【資料1-6】大強度陽子加速器計画中間評価報告書(平成19年6月)における指摘事項への対応状況(案)

第2期計画について

(1)物質・生命科学実験施設及び原子核・素粒子実験施設

 中性子・ミュオンのビームラインの高度化、ハドロン実験施設の拡張などについては、関連する研究者コミュニティで、当該分野における優先順位付けを行い、その時点での財政状況等を踏まえつつ、判断していくことが必要

(中性子)

 中性子利用のユーザーコミュニティである日本中性子科学会が策定したグランドデザイン(「J-PARCグランドデザイン策定に向けて 最終報告書」2008年10月)に従って装置の選定・整備を進めており、上記指摘に適切に対応している。

(ミュオン)

 最初の汎用ビームラインであるDラインの次として、コミュニティ内で議論し、超低速ミュオンを発生するUラインを優先することとした。コミュニティの努力により、競争的資金によりUライン建設が実現しており、上記指摘に適切に対応している。

(ハドロン)

 

(2)核変換実験施設

  • 核変換技術については、重要な基盤技術として引き続き研究開発を進める必要がある
  • 核変換実験施設の整備については、原子力政策全体の中で検討していく必要があり、今後、原子力委員会等の評価を踏まえて進めていくことが適当である

(3)フライホイール

 50GeVシンクロトロンの運転状況を見ながら適切な時期に再度レビューを行い判断することが必要

多目的研究施設としての運用体制の構築について

(4)J-PARCの運営に当たっては、国際諮問委員会や利用者協議会などの仕組みを有効に活用することにより、ユーザーの意見を汲み上げるような運営を目指すことが必要

 国際諮問委員会や利用者協議会をはじめとした外部の委員で構成される各種委員会を定期的に開催し、ユーザーの意見を適切に運営に反映させており、上記指摘に適切に対応している。

(5)J-PARCセンターの円滑な運営のためには、センター長のリーダーシップはもとより、各副センター長の明確な役割分担やディビジョン長への必要な権限と責任の付与が必要

 各副センター長の役割分担は明確になっている。ディビジョン長への必要な権限と責任の付与については、引き続き課題が存在するものの、少しずつ解決されつつある。

(6)センター内各組織が緊密に連絡を取り情報を共有できるような運営体制を構築していくことが必要

 定期的にディビジョン長会議、センターコア会議、各ディビジョン内打合せ、センター会議等を通じて組織間の緊密な連絡と情報共有が可能な体制が構築されており、上記指摘に適切に対応している。

(7)両機関(JAEAとKEK)の協力の下、J-PARCセンターにおける明確な指揮命令系統の下、両機関の人員が融合し一体となってセンターを運営していくことが必要

 同一部署内に両機関の人員が共存するなど、人員を融合した一体的な運営がなされており、上記指摘に適切に対応している。

円滑な施設利用体制の構築について

(8)(審査体制について)様々な分野における課題の応募が想定されることから、専門部会の下に課題分野ごとの専門の分科会を設けることが適当

 専門部会の下に中性子では結晶分科会、液体・非晶質分科会、ナノ物質分科会、生命物質分科会、磁性・強相関分科会、基礎物理・原子核分科会、産業利用分科会、試験研究分科会の8分科会を設け、ミュオンでは磁性・強電子相関と物理化学・一般の2分科会を設けて課題審査をしており、上記の指摘に適切に対応している。

(9)

  • JRR-3との合同審査体制の構築など、一律的な運営を目指した検討が必要
  • J-PARCとJRR-3は相互補完の関係にあり、今後のニーズの広がりを見ながら、両者の一体的な運営と同時に有効な使い分けの方策を検討すべき

 上記指摘事項の重要性は理解されている。JRR-3とJ-PARCの一体的な運営と有効な使い分けの方策について、引き続き検討を行うことが必要である。

(10)両機関は、(課題について)機関の評価に際しては異なった評価基準で評価を受けることに留意する必要がある。一方、ユーザー側からは、このような利用体系を意識することなく利用できるような配慮が必要

 課題審査においては、各機関(JAEA、KEK、茨城県、CROSS)の間で基本となる統一基準を共有して審査を行っており、一般利用者が利用体系の違いを意識する必要のない運用がなされており、上記の指摘に適切に対応している。

(11)ビームラインの整備に当たって、国際諮問委員会や利用者協議会などを通じて利用ニーズの把握に努めるとともに、これらニーズを踏まえ、研究分野のバランス、学術研究と産業利用のバランスを考慮して適時に設置することが必要

 ビームライン整備に当たっては国際諮問委員会や利用者協議会、MLF施設利用委員会で利用ニーズを踏まえた議論、審査が適宜行なわれており、研究分野のバランス、学術研究と産業利用のバランスを考慮した建設計画が進められている。

(12)産業界のニーズを掘り起こし、利用を促進して行くにはトライアルユースが非常に有効であることから、J-PARCの中性子利用においてもこれを導入することが適切

 登録機関により中性子利用のトライアルユースが平成24年度後期から開始されることから、上記の指摘に適切に対応している。

(13)コーディネータや技術支援者を育成するためには、適切な評価の仕組みやキャリアパスを検討する必要がある

 MLFでは共通業務を行うための技術者が中心となるセクションの新設が検討されており、上記の指摘への対応を目指した取り組みが行われている。今後も、コーディネータや技術支援者の適切な評価の仕組みやキャリアパスについて、検討を継続することが必要である。

(14)試料の前処理からデータ取得・解析までの一貫した分析サービスを受けられるような制度も検討することが適当

 上記指摘への対応を目指した準備が進められており、今後も検討を継続することが必要である。

(15)知的財産権の保護や機密保持の徹底など産業界に使いやすい仕組みを早急に整備することが必要

 非公開課題の取扱いを一部の職員に限定するなど、上記指摘への前向きに対応している。しかしながら、産業利用が拡大している中、知的財産権の保護や機密保持が徹底されるよう、データの取扱いについては更に改善することが必要である。

(16)J-PARCセンターは、県との緊密な連携のもと、コーディネータの人材交流などを実施することが望ましい

 登録機関とMLFの間で実務者連携会議を定期的に開催するなど、人的交流を目指した取り組みが進められている。今後も、J-PARCセンター、茨城県、登録機関でコーディネータの人材交流など、緊密な連携を実施することが必要である。

(17)光熱費や装置保守費など、今後のビーム試験や運用の経験を基に、経費削減に向けての努力を行うことが必要

 予算要求時において定期的に経費削減努力を提示しており、上記指摘に適切に対応している。

国際公共財としての取組みについて

研究環境の国際化

(18)課題申請の英語化やインターネット環境の整備はもとより、外国人研究者のユーザーズオフィスの整備や、外国の研究環境やニーズを理解し、汲み取ることのできる支援者の雇用などの環境整備が必要

 MLFの課題申請は、産業利用を除いて英文化されている。素粒子・原子核では提案書や審査はもとより英語で行われている。また、英語のできるスタッフの配置、英語ホームページの整備、国際推進役として米国大学院でPhD取得した研究者の雇用等の対応が行われており、上記の指摘に適切に対応している。しかしながら、外国人職員の割合は3.4%(16人)と少なく、国際的な研究雰囲気を構築するためには、外国人職員の数を増やす必要がある。

利用環境の国際化

(19)利用者の居室や宿舎等の環境整備が喫緊の課題であり、茨城県や東海村など自治体との連携・協力の下、速やかな対応が必要である。

 宿舎は49室を整備(平成23年1月)、残りは手配中である。居室は試料準備室等を含めた研究基盤施設の一部として原子力機構が予算要求中であるが実現していない。指摘への速やかな対応が必要である。

(20)居室における英語表記や多種民族に対応した食堂などの環境整備

 何れも実現しておらず、引き続き取り組みが必要である。

(21)研究者の家族の教育、医療等の生活支援や家族の活動機会の充実など自治体・地域社会と協調した取組みが望まれる。

 外国人滞在者と東海村長との定期的懇談会、外国人職員、家族及び地域住民との懇親会、英語セミナーの開催などを通じて意思疎通を図るなど、上記指摘に適切に対応している。

(22)広報担当者を配置し、国際的な広報活動の強化を図っていくことが必要

 国際推進役が広報担当者を兼務し、国際学会施設ブースで説明、英語版ホームページの改訂、英文広報誌の発行など、国際的な広報活動に参加するなどの取り組みを行っており、上記指摘に適切に対応している。

今後の課題等について

(23)センターの位置づけを含むJ-PARCの運用・利用体制については、今後のJ-PARCを取り巻く情勢、研究や技術の進展、利用ニーズの動向、運用開始後における知見や経験等を踏まえ、適切な時期にレビューを行うことが必要

 本評価作業部会をはじめとして、国際諮問委員会、中性子アドバイザリー委員会(NAC)、ミュオンアドバイザリー委員会(MAC)などで個別に外部からのレビューを受けているが、本格的なレビューは行われていない。センターの位置づけに関する運営体制について引き続き国際諮問委員会で評価を受けるとともに、運用・利用体制に関して、今後の利用の進展を踏まえたレビューを行うことが必要である。

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研究振興局基盤研究課量子放射線研究推進室

(研究振興局基盤研究課量子放射線研究推進室)