産業連携・地域支援部会(第9期)地域科学技術イノベーション推進委員会(第3回) 議事録

1.日時

平成30年6月11日(月曜日)10時00分から12時00分

2.場所

文部科学省 15階 1会議室

3.議題

  1. 委員からの意見発表
  2. これまでの委員会の論点整理
  3. 自由討議
  4. その他

4.議事録

【須藤主査】  おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから科学技術・学術審議会産業連携・地域支援部会第9期地域科学技術イノベーション推進委員会を開催いたします。
 お忙しい中、御出席いただきまして、ありがとうございます。
 まず本日は、最初の議題としまして、福嶋委員から「地域科学技術イノベーションの今後の在り方」につきまして御発表いただきます。その後、議題の2番目及び3番目としまして、事務局の方から「地域の科学技術イノベーション活動の基本的方向性」につきまして、これまでのこの委員会でのいろいろな論点を踏まえて整理していただきましたので、その説明を最初にしていただきます。その後、委員の皆様と意見交換をしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、配付資料の確認を事務局の方からお願いします。
【植原専門職】  本委員会はペーパーレス会議となっておりますことから、配付資料は皆様のお手元にございますタブレットのデスクトップに全てダウンロードされております。
 資料はお手元の議事次第の記載のとおり、資料1-1から資料4です。議事次第と照らし合わせながら資料を御確認くださいますようお願い申し上げます。御不明な点等ございましたら事務局までお知らせください。
【須藤主査】  まず議題1に入ります前に、本日の委員会の進め方、それから、アジェンダにつきまして事務局の方から説明をお願いします。
【植原専門職】  本日、議題1の福嶋委員からの御発表に先立ち、前回及び前々回の委員会での委員の皆様の御意見を振り返るため、事務局にてまとめましたペーパーを基に事務局よりまず御説明させていただきます。その後、福嶋委員より論点Ⅰ、「地域の科学技術イノベーション活動の基本的方向性」の(1)「科学技術イノベーション振興政策における地域の捉え方(範囲、主体)」に関連して、20分程度で御発表いただきます。次に、論点Ⅰ、「地域の科学技術イノベーション活動の基本的方向性」について、これまで2回の委員会を踏まえて事務局にて論点Ⅰの小項目ごとに考え方を整理しましたので、これらについてまず説明するとともに、最後に(1)「科学技術イノベーション振興政策における地域の捉え方(範囲、主体)」、(2)「地域が科学技術イノベーション活動を行う意義・目的」、(3)「地方創生の流れにおける科学技術イノベーションの位置づけ」のそれぞれの項目ごとに区切って、委員の皆様から御質問、御意見を頂戴するとともに御議論を頂きたいと思います。
 それでは、まず事務局より説明いたします。
【生田室長】  それでは、早速ですが、画面にも出ておりますけれども、皆様のパソコンの方にも入っております資料1-1をご覧ください。先ほど事務局の方から説明申し上げましたように、本日は特にⅠ「地域の科学技術イノベーション活動の基本的方向性」、ここについていろいろと御議論を頂ければと考えてございます。
 一応この資料1-1は、今まで、第1回、第2回、どちらかといったらフリーディスカッション的に委員の皆様方からいろんな御意見を頂いていたかと思います。そちらを便宜的に事務局の方でこのような論点ごとに分けて整理をさせていただいた内容となっております。
 1つ目の論点、「地域の科学技術イノベーション活動の基本的方向性」のところについては、(1)、(2)、(3)の3つに分けてございます。そのうちの1つ目が「科学技術イノベーション振興政策における地域の捉え方(範囲、主体)」でございます。こちらについては、そもそもの問題意識としまして、地域というものを1つの定義で決めることができるかどうか、もしくは地域をどういうふうに捉えていくべきであるか、そういったことを事務局としては問題意識として持っておりまして、その辺について本日も後ほど御議論を頂きたいと考えてございます。
 少し下の方に行っていただいて、2つ目の(2)でございますけれども、これが小項目2として、「地域が科学技術イノベーション活動を行う意義・目的」でございます。こちらについても、様々な委員の方から頂いた御意見をこのようにまとめさせていただいておりますけれども、もともとの事務局としての問題意識は、国自身が科学技術イノベーション活動を行うというのは政策としてあるかもしれないですけれども、地域自身が何のために科学技術イノベーション活動を行うのか、この委員会としても整理をしておきたいと考えてございましたので、あえてこのような小項目(2)をここで掲げさせていただきました。
 続きまして、3つ目の項目でございます。次のページの(3)でございます。これが小項目3でございまして、「地方創生の流れにおける科学技術イノベーションの位置づけ」でございます。こちらについても似たような話ではございますが、地方創生、特に2014年にまち・ひと・しごと創生法が出来ましてから、今回初めて科学技術基本計画、次の第6期に向けた検討が始まるタイミングを迎えてございますので、従来よりも地方創生、大きな政策の流れがある中で、あえて科学技術イノベーション、これを地域でやるということの位置付けをどのように捉えていったらいいのかということを整理したいという思いで小項目に掲げさせていただいた次第でございます。
 これらの(1)、(2)、(3)で大きな1つ目の論点としての「地域の科学技術イノベーション活動の基本的方向性」、こういったものをまとめていきたいと考えてございます。
 続いて、この資料上、もう少し下に行っていただきますと、Ⅱ「国内外の地域科学技術イノベーション事例からの教訓」でございます。こちらについては、本日というよりは、次の第4回目以降で様々な機関等からヒアリングをしていこうと思っておりますので、そこでのヒアリングの結果を踏まえて今後中身のコンテンツを増やしていきたいと考えてございます。まさに事例からの教訓というものを今後整理していきたいと考えている項目でございます。
 そして、次の3ページ目に行っていただきまして、Ⅲでございます。ここが、そういう教訓等も踏まえた上で、地域の科学技術イノベーション活動の置かれている現状、そして課題、これも事例から出てくると思いますので、こういったものも整理をしていきたいと考えてございます。現時点におきましては、とりあえず便宜的に課題ですとか現状を4つの小項目に分けておりまして、1つ目が「エコシステムの形成」という観点、2つ目が「研究開発・社会実装活動及びそのマネジメント」に関する観点、3つ目が「マネタイズの仕組み」、自立していくためにはどうしていったらいいのかという観点、4つ目が人材の確保やプレーヤーの役割分担、こういった4つの小項目に3つ目の論点を整理をさせていただいております。
 そして、一番下の4つ目の論点、「課題解決に向けて、今後国及び地域(各主体)に期待されること」という論点を掲げさせていただいております。これは3つ目の小項目で課題ですとか現状を把握した上で、それを解決していくためには、各々がどうしていくべきか、何を期待されているのか、そういったことをこの小項目の中で提言していきたいと考えてございますので、小項目の(1)から(4)、その下に続いておりますけれども、これについては、先ほどの論点と並ぶ形でとりあえずは整理をさせていただいている次第でございます。
 こういった形で、第1回、第2回委員会におきまして委員の皆様方から様々な御意見等を頂いたものをまとめております。これらを踏まえて、本日は、最初の1つ目の論点、「地域の科学技術イノベーション活動の基本的方向性」、こちらについて、事務局の方から事務局案を提示させていただいて、そちらについて御議論を頂きたいと考えてございます。
 なお、その前に、これに関するお話ということで、福嶋委員の方からインプットしていただきたいと考えてございます。
 説明は以上でございます。
【須藤主査】  ありがとうございました。今生田室長の方から今日の議論の位置付けの説明があったと思います。Ⅰ、ここについて本日は議論したいと思います。それでは、まず福嶋委員の方から20分程度で御発表をお願いいたします。
【福嶋委員】  皆さん、おはようございます。今日は地域科学技術イノベーションの基本的な方針を議論するということで、私の拙いこれまでの経験を基にして自分なりの私見をお話しいたしたいと思います。
 それでは、まず、幾つか宿題というか、トピックを頂いておりますので、まず、地域科学技術イノベーションというのをそもそもやるべきかどうかという、そういった点に関してなんですけれども、私個人としましては、やはりこれは必要であろうと思っております。地域にはそれぞれの地場産業なり、特色のある技術というのは、地域性で見ますと、非常に分散されているということもあります。こういった国レベルで技術の多様性を維持するということは、不確実性とか、環境の変動が激しい今日において、レジリエンスを高めるという意味でも、何かあったときにそれに対応するツールというものを国として持つという意味でも非常に意味があると思います。
 あと、もう一つは、技術自体も、最近、1つの技術で1つの産業が成り立つというわけではなく、例えば電気自動車でも、機械的なものだけじゃなくて、ITとか、半導体とか、そういったものとのミックスになっています。そういった技術の多様性が、国の中、国とは限らないんですけれども、やはりないと新しい技術も対応できないということだと思います。
 あともう一つ、既存の産業といえども、技術的にはどんどん高度化していっています。それにキャッチアップするためには、全国的に技術をアップデートしていく必要があるであろうと。
 あと、よく言われますのが、地域の雇用の創出、これにも地域科学技術イノベーションというのは必要であろうと。
 あともう一つ、こういった議論だとどうしてもビジネス的な収益がどうだとか、売り上げがどうだという話になるんですけれども、教育的な観点というのか、人的資源の発展というんでしょうかね、そういった意味でもこういった科学技術イノベーションをする意味はあると思います。世界的に見ても、最近、STEMという、Science, Technology, Engineering and Mathematicsという、そういった技術が、今後の人材がサバイブして、非常に技術革新が早い中で、産業を生み出し、職を生み出すという、そういった意味で、STEM教育というのが非常に必要となっていると。これは世界的な流れでもありますし、そういった意味でも、地域科学技術イノベーションというのは我が国においても必要ではないかと思っております。
 2つ目の議題なんですけれども、地域をどう定義するかというのはずっと議論されております。どういったふうに地域を見るかというのは、委員の皆さんからいろいろ御議論いただいておりますが、行政の区分による定義というのは余り実態を反映していないんじゃないかというのは多分皆さん共有できるんじゃないかと思います。研究活動も、経済活動も、今はかなり実態としてはそういった境界を超える活動になってきていると思います。例えば仙台なんかも、宮城県内の地域というよりは、むしろ山形なんかとかなり連携しておりますし、長野と浜松とか、そういったように行政を超えた経済活動という方が恐らく今実態的なのではないかと思います。
 そうではなくて、じゃあ、どうやって捉えるかということなんですけれども、海外の事例を幾つか見ますと、「協働する行為者」レベルと書かせていただきましたが、ある意味で人のレベル、あるいは実態的に動いている組織のレベルで動いているんじゃないかと思います。
 そのときに何をマーカーというんでしょうかね、何を見ていけばいいかということなんですけれども、恐らく3つぐらいあるかなと思っています。私は勝手にそういう人たちのことを「アクティブ・ステークホルダー」、「アクティブ・コア」とかというふうに勝手に名づけているので、これは別にアカデミックに普及している言葉では全くございません。
 1つは、インフルエンサー、セカンド・インフルエンサーというような地域で影響力を持つ人たちのことですね。
 2つ目が最近注目されているスターサイエンティストという考え方ですね。
 あと、3つ目が、アンカー企業、地域中核企業といった組織の話です。
 1つずつお話ししますと、インフルエンサーって、これは私が研究しましたオースチンという地域で、Technopolis Wheel Modelという、いろんな分野の人たちが、大学とか、大企業とか、企業、連邦政府等々の人たちが一緒になって地域を作っていくという活動をしたという、そういったお話なんですけれども、それぞれの分野の影響力を持つ人が連携して、この話のみそとしては、一番力を持っている人じゃなくて、実務的なことをやっているセカンド・インフルエンサーという人も一緒になって連携していきましょうというような話だったわけです。
 いずれにしろ、その地域において各分野で影響を持つ人たちのことをインフルエンサーと言います。こういった人たちに注目するというのは1つの視点かなと思います。
 2つ目が、最近よく言われているスターサイエンティストという研究です。これは何かといいますと、いわゆるアカデミックに業績を出している研究者は、同時にこういった起業とかビジネスにおいても成果を上げているという、ある意味でスターなんですね。これはアカデミックの研究馬鹿というわけじゃなくて、ちゃんとその研究を産業的な成果に持っていける人という、そういったスターみたいな研究者がいるんですという、こういった研究があります。日本でも百何人ぐらいいるという、早稲田の牧先生とか、千葉大の斉藤先生という先生がまさにこの研究をされているんですけれども。例えば、私が今時々研究しておりますサンディエゴという地域はゲノム産業が非常に盛んなんですけれども、そこでもクレイグ・ヴェンターさんという博士がいます。この方は、研究者としてもこの分野では一流なんですが、同時に自分で会社を3つ、4つぐらい興しておりまして、ここに対する投資を非常に受けております。
 こういった両方長けているような人がある意味で地域の科学技術イノベーションのコアになる可能性があります。
 3つ目が、これは既に皆さんご存じだと思いますが、地域中核企業とかアンカー企業。経済産業省は、これを地域中核企業ということで、定義をそのようにしておりますが、もう少し言えば、地域で一目置かれているというような、単に経済的な存在だけじゃなくて、ある意味で尊敬をされているという、事業自体も社会のために貢献しているというような、そういった企業。あるいは、アンカー企業と言われている、クラスター内の企業の育成、革新的技術や需要の搬入などをしてくれて、地域の発展に貢献する企業がそういったクラスターの中にはあるわけです。そういったところを目印にするというのもあるのではないかと思います。
 ちょっと話は戻るかもしれないんですけれども、地域が自発的に地域科学技術イノベーションを行ったという先駆的な例として、1989年に東北地域で行われた東北インテリジェント・コスモスという取組があります。これはまさに東北が地域主導でいわゆる科学技術による産業振興のようなことを行った取組です。ところが、これ、最近の2018年5月29日に出た新聞なんですけれども、1989年から大体30年やってみて、結局解散することになったということになります。これに対する評価というのはいろいろあると思います。30年間で14社のベンチャーを輩出ということをしたわけなんですけれども、ICRの取組をいろいろ振り返りまして、いろいろ感じることもありまして、じゃあ、次のスライドをお願いします。
  1つは、痛切に感じるのは、この取組は無駄ではなかったと。幾つか東北にあった、特に伝統的なというか、東北オリジナルというわけではないんですけれども、蓄積されていた技術を発掘して、それを最終的に産業化したという事例があります。
 例えば、ここに書いてある細胞培養液ですね。当初は牛の体外受精のための培養液の製造・販売というところからスタートしているんですけれども、それがいろんな技術と融合して、最終的に、今、細胞科学研究所というベンチャーを生み出して、これは再生医療の細胞培養液として生かされています。今、非常にこれはホットな話題でありまして、今まで医薬品というのは化学合成的なものが多かったんですけれども、培養医薬品というのが今増えてきまして、自分の細胞とか、あるいは生体の細胞を培養して薬を作ると。そういったときに、細胞培養液というのは非常に鍵を握っているんですが、そういった最先端のものに、今、昔の牛の培養液の技術が生かされていると。
 でも、これが実現するのに30年かかっているわけです。ですから、必ずしもむだではなかったんですけれども、これが効率的かどうかという問題は当然あると思います。
 あともう一つ、インテリジェント・コスモスの場合は、まさに地域だけでやったんですね。それは1つ限界だったのかなと思います。こういったICRの経験などから科学技術イノベーションを考える上で幾つかのポイントがあるんじゃないかなと思います。
 1つは、まず、言わずもがなですけれども、とにかく科学技術というものがビジネスになって収益が上がるまでには時間がかかると。5年ぐらいで政策というのは大体変わっていくわけですけれども、やはり長期的な視点で見ないと恐らくものにはならないであろうと。
 ただ、その間に何もやっていないというふうな非難は当然あると思いますので、科学技術イノベーションを売り上げとか成果とか、金銭的なものではないもので測るということが1つあるのではないかと思います。例えば人的資源の質の向上、STEM教育の話を先ほどいたしましたけれども、そういったものに地域科学技術イノベーションに取り組んでいるということ、人的資源が、例えばその地域の人たちが能力を付けるとかというようなことも評価軸としてあるのではないかと思います。
 実際に今、山形県の鶴岡市では、慶應の鶴岡でいろいろベンチャーが生み出されていることがあるんですけれども、あそこのすばらしいのは、そういった研究開発をされながらも、それに地域の高校生などを巻き込んで、高校生にTAをやらせたりとか、高校生の自主研究なんかにサポートをしたりとかというようなことも行っているということで、こういったところで、科学技術イノベーションの成果というのをもう少し多面的にするというのか、複数の軸を使うというのはあると思います。
 もう一つ、考える上でポイントになるんですけれども、科学技術を生み出した地域と事業化する地域、事業化に適する地域というのは恐らく違うのであろうと思います。これは海外の事例なんかもよく見てみましても、やはり科学技術の強い地域とそれを事業化する地域というのはずれる場合があると。先ほどお話をちょっとしましたサンディエゴという地域は、カリフォルニアの南部にあるんですけれども、そこはまさにゲノム研究がものすごく強いんですね。いろんな研究所が集積しているんですが、でも、そこで事業化するというベンチャーは実はそんなに多くなくて、事業化するんだったらサンフランシスコに行きますといって北に飛んでいっちゃうという、そういった事例がかなり多いですね。起業した方にお話を伺うと、サンフランシスコの方が簡単に資源も入るし、人も集まるからねというようなことをおっしゃいます。
 そういった意味で、科学技術を事業化するにはやっぱりほかの要素も考えなくちゃいけない。逆に、科学技術というのを地域に縛り付けるというのは余りよくないのではないかと思います。
 日本において、じゃあ、どうそれを生かすかということなんですけれども、やはり他地域との交流ということですね。これは国内にかかわらず、世界に目を向けてもいいと思います。日本の科学技術においては、どちらかというと、そういった用途を探索する能力というのがちょっと弱いのか、地域科学技術というので、地域で何か実現しなくちゃいけないみたいな意識が強く働くのか、そこら辺がまだまだ弱いんじゃないかなと思います。
 それにある程度参考になるのが、ドイツのフラウンホーファーという、非常に有名な橋渡し研究機関ですけれども、資料については参考で3枚後に出てきますが、ある種大学とか研究機関と産業をつなぐのに特化した研究所になります。こういったものがあると非常にいいんですけれども、フラウンホーファー自体も67ぐらい、拠点がドイツにかなりばらけているので、そこで連携が非常にしやすいという、そういったことになっています。
 日本ではどうこれを実現するかなんですけれども、JSTのプラザサテライトがあった頃は、コーディネーター間で連携するということをやられていたと思います。
 あともう一つ、日本に公設試験場がありまして、そういったものがある程度、全国連携みたいなことに、代わるかどうか分かりませんが、可能性はないわけじゃないかなと思います。
 あと、地域側の方も積極的に情報発信するという、そういった意識の方を高めるというのが必要かなと思います。
 すみません、参考1、2、3を飛ばしていただいて、3つ目です。アカデミアと企業間、研究所と企業間の関係というのも少し見直す必要があるのかなと思います。どうしても産学連携といいますと、学の方はある程度、科学技術、あと、その技術を企業に渡してしまえば、事業化は企業でねという、ある意味非常にはっきりした分業というのがなされているという話はよく聞きますけれども、実際その中間、重複する部分ですね、受け渡しの部分はもうちょっと重複しないとやっぱり実現しないんじゃないかという、そういった話はよく聞きます。一番効果的な重複というのが、人材が移動するという話だと思います。よく海外なんかで聞きますのは、退官した教員が、退官後、企業に行ったりとか、あるいは、企業の研究員が大学に来るとかという、そういった流動性が促進されるような仕組みにそもそもなっているというようなお話も伺います。
 あと、最後ですけれども、事業化の成功で恐らくうまくいかないというのは何かというと、科学技術をベースにした会社の場合の事業化成功の成否というのは、やはり売り先がないと。営業力があるところは非常に事業化に成功している場合が多いと。だけども、そうじゃないところというのは、本当にそのまま宝の持ち腐れになってしまって、ひどいときには倒産するというような、そういったケースもあります。科学技術イノベーションといえども、イノベーションになるためには、もう少しビジネス的な知識といいましょうか、技術を売り込むという、そして、その技術の応用先を発見するというところが非常に重要だと思います。
 アメリカですと、それの売り先として、いわゆるSBIRという制度がありまして、中小企業、ベンチャーの技術を政府が優先的に採用すると。それを使った技術などを優先的に採用するということが行われていて、日本でも内閣府がそういうことを去年あたりから始められているんですけれども、それはそれで意味が非常にあると思います。
 ただ、他方で、ニーズの出し方というんですかね、こういう技術を開発してくださいという、そういったニーズの出し方とか、あるいは、そのニーズは何かというのを発見するのは、必ずしも科学技術、理系的な知識だけではなく、やっぱり社会科学とか、人文科学とか、そういった知識も総動員するべきではないかと思います。ある意味でマーケット主導型のテーマ設定、それを企業等々に出していくという、そういったことを積極的にやっていくことによって、ある程度事業化の確率が高まるのではないかと思います。
 最後、明るい話ということで、地域科学技術イノベーションの追い風になる幾つかの要素も最近は出てきているのではないかと思います。若者の就業意識の変化というのがありまして、だんだん東京で大企業に勤めて出世していくというのだけが人生ではないと、かなり今の30代、40代の、もう若者とは言わないですし、かなり流動的になっておりますし、地元に戻ろうと。できれば、職さえあれば、地元に戻ろうという、そういったような若者が増えてきております。こういった人たちが地域科学技術イノベーションの担い手になるという、そういった可能性も少しは昔よりは出てきていると思います。
 あと、もう一つ、東日本大震災の後にかなり人口が動いたと思います。特に東日本ですね。西はちょっと分かりませんけれども、それによって、地方にある技術とか、地方にある産業、特に農業、水産業、林業等々に少し目が向き始めていると。そういったITとか、既存の技術と最先端の技術が融合するというような動きも少し最近見られております。
 こういったものが地域科学技術イノベーションの追い風になるのではないかなと思います。
 あと、最後ですけれども、大企業自体も最近地方にチャンスを求めるようになっている。自分たちで新事業を作るということが結構大変だということに気が付いたせいか、あるいは、もう少しベンチャーでも、非常にいい技術を持っている、非常にいいビジネスの種を持っているということに大企業もだんだん気付き始めているということで、最近はやっているのはCVCというやつですね。コーポレート・ベンチャー・キャピタルみたいなものがはやって、ベンチャー、中小企業に投資するという流れが今出来てきております。都会だけではなくて、地方にもそういった技術の種というのはあるということは、大企業は徐々に認識し始めていると思います。前回松原先生も御指摘になったように、やっぱり大企業を巻き込むような形の地域科学技術イノベーションというのも今後検討していく可能性があるのではないかと思います。
 ということで、拙い発表で大変恐縮でした。どうも御清聴ありがとうございました。
【須藤主査】  どうもありがとうございました。それでは、ただいまの福嶋委員の発表の中で何か御質問等ございましたらお願いします。
【德増委員】  今の福嶋委員の中で、東北インテリジェント・コスモスが閉鎖ということなんですけれども、ちょっと私の方もいろいろ考えていたんですけれども、やはり東北インテリジェント・コスモスは、空間的に不利なところに設置していたということが前々から言われていたんですね。ですから、東北大学なり、いろいろ学との連携というのがちょっと疎遠になっていて、そこにくっつこうとしても、どうしても教授なりが、研究者なりが集まらないという、そういう不利なものがあったような気がして、そういう面では人材育成についてもなかなかうまくいかなかったというふうに、私自身、ちょっと思っていまして、それとあと金融ですね。この3つ。空間と人材と金融がどうもうまくマッチしていなかったんじゃないかというのが私の意見で、もう少しこれをうまくやれば、もうちょっと、山形のいろいろ事例ございましたけれども、少しいろんな面で広がっていくのかなという意識は、当時私は非常に感じていたんですけれども、そこら辺、福嶋先生、どういうふうにお思いですか。
【福嶋委員】  確かに空間的にちょっと離れているというのはあると思います。南吉成という、ちょっと街からも離れている。私はインテリジェント・コスモスの後半の方しか実は見ていないんですね。なので、ちょっと何とも言いがたいんですけれども、東北の科学技術イノベーションの主役だったのは、確かに80、90年代。空間的にちょっと離れている。だんだん他にいろんな国の政策が出てきたので、ここにもちょっと書いてありますけれども、その中で若干存在感が埋没していったという感はあると思います。空間的なものは確かにそうです。あと、みんな、新しいものにどんどん飛びついていっちゃうというところもあって、ある意味で国の地域科学技術イノベーション政策の波が来て、そっちにみんなが移っちゃって、ICRがうまく使われなくなってしまったという感は受けます。
【德増委員】  空間というのは非常に重要で、大学なりの研究者とトイレが1つで使えているというような、そのぐらいの距離というか、距離感がやはり重要じゃないかなと、この東北インテリジェントを見ながら感じていたところでございます。ありがとうございました。
【須藤主査】  他にございますか。
【串岡委員】  私自身、東北インテリジェント・コスモスが出来たときに何度も視察に行きました。広島から仙台は、当時飛行機が通って、模範例だということで何度も行きましたけれども、当時伺った話だと、学主導というか、当時の東北大学の石田学長が主導されていて、何となく産業界や金融だとか自治体は余りついていっていないのかなと。その構想の中で、R&D会社という、R&Dを資本金でやるような、かなり無理なスキームをくっつけたところにもともと、構想はいいとしても、いろんなツールだとか、まとまり具合がどうなのかなと。逆に言えば、もっと地域に根差した、つまり、大学も大事だけれども、産業界だとか自治体だとかというのが大事かなというふうには当時感じました。感想です。
【須藤主査】  福嶋先生、何かありますか。
【福嶋委員】  当初のころは余りよく知らないので。確かにスキームに無理があったと。大学がかなりリーダーシップを発揮して。当時、自治体とか、先ほどオースチンのテクノロジーウィールのモデルをお見せしたんですけれども、若干足並みがそろっていないというか、大学が突出し過ぎていたということは確かに言えると思います。
 ですから、テクノロジーウィールのみそとしては、あまりでこぼこがあっちゃいけないんですね。そうじゃないと車輪って回らないわけですので、その格差があったというのは確かに言える話だと思います。
【須藤主査】  ありがとうございました。この後の議論の中でも今の福嶋先生の話題に絡んだ話が出てくると思いますので、そこでまた議論をしたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、議題の2及び3に入ります。先ほど事務局の方から示された資料1-1の論点整理Ⅰの「地域の科学技術イノベーション活動の基本的方向性」の各小項目についてこれまでの委員会で議論がなされてまいりました。そこで、これまでの委員の御発言を踏まえてそれぞれ小項目ごとに整理してあります。まず、この論点整理について事務局から説明していただきます。今日は各小項目について事務局から論点整理を行った後、その都度、当該の小項目について議論をしたいと思っております。
 それでは、まず、小項目1、「科学技術イノベーション振興政策における地域の捉え方」につきまして説明をお願いします。
【生田室長】  ありがとうございます。資料2の方をおあけいただけますでしょうか。今主査の方からもお話がございましたが、論点Ⅰ、「地域の科学技術イノベーション活動の基本的方向性」というのは3つの小項目に分かれておりますので、まず、小項目ごとに説明の方も区切ってさせていただければと思います。
 それでは、1ページ目をおあけください。まず、「科学技術イノベーション振興政策における地域の捉え方」、定義ですとか、範囲、もしくはどう捉えていくか、そういった観点でございます。
 資料の体裁といたしましては、少しカーブのかかった丸の中には、先ほど資料1-1で説明させていただきましたように、これまで第1回、第2回で委員の方から関連する御発言があったような内容を丸囲いの中には書かせていただいております。矢印の下には、事務局として、こういったことを踏まえて、問題提起を2つ、ここの部分は書かせていただいている次第でございます。
 まず、委員の方の御意見としてあったのは、一義的な地域の範囲は定まらない、もしくは、地域は重層的に捉える必要があるですとか、地域は多種多様で、その多様性を度外視して一括りの定義にすることは難しいのではないかですとか、もしくは、地方の場合は主要のプレーヤーが固定化してしまっている状況であるとか、行政の範囲として地域を捉えていくということが従来は多かったけれども、やはり人と人とのつながりこそに実態があるのではないか、そういった御意見があったかと思います。
 ここから引っ張ってきまして、我々事務局といたしまして、問題提起としては、地域の多様性を前提とした上で、地域をそもそも定義付けることはできるであろうかというのが1つ目。
 2つ目といたしまして、地域の捉え方として、従来のようなエリアですとかブロック、境界、そういう範囲を切り口とするべきなのか、それとも、その中で活動している主体を切り口とすべきなのか。こういった2つの問題提起をさせていただきました。
 では、2ページ目、行っていただければと思います。まず1つ目の問題提起としまして、地域をそもそも定義付けられるかの部分でございます。この四角囲いの中で書かせていただいているのは事務局としての考え方の整理でございます。
 1つ目のところでございますけれども、多種多様な状況に置かれている地域を一義的に捉えることは難しく、完全なる定義というのはほぼ不可能に近いのではないかと。
 しかしながら一方で、どの地域でも通用するような、いわゆる汎用性のあるシステムとして地域の科学技術イノベーションを捉えていくことも重要ではないかと。
 ここでいうシステムというものは、科学技術イノベーション活動に実際取り組むいろんな主体、自治体ですとか、大学、企業等々、そういった主体が活動を行うに当たって相互に作用し合う仕組みですとか形態、そういったものを指して、こういったものというのは汎用性と同時に、地域の持っている多様性に対応できるような柔軟性をも確保されたものにすることが重要でとないかと。画一的なものとは限らないと事務局としては考えてございます。
 では、次の3ページ目に行っていただけますでしょうか。こちらの方は、もう一つの問題提起でございます。地域を捉える際に、エリア、ブロックといった範囲か、もしくは主体、中で活動している主体を切り口とすべきか、こういった問題提起に関しまして事務局として考えておりますのは、地域はこれまで、下にe.g.と書いて法律等々書いてございますけれども、やはり人口の規模ですとか、もしくは面積の大きさ、エリア、そういったものを切り口として行政としては捉えてくることが多かったと考えております。
 こういったやり方というのは、行政区画、都道府県、市町村、こういったものを意識したものでございまして、法令ですとか、予算事業、そういったものを考える上では、ある程度こういう明快な境界があった方が地域を捉えることが有用、そういったケースもあったかと考えてございます。
 ただ一方で、科学技術イノベーション活動というのは、先ほど福嶋委員の御発表の中にもあったかと思いますけれども、活動を実際にやっている人ですとか主体、そういったところが中心となって、逆に言うと、境界に必ずしも縛られないで、そういったものを超えた形の人的ネットワークで展開されるべきものではないかと。点と点の連携ですとか、もしくは広域連携、そういった考えではないかと。
 だからこそ、地域の科学技術イノベーション活動という観点におきましては、境界の縛り、あえて限定みたいなものは解き放った上で、人的ネットワークが形成された場を引っ張る中心的な主体を切り口として地域というものを捉えていくことが必要ではないかと我々事務局としては考えた次第です。
 なお、ここでいう主体というものでございますけれども、次のページに幾つか書かせていただいております。地域の捉え方として、特に科学技術イノベーションの観点において、どういう主体にどういう役割が期待されるかというものを、イメージを持っていただくために書かせていただきました。
 上は自治体から始まりまして、それぞれ主体を書いております。最後は住民というのは当然重要なプレーヤーとして出てくるのではないかと思っております。
 それらそれぞれに期待される役割を、右側に整理をして書かせていただいておりますが、こちらに書いてあるもの以外でも、当然ながらまだまだ役割というのはあるかと思いますが、おおよそ事務局の方で考えられるものをとりあえずはピックアップをさせていただいた次第でございます。
 例えば自治体ですと、企業などのニーズを把握した研究開発の実施ですとか、もしくは、地域の主体、企業等々へのシーズの提供ですとか、もしくは企業の誘致、もしくは企業ニーズの発掘、地域の大学のシーズ、それらのマッチング、もしくは社会実装に向けた場の提供ですとか、規制改革の環境整備、そういったことが自治体に期待される役割ではないかと考えてございます。
 一方で、大学の方は、ニーズを把握した研究開発の実施ですとか、研究シーズの提供、もしくは、ほかの主体との共同研究の開発ですとか、やはり重要な次世代の研究開発を担う人材の育成、これも重要な大学の役割ではないかと考えてございます。
 そして、企業の方でございますけれども、エンドユーザーと一番近い企業は、ニーズの把握ですとか、それを踏まえた開発の実施、もしくは、当然ながら他の主体との共同研究ですとか、当該研究開発に対する投資、もしくは製品のブランド化、広報活動、こういったものが役割として期待されると考えてございます。
 そして、金融機関でございますけれども、言うまでもなく、研究開発活動に対する資金提供ですとか、もしくは、シーズとニーズのマッチング、こういったことも金融機関にも求められてくるのではないかと考えてございます。そして、シーズの社会実装、事業化に向けた経営支援、それから、ハンズオンですとか、アクセラレータプログラムの実施、そういったものも金融機関に今後期待される役割が大きくなってくるのではないかと考えてございます。
 そして、住民は、当然ながらですけれども、実験実証フィールドへの参画やデータ提供への理解、もしくは様々な社会・行政課題の解決のためのSTI活用に関する要望、そういったことが住民に期待される役割ではないかと思っております。
 こちらについてはまだまだこれからブラッシュアップしていく必要があるかと思いますが、おおよそのイメージを持つためにあえて本日このように掲載させていただいた次第でございます。
 1つ目の(1)「科学技術イノベーション振興政策における地域の捉え方(主体、範囲)」についての事務局の説明は以上で終わらせていただきます。
【須藤主査】  ありがとうございました。それでは、今説明のありました小項目につきまして、20分程度議論したいと思います。何かございますか。
【松原委員】  どうもありがとうございました。私、前に報告したとき、特に地域経済の類型化について、圏域型というタイプとネットワーク型というタイプがあるという話をさせていただいて、今日、地域については、場を引っ張る中心的な主体を切り口として、ネットワーク的な捉え方をされるのかなというふうに理解をしました。それは、特に文科省の場合には、大学とか、そういったようなものがハブになっていくので、地域科学技術を生み出すところが、先ほどの福嶋先生の話にもあるような、スターサイエンティストとか、アンカー企業とか、いろいろなものが核になる、コアになるのかなと思うので、そこを中心に考えられるのがいいかなと思うんですけれども、もう少し考えていただきたい点として、主体間関係という形で、主体の関係性といったようなものが出ているんですが、そこにより踏み込む必要があるのかなと思っております。何でも主体が関係していれば、それでイノベーションが起きてくるかというわけではないので、そういう面では、より踏み込む、どういったような主体が関係し合う中で科学技術イノベーションが生まれてくるかということを、ターゲットを明確にしないとぼんやりした形の定義になってしまうと思います。
 福嶋先生の話のところでも、輪っかですね、インフルエンサーの図のところにもありましたように、様々な関係主体が輪っかを作っていく。その輪っかがイノベーションを生み出していくような、そんなような図があったかと思うんですけれども、そういったような主体間関係のより踏み込んだ議論を考えていきますと、科学技術イノベーションの場合には、知識とか技術、これがどういう類型なのかにもよると思うんですけれども、暗黙知的なものを重視するようなものとかなり形式知的なものという形で、知識フローとか、技術のフローとか、あるいは、技術の地域性とか定着性みたいなものも先ほどありましたけれども、そういったようなものを踏まえた形での距離というか、空間的な広がりというものも意識したネットワークを考えないと、効果を生み出さないのかなというふうには思っています。
そういう面では、ある種の類型化も必要になってくるのかなというふうに。先ほどの德増委員の話にもありましたように、大学の研究室の廊下を通じてイノベーションが生まれてくるといったような話を、「ディープ・クラフト」(本物の先端技術)が生まれる場所について複雑系の先生(ブライアン・アーサー)も言ったりしていますし、一方では、非常に広域的に広がるようなネットワークの中で生まれてくるものもあるし、その辺の検討がより踏み込んだ形で必要になってくるかなと思います。
 以上です。
【須藤主査】  ありがとうございました。林先生、お願いします。
【林委員】  林です。3ページ目に書いてある内容を見ても、文科省が地域の科学技術イノベーションをやるんだということを考えて、文科省の役割は一体何なんですかというところから余り外れない方が……。何でもかんでもイノベーションをやるわけにいかないと思うんですね。例えば自治体は、その地域の人たちの生活のレベルを上げたり、産業を振興したり、雇用を創出するというのを第一義に考えているわけだと思います。
 それに対して、文科省の視点からすると、これは大事だなと思っているのは、行政区画で区別されているということにとらわれないで、やはりこの地域はこういう科学技術、特に例えば産業関係の技術が強いよねとか、背景的には歴史的な背景とか文化的背景があるんじゃないかな。大学は明治時代からこういうことやっていたとかいうのもあるかもしれませんが、科学とか技術の強みがここの大学、この周辺にはあるというあたりで地域を定義していくというかな、そういうのがあればいいかなと思います。逆に、自治体が一生懸命やろうとすると、行政区画でやっぱり考えちゃうと思うので、それをある程度違う視点から見ていくという、ここは1つではないかなと思います。
 あと、地域ということを、科学技術というものと、もう一つ文科省の役割というのはやはり教育の部分だと思うんですね。教育を少し広めに捉えて、中等教育、高等教育だけではなくて、社会人教育であるとか、年をとってからでも人材育成というのは十分あり得るわけで、そういった視点から地方の定義を考えていくというのも大事かなと思いました。
【須藤主査】  ありがとうございました。お願いします。
【西村委員】  私は今回のまとめ方を見ていて、非常にいい方向性かなと思いました。当事者的な話、ちょっと精神論的な話が多くなって申し訳ないんですけれども、私は事例を幾つか、三重県ですけれども、三重県の中で行っている中で、共通項として何か動いたときのことをいうと、やっぱり目的が共有化されることと背景が一致したときに初めてその集団は動くなということです。
 ですから、さっきのウィールモデルみたいな形で、当事者は何の疑いもなく1つの共通項で、これやるんだと思ったときに動いたケース。例えば鳥羽市であったら、鳥羽マルシェみたいな感じで、地域内流通を全部変えていくことで地域全体を上げていくんだとなったときに、当事者全部がそこに一本化するということとか、農業でもそういうことが起こっています。
 だから、ある面、そういう意味でいうと、地域ということわりではなくて、背景をともにして同じ共通項を目指せる人、共通目標を目指せるような集団を1つの仕組みとして動かしていくというやり方がシステムとなると思いました。
 もう1点は、自治体とか、いろいろ書かれたこの表、主体及びそれらに期待する役割というところが、確かにこれは各論でいうとこのとおりなんですけれども、ここで1点だけ精神論を言いますと、じゃあ、この地域は一体何を目指すのかという、誰が地域の将来像、その地域の理想像を書くのか。これがないと恐らく当事者はそこに向かって動いていきませんね。どうもその役割が、自治体に求めるのか。そうすると、行政区画に割れちゃいますよねと。大学に求めるのか。それは分からないですね。大学にそういうのを書けるかということになる。
 でも、やっぱり最終的には地域の目標の共有化みたいなことが、どこかで将来像、絵を描くようなことがないといけないんですけれども、そこをどうしていくのかなということ。逆にそれが共通項を持てたとき、初めて1つの地域という定義付けが成り立つのかなとは思いました。私はそういうふうな感想です。
【須藤主査】  ありがとうございました。他にございますか。
【斉藤委員】  数回前の委員会にて、地域「着」・地域「発」という視点を提示しましたが、地域「発」でのイノベーションでは間違いなくイノベーションを興す「主体」が重要です。そのため、主体を強調することに違和感はありません。
 他方で、地域「着」ということですと、例えばエストニアなどの例も頭に浮かべてみると良い気がします。エストニアは、電子政府に初めてブロックチェーン技術を適用した国家ですが、そのような「地域主体」でしかできない政策というのはあります。そのような観点からも「主体」というのは重要な視点ではないかと思います。
【須藤主査】  どうぞ。
【内島委員】  4枚目の主体及びそれに期待される役割というスライドで、「企業」という項目がありますけれども、これは大企業や先端的な企業なのか地方の中小の企業なのか、地方に生きる企業と先端大企業という役回りは大きく異なりますので、それを明確にできるような認識にまとめることができるといいのかなと思いました。
 例えば地方の特徴に着目して、大企業・先端的企業が有する研究部門を地方に持ち込むような取組も考えられるのではないかなと思いまして、ひとくくりの「企業」ではなく、いくつかの区分に分けておくといいのかなと思いました。
 以上です。
【須藤主査】  どうぞ。
【德増委員】  地域という問題というのは非常に難しいなということがありまして、産業振興の中でも非常にこれは難しくて、我々は、ここにいる松原先生と一緒に都市雇用圏という中で地域循環というのを1回やってみたんですけれども、これは岡山県の中山先生がよくやってきたんですけれども、ただ、それが圏域として本当に産業振興の中でうまくいくかというと、私どもも少し難しいところがあるなということは考えています。
 これはこれとして、地域というのは、ここに書いてあるとおり、どうしても自治体を外すということは非常に難しいことである。これはいろんな支援をするなり、いろんなことをするなり、やはり母体となる自治体、それから、大学というのが存在するわけで、これを雇用圏にしてしまうと、非常にまたそこに交錯していくという問題もあります。
 ただ、先ほど私が空間ということで、東北の話を、少し遠過ぎるんじゃないかということも言ってありますけれども、先ほど松原先生が言ったように、少し主体性のところをどう見ていくかというところ、大枠の人口の範囲とかというのは、これはある程度うまく行政の中ではできるはずなんですけれども、ただ、主体性をどういうふうにしながらこれを波及させるか、波及の基をどういうふうにしていけるか、その広がりはどうなっていくかというところを少し考えていかなきゃいかんかなと考えております。これは非常に難しい課題だろうと思います。
 もう一つは、地域プラットフォームという言葉が結構使われた時代が、というか、今、ちょっと使い古されたかもしれませんけれども、地域プラットフォームという言葉をもう一度考えるべきじゃないかという話をしています。これは地域の中でどういうふうなことができるか。その地域の範囲をどう決めるかという問題も含めながら、地域プラットフォームをどう組めるかというところを地域の概念として持ってくるべきじゃないかと私は思っています。そうしないと、地域というのはどうしてもいろんな資源があるので、限定しちゃうと、どうもその資源が固定されていくので、地域資源をどう活用していくか。それは大学の技術、地域の企業、いろんな連携の中で生まれてくるので、どう地域プラットフォームを組めるかというところは地域の範囲の中で考えていくべきじゃないかなと思っています。
 そういう面では、先ほどの中で、アメリカのサンディエゴの話もありましたけれども、大きく見れば、西海岸の方に行きますけれども、結局最後はサンノゼの方のシリコンバレーにみんな行っちゃうよというのは、そこに金融機関、エンジェルがいるからかなとか、いろんなことを考える。だから、大きく見れば、そこがプラットフォームになっているのかもしれないという、そんな認識を持っております。
 以上です。
【須藤主査】  他にございますか。
【金子委員】  地域の捉え方としておまとめいただいた、人や主体を中心とした人的ネットワークというまとめ方に非常に賛同いたします。それで、ちょっと追加的にコメントさせていただきたい点としては、先ほど西村委員が言ってくださった目的の共有化、こういうところは非常に大事なことではないかなと、私の感想として持ちました。
 それともう一つ、4ページの下のところなんですが、起業段階でいろいろされるときに、お話を伺うと、メンター的な方の存在というのも非常に大きいんじゃないかというようなことをお話を伺います。そういう中で、そういう人たちがここで、金融機関のVCであったり、企業の中に入っているのかもしれないんですけれども、そういう起業される際の、いろんな技術的なアドバイスもあると思うんですけれども、精神的なアドバイスも含めて、コンサルタントであったり、専門家、そういう方々の役割というのもひとつ考えていってもいいのではないかなという気がいたしました。
【須藤主査】  ありがとうございました。福嶋先生、何かありますか。一通り皆さんに意見を頂いたので。
【福嶋委員】  ちょっとだけ考えていたんですけれども、4枚目の役割という考え方、私、余り好きじゃなくて、それぞれの主体が何をすればいいみたいな話で、結局、これをやればいいんでしょうという感じで、どうしても分業みたいに思えてきてしまうんですね。書類上はこれでいいと思うんですけれども、何かもっとぐちゃぐちゃしているんじゃないかなと。先ほど重複という話をしましたけれども、大学でももう一歩企業に歩み寄ることをしなくちゃいけないとか、あるいは、金融機関ももう少し起業家っぽいことをやらなくてはいけないとか、期待される役割ですので、全部やる必要はないとは思うんですけれども、地域、地域によって役割の幅というのは違うんじゃないかなと。むしろ、重複する部分の方が目的を共有したりとか進めていく上では大切なんじゃないかなと思います。ただ、役所的な書類としてはこう書かざるを得ないんだろうなということは重々承知しているつもりではあります。
【須藤主査】  どうぞ。
【串岡委員】  私もずっと役所にいたのであれですけれども、地域科学技術イノベーションって、イノベーションという言葉がどれだけ自治体に浸透しているのかというのをちょっと思っていまして、多分重要だと思っているけれども、じゃあ、実際にそういう組織の仕組みがあるかどうかということだと思うんですね。
 私は平成22年頃から担当者として、ひろしまイノベーション推進機構という組織を作りましたけれども、それ以前は、国でも、産業革新機構という名称で、実は横文字がだめだったので、こちらは、イノベーションということで絶対やりたいということで、イノベーション推進機構にしたことがあります。国のレベルでもイノベーションという言葉は、「官民イノベーションプログラム」だとか、「科学技術イノベーション」というような言葉で、最近になって、はやっている言葉だと思うんですね。これを、もっともっと自治体レベルで浸透しないとなかなか具体化しないのではないかというのが1点。
 それと、自治体は自治体として、文科省がやられるのであれば、やっぱり自治体は圏域を考えますので、自治体を超えて、ネットワークを促進するような仕組みなり、それを支援する仕組みはなかなか自治体側からは言えない部分もありますので、そういった枠組みを是非やっていただきたい。特に大学に参りまして、広島大学、ゲノム編集って非常に強い分野で、先ほどもクレイグ・ヴェンターの話もありましたけれども、アメリカのクリスパー・キャスナインだとか、そういうところをどうやっているんだみたいな話は、是非地方の大学でも見ていきたい分野ですので、ネットワークの支援ということもお願いしたいと思います。
【須藤主査】  ありがとうございました。この図で、福嶋先生から話のあったスターサイエンティストとかインフルエンサーというのは、どういう位置付けで入ってくればいいんでしょうか。
【福嶋委員】  スターサイエンティストは明らかに大学なんですけれども、企業も興しているというので、ダブる人になるんですね。恐らくインフルエンサーというのも、それぞれの自治体にもいるし、大学にもいるし、企業にもいるしという感じではあるんですけれども、余り境界が、まさに先ほど西村先生がおっしゃったように、志を1つにして回っていくという感じなので、余り分業を考えた連携ではない役割ですかね。
【須藤主査】  西村委員の話と両方併せて考えると、こうやって自治体とか、こう切っちゃうのは、少しどうかなという気もするんですけど。
【西村委員】  すみません。私事で申し訳ないです。私は、例えば自治体だったら、今、県の政策の審議の中の議長だったんですね。企業は、三重県の中の4社ぐらいの顧問をやっています。金融機関も今度、主要な金融機関2つと定期的に勉強会をやって、どうやってイノベーションを興すか、やります。住民は、僕、地域の中に入って、6つぐらいのまちの住民とリーダー研修をやっています。
 だから、そういう意味では、全部を横断的に見ながら総合的に考える人がいて、それがいろんなところで同じような話をしまくると、他の人たちと同じような共感を持っていく。こういう雰囲気作りですね。
【須藤主査】  縦に横断してできるような人ですね。
【西村委員】  ええ。そういう人がいろんなところから出てくるのがいいんですね。
【林委員】  マネジメントプロセスは、例えば各地域、各それぞれの役割を持っている人が集まるチームがあって、それがマネジメントプロセスとして全体のことを考えてさっきのごちゃごちゃしたことをやっていくというのは必要なんだと思います。ただ、組織体としての役割というのはそれなりにかちっとしていないといけないと思うので、だから、組織体としてどうなんですかというのと、それをまたぐ活動、イノベーションという活動をどうマネージしていくんですかというプロセスの話はやっぱり違いますよね。というふうに私は捉えたんですけど。
【須藤主査】  多分、後で出てくる話題かもしれないんですけどね。松原先生どうぞ。
【松原委員】  この図でいうと、私はやっぱりいろいろな現場の調査をしていると、もちろん大学も大事なんですけれども、やっぱり地域の、先ほど着地の話もありましたけれども、地域経済とか地域の雇用につながるような動きというのはやっぱり企業が作っていて、その企業というのは、前回の話でも、大企業もあるけれども、基本的には地域に本社を置いているような地域中核企業と呼ばれるようなものかなと思っています。そこにはかなり歴史があって、技術の蓄積、そういったようなものが脈々とあって、そして、先ほども出ていた地域で一目置かれているような企業。だから、ここと大学とか公設試験研究機関がうまくいっているところというのは非常に活発な地域科学技術イノベーションが生まれているように思います。
 政策が、じゃあ、関わっていますかといろいろ聞くと、あまり関わっていないのが残念なところなので、そこは今後の政策の関わり方が問われるのかなと思います。
【須藤主査】  ありがとうございました。まだあると思うんですけれども、今の議論を頭に置きながら、(2)の方に移ってみたいと思います。意義とか目的の話になると思います。説明をお願いします。
【生田室長】  いろいろありがとうございます。では、引き続き5ページ目の2つ目の小項目の「地域が科学技術イノベーション活動を行う意義・目的」のところにある事務局案を簡単に説明させていただきます。
 先ほどと形式は同様でございまして、丸囲みの中がこれまでの委員から頂いた、関連するような御意見でございます。先ほど少し話ありましたけれども、地域の科学技術イノベーションというのは、科学技術が出発となっているイノベーションでグローバルに展開可能なものと、地域の課題から出てきたイノベーション、地域の不便、不満、不安、そういったものを解決するためのイノベーション、こういったものがあるのではないかですとか、地域の科学技術イノベーションといったときに何をもって成功と見なすのか、目指すべきところを、指標など明確にすべきではないか、そういった御意見もあったかと思います。
 更にイノベーションというのは経済的ニーズの中から生まれるものであって、企業はこの点に敏感であるので、企業の視点をどのように入れていくのか、こういったことを考える必要があるという御意見がございました。
 地域の科学技術イノベーションの目的というのは、国際競争力の強化であって、雇用や付加価値額(金額)といったものに表れるものが重要じゃないか、そういった御意見があったかと思います。
 このような御議論を踏まえまして、事務局としてまず問題提起としては、地域、引っ張っていく中心的な主体としてあえて書かせていただいておりますが、そういった地域が科学技術イノベーションに取り組む意義・目的というものはどこにあるのであろうか、これを問題提起として掲げさせていただきました。
 次のページに事務局の考え方の案を書かせていただいております。科学技術イノベーションというのは、地域の主体が持つポテンシャルを最大価値に引き上げて国際競争力を高める地域「発」科学技術イノベーション。それから、地域の主体が持つ不平、不満、不安、不便、そういった課題を解決してQOLを上げる地域「着」科学技術イノベーション。
 どちらであっても、持続可能な地域経済の発展ですとか、もしくは最近SDGsとかで問われておりますけれども、誰一人取り残さない地域社会の実現、そういったものに不可欠なツールとして、多様な政策課題の解決に寄与するものである。こういった観点は、どちらかというと当たり前と言えば当たり前ですけれども、改めて事務局として再定義をしたいと考えてございます。
 ですから、地域が科学技術イノベーションに取り組む意義・目的というのは、地域の主体となる一人一人の全ての人がいろんな方たちとの関わりの中で、豊かさ(経済的価値)と幸せ(社会的価値)を両方感じながら、持続的な発展と共存を図るため、そういった形で考えてはどうかという形で事務局の案を掲げさせていただきました。
 説明は以上でございます。
【須藤主査】  ありがとうございました。既に(1)のときに議論した内容に近い話もまた出てきていますけれども、もう一度、ダブった御意見でも構いませんので、よろしくお願いします。何かございますか。西村委員が最初に言われた共通の目的とか、その辺に近い話だと思うんですけど。
【西村委員】  私、これ、非常によくまとめられたなと思って感心して聞いていました。一番最後のパラグラフを書けるのは、文科省も大分思い切りましたね、と思いました。これ、非常にいいと思います。
 ちょっとだけ三重県のことを言うと、すいません、三重県しか、私、知らないのであれですけれども、北の方の産業って今絶好調なんですよ。とにかく自動車産業がまだいいのか、10年先ぐらいを見越しても、すごい投資意欲と、今、三重県の工業団地というのは、北西地域、つまり、津から北の方はほぼないんですよね。新しいのを造成したらすぐ売れちゃうというぐらい。
 だから、足場の経済を見ているとものすごく絶好調で、だからどうだという話じゃないんですけれども、少し肩の力を抜いて、地域発イノベーション、地域イノベーションというのは、ゼロから何か作らないと、このまま行ったら日本だめになるという考え方をやめて、地域には地域の財産がいっぱい残っているんですよね、今まで積み上げてきたもの。それをしっかり磨き上げる。今、私たちがいろんな予算を見ていて、県がやっている施策なんかを見ていてやっていると、本当に企業の財務諸表も含めて全部見れるんですけれども、こんなに強い企業がしっかりと定着しているんだというのは、特に三重県の北部では感じることがあります。だから、持っている蓄積してきた技術を磨き続けることというのも、私はこれはイノベーションと言っていけないのかなというぐらいに思っております。
 ですから、飛びはねるような、何か社会を変えていくようなイノベーションというのは、確かに国家レベルでは、自動車産業の次は何するんだということはすごく必要かも分からないですけれども、もう少し地域の場合には、地域をしっかり見通した、持続可能で発展性のということになると、常に一歩リードできるような形を維持できるようなこと、それをしっかり支えるようなことも必要なのかなと思います。決してジャンプアップするような国家的なイノベーションを否定するわけではないです。ただ、地域という視点でどっちかに着目していって重点を置くのであれば、しっかりと地域に根を張った形のイノベーションの在り方というのは見ていってもいいのかなと思いました。
【須藤主査】  ありがとうございました。他にございますか。
【林委員】  林ですが、ちょっと質問というか、はっきりさせたいところは、「発」なのか、「着」なのかというところなんですけれども、地域発でやるということに関してどういう施策をしていくのかというのと、着のために何をやるかって、全く違う活動になると思うんですよ。これをごちゃ混ぜにするとどういうことになってしまうんだろうというのはよく分からなくて、一応ここに書いてあることは、発もやるが、着もやると、こういうことですよね。
 ただ、制度上、制度の話にここから今入るべきじゃないかもしれませんけれども、イメージ的にまだ私はしっくりきていない。発もあるし、着もある、どちらも重要だが、今回は発をやりますというんだったら、やることははっきりする。だから、着をやりますと。これもはっきりすると思うんですが、結局は、例えば着をやりますということになると、A地域の持っているコンピテンシーを使ってB地域の着をやるんだということになると、地域をまたいでいきますよね。こういうイメージを期待されているのか、どういうところなのかなというのがちょっと。
 だから、結局、着が入ってくると、途端に何かそこの地域振興を外から助けてあげなきゃいけない、こういうイメージが出てきて、助けるのは誰ですかというと、他の地域が助けるんです。これこそが地域イノベーションですというふうな言い方をされたいのか、何なのかなというあたりがちょっと分かりにくかったので。
【生田室長】  ありがとうございます。まさに、今現状で走っている施策は、どちらかというと、地域発イノベーション。特にそれもローテクというよりは、かなり最先端の地域が持っている技術を事業化に結び付けようという施策を中心的にやっております。
 ただ、やはり考えてみると、それだけじゃないんじゃないかという問題意識も持っておりまして、特に先ほど主体の中でも議論がありましたように、いろんなステークホルダーが共通の目標を持ってという話ですが、途中で委員の方からもご発言があったと思いますが、共通の地域課題を地域として発見する。その課題をどうやって科学技術イノベーションの力を使って解決できるか、そのようなことをやっていけないかなと考えてございまして、先ほど林委員からの御質問に直接的に答えるとすると、この中で、従来は地域発にかなり偏った施策をやっていたものに対して、地域着の部分にも我々としてフォーカスをしていきたい。その際に、じゃあ、どこからSTI、科学技術イノベーションのネタを持ってくるか、ツールとして持ってくるかという意味においては、地域の中に限らず、当然ながら主体に着目をして、あるところからそれを持ってくる。そういったことも想定しながら考えていきたいなと考えてございます。
【須藤主査】  どうぞ。
【松原委員】  今の林委員からの質問に関連して、直接は地域科学技術イノベーションの世界ではないんですけれども、地域経済成長のモデルでは、基盤産業と非基盤産業の関係というのがありまして、それをちょっと思い浮かべるんです。基盤産業というのは要するに外から所得を獲得してくるもので、地域発でいろいろな形で国際競争力を高めて、地域内にお金をもたらすものです。それと非基盤産業がうまく循環するのが地域経済成長のモデルと言われているんですけれども、それは林委員の言葉でいうと、A地域の中の話であって、今B地域という別の地域を考えると、どういうような地域を想定するかに依存するかなと思うので、その辺を考えないとなかなか難しいのかなと思います。
 そうすると、先ほどの議論とちょっと齟齬が出てきます。ネットワーク型で地域を捉えていくと、地域発はいいんですけれども、地域着になると、先ほどの発言にもありましたように、面的に地域を捉えていくということになる。やっぱり圏域をある程度設定したところで受けていく必要が出てくるということで、そういう面では、発と着というのは、これは非常に重要な問題提起かなとは思うんですけれども、新しい科学技術イノベーションで、地域の中の循環をどういうふうに考えていくか、あるいは、地域と地域との関係をどういうふうに考えていくかということを提起されたものだというふうに思っております。
 それから、後半に出てきた地域経済とか、地域社会とか、経済的価値とか、社会的価値というのも、両者を対立的というか、二項対立ではなくて、どういうふうに相互関係を考えていくかというのは大事な話で、ここもカール・ポランニーあたりから言われているような、地域社会に埋め込まれる地域経済の話とか、何かそういったような議論を思い浮かべさせるんですけれども、是非ここは深めた議論を聞きたいなと思いますし、私自身も関わりたいと思っています。以上です。
【須藤主査】  松尾さん。
【松尾審議官】  1点補足でありますけれども、林先生からありましたように、地域発・着ということで、基本的にこれまで発ということで、ただ一方で、地域の抱える課題とかニーズをどう解決していくかという、これは科学技術の重要な役割でありますので、そういう点でも、今、松原先生が言われたように、いろんな観点で入れていきたいというのが思いです。
 あともう一つ、じゃあ、それを分けた上で、ここで何をするかというのは、これから制度論だと思います。
 一方で、私ども文科省でありますけれども、国全体を見ますと、文科省以外のいろんなところでやっている施策もありまして、そういったときに例えば内閣官房のまち・ひと・しごとでありますとか、いろんなところで、そこはむしろ違う地域のものを導入して、その他のところが、そのまま導入したら、これは金太郎あめになりますので、モディファイして導入させることによって違う地域の活性化を図る。これは他の予算も多分ありますので、そういうのをちょっと俯瞰しながら、科学技術全体としてどういった形で地域発ないしは地域着の貢献をしていくかということは、もうちょっと広い目で見るというのも、私ども、少し考えてみたいということで、こういう課題設定をさせていただいたというふうに私は思っているところなんですけれども。
【須藤主査】  ありがとうございます。今の御説明で、林先生、何か。
【林委員】  いいんじゃないですか。いいんじゃないですかというのは、ここのところ、全体設計していくのは非常に大事だと思うんですね。今まで発で来ましたと。それでできていないところが幾つかあるから、着のイメージでいますよ。ここが委員会としてかなりがっちり意識がそろってくると、多分ここから先の議論がやりやすくなるかなと思いますが、ただ、今の時点では着のところが、どういうふうにするのか。
 だから、1つの地域の中に発と着があるんですと、三重県みたいな場合、南北問題とかあると伺いましたので、これは非常に面白いというか、なるほどそうだなと思います。ただ、地域をまたいで、例えば北海道の問題を九州が解決するんですというあたりのプロジェクトまでいくのかどうかとか、ここら辺はちょっとまだイメージ感つかめないので。ただ、重要だということで、ここをやるんですというのであれば、私はそのとおりだと思います。
【須藤主査】  非常に重要なところですし、多分この後具体的な事例を次回以降やっていきますよね。その中で少し具体例を入れながら議論をすると分かりやすくなると思うんですけれども、その辺、考慮して進めていただきたいと思います。
【生田室長】  はい、承知しました。
【須藤主査】  他にございますか。
【斉藤委員】  「発」「着」の概念について補足させて頂きます。私自身は、「発」は文科省の助成金などを中心に、「着」についても複数関わっています。
例えば、JAXAは、宇宙「着」の議論をしていますし、つくば市においては、「つくば市の様々なインフラを活用して、イノベーションを興したい者を呼び込む」との旗をあげています。弊社の保有する東北のバス会社では、運転手さんを含め人手不足なので、如何にイノベーションを使っていかに持続的にバス運営をするかという東北地域の事業者がベネフィットを受ける地域「着」ニーズがあります。
 ニーズが認識できることは、事業機会がありうることを示しています。それがきっかけとなり事業主体が産まれ、イノベーターたちが集まるという、そういう循環が起きる。
「発」と「着」の間のコンフリクトがあったり、整理が完全に出来ない事象もあるかもしれないが、過去において、地域「発」の視点に偏って政策が打たれていた印象をもっており、それを見直す意味でも、二つの視点を持つことは重要だと考えます。人材不足等で困っているというニーズを持つ地域、あるいは、つくば市やエストニアのように、イノベーションのために地元地域を解放できるところもあるだろうと感じています。
【須藤主査】  ありがとうございました。どうぞ。
【德増委員】  発と着って非常に難しいなというのは、今、私の頭の中でも考えております。私、大学で多摩の経済学を教えているんですけれども、多摩というのは非常にいろんな産業が集積しているんですよね。
 これはもとを考えてみると、戦前、航空機産業が多摩地域に集積してきた。特に中島飛行機というのがでかい航空機を作っていまして、これは1つの産業の資源としてあったわけで、これが敗戦というショックによって全てが閉鎖されてきたということであります。ただ残ったのが技術者なんですね。この人材がその地域に残って、小さな企業を興したり、更にそれを航空機から引き継いで自動車産業にいったり、例えばJUKIなんていうのは、機関銃を作っていたところなんですけれども、そういうのが今、JUKIというミシンになったり、いろんな産業転換があったわけですね。
 これはこの中の発・着の中では非常にいい方向では動いてきたんですけれども、今、着の方で非常に苦しんでいるところはあります。特に日野自動車が移転していったり、他の産業も、東芝がこういう状況になって移転していったり、地域全体の問題としてどうするのかという議論に今なってきております。そこの着のところを一生懸命やろうということで、地域イノベーションも活用して、今まで広域多摩協会というのがやってきたんですけれども、どうしても着がうまくいかない。大学連携がうまくいかない。ここがやっぱり大きな課題になっています。
 いろんな産業、発は出てきております。大学からいろんな発想が出てはきているんですけれども、それが育たないんですね。それは大きなショックがないから。たまたま研究者が一生懸命やっていますということでやってきておりまして、だから、そういうショックがあることが非常に大きな産業の発展の鍵になるんじゃないかと思っておりまして、この発と着というのが非常に難しいなというのが、着のイメージがどうもつかめないなと。多摩協会、一生懸命やってはいるんですけれども、着がうまくいっていないというのが実情であろうと私は思っております。以上です。
【須藤主査】  ありがとうございました。他に。
【西村委員】  着が難しいなと。私も着って何だろうとずっと分からなくて聞いていたんですけれども、不平、不満、不安、不便を解消するということで考えると、さっき途中で林先生が言っておられましたけれども、三重県というのは北と南で全く違っていて、南がもしかしたら着というのが結構あるかなと思っていて、例えば、前言ったかもしれないですけれども、ゑびやという店があって、100年続いたうどん屋が、そこにITの技術を入れることによって、顧客管理だとか、従業員管理だとか、例えば顧客の予測だとかをしていって、売り上げを5倍ぐらいにしていったんですね。つまり、今まで非効率であった田舎のうどん屋がITを入れることによって、今の時代にがらっと変わることによってすごく儲かるようになってきた。
 それは1つの問題解決なんだけれども、実はそこから、今マイクロソフトと組んで、それを1つのパッケージ化をして、各地域、違う地域に対しても展開していこうとしていますね。実際におはらい町という伊勢市の中でも複数社がそれを導入して、変えていこうとしているんですね。ということは、これ、地域着の問題解決をいろんな先端技術を入れることによって解消した。それがそのまま今度は発として展開していくようなことがある。
 つまり、今の課題解決、時代への適応みたいなことがいろんなところで起こっていく。特に一番それが敏感なのが地域であって、時代への適応みたいなことをやっていく、社会変化、背景が変わることに適応していくこと自身が、結果的にはそのことがこれから求められる地域に対して展開するものだと思っているので、これはまさしく成長産業、成長するような新しいビジネスになるんじゃないかと思っています。
 ですから、発、着というのは、確かに区分けは重要なんですけれども、それぞれに最初に目的とされる、一番下に書かれているのは、一人一人の全ての人が他者との関わりの中で豊かさ、幸せを感じながら持続的発展を、その地域の中で共存しながらできていくという、そういう手段としてはこの2つのやり方はありだと思っています。
 私はそれは今、三重県の中で活動している中で非常に実感として思っていることなので、定義付けというのはなかなか他の地域にできないかも分からないですけれども、この考え方は私は正しいのかなとは思います。
【須藤主査】  ありがとうございました。他にございますか。
【福嶋委員】  私も地域着というのがよくイメージがつかめなくて、例えば、いろいろ過疎化が進んでいるというか、少子高齢化が進んでいる、高齢化率が非常に高いみたいな地域って、東北にもあるし、島根とか、秋田とか、それぞれみんな持っているわけですよね。例えば島根で出たような科学技術が秋田にも展開されるとか、そういうことを地域着と言うんですかね、イメージとしては。
【生田室長】  必ずしも他の地域への展開までは規定はしないつもりです。1地域内に展開されることもあり得ますし、その後それがまた地域発になって他の地域へというのも当然あるかもしれません。
【福嶋委員】  基本的にイノベーションって、やっぱりこういった人々の生活を変えるというか、テクノロジープッシュとニーズプルみたいな分け方なのかなと。上の方が地域発科学技術というのは、これはテクノロジープッシュみたいな話をしていて、下はニーズプルみたいな話をしていて、でも、両方一緒のイノベーションだよねというような印象をちょっと受けたんですけれども。
 ただ、両方の視点は絶対にとても重要だと思いますし、特に事業化を考えるんだと、地域着というのが、実はこっちの方が重要なんじゃないかと私は思います。ニーズがない技術というのが結構あるんですね、日本は。用途が見つからないみたいな。だから、こっちの方こそむしろ力を入れて本来やるべきじゃないかなと私は日頃思います。
【須藤主査】  ありがとうございました。この辺はよろしいでしょうか。
 多分これから事例紹介するとき、課題解決に向けた事例を少し入れてもらえると今の話が分かりやすくなるんじゃないかなと思いますので、よろしくお願いします。
 それでは、次に3番目の項目に移りたいと思います。また、説明をお願いします。
【生田室長】  それでは、続きまして、7ページ目の3つ目の小項目、「地方創生の流れにおける地域科学技術イノベーションの位置づけ」のところの簡単な説明をさせていただきます。
 また、先ほどと同様に、丸囲みの中は、1回目、2回目の委員会で関連するような御発言、頂いた御発言を書いてございます。
 例えば地方振興とは、当該地域に定着する人を育てていくことと地域の課題を大学が代わって解決することであるとか、地方創生においては、地方に魅力ある雇用の場をどう作っていくのかが重要、もしくは、地域密着というと、どうしても中小企業に光が当たりがちだが、大企業を巻き込まないとパワフルなものが出てこないので、大企業が持つ拠点の多くは、同地域に大学があるので、それらの研究開発機能を強化していくような立て付けがあるとよいといったような御意見を頂いたかと思います。
 これを受けて、事務局といたしまして問題提起として1つ掲げさせていただきましたのは、地域の科学技術イノベーションというものは、地方に「しごと」を作り、地方への新しい「ひと」の流れを作り、「まち」を作ること。そういうものを目指した地方創生の推進手段として必要不可欠とまで言える要素となっているかどうか。
 つまり、裏を返せば、地方創生の単なる手段の1つ、ワン・オブ・ゼムとして、大きな地方創生という文脈の中に包含されてしまうだけのものにすぎないのかどうかということをあえてこちらの方では問題提起をさせていただきました。
 次のページ、8ページ目に行っていただきますと、ここで事務局の簡単な考え方のまとめの案を書かせていただいております。先ほど来、地域発・地域着で御議論いただいた内容も、こう書いた方が分かりやすかったかもしれないんですけれども、地域科学技術イノベーションというのは、住民ニーズや地場産業に根付いて展開されるニーズプルというものと、大学などの研究機関の持つサイエンスを出発点として展開されるシーズプッシュ、両方あると。
 どちらであっても、このSTI活動の結果として、地域の主体に創業、新しい仕事を作ったり、もしくは安心・安全な暮らしの実現をしたり、そのような意味から経済的・社会的な価値をもたらして、地方創生を推進し得ることは間違いないと。つまり、地方創生を推進しないということは多分ないと。
 ただ、「しかし」の段落ですけれども、やはり昨今、今の時代だからこそ、AI・IoT時代と言われるように、AIの発展によって、我々人間の仕事が、働き方も変わるなど、技術の発展と社会の変化というのがすごく複雑に絡み合って、影響し合って、社会の在り方そのものが、連続ではない、非連続な社会。それで劇的に世の中が変わって、将来予測が困難。こういう時代だからこそ、地方創生の推進に当たっても、目指すべき社会像というものを多様なステークホルダーの間で決めていって、その実現に向けて、あえて既存の考え方や枠組みを打ち破って、新結合による新しい価値創造、こういったものが必要とされている時代ではないかと考えてございます。
 だからこそ、こういった大きな変化が起こっている局面下におきましては、多様な社会課題を抱えている地域の主体は、科学技術イノベーションを必要不可欠な起爆剤、「トリガー」として扱って、イノベーションの連鎖をどんどんと生み出して初めて地方創生というものが推進し得る、そういった時代を迎えているのではないでしょうかという形で、事務局の方はまとめさせていただいております。
 続いて、次のページが、それを模式的に図式化したものでございますけれども、左の方が、従来の考え方でございます。いわゆる地方創生、まち・ひと・しごと、それぞれの項目がございますけれども、これに効果があるツールの1つ、真ん中ら辺にツールが幾つかいっぱいあるんですけれども、その1つとしてSTI、科学技術イノベーションというものが存在していたと。
 しかし今後はこれだけにとどまるのではなく、矢印の右側でございますけれども、地域が地方創生を実現するために、ちょっと過激なんですけれども、STIが爆弾みたいなトリガーになって初めて地方創生というものが推進し得る形なのではないかと。
 下のところ、1つ目と2つ目の四角のところは模式化の図を文章にしたものですけれども、最後の四角のところでございますが、そういった意味から、地方創生に科学技術イノベーションというものが大きく寄与すると考えます。また、先ほど審議官の松尾の方からも、内閣官房等々、いろんなことをやっているという話がございましたけれども、要は、今、関係府省でいろんな地方創生に寄与する科学技術イノベーションというのは当然支援しているかと思います。だけども、文部科学省としてもやっていく意義はあるのではないかと。それはなぜかというと、やはり関係府省が持っているそれぞれの政策目的、内閣府でございましたら、例えば、全体調整ですし、文科省であれば地方大学の振興ですとか、研究開発成果の展開、経産省であれば産業立地ですとか、地域産業の振興、農水省であれば当然農林水産の振興ですとか、いろいろ関係省庁、それぞれ政策目的を持っていますので、そういった目的に基づいて、国家的に連携した上で多様なアプローチ、それを確保して政府全体として多面的に地方創生というものを科学技術イノベーションを使って推進していくということが重要であって、だから、その結果としてシナジー効果も出てきて、政府としての至上命題である地方創生に立ち向かっていくことができるのではないか。あえてこういう形で文部科学省として今回まとめさせていただきました。
 説明は以上でございます。
【須藤主査】  ありがとうございました。ただいまの説明に対しまして、最初の(1)、(2)も含めまして、トータルで議論したいと思いますけれども、いかがでしょうか。
【松原委員】  この最後の図に関わるんですけれども、これ、なかなかいろいろ考えさせる図で面白いんですけれども、私は、地方創生の関係でいくと、ローカルイノベーションの評価委員として関わりましたので、採択された案件を思い出してみますと、余り大学が関わるようなものというのはなかったですね。拠点整備などの場合には公設試験研究機関が中心に関わっていましたが、ここで出てくるSTIというようなものが十分に生かされた形で地方創生に寄与していたかというと、これまではまだまだ十分ではなかったと思います。それは結局、地方創生の仕組み自体が、都道府県とか市町村が中心になって計画を出してきてお金も出してくるというような形での立て付けになっているので、大学がそこに関わるということがなかなかまだできていなかった。
 ですから、これからは、地域と書いてあるんだけれども、地域の中での主体でいえば、大学が地域にしっかりと関わるというような形の中で作っていかないと、右側のものが爆発しないというか、不完全燃焼に終わってしまう可能性があるので、先ほど来出ている、主体間関係の中で踏み込むという話の中でいえば、やっぱり地域の中核企業と大学、公設試がしっかりと連携した形で、科学技術のSTIを生かしたようなものを作っていくんだということ、これは私は非常に方向性としては重要かなと思います。
 あともう1点、内閣府の中に「地方創生に資する科学技術イノベーションタスクフォース」が設けられ、2015年7月~2016年3月まで6回ほど開催されました。福嶋先生も委員だったんですけれども、各省庁の成功事例を並べて、非常に勉強になったんですけれども、その後地域にフォーカスした形での議論に進めなかったので、是非この部分も、事例をこれからまた紹介していただくんだと思いますけれども、議論いただければと思います。
 以上です
【須藤主査】  他にございますか。
【德増委員】  ここで書いてある、8ページの方なんですけれども、先ほどの発と着というのが、これが非常に分かりやすいなという感じがしております。ニーズプルとシーズプッシュというのが両方書いてある。これは非常に面白いんですけれども、発と着がうまく連携できるのかなというのが、私、非常に心配なところがあるんですね。
 例えば地場産業でも、多摩の話をしちゃうと、航空機産業の部品の産業を育成しようということで、地域の産業、地場産業は一生懸命頑張っているんですね。そして、例えばグループを作ったり、これは要するに地域じゃなくて、例えば栃木とか、いろんな広い意味合いで、得意分野のある地域をやっているんですけれども、例えばAMATERASというグループがあって、あと、まんてんプロジェクトなんていうのは新潟の方まで行っているんですけれども、ただ、そういう中で、ひとつ、シーズプッシュがどういうふうな役割をしているのかというのが、私ども、いろいろやりながら見ていると、なかなか見えてこないな。大学がなかなか入ってこれないという、ここのところが何か1つきっかけを作るような仕組みというか、そういうものが必要ではないかなと思っております。
 ですから、いろんな地域イノベーションもやってきたんですけれども、どうも地域に定着するというところでいろんな課題が残ってしまって、張り付かない。地域に根付かないというところがあったような気がしております。以上です。
【須藤主査】  ありがとうございました。どうぞ。
【西村委員】  これは書いてあることはすばらしいんですけれども、科学技術イノベーションということイコール技術とか最先端研究成果ということにずっと置いておくと、さっきお話あったような上滑りが起こってしまうような気がするんですよ。結局それをどう使いこなして地域課題とか地域発で何か変えていけるかというと、誰かのテクニカルというか、人間的な力が必要になってくるかも分からないんですけれども、でも、それもちょっと後付けみたいなもので、我々、地域イノベーションというか、地域をがらっと雰囲気変えたという自負はしているんですけれども、一番大きいのはやっぱり人作りだと思うんですね。
 今、どういう、時代認識と言うとすごく大きな言い方になるかも分からないですけれども、やっぱり皆さん、勘違いしていること、結構多かったんですね。うまくいっていた時代から今の時代、どう変わっているか。これを認識しながら、自分たちでも何かできるんだよねということを一つ一つ具体例を挙げながら示していって、雰囲気を変えていって、自分たちでもできるし、自分たちで組んでいって、全く新しく取り入れていったら変わっていくんだよねということをやればいけんたんですね。
 だから、ここでいう大学というか、文科省というか、そういう形でもし関わっていただくのであれば、科学技術も非常に重要なんですけれども、人作りのところで、そういった科学技術も理解している、社会課題も理解している、地域のことも理解している、その上で何を作り出したらいいかという、そういう新しい想像力を持ったクリエイティブな人材を地域の中にいかに増やしていくかという作業が恐らく大学には求められるのかなと思っています。それは単なる座学による教育ではなくて、もしかしたら現場に入り込みながら実践の中で取り組みながら、そういうことをともに考えながら作っていくような雰囲気を作ることなのかも分からないです。
 これは手前みそで、私たちがやっているのは実はそういう作業なんです。そのこと自身が政策に合うかどうか、私も分かりません。ただし、結果として、地域の中の雰囲気という言い方かどうか分からないですけれども、それが変わったときに物事が変わってくるなというのは実感として持っていることです。そこに、これは言っていいかどうか分からないですけれども、独立国家的な意識と言ったら怒られるかも分からないですけれども、その一体感みたいなものが何か次の社会を作るし、次の時代を作るんだというふうなところまで昇華してくると、放っておいてもオーケーなんですね。
 だから、それを政策に落とし込むとか、ほかの地域に合うかどうか、私も分からないし、どういうのがトリガー的になるのかも分からないですけれども、落とし込むときには形式ではないような何かがあるような気がしてきたんですね。
 この考え方は非常に納得します。
【須藤主査】  どうぞ。
【林委員】  西村委員がおっしゃった人材のところが非常に重要だと私も思います。大学が、例えば科学技術教育をするんですと言うんだったら、ピンときて、何かやるでしょう。イノベーション教育をするんです、それをするのが大学ですと言った途端に、ピンとくる大学の人たちって余りいないと思います。ところが、そういうことをやっている日本以外の多くの大学、あるいは工科大学が、やはりイノベーションの拠点になっているのは事実ですね。
 ですから、そういう視点を今回の地域科学技術イノベーションで入れるんですというと、ちょっと時間かかると思うんですけれども、とても大事なことじゃないかなと思います。
【須藤主査】  他にございますか。
【金子委員】  このページのニーズプルとシーズプッシュと、着と発のところが、どういう関係なのかなというのを先ほどから考えていたんですけれども、大学等から出てくるシーズプッシュのところに本当にニーズがあるのかどうなのかというところを検討することによって事業化する。こちらの方がだんだんできてきているんじゃないかなという気がしていて、ニーズプルのところに技術を結び付けていく。このニーズに実はある技術というのを結び付けていくというところがちょっと弱いんじゃないのかなというような印象を受けていまして、そこのところが、人が関わって結び付ける作業をしていくということによってお互いに生きていくというところが出てくるのかなという感じがいたしました。
 そういう意味では、そういうことを見ていける人というのが重要なのかなという意味では、おっしゃるような、いろいろ見れる人という方の存在というのは非常に重要なのかなという気がしております。
【德増委員】  ちょっと1点だけ言い忘れたんですけれども、最後の表、中にあります、一番下に関係省庁との政策目的、ここら辺の連携というところで、私、今、経済産業省でやっている地域未来投資促進法の中で、2,000社ほどの中核企業、これをどうしようかという、育成しようというプロジェクトというか、経済産業省の中でやっているんですけれども、これはやっぱりニーズプルという中でうまく活用していかないといけないんじゃないか。こんなこと言うとまた経済産業省に怒られるんですけれども、じゃあ、2,000社、抽出して何するのというのが、全くその後が見えていない。頑張れ、頑張れと。それはもちろん税制の恩典を付けたり、いろんなことするんですけれども、技術的なところからどういうふうに育てていくかという。要するに、育つか。育てるなんておこがましいんですけれども、その企業がどう育っていくかというような、そこに着目していかないといけないなというのがありまして、それで経済産業省を見ていると、なかなかない。そこら辺をうまく連携をとっていくということが必要ではないかなと思っております。ちょっと言い忘れたことなので、すいませんでした。
【須藤主査】  他にございますか。
【松原委員】  地方創生のところで言い忘れたことがあるんですけれども、地方創生施策、いろいろなものがこの間走ってきていましたけれども、私の関わりましたのは、政府関係機関の地方移転というのがありました。文化庁が京都というのが話題の中心になっていたんですけれども、実はその中で国研ですね、国の研究機関の地方への移転というのは相当数、一部移転なので余り注目されない部分はあるんですけれども、国の機関がかなり地方に移転をしてきまして、それが種がまかれていて、芽が出てきているところもあるし、やっぱりそれを育てていくとかなり地方創生に大きな効果を発揮すると思っていまして、まだ道半ばではあるんですけれども、そういうものもSTIの起爆剤として有効なものがあるかなと思います。具体例はいろいろあるんですけれども、いろいろ注目していただければなと思っています。
 そのときに、個別の都道府県ではなくて、地方ブロック圏域単位のあたりのところに協力を持つようなもの、ここも私は注目することが大事だと思っています。以上です。
【西村委員】  1点だけ。時間がないと思うので、申し訳ないです。
【須藤主査】  まだ大丈夫です。
【西村委員】  1つだけちょっと。感情論とか、いろんなことを言ったんですけれども、一番大事なことを言うのを忘れていまして、やっぱりどんなニーズプルであろうが、シーズプルであろうが、プッシュであろうが、そこでやるのはやっぱりビジネスなので、ビジネスとしてのレベルはどんな地域でも必要だと思っています。私たちもやった中で、いろいろなことをやって失敗もたくさんあります。失敗の大体のものというのは、中途半端なものが全部失敗になっていくんですね。やっぱりどんな地方からニーズに対していろんな解決をしても、それがクオリティとしてちゃんとした質と熟度がある程度の水準にいかないとビジネスとしては成り立たないので、ビジネス化の閾値みたいなのは絶対あるので、そこはどこかに厳しい目を持つべきだと思うんです。
 そういう意味でいうと、さっき言った人材作りのところ、僕はニーズプルできる人材、地方も含めて本当にいないと思います。ただし、その人たちが何となく、ちょっと言い方は悪いですけど、ごっこみたいな、何となく何とか缶詰作ってみたりとか、何とかジャムを作ってみたりというのがあって、そこでは無理なんですよ。やっぱりそのレベルは、きちんとビジネスを分かる人たちが入り込んでいってニーズプルしないと多分だめです。
 そういう意味の人材作りのところのレベルの高さというんですかね、あっていいし、国際関係のことがほとんど出ていないんですけれども、海外とも対等に地域からやり抜けるぐらいの実力を持つような地域にしなきゃだめですよ。そういう意味でいうと、科学技術イノベーションというのは、クオリティ管理のためにもトリガーとして出てくるんだけれども、そのレベルは世界に通じるものでなきゃだめだというぐらいのことを逆に言い切らないといけないかも分からないです。それもくっついての今のお話じゃないかなと思います。
【須藤主査】  最後の図のトリガー、起爆剤ですよね。これをどういう仕組みで作り上げるかというのが、多分最終的なⅠのところの究極の目的になってくると思うんですけれども、先ほど人材の話も出ましたし、これから議論したいなと思います。
 事務局の方には言ったような気がするんですけれども、STIからいろいろ広がっていくと言うんですけれども、国のいろんな科学技術の大きなプロジェクト、私も幾つかいろいろ絡んでいるんですけれども、もちろん一つ一つのテーマの中には、地方に落とし込むとか、そういうことは書いてあるんですけれども、議論しているうちに結局地方を忘れちゃって、技術に走ってしまって、例えば自動運転でしたら、本来は過疎地に使うという目的、立派にあるんですけれども、高速道路どうやってやろうかとか、それにみんなが集中しちゃっているとか、医療関係でも、いろんなヘルスケアのシステムを作ろうといっても、最後は大きな大学病院をどうやって結んでやるかというような話にいってしまいがちで、やっぱりどうしても、左の図すらまともにいっていないんじゃないかなという気がするんですね。
 しかも、それを科学技術を地方の起爆剤に持ってくるというのは、日本のシステムとしてかなり思い切ったことを考えないと難しいかなと考えていますので、是非、もう1回頭をひねっていただいて、何かいい案をまたこの場に出して議論したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 何かございますか。よろしいでしょうか。
 それでは、どうもありがとうございました。今日の議論はこれで終わりたいと思います。最後に事務局の方からお願いします。
【植原専門職】  資料3をご覧ください。次回の日程ですけれども、7月26日、木曜日、15時から17時を予定しております。場所は省内の会議室で調整中ですので、追って御連絡いたします。
 なお、第5回目、6回目及び7回目までの日程はこちらの資料3に書いてあるとおりでございます。
 次回の委員会から関係機関に対するヒアリングを4回から5回にわたって実施する予定です。
 続いて、資料4をご覧ください。ヒアリングですけれども、こちらの資料に基づいてヒアリングを実施する予定です。次回のヒアリング実施対象機関につきましては、事務局から委員各位に御相談しながら調整させていただきたいと思います。こちらのヒアリングの進め方やヒアリング対象機関に関して御意見や御質問等ありましたら、後ほど事務局までお申し付けください。
【須藤主査】  よろしいですか。
 それでは、今日はこれで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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