水質汚濁物質の発生起源、成分の解析等に貢献する技術・機器・システム
・土壌、湖沼など閉鎖性水域の水質・底質、海底土等における放射性物質を含む多様な汚染原因物質を詳細に分析する技術・機器・システム
・大型構造物の劣化状況等をキロメートルオーダーからナノメートルオーダーまでマルチスケールで統合的に解析するシステムの構築に貢献する計測分析技術・機器・システム
・鉄・コンクリートの損傷・劣化機構等の解明に貢献する技術・機器・システム

<開発タイプ>
平成26年度の新規公募は、「要素技術タイプ」、「機器開発タイプ」及び「プロトタイプ実証・実用化タイプ」を対象として実施する。

2-3.放射線計測領域について
本領域は、復興庁が所管する「東日本大震災復興特別会計」で実施する取組であることに鑑み、被災地域の復旧・復興及び被災者の暮らしの再生に直結する、放射線量及び放射能濃度の迅速かつ高精度・高感度な把握を可能とする機器・システムの開発を行う。
平成25年度で新規採択を終了し、平成26年度からは継続課題のみを実施するが、本領域におけるこれまでの成果を被災地等に実装していくことに重点を置き、被災地におけるシンポジウム等を実施するなど、社会実装に向けて取り組むことが望まれる。

3.重点開発領域以外について
我が国の創造的・独創的な研究開発活動を支える先端研究基盤の強化を図る上で、「一般領域」において革新的な技術シーズを着実に製品化までステップアップさせていく取り組みを強化することが重要である。そのため、より趣旨が明確になるよう領域名を「一般領域」から「最先端研究基盤領域」と変更し、本プログラムが掲げる「オンリーワン・ナンバーワンの計測分析技術に基づく機器」を生み出していく課題を実施することとし、平成26年度の新規公募は、「要素技術タイプ」、「機器開発タイプ」、「実証・実用化タイプ」を対象とする。また、様々な計測機器から得られる画像等の情報を解析し新たに体系的な知見を得ることを目的とした情報処理に係る開発案件についても、「要素技術タイプ」の対象とする。
なお、本領域と重点開発領域との重複が生じないよう工夫することが望まれる。
  
4.その他の重要事項について
○ 予算状況に鑑み、平成26年度はこれまで以上に課題の採択を精査し、ターゲット指向型の重点開発領域とシーズ指向型の最先端研究基盤領域のバランスに配慮し、より社会に貢献できる重要課題や波及効果が大きいと思われる革新的な課題を中心に柔軟かつメリハリのある課題採択をすることが求められる。
○ 「開発成果の活用・普及促進」の取組について新規公募を実施する。本プログラムにおいて採択及び終了した課題において作成された機器等を有力ユーザーに供し、機器等の普及を推進する。また、計測分析技術についての標準化に向けて、これまで本プログラムで採択された研究開発課題の成果や波及状況を検証し、有力な機器等については、プロトタイプ機を複製し、複数の研究機関に配布することにより、広くユーザーが活用できる場を構築していくことが必要である。そのため普及促進については重点的に予算を配分していくことが望まれる。
〇 先端計測分析技術・システム開発小委員会及びJSTに設置された推進委員会・各分科会の連携を強化し、採択課題に関する情報のフィードバックまで一貫した体制を構築する。
 〇 JST推進委員会の体制については、応募件数が増加傾向にあること等により総合評価分科会の役割が過重になってきていること等を鑑み、中間評価・事後評価は、課題選定を行った分科会を実施主体とすることが望ましい。
 〇 JSTは、開発成果情報等を適切に検証し、外部への成果発信を戦略的に行うなど、プログラムの広報の一層の強化に努めることが求められる。
 〇 先端的な計測分析技術・機器は、我が国全体としての「研究開発プラットフォーム」の構築・発展にとって極めて重要な要素となる。この重要性を踏まえた上で、国及びJSTは、本プログラムによる開発成果が、国の重要な研究開発プロジェクトや共用施設・設備の高度化に着実に活用されていくよう、関係者との連携を一層強化していくことが求められる。
 〇 様々な計測機器から得られる情報の新しい取り扱い方について、本プログラムの中での先導的な要素技術開発として捉え、ナノテクノロジープラットフォームに代表される研究基盤の共用・プラットフォーム化と連動して、先行するプラットフォーム関係者との連携を強化していくことが求められる。
(別添)

第7期 科学技術・学術審議会 先端研究基盤部会 研究開発プラットフォーム委員会 
先端計測分析技術・システム開発小委員会 
委員名簿

平成25年12月19日現在

(臨時委員)
二瓶 好正 主査   東京大学名誉教授
長我部 信行      株式会社日立製作所中央研究所所長
尾嶋 正治      東京大学放射光連携研究機構特任教授
田中 耕一      株式会社島津製作所シニアフェロー

(専門委員)
飯島 貞代      三菱化学株式会社経営戦略部門RD戦略室三菱化学フェロー 
江原 直行      応用光研工業株式会社代表取締役
大堀 謙一      株式会社堀場製作所開発本部理事
小野 幸子      工学院大学工学部教授
佐藤 了平 主査代理 大阪大学名誉教授、大阪大学産学連携本部特任教授
菅野 純夫      東京大学大学院新領域創成科学研究科教授
杉沢 寿志      日本電子株式会社経営戦略室戦略企画部部長
杉山 昌章      新日鐵住金株式会社先端技術研究所解析科学研究部上席主幹研究員
瀬藤 光利      浜松医科大学医学部教授
竹内 孝江      奈良女子大学研究院自然科学系化学領域准教授
中村 志保      株式会社東芝研究開発センタースピンデバイスラボラトリー 研究主幹
藤宮  仁      株式会社ダイナコム代表取締役
森川  智      ヤマト科学株式会社代表取締役社長
森口 祐一      東京大学大学院工学系研究科教授
柳沢 正史      筑波大学教授
山科 正平      北里大学名誉教授

(敬称略、五十音順)

お問合せ先

文部科学省 科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 

麻田、橋本、下須賀
電話番号:03-6734-4098
ファクシミリ番号:03-6734-4121
メールアドレス:kibanken@mext.go.jp

(文部科学省 科学技術・学術政策局 研究開発基盤課)