【資料1】大学等における知的財産マネジメント上のリスク管理について

はじめに
・全学的なマネジメントの必要性が指摘されているところ。大学等が保有する知的財産権についても価値を最大化する形で大学組織が適切にマネジメントすることが重要であり、知的財産権を適切に保護・活用する方策を、各大学等が検討する必要があるところ。
・知的財産マネジメントを実行する上で、リスクマネジメントの観点から配慮すべき事項も存在。例えば、職務発明制度を運用する上で、それに対する適切な経済上の利益を与えなければ、研究者の発明に対するインセンティブが損なわれることになると共に、発明者から訴訟を提起されるリスクも内在。
・共同研究契約、実施許諾契約等といった種々の契約マネジメントにおいて、適切に実行されなければ、知的財産を適切に保護・活用できず、イノベーション創出が阻まれるリスクも存在するところ。
・本検討委員会の「大学等における産学官連携活動の推進に伴うリスクマネジメントの在り方に関する検討の方向性について」(平成27年7月3日)においても、発明報奨に潜むリスクマネジメントに関して、さらなる検討事項とされているところ。ここでは、大学等における知的財産マネジメント上のリスク管理として、重要な要素のひとつとなる職務発明制度運用上のリスク管理を検討。 

1.特許法第三十五条(職務発明制度)について
(1)職務発明制度の趣旨について
 職務発明制度(特許法第35条)は、「使用者、法人、国又は地方公共団体(使用者等)」が組織として行う研究開発活動が我が国の知的創造において大きな役割を果たしていることにかんがみ、使用者等が研究開発投資を積極的に行い得るよう安定した環境を提供するとともに、職務発明の直接的な担い手である個々の「従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員(従業者等)」が使用者等によって適切に評価され報いられることを保障することによって、発明のインセンティブを喚起しようとするものである。つまり、全体として我が国の研究開発活動の奨励、研究開発投資の増大を目指す産業政策的側面を持つ制度であり、その手段として、従業者等と使用者等との間の利益調整を図ることを制度趣旨としている。 

(2)改正特許法の概要について
 職務発明に関する現行制度は、近年の企業におけるイノベーションの変化の実態に必ずしも対応していない側面があり、いくつかの問題が顕在化しつつあることが指摘されているところ、知的財産の適切な保護及び活用により我が国のイノベーションを促進するため、発明の奨励に向けた職務発明制度の見直しが行われた。具体的には、改正特許法第35条において、以下の事項が定められた。
1 権利帰属の不安定性を解消するために、契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定めたときは、その特許を受ける権利は、その発生した時から使用者等に帰属するものとする。
2 従業者等は、特許を受ける権利等を取得等させた場合には、相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利を有するものとする。
3 経済産業大臣は、発明を奨励するため、産業構造審議会の意見を聴いて、相当の金銭その他の経済上の利益の内容を決定するための手続に関する指針を定めるものとする。 

(3)特許法上の職務発明について
 「職務発明」とは特許法第35条第1項において、従業者等がその性質上当該使用者等の業務範囲に属し、かつその発明をするに至った行為がその使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する発明と規定されており、職務発明とそれ以外の発明(自由発明、業務発明)との区分けは、使用者等の業務と従業者等の職務から客観的に定まっているものである。大学等の教職員についても特則はなく、以上の原則が適用される。 

(使用者等の業務範囲について)
企業においては、定款に定める「目的」に記載された事業(業務)を一応の基準とし、又、現実に行われている業務及び近い将来具体的に計画されている事業(業務)がこれに該当する。国、地方公共団体においては、当該公務員の属する機関の所掌に属する事項の範囲がこれに該当する。

(職務について)
国公立や企業の研究所において、研究をすることを職務とする者が、テーマを与えられ、又は研究を命ぜられた場合に生じた発明は明らかに職務上の発明となる。命令又は指示がない場合であっても、結果からみて発明の過程となり、これを完成するに至った思索的活動が、使用者等との関係で従業者等の義務とされている行為の中に予定され、期待されている場合をも含まれると考えられる。 

2.大学等における職務発明制度の経緯について
 以下で説明するとおり、大学等における職務発明について、昭和52年学術審議会答申、昭和53年文部省通知時は、個人帰属とすることを原則とし、一部を法人帰属とすることとしていた。しかし、平成14年知的財産ワーキング・グループ報告書において、個人から法人に承継することを原則とすべきという方向性が示されており、今日においても、この方向性に基づいて運用している大学等が多数である。

(1)昭和52年学術審議会答申
 昭和52年学術審議会答申「大学教員等の発明に係る特許等の取扱いについて」では、特許法上の職務発明に関する規定と大学教員がなした発明の関係について、職務発明の概念の大学への適用可能性と学術研究から派生する研究業績としての特許の特質の点から以下のように論じ、大学における研究に基づく発明に係る権利は原則個人帰属とすることが望ましいと判断している。

 まず、職務発明の該当性要件のうち、"業務範囲"については、学校教育法第52条(当時)に規定された大学の目的「学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させる」ことにはあらゆる"教授研究"が包含されるため、職務発明の範囲を明らかにする業務範囲としては広義に過ぎる可能性があると指摘している。さらに、大学教員の"職務"が「学生を教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する」(学校教育法第58条)ものとされていることから、発明行為を大学教員の当然の職務であると解することには疑問を呈している。加えて、自由闊達な発想を源泉とする学術研究においては、テーマの選定や研究方法の選択等が研究者の自主性に委ねられており、企業において指揮命令系統により特許につなげることを目的に行う研究の在り方とは大いに異なると論じている。
 その上で同答申では、昭和52年当時の状況のもとで「学術研究の発展にとって、発明をどのように取り扱えば、発明に基づく特許の迅速かつ的確な有効利用を図ることとなり、かつ、研究者の新しいアイデアを生む意欲へとつながるか、更には、より長期的に見て日本の科学技術を開花させる方向となるか、等の観点から最善の道を選択」した結果として、大学における研究に基づく発明に係る権利は原則個人帰属とすることが望ましいと判断している。
 そして、大学において特別な研究費等が投入され計画的に推進されるプロジェクト研究の目的性に着目し、応用開発を目的とする特定の研究課題のもとに当該発明に係る研究を行うために国が特別に措置した研究経費や特別に設置した大型研究設備によって行われた研究の結果生じた発明に係る権利に限り、国に帰属させることとした。これは、大学における職務発明のうちのある特殊な発明についてのみ限定的に国に権利を承継させることとしたものである。

(2)昭和53年文部省通知
 上記学術審議会答申の考え方を受けて、文部省では昭和53年に学術国際局長・会計課長通知「国立大学等の教官等の発明に係る特許等の取扱いについて」(文学術第117号)を発出し、国立大学等の教官等の発明に係る特許等について統一的な取扱いを定めた。
 具体的には、教員等はその行った発明を(職務発明か自由発明かを問わず)大学等の長へ届け出る義務があること、国は職務発明に係る権利のうち一定の範囲を承継すること、権利の帰属については発明委員会の議に基づき大学等が決定すること等を定めるとともに、上述の学術審議会の答申の趣旨に従って、国が権利を承継する発明の範囲に関する基準を規定した。次のいずれかに該当する場合は、原則として国が承継するものとするとしている。
1 応用開発を目的とする特定の研究課題の下に、当該発明に係る研究を行うためのものとして特別に国が措置した研究経費(民間等との共同研究及び受託研究等経費のほか、科学研究費補助金を含み、教官当積算校費、奨学寄附金等のような一般的研究経費は除く。)を受けて行った研究の結果生じた発明
2 応用開発を目的とする特定の研究課題の下に、原子炉、核融合設備、加速器等のように国により特別の研究目的のため設置された特殊な大型研究設備(電子計算機等のような汎用的なものは除く。)を使用して行った研究の結果生じた発明

(3)平成14年知的財産ワーキング・グループ報告書
 平成14年科学技術・学術審議会 技術・研究基盤部会 産学官連携推進委員会 知的財産ワーキング・グループ「知的財産ワーキング・グループ報告書」(以下、「平成14年報告書」という)は、知的財産戦略大綱が策定され、国立大学の法人化前である状況下において、以下に示すとおり、大学で生み出される知的財産等について、今後は、原則大学帰属とし活用するなど、各大学が自らのポリシーの下で組織として一元的に管理・活用を図ることが望ましい旨の方向性を示している。

 特許法上の職務発明規定については、大学の「業務範囲」や大学教員の「職務」の性質に関する理解については、学術審議会答申の当時と基本的に変化はないものと考えられると整理した上で、大学の第三の使命としての社会への貢献、なかでも「知的財産立国」の実現に向けて大学が自らの研究成果を主体的に育成し社会での活用を図ることが喫緊の課題として重要であり、そのための環境整備も進められるといった状況の変化を勘案する必要性を指摘している。
 このため、大学には、たとえ研究の企画・実施段階では必ずしも意図していなかったものであっても、研究から産み出され社会で活用可能な技術を社会に還元することが求められているとして、技術の社会への最適な移転を目指して、大学の研究から産み出された知的財産等を、教育・研究機関としての大学の立場を堅持しつつ、産学官連携のもとで主体的・戦略的に保護・育成しその活用を図ることは、大学にとって重要な役割であると考えられるとして整理している。
 また、施設設備や研究経費等、活動の基底部分を公的資金によって支えられている教員の研究活動の成果について、国民(納税者)の理解が得られるよう配慮する必要があることを説明している。

 以上の前提に立って、学術研究の発展や科学技術の方向性、また知的財産等のより効果的な活用等の見地から、この時点の「最善の道」の選択として、大学が知的財産等を保護・管理し、有効な活用を企画・推進する能力を有することを前提に、教員が大学で行った職務発明に係る特許権等のうち、大学が承継するものの範囲について見直しを行い、機関帰属を原則とすることが適切である、としている。具体的には、「大学から、あるいは公的に支給された何らかの研究経費を使用して大学において行った研究又は大学の施設を利用して行った研究の結果生じた発明」を職務発明の最大限ととらえ、このうち、研究成果の効果的・効率的な育成と活用推進の観点から各大学が承継するべきであると判断する範囲を、各大学がそれぞれ自らのポリシーにおいて明らかにすることが必要であると提示している。
 なお、知的財産に係る権利等の帰属については機関帰属を原則としつつ、その範囲の広狭等具体的な在り方については、大学ごとの合理的な判断に基づく多様性が尊重されるべきであるとしている。

 また、各大学の発明規則等において、特許法第35条の「相当の対価」を規定し、教員に対する補償やインセンティブの観点から、十分な対価の支払いが必要であることを説示している。教員又は所属研究室等への研究奨励金としての還元もありうるとしている。

(4)現在の状況(職務発明規程の整備状況等)
 平成14年報告書及び平成16年特許法改正[1]を踏まえて、各大学等においては職務発明制度に対する対応は進展し、現在、350機関以上において職務発明規程が整備されている状況である。また、職務発明を機関に承継することによって機関帰属を原則とするような運用をほとんどの大学等が採用している状況である。[2]
 特許法改正の検討に際して、平成27年1月産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会「我が国のイノベーション促進及び国際的な制度調和のための知的財産制度の見直しに向けて」において、大学等は、「特許を受ける権利の従業者等帰属を希望する法人」として例示されており、従業者等帰属を可能とするように制度設計すべき旨が言及されている。
 また、平成26年7月日本学術会議 科学者委員会 知的財産検討分科会「科学者コミュニティから見た職務発明制度のあり方と科学者に対する知財教育の必要性」において、「今後の具体的なあり方としては、大学等の研究者にとっては、職務発明と見なされるものであっても、今後も発明者帰属が維持されることが望ましい。」という方向性が提案されているところである。

3.大学等における職務発明の範囲について
 大学等における職務発明の範囲について、少なくとも現時点において判例・裁判例等で規範が示されたことはないが、平成14年報告書において示された方向性は現時点においても変更されることはなく、大学等から、あるいは公的に支給された何らかの研究経費を使用して大学において行った研究又は大学等の施設を利用して行った研究の結果生じた発明を職務発明の最大限としてとらえ、その範囲内で各大学等が自らのポリシーに基づいて取得・承継する権利を決定すべきではないか。
 組織的な知的資産マネジメントが求められる中で、大学等が保有する知的財産権についても価値を最大化する形で大学組織が適切にマネジメントすることが重要であり、知的財産権を適切に保護・活用する方策を、各大学等が検討する必要がある。その結果として大学等に権利を帰属させる場合には、発明者に対して「相当の利益」を適切に付与することが重要である。

4.大学等における特許を受ける権利の帰属について
(1)現行の一般的な運用について
 各大学等においては、例えば以下のように、発明の内容に応じて承継の要否等を判断して、大学等に帰属させるべきかを判断している。
1 発明者からの発明届出
2 発明評価
3 帰属判定(職務発明該当性、特許性・事業性等に基づく承継要否)
4 承継手続き(譲渡証書受領)

(2)改正特許法施行後の運用について
 特許を受ける権利を大学等に帰属させる場合においても、原始的な帰属先(特許を受ける権利が発生したとき、すなわち発明が生まれたときの帰属先)を、使用者等(機関)と従業者等(発明者)のいずれにするかについて、例えば以下のような種々の運用があると解される。

(原始的な帰属先の例)
1 原始的には発明者帰属
 権利を原始的には発明者帰属とし、権利毎に帰属先を判断して、機関に帰属させるときは承継する運用 <大学等における現行の一般的な運用>

2 原始的には機関帰属
 権利を原始的に機関帰属とする運用

3 権利毎に原始的に発明者帰属・機関帰属
 特定条件の権利(例えば、国の委託研究開発から生まれた発明、共同研究から生まれた発明等)は、原始的に機関帰属とし、特定条件以外の権利は、原始的に発明者帰属とする運用(発明者帰属の権利についても、必要に応じて、機関に権利承継)

 原始的な帰属先も含めた職務発明制度の運用を各大学等において検討するに際して、重要なことは特許権等を適切に保護し活用することである。また、研究者の研究開発活動に対するインセンティブを確保すること、権利帰属の安定性を担保すること、そして特許権等を活用しイノベーションに結び付けていくことが重要であり、それらに加えて制度運用手続の合理化という観点も勘案し、各機関で望ましい運用を決定すべきではないか。その際に、各運用に関する長所、短所を把握した上で、適切な運用を選択することが重要である。
 また、原始的な帰属先をどのようにするかについて、従業者等との協議等が必ずしも特許法上求められているところではないが、機関として明確な方針を決定し、研究者等に対しても方針を明示していくことが望ましいと考えられるのではないか。なお、特許法第35条第3項に規定されているとおり、原始的に機関帰属とする運用とするときには、契約、勤務規則その他の定めにおいてあらかじめ使用者等に特許を受ける権利を取得させることを定める必要がある。
 大学等においては、上述のとおり職務発明の範囲が判別し難いケースも存在するところ、職務発明の該当性、権利帰属先等について適切な手続を踏み、各権利の帰属先が原始的な帰属先に関わらず対外的・事後的に明確化にされるよう運用することが望ましいと考えられる(承継する権利毎の譲渡証書等の扱い)。
 なお、職務発明と自由発明等との判別が困難である場合にあっても、研究者が自身の判断でその属性を決定するのではなく、大学等の組織に対して発明を開示した上で、職務発明と認めるべきか否かについて検討する必要があると考えられる。

5.大学等における相当の利益について
 現在、産業構造審議会 知的財産分科会 特許制度小委員会において、特許法第35条第6項で規定されている指針(ガイドライン)について検討が進められているところであるが、大学等においても、当該指針が策定された後、当該指針に沿って適切な運用が行えるようにすることが重要である。現時点においては当該指針が策定されていないが、当該指針の検討が進展した時点で、本検討委員会においても大学等における具体的な運用を更に検討していく必要があると考えられる。それにより、職務発明に係る相当の利益に関して大学等の組織が抱えるリスク要素(発明者からの訴訟等のリスク)を最小化することが図られると考えられる。

(1)相当の利益の内容について
 例えば、以下のような事項について、各大学等で検討する余地があるのではないか。
・実施許諾収入等を発明者に配分することで発明に対する相当の対価としている大学等が現在多いが、特許制度小委員会での検討等も踏まえて、大学等においても、相当の利益の在り方を検討すべきではないか。
・大学等においては、研究者(学生を含む)の流動性が企業等に比して高いところ、相当の利益を適切に付与する手法について、今後検討していく必要があると考えられる。特に、退職者に対して、相当の利益を退職後も付与し続ける方法だけでなく、退職時等の所定のタイミングで相当の利益を付与する方法も可能であると解されるところ、退職者に対する相当の利益付与の運用をどのようにするかについて、大学等においても検討する必要があるのではないか。
・大学等が特許を受ける権利を取得・承継する場合においては、研究テーマの設定や発明創出の実現における発明者の貢献が大きいという大学等の実状も鑑みて、発明創出に対する発明者の貢献は十分に評価して「相当の利益」の付与することが非常に重要であるというべきではないか。

(2)相当の利益の付与に関する手続について
 相当の利益の付与に関する手続において、その具体的な態様は大学等と企業との間で異なる特有の事情も存在するところであるが、大学等においても、相当の利益の付与に関する手続(協議、開示、意見聴取等)を、特許法第35条第6項で規定されている指針に沿って行い、相当の利益を与えることに係る不合理性が否定されるような運用に努めることで、訴訟等のリスクを低減することが重要であるというべきではないか。
 大学等における相当の利益の付与の手続は、以下のような運用が多くなされていると解されるところである。
・【協議】相当の利益の内容を決定するための基準の策定に係る協議は、大学等においては労働組合等の代表者ではなく、教授会等の各組織(部局等)の代表者や教職員の代表者を通じて行うケースが多い。また、学内イントラ等を用いて双方向の話合いによって協議を行うケースもある。
・【開示】基準の開示は、大学等においてはイントラ等オンラインにて開示されるケースが多い状況である。
・【意見の聴取】相当の利益の内容の決定に係る意見の聴取は、大学等においては多くの機関で行っていない状況である。大学等において多く採用されている運用(すなわち相当の利益を明確な基準のもとで、実施料収入等を配分するような運用)の場合、意見の聴取(異議申立手続を含む)において、個別案件の相当の利益の決定に対する発明者からの意見は限定的になると考えられる。しかし、大学等においても意見の聴取の機会を所定のプロセスで適切に担保することは、相当の利益の不合理性を否定する上での手続として必要なものと解されるところではないか。

6.学生発明の取扱いについて
 雇用関係にない学生がした発明については、職務発明に該当しない。そのため、特許法第35条の範囲を超えるところとなる。学生がした発明を機関に帰属させる場合には、学生の同意の下で、所定の手続によって承継する必要がある。共同発明等については、学生の身分を十分に勘案した上で、特許権等の活用の最大化が図られるよう、帰属先等も含めた発明の取扱いを検討すべきである。
 雇用関係にある学生がした発明については、職務発明に該当するものと解される。その場合にあっても、適切な手続を踏み、相当の利益を適切に付与する必要がある。

 

<注釈>
[1]平成16年特許法改正によって、「契約、勤務規則その他の定めにおいて前項の対価について定める場合には、対価を決定するための基準の策定に際して使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況、策定された当該基準の開示の状況、対価の額の算定について行われる従業者等からの意見の聴取の状況等を考慮して、その定めたところにより対価を支払うことが不合理と認められるものであってはならない。」という旨が規定された。
[2]平成25年度産学連携等実施状況調査より引用。

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