産業連携・地域支援部会 大学等知財検討作業部会(第1回) 議事録

1.日時

平成25年9月30日(月曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省東館15F特別会議室

3.議題

  1. 議事運営等について(非公開)
  2. 大学等の知財の活用方策について
  3. その他

4.議事録

【横井大学技術移転推進室長】  それでは、定刻から少し早いですが、始めさせていただければと思います。
 ただいまから、科学技術・学術審議会産業連携・地域支援部会大学等知財検討作業部会第1回を開催いたします。科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課大学技術移転推進室長の横井と申します。本日は、お忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。本日最初の会合でございますので、冒頭私の方で進行を務めさせていただきます。主査代理の指名等、人事案件に関する議題が終了するまでの間は、非公開で進めさせていただければと思います。
 それではまず、配付資料の確認をさせていただきます。
【鷲崎大学技術移転推進室専門官】  では、お手元の資料を御覧いただければと思います。順に資料を御説明させていただきたいと思います。資料1-1といたしまして、科学技術・学術審議会産業連携・地域支援部会に置く委員会等についてというA4、1枚の紙でございます。続きまして、資料1-2といたしまして、本作業部会の委員名簿を配付させていただいてございます。続きまして、資料2といたしまして、科学技術・学術審議会産業連携・地域支援部会大学等知財検討作業部会の運営規則(案)というものをお配りさせていただいております。資料3といたしまして、大学等の知的財産の活用方策について(案)ともうしまして、本作業部会の設置、主眼審議事項等をまとめさせていただいているものをお配りさせていただいております。資料4といたしまして、産学官連携・知的財産施策の現状といたしまして、パワーポイントの資料をお配りさせていただいております。資料5といたしまして、科学技術振興機構における知財の取扱いというところで島田委員から頂いた資料を配付させていただいております。資料6といたしまして、大学等知財検討作業部会の予定という紙を1枚紙でお配りさせていただいております。
 残り、参考資料の御説明をさせていただきます。参考資料1といたしまして、科学技術・学術審議会関係法令というところでA4、2枚の紙をお配りさせていただいております。参考資料2でございます。こちらは、科学技術・学術審議会産業連携・地域支援部会運営規則というところで、本作業部会の1つ上の組織の運営規則をお配りさせていただいております。残り3-1から参考資料5に掛けてでございます。参考資料1でございます。東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の在り方についてというところで、科学技術・学術審議会が1月17日にまとめた報告書を添付させていただいております。参考資料2といたしまして、我が国の研究開発力の抜本的強化のための基本方針。こちら同審議会で4月22に決定された文書でございます。参考資料4、5、6、こちらは本作業部会の設置まで、産学官連携推進委員会というものが昨年度末までございまして、そちらの報告書関係を添付させていただいております。参考資料4が、イノベーション促進のための産学官連携基本戦略ということで、平成22年に取りまとめられたものでございます。参考資料5、こちらは、平成24年12月10日に同委員会がまとめた報告書でございます。参考資料6といたしまして、イノベーション対話促進作業部会というものが、平成25年5月20日にまとめた報告書でございまして、以上、参考資料を御紹介させていただきました。もし過不足等ございましたら、会の途中でも結構ですので、事務局までお知らせいただければと思います。
 以上でございます。

○主査代理は、科学技術・学術審議会産業連携・地域支援部会運営規則第2条第7項の規定に基づき、三木主査が渡部委員を指名した。

【横井大学技術移転推進室長】  まずは、科学技術・学術委員会の委員の方々から御紹介いたします。野間口有、三菱電機株式会社相談役、独立行政法人産業技術総合研究所最高顧問でいらっしゃいます。
【野間口委員】  野間口です。よろしくお願いします。
【横井大学技術移転推進室長】  前田裕子、株式会社ブリヂストングローバルイノベーション管掌付フェローでいらっしゃいます。
【前田委員】  前田です。よろしくお願いします。
【横井大学技術移転推進室長】  続いて、産業連携・地域支援部会委員であられる臨時委員の方を御紹介いたします。三木俊克、独立行政法人工業所有権情報・研修館理事長でいらっしゃいます。
【三木主査】  三木でございます。よろしくお願いいたします。
【横井大学技術移転推進室長】  三木委員におかれては、後ほど改めて御紹介申し上げますが、本作業部会の主査に御就任いただいております。
 続いて、本作業部会委員として、新たに御就任いただいている専門委員の方々を御紹介いたします。淺見節子、東京理科大学教授でいらっしゃいます。
【淺見委員】  淺見です。よろしくお願いいたします。
【横井大学技術移転推進室長】  上野剛史、日本知的財産協会理事長、日本アイ・ビー・エム株式会社理事、知的財産部長でいらっしゃいます。
【上野委員】  上野です。どうぞよろしくお願いします。
【横井大学技術移転推進室長】  鮫島正洋、弁護士法人内田・鮫島法律事務所弁護士でいらっしゃいます。
【鮫島委員】  鮫島でございます。よろしくお願いします。
【横井大学技術移転推進室長】  島田昌、独立行政法人科学技術振興機構知的財産戦略センター副センター長でいらっしゃいます。
【島田委員】  島田です。どうぞよろしくお願いします。
【横井大学技術移転推進室長】  中野博子、広島大学学術・社会産学連携室社会連携グループ主査、産学・地域連携センター産学官連携コーディネーターでいらっしゃいます。
【中野委員】  中野です。よろしくお願いいたします。
【横井大学技術移転推進室長】  長澤健一、キヤノン株式会社取締役、知的財産法務本部長におかれては、本日御欠席であられます。
 柳生一史、味の素株式会社理事、知的財産部長でいらっしゃいます。
【柳生委員】  柳生でございます。よろしくお願いいたします。
【横井大学技術移転推進室長】  渡部俊也、東京大学政策ビジョン研究センター教授でいらっしゃいます。
【渡部委員】  渡部でございます。よろしくお願いいたします。
【横井大学技術移転推進室長】  以上で、委員の方々の御紹介を終わります。
 次に、事務局を紹介させていただきます。まず、私、大学技術移転推進室の室長をしております、横井でございます。よろしくお願いいたします。
 続きまして、室長補佐の沼田でございます。
【沼田大学技術移転推進室室長補佐】  沼田でございます。よろしくお願いいたします。
【横井大学技術移転推進室長】  同じく、大学技術移転推進室の専門官、鷲崎でございます。
【鷲崎大学技術移転推進室専門官】  鷲崎です。どうぞよろしくお願いいたします。
【横井大学技術移転推進室長】  どうかよろしくお願いいたします。

○科学技術・学術審議会産業連携・地域支援部会大学等知財検討作業部会運営規則について、資料2に基づき事務局より説明後、原案のとおり了承、決定された。

【三木主査】   それでは、本作業部会の議事の公開についてですが、運営規則第4条に基づきまして、議事は原則公開とされております。したがいまして、ただいまより公開審議とさせていただきますので、報道関係者及び一般傍聴者の入場を許可したいと思います。
(報道関係者及び一般傍聴者入場)
【三木主査】  それでは、これより公開で、大学等知的財産検討作業部会を進めさせていただきます。本作業部会の主査をさせていただきます。三木でございます。また、渡部委員が主査代理に就任しておりますので、一言ずつ御挨拶を申し上げます。
 私、今回のこの作業部会設置に当たりまして、実は、国立大学が法人化されて、ちょうど、今年度で10年目だという節目の年度だと思っております。この間、国立大学法人、日本版バイ・ドール条項の規定を受けまして、知的財産をそれぞれの機関において活用のために、いろいろな仕組みを作り、さらに人材も強化して、一方では、国際的な産学連携システムを作ったりということで、一定程度の前進をしてきたと認識しております。
 一方、10年をたちますと、この先の10年のことを当然考えないといけなくなると。政府では、知的財産政策ビジョン、10年を見越した今後の在り方についての検討がなされ、ビジョンが出ているところでございます。大学の知的財産活用に関しましては、当然、産業界でいかに活用するかということがポイントになると思っております。もちろん、その中には、大学自らがベンチャー企業を起こして活用する場合もございます。そういういろいろな、我々知的財産の活用を考えるときには、いろいろなフェーズがあると思っておりますが、10年のこの節目の段階で、今後の大学等の知的財産の活用につきまして、課題を抽出して、そして、一歩ずつ、階段を上っていく必要があると認識しております。そういう意味で、この検討部会では、幾つかの議題につきまして、後ほど事務局から提示されると思いますが、それにつきまして、御審議を賜りたいと、そういうふうに思っております。是非とも、皆様方の活発な御意見を頂戴できることを期待しております。どうぞよろしくお願いいたします。
 では、渡部先生、よろしくお願いします。
【渡部主査代理】  主査代理を拝命させていただきました、渡部でございます。特に付け加えることはございませんが、私自身は、ここしばらく企業の知的財産の管理、活用というところを観察対象として研究をしております。この10年ぐらいの間に、非常に知財の使い方というものに大きな変容がございます。これが、当然ながら大学の知財の在り方にも影響してくるのは当然のことと思いますが、これには様々な観点の議論が必要でございまして、大学、あるいは産学連携という観点を越えて、様々な観点からの議論が必要かと思っております。事務局で、大変御立派な先生を委員にしていただいたので、いろいろ御指導を賜ればと思います。以上でございます。
【三木主査】  どうもありがとうございました。それでは、早速議題2の大学等の知的財産の活用方策について、審議を進めてまいりたいと思います。
 まずは、本作業部会の目的の確認と、知的財産政策の現状評価につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
【横井大学技術移転推進室長】  大学技術移転推進室長の横井でございます。
 それでは、お手元の資料3、それから資料4に基づきまして、説明をさせていただければと思います。まずは、資料3、大学等の知的財産の活用方策について(案)という1枚紙の資料を御覧ください。こちらの資料、三木主査とともに事務局で整理させていただきました。本作業部会の背景、目的、主要検討課題について、整理させていただいております。
 まず、1の背景でございますが、これまでの各種の施策によりまして、大学自らが知的財産を適切に管理、活用を行うための体制整備が進められてきたところでございます。平成24年12月に科学技術・学術審議会産業連携・地域支援部会の産学官連携推進委員会でまとめられました報告書、産学官によるイノベーション・エコシステムの推進について、参考資料の4になりますかね。そちらで指摘されていることとしましては、「海外への安易な技術流出を防ぎつつ国として戦略的に維持・活用すべきものをどのように抽出し、見える化・パッケージ化及びライセンシングを支援すべきかの検討は引き続き重要な課題」と指摘されているところでございます。
 2番目に、作業部会の目的のところでございますが、これまでの知見・体制を活用しつつ、イノベーションの創出に向けて産学官が一層の相乗効果を発揮していくための大学等の知的財産に関する具体的活用方策の検討を行うとしております。
 次に、3の主要な検討課題のところでございますが、(1)としまして、大学等が保有する知的財産の活用ということで、いわゆる日本版バイ・ドール条項の適用によりまして、各大学等が知的財産を保有しているという状況にございますが、活用が図りにくい状態でもあると、イノベーション創出のために知的財産を集約して価値を高め、活用を図るための方策について、御検討いただきたいと考えております。具体的検討事項として、集約方策、それから集約した知的財産の活用方策を想定しております。
 次に(2)の大学等における知的財産の棚卸しのところですが、大学等の知的財産の保有件数が急速に増加する中での棚卸しの方策について、御検討いただきたいと考えております。具体的な検討事項としましては、棚卸しに関する基準、大学等が放棄した知的財産の取扱いを想定しております。
 次に(3)の海外への技術流出や訴訟等のリスク管理ということで、各種リスクの対応策について、ここでは御検討いただきたいと考えております。
 以上で、資料3の紹介を終わります。
 続きまして、資料4の産学官連携・知的財産施策の現状につきまして、スライドを用いさせていただいて、説明させていただきたいと思います。まず1枚目のスライドでございますが産学官連携施策の経過としております。特に、知的財産の関係では、1998年の大学等技術移転促進法によりまして、承認TLO制度ができ、続く99年には、産業活力再生特別措置法により、国の研究委託の成果を受託者に帰属させる、いわゆる日本版バイ・ドール条項が設けられたところでございます。
 続いて、04年になりますと国立大学が法人化されまして、国立大学については、承認TLOへの出資が認められ、特許の機関帰属が可能となりました。それに時期を合わせて、2003年度より、大学の知的財産本部整備事業等の国による大学への支援策を講じてきたところでございます。
 2枚目のスライドですが、こちらからは、技術移転機関、TLOに関するものでございます。TLOは特許権等を企業に使用させて、対価として企業から実施料収入を受け取り、それを大学や研究者に研究費として分配することを事業内容とする機関となっております。
 3枚目のスライドでございますが、TLOの形、様々な形があるということで、大きく分けると内部組織型と外部組織型に分けられるということでございます。
 4枚目のスライドでございますが、承認TLOの38機関の分布ということで、外部組織型が21機関、内部組織型が17機関ということで、青と赤で塗り分けてお示ししているものでございます。
 それから、5枚目のスライドでございますが、いわゆる日本版バイ・ドール条項についての説明でございます。国の委託資金を原資として研究を行った場合に、その成果である発明に関する特許などの権利を、委託した国が持つのではなくて、一定の条件により、開発者に成果を、権利を帰属させることを可能とする制度でございます。その目的は、ここの目的のところありますが、技術に関する研究活動の活性化、その成果を事業活動において効率的に活用させることとなっております。
 次にスライドの6番目でございますが、国立大学の法人化以前は、産学官連携活動につきましては、大学において、研究者個人の活動が主体であったと、それを組織的に対応すべく平成15年度、2003年度以降、大学知的財産本部整備事業、大学等産学官連携自立化促進プログラム等により、国として、大学の体制整備を支援してきたところでございます。それを成果として、少し飛びますが、成果と課題ということで、まとめたものが15番目、16番目のスライドになります。こちらは、冒頭にも少し御紹介申し上げましたが、科学技術・学術審議会の産学官連携推進委員会でまとめていただいておりますイノベーション促進のための産学官連携基本戦略、それから、16枚目のスライドが産学官連携によるイノベーション・エコシステムの推進についてという報告書でございますが、こちらで、大学等の特許をはじめとした、知的財産の戦略的活用については、引き続き課題として挙げられてきたところでございます。
 前に戻りますけれども、7番目、8番目のスライドでございますが、本年に入ってからも、政府の基本方針として取りまとめられております科学技術イノベーション総合戦略、それから、日本再興戦略、いずれにも、知的財産戦略の強化については言及されているところでございます。それぞれ赤字の部分御参照いただければと思います。
 続きまして、現状を示すデータを少々御紹介申し上げれればと思います。9番目からのスライドを御覧ください。まず、左側でございますけれども、左側のデータにつきましては、民間企業との共同研究、景気の谷であった平成21年度に少々落ち込んではおりますが、件数、受入金額ともに総じて増加の傾向を示しております。右側になりますけれども、1件あたりの受入金額は、約200万程度となっているのが現状でございます。
 それから、次10番目のスライドでございますが、左側のとおり、特許出願件数は、国内合わせて9,000件程度で推移してきている状況でございます。うち、共同出願件数は、右側になりますけれども、国内外ともに、6割を超えているというのが現状でございます。
 次に、11番目のスライドでございますが、11番目のスライド、特許の保有件数は、ここ近年大幅な増加傾向にございます。過去に特許出願したものが、一定の期間を経て、権利化されてきた可能性があろうかと考えております。
 続きまして、12枚目のスライドでございますが、特許権の実施等収入及び特許権実施件数ということで、おおむねそれぞれ増加傾向にあろうかと思います。実施等収入につきましては、ランニングロイヤリティ、毎年、毎年入ってくるロイヤリティに加えまして、一時的な実施料収入、それから、譲渡による収入が加えられているために、若干でこぼこはしておりますが、おおむね増加傾向にあろうかと思います。
 さて、13番目、14番目のスライドになりますけれども、JST、科学技術振興機構で進めていただいている知財活用支援事業について、現状少し、紹介を申し上げ、26年度概算要求に当たって、大きく見直した点につきまして、御紹介申し上げます。詳細については、後ほどまた、島田委員から御説明いただくこととなっております。
 まず、13枚目のスライドでございますが、今年度まで、25年度までに実施してきた、知財活用支援事業になります。こちらは、その中心が、大学等が海外に特許出願する際の関連経費を支援するということになっておりまして、その中で、特許分を形成することにも、制度改善をする中で、取り組み始めていたところでございます。その外国特許化支援以外にも、大学等の特許の事業化支援、それから研究成果展開のための環境整備の3本柱で進めてきたところでございます。
 14番目のスライドになりますが、26年度概算要求におきましては、各大学が保有している特許のうち、重要と考えられるものをJSTの方で一元的に集約・管理しまして、特許群、パッケージ化を推進しまして、一層の活用促進を図るという、このNEWのところでございますが、重要知的集約活用制度というものを新たに設けることとしております。
 以上で、事務局からの説明を終わります。
【三木主査】  ありがとうございました。ただいまの御説明につきまして、質問ございましたら、よろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。
 それでは、資料3にもございましたが、大学等が保有する知財への対応につきまして、審議を進めてまいりたいと思っております。特に、論点を整理するために、本日は、知財を集約するための方策、先ほどの資料3でいきますと、3の両括弧1の具体的検討事項と書かれているところです。ここについて、審議を行い、次回の作業部会でさらにどう活用するかについては、また審議をしていきたいと思っております。
 まずは、JSTで行われている知財の支援や取組につきまして、島田委員から御紹介いただきたいと思っております。それでは、島田委員、よろしくお願いいたします。
【島田委員】  科学技術振興機構の島田です。どうぞよろしくお願いいたします。座って説明させていただきます。
 JSTの取組ということで御紹介させていただきます。JSTは文部科学省の傘下の独立行政法人ということで、特に、JSTというのは、お客様が大学になるんです。ですから、大学をサポートするという観点で仕事を行っています。そのときに予算が付いてますので、法人として、予算の執行を伴いながら、プログラムを実行している、そういう組織です。
 それで、これまでの知財施策、ここ10年を振り返ってみますと、特に、大学という観点から見ますと、やはり大きかったのが、日本版バイ・ドール法ですね、平成11年、1999年ですけれども、これが制定された。それから、国立大学が法人化した。平成16年になります。これまでの国の直属の組織だったのが法人として自由度を持って振る舞えるようになったということがあります。それに呼応するように文部科学省で施策を次々に打ち出してまして、大学知的財産本部整備事業ということで、大学に知的財産本部を整備して、自前で動けるようにしていこうということをされました。
 さらに、引き続いて、産学官連携戦略展開事業、それからさらに、自立化促進プログラムということで、大学が自立化できるようなプログラムを打ってきたという流れにあります。
 それで、約10年がたったわけなんですけれども、基本的には、文科省が次々に打ち出ししてきたこういう施策というのは、成果を上げたという認識なんです。10年たったんで、今後、じゃあ、その後どうするのかということをJSTとしても議論をしてきているということで、その辺を今日御紹介したいと思います。
 JSTの中に、知的財産戦略委員会というものを設けまして審議していただきました。委員長は、阿部博之先生です。阿部先生は、私どもJSTの知財のセンター長をされてます。阿部先生は、小泉内閣のときに、初代の内閣官房の知財の座長をされたということもありまして、この分野における我が国の第一人者。阿部先生に今委員長をやっていただいていてます。この委員会には産学官のセクターから、著名な先生に入っていただきまして、議論をしていただいた。きょうここの委員会にも何名かの先生が、同じ委員の先生が入っていただいているといういきさつがございます。
 数字でここ10年のあれを振り返りますと、結論は、文科省の施策は正解だった、成功だったというスタンスに立ってます。例えば、特許の出願件数を見ますと、約10年で増えてきている。最近は頭うちの傾向があるのですけれど、出願、1万件時代と言いますか、約8,000、9,000件なんですけれども、そういう時代に突入してきていると。累計の保有特許で言いますと、見て御覧のとおりそのままなんですけれども、どんどん増えて、大学は知財を多数保有する状況が生まれてきているということがございます。
 さらに数字で見ますと、左側半分の図が、オールジャパンの大学の特許権の実施料収入をグラフにしたものなんですけれども、一番右側の棒グラフで、合計すると10億9,000万円、こういう実施料があった。折れ線グラフは、契約のライセンス件数なんですけれども、約5,600件ぐらいのライセンスが成立するようになった。ということで、非常にいい数字が出てきている。もちろん、この実施料収入が10億円という数字が絶対値として、本当に満足すべきなのかどうかという議論はありまして、今アメリカなんかを見ますと2,000億円だなんていう数字が出てきますんで、その辺は統計の問題もあるのかもしれませんけれども、必ずしも満足すべきでないという議論があるのかもしれません。
 それから、右半分のグラフは共同研究、大学が、特許を基に、その特許をきっかけとして、共同研究をやったという実績のグラフなんですけれども、折れ線グラフで件数は増えて、1万9,000件ぐらいの共同研究が成立している。一番右側の青い棒グラフを見ますと、約300億円を超すような共同研究費を大学は収入として得ているということで、特許というのは、単に直接的なロイヤリティ収入をもたらすというだけではなくて、派生的に、波及効果として、それをきっかけに大学は共同研究を企業と結んで、いわゆる、研究費の形で大学は収入を得ることができるということがあります。
 ここは重要だと考えておりまして、大学の場合には、企業と違って、工場を持っているわけではないのでなかなか実行、実施というわけにはいかないので、特許を活用するとすれば、ライセンスするとか、それぐらいしかないんですけれども、そういうのを考えたときにこの共同研究の数字というのは、しっかりと注目して見ていきたいなと考えております。それで、JSTの中に委員会を設けまして、提言をまとめました。今年の7月5日に冊子体の形で提言を出しております。
 特に大学に対する提言ということが基本的にありますので、これからの大学の知財ビジョンとして、特許がたくさん出てくる状況が生まれた、今度は活用をしなくちゃいけないので、持っているだけだと維持コストが掛かってしまうだけなんで活用を見据えてください。そういう知財戦略を策定すべきですということで、大きなビジョンをうたってます。
 我が国の研究成果を強固な知財として、内外に確保するということで、この内外というのがポイントでして、国内だけ出願すると、出願費用安くて、大学は可能なんですけれども、やはり、欧米とか、ニーズのある国に出願しとかないと、結果的に我が国の企業だけ苦しめるみたいな状況も生まれかねません。ちゃんと外国に出願して当たり前ということで、内外に確保していただきたいと考えています。ライセンスを通じて、積極的に広く国民に還元すべきと。もともとJSTの予算は国の一般会計でやってますので、還元すべきと考えています。
 それから、各セクターに向けて提言を行ってます。まず、政府の役割ということで、政府に意見を出しているんですけれども、ややもすると、この実施料収入の観点ばかりが注目されがちです。分かりやすいんです。ですけど、それだけだと不十分なんで、大学の場合には、共同研究の実績ですとか、大学発ベンチャーみたいなのが生まれてきますので、こういうベンチャーが生まれるきっかけとなる、そういう元の特許になりましたよみたいな、そういう視点をしっかり持っていただきたいということを提言しています。
iPS細胞のように非常に我が国が世界で一番の成果が出てきた、そういう場合には、世界に先駆けて、基本特許を取得してください。周辺特許も固めてください。そのためには、しっかりと予算も確保していただきたい。海外での戦略的な権利化も必要ですということをうたってまして、これは、特に、うまくできているというか、政府はよくやっているという認識で書いています。iPS細胞の場合がまさにそうですし、しっかりと迅速に対応できたという認識です。これからもiPSに続く、第2、第3の山中先生が出てくると期待してますので、そういう場合も同じように迅速に対応を取っていただきたいということで書いております。
 それから、大学、あるいはTLOに向けた提言ということで、丸印で5項目提言しているんですけれども、いずれも重要だと考えていますが、ここでは特に絞って、特に新規物質等、広い展開が見込まれる成果は、大学の単独特許として押さえていただきたいと提言しています。これは、かなり何ていうか、非常に角の立った言い方なんですけれども、特に物質特許、これは金属材料とか、セラミックス、ポリマーもそうですけれども、あるいは、バイオ関係の新規に合成された物質、こういうのは1件とか2件の特許で非常に強力な特許になります。
 一方、例えば電気電子とか、ITとか、画像処理とか、ああいう分野というのは、特許を何十件とか何百件も使わないとなかなかその権利が守れないみたいな状況があります。特に我々は大学ということを見ていますので、大学の場合は何百件も特許を押さえるのは難しいので、こういう物質の分野というのは1つの狙い目と考えています。こういうところは特に国内出願、外国出願をしっかりやっていただきたい。、将来的に、材料は展開が広いですから複数の企業にライセンスする可能性が高まってくると思います。それは、JSTの経験からいってもそういうことは分かっていますので、是非この辺を着目していただきたいということです。
JSTみずからに対してもこうすべしということをうたっています。特に赤線を2か所引きました。「公募によらない迅速かつ機動的資金投入等を検討すべき」ということで、これは、あえてこれをうたっているんですけれども、これまで国の研究費なんかは、JSTもそうなんですけれども、いわゆる競争的資金ということで予算を伸ばしてきた。ところが、競争的でみんな公募をすると、一見、それ自体がアプリオリにいいことなんだみたいな受け取られ方をするんですけれども、本当にそうなのかというのをちょっと振り返って考えてみたい。特に何かいい成果が出たときに、国の競争的資金制度は大体3年とか5年で終わります。そういったときに、立派な成果が出たのに、またその研究者が次の応募するときに、またその申請書を書いて応募しなくちゃいけないんです。こういうのが本当にいいことなのかというのが議論としてありまして、非効率とか、不合理な公募採択の繰り返しをやっていて本当にいいのかなということがありますので、いい成果が出た場合には、公募によらないで迅速な機動的な資金を投入すべき。例えば、これはJSTに対して言っていることなので、JSTがみずから出ていって、いいものは自分で拾ってくる、取ってくるみたいな、それで、そこにお金を投入するなりして伸ばしていく、そういうようなことも今後は必要なんじゃないのかなという、そういう願いを込めて、あえてこういう書きぶりをさせていただいたということがあります。
 それから、下の方の赤線ですけれども、これは、「多額の資金を投入し複数の大学・起業が参加する特定の大型プロジェクトにおいては、日本版バイ・ドール条項にかかわらず、特定の公的機関等が特許管理を行う制度運用についても議論すべき」ということでうたっています。これは、日本は今バイ・ドールの傘の下にありますので、バイ・ドール条項に関わらず反対の運用を議論すべしという、JSTの委員会として非常に勇気をふるって書いた部分です。例えば、JSTのプロジェクトでも、次世代の蓄電池を作るようなプロジェクトでは50を超える参加者が研究をおこなっています。そうしたときに、バイ・ドールに従っててんでばらばらに企業なり、大学なりに特許がいってしまって本当にいいのでしょうかというのが原点です。そういうような、例えば、JSTのような公的機関が音頭を取るような、しかも、多額のお金を投入するような場合には、やっぱり、誰かが、誰かってこれはJSTを暗に想定しているんですけれども、JSTがちゃんと整理して、参加した人が、みんなが使いやすい状況にすべきなのではないかと思います。それにより参加者が将来その特許の恩恵にあずかれる。てんでばらばらに企業同士で特許を分散して持ってしまうと活用が進まないんじゃないかということがありますので、あえてここではこういう制度運用についても議論すべしということで言っています。御存じのように、もともとバイ・ドール条項はできる規定なので、一応できることはできるんです。ですから、決して法律に背くことにはなりませんので、こういうような運用についても今後議論していただきたいということで書いております。
 数字で見るJSTのライセンス状況ですけれども、左側はJSTが保有する特許、これはずっと減っています。これは、バイ・ドール体制になって、JSTが持つ形ではなくて、大学が持つ形になって減っている。ライセンスの右半分はライセンスの実績なんですけれども、オレンジのグラフがライセンスの契約件数です。これは、やっぱり減っています。自ら所有している特許が減っているので、ライセンス件数も減っている。
 一方、青い棒グラフが増えていまして、これはライセンスに関与した特許の数なんですけれども、ライセンス契約が減っているのに関与した特許が増えているというのは何を意味しているかというと、1契約当たり2、30件の特許が関与する、そういう契約が増えているということを示しています。ですから、パッケージという概念がここから出てくるんですけれども、やっぱり、特許というのは、1件持っていてぽっとライセンスでできるものではなくて、少しまとめてパッケージにしてまとめてライセンス、そういう方が企業にとっても受け入れやすいし、権利を守れるんじゃないかということを数字で示していると思います。
 パッケージに関連して、特許をパッケージにするためには、まず、基本特許が真ん中にあったら、周辺特許とか、応用特許を押さえなくてはいけないということで、群特許という概念が生まれてきます。しかも、1件1件はは外国出願というふうに想定していまして、そうすると、1件当たり外国出願ですと500万ぐらい掛かります。JSTの想定する群ということは、20件ぐらいの特許をまとめて群にしたいなと思っていますので、そうすると、1億円ぐらい掛かるんです。そうすると、大学の場合、例えば、3年から5年掛けて20件ぐらいの外国特許が生まれてきて、しかも、1億円掛けてくださいというと、大学単独ではなかなかできないというのがあります。この辺はJSTが乗り出していって、積極的にいい成果であれば国内、外国も全部まとめて押さえてしっかりした権利にして、20件ぐらいの外国特許にして、それを束ねて企業にライセンスしていきたいというふうに考えていまして、群特許のプログラムということで進めております。
 ライセンスの1つの例ですけれども、これは、真ん中のハート型のへりのところが、見える方は動いているように見えるんですけれども、錯視という技術です。東大の新井先生、ピュアな数学の先生の成果なんですけれども、従来、トライ・アンド・エラーでしかこういう錯視というのは作り出せなかったんですが、この先生は新しい数学を考え出しまして、画像にその数学を適用すれば、誰でも必ず錯視を作ることができるという研究をされたということです。これがユニークな例としてライセンスに成功しまして、これは六花亭という北海道のお菓子の会社なんですけれども、チョコレートの缶のふたの周辺にハート型があって、それがぐるぐる回っているように見えるということで、六花亭はJSTにライセンス料も払ってくれました。ユニークだったのは、数学の先生はなかなか特許というのはちょっと縁遠いんですけれども、数学の先生だった。それから、錯視の計算アルゴリズムについては特許権、プログラムについては著作権としてパッケージでライセンスした。この缶のデザインも含めてライセンスしたということがございまして、御紹介させていただきました。
 それから、当然、JSTは売り込むための、活用のためにはまず一等最初に誰でも考えるのはデータベースにして公開しようということで、JSTでもデータベースを持っています。JSTの場合には、242の大学の特許データを収載しています。それで、リンクが張ってあるので、興味があれば各大学のサイトにに飛ぶようになっていまして、そこで、各大学の御希望の条件で交渉できる、そういうデータベースになっています。1つポイントは、未公開特許も載せています。特許は1年半たって初めて公開になる。それまで未公開なんですが、一般的に特許のライセンスでは、未公開状態で飛びついてくる、企業は食いついてくるということが多いので、このデータベースは短い要約文だけ載せている。興味があれば情報開示の秘密保持契約を結んでいただいて明細書全文を開示する、それで、ライセンスに持っていくと、そういう取組も行っています。
 さらに、特許を活用するために、いわゆる産学官連携に加え金融機関で「産学官金」と言っているんですけれども、例えば、産業革新機構のような投資資金を持っているところ、それから、DBJキャピタルのようなキャピタル、そういう、いわゆる違った観点からものが見れる方々と連携しながら技術移転を進めているということがございます。
 それから、来年度の概算要求で出しているんですけれども、ここ10年で大学に特許が出る状況になったんですが、日本じゅうの大学にいっぱい特許があちこちにありますよという状況が生まれました。活用を考えたときに、それはなかなか活用しにくいので、JSTが集約化して、JSTの経験を生かしてライセンスしたいというふうに考えていまして、そうすると、大学をまたいで複数の技術が関与するような場合、公的セクターとしていのJSTの強みも生かせるんじゃないのかというふうに考えていまして、例えば、JSTが特許を買取のかたちで集約化するとか、当然、全部買うわけにはいかないので、評価、選別が入ると思いますが、JSTが集約化して積極的にライセンスする、そういうようなことを今予算要求で想定しております。
 集約化したら、今度は、ほっておいたらなかなかだめなので付加価値を付けるということで、群の特許にするとか、その群にしたものにさらに研究費を投入して、研究者が周辺の研究もできるようにして、一層特許群を強化していただく、そういうことを考えております。それで、最終的にはパッケージにしたものをライセンスする。それで、当然、国内企業、国外企業のライセンスを想定していますので、まだJSTも海外のライセンスというのはちょっと弱いところがありますので、そういうのを生かせるような海外ライセンスができる主任調査員という方を予算要求しているということがございます。
 それで、これは予算要求のときに使っている資料なんですけれども、基本的には、大学に特許が散在するような状況が生まれたので、JSTが、例えば、買い取りの手法なんかを通じて、集約化して、集約化した状態だとJSTも積極的に関与できるので群の特許の形にするとか、さらに大きな研究費を投入して育てるとか、そういうことによって、産業界につなげていく。それで、ここに「スーパーハイウェイ」と施策の名前が書いてあるんですけれども、大学から企業までハイウェイのようにすいすいとつながっていただきたいという願いを込めてスーパーハイウェイということを言っています。さらに、ライセンスに当たってはそういう専門家、JSTでも、特に企業出身で、特に商社出身の方とか、企業の知財部門を経験された方を任期付きで相当数雇用しております。そういうような方を活用して、力をかりながらやっていきたいと考えています。
 今後、さらなる展開の方策として、知財は、いわゆる現物出資みたいなことも想定されるんじゃないのか。例えば、ベンチャーなんかを作ったときにお金を出資するのは当然として、例えば、JSTが知財を保有して持っている状況になれば、知財を現物出資の形で企業に投入する、そういうようなこともできるんじゃないのか。
 JSTは、新しい制度として、産学共同実用化開発という制度を立ち上げていまして、600億円ぐらいの研究開発費を持っているんですけれども、そういうようなものは、従来の融資型のものに加えて、出資型の対応も今後は議論の余地があると考えています。さらに、文科省ではいわゆるSTARTというプログラムをやっていますので、ベンチャーなんかが生まれてきていますので、そういうものに対しては、お金の出資、それから、特許の現物出資、そういうようなこともいろんなアイデアとして出てくるのではないか。この辺は、まだ、スキームはかっちり固めているわけではないので、今後の議論だとは思うんですけれども、そういうようなことも考えていきたいなと思っております。
 以上です。どうもありがとうございました。
【三木主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいま御説明いただきました資料に関しまして、御質問、御意見とかございましたら、よろしくお願いいたします。はい、どうぞ。
【野間口委員】  ありがとうございます。島田さんのセンターでこのようにすばらしいことをやっておられるとは知らなかったものですから、とても感銘を受けながら聞かせてもらいました。
 まず、三木主査に質問ですが、昨年12月にINPITの三木理事長主催のシンポジウムが開催されて、国の資金を使って生まれた知財をどういうふうに成長させたらいいか、活用したらいいか、という観点で各界の人が集まって議論しまして、渡部先生も参加していただいたように思いますが、その時の問題意識に対するかなりの答えが方向性としては出ているのかなと思います。うまく、これを機能させたらいいと思います。6年とか10年の期間、立派なプロジェクトをやり、相当な成果が出るのですが、国のプロジェクトというのは、その後、すぐに企業の活力につながるところまでなかなかいかないんですね。そうなってしまった知財を、成果としての知的財産を、どのように国として管理し、次に繋げていくかという大きな問題意識だったと思いますが、これに対して相当に踏み込んだ具体的な提案となっていると私は感じました。この点に関してはどうお考えでしょうか。
 それから、島田さんに質問ですが、「大学等」とあるので、産総研とか、理研とかいう公的研究機関も入っていると思いますが、産総研も大学と同じように企業と一緒に連携して生み出す特許があります。それの管理も視野に入れてもらう必要があるのではないかと思います。ここにメンバーとして桂さんが入っているので、彼は前の産総研の知財部長だからその辺のところは十分心得ていると思いますが、この点を確認させていただきたい。でひ、大学等というところを広く解釈して推進していただきたいというのが一点。
 もう一つは、日本はアメリカと違って共同出願、参加者が共同で権利を持つという形態が非常に多いのです。この辺も、先ほどバイ・ドールの話がありましたけれども、余り悪平等的にやると、活用に際して、はっきりした意思決定がやりにくいということが散見されるますので、共同出願の特許はどういうふうにこの中では位置付けられているのか、この点を教えていただけたらと思います。
【三木主査】  それでは、私宛てに質問がございましたので、少し、野間口先生にも御登壇いただきまして、現在の国が大きな資金投入をした研究開発プロジェクトの知的財産の管理、そして、今後の活用の在り方について、日本版バイ・ドール条項を従来どおりで適用していいのかということを問題意識としたシンポジウムを昨年12月に開催いたしました。実は、そのときにも文部科学省の皆様方、それから経済産業省の皆様方、それとJSTの皆様方にも参加いただきまして、そのときの問題提起をさせていただいたものが、実は、このJSTの知的財産戦略委員会の1つの答申といいますか、今後の方向性に対する見解、さらに、本日、JSTの島田委員の方から説明された内容は、その方向に沿っているものだというふうに考えております。
 ただ、今後、これをどういう形で実行力のあるものにするか、そこについては、各委員の皆様方のサジェスチョン、さらに御指導が非常に今から必要になってくると、そういうふうに考えております。そういう意味で、この委員会につきまして、各委員の先生方には、そういった今後の具体論を進めていくときの御意見等を是非賜りたいと思っています。
 私の方からは以上でございます。島田委員、よろしくお願いします。
【島田委員】  JSTの提言というか、考え方は、当然、産総研ですとか、NEDOとか、そういうところも含めて是非とも御検討いただきたいと考えています。ただし、文科省と経産省の組織の違いみたいなのもありまして、これは直接指図するわけにもいきませんので、思想としては、是非こういうことを議論していただきたいと考えています。
 桂委員、JSTの委員会に特許庁の方に入っていただいたのも、従来、JSTの場合、比較的特許庁と余りパイプがなかったみたいなのもありまして、是非ともこういうことを議論するには、特許庁の課長さんに入っていただかなくてはというのもありまして、しっかりと議論していただいたといういきさつがございます。
 もう一つ、共同出願をどうするのかという問題で、これは非常に難しくて、大学から見たときの思惑と、企業から見たときの思惑が激突するところじゃないのかなと思っています。それで、大学から見たときに、大学は実施できないので、やっぱり、共同出願したらその企業にやってほしいという思いはあるものの、企業からすればなかなかできない、実施するタイミングが難しいみたいな問題もありまして。1つ、先ほど提言でもあれしましたけれども、特に材料関係の特許、こういうのは大学が1件単独で、特に新規物質で1件単独でとれば何とかものになると思います。私、一度、製薬会社の方と議論して聞いたことがあるんですけれども、製薬会社で企業化するときに、何件ぐらい特許があればできますかというと、基本となる物質特許があって、周辺の製造技術の特許を6、7件あれば、それで商品化できますよみたいなことも聞いたことがありますので、そういう範疇であれば大学がかなりのことはできるし、JSTも相当なお手伝いをできると思いますので、そういうものについては、是非とも積極的に大学はやっていただきたいなと考えています。
【三木主査】  それでは、前田委員、よろしくお願いします。
【前田委員】  ありがとうございます。産学連携の一番最初の時期関わっていた者としては様々な思いがあります。大学等が法人化になる前に、大学の先生・研究者が個人で特許を持っていらして、JSTが肩代わりして出願人になっていろいろな特許を出してくださいました。大学が法人化して、今度、基本特許はJSTにあるのに、その周辺特許を大学が持って、それをライセンスするときに、JSTにある特許を大学に渡してもらわないとできないということで、JSTから大学に譲渡してもらった時代があります。大学がJSTから譲ってもらって、大学ごとにライセンスしたという時代です。そして、現在は、大学の知財本部は自立化という時代になりました。ライセンスできる大学、できない大学があります。やはり、知財というのは扱うのが上手にできる人が学校に残っていないとライセンスできないです。特許があっても、扱える人がいなければどうしようもないので、予算が少なくなった時点ででいい特許を出してもらえなくなったら、またJSTさんにやってもらうのがベターな方法なのではないかなと思います。
 私も十何年携わってきまして、JSTにいろいろ束ねていただくのはいいことだと思いますし、また、産業界の側からしても、いろいろなところに虫食い状態である特許を扱うより、JSTさんに扱っていただいた方がライセンスを受けやすいとも言えます。
 ただ、国民から見て、10何年大学等に相当なお金を投じました。大学が法人化して大学が特許を取るんだ、大学と1件1件、契約を結ばなきゃいけないんだ、と思っている企業さんがどういう目で見るかなというのはすごく感じています。
 今、私はブリヂストンの知財本部のポストも持っています。社内では、自立化して大学が特許を持ちにくくなったので、企業専属になれるため、企業に有利な時代ですよという話をしているんです。良いものはJSTさんが束ねてくれるという方向性は賛成なんですが、国民から見て、あの10年は何だったんだろうと思われないような形で運営してもらいたいと思います。
 それには、昔は一大学の先生対JSTだったのが、今はどこの大学にも組織があります。知財本部や産学連携本部が残っていますので、そこと契約事がトラブらないように上手な形でやりとりしてくれたら、あの10年は無駄では無かったという形になると思います。手続だけが大変な知財本部は要らなくて、機能的な産学連携本部が上手に間に入ってくれて、あの10年間で学校が変わったし、整備したからやりやすくなったんだねという形になり、それで、JSTが扱うという方向になってもらえればうれしいなと思っています。
 JSTさんのスキームですが、私見として、ここは疑問があります。資料の17ページです。いろいろある虫食いの特許を群にして、アイデアを皆さんから出してもらって、コンソーシアムを作って活用するというのがあるのですが、企業の目線からすると、アイデア出しをしてもらって、みんなで考えるというのはないんです。アイディアを提供したら自らが実行します。ただし、唯一、ライフサイエンスの分野は、明確に何に使いたい、どういう病気にこういうのがあったらうれしいなという方向性がありますので、要望を聞いたり、ニーズを聞いたりすることができると思います。。例えば、製薬会社とか、医療機器メーカーというのは、こういうコンソーシアムを作るのはあるかもしれないですが、それでも、同業他社じゃなくて、異業種を集めるのが好ましいのではないかなとに思います。やはり、同業他社でみんなで作ったものは、うまくいかないです。経産省も2年ほど前に技術研究組合の仕組みを大きく変更して、2社企業が入って、大学が1機関入れば、技術研究組合ができるような形に変えて、同業他社がみんなでやるような技術研究組合では新しいものができないことに気がついたという経緯があります。このコンソーシアムの組み方を上手にやらないと、良いもののアイデア出しというのは各企業の目線からすると出さないんじゃないかなと思っています。その辺の作り方は一工夫あったらいいなと思います。
 最後に、現在JSTに海外出願の支援をしていただいています。私もJSTの知財戦略センターの委員になっているんですけれども、出願だけじゃなくて、係争とかその後ところが大学では難しいので、そこに支援をしてもらいたいというのを何度も言っていたんですが、そちらの方が充実されるようになると嬉しいなと思っています。
【三木主査】  どうもありがとうございます。島田さんの方から特に何かございますか。
【島田委員】  一般論になるんですけれども、大学に知財本部が整備されて、ただし、ライセンスというのは、経験上、いわゆるマッチメーキング的なところがありまして、方程式に乗ればうまくできるというのではないんです。双方が、ピンポイントでしかなかなか折り合えない、いわゆる大学の特許と企業のニーズがピンポイントでしか折り合えないみたいなところがあって、だから、すごく難しい。
 実は、JSTは昔からライセンスの制度がありまして、もう50年ぐらいやっているんです。だから、大学に知財本部が整備されたからと言って、すぐ、そういうマッチメーキングの機能が簡単に手に入れられるかというとなかなか難しいところがあります。ですから、その辺はJSTも大学もうまく協力して、経験とか、情報を出しながら、いい形でやっていきたいなと考えています。
 それから、係争の窓口の話が出たんですけれども、これまでJST、実は、余り係争しなかった。ところが、研究者と議論すると、やっぱり、研究者は自分の成果をもって、しかも特許化されているのに、それが誰かが勝手に使って、一体、これで本当にいいんでしょうかという意識がすごく強いんです。ですから、最近は、具体名はちょっと出せませんけれども、JSTもそういう特許侵害に対しては、きちんとしかるべき態度で臨むということにシフトしつつあります。それのための窓口整備とか、少しずつやっていきたいと考えております。
【三木主査】  どうもありがとうございました。
 少し、もう具体的な内容の意見交換のフェーズに入りつつあるかと思っております。
 実は、現在こういうJSTのスキームが出ておりますが、これは事業化出口の多様性があるものに対して極めて有効ではないかと。それから、もう1つは大学の特性として、技術シーズがまだアーリーステージにあるものを中心にというニュアンスがおありなんではなかろうかと。そして、全ての分野のものを、JSTは今、カバーしようとしているのかどうか、この辺のところはまだいろいろお考えがあるのではなかろうかと思います。
 そういったことも含めまして、こういったスキーム、島田委員の発表を踏まえまして、大学の知財を集約して価値を高めるという、より分野ごとなのかもしれませんし、ステージごとなのかもしれません。この効果的なところはどこなのか、そしてそういった取組をやるとしたらどういったところに注意をすべきなのかといった点につきまして、各委員の方々から少し御意見を頂ければと思っております。いかがでしょうか。
 はい、柳生さん。
【柳生委員】  最初は質問させていただこうと思ったんですが。
【三木主査】  質問も含めて結構です。
【柳生委員】  今ある知財を集約するということだと、正直申し上げて、虫食いになって、時間的なことも含めてなかなか厳しいのではないかと思います。
 今、三木先生がおっしゃった、アーリーステージの研究とかで、これから発明の芽が出てくるものについてこういった形でJSTが関与されることを検討することはあると思いますが。
データを拝見して驚いたのですけど、国内特許と海外特許の比率、余りにも海外が少ないというのが現状ですね。これが逆転していればライセンス収入だって桁が違っていた可能性もあると思います。知財の方には御承知の部分ですけど、そうしますと、まず時間との闘いがありますし、お金も必要です。
 今、日本で出願してから海外に出願していくことが多いでしょうけど、例えばPCT出願を使ったとしても移行までにしかるべき判断をしないといけない。医薬の話が出てきますけど、医薬の海外特許出願は物すごく多くの国に出されています。リターンを回収するのに、それこそ10年ぐらい平気で掛かります。アーリーステージの研究成果は、そこまでも待ちきれないでしょう。
 もう1つは、大学ごとに当然強みがございますね。ですから、本当に一緒に管理することでどれぐらいメリットが出るのだろうかというのは、正直分かりかねています。ですから、タイミングとお金。あとはアーリーステージの研究とはいえ、やはり権利化の早い段階が大事で、やっぱり事業の出口を見ていけばより強い権利が取れます。
 したがって、そういうことはやはり、JSTの事業はよく存じ上げないですけど、企業の力というのはそこに強みがあると思っていますので、企業との連携が大きな肝と思います。
【三木主査】  ありがとうございます。
 それでは上野委員、よろしくお願いします。
【上野委員】  今、柳生委員からもありましたように、特許を集めてくることがそれがどれぐらい効果的なのかという部分に関して、きょうここでお話を聞くまでちょっと分かりにくいなと感じていましたが、ひょっとしてこういうことなのかなと気づいたところがあります。それは、ライセンス収入が実際に上がっている事例を見ると、20件ぐらいの特許が束ねられることが増えて、1契約あたりの特許件数が増えており、ライセンスの収入も増えている。つまり、実際には個別の特許ではなくて、群になっているものにおけるライセンス収入獲得ということがある種、成功例としてあって、その成功例に基づいてこういうアイデアが出てきたのかなというふうに思ったわけです。
 一方で、企業では割と、群にするといった場合に、技術の群もありますけれども、それこそ自社特許をライセンスしやすくするため、若しくは相手方からライセンスを受けやすくするために、クロスライセンスという発想でより大きな群を作っている場合も多いわけですけれども、そういう流れとはちょっと切り口が違うのかなという印象を持った次第です。
 そういった意味では、企業として余りこれまで認識していなかった大学の特許における群でのライセンスの成功例に関して、差し支えがあるのであれば問題ですけれども、差し支えがなければ、こういった例があってうまく活用できているのでこれを広げていくためにこういった考えをやっているというような点を御紹介いただけるのであれば、今後いろいろこのスキームを考えていく上では有用ではないかなと思った次第です。
 それから、あともう1つ、バイ・ドールのことがありまして、バイ・ドールの枠組みをいろいろ工夫されて今後やっていこうといわれる中で、是非お考えいただければなと思っておりますのが、もともとバイ・ドールということ自身、大学であれ、企業であれ、国ではなくて民に、実際に研究若しくは開発をする者に特許権を帰属させることによって大きくやる気を引き出すという部分があろうかと思います。そういった部分に関して、実際、現行の制度でも多少いろいろ苦労することもありまして、例えば報告の内容が厳しいという点があります。このように、現行求められている報告であれ、今後検討されようとしているバイドールへの制約であれ、義務や成約を掛ければ掛けるほど大変となり意欲を減退させる部分が出てきますので、そういった視点も踏まえて、どのようなやり方をやられるにしても、できる限り制約の少ないような、企業若しくは大学側も含めて、民の意欲を損なわないようなやり方を枠組みとして考えていただくことが必要だと考えます。
 1つ目も2つ目もお願いのような形ではありますけれども、発言させていただきました。
【三木主査】  ありがとうございました。
 1つ、上野委員の前半のところで実例というお話がございましたが、島田委員の方からございますでしょうか。
【島田委員】  実例が1つありまして、東京工業大学に細野秀雄先生という先生がいらっしゃって、透明の半導体トランジスタの研究をされている。電子移動度が非常に高いので、ディスプレーにしたときに非常に大型で高精細なディスプレーができるという技術がありまして、そのライセンスをJSTが手掛けたという実例があります。これは日本のシャープがライセンスを受けてくれた。それから、韓国のサムスン電子が受けてくれたということがあります。
 そのときの基となった特許は、JSTで単独で持っていた特許、JSTと東工大の共願特許、それから実は企業が単独で持っていた特許も入っていまして、それはその企業は使わないんで出してもいいよということを言ってくれたんです。その特許を全部で80件ぐらいに束ねまして、ライセンスをすることができました。
 今、シャープとサムスン電子とありましたけれども、この2社は名前出してもらって構わないよという了解を得ているんです。それ以外にも、材料特許なので、材料自体を作るメーカーにも数年前から複数社ライセンスが成立しています。それ以外のディスプレーメーカーに対しても交渉を延々と続けているということもあります。複数特許が絡む、JSTが音頭を取れる、しかも、それは材料の技術だったので、展開が広いということが一つの経験としてありまして、そのあたりがきっかけになっているということです。
【三木主査】  ありがとうございました。
 それでは渡部委員、よろしくお願いします。
【渡部主査代理】  この話は先ほどもいろいろ経緯があってということでご紹介があった話ですし、つい最近も、50機関以上の大学が持つプロジェクトで、最後、活用にもっていくという話は非常に難しいので、そういう場合になんとかしないといけないというのは全くニーズとしてはおっしゃるとおりです。ただ、この中で書いてあるのは、2つ要素がありまして、バイ・ドールの運用の話と、今回御提案の集約活用事業の話はちょっと別々に考えた方がいいと思いますし、いずれも少し注意しないといけない点があるなと思います。
 今、バイ・ドールに関しては上野委員も御指摘になられたように、基本的には民間に委ねるということで活用を促進するという流れの考え方で、もともと1980年に米国が始めて20年間誰もやらなかったんですけど、今現在は日本、ヨーロッパ、それからアジア、新興国でバイ・ドールの類似制度をかなり運用していただくようになったことは、日本企業に関しても、海外で産学連携やるときに非常にメリットがあるんではないかと思うんです。国が余り介入すると、予見可能性がなくなったりしますので、そういう点に対して日本の今回の施策がどういうふうに見えるのかということは踏まえておかないといけないと、これが1点です。
 それから、2番目の知財の集約活用事業については、スキーム上は、さっき島田委員、大学とかが買い取る例として……、何て言いましたっけ、ちょっとそこを、何かエクスキューズしている話なので、分かっていらっしゃると思うんだけど、大学からでもどこからでも、買ってそれを活用して収益を上げるって、これは基本的には、スキーム上は知財に対する投資事業になってしまうんですよね。そうなっちゃうと、例えばそれは民間でやっているのとどういう関係になるのか。
 それからもう1つは、今、国が産業革新機構等で知財ファンドの事業をやっていますね。あの場合は、やはり民業圧迫などの点を配慮するために匿名投資事業組合を作って民間資金を入れて運用するみたいな工夫をされていると思うんですよね。一方この場合は、まさしく国の機関が、一般会計使って、それは出資の返還義務のない形で投じてそういうことをやるということになってしまうと、先々、このスキームのままでいけるのかどうかですね。せっかく御提案なので、そこをよく工夫しておかないといけないと思います。譲渡については「例として」と言われていて、多分理解はされていると思うんですけども、そこの点は十分注意をしていただきたい。
 それから、今回これを見て思ったんですけども、前年度からやっておられる知財収益事業だったかな、群特許支援事業というのは、基本的にDBJキャピタルとか、投資機関の目で評価をしてというのがスキーム上入っているんですね。今回の場合は、それに当たるところが見当たらなくて、国の考えでやるというふうになってしまっているので、ここもちょっと工夫が要るんじゃないかなと。いわゆるユーザーは産業界ですから、誰の目でやるのか。ベンチャーをやりたいんだったら、さっきのDBJとかそういう参加者が重要だし、そうじゃない目的だったら、それをスキーム上入れていかないといけないんじゃないかなと思います。
 何点か、そういうところで少し工夫をしていただく必要があるんじゃないかなと思いましたので、その辺は御理解をいただければと思います。
【三木主査】  どうもありがとうございます。
 先ほど来からバイ・ドールの条項を、今までは官から民へという基本的な考え方で、しかもそれを民が活用するというインセンティブ、いろいろなものを高めるためにやってきたと。それに対して、今回のこの事業は、大学を中心とはいえ、一応法人化されていますので、官ではないだろうと。そこに分散しているという、先ほどお言葉がございましたけども、そういった知財をある意味では若干、官が関与するという部分が見えているわけですけど、その辺についてはいろいろな注意をして、しかもその上、整理をするときには民間の意欲を損なうことがないようにすべきだという御意見だったかと思います。
 ほかにはいかがでしょうか。はい、どうぞ。
【野間口委員】  バイ・ドールの話題になりましたけども、企業にいるときは気がつきませんでしたが、産総研理事長を4年間やり、そこで生まれた知財の成果をいろいろ見ていると、本日の島田さんのお話や三木先生の最初の挨拶でもありましたが、生まれた知財がそのまま静かに蓄積されているのですね。それはいくら何でももったいない話です。外国からの技術情報調査のアクセスの攻撃をまともに受けて、これはどういうことだと私も思っていました。日本企業は六重苦でもありましたので、成果を争って活用しようという元気が出なかったこともあり、本当にこのまま国家資金を投入し続けていいのかという悩みも持ちました。そういう問題に対して、何か網を掛けようと、考えてみようという動きになっているというところを、私は百点満点評価したいと思います。
 17ページは、先ほど渡部先生も御指摘のように、具体的な中身については今後、更に詰めていただいて、そんなにここに書いてあることがぎちぎちに全て同じフェーズで進んでいくのではないと思いますし、また、そのように進ませたらいけないとも思います。国民の資金で生み出した成果を何らかの網を掛けて見ているよと。それでチャンスがあれば大いに育つのも出てくるでしょうし、チャンスがなければ、小さいやつは幾らか束ねて強化しようというのもあるでしょうし、その辺も考えていこうという1つの枠組みだと私は思っています。細かい点を詰めるときは、各界の方の意見を聞いたり、今日いらっしゃるような皆さんで深めていってもらいたいと思います。日本の技術を持った中小企業さんなどの意見を聞くと、また違った視点も出てくるような気がします。ぜひ、その点をお願いしたいと思います。
 それから、バイ・ドールという話がありましたけれども、企業の立場では、プロジェクトに参加するときに、知財の権利は持てますと言わなければ、担当者は参加するという提案を社内で通しにくいんですよ。しかし、その権利を確保しても、企業はなかなか活用しない例が山ほどあるわけです。そういう状況でありながら、バイ・ドール条項を後退させるというのは何事かというのが、私は産業界の人間ですけどもそういう感じがいたします。したがって、産業界の声をあまり気にしすぎるのは現実的でないと思いますので、やはり国の将来をずっと見て、必要なものはこういう目でみましょうという内容のものだというふうに理解した方がいいのではないかと思います。
 それから、知財の評価というのは、現時点、3年後、5年後で変わっていきます。場合によっては10年後に変わってくるのもあるかもしれない。ですから、余り短期的な評価ではなくて、そういう時間を掛けた評価。技術の評価もそうですけど、評価というのは非常に難しい面がありますので、そういった視点も入るような枠組みでお願いします。漠とした話ですけども、基本になる哲学の中にそういうのを入れてもらわないと、いきなり重点特許、マッチングコンソーシアムなんていうことで考えていったら、それは議論百出で、なかなか具体的なプロジェクト、入れ物を作るのは大変だと思います。そこのところを是非うまくやっていってください。
【淺見委員】  よろしいでしょうか。
【三木主査】  はい、どうぞ。
【淺見委員】  私もずっと特許庁に30年ほどおりまして、いろいろ政策も担当してきておりました。きょう、この話を伺って、TLOなどを作ってもなかなかうまくいかないという現状があるときに、それを見直していくということは必要であると思っています。その中で、今までのものをやめるというわけではなくて、一つの選択肢としてこういう形を御提案されるというのは非常にいいことだと考えております。
 ただ、まだいろいろ分からないところもたくさんあって、あとはいかにそれを適切な形で体制を作っていくかという運用のところが非常に重要だというところと、それから、例えば今、大学のTLOで頑張っていらっしゃる方もいらっしゃるわけですから、そういう方たちとの間で、これがいかに機能できるようにするかということも是非きちんと議論をして、かつ、それをうまく情報を伝えて、これが一つの選択肢として増えるんだということを是非正確に理解していただけるようにしていっていただきたいというのが要望です。
 あとは私の経験から少しお話をさせていただきますと、私もずっと科学系の審査、審判を担当してまいりまして、10年ぐらい前に大学の先生からの出願が少しずつ出てきたわけですけれども、当時、出願というのがぽつぽつと、全体を見渡したわけではなくて、多分、大学の先生も知財が評価の1つに入るから、そのために出願をしているというところがあって、権利が非常に狭い。余り権利の取り方も実験も十分にされていないようなところもあって、又、特許の権利の取り方ということに精通していらっしゃらないこともあって、特許は取得できるんだけれども、その権利の取り方が余りに狭くて、これでは誰も使ってくれないだろうと、幾らでも逃れられてしまうということがありました。現在では、例えば山中先生のiPS細胞のように非常にバックアップ体制がしっかりしていて、昨年ぐらいに何件か特許が取れていますけれども、それは非常にいい権利が取れてきていると考えております。
 そういうことから考えますと、できるだけ、特許強化費というのが下の方に書かれていますけど、それを早い段階で、できれば公開される前にいかに強化できるか、できればもう出願前ぐらいに、いかにどういった研究を進めれば、どういった実験をしたら適切な権利が取れるのかという、できるだけ早い段階で強化ができるような仕組みを作っていただきたいと思います。そのときに、やはり企業が入ってきたときの秘密の確保といったこともきちんとしていかないと、なかなか参入もしづらいし、もしも情報が漏れてしまったら権利も取れなくなってしまうということもありますので、このあたりのアーリーステージでの強化ということを是非力を入れていただきたいと思いますし、またそのときに起きる問題点ということも十分に検討していただければと考えております。
 以上です。
【三木主査】  どうもありがとうございました。
 それでは、鮫島委員。
【鮫島委員】  せっかく来たので、一言。
 私はいわゆる国プロ関係の知財プロデューサー事業のアドバイザーを派遣するというプロジェクトの主査をやっていまして、基本的にそこでもバイ・ドールの問題が非常にクローズアップされるわけですけれども、今、現状起こっていることは、いろんな会社とか大学がすばらしい成果をお出しになるのは非常にいいんですが、結局、全部共有になって、それをライセンスしようにも、いろんな人たちの同意が必要になって、全く使えなくなってしまっていますと。そういうことからすると、全く民間の自由意思に任せるのではなく、一定程度バイ・ドールを後退させて国が関与するという方向性自体はあり得べきことなのかなと感じているところです。
 ただ、今回は国プロではなくて、どちらかというと大学主体だということなので、問題は少しは少ないのかもしれないけど、しかし必然的に民間企業が入ってくるというふうには想定されますので、先ほど野間口様がおっしゃいました、企業が特許が取れないとなると、それは入ってこないよという話を含めて、どうやって調整していくのかというのは非常に重要であると。
 ただ、1つ考えなきゃいけないのは、本当に日本の全企業がそういうマインドかというと、恐らくそうそうたる日本の一部上場企業は皆さんおっしゃるとおりだと思うんですけれども、中小企業、ベンチャー企業。この前、NEDOの担当者なんかとはもうお話ししていますけれども、中小企業からすると、とにかくNEDOプロジェクトに加えていただけるだけで本当にステータスになると。そういうマインドの企業であれば、1つ可能性はあるのかなと。だから、知財権というものが仮に企業に帰属しないという形で企業が参画して、JSTさんの方に権利を預けたときに、またそれはそれなりに何らかの恩恵があれば、それは通る可能性もあり得るのかなと思います。
 恩恵とは何かというと、これはライセンス事業になっていますけれども、このプロジェクトの性格としては、恐らくかなり基本特許性が高くなっていくのではないかと思います。そうすると、そもそもまだマーケットがないので、単純なライセンスでいくのかという問題が非常に考えられるわけで、何が言いたいかというと、マーケットを作っていく、つまりベンチャー企業を起こして事業創造をしていくというところからやっていかなきゃいけないのではないだろうかと考えています。
 したがって、今度はそれに関する、JSTさんがどのような機構でインキュベーション、マーケティングをやられていくのか、これは非常に重要なところで、この絵はライセンスになっていますけど、実際は恐らく事業創造。先ほど現物出資なんていうお話もありましたけれども、恐らくそういったことまでターゲットにされているのかなと考えています。
 あともう1つ、これは余談みたいなものですけど、産業革新機構が知財ファンドをやられている、あれはたしかLSIPでしたっけ、あそこでも同じように大学の特許を集めようとした経緯があったようですが、相当、大学の方が権利譲渡には抵抗があった。つまり、専用実施権だったら認めてあげるけれども、権利譲渡は非常に抵抗があったということなので、そのあたりも何か策を考えていかないと、この案どおりにはなかなかいきにくいのかなと私は思っています。
 以上です。
【三木主査】  ありがとうございました。
 では、中野委員、お願いします。
【中野委員】  現場からの感想ということですけれども、一大学ではパッケージ化が非常に難しいということもありますし、資金の制約で戦略的な出願は難しいということもありますので、今回のJSTさんの提案は非常にありがたいと思っております。それも大学単独では活用が見込めないようなものを扱ってくださるということで、ありがたい話だなと思っております。
 我々、金融機関のマッチングの仕組み等も今、検討しておりまして、外部のいろいろな力を利用してやっていきたいなと思っているところです。少数のコーディネーターや知財マネジャーではライセンス先を見付けるというのは非常に難しいですので、こういう力をいろいろ使わせていただきたいと思っております。
 具体的なことですが、買い取っていただく知財の選定基準といいますか、どういう手法で決めていくのかということとか、移転先の候補がもし見つかったときにはコーディネーターや知財マネジャーはどのように関わっていくのか、やはりJSTと協力してやっていくんだろうなとか、マーケティングに関して大学にはできないJSTでの特にこういったノウハウがあるということがあればお聞きしたいと思うんですけれども、具体的なことはこれからということでしたら、また今後よろしくお願いいたします。
【三木主査】  島田委員、どうですか。
【島田委員】  この施策は、今のところ、まだ概算要求を出している段階で、今後、目鼻立ちがしっかりしてくると思います。
 そのときに、当然、文科省さんとやり取りしながら決めるんですけれども、今、各大学の知財関係者と意見交換を始めていまして、既に結構やっています。今後も続けていきたいと思っています。それによって、大学の御要望みたいな立場を聞きながら、この施策の運用に反映していきたいと思います。これまで10数大学と意見交換した上でこういう施策を考えてきているんですけども、各大学によって、いわゆる大きな大学とそうでない大学とか、私立大学と国立とか、温度差が随分違うんです。ですから、その辺をよく聞きながら運用に生かしていかないと、うまくこの施策が回っていかないと思いますので、その辺を含めて詰めていきたいと思っています。
【三木主査】  ありがとうございました。
【野間口委員】  産総研からLSIPに10件ぐらい提案して、まとまったのが2件でしたね。物すごく厳しいハードルがあります。それだけ先行してもらうと、本気なんだという気がしましたね。
【三木主査】  なかなか、現状の大学に権利が帰属している特許を今、どうするのかという話と、それと同時に今後生まれるであろう基本的な特許を軸にしてやるのかという論点が1つございましたし、それから、これは現状の制度を全否定するものではないと。新たな選択肢として設定してはどうかという考えのものであると。
 大きな方向については、きょう、皆様方の御意見を伺っておりますと、これは1つの方向としてはあるという御認識のように感じております。ただ、個別の具体的な施策のデザインとなりますと、まだまだ検討すべきことが多いと。例えば権利自身をJSTさんがバイ・ドール条項を適用せずに持つのか、それとも権利自身は大学の方、若しくは企業さんが持っていて、ライセンスに関するエージェントの権限を持つのかとか、その辺のところにつきましては、もっと制度設計をしていく段階で検討する必要があるということが意見として出たように思います。
 ほかにも、片一方では現状に対する危機感のお話も少しあったかと思います。大学が保有している状態で、塩漬けになってしまっているという危機感もあると。そういういろいろなお話があったかと思います。
 もう少し時間が残っております。最後に、これは一言言っておきたいということがございましたら、是非御発言をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。はい、柳生さん、お願いします。
【柳生委員】  次回出られませんので、その分も含めてですけど、特許だけではなくて、広義の知的財産、要するにトレードシークレットとかノウハウという部分も大事です。これは、企業の場合は切実ですけど、恐らく大学関係の研究開発についても同じではないかと思います。だから、日本だけに特許出願して、せっかくグローバルに生かせる技術がそれで終わってしまうというのは、極めて避けるべき事態だと私は思っています。それだったら、まだ全く出さない方がいいです。
冒頭お話しがあったように、国の大切なお金を使って、その成果をどう生かしていくか考えた時、情報をオープンにするだけだと、本当に世界中でただで使われてしまうということになります。特許出願数が研究開発のメルクマールであるというのは弊社でもそうですけど、必ずしもそれだけではないだろうと思います。これはきょうの話題からはずれるかもしれませんけど、情報をオープンにする是非の見極めというのは極めて大事なポイントと思っています。以上です。
【三木主査】  ありがとうございます。いわゆるノウハウ、トレードシークレットとしての保持するべきもの。それからもう1つは、出願をするということは情報を開示するということですので、活用の戦略を持って出願をしないと、逆に他国の利に供するような形になるといった御指摘だったかと思います。
 いかがですか。
【前田委員】  あの絵がずっと私、気になっていますが、技術マップや特許マップを作ったり、どういう方向性にこれを大きくしようかとか、核になる特許をどういうふうに様々な分野に使おうかというビジネスモデルを考えるところが一番難しいので、そこに重要な人を割くようなお金の投じ方をしてほしいと思います。産業界側から見ると、そこがお粗末だと参画したいと思わないですし、それだったら自分の会社で一研究者とやればいいとなりますので、JSTさんや国のお金が投じられていいスキームになればすごくよくなるんじゃないかなと思います。是非いい設計をしてもらえればと思います。
【三木主査】  ありがとうございました。
 どうぞ。
【鮫島委員】  ライセンスとかロイヤリティみたいな話になっているような気がしてならないんですけど、実際は本当はどれだけ日本の20年後のGDPを増やしていくかという議論じゃないかと思っています。やっぱり是非、単にいい特許を取ってライセンスしましたというよりも、GDPを増やすためには、それはその技術によって何らかの事業を起こして、それを何百億、何兆円の事業に仕立て上げていくと、これがないと多分日本は今後、非常に立ち行きにくい状況になっていると思うので、そのためにどういう制度設計にするのかということが非常に重要なのではないだろうかと思いました。
【三木主査】  ありがとうございました。
 島田さん、どうぞ。
【島田委員】  今ほどの前田先生の御指摘に対して。
 JSTも、特許マップを作るとか、ビジネスマップを作るというのは非常に重要だと考えていまして、そのときに、JSTの職員だけだとどうしても限界があります。企業におられて年齢層で55歳ぐらいの方で、企業の知財本部にいたとか、あるいは研究開発を手掛けて、特許と製品間のつなぎをよく知っておられるとか、そういう経験を持っておられる方、全部で40人ぐらいJSTが雇用していますが、そういう方の力をかりながらビジネスモデル等について考えていきたいと考えています。
【三木主査】  よろしいですか。
 いずれに対しましても、今までの御意見、いろいろ拝聴しておりますと、1つは研究開発のフェーズでのいわゆる技術オリエンティッドなものの思考だけでは、群特許として生かそうというときには若干不足があると。むしろ事業化シナリオをしっかり検討、立案していく人材とのリンケージが極めて大事であるという御指摘であったかと思います。
 これは特許法でも書かれていますけども、第1条に大体、目的って書かれているわけですね。第1条に書かれているのは、産業の振興と発明の促進、この2つなわけでして、一番大事なのはやはり産業の振興。そういうことになりますと、事業化シナリオをどう描くか。これは、研究開発から事業化が少しずつ見えてくるときのステージごとで、多分シナリオの描き方はだんだん精緻化していくんだと思うんですけれども、このプロセスを常に考えながら、早い段階でも、アーリーステージであっても、やはりシナリオを持つということの重要性を各委員の方がおっしゃられていたように思います。
 残りわずかでございますが、最後に一言ということを、野間口先生、いかがですか。
【野間口委員】  繰り返しになりますが、私はこういう発想がスタートしたことがいいことだと思っています。だから、中身をよくするのはこれからだと思いますよ。上野委員とか柳生委員とか前田委員は企業におられるので、企業の中でこれをいかに活用するかという視点でいろいろお考えがあると思いますが、まず、これは、先ほど鮫島委員からもあったように、今後10年後、20年後の日本は知財立国としてこうするのだという視点が重要です。知財を生み出す方は盛んに生み出したけど、日本の産業社会、あるいは社会全体として、生み出した知財をどういうふうに財産として活かしていくのだという発想でスタートして、具体的な行動につながるプロジェクトというか、それを作っていくという前提でやっていただきたい。今、眠っている特許がもったいないというだけではなく、また、企業が権利を主張してどうのこうのというのでもなく進めていただきたい。大所高所から見ると、企業も僕は必ずできるのではないかと思います。
【三木主査】  ありがとうございました。
 それでは、ほぼ予定の時間に近くなっておりますので、本日はどうもいろいろ貴重な御意見を賜りまして本当にありがとうございました。特段、まとめということで、私、お話はいたしませんが、きょういろんな形で御発言いただいたこと、それで言い足りないようなことがある場合には、書面で事務局の方に意見をお出しいただくことも可能でございます。書面でなくて事務局に来てもらってちょっと話をしたいと、それはあり得ますか、事務局。
【横井大学技術移転推進室長】  はい、大丈夫でございます。
【三木主査】  書面は、結構皆さんお忙しいので大変かと思うので、場合によったら、事務局の方はそれも可ということのようですので、皆様方から御意見をさらに拝聴する機会を取らせていただければと思っております。
 それでは、本日の審議は以上のような形で終わらせていただきます。
 それでは、最後に事務局の方から今後の予定についてお願いいたします。
【鷲崎大学技術移転推進室専門官】  御審議いただきまして、まことにありがとうございました。
 お手元の資料6をごらんいただければと思います。一枚紙でございますので、もうおしまいでありましたら、口頭で申し上げさせていただきますので、そのままで結構でございます。次回、第2回につきましては、10月3日木曜日13時から約2時間を予定してございます。場所といたしましては、本館3階の3F1特別会議室でございます。第3回につきましては、10月11日金曜日10時から12時を予定しております。こちら、本日と同じ部屋で予定しております。
 事務局からは以上でございます。
【三木主査】  どうもありがとうございました。極めてタイトなスケジュールとなっておりますが、委員の皆様方、極めて御多忙の折とは存じますが、重要な審議をする作業部会でございますので、今後ともよろしくお願いいたします。
 それでは、これで本日の大学等知財検討作業部会を閉会といたします。本日は本当に御多忙のところ、貴重な御意見をちょうだいいたしましてありがとうございました。

 

―― 了 ――

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