【資料7】第2回地域科学技術施策推進委員会議事録

科学技術・学術審議会 産学連携・地域支援部会

地域科学技術施策推進委員会(第2回)

平成24年4月12日

 

【竹下専門職】  それでは、定刻となりましたので、ただいまから第2回地域科学技術施策推進委員会を開催いたします。本日はご多忙の中ご出席いただき、まことにありがとうございます。

 まず、議題に入る前に、配付させていただいている資料について確認させていただければと考えております。

 配付させていただいている資料、1枚目、第2回地域科学技術施策推進委員会議事次第になります。続きまして、資料1、長野県地域における国際展開の取組みになります。続きまして、資料2、地域イノベーションシステムの研究成果と課題。松原先生の発表資料となります。続きまして、資料3-1、地域科学技術施策の課題と展望。大津留先生の発表資料となります。続きまして、資料3-2、こちらは論文のような形式のファイルとなりますが、業際イノベーションを創成する社会主導型研究開発アーキテクチャとワークフロー。続きまして、資料4、地域科学施策推進委員会における論点事項について。資料5、地域科学技術施策推進委員会の当面の予定。資料6、地域科学技術施策推進委員会第1回の議事録(案)となります。

 そのほか参考資料といたしまして、信州スマートデバイスクラスター最終成果報告会の冊子の資料。あわせてもう1つ、TECHNO NEWS、2012年4月版のニュースのほうが参考資料として配付させていただいております。あと、「信州スマートデバイスクラスター研究成果と事業化達成状況」というピンク色の冊子も別途配付しております。

 以上、配付資料に不足等ございましたら、事務局までご連絡ください。特段ないようでしたら、進めさせていただきます。

 なお、本日、有信主査が冒頭少しおくれるというご連絡がございましたので、本日、進行につきましては、主査代理である近藤先生にお願いしたいと考えております。

 それでは、近藤先生、よろしくお願いいたします。

【近藤主査代理】  皆さん、こんにちは。前回海外出張でおりませんでしたので、今回初めての出席になります。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、座らせていただいて、議事を進めたいと思います。

 最初に、本日の進め方につきまして、事務局のほうからご説明、よろしくお願いします。

【竹下専門職】  本日は議題1「地域科学技術施策の課題と展望について」という議題におきまして、3つのプレゼンテーションをお願いしたいと考えているところでございます。プレゼンテーションは1つにつき20分程度、各プレゼンテーション終了後に15分程度の質疑の時間を設ける予定としております。プレゼンテーションの結果を踏まえまして、今後の現状施策の課題や今後の施策の方向性等について、各委員からご意見をいただければと考えております。よろしくお願いいたします。

【近藤主査代理】  それでは、ご準備よろしいでしょうか。最初に「長野県地域における国際展開の取組み」ということで、長野県テクノ財団の小泉専務理事と、それから信州大学の理事・副学長でいらっしゃる三浦先生、よろしくお願いいたします。

【小泉専務理事】  長野県テクノ財団の小泉でございます。本日はこのような機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。私のほうからは、ご覧のように4項目ほどお話をさせていただきます。特に事業例につきましては、財団と信州大学がそれぞれご紹介申し上げます。

 まず、長野県の産業の状況でございます。長野県は海がない県でございまして、内陸型の加工組立業種の集積地になっております。直近の事業所数と出荷額でございますが、ご覧のように電気・電子・機械系の加工組立型に特化しております。したがって、ご多分に漏れず、アジア新興国の影響を大いに受けているという状況でございます。

 それから下のほうですが、これが海外進出の状況でございまして、主役は製造事業所で、進出地域は中国、東南アジアが多い状況でございます。それから、海外進出状況でございますけれども、比較する他県の数字がございませんので一概には言えませんが、かなり海外進出が多い地域ではないかというふうに考えております。それから、輸出の状況でございます。単純に比較すると、県内製造品出荷額の24%が輸出されており、しかも93%が加工組立型分野でございます。

 こういった中で、長野県テクノ財団ですが、どんな仕事をしているかを簡単にご紹介申し上げます。当財団は27年前に県や市町村、それから県内企業2,040社から出捐いただき造成した基金58億円の運用益、約1億円を種銭のほか、外部資金の委託費や助成金、補助金を導入いたしまして、平成23年度は3億8,000万円の総事業費になっております。職員は62名程度でございます。

 当財団のミッションは、マラソン競技で言えば、技術開発の先頭集団づくりというようなことであり、今後の長野県のものづくりの分野を牽引していくリーダー的な企業群をつくり出すようなことを目指しております。

 私どもの事業でございますけれども、少し役割をイメージとして考えてみました。この図のように、個別の企業の技術の区分けで、基盤技術、現在のメイン技術、今後の必要技術もそうですが、現在、製品・部品をつくっているメイン技術は、不良品の発生、生産工程の改善などについては県の工業技術総合センターが分担してございます。私どもとすれば、現在走っている技術を支える基盤的な技術と、5年先、10年先の企業を支える必要技術の高度化の二面の役割があるのではないかと考えております。

 これを強いて地域の産業全体に当てはめますと、上のほうが5年先、10年先の県産業を牽引していく研究開発機能の部分については、どちらかというと科学技術の色合いが濃い部分でもあり、かつ、広い視点がないと対応ができないので、私どもとすれば、県外はもとより、国際的な視野のもとに、事業を展開していく考えでございます。

 次に国際連携の必要性を整理したものでございます。5年先、10年先を牽引するとがっている部分は、先を読むために国際的な情報収集活動がより必要でございます。あとはご覧のような必要性があり、そういった必要性を背景といたしまして、当財団が提供するサービスを継続することにより、具体的なビジネス交流の成果につながっておりますし、相手方の信頼を得る基本にもなっています。

 ここで、私どもが担当している代表的な事業を2つご紹介申し上げます。1つは、この上の部分でございますが、文部科学省の支援を得まして、旧知的クラスター創成事業第Ⅰ期、第Ⅱ期でございます。もう10年たちましたけれども、この事業のおかげで国際連携の足がかりができたということでございます。ありがとうございました。

 現在、地域卓越研究者結集プログラム、それからメディカル関係の地域イノベーションの事業などの国際連携につながっております。知的クラスターの成果については、お手元に資料をお配りしてございます。

 それから下の段ですが、こちらは経済産業省の支援をいただいている事業でございまして、DTF研究会でございます。小さな部品は小さな設備でつくるという名のコンセプトで机の上に乗る機械、つまり、デスクトップファクトリーと呼んでおりますけれども、この研究会、ご覧のように10年前から活発な活動をしております。手前みそでございますけれども、省エネや省資源の実践例ということで、欧米ではかなり知れ渡ってきております。

 先ほどの2つの事業の中で、MOUを結んでいる地域をプロットしたものでございます。北イタリアのヴェネト州の産業支援機関でありますベネトナノテックとは、旧知的クラスター事業の関係で現在も濃密に行き来しております。また、私どもと並行して、信州大学でも地元の大学とMOUを結んでおります。さらに、DTFの関係では、スイスのローザンヌ工科大学とフランスのオートサボア県の商工団体とMOUを結んでおりまして、こちらは精密加工技術の集積地という共通点でやっております。

 この2つの地域の連携相手をどう見ているか、その位置づけでございます。MOU自体は団体同士でございますけれども、私どもとすれば、企業と同じ目線で一緒に活動するということを前提としております。まず、ヴェネト州でございますけれども、結構田舎へ行ってもニッチな製品・部品で高い世界シェアを誇っている中小企業が結構多数ございまして、現在、我々とはサンプルや部品のやりとり、それからデザインの協力等々について話し合いをしております。それから、スイスのローザンヌ工科大学とフランスのオートサボア県でございますけれども、産業構造とか、保有技術、精密加工技術が長野県と似ておりまして、多くの接点が期待できるということで重点的に進めております。

 これはヴェネト州の連携の風景でございます。一昨年、県内企業の研究者等々11人がイタリア政府の招へいでヴェネト州を訪れまして、各種の企業等への訪問、技術面の意見交換、あるいは提携できる部分を模索しました。

 また、カーボンナノチューブの第一人者でございますが、信州大学の遠藤先生のヴェネト州での講演会、さらには長野県知事がヴェネト州を訪問して、トップレベルでも協力関係を確認しております。

 次、DTFでございます。デスクトップの加工機は既に幾つか実現しておりますけれども、搬送ロボットをつなぐことによって、こういった単体の機械が連続するような段階に来ております。具体的な販売に至る例が増えてきておりますので、アフターケア体制を今検討しているところでございます。粗っぽい数字ですと、現在、海外も含めて二百数十台売れておりまして、売り上げとしては11億円程度になっております。

 これはDTFのミッションにおいて、昨年スウェーデンに行ったときの風景でございます。省エネや省資源という趣旨で、スウェーデンへぜひも来てくれということで、行ったものでございます。

 機械や装置を小さくすることは、メディカル関連機器にも言えることでございまして、今後、DTF研究会ではメディカル分野で貢献できないかという模索を始めたところでございます。その一環として、今年の2月でございますけれども、アメリカのメディカルの展示会にデスクトップの機械を展示いたしました。あと、メディカル関係の企業数社にプレゼンを巡回で行ってまいりました。

 また、カリフォルニア大学のアーバイン校にお邪魔したのですが、その際、大学の中に小型の加工機を集めた教育センターを検討したいというお話がございました。今、接触を続けておりますけれども、DTFの設置に大いに期待しております。

 今後の課題でございますけれども、先ほど申し上げたように二百数十台世界中で売れておりまして、11億円程度の売り上げですが、アフターケアの体制が必要になってきますけれども、メンバーは中小企業が多いので、人的、資金的な負担を今後どうするかという課題がございます。

 次に、信州大学のほうから事例を申し上げます。

【三浦信州大学理事・副学長】  信州大学理事の三浦でございます。知的クラスター創成事業、10年支援をいただきまして、長野県は、上田、あるいは長野地域の産学官連携は非常に整ってきた。企業の方のマインドの問題やインフラとしても整ってきた。信州大学本部は松本にございますが、今まで産学官連携が一番弱い地域でございました。これからの信州の産業をどうしていこうかという議論をしていたときに、先ほどのDTFの研究会、これは小型ロボットのご紹介になっていますけれども、諏訪を中心とした中小企業の方々が、これからの産業はどうだろうということで、医療機器を色々調査、試作などをして、その販路を求めて色々やってまいりました。

 アメリカのミッションと、先ほどご紹介ありましたスウェーデンのミッションに私も同行させていただいたのですが、企業の方々が連携して色々なことをやっていこうということになっております。私が理事になってから、学長とともに、信州大学病院がありながら、産学連携の形から一番遠いところにいて、何とかしようということで、リサーチアドミニストレーターの養成について昨年から正式に動いたのですが、その前からそういったグループを養成していたわけでございます。メディカル関連の中でどういったプロジェクトをやっていけばいいかというシナリオをつくっている中で、幸いJSTさんの「信州メディカルシーズ育成拠点」というのに採択いただきました。

 これを機会に、先ほど申しました松本、あるいは諏訪の方々を中心にする産業界の方で「信州メディカル産業振興会」というのをつくっていただきたいということをご相談したところ、直ちに130程度の企業、あるいは団体の方々が入っていただいた。そういうことで産学の連携の形が整ってきたということでございます。

 そういった中で、昨年、一番上に書いてございますけれども、文部科学省、経済産業省、農林水産省の地域イノベーション戦略推進地域、これに県、産業界と相談して申請させていただいたところ、認定いただいたという追い風がございました。また、現在、文部科学省のご支援をいただいている地域イノベーション戦略支援プログラムで研究推進、あるいは人材育成、コーディネーター育成というソフト面でかなり充実してきております。

 さらに加えて、経済産業省の「技術の橋渡し」拠点整備事業に応募させていただいて、大学病院に隣接した形で「信州地域技術メディカル展開センター」という約3,000平米のインキュベーション施設の建設を現在始めたところでございます。これらの取組によって、長野、上田に続く第3番目の地域連携拠点として、あるいは産学官連携拠点として、長野県における今後の新しい技術をつくっていくメディカルのインフラができてきております。

 その中で、早速、色々な国際的な連携の話も出てまいりまして、DTFの絡みとか、信州大学は色々国際的な取組をやろうとしているという話がございましたけれども、私どもの大学の監査法人、国際的なアーンスト・アンド・ヤングというグローバルなシンクタンク組織がございますけれども、そこのヨーロッパの拠点の方が今年の2月に来ていただきまして、今後のヨーロッパ展開について、色々相談に乗っていただけるというような非常に好意的なお話をいただきました。今年の秋口から秋にかけて、色々な向こうの企業の人たちを連れてくるというところまで話が進んでおります。

 それから、DTFの調査団とは別に、いわゆるメディカル産業振興会として、JETROのブースを1ついただきまして、会員企業が1ブースに4社出して、MEDICAというデュッセルドルフで開かれる国際見本市に昨年度出させていただき、ここでかなりの商談、144万ドルだから1億数千万円の商談がこの1コマでできたということでございます。日本のJETROが25コマ、全体で6億円程度ということでございますから、かなりの成果になったかなと思います。ただ、下の写真、少し画像が悪くて恐縮ですが、いわゆるコンベンションホールの写真で、、ナショナルブースのほとんどの面積をアメリカの星条旗が占めているのがおわりかと思います。16ブースというと25コマですか、日本のブースが隅っこのほうに少しある程度となので、やはり国を挙げてのこういったことが非常に必要なんだろうなと痛感しているところでございます。

 それから、私どものリサーチアドミニストレーターの杉原が昨年度イタリアのほうに行かせていただいたのですが、地域としての産学連携、あるいはこういったクラスターをどうつくっていくのかという1つのいい例がございましたので、紹介いたします。ヴェネト、あるいはミラノに近いのですが、ミランドラ地方という田園地帯にコンソビオメッドという非営利団体がございまして、ここで色々ベンチャー企業の立ち上げを支援して、現在この地域に80社程度のメディカル産業、そういった小さな企業が育ってきている。こういったことをどういった人がやるかというと、最初はたった1人で、そのきっかけをつくられた方がマリオ・ベロネージさんという、もともとは薬剤師で点滴チューブやカテーテルなどをつくったそうですが、いわゆるベンチャーをつくって自分で育てるというのではなくて、ベンチャーをつくったら、それを大企業にすぐ売却して、また新しいことをやる。そういって次々と新しい企業をつくっていくというような手法で、この方は地域をつくっていったということのようでございます。彼のお弟子さんたちがコンソビオメッドのこういった組織をつくって運営している。やはり人なんだなということを痛感いたしました。

 あと、少しこれは医療とは関係ないんですが、信州大学繊維学部がございまして、繊維関連のほうでも、国際的な大学間連携はもちろんしてございますけれども、韓国は、国というよりも巨大な財閥がございまして、この辺じくじたる思いがございますけれども、サムスンなんかと友好協定で色々やっていかなきゃいけない。そういうような状況にもございます。

 まとめでございますが、どうやって国際連携等をやっていったらいいか。これまでの非常に数少ない経験でございますが、結論は人と人になるのですが、私どももこういうことを取組んでいるということを認識してもらう必要がある。先ほどDTFの話がございましたけど、10年間色々な方が入れかわり立ちかわり行くことによって海外での認知度が上がってくる。やはりクラスターを認めてもらう必要がある。クラスター間の人的ネットワークということになります。お互い、行ったり来たりできる関係をどういうふうにつくっていくのか、維持していくのかということであろうかなと思います。そういったことだけですと、意外と費用はかからないのですが、人件費や旅費をどうしようということにもなるかなと思っています。昨年、私もアメリカに行ったときに、ミネアポリスなんかですと、机を用意するから、すぐ1人よこしてくださいといったオフィス等もございまして、長期的に人を派遣しながら連携できる。例えば、メディカルですと、アメリカに1人、それからヨーロッパに1人程度を派遣して向こうのネットワークをつくっていく、そういったことが必要なのかなというふうに思っております。

 私ども地域、地方でございますが、今までご紹介したようなことをベースに国際連携事業を充実させていきたいというふうに考えております。ただ、そのためには、繰り返しになりますが、継続的な活動がどうしても必要でございます。我々だけではなくて、相手方もそういうネットワークをどうしてもつくっていきたい。それから、いいキーマンをつくること。これはこちらもそうですが、向こうにおいてもすぐれたキーマンをどうやって探すか。この辺はしばらくつき合いながら決めていく必要があるのかなというふうに思います。以上でございます。

【近藤主査代理】  どうもありがとうございました。

 それでは、小泉専務と三浦先生、そこにお座りいただいていて、皆さんからご質疑を受けていただきたいと思います。特に、私自身としてはデスクトップファクトリーについて、マイクロマシンプロジェクトの責任者をやっていまして、そのときに、90年代前半ですけれども、予算を取るのに私たちが編み出した言葉がデスクトップファクトリーです。それがこれだけ世界で広まっているというのは大変うれしく、もう二十年程前ですけれども、育てていただいてありがとうございます。

 それでは、皆さん、今、国際展開についてご説明いただいたわけですけれども、それを含めて、長野県の地域における取り組みについて、ご質問、コメントがありましたらよろしくお願いいたします。

 大変よく取組をされていると思いますけれども、実際にビジネスを国際的に立ち上げて、おいしいところ、バリューを取っていこうというところで、国際標準のところを自分たちの技術を織り込んでいこうということで、たしか遠藤先生がISOのワーキンググループの副委員長か何かされていたと思いますけれども、国際標準とか、コンソーシアム、つまり、点ではなくて、そういう面での動きというのは何かされているのでしょうか。

【三浦信州大学理事・副学長】  残念ながら、まだそこまでは行っていないのですが、先ほどのDTFというのは、基本的には国際標準で行っている。

【小泉専務理事】  DTFには色々な分科会があり、国際標準をリサーチする国際標準分科会というのがありまして、そこで情報収集してメンバーに流し込んで、それに基づく設計なり、試作ができるかどうかを各社が検討しているということでございます。

【近藤主査代理】  ぜひ、ここには経済産業省の方もいらっしゃいますから、自分たちの技術を織り込んで標準を提案するようなこと、標準を提案するようなことまでやっていただけると、大変に後でビジネスがやりやすくなると思います。

【三浦信州大学理事・副学長】  そうですね。諏訪でそれぞれの機械をつくっているのは別々の会社の方ですが、インターフェースをどうしようかということがある。今おっしゃったような、シンプルで、なおかつ標準的な形にするというのが、今一番気にしているところかなと思っています。

【近藤主査代理】  よろしくお願いします。ほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【受田委員】  貴重なお話、ありがとうございました。高知大学の受田と申します。

 2点お伺いしたいんですけれども、今、地域イノベーションに関して政策的なことを検討する委員会の場でこういった事例をご発表いただいているわけですから、当然、これまでの地域イノベーションに関する知的クラスターであるとか、都市エリアであるとか、色々な施策に関して評価をしないといけないという点があると思います。今回お話しいただいた事例というのは、そういった予算が有効に使われた事例であるというふうに理解をしているんですけれども、有効に使われたというお立場から見て、事業仕分けにおいて切られたことをどんなふうに受けとめておられますでしょうか。それが最後の「長期的な視点で、長期的な応援を」というところに如実にあらわれていると思っており、少し立ち入ったことをお伺いしておりますけれども、よろしくお願いします。それが1点です。

【三浦信州大学理事・副学長】  実は、私ども一昨年からメディカルに力を入れるという話をしたときに、県、あるいは県のテクノ財団と一番議論したものは、今までの10年のナノマテリアル、ナノテクの知的クラスターをなぜ継続しないのかという議論があったんですね。それで、私も専門はそちらのほうですから、ぜひそういうことはやっていきたかったのですが、逆に言うと、幸い、先ほど少しご紹介があったナノマテリアル系は地域卓越プロジェクトというのを選んでいただいたわけでございます。そうすると、マテリアル系はそれを拠点にグローバル化と産業展開をやっていけるかなという考えが1つございました。

 知的クラスターの反省として、これは私どものやり方の反省なんですが、いわゆる先生方との産学連携がクローズド、どちらかといえばプロジェクトごとにクローズに進められてきた。そうすると、中小企業がクローズドでやっても横展開がなかなかできないだろうということで、地域卓越のときは企業が1つのコンソーシアムを組んで、技術とか成果は横展開をすぐできるようにしてほしいという形で、新しい仕組みをつくり直させていただきました。そういう取組によって、知的クラスターの成果、これからのやり方、個々のノウハウ・技術もございますので、今後やっていけるだろうという見通しがついたという話と、それと長野県の産業構造の大きな転換を図らないと空洞化するだろうという流れ、それから個々の企業が医療技術を志向していたこともございまして、大学としても新しくこれをぜひ加えていただきたいということで今度の地域、大きな枠組みは変えなかったのですが、プラスアルファの分野としてメディカルに今注力している。そういうふうにご理解いただければと思います。

【受田委員】  それともう1点、人と人とのつながりのお話と、人の育成というところがポイントになっているというお話が何カ所かございました。地域イノベーションを実現していく上で、また国際的な展開を進めていく上で、それを担っていく人材、コアになる人材の育成をどうするかというところは、すべての地域において重要な視点かと思います。これまでのキーパーソンは、具体的にはこういった色々な地域イノベーションの施策を通じて育成をしてきたという、いわゆるOJTで育成をしてきたということになるのか。あるいは、ああいったさらに人材の育成の予算、施策というのと絡めてこれまで進めてこられたのか。例えばほかに科学技術振興調整費の人材育成、地域の中核人材に関するものがございますけれども、その実態をお伺いしたいのと、さらに育成に対する要望のようなものがあればお聞かせいただけますか。

【三浦信州大学理事・副学長】  難しいご質問ですが、結果からしますと、OJTの中でふさわしい方々が何人か、県内にもいらっしゃいます。学内、あるいは地域のテクノ財団の中で雇用している方で長けた方々がいらっしゃったということかなと。ですから、今まで時間的にもそれほど余裕ないし、最初からこの人をキーパーソンにということではやってきてこられなかったのですが、これからは戦略的に若い人から育てていく、それから新しい人脈をより強固にしていくというプロジェクトが必要なのかなと思っております。

 私ごとですが、先ほど近藤先生からも国際標準というお話がございましたけれども、私も企業にいまして、例えばパソコンの黎明時など、日本が国際標準からどんどん置いていかれた時期がございます。結局、向こうの標準の議論に加わる人材がいなかったので、そういう人づくりが必要だということがあります。私も企業にいたときに、いきなりはできないということで、まず、アメリカに研究者を1人派遣して、彼が色々な素地づくりをしながら、主要な大学に研究者として留学する人をどんどん増やしていくことによって向こうと対等に話ができる環境をつくっていった。そうすると、おのずと向こうが内輪で議論している、その中に入っていける。そういうようなことが必要なのかなと。色々決まった後で入っても、どうしようもないという状況があるかと思いますので、そういう人脈をつくるには、その程度の戦略的で少し時間をかけた人材育成が必要かなというのは個人的に思っています。

【受田委員】  ありがとうございました。

【近藤主査代理】  どうもありがとうございました。人づくりは大変重要なところだと思います。ほかにございましたら。清水さん。

【清水委員】  清水と申します。国際連携のところで、特にテクノ財団さんのほうに質問ですが、非常に活発な活動をされていらっしゃいます。それで先ほど、11ページとか7ページのところを見ますと、かなり産業構造が同じだったり、あるいは小さいながらも先を見て活動する地域との連携が多い。これはよくわかるが、ただ、どういうふうに企業を巻き込んで連れていって、企業の目線で活動されるのか。産業構造が同じだと競争相手ですよね。ですから、直接的にはそんな影響はないと思うんですが、一体どういうふうに国際連携という名のもとで企業がうまくうまみを、あるいは刺激をできるような相手を選んでいって、選ぶのと同時に、どういうふうに課題を絞り込みをして、相手方とうまく連携を図っていったのか。それが1点。

 もう1つは、経済産業省の事業もそうですが、文部科学省の事業もうまく使っていらっしゃいまして、文部科学省の事業というのは、あまり企業に大きなインセンティブを与えられないところがかつてありました。知的クラスター、都市エリアのお金は企業にはなかなかいかないということもありましたが、補完的に何か企業をうまく巻き込んでいくような策をもともと持っていらっしゃったのでしょうか。それとも大学のほうで何か別途ご用意をされていたのでしょうか。その2点の質問です。

【近藤主査代理】  よろしくお願いします。

【小泉専務理事】  最初の連携のきっかけといいますか、なぜ産業構造が同じような地域にということですが、実はスイスも、昔から時計産業つながりでありまして、向こうはずっと機械式の伝統的な加工で供給してきたのですが、日本からクォーツが出まして、壊滅的な打撃を受けました。昔からそういった因縁があるんですけれども、地形が同じとか、気候が同じとか、あるいは中央からほどほどに離れているとか、そういった共通の意識がありまして、つなぐ方がいらしたんです。現地の機関で日系の方なんですが、向こうで日本の色々なビジネスのつなぎをやっている方、に我々と同じような現地の支援機関が接触されて、日本の進んだ精密加工技術を何とか今の機械式の伝統的な部分に入れたいという話があり、それならば双方メリットがあるのではないかということで始まったのがきっかけと聞いております。今、とにかく現地の日系の方が、代理店みたいな機能も果たしていただけるような状況になってきておりまして、アフターケアなど色々な面でかなり進化すると思っております。

【近藤主査代理】  あとは、企業の方を引き込む何かインセンティブのようなところですね。

【小泉専務理事】  知的クラスターを第Ⅰ期、第Ⅱ期と10年間やってきたんですけれども、最初から実は知的クラスターの応援団のような企業の組織と企業の技術者の組織を立ち上げました。一斉に募集して。そこで研究テーマの吸い上げや発掘の時点から、そういう企業と研究者の発掘を同時にやってきて、企業からのアプローチで先生方の共同研究につながって、結果的には昨年度末で122テーマが走ったということでございます。

 中には成果が出ており、お手元に成果書をお配りしたんですが、まだまだ水面下で、もう少しで技術が完成する、あるいは試作まで至るといった案件もありまして、インセンティブという観点では、知的クラスターが終わって、金の切れ目が縁の切れ目にならないように、次の経済産業省、NEDOなど色々な制度を活用し、とにかくメインテーマを探索しまして、122テーマのうち数十テーマがもう少しで芽が出るということになっておりますので、その辺でとにかく頑張っていきたいと思っております。

【清水委員】  ありがとうございました。

【近藤主査代理】  どうもありがとうございました。時間もそろそろなんですが、もしありましたら、もう1つ程度。高橋さん、お願いします。

【高橋(真)委員】  高橋と申します。ご紹介ありがとうございました。非常に興味深く、今の方の質問に関連して、主に9ページの国際的連携で、いい相手を見つけるためのプロセスについて伺いたいです。最終的にはスイスとイタリア、フランスのそれぞれのパートナーを見つけていて、スイスに関しては、キーパーソンがあちら側に現地の事情と日本の状況をわかった方がいらっしゃるということで、これはすごく強みだと思います。それで質問ですが、1つには、9ページの上のほうの国際展開のための色々なアウトプット、国際的に紹介するような活動をしている中で、相手を見つけたけれども、途中で何らかの事情でこことはやらないなというような、途中でやめる判断をしたことがあるかどうか。2点目は、イタリアとフランスに関しては、おつき合いが続くようなほかの要因があったのかどうか。最後に、国際フォーラムなど、よく産学連携でも大学のシーズを紹介しましょうという活動はなさっていると思いますが、実際にその中で具体の共同研究に発展したところがどのくらいあるかというところを、こういう展覧会や展示会などの効果という観点から伺いたいです。

 以上、3点お願いします。

【近藤主査代理】  すみません、よろしくお願いします。

【小泉専務理事】  この上の知的クラスターの関係で北イタリアのベネトナノテックとMOUを結んでおり、これの始まりは2007年ごろです。その前に、実はイタリアの日本大使館がクラスター交流会を開催いたしまして、その時点では長野県も含めて複数の県が参加して、イタリア大使館でもしよろければつなぎをする、ということがありました。現在も我々とほかにベネトナノテックとは、京都、あるいは多摩地域とか、色々交流をしております。向こうもそれぞれ分野がありまして、長野県とは精密加工をターゲットとしているんですけれども、それぞれ色々な分野で日本の他地区ともやっている。ただし、濃密度は、私どもは途中でやめるということではなくて、ベネトナノテックの会長さん、ニコールさんというんですけれども、東京の展示会に来たときには必ず会いに行ったりするなど、とにかく接触したり、英語ができる専門職をつけて、ふだんメールでやりとりしたり、とにかく他地区よりも濃密にやろうということがございまして、とても手を下げることは考えておりませんでした。そういったことが地道につながって、実際にサンプルをやりとりしたり、あるいはデザイナーでイタリア側の応援を頼んだりとか、そういった具体的な検討に入ってきているところでございます。

【三浦信州大学理事・副学長】  これは直接的な話ではないんですが、10ページのところにも、例えば北米カナダのナノケベックとは結構早くアライアンスを結んだりしましたが、この地域はあまり産業がないわけです。そういうところとは何となく疎遠になってきている、つき合わないと断るわけではないんですが、そういう濃淡が出てきていることは事実だと思います。

 あと、長野県が何でこういった国際的にやりやすかったか。これは私の感想ですが、11年前に長野オリンピックをやった関係で、海外と何かやるときに、長野市や県に国際的な交渉を色々やった人材が結構いたという事実は大きいのかなと。たまたまテクノ財団にも長野市から出向で来ていた方がオリンピックの推進をやった方で、英語ぺらぺらで海外とのアレルギーが全くない方がいらしたことが1つあって、こういうことがやってこられたかなと思っています。

【近藤主査代理】  よろしいですか。どうもありがとうございました。まだご質問があるかもしれませんけれども、まだほかに2つプレゼンを控えておりますので、この辺で1つ目のプレゼンを終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。

 それでは、2番目のご発表は、東京大学の松原先生、よろしくお願いいたします。

【松原委員】  ただいまご紹介いただきました東京大学の駒場キャンパスにおります松原宏と申します。本日は貴重な時間をいただきまして、「地域イノベーションシステムの研究成果と課題」につきまして報告させていただきます。

 初めに、私自身は経済地理学というのを専門にしております。1980年代後半以降、新しい産業集積・産業クラスター・地域イノベーションシステムに関する理論・実態・政策、こういったようなものに関する研究は膨大な蓄積がなされてまいりました。1997年あたりから私も集積論の議論をフォローしていますけれども、マイケル・ポーターがクラスターの理論を出して以降、爆発的に研究成果が増えまして、とても私個人ではフォローできない膨大な研究蓄積がなされております。一番後ろのほうに文献リストをつけさせていただいていますが、2006年に『経済地理学』という東大出版会から出した本、あるいは2007年に知識のフローについて注目して、地域イノベーションシステムの議論がイギリスあたりから起きてきたんですけれども、そういう話を紹介したり、カナダのガートラーという私の経済地理学と同じ専門分野の研究者などの研究成果も紹介させていただいています。そこでは地域イノベーションの類型化などもされておりますけれども、今日は主に新しい話をさせていただければと思っております。

 OECDのこのレポート等にも示されておりますように、産業クラスターや地域イノベーションに関する政策は世界的に広がって、政策評価を含めて国際比較が活発になされてきているかと思います。それに対して、先ほども事業仕分け等の話がありましたけれども、日本のクラスター、あるいは地域イノベーション政策というのは色々混迷しているように見えます。どうすべきかが私自身の問題意識の中にあります。本報告は、地域イノベーションシステムに関するOECD等の研究成果や、あるいは成果の可視化に関するアプローチを紹介させていただいて、それらの特徴と問題点を明らかにして、今後の課題を考えてみたいと思っております。

 地域イノベーションの研究の現状としては、前回の委員会でも多少発言させていただく中で紹介させていただきましたけれども、OECDが地域イノベーションに関するレビューを2007年あたりから毎年のように出してきております。2008年あたりのイングランドの北部、あるいは2010年あたりのスペインのカタルーニャあたりの色々なレポートは非常に参考になるものかなと思っておりますけれども、2011年にOECDが、こういうレポートを出しております。これが一番新しくて、そして総括的なものだと思っておりまして、その紹介をここで少しさせていただきます。

 大きく2つのパートに分かれておりまして、戦略、政策、ガバナンスに関するもので、1)と書きましたけれども、それぞれの1部、2部の中で1章に当たる部分で「イノベーション政策における地域の重要性」というのが出されております。地図が出ておりまして、そこで私にとっては新しい用語だったのですが、Knowledge hubsというものが出されて、グローバルな世界地図の中で、ロンドンであるとか、イル・ド・フランスであるとか、ベルリンであるとか、あるいはアメリカで言えば、カリフォルニア、マサチューセッツあたりが出ています。アジアに目を移してみますと、日本は空白になっております。これは多分、資料上の関係だと思いますけれども、やはりこういう重要なレポートで見たときに、日本にKnowledge hubsというのがないというふうに思われてしまうのは非常にまずいと思い、最後のところで課題として提示させていただきます。お隣、韓国ではソウル首都圏というのがKnowledge hubsとしてしっかりと出されております。あと、ここにあるようなIndustrial production zonesであるとか、Non-S&T-driven regionsという、この3つのようなレベルの違うイノベーションの地域といったようなものをOECDの最新のレポートでは描き出して、具体的な地域名等もリスト化されております。

 あと、ロードマップであるとか、スマート・ポリシィ・ミックスであるとか、多層ガバナンスであるとか、こういう地域の中でイノベーションを考えていく上で、それぞれ国によって連邦制の国だとか色々ありますので、そのあたりのガバナンスの議論が色々されております。

 パート2ではエージェンシーという言葉を使っておりましたけれども、機関であるとか、手段であるとか、そして最後に国別の情報といったものが提示されております。そこでは国の中のマップの中で地域がどういうふうに描けるのかというようなこと、あるいは統計データも含めてまとめられております。

 あまりこの辺の紹介をゆっくりしていると時間がなくなりますので、簡単にどんどん行きたいと思いますけれども、地域イノベーションシステムという概念をおそらく最初に言ったのは、編者の最初に出ていますイギリスウェールズにいる研究者、Philip Cookeだと思いますけれども、ナショナルイノベーションシステムの議論、そこに地域を入れて、『Regional Innovation Systems』という本を出しております。論文ももちろん出しており、それが1990年代初頭だったかと思いますけれども、2011年にハンドブックという625ページもある本が出ております。そこでは、第7部までたくさんの文献が出ておりますけれども、理論であるとか、成長ダイナミズム、進化、集積、多様性のある地域的な世界が描かれておりますし、システムの諸制度であるとか、最後は政策の議論がされております。

 ただ、私もまだ十分細かく見ておりませんけれども、総じて言えば、知識のフローであるとか、進化論的なアプローチの導入であるとか、議論の広がりは見られるんですが、地域イノベーションシステムとして、なぜそういうシステムとしてとらえるかという意義であるとか、あるいは方法論というのは依然として深まっていないように思われます。今日はそういう理論っぽい話ではなくて、地域イノベーションの分析手法に話を移しまして、この話を中心にさせていただければと思っています。

 3つほどのアプローチをここで紹介したいと思っております。1つは社会ネットワーク分析を使った可視化の試みということです。私自身、文部科学省の科学技術政策研究所の客員研究官をさせていただいておりまして、その中で、2009年に三橋・松原・與倉といった3名で報告書を出させていただいています。そこでは、経済産業省の地域新生コンソーシアム、それから文部科学省の知的クラスター、それと地域結集型のプロジェクトの3種類を取り上げて分析をさせていただいています。

 このネットワーク分析自体は、私というよりは、私のところの研究室におります助教の與倉豊というのが主にやっておりまして、1の話は彼の分析をここで簡単に紹介させていただきます。このネットワーク分析は、1、2、3と書きましたけれども、共同研究と介した主体間の関係構造を可視化する。可視化するとともに比較をするといったようなことをまず第1のねらいにしております。

 2番目はネットワークの地理的な広がりと地域関係の把握。冒頭申し上げましたように、私の専門は経済地理学というものですので、地図に落としてみる。社会ネットワーク分析自体は空間的な視点というのは必ずしもあるわけではありません。私の関心ということもありますので、2番目はこういう地理的な観点というのを入れております。

 3点目も地理的な観点とかかわってくるんですけれども、研究分野、あるいは主体の属性によって知識フローのいわゆる流動の距離感ですね。近接性であるとか、遠い関係とか、そういったようなものの差異に着目したいということです。

 分析データは、ここにあります「知的クラスター創成事業」の2002年から2007年の18地域、研究テーマ数は124、研究実施主体は延べ1,006をエクセルのデータで社会ネットワーク分析をしまして、ネットワーク記述統計量というのを、少し細かいのでここは省略いたしますけれども、横に18地域を並べまして、次数中心性、標準媒介性、コンポーネントを取っています。実際に、これが金沢地域の例ですけれども、赤い円で示しております、その円の大きさがいわゆる媒介中心性と考えていただければと思います。線がそれぞれ延びているかと思いますけれども、その線といったようなものが何本引かれているかというのが次数中心性というふうにお考えいただければと思います。コンポーネントというのは、まとまっているのが幾つあるかという話になってきます。

 そういったようなものを記述統計という形で表にしておりますけれども、札幌地域などを見ると、次数中心性で「公」の、いわゆる公設試あたりの値が高くなっています。そういうことで特徴をつかんで、実施18地域を全部図示化しておりますけれども、ここではクラスター分析を使って、18地域を5類型に分けております。その5類型というのは、グループの1から5まで、「学」、いわゆる大学が中心となっているような集まりとして、1から6までの地域が類型化の結果、出てまいります。それから公設試などが中心になっているのがグループ2で、後から紹介します福岡地域はここに入っております。それからグループ3、グループ4は重複していたり、あるいは複数であったりですけれども、グループ5が産業、経済、企業が中心といったグループでありまして、赤で示した3つの事例地域につきまして、社会ネットワーク分析、それから地図に落としたような成果をここでは紹介させていただきます。

 一応、データとしては個々の主体の名前というのは公表しないこととしておりましたので、想像はつくかとは思うんですけれども、アルファベッドで、略語で示させていただいております。これは金沢地域でありますけれども、Kz.U.という大学の(m)という学部がハブになって公設試が青い四角、それから三角印の企業と色々なネットワークをつくっているのがわかるかと思います。大学が中心になっています。

 これは、先ほども言いましたけれども、空間的な要素は入っていません。私どもの教室ではGISというんですけれども、地図化することを行っておりまして、日本地図の中で各主体である産・学・公がどういう形で関係し合っているのかをネットワーク分析とGISを使って地図化しております。金沢の知的クラスターのプロジェクトの中で、三角形と言っていいと思いますが、東京と金沢と大阪といったようなきれいな三角形が見えるプロジェクトとなっています。三角形が見えないというものと色々あるんですけれども、地域間関係についてはここでは類型化していないんですけれども、こういったような形で地域間の関係というものを見ていくことができます。

 それから、少し言い忘れましたけれども、2つの線の太さで100キロ未満のつながりと100キロ以上で線の濃さを分けております。金沢のあたりで、地域内で関係が強ければ、そこが非常に濃く見えるようになっておりますけれども、ほかと比べてみるとどうなるか。富山・高岡地域、これは公設試、「公」を中心としたものであり、青い四角で示しましたものが中心となってネットワークがつくられている。ただ、そのネットワークのつくられ方は、先ほど見ていただいたものとかなりパターンが違っているかと思います。

 これは研究プロジェクトごとでどういう関係をつくっているかということをあらわしているわけですが、それを地図化しますと、富山・高岡のほうが、どちらかというと地域内の濃さが目立つような感じもします。三角形というのはきれいには出てこなくて、もう少し広域的なつながりというか、北海道、中国地方とのつながりなども出てまいります。

 3番目の「産」を中心とした愛知・名古屋地域でありますけれども、T.C.と書いた企業、それからS.S.、これは産総研の中部センターだと思いますが、こういったようなものが中心になってネットワークがつくられている。地図に落としてみますと、ここは東京と愛知・名古屋地域との関係が非常に強いというのがわかるかと思います。

 このような形で可視化するとともに、図7に示しましたのは、主体属性別・距離帯別の共同研究開発の割合ということで、少しまとめのように書いておりますけれども、全体としましては、100キロメートル未満の共同研究開発の割合というのは5割は超えています。その中でも、公と公、いわゆる公設試同士の共同研究というのは非常に近い関係といったようなものが際立っているというのが、上から3番目のところで見て取れるかと思います。逆に黒く塗りつぶしているのが500キロメートル以上の比較的距離のある関係ですけれども、それは学と学が、相対的ですけれども比率としては高くなっている。

 知的クラスターの場合はこういう形で示しましたけれども、経済産業省の地域新生コンソーシアムを分析したものにつきましては、ナノテクであるとか、ライフサイエンスであるとか、製造技術であるとか、研究プロジェクトごとの性格で距離がどうなっているかというのを見ております。おしなべて言えば、ライフサイエンスであるとか、情報であるとか、サイエンス型のいわゆる大学の知識を中心としたような分野については比較的距離のある関係というのが構築されています。逆に製造技術のような、ものづくり系については、比較的100キロメートル未満の共同研究といったようなものが多くなっております。

 いわゆる成果と研究開発プロジェクトをどうやって結びつけるかは、色々なところで問題になり、なかなかうまくいかないんですけれども、ここでは経済産業省の地域新生コンソーシアムのデータの中で、事業化したネットワークというのを摘出できるような形でそこを太い線で示しております。どういう主体間関係の中で事業化が達成できているのか。逆に達成できていないプロジェクトはどういうところなのかを摘出していくというようなことを示しております。これは1つの試みということです。

 東北地域を示しております。東北地域の場合、ご覧いただくとわかりますように、左側が仙台あたりのT.U.(e)、S.S.(to)とか出ていますけれども、仙台あたりを中心としたネットワーク、右側、Y.K.であるとか、A.U.とか、I.U.という、岩手とか山形とか秋田というような研究開発のネットワークも頑張っており、東北の場合には2つに左右に分かれているようなパターンをネットワーク上、示しております。

 それに対して、関東、近畿、九州もそうなんですけれども、星雲状という形で非常に大きなネットワーク構造というのをつくり出しておりまして、こういう可視化する形でネットワークの特性が見られる。これは経済産業省のプロジェクトですので、ブロックごとにしか図はつくれないんですけれども、そういうブロック間のネットワーク構造の差を示すとともに、ご覧いただくとわかりますように、中心のところにかなりの事業化を達成していくようなネットワークが集まっているのがわかるかと思います。

 こういうものをもう少し数量化した形で出せないかということも色々考えているところですけれども、次のアプローチで、産学共同研究のリンケージ分析、この間学会発表がありまして、小柳真二さんが書かれた九州大学の修士論文が私にとっては非常にインパクトがありましたので、許可を得て使わせていただく形で今お示ししていますけれども、分析対象は九州大学の教員による2007-2009年度の共同研究実績です。産学連携センターの年報をデータベースにしまして、教員と企業との連携関係があることを1つのリンケージとみなして、どういう分野でライフサイエンスから社会基盤まで、2007、2008、2009で共同研究がどのように増えていったかとリンケージ数を示しております。ただ、どういうふうに重みをつけるかというのも重要なんですけれども、ここはリンケージの重みは考慮せず、共同研究がある場合には1つのリンケージと見ております。

 その後、私が興味を持ちましたのは、連携相手の所在地を分野ごとに示しております。首都圏、緑が非常に目立つかとは思うんですけれども、あとは福岡県が目立つところは環境であるとか、社会基盤であるとか、比較的青っぽいものが目立ちます。それから、ライフサイエンス、ナノテク材料の場合には紫で示しました近畿圏あたりが出てきます。こういったような形で連携相手の所在地とともに、今度は連携相手組織が大企業なのか、中小企業なのか、大学発ベンチャーなのかという色分けをしております。

 全体としては大企業との関係が大きいですけれども、中小企業との関係がどの分野で多いかを示しています。これを九州外/内と、それから大企業と中小企業という形でX軸、Y軸で示しまして、結局、この右上のところに入ってきますと九州外の比率が高く、域外の相手が高く、そして大企業との相手が多いといった分野になってきます。左下の部分は、むしろ地域に密着して中小企業との関係が強い形でいわゆる産学連携と地域との関係、あるいは分野との関係を分析していくことも非常に重要な研究になっていくのかなというふうに思っております。

 3番目、私はこういう計量的な分析はしませんし、むしろフィールドワークを中心にして、伝統的な地理学の手法なども使って地域実態分析に基づく比較を提示させていただいています。

 私自身は、東大の前は12年間ほど福岡の西南学院大学というところにおりまして、福岡・九州については、毎年のように九州経済調査協会の人たちと半導体産業の分析などをしておりました。東北については、色々最近勉強させていただいているんですけれども、ここでは産業クラスターの第Ⅰ期と第Ⅱ期、それから知的クラスターの第Ⅰ期と第Ⅱ期というのを並べております。仙台・東北地域と福岡・九州地域を比較させていただいております。色々な比較の仕方はあるかと思うんですけれども、これは最近書いた論文の中からとってきたものですけれども、分析の基軸としましては、かなり長期的な地域の社会経済史といったものを分析しております。これは戦前からの仙台・東北地域、福岡・九州地域の分析で、いわゆる地域イノベーションの歴史的な形成プロセスというのをまずは重視する。それから空間的なスケールも、仙台や福岡にかかわらずに、東北、九州といった重層的な空間スケールの中でこういうものを分析していく。3点目は、プロジェクトをこういったような経済産業省、文部科学省のプロジェクトの中における主体間関係について注目しております。

 そういう話をゆっくりしている時間はありませんので、全体的な特徴だけ言いますと、福岡・九州はご紹介が大津留先生から後であるかと思いますけれども、ターゲットがはっきりしている。ずっとぶれない形でシリコン・クラスター、それからシステムLSIの設計開発、先端システムLSIという形でキーワード、ターゲットの分野がはっきりしている。逆に、東北地域は産業クラスター第Ⅰ期、第Ⅱ期で変わっていますし、知的クラスターも第Ⅰ期、第Ⅱ期で変わっているように、迷いながら全体としてはぼやっとした形でのテーマ設定というか、ターゲット設定をしています。

 ただ、どちらかというと、東北はいわゆるソーシャル・イノベーション、社会的なイノベーションを目指しているように思います。それに対して、福岡・九州のほうは産業経済を軸にした経済的な要素の強いプロジェクトだと思います。ただ、後でも話をいたしますけれども、ここで出てくるような形でクラスター政策の空間構造比較をしております。その前に知的クラスター第Ⅱ期の中間評価を見ますと、先進予防型健康社会創成仙台クラスターはC評価がされ、福岡先端システムLSI開発クラスターというのはS評価がされています。CとSの違いというのは何なのかというのは、かなり大きな差があるようには思うんですけれども、色々な文書を見ますと、仙台あたりではリアリティーに欠けるといったような話で、非常に難しい分野にチャレンジをしているとは思います。

 では、この図でいうと、大学で言えば、東北大学、九州大学を比較しておりまして、パワーは、特許の件数であるとか、色々お金を持ってきている件数は、東北大学のほうが明らかにまさっております。ただ、東北大学がまさっている理由というのは、域内との関係というよりは、この太い線で書かせていただきました東京との、特に東京の大企業との関係の中で非常に多くの実績を積んでいる。ですから、知的クラスターのようないわゆる政策で取り上げているものと、実態の産学連携の成果は、やはり乖離があるという形で見ていく必要があると思います。

 また、破線で文部科学省の知的クラスターの空間構造を概念化しておりますけれども、東北のほうは仙台市を中心にして、市民も巻き込んだ形でのソーシャル・イノベーション的なことをやっていこうとしております。それから福岡のほうは福岡県が中心になりまして、北九州や飯塚等も含めて、県内での関係を密にしながら発展してきているかと思います。そういう面では、政令市と県、どちらが知的クラスターの中で中心になるかというのも空間構造形成では違ってくると思っています。

 国際化との関係で言えば、仙台市の中にフィンランドセンターがあることもあって、フィンランドを軸にしているんですけれども、やはり無理がかなりあるようにも思います。それに対して、あとでご紹介いただくことが多いかと思いますけれども、他のアジア諸国と福岡とのつながりは非常に重要な軸が形成されてきていると思います。これは先ほど長野のご紹介にもありましたけれども、いわゆる国際的な戦略というものをどう構築していくかは、空間関係をしっかりと把握していく必要があると思っています。経済産業省の産業クラスターについては実線で書かせていただいているんですけれども、東北は第Ⅱ期になりまして、ものづくりクラスターという形でかなり拠点を明確にした形で、米沢であるとか、北上川であるとか、広域仙台、広域郡山というような形で、かなり空間構造を明確にしたクラスター形成というのが打ち出されました。

 それに対して、九州のほうは九州経済産業局、局内での空間構造はあまり明確ではなくて、北部九州に集まる中で逆に、九州の産業クラスターについては南北の格差問題をどうするのかが課題になっているように思います。こんなような形で空間構造を、実態把握を含めて見ていくのが、3番目のアプローチとしてあると思います。

 大分時間を経過して申しわけありませんが、最後に、今後の課題として3点ほど述べさせていただきます。1つは、この間ご紹介しましたように、地域イノベーション政策をどう評価するかということ。ネットワーク分析による可視化なのか、地域実態分析、その間に色々幅はあるかと思いますけれども、両方ミックスさせてやっていくことが大事だと思っています。切り口としては知識フローが考えられ、サイエンス型、ものづくり型、それからこの図では都市集積の中で感性系というような、広告業であるとか、ファッション産業であるとか、そういうものも取り上げております。いずれにしても、こういったようなタイプに分けて、集積地域も大都市圏から学研都市まで色々なタイプがありますので、そういうものを考慮しながら評価をしていくべきというふうに思います。

 2番目は、先ほど冒頭にもOECDのレポートを紹介させていただきましたけれども、Knowledge hubsを日本でどういうふうに高度化させ、評価していくこと、打ち出していくことが大事だと思っております。グローバルな競争のもとでの広域経済圏との関係が重要になってくるかと思います。

 3番目が地域イノベーションシステム論の発展可能性ということで、これはアプローチをさらに進化させる形で、フォーマル/インフォーマルネットワーク進化の分析についてです。今日は時間がもうなくなりましたので、もし質問があれば紹介させていただきます。浜松について、先ほど紹介した與倉が、フォーマル/インフォーマルなネットワークの進化の分析をやっておりまして、その成果を紹介できればと思いましたけれども、少し時間も来ていますので、少し質問の中で紹介させていただければと思います。

 最後、システム特性の把握と比較の方法論ということで、こういう形で産学官の中で色々な要素を入れていますけれども、一番私自身が強調したいのは、この真ん中に書いています「地域イノベーションシステムの特性」に焦点を絞った評価、分析が必要だ思っています。

 最後、急ぎましたけれども、以上で報告を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。

【近藤主査代理】  どうもありがとうございました。

 それでは、有信先生がいらっしゃいましたので、これからの議事の進行は有信先生にお願いしたいと思います。

【有信主査】  遅れましてすみません。それでは、今のご説明に対して、質問、コメントがありましたら、どうぞよろしく。

【川島委員】  日本経済研究所の川島です。貴重なご講演ありがとうございました。

 1つ質問ですけれども、ノードを構成しているデータは、例えば論文であったり、特許であったり、そういったものの共著関係を見ているのでしょうか。

【松原委員】  これですか。

【川島委員】  はい。ネットワークのノードについてなんですけれども。

【松原委員】  これは共同研究だと思うのですが。

【川島委員】  共同研究というのは、具体的には例えばどういった対象なのかということなのですが。

【松原委員】  論文で書いているとか。

【川島委員】  はい。

【松原委員】  それは色々なものを含んでいると思っております。

【川島委員】  そうしますと、例えばあるテーマにどれだけの主体がかかわっているかということを1つのノード情報としているということでしょうか。

【松原委員】  ここでは産学連携センターの年報に出ている、そういうものをリスト化したものだと思います。共著関係で論文をベースにした分析も、もちろん行ったものもあると思いますし、今日、その部分は紹介していません。

【川島委員】  わかりました。ありがとうございます。

【有信主査】  ほかにありますでしょうか。はい、どうぞ。

【中武委員】  鹿児島大学の中武です。貴重な発表ありがとうございました。今の質問、私が答えるのも変ですが、九州大学の産学連携センターにおりました経験があり、「年報」にも関わっておりましたので、情報を補足いたします。一般的に共同研究の相手先企業、タイトル、区分、こういったところが情報として「年報」に記載されています。公開されている情報はそういう情報ですけれども、共同研究の契約書から起こした詳細な情報もございますので、今、ご質問にあった内容も深く掘り下げていけば、探れるかと思います。

【有信主査】  はい、どうぞ。

【井上委員】  東北のクラスター、仙台のクラスター、九州・福岡のクラスターの比較、

非常におもしろく拝聴させていただきました。東北のほうは、半導体デバイスの蓄積がものすごく強力で、日本のみならず、世界の半導体産業に非常に大きい貢献をこれまでしてきていると思うんですね。ただ、クラスターの第Ⅰ期、第Ⅱ期でテーマが変わっていますように、途中で非常に大きく分野の路線変更をしています。なぜ、本来強みが蓄積されている半導体やデバイスをベースにクラスターのテーマを選定しなかったのかという疑問が当時からもありました。一方、福岡のほうが非常にコンパクトにまとまって深堀りをして、ここまでいい成果を出していて、それが恐らく福岡のSと仙台のCという評価になっていると思うんですけれども、今後テーマを選別していくときに、自治体の中でのSWOTの分析ですとか、地域内の産業・技術蓄積の状況ですとか、そういった自己分析とそれに基づく戦略構築というものが非常に重要になってくると思うのですが、その辺で何かご示唆みたいなものがあればと考えます。

【松原委員】  産業分野で半導体と言いますと、確かに東北地域は、地方分散される中、シリコンロード東北という形で半導体産業を立地しました。九州はシリコンアイランド九州という形で70年代、80年代と立地してきましたけれども、2001年にITバブルがはじけまして、東北地域の工場閉鎖というのが相当目立ちました。そういう面では半導体産業自体もちろんグローバルに見る必要があるんですが、国内に関して言いますと、東北地域での衰退が背後にはあり、逆に言うと、九州はそういうものがかなり残った形になるかと思います。システムLSIであるとか、そういう分野で九州がかなり力を持っていた。そういう面では産業分野のトレンドを、グローバルな競争の中でしっかりとらえてターゲット、プロジェクトを定めていくことになるかと思います。しかし、ご承知のように、今、半導体もそうですし、先端の分野になりますと相当変動が激しいので、そこを中長期的に見るのはなかなか難しいと思います。そのサイクルも非常に短くなってきています。しかし、しっかりと見ていく必要があると思っています。

【野長瀬委員】  私は、松原先生の著書を何冊も読ませていただきましたが、非常に立派な研究を普段されていると日頃感じております。一方、CookeさんのRISに関する論文等を読んでいて、この内容を起点に、どう政策展開するのか、読んでいて正直言ってよくわからないという印象を持ちました。実際に欧州で行われている政策というと、SBIRライクな政策や、マッチングファンドによる地域R&D支援策のように、日本やアメリカと大きな差異はないものが展開されています。RISがNIS(ナショナルイノベーションシステム)とどのように区分されるのかも、正直言って疑問があります。先生の研究を拝見し、なるほどと思ったのは、公的なデータを集めても、地理学的に色々な分析ができるということです。私は、経済産業省系の産業クラスターにも複数地域でかかわった経験があります。その経験で言いますと、産業クラスターの場合、知的クラスターと少し違うのが、当初、広域多摩地域という集積の厚いところでモデルケースをつくっていったということです。昭和40年代に、東京から工業再配置政策で多摩地域やその周辺に色々な研究所や企業拠点、大学が移りました。広域多摩地域の場合、神奈川、埼玉、東京周辺部の地域指定をしました。産業クラスター政策は、県の中に閉じたプロジェクトは都道府県に任せればよい。だから、広域多摩地域のように複数の県にまたがった産業集積地域を指定しようという意向が強かったわけです。お話の合った東北地域の場合だと、イノベーティブな企業が多摩に比べて広域点在している。松原先生の研究成果は、まさにそのあたりをご指摘されている。東北の場合、核となる宮城県は、京都府と似ていて、政令市の占めるウエートが圧倒的に高い。福岡の場合ですと、周辺部に北九州や有力な産業地域があって、比較的県内に複数の力のある地域がある。宮城県の場合、仙台一極集中であり、このあたりの違いが、先生の分析を見て再確認できました。感想ですが、どうもありがとうございました。

【有信主査】  もう1つ手が挙がっています、どうぞ。

【福嶋委員】  私も東北のほうの、特に産業クラスターの第Ⅱ期で仕切り直しのとき、少しかかわったことがあり、今、野長瀬先生がおっしゃったように、色々な地域に点在している。色々このクラスターの形成の会議のときにも市町村の人が来たわけです。初めはもっと集中すべきだということで、切ろうという議論にもなったんですけれども、どこかを切ることはできないという結構平等主義的な考えで、結局最後はそれで押し切られたということがありました。ところが、色々な市町村の人たちが入ってきて、結局ばらまき的になってしまったのは聞いておりますし、見ております。

 こうやって考えると、今回、松原先生のご発表ですごく重要だなと思ったのは、クラスターの境界を適切にある程度設定しないと、その適切さが何かはわからないんですけれども、なかなか効果が出なくて、分散した結果を導いてしまうのかと思います。クラスターの境界という議論はまだあまりされていないと思うんですけど、これから必要なのかと。

 あと2つ目、産業ごとにネットワークの形成の仕方が違うというのは、すごくおもしろい発見だと思います。我々、現実生きていく中で、こういうのは何となく感覚的にわかっていたことではあるんですけれども、政策評価していくときには、要はどういう産業、どういう分野を選んだかによって評価の仕方が全く違うということも、この研究から言えるのではないかと思いました。ありがとうございました。

【有信主査】  どうもありがとうございました。申しわけありません、まだまだこの辺になると議論とどまるところがないと思いますけども。

【松原委員】  一言、すみません。最後ネットワーク進化の話を1分弱でさせていただければと思います。浜松地域を事例にいたしまして、前回の委員会でもありましたけれども、色々なプロジェクトが動いている。そういうものの進化過程のようなものをどうやって可視化できるかというところで、ここはまずはインフォーマルなネットワークの第Ⅰ期、第Ⅱ期という形で、上が第Ⅰ期で、第Ⅱ期がその後なんですけれども、こういったような形でネットワークがどう変わってきたかを可視化することができますし、今フォーマルなのが知的クラスター、産業クラスターですけれども、浜松の場合にはフォーマルなものとインフォーマルなものがどう関係しているのかも見ていく必要があると思って、まだ分析途中なんですけれども、最後につけ加えさせていただきました。どうもありがとうございました。

【有信主査】  どうもありがとうございました。今回の報告で、具体的にどういう形になっているかをどういう視点で見るかについて、色々示唆が得られたと思います。あとは次にこれをどう生かしていくかがこれから課題になると思います。どうも本当にありがとうございました。

 それでは、引き続きまして大津留委員から、資料3-1に基づいて「地域科学技術施策の課題と展望」についてご説明をお願いします。申しわけありませんが、説明20分程度で、よろしくお願いします。

【大津留委員】  皆様、こんにちは。福岡から、大津留でございます。ちょうど3月末で第Ⅰ期、第Ⅱ期を終えまして、今日はお題をいただいたものの中から、私どもがやってきたことのレビューと、今後、皆様に議論いただく1つのアジェンダをお示しできればと思っております。資料は、お配りしているパワーポイントについては、今日はあまり説明しません。見てください。皆さんの目力でどんどん情報はおとりになれる。むしろ文章のほうが込み入っていますので、そこで何が起きていたのか。次にどういう方向で皆さんに議論をいただくといいのかという視点で発表したいと思います。じゃあ失礼して、少し座って。

 まず、3つのセクションでご案内します。まず、どう取組んできたのかということ、この5年間、特に取組んできたダイジェストでございます。いつも冒頭にこれを出すんですが、地域発のどうなりたいかというビジョンが明確に示されているかどうか。これが政策面、実行面でぶれない。これをころころ変えてしまうと迷走しますので、福岡はこれに固守した。

 私もたまたま半導体の世界で30年以上この地域で仕事をしていますので、生産から開発、開発から設計、設計からマーケティングと、この地域の進化論とともにある。この資料は第Ⅰ期から第Ⅱ期の節目のときにレビューをしたリストです。一つ一つ申し上げませんけれども、真ん中の3点、やはり戦略的な研究開発をしないとだめで、世界的なベンチマーキングをする。どの立ち位置で研究されていかについては、全部レビューしてほとんど内向きは排除。ベンチマーキングですね。先生の自己満足型のものは、一応見ますけれども、出口から見ると非常に厳しいテーマもございます。それから人材育成ですね。これも頑張ってきました。それから一番問われていたのが国際展開でございます。それを絵柄にしたものが第Ⅰ期、第Ⅱ期において、集積の取りまとめの指標、研究開発そのもの、人材育成、出口は拠点をつくる、世界に向かうということでございました。

 このスキームで当初300社、リーマンだとか、震災もございましたけれども、24年度中で300社はいくだろうと見ていまして、1年遅れでございます。当初から元麻生知事へのコミットメントは200社だったんですけれども、トップですから300と言われまして、253という経過でございます。それから研究開発、交流、人材育成、ベンチャー育成。これは日本全国の皆様方がやっていることですから、これをいかに絞り込むか、フェーズアップするかで、最初、私はこの5年間をこういう設計をしました。

 正直申しまして、私、企業から九州大学に少しいたんですけど、最初お声がけいただいた六、七年前は産学連携がよくわからなくて、大学時代は個々には先生を見ていたんですけど、一言でいうとシステムがない。大・中小企業、商店街、アーケード型でばらばらになっている。だから先生中心の商店はたくさんあるんですけど、どちらを向いているんだと。全く統制がとれていない。だから大学なんですけど。

 じゃあ、どうしようかということで、少し大学にいて何年か勉強していたせいもあって、あまり強烈な企業モデルを入れると馴染まないので、企業モデルを3倍薄めて、3倍遅くして始めて、このとおりやっています。それを振り返ると、ここの文章は少し丁寧にいきたいんですけど、19年度は、当時法人化の流れもあって、これは大学のとき、しっかり聞いていたのですが、研究システムの改革して、それから各チームにプロジェクト管理体制をつくってくださいということで、団体戦になるようにしようとした。組織運営を導入しましたけれども、導入も強烈に入れると、先生たちがみんな逃げてしまいますので、コーディネーターが尽力してゆっくりしっかり入れまして、そのとき一番粘着力が要る時代だったんですけど、約1年半かかりました。先生、システムでやる仕事もあるんですよということですね。次は2年目に評価を全部ロジカルに客観的に公明正大にやりまして、内部では全部ランキングしようということで、公表しました。

 24プロジェクトありましたので、1位から24位が公開される、これは随分議論しまして、喧々諤々で、先生たちのプライドが怖いという感じでした。でも、システムでそういう簡単な仕組み、評価システムで開示し、下のランキング、3、4テーマについては予算を削り、統廃合を指示しました。こういうことを全国でやられたことがあったのかは、知りませんけれども、かなり全国のクラスターから「本当に大津留さんやったんですか」と言われた。ただ、先生たちの研究テーマを否定するというよりも、知的クラスターというのは出口に出るということが使命なので、とてもじゃないけど事業化しないと。我々外のプロの目から見たら、どういうふうに言おうと、団体評価で事業化しないのが明らかなものが出てきましたので、それも手直し入れて、最後は予算を動かした。

 だから、僕も外資系にいたので、企業でも何でもそうですけど、自己評価力、相当評価システム、評価プロトコルが世界のメジャーは強烈に持っていますから、それを5分の1程度に薄めてここに導入した。評価力がつくということは、実行力、設計力を問うわけですから、あやふやな研究テーマは全部はじかれます。出たふりでは通用しないということです。研究の深堀りをされるテーマはいいんですけど、世の中に出るといった瞬間に事業的な要素でやったということです。

 3年目、中間評価をおかげさまでいただいたのですが、内部ではこれをいただいた後にすぐ忘れてくれと言った。Sで浮かれている場合ではないと。世界レベルで見たらまだ、国内相対評価はいただいているけれども、世界から見たらBクラスだとはっきり申し上げまして、問い続けました。

 平成22年度、いよいよ出口が近づいてまいりましたので、複合性、業際性、学際的であることは当たり前だが、個人戦では出ない。産業界というのは複合で太く、太く、太く束ねていくのがパラダイムです。バイオは点なので別ですよ。バイオの場合は1点で差していける力を持ってますけど、我々のシステムの世界はとにかく束ねていかないと出ないんですね。だからそういうところを、経済産業省、総務省、農林水産省を含めてご協力いただいて、関係府省もこの知的クラスターの入口の予算から可能性試験、関係府省連携もいただいて、随分出口の加速がいただけた。、実際、文部科学省予算プラス各府省関係の予算をいただいて外に外に、出口に加速することができました。23年度、いよいよ拠点化だということで、後ほどエコシステムをご紹介します。

 これがさっき言った研究チームの組織化です。デスバレーという前に、企業の本気度を評価した上で、大中小の企業に全部入っていただいた。これも入り口で大変抵抗を受けました。ある地域に第Ⅰ期からのコーディネータがいるので、できないことはない、できなかったらテーマから外しませんかと言った。そのうちなんていうのはあり得ない。産業界でそのうちお客さんを見つけて、そのうち事業化するなんていうのは、あっという間に3年後に終わる。それで、この組織化にこだわって、ここのプロジェクトマネージャー、先生方、企業、ありとあらゆる方、外部人材を入れて、とにかく引っ張り出すということでお願いしました。

 この辺はツールです。すべてPDCAを回しました。これが大体3カ月に1回、進捗の見える化になります。これはフォーマットを決めて、内容を評価する。内部評価のツールがこれです。全テーマがこうやって見える化、可視化します。どのプロジェクトが第1位で、どこが弱いかや、コメントも全部議論した。これ全部、私の論文に書いていますので、後ほどご紹介しますけど、ここの切り口で評価したということです。ですから、優劣は当然、後ろで見ていただくとわかるように、研究テーマごとにもろに優劣が出てきます。これを先生方に全員公開する。ひとりぼっちじゃないと。最初は結構嫌がるんです。これは客観評価で、すべて自分が自己評価ではいいと思っていますから。さらに外部評価をいただいて、これは皆さんよくご存じの今回5年間終わった我々のスコアです。行き過ぎているのは、当初計画から細分化されたということで、目標についての課題はあると思っておりますけれども、一応必達はしております。人材育成のプログラムも大体年間1,000人、全国でやっておりまして、これも3年、5年でメニューを変えながら、一応業界の支持は得た。

 これは国際系の指数の結果です。これも一応達成したんですが、やはり一番きつかったのは、しっかりした知的クラスターのような事業が関係する海外機関を招へいすること。これがきつかったですね。本当に実をとらないといけない、相手が決めることですから。あとはイベントとかはたくさんやるんですけど、これはインプット指標で、アウトカムではないんですね。

 これは私が前回、評価された際もご案内したんですけど、少しポイントだけご紹介します。事業全体の計画に対する実施状況ですが、やはり主要なインデックスがライセンスアウトや、税収、雇用などがさすがに第Ⅱ期では置けていなかったので、やはり入れようということになった。ここまでいかないとご理解得られないということです。

 2つ目、ベンチャー企業はつくったんですが、経済効果・波及効果、雇用増、税収で評価する。これを次はぜひやりたいと思っています。これ、やると大変なんですけど。それから、やはり皆様の議論もありましたように地域クラスターのとらえ方が日本でも世界でも少しわかりにくくなってきているんですね。それで、地域間クラスターをやるときには出口の定義をどうするか。やはり一番確実なところで、1つは地域のアンカー企業(ハブ企業)。昨日も少し広島、静岡、広島、山形などに呼ばれて色々議論させてもらっているんですけど、中核、中堅企業をつくることがないところというのはイノベーションの継続性なり、広域的なバリューチェーンなど、いわゆる国内外でつながっていくハブがないとやはりまずい。我々のところは幾つかハブ企業をこだわってつくってきていますので、次はこれを太くする。

 それから研究プロジェクトの企業側の理解が得られない。要するに企業が魅力的なものだとまだまだ思ってくれていない。やはりブレークスルーが必要だということであの手、この手で巻き込んでいきたいと思っています。今、日本の企業、特に電機業界の家電が今ご存じの業績発表ですが、業界構造の問題を知っておりますので、そこを一緒にサービスまでやるような産学連携も一部需要を取り込む形でやっていきたいということで、国際展開は色々やってきました。まず国内の関係性がこれでございます。国外がこれです。これも企業でやるマーケティングの一部なのでシンプルですけど、ただマッチングなどをやってもだめなので、やはり共同研究のあり方、姿、アウトカムを見るまではすべてがプロセス指標でアウトカムではない。

 だから、試作して満足して終わりなんていうのは、評価案に載らないということです。日本中そういう悩み、声がありますけれども、試作で終わるのならだれでもいきます。やはりマーケットに出て売れて、普及して、リターンまで来て、初めて需要が開発され、地域に返ってくるところまで見たい。海外の方々は全部マーケティングパートナーで、シーズが足りないときはもらいますけど、こちらのシーズを推していきたいと思っています。日本中にすばらしいシーズがございます。これが中国とのかかわり合いの事例です。それからバングラデシュとリードした、「クローズアップ現代」のスライド。この前も放送されましたけど、引き続きやっております。

 向こうの社会システムをこちらの技術でやる。これはAcademic to Consumer Model、AtoCと言っています。それからGtoG、Government to Government。韓国が大得意ですけど、サムスンはR&Dやっていません。技術が欲しいと言ってまた来る。。

 少しステージが変わり、セキュリティープロトコルのチームというのは、後でステージのご案内をしますけど、大学でしっかりやっていて、ここが業界です。あとはこのパスをどうやってきたか。これがセキュリティープロトコルのパターンで、これがPicoCELA社といって、すぐ立ち上がってくれて大活躍してくれたチームなんですけど、今、彼らのシステムは天神地下街で大評判で、しっかり事業化して、このベンチャーを応援しております。このチームのパスを見てください。一気に行っているんですね。これはあまりない事例です。これは九州大学の古川先生がNECの研究所で10年、20年ほどためていた。その知的クラスターを、僕は九州大学のときに出会って、先生、一気に行ってくださいということで行ってくれたんですね。それまではずっと10年以上研究試験をやって、ファインディングできてよかったなと思っていますけど、これはバイオマーカーの竹中先生です。あと、絵をご覧いただきます。シーズからプラットホームをつくって色々つながっていこうということで、久留米が近いので、じゃあクラスター連携をやろうとうこと。普通はここで終わるんですけど、関連企業もいるので、全部たすきがけのように関連があるようにしようと。全部クロスオーバーしようということを目指して、まだ点のところがあるんですけど、議論としては、ここを全部巻き込んでやろうということで点から面に、それから立体化できるかということです。

 それから歯学部の先生と取組むとか、それからプラットホームをつくって韓国と取組むとか、シーズから装置ができるというような、この動きがバイオです。さっきのICTの動きとは違いまして、非常に多様な動きをします。これは日本が強いケミカル、バイオ、優良企業というのは、ほとんどこのような流れで事業を伸ばしていますので、これは5年間の痕跡ですから、痕跡をとることができました。

 これは都甲先生の同じく最先端のセンサーですが、今どんどん装置ができて、色々な業界に売れております。これも同じくバイオセンサー、色々なシーズがあるんですけど、展開性のあるところ、例えば、これを使って海外に次世代の植物工場の技術を、コストパフォーマンスが評価できれば、やっていこうとか、光触媒の技術をインドネシアまで行って実証実験をしております。大人気で、事業化できると思います。

 あと、数学とかバイオを使ってロボットをつくるとか、装置をつくるというのがたくさん今できてきていまして、ここまで持ってくると目に見えるので評価されやすい。最初、数学のモデルのところを見られたら、難しそうな感じでしたが、ここは先生、頑張りましょうということで資金をいただいて、やっていました。

 それで、課題提起と解決ですが、研究テーマが単独なんですけど、企業が求めるものが複合・業際的なんです。マッチングしない。だから企業が入ってこないのがよくわかりましたので、ロードマップをつくるときに、企業側のロードマップをよくご相談ができる状況をつくりたいということです。だからこっちがシナリオを持ってお示ししないと来ない。

 それから、ガバナンスの縦割りの問題です。これは構造問題ですから、よくご存じだと思いますけど、ぜひ、地域イノベーションのナショナルレベルのプラットホームをぜひ議論をいただきたい。当然、人のネットワークを含めて。それから、研究者と産学連携組織、行政です。とにかく教育、ベンチャーに至っては社長教育、ファイナンスも全部教育。私もMOT、相当全国で教えていますので、難しいことではないので、実践して技術を収益化しましょうということです。特に若手を見つけて、しっかり応援したいんですけど、ぜひここの専門家を増やせればと思います。

 それから、アカデミックから民への流れの中で、やはりお試しに終わってしまう。いい栄養分になって、あとは企業がやるということではないんです。しっかり払って還流させてもらわないといけない。税収使って、インプットしていますから、しっかりリターンを企業からくださいと。日本の企業は、その割には海外のすてきなパワーポイントを見ると、そっちに何十億か投資しているんですね。内容を見ると、日本中にあるシーズばかりです。少し先端技術を向こうは持っていますけど。この部分も粘っこく企業側に訴えたい。

 それから、基礎研究から事業化のまでのステージがよくわかっていらっしゃらない

。すごく事業化まで距離があるものをすぐ事業化できるように言うんですけど、とんでもない話で、これはやはり認識を共有化しないとまずいというのが痛切に感じております。先生はそう思っていても事業化しません、あと10億かかりますというと、しばらく黙っていらっしゃるんですけど。そういうことをしっかりコーディネートしてあげたいなということと、先ほど言った投資回収ですね。これが回らないと、せっかく国から貴重な研究資金をいただいたものがどうなったのかが見えないといけない。政策をお返しするのは最後で、我々現場としてはエコシステムを使ってリターンをどうするかというのが次の大事な重要な課題だと思っています。

 やはり地域は国際的に見ても、特にドイツなんかは、先ほども少し受田先生にお話を聞いていただきましたが、ドイツのミッテルシュタントというのが、国中にいる中産階級、中小企業がドイツの国力を支えているんですね。フランスもそこまでいっていません。その辺が僕は気に入っていて、やはり国際競争力と経済発展はそこにあると思っている。

 次、福岡でもこだわっているのはポジショニングです。全国ですばらしいところがあるとすれば、有機ELなんかそうやっていただいたので、山形、福岡の九州大学両センターに、国内でぶつかり合って、外に行ったときへとへとになるのはやめましょう、両方で勝ちましょうということを言っていた。あとは特徴のあるものをやるということで展開するんですけど、これが福岡のイノベーション・エコシステムの産業政策です。大学のシーズです。今回やらせていただいたプロジェクトで、センターで拠点化しましたので、今回ファンドも入っていただいて、産総研、STARC、TTC、こういうところとがっちりやっている。特に産総研は生産技術を進めていらっしゃるので、我々がデバイスをつくることでお互いにコラボレーションを国レベルでやろうということになっている。

 我々こういうモデルでこれからやっていきたいと思っているんですが、ただ、この問題は社会システムと言った瞬間に大ごとになりますので、説明をこれからしっかりやらないといけないんですけど、これは社会システムとして、まず技術マップをしっかりやっております。それをニーズから落とし込むプロセスも我々持っております。そして、あまり階層があると大変なので3つ程度にして、シーズからモジュールをつくってシステムレベルまでやると。これが産業化です。さっきのL1、L2、L3が、地域のL1、L2、L3でこうやって産業集積をキープレーヤーでしております。ここに、しっかりと開発費をつけて、地域としてしっかり発展的にやりたいと思っている。

 次ご覧ください。以前からやっておりますアンケートと、一つ一つゆっくり説明差し上げたいような内容ですけども、やはりプラクティカルなナショナルレベルでのナレッジベースのネットワークというのが非常に重要で、成果のために色々仕掛けていただくとありがたいなと思っている。そういう意味ではキーパーソンネットワークというか、キープレーヤーネットワークですね。人材育成を分解すると、若手研究者、研究代表の意識改革などがありますが、先生たちが今回、随分言葉が変わって、先生たち自身も成長いただいた。それから中小企業の皆さん、社長もそうなんですけど、次世代の人材ですね。そして我々のようなお世話をするプロデューサーだとか、リサーチアドミニストレーター、この専門職をしっかり育成する、これ全部が人材育成だと思っております。

 これで最後でございますけど、これは私が先月STARCに提言した文脈です。何を、どこで、どのようにというふうに読んでいただくんですけど、この中の主要な部分はかなり地域科学技術の中で織り込むべきものですし、そういうアイデアをここに記載しています。いわゆるキーワードを少し申し上げますと、やはりプラットホームからエコシステムをつくる。それから業際イノベーションを、ネクストマーケットをとにかく仕掛ける。これは、全部ディマンドが見えております。これをオールジャパンでやりましょうということ。

 それからこれは半導体向けに書いておりますが、これはマーケティングをして販路をどこにするか。そういうものを行っていき、世界中に売れるデバイス装置をつくりましょう今日の議論であり、今回の話を少し、次ぜひ考慮いただければ、企業側に行くところも大事なんですが、せっかくの予算ですので、特許申請まで、権利化をするところで1回予算が使えるというふうになれば、パテントプールというか、研究開発の成果がプールできますので、それを持って色々な事業化に向かえる。いわゆる人財・知財・販路・バリューチェーン、これを全部構築する。これも知見者を集めれば、僕は可能だと思っています。そういうことで、地域科学技術というのは大変国際競争力に寄与すると私は信じております。まだまだ諸外国に、シーズが豊富です。

 最後です。お手元の資料に、さっきから言っているステージの位置の意味を定義しています。私はこの5年間やって、どういうふうなフレームで取組むべきかということで、18フレームあります。まず、シーズをマッピングしてアーキテクチャーをつくって、コンセプトしてシナリオをつくり、プロトタイピングしてプラットホームやって、テストベッドやっていきます。これはシーズプッシュです。ロードマップからずっと事業化していきます。真ん中のところがプロジェクトメーキングでイグジットをやって産業創成する。これが全部稼働すれば、間違いなく産業がつくれます。

 これは実態、私がこの中でやったフレームを整理してみたんですけれども、これがステージの位置とやるべきことなんですね。前後にやはり矢印があるんです。ここでニーズリサーチをやる。個々のプロジェクトメーキング。これは全方向にかかわっておりますので。それから市場評価とイグジットファンディングのところですね。ここはテクノロジープッシュといわゆるアーキテクチャルなところをしっかり国策でやっていただくと地域産業ができます。これはまだ論文にする前でして、公表はしていないんですけど、今日お披露目ということでございます。この中に私どもがやったことを全部、次のページにつけております論文は、去年研究・技術計画学会で報告論文として、毎年1本だけ知的クラスターの期間中、書いております。導入時から展開するところ、それから評価、そしていよいよ出口、そして次の展開についてが四、五本入っております。今回は最後の論文だけお示しをさせてもらっています。

 以上でございます。

【有信主査】  ありがとうございました。それでは、何か質問、コメントありますでしょうか。

 それでは、私のほうから。福岡のこのクラスターは非常にうまくいったという評価になっているんですけど、今後取組むときに、例えば今もお話がありましたけど、大学にとっては別に地域である必要はないわけですよね。つまり、どこだっていい。ネットワークの分析があったが、つまり、研究成果が一番効率的に生かされるというところがつかまれば、それが一番いい。それから、いざ売ろうとすると、これもどこでもいいわけで、売れるところで売ればいい。つまり、世界中で売るスタンスになりますよね。

 そうすると、どう地域性を出すか。つまり、どういう格好で地域の産業集積をやるか。そういう観点で見たときに、一番効果的にその地域に産業集積するようなことを考えていかないといけないような気がするが、そういう意味では、ここではうまく全体が回っていると思う。半導体などでは、先端的な部品をつくれるような企業がたくさんあれば、あるいはそういうものがどんどん育つような素地があれば、そういう形になっていくんだけど、そういう仕掛けで何かヒントになるようなものがあるんですか。

【大津留委員】  ありがとうございます。大企業及び旧帝大クラスがメジャーだとすると、マイナーがございますね。これが全部ミックスしているのが日本中、世界中です。国の特徴、地域特性があり、北九州はご存じのように、鉄から始まり、飯塚、商業都市の福岡は大体100年、300年単位のDNAなんですね。富山もそうです、薬。やはりDNAに基づかないことをやってもよくない。例えばつくばを見たときに、企業が支持して積極的に行くと思っているだけで、つくばで深堀りはどんどんいただきたいわけです。どこでもよくないです。だったら、世界の研究機関が置いているようにスペシャリスト、マーケティングのグローバル人材を引っ張り込む、数百人は大げさですけど、サムスンみたいに数十人程度雇っておかなきゃ事業化しませんよね。だから世界の研究機関はそうやってグローバルにつながるファンクションを、どこにいてもできるようにガバナンスしているわけです。

 業界ともよく話すが、日本の企業もそうですけど、特に弱いのがマーケティングで、ボックスから売ったことがない。全部シェアをとられている。ただし、重電、重工、大型の非常にイリコが強いところは逆に海外は弱いんですね。だからアップルばかり見ていてもしようがないわけです。だからそういう強いところ、とにかく世界に勝てるところは、ご存じの韓国も台湾も日本に種物を調達に来るわけです、人も含めて。彼らは持っていませんから。ただ、マネーメーキング、プロダクトをやっている。そういう構造を全部、半導体、エレクトロニクス、ひいてはバイオ以外は全部、産業構造をずっと分析していますので、そうしたときにどこでもいいということにはならないんですね。

 どうせ地域でやるとすれば、合衆国、私もアメリカにずっと長く色々見ているんですけど、シリコンバレーだけではなくて、オースチン、シカゴ、サンノゼなど偏在させて、そこら中にクリエイティブリージョンがあるんですね。全部違うことをやっております。それで合衆国ごとにドライブしているわけです。日本もそうできると思っています。彼らは直接オースチンから世界に行ったりするわけです。シアトルから世界へ。だから大手が偏在している。だから、偏在力を、この事業とどう見るかなんですけど、日本が勝てる構造はたくさんお持ちなので、中央でしっかりやっていただくことと、地域がドライブすることがより整理されると国力になると私は思っております。どこでもよいというよりも、もう一度整理して言うと、地域DNAがしっかりあるものを数十倍、数百倍にする力が僕は必要だと思うんです。東京で全部それができるのならよいが、全研究者は東京に住めないですよね。そんなことをやっている国はなく、できるだけ田舎に住まわせようとしています。そこに企業がどんどん入っていきますので、シーズの魅力度が僕は地域性を決めてくると思っています。産業の歴史と研究者の集積が非常に気になるところでございます。

【有信主査】  ありがとうございました。最後のところ、要するにそれをどうやっていくかというところが一番重要なところで、ある意味でみんな一極集中みたいなことにならないで、特に今言った地域の特性が本当に生きる方向でベクトルが動かないと、結局みんな沈没してしまう。だからそれをいかにして、研究者にしても、それぞれの特性のあるところに集中させるか。みんな東京に持ってきたって仕方がない話で、持ってこられれば持ってきてもよいが、まずあり得ないですよね。そうすると、それに合わせた産業もそこに集積しなければいけない。こういうドライビングフォースにクラスターがなっていくというのが望みですけどね。そこをさらにどうドライブかけるか。

【大津留委員】  そうですね。

【有信主査】  どうもありがとうございました。それでは、どうぞ。

【野長瀬委員】  よろしいですか。実は最初に九州がシリコンアイランドという名のもと、LSI産業集積を言い出したときに、たしか福岡にキャナルシティなどの構想などがありました。その時、企業誘致を図り、どのように集積を進めていくべきかというディスカッションに加わったとこがあります。

【大津留委員】  LSIセンターですね。

【野長瀬委員】  そうですね。そのときよく覚えているのですが、半導体そのものは金食い虫で、周辺にお金がもうけられるような事業領域が結構あって、検査装置であったり、組込み技術であったり、消耗品であったり、プローブのようなものであったり。その中で、どの部分をを集積したいのですかというような話をたしか申し上げた記憶があります。

【大津留委員】  10年前ですね。

【野長瀬委員】  そうです。今日この成果報告書を見ると、LSIのプロセス的なところというよりも、どちらかというと、センサーをつくって、そこにアプリケーションを加えるといったテーマがリストに多いように感じた。

【大津留委員】  そこをポジションしたということですね。

【野長瀬委員】  テーマの変遷について少しお伺いしたい。昔は、福岡県の産業振興の話を聞くと、ルネサスのような会社が集積していくような勢いで何かやるようなイメージを持っていた。

【大津留委員】  僕は半導体の専門なので。DRAMは、デジタルICのメモリー分野であり、、

世界半導体市場の構成比では、20%以下であり、CPUを除いた約6割の市場をフォーカスしています。そういうことを説明する人がいないから、それをSTARCだとか、全業態に僕は提案しているわけです。デバイス100通りつくればいいと。そういう10分の1のところだけで議論していて、そうではないところがたくさんあるわけですね。まだ先端プロセスを言っているのかと。そこはお金かかりますよ。それを整理する人がいないため、翻訳されていないんです。要するに半導体というのは非常に底辺な半導体のインフラです。だからバイオからエネルギー、ライフサイエンス、全部出口があります。だから今、スマホとタブレットですべて半導体を語られると困るんです。これは終わった世界で、海外がどんどんやればいいんです。我々日本勢はたくさんデバイスをつくれますから、パワー、有機ELなどたくさんディマンドがあるんですね。それを今、僕は最後の提言のところで、これは業界の皆さんに言ったものになりますが、議論しようということで事例を挙げているわけです。これ全部半導体の出口です。アプリケーションです。汎用品のSoCだとか、FPJだとか、DRAMというのは10分の1です。もう関心ありません。もともと僕は5年前からこればかり言っています。いよいよ時代が来ていますから、これからですが、一緒に山形ともという話もある。

【野長瀬委員】  そうすると、テーマ的に大きく修正したとかではなくて、プロジェクトの最初からこのテーマでやっているんですか。

【大津留委員】  最初からポジションを決める際に、そういう特徴がなかったら意味がない。貴重な税金をいただくので、先生方が事業化につながらない研究をやるというと、申しわけないですけど、評価から外しました。

【野長瀬委員】  一番最初から切ったんですね。

【大津留委員】  はい。

【野長瀬委員】  なるほど。

【大津留委員】  本人色々、客観評価したのですが、それはオールジャパン、世界中にいますから、そういうことではない。だから、バイオセンサーなんかどこの業界もやっていないわけです。もうメカとケミカルの一部は普及していましたから、ケータイと車で。これからバイオに行きますから、それも準備しております。あと5年あると大分作品が出せるが、何とか頑張ってこれから出したいと思っています。

【野長瀬委員】  なるほど。では、この成果報告書のテーマの方向で最初から行こうとしたのですね。

【大津留委員】  そうです。

【野長瀬委員】  わかりました。

【大津留委員】  ポジショニングにこだわったというのはそういうことです。新需要のところをねらうということですね。

【有信主査】  そこのところは非常に重要なところだと思います。システムLSIというと、あっという間にSoCだとか、そういう話になってしまいますので、その辺の常識と全体の市場の中で、いずれにせよ将来市場を見ないといけない話だから、そういう視点はすごく重要だと思います。

 すみません、何かずっと時間が押してきていて、もう既に時間を15分過ぎてしまっておりまして、非常に説明していただく方は熱意にこもって説明していただきまして、本当にありがとうございました。ほかにまだ質問があるかもしれませんが、本日はこの辺でご容赦いただいて、もう既に15分過ぎていますので、あとは事務局側からまだ連絡事項が多少あると思いますので。大津留さん、どうもありがとうございました。

 では、簡単に連絡事項を済ませてください。

【竹下専門職】  ありがとうございます。本日お配りしている資料、資料5をご参考ください。今後につきましては、当面の予定といたしまして、次回、第3回を6月6日14時から16時に開催したいと考えておるところでございます。その後、第4回、第5回と、今お配りしている資料4がございますが、今いただいている議論を踏まえつつ、本委員会で議論する審議事項の骨に今のような議論をつけ加えて、そこを膨らませるような形で中間まとめ骨子をつくっていき、その後、中間まとめを8月ごろや、7月の終わりごろまでには作りたいと考えております。その後、また第6回以降、当然1年かけてその内容をさらに深めるという意味でまた議論を深めたいと大まかには考えているところでございます。

 以上です。

【有信主査】  ありがとうございました。今日のプレゼンテーション等々を材料というか、基本にしながら、論点をそれぞれ議論を深めていくということだと思いますので、よろしくお願いします。

 ほかに特にありませんようでしたら、本日はこれで閉会にしたいと思います。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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