研究開発プラットフォーム委員会(第9回) 議事録

1.日時

平成25年3月22日(金曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 16F特別会議室

3.議題

  1. 運営規則等について(非公開)
  2. 小委員会の設置について
  3. 委員会における調査検討事項等について
  4. 研究施設・設備の海外利用の取扱いについて
  5. その他

4.出席者

委員

二瓶主査、瀧澤委員、西島委員、村上委員、吉川委員、吉澤委員、今仲委員、野田委員、福嶋委員、緑川委員、森委員

文部科学省

吉田研究振興局長、前田基盤研究課長、三宅基盤研究課課長補佐、馬場ナノテクノロジー・材料開発推進室室長補佐、神部量子放射線研究推進室室長補佐、生川振興企画課長

オブザーバー

渡邉経済産業省産業技術環境局技術振興課産業技術総合研究所室長

5.議事録

今回の議事は,主査,主査代理の指名等があったため,科学技術・学術審議会先端研究基盤部会研究開発プラットフォーム委員会運営規則第5条の規定に基づき,開会から議題1までは非公開。

【議題1「運営規則等について」】
二瓶委員が主査に指名され,宇川委員が主査代理に指名された。
また,本委員会の公開の手続き(案)(資料2-2)について事務局より説明があり,承認された。特段の意見等は無かった。

(傍聴者入場)

【二瓶主査】  それでは,これより公開の議題に入りたいと思います。議題2の「小委員会の設置について」,事務局より御説明お願いいたします。

○竹上基盤研究課課長補佐より,資料3に基づいて説明があった。

【二瓶主査】  ただいまの御説明につきまして,御質問,御意見ございますでしょうか。
 御説明のとおり,従来は先端計測分析技術・機器開発小委員会という名称でしたが,今期からは,機器開発のみならず,システム開発という概念を入れて,より広げた開発をすると,そういう趣旨で名称を変更しております。
 もし御意見,御異議がないようでしたら,御了承いただいたということにさせていただきます。
(「異議なし」の声あり)
【二瓶主査】  ありがとうございました。
 この小委員会への分属につきましては,先ほど決定いたしました研究開発プラットフォーム委員会運営規則に基づき,主査である私の方で人選させていただきたいと存じますので,御一任のほどお願い申し上げます。
 それでは,引き続き,議題3「委員会における調査検討事項等について」に入ります。研究開発プラットフォーム委員会は,第4期科学技術基本計画の策定等を踏まえ,2年前より新たに設置された先端研究基盤部会の下の委員会でございます。本日は新しいメンバーを加えた第1回の会議となりますので,まずは事務局より,これまでの調査検討状況並びに,本委員会が扱う対象である研究施設・設備等の動向について御説明をお願いしたいと思います。
 また,資料5として,本委員会における今後2年間の調査検討事項(案)を事務局に用意していただいておりますので,まず本日は,この調査検討事項について皆様に御意見を頂く予定といたしております。
 まず,事務局より資料の説明をお願いいたします。

○竹上基盤研究課課長補佐より,資料4‐1~資料5に基づいて説明があった。

【二瓶主査】  それでは,ただいま御説明いただきました,資料がかなり多岐にわたっておりますが,委員の皆様方から御質問並びに御意見を頂きたいと存じます。今回,第1回目の会議でございますので,できるだけ全出席委員からの御意見を承りたい,そう考えておりますので,よろしくお願い申し上げます。
 いかがでございましょう。
【福嶋委員】  質問なんですけれども。
【二瓶主査】  どうぞ。
【福嶋委員】  参考資料8の御説明で,私も委員であって知っていなければいけないんですけれども,確認ですが,評価指標で幾つかあるんですけれども,そこに取組1及び取組2に関するものと書いてあります。この取組1とか取組2というのはどこを参照すればいいんでしょうか。
【竹上基盤研究課長補佐】  資料4‐2で掲げられている五つの取組のことです。
【福嶋委員】  分かりました。ありがとうございます。
【二瓶主査】  ほかにいかがでございましょうか。
【吉澤委員】  よろしいですか。
【二瓶主査】  どうぞ。
【吉澤委員】  前期の委員を務めさせていただきましたので,2年間の経験の中から感じたことを申し上げます。
 研究者支援や人材育成のところとか,キャリアパスというところもかなり重要なところで議論があったのですが,具体的に増員したときにその方々が何をするのかということを考えますと,私の意見としては,共用促進事業のような外部利用を推進する施策も取られているので,そことのリンクを明確に図って,研究支援者というのは,閉じた研究室の中で研究者を支援すればいいだけじゃなくて,いろいろなところに移れるようにという意味でも,個々にたこつぼ的になってしまうと本当にキャリアパスを形成できませんので,共用促進事業の複数のところの研究支援をプラットフォーム化することによって広いキャリアパスを広げていただけると,次に施策を打っていただけるときにいいのではないかなと,前年度の議論を聞いていて感じました。そういう意味では,ここで議論してきた施策を更に有効にリンクさせる方向で,結果を出せる方向で施策が打てますので,非常によろしいのではないかと思います。
 あとは,大学にいる立場で考えますと,大学院の拡充は随分されてきているのですが,人材育成のもう一つのパートは大学院生の教育なんですね。そこのところで,研究支援者とか既にもう卒業した人たちではなくて,大学院に在籍する人が共用促進事業とか共用促進法の大型施設で引き受けていただいて研究ができるような受入れ制度みたいなものを検討していただくと,具体的に若手の者にどう経験を積ませるかという意味で,大学院の政策とは別の切り口の,この委員会の考えている先端研究基盤のところでの人材育成ということで明確化できてよろしいんじゃないかと感じましたので,ちょっと申し上げさせていただきます。以上です。
【二瓶主査】  ありがとうございました。
【西島委員】  先生。
【二瓶主査】  はい,どうぞ。
【西島委員】  具体的なことになってしまいますが,資料5の適切な利用料金の考え方や,各機関が利用料収入を獲得するインセンティブの高め方において,特別な思惑というのは何かあるんでしょうか。
 例えば私の業界で言えば,やはりSPring-8の利用料金体系は非常に受け入れやすいということで,要するに,SPring-8に比べてどのぐらい高いのか,低いのか というのが業界の中での関心事となります。私が所属している業界は,秘密事項に関してはかなりうるさいので,そういうところが専用のビームラインを造るに当たっては,相当話し合い,かなり成熟して使いやすくなっているところかなと思います。ですから,例えばXFELとか,スパコンとか,NMRもそれに比べるとどうだということで協議が進みます。
 先ほど話がありました,NMRのプラットフォームも,実はSPring-8と同等か,それを超えないぐらいのというのが大体ありまして,それから計算されているということもありますので,施設ごとによって随分違うと思うんですが,一つ気になるのは,例えば阪大のような大学共同利用のところと,理研とか産総研という施設等を比較すると,適切なといっても機関ごとに相違があって,だから,共用促進法という中に入っているSPring-8のような維持管理に非常にお金がかかっていても、出口だけのリーズナブルなお金で利用できる施設を考慮して,「適切な」というのが随分変わってきてしまうんじゃないかなと思うんですね。その辺は何か考え方があるのでしょうか。
 私たち産業界からすれば,安いに越したことはないということを言ってしまえば,その一言で終わってしまうんですけれども,でも,一般論からいうと,安ければいいというものじゃなくて,安いと,あそこは秘密保持は大丈夫かとか,ちゃんとメンテナンスできる人がいるのかという心配が出てきてしまう。ある意味ではSPring-8の方式は非常によくできているなと思います。逆に言えば,SPring-8から逸脱すると,業界はすぐ反発するかもしれません。大体,SPring-8はこのようにやっているので非常に受け入れやすいなと考えます。

 【柿田基盤研究課長】  ありがとうございます。利用料金については,SPring-8は共用法に基づく成功例の一つと言えると思います。共用促進の取組としては,ナノテクノロジープラットフォーム事業や先端研究施設共用促進事業があります。先端研究施設共用促進事業は,今までは28機関が個々に共用取組を行っていたのですが,そこから更に一歩進んで,ネットワークを組んで新たな活動を開始することとしております。ネットワークにおいては,他機関の取組における成功事例をシェアしながら全体としての活動の質を上げていくことも可能になると思います。
 利用料金については,一律にどんどん高くつり上げるということにはならないと思っていますが,一方で,今回,大型の補正予算によりかなりの設備導入もしましたので,国民的な支持も得られる形で,どの辺に適正値を持っていくかということを,全体のプラットフォームの中で各種の事例も比較しながら,検討を進めていくことが必要であると考えております。
 そのような検討の中で,統一的な利用料金を設けるということも、例えばわかりやすい利用システムを構築していくという観点では,一つの方向性としてはあり得るのではないかと思います。
【西島委員】  それと,それに続けて関係するのが,いわゆる各機関が利用料収入を獲得するインセンティブの高め方,これも重要だと思うんですね。今は多分少し改善されていると思うんですが,昔,SPring-8のときに,専用のビームラインを使うと維持費だけでお金は払わなくていいんですけれども,専用のビームラインで取った成果でも占有で公開しないということに対しては,国に対して1時間当たり一定額のお金を払っていたんですね。
 それを払っているから,私たちはそれをSPring-8に特別利用料を払っていて,その額がピークのときは年間8,000万とかに達していました。実際、SPring-8の成果占有総額に対して、私たちのビームラインだけで7割,8割を占めていました。ある意味ではお金をたくさん払っているという気持ちだったので,それなりのわがままを聞いてもらえると思ったんですが,このお金が全部国庫に入って,SPring-8には入らないということでした。
 その一部でもSPring-8現場の方に返ってきて,高度化とか,あるいは人件費とか,あるいは人を増やせるとかいうのがあればいいんだけどというので,それを私にどこかで言ってくれということを,数年前に言われました。その後に会議の場でも大分言ったので,多分少しは直っていると思うんですが。例えば、施設現場でいろいろやればやるほど,「頑張っているね,では,国からのお金を減らせばいいか」というのでは,頑張っている人たちが可哀そうです。全部とは言いませんけれども,3人で切り盛りして頑張ったのに対して,産業界の声があったので1人増えたとか,何かそういうようなことを具体的に示すことが大事かなと思いました。
【柿田基盤研究課長】  御指摘のとおりです。ここは苦労しているところで,我々も知恵を絞らなければいけないと思っています。頑張って収入を得たけれども,国からの補助金と相殺する形になって実施者側にメリットが感じられないという現象が起きているので,そこを何とか変えられないかと思っております。
【吉澤委員】  一言だけ申し上げると,実は私どもは物理研究所の附属の施設で,非常に小さい施設ですが,研究員宿舎を運営しています。そうしますと,これ,稼働して,経費等はもちろん財務省に入るんですが,実は還付金があるんです。施設長をやっているときにそれに気がつきまして,それならきちんとそれで運営する,宿舎の人も雇えるしということで,いい制度だなと思いました。それはまさに今,西島委員が申し上げたことと同じで,共用促進事業で引き受けたら,それに対する何らかのインセンティブを与えられるというのはやっぱり制度として健全じゃないかと思いますので,是非その方向で検討していただきたいと思います。
【村上委員】  いいですか。
【二瓶主査】  どうぞ。
【村上委員】  全体的なところに関わる考え方というか,疑問も含むんですけれども,真のイノベーションを引き起こすためのネットワークということの考え方なんですが,こういう大型施設を結ぶ,あるいは最先端の大型施設を結ぶ,あるいは中小規模の機器を結ぶネットワークを考えるときに,ユーザーが誰なのかということもあるんですが,ユーザーがいろいろな機器をネットワークを通じてうまく利用できるようにしようということはすごく重要なんですが,もう1点その次にあるのは,やはりユーザー,人がどういうふうにつながるかということが重要かなと考えます。こういうプラットフォームを作ったときに,それを使う人たちがお互いに連携できたり,相互作用を及ぼし合って新しい発想ができていく場を作るという,そういうネットワークの考え方というのは,この奥にしっかりと入れておく必要があるかなと思うんです。
 そのときに,これ,先端基盤の部会でも申し上げたことですが,いわゆる大学の人,学術研究をかなり中心的にやっている人と,産業界からのユーザーの方々がうまくネットワークの場でインタラクションできるような仕組みが,ちょっと具体的ではないんですが,そういうものがやっぱり重要で,これ,異分野と言った方がいいのか,基礎研究と応用研究という分野の融合と言った方がいいのか,その両方なんですが,そういう出会いの場をうまく作れたら,本当の意味でのイノベーションができてくるのかなと。むしろそれがないと,単に各機関,各施設を自由に使えるというだけでは十分ではないのかなと思います。
 そのときに,取組2に書かれていることですが,最先端の大型設備の連携ということ,J-PARC,SACRA,SPring-8,「京」などを結ぶことかと思いますが,これもそのほかの共用プラットフォームのところでの取組とうまく連携をつけるということが重要かと思います。例えば放射光を例に挙げますと,SPring-8というのは非常に大きな施設でありますが,そのほかに,フォトンファクトリーとか,UVSORとか,利用者数あるいはアウトプットでいえば,SPring-8とコンパラブルぐらいのニーズ,数が出ている施設ですので,そういうところをうまく連携させる。これはかなり切り離された形でのプラットフォーム化は望ましくないと思います。そういうことをやることによって,産業界の方もいろいろなレベルの装置が使え,かつ,いろいろなレベルの人とコミュニケーションができる,そういう仕組みを作っていくのが重要かと思います。以上です。
【二瓶主査】  ありがとうございます。
【竹上基盤研究課長補佐】  すみません。
【二瓶主査】  どうぞ。
【竹上基盤研究課長補佐】  今の村上委員の御指摘で一つだけ御紹介を。先端研究基盤部会でも御紹介させていただきましたけれども,参考資料7-2でございます。まさに委員御指摘のとおり,これまで共用法対象となる大型施設の取組と,それら以外の施設となかなか一緒に進めてこられなかったという話もありまして,今回,先端研究基盤共用・プラットフォーム形成事業という事業,これは今までは個々の施設の共用を進めていくという取組でございましたが,平成25年度よりプラットフォームを形成するための取組を開始しております。
 開いていただきまして1ページ目に,今回新しく二つのプラットフォームを認定いたしました。一つが光ビームプラットフォーム,もう一つがNMR共用プラットフォームでございます。この光ビームプラットフォームは,予算上は共用法に基づく予算措置がなされているので,SPring-8は直接補助金を出すことができないんですけれども,代表機関はKEKでございまして,この連携のプラットフォームの中にSPring-8やJASRIにしっかりと入っていただいて,ここの中でプラットフォーム構築に向けて今,議論をしていただいているというように認識をしております。
 一方で,JASRIやRIST,あと,CROSS,共用施設の登録機関同士が一緒に議論をする連携の仕組みも昨年から始まりました。このプラットフォームは今始まったばかりでございますけれども,ここのプラットフォームと大型施設のプラットフォームが連携していくことは,一方でもHPCIの方にも波及効果,これは現段階ではまだ構想ということで,実施機関と一緒に進めていく必要があると思いますけれども,今後,御指摘の内容についてしっかりと進めていきたいなと考えてございます。
【村上委員】  ありがとうございます。まさに結構,当事者といっても私自身なんですけれども,そういう意味で放射光の例を挙げるならば,SPring-8が本当の形で連携していけるような形じゃないと,形式上,連携して入っているというだけではなかなか難しいかなというのを感じましたので,今回御指摘いたしました。
【二瓶主査】  どうぞ。
【野田委員】  今,資料を見させていただきまして,資料4-4の文科省の施策ですね。それとあと,実は昨年,基盤研究課で整理された全体の俯瞰図があって,それを頭に浮かべながら今のお話を伺って,一番基盤的なところに共通基盤技術の開発みたいなものがあって,その上に,我々も関係していますけれども,中規模程度の施設を抱えたネットワークがあって,更にその上に大型施設という,そういった俯瞰図があって,その間をどうつなぐかという話があったかと思います。
 実は私,ナノテクノロジープラットフォームのセンター機関ということで全体の窓口みたいなことをやっていますと,うちのプラットフォームに関係ない相談が結構あるんです。そういうときには,私の知り合いの関係での御紹介はしたりするんですけれども,そういった意味でのインターフェースをやはりきちんと作っていった方がいいかなという感じがします。
 一例として,実はニュートロンの原子炉を使いたいと急に,うちのところにはありませんけれども,それでちょっと調べて,今動いているのは京大炉しか動いていないので,それで,仕方がないので,知人が京大炉にいますので,京大炉に電話しました。そうしたら,使ってもいいですよという話があったんですけれども,何せちょっとビームが弱いということで,では,J-PARCかなという話も出ました。そういう意味で,やはりインターフェースというのは結構重要かなという感じがします。
 たしか,二瓶先生がこの間,全体の俯瞰図みたいな話をされたので,そういう中で,全体のPDCAと,我々も実はナノプラットの中できちんとPDCAはやらなければいけないので二重,三重構造になりますけれども,その中でやっていく必要があるということです。
 それからもう一つ,先ほど例えば利用料金の話もありましたけれども,それぞれのプラットフォームによって恐らく利用体系が違ってくると思うので,それは仕方がないかなという感じがします。ですから,全体としての共通的に議論できるところと,それから,やはり個々のプラットフォームでやらなければならない,そういうものを分けて見ていく必要があるのかなと思います。非常に多岐にわたる,ネットワークの話とかいろいろありますので,コメントさせていただきました。
【二瓶主査】  ありがとうございます。野田委員おっしゃいましたとおり,まさにナノテクノロジープラットフォームが先陣を切ったという形で,非常に具体的な,ある意味でテクノロジープラットフォームの考え方を取り入れた,非常に機能性を重視したプラットフォームが構成されたと思います。これはナノテクノロジーの世界のほぼ全体をカバーしていると皆さんお考えだと思いますが,実際にはやっぱりサブプラットフォームなんですね。それで,さらに幅広いプラットフォームに繋がるという研究基盤としての全体像を描く必要があると思います。
 これは皆さん直感的に御理解いただいていると思うんですが,一遍になかなか全体像を機能させるというのは難しいものですから,サブプラットフォームを一つ一つ構築して,それをきちんと機能させた上でさらに,今おっしゃった,サブプラットフォーム同士の連携が図られる必要があると思います。私も最初は多層構造となると思っていたのですが,あまり複雑にしても仕方がありませんから,サブプラットフォームがそれぞれ更に連携するというようなことが次のモデルではないかと考えています。
 ただし,これは恐らく時代の要請とともにどんどん変化していくのだと思います。現実に今起こっていることは,非常に明確な,役割重視で,役に立つという意味でのサブプラットフォームを構成していって,それを将来更に大きなプラットフォームを具体化していくということになるのではないかと思います。恐らくこの2年でその辺りは相当明確にする,その時点で研究開発プラットフォーム委員会の一つの目標がクリアできるのではないかなと私自身は思っております。
 どうぞ。
【今仲委員】  私,2年前まで電機メーカーで技術本部長をやっておりまして,もう装置が高くて買えない,だから,オープン化をもっともっと進めましょうということで,退職後,今,マイクロナノ・オープンイノベーションセンターをやっております。これは主には産総研の装置をもっとオープンに使わせようという組織なんですけれども,このナノテクプラットフォームとかを見ていますと,非常に進んでいましてですね。
 我々一番困っていたのがやはりオペレーターの部分なんです。先日,香川大学のナノテクプラットフォームのキックオフに行ってきたんですけれども,オペレーターに採用されて10年間安心ですという方が多くいました。やはりそういうオペレーターが安心して働ける,長期にわたる政策というのはこういう形で打っていかないといけないのかなと思います。
 アメリカなんかですと,結構,DARPAで買った装置を,オープンアクセスということで大学が一般に賃貸しているんですね。それはもう占有権つきの賃貸なんです。それでもう商品を作ってよろしいと。当然,大量生産はできませんけれども,将来的にはこういう共用プラットフォームがそういうところまで進んでいくためのお試しを早く産業界にさせるのが今の時期かなと思うんです。
 先ほど西島さんおっしゃったように,SPring-8の当初なんていうのは非常に高い。我々はとてもじゃないけれども手を出せなかったんですけれども,今回の話を聞いていると非常にとっつきやすいですね。ただ,それがまだ産業界にそれほど浸透していないんじゃないかと。その部分,やはり一緒にやっていかないといけないのかなと思います。以上です。
【二瓶主査】  ありがとうございます。
【福嶋委員】  ちょっとよろしいですか。
【二瓶主査】  どうぞ。
【福嶋委員】  全体のプラットフォームに関して,いわゆる全体のプラットフォームを作るのが,サブプラットフォームまでせっかくできていて,この17ページの絵を見ながら,プラットフォームはせっかくあって,このプラットフォームが例えば東京駅と上野駅と別々にあるとお客さんは困るので,全部,東京駅へ行くと,「プラットフォーム,あっちですよ」と教えてくださるのが,今回作る大きなプラットフォーム。それは,プラットフォームなのか,観光案内所か何か知りませんけれども,そういう指針を出すところ。
 それからもう一つは,野田先生おっしゃったように,我々,東海道新幹線で「すみません,水戸へ行きたいんです」と言ったら,「それだったら,こう行ってくださいよ」と言ってくださる人がいるわけですよね。ですから,JRのことを全部知っている人がやはり各プラットフォームにいてくださるということが大事で,まずやらなければいけないのは,各プラットフォームの人たちがほかのプラットフォームを知ること。
 それから,観光案内所的なところに誰がなるかというと,やはりいろいろ考えてみると,我々は産学共同というか,全部を知っているはずの大学の先生のアカデミアに行って相談したときにその先生が案内してくださると。そういうところから始めて,最終的にいいプラットフォームを作るという,ある程度一気に大きなものを作るのではなくて,積み上げてやっていくような考え方ではないかなと思っています。
【二瓶主査】  ありがとうございます。
 ほかにいかがでございましょうか。
【緑川委員】  じゃあ。
【二瓶主査】  どうぞ。
【緑川委員】  割とハードの話が多いんですが,実は今,ソフトのデータの蓄積が非常に多くなっておりまして,これにいかに自由に皆さんが,特に企業の方とかがオープンにアクセスできるかというのが非常に重要だと思うんですね。ますますデータ量が多くなってきまして,それを管理する方も非常に大変になってくるんですが,ハードの方は割と目につきやすいので,支援とかそういうものがこういうところでディスカッションされるんですが,ソフトについてはまだハードほど認識されていないんじゃないかというのが私の今日の意見です。ところが,今後を考えると,むしろソフトの方がハードを上回る需要度が出てくるんじゃないかというので,それもここで是非今後の重要な課題として議論していただきたいと思います。
【二瓶主査】  ありがとうございました。全く御指摘のとおりでございます。御指摘のようにハードとソフトないしはデータベースは不即不離ですから、恐らく各サブプラットフォームに関連するデータベース等はそこで最初に構築されると思います。ただし,先生のおっしゃるもっと広い意味でのデータベースあるいはソフトウエアのプラットフォーム,それを拠点のようなものを構成してそこで漏れのないようにきちんとカバーするというような考え方も確かに必要かもしれないと思います。
 どうぞ。
【森委員】  一つコメントですけれども,机上資料1番で私が一番興味を持ちましたのは,4番目に書いてございます学術政策と科学技術政策のリンクということです。具体的にナノテクノロジープラットフォームで支援しておられる方の御意見をお聞きした中で,非常に先端的な,つまり,我が国の産業をこれから支えていくような,そういう大きな成果につながるような研究支援の依頼も来ると。しかし,それは当然だと思いますけれども,その内容が非常に高度化してきていて,ある研究者に,ある教授のいわば本務である自分の興味に基づいた研究に立ち入るようなところまでその方が時間を割いて,あるいは能力を割いて,精神を割いてそこを支援しないと先へつながらないような,そういう非常に高度なものが出てきているという話をお聞きしました。
 このプラットフォーム,装置が,いろいろな,非常に広い階層の産業の方に使われて,日本の産業が進んでいく上でプラスになることはもちろん好ましいことなんですけれども,一つの大きなターゲットである,我が国の将来の産業の成長に資するようなそういう大きな研究支援をやっていくには,ここに書いてございます日本における学術政策と科学技術政策,具体的には例えば1人の大学の先生がどれぐらい共用の方に自分の能力を,時間を,精神を割いていくかという,そこの住み分けのところが恐らくこれから大きな問題になってくと思います。
 事務局の出された資料の中で,シニアの研究者を使うようなアイデアも書かれておりますけれども,私はそのことを少し,シニアじゃなくて,本当の現役の大学の教授が本来の自分の興味に基づいた研究をこれまでしておられたと思うんですけれども,その中で,でも,どうやってこういうところに自分の興味を持って自分の力をそこへ注いでいくかということを,少し外国の例なんかも勉強しながらこれから検討していくべきだと思います。
 補正予算で随分多くのいわゆるハード面の整備はなされたんですけれども,しかし,それの真価を発揮させるためには何といっても使う人が問題でありまして,やはりこれまでの学術政策と科学技術政策のすり合わせのところというのはこれから大きな問題になるかと感じております。
【二瓶主査】  ありがとうございます。
 ほかにいかがでございましょうか。
 もしよろしければ,次の議題に進ませていただきまして,その過程あるいは後で更に御意見を頂くということをお許しいただければと思います。
 それでは,議題4番,「研究施設・設備の海外利用の取扱いについて」の御議論をお願いしたいと思います。
 海外企業が成果占有利用を希望する場合の取扱いについて,現時点では統一的な対応方針が存在しておりません。このため,海外施設の取組状況等を踏まえつつ,適切な利用の取扱いについての基本的考え方を明確化していくことが必要かと思います。今回は,議論のキックオフとして,事務局より,国内外の施設における取組状況を報告していただければと思いますので,御説明をお願いいたします。

○神部量子放射線研究推進室専門職より,資料6に基づいて説明があった。

【二瓶主査】  ありがとうございました。
【西島委員】  よろしいですか。
【二瓶主査】  はい,どうぞ。
【西島委員】  3ページからすると,海外の企業も,成果占有でも一定の料金を払えば使えるということでよろしいですか。
【神部量子放射線研究推進室専門職】  3ページにあるのは平成8年の答申でございますが,その答申では,決められた料金を支払えば,特に区別せずに使えるということです。
【西島委員】  海外メーカーも使えると。
【神部量子放射線研究推進室専門職】  はい。そういうことになっています。
【西島委員】  そうすると,5ページのSPring-8,これは国外ユーザーによる成果占有利用実績がないんですよね。
【神部量子放射線研究推進室専門職】  はい。
【西島委員】  ただし,申込みがなかったんですか。
【神部量子放射線研究推進室専門職】  これは2011年の実績ですが,2011年においては,申込みもありませんでした。
【西島委員】  そうですか。
【神部量子放射線研究推進室専門職】  はい。ただ,これは2011年に限った話でございますので,過去をさかのぼれば利用実績は恐らくあると思われます。
【西島委員】  そうですね。私がSPring-8の課題選定委員をしていたときには,ちょっと正確ではないんですけれども,海外から利用申請があったときに,何かやはり判断基準があって,少し細分化されたものがあると思うんです。それを経るとなかなか海外のメーカーは成果占有では使いづらいというような形になっていて,私が課題選定委員のときは採択した実績がないのは,やはりそういうような内規というか,内側の規則が恐らくあったと思うんです。
 記憶がはっきりとはしませんが,例えば一定の法人税を納めているような海外のメーカー,日本に支社を持っているとかそういうような形で,何か得体の知れない企業が急に使わせてくれと来ても使わせられるわけがないのでね。3番にはその辺が読めないんですけれども,やはりもう少ししっかりしたものが何かあると思うんですけどね。
【神部量子放射線研究推進室専門職】  はい。
【西島委員】  だから,これ,もし今後も関連資料を出すのであれば,SPring-8に過去に国外ユーザーによる成果占有利用実績があった件数と,それから,それは全体の申込み,つまり,100件来て1件を通したのか,2件来て1件通したのかと。一般論からいくと,国内にいる国内メーカーの私からすれば,下手に海外に使ってもらうのはいかがなものかという知的財産面がありますけれども,もう一方では,少なくとも世界一のSPring-8が魅力ある装置であれば,海外のベンチャーなりがやはりそれを使ってみたいということは普通に考えるんじゃないかなと思いました。
 それと,放射光施設のA,B,C,Dというのは,実際伏せてあるからよく分かりませんが,御存じのように,SPring-8は日本にある施設で日本が造って維持管理していますけれども,アメリカもそうですけれども,アメリカの場合は結構,カナダとかそういう陸のつながりがあるし,欧州の場合はそもそも15か国ほどが参入して資金提供していますから,ここで言っている国外というのが果たして何を言って,コンソーシアムに入っていない国という意味かなという,そう考えていいんですかね。
【神部量子放射線研究推進室専門職】  これは御指摘のとおりでございます。まずこの聞き方としまして,ユーザーに対して国の違いによって区別をしているかどうかということを聞きました。区別をしている場合には,どういう基準でそれは区別をしているのかということを聞きましたところ,御指摘のとおり,国外ユーザーと書いてあるんですが,これは,要するに,投資国ではない国ということです。
【二瓶主査】  どうぞ。
【福嶋委員】  似たような印象なんですけれども,実は最初に私が国外に対してどうですかという質問した理由は二つあって,一つは,共用法にはっきり書いてある,我が国のイノベーションというか,産業競争力,科学技術競争力,国際的競争力を高めるためというふうな表現があったので,それとの関係で,我が国のいわゆる国際競争力とは何かという意味と,それから,産業界の委員として,SPring-8のJASRIも悩んでおられますけれども,タックスペイヤー,この運営といわゆる建設に関してかなりの国費が使われているにも関わらず,内外が同じでいいかというような両方の観点があって,ですから,料金設定も含めてやはり料金がどういう根拠で算出されているのか。
 恐らく,J-PARCの173万円という数字も大変なディスカウントであるはずなんですね。ですから,そのディスカウントの理由もはっきりしなければいけないと思うんですね。そうだとすると,そのディスカウントの理由は海外企業にも適用できる理由なのかどうか。やはり使うときに,我々説明するときに,幾らですよと言うより,この根拠はどうやって算出されましたかということで,高い安いの前にその説明が必要ですので,その辺の根拠をはっきりした上で,海外に使わせないというのはむしろ変な話で,より使っていただくためにはどう理由づけをしたらいいかというような考え方をした方がいいかなと思います。
【神部量子放射線研究推進室専門職】  J-PARCの料金ですが,御指摘のとおり,今の段階ですと,実際,運営費回収方式,実際の運営費よりも低い金額でやっております。というのも,J-PARCはまだ昨年共用開始をしたばかりですので,まさにこれから産業利用を含めてどんどん促進していく段階でございますので,段階的に利用料金を上げるという取組をさせていただいております。
 この中で,確かに海外機関につきましても同様に最初から低い料金にするのかしないのかといった議論は内部でもございましたが,その内部での議論の中におきましては,特に明確に区別するということの決定的な根拠がないということで,当時におきましては同等の扱いということにしておりました。今回の議論等で御意見をいただければ,またそういった取扱いも変わってくる可能性はあると思っております。
【二瓶主査】  ありがとうございました。
 ほかにいかがでございましょうか。
【今仲委員】  よろしいですか。
【二瓶主査】  どうぞ。
【今仲委員】  基本的に私はどんどん海外の人に使っていただいたらいいという発想をしています。それはむしろ新たな刺激がもらえるんだと思うんです。例えばSPring-8を使ってこんなことができるんだという情報が入ってくると,日本の研究者も焦ってそういうことができるんだということが分かるし,ネットワークもそこから生まれてきます。料金をどうするかというのは少し問題があると思うんですけれども,日本でも法人税を払っていない,赤字をやっているような企業に使わせるのはいいのかというのと同じことで,余りそういうのはこだわらないで,むしろいろいろな交流による刺激をインタラクションする方が面白いのではないかと私は思っています。以上です。
【西島委員】  でも,面白いかどうかというのは分かりませんよね。つまり,成果占有で非公開ですから,海外のベンチャーが使っているということは分かりますけれども,どんなことに使って何に役立ったかということは全く分からないですよね。それに対して国内の場合は,先ほども言ったように,成果占有利用に対しては,自分のところの専用ビームを自分で建設して,自分でそこに人件費を投入しても,例えば私たちのビームラインは5.5億で造って,年間1億円を集めた資金源から5,000万円程で人も雇っていたと。それで成果を公開すればもう何も払わないけれども,成果非公開なのでお金を払うという形を取っているので……。
【今仲委員】  だから,それは作るときの立ち上げ時期の大変な時期のお話で,今,素手で企業が借りるとすれば,条件は一緒ですよね。成果が見えないとそこで何をやったか分からないんですけれども,そのベンチャーが大きくなれば,ここで何かすごいことを作ったんですよ。それは結果として見えるわけです。それが出なかったら,多分役に立っていないんですよ。技術というのは商品につながって初めて技術ですからと私は思っています。
【福嶋委員】  関係してよろしいですか。
【二瓶主査】  どうぞ。
【福嶋委員】  おっしゃるとおりではあるんですけれども,それが本当に分かるかという問題で,実は成果占有というのが,成果占有と公開しかないのです。それで,占有という意味で,実は装置側で,お金を払った人に誤解があって,金を払ったんだから,何にも教えないけれども,勝手に働いてデータ出せというような考え方の人もあったりして,そうすると,例えば施設側のスキルアップについても全く貢献しないと。
 そういうものであってはいけなくて,今,ディスカウントですねと確認したのは,ディスカウントする理由は,例えば成果占有であっても,特許が出た後かどうか知りませんけれども,いつかは何らかの形で公開することを条件で,それで成果占有。それでも出したくないときはもっと金を払ってもらわなければなりませんけれども,そういうような形で,成果占有に対する契約の形態がまだきっちりしていない。
 ですから,施設側も非常に困っていて,成果占有であれば何もしゃべってはいけないと。隣にもっといいビームラインがあるにもかかわらず,しゃべってはいけないのかというようなこともあったりして,本当の意味でいい利用をしていただいて,サイエンスとしてもプラスとなる成果占有としての考え方をきちんとすれば,海外に対してどうするかというのも当然はっきりしてくるのかなというイメージは持っています。
【瀧澤委員】  すみません。
【二瓶主査】  どうぞ。
【瀧澤委員】  ちょっと質問なんですけれども,この5ページ,6ページの諸外国の状況ですが,成果占有の利用料という欄,これ,いろいろな数字があって,一部,施設Bなどは2割増しという表記もありますけれども,これの意味は,国内外を問わずの利用料金で,国内外で利用料金を変えていないという理解でよろしいですか。
【神部量子放射線研究推進室専門職】  そのとおりでございます。基本的に,まず国内外の料金は,ここに書いている金額になりまして,赤字のところだけ,外部からのユーザーにつきましては2割増しにしているということでございます。
【二瓶主査】  どうぞ。
【瀧澤委員】  そうしますと,一国民としては,自分たちの払った税金が使われているからには,やはり自分たちの国の産業の発展に十分に寄与してほしいという気持ちはもちろんあるんですけれども,一方で世界全体を見たときに,将来的な長いスパンで見たときに,突出して日本だけが閉じているというのは果たして将来の日本にとっていいのかということもあるんだと思うんです。世界的な標準にある程度合わせる必要があるのかなと思ったんですが,海外では完全にもう内外の区別がないというのがスタンダードなんでしょうか。
【神部量子放射線研究推進室専門職】  飽くまで今回,SPring-8やJ-PARCに並ぶような大型の施設のみを調べておりますので,より詳細に調べれば,恐らく中小型の施設になれば,それぞれ独特の取組をやっている例はあると思います。
【二瓶主査】  どうぞ。
【村上委員】  ちょっと質問ですが,この7ページの対応方針の種類で,一番多いのはもちろん国内ユーザーと同様ということですが,赤のところがどういう意味なのかちょっとつかみかねない。国内ユーザーよりも厳しく審査というのは,何を厳しく審査しているんでしょうか。アンケートのときにはどういう聞き方なんでしょうか。
【竹上基盤研究課長補佐】  一応,例ということですけれども,実際その企業がやる内容が国益に資するかどうかというのを別途議論するとか,あとは,先ほど話もありましたけれども,その研究の安全性を厳しく別途審査する。要するに,日本の法人が申請したときの審査ルールにプラスアルファの審査基準を作るというふうには聞いています。
【村上委員】  国益に資するというのはどういうことでしょうか。
【竹上基盤研究課長補佐】  そこは,恐らく各機関によっていろいろな指針があると思います。果たしてその企業がやる研究,どこまで具体的に議論しているかちょっと分からないんですけれども。
【村上委員】  何らかの考慮をしている程度ということですね。
【竹上基盤研究課長補佐】  そうですね。これは聞き方がこういう聞き方だったので,中にすごく幅があると思うんですけれども,そういうやり方ということです。
【村上委員】  何か差をつけていると。
【竹上基盤研究課長補佐】  そうですね。これは料金で差をつけるというものではないですね。
【西島委員】  これ,直接ここには関係ないかもしれませんけれども,私もSPring-8の若い人を連れて,実はアメリカと,多分この施設のA,B,C,Dに入っていると思うんですが,いわゆる三大放射光のあとの二つ,アメリカと,それから,ヨーロッパに行った経験があります。
 日本のユーザーがアメリカとかヨーロッパに行って一番びっくりするのは,とにかく使いやすい。マニュアルがすごくしっかりしている。それはそうで,例えばフランスにある施設のマニュアルがフランス語で書いてあるわけがないので,非常に分かりやすい英語になっています。それは欧州圏のいろいろな人も読むので,分かりやすい。それから,非常に,一番ごくありふれているソフトも使っています。例えばスイスの別施設に行ったときなんかは,今日行って,明日もう実際使えてしまったというので,こう言っては失礼ですけれども,こんなことはSPring-8とかPFでは考えられないぐらいです。
 それともう一つすごいのは,海外から来た人に使ってもらうための案内を兼ねた専用スタッフみたいなのがいるんです。以前にも言いましたけれども,1ビームライン当たりに従事しているスタッフが日本より多いです。例えば先ほども言ったように,フランスにあるような施設は,当然イタリアとかスペインとかそういうところから来ますよね。そういう人たちが1泊2日で来てもすぐ利用できるように,一緒にそばにいながら教えてあげる人もいるし,それから,マニュアルもすごく読みやすい。本当に中学,高校生が読めるような英語,1,000語で書かれた何とかという,そういう分かりやすいし,ソフトも全世界で共通しているトップレベル。例えば日本国内しか通じないようなソフトとかそんなことはないので,非常に使いやすいと思います。だから,これはものすごくびっくりしたと言いました。
 そういうところもバックグラウンドにあるので,これ,例えばいろいろなことをやっても,実際に海外から来たら,SPring-8はとても使いづらいと。あえてPFのことは言いませんけれども。これ,いざ海外に開放したときに,マニュアルも含めて整備も大変ですよね。そういう整備がまず日本はできていないとの印象です。さらに、泊まる施設も含めて不十分です。そういうことがバックグラウンドにあるというので,これ,A,B,C,DとSPring-8を簡単に比べるのはちょっと違うかなと思いました。
【福嶋委員】  それに関連して,西島さんにお聞きしたいこともあるんですけれども,その前に,確かに我々の周りを見ても,海外の施設を使う理由は使いいいからだと。ちょっと遠くて旅費を使っても全然いいということで使いに行くことがあるんです。
 実は国益という観念では,特許法や情報流出に関してアメリカなどは非常に厳しいわけですよね。そうすると,施設では同じ料金で使わせていても,情報で特許を取るとか,情報を日本に持ち込むとかですごくバリアがあって使いにくいという部分もあるわけですよね。
 そう考えると,この値段が適当か,国益なのかというのは,ここではこうしておきながら,あっちの方でうまいこと国益になるように,あっちの方では特許法とかいうシステムもあるので,やはり国内で整備してほしいですよとの理由にはそこにもあるわけですよね。何かやった,非常にうまくいったら,スパイをやったと言われて捕まったら困るわけですよね。そういうことも含めて,内外の差は,向こうはないと言いながらやっぱりあるとか,そういう分析は必要なのかもしれません。
【西島委員】  さっき私がスイスとかヨーロッパに行った経験に触れたのはまさしくおっしゃるとおりで,アメリカの場合は,ウエルカムで行くんですけれども,そもそも放射光施設が軍事的施設内に位置するとかいうようなバックグラウンドを持っているので,入るときに3か月ぐらい前にパスポート情報を送ったり,かなりチェックされます。ですから,そういう知的財産というのは非常に難しいという印象があったので、私自身は,アメリカの施設を成果占有というので使った実績は持っていません。逆にヨーロッパは,サンプルを送って,送り戻して,それは全てユーザーのものですというのはあると思います。だから,そういう意味ではヨーロッパの方が使いやすい。
 最近,特許法が変わったと思うんですが,御存じのように先発明と先願の問題がありますから,アメリカはちょっと独特です。そこはおっしゃるとおりで,アメリカはちょっと例外ですね。
【二瓶主査】  ありがとうございました。
 それでは,残りの時間も少なくなりましたので,先ほどお約束いたしましたように,前半の話題も含めて御意見をいただければと思いますけれども,吉川さん,いかがでございますか。
【吉川委員】  京都大学の吉川でございます。私は心理学が専門でございます。私の今おりますこころの未来研究センターは,脳科学,神経生理学から宗教,倫理,臨床心理学,あらゆる角度から心について研究するという,そういう学際的な場におります。今,この委員会と関わるところでいいますと,うちのセンターに昨年,大型基盤設備整備事業でMRI装置が入りました。それを人文社会系の学生たちにも使ってもらって,そこから最終的には脳科学に関していい成果が出るところまでいくにはどうすればいいか、どうすればその大型の設備がうまく使われるかということを今,一生懸命考えているところでございます。
 この委員会でどういうことをこれから議論していくかというところで,現状と課題というのがありまして,必要となる取組が5つに既にまとめられております。これを見ていますと,この5つが全部、あるところまでクリアされれば,日本のこういう設備が活用されるすばらしい環境が整ったということになると思います。
 私が素朴に知りたいなと思いましたのは,ここに書かれている課題は,例えば全く問題がないところまで到達できているという基準を10としたら,何点ぐらいの評価で現状を見ておられるのか。ここで挙がっている必要となる取組,この5点,本当にどれも重要であるし,これが一つ一つ全て解決されればすばらしいなと私は思いました。ただ、これが課題として挙がっているということは,まだ一番いい状態にまではなっていないというふうに今までの委員会の中で議論されてきたんだろうと思うんですね。現状を考えたときに、これは例えば10段階の2とか3ぐらいの評価であるということなのか,あるいは7,8ぐらいで,あともう少し頑張ればいい状態になれるという評価で今日スタートしているのか,そこはちょっと知りたいなと思いました。以上でございます。
【二瓶主査】  すばらしい問いかけでございまして,恐らく留任なさっている委員はみんな一言ずつ言わないといけないと思うんですが,多分,評価がそれぞれ委員間でもばらついているように思います。もちろん項目にもよるんですけれども。いずれも大事でございますけれども,どうでしょうね,課長から何か一言。
【柿田基盤研究課長】  これは先端研究基盤部会としてまとめていただいておりますので,二瓶主査がおっしゃったとおり,委員の皆様に点数を付けていただくのが良いと思うのですが,事務局,あくまでも私の感覚としては,現状は60点ぐらいかと思います。辛うじて何とかやっているという感覚を持っています。それを70点,80点にこの2年間で持っていきたいと考えております。
【西島委員】  産業界からすると,まず大前提として,少なくとも私のような産業界から見ると,あるいは、アメリカ人に言わせると,時差のない国の中で,SPring-8もPFもあるし,J-PARCもあるし,それから,「京」も,新幹線に乗ればどこでも行けると羨ましいと言われます。日本は何て恵まれた国なんだろうと。アメリカに行って聞いたら,訪問先の研究者がこれから時差を超えてサンディエゴに行くんだと。本当に恵まれていると感じます。
 課長がおっしゃったように,私は施設とかハードとかそういうことについては,国家戦略による国家基幹技術・施設が充実しているので、私は7割か8割行っていると思っているんですが,何が一番欠けているか。それは、人材ですね。産業界の関係者が施設利用したときにすぐ使えるようなシステムを支える支援スタッフとか,それから,人を育てる場とか,あるいは将来に育てていく環境とか、そういう視点が不十分です。
 さっき言いましたよね,10年先。ポスドクなんか,もっと短いですよね。プロジェクトごとに動いていくと。そうすると,マスター修了でとにかく企業に入って,そこから何年か経つと学位が取れると。しかし、学位一つを取っても,私が言うと余りにもあれですけれども,産業界に入ってからの学位と,コースドクターというのは価値が全く違うと思うんですね。やはりコースドクターという,若いときにしっかりドクターを取って企業に来た人間が一生懸命やれて,あるいはこういう施設で働けていける環境が望ましいというので,そういう人材育成とか,それから,キャリアアップとかそういう点においては,日本は5割を切っているなと私はそういう印象を持っていますけれども,平均すると課長のおっしゃるとおりです。
【竹上基盤研究課長補佐】  点数というわけじゃないですけれども,この報告書をまとめていただいたのが大体半年ぐらい,議論は2年前からやっていただいているんですけれども,その後の取組の進捗状況というところでも確かに若干の濃淡がございます。
 取組1に関しては,例えば共用を拡大するという取組は,実際,25年度から予算が増額されたようなものもございまして,着実に今後,共用取組をやる機関が,今,公募中でもございますけれども,増えていく。まさにそういった公募要領を出して,各機関の中で今,議論が進んでいるようなところも,我々も見ていて,かなり増えてきているんではないかと思っています。
 また,取組2に関しましても,こちらについては,プラットフォーム形成に関する取組が,先ほど5つほど紹介させていただきましたけれども,これも新しく進んでいます。これもまだまだ始まったばかりなので,先ほど御指摘もありましたように,実態はこれからしっかりとやっていかなければいけないんですけれども,そういった取組が進んでいます。一方で,全体ネットワークに関してはまだそこまで議論が進んでいないというのが実態でございます。
 また,3番のユーザーニーズに基づく技術開発あるいは国産機器というところにつきましても,今回,補正予算でかなり予算をつけていただきまして,それを措置する際に,国産技術・機器を現場で導入する仕掛け,これを公募要領にかなり入れたこともありまして,これから実際整備が進んできていますし,先端計測のプログラムなんかだと,ユーザーと一緒に議論をしながら開発を進めていくという取組も進んできますので,ここも結構,3番なんかは補正予算をきっかけにかなり進んできているところがございます。
 4番については,実際これから議論をさせていただくことになるので,これからの宿題かなと思っています。
 5番は,先ほど西島先生おっしゃったように,個々の事業で人材を雇用するという取組は実際に増えるんですが,やはり各機関においてキャリアパスの確保みたいなものを含めた取組全体,大学政策と合わせた全体の取組というのはまだなかなか進められていないところがございます。ただ,一つ,25年度から研究大学強化促進費というものが始まります。その中で,機関として研究支援者を雇用することをルールの一つに取り入れようと,これはまだ議論中なんですけれども,今,考えておりますので,だから,これはまだできてはいないんですけれども,今後,徐々に進んでいくのかなということで,若干スピードに差はありますが,少しずつ,特に1番,2番,3番あたりを中心に今は取組を進めているというような状況です。
【吉川委員】  ありがとうございました。私は心理学者ですので,何か物事がうまくいっているかどうかを考えるときに,誰がどれぐらい喜んでいるかというイメージを浮かべるというふうにしているんです。例えば今,大学は産学連携についていろいろやっていますが、そのときに,産の人たちも,学の人たちも,みんな喜ぶためには現状をどう変えたらいいのか。あるいは,研究者が喜ぶこと,学生が喜ぶこと,みんないい状態にしようとすると,なかなかバランスが難しいところがありますが、そうした調整をどうするか。
 今までこういう大型の設備は,研究者は喜ぶけれど,学生たちにはそうでもなかったり,あるいは大学の人たちは喜ぶ,だけど,産業界の人たちはそうでもないとか,全体がバランスよく、みんなが喜ぶというシステムになかなかいかないところがあるのではないかと思います。この委員会の中でそういうことの見通しが見えてくる議論ができるといいかなと思いました。ありがとうございます。
【二瓶主査】  ありがとうございました。大変いいディスカッションで,御協力を更に頂けるかと思います。
 ほかにいかがでございましょうか。
 どうぞ。
【緑川委員】  一言だけ。先ほど西島さんが,サービスが悪いとおっしゃられて,それは確かにそうで,その原因は,日本の中で,SPring-8も含めて,そういう施設のオペレーションをしているのは研究者が多いんですね。研究者が空き時間にやったり,あるいはもちろん技師の方もいますけれども。
 私の考えでは,キャリアパスを考えるときに,シニアの研究者をそういうところに使うとかいう考え方はちょっと間違っているんじゃないかと思っているんです。というのは,研究者と,技師あるいは技術者ってちょっと考え方が違うというのが私の考え方で,というのは研究者というのは,新しいことをやって,2回同じことをやりたくないんですよね。ところが,技師とか職人というのは,これは誰が来ても同じサービス,同じことをちゃんとやらなければいけないので,そのときにそういうサービスマインドがまず違うので,支える人材の育成のときに,研究者と支える人材はある程度考え方を区別して育成を考えないといけないんじゃないかと。これはそういう意見でございます。
【西島委員】  全くそう思います。企業は比較的そういうところはできていますよね。
【緑川委員】  そうですね。
【二瓶主査】  どうもありがとうございました。予定の時間が来てしまいましたので,本日の議論は一応ここまでとさせていただきます。
 事務局から何か連絡事項ありますでしょうか。

○竹上基盤研究課長補佐より,今後のスケジュールの確認があった。

【二瓶主査】  それでは,以上で第9回の研究開発プラットフォーム委員会を閉会させていただきます。本日は誠にありがとうございました。

―― 了 ――

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