【参考資料1】地域科学技術施策推進委員会(第1回~第3回)における主なご意見

 

○これまでの成果の総括

・各クラスター施策については、10年間実施してきて、成果が出ている地域もある。

・大学では、技術が地域でどう生かされるのかは分からないし、全国で産業としてどう扱われるのかも分からないことが多い。それがこれまでの地域科学技術振興に関する事業を通じて変わってきた。

・産学官連携のプラットフォームを構築するにあたって、国の機関が関わることは重要であり、JSTのイノベーションプラザ等はそうした機能を果たしていた。

・これまでの知的クラスター、都市エリアの課題点としては、企業に対して資金提供をしてこなかったことである。

 

○地域イノベーションシステムの構築について

・大学の役割等

・地方公共団体の体力の問題と、地方にある国立大学がどれだけ地域に根をおろして、その地域の発展に取組むかということは重要。

・大学自身は、地方の支援のためだけに存在しているとは考えておらず、先行する課題の解決策を一緒に創出することで、日本あるいは世界のモデルをつくっていくという考え方で取り組んでいる。

・国立大学法人に関しては、国立大学協会の「国立大学の機能強化-国民への約束-」において、地域の発展を担うという役割がミッションとして明確化されている。

・大きな時代変化の中で、中小企業、地域は厳しい状況にある。こうした中で、中小企業が基礎的な積み上げや、マーケットの要望に応じた、製品サービス、商品を変えていくことは困難。地域の大学を、企業が共通して活用することで、コスト回避やリスク軽減出来るとよい。

・日本の産学連携をアメリカの大学モデルでいくのか、欧米の大学モデルでいくのか。欧米型で進める場合、日本の大学の制度についても考慮が必要。

 

・産業界の役割等

・中小企業のうち、大学と組めるような企業などを調査してみると、企業が主導するマッチングの比率が高く、企業が主導するネットワークをつくることが必要。

・マッチングが上手くいくためには、イノベーターの密接度、集積の度合いが進み、ある臨界点を超えないと難しい。

・金融機関の方々が初期から参加されているケースも結構あるが、大学と企業のコミュニケーションが上手くいかず、企業側の指導が十分に発揮されないことがある。

・近年、非常に産業融合が進み、巨大産業化し始めている。この中で企業がどのポジションをとるかが重要になってきている。

 

・金融機関の役割等

・地域の金融機関が、大学の技術や情報と企業の現場をつなぐ役目を果たさなければ、金融機関自身が生き残れなくなる。

・最先端の技術は、おそらく事業化するまでに相当な時間とコストがかかる。一方で、中小企業は、資金繰り、財務のバランスが非常に崩れており、事業計画もつくれない状況。企業の決算書が悪化していく中で、預貸率も低下している。こうした状況を打開するため、新しい分野に早い段階から金融機関が関わり、事業計画としてやっていけるのか、事業化するときの数値の使い方などについてサポートできないか。

 

・地域のコーディネータの役割等

・日常的なコーディネート活動の継続とマッチングの場の提供が重要。

・基礎研究から事業化までのステージについて認識を共有化し、しっかりコーディネートすることが必要。

 

・政府、自治体の役割等

・地域の地域科学技術振興に係る取組は、地方自治体の具体的な施策と関連して進められているが、それがよく見えないことが課題。

・地域の主導、地域の主導性を重視するのであれば、大学ではなく、県がリーダーシップをとる事業の立て方が必要。

・持続性のある政策を続けることが最も重要。

・地域のイニシアチブと、国の地域科学技術政策の両輪が基本的に必要。

・地域ビジョンが明確に示されて、政策面、実行面でぶれないことが重要。

・地方行政の役割については、今までは人を出す程度の役割しか果たしていないことが多かったが、行政の関わる業務、規制、サービスなどが新しいステップに進む時に何らかの役割を果たす可能性がある。

 

○地域イノベーション創出に向けた広域化・国際化戦略のあり方について

・地域科学技術振興における広域化の流れは県にとっては非常に衝撃的であったが、プロジェクトの立て方、マネジメントの優れた県と一緒になってやることで洗練された。その中でいい事例が出てきている。

・技術は県境とかそういうものは越えて当たり前。そういった今までの壁、例えば地域、自治体の壁、省庁間の壁を越えないと前に進まない段階。

・産学連携、企業間連携においては、地域内だけではなく、地方と大都市との間の、地域間パイプラインが重要。

・エリアを超えたコーディネーションが極めて重要であり、地域イノベーション創出の実効性を持ち得る。

・テーマの異なるクラスター間の連携は、新しい産業が創出される可能性があり、今後これまで以上に重要となる。また、その融合の先に、どういう新しい産業があるかビジョンを共有することが重要。

・海外との共同研究が中心となり、これが目的化してしまう。グローバル化というのは目標ではなく手段。クラスターがグローバルで成功するためにグローバルプロセスを内包することが必要。

・グローバリゼーションという観点では、アジアや新興国などを対象にしたマーケティング機能を地域が自立的に持つことが必要。

・グローバル市場、規制動向、事業機会、競合技術の調査分析等を行い、タイムリーな変化にどう対応するかが重要。

・国際化は、日本の中小企業にとっても非常に大きな課題。大きな壁になっているのはやはり言葉の問題。

・5年、10年先の産業を牽引していく研究開発には、広い視点がないと対応できないので、地域間の連携はもとより、国際的な視野のもとに、情報収集活動や事業の展開が必要。

・国際連携を行う際、継続的な活動を通じて、クラスター間の人的ネットワークを構築・維持し、地域のクラスターでの取組を認識してもらうことが必要。国際見本市への出展などの取組も重要。

・国際的連携のプロセスにおいて、現地の事情と日本の状況をわかっているキーパーソンが連携先にいることは強みとなる。

・ISOのなどの国際標準に、地域の技術を組み込んで提案することができれば、ビジネスの価値が国際的に上がり、ビジネスがやりやすくなる。

・国際標準の議論に加わるためには、主要な大学に留学する研究者を増やすなど、色々な素地づくりをしながら対等に話ができる環境をつくっていくことが必要。そのためには、戦略的に若い人を育て、新しい人脈をより強固にしていくプロジェクトが必要。

・各地域がお互いの取組や情報を共有できるようにする仕組みが必要。

・ガバナンスの縦割りの構造問題に関連して、人のネットワークを含めて地域イノベーションの国レベルのプラットフォーム、ナレッジベースのネットワークについてぜひ議論をいただきたい。

・特許申請まで権利化をするところで予算が使えれば、パテントなどの研究開発成果がプールできるので、事業化を推進することが出来る。

・マーケティング機能をはじめ、企業の中にある機能を地域が自立的に緩やかな連携の中で確保、獲得していることがクラスターの条件である。そうした機能を有し、成果を出し始めている地域が有するナレッジを、他のエリアに波及していく必要がある。

 

○地域イノベーション創出に向けた人材の育成・確保のあり方について

・文部科学省として、イノベーションを達成するとか事業化をすることも一つの大きな目標ではあるが、仕組みをつくることがやはり重要。新しい制度的なイノベーションを起こし、そこで養成される人材を定義していくことが重要。その観点から、現在の事業は非常に政策としてのフォーカスが定まったもの。研究者だけでなく、そのバックオフィスにかかわる部分の効率化や、大学の中でリサーチアドミニストレーターへの支援など、研究開発を推進する環境づくりのための人材育成について議論が必要。

・これまで産学連携をつなぐ人材に関する様々な施策があった。こうした人材の育成と確保、キャリアパスなどが重要であり、地域にストックされた資源、事業のアウトプットやアウトカムとして捉えてよいのではないか。

・自治体では約2年交代の人事異動のため、工業試験場に専門家はいるが、科学技術政策のプロが育たない。自治体の中に科学技術のプロを育てるプログラムが必要。

・各地域において、地域イノベーションの実現、国際展開を進めるためには、人のつながりの構築、コアになる人材の育成が重要。

・人材育成の課題としては、若手研究者、研究代表の意識改革などがあるが、中小企業のほか、事業プロデューサー、リサーチアドミニストレーターのような専門職などの次世代の人材をしっかり育成し、キープレーヤーのネットワークを構築することが必要。

・研究開発組織、産学連携組織、行政組織など各主体において、とにかく教育が重要。特に若手を見つけて、専門家を増やすことが重要。

・産学官の違う組織が同じ時間軸上でやる工夫として、産官学の間で上手く人材のローテーションを行い、各主体がスピードを持って事業に取組む環境を作り出すなどの工夫が必要。

・ベンチャーが大きく成長するには、ビジネスモデルの変更が必要であることが多く、その際、役割や体制も変更しなければいけない場合ある。

・地域イノベーション創出のために必要な人材を企業が出すほか、自治体の科学技術の担当者に対して影響を与えていくような何らかの工夫が必要。

 

○望まれる新たな地域発課題解決型イノベーションシステムの構築

・現状のままでいけば地域が埋没してしまい、地方が埋没すれば日本全体が埋没してしまう。サステーナブル・グロースをきちんと維持するためには、制度・仕組みを変えながら、日本全体、地方がサステイナブルにイノベーションを創出していくことが不可欠である。

・地域科学技術振興施策をさらに発展させるためには、従来産業の延長上にこだわると限界があり、学の力を活用して、新しい産業融合が必須である。

・市場全体の中で、将来市場を見て、新需要をねらう視点は重要。

・ライフサイクルの成熟期が短縮化する中で、如何に素早く意思決定、マーケットイン、コストダウンなどを行うかが重要。

・ライフイノベーションに係るクラスターのうち、特にヘルスケアのクラスターについての事業化のシナリオが描ききれていない。IT環境が大きく変化し、スマートフォン、SNSが普及する中、新しい事業化シナリオの可能性が出てきている。

・ソーシャルネットワークの中からプロジェクトが立ち上がり、R&Dのアイデアや成果が新しく生まれる可能性がある。

・テーマを選別していくときに、産業分野のトレンドを見極め、グローバルな競争の中でしっかりターゲット、プロジェクトを定めることが必要。

・入り口側から事業化を考えており、視点が広がらない。マーケットに向き合っている人が、事業全体の構造を考え、必要な技術を集める構造にならないと事業が大きく広がらない。しかし、ベンチャーが主体だと必ずしもどう転ぶか分からない。ここが難しい。

・地域産業の国際競争力を高め、地域を活性化する際、事業化に問題が出てくる場合は基本的には販売、マーケットが原因。

・事業化の限界というのはおそらく企業の巻き込み体制の問題。

・地域へのメリットを具体的なビジョンとして描き、地域全体の理解を得ることが重要。

・産業によって事業化になりやすい、なりにくいものがある。

・世界の研究機関のように、スペシャリスト、マーケティングのグローバル人材を引っ張り込まないと事業化は難しい。世界の研究機関はグローバルに展開できる機能を有し、意志決定を行っている。

・企業が知恵を出し、リスクをとって、人を出すのであれば、企業への資金注入もある程度必要。

・ソフト・ヒューマンにお金をつぎ込むだけではなく、プロジェクトに対して資金提供していくことが重要。

・もう少しマーケットサイドの視点がないと事業化は難しい。

・上手く企業を引き込むためには、事業初期から企業と研究者の発掘を行うことが重要。

・試作段階で終わることが多いが、税収を使って、研究資金などをインプットするのであれば、しっかりリターンを企業から還流させることが必要。

・プロジェクトごとに産学連携がクローズドに進むと、中小企業が成果を水平展開できない。例えば、企業が1つのコンソーシアムを組むなど、これまでの取組の成果、今後の取組み方、個々のノウハウ・技術を生かす仕組みが必要。

・一極集中にならないで、地域の特性が生きる方向でベクトルが動かさないといけない。いかにして効果的に研究者や産業をそれぞれの特性のある地域に集中させるかが重要。

・特区を機動的に活用することも重要。

・技術の高度化に関しては、オールジャパンでテーマごとに考えて臨んでいく必要がある。

・ボトムアップ的な取組より、強力なリーダーシップを発揮すべき分野を意識し、大きく海外に製品やサービスを輸出する、あるいは、課題を解決していくという発想が重要。

・各省庁の施策を総動員して、世界をリードし得る拠点を構築していく際に、ソフト・ヒューマンを支援する現行制度だけで成し得るのかを再考する必要があるのではないか。その際、国が拠点を徹底して作り上げていくことや、大きな可能性を有しているところは、地域間の連携という仕組みを作った中で引き上げていくことが必要。

・事業のリスクをどのように分担するかということが、参画主体の役割を議論する上で重要。

・将来大きくなる可能性のある事業はリスクが大きく、リスクを踏まえて全体をうまく育てていくことが必要。

・地域イノベーションを創出するには、実力を有する中小企業および、地域のために頑張る誘致企業・大企業が初期から関与することが必要。国は的確な基本戦略を構築し、地域経営資源、地域インフラの整備を支援することが必要。また、産学官連携のプラットフォームの上に、イノベーター・ネットワークを連携させることが重要であり、このイノベーター間のネットワークを束ねる強いリーダーシップを持った地域ディレクターが配置されることが重要。

・イノベーターの密接度、集積の度合いが進み、ある臨界点を超えないとマッチングは起きない。

・企業同士のマッチングチャンスがある場に大学の技術シーズを投入することで、産学連携のマッチング率を高めることが出来る。

・グローバルにベンチマーキングを行い、戦略的な研究開発をしないといけない。

・1プロジェクト当たりの金額が膨大になり、研究開発費の確保が重要になってきている。外部連携でいかに早くいいシーズを組み込んでいくか、オープンイノベーションを機動的に使っていくかが更に重要になってきている。

・分野を国が特定することが重要。国として、地域の企業や先生方に、どこまで競争力を持ちうるのか、わかりやすく伝えることが必要。

 

○その他

・クラスターの境界を適切に設定しないと、分散した結果を導いてしまう。

・これまでの地域科学技術新興に関する事業は、草の根の企業やベンチャーを対象にしていた。こうした事業がなくなったことは非常に大きい。

・各地域が抱えている課題をどう抽出、整理していくか、そこに技術がどう寄与していくかということを当事者の目、そしてまた、第三者の目、いろいろな視点で見ていくことが大切。

・新しいものを一からつくって、人とモノとお金を地域に集めるだけでなく、伝統的な生活や文化など豊かな資源を再価値化する場合にも、科学技術は寄与できる。

・学際的、業際的な部分にイノベーションの種があり、企業規模を考慮し、各支援分野をマッピングすることなどにより、全国の企業や関係機関などとつながるきっかけにするのが良いのではないか。

・OECDでは地域イノベーションについてかなり深堀りしたレポートを毎年出している。客観的で、具体的な数字を挙げており、そういったものを参考に、評価をより多軸に行えるのではないか。

・評価において、その地域産業がどれぐらい活性化しているかという指標を更に検討できるのではないか。

・イノベーションの目的は、人の幸せ、国民の幸せと思っている。

・ライフサイエンス、情報などの分野は比較的距離があっても共同研究している事例が多い。逆に製造技術のようなものづくり系の分野は、比較的近い距離で共同研究している事例が多い。

・産学共同研究実績について、分野ごとに連携相手を分析したときに、地域に密着した中小企業と強力に産学連携を行っている地域・分野について分析していくことも非常に重要。

・ネットワーク進化過程をどうやって可視化できるか、知的クラスター、産業クラスターのようなネットワークがどう関係しているのかを研究することが必要。

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科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課

(科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課)