研究開発プラットフォーム委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成23年6月29日(水曜日)14時30分~16時30分

2.場所

外務省共用会議室中央153号室

3.議題

  1. 運営規則等について
  2. 調査検討事項等について
  3. その他

4.出席者

委員

二瓶主査、伊丹委員、宇川委員、長野委員、野田委員、福嶋委員、緑川委員、吉澤委員、若槻委員

文部科学省

倉持研究振興局長、戸渡大臣官房審議官、柿田基盤研究課長、藤吉基盤研究課量子放射線研究推進室長、坂本基盤研究課ナノテクノロジー・材料開発推進室長、石川基盤研究課課長補佐

5.議事録

 【二瓶主査】  定刻になりましたので、ただいまから科学技術・学術審議会先端研究基盤部会研究開発プラットフォーム委員会を開催します。

 初めに、私から一言ご挨拶を申し上げますが、4月28日の先端研究基盤部会の決定によりまして、研究開発プラットフォーム委員会が設置されました。今までの経緯は後ほど出てまいりますが、全く新しい部会でして、しかも名称の中にプラットフォームという言葉が入りました初めての委員会です。この設置の趣旨、あるいは経緯でポイントになりますのは、ただいまパブコメのプロセスの最中であります第4期の基本計画が、その手続が済んだ後、決められるプロセスになろうかと思いますが、その文言の中に、科学技術の共通基盤の充実、強化という項目が大事な項目の1つとして掲げられていることです。そのような意味で、先端研究基盤部会の中に研究開発プラットフォーム委員会が設置されたということですので、非常に新しいもくろみの一番大事な部分の議論を、先生方にご協力いただきましてこの委員会で議論し、進めてまいりたいと思います。一昨年度から始まりました文部科学省の中のいわばポスト第3期の基本計画を議論する委員会、基本計画特別委員会と申しますが、私はそこの委員もさせていただきましたけれども、その議論の経緯等に基づき、本日、主査の指名をいただいたということです。ご協力のほど、どうぞよろしくお願いします。

 それでは、会議に先立ちまして、倉持研究振興局長、一言お願いします。

【倉持研究振興局長】  研究振興局長の倉持でございます。委員の皆様方におかれましては、この研究開発プラットフォーム委員会のメンバーをお引き受けいただきまして、また、本日は大変お暑い中をお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 いま主査のお話にもございました研究基盤、新しくプラットフォームという言い方もし始めていますけれども、基本計画をめぐる議論でもその重要性が指摘されていますが、まだまだその本質やどうあるべきかという問題について、我々自身も先生方からいろいろ教えていただいて方向性を示していただきながら、施策の充実を図っていかなければならないと思っています。放射光、中性子施設、あるいは先端的な電顕など、本当に技術が進み、それによって広範なサイエンスや産業技術の芽といったものが育つ状況になってきました。その技術を更に高めながら、そういったものをどのようにうまく使っていただいて日本の科学技術を支えるようになるのか。技術の問題もありますし、それをどのようなシステムで運用するのがいいのかといった面もあるかと思います。また、そこで生ずる成果をどのようにうまく利用し合うのか。こういったものの考え方は、今までそれぞれ組織があって考えていますと、なかなか追いついてこなかったのかもしれないと思っています。日本全般でいろいろな研究活動がなされている中で、あるプラットフォームが有効に機能していくためには、どのようなところに注目して、どのようなマネジメントをしていくのがいいのか、それが世界と伍してやっていくために何が必要なのかということを、ぜひご教示いただき、いろいろな角度からのご意見を賜りたいと思います。

 震災がありまして、いろいろな意味で基盤インフラの重要性を改めて感じていますし、これからまさに千年に一度の経験をした我が国がどうそれを克服していくのか、これは今、政府を挙げて取り組んでいるところです。これは誠に重要な課題だと思っていまして、いわゆる研究インフラもその中に含まれることは間違いありません。復興にゼロからの出発という部分がある中で、そういったところにどのようなことを反映していけばいいのか、そういった面も議論の中でご教示いただければ大変ありがたいと思います。

 いずれにしましても、極めてブランニューでフレッシュな委員会ですので、主査のご指導のもと、闊達な意見を頂戴しまして、日本のこれからについて方向性を与えていただければと思っています。どうぞよろしくお願いします。

【二瓶主査】  ありがとうございました。

 それでは、配付資料の確認を事務局からお願いします。

【石川補佐】  それでは、議事次第に書かれています配付資料をご覧いただきながらご確認いただければと思います。

 まず、資料1-1が先端研究基盤部会に置く委員会についてという1枚紙です。資料1-2が科学技術・学術審議会組織図です。資料1-3が本委員会の委員名簿です。資料1-4がこれからご確認いただきます本委員会の運営規則の案です。資料1-5が本委員会に置く小委員会についての案です。資料2-1が先端研究施設・設備の現状についてという資料です。資料2-2が第4期科学技術基本計画策定に向けた総合科学技術会議答申見直し案ということで、重要課題達成のための施策の抜粋の資料です。資料2-3が本委員会での調査検討項目の案です。資料2-4が先端研究施設・設備の効果的な運用の在り方についてという資料です。以下、参考資料となりますが、参考資料1としまして、科学技術・学術審議会関係法令です。参考資料2としまして、昨年12月の総合科学技術会議の答申です。参考資料3としまして、先月5月31日に科学技術・学術審議会の総会で決定された、東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の検討の視点という資料を入れています。

 以上、欠落等ありましたら、ご連絡いただければと思います。

【二瓶主査】  よろしゅうございますでしょうか。

 それでは、まず本委員会の設置経緯につきまして事務局よりご紹介いただきたいと思います。

【石川補佐】  本委員会の設置経緯ですが、2年1期の審議会である科学技術・学術審議会について、本年2月から第6期ということで、新しい2年間が始まっています。その中で、資料1-2をご確認いただければと思いますけれども、これが第6期の科学技術・学術審議会の組織図になっていまして、下から5番目のところに今期から新しく先端研究基盤部会が設置されています。この先端研究基盤部会の下に、資料1-1をご覧いただければと思いますが、4月28日の部会において本委員会が設置されました。我が国の科学技術イノベーションを支えるプラットフォーム構築に向け、先端的な研究基盤の整備や運用等の方策について検討を行うという調査検討事項の下で、本委員会が設置されています。

 また、本委員会の委員ですけれども、先端研究基盤部会の運営規則第2条第2項に基づきまして、資料1-3のように、委員を部会長から指名していただいています。

 以上です。

【二瓶主査】  ありがとうございました。

 それでは、引き続いて委員のご紹介をお願いします。

【石川補佐】  それでは、資料1-3に基づきまして、本日ご出席の委員の先生方のご紹介をさせていただきたいと思います。

 まずは、本委員会の主査を務めていただきます、二瓶委員でいらっしゃいます。

【二瓶主査】  どうぞよろしくお願い申し上げます。

【石川補佐】  続きまして、吉澤委員でいらっしゃいます。

【吉澤委員】  吉澤でございます。よろしくお願いします。

【石川補佐】  続きまして、若槻委員でいらっしゃいます。

【若槻委員】  若槻です。どうぞよろしくお願いいたします。

【石川補佐】  本日ご欠席ではございますけれども、長我部委員、瀧澤委員、西島委員が就任していらっしゃいます。

 続きまして、伊丹委員でいらっしゃいます。

【伊丹委員】  伊丹でございます。よろしくお願いいたします。

【石川補佐】  続きまして、宇川委員でございますが、遅れてご出席という予定です。

 続きまして、長野委員でいらっしゃいます。

【長野委員】  長野です。よろしくお願いいたします。

【石川補佐】  続きまして、野田委員でいらっしゃいます。

【野田委員】  野田でございます。よろしくお願いします。

【石川補佐】  続きまして、福嶋委員でいらっしゃいます。

【福嶋委員】  福嶋です。よろしくお願いします。

【石川補佐】  続きまして、緑川委員でいらっしゃいます。

【緑川委員】  緑川です。よろしくお願いいたします。

【石川補佐】  それでは、引き続き、文部科学省の出席者を紹介させていただきます。

 研究振興局長の倉持でございます。

【倉持研究振興局長】  どうぞよろしくお願い申し上げます。

【石川補佐】  大臣官房審議官の戸渡でございます。

【戸渡官房審議官】  どうぞよろしくお願い申し上げます。

【石川補佐】  課長の柿田でございます。

【柿田課長】  柿田でございます。事務局を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。

【石川補佐】  紹介が遅れましたが、私、基盤研究課課長補佐の石川でございます。よろしくお願いいたします。

【二瓶主査】  それでは、議事に入らせていただきたいと思います。

 第1の議題は研究開発プラットフォーム委員会運営規則と公開の手続についてです。事務局からご説明いただきたいと思います。

【石川補佐】  資料1-4をご覧いただければと思います。委員会の運営に必要な事項のうち、科学技術・学術審議会令及び科学技術・学術審議会運営規則、先端研究基盤部会の運営規則に定められていない事項につきましては、委員会の運営規則ということで定めておく必要があります。本委員会の運営規則としまして、全体で第7条まである規則を用意しています。

 第1条は趣旨ということで、このプラットフォーム委員会の議事の手続、その他委員会の運営に関し必要な事項につきましては、科学技術・学術審議会令、科学技術・学術審議会運営規則、先端研究基盤部会運営規則に定めるもののほか、この規則に定めるところによるとしています。

 第2条としまして、委員会は、その定めるところにより、特定の事項を機動的に調査するため小委員会を置くことができるという規定を置かせていただいています。

 続きまして、第3条は議事についてということで、委員会及び小委員会は、当該委員会等に属する委員等の過半数が出席しなければ、会議を開くことができないというものです。

 第4条は委員等の欠席についてですけれども、欠席をする場合は代理人を委員会等に出席させることはできないという規定です。

 第5条は会議の公開についてですけれども、委員会等の会議及び会議資料は、人事に係る案件、行政処分に係る案件、その他非公開とすることが適当であると認める案件に関しましては非公開として、それ以外については原則公開ということで進めさせていただきたいと思います。

 第6条も会議の公開に関してですが、他の委員会等と同じように、本委員会におきましても、会議の議事録を作成し、これを公表するものとします。第2項のところですが、第5条の非公開に関する事項につきまして、当該部分の議事録を非公開とすることができるということです。

 第7条におきまして、その他、委員会の主査が委員会に諮って定めるという項目を設けさせていただいています。

 別添とさせていただきましたが、先端研究基盤部会の公開の手続きについてということで、本委員会につきましても、部会における公開の手続に準じた形で一般傍聴者、報道関係者などに対して手続等を進めさせていただきたいと思います。

 以上です。

【二瓶主査】  ありがとうございました。

 ただいまの運営規則に関して、何かご質問、ご意見はございますでしょうか。

 よろしゅうございますか。特にご意見がないようですので、ご了承いただけたということにさせていただきます。ありがとうございました。

 それでは、引き続きまして、研究開発プラットフォーム委員会に設置する小委員会について、事務局からご説明をお願いします。

【石川補佐】  続きまして、資料1-5をご覧いただければと思います。ただいまお認めいただきました運営規則の第2条の規定に基づきまして、本委員会の下に以下の小委員会を置くこととさせていただければと思っています。

 1つが知的基盤整備小委員会でして、平成13年8月に策定されました知的基盤整備計画及び平成19年9月に策定されました知的基盤整備計画についてというものの達成状況及び第4期科学技術基本計画を踏まえた、今後の我が国の知的基盤整備の方策について検討を行うために、本小委員会を設けてはどうかということです。

 もう1つが先端計測分析技術・機器開発小委員会でして、先端計測分析技術・機器開発関連事業の計画及び進捗状況の把握、内外の関連する技術動向・ニーズ等の把握、上記を踏まえた関連する事業の推進に当たっての基本的な考え方の整理・検討を行うために、本小委員会を設けてはどうかということで事務局から提案させていただきます。

 よろしくお願いします。

【二瓶主査】  ありがとうございました。

 それでは、ただいまの本委員会に設置する小委員会について、何かご質問、ご意見はございますでしょうか。

 よろしいようでしたら、お認めいただけたということでよろしゅうございますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

【二瓶主査】  ありがとうございます。

 委員会への分属につきましては、先ほど決定しました研究開発プラットフォーム委員会運営規則第2条第2項に、小委員会に属すべき委員、臨時委員及び専門委員は、委員会の主査が指名するとあります。また、第2条第3項に、小委員会に主査を置き、当該委員会に属する委員等のうちから委員会の主査の指名する者が、これに当たることとされています。これらの規定に基づき、今後、知的基盤整備小委員会及び先端計測分析技術・機器開発小委員会の人選をさせていただきたいと思いますが、これにつきましては主査である私にご一任をお願いしたいと存じます。よろしくお願いします。

 それでは、引き続き議題の2番に入ります。議題2は、本委員会における調査検討事項です。本委員会は、新たに設置されましたので、調査検討内容についてご議論いただく前に、我が国の先端研究基盤の現状、また第4期科学技術基本計画策定に向けた総合科学技術会議答申見直し案における重要課題達成のための施策等をご紹介いただきたいと思います。事務局からよろしくお願いします。

【石川補佐】  まず、資料2-1から説明させていただければと思います。

 本委員会で扱っていこうと考えています先端研究施設・設備が、現状どのような整備状況・運用状況になっているのかにつきまして、すべてを網羅しているものではありませんが、代表的なところをご紹介させていただければと思います。

 まず2ページからですけれども、我が国の科学技術政策の概要ということでご説明させていただければと思います。

 3ページ、4ページですけれども、科学技術基本法及び科学技術基本計画に基づきまして、現在、我が国の科学技術の振興を進めているところです。科学技術基本計画は、3ページの2.のところですけれども、10年程度を見通した5年間の科学技術政策を具体化するものとして策定するということで、これまで第1期から第2期、そして昨年度末までの第3期基本計画ということで、3期にわたって進めてきたところです。平成23年度から第4期ですけれども、現在、昨年12月に出されました総合科学技術会議の答申の見直し案という形でパブリックコメントに付された状況になっています。

 5ページ、6ページですけれども、これは昨年12月の答申案の概要で、本委員会に関係するところにつきましては大幅な変化はありませんので、これで説明させていただければと思います。最初の1.基本認識、そして2.成長の柱としての2大イノベーションということで、グリーンイノベーションとライフイノベーションを昨年12月の段階では掲げています。それと並ぶ3.我が国が直面する重要課題への対応の中で、重要課題達成のための施策の推進ということで、科学技術の共通基盤の充実、強化が1つ柱として、今回、答申に掲げられている状況です。また、6ページですけれども、4.基礎研究及び人材育成の強化でも、国際水準の研究環境及び基盤の形成ということで、(1)マル2先端研究施設及び設備の整備、共用促進や、(2)知的基盤の整備が柱として掲げられているところです。

 7ページですが、科学技術の共通基盤の充実、強化や、先端研究施設及び設備の整備、共用促進のところで、具体に記載されているものを抜粋しています。共通基盤の充実、強化では、科学技術に関する研究開発を効果的、効率的に推進していくためには、複数の領域に横断的に用いられる科学技術の研究開発を推進ということと、広範かつ多様な研究開発に活用される共通的、基盤的な施設や設備についてより一層の充実、強化を図っていくことが重要であると大きく2つ掲げられています。小項目といたしまして、2)共通的、基盤的な施設及び設備の高度化では、こういった共通的、基盤的な施設・設備に関しまして、その有効利用、活用を促進するということと、これらに係る技術の高度化の促進ということで大きく2つ記載されているところです。

 8ページですけれども、こういった第4期に向けての動きがある中で、現在、研究開発とイノベーションを支える先端研究施設がどうなっているかということで、概観する絵を入れています。一番上のところが特定先端大型研究施設ということで、J-PARC、SPring-8、SACLA、あとは次世代スパコンの「京」といった、いわゆる共用法の対象となる大型の共用施設があります。また、中段ですけれども、独法や様々な大学に先端的な研究施設・設備が整備されていて、一番下ですけれども、こういった先端研究基盤につながる技術開発として、内局の事業やJSTの事業が進められているという現状になっています。

 9ページは先ほど説明させていただきました、いわゆる共用法の法律の概要ということで載せています。

 10ページ以降では、我が国における先端研究施設・設備の整備状況ということで、主なものを概観させていただければと思います。

 11ページのところは我が国の放射光施設ということで、KEK(高エネルギー加速器研究機構)にありますPFやPF-AR、自然科学研究機構分子科学研究所にありますUVSOR、兵庫県播磨にありますSPring-8といったものから、立命館大学、広島大学、兵庫県立大学といった各大学の施設を載せています。また、佐賀県でも放射光を整備しています。ここには載せていませんが、現在、愛知県でも新たな放射光施設を整備しているということです。

 12ページですけれども、放射光施設以外にも、J-PARCですとかJRR-3といった中性子線の施設、RIビームファクトリーやTIARAといったイオンビーム関係の施設、また、J-KARENや激光12号といったレーザー施設など、様々な量子ビーム施設が我が国に設置されています。

 13ページですけれども、放射光やその他量子ビームのような計測・分析の大型施設のほかに、次世代スパコンの「京」を代表としたスーパーコンピュータに関しましても、各法人や大学でそれぞれにスーパーコンピュータが整備されてきている状況で、主立ったものを載せています。

 14ページ、15ページは電子顕微鏡や微細加工装置、また、NMRといった、やや中規模、小規模の施設・設備ですけれども、こういったものも全国のいろいろな大学や法人において整備されてきています。

 16ページ以降、こういった施設の運用状況が現在どうなっているかということを事務局で調査させていただきまして、主立ったものを載せました。17ページに調査項目がありますが、対象は基本的に22年度の実績値です。利用人数や利用状況の利用者数につきましては、実人数ということで、何回も利用していても1名は1名というカウントの仕方とさせていただきました。

 18ページ以降が事務局で調べさせていただきました運用状況です。最初が放射光施設ですけれども、例えば理化学研究所のSPring-8では、最大運転可能時間約6,000時間に対しまして、現在運転実績は約5,100時間です。ビームラインにつきましては最大62本置けるところを、今、53本です。ビームラインの利用率はほぼ100%で、ほぼ常に動いている状況です。外部利用の公募状況ですけれども、原則年2回課題募集をしつつ、随時募集も受け付けるという運用状況になっています。

 同じく放射光施設のフォトンファクトリーですと、最大運転可能時間が約7,000時間という中で運転時間実績は約5,000時間です。ビームライン本数は最大51本のところ51本ということでビームラインが整備されており、利用率も約90%です。年2、3回程度の定期募集と随時募集という形で運用されているところです。

 もう1つの例として立命館大学の放射光施設を挙げていますけれども、こちらは最大運転可能時間約4,800時間に対して運転時間実績は約1,600時間です。夜間運転や土日の運転は現状ではやっていないということで、平日昼間の時間帯の運用と聞いています。ビームライン利用率は約40%ということになっていますけれども、ビームラインによっては当然100%使われているところもある一方で、全体の整備当初からあるビームラインに関しては利用率の悪いビームラインもあるようで、ビームラインによって利用状況に多少差が出ている現状です。外部利用につきましては、立命館の場合は随時募集でやっています。

 次の中性子線施設としまして、日本原子力研究開発機構にありますJRR-3のJ-PARCについて挙げていますが、JRR-3に関しましては、中性子ビーム利用は最大運転可能時間約4,200時間に対して約4,180時間と、かなりぎりぎりのところまで既に運転されているようです。J-PARCにつきましては、約4,700時間に対して約3,400時間、ビームライン本数も最大23本のところ12本ということで、今年度共用法に基づく共用開始の段階で、まだビームライン等についても整備が現状進行中という段階の施設です。

 また、スーパーコンピュータでも2つほど代表例として、海洋研究開発機構にあります地球シミュレーターと、東工大にありますTSUBAME2.0を挙げていますが、最大利用可能計算資源に対しましての利用資源という形で、おおよそ最大利用に近いところまでの利用が現在なされているところです。次世代スパコン「京」については、現在、整備されて、今後24年度から共用開始予定という段階で、今のところの実績という形ではデータを載せていないところです。

 21ページ、22ページでございますけれども、中型の施設としまして、物質・材料研究機構のNMR、レーザー描画装置、電子顕微鏡、北海道大学の電子ビーム描画装置、大阪大学の高圧電顕といったものの状況を載せています。また、22ページでも、理化学研究所のNMR、名古屋大学の超高圧電顕、京都大学のビーム装置といったものの運用状況を載せました。

 各施設から伺っています現状の課題点や問題点を簡単にまとめたものを、各ページに載せています。

 23ページ以降は参考ということで、関連の予算をいくつか載せています。

 引き続き、資料2-2について説明させていただければと思います。

 資料2-1につきましては、現状整備されているものの整備状況と運用状況を紹介させていただきました。資料2-2につきましては、これからどういった研究基盤が必要になってくるかをご議論いただく上での参考として、先生方に紹介させていただければと思っています。現在見直し中の総合科学技術会議の答申ですけれども、その中で重要課題達成のための施策ということで記載されている部分を抜粋しました。

 いくつか例示として挙げさせていただければと思いますが、現在、3月に起こりました東日本大震災を踏まえまして、震災からの復興、再生の実現が、それまでのグリーンイノベーション、ライフイノベーションという2大イノベーションに、もう1つ大きな柱ということで入ってきています。その中では、被災地の産業の復興、再生、社会インフラの復旧、再生と被災地における安全な生活の実現という大きく3つの項目の中で、例えば被災地の産業の復興、再生ということであれば、汚染された土壌や水質等の調査及び改善、改良、海洋生態系の回復、生産性の向上、農林水産物の安全性の向上等に関する研究開発を推進する、新しい産業の創成と雇用の創出に向けて、被災地を中心に再生可能エネルギーや医療・介護、情報通信技術等の領域における研究開発等の取り組みを促進するというような記載があります。

 社会インフラの復旧、再生のところでも、様々な社会インフラの寸断、甚大な被害を踏まえまして、いろいろなインフラにつきましてその復旧、再生と、その機能性、利便性、安全性の向上に資する研究開発や、ネットワークの強化に向けた研究開発が載っています。

 また、被災地における安全な生活の実現ということで、地震や津波等の調査観測等の充実、強化や、防災、減災対策に関する取り組み、また、原子力発電所の事故を受けまして、放射性モニタリングや汚染された土壌、水の除染、放射性廃棄物の処理、処分に関する取り組みといったものが記載されています。

 当初12月の答申からありましたグリーンイノベーション、ライフイノベーションのところにつきましても、震災を踏まえて修正が入っていますけれども、次のグリーンイノベーションですと、安定的なエネルギー供給と低炭素化の実現、エネルギー利用の高効率化及びスマート化、社会インフラのグリーン化という大きい3つの柱が立てられています。

 その中で、最初の安定的なエネルギー供給と低炭素化の実現のところでは、太陽光発電やバイオマス利用、風力、小水力、地熱、潮力・波力といった再生可能エネルギーの研究開発、あとは分散エネルギーシステムの革新を目指すということで、燃料電池や蓄電池といったもの、また、製造、輸送、貯蔵にわたる水素供給システム、超伝導送電の研究開発、あとはスマートグリッドといった様々な研究開発の促進が掲げられています。また、基幹エネルギーの供給源の効率化と低炭素化ということで、火力発電の話、震災を踏まえた防災研究、モニタリングなどの記載があります。

 エネルギー利用の高効率化及びスマート化のところですと、製鉄等における革新的な製造プロセス、ここで用いられる材料の高機能化、グリーンサスティナブルケミストリー、バイオリファイナリー、革新的触媒技術に関する研究開発といったもの、省エネ化に向けまして住宅等の建物の高断熱化、高効率家電や照明などの研究開発、また、次世代自動車に用いられる蓄電池、燃料電池等々の研究開発、高効率輸送機器に関する研究開発、また、次世代情報通信ネットワークに関する研究開発等が載っています。

 社会インフラのグリーン化というところでは、高高率な交通及び輸送システム、社会インフラと一体となった巨大ネットワークシステムに関する研究開発、高度水処理技術を含む総合水資源管理システムの構築に向けた研究開発、資源再生技術の革新、レアメタル、レアアース等の代替材料の創出に向けた取り組みなどが記載されています。

 ライフイノベーションのところでは、革新的な予防法の開発、新しい早期診断法の開発、安全で有効性の高い治療の実現と、もう1つ、高齢者、障害者、患者の生活の質(QOL)向上という4つの柱の中で、それぞれの予防法の確立、早期診断方法、安全で有効性の高い治療の実現という中に、様々な研究開発を進めるべき、促進するという記載があります。

 また、これら震災とグリーンイノベーション、ライフイノベーションという大きく3つの柱に加えまして、我が国が直面する重要課題への対応ということで、現在の答申案の中に盛り込まれています。1つが安全、かつ豊かで質の高い国民生活の実現ということで、特に今回の震災を踏まえた記載も含めて、様々な生活の安全性、利便性の向上の話や、5ページ目に移りますが、食料、水、資源、エネルギーの安定的確保といった項目で、それぞれ研究開発の推進の項目が掲げられています。

 また、我が国の産業競争力の強化ということで、こちらにも共通基盤の強化という単語が出てきますが、産業競争力の強化に向けた共通基盤の強化や、我が国の強みを生かした新たな産業基盤の創出といったもので進めるべき研究開発が記載されています。

 6ページになりますけれども、地球規模の問題解決への貢献と、国家存立基盤の保持ということで、様々な研究開発の例が載っています。

 以上です。

【二瓶主査】  ありがとうございました。

 引き続き、資料2-3のご説明をお願いします。

【石川補佐】  ただいま資料2-1と資料2-2で大まかな現状ということで、現在整備されている状況や、今後第4期の基本計画で推進すべしと掲げられている研究開発について紹介させていただきました。こういったことを踏まえまして、我々事務局としまして、本委員会で委員の皆様方に調査検討いただく項目ということで、資料2-3に項目案を載せさせていただきました。大きく3つほど挙げています。

 1つ目は、まずは今後の科学技術イノベーション政策における先端研究施設・設備の意義、役割について委員の皆様方にご審議、ご意見を頂ければと思っています。論点としましては、先ほどご説明させていただきましたような我が国における施設・設備の現状、課題、これまでの整備状況、あとは震災を踏まえた状況といったもの。あとは海外における状況などを事務局からいろいろ提示させていただきました上で、今後の科学技術イノベーション政策におけるこういった先端研究施設・設備の意義、役割につきまして委員の皆様方にご意見を頂き、ご審議いただければと思っています。

 2つ目としましては、先端研究施設・設備の安定的、効果的な運用ということで、意義、役割を踏まえた上で、既存のものも含めてどう運用していくのが必要になってくるかということをご審議いただければと思っています。論点としましては、どのように施設・設備を安定的に運用していくかということで、例えば国が支援すべき施設・設備の考え方をどのように考えていくかということや、施設・設備の利用の在り方を更に高度化、効率化していくために何が必要になってくるかということで、施設・設備へのアクセシビリティの向上、コーディネート機能の在り方、あとは複数施設・設備の連携利用促進の在り方、技術支援人材の役割をどのように考えていくかということ。あとは人材の育成・確保、今回の震災を踏まえましたセーフティネットの構築、また、現在の共用法の体系についての検証といったようなものが挙げられるかと思います。

 3つ目としましては、その意義、役割や現在の施設の安定的、効果的な運用という議論の上で、更に戦略的に整備をしていくとして、どういう考え方の下で整備が必要になってくるかというところでご意見、ご審議いただければと思っています。論点としましては、今後の先端研究施設・設備に関するシーズ・ニーズの把握を踏まえて、世界をリードする先端研究施設・設備がどういうものであるか、また、既存の施設・設備の高度化を含めまして、今後の先端研究施設・設備の整備の基本的な方針も委員の皆様方にご審議いただければと考えています。

 以上です。

【二瓶主査】  ありがとうございました。

 資料2-4は、ただいまご説明いただいたような先端研究施設・設備の効果的な運用の在り方についてという資料です。少し全体像が見えたところで、ご質問を頂けますでしょうか。資料2-1、資料2-2、特に資料2-3は本委員会でこれから検討していく内容についての一覧、実はこういう議論をまとめて本委員会のアウトプットとして世に問いたいというもくろみでございます。この辺りでいったん区切ってご質問いただければと思いますが、いかがでしょうか。

【福嶋委員】  確認ですけれども、いまご説明いただいた資料2-2というのは、今回の我々の議論の範疇ではなくて、これを踏まえて資料2-3のところをやるという意味でしょうか。

【二瓶主査】  結局、先端研究のためのプラットフォーム構築ということを議論していただきたいわけですが、そのプラットフォームを構築した後、どのような課題がこれから先待っているかということの事例として、第4期基本計画の文章に盛り込まれる予定のものの抜粋を作っていただいたという位置づけです。第4期基本計画の特徴の1つとして、課題解決型の科学技術イノベーション政策をうたっています。では、課題解決の課題とは何かということの事例が、この資料2-2にいろいろ現在までの議論で挙げられています。

【福嶋委員】  わかりました。

【二瓶主査】  こういうことに向けて共通基盤の整備を考えていこうというもくろみとなります。

 他にいかがでしょうか。

【若槻委員】  資料2-3、議論すべき論点が非常によくまとめられていると思いました。ただ、議論をたくさんする前に確認させていただきたいんですが、本日ご紹介されている中で、いわゆる共用促進法で動いているものとそれ以外の各大学レベルで運用されているもの、たくさんいろいろな形のものが入っていますが、そういうものを大きくカバーして研究を進めていくようなプラットフォームを考えているのでしょうか。どのぐらいの範囲までのところかというのと、それから、細かく分ける必要は全然ないと思うのでが、プラットフォームでも、例えば物質科学と生命科学とでプラットフォームの作り方は少し気をつけて、違う作り込みをする必要があると思うので、そういう研究分野としてどのぐらいの範囲を見て、いくつぐらいのプラットフォームを考えるとか、その辺の大枠の話をまずお聞きしたいと思っています。

【柿田課長】  資料2-1の8ページをご覧いただきたいと思いますけれども、ここにいわゆる先端研究施設の俯瞰図のようなものがあります。一言で言いますと、ここに描いているようなものをスコープに入れて議論していただければと思っています。この中には、この富士山のような絵の上にありますような、法律に基づいて整備、運用しているものから、大学、独法が独自に整備、運用しているもの、更には一番下ですけれども、新たな先端研究基盤、将来的には絵の上の方に上がってくるような、それにつながるような最先端の基盤技術の開発フェーズのものまであります。フェーズとしても、また、分野としてもライフサイエンスやナノテクノロジーなど多岐にわたっています。他方で、ライフサイエンスを例にいたしますと、ライフサイエンスではどういう研究基盤が必要かということは、現状においては、ライフサイエンスの研究開発政策を議論する中で検討されています。従いまして、そのレベルまでこの委員会で突っ込んで議論する必要はないと考えますが、ライフサイエンスやナノテクノロジーなどの分野毎の研究基盤の整備、運用の問題を踏まえつつ、今後は、それら全体を1つの土俵に乗せて考えた場合、全体として更に効果的に機能する方策、システムを検討してみてはどうかということで、絵に描いたようなスコープを念頭に置いております。

【若槻委員】  はい。

【二瓶主査】  よろしゅうございますか。超大型から小型まで含めたもろもろの手法、装置を同じ土俵に乗せていきましょうという発想です。

【伊丹委員】  その際に、資料には載っていないけれども、共通利用の可能性のある先端研究設備というのが、実は民間だったり、大学だったり、他にあるのではないかと素人考えに思うのですけれども、それはないと思ってやるのですか。それともあるのですか。

【柿田課長】  この絵に載っていないものもあります。例えばナノテクノロジーネットワークとか先端研究施設共用促進事業といったものがございまして、その事業で日本全国にある非常に共用性の高いものを選んで国として共用のためにサポートをしています。先ほどの運用事例のところにも出てきている装置群はそういうものですけれども、例えばこれらの事業において、今後、新しいものを対象に加えて国として共用に供していく場合も当然ありますので、そういう意味では、政策的な対象ということで、プラットフォームの範疇に入るものが、いま絵に描かれているもの以外にもあるということになります。

【伊丹委員】  私の質問はそういう高級な、変えていくのですかという質問ではなくて、いま日本にあるこの種の施設の中で、この委員会のテーブルの上に乗せるのは大体何割ぐらいですか。単純に言えばそういう質問です。あるいは施設数はどれぐらいですか。投入された総設備予算はどれぐらいですか。毎年運営経費としてどれぐらいの支援が投入されているものをここで対象にするのですかという実感が全くつかめないものだから。1,000億円、500億円、あるいは1兆円のオーダーの話をするのか私は知りませんけれども。

【柿田課長】  これはこの後のペーパーにも出てくるわけですけれども、これからの議論の対象としてとらえるものをどのような範囲にするのかということについて、考え方の整理をする必要がございますが、大まかな範疇としては、膨大な対象物がある中で、絵に描きましたような、強い政策的な意図を持って整備、運用しているものが対象になると考えております。なかなか数字で表現するのは難しいのですが。

【伊丹委員】  そういう質問です。

【柿田課長】  全体でどれだけあって、そのうちのいくらということを、直ちには答えかねますけれども、先端的であり、かつ、政策的な意図の強いものが対象になると考えておりまして、おおまかなイメージとしては資料でお示ししたものというように考えております。

【伊丹委員】  それはわかっています。ドタ勘でいいから、日本の国全体にある様々な人が予算を投入してやったものの中で、この委員会で対象とするのは施設数にして5割や8割など、何か見当はないのですか?

【柿田課長】  5割や8割という大きな割合にはならないと思います。かなり先端的なものということで、しかも国として政策的に運用していくということですので。当然ながら、民間企業が所有しているものまで含めて議論するということにはならないと考えています。

【野田委員】  私は物質・材料研究機構の者ですけれども、独法で持っている大きな設備といった場合、その対象が材料か物質か、そういうものに対応するものか、あるいは、先ほど医学利用と言っていたHIMACや、実大三次元震動破壊実験施設の大きな振動台などありますよね。だから、どこまでこの委員会で対象とするのかについては、ある程度、これを見ると共用法に載っているような設備や、それから実際いま運用されているプロジェクトがかなりそのベースになっているという感じがします。

 それから、NIMSはNMRを持っていますけれども、それ以外にハイブリッドの定常強磁場の施設があります。それはここには載っていません。ただ、それは将来的にはこの富士山の中に入ってくる可能性もあるのかなと。その辺を議論するのかというのはなかなか難しいと思った次第です。

【伊丹委員】  難しいだろうと思って聞いたのです。

【若槻委員】  最初のほうに出てきます放射光、中性子、NMRなどであれば、実はかなりカバーはされているのではないかという気はします。

【二瓶主査】  そうですね。先端的なものという表現がありましたけれども、ごくありふれた計測分析装置というのは膨大な数があります。その設置経費を考えたら大変な金額になります。ですから、そういう分母に対してここで扱うものはどのくらいかということになりますと、大分少ないことになります。多分、10%以下のオーダーだと思います。いまご指摘のように、あまりあちらこちらにないような、かなりユニークな特徴があり、かつ世界でもトップレベルとなると随分少なくなりますし、大体この絵に書いてある範囲から想像できるぐらいです。

 ただ、課題解決を目指す共通基盤というような考え方をして、それ以外のものは基盤ではないのかというと、そうではなく十分に基盤だと思います。ただ、そういう部分は、情報のやり取りの場としては含まれると思います。ですから、情報のやり取り、ユーザーと研究者、それから装置作りの専門家、そういう人の集団を考えますと、その人たちがやり取りする情報の範囲というのは相当広い。もうそこらに転がっているような普通の装置も十分に問題になり得ると思います。ただ、一遍にその全体をカバーするのは大変ですから、ここで特に取り上げて議論するものは、やはりユニークなもの、ぜひともこれから普及させたいもの、それから、これからより先端性を目指して開発を促進したいものなどという発想で絞っていき、大分この場でできるような範囲のものを議論してはいかがかという発想だと思います。

【吉澤委員】  確かにそういう印象で、大型設備、加速器技術を使っているものに特化して、特にヒエラルキーが形成できるようなものを取り上げているような印象を持っています。例えば中性子ですと、加速器や原子炉が必要ですし、放射光とかレーザーですと、自由電子レーザーから各実験室にあるものまで、これは全部ヒエラルキーです。X線も、分母は津々浦々、医療機関から大学までたくさんあるわけですから、それを分母にとってしまうと難しいけれども、先端的な国が整備しなければいけない加速器技術による放射光利用は何かという、どうやらその辺がこの委員会で議論するところに入ってくるのかと思って聞きました。

 私は東京大学の物性研究所の者ですけれども、結構関係していて、うちの研究所だとペタコンの「京」にも理論部門が関係しています。私の専門は中性子なので、中性子はもちろん関係していますし、SPring-8にもアウトステーションやっていますので放射光も関係しているのですが、1つ違和感を持っていたのは、実は超強磁場というのはヒエラルキーを我が国で作っていて、物性研も物材も、それから東北大学の金研もネットワーク化しているのですが、どうやらそれはここに入ってきていないようなので、その辺からこの委員会の所掌がだんだん見えてくるのかなと。そこをもう少しわかりやすく、この辺を舞台にして議論してほしいと言っていただけると大変やりやすいと思います。

【二瓶主査】  重要度の順番で議論しましょうと言えばおっしゃるような話になります。ただ、そういう意識をほとんど関係者の皆さんは多分もう既に持っていると思います。放射光関連施設については、もうしっかりとコミュニティーができていますから、それはもういいでしょうという感じを私は持っています。そうではなくて、もっと広い土俵を作らなければ、課題解決型で何かに取り組んだときに、こういう新しい問題が出てきた、これをどうやって解決すればいいのかという、ユーザーサイドの発想を持つと、プロ中のプロ集団のコミュニティーにはそういう方は入っていないわけですよ。そういう方とどういうコミュニケーションを深め、できれば同じ土俵に乗っていただいて、もっと研究開発をスピードアップするために必要なものは何か、その辺りがいま我が国の科学技術イノベーションに一番大事な部分ではないかと思います。

 ですから、あまり議論の最初から、グローバルで、トップレベルで、ユニークで、もうプロ中のプロが絶賛している、そういうものだけに閉じ込めて議論を始めるのは適切ではないと感じているんですが、いかがでしょうか。

【吉澤委員】  おっしゃるとおりで、この資料の8ページでもナノテクノロジーネットワークとか先端共用促進事業などを下に入れていただいていますが、その辺のリンクを狙って施策として考えていきたいのだろうという印象は漠然としてあります。いま、物性物理の中でも一番重要なところが、そういう大型先端施設と個々のいろいろな新しく発見された物質をどうリンクさせていくかということなので、そこのネットワークを施策としてどう進めるかです。

【二瓶主査】  そうご理解いただくと、議論のスタートとしては適切かなと思ういます。

【緑川委員】  これに宇宙関係は全く入っていないのですが、例えば望遠鏡、あるいはカミオカンデはかなり大型な装置で、ニュートリノなど先端の科学にはもちろん、実はいろいろなことに使えます。そういうものはあえて入れないほうがいいのですか。

【柿田課長】  例えば宇宙ステーションは1つの共用施設のような位置づけになっていると思いますので、ここで議論するプラットフォームの範疇には入り得るのではないかと思います。

 他方で、カミオカンデのような、いわゆる学術研究を支えるものについても、もちろん研究基盤であることには間違いないわけですが、ここで議論する研究開発プラットフォームをイノベーションという観点で、将来の社会的、あるいは経済的な価値を生み出す営み、それを支える基盤ということに重点を置くとした場合、少し距離感があるのではないかと考えます。しかしながら、この場で議論する研究基盤が学術研究をも支える、あるいはそれと連携するということも念頭に置いておくことは必要であると考えます。

【長野委員】  いま、望遠鏡の話が出ましたけれども、生命科学のほうはまだここには書かれていないのですが、どうなっているのでしょうか。具体的には、私は、日本学術会議に関係して、いわゆる大型研究をいろいろリストアップしているのですが、実際、生命科学研究では、従来、「すばる」のような大型の施設といった考えがなかなかなかったのですけれども、日本学術会議でそういうものも取り上げていくということで、最初、全部で11課題取り上げました。そのときはまだまだ生命科学、いわゆる薬学、農学、医学の先生方から、研究者のコミュニティーを統合した格好での考えが出てきませんでした。ただ、一応11課題が出てきて、出てくるのであればもう1回見直すべきだということで、現在作業を進めていますが、大体15課題ぐらい出てきそうです。その中には、いわゆる大型施設ではないですけれども、例えば遺伝子の改変動物を日本としてきちんと整備すべき、あるいは大きな施設を1つ作るのではなくて、そこに主に運用費がかなりかかってくるわけですけれども、そういうものも必要だということがかなり言われておりまして、全部で15課題あります。そういうものはこういうところに議論として入ってくるのかどうかというのをお聞きしたいです。計測ではないですけれども。

【柿田課長】  入ってくるものと思います。資料2-3の検討項目の案の中の3番目に、今後の施設・設備の戦略的な整備について項目を掲げております。日本学術会議においていわゆる学術分野の基盤整備のロードマップについて検討されておりますが、イノベーションに向けた科学技術の分野でも、それを支える基盤の整備についてのロードマップ的なものを明らかにするような議論もぜひこの場でやっていただければと思っております。そのような意味からもスコープに入るのではないかと思っています。

【二瓶主査】  全く初めてのもくろみをやろうとしておりますから、問題意識としては広くとったほうが恐らく将来にとってプラスだと思います。ですから、今後の戦略的な整備の在り方に生命科学は当然位置づけられるし、その関連のものも当然そこに出てこなければいけないと思います。その辺りが縦横に結びついているわけですけれども、放射光施設は典型例ですが、全部の分野に関係しますので、そういう方法論から見たリンクも当然意識しなければいけませんし、それから、この受け皿の分野に特徴的な設備、方法なども意識しなければならないということで、恐らく大きな土俵を考えて、そこにある種の、もう少しカテゴライズしたサブカテゴリー、サブプラットフォームのようなものがあり得て、現実的には、いざこれを全部動かすというときに、大きなつながりとサブプラットフォームのつながりとは重層構造になり得ると思います。むしろそのほうが効率がいいということになれば、あるサブカテゴリーが一気に進歩、発展していくことは当然あってもいいですし、それを横目で見ながら、その点はこっちが引っこ抜いてここで活躍してくださいというつながりがあってもいいですし、恐らくかなり大きな単位での横のつながりが次々とでき、かつ整理されて、それが時間単位で進歩、発展していくというイメージになるのではないかという気がしています。もっとも、これはしっかりと議論しないとまだわかりませんが。

 ただ、ポイントは、最初から余り狭くしないほうがいいだろうということで、自由にプラットフォームというイメージを議論していただいて、それをエフェクティブなレベルにまで整理しなければ議論が役に立ちませんから、それはしていただいて、それを羅列型になるかもしれませんが、ファーストペーパー、最初の資料2-3に出てくるものは、もちろん単純羅列ではないけれども、かなり幅広のものが土俵の上に乗ってきたというイメージで1つの絵が描けるのかもしれないという感じを私は持っているのですが、いかがでしょうか。

【若槻委員】  私もそれは大賛成です。実際にサイエンスをやっている人から見たときに、こういうプラットフォームをどう使うかというのを考えると、放射光は放射光でプラットフォームというのは比較的議論がしやすいです。量子ビームで中性子も合わせてといった議論は今までも結構していますし、できているのですけれども、研究者は別に放射光だけを使っているわけではない、中性子だけを使っているわけではないときに、いろいろな最先端の施設をうまく研究者は使い分けていますが、新しく若い研究者が自立して何かやっていくようなときなど、ちょっと分野が違う方が使い始めるときは、どの装置をどうやって使っていくかという。それぞれのプラットフォーム、例えば放射光であれば放射光で全体を見て使いやすさを意識はしているのですけれども、それをクロスして見ていくときのプラットフォームというのはあまりないかと思います。

 例えば遺伝子改変のようなものと放射光と中性子を使って生物の実験をするときに、一体どうやって実験計画全体を考えたらいいかという議論はあまり、多分、日本全体ではしにくいのではないかと思います。私が思っていますプラットフォームは、大きな意味で、どちらかというと施設の種類でもって書いてある大きな話です。その中で少しサブセットという話がありますが、私はそれに加えて、分野で分けてはいけないけれども、分野共通ですけれども、分野ごとに施設でつながっていくようなプラットフォームをどうやって今度は縦につなげていくかという議論はしたほうがいいのではないかという気がします。

 この後も多分出てくると思いますけれども、例えば創薬等を考えたときに、実は本日これから議論するような複数のプラットフォームに関係するはずですが、そこにどうやってつなげていくかという議論を縦軸、横軸のもう1つの軸ということで入れていただけるとありがたいと思います。

【二瓶主査】  おっしゃるとおりです。そういうイメージができると非常にユーザーというか、ある分野の研究者から見て、全体を見通した上でどういう連携、組み合わせで自分の研究を進めればいいかがわかりやすいです。恐らくそういう発想の土俵が日本にはないと、そんな感じを持っています。

【福嶋委員】  同じようなことで、産業界で開発したときも、別に私たちは中性子を使いたいわけではないので、何かを知りたいと。そのときにどこに行けばいいか、それから、たまたま行ったら引っかかったところで始めちゃうこともありまして、それが本当にいいかというような議論がどこまでされているかという、まさにこういうプラットフォームを作っていただきたい理由はそこにあります。

 それともう1つは、先ほどピュアサイエンスは関係ないとおっしゃったけれども、それは実用に本当に関係ないわけではないはずで、例えばキャメディッシュの昔の宇宙の星の理論がGPSの基本特許になったように、やはり見る人が見るとピュアサイエンスもイノベーションに結びつくすごい情報を持っている。そういう情報をどこから取ってくるかというのは、我々はニュートリノの学会にあまり行ったことないですから、行ってもわからないですけれども、そういうことができる、まさにプラットフォームというのはそういうソフトウェアをつくるところですけれども、そういうものが少しでもできればありがたいと思います。

【二瓶主査】  ありがとうございます。そのぐらいご議論いただくと、漠然とイメージができたと思うのですが、先に進ませていただければと思います。

 次は、先端研究基盤の効率的な運用の在り方という切り口で資料をお作りいただいています。資料2-4でございます。ご説明いただけますか。

【石川補佐】  資料2-4につきましては、今回この委員会でご議論いただきたい事項のうちの、特に運用面のところに焦点を絞って、今後しばらく委員の皆様方に様々なご審議を頂ければと思い、作らせていただきました。

 1ページ目ですけれども、現在、研究施設・設備を外部利用(共用)に供することを目的として文部科学省として進めている事業の主立ったものを挙げました。1つは、ナノテクノロジーネットワークで、我が国のナノテク・材料研究を振興するための最先端研究インフラの共用ということで、微細加工装置、計測装置といったもののネットワーク化の事業が進められています。

 逆に右側のほうで、ここはまだまだナノテクノロジーネットワークに比べると最近の事業ですけれども、創薬等支援技術基盤ということで、こちらはライフサイエンス系のところで創薬プロセス、医療現場で活用可能な技術の外部共用ですが、化合物ライブラリー、シーケンサー、タンパク質構造解析施設・設備といったものをネットワーク化していく事業が進められています。

 また、下の部分ですけれども、スパコン「京」を中心としましたHPCIや、あとは先端研究施設共用促進事業ということで、様々な放射線発生施設、NMR、電子顕微鏡といったものの共用促進事業。また、共用法に基づく共用ということで、SPring-8、SACLA、スパコン、J-PARCというような形で、いくつかの共用を目的にした事業が進められているところです。

 2ページ目、3ページ目は参考ですけれども、共用に関しましては、特定先端大型研究施設の共用の促進に関する法律ということで、先ほど来、共用法と言わせていただいておりますが、大型の共用施設の促進、運用に関する法律があります。また、研究開発能力強化法には第35条で研究開発施設等の共用及び知的基盤の共用の促進という項目がありまして、国は研究開発に係る施設及び設備の共用並びに研究材料云々の共用の促進を図るため、国、研究開発法人及び国立大学法人等が保有する研究開発施設等及び知的基盤のうち、研究者等の利用に供するものについて、利用するために必要な情報の提供、その他の当該研究開発施設等、知的基盤を広く研究者等の利用に供するために必要な施策を講ずるものとするという第1項と、第2項につきましては、可能な限り、広く研究者等の利用に供するよう努めるものとするということが規定されています。こういったものに基づきまして共用の事業を進めています。

 3ページ目のところは先ほどの説明資料と同様になりますけれども、第4期基本計画におきましても共通基盤の充実、強化ですとか、施設・設備の整備、共用促進ということがうたわれています。

 4ページ目以降のところでは、いま挙げさせていただきました事業の中で、既に何年か事業が進んでいますナノテクノロジーネットワークと先端研究施設共用促進事業と、あとはSPring-8やJ-PARCといった量子ビーム関係の施設に関しまして、こちらも事務局のほうで少しアンケートのようなものをさせていただき、各事業の中で現在運用上どういう課題が上がってきているかを少しまとめさせていただきました。

 例えばナノテクノロジーネットワークであれば、施設保有者から見た課題と利用者から見た課題という形で観点を2つに分けて記載させていただきましたが、施設の老朽化、高度化や、新たな装置の開発、設備導入が困難であるということ。また、支援員のキャリアアップ、キャリアパスの構築、成果が明確に出にくい内容の技術相談、支援要請の増加、あと拠点間の交流の低下、異分野融合が困難になってきていることや、ノウハウを集約、共有できる体制が不十分といったことが課題として挙げられます。利用者から見た場合、施設の性能向上とか更新を図ってもらいたい、申請、課金等の利用に伴うシステムが拠点ごとに異なっているので、もう少し使い勝手をよくしてもらいたい、ワンストップサービスのようなことを充実してもらいたいなど、利用報告書を簡素化できないかというようなもの。あとは遠方利用の場合に宿泊費とかの助成ができないかというようなものが利用者側から見たときの課題ということで上がってきています。同じように共用促進事業、SPring-8、J-PARCといったところでも課題点ということでそれぞれ上がってきています。

 それぞれ上がってきた課題には共通部分がかなり多くあったと考えていまして、5ページ目のところで事務局のほうで問題点を整理させていただきました。そうしますと、保有者側から見た視点でいくと、やはり運転経費の削減などそういった形で運転経費を十分確保したいということ、施設・設備の老朽化・高度化対策をやっていきたいということ、研究支援人材を確保していきたい、研究者、技術者が不足している、支援スタッフのキャリアパスをもっと形成していきたいというようなこと、あとは情報の共有・発信、利用の促進ということで、施設間の交流、ノウハウの集約・共有、新しいニーズの掘り起こしですとか異分野融合の促進というような観点が施設保有者側からの課題かと思います。

 同じく利用者側の視点から見ても、やはり老朽化、高度化と、また同じことになってきますけれども、施設・設備の性能を向上してほしい、更新してほしいということ、あとは支援人材を充実してほしいということ、利用システムの改善ということで、異なる制度をもっと使いやすくできないかといったもろもろのものと、あとはやはり情報の適切な発信ということで、どういう実験ができるのか、どういうことに使えるのかという情報発信が欲しいという要望が利用者側からの課題ということで挙げられているということで、我々の方でまとめてみました。

 一部の母集団ではありますけれども、アンケートのような形でそれぞれが抱いている課題を集約した上で、こういった課題に対応するために以下のような取り組みが必要ではないかということで、いくつか挙げさせていただきました。

 1つは、施設・設備の安定的、効果的な運用という項目です。1つ目のポツですけれども、運転経費の確保に向けては、まず所有者において更なる運用の合理化、効率化を進めることが必要ではないか。その際、例えばですけれども、施設・設備の運用にかかわるグッドプラクティス等を所有者間で共有できるような場を設けることも必要ではないか。2つ目としまして、また、利用者ニーズや政策的な要請、社会的効果といったものを踏まえまして、国として運用を補助すべき施設・設備、そういうものの考え方をどういったものに対して国として補助していくかというようなことについて改めて整理していく必要があるのではないか。更に、今回の震災の影響も踏まえまして、特に加速器等の電力消費の大きい施設・設備の省エネ化ですとか、新たな省エネ技術開発ということも進めていくなどして、低コストで運用可能な技術開発ということも同時に進めていくべきではないかということで挙げさせていただきました。

 続きまして、施設・設備の老朽化・高度化対策ということで、こちらにつきましては、施設・設備の老朽化、高度化については、やはり日々の利用ニーズに応じた性能向上を初めとしまして、施設・設備が常に最先端の研究ニーズに対応し得るよう、着実な対応を可能とする措置が必要ではないかということで挙げさせていただいています。

 6ページ目ですけれども、技術支援人材の育成・確保という観点ですが、こちらにおきましては、技術支援人材のモチベーション向上という観点から、支援人材、技術支援していただく方が、単純に利用者への技術支援というところにとどまらず、施設・設備の高度化研究といったようなものの実施を可能とする方策が必要ではないかということを挙げさせていただいております。また、そういった技術支援人材に関する評価の在り方、またその地位の向上といったものを含めまして、こういった技術支援の職種というものが魅力あるものになるような方策について十分な検討が必要になってくるのではないか。また、技術支援人材の確保とともに、活躍の機会を広げるということで、人材の確保、活躍を促進するための情報の一元的集約や発信ということが必要ではないか。また、大学等の研究機関と連携を図りまして、施設・設備側においては、例えば人材育成を目的とした利用枠を設けるなど、最先端の施設・設備に若手人材が容易に触れることができる、そういった機会を増やすことも必要ではないかということを挙げさせていただいています。

 続いて、情報の一元的発信ということで、どこにどういうな施設があって、どういうことができて、どういう運用状況にあるのかというところが、いまなかなか情報源としてないことを踏まえまして、施設・設備の利用を促進するために、施設・設備の用途、性能、運用状況、あとは過去の成果例、ここの施設でこういうことができましたというようなものなどを一元的に収集したデータベース、そういったものを発信していくポータルサイトなどが必要になってくるのではないか。また、個々の施設・設備とか周辺のグループの中ではいろいろな研修会のようなものやセミナーが行われていますけれども、もう少し広いところでの合同の研修会のようなもの、利用セミナー、そういったものの開催を通じまして、利用者の拡大や異分野融合を促進すべきではないかということを挙げさせていただきました。

 そして、施設・設備へのアクセシビリティの向上ということで書かせていただきましたが、各施設・設備で異なる利用システムについて、利用促進という観点からすべてを統一というところまではなかなか難しいかもしれませんが、できる限り共通化できるものは利用システムを共通化していくなど、改善に向けた検討が課題として上がってくるのではないか。また、その利用の高度化ということで、複数施設の連携的利用についても方策を検討する必要があるのではないかということで挙げさせていただきました。

 また、今回のアンケートの中には直接上がってきているものではないのですけれども、今回の震災を踏まえまして、やはりその研究基盤のセーフティネットの構築が重要ではないかということで、1つ目のポツは、今回の震災を踏まえまして、被災施設・設備の利用者に対する措置、代替施設の提供とかいったものと、あとは復旧に向けた対応が速やかに行える体制の整備について検討していく必要があるのではないか。また、国内だけではなくて、平常時から海外施設との連携・協力体制を整備して、海外も含めて緊急時における相互のセーフティネットの構築ということも検討する必要があるのではないか。また、我が国のような自然災害の多い国にあることのリスクを考慮いたしまして、類似の機能を有する施設・設備の分散配置というような考え方についても検討していくことが必要ではないかということで、効果的な運用の在り方ということで幾つか論点をあげさせていただきました。

【二瓶主査】  ありがとうございました。

 ただいま資料2-4をご説明いただきました。この資料に関して何かご質問、ご意見はよろしいでしょうか。

【野田委員】  私は、4ページ目のナノネットの拠点を担当しているのですが、今いろいろ議論している中で、上のほうの施設の老朽化とか支援員のキャリアパスの構築というのは、これはすべての設備に共通していることだと思うのですが、いま2つほど非常に大きな問題がありまして、民主的なアクセスというのと、若手が設備を持たなくても研究できる体制ができないか、この2つをどうやって仕組みの中でやっていくかというのを議論しています。民主的アクセスをやると研究の質が落ちるのではないかと言う人もいるのですけれども、どうしても専門性を持っている人たちが集まって、同じ人が繰り返し使ってしまうということが多いのですけれども、その2点をどうやってネットワークの中できちんとやっていくかというのが、今議論になっています。ご紹介まで。

【二瓶主査】  ありがとうございます。

【若槻委員】  質問です、簡単に。その第1点のほうはピアレビューをしてもなっていないということをおっしゃったのですか。余り理解できなかったのですが。

【野田委員】  いや、なってはいないと思うのですが、どうしても慣れた人が使うという。放射光もそうだと思うのですけれども、ナノネットではなるべく敷居を低くして、今度は敷居を低くすると別に放射光を使わなくてもいいのではないかという議論も出てくる。だから、その辺がなかなか難しいのですが、ただ、民主的なアクセスというのは結構ポイントになっています。

【二瓶主査】  他に何か。

【宇川委員】  よろしいですか。遅れてどうも申しわけありませんでした。私はスパコンというか計算科学関係なのですけれども、その辺りの今の状況をごく簡単にご紹介するのがいいかと思います。

 この資料2-4の1ページのところのハイパフォーマンスコンピューティングインフラというのが左の真ん中あたりにありますけれども、いろいろな資料に出ていた「京」を中心として日本全国のスーパーコンピュータ、それからネットワークといったようなものを有機的につないで、ある種の階層構造を作ってできるだけ幅広いユーザーに使えるようにしようというのがこのHPCIの考え方で、事業仕分けをきっかけにして「京」の開発プロジェクトをもっと幅広くそっちに振り向けて作っていこうということだったと思います。まだ形成過程なのですけれども、全体構想がそうなので、このプラットフォームという考え方とも非常に整合している考え方ではないかと思うのですけれども、難しい点が1つあって、それは計算科学はある種、いろいろな分野で行われています。基礎科学からライフサイエンス、それからナノ、それこそあらゆる分野で行われている。ですから分野横断的で、こういったプラットフォームを形成することによって、分野横断的に計算科学というのを作っていこうというのが1つなのですけれども、一方で各分野においてスパコンがあって、そのスパコンはそれぞれの分野の目的に応じて設置されている。そうすると、従来の考え方では、その分野以外の方がそのスーパーコンピュータを使う、分野を超えて開放するという考え方とはなじまないわけです。だから、その辺りをどうまとめていくのがいいのかというのが、このHPCIインフラを構築する上でもなかなか難しい観点になっています。

 それ以外は、ここで出てきているいろいろな論点は、このHPCIインフラの構築の上でいろいろと議論されているのですけれども、そこで出てきている事項と随分と重なっているので、私どもにとってもすごく有益な議論になるのではないかと思います。

【二瓶主査】  ありがとうございます。

 他にいかがでしょうか。

【福嶋委員】  今度は産業界ではなくて、中性子に関わって、同じようなことで、設備を作った人がどこまで専有して使えるか、利用者が邪魔者の時代から、だんだん使える時代にどこで線引きしてみんな使っているのか、最終的には利用者がどんどん使って、そこからのイノベーションでまた新しい装置ができてくるのだと思いますけれども、まだまだ自分の作った装置というイメージがあるところが多くて、そこのところをどこまで、やっぱりいい装置は作っていただきたいですし、いい使い方もしていただきたいし、どういう結びつきというかシステムで作っていくかというのは、施設運営側としても結構決めかねているところがあります。その辺も議論の対象にしていただければありがたいと思います。

【吉澤委員】  確かに先端的な装置だと、作った人が面倒見てやらないと使えないという問題があります。ただ、日本の制度だと、大学のほうだと、物性研のような全国共同利用機関というのは、むしろ使っていただくために研究所自身がもう最初から設立されているので、使っていただくために運用しているというのが初めからミッションとして織り込まれている組織もあるので、それも研究機関の大学の中にあるので、そういうところはそういうことでやってきたのです。逆に言うと、共用促進法の話がいまここで例として出ているのは、そうではなくて、我が研究独法や研究所のために研究してきたというところは、逆に言うと開放することになじみがない、慣れていなかったので、国の施策として今こういうペタコンや何かのところでそういうことを精力的に進めているということで、その2つの歴史を踏まえて議論していったらいいのではないかと思います。

 その中で、民主的アクセスの話は、確かに私も現場で見ていて感じます。ごく稀に、ピアレビューをやっていても利用者が特定の方に固まってしまうのです。だから多分、この委員会でプラットフォームを議論するときには、例えばナノマテリアルの量子ビームも何も使ったことがない人にどうアプローチして量子ビームを使ってもらうかという仕組みを我々が議論して提言するのが、多分1つの重要なことで、それが、利用者が固まらない、課題解決型の国が整備すべき高度な施設が運用されて、幅広く使われていくことに自然につながっていくのだと思います。

【福嶋委員】  いまおっしゃったように、やはり民主的アクセスにはなっていないということですね。

【吉澤委員】  精査すれば、どこが固まっているというのはすぐにわかるはずです。

【福嶋委員】  共同利用とおっしゃいましたけれども、先生のところは大学、全国共同利用です。ですから、産業界として使うときには、まず先生と親しくしなくてはいけない、共用法の場合は産業界で直接やればいいなど、結構ややこしいのです。

【吉澤委員】  そのとおりです。トライアルユースは非常にいい制度で、あれで産業界の方が使ってみようかなと、全然縁もゆかりもなかった方がそちらの頭にシフトしてくださるという非常に有意義で、これはぜひ今後も進めていただきたいと思います。だから原子炉のほうでもそういう制度がなくて、JAEAはそういうミッションを持っていなかったのだけれども、先端共用促進事業のほうで採択していただいたことによってユーザーズオフィスができて、目に見えるようにここ数年で変わってきています。だから、やはりそういう意味で国が動いて施策で共用をどうするのかということをやっていただくのは、大きな効果があると思います。

【宇川委員】  いまの点は非常に重要な点ではないかと思います。つまり共同利用機関というのは、やはり分野限定ではあるかもしれないけれども、でも、ピアレビューシステムでやっているわけです。ですから、それがもしファンクションしていないのだとすると、共用促進法の枠組みでということになると思うのですが、逆に共用促進法の枠組みで、今回も「京」の運用に関してかなりの大激論があったのですけれども、運用者と切り離して本当に有効な利用ができるのか、高度な設備になればなるほど運用者が関与して利用というものを作っていかないといけないのではないかという意見も非常に強いわけです。そういうふうに思う、私も割とそっちなのですけれども。

【吉澤委員】  100%そのとおりだと思います。

【宇川委員】  だからそこは非常に大事な点ではないかと思うのですけれども。

【吉澤委員】  機能していないという印象で申し上げたのではなくて、特定の施設もやはり先端的になればなるほど利用が難しいので、それを使いこなせて申請書を書ける人が限られてくるという意味で固定化が見られる。それに対して、一般の例えば材料を開発している人が量子ビームを使えるようにするための枠組みとして共用法やプラットフォームというのが機能するであろうと。では、本当に量子ビームのことを知らない人が来て使えるかと言ったら、それはそれを使いこなせる研究者がどういう立場で関与するかということがワンセットになっていないと、全部うまくはいかないと思います。

【福嶋委員】  ですから、ほとんどが共同研究、共同開発に近いところからスタートするのですね。

【若槻委員】  そうですよね。スタートはそれでいいと思うのですけれども、それが共用促進法にしても大学共同利用にしても、最先端の装置を作った後にどういう時間のプロファイルで一般的なユーザーが入ってこられるように仕組んでいくかというのは、それぞれ共用促進法か大学共用利用かで議論の仕方は違うかもしれないのですけれども、目指すところは多分同じだと思います。いま、X線自由電子レーザーの委員会でまさしく今そういうのが議論されているわけですけれども、外の人から見たときに一番大事な点は、最終的には作った人と共同研究でなくてもアクセスできるというロードマップがちゃんとあるかどうかということを皆さん見ていると思うので、ここはやはりそれぞれのシステム、今申し上げたのは共用促進法、もしくは大学共同利用機関、大学の研究所で、ちょっと丁寧な議論をしておく必要があるかと私も思います。

【緑川委員】  多分その際、私は理研の者なので、XFELもSPring-8も問題がどういうところにあるのかというのは理研内でもある程度議論しているのですが、1つは先端設備を支える人材の問題が一番大きくて、研究者の場合は割とキャリアパスというのがありまして、PIになれなかったら外へ行くとか。ところが、こういう先端技術を支える研究者や技術者、これは単純に普通の論文で判断できません。普通の論文を書いて研究のキャリアを作っていく研究者とは全く違ったキャリアパスが必要です。XFELのように装置が先端になればなるほど、それには研究者と同じ、あるいはそれ以上の能力が必要で、だけど全く論文は出ない。そういう人は、やはり施設にとっては非常に大切なんですけれども、そういう人のキャリアパス、評価をどうするか、これは非常に重要なことだと思いますので、ぜひここで議論していただければと思っています。

【若槻委員】  それは先ほどの資料の6ページ目の頭のところがかなり近い議論だったと思うのですけれども、私もこれを読んでいて、技術支援人材というのにヨーロッパ式で言うエンジニアとテクニシャンが入っているのが多分普通の読み方だと思います。

【緑川委員】  ヨーロッパとかアメリカは割と技術スタッフという考え方があります。それに比べて日本は、研究者が実際に施設を支えている部分がかなり多いのではないかと。それでいいのかという。いい面もありますね。非常に現場を知っていて、開発に対してすぐにフィードバックできるなどです。

【若槻委員】  ヨーロッパの施設でもそういう、むしろそこではエンジニアとテクニシャンとサイエンティストの3種類の人が一緒になって仕事をしています。日本の場合にはそこがかなりごっちゃになって、サイエンティストがかなりの仕事をしている。なので、ここでのお願いは、議論していくところで、技術支援人材というのを、研究者というものも含めた議論にぜひしていただいて、こういうところで先端的な施設を支えていく研究者の育成、確保と、それから、併せて大事なのは、そういう人たちが施設間を渡り歩ける、施設と大学を行ったり来たりできるという、いろいろなところで話は出ているのですけれども、実際私も人事にたくさん関与していますけれども、やはりとても難しいです。施設で育った人を例えば大学の教授に出すときに、競争に負ける傾向がやはり出てしまうのです。だけど、実はもう少し広く考えると、大学全体ではこういう人材と交流をすることで、むしろ大学にとっていいことも多分ありますし、施設のほうも大学にある程度いた人が来てもらうというのもあると思うので、そこの人材交流を、多分これはただ唱えていてもだめな話で、プラットフォームということを議論していくのであれば、そこでむしろ制度としてきちんと提案するところまでしたほうがいいのではないかと。せっかくこういう機会を作っていただいているので、ぜひそこは今の話を拡大して充実させてお願いしたいと思います。

【長野委員】  同じ意見で、まさに私はライフサイエンスのほうで化合物ライブラリーを扱っているので、それほど高度の技術というわけではないのですが、アクセスしてくる人に対して、ほとんど共同研究をするわけです。それをやるのは当然サイエンティストなのですが、ほとんどボランティアですので。その相手の先生にとっては非常にいいわけですけれども、その先生をサポートすると、共同研究という名前でありながらも、ほとんど本人の研究とはちょっと離れますから、そこをどこまで評価するかということは、これは非常に重要な問題で、確かにこの場でそういうことに対してどうかということを議論していただくと非常にありがたいなと。実際にこれを運用していく上においては極めて重要で、そこのところはきちっと動かないと、誰もやらなくなったら困ります。一方ではそこらの人を呼んできてやるわけにはいきませんから、かなりの高度な能力を持っていなければいけないという。その辺の兼ね合わせは非常に難しいというのは日々感じていました。

【伊丹委員】  アクセシビリティの議論に戻るのですけれども、結論はどうなるかわかりませんけれども、私はこの種の組織のマネジメントのいろいろなところを見ていて感じるのは、建前上の民主的アクセスというのは諦めたほうがいいということです。それぐらい腹をくくったほうがいいのではないのか。誰かを排除する仕組みはよくないけれども、建前上の民主的アクセスをさせるために何か無駄なことがたくさん起きそうな気がします。

 もう1つ、先ほど利用システムについて共通化とおっしゃったけれども、国がこういうことを言うと大体窮屈になります。だから、これは各施設の実情に合わせて、本当にやるべきことをやっていただければいいので、あまり共通化というのは最初からうたわないほうがいいのではないかと。

 以上、感想です。

【二瓶主査】  ありがとうございました。含蓄のあるお言葉です。

 申しわけありませんが、本日はこの後、関連の委員会がありまして、時間の後ろが切られております。大変貴重なご意見をたくさん頂きましてありがとうございます。早速、論点整理を次回に向けてさせていただきますが、それを基に更に次回、議論を付け加えるなり深めるなりという作業をさせていただければと思います。

 それでは、事務局から何かございますか。

【石川補佐】  次回以降のスケジュールについて少し説明させていただきますけれども、次回は7月15日金曜日の10時から12時で今のところ予定しています。ややタイトなスケジュールですけれども、この辺の議論をいろいろまたご審議いただければと思いますので、よろしくお願いします。

 予定としましては、7月15日の次は8月4日ということで日程を考えています。今のところ午後のところで開催できればと思っていますけれども、8月4日の詳細な時間については、またご連絡、ご相談させていただければと思います。

【若槻委員】  いつ頃決まりそうですか。

【石川補佐】  できるだけ早目に、少なくとも次の15日のときには時間も含めてご連絡させていただきたいと思います。

【二瓶主査】  よろしいですか。

 それでは、本日は大変ありがとうございました。また次回よろしくお願いします。

 

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