研究基盤戦略上の各種課題に対する研究開発プラットフォーム委員会における検討結果について

平成25年8月26日
科学技術・学術審議会 先端研究基盤部会

1.はじめに

平成24年8月7日に取りまとめられた科学技術・学術審議会先端研究基盤部会報告書「科学技術イノベーションを牽引する研究基盤戦略について~研究開発プラットフォームによる研究開発力強化策~」(以下、「報告書」という。)を踏まえ、先端研究基盤部会に置かれている研究開発プラットフォーム委員会において、研究開発プラットフォーム構築に向けて必要となる以下の3つの具体的課題について、集中的に検討を行った。

・共用施設・設備について、海外企業が成果専有利用を希望する場合の取扱い
・適切な利用料金の考え方、各機関が利用料収入を獲得するインセンティブの高め方
・「研究開発プラットフォーム」の取組効果を測るための指標等の明確化

 各種課題について検討を行った結果について以下の通り取りまとめる。

2.検討結果

2.1.『共用施設・設備について、海外企業が成果専有利用を希望する場合の取扱い』について

<報告書抜粋>
(海外からの利用の取扱い)
○ 共用取組を実施する施設・設備については、国際的な頭脳循環の拠点としての位置付けを持つことから、施設・設備の利用に当たっては、国内外の優秀な研究者が等しく利用できる体制を有することが望ましい。
○ ただし、海外企業が成果専有利用を希望する場合の取扱いについては、現時点で統一的な対応指針が存在していないため、今後、国は、海外施設の取組状況等を踏まえつつ、適切な利用の取扱いについての基本的考え方を明確化していくことが望まれる。

○基本的な考え方

共用取組を実施する施設・設備を海外企業等が成果専有利用を希望する場合の取扱いについては、その利用が国内の研究開発や経済活動等への貢献が見込まれれば、利用料金等、国内企業等が成果専有利用を希望する場合と条件の差は原則として設けない。
ただし、共用取組を実施するにあたり、各種法令や規則の遵守は当然の前提であるため、必要に応じて、課題選定や課題管理に際し特別な項目を設定することや利用の制限を行うことが求められる。また、受入れ体制の構築等にかかる諸費用について特別の費用負担を求めることを排除するものではない。なお、いずれの場合も、その理由・根拠を明らかにした上で実施することが望まれる。

○理由

 共用取組を実施する施設・設備については、国際的な頭脳循環の拠点としての位置付けを持つことから、施設・設備の利用に当たっては、国内外の優秀な研究者が等しく利用できる体制を有することが望ましいとされている。一方、日本の税金を投入して立ち上げた施設・設備を、国内外のユーザーが同じ料金で利用できるという考え方については、特に成果専有利用において問題となるところである。
しかしながら、成果専有利用も含め、海外の研究者・産業界と共用取組を実施する機関との間で研究交流や意見交換が行われることにより、研究ネットワーク構築・深化や、研究支援者等の能力向上にも寄与し、機関における新たな研究成果等に結びつく可能性が期待できることや、諸外国の大型研究施設に関する申請条件においても、内外による区別がないものが大勢を占める中、日本だけが著しく閉鎖的な状態にあることは避けるべきであるという点から、特段の差異を設けないことを原則とする。なお、課題の選定や審査の際には、国内の研究開発や経済活動等に一定の貢献が見込まれること(例えば、国内企業等との共同申請であることや国内の現地法人による申請であること等)を考慮することが望ましい。
ただし、各種法令・規則の遵守は当然の前提であるため、必要に応じて、課題選定や課題管理に際し特別な項目を設定することや利用の制限を行うことが求められる。特に、法令上の観点からは、例えば、外国為替及び外国貿易法では、国際的な平和及び安全の維持の観点から、特定の技術の提供並びに貨物の輸出について、経済産業大臣の許可を受けることが義務づけられているなどの状況があり、これらの法令に抵触する可能性が考えられる場合には、利用に当たり、各種制限を設けることは、法令遵守の立場からも必須である。
また、翻訳・郵送・通信料等、実費負担となる費用を中心に、海外からの申請であるがゆえに追加で負担となる費用については、根拠を明確にしつつ、その費用負担を求めることは、一定の理解を得られるものと考えられる。
なお、いずれの場合も、その理由・根拠を明らかにした上で実施することが望ましい。

2.2.『適切な利用料金の考え方、各機関が利用料収入を獲得するインセンティブの高め方』について

<報告書抜粋>
(共用を促進するためのシステム改革)
○ なお、各機関が共用取組を実施する際、利用料収入を当該年度の活動に充てることは可能であるが、利用料収入を更に効果的に活用できるための方策、利用料収入を獲得することのインセンティブを高める方策について、国は、今後更なる検討を進めていくことが望まれる。

○基本的な考え方

 共用取組を実施する際の利用料金の設定に当たっては、その利用料収入が共用施設・設備や共用体制の整備・向上、支援員の配置等に充てられることを基本とすることが望ましい。その際、利用料金の算定の根拠を利用者に対し明確にすることが求められる。
 また、各機関における共用取組が一定程度定着した後には、利用料収入を施設・設備の充実・メンテナンス、技術者等の雇用、成果専有利用における機密保持に係る体制整備等の費用に充当し共用体制の整備・価値向上を図ることを目的とし、各機関の状況に応じて、これらに必要な各種経費から適切な利用料金を設定することが望ましい。
 ただし、成果公開利用においては、施設の設置目的等に応じて、利用料金の低減や消耗品費等の実費負担のみ又は無償等の設定が求められる。
 なお、関係機関は、これらの取組が可能となるよう、各種制度を整備・改善することが求められる。
 
○理由

 共用取組を実施する際の具体的な利用料金(共用施設・設備の利用に際し、消耗品等の実費を含め、利用者が支払うべき料金を指す)の設定に当たっては、施設・設備によって状況が大きく異なることから、利用料金が共用取組の維持・充実、支援員の配置等に充てられるという基本的な考えをもとに、利用者に対し算定の根拠を明確にすることが望ましい。その際、算定の根拠となりうるべき要素及び費目(人件費・消耗品費・光熱水費・保守費・設備費等)を明示するなど設定に当たっての枠組みをつくり、各機関がそれを参考として料金を設定することも考えられる。
 また、共用取組を開始した初期の段階では、共用率の向上や利用者の拡大を図るため比較的安価な利用料金を設定することは考えられるが、利用者の認知や活用が一定程度拡大・定着した後には、その利用料収入を共用取組の価値向上に充てることを目的とし、各機関の状況に応じ、適切な利用料金を設定し、共用事業に提供できる各施設の資源の範囲内で共用率の向上や利用者の拡大を図ることが、より適切であると考えられる。
 これは、各種利用者が共用設備を用いる理由として、単に設備の金銭的な問題だけではなく、機器のメンテナンスや機関における実験のノウハウ・ソフトウェア等の周辺技術等への期待も存在し、その向上が更なる共用の促進につながることや、例えば、試料交換の自動化設備を導入する等、設備投資を行うことで、共用施設・設備の効率的な活用や稼働率の向上を図ることが考えられるからである。
 特に、成果専有利用では、利用者からは、機密保持の管理体制やその契約についての取組が強く求められることから、機密保持に必要な施設整備や、機密の公開範囲等の明文化など、各種体制の整備を行う必要がある。このことからも、その取組に必要な適切な利用料金を設定し、利用者側の信頼に耐えうる体制整備に努めるべきである。
 なお、学術研究を中心とした成果公開利用においては、共用取組を行う施設・設備の導入の経緯や施設・設備を保有する各機関のミッション等も勘案し、利用料金の低減や消耗品費等の実費負担のみ又は無償等の対応も求められる。
 また、関係機関においては、各機関が利用料収入の獲得やその活用を行う上で必要な各種制度の整備や、共用取組の支障となる制度(利用料収入の増減が運営費等ほかの収入に影響する、等)の改善に取り組むことが求められる。

2.3. 『「研究開発プラットフォーム」の取組効果を測るための指標等の明確化』について

<報告書抜粋>
(研究開発プラットフォームの効果)
○ 中核的機関を中心とする全体ネットワーク、機能別のサブプラットフォーム、個々の共用施設・設備といった単位で必要な具体的取組を実行することにより、我が国が保有する研究基盤の力を最大化するとともに、これを国際競争力の強化につなげることが可能となる。
○ 「研究開発プラットフォーム」というシステムの構築を通じて、我が国の科学技術イノベーション政策における研究基盤に関する取組が目指すべき方向性、言い換えれば、我が国の研究基盤の「在るべき姿」について、全ての関係者の間で共通認識が図られていくことが期待できる。
○ 研究基盤全体としてPDCAサイクルを効果的に回していくことが重要であり、国は、「研究開発プラットフォーム」による取組効果を検証するための指標等を今後明らかにしていくことが求められる。

○基本的な考え方

 共用取組やプラットフォームの取組効果を測るために特に重要な指標としては、施設稼働率や外部利用時間・件数、論文・特許件数等が考えられ、これらは、各機関が各々の立場で共用取組の重要性を主張するために最低限準備すべき指標である。また、利用者の満足度という視点も重要であり、今後、具体的に、利用者が満足しているという事実が浮かび上がってくるような指標の考え方を検討する必要がある。さらに、これらの指標等を通じ、研究開発プラットフォーム全体の取組効果を検証することが求められる。

○理由

 共用取組が行われている各施設・設備やサブプラットフォームは、その施設規模や成り立ち、国の支援体制等によって定量的指標の考え方が異なってくるため、共通的・統一的な定量的な指標を設けるのは困難であるが、様々な指標が考えられる中で、特に重要な指標としては、施設稼働率や外部利用時間・件数、論文・特許件数が考えられる。これらは、各機関が各々の立場で共用取組の重要性を主張するために最低限準備すべき指標である。また、優れた研究成果の創出、利用者や利用分野の多様化、新たな研究領域の開拓といった定性的な指標も重要である。ただし、それら指標の内容やその解釈は、それぞれの施設・設備やサブプラットフォームによって異なるものであり、一概に比較できるものではないということは留意する必要がある。
また、利用者の満足度が高いとされる取組は、共通して、その取組に魅力があり、国際的にも優位性が高いものと考えられるため、今後、具体的にその指標の考え方を検討する必要がある。
さらに、研究開発プラットフォーム全体の検証を行うことも重要であり、上記の指標のほか、プラットフォームにおける施設・設備の配置の状況や、一体的な運用の状況、人材交流の状況等の指標を通じ検証を進めていく必要がある。
なお、比較的小規模な施設では、評価に当たり、定量的な評価項目をまとめることに相当な精力を使っているという指摘もあることから、みだりに評価の項目を増やすのではなく、各機関が各々の立場で重要性を主張するのに必要な指標を検討し、評価指標の適正化に努めることが望ましい。

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科学技術・学術政策局 研究開発基盤課 

(科学技術・学術政策局 研究開発基盤課)