産業連携・地域支援部会 競争力強化に向けた大学知的資産マネジメント検討委員会(第5回) 議事録

1.日時

平成27年7月22日(水曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省 東館 3F2特別会議室

3.議題

  1. 第1次提言(案)について
  2. その他

4.出席者

委員

橋本主査、三木主査代理、青木委員、上野山委員、上山委員、魚崎委員、小川委員、川端委員、島崎委員、進藤委員、菅委員、高梨委員、松本委員、両角委員

文部科学省

岸本科学技術・学術政策局次長、浅田総務課長、村田科学技術・学術総括官、坂本産業連携・地域支援課長、山下大学技術移転推進室長、西島大学技術移転推進室長補佐、小河大学技術移転推進室専門官、濵大学技術移転推進室企画調査係長

5.議事録

【橋本主査】    では、定刻になりましたので、ただいまから大学知的資産マネジメント検討委員会の第5回を開催させていただきます。
  お忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。
では、最初に、配付資料の確認をしたいと思います。事務局からお願いします。

【西島室長補佐】    配付資料の確認を行います。まずクリップどめで、まず議事次第が1枚ございまして、資料番号1、「第4回検討委員会で提起されたポイント」という1枚もの、それから、資料2-1、「イノベーション実現に向けた大学知的資産マネジメントの在り方について  第1次提言(概要)」という横のポンチ絵でございます。それから、資料2-2、「イノベーション実現に向けた大学知的資産マネジメントの在り方について  第1次提言(案)」でございます。それから、資料2-3、第1次提言に向けたこれまでの意見の整理。資料3、「『イノベーション実現のための財源多様化検討会』の設置について(案)」という1枚ものでございます。資料4、「『オープン&クローズ戦略時代の大学の知財マネジメント検討会』の設置について(案)」という1枚ものでございます。資料5、「我が国大学の研究経営システム確立に向けた国内外動向に関する基礎的調査について(平成27年度文部科学省委託事業)」、1枚ものでございます。それから、資料6、「研究経営システム構築推進事業(案)」という横のポンチ絵が1枚ございます。それと、資料7、「本格的産学連携推進のためのオープンプラットフォーム形成(案)」という横のポンチ絵1枚でございます。また、今回も机上配付資料としまして、第1回から第4回までの会議の資料をお付けしております。
  以上でございますが、資料はございますでしょうか。
  ない場合でも、途中事務局に言っていただければと思います。以上でございます。

【橋本主査】    ありがとうございます。では、早速審議を進めてまいりたいと思います。前回は、3名の委員の方々、それから、岸本次長にプレゼンテーションしていただきまして、更に第1次提言(案)について御審議いただきました。本日は、その提言案を、前回委員会での御意見、あるいはその後頂いた御意見も取り入れながら修正しましたので、それを議論していただくというのがメーンであります。80分ほど時間を取っておりますので、またいろいろ御意見をいただければと思います。
  その後、この第1次提言の内容を踏まえた検討会の設置等々について事務局から御説明いただくという予定でおります。
  では、議題1の第1次提言(案)について審議を進めたいと思います。まず事務局から資料の説明をお願いします。山下室長、お願いします。

【山下室長】    まず資料1を御覧ください。これは先般の第4回の検討委員会で提起されたポイントということで、皆様の意見を概括的にそれぞれ項目を分けて整理してございます。簡単に見ていただければと思います。
  次に、資料2-1、これは、一応資料2-2の報告書の概要を簡単にまとめたものですが、報告書の御説明をちょっと詳しくさせていただいて、これについてはそういう概要をまとめたものですということで、修正した方がいいのではないかということがあれば、御議論いただければいいと思います。
  資料2-3は、資料2-2を作るために、整理したもので、これまでの委員会の中で議論いただいたものを項目ごとに簡単に皆様の意見を整理したものです。どういう意見が出たか、又は報告にはこういうところが足りないのではないかというところを確認いただくための便宜的な参考資料ということで2-3を御用意させていただきました。
  資料2-2の方を中心に説明させていただきます。資料2-2を御覧いただけますでしょうか。前回資料との違いの部分を特に重点的に説明しようと思います。まず資料2-2のタイトルでございます。先は「未来志向の大学知的資産マネジメントについて」というタイトルにしておりましたけれども、もう少しパンチのあるタイトルがいいかなと思いまして、事務局で「イノベーション実現に向けた大学知的資産マネジメントの在り方について  第1次提言(案)~未来志向の大学の研究経営システムの確立に向けて~」という形に変更してございます。
  次に、1枚めくっていただいて目次のところでございます。先般との違いは、特に変わったところというと、「はじめに」、それから、2、3、4、5、6で終わっていたんですけれども、今回は、「おわりに」というものを付けて、今後の課題や、この提言の簡単な概要的なところを最後にまとめているといった部分を付け加えております。あとは、目次のところの細かな言葉、表現ぶりのところが若干変わっているというところでございます。
  次に、「はじめに」のところでございます。それほど大きな変更はございません。あえて言いますと、真ん中ぐらいのところでしょうかね、「また、近年の国立大学」うんぬんというところがありますけれども、その後、4行下のところで、「以上で述べたようなイノベーション創出に向けた経営改革や財務基盤の強化を進めていくためには」というようなところが、表現ぶりとして若干足してある部分です。
  次に、2のところでございます。2のところについてはほとんど変わっておりません。(4)の「本検討会の位置付け」ということについて、(1)から(3)のつながりを意識して、もう少し具体的な具体化が必要ではないかという御意見を頂きましたので、その部分の文章を補足して修正してございます。
  次に、「議論の前提としての留意点」のところでございます。大きく変更したところは、ページの6のところですね。参考1で日本の研究開発の流れのところで、企業の方から2.5%だけ大学に流れているというところに加えて、ほかの国の状況、他国と比較して日本のところがどうだというところがより分かりやすくするために、6ページのところで、米国が例えば5.2%、ドイツだと14%、中国だと35.3%、企業の研究開発費が大学に流れているというところが分かるような形で図を追加してございます。
  次に、7ページの「全学的な知的資産マネジメントの必要性」のところでございます。これについては、内容的には大きな変更はないのですが、文章としての流れをもう少し工夫した方がいいのではないかということで御意見いただきましたので、文章を整理して、言葉を足したりしているところでございます。内容的には大きな変更はそれ程ないと思っておるところです。
  そして、次、10ページのところでございます。5の「イノベーション実現に向けた効果的な産学官連携の在り方」というところでございます。以前は、ここは「新たな産学官連携の在り方」というタイトルにしていたのですけれども、「新たな」というよりも、これまでもこういうことはやっていたけれども、むしろイノベーション実現に向けたというメッセージの方が重要ではないかということで、タイトルを変更してございます。
  (1)のところですが、組織と組織における産学官連携の進化・深化の必要性ということを書いていたのですけれども、進化と深化という、言葉遊びではないのですけれども、漢字的には意味があるんですが、読みにくいので、「深化」という、深くするというところだけを取り上げて、「深化の必要性」という形にしてございます。
  (3)の「産学官連携活動に参加する学生への支援」のところで、二つ目の丸のところです。ここの「一方で、学生や」というところで、学生に学部生を含めることについては少し懸念があるということで、学生の定義を、博士課程や修士課程の学生として明確にしているところでございます。
  次に6の「イノベーション実現のための財源の多様化」のところでございます。1の前のところに、なぜ財源の多様化をしないといけないかというところを前にまず書いて、それから間接経費の取扱いの方向性、それから(2)として民間企業から大学への寄附の取扱いの方向性というところで書いているところでございますが、特に(2)の寄附の部分、取扱いの方向性のところを先般の第4回の資料に比べて、大幅に拡充して書き込んでございます。第4回での議論の事例等を盛り込んで、寄附について膨らませているところが大きな変更点になっております。
  また、16ページのところに参考として、現状の大学における寄附税制、優遇税制の概要も併せて付けてございます。
  最後の「おわりに」のところは、これまでの提言(案)にはなかったところでございますけれども、報告書のポイントの部分を更にまとめたことと、なお、第1次提言を踏まえてこういうことをやっていきますよということを更に書き込んでいます。18ページのところで、第1次提言で言及できなかった事項も含めて、今後、制度上の課題なのか、運用上の指針や具体例を示すことによって解決の道が開かれていく課題なのかといった観点から更に分析・検討を進めて、引き続き必要な議論を更に今後やっていきますよという点を加えております。
  先般の金曜日に皆さんに送った提言(案)から表現ぶり等を更に修正しているということがほとんどでございます。以上です。

【橋本主査】    ありがとうございます。今御説明いただいたように、前回たくさんの御意見を頂きましたので、それを取り入れるようにしました。また、それ以降も個別に御意見をメール等々で頂いておりましたので、その中で、全てではないですけれども、私と事務局の方で話し合って、取り入れられるものを取り入れたと、そういうような形になっております。御説明から分かりますように、流れをよくしたことに加えて、大きく変わったのは、特に間接経費と寄附のところです。間接経費の話は今既に経済界との意見交換のような様々なレベルで始まっているところでもあって、書き方も非常に注意を要するところでもありますが、この辺と、それから寄附については、意義付けや取扱い等々について大幅に書き加えられたということになっています。
  山下室長、特に間接経費のことに関しては、この書きぶりについては、文科省の中では一応合意は得ていましたでしょうか。

【山下室長】    合意は得ております。

【橋本主査】    ここは今申し上げたように非常にセンシティブなところでもあるので、今日出ている提言(案)は、そういう意味では文科省の中では合意は得られていますか。

【山下室長】    文科省の中では少なくとも2回ほど提言(案)を照会し、確認していただきました。

【橋本主査】    分かりました。では、ここから後は自由に御意見いただいて進めたいと思います。時間は十分にありますので、どのような観点からも、どなたからでも結構でございます。菅委員、どうぞ。

【菅委員】    14ページの、一番気になったのですけれども、14ページの下、寄附の最後の文章のところですけれども、「そのため、翻っては将来的な寄附を行う者の利益にもつながりうるものである」と。確かにそういう議論をしたのですが、恐らく寄附をしている者というか、企業とか、そういうことではなくて、企業界というか、寄附する個人の人の利益になるのではなくて、その人が属する全体の、そういう感じだと思うんですね。多分個人に……。

【橋本主査】    個人ではないですよね。

【菅委員】    個人に返ってくるようにというふうな捉え方をされると多分間違った考え方の寄附になってしまうので、寄附を行う者ではなくて、業界にとか、そういうもう少し広いところに返ってくるというような意味にした方がいいかなと思います。

【橋本主査】    分かりました。ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

【高梨委員】    前回参加できなかったんですが、届いたものを読ませていただきまして、一つだけ少し気になったことがありました。もしかしたら議論されているかもしれないんですけれども、6ページのところから始まる全学的な知的資産マネジメントの重要性の認識の拡大ですね。ここから次のページ、7ページですね。7ページの下から2番目の丸なんですが、「こうした点を踏まえれば」というところで、将来の大学の知的マネジメントに携わるようなうんぬんで、教育する機会やシステムを積極的に設けていく必要があるというくだりなのですけれども、そこに加えて、例えば評価システムとかを入れた方がいいのではないかなとちょっと感じました。

【橋本主査】    1ページずれていますね。前回の資料のページで言っておられるので、ちょっと場所が違うようです。

【高梨委員】    違いますか。
  ごめんなさい、8ページの方の一番下の丸です。すいません。「将来大学の知的資産マネジメント」のところで……。

【橋本主査】    8ページの一番下の丸ですね。

【高梨委員】    はい。「携わるにふさわしい優秀な教職員に対して」というところなんですけれども、教育する機会やシステムを積極的に設けていく必要がある。教育の機会と、まあ、システムというのはよく分からないんですけれども、その中に、こういうことをする人たちの評価システムの構築というのが必要なのではないかなと思った次第です。ただ単に教育するだけではなくて。

【橋本主査】    そういう人たちの評価をしなければいけないということですね。

【高梨委員】    はい。そうですね。評価があって初めて人間、次に向かうと思いますので。

【橋本主査】    はい。事務局いかがですか。

【山下室長】    9ページのところの一番下のパラグラフの「なお」の前ですけれども、「知的資産マネジメントに携わる教職員の業績をこれまで以上に高く評価していくことも求められる」というニュアンスで書いたつもりなんですけれども。

【高梨委員】    すいません。じゃあ、それでよろしいかと思います。古いバージョンを見ていたようなので。はい。ありがとうございます。

【橋本主査】    ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

【小川委員】    それに関係して、私も言おうと思っていたんですが、ここの中に、ここに書かれている一つ一つを見れば非常にすばらしいことで、是非やっていただきたいと思うんですけれども、やっぱりやる人、大学の人が自分でやらなきゃいけないですよね。大学の先生の権限を強化する。これはもちろん重要ですね。それから、先ほど優秀な人を高く評価する。これも重要なのですが、実は大学の教職員、それ自身の業績評価をどうしていくのかと。例えば2003、4年ごろでしょうかね、ドイツで大学改革を大規模にやりましたね、たしかね。そのときのそれまでの評価というのは、みんな、論文の数とか、クオリティペーパーを幾らやったとか、そればっかりだったんですね。それが、ちょっと記憶が定かではないのですけれども、やはり産業界の貢献とか、そういうことに切り替わっていっているんですね。現在、それから10年たって完全にそうなっているそうなんですね。もちろん学術的論文も重要ですよ。
  そういう先生方といいますか、評価をして、それで誘導して、誘導って失礼ですけれども、そうしないとなかなか組織というのは動かないのではないかと。ドイツは10年かかったそうです。どうもドイツはアメリカからまねたんじゃないかと言っていましたけれども、もし御調査なさってないとすれば、そういう調査を今後続けていくことが重要ではないかなという意見でございます。

【橋本主査】    ありがとうございます。実は私、先週ドイツに行って、その調査をしてきたところなのです。ドイツでは大変産学連携がうまく進んでいるように見えます。これについて、産業界側から見た調査は随分昨年あったのですけれども、大学側から見たものがないように思って、ドイツ大学協会の会長やドイツ工学アカデミーの会長、あと、マックス・プランクの所長にも会ってきました。かなり重要人物とお会いしまして、どういうふうに評価されるのかというのを中心に調べてきました。
  小川委員のおっしゃるとおりでして、まず、論文は重要だけど、数ではないということを明確にしたと言っていました。それで、何年かに1報、すばらしい論文が出ているということが重要で、たくさん出していればいいということでは決してないということを明確にしたそうです。では、それをどのようにして定量化するのかと聞きましたら、そういった評価委員会みたいなのがありまして、そこで決めているそうです。きちっとした定量的な評価軸というのは付けられないけれども、人が評価すれば確実に分かるということで、まず論文について一つ評価を行う。
  もう一つは、やはり産業界からの評価で、これをどうするかというと、産業界も含めた外部資金をどれだけ稼いできているかということが評価軸の一つのようです。結局その研究者のアクティビティという面では、ベーシックであれ、アプリケーションであれ、外部資金をどれだけ獲得できるのかというのはかなり客観的な評価なので、それを入れたということをやっていますね。
  更にもう一つ、興味深かったのは、マックス・プランクの若手等の評価にはどれだけ教育をしたかということが評価軸に入っているそうです。それは、すぐれた研究者であれば、必ず大学から呼ばれて非常勤講師であったり客員教授であったりするので、それが非常に大きな軸になっていて、教育というものの評価もしている。だから、3分の1ずつ入っているんだということを言っていました。もちろん大学によっても多少違うのかも分からないですけれども、基本的な考え方はそうみたいで、論文偏重を大きく変更したということが一つのポイントのようです。
  それが可能になっていて、皆さん口をそろえて言っていたのがすごく印象的だったんですけれども、産業界とアカデミアの間で相互の信頼関係が確立しているのだと。産業界はアカデミアを尊敬しているし、アカデミアは産業界を尊敬していて、そのミューチャルな信頼関係がある。これはどうやって作ったのかというと、これは歴史的なもので、今始まったことではなくて、もともとドイツというのはそうだったと言うのですね。ただ、10年ぐらい前から明確にそれを意識して、そういうことをしっかりと評価軸に入れていこうということをしたそうです。これは非常に重要で、ものすごく難しいことだなと。我が国において最も弱いところだと思いました。
  そういうようなこともありまして、確かに大学の評価、大学人の評価ってずっと言われ続けているわけですが、この前まで高等局の筆頭課長だった浅田さんがいらっしゃいますが、どうですかね。やはりこの辺でしっかりとしないといけないと思うのですけれども。せっかくですから、御意見を是非浅田さんからお願いします。

【浅田課長】    大学の教員の評価について、今、御意見、それから、お話があったようなことというのは前から言われていますよね。研究面の評価もそうですし、社会に対する貢献といったこと、それから、大きな論点として、特に教育面への評価がこれまでは薄いのではないかということはずっと言われ続けてきています。文科省も様々な場でもそういう議論もされていますけれども、私個人の意見を言えば、本当はそういうことを文科省なり外なりから言われてどうこうというよりも、本当は大学人の世界の中からそういうのが出てきて、具体的な動きになっていかないものかなと個人的にはずっと思っています。

【橋本主査】    でも、10年たって変わってないのですよね。この事実を見つめないといけないのかなと思うのです。おっしゃるとおりで、そういう議論は大学の中でもあるのですが、結局それが残念ながら具体的な動きにまではいかない。こういう話ってやはりボトムアップ的には決まらないなというのを最近思っていまして、この提言書はどうですか、そういうところが入る余地ありますか。でもこの委員会で取り扱うこととは少し違うかもしれないですね。

【山下室長】    ただ、今のような話というのは、この委員会の中では、例えばそういう問題というのは言われている部分があるかなとは思っています。ただ、今回の報告書の章立てみたいなところには明確には入れることは難しいかなと思っていますけれども、射程とすればそういう部分もあるのかなと思っています。

【橋本主査】    はい、どうぞ。

【川端委員】    大学側から。今、評価というところ、ここ2年、3年ぐらい、大学改革が叫ばれてから、大学ごとに強烈に変わってきております。例えばの話ですけれども、まず個人の評価という意味では、要するに、賃金に反映させるというのが一番ダイレクトで、ただし、余り露骨にやると、労組との関係が出てきて、そういうのをワープしながらどのようにしてやっていくかというところで、例えばうちの大学の場合は総長賞というのを作っています。それが数年ぐらい前から数十人だったものを100人規模まで増やして、その基軸も、今まで論文、論文と言っていたのを、教育と、それからイノベーション関係、要するに共同研究であるとか、産業界との話であるとか、そういうものをスコアとして全部並べて、上から何人といった感じでバーンと出していく。それをホームページとか、様々なところに公表して、こっち側に誘導していくというような話をやっていて、それはうちの大学だけではなくて、いろんな大学でこういうような取組がやられつつあるという、そういう動きがあるということは御理解いただけると。
  それから、もう1個。今の話は個人に向かっての話です。もう一つは、そういうものをプロモーションするに当たって、今度は部局の評価という話で、実は機能強化と言われているお金の一部をそういうようなもので部局を誘導していく。そういうマネジメントをやったところにお金の再配置をしていくというような動きをやっているというのが二つ目です。
  最後は、若手の部分においては、これは大学のレベルをちょっと超えていますけれども、テニュアトラック事業という話が今から10年ぐらい前から国立大学の中で、私立も入っていますね、やっているのですけれども、そこでは、ただ若手はばんばん自立的な研究をさせるんだ、どんどん研究だけやっていればいいんだという話にはならなかったんです。いろんな議論の中で出てきたのは、その後テニュア職に就いて、例えば准教授になるのであれば、間違いなく教育の業績というか、経験だとか、しっかりしたものを持たない限り、テニュア職にはならないだろうというので、2本基軸でいろんな評価だとかがやられているという。
  という意味で、一つのラボの中でくるくる回るインブリーディング型の話というのを突き破るような話というのは、そのような形でいろいろなされている。ただ、それがどこまで広がっているかとか、大学の規模によってどのレベルまでやれるかというのは、多分大学の余力や、いろんな力の問題にも関係するのかなとは思いますけれども、恐らくそういう調査をいろいろされたら、今非常に動いているところかなと思います。

【橋本主査】    ありがとうございます。いろいろ動いているのはもちろん知っておりますが、それが社会から求められているレベルにあるかどうかというのは全く別の話でありまして、私が参加しているほかの会議でもそういう議論は随分されています。いろいろ調査もしていますが、それでは不十分だという意見が強いのです。これをどういうふうに考えるか。やらないで十分だという選択肢ももちろんあるわけです。それは各大学が自由に選んでいただければよいという方向で、そういうことも含めた大きな変革をやっていこうということで、運営費交付金の会議等はそういう議論を随分してきているわけです。
  ですから、自由だからどういう選び方もできるのです。社会で求められているレベルがどのレベルかというのはまた別の話といいますか、そのレベルを超えていると私は理解しておりますので、今の議論もその中でしているつもりであります。
  魚崎委員、どうぞ。

【魚崎委員】    評価について今の議論は学内では給料に反映するというような話ですが、教授になっている先生はいいとしても、若手の教員が気にするのは、別の大学でのプロモーションにつながる評価だと思います。人事選考が学科の教授会で行われる場合、どうしても業績(論文)中心になると思いますが、その学科なり大学がどういう方向を目指すのか、そのためにこういう人を採るのだという明確なポリシーができてくると、業績中心主義も変わるのかもしれません。そういう意味で、大学自身のポリシーメーキングが必要だと思います。

【橋本主査】    ありがとうございます。評価の話は深いので、幾らでもありまして、例えば今、アクティビティの高い人を評価するシステムはあるけれども、アクティビティの下がった人をどうするのかという議論なども欠けていますよね。これはものすごく求められているところでして、こういったようにいろいろあるのですが、この委員会のスコープを超えるのではないかと思いますので、これ以上議論を進めても難しいかなという気がします。そういう教員評価等々についてやるにしても、やるのであれば中途半端にやっても意味がなくて、かなり本格的にやらないといけない。重要なのは間違いないので、そのことは提言に書き込んでいただくとして、それ以上はここでは無理かなという気がしますが、いかがですか。特に発言があれば、お願いします。

【松本委員】    委員長がおっしゃったとおりで結構かと思うのですけれども、これは参考までです。何度も言っていますので。民間で基礎研究を受託している、ビジネスをやっているKRIの評価の仕組みというのは、アメリカの研究機関の管理システムをそのまま導入しておりまして、民間から大学が研究受託を増やそうということであれば、少し参考になるのかなと思いますけれども、受託額でもって実は翌年の年収が3割下がったり3割上がったりします、全体として。3割2年続けると半分以下になりますので。ただし、こういうKRIの会社に来ている方々というのは、部長クラスはトップがヘッドハンティングをしていきますので、そういう人材の流動化を、キャリアをこなすような人たちが来るので、それはそれでいいのかなと思っています。そういう管理システムをやっています。
  それともう一つは、評価というのは一体誰がやるのかというと、やっぱりお客様なんですよね。社長の評価ではないのです。要は、お客様が評価をすると。KRIなんかの基礎研究を受託しているところというのは、クライアントですね。クライアントが満足したかどうか。これでリピーターがどうなるかというのは、業績に関わってきますから。
  大学も、お客様は一体誰なのかというところですよね。地域であれば、地域貢献ということで地域の人たちであるかもしれない。大学は、学生、あるいは高校生、あるいは小学生が次のお客様になる可能性もありますし、産学連携であれば企業の方々。こういった方々がその大学の研究者であり教授陣の方々をどう見ているのかというのをどう拾うのかということが非常に大事かと思いますけれども、そういった観点で、民間企業の場合はクライアントが評価する、お客様が評価するということを仕組みの中に入れざるを得ないというところですね。以上です。

【橋本主査】    ありがとうございました。大学が難しいのは、お客様が目に見える人だけじゃないというか、そうではないところが非常に大きいということがあります。三木委員、どうぞ。

【三木委員】    事前に十分に読む時間がなくて申し訳ないのですけれども、全体的にこの1次提言のトーンが、ドメスティックな匂いがかなり強くなってしまっているという感じがしています。冒頭の「はじめに」のところには、当然グローバル化という様々な背景のことが載っているわけですけれども、中の部分になると、かなりドメスティックな話になっていると。せめて「おわりに」のところで、この改革が大学のグローバル競争力の強化のために必要なものであるということを是非とも入れていただければと思います。

【橋本主査】    全くそのためにこれをやっているわけですので。

【三木委員】    その言葉がちょっと抜けているんですね。

【橋本主査】    そうですか。すみません。それは大変重要な御指摘を頂戴しました。

【三木委員】    例えば、もっと踏み込んでいくならば、先ほどのマネジメントの人材育成のところだったですか、先ほど意見があったのは、9ページのところですか、教育ということが書かれていますけれども、この中で当然読めると思うのですけれども、大学の中では一部分では制度上サバティカル・リーブは行われているはずなんですね。ところが、これはリサーチに対するサバティカル・リーブばかりで、例えばマネジメント、プロボストを置いている大学に実際にサバティカルで行ってみるというのもあるわけですね。もっとそういうグローバルな要素を、これは2次提言、次の提言があるとしたら、そちらで入れた方がいいのかもしれませんけれども、そういった要素は少し入れておくことによって、全体的に本来の目標を達成する背景と思想性といいますか、そこをしっかり埋め込んでいくことが大事じゃないかと感じています。以上です。

【橋本主査】    ありがとうございました。大変重要な御指摘で、本委員会の目的はそもそもグローバルな中において大学はどういうふうにイノベーション力の強化を図るかというのが一番の大前提です。そこの部分が不十分であるという御指摘なので、そこは是非しっかり留意していただいて、提言の中身については、今具体的に入れられるものであれば入れるべきですし、それから、今後の委員会において少しその辺を詰めるということもあるかも分かりません。その辺も含めて検討させていただきます。ありがとうございます。
  ほかにいかがでしょうか。

【両角委員】    前回欠席したので、読んできた感想です。一番感じたのが、4の全学的な知的マネジメント資産の必要性と、5以降のイノベーション実現に向けたところのつながりです。ずっと議論してきているので、同じ流れに位置付けたいのはわかる気もするのですけれども、つながりという面ではやはり少し引っかかると思いました。
  というのは、例えば4が全学的な普通の大学マネジメントとどう違うのかというのがいまいちよく分からないというのがあって、本当に大学マネジメントの話にもう少し踏み込むのであれば、抜けている視点もあります。例えば今、国立大学のガバナンスで私が一番問題だと思うのは、大学の長期的な発展に責任を持つ主体がないことだと思っています。例えば学長を選挙ですると、執行部全員が総入替えになってしまう、運営費交付金が減らされるというので、その時々の政策に、短期的な視点で対応するといった感じで長期的な発展性ということをまじめに考えている人が学内のどこにもいない、少なくとも誰も責任をとっていないです。ここに書かれている具体的な解決策は、長期的な発展に責任を持つ主体が考えて、解決すべきものではないかと思います。マネジメントの問題まで踏み込むのであれば、そういう視点が必要だと思いますし、知的資産マネジメントというところにもう少し焦点化して、その分野のマネジメントの本質的な課題を書いた方がよい。プロボストの話も出ていますけれども、この分野の特に経営人材に求められることというのは、大学の経営マターの中でもとりわけアカデミックマターなので、例えばアメリカの大学を見ても、研究大学とかアカデミックマターのことをやっている人というのは実際アカデミア出身の方がほとんどです。外部の人をぴょんと連れてきて何かになっているという部類の話ではないところですよね。というのであれば、アカデミア出身の経営人材をどう育てるかというところにもう一歩踏み込んでもいいのではないかなというような気がしました。
  あともう一つ、最後1点ですけれども、大学のマネジメントの必要性ということで、なぜイノベーション実現が効果的に起こらないのか。特に組織対組織といったところが弱いのかということを考えると、大学の組織が、仕方ないのですけれども、どんどん専門分化していくだけで、それをうまく統合するというところが余りうまくはないというか、そのエネルギーが放っておくと先生たちの中からはなかなか出てこない。どんどんどんどん専門を細分化していってしまって、というところが、大学のマネジメントというか、組織上の課題になって、こういったものがうまく実現しないのではないかなと思っています。
  そういう意味で、もう少し融合分野の研究といったものをどうやって大学の中の組織として作るのかとか、ちょっと今回間に合わないので、後半の部分でそういったものを議論していくのかもしれないのですけれども、知的資産マネジメントということであれば、そういった観点の議論も入ると、もう少し前半と後半のつながりが良くなるのかなと思いました。以上3点、感想です。

【橋本主査】    ありがとうございます。今頂いた最初の件ですが、おっしゃるとおりなのですけれども、難しいですね。要するにマネジメントの話のときには、知的資産マネジメントというのは大学全体のマネジメントの中の一部でしかない。だけど、この一部だけで議論してしまうと駄目で、おっしゃるように、全体があって、その中からきちっと今のこの委員会のスコープのところを攻めていかないといけないのですけれども、なかなかそこがしっかりとは切り分けられない。特に今回のこの委員会では難しいところですね。ですので、ちょっと苦肉の策になっているのかなと思います。今の御指摘をもとに、少しそこを整理していただく必要があると思います。
  また、知的資産マネジメント人材の話は、ここでも議論が十分ありましたし、提言の中にも書かれているのではないかなと私自身は思ったのですが、そういう御指摘がありましたので、ちょっともう1回見てください。
  それから、最後の融合分野等々もここで随分議論したところで、そういうことを誘導するためにも、こういう自分たちの持つ財源があって、それによって新しい分野を引っ張っていくということが一つの大きな目的であるという、そういう議論だったと思います。そこが読み取れないとすると大変まずくて、それは今回の目的の一つだと思いますので、しっかりと入れていただきたいと思います。お願いします。

【山下室長】    はい。

【橋本主査】    ほかにいかがですか。どうぞ。

【進藤委員】    今の件に関連して、金曜日ぐらいに送られてきた提言案においては、ミドルクラスのマネジメントに関わる課題が少し書かれていて、トップと現場の間をつなぐ部局長の横割りの連携の必要性とか、縦割りではなくて、本当に部局の枠を越えられるかが重要とか、誰が本当に融合型の研究を組めるのかというような指摘もありましたし、少しそういう部分が書き込まれていたと思うんですけれども、今、本日提示された提言案を見てみると、せっかくのそういう記述がどこかに消えてしまったのではないかと思ったので、もしここに記載しているというのがはっきりしていれば御紹介をいただけると有り難いなと思います。

【山下室長】    8ページの「部局長レベルや現場レベル」のというところ、8ページの二つ目の丸のところ、「例えば」の後半のところに入れ込んだという。

【橋本主査】    下から3、4行目のところからですね。

【進藤委員】    はい、分かりました。融合とか、横断的なとか、縦割りを超えたとか、そういうニュアンスがもうちょっと入っていくとよいかと思います。

【山下室長】    分かりました。

【橋本主査】    それは今おっしゃったことですね。

【進藤委員】    今申し上げたことですし、ほかの委員の方からも以前に御指摘があったと思います。

【山下室長】    はい。

【橋本主査】    ありがとうございます。ほかにいかがですか。魚崎委員、どうぞ。次、青木委員に行きます。

【魚崎委員】    少し細かいことが一つともう一つあります。8ページの「すなわち」以下のところの文章が少し分かりにくいと思います。「効果的にマネジメントするためには、」まではいいのですが、「理事・副学長等の役員が」、これ、主語ですよね、それが「能力を有することを前提に、大学の運営に関する責任や負担を分担」。これは副学長、役員が分担すると書いているのですけれども、その次に「意思決定に至るプロセスを迅速化する」というところになってくると、これは理事・副学長等の役員がやることではなく、一般論になってくるので、ちょっと分かりにくい。そして、その次に学長はうんぬんなので、ここは整理が要るのかなと思いました。
  それから、気になりましたのは、今は理事・副学長は責任や負担を分担していないかのように受け取れるのですけれども、川端先生は何もやってないのですか。

【川端委員】    間違うと首になります。

【魚崎委員】    何となく今、理事・副学長は何もしていないのかなというふうに受け取られるかもしれないと思いました。

【魚崎委員】    もう一つはちょっと違う話で、12ページの「産学官連携活動に参加する学生への支援」の最初の丸のところで、「産学官連携活動は、学生の教育の場としても重要な意味を有しているが、技術の社会実装の現場に学生を配置し、そこを教育の場として設定することは、民間企業の研究開発に直接従事させることにもなるため」。何となく社会実装の現場とか、その書きぶりが現場に非常に近い感じがするのですけれども、企業との共同研究に学生が入るというのは、そこまで行ってない共同研究もかなりあると思うので、これですと、企業の現場で学生がやるようなイメージでして、そうではないのですけれども、そういうイメージがちょっと出てくるので、もう少しマイルド感というか、もっと幅が広いと思うんですね、学生の関わり方も。と思いました。以上です。

【橋本主査】    ありがとうございます。全くそのとおりだと思います。ただ、企業の現場で行ってやることもありだと。しかし、それはごく一部だということですよね。
  ほかに。青木委員、どうぞ。

【青木委員】    ありがとうございます。漠然としたコメントになってしまいますが、間接経費について大変よくまとめていただいていると思います。資料2-1のパワーポイントの方を見ると、前提として、例えば真ん中のところに、議論の前提として萌芽的研究が重要であるとか、基礎的な研究を大学でやっているということを前提として議論を進めていると思います。先日も会議の際に、間接経費の一つの前提となっているのは、大学で研究をやるということは、大学の研究プラットフォームへのアクセス代だというような考え方が言われていて、実際アメリカで研究していると、教員としていつもそういう意識があって、自分が研究費をもらってくるのは、この大学で研究させてもらっていて、その環境があるからで、自分がもらったお金の一部を大学が取るのは当然のことだと思っていました。というのは、その大学にいなかったら自分は多分研究費は手にできなかったわけですから。
  それをそのプラットフォームへのアクセスと言っていると思いますが、14ページの算定モデルについて検討するというところが、そういうことも入れて算定モデルを検討するということをもうちょっとはっきりしていただけないかなと思うのです。というのは、例えば電気代とか、そういう見えないコストがあるというフットノートに書いてありますが、プラットフォームへのアクセスというのは、例えば基礎数学をやっている先生が同じキャンパスにいるというのは、何かのときに非常に便利で、そういう環境に自分がいるというのが研究者としてプラットフォームへのアクセスだと教員も意識しています。それを、漠然としていて申し訳ないんですけれども、何らかの表現でうまく、パワーポイントでは分かりますが、もうちょっと文章化していただけたらと思います。

【橋本主査】    ありがとうございます。大変重要な御指摘で、そこは研究3局の方でこの間議論が随分ありました。アメリカの研究者は、先生がおっしゃるように、当然のごとく思っているけれども、日本の研究者は自分がこの大学にいるから持ってこられているという意識はほとんどなくて、自分が持ってきているという意識なのですよね。だから、自分が持ってきているのを何で大学が取るんだと、こういうふうに思うわけです。ここは大きな違いで、これはしっかりと整理して、その考え方をまず大学人が持たないといけない。それとともに、それを産業界なり他省庁の方にも理解していただく必要があるということは、かなり議論をしています。これは当然のことと思って、私も産業界にそういうようなことを今ちょっと言っているんですけれども、当然受け入れてくれるものと思っていたのですが、そう簡単ではないですね。ですので、やはりここの部分をしっかりと書き込む必要があると思います。もちろん省内でしっかり調整していただく必要があると思いますけれども、私の理解では、ここはしっかりと共有できていることだと思いますので、今回の提言でも強調していただく必要があるのかなと思います。お願いします。
  ほかにいかがでしょうか。上山先生、どうぞ。

【上山委員】    ずっと議論を聞かせていただいて、それぞれ本当にそのとおりだと思っておりますけれども、特に知的資産マネジメントの必要性というところで、もう少し入れた方がいいかなと思うのは、結局、マネジメントに当たる人たちの権限の問題が少し見えないなと。例えば先ほどからも評価という話がありましたけれども、今の体制でも学部長が、東大の経済などはやっているのですけれども、毎年毎年の教員の業績と社会貢献を考慮した上でボーナスを少し変える。本当に10万円かそこらぐらい変わるだけでも、実は教員の意識は相当変わる。そういう権限を学部長に与えているということですよね。
  日本の場合は、学長もそうですし、各部局のヘッドの方たちも、どれぐらいの権限が与えられているかというと、非常に曖昧になってしまっているために、マネジメント力をなかなか発揮できないということなんだろうと思います。ここで、4ポツのところでずっと書かれていることは、知的資産のマネジメントをすることは非常に重要で、学長の役割も重要で、リーダーシップを果たさないといけないし、理事、副学長もきちんとその役割を担い、かつ、プロボスト的な全学的なことを考慮に入れた上でのマネジメントをやる必要があるということがずっと書かれているわけですが、それぞれの責任あるポジションの人たちにどれぐらい権限が大学の中で与えられるかという。その権限が現状ではそれほど明確でないということを改善していくべきではないかというような、そういうことが少しあってもいいかなということが全体として思いました。以上でございます。

【橋本主査】    ありがとうございます。今の件に対して川端委員、いかがですか。

【川端委員】    今言われたように、業績評価、個人の業績評価をベースに給与の査定、ボーナスの査定、それは多分大学全体でやっていると思います、ほかの大学も。少しですけど。ただ、問題なのは、それのプレゼンが悪いのだと思います。給与表に、少しあなたはすぐれていますと一言書いているだけで、一体何がどうすぐれて、私は何を……。

【魚崎委員】    すぐれてないと書かれたら腹立つ。

【川端委員】    それは余りないんですよ。だから、それはいろんな大学で全部やっている。特にそこをはっきりプレゼンさせる。それから、さっきちょっと私がお話ししたのは、それよりも更にエキストラのお金をどれぐらい積んで、それを皆さんに足すかという、それがやっぱり非常に大切なところだろうと思っています。
  先ほどの部局長だとか、それから、大学の執行部だとか、それぞれが持つ権限。これが今非常にややこしいのは、今まで部局長も権限を持たないで、先ほど主査が言われたみたいに、研究者が権限を持つのですよ。だから、部局長も権限がないし、上も権限がないしという最悪の状態がずっと動いていた。だから、それをはがして、部局長にまず権限を持たせて、大学全体に権限を持たせるという、そこをしっかり表現することは僕はいいことだと思います。
  最後は、やはり年俸制です。今、年俸制がどんどん進んでいるから、必ずこれは業績評価をしなければならなくなって、今までのようには済まなくなります。それが目の前に待っていて、そこにこういうような基軸が思い切り出てくれば、今のような評価がしっかり出ていくと思います。

【橋本主査】    高等局でそういう議論をしています。本日出席しておられる石橋補佐が書いていますので、意見を言っておいていただけると、びしっと入ると思います。上野山委員、どうですか。

【上野山委員】    見させていただいて、特に問題はないと思いますが、ただ、10ページの、企業側の基礎研究費を大学側に取り込むというところの「研究を統括する者が」という部分をもう少し強調されるべきかなと。

【橋本主査】    どこですか。すいません、もう一度。

【上野山委員】    10ページの下の丸の研究統括する者の役割というところでしょうか、これまでの産学連携と大きく異なる点であり、大学が提案していくというところが私は一番ポイントかと思っていまして。そこが本当にできるかどうかがポイントかと。

【橋本主査】    ちゃんと責任を持ってくださいよというか、ちゃんといい提案をしてくださいと、そういうことですね。産業界としては本当にそこを求めているという、そういうことですね。

【上野山委員】    ええ。

【橋本主査】    大変重要なことですね。産業界側からそういう意見が出ているということは、すごく重要ですよね。私たち大学の人間が産業界の言われるままにされるのは困ると言っていますが、実は産業界はそうじゃなくて、もっといい提案をしてくれと言っているということですので、大変重要な視点かと思います。どうもありがとうございます。
  松本委員、どうぞ。

【松本委員】    今の産学官連携のところ、10ページですけれども、ちょっとどこに書いてあるのかと先ほど見ていたんですけれども、先ほどまで実は筑波大学の方々といろいろ議論していたんですけれども、オール筑波というコンセプトを作られていて、前回の委員会でも言ったのですけれども、中国エリアを岡山大学と鳥取大学さんがまとめ上げられたんですね、実は。これは産学連携のためにまとめ上げられた。つまり、企業がそこへ行って、こんな研究をやっている研究者を探していますというニーズの発表会ですね。JSTさんの産から学へのプレゼンテーションの中国版です。岡山版です。そこは大学と高専の29機関、それをまとめ上げられて、そういう方々の産学連携の方々が集まって、そこで企業が行ってプレゼンをするわけですね。これ、地域でまとめるというのはものすごく企業からすると非常に効率的なんですね。つまり、我々のニーズに対してどんなシーズが大学にあるかというのを見つけて、共同研究につなげるという意味では、オープンイノベーションのマッチング的な役割としては非常にいいと。
  筑波は今オール筑波をまとめ上げようと筑波大学さんが一生懸命やられています。こういう拠点ができれば、すごく産学連携は進むと思うのですね。私は2月に大阪市でニーズ発表してくれというときに、じゃあ、大手企業何社か集めていきましょうかという話につながっていくわけですね。つまり、1個の大学だけではなくて、組織間連携みたいなところ。企業のオープンイノベーションは、産学連携だけではないんですよね。企業間連携、アライアンス、これを非常に進めることによって大きな事業を生み出すということをやっていますから。大学も是非、産学連携をより効率的・効果的に進めるため、企業にとってもメリットのある、オールジャパンというと難しいので、地域ごとに、研究機関がまとまる。そういうまとめ役をやる人たちが評価されるというか、企業にとってみたら、産学連携のクライアントを企業だとすると、大学にとってみたら、やっぱりこれは高く評価されるべきですね。そういう方たちがどう出てくるのか、そういうマネジメントができる方が大学にいるとまとめ上げられるので、10の辺りにそんなことを書いているのかなと見ていたんですけれども、そういうことが大事だということを企業は思っているということを御認識いただければなと思います。

【橋本主査】    ありがとうございました。今の視点は大変重要です。ただ、個人でやる話ではなくて、運営費交付金改革のところでもこういう議論があったのですけれども、1大学だけじゃなくて、ある幾つかの大学がまとまってトータルで力を出していくという、その重要性というのが大分議論されています。それは特に産学連携のところに効いてくる話ですので、是非、高等局の方であった議論等も少しトランスファーしてください。
  例えば例として挙がったのは、旧六、長崎大学とか熊本大学とか六つの大学がまとまると、いろんな指標において、実はそのパフォーマンスが東大単独よりも大分いいんですね。ですから、あの辺がまとまると実はすごいパワーになるというような例もあって、そういうのを日本に幾つかクラスターを地域ごとに作っていくというのは今後大変重要な施策になるという方向性が議論されていました。ここでそういうのを併せて出していくのは重要かなと思いますので、是非お願いします。
  島崎委員、いかがですか。

【島崎委員】    ちょっと質問、疑問だと思っていたことは大体触れられたのと、あと、この文章自体は今までの指摘どおりかなと思うんですけれども、人材だけでなく、先ほどあったように、ガバナンスの能力だけでは多分何にも変わらないので、仕組みがないと。仕組みというのは、具体的に言うと評価と権限だと思うのですけれども、そういったものとセット、仕組みとセットでないと多分変わらないのだろうなというのは思いましたというのと、あと、企業との違いでいうと、企業の社長は多分株主と顧客と従業員に対して価値を付けることを多分仕事としているのですけれども、大学の場合は何なのかなというのをちょっと考えていました。

【橋本主査】    そこが難しいんですね。

【島崎委員】    企業は企業で、株主は様々なことを言うし、顧客も様々なことを言うし、従業員も様々なことを言うということを、うまく長期的にマネジメントするのが仕事になっていて、多分駄目だと首になるという、そういうもので回っているんだと思うんですけれども、大学にそれを置きかえると何なのかなというのをずっと考えていて、多分そこが、大学ないしは学長は、その大学を誰に何の価値を付けるのかということを問えないと、多分学内で誰を評価するかというのは決められないと思うのですね。ですので、そこの部分、上位概念というか、そこが何なのかなというのはちょっと、ここで議論する話ではないのかもしれないですけれども、ちょっともやっとしていました。すいません、感想になってしまうのですけど。
  あと、結構特殊な世界だというのは何となく僕は分かったのですけれども、一方で、企業のコンサルをするときも、どの企業もうちの業界は特殊なんですとみんな言うんですね。自分の業界が特殊だと思っているというのは多分どこも一緒で、そこを何かうまく頑張って変えていけたらいいなと思いました。

【橋本主査】    ありがとうございました。大変身に沁みる御指摘です。
  上山委員、どうぞ。

【上山委員】    ちょっと付け加えですけれども、僕、この委員会に出てから、知的資産マネジメントという表現は非常に面白いなと思って、参加させていただいているのですが、先ほどの三木委員の方から、何か世界的な視野がちょっと欠けているのではないか指摘があったということも少し、そのことを少しさっきから考えていたのですが、大学における知的資産とは一体何かということがちょっと見えにくい。それが僕は人的資本だと思うんですよ。大学という、アカデミアというところにおける最大の資産は人的資本、すなわち、研究者。もちろん教職員も含めてですが、そこに属している人間の資産ということこそが。というのは、知識とか技術は装置にあるわけじゃなくて、それを動かし、それによって論文を書き、そして産業界との連携をしている人にある。これがアカデミアというところの他の産業との違いだと。この知的資産というのは、人的な資本をどう育てていき、そしてそれをどう社会の中で活用していくかということになってくると、先ほどお話あったような、人間というのはグローバルになって動いていくし、海外の人間だって引き込まないといけないし、そのような大きな流動性の高い人的資本を扱っている組織としての大学の知的資産のマネジメントなのだというような、そういうメッセージがちょっとないのではないかなという。このフレーズとしての知識資産マネジメントというのはとてもアピーリングなのですが、我々のこの委員会の中で、大学が担うべき知的資産は、若い世代も含めたここに属しているアカデミアの人間の資産なのだと。それは実は激しくグローバルに流動化をしている。そこに直面をしている日本の大学は、マネジメントを本格的に考えなければならないのではないかというようなメッセージなのではないですかね、三木委員もおっしゃってきたように。そこが明確にもう少しどこかで出るといいのではないかなというようなことを思いました。

【三木委員】    今上山先生が言われたことは、多分大学の価値の源泉というのが何かということだと思います。そして、生み出す価値をどう最大化するかという問題。そのときのターゲットは当然社会でもあるし、世界でもあるし、更に将来でもあるんですね。時間軸、空間軸、いろんなものを展開しないといけないんですね。そういう視点の中で一つ一つのことを整理するというのは非常に大事だと思っています。
  組織のマネジメントということになると、私も、十数年前ですけれども、学部長をやっているときには、全学科からかなりのポストを学部長室に、約20ポストですけれども、全部持ってきたわけですね。それ、やろうと思えばできるんですよ。できない、できないと言っているけれども、そんなのは全くうそなんですね。やり方があるのですよ。そういったやり方をしっかり伝えていかないとできないのですね。そして、それをどう活用するかという視点を持ってないとできない。そのときに、当然私自身は、一部分は日本人じゃない人も入れようということも考えましたし、いろんなことをやったわけですけれども、ところが、次の学部長になってしまうところっと変わってしまう。この辺のところが、継続性という問題、これが今大学にものすごく求められているんだと思っています。
  先ほど上山先生が言われたことは、非常に私も同意です。是非そういった観点を、「はじめに」のところの若干の強化と「おわりに」のところに少し入れるだけで十分だと思うので、それがあると次のアクションに、この委員会のアクションにもつながりますし、現場のアクションにも間接的につながるということ、そういうことを期待している次第です。

【上山委員】    もう一つ付け加えますと、結局、人的資本というのがやはり重要だと。この難しい組織というのは、個性的な人間ばかり集まっていますから、その人間たちの極めて高い能力をどうマネージしていくかということの難しさがこのアカデミアにはあると。したがって、この委員会で最初の方に出てきた評価の話につながっていくわけですね。評価をすることが非常に難しいと。しかし、これを突破しなければ大学のマネジメントというのは成功しないと。
  ということでいうと、ここで最初にやった議論の、評価って実は難しいけどやらなければいけないという話と連動してくるので、やはりそういうようなメッセージがどこかあればいいかなと思います。全体としてのこの委員会の中での議論をひとつまとめる方向性もあるかなとちょっと思いました。

【橋本主査】    ありがとうございました。大変いい視点で、大学知的資産マネジメント、その大学の知的資産とは何なのかというような本質的なところなので、是非これは、少なくとも「はじめに」と「おわりに」にはそのイメージをしっかり出して、それを書いた上で中身があるという形にしたいので、上山先生に是非そこを少し書いていただいてですね。

【山下室長】    御相談させていただきます。

【橋本主査】    是非お願いしたいと思います。
  ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。そうすると、大分御意見を頂きましたが、この提言(案)を大きく変えようということではなくて、これに対して今頂いた御意見を付け加えたり、あるいは多少変更したりといった段階になりましたので、よろしければ、これまで頂いた御意見で、最終的な提言書への反映は主査預かりとさせていただければと思うのですが、いかがでしょうか。

(「はい」の声あり)

【橋本主査】    どうもありがとうございます。では、これをできるだけ早く取りまとめて、第1次提言として公表させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  では、続きまして、報告事項について事務局の方から御説明いただきたいと思います。資料7については坂本課長からですか。

【山下室長】    資料3から7までやります。

【橋本主査】    お願いします。

【山下室長】    課長が資料7を説明し、資料3から6までは私の方で説明します。まず資料3でございます。「イノベーション実現のための財源多様化検討会」の設置についてというところで、企業との共同研究の間接経費の話がこの検討会の報告でも出ておりましたけれども、それを具体的に検討する場というところで、こういう検討会を設置して議論を進めようというふうに今考えているところでございます。
  当面の検討事項が、大学と企業等が産学連携を進めていく際の間接経費の算定モデルの検討というところをやろうと。この委員会の委員の方と、また更に大学の現場の理事の方、事務局の方、また、経済団体の方等に集まっていただいて、具体的な検討を進めていき、資料では11月まとめになっていますけれども、年内を目途に結論を出していこうというところで、こういう場を作ろうと考えておりますという御紹介です。
  次、資料4でございます。これは坂本課長から報告いただく資料7にも関連するのですけれども、「オープン&クローズ戦略時代の大学の知財マネジメント検討会」の設置についてでございます。オープン・クローズを実施する大学の拠点、要は、複数の企業が大学の共同研究の場に入ってきて、その中でオープン・クローズ戦略等を採りながら知財マネジメントを行って共同研究を進めていくような拠点というところを実際に動かしていくための中身をどういうふうな形で考えていくのかということを、この秋、8、9、10月ぐらいまでの間で検討していく場を設けようと考えております。また、この委員会の委員の方、及びその他の有識者の方に参加していただいて検討を進めていこうと事務局で考えているところでございます。
  資料5でございます。先ほども一部そういう議論になっていたと思うのですけれども、我が国大学の研究経営システムの確立に向けた国内外動向に関する基礎的調査についてという、委託調査研究をやろうということでございます。要は、諸外国での、例えばアメリカであればプロボストがどういう形で育成されてきて、どういう活動を行っているのかとか、例えば研究経営システムがうまく回っている諸外国の大学の中でどういう取組が行われているのかとか、例えば先ほどの研究者の評価というところも含まれるのかなとは思いますけれども、諸外国のそういう先進事例を調査して、具体的に日本のところで例えば学んで、更にこの委員会でそのモデルみたいなものを例えば検討の参考に供するような形で、更にこの委員会の議論を深めていければというところで、別途委託調査研究を進めますよというところの御紹介でございます。海外調査として、アメリカ、シンガポール、イギリス、ドイツ等の各機関等に調査に行って、いろんなもののベストプラクティスを探ってこようかなと考えているところでございます。
  次です。資料6でございます。「研究経営システム構築推進事業(案)」という資料でございます。これはこの委員会の中でも何度か言及ございました。文部科学省の責任として、大学の研究経営を担うような人材、経営者というような方々を育てるということをきちんとやるべきではないか等々の御意見を頂いていたところでございます。そういうことを行うために、新規事業としてこういうことが考えられないかというところで、我々の方で今検討しているものでございます。

【橋本主査】    来年度予算の話ですね。

【山下室長】    来年度予算です。来年度概算要求に向けて今検討をしているというところでございます。大学の研究経営マネジメントのプロフェッショナルを育成するシステムを構築することを目的として、将来の大学の研究経営の中枢を担う研究者等に対して、欧米、我が国の先進事例の分析など、研究経営に関する知識・ノウハウの習得のプログラムを開発して、試行的に実施するとともに、ネットワークを形成して検討の場を提供します。科学技術政策、研究マネジメントスキルに特化した人材の育成と相互協力の促進、各大学における研究経営システムの抜本的強化を図るというところで、今のところ考えているのが、3年間の事業で3機関程度です。3機関程度という形の事業概要になっておりますけれども、大学と機関に委託をして、そういうカリキュラム等の開発を行っていただきたいと考えているところです。
  具体的なカリキュラムとして事務局で考えているのは、例えば、もちろん国内での演習等、また概論の習得というのがあると思いますけれども、実際に諸外国の、例えばアメリカのプロボストの活動の場に参加して、プロボストがどういう情報をもとにどういう形で考えて、プロボストオフィスというのをどういうふうに活用して、いろいろと大学の経営というところを行っているのかというところを実体験するようなカリキュラムというようなところも構築していただければ有り難いなと事務局としては考えているところでございます。
  資料7についてはお願いします。

【坂本課長】    引き続きまして資料7ですけれども、これも平成28年度の新規施策として検討しているものでございます。本格的産学連携推進のためのオープンプラットフォーム形成事業ということでございます。
  背景・課題のところに問題認識を書かせていただいています。先ほどから知識資産とは何かというところを御議論いただいて、非常に有り難いと思っています。我々も、新しいといいますか、今まである意味、当然個別の要素としては議論されてきたものを改めてまとめて議論するというところの意義をひとつこういった事業でお示ししたいと思っているところでございます。
  知的資産を運用して知的生産を行うという、大学はその場であると言えるかと思うんですけれども、大学の知的生産、論文という意味でいうと、これは日本は世界トップレベルの研究能力、成果を出していると言えると思います。
  しかしながら、イノベーションという文脈、価値創造という文脈で考えたときに、世界トップレベルの成果というのはきちっと価値に結びついているかというと、大きくここに書かれたような問題があって、なかなか結びついてないところがあると。例えば研究については、価値創造という観点からいいますと、最終的に価値を創出する企業等の間で、企業が目標とする革新的技術システムというものを大学が研究能力を組織的に動員して実現するような、そういったプロセスができているのかと。あるいは、大学側も、大学側は単に企業に協力するという姿勢だけではなくて、そういった活動を通じて大学側も成長する。特に研究成果を発表する、また、研究指導という形で、学生さん、これは特に大学院レベルを想定しますけれども、研究指導という形での教育を行うというところ、そういった仕組みもあって、初めて大学がもっと本気になるだろうと。そういったところのプロセス、仕組みというものが十分に設計されていないため、産業界の期待が高まりにくい。あるいは、大学側も、産業界から民間資金、あるいは人材をどんどん導入していこうというインセンティブがまだまだ働きにくいという状況が存在していると我々は分析をしております。
  そういった課題というものを克服するために何をするのかと。これは一言で言いますと、共同研究をプランニングする。具体的なプロジェクトを提案する。実施をする際の様々なマネジメント、知的財産であるとか、あるいは設備の共用、あるいは学生の指導、そういったところのマネジメントシステムをきちっと作るといったことです。今までマネジメントの要素について個々には行われてきたところは当然あるかと思いますけれども、そういったものを組み合わせて総合的に行う、あるいは一部分についてはもっと踏み込んで、ステークホルダーと合意をして、ルールを確立していくというところが今必要とされているであろうというのが我々の問題提起でございます。
  具体的に一つ、プランニングのところで我々が問題意識を持っているところを御説明したいと思いますけれども、資料7の次のページを御覧いただければと思いますが、ニーズブレークダウン例というものがございます。このオープンプラットフォームのポイントは、先ほど表の資料で説明を飛ばしましたけれども、オープン・クローズの戦略です。オープン領域というのは二つの意味がございます。そこで得られた研究成果というのがきちっと公開できるという意味でのオープンさ。更に様々な企業さん、産業界のパートナーを呼び込める。この二つの意味でオープンという言葉を使っていますけれども、こういったオープンの領域。そのオープンの領域の外には当然クローズの領域が存在します。各企業ですから、経済的、実用的価値に結びつけるという意味でクローズの領域が存在すると。この二つをきちっと設計できるかどうかというところのプランニングは、日本ははっきり言うと弱いのではないかというところの問題提起です。
  これはある企業の方から頂いたものを材料に編集をしていますけれども、企業側から見ると、左側から、目標とする製品、今これは全固体電池を挙げていますけれども、そこから目標とする製品を実現するための克服すべき課題、出口課題、更に出口課題を支配する自然現象というのがございます。ここまでは企業側、見えると。では、自然現象、出口課題につながっている自然現象のメカニズム、原理は何なのかと、それをどう制御するかと。ここになると突然企業側も非常に難しいところに入ってきます。
  一方で、基礎と書いてあるこの右側が、これは先ほどの自然現象の解明、あるいは制御するための科学的アプローチというふうに言えるかと思います。こちら側は大学の方々は分かっている。ところが、大学側の先生方も、企業側の出口課題、あるいは出口課題の背景にある自然現象を一つ一つの研究室でアプローチするのは限界があると。これをいかに組織的に動員できるかと。例えば電解質と電極との間の界面の反応とかいうのを、これ、下側に書いてありますけれども、そういったものを、界面の電子移動であるとか、あるいはイオン移動であるとか、界面の組成であるとか、そういったアプローチで、幾つかのアプローチを組み合わせて解析をしていくというふうなこと。
  これが先ほど申し上げた研究能力と総動員というか、組織的動員につながるわけですけれども、こういったマネジメントを大学側でしていただく。そこでオープン領域とクローズ領域を設計して、研究提案にまでつなげていただく。こういったプランニングプロポーザルのメカニズムというものを確立していただく。
  さらに、そういったところで共同研究の契約が成立する。しかもこれはマルチラテラルの協力を想定していますので、そういった場合に、先ほど少し知的財産のお話が出てまいりましたけれども、大学と企業間で、企業からの投資をどんどん呼び込むわけですけれども、投資との関係で成果を大学と企業との間でどのように配分、あるいは共有するのかというところのバランスを取るということに加えて、このプラットフォームが国内外の企業に開かれた、どんどん人材資金を国内外のプレーヤーから呼び込むためには、そのプラットフォーム自身の魅力を高める、そういった知的財産を扱うルール、そういったものも必要になってまいります。そういったところをきちっとルール化する。更に学生さんの指導、これはマスコミからも指摘されているところでございますけれども、情報管理の問題がよく指摘されることでございます。あるいは、教育のところになってくると、企業さんとの間でのある意味利益相反的な問題、教育の中立性をどう確保するのかというところは大学側も非常に大きな関心を持っていると。そういったところもきちっとマネジメントする。
  そういった体制を作っていただけるところです。これははっきり言うと、表側の資料に書いてございますけれども、世界トップレベルの先端技術群を有する大学には是非こういうプラットフォームを作っていただきたい。これは欧米ではこのモデル作りがどんどん進んでいると我々認識しておりまして、こういったプラットフォームを作るマネジメント体制の構築を支援させていただく。あるいは、システムを機能させるためのある程度クリティカルマスを形成するためのパートナーシップを作る。そこに民間の企業からの投資だけではなくて、国もマッチング、どういう形でファンディングをするということで、クリティカルマスを形成し、システムを機能させていただくというところまでを支援するような施策というのを今検討しておるというところでございます。
  こういったところで、大学側も、研究イノベーションだけじゃなくて、大学院生、特に博士課程の学生さんの教育というところ、博士課程の学生なんかは主体性のある研究者として処遇していただくと。で、学位も取得していただくような形で、大学側も本気になっていただけるのではないかと。そういった仕組み作りを進めたいというのがこの提案でございます。以上です。

【橋本主査】    ありがとうございました。これから御質問を頂こうと思うのですけれども、最初に私からコメントさせていただいてよろしいですかね。まず資料3ですが、この財源多様化検討会には是非内閣府を入れてください。外部資金のことに対しては、内閣府に政府から指示が出ているという経緯があります。ですので、もちろん文科省でしっかり検討していただくのも重要ですが、内閣府もしっかり入っていただく必要があると思いますので、是非お願いします。
  坂本さん、何かありますか。

【坂本課長】    ありがとうございます。実は内閣府からも、そういうお話を頂いておりまして、しっかり協力させていただきます。ありがとうございます。

【橋本主査】    お願いします。それから、資料7の坂本課長に御説明いただいたものですが、コンセプトはいいのですけれども、私が心配するのは、こうやってやると、坂本課長の思いとは違うことが現場で起きるということです。大学の人たちはお金が欲しいから、無理やり企業の人に名前だけ貸してもらったり、是非名前だけでもいいから協力してみたいなことになったり、特にニーズブレークダウン型にそれが起きるのです。
  なぜかというと、ニーズブレークダウン型というのは、ニーズがあるので会社が分かりやすいのですね。それで、大学の現場は実は分からないから、無理やり関係者を集めて、何か形だけ作ってしまうということをやるのです。ですから、これもそうなってしまうことを恐れていまして、ちょっとそこを検討してください。
  このコンセプトはすばらしくて、これは高等局でやろうとしている卓越大学院なのです。卓越大学院はこれから議論されていくのだと思うのですけれども、少なくとも私はそういうイメージでいるのです。
  卓越大学院と、それから、このプラットフォーム形成事業。それが手を組んで出されるとすごくいいのではないでしょうか。大学院の方の予算は、大体の場合、研究費が付かないのです。プラットフォームは研究費の予算ですが、こちらは5年とか10年とかそこで終わってしまうので、人材育成にならない。人材育成にするためには、必ず大学院システムと組まないといけないのです。これは、私としては、今伺った瞬間に、卓越大学院と組むとものすごくいいものになる可能性があるなと思いました。そのときには、必ずしもニーズドリブンではなくて、卓越大学院でやろうとしている融合によって新しい分野を作っていくようなことも必要なのではないでしょうか。この委員会でも、上野山委員はじめ産業界の方が、大学は是非新しい分野を作っていくことをやってほしいということを言われています。そこに興味があると、企業は積極的に行くと。そうすると、無理やり言われて嫌々ながら入っていくようなことにはならないのではないかなと思います。この基本的な枠組みはいいので、あと、その中の入れ込み方と、それから高等局との連携、是非その辺を検討していただければと思います。これはそうしたら私、強く応援します。

【坂本課長】    はい。

【橋本主査】    今までとの流れからいったときに、高等局と研究3局の予算を一体化してやっていくというのが今の大きな方向として国として出しているわけですので、そこにぴったり乗る形だと思います。それから、今申し上げたようなことを是非少しヒアリングしていただくといいのではないでしょうか。産業界では今までこういうことをやって、無理やり嫌々ながら名前を貸しているみたいなケースがあるというようなことを言っておられまして、それは本当だと思うのですね。でも、真に求めているところってありますので、きょうも議論が出ましたけれども、そういうのにうまくこれを入れるとすばらしいシステムになると思うのです。まだ中身については十分検討できる段階ですよね。

【坂本課長】    はい。

【橋本主査】    私のコメントですけれども、是非御検討をお願いしたいと思います。ほかにいかがですか。

【進藤委員】    幾つかこの提言案との関係で申し上げますと、まず、資料3の検討会については1次提言取りまとめ(案)にもばっちり明記されているんですけれども、資料4の方は全然書いてないみたいな感じで何かかわいそうというか、少しこれが必要だというのであれば、1次提言取りまとめ(案)に一項を起こしてもいいんじゃないかなとちょっと思ったというのが1点です。

【山下室長】    ありがとうございます。

【進藤委員】    それから、資料5に関連して海外に調査をされるときに、もしよろしければ、もう既にデータとかおありかもしれませんけれども、間接経費の算出に関わる方式やデータの関連情報も併せて調べてこられると、資料3の委員会にも大変役に立つのではないかと思いました。
  それから、資料6と資料7の概算要求については、私どもにとってみると非常に有り難い話ではあるのですけれども、多分最終的にはこういう活動については国からの資金はなしでも持続的にどう回っていくかということが非常に大事なことだと思うのですけれども、この紙を読んでいるだけだとその辺が目指されているのかがちょっと分からない。特に資料7についてはどこにどういうふうにお金を入れるのが効果的かというようなことを含めて、まだちょっと分からないと思います。橋本主査がおっしゃったように、方向性としては非常にいいと思うのですけれども、どういうふうにすれば一番効果的なのかというところは、もう少しよく検討していただいたらいかがかなと思いました。
  つまり、この資料7の説明の仕方としては、例えば大学がいろんなプラットフォームの案を示して、それがコンテストみたいになって、幾つか国に選ばれて支援を受けるんですという言い方もあるでしょうし、一方では、大学が多数の企業から資金提供を受ける前提で、国の予算はその呼び水として企業側の方に少しお金を付けるんですとかいう言い方もあるでしょうが、どちらを選ぶかで話が全く変わってくると思うのですよね。だから、実際のところどんなふうにされるのか、非常に注意深くというか、興味深く見せていただきたいなと思っております。以上です。

【橋本主査】    ありがとうございます。ほかにいかがですか。

【高梨委員】    先ほどの進藤委員の御指摘に乗る形なのですけれども、このオープン&クローズの検討会の内容も、多様化検討会の内容を調査研究に含めるように、一緒に含めていただけたらなと思います。例えば海外の事例として、米国の取組を入れようとしている英国、シンガポール等の大学を調査対象としてとなっているのですけれども、オープン&クローズで見るならば、欧州、ドイツですとかも、ここに一つ入っていますけれども、非常にいい対象になるんじゃないかなと思っています。以上です。

【橋本主査】    ほかにいかがでしょうか。上野山委員、是非コメントを。

【上野山委員】    先ほどの資料7の件ですが、実はこの図2の右下のオープン・クローズ戦略の図を見ますと、この流れは既に取り組まれている内容と同じように見えます。出口の課題があれば、どのようにそれを解決するかというのは、大学に行くなり、民間の共同研究で行うなりという手段が大体見えるので、そこは多分これまでどおりの産学連携というやり方で行けるように思えます。
  今回、ここの取組は、極端なことを言えば、企業のR&Dを一部大学が担うというイメージかと思っていました。企業のR&Dの費用を大学が請け負うから、その費用を持ってきてくださいというイメージだと思っていたのです。だから、企業が次にどんなことをしていかなければいけないかという出口の部分を、大学もそれを見越して提案し、逆に大学がこういう新しい提案をするので、この指止まれとでもして企業を集めてくるようなイメージかと思って提案したつもりです。これは非常に理想的で、本当に大学ができるのかなという若干の不安があったので、先ほどの文章のところでも、ここをもう少し強調されたらどうですかと言ったのです。しかし、その後にこの図を見たので、やはり意思はなかなか伝わらないものなのかなとちょっとショックを受けていたのです。ですから、大学ではやはり無理なのかなと思ってしまいました。

【橋本主査】    坂本課長、どうぞ。

【坂本課長】    ありがとうございます。今の上野山委員のお話と橋本主査、両方に対してお答えしたいのですけれども、非常に重要なポイントを御指摘いただいたと思いまして、先ほどの卓越大学院、これよく高等局と御相談したいと思います。その上で、我々、こういうオープンプラットフォームというのは、確かにこういうプランニングについて全く行われてない。そう言うつもりはありません。ただ、問題は、例えば大阪大の共同研究講座、こういうニーズブレークダウンにあるようなシステムですね、組織同意のシステムがあればもっと、例えば大阪大でいうと共同研究講座というものが、先ほど上野山委員がおっしゃったように、もっといろんな課題を持ち込んで、総合的な形で、あるまとまった技術というか、システムを作るために、大阪大さんにどんと研究組織を、あるいは資金も持ち込めるということに多分なるんだろうなということを、我々、現場の方々のお話を伺って、そういうふうに感じています。
  そのときにまとまって投資ができる、あるいは人材も送れるというときに、まず一つは、既にある出口課題についても分からないことが実はあると。様々な研究が、例えばこの前も東大の物性研で、研究会、ワークショップがありまして参加したのですけれども、例えば炭素繊維を、いろんな炭素繊維、今使われつつあるわけですけれども、ある指標で品質を、非常に単純化された指標で観測可能なんですね。もので、グレードというか、評価できれば非常に便利なのですけれども、実はそれができてないと。本当はやろうと思えば、Spring-8など、そういった指標を使って、指標を確立さえすればできるのだろうけれども、それができていないことが産業界では非常に大きな課題になっているということがあるわけです。そういった既にもう使われているような素材でさえ、まだアンノウンなというか、あるいは未確立の分析手法であるとか、あるいは分からないメカニズムというのが存在していると。それから更に上野山委員、あるいは橋本主査がおっしゃったように、実は企業側の課題とか、このようなものができるのではないですかと、今の技術を組み合わせるのか、あるいは新しい要素を付け加えれば。そういったところの提案力までいくと、今度は新しい領域の開拓の方に行くわけですよね。その両方ができるのが一番いいと思います。
  ただ、まず我々、正直言いますと、オープンプラットフォームを、大学の研究能力も組織的動員というところからまずスタートさせたいというところからいうと、幾つかの企業、例えば蓄電池であれば、蓄電池関係の最終ユーザーさんなのか、あるいは組立て企業さんなのか、あるいは部品のメーカーさんなのか、そういった幾つかの切り口をお持ちの企業さんとすり合わせてオープン領域を設定するようなところが多分スタートラインになるかと思いますけれども、このオープンプラットフォーム、例えば電池の拠点じゃなくて、もっと電池というものを一段上の、ある大きなテーマで扱う技術を組織的に動員できるような拠点になれば、新しいシステムを提案できる、そういうものに発展していけるのではないかなと思っています。ただ、多分それは第2段階ぐらいになるのではないかなと想定はしております。以上です。

【橋本主査】    松本委員、どうぞ。

【松本委員】    このオープンプラットフォーム形成に、個人的な意見ですけれども、民間企業が期待するのは、もはやこういう大きなテーマとか新しい事業を生み出すような課題の解決策というのは、一つの研究機関とか一つの大学では無理ですよね。ですから、拠点そのものが世界の英知が集まるような拠点でないと意味がない。1大学と、先ほどバリューチェーンの話をされましたけれども、バリューチェーンの多様なパートナーがここに集まったとしてもこれは解決できないと思いますので。これは大学改革でもそうなんですけれども、我々が期待するのは、大学が海外のいろんな研究機関とつながっていただけることによって、企業はその大学をイノベーションのハブにできるのですよね。だから、是非このプラットフォームには、例えば電池でもいいのですけれども、電池をニーズ起点でも何でもいいのですけれども、いろいろな課題解決をする最もすぐれた研究機関がどこにあるのかということを知っている方々がここにコアに集まって、キーパーソンにそういう人たちがいると。そういう人たちが世界のどういう研究機関のどこがそういう解決策を持っているかというと、ここのところを調査して、ここに結集すると。世界の英知を結集する拠点を是非作っていただきたいというのが個人的な意見でございます。

【橋本主査】    松本委員がおっしゃるとおり、それは大変重要な視点なので、是非そうなってもらいたいですね。そのときに、やはりこういうふうにやると、現実にはなかなかそうならなくて、それを我々はずっと見てきているわけです。一方で、何度も言いますけれども、新しい分野を作っていくようなところというのは、本当に産業界も求めているし、学術的にも求められているところですよね。そういうところの仕掛けというのが必要だなという議論がずっとされていて、それが世界とつながっていくとかそういうことは、卓越大学院でも全くそのとおりの議論をしているのです。ただ、それは学術寄りなのですけどね。こういう話と、それから、卓越大学院とうまく接点を持てるようなことがもしできると、私はここ1年間そういう議論にずっと参加してきましたけれども、本当にすばらしいものになると思うのです。是非検討してください。よろしくお願いします。上山先生はいかがですか。

【上山委員】    やはり先生がおっしゃったみたいに、日本の産学連携は、もう10年以上やっていて、今オープンイノベーションという形に変わっていますけれども、実際のところは、形の上の本当の意味でのきちんとしたフッキングみたいなことはやはりできていないということ。それは、何か日本的な風土なのかもしれないし、大学のシステムの、僕は基本的には大学だとずっと思っていますけど。大学を変えないとこれはできないという意味で、個人的に大学改革に関わっているということが一つ。
  それから、今、橋本先生がおっしゃったのでいうと、海外を見ていると、分野融合という考え方が日本でなかなか根付かないんですよ。僕はずっとアメリカの財務を見ていますけれども、明らかに80年代、90年代に入ってくると、融合型の領域に対する研究開発の投資というのがアメリカでは急速に伸びていくんですよ。これは何も……。

【橋本主査】    ドイツもそうですよ。ものすごいですよ。

【上山委員】    そうでしょうね。間違いなく違う分野のところの人間が集まることによってイノベーションを起こしていくしか手がないということが90年代にはっきりして、このことが産学連携を引き込むことの大きな動機になっていることは間違いないですね。ところが、日本の場合の決定的な問題は、融合という分野を作ったということなのですよ。新領域とか。無理やり融合という分野を作りましょうといってそこにファンディングをやりましたが、融合というのは、本当に一線級のどうしても壁をブレークすることができない、したがって、アカデミアだけでもできないから民間のところも関わってやるしかないという切羽詰まったところで融合ということが出てくるにもかかわらず、このことが行政の中で上から分野として与えられてしまったことにアカデミアの決定的な問題がある。違いますか、橋本先生。僕はずっとそう見ていますけど。
  だから、融合的な分野というものを、さっき言ったオープンプラットフォームも結構なんですけれども、この中から本格的に一線級の人たちが集まるシステムを作るということがもし卓越大学院というところでできるのであれば、これは非常にすばらしいことだと。ですから、僕のメッセージとすれば、我々がやってきた分野融合型の新しいイノベーションの形態のこの10年の軌跡を根本的に反省することから始めるというような視点があって、分野融合というのはもともとは違うのだということをちゃんとどこかで、橋本先生もどこかでおっしゃってくださっています。

【橋本主査】    と上山先生が言っていた。

【上山委員】    私は言っていません。実は融合ってそういうものなんだと思いますよ。したがって、アメリカも、ドイツもそうでしょうけれども、この分野から次々とイノベーションが出てきて、社会変革が起こっていくということは我々が見てきている世界で、そこの反省に立たないといけないということじゃないでしょうかね。と思いますね。

【橋本主査】    小川委員、どうですか。

【小川委員】    今のお話、ちょっと踏まえて言いますと、今おっしゃった分野融合とか、人の融合とか、これを構造的にメカニズムとしてちゃんとやっている事例として、私が知っている範囲では、ヨーロッパのフレームワークプログラム、SRIAとか、JTIとか、それからファイナンスとかね。そこで、要するに、融合するような、異分野の人を連れてくるとか、外国からいろんな人を連れてくるとか、しかも一流じゃなきゃいけないんですけれども、そういうものを優先的にファイナンスで支援していくとか、あるいは、そういうことをやらない限り認めないとか、そういうのを徹底してやっていますよね。いろんな事情があるかもしれませんが。
  こちらの資料7に戻りたいんですけれども、このニーズブレークダウン例というのは、やれるようで、意外とやれてないんですよね、今までね。よくぞここまできれいにまとめたなと、大変失礼ながら思ったんですけれども。これをオープン&クローズとか、オープンとおっしゃっていましたけれども、オープンの話は説明ありましたけれども、クローズの話はなかったんですけれども、それは多分資料4のオープン&クローズのところでやれということだと思うんですが、そのとき、今まで我々、大学の中の知財の人を見ていまして、特許とか、そういうのに限定してですけれども、何ていうのですかね、プロ中のプロでは全くなくてね。というのは、無理だと隣の方もおっしゃっていますけれども、要するに、大学は、基礎研究に近いものをやるとか、ある技術を開発したときにそれがどう役立つか分かりませんよね。それを知財化していくときに、よくやる手は、本当のことを言うと分割特許ってあるんですけれども、こういうノウハウを本当にやる弁理士はほとんどいません。
  しかし、アメリカに行きますと、それが当たり前であって。分割特許って、お分かりだと思いますけれども、ある技術が開発されたら、それがどう使われるかって分からないものがいっぱいありますよね。あるいは想定外のものもたくさんありますよね。だから、最初一応書くのですけれども、その明細書にその可能性のあるものをみんな書くわけですよ。それから明細書の書いたキーワードを使って特許を取り直すとかね。一つの技術で10年以上どんどんどんどん特許を出し続けるとか、優先権を持ってやるとかね。そうすると、大学で発明された、あるいはこういうニーズブレークダウンでやったものが、時間がかかったとしても、権利をどんどん保持していくと。こういうことをよくやっています。
  これ、日本の弁理士さんは、ほとんどやりません。そういうようなことのノウハウとか、あるいはやれる人材とか、マニアックと言ったら変ですけれども、そういうものもここに入れ込まないと。たまたま電池の例で挙げましたけれども、日本はリチウムイオン電池でものすごく技術を開発したのですけれども、それを市場の中で価値形成したのは隣の国ですよね。そういうことのないようにするには、先ほど申し上げたようなことをやらないといけないのではないかと。そういうところも是非取り組んでいただきたいなというお願いでございます。

【橋本主査】    ありがとうございます。異分野融合では島崎委員が最近本を書かれているので、是非ひと言。

【島崎委員】    こういう研究というよりはビジネスの方に近い話かもしれませんけれども、融合というのは非常に大事だと思っていまして、大学だけではなくて、実は企業、産業界も融合ってできてないんですよねと思っています。世界では、今、自分が何業かというのを規定しにくいような会社が一番もうかっているし、イノベイティブだと言われていて、グーグルって多分世界最強の科学者を集めていますけれども、広告代理店ですよね。東証に上場したら、広告・サービス業だと。アマゾンって本屋ですよね。だけど、IBMにこの間クラウドで勝ちましたと。IBMがまさか本屋に負けるなんて夢にも思ってなかったと思います。アップルも、アップルコンピューターという名前からアップルという名前に変えましたけれども、あれも、面白い話があって、アナリストがすごく過小に評価をしていると。なぜ過小に評価しているかというと、アナリストというか、産業界もタコツボになっているので、ハードウェアのアナリストは、iPhone、単なるスマホ、別に差別化はないですよね。ネットサービスとしても特徴ないですよねと。全部足していったら、大して卓越していないと。だけど、我々の印象というのはそうじゃないですよね。そういう融合したことを、産業界も、第3次産業も、全部タコツボ化していて、なかなかうまく回っていないということがありますね。
  大学との連携に関しても、例えばウーバーという、タクシー屋ですかね、あれは。タクシー屋がカーネギーメロンに研究所を建てましたって、全然意味が分からないと思うんですよ、日本にいたら。そういったことが結構最先端では起こっているので。日本の産業界に合わせて大学の産学連携設計すると、そんなニーズがないという話にもしかしたらなってしまうかもしれません。そういう知的資産とか人的資産というものは国境を越えるので、企業が世界で一番いいものを欲しているので、別に国内の大学である必要はないと同時に、大学でも別に外資系の会社と組んだっていいわけですよね。という視点でやっていかないといけないのかなとは思います。

【橋本主査】    ありがとうございます。島崎さんの本読んで、今あるところじゃなくて、全くないところにチャンスがあるのだということを非常にクリアに出しておられて、これを見ても、そういう視点を入れていただく必要があるかなと思ったので申し上げた次第です。魚崎委員、どうぞ。

【魚崎委員】    私、リーディング大学院の委員もしているのですが、先ほどの融合の話に関連してコメントです。リーディング大学院でもいろいろな融合型のプログラムがあって、そこで、ある大学が、今のプログラムをベースに新専攻を作るという提案がありました。それに対して多くの委員が、新専攻を作った途端に既存の専攻からのけ者になるというか、今の段階はみんな協力しているんですけれども、融合型だと称するものを作った瞬間に、独立したほかの専攻と競争するようなものになって、そうすると、学生も送り込まない、と言ったことがおこるから、それは絶対やめた方がよくて、多くの専攻を含む大きなプログラムにした方がいいということをコメントされ、そこはそういうふうに進むことになりました。文科省としては、新しい専攻を作ったら褒めてあげるというような感じが強いんですけれども、融合を標ぼうする専攻を作った瞬間に、融合は進まなくなり、余りいい学生が行かないということが起こります。

【橋本主査】    どうもありがとうございました。進藤委員お願いします。

【進藤委員】    ニーズブレークダウンのことがすごく強調されていると思うのですけれども、大学がCOCNさんなどとお話をするときに企業側からよく言われるのは、「まずは大学側から何をやるべきと考えているか、WHATを見せてくれ」ということなのです。この資料の書き方だと、ニーズはまずは企業から提示されるみたいな感じという印象がすごく強くなるのですけれども、実際には、企業の方々も潜在的なニーズがよく分からないのだけど、あなたたち大学の力をまずは示してくれよという類いのところに実は企業側の期待があるのではないかなと思ったので、そういう意味では、ニーズブレークダウンだけに限定されないような形も検討されたらいいのではないかなとちょっと思いました。

【橋本主査】    これはちょっと私の責任で、私が口火を切った形になってしまったのですけれども、実はこの資料7はここで議論するものではなく、坂本課長が紹介してくれただけなのです。なので、これはコメントとして、是非ブラッシュアップというか、予算を取っていく中において御参考にしていただければと思います。施策提案へのコメントを申し上げただけだったのですけれども、すいません。そういうものだというふうに委員の方も御理解いただければと思います。
  さて、大体時間どおりですね。では、これでよろしいでしょうかね。

【坂本課長】    貴重な御意見ありがとうございます。

【橋本主査】    ということで、本日は、第1次提言(案)について御意見いただいて、これを主査に一任いただきました。先ほど申し上げましたように、できるだけ早くきょうの御意見をもとに、第1次提言として出したいと思いますので、よろしくお願いします。どうもありがとうございました。
  それでは、事務局から一言御挨拶をお願いしたいと思います。岸本次長、お願いします。

【岸本次長】    これまで5回にわたりまして本検討委員会におきまして大変熱心な御議論を頂きましてありがとうございました。今まで御議論いただいた内容を踏まえまして第1次提言を取りまとめる方向になりましたので、心からお礼を申し上げます。
  現在、今回議論になっていますように、大学を取り巻く社会的環境が変化していますし、基盤的経費の運営費交付金が減っているという中で、大学がイノベーションの創出にどう貢献して、社会からの期待にどう応えていくかというのを考えるために、大学自身が、今回の議論なんですけれども、多様な知的資産をどうマネジメントしていくのかということが非常に重要だということで、それを支えるためのどのような社会的システムが必要かという点も含めて、非常に重要な問題だと考えております。
  今回、橋本先生からも、大学、産業界の信頼がドイツは非常に高いというお話がありましたけれども、日本も、産業界は少なくとも大学を非常に信頼していると思うのですが。

【岸本次長】    今まで、今日の議論にありましたように、大学のマネジメント層と産業界がこういう議論をするというのはなかなかないというのが現状でございまして、そういう点でこういう議論が非常に重要で、今後、坂本課長からも御紹介のありましたような話とか、卓越大学院も含めて、マネジメント、大学がもう少し入った形で産学連携ができるような方に持っていければ非常にいいのではないかと考えています。
  文科省としましては、今回取りまとめた第1次提言の内容をもっと具体的な施策として実行していくために、例えば先ほど御紹介しましたように、間接経費の算定モデルの検討に関しましては、引き続き委員の皆様に御協力いただきまして、もう少し詳しく検討していきたいと考えています。
  また、本検討委員会と並行して、今回も御紹介しましたように、国内外の我が国大学の研究経営システム確立に向けての国内外動向という形でいろいろ調査しまして、各国における研究経営システムの事例をいろいろ調査していこうと思っていますので、その調査の中間結果等につきましても、本検討委員会において今後報告していく予定でございます。次回以降、まず本検討会におきましても、委員の皆様方に引き続き御助言を頂きたいと考えておりますので、御支援方、よろしくお願いします。
  以上でございます。

【橋本主査】    ありがとうございました。では、最後に事務局から今後の予定をお願いします。

【山下室長】    次回委員会開催までしばらく空くとは思いますけれども、それぞれのワーキング的なところを動かしていくというのがあります。先ほど紹介した委託調査の話もありますので、ある程度固まりましたら、また開催日の日程調整をさせていただいて委員会を再開するという運びになると思います。ですので、少し間は空きます。

【橋本主査】    ということで、5回にわたりましてどうもありがとうございました。今御説明いただいたように、第1次提言の取りまとめができたので、この取りまとめをベースに、先ほどのようないろんなワーキンググループ的なところで検討を進めながら、ある程度まとまった段階でこの委員会を始めることになるということです。またどうぞよろしくお願いします。
  ということで、先生方におかれましては、まだ1年半以上にわたっておつき合いいただくことになると思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
  では、これで競争力強化に向けた大学知的資産マネジメント検討委員会を閉会とします。どうも本当にありがとうございました。

――  了  ――


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科学技術・学術政策局 産業連携・地域支援課 大学技術移転推進室

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