産業連携・地域支援部会(第9期)地域科学技術イノベーション推進委員会(第11回) 議事録

1.日時

平成31年2月13日(水曜日)15時30分から17時30分

2.場所

文部科学省 3階 1特別会議室

3.議題

  1. 「地域イノベーション戦略支援プログラム」及び「先端融合領域イノベーション創出拠点形成プログラム」の評価について (非公開)
  2. 最終報告書(案)について
  3. 第10期地域科学技術イノベーション推進委員会に向けて
  4. その他

4.議事録

○議題1については、非公開


【須藤主査】  それでは、議題の2に入ります。前回の委員会で委員の皆様からいろいろと御意見頂きました最終報告の案ですけれども、委員会での議論、それから委員会後の委員の皆様の意見を踏まえまして、再度事務局にて整理していただきました。その結果は、先週開催されました本委員会の上位の部会となります産業連携・地域支援部会におきまして、本報告について事務局及び私の方から報告しております。それを踏まえて、そこでもまた意見が出ておりますので、それを踏まえて事務局でもう一度最終の案として作成しておりますので、まずは資料の説明をお願いします。
【生田室長】  ありがとうございます。それでは、資料2-1のポンチ絵を基本的には使って説明させていただきます。委員の皆様方には、机上に紙媒体でも配付しておりますので、適宜資料2-2の本体の方もちらちら見ながらお聞きいただければと思います。
 それでは、まず概要ということで説明させていただきます。前回のこちらの地域委員会でもかなり御議論いただいたかと思います。特にやはり議論の中心になったのは、「ABC」というものをもっと強く打ち出していくべきではないかとか、エコシステムの定義というか、その捉え方のところをもうちょっと整理するべきではないかとか、あと「3つの価値」というのを当初言っておりましたが、その関係性がちょっと分かりにくいとか、そのような御議論があったかと思います。その上で、事務局で前回のものをもう1回見直した形で、かなり抜本的に第3章を変えた上で、第4章を新たに追加したという修正を図りました。ですので、全体構成としましては、左上が第1章、その下に第2章、ちょっと右にいっていただいて第3章がございまして、一番下に第4章を横長で書いている、そのような構成になってございます。
 第1章のところでございます。こちらも当初、前回の委員会で提示させていただいたときには、ここに突然「ABC」という言葉ですとか、「3つの価値」ですとか、そのようなものがあったかと思いますが、ここではまずそもそものところとして、地域をどう捉えていくか。そして、その地域が科学技術イノベーション活動を行う意義・目的等々を書こうということで、あえて「ABC」等には触れておりません。地域の捉え方のところにつきましては、科学技術イノベーション活動の特徴を踏まえると、このようなものではないかというような論理展開としておりまして、ここに書いてございますように、イノベーション活動というのは、協議会や分野組織といったものにとらわれず、そういうものを越える取組がそもそも多いだろうと。
 それから、やはりイノベーションというのは、うまくいくとは限らないので、試行錯誤を繰り返しながら、柔軟性をもって最適解を見つけることが求められる。そして、規定された協議会、組織にとらわれずに、意欲ある行為者が順応性をもってやることが必要ではないか、そういった特徴を踏まえると、イノベーション活動の地域の捉え方というものは、こちらに書いてございますように、組織を越えた人的ネットワークが形成された場を引っ張る中心的な主体、例えば地方公共団体や大学や産業界でございますけれども、こういったものを切り口として地域を捉えていくことが必要ではないかというふうにまとめさせていただきました。
 2点目のところ、地域が科学技術イノベーション活動を行う意義・目的、こちらについては、前回の委員会のバージョンから大きく変えているところではございません。地域経済の発展ですとか、誰一人取り残さない地域社会の実現に必要なツールであるという目的ですとか、若しくは一人ひとりの人が、豊かさと幸せを感じて持続的発展と共存が達成できるだろうと。多様性というのがまさにキーワードになっておりまして、国全体としても多様性を維持するということで、国家基盤としてのレジリエンスが向上するのではないかというのを意義・目的に書かせていただいております。
 最後の地方創生の流れにおけるイノベーションの位置付け、これも前回から変わっておりませんが、科学技術イノベーションを不可欠な起爆剤として利活用し、イノベーションの連鎖を通じて、地域の強みを最大化させるとともに、地域の抱える諸課題を克服する。これで地方創生が実現できるのではないかと結んでおります。
 続いて第2章のところでございます。ここは本来であれば、8機関からヒアリングをしていただいたり、さらに現地の調査もしていただいたり、若しくは国際調査の結果をお聞きいただいた事例というものがたっぷり本文の方には書いてございます。そちらについては、該当ページそれぞれ見ていただければと思うんですが、そこの事例からの教訓の部分だけを、このポンチ絵では抜き出しております。それは地域資源、資金、人材、そしてエコシステムの形成の4つに分けてございますが、資源のところについては、そもそも技術と、そしてハード面、施設・設備、それと固有の課題、それから文化とか自然とか強み、いろんなものが地域の資源と言えるのではないかと。これをいかに戦略的に活用するのかが重要というふうに教訓を結んでおります。
 2つ目の資金のところでございますが、こちらも言うまでもない話でございますが、公的資金だけではなくて、資金拡大の可能性があるような資本性の資金投入ですとか、リスクマネーの供給、さらには柔軟かつ自立的に富の循環ができる仕組み、こういったものが重要というふうに書かせていただいております。
 3点目の人材のところ、こちらもたくさん御議論いただいたかと思いますが、いわゆるシーズを企業につなぐようなコーディネーター、これは当然重要ですけれども、それだけにとどまらないで、ニーズ起点の発想でリーダーシップを持って事業全体をプロデュースする人材。それから、やはり地方の一番の悩みである人口減に伴う技術系人材の確保といったものが重要ではないかと書かせていただいております。
 4点目のエコシステムの形成。これはやっぱりキーワードに出てきましたのは、分業しながらうまく連携を築いていく、これがやはり教訓というふうに位置付けさせていただいております。
 以上、事例からの教訓を受けて、第3章のところで、イノベーションによる地方創生の実現に向けてはどういうことを我々としては決めていかなければいけないのかということを記載させていただきました。ここの部分、大きく変わったのは、まずそもそも論として、我々の今置かれている社会変化の状況といったものを一度整理した上で、だからこそエコシステムが必要で、だからこそ「ABC」が必要、そういうような論理展開にしております。
 まず1点目として、Society5.0が目指す社会。これは言うまでもございませんが、持続可能なインクルーシブな経済社会で、経済発展と社会課題の解決の両立できる人間中心の社会であると。だからこそ経済的価値のみならず、安心や幸せ、そして多様なニーズが満たされることによる豊かさなどの社会的価値を追求していくことが必要ではないかというふうに結んでおります。
 2つ目の社会としては、地方創生でございます。人口減ですとか少子高齢社会と言われておりますが、そんな中で、所得や消費が右肩上がりを続けるのはやはり難しい成熟社会であろうと。逆に言えば、地域の多様性を強みとして、イノベーションにより生産性を向上させる、これが重要であり、そのことによって、結果として経済的価値と社会的価値を追求することができるのではないかと。
 そうなってくると、この経済的価値・社会的価値を創造し続ける、1回限りではなくて常に出し続ける。そのためには、絶え間なくイノベーションが出されるイノベーション・エコシステムというものを地域に根付かせることが重要ではないかというふうに書かせていただいております。そこで、そのイノベーション・エコシステムというもの、これは本文では24ページあたりに書いてございますが、地域の主体がイノベーションの3つの源泉、先ほど来出ております地域資源、資金、人材でございますが、その無秩序な流れの中に主体性を持って集まるだけではなく、その3つの源泉との介在を通じながら相互作用を起こし、そしてその作用が成熟することで、主体自身と3つの源泉自体も深化・向上し続ける仕組みではないかというふうに書かせていただきました。
 そして今度、エコシステムの形成にはどうしていったらいいのかという部分でございますが、先ほど第2章で教訓の部分で、エコシステムは分業しながら連携していくことが重要だというふうに教訓を得ております。少しブレークダウンしますと、連携というのはまず、やらされているものではないと思いますので、その連携を要し、連携することによって、それぞれがメリットを生み出せる、そういった形での分業・連携が必要じゃないかと。
 それから2点目としては、やはりみんなが同じ方向を向く、目的を共有化するという意味において、各主体の相互作用を成熟させるためには、地域社会の未来ビジョンの設定・共有・志向といったものが必要となってくるのではないかと。
 それから3点目としては、やはり単なる課題解決を目的とした対策型ということではなくて、ビジョン達成を目指すような創造型の連携体制を目指すべきだろうと。
 4点目としては、機動性・柔軟性の重要性がありますので、固定観念とかに縛られずに、意欲ある多様な行為者間の相互作用を求めていくことが必要じゃないかというふうに考えております。
 これをまとめたのが、要はABCの概念ではないかということで、枠囲みの中でございます。これも本文では27ページ目に定義を書いてございますが、自立した個であるプレーヤー層としての主体の意欲ある構成員が、自身の所属する主体の壁である境界や組織・体制を超えて、機動的に相互に連携し合い、個々人の能力も極めつつ、役割分担・分業することで、最強のチームワークが機能する創造型の実動コミュニティということで、Actors-Based-Community(ABC)を定義付けさせていただきました。
 この米印のところに書いてございますように、じゃあ既存と何が違うのという部分については、地域にある既存の産学官金連携体制というのは、どちらかというと組織のトップによって構成されて、意思決定機能を持っている。これに対してABCは、プレーヤー層により構成される実動コミュニティであり、両者は相互補完することが重要であろうという形で書かせていただきました。
 その下の部分、ABCが生み出すメリットの最大化に向けての部分でございます。これも前回の地域委員会の資料の部分からそんなに大きくは変わっておりませんが、一番大きく変えたのは、やはり産業界の役割を前回全くありませんでしたので、本文の中にも産業界として期待されることをしっかり書かせていただいた次第でございます。例えば、資源のところについては、これは国としては当然シーズプッシュ・ニーズプルの両側面から振興していくことが必要で、さらにやはり集中と選択。金太郎飴のように同じものをやるというよりは、やはり強いところには強く投資していく、そういったことが必要じゃないかというようなことを書かせていただいているところでございます。
 また、資金の部分でございますが、こちらについてはやはり産業界に期待する部分は結構大きいかと思います。例えば、創業前段階へのファイナンシャル・サポートですとか、リスクマネーとしてのギャップファンドの供給。特に昨今では、大企業のCVCや個人投資家のエンジェル投資みたいなものも増えてきておりますので、そういったところに期待する要素も大きいのではないかというふうに書いてございます。
 3つ目の人材、こちらはやはり大学に期待する部分は大きいかなと思っておりますが、全体としてのイノベーション力向上につながるような、幅広いリカレント教育の供給ですとか、あと先ほど人材のところで出てきましたプロデューサー人材をいかに要職として長期的に配置をすることができるか、そのようなことをこの中では書かせていただいている部分でございます。
 そして、以上の第3章のまとめを受けて、最後の第4章、これは前回の地域委員会の資料にはなかった部分でございますが、このような理念を受けて、具体的にどう我々として政策として落とし込んでいくのか。この委員会、第6期の科学技術基本計画に向けてというふうに検討しておりましたので、そのような具体的なアクションというものを少し書かせていただいた次第でございます。
 左側の部分は、どちらかというと理念的・概念的な整理でございますけれども、1点目、社会的価値の創造。ところどころ出てきておりましたが、それを地域にもたらし得る地域の科学技術イノベーション活動を振興していくことが必要ではないかというのが1点目。2点目は、ABCがございました。この効果としては、当然エコシステムの定着。それだけではなくて、地域人材、特に若者の流動性向上、そういったところにも寄与するのではないかと考えておりまして、若者も巻き込むABC形成の誘導というものも、これからやっていかなければならないと考えてございます。それから3点目としては、いかに地方公共団体をイノベーション活動に巻き込むのか。これは大きな論点だと思いますので、それに当たっては、ニーズプル型、できるだけ自治体の困っているニーズプルで地域の科学技術イノベーション振興策を展開していくことが必要ではないかというような理念を3つにまとめております。
 その結果として、具体策が1から4にございますが、1については、先ほど来出ておりますABCを核として、地域資源を踏まえて未来ビジョンを描いて、イノベーションによってその実現、要は地域変革を志向することで、社会的価値の創出を目指すプロジェクト。これを国としては、モデル事業として普及していく、このようなアクションを書かせていただきました。それに当たっては、当然新しい技術の実装を阻むような規制をできるだけ緩和していくといった観点ですとか、自治体単独ではなかなか広域連携って難しいという事情もございますので、それを国として先導していく、そのような観点も含めていくことが必要ではないかと考えてございます。
 また、2番、ABCと口で言うのは簡単ですが、じゃあ具体的にそれをどうやって作るのというところがまだまだ中で書き切れていない部分が多かったと思いますので、ある意味このモデル事業を回しながら、先駆的なABCの事例というものを横展開して、ABC構築に当たっての具体的なプロセスや方法論といったものを提示できないかというふうに考えてございます。
 次、3点目でございます。このモデル事業の効果検証をするために、先ほど来出ております社会的価値というものをどのように図っていったらいいのか、そのような指標開発というものも検討を進めていくべきではないかと考えました。
 最後4点目、これはあえて言う話ではないかもしれませんが、当然ながら地方創生といったときには、文科省の科学技術イノベーション政策だけのコントリビューションではございませんので、関係府省のそれぞれの施策を総動員して、政府全体としていかに連携して推進していくことが必要だろうかということを、4点目として整理をさせていただきました。
 以上が、実はこれ、産業連携・地域支援部会のコメントも含めた上で修正させていただいたバージョンではございますが、2月6日に開催されました産業連携・地域支援部会でどのようなコメントがあったのかというのを少し御紹介したいと思います。プロジェクターの投影で申し訳ございません。こちらに投影しております。
 まず1点目は、報告書全体については、地域、地方の悩みを汲みとった上で、うまく政策につなげるための理論武装はよくできているなと。ただ、逆に言うと理念にとどまってしまっていて、どう具体的な施策としてアクションにつなげていくのかが重要じゃないかという御意見が全体としてございました。それから、エコシステムというところについて特に御議論があったんですが、地域によって多様であろうエコシステムの在り方をうまく抽象化して記載してもらっていると。エコシステムを回すためには、やはりビジョンの概念は重要だろうと。ビジョンに基づいて、じゃあ具体的にどう動くべきか。これも多分、先ほどの理念だけじゃなくて具体化の話と通じる部分はあるかと思いますが、ビジネスモデルの構想も必要だろうという御意見もございました。
 それから、地方でエコシステムを回すためには、資金が重要だという御意見も何人かからございましたが、資金云々よりもやっぱり人材不足が最重要課題じゃないかと。まさにABCというアクターをどう確保していくか。報告書にも記載はあるがというふうにおっしゃっておりましたが、コーディネーター人材などの安定的な雇用を大学に確保したり、若いイノベーション人材を確保していくことが必要ではないか、このような御意見がありました。
 それから、資金について。結構資金面で御意見が多かったんですけれども、エコシステムを回し続けるに当たっては、新たな資金源の確保を模索していく。要はもっと具体的な何か取組、工夫、そのようなものをこれからは期待するよと。委員の方からおっしゃったのは、例えばということで、これは山口ファイナンシャルグループの事例だったんですけれども、「TSUNAGUプロジェクト」といって、経営を志願する若い人、これは地域に限らず東京にいる若い人でもいいんですけれども、そういった方と地域の後継者不足に悩んでいる中小企業をマッチングして、ファイナンシャルグループでファンドを作って、事業承継ファンドをうまくマッチングして、いい取組には出していくと。当然儲かったらそれがファンド側に少し戻っていくみたいな、そういう新しい取組。これは今年の1月から始まったようなんですが、そのような事例の御紹介も委員の方からございました。
 それから2点目として、創業前の段階への資金投入というのは、リスクマネーというよりももっとファイナンシャル・サポートぐらいのものではないかのというような御意見があったり、もう一つは、企業が大学のイノベーションの芽とどう接点を持つかという意味合いで、安易に言えばシーズにうまく大学の方が共同研究という形で資金的なつながりというのがあると思うんですけれども、それだけじゃなくて、ニーズ面から産学、そして自治体も多分ここに入ってくるかもしれませんが、リビングラボの活用といったこともあるのではないかというような御意見がございました。なお、この資金面についての3つのコメントは、本文に具体的に入れさせていただいております。32ページ、28ページあたりに、少し具体事例を入れさせていただいた次第でございます。
 最後のその他のところでございますが、社会的価値をはかるための指標開発がなぜ要るのか、もう少し明確にした方がいいのではないかという御意見がございましたので、これは少し本文に、最後の37ページでございますが、施策としての効果検証を図るためという言葉を少し補うような形にさせていただいております。
 最後の点、社会実装や地域貢献の活動を、大学としての評価には少しずつなってきているかもしれませんけれども、研究者個人としての評価として、もっと取り入れていくことが必要だろうねという、これは御意見というかコメントでしたけれども、このような御意見が出た次第でございます。以上、長くなりましたが、事務局からの説明を終わらせていただきます。
【須藤主査】  それでは、だたいまの事務局からの説明にありました最終報告書の案の概要、それから本文について御意見等ございますか。報告書については最後の議論になると思います。どうぞ。
【松原委員】  全体としては大変よくまとまった文章になっているかなというふうに思います。その上で、いくつか少し指摘させていただきたいと思いますが、地域科学技術イノベーションを進める上で、ABCというのが今回非常にキーワードで、主体中心のコミュニティということになっております。これをまさにどうやって動かしていくかというところで、実際にもう動いている事例というのはいくつかあるかと思いますので、そういったようなものをいろいろ検討していただいて、その中でいろいろなことを考えていくのが大事かなと思っています。
 その点で言うと、マイナス面も結構あることに留意する必要があるのかなとは思っています。これは欧米の議論とも関わるんですけれども、強い紐帯の弱みとかというのが、学問上では話題になっていまして、ABCであるコミュニティが熱く、毎日のように議論をして、飲んでいろいろな形で交流をして、地域の中でも非常に濃密な主体間の関係ができているところ。しかしながら、そういうところでは、場合によっては新しい発想というのはなかなか生みづらいような、そういったような問題といいますか、弱みというか、そういったようなものも出てきているということで、それをどういうふうに打開していくかというのは、いろいろ学問的にも、むしろ弱い紐帯、そういったものを絡ませていく。地域の中でABCのコミュニティが濃密に行われている強みとともに、外からのいろいろな人が入るのもあるし、情報、知識が入るのもあるし、いろいろな形で風通しのいいようなABCのコミュニティといったようなものをどういうふうに作っていくかというような、そういうことを是非過去の事例、学説的な学問的な研究成果なども踏まえて検討していただければとは思います。これが1点。
 もう一つ、非常に私自身は広域連携というのは重要だと思っているんですけれども、なかなか広域連携、言うは易く難しいということで、どういうふうな制度設計をしていただけるのかというところが、やはりここの具体的な、具体化する上での検討課題かなとは思っております。
 特に気になるのは、やはり地方創生と絡めた形での地域科学技術イノベーションという形になると、やはり例えば交付金の受け皿というのは現状では都道府県、市町村。特に地方大学・地域産業創生交付金なども、県を越えた、そういったようなプロジェクトというのは、今のところはまだ採択されていないかと思います。そういう面では、複数の県にまたがるような、地方ブロック単位ぐらいのところで社会的な課題といったものを考えていくようなものに対しても、どういうふうに取り組んでいくのか。そのところで大学の役割というのは非常に重要だとは思うんですけれども、そういったようなことで、そういう大学の広域性を生かした形で、そして複数の都道府県を巻き込んだ形での地方ブロック単位ぐらいでの社会的な課題に取り組む、そういったようなものも視野に入れていただくと、よりいいのかなとは思っています。
 面的に広がるだけではなくて点的につながるような、そんなような社会的課題に関わるような、例えば離島なら離島が持っている問題というのは、必ずしも離島自体孤立している部分があったりするので、あるいは半島とか、そういう条件不利地というのが、点と点でも連携するような形で、それも支援していくような、そんなような広域性の支援の在り方というのも検討していただければなというふうには思います。以上です。
【須藤主査】  ありがとうございました。何か今のコメントにありますか。
【生田室長】  ありがとうございます。まさに松原委員おっしゃったように、ABCの、確かに負の側面というか、負になってしまう可能性をどうやって排除していくかというのは、すごい重要な観点だというふうに認識しております。ちょっとこの後、自由討論というか、今後に向けたところで少し御紹介しようかと思うんですけれども、次に考えている施策の中では、まさにこのABCをどう作っていくかというのを具体化していきたいと思っておりますので、その制度設計において、少し今の観点を頭に入れながらやっていきたいなと思ってございます。
 それから、広域連携もまた同様に、おっしゃったように確かに離島だとか半島だとか、すごく特徴のある部分を、それが個で終わるのではなくてうまくどうつなげていくかというのもなかなか難しいなとは思うものの、本当に具体のアクションをやりながら、できる限り見える化させるというか、国として動いていかないと、地域というのはやっぱり分からないというのは当然だと思いますので、何か先導できるような形で検討はしていきたいと思います。
【須藤主査】  ほかにございますか。どうぞ。
【西村委員】  大変まとまっていて、私は最終報告書は特に意見はないんですけれども、今ちょっと話題になっているABCの作り方みたいなところで、1つ私は結局、この1年間参加させてもらって、自分のやっていたことはABCを作ったんだなと思ったんですよ。それで多分これ、深化とかそういう言葉を使われているので、時系列的に考えて、今後この施策というか、これは何年ぐらいを見通してやるのかなというのは多分あると思うんです。
 そうなると、このABCもステージが、いろいろケースあると思うんですけれども、さっきのコミュニティが閉じるということはないんだけど、逆に排他的になってきて固まってしまうと確かに成長性がなくなるので、それは多分ステージごとに考えなきゃいけないのかなと。ちょっと経験をもとにして言うと、多分初期段階のABCが始まるときは、おそらく結構属人的になります。ここがどうしても、どちらかというとさっきの組織のトップの意識とプレーヤーの層が分かれているというんじゃなくて、プレイングマネージャーの集まりになります。そこでうまく動き始めてくると、今後だんだんそれが役割分担になる。その役割分担しながらシナジーが出てくるんですね。そこまではある程度問題解決型のものとか、ちょっとしたものは作れるんですけれども、本格的なクリエイティブをやっていこうと思うと、恐らくなんですけれども、思想的なものが多分必要なんですね。ちょっと変な言い方をします。
 結局、ステージ、成功のレベルが上がってくると、最初テクニカルに解決できるんですけれども、テクニカルを超えたところから、ある段階から、ある面共有化するときのビジョンのレベルが、その品質が結構重要になってきて。私たちがやっているのは、どちらかというと哲学みたいなことをやっていますね。一番私たちの中で、今まで説明してなかった中で機能しているのは、地域イノベーション学会というものなんですよ。これはABCに関わるようなプレーヤー全体が年に2回集まって、1回は徹底的に議論して、語り合うんですね、合宿して。そこには知事も来ますし、私たち経営者も来たり、大学の教授もいて、徹底的に話し合う、議論し合う。もう1回は、事例報告みたいな感じで毎年誰が頑張ったかというのをみんなで見ながら、そこで気付いたことを持ち帰って自分の場に戻る。
 だから、そういう何か共通の目指すべきものを常にブラッシュアップしながら高めていくような仕組み。ちょっとこれは精神論になってしまって申し訳ないんですけれども、恐らくこのABCを高めていくときには、あるステージからそういうステージに入らないといけないような気がします。だから、ここに書き込む必要は全然ないんですけれども、本格的に作るときに、恐らく時系列を見ながら成長段階に合わせながら適切な何か変え方をしていくようなことを、どこかに示唆しておくというのも、来年度以降に必要になるんじゃないかなと思います。すみません、ちょっと感想っぽくなりましたけれども。
【須藤主査】  何かありますか。では、お願いします。
【林委員】  ABCのところに議論が集中していますので、ちょっと感じるところを述べさせていただきますが、やっぱりアクターがきちんと活動できるようなコミュニティ、それをどうやったら作っていけるんだろうという視点が大事ですが、実際それを動かす人たちは、多分やりたい人が集まってくるという形で自然発生化するかもしれませんけれども、実は大事なのは、その人の所属する組織の上の人たちがどういう認識を持っているかとか、これは私の企業経験で、やっぱり活性化している組織というのはその上の上あたりがかなり現場を信頼して自由にやらせるという、そういうトップがいるところはイノベーティブになっていく。これが今回のこういうABCという、異なる組織体から来る方々が相互作用しながらインタラクションしてやっていくときに、そういう人たち、上の人たちの認識がどうなのかなという指摘も実は大事なんじゃないかなと。変な形で邪魔が入らない、あるいは懸念だけ言って何となくエネルギーを吸い取っちゃうような人たちは、偉い人にはいますよね。だから、そういうところをどうやってこの施策の中で盛り込めるのか。結構難しい話かなと思いますけれども、そういうふうにABCに関しては感じました。
 ちょっと私、よく分からないのは、部会の方々からの意見というのを先ほど見せていただきましたよね。とても理念的にもよく書けているよねと。今回、これを見せていただいて、私も非常にそう思いました。ただ問題は、かなりそれがよく書けているがゆえに、で、これからどうするんだというところ。これは多分、かなり突っ込みが来るというか、これが今後のかなり大きなチャレンジになってくるのかなという気はします。これはこの中に書き込む必要があるんですか。その後の話でよろしいんですよね。であれば、これだけの課題提起をされているのであればよろしいんじゃないかなと思いました。
【須藤主査】  今の点は、少なくとも第4章にはそれなりに現時点で浮かぶことは書いてあるんですね。ただ、これをやっぱりもう少し議論を深めていって、もうちょっと具体化しなければいけないというのは事実だと思いますので、是非その辺よろしくお願いします。ほかにございますか。どうぞ。
【斉藤委員】  記載内容に違和感はありませんし、ABCが中心であることは十分伝わってきます。科学技術イノベーション自体の活動の特性についてコメントさせてください。今後のイノベーション活動は、境界定義がよりあいまい、業際化し、試行錯誤も多くなる。従い、結果を追求するアクターが中心になって色々な取り組みをしながら何とかして結果を出すというスタンスがすごく重要になってくる。従来までは、期待ゴールがあって、何をどのようなステップで達成するかというリニアプロセスを暗黙の前提として、その活動に助成金を付けているものが多かったと感じている。ただ、試行錯誤型のイノベーション創出が多くなると、リニアプロセスはなじまないので、プロセスや行動重視よりも、結果重視が大切になってくる。これまでとは異なり、ある結果をとにかく出せるかもしれないというアクターに対して助成金を付ける、極論すると、プロセスとか何をするかもう任せるというスタンスが重要になってくると考えています。
 私も審査側にいたのことがあります。何をどうやっているかをしっかりと評価していくが、もし、アクターベースのエコシステム(生態系)を目指すのだとすると、「この人に賭けよう、この領域に賭けよう」というように国の全体のアクションも本来的には変えるべきなんだろうと思います。そのスタンスが変わらないと、アクターベースといいながら、「初めに言ったことに過度に縛られる。報告書が多くなる。ピボットしようとすると、またその修正の何かのいろんなことをしなきゃいけなくなる」となり、「アクターベースといいながらも、助成金はもうもらうのは大変だからやめよう」となってしまわないかと懸念を持ちます。
【須藤主査】  ありがとうございました。ちょっと重要な御指摘だと思うんですけれども。
【生田室長】  ありがとうございます。多分その議論、こちらだけじゃなくて、全体として途中というよりは結果をちゃんと見ていくべきという評価のやり方の部分に関係してくるのかなという気がするんですけれども、確かに今回我々、最後の方に出ておりました社会的価値の創出を目標とするといったときに、じゃあ最終的に社会的価値がここまで出ていれば、あとプロセスはどうであれアクターに任せるみたいな、そんなことというのはもし価値のはかり方さえ分かればできるのかなというのは、ちょっとちらっと思っていたんですけれども。いかんせん確かに進捗というんですか、進捗がどうだったのかというのは我々結構今まで見てきている部分が大きいんですけれども、一年一年の進捗というよりは、5年、7年、10年、分からないですけれども、そのプロジェクトの設定によって、最後目指すゴールが達成されたかどうかみたいな、そんなようなことができたらいいなというのは確かに感じてはおります。
【須藤主査】  どうぞ。
【斉藤委員】  現在、オープンイノベーション機構が始まりつつありますが、まさにアクター重視の助成になっていると感じています。
【須藤主査】  クリエイティブマネージャーですね。
【斉藤委員】  そうですね。活動の細かいところは審査の上では重きを置かずに、クリエイティブマネージャーを中心にした体制、そのActors-Based-Communityがいかにワークしそうかを中心的に見ているという意味では、先行事例になるのではないかとは思っています。
【須藤主査】  ありがとうございました。そのほかございますか。どうぞ。
【金子委員】  十数回の議論の中で、いろんなヒアリングをさせていただいて、いろんなインプットをしていただいた成果をうまくまとめていただいていると感じております。前回の議論の中で、産業界に関する記述が少し弱いのではないかということで入れていただいたのも非常によかったと思っております。
 次回以降の課題としても少し考えてもいいのかなと思いましたのは、何を目指すべき目標、ゴールとするかというところの設定の仕方というのをどうはかっていくのかというところと、産業界は、今書かれている地域資源とか資金とか人材とか産業界の役割の他に、今まで産業化しようとして失敗した経験とか、商品化に当たっての色々な知識、経験というのが相当に大きな財産といえるのではないかと思います。地域の中核企業として、地域にこういう産業を興そうとしたときの失敗経験とか成功経験とか、そういうものをお持ちというところも大きな資源として考えられるのではないかと感じました。
 資金ももちろん企業の1つの役割ではあると思いますけれども、地域の中核企業さんの抱える、あるいは感じていらっしゃる課題など、そういう点を今後も取り入れていけるといいなと感じているところです。セーレン株式会社さんのヒアリングなどは非常に有益だったと思います。
【須藤主査】  どうぞ。
【串岡委員】  私もこういったことをずっと、例えば地域でもこういう議論をしてきたんですけれども、今回すごく分かりやすいというか、ある種の理念が示されたということで、ABCということが1つの考え方のキーになるということが自治体でも理解をされるのは非常に役立つと思うんですけれども、一方であまりにも理念型過ぎて、どういうアプローチでこのABCを作っていくのかというふうなプロセスがなかなか分かりづらいところがあって、それは今後の議論になるんだろうと思うんですけれども。先ほどリビングラボとか、あるいはフューチャーセンターとか、こういったものを取り組むための方法論というのはそれなりにあるけれども、じゃあその方法論をやったからいってABCができるかというと、そういう試行錯誤の中ではあまり生まれてないんじゃないかというのが日本の実態だと思いますので、こういった理念型を提示するに当たっては、具体的なもう少し事例とかも今後示されると、もう少し地域の中での取組が活性化するというのは1つ思います。
 もう1点は、先ほどちょっとお話がありましたけれども、あまりにも地域の中で固まってしまうというか、やっぱり外とのつながりということを大事にしたいということを、強いつながりとか弱いつながりだとか、そういった議論は我々もずっとしていたところなので、そこももう少し分かりやすく、今後具体的な方法論を提示する中で進めていかれれば、地域としては理解しやすいのかなと思います。
【須藤主査】  ありがとうございました。どうぞ。
【德増委員】  ありがとうございます。今回私も地域イノベーション戦略支援プログラムをずっとやってきた中で感じるというか、今回のこれを見て、やはり今までやってきた1つの地域イノベーションをどう生かすかというところ。ABCの中でそれをどう生かしていくかというところを、やっぱりやっていった方がいいのかなと思います。というのは、せっかくあるところはかなり出口まで来ている。そういういろいろ技術的なものも確立されてきているし、いろんなネットワークができているという地域もあるんで、そういう今までの従来やってきたものをいかに今回のこの中で生かしていくかということが、やはり重要なポイントになるのではないかというふうに思います。
 もう一つ私は思っているんだけれども、どうしても点として今までイノベーションをやってきた中では感じているんですよね。面にはならないというか、なかなかこれを広がりができないというところがもどかしいところがあったなというふうに思います。そういう面で、先ほど松原先生が言っていた広域連携というのがどういうふうにできるか。これがやっぱりABCの中で1つつながりを持たせるというのが、公益をやることが、非常に大きなポイントになってくるのではないかなというふうに思っています。ですから、我々もずっと思っていたことは、やはり大学の先生の1つの研究テーマでしかないというのではなくて、もっと地域に落ちていく、広がりを持つ、それによる地域産業の育成みたいな形でいくことが、やはり重要ではないかなというふうに思います。
 それからもう一つ、ある程度先ほどのコミュニティの中であるんですけれども、外国の研究者との連携というか、日本にない新たなつながりというか、これは難しいんでしょうけれども、やはりかなり人口減少の中で研究者が少なくなるし、日本から海外に出る人たちも結構いる。そういう中での外国との連携というのが、今回地域イノベーションでも国際化というところで結構やったんですけれども、やはりそこは非常に弱いというか成果が出ていないところがあって、それを少しコミュニティの中の集団に刺激を与えるような、外国の中の問題というのがあるのではないかなというふうに思っています。以上です。
【須藤主査】  ありがとうございました。内島先生、何か。
【内島委員】  私もABCはどのように作り上げていくか、というところが重要で、作り上げていくにあたって、互いの目指すところの意識のバランスを保つ必要があると思います。私自身が産学官連携を推進する活動をしている立場から、産学官連携というツールを活用した地域活性化を生み出していくためには、その産・学・官の関係づくりが一番重要であると感じています。未来を作るための関係づくりが産学官連携です。まさにこのABCのコミュニティは、関係づくりがしっかりしているものでないとやはり崩れてしまうし、持続的な形にならないと思います。また、イノベーション・エコシステムに向け、地域資源、資金、人材の3つをあげたとき、地域にある課題と認識していたものが、俯瞰してみることにより強みなのだと理解する部分も確実にあると思います。この強みに興味を持って自分たちのコミュニティのひとつとして活動しようと思う人たちがいかに集まるか、というところへの工夫が大事になるかなと思います。地域内外を問わず広域な連携としてのABCが作り上げられるかと思います。そのためには、例えば、どのような固有の特徴を有しているのかというところをシッカリと発信していく点も、このようなコミュニティを作っていく上では大事になのではないかと感じています。以上です。
【須藤主査】  ありがとうございました。皆さんから一通り御意見頂きましたので、今の議論を踏まえて、最終報告をまとめていきたいと思いますけれども、最終的な取りまとめにつきましては、事務局と、それから主査一任でよろしいでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【須藤主査】  あまり大きなコメントはなかったと思いますので、基本的にはこの線で進めたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、最後の話題ですけれども、これも生田室長からありましたけれども、第9期の地域科学技術イノベーション推進委員会として進めてまいりましたけれども、一応今日が最終回でございます。このまとめた結果、あるいは第10期に向けて何をやるべきかというようなことが先ほども議論になっていますけれども、その辺を少し最後の議論としてまとめておきたいと思っていますので、是非委員の皆様、これまでの委員会を振り返っていただいて、自由に御意見を頂ければと思います。
 その前に、実はこの委員会というのはどういうミッションなのかというのをもう1回きちんと整理してから議論した方がいいと思いますので、ごくごく簡単に事務局の方から、この委員会のミッションを説明してください。
【生田室長】  今、投影が出ましたように、この地域科学技術イノベーション推進委員会というのは、平成29年の9月に、この上位の産業連携・地域支援部会で設置をされておって、そのときの調査・検討事項としては、ここにございますように、地域の科学技術を地域活性化につなげていくに当たり、地域の科学技術に係る現状と課題の把握とともに、取り組むべき方向性、戦略、解決策について検討を行うということで、ある意味広い調査・検討事項を負っている委員会ではございます。
 本日をもって第9期最後になりますけれども、本当に皆様方の御意見を受けて、最終報告書案のとりまとめができたと思っておりまして、ちょっと来期に向けての検討をしていただくに当たって、今まで地域科学技術イノベーションがどういう動きをしてきたか、これ、第1回目の委員会で少し御説明させていただいたんですけれども、歴史だけ振り返りをちょっとさせていただきたいと思います。
こちら、前回第10回の委員会でも予算説明のときに少し触れさせていただきましたが、地域科学技術イノベーション支援施策、当然ながら、今度は第6期でございますけれども、第2期科学技術基本計画からの流れをこちらでは書いてございます。繰り返しになりますが、第2期、この頃からクラスターというものが大きく出てまいりまして、経産省の産業クラスターと同時に、文科省でも知的クラスターということで、かなり大型、5億円で、ある意味拠点を作っていく、クラスターを作っていくのが始まっておりました。第3期を踏まえ、第4期は、今度はそれが維持されなきゃいけない。先ほどエコシステムという話が出ておりましたが、第4期はエコシステムという名前は出ておりませんでしたけれども、概念としては仕組みをどうやって地域に根差していくかというイノベーションシステムの構築というふうに概念が移ってまいりました。それを受けて第5期は地方創生、まさにまち・ひと・しごと創生本部ができた後の基本計画でございましたので、地方創生にどうやってイノベーションが貢献できるだろうかという意味合いでの施策が様々展開されてきたところでございます。
 そして第6期ということ。2021年からですが、ここでちょっとインスパイアというのが書いてございます。ここが先ほど来御意見頂いてまとめてきたABCの概念、これを具体化していくためのモデル事業としてやっていこうかなというふうに考えている施策ではございます。
 こんな流れも少し参考にしていただきながら、第6期に向けてどんなことを我々として進めていかなければいけないか。先ほどの第4章、これからやるべきこととして、先ほどの議論の中にも結構出ておりましたけれども、ABC構築って本当にどうやってやるべきかというのを少し具体化していかないと、自治体さんにとって分かりにくいものになってしまうかなと思っておりますので、先ほどの論議も加えた形で、もし何かABC構築に当たってこういうやり方があるのではないかみたいな御意見がございましたら、是非伺えればと思いますし、また同様に、社会的価値という言葉は簡単なんですけれども、それをどうやって我々として政策として、指標として生かしていくのか。その辺ももし御知見がございましたら、この場でお聞かせいただければと思っております。説明は以上でございます。
【須藤主査】  ありがとうございました。
 それでは、各委員の皆様から、御意見、あるいは感想等を頂きたいと思います。委員会としては最後の発言の機会ですので、いっぱいしゃべりたいかもしれませんが、なるべく3分から5分ぐらいでお願いいたします。
 それでは、じゃあ松原先生から回りたいと思います。
【松原委員】  先ほどの最終報告については、あまり文句は言わなかったんですけれども、これからのことを考えていくときに、大丈夫かなと思う点がいくつかあるんですけれども。1つは、やっぱりグローバルな競争とかグローバリゼーションにどういうふうに向かっていくのかというのが、あまりにも今までの議論だと希薄ではないかということですね。
 それはですから、地域の中で社会的な課題というのに取り組むと、内向きになってしまうんじゃないかと。それはそうではない地域の未来なんだろうなと思うんですけれども。だから、そういう面では、社会的課題といったようなものを捉えていくときに、是非内向きではなくてグローバルな、グローバリゼーションにも向き合う地域の社会的課題というのを、アジアでも、あるいは全世界でもいいんだけれども、そういったようなものと共有しながら、どういうふうに取り組んでいくかというところの是非グローバルな視点も入れたローカルな地域の社会を考えていくというような、そんなような点というのを強力に打ち出していただきたいと思います。これが1つ。
 もう一つは、やっぱり地方の自治体であるとか、今までずっとクラスターとかイノベーションシステムとか地方創生とかってずっと流れてはきているんですけれども、やっぱり成長戦略というか、地域の産業の基盤というか、そういったようなものを強化していく、そういったようなことを基礎に置いた形での社会的課題でないとなかなか力が出ないのかなと思うんですけれども。多分その辺あたりは、経済的な価値と社会的価値といったようなものの関係性については、前回も議論されたとは思うんですけれども、やっぱりその辺の成長がいいとは言わないんだけれども、やっぱりアメリカにしろ中国にしろ、あるいはEUにしろ、そういったようなところがどういうような科学技術イノベーションを進めているかということでいうと、やっぱり日本はかなり脅威に立たされていることを踏まえた形での社会的価値の追求かなと思いますので、そういう面では、未来を築くような科学技術イノベーションというのを、ここは大学、あるいは公設試験研究機関、地域中核企業、特に地域中核企業ですね、こういったようなものの競争力をやはり重視するような、そんなような視点といったものも非常に重要になってくるのかなと思います。以上です。
【須藤主査】  では、林先生、お願いします。
【林委員】  第9期を振り返ってみて、結構いろんな視点を持って議論ができたのではないかなと思います。そこはとてもよかったなと思いますし、経済的価値だけではない部分をどういうふうに考えるのかとか、こういったところは社会的な側面の議論もあったし、よかったのではないかなと思います。これが振り返りなんですが、それゆえに今日の最終報告もかなりバランスのいいものになっていると思います。ただ、同時に忘れてはいけないのは、イノベーションはやっぱり進んでいくというのは必然性がある。そこをやると、ものすごい価値があって、それが世界のために役に立つという、ドライビングフォースが中からあるんで動いていくのであって、外から何か支援を与えればできるという、そういうものじゃないですよね。
 じゃあその源泉は何かというと、さっきの地域資源にある競争力の源泉というのは何なんだろうかというところにくる。そうすると、現実を見ると、これは委員会の中でも何回か出ましたけれども、そうはいっても地方にそんなものがあるんでしょうかという、これが現実だと思うんですよ。ここの現実と、これから目指さなきゃいけないところをどう考えていくのかというのが、多分これからの委員会の議論のチャレンジになっていくのではないかなと思います。
 ですから、競争力の源泉、松原委員がおっしゃったこととちょっと重なるところがあると思うんですね。やる以上は、ものすごく競争で勝つという、儲かるというイメージがやっぱりないと、バランスだけとっていればいいというものじゃないんだろうなというところをどう盛り込んでいくか、具体的なABCを作っていくんだというところに盛り込んでいくかという、ここに係ってくるような気がします。以上です。
【須藤主査】  それでは、西村委員、お願いします。
【西村委員】  感想は、とても疲れました。地方から来ている方もたくさんいらっしゃると思うんですけれども、やはり11回ぐらいやるとさすがに疲れました。ただ、ありがたかったですね。ここまでいろんなことを勉強させてもらったというのはあるし、知識もあがったし、正確にいうと私自身が一番自分を振り返ったなと思ったので、これは非常にありがたい会だったと思います。それを踏まえて、やっぱりこのABCをどう作っていくかというのは、恐らく今後の鍵になってくると思いますし、さっきの松原先生のお話だとか林先生のお話を聞きながらなるほどと思うんですよね。
 あと、もう一つ科学技術イノベーションには、地域が前についているということになると、やっぱりナショナルイノベーションというのがいいのかどうか分からないけれども、国家としてグローバルに勝っていくものと、地域としてある面、そこでしっかりと生活を支えていくような基盤を作っていくようなイノベーションはちょっと違ってもいいのかなと。ただ、指向性としては閉じちゃ絶対だめで、例えば三重県の事例で言うと、まさしく私たちは先進モデルを走っていると思っていて、どこの先進モデルかというとアジアなんですよね。特に台湾とかカンボジアとか、私ちょくちょく行っていますけれども、彼らがこの先来るだろうというところの社会モデルの先進性は、三重県の南部に僕はあると思っているので、そこで説いたことの広がりは絶対あると思うんです。これは社会的価値としては、世界に冠たるものを地方から出せるような気がします。
 あとは、それが資金というか、経済的な価値とどう加わるかというところは、やっぱりかなり戦略的にやらなきゃあかんですよね。ただ、ちょっとこれ、東京にいると見えないことになるかもしれないです。地方にいると、逆に地方が有利になっているということがものすごくあるのは、人が減ったことです。規模を追うという社会から、私たちは質を追うことに集中できるようになってきていて、1人当たりGDPという表現がいいのか、1人当たり所得というのがいいのか分からないですけれども、三重県の南部は割と高いんですよね。特に農林水産業はものすごく高くなっています。これは平均値とっちゃうとだめなんですよね。老人も含めた平均値にすると低くなります。ただし、生産人口で割るとすごい高いと思います、恐らく。ものすごく高いと言ってはいけませんけど、東京の平均的なサラリーマンよりも高いと思います。というのは、生き残れている人たちは、土地の1人当たりが大きくなっているから、そうなんですね。
 そういう意味で、何をもって成功とするかという、特に地域科学技術イノベーションの成功は、ある程度定義をしていってもいいのかも分からないですね。そういうことがちょっと思ったところになります。
 そうなってくるのと、あと社会的価値を生み出すんだったら、誰も外さない仕組みが必要ですね。取りこぼさないじゃなくて、外さないなんですよ。えてして大学がやったりとか、行政の、特に県がやっちゃうと、外れちゃう人たちは、市町村の職員とか、あと地域住民の中の小規模事業者であるとか農家、漁業者なんですよ。ここまでを巻き込むやり方をどうビルトインするか、これが結構重要です。これは結構手間がかかりますけれども、私が一番やっている仕事は、実はそこです。地域に出向いていって、リーダー研修といって、各市町の若者たちを集めて取りこぼさないように夢を語る。ここがどう地域の中で共有できるかというのが非常に大きいと思います。
 なので、さっきの人を外さないとか、最初は属人的になって、プレイングマネージャーを引っ張るんだけれども、教祖様ができたらその瞬間に終わります。属人から外すということになるには、ここから先も多分思想なんですよ。非常に精神論を言いますけど、私は地域の中で成功は何だという、みんなで共通に掲げるようなビジョンと、それを達成するためのある意味の哲学ですね。これは非常に難しい話なんですけれども、この哲学を作るところに、多分僕は地方大学が一番重要になってくると思います。科学技術も重要ですけれども、それはあくまでも表面の話で、内面のところをどう作るか。これこそ多分、次のステージは、哲学をその地域でどう共有させるか、非常に難しいですよ。ここがない限りは、多分属人的から抜けなかったり、排他的になったりとか、非常に偏った組織体になる可能性があるので、是非ともそこに、生田さんにチャレンジしていただきたいですね。ということです。
【須藤主査】  それでは、德増委員、お願いします。
【德増委員】  委員会を振り返りまして非常におもしろかったということです。今、お話にもあったとおりでございます。非常に勉強になったなと思うのが、やはりヒアリングをさせてもらったというのが非常に大きくて。特にそれぞれの立場の苦労というのがよく見えてきたかなというふうに思っております。ブルックマンなんかはちょっと大学でやっているけれども金がなくてという話で、ここでいう資金の問題とか、そういう問題が結構あるのかなと思っています。そういう面では、今回いろんなセクターの方々のお話を聞いたなと思いました。
 今回のこれの根幹というのは、やはりクラスターというところに、経済産業省の立場と、それから文部科学省の中では知的クラスター、この2つが融合するという、そういうことになろうかと思っておりますので、やはりそこがうまく発展をする。これがどういうふうにしたらいいのかというところが、非常に難しい点だったなと、ちょっと振り返りながら思ったところであります。
 やはり議論は、先ほど私申し上げましたとおり、今までやってきた中では点と面、クラスターというのはやはりマイケル・ポーターがいう「房」ですから、その広がりということを1つの考え方として持ってなきゃいけないんで、地域がやはりもっと広がっていくという概念をどこかに作っていかないと、イノベーションの広がりが起こらないんだろうというふうに私どもはちょっと思っております。したがって、知のクラスターとしての大学を中心として、地域の支援機関と一体となりながら、地域産業を支えていくようなクラスターを作るというような、そういう形というのがなかなか難しいんですけれども、地域産業を元気にさせるという1つの流れになるのではないかというふうに、思っております。
 それから、国際化の話で、これはやはり十分やっていかないと、世界の中で地域における国際化というのが遅れてきているということは確かに、やりながら思った面がございますので、これをどういうふうに具体的にこの中に入れ込むか。これが大きいのかなというふうに思います。
 それから、私どもの地域イノベーション戦略支援プログラムのメンバーからも言われたんですけれども、これだけは言ってくれと言われたのが1つあって、やはり今までイノベーションを行ったその結果、それを継承する、どちらかというと接ぎ木みたいな、「櫛」を作って接ぎ木にしていかないと、やはり地域の強さにならないんじゃないかということ、これはうちのメンバーからも言っておいてくれよと言われたので、これは言っておかなきゃいかんなと思っておりますので、大きな幹にして、その幹がたくさんつながるという、このことが地域のイノベーションを起こす1つの流れになるんだろうと。だから、過去の地域の今まで起きたことをゼロからやるのではなくて、あるものからそこに接ぎ木をしながら伸ばしていくということが重要ではないかなというふうに1つは思っております。
 それから最後、やはりイノベーション活動におけるコーディネーター、今回のこの中にもありますけれども、プロデューサーということの表現になっていますけれども、やはりやってみてプロデューサー、引っ張る人間、コーディネーター、鳥瞰的に見てどういうところに技術があるのか、どういうところにビジネスのポイントがあるのか、何が足りないのかということが分かるコーディネーター、プロデューサー、そういう人間をどう育てるか。これがやはり今後、やっていってもらいたいというか、今後やるべきではないかというふうに私どもは思っております。以上です。
【須藤主査】  それでは、斉藤委員、お願いします。
【斉藤委員】  年表について、かなり長い時間軸とると、科学技術自体のイノベーションハードルがすごく上がり、不確実性が高くなり、さらには国際競争で早く達成できないとならないと益々なってきているはず。過去には、「達成ゴールに対してリニアプロセス型でやっていけた」が、それでは不十分になり、「クラスターを構築すべき、エコシステムを目指せ、さらには、この人にとにかく賭けるみたいなことを含めたABC」との変遷であると、私はとらえています。
 ABCはもちろん過去とは違うという意味では新しい概念ですが、他の世界は参考になる。たとえばインベストメントチェーン。ベンチャーキャピタルなどPE業界は、資産家によっては、VCに預けるかの評価は、ヒト、組織、あるいはその理念をよく見ているケースもある。必ずしも過去に実績のある人だけではなくて、新しいところにチャレンジする人にベットしようという、そういう投資家もいます。
 話題が飛びますが、国際競争が激しくなっている中で、注げるお金は限界があるので、どう優先順位をつけるかが重要になっている。その文脈においてABCを考えると、いかにしてアクターあるいはABC自体を評価するのか、結果的にその人のピボット力含めてその人の成果を出す能力に賭けるという結果評価がよりフィットするはずと考えています。その結果評価のやり方を、今後どういうふうにやるのかというのは大きなテーマになる。これまでとは、かなり異なる評価の仕方、優先順位のつけ方にしないといけない。そのために、もともとのやり方を引きずらずにスイッチを完全に入れ替えないと、いろいろな意味でやりにくくなるのではないかなという気がしています。このテーマは、次の1年間かけるべき価値があると感じています。
【須藤主査】  では、串岡委員、お願いします。
【串岡委員】  やっぱりABCは理念型なので、結局何をやるんだということはどうしても出てくると思うんですけれども、あまり決めつけるというか、例えば非常に地方というのはインクルーシブに、地域としての課題解決だというふうに言われると、どうしてもそっちに走ってしまうし、やっぱり一方では、エッジを立てて優れた人を引っ張ってきてでも、とにかく新しいことを展開したいとか、いろんなモデルがABCでも考えられると思うので、あまりひな型を、答えを得てこういうものを持ってきてくださいというふうなのはいかがかなと思うんですね。むしろ多様な可能性がある中で、こういったモデルもあるし、こういったものもあると。
 今までだと1つのパターンであって、それにある程度の枠組みも示されているから、それに合うような形で答えを事前に用意されていて、それに対して解を地域で作っていってどうですかという話よりは、もっと多様な可能性があるということを全面に出されて、ある程度今までいろんな政策目的について、その都度政策を作られて、キャッチーなインスパイアということは非常に優れているんですけれども、もう少し骨太な政策にして、ある程度選べるようなものを考えていただく。ただし、そのためにヒントはしっかり提供されていただいて、引き出しがたくさんあるような政策を作っていただくと、ABCというものが実際にやられる中で、もっと具体的な像を結んでくるのかなというふうに思います。
 こういう答えがあるわけではないんですけれども、地域もかなり日本は大分違いますので、逆に東京に11回来ましたけれども、ここに来るといろいろなヒアリングができて、ここに来ているだけで日本全国の情報が分かりますけれども、東京の目線で見るとそうかも分からないけれども、地域の目線だと逆な目線になるわけで、そこが分かるような情報の提供の仕方があればいいのかなと思いました。以上です。
【須藤主査】  では、金子委員、お願いします。
【金子委員】  今回いろいろな方のお話を聞かせていただいて、大変参考になりました。特に心に残ったのは、神戸市の方だったと思うんですけれども、科学技術イノベーション活動を担う方々がたくさんいらして、それぞれの方のバックグラウンドとか、抱えているミッションが異なる中で、どういうふうに目標設定していくのか、合意を作っていくというのは結構大変なことだというお話は心に残っています。ゴール設定に共感できないとか、小さ過ぎるゴールではやはり皆さんついてこないので、どういう目標設定をして、どういうところに頑張っていくのかというビジョンとかミッションとかそういうものを、きちんと示せる人が中核にいるのかということが非常に大事であると感じました。それは地方自治体の方かもしれないし、ひょっとしたら大学の方かもしれないし、そういう人がちゃんといるのかどうなのかということですね。
 それから、私は地方の国立大学の出身なんですけれども、こういうふうに人口が減少していく中では、地方創生を担う人材の育成であったり、大学を核とした地域の産業の活性化といったことをやっていかないと、地方の大学の意味というのが薄らいでいくということを強く感じました。そういう意味では、地方大学がいろいろな人と一緒になって地域の成長を考えていくということに関するモチベーションは高まっていると感じます。
 それから、アクターズベースなんですけれども、アクターズとはいっても、単なる個人ではなくて、どこかの組織に属している人でもあるので、そういういろいろな組織の方々の意識を盛り上げていくというところ、つまり、上の方の意識を変えたり、協力していこうという意識を高めていくというのが、こういう活動の1つの役割でもあるのかなと思います。
 それとともに、先ほどちょっと申し上げましたけれども、地域中核企業の役割というのも非常に大きいのではないかと思いまして、そういうところをうまく巻き込んでいけているところがうまくいっているように思いますので、どういうふうにうまく目標をすり合わせていけるのかが大事ではないかと思います。
 最後に、社会的価値をどうはかるかというところは、非常に関心があります。答えはなかなか難しく、ここは大きなテーマになるのかなという感じがいたしました。
【須藤主査】  それでは、内島委員、お願いします。
【内島委員】  この委員会では、8機関のヒアリングを実施し、市レベル、県レベル、金融機関、大学の取組など、様々なプレーヤーの視点からのお話をお聞きすることができ、私自身も産学官連携活動を推進する従事者の立場にある一人として、産学官連携の多様性をあらためて学ばせていただきました。本当にありがとうございました。
 私の拠点である北見市は、今季もマイナス30度を下回る寒さを体験するなど、特徴ある気候を有する人口10万人、人口密度は80人/㎢という地域です。ヒアリングで見聞きした活動の体制・運営は、活動における交通の便等も含めると、非常に充実していて、うらやましいなと感じるほどの体制・運営を行う環境が整っているなと感じました。北見は特異な地域だとは思っていません。中央からみた地方、いわゆる地域と言われるところの代表的な地域のひとつである認識でおります。地域で活動している私がこの委員会でずっと発言してきたことは、地域には、そこにしかないもの、つまり地域資源は必ず存在しているということです。地域資源は、自然環境や文化、歴史、気候、そして課題と捉えていることも地域資源です。それらをうまく活用することが必要と考えます。そのときに、やはり自分たちの地域を自分たちがより知っている必要性があります。その面では、大学は、その地域で輩出する学生が、地域をどのように見るのか、地域の見方を教育する必要があると思っています。地域を知った上で、地域のインナーコミュニケーションがしっかりできて、自分たちの固有の課題・強みをどのように生かしていくかと考えたときに、やはりそれらを発信していくことが重要です。地域の課題・強みをビジネスとして捉え、そのビジネスを通じた地域活性化に向けて地域外から興味を持つプレーヤーが必ずあると考えます。例えば、グローバルな視点で活動している大企業、その大企業が持つ研究所などの機能をうまく活用する、ある地域に研究所の拠点を作っていくというようなことをすると、その地域の強みと捉えてその地域に興味を持つ地域外の人は、地域の人にとっては自分たちの仲間であるという意識と信頼関係が生まれ、関係づくりが構築され、強みを活かした地域活性化に向けた活動ができるのではないかと感じています。そしてその関係づくりは、地域の既存企業の底上げを図れる活動を繰り返し進めていくことができ、今までにない新たな価値を、自分たちの強みを生かした新たな価値を生み出し、持続的に発展的に産業の活性化、地域の活性化につながっていくと感じているところです。産業界・大企業が持つ機能を活用することも必要だと思います。ABCをどのように作りあげていくのかというところに組み込んでいくことができればいいのかなと思います。
 最後に、私自身がコーディネーター活動を進める中で感じていることは、やはりその地域を知った上で、地域の特徴や強みとして捉えることができる、全体を俯瞰してみることができる人材が地域には特に重要で、そういう人材はその地域で育てていくことに一番価値が大きく、かつその地域でしか育たないと感じています。人材の安定的な雇用だけではなく、育てていくことについても強化していくべきじゃないかなと感じています。以上です。
【須藤主査】  ありがとうございました。各委員の皆さんから、いろいろと御意見が出まして、私も何か言わなきゃいけないのかなという気になってきたんですけれども。
 皆さんの意見を聞いていると、それほど変わったことは何もないんですけれども、やっぱり一番多いのがグローバルな視点というのが、皆さん共通して言ったことだと思います。ここの場では、一度だけ議論したんですけれども、それほど突っ込んだことはできなかったというのはちょっと反省であると思いますけれども、やっぱり地方とか地域に限らず、中央においても今、グローバルですごく激動期に入っていて、アメリカの動き、中国の動き、ヨーロッパの動き、アフリカの動き、そういったところを全部見て、産業界もかなり苦戦をしているときだと思いますので、否が応でもそういった流れはこれからどんどんどんどん厳しくなってくるんじゃないかなと考えていますので、今よりずっと厳しくなると思いますので、やっぱり日本の中の地域じゃなくて、世界の中の一地域という捉え方でこれから動いていかないと、時代に乗りおくれるんじゃないかなと思っています。その辺が一番大事なところかなというので、もう少しグローバルな視点を、今後議論の中に入れるべきだろうと思います。
 そういった見方をしたときに、やっぱりその地域が世界的に勝っていけるというのは、自治体と大学、ここが強くないと絶対だめだと思うんですよね。周りの企業がいくら多少グローバルに戦っていても、やっぱり大学と自治体が中心となってその地域を守っていかないといけない。それを国と、それから産業界、大企業、中小企業、ベンチャー企業、それから金融、これがしっかりと支えていくという仕組みができた地域は、やっぱりグローバルにも戦っていけるんじゃないかなと思いますので、そういったところを今後、少し具体的な例でもう少し踏み込んでいくべきかなという気がします。理念ができたので、今度は一つ一つ地域によっていろいろなパターンが違いますので、具体的な例をどんどん皆さんで公の場で議論をして進めていくことによってできるんじゃないかなと。そのときやっぱり何とか、特に文部科学省ですので、大学と、それから自治体を支える仕組みをしっかりと作る必要があるのかなというふうに感じました。
 その辺が今回の私の感想ですけれども、あと今日、最後に皆さんからいろいろ意見が出たのがものすごく重要な点だと思いますので、これをまとめていただいて、第10期というのをまたやるんですよね。その第10期が始まるときに、ここの最後に出た意見を少し整理して、前のメンバーではまとめた結果、こんな意見が出ている。それを踏まえて第10期の具体的な作業に入っていただきたいなと思いますので、第9期のメンバーを代表しまして、文部科学省の方でやっていただきたいと思います。
 ということで、一応予定の時間になりましたので、最後に事務局の方を代表しまして、勝野さんから御挨拶があるそうですので、よろしくお願いいたします。
【勝野総括官】  本日で11回になりますけれども、この地域科学技術イノベーション委員会、約1年の間、毎月1回御審議をいただきまして、今回こういう形で報告をまとめていただきました。11か月の間、本当に集中的かつ密度の濃い御審議をいただいて、この報告をまとめていただいたこと、改めて厚く御礼を申し上げたいと思います。
 今日の委員会でもいろいろと御意見を頂きましたけれども、国のこういった審議会の報告ですとか答申にもいろいろなタイプがありまして、具体的な制度改革を提言するものですとか、あるいは今後の方向性を示すものとか、将来ビジョンを示すものとか、政策の見直しを示すものとかいろいろあるんですけれども、今回のこの報告について位置付けるとすると、タイトルにもありますように、地域科学技術イノベーションの新たな推進方策の、いわば基本報告、基本答申というような位置付けになるのではないかなと思っております。したがいまして、委員からも御指摘多々ありましたように、この理念を具体的な取組にどうつなげていくのかというところが、これからの私どもの課題ではないかなと思っております。この理念を具体的な取組につなげていくためのさらなる検討とか、あるいは肉付けとかということをこれからしていかなければいけないんじゃないかなと思っております。
 この第4章のところでも、国のアクションということで示しておりますけれども、やはり主体はここにありますように地域のアクターでございますので、国のアクションとともに、地域のアクターにどう動いてもらうのか、あるいはどう、ちょっと言葉は悪いですけれども、その気にさせるのかというような取組ということを、我々としても考えていく必要があるのではないかなと思っております。多様なモデルの提示というようなお話もございましたし、またグローバルな動きへの対応とか、あるいは人材育成、様々なこれからの報告をより実効あるものにしていくための御示唆を今回頂きましたので、私どもができることは速やかに検討を進めていきたいと思っておりますし、またさらにそういった様々な事例とのフィードバックを通じて、今回のこの報告の考え方というのをよりブラッシュアップしていくことによって、さらに地域に役立つものとして磨き上げていくというような取組を、またこの委員会を、次期も恐らく設置することになろうかと思いますけれども、そういった場で今日頂きました御指摘を引き継いだ形で、さらに検討を進めていくような形で私どもとしても対応していきたいと思っております。
 いずれにいたしましても、この11か月間、先生方の熱心な御議論によりまして、こういった立派な報告をまとめていただきましたことを改めて感謝申し上げるとともに、引き続きこういった政策への御理解、御協力をお願い申し上げまして、閉会に当たっての御挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。
【須藤主査】  それでは、これで全ての議事が終わりましたので、閉会としたいと思います。11回の議論、本当に御協力いただきましてありがとうございました。心から感謝申し上げたいと思います。それから、事務局の皆さんも本当に御苦労さまでした。では、これで閉会といたします。

―― 了 ――

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