資料2-1 次期共用プラットフォーム形成に向けた今後の展開について(案)

平成27年8月3日
科学技術・学術審議会
先端研究基盤部会
研究設備共用プラットフォーム委員会


(ポイント)
・プラットフォーム化の推進
-ワンストップサービス化
-技術・サービスの高度化、効率化
-「ユーザー」と「開発者」を結びつける場

・技術支援体制の確立
-専門スタッフのキャリアパス
-民間活力導入

・研究開発と共用の好循環モデルの確立
-融合・新興領域の拡大
-若手研究者等の速やかな研究体制構築

(本文)
1.先端研究基盤共用・プラットフォーム形成事業の総括
本事業は、先行の先端研究施設共用促進事業の後継事業として平成25年度より新たに共用の取組支援とプラットフォーム形成支援を行う事業としてスタートした。産学官の幅広い研究者に開かれた共用の体制を構築し、もって「科学技術イノベーションによる重要課題の達成」、「日本企業の産業競争力の強化」、「研究開発投資効果の向上」に貢献することを目的として実施された。これまでの実績報告からは、利用料設定を初めとした共用体制の構築、利用件数の増加、産業界利用割合83%達成、「ヘパリン製剤の不純物混入による世界的な副作用問題に対して、試験法としてNMRが日本薬局方に指定されたことによる安全かつ安定供給への貢献」に代表される利用成果の創出など、施設・設備の共用が着実に進んだことがうかがえる。一方、利用料収入による運営経費の確保等自立的な共用体制の維持などについては現行事業での達成は困難であると予想される。ネットワーク形成については、ワンストップサービス化、課題選定委員の兼任による運営体制の共通化、広報活動の共同実施など成果を上げたものも多いが、研究現場からは多数の要望もよせられている。今後、ユーザーによる「利用」とユーザーニーズを反映した「機器開発」をつなぐための「場」の形成や技術スタッフの人材育成機能の強化、先端共用機器を最大限活用するための試料調製から応用法開発・データ解析に至るまでのユーザー支援、ユーザーコミュニティ形成、開発利用の橋渡し、初期市場形成、受託分析企業との連携や複数企業による技術スタッフ派遣、標準化や基準形成、プラットフォームの拡大やプラットフォーム間連携、データポリシーに基づく利用データの蓄積、研修等を通じた人材育成、スキル認定などを通じたキャリアパス形成、事務管理業務の効率化など課題も明らかになった。

2.今後の展開
(1)プラットフォーム化の推進
研究開発基盤を維持・高度化するためにも、プラットフォーム化は有効である。施設の利便性の向上を図るため、プラットフォームの施設利用を希望するユーザーに対してプラットフォームが有する装置や利用状況等を提供するなどのワンストップサービス化、様々な利用技術の高度化、ユーザーコミュニティ形成を含む利用と機器開発の連携拡大など、上記に上げられた課題に取り組むべきである。
また、各施設で技術スタッフの確保が問題になっているが、単独の機関では取り組みにくい、キャリアパス形成、研修・情報交換等機会の提供などプラットフォームのメリットを最大限活かして推進すべきである。
プラットフォーム化することにより、基盤的経費が減少する中で効率よく研究開発基盤を維持・高度化を図り、最先端NMR装置を始め高額な大型研究装置類については、プラットフォームが一体となって戦略的な導入と活用を推進することが必要である。
なお、本年度よりJST先端計測分析技術・機器開発プログラム事業において先端研究基盤共用・プラットフォーム形成事業と連携した公募を実施しており、その応募状況等も踏まえて、政策効果を高める連携を推進すべきである。これにより、プラットフォーム側としては研究開発基盤の高度化加速、開発者側としては技術の実用化加速、という施策どうしの相乗効果が期待され、ユーザー側としてはプラットフォームを使うモチベーションにもつながる。

(2)技術支援体制の確立
大学や研究機関が自らの財源で共用及び技術支援、機器管理に関する専門スタッフ(リエゾン、コーディネーター、マネージャー、技術専門スタッフ等)を確保し、必要な技術支援体制を維持していくことは、基盤的経費の減少に伴い年々困難になっている。このような厳しい状況下では、技術支援体制を確立するどころか、そもそも若手が技術スタッフを目指すモチベーションが奪われ、担い手が枯渇し、我が国の研究開発基盤の根幹を揺るがすことに直結する。それを防ぐためにも、日本全体で設備・機器の共用化を進め保守管理業務を集約化し、効率化を図ることで限られた人数のスタッフでも研究開発基盤を維持できる体制を確立すべきである。
各機関における技術スタッフの減少は機関全体の人事(定員)、基盤的経費など機関全体の問題でもある。研究者も含め大幅な人員の増が見込みにくい中、民間活力を最大限活用した経営の視点も不可欠である。特に、最新の施設利用データが集まるプラットフォームの強みを活かして、メーカーや受託分析企業との連携、複数企業による技術スタッフ派遣の検討など研究開発基盤の維持に向けた政策として検討を進めるべきである。その際、国と機関、連携企業のそれぞれの役割を明確化しておく必要がある。

(3)研究開発と共用の好循環モデルの確立
設備・機器の共用を進める中、単なる効率化のみを追求するのではなく、研究そのものにも良い影響が生じるような政策を目指すべきである。具体的には、異分野の研究者の共用機器活用による融合・新興領域の拡大や共用機器の活用による若手研究者や海外・他機関から移籍した研究者の速やかな研究体制構築、多言語対応など国際化に対応した利用環境を基にした国際共同研究の伸長など、新たな研究が生まれてくる土台となるような共用の仕組み作りを進めるべきである。また、共用機器化による保守・設備費の効率化に伴い、実質研究費の増加となるような、厳しい財政状況の中、研究の国際競争に負けない体制を目指すべきである。

なお、本提案は、第5期科学技術基本計画に向けた議論の中でも、方向性が打ち出されているプラットフォーム化の推進に向け、次期共用プラットフォームの制度設計に貢献するため、とりまとめたものであり、先端研究基盤共用・プラットフォーム形成事業(H25-27)自身はまだ実施中であり、事業として行われる事後評価とは別のものである。

お問合せ先

文部科学省 科学技術・学術政策局 研究開発基盤課

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電話番号:03-6734-4098(直通)
ファクシミリ番号:03-6734-4121
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(文部科学省 科学技術・学術政策局 研究開発基盤課)