産業連携・地域支援部会 産学官連携推進委員会(第14回) 議事録

1.日時

平成24年11月12日(月曜日)14時~16時

2.場所

文部科学省 東館 3F1特別会議室

3.議題

  1. 国による戦略的な知的財産活用支援と、成果指標の活用方策及び大学知財本部・TLOの連携
  2. 社会的要請への対応
  3. 東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の在り方について
  4. その他

4.議事録

【柘植主査】  定刻になりましたので、第14回の産学官連携推進委員会を開催させていただきます。
 本日は議題が三つありまして、一つ目は、この議事次第に書かれてございますように、国による戦略的な知的財産活用支援と、成果指標の活用方策及び大学知財本部・TLOの連携が一つでございます。二つ目は、議題2に書きましたように、社会的要請への対応。そして3番目の議題が東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の在り方についてでございます。
 初めに事務局から配付資料の確認をお願いいたします。
【石田室長補佐】  はい。先生方のお手元に議事次第が用意されているかと存じます。真ん中あたりに配付資料の一覧がございます。この順に念のため確認をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 まず、資料1でございます。「産学連携機能評価指標の策定と運用について」というA4版横長資料になっております。
 続きまして資料2、「芸術科学技術に拡幅した知の生産と活用」という資料、A4版縦長の資料になっております。
 続きまして資料3でございます。「東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の在り方について(最終報告)への記載事項について(案)」という資料でございます。
 資料4、一枚物で、「産学官連携推進委員会の予定」でございます。
 さらに、参考資料1といたしまして、「東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の在り方について(中間まとめ)」という資料がついております。
 そのほか、机上配付参考資料といたしまして、こちらの一覧にございますような参考資料がつづられたファイルを用意させていただいておるところでございます。
 以上でございますが、落丁等がございましたら、事務局にお申しつけいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【柘植主査】  はい、ありがとうございます。
 それでは、早速、本日の議題1から始まります。国による戦略的な知的財産活用支援と、成果指標の活用方策及び大学知財本部・TLOの連携であります。本議題は、前回御議論いただきました中間まとめの中で、今後の産学官連携の検討課題として四つの課題を取り上げました。そのうちの二つ目に対応しておりまして、今後、産学官連携を議論する上で大変重要な課題でございます。
 まず、渡部委員から御説明をいただきまして議論を深めたいと思います。渡部委員、よろしくお願いいたします。
【渡部委員】  それでは、産学連携機能評価指標の策定と運用についてということでお話をさせていただきます。
 本議題につきましては、もともとその知的財産推進計画の、実は2011と2012にわたって実施されている調査事業に関係する議題でございまして、2年間にわたってこの評価指標を、1年目は基本的な調査をして、今年度、評価指標を策定して運用の議論までしようというような計画になっております。これについては、経産省と文部科学省の双方がミッションを負って実施しているという形になっております。私はこの調査研究事業の委員長をやっておりますので、その関係で今日、御報告というか、御紹介をさせていただきたいと思っております。
 その話に入る前に、一般的にこの産学連携活動をどのように評価をしたらよいかというような観点で言いますと、通常、大学と産業界、企業が産学連携を行って、その結果として産業界にどれだけイノベーション創出の貢献があったかということを中心に注目して効果を見ようみたいな形で考えがちでございますが、実を言いますと、それは一方向でしかない。欠落しているところがあるのは、大学も産学連携活動によってさまざまな影響を受けるということです。その中で、例えば研究力の向上、産学連携活動を行うことによってその大学の研究者の研究力が向上する、あるいは教育に対してプラスの効果があるというようなことも当然考えられるわけですけれども、ともすれば、産業界側の影響を中心に見がちです。今回、この大学側の影響についてお話します。これについては、実は過去の分析例も産業界に向かう方向に比べますと非常に限られており、議論も少し分かれていまして、プラスの影響だけでなくマイナスの影響を指摘するような研究もございます。さまざまな見方があるというか、実はあまり検討がされていなかったというところもございました。私は科学技術政策研究所の客員研究員をやっておりまして、そこでたまたま――たまたまというか、重要だから取り組んだわけですけれども、昨年からこの点について少し分析を行ってまいりましたので、あわせてその内容を御紹介したいと思います。
 目次としましては、今申し上げました大学に対する影響、これが第1番目。それから第2番目に、先ほど御紹介いたしました総合的評価の指標の今の検討状況。それから3番目、ここは私見になりますけれども、こういうような評価指標をどのようにして運用していったらいいかということについて私見を述べさせていただくという順番で発表させていただきたいと思います。
 まず大学の研究者の研究成果、研究力向上に本当になっているのかどうかということについては、つい最近、10月28日に研究技術計画学会のほうで発表いたしました。これは科学技術政策研究所として研究をしているものでございまして、その当時というか、前年度の主幹研究員の米山教授と、私が客員で入っておりまして、科学技術政策研究所として研究・分析を行ったものです。ただ、これ、まだ1次分析の結果でございまして、研究所としての見解ではないという点については御留意いただければと思います。
 まず何をやったかということなんですけれども、国立大学時代は共同研究のデータを全て国が保有しておりました。どの先生が、何年間、どういう研究をやったかということについて国が保有しているものを科学技術政策研究所のほうで保管をしております。このデータを使いまして分析を行いました。1983年から2002年までのデータがございますので、ここから合計1件以上の共同研究を行っている3,000名をサンプリングしまして、同じ名前の今度は論文のデータをScopusというデータベースで調べました。これ、全員が該当が分かったわけではありませんで、152名が論文データのほうが捕捉できませんでした。これはほんとうにやっていない可能性もあるんですけれども、一応これを除きまして2,848名を対象に分析をいたしました。
 分析内容ですけれども、これ、幾つか仮説の実証をやった中で、今回御紹介するのは二つであります。過去に企業との共同研究を実施したか、しないかということが影響するのではないかということで、その要因を考慮して分析をいたしました。それからもう一つは、過去に企業との共同研究を実施した経験のある者については、今度はどれだけその共同研究にかかわったかということが影響あるのではないかということで、そういう観点で分析を行いました。
 分析の構造でございますけれども、1998年から2000年までに共同研究――産学連携と書いてあるのは共同研究ですけれども、共同研究3年間やった前後で研究成果――研究成果というのは、具体的には論文の発表件数あるいはその論文の被引用件数――被引用件数は論文の質をあらわすというふうに考えておりますけれども、それの増加率に対してどういう影響があったかということについて分析をいたしました。これについて、産学連携の経験があり、なしで分けて分析をしたということであります。
 早速、結果ですけれども、過去に連携の経験がない研究者についてのグラフです。この横軸は、1以上とか3~2までとか、こう書いてあるのは、共同研究の件数を単純にプロットするのではなくて、共同研究の件数をその期間の論文発表の件数で割った値でございます。これ、なぜ割っているかといいますと、研究室の規模が大きいと小さいで、両方とも活動が大きくなったり小さくなったりしますので、そこをキャンセルするために論文発表件数分の共同研究件数という数値にしてあるということでございます。左上を見ますと、これ、過去に連携の経験のない研究者ですけれども、少なくともその増加率が増えてはいない。さらに右に行きますと、これは質をあらわす指標になりますが、どうもあんまり増えないというか、減ってしまうと。減ってしまうといっても、これ、実は増加率で見ていますので、マイナスになるというわけじゃないんですけれども、その増加が少し鈍るというような結果になっております。
 産学連携の共同研究があり、なしだけで差をとってみたものがこれなんですけれども、論文発表の件数でいきますと若干やはり増加率が減ってしまいます。そういうような結果でございまして、どちらかというと過去に経験のない研究者が産学連携に従事すると、最初は少しプラスの影響は出ないというか、質に関してはマイナスの影響が出るという可能性があるという結果です。
 それから、過去に連携の経験がある研究者についてとってみますと、左上は、これは論文の発表件数ですけれども、山になっています。山になっているというのは、増加率が共同研究をやることによってむしろプラスになる、正の効果があると。促進する効果があるんですけれども、ある値を超えてやり過ぎるというか、頻度が多くなり過ぎますと下がってしまうと、こういう結果になっております。この結果は、論文の質に関しても同様の結果、上に凸の傾向がございますので、やっぱり同じような結果であるというふうに考えておりまして、具体的に言うと、やり過ぎはだめという感じです。
 産学連携、共同研究がある、なしでやってみますと、これは全体を平均してあり、なしでやりますと、論文の発表件数なんかはプラスの影響があります。したがって、産学共同研究は、経験のある研究者にとっては論文発表件数等を増やす効果があるということになります。
 これはまとめてみますと、産学連携、共同研究の研究成果に与える影響というのは、過去に産学連携の経験があるかどうかによって異なります。一定の期間休んでいる可能性もあるんですけど、初めて参加する研究者がほとんどだと思います。この場合、プラスの影響を与えない。場合によっては研究の質を下げてしまう。それから、1回でも経験をしていますとプラスの影響がはっきりあるんですけれども、やり過ぎると、というか、頻度が高くなり過ぎると研究成果を低下させる傾向があるというような結果になりました。
 ここからどういうインプリケーションを導くかというのは議論の余地があるところでありますけれども、アカデミアでずっと研究をやっていた若い方をイメージするわけですけれども、そういう方が最初に企業との共同研究等をやるときは、やはりそれなりにいろいろな調整コストがかかるわけですから、大変なんだろうなということです。そういうところについては、何らか組織的な支援をしないと成果が出なくなってしまう。ただ、このデータの分析は国立大学時代に行ったものでございますので、今のように産学連携本部もありませんし、機関帰属の原則等の整備もされていませんでしたので、今はこういう傾向は弱まっているかもしれません。逆に、今でも法人化前と同じような関係で産学連携に従事すると、ビギナーの研究者は同じような状況になる可能性があるというふうに捉えてよいかと思います。
 それから、インプリケーションの二つめですけれども、やっぱりやり過ぎるとあまりよくないということです。どの程度というのは、さっきの指標でいいますと、こちらの横軸で見ますと2以上というのは、例えば共同研究の件数のほうが論文の件数の倍以上あるという、そういう状況まで共同研究等をやりますと、マイナスの影響が出る可能性があるということで、バランスをとることも必要なのではないかということが導き出される。このようなことを見ますと、全般的に言いまして、少なくとも共同研究等の産学連携活動というのは、条件が整えばプラスの効果がある、研究力の向上になるというようなデータで、
条件があるという結果になっております。
 こういうことも踏まえて、評価指標の検討を見ていただきたいわけですけれども、こちらも委員会が継続中でございまして、現在、あと残り2回、委員会が残っております。今からお話しする内容についても検討中の内容でございますので、今後、変更の可能性があるという点については御留意いただければと思います。
 今、どんな指標を検討しているかということの例でございます。いろいろな観点があるんですけれども、試みにイノベーション創出にかかわる評価指標と、それ以外の多様性、個々の大学が取り組んでいる多様性に関する評価指標を分けてみました。まず、イノベーション創出にかかわる評価指標については、主にやはり技術移転と、それからベンチャー創出、それから共同研究と、この三つに分けてお示ししております。具体的に見ますと、技術移転に関しては、例えば特許出願件数で実施許諾件数を割ったような値とか――これは有効性のところに書いてありますけれども、あるいは、効率性という言葉が適切かどうかわかりませんけれども、特許出願件数を収入で割った値、さらに、それが最終的に企業の側で特許権が実用化したというような件数、こういうようなものを計算して検討をしているところでございます。
 さらに、多様性に関する評価指標に関しましては、地域にどれぐらい貢献をしているのか、例えば今の技術移転にしても地域にどれぐらい行っているのかとか、そういうような値を検討しておりますし。先ほど御紹介しました研究活動へのフィードバックについては、なかなかうまく効果的にとれるようなデータは難しいのですけれども、先ほどのように効果があることはわかりましたので、共同研究件数分の例えば論文件数みたいな、そういう値を検討したりというようなことをやっております。
 これをどのように使うかということが非常に重要なわけでありますけれども、これ、各国ともやはり産学連携活動をやっておりますと、これがどういうインパクトを与えるのか、アウトプットを出すのかということは、どこの国でもある程度検討しているわけでございますので、そういう国際比較にこういう指標を用いることができるのではないか。
 今、ちょっと試みにイギリスあるいはいろんな国のデータを集めて比較をやっているところでありますけれども、例えばイギリスとの比較で、これはレーダーチャートを試みにつくったものでございますけれども、左側が技術移転、大学発ベンチャー、共同研究の件数ベースの、先ほどお示しした分母が例えば特許出願件数になっているようなものでありますけれども、件数ベースのものについて日本とイギリスで比較をしたレーダーチャートであります。これは生データを入れますと、例えばアメリカと日本でまだ桁で違ったりするところがございますので、そこの部分を少し見やすくするために標準偏差をとっております。正規分布をとるような分布ではないので必ずしも適切でないかもしれませんけれども、順番がひっくり返ることはないということで、レーダーチャートにする上で標準偏差をとったものです。そうやって見ますと、これ、左側が件数ベース、右側が金額ベースで分子を設定しているものですけれども、イギリスのほうが技術移転、大学発ベンチャーが少し長く伸びているというような差が出てまいります。こういうようなものを見て、国としてどういう方向を伸ばしていくのかというような議論ができるかと思います。
 あるいは大学ごとでありますけれども、大学ごとでも今のレーダーチャートを使いますと、ある大学では技術移転、共同研究が伸びていて、ある大学ではベンチャーが伸びているみたいな、そういうような特徴の差が表現されます。どっちがいいかということではありませんで、その大学がどういうことに注力をしているかということがわかるわけであります。その大学自身が注力していることが実際にその成果として出てきているのかどうかということの差が見えるというようなものであるというふうに思います。
 それから多様性、これも同じようなことですけれども、地域貢献というようなことでいいますと、これも実は数値指標として地域貢献をとりますと大都市圏が有利になるんですけれども、それでも地方で地域貢献のデータが比較的高くなるというようなこともあって、これは特徴として捉えることができると思います。
 こういうようなものを参考にしていただいて、例えば自己評価、外国大学あるいは他大学との比較ということについて自己評価に活用する。あるいは、個々の大学の目標に応じて、ここで今回、調査研究やっているわけですけれども、そこにないものでも追加的な指標を設けて公開するというようなことも考えられます。いずれにしましても、こういうデータの取得というのはそれなりに手間がかかりますので、こういうことを取得してうまく活用していくということの検討、これが非常に重要になってくるというふうに思われます。
 ここまでは調査委員会のほうの現状の御報告ですけれども、これをどういうふうに――2013年度のところで先ほど知財推進計画に、新たな産学官協同システムにより産学連携機能を強化するというようなことにつなげるということが書かれておりました。これにつきましては若干私見を述べさせていただきたいと思います。
 今、評価指標の話、これ、細かいことをこうやってずらっと並べて見ていただきましたが、実はあまり個々のところを見ていただくということが重要ではなくて、重要なのは、今回、分母に特許出願件数が来ている、例えばそういうことでございます。今まで機関帰属の原則から始まって、政府が特許出願数を非常に重視したように見えたため、特許の出願が目的じゃないんだということで、量から質みたいな議論もございましたけれども、今回、明示的に特許出願件数というのは最終目的じゃないということを示している。この評価指標は分母になっているということの意味というのは、非常に大きな意味があるのではないかというふうに思います。同じく共同研究契約件数も分母になっている。分母がゼロだとどうしようもないわけですけれども、分母が大きければいいということではなくて、分母に応じた出力が出せないといけないんだというような意味合いの指標になっているという点については、今回、非常に重要なところではないかというふうに思います。
 これをどういうふうに使っていくかということですが、一番は、国の産学連携の機能というものを、説明責任上どういうふうにこれが機能しているのかということを明らかにするということに役に立てていくべきだと思われます。先ほどのレーダーチャートあるいは多様性指標もそうですけれども、各大学のトレンドを延長していきますと、例えば10年後、どういうような指標になりそうかということの予測ができてまいります。そうしますと、大体そこから経済的なインパクトも予測できるわけです。経済的なインパクトについては、別途また、どうやって出すかという検討を委員会のほうではやっておりますけれども、そういうことで産学連携活動がイノベーション創出側に、あるいは冒頭説明した研究力向上というのもありますけれども、そういうところにどれだけ「10年やったらこういうふうになります」というような話ができると。そこをやっぱり一つの目標として、そこに対する課題に対して、国として施策として解決していくというような考え方を本来はすべきではないかというふうに思います。
 ただ、じゃあ、それは大学やTLOの指標だからといって、大学やTLOだけで実施ができるかというと、必ずしもそういう性格のものではございません。これは何回か前に1回お示ししましたけれども、特に日本の大学の知的財産、これは特許を取っていますけれども、特許の構造というのはアメリカと違います。アメリカは右側のようにほとんど単願で、大学がコントロールある程度できるわけですけれども、日本は6割以上が共同出願になっている。共同出願ということは、共願人の相手の企業の商品化や何かが進まないとさきほどの指標が上がってこないということでありまして、これはまさしく大学だけの努力ということじゃなくて、文字通り、産学で連携して成果を上げるための、産学連携の指標であるというふうに言うことができます。
 ただ今現在、その評価指標、直ちに完璧なものができるということではございません。これは取得できないデータも少なくないわけです。今お示ししましたように、共同研究の成果というのは、これは企業の協力が必要ですし、あるいは企業の協力が直接得られない場合でも、調査機関等を使った数値の取得が必要になります。そういうような状態でも、ここまで検討してきた「特許出願数や共同研究数が分母である」という考え方は非常に重要でありまして、これは、例えば大学は特許をたくさん出せばいいと、TLOはそれをライセンスすればいいというような形では実現できない。高度な連携をしないとこの指標の運用というのはできないということにもつながります。さらに、産業界の共同研究系のところは協力が不可欠であるという性格のものであるということであります。信頼性が十分確立されてない指標もございます。これについては、活用しながら改善していくような使い方をするべきではないかというふうに考えております。さらに、このような指標を各大学が自主的に策定して公表するというようなことは、これはアカウンタビリティーという面でも産学連携に対する自主的な取り組みを促すという面でも意味のあることではないかというふうに考えますので、そういうものが応援されるというのも必要だろうと思います。
 今後、運用の議論になっていきますが、誰が運用するのか、誰が向上させるのか、そのためにはどういう施策が必要なのかということについて、今申し上げましたような観点を踏まえて議論を進めていくような段階に至ってきているというふうに思います。
 ちなみに、アメリカの場合は、大学の技術移転の団体のAUTMが自主的に指標を公表しています。これはバイ・ドール30周年のときのホームページですけれども、クリックしますと、どこの大学は幾つベンチャーが生まれたかなんていうのが全部出ている。こういう運用の仕方をしています。こういうものがいいということではありませんけれども、何らかやはりアカウンタビリティーに資するような形での運用ということを考えていく必要があるだろうというふうに思っております。
 以上、まとめは繰り返しになりますので割愛いたしますけれども、もう一回強調しますと、産学連携の運用、まさしく最初にこの施策自身が文科省、経産省の両方にまたがった施策でありますけれども、産業界の協力も必要というような性格の指標であるということを最後強調して、発表を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
【柘植主査】  ありがとうございます。国による戦略的な知的財産活用、それと我々の産学連携という活動の結びつきの新しい見方を開いていただいたかなと思います。
 御質問か御意見ございましたら、ぜひ。羽鳥委員、どうぞ。
【羽鳥委員】  すみません。評価、大変すばらしい分析だと思いました。多様な評価軸があって大変だと思うんですけれども、そのうちの1点だけちょっと気づきました。特許出願件数で割って見るというのは、単に数ではなくて質になりますので大変いいやり方だと私は思いました。他方で、質を見るのであれば、出願件数だけでなく審査請求後の件数でも割って見るという考えもできたらと思います。審査請求後は、一般的には半分近く落ちるわけです。審査請求しないというのをいろんな大学でどの程度精査しているかわからないんですけれども、そういった出願時だけではなくて、例えば審査請求以降みたいなもので割るというふうなことで、またもう少し別な評価も出てくるのかなという気もいたしました。それはどういうことかというと、日本とアメリカで共同出願の形態が大幅に違っております。アメリカは多くが単独出願になっております。それは共同発明に対する特許法の違いも私は大きく影響していると思ってはいますけれども、日本は逆に共同出願のほうが多いわけですね。問題はその共同出願の実施化率が極めて低いことです。すると、それを途中の段階で放棄するのか、あるいは出願のときに放棄するのか――放棄というか、売ってしまうというやり方もあるわけで、途中でやればこれは技術移転になるのかもしれません。そういったことも踏まえると、単に特許出願のときの件数で除すという基本的な指標に加えて、もし余裕があるなら、3年後の審査請求後の値で除すという、その第2段階のサブ的な指標もあると、質向上の視点でその間のアクティビティーももうちょっと評価できるのかなという気もいたしました。
 以上です。
【柘植主査】  ありがとうございます。今の点、渡部先生、何か。
【渡部委員】  今日は簡単に御紹介しているんですが、この裏に大量にたくさんやっていまして、発明で割ったり、いろんなもので割ったり、いろいろやっております。その中で御紹介したのは、少なくとも出願系のものが分母だということを代表的に御紹介したので、そういう意味では、御指摘の内容もやっておりますので、その中で適切なものを議論していこうという形になっております。
【羽鳥委員】  ありがとうございます。
【柘植主査】  土田委員、御専門のほうからコメントいただけませんか。
【土田委員】  はい。私自身も、今拝見しまして、特許政策、それから産学官連携の特許に対する件数、あるいは実質を上げていくということが、今、民間の投資サイドあるいはベンチャーサイドから見てもうかがい知れますので、今、渡部委員が発表いただきましたこういうアプローチは、マクロ的にもスタティックス的にも非常に有効ではないかというふうに思っております。今後、渡部委員もおっしゃっていたように、運用の世界に入っていきますと、民間ベースあるいはベンチャーベース、それから実際的に技術移転、それからビジネス化を行っていく際には、実はやはり、過去のケースですけれども、産学官連携でやったためにどうしても一定の期間的な経過を求められるために、民間ベースであればもう少し研究成果を詰めたいとかいう段階でも、致し方なく特許を出願しているケースなども、これは事実としてございまして、そういった意味では、やはりこういったものをアカデミアのひとりよがりになっていないか、あるいは産業界として十分にこなし切れてないのではないかというのは、やはり文科省あるいは大学に配置されているアドミニストレーターというのが丁寧なヒアリングベースでこの運用を補っていくというのが評価としてはいいのではないかと思っております。実際上、残念ですけれども、幾つかビジネス化をしている中において既に申請されている特許というのが逆に邪魔になってしまったりとかいうケースもありまして、もう一度やり直し。やり直すんならいいんですけれども、特許のもの次第では既に既出願ということになっておりまして、変更は大変難しいというケースもあって、せっかくいいアイデアあるいは産学官連携の道筋が実用化に至らないというケースもございます。今後ともこういうことを繰り返さないためにも、やはりマクロ的なものとミクロ的なものを組み合わせていくというのが肝要ではないかなと思っております。
【柘植主査】  ありがとうございます。大変重要な視点を言っていただきました。
 ほかにどうでしょうか。永里さん、産業側から何か。
【永里委員】  今のお話に関連しているんですけど、特許は、いいアイデアがあるから特許を取るというのは一般的ですけど、そうではなくて相手を邪魔するために特許を取るという作戦がありますので、その辺のことがこの特許件数の中でどう扱われるのか、ちょっと私は自分でもよくわからないんですが、産学官連携という立場ではその種のものは排除されるのかなとも思うんですけど、よく私はまだわかっていません。そういう疑問を持っております。
 以上です。
【柘植主査】  ほかにいかがでしょうか。前田委員、何かおありじゃないでしょうか。本件の御専門の立場から。
【前田委員】  突然振られましてどうしようかと思っていますけど、ライフサイエンス系はやはり非常にアーリーフェーズなものですから、特許を出してすぐにいろいろできないですし、やはり今、土田委員がおっしゃられたようにちょっと早く出し過ぎてかえって邪魔をするというのは、私も見ていて感じています。また、大学の持っている特許というのは取って何ぼのような感じに思われていて、係争しない、争わないというのが基本にありますので、それじゃ特許の意味がないというのもありますので、やはり特許の取り方というのがこれから重要になってくるんだなというのはすごい感じています。件数で割られている渡部先生のこの論文の発想は、非常にリーズナブル、すばらしいなと思う反面、やはり、今、永里さんがおっしゃられたような防御のための特許は共同研究につながるわけではないので、それはどうやって分母の数で考えるのかなというのはやはりありますので、なかなか内容との関係というのは難しいなと思いながら見せていただきました。やはりもうちょっと最近のところのデータも絶対とっていくのが大事だなと。知財本部がかなり最近になってやっときれいになってきたら、また違うのかな、2000年の初めのあたりと最近のところだけの数字とはまた違って出てくるのかなというのもありますので、私、ちょっと途中から来ちゃったんですけど、ごく最近のデータ、また、立ち上がりどきの産学連携のときのデータでどんな感じに変わってきたのかなというのもわかるとうれしいなと思います。
【柘植主査】  ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
【郷治委員】  この、指標の分母に特許出願件数や共同研究数を持ってくる考え方は、知財や共同研究以外の、ほかの分野の指標の評価としても使えると思いました。例えば、START事業の事業プロモーターの予算をプロジェクトごとにつける場合にも、予算を取ったからよいということではなく、取った金額に対してどれだけのアウトプットを出せるかが非常に重要であり、そうした評価指標にも使えるかなと思います。弊社のような投資会社の場合でも、かつては、投資した件数や投資金額を実績として評価する傾向があったのですが、社内で、それは違うじゃないか、あくまでもそれは分母じゃないか、アウトプットを分子に持ってきたリターンのほうが大事じゃないかということを議論していたことがありまして、今回の御議論も同じだな、と思っておもしろく拝聴しておったんですけれども、アウトプットを重視して見る考え方というのは、ほかの産学連携の活動にも応用が効くな、というように思って伺っておりました。
【羽鳥委員】  すみません、1点だけ。
【柘植主査】  どうぞ。
【羽鳥委員】  先ほどの防衛特許ということに関してなんですけれども、特許庁のデータ上でいいますと、日本の特許庁において登録されている全特許登録後の数ですね、これがたしか120万件ぐらいあったかなと思うんです、生きている特許。そのうちの半分が使われている、平均でいうと。残りの半分は使われてないんですね。使われない50%のうち、その半分以上の、全体でいうと30%が防衛特許なんです。最後の残りの20%が全く使われてない。百二十何万件の生きている特許のうちの20%は全く使われてない、30%は防衛特許である、残りの50%は使われている、こういう分布なんですね。大学の特許、とりわけ共有特許は使われてないということで評判があると言うとちょっと言い方がよろしくないですけれども、残念ながらあまり使われていない。そうすると、大学と企業の共有特許出願はどこに位置しているかというと、防衛特許のところに相当件数が位置しているというのがどうも類推できるんですね。それに対して一番いいやり方はどうなるかというと、私の私見では、これは企業さんの防衛特許であるとするならば、企業さんに一定の対価で、合理的な対価で買ってもらっちゃうほうがいいなと。そうすれば大学も使われない特許はなくなるし、企業さんも自由にできるし、指標も結果としてよくなるというふうなことがあるんじゃないか。要は、防衛特許が無視できない割合だ、全体の30%もあるんだと。これ、分野にもよるんですけれども、それをちょっと留意したほうがいいなというふうに思いました。
【柘植主査】  ありがとうございます。渡部委員、コメントをいただけますか?
【渡部委員】  その手の議論をかなり詰めてやる必要があるんだろうというふうに思っています。防衛特許は分母から外しましょうというのは簡単なんですけど、そこにはコストがかかっているし、大学の先生方の個々の技術なんですね。それが防衛特許という形で実施されないということがほんとうにどうなのかということもあります。それは譲渡すればいいのかどうかということもやはり議論があるところじゃないかと思います。そこは実はこの指標のつくり方でも全く違うわけで、分母に防衛特許になるような出願のインプットを入れるということは、アウトプットが実施されなければアウトカム指標はなくなってしまうんですね。だから、ちょっとそこはほんとうによく議論しないといけないところだと思っていまして、最後に例えば目標値を考えたとして、10年後にここまでやると経済的インパクトがどこまで出るといったときに、その30%あるというのは極めて大きな影響がありますので、そこは議論をしっかりやっていく必要があると思っております。個人的には、私は除いてしまえばという簡単な問題ではないと思っています。
【柘植主査】  ありがとうございます。
 本田委員、どうぞ。
【本田委員】  渡部先生の新しい指標というのは、より実施許諾であったりという実用化に向かう方向としてすばらしい指標だと思っております。その中で、実施許諾と譲渡というものを、今、同等――多分この議論も十分渡部先生の中ではたくさんされているんだと思うんですけれども、実施許諾と譲渡という、今、表上では横並びの関係で表示されているんですけれども、実際に実施許諾の場合の例えばアウトプットとしての実用化件数というのと、譲渡した場合の実用化件数というのが見えてくれば、どちらの方向が実用化に近いのかという形態として産学連携が進む方向を出す上で見えてくるのではないかなというふうに思いますので、譲渡というものと実施許諾、そこも何か分けて見られるといいのではないかなというふうに思いました。
 あともう1点としては、共同研究、今、大学で共同研究をやった後、どこまでその共同研究の成果として実用化しているのかというのを追いかけることができてないんじゃないかなというふうに考えております。そういう意味で、先生の指標の中では共同研究成果の実用化件数……そうですね、共同研究契約件数を母数として実用化件数を出していくという、割合を出していくというところは、その後、大学としても、それがきちんと実用化されているのかどうかというところを追いかけるという意味では非常にいい指標ではないかと思いますし、産業界としても、そういうところの問い合わせがあれば、より実用化の意識というのを高めていただけるのではないかなというふうに思いますので、非常にこういうことができるといいなというふうに伺っていて感想としてありました。
 以上です。
【柘植主査】  ありがとうございます。
 私のほうからちょっと渡部先生にお願いと、今日、もしお考えがあればというのが、18ページの産学連携活動の多様性に関する評価指標(検討中)、ぜひこのページはもう忘れないでやっていただきたいというのはもちろんなんですが、特に、私も人材委員会のメンバーですので、この教育・人材育成の中で、例えば人材輩出という形で共同研究等の成果により学位を取得した方々とか、それから、その下に教育活動との密接度で共同研究先に就職した学生数を共同研究の件数で割るとか、特にこの下の話なんかは、博士課程は、私の場合は工学ですから工学に限定してしまった話になると思うんですけれども、やはり修了者の7割が産業のほうに行ってもらう人材が出てきている現状からすると、この指標ですね、共同研究先に就職した学生数はもっともっと増える方向になるんじゃないかなと思っております。この辺をぜひ米国ともし比較ができたらいいなと思うことと、それから日本の場合のトレースができたらいいなと思うんです。難しいでしょうけれども、ぜひこの人材育成・教育のところのものは今のような視点も含めて検討していただきたいと思います。いかがなもんでしょうか。
【渡部委員】  はい、検討しているのですけど、これ、やっぱりユニフォームにとれるデータではない、大学で管理されているという形ではないので、どうしても多様性指標という取り扱いになります。大学によってはこの取り組みに重点を置かれている大学が、努力をされて出されるようなカテゴリーの指標かなと思っています。そういう意味で、重要性はよく認識していますが、ユニフォームに、特に国際比較ができるようなものは今のところちょっと見つかっていません。
【柘植主査】  ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それじゃ、時間が参りましたので、どうも渡部先生ありがとうございました。それでは、主査として、今の渡部先生の話、それから議論も含めて、この知的財産の在り方について、その都度、過程において問題点等を分析して、こういう形で渡部先生のように見える化をして、これをつないでいくということ自体が非常に重要であると私は考えます。そういう意味で、今日の渡部先生の議題は、来年から始まります新しい審議会の体制のもとで議論を引き継いでいっていただきたいと思います。
 それでは、次の議題に移りたいと思います。9月の本委員会の中間的とりまとめにおいても引用されておりますが、科学技術・学術審議会の基本論点では、「研究課題を設定する段階で、ユーザー、応用分野の研究者、人文・社会科学者等との広範かつ積極的な連携などにより、積極的に社会ニーズを掘り起こし、それを適切に課題に反映する仕組みを強化することが必要」と、この提起がなされております。本議題を議論するに当たりまして、もともとは建築都市インテリアの空間学を御専門としておられ、ここ20年近くは新しい知の生産学としての産学連携学、異種異質連携学と、こういうことに呼ばれておりますが、この異種異質連携学、これの研究と実践を専門にされまして、中でもアートデザインに拡幅した知の生産、そしてそれにかかわる知的財産権とその活用を中心に産学連携・知的財産活動されておられます、九州大学産学連携センター・デザイン総合部門の湯本長伯先生にお越しいただきました。
 また、女子美術大学の横山学長にもお越しいただきまして、デザインの産学連携の観点から女子美術大学の取り組みについて御紹介をいただきます。
 お二人には芸術という視点からお話をいただき、工学にとどまらない広範な連携学と社会との連携によりまして、社会ニーズを掘り起こして課題に反映する仕組みの強化について議論を深めていきたいと思います。
 それでは初めに、湯本先生、よろしくお願いいたします。
【湯本教授】  はい。御紹介ありがとうございました。今御紹介いただきました九州大学の湯本でございます。今、渡部先生のほうからしっかりした資料に基づく御発表がありましたけれども、今日お話しするのは、芸術あるいはデザインに拡幅した知の生産と活用というテーマをいただきましたけれども、これで既に成果が上がっているとかそういうことではなくて、今、発展途上にあるという試みであるというふうに理解していただければと思います。
 それで、多分、お手元に机上資料として1枚、私のドラフトがございます。今、モニターにも映っておりますけれども、これ、考え方を示すポンチ絵ですけれども、一番左の下のほう、工学系の分野の方に目指すものを特許、技術という形で産学連携を進めていきますと、そこに収束してしまいますけれども、もう少し右側にいろんな知的財産の捉え方、特に著作というふうなものに広げていくと、いろんな分野の方がここにかかわってきていただけるだろうということを示したポンチ絵でございます。こういうことが実際にできているということではございませんけれども、そういったことに沿ってお話をさせていただきたいと思います。
 それで最初に、大変申しわけないんですけれども、今御紹介いただきましたけれども、私どもが考える産学連携というのはちょっといつも話が合わないものですから、最初に定義を。
(産学連携の定義・ビデオ紹介)
【湯本教授】  私どもは、新しい知の生産をする手段として、あるいは方法論として、産学連携というのを考えているわけであります。そのときに、先ほどポンチ絵でお示ししましたように、工学系の大学の人間が技術ということを目指してやると非常に限られたところに落ち着いてしまうということは、我々のここ十数年の経験でございますけれども、もうちょっと幅を広げていくといろんな展開ができるのではないかというふうに考えております。
 今、産学連携ということについてお話ししましたけれども、もう一つ、デザインということは何なのかということをちょっとだけ申し上げておきたいと思いますが、まだこの世に存在しないものの姿を今描くこと、Design=de-sign予め描くというふうに我々考えておりまして、色と形と模様を決めることだというふうには考えていないんですね。そこのところだけちょっと最初にお断りをしておきたいと思います。
 もう一つ、先ほどお話もありましたけれども、実際に産学官連携というものを具体的なプロジェクトの中で行っている立場から言いますと、シーズとニーズのマッチングというふうな図式的なことでは産学連携はなかなかいかない。具体的には、そこにそれを担ういろんな主体が存在しているということでございまして、そこのところを一つ一つ仕分けをしていかないとなかなか産学連携の実態というのも捉えられないのではないかというふうに考えております。
 最初の話に戻りますけれども、芸術・科学・技術全分野にまたがる知の生産と活用ということで、大げさなんですけれども、レオナルドダビンチ・モデルと。彼は絵も描きますし、彫刻もやるし、建築もやる。そして殺人兵器の設計もしているわけであります。ポンプの設計もしましたけれども。そういうふうに知の生産というものを分野を限らないで進めていったほうがいろんな意味でいいんじゃないかというふうに考えておりますし、それは産学連携をやった結果、特許がどんどん積み重なって、その維持費に非常に苦労しているというのは私どもの大学も変わらないんですけれども、そういうふうなことにある展開をもたらすことができるのではないかというふうに考えております。
 産学連携というものを我々はシステム論として考えておりまして、要素と関係。この関係づけを変えることによっていろんなものが変わってくるというふうに思います。特に九州、首都圏ではございませんので、そういった地域の中で、どういう人たちが、どういう分野で、どういう市場を目指して産学連携をしていくのかということは非常に大きな問題であるわけであります。この後、横山先生のほうからデザイン知財の話がちょっと出てくると思いますけれども、いろんな意味で制度といいますか、衣が合わないということも感じております。
 これは、九州大学の大学院の共通教育の考え方を示したポンチ絵なんですけれども、2006年から九州大学では、今まで専門教育に偏っていたそういう大学院教育というものをもうちょっと横断的にやろうというふうに考えておりまして、そういう話の中でも単純に技術・工学ということではない教育を考えていきたいというふうに思っていたわけであります。
 この辺に沿っていろんな変化がありました。これは文部科学省にいただいたグラフですけれども、こういうふうな中で少しずつ内容を変えてきていますし、そういう必要があるのではないかというふうに思っている次第です。
 これは、私が2001年に構想して、2003年に今の特定非営利活動法人産学連携学会というのをつくりましたときに、読売新聞が書いた記事なんですけれども、国立大学もついに意識を変えて、生き残りに対して、簡単に言えば売り込みを始めたというふうな趣旨の記事なんですけれども、むしろ生き残りを考えなければならないのは大学だけではなく、特に国立大学だけではなくて、日本全体ではないかというふうに考える次第です。
 この辺はちょっと飛ばさせていただいて、九州大学のデザイン総合部門というのは、アートとデザインに特化したいろんな活動をやってまいりましたけれども、「じゃあ、デザインって何なんですか」ということをよく言われます。先ほどもちょっと申し上げましたけれども、デザインというのは、要素が同じでも関係が違うと。ですから、ABCDEとCABDEというのは、これ、順番という関係が違うわけでありまして、そういったものは重さではかっても同じなんですけれども、意味は違うんじゃないかというふうに考えております。そして、2001年に私はTLO、DLO、CLOというのを提案いたしました。残念ながらほとんど顧みられることはなかったんですけれども、九州大学ではその中からDLOだけ取り上げて、アジアDLOというのをつくりました。残念ながら成果はあまり上がりませんでした。結果としては、そこだけを取り出してもそれは非常に難しかったんだろうというふうに思いますけれども、やはり知財全般を考えていかないといけないのではないかというふうに思っております。
 今日、事例の御報告をする場ではないと思いますけれども、私どもは日本の文化・芸術という世界を対象にした日本芸術文化資料庫というデータベース、これはエッセンシャルデータベースですけれども、そういうものをまず産学官の共同研究・共同開発として行いまして、これはまだ途中ですけれども、それの延長形として日本の文化というものをどう捉えるかというものを、論文でなかなか書けないものですから、ムービーで表現をするというふうな、そういうことをやってきております。
 それからもう一つ、お話の中で御紹介したいのは、今、私どもは、日本の産学連携が第4段階にあるというふうに考えておりまして、一言で言うならば、それは草の根イノベーション創出の段階であるというふうに考えております。そこで、「九州大学開物成務塾」(中小企業経営開発革新講座)というものなんですけれども、これを5年間やっております。草の根というくらいですから、一つは1億円とか数億円ぐらいの規模のイノベーションでよろしいと。そして、それが100集まれば100億円になるだろうというふうな考え方でやっております。
 これは、先ほど申し上げた、もうちょっと右の上のほうに話を広げていきましょうよと、ポンチ絵でございます。
 それで、一番最初に私の所属します産学連携センター・デザイン総合部門というのが、英文名ではArt Science and Technology Centerと。芸術科学技術共同研究センターという名前になっておりまして、アートもサイエンスもテクノロジーも一緒に考えていこうと、一応そういう理念を掲げているというわけでございます。一つだけ挙げておきたいのは、今、超工業化社会だと思いますけれども、ものづくりというのはなかなか単純なものにはならないということで、よく私申し上げるんですけれども、ACとAFの謎ということですね。ACというのはエアコンディショナー、AFというのはエアフレッシュナーということなんですが、これが売り場にあんなにたくさん並んでいる国というのはなかなか見つからないんじゃないかと思うんですね。日本独特の商品でありまして、これはやっぱり日本の固有の文化というものがつくり出した商品であって、国が変われば全然必要でないものかもしれないんですね。ですから、これからのものづくりというのは、やっぱり文化とか、あるいは芸術とか、そういうふうな世界の中でも見ていかないと片手落ちになってしまうのではないかというふうに思っております。
 それから、先ほどのシーズ、ニーズ、主体論にちょっとだけ補足いたしますと、例えばi-modeという携帯が日本のガラパゴス携帯の原型になったというふうに言われておりますけれども、あれはもう徹底的にニーズの側をいわばデザインしていった結果として非常に特殊な発達をしたというふうに思うんですけれども、シーズもニーズもそこに転がっているわけではなくて、つくり出していくものであり、あるいは慎重に探し出していくものではないかというふうに思います。そのときにアートとかデザインという分野の目というのが非常に有効なのではないかというふうに思っている次第です。
 もう一つ、このダビンチ・モデルというふうに言いましたことを実現しようと大学の中で思いますと、実際にはなかなかそういう体制になってないんですね。一つは、大学の設備というのはほとんど講義室が面積的には大部分を占めております。講義室というのは講義を受けるための部屋でありまして、そこで学生が自発的に何かをつくるとか、そういうことをするための部屋ではないんですね。もちろん、そういうものを持っている大学もありますけれども、工房とか実験室、あるいは学生たちが課題をやるために24時間365日いろんな設備を使いながら自由に使えるという空間も必要だと思いますし、「なぜ日本の大学には美術館・博物館がないんだ」というふうに、外国から来た方にはよく言われるわけですけれども、そういったものも非常に重要なのではないかと思います。そういうものはやっぱり実物を見て得られるものというのも非常に大きいのではないかというふうに思うわけであります。そういうこと全体を含めて、専門性を偏重した教育から、横断性掛け合わせをするような、そういう教育研究に環境を変えていかないとなかなかいかないと思いますし、もう一つ申し上げたいのは、やっぱり教育研究を支えるという空間はいろんな先端的な設備、施設、そういうものだけではなくて、そこで日々いろいろやっている教員・学生・大学院生がもっと生活しやすくする、そういう生活空間の充実というのも私は先端科学技術に対する投資なのではないかというふうに思っておる次第でございます。
 そういうふうにして少しずつ大学の施設から、あるいは考え方から変えていくことができれば、随分違ったものになってくると思いますし、例えば実物教育、実際に手でさわって、場合によっては壊してみてというふうなことで得られる情報量というのは、スライドで映して見せるだけのものとは全然違うわけでありまして、先ほどの九州大学日本芸術文化資料庫でメンバーとしてやっていただいている九州国立博物館の三輪嘉六さんという館長がいらっしゃるんですけれども、九博ではいろいろな国宝・重要文化財を三次元のデジタイザで全部測定して、全く同じものを――同じものって中身まで一緒じゃありませんけど、形は全部同じものをつくって、来た人が自分で手でさわっていろいろと見ることができる、確かめることができるというような、そういう試みもしております。もうちょっと情報の流れ方、ルートを変えていく必要があるんじゃないかというふうに思っております。
 こういったことの背景なんですけれども、先ほどちょっと申し上げましたように、日本の産学連携は、文部科学省、経済産業省にお尋ねしても、今、第3段階なんだと。技術・知財移転というところからスタートして、産学連携共同研究、これが第2段階。しかし、それでは特許ばっかりたまって、ちっとも事業・産業は起きないということで、もっとパテントからイノベーションへという段階なんだというふうに伺うわけでありますけれども、今までいろんなことをやってきた中で私が感じておりますのは、大きなプロジェクトをやれば全部東京に本社のある大企業が大きな大学と組んでやる、それが産学連携共同研究だというふうに言われがちだと思うんですね。ところが、それによって人口の半分、そしてGDPの7割以上が東京圏に集中しているという状況の中で、もっといろんな形で分散していかないと、ここに今、地震が来たらどうするんですかということを常日ごろ考えておりまして、その一極集中の是正も含め、あるいは、地域から人がいなくなったら人口ももっと急速に減ってしまうというふうに思いますので、もう一回、ボトムからの事業創出をして、草の根イノベーションを育てていくことが必要なのではないかというふうに思いまして、九州大学開物成務塾というのを5年間続けているわけであります。
 では、その先はどうなっているのかということですけれども、既に第5段階というのが見えているんだろうと思うんですね。それを私は総力連携というふうに言っておりまして、先ほどの分野をどんどん広げていくというのはもちろんそうなんですけれども、例えば九州大学では、ここ十数年、産学連携にものすごく力を入れてきた結果、学内での学学連携というのが非常に進展してきたと。実情を申し上げるとあれなんですけれども、九州大学では医学部と工学部は仲があまりよくないということで知られておりまして、十数年前はそんな協力をするというのはあんまり考えられなかったんですけれども、産学連携を一生懸命進めてくることによって、どうも垣根が少しずつ取れてきたような気がするんですね。そういうことを含めて、日本全体がいろんな分野で総力で連携をしていくという状況に立ち至っているのではないかというふうに思う次第であります。
 これはついでの話ですけれども、最後の段階、これは知の生産というのが通貨になる、資本主義の社会ではなくて知本主義の社会になるというふうなことを、学生と日ごろ話しているわけでございます。
 それで、これは産学連携学会をつくったときの第1回の大会、北海道大学でやりましたけれども、そのときに願いを込めましたのは、そこにあるのはプロメテウスの火というロゴマークなんですけれども、私自身がデザインをしたんですけれども、破壊と創造をこれによって進めていくというふうなことを考えたわけであります。
 いろんなところに出てきますけれども、横断性、それからさまざまな連携というのは、これからのほんとうに新しいキーワードなんだろうというふうに思っておりまして、その中でどういうふうに今後のことを考えていくのかということが重要であろうと思います。
 ただ開発講座と言ってもいけませんので、いろんな創造技法というようなことも一緒にやりながら、いろんなテーマがあります。中小企業ですが、こういったものの中で既に1億近い売り上げを達成しているところもあります。それが100社そろえば100億円の新しいイノベーションをつくり出したということになるんだろうと思うんですけれども、そういったことを目指して、九州の地でいろんなことを考えていきたいというふうに思っている次第です。
 それで、最後にICカードというのを、九州大学もいろんなことをやっておりまして、特にグラミングループですね、ムハマド・ユヌスさんがノーベル平和賞をとられましたけれども、あそこと総合的な連携、もちろん私がやっているわけじゃないんですけれども、ICカードの技術を使って本人認証と通帳機能というのを持たせて、社会の構造を変えながらお手伝いをしていくというふうなこともやっているわけであります。
 DLOをつくりましたけれども、あまり大した成果はなくて、こういったものの意匠出願したり、これは商標ですけれども、こういうのをやったりということであります。福岡は4番目のデザイン都市なんですね。そういう点でそこに乗ろうと思いましたけれども、その点はあまりうまくいってないということであります。
 これ、文部科学省でお話しするので、相変わらず予算等でいろんな問題が国立大学はきっちり旧来の序列というのがついておりまして、九州大学も七帝大の中では何番目かというのははっきりしているわけでありまして、そういうのは少し変えていただいたほうがいいのではないかというふうに思う次第であります。
 それでは、もう3分ぐらいで、ちょっとつくりました日本の芸術文化の自画像を探り描くというムービーを、一部だけ見て戴きます。
(ビデオ紹介)
【湯本教授】  これは大体1本で数百万円ぐらい実はかかっているんですけれども、こういうものをつくりながら、ここにありますように、時代を九つに分けまして、そして九つのテーマを立てました。ちょっと2分ぐらい、桃山時代、日本の文化が大きく変わった時代ですけれども、「黄金とわび」と名づけたものをちょっとだけ見ていただきたいと思います。
(ビデオ紹介)
【湯本教授】  全部見ていただきますと10分かかりますので、このぐらいにしておきますけれども、「黄金とわび」というのは、今、我々、現代生きている人間の美意識とかそういうものに投影している、非常に根の深いものだろうと思うんですけれども、そういったものを九つに分けていろんな研究した上で、その結果を論文で書いてもなかなか伝わらないので、やっぱり映像と実際の国宝・重要文化財というものを含めた映像を見ていただきながら、何を考えたのかというものをムービーとして表現をしているということであります。これが、全国4,061館、美術館・博物館ありますけれども、そこに全部入れていただければ相当なビジネスになると。大学はもっとあるということですから、ただ研究をして開発しているだけではなくて、それをやっぱり事業・産業につなげていこうということも考えているわけであります。
 私の話は以上でございますけれども、この後、女子美術大学の横山勝樹学長に――女子美術大学というのは東京四美といいまして、芸大、武蔵野美術大学、多摩美術大学、そして女子美術大学という非常に歴史のある美術大学でございますが、大変活発に地域あるいは団体と共同の事業をされてこられて、それ自体ものすごいボリュームなんですけれども、同時に、美大・芸大連合でしたっけ、何かそういうものの中で、このままではなかなかいかないということで、デザイン知財の話をまとめられるとか、いろんな環境整備もしておられるわけでありまして、そういったことも今日のお話の一環としてしていただきたいと思いまして、お忙しいところ、今日御無理を申し上げて来ていただきました。
【柘植主査】  ありがとうございます。
【湯本教授】  ありがとうございました。
【柘植主査】  それでは、質疑応答は後にしまして、早速、横山学長、よろしくお願いいたします。
【横山学長】  ただいま御紹介あずかりました横山と申します。本学は小さな大学ですけど、今、湯本先生から御紹介いただきましたように、創立112年で、幕末の思想家の横井小楠の娘が美術を通して女性の自立というのを建学の精神として始まった学校であります。
 最後に湯本先生から御紹介あった日本芸術文化資料庫データベースですか、美術大学としても非常に注目をいたしているところであります。もちろん、今は学習時間確保とかそういったことで大学教育としてデジタル教材の作成や運用、そういったものにも美大として興味あるところでありますので、ぜひオープンソースとして多くの大学が参加できるようなプラットフォームとして発展していただければありがたいというふうに思っております。
 ただ、我々、その美術・デザインの分野と申しますのは、今ありましたような画像データ、こういったものが非常に教育・研究において大事になってきております。これらは非常に権利関係の処理が複雑で難しいところがありまして、こういった教材だけでなく、いろんな事業に展開していくときのやっぱり足かせになっているという状態があります。ぜひともそういったことまで解決できるようなプラットフォームとして展開していただければありがたいというふうに思っています。そのことは、おそらく日本文化の発信の力となっていくんじゃないかというふうに私は期待をしております。大学は教育・研究だけじゃなくて、先ほどからお話にあるようないろんな事業展開がこれから求められていくかと思いますけれども、観光業への進出ということもあるかと思いますし、それから、我々大学自体も、今、世界の中での留学生確保ということが求められています。見方を変えれば、我々は国境をまたぐ人たちを集めるある意味の輸出産業をしているという捉え方もあるんじゃないかというふうに思っています。そのときにやっぱり若い世界中の人たちに日本文化について興味を持ってもらいたい。それをネットなど通して発信していただきたいと。そこら辺がやっぱり我々のある意味の世界的な戦いの中で有利になっていくんじゃないかというふうに思っております。
 我々も――我々と申しますのは女子美術大学も、例えば染織コレクションというものを持っております。江戸時代の小袖ですね、女性の着物、このコレクション、実はカネボウのほうから持っていたものをいただいているわけですけれども、こういったものを収蔵しておりますけれども、それを生かすということをこれからやっぱりやっていかなきゃいけないというふうに考えております。現状でも国立国会図書館データベースに随時画像データを載っけているわけですけれども、こういったものを上げていくことが、すなわち我々の世界だけの存在感というものを上げていくことになるんじゃないかというふうに思って、今、頑張っているわけです。
 それで、机上の資料、先ほどお配りいただいたものなんですけれども、デザイン知財のルール整備ということで、日刊工業新聞、先週の金曜日に出していただいたものでありますけれども、これは委員である三木先生のINPITや特許庁の御協力によるものでして、我々、こういった分野、特に工学系と異なりまして、芸術系の分野、デザイン系の分野、おくれておりますので、こういったことがようやく始まったというふうに思われるかと思いますけど、ただ、工学系と美術系・芸術系、少し異なる部分がございます。それは記事の中でも少し触れてございますけれども、特に美大では学生と教員の軽重が異なっているということです。当然、工学系でありますと教員の指導のもとで何かやられていくという形が主導的なことだと思いますけれども、我々美大ですと、どちらかというと学生主体、その中で産学連携というものが進んでいくという状態がございます。
 例を挙げますと、例えば江戸川区の伝統工芸の職人たちと我々の学生たちのコラボレーションによる商品の開発であったりとか、あるいは山村でのいわゆる地場産業的な食品に対するブランディング、あるいは環境業としてのブランディング、そういったものを学生たちが手伝う、そのような産学連携という試みをしています。これ、もちろん教員の役割というのはファシリテーターとしての役割が十分あるわけなんですけれども、なぜ学生が主体的に進んでいくかというと、これは、それらの協力相手から強く求められているのが学生の感性、そこに我々、知財を考えているわけです。もう少し端的に申しますと、例えば本学であれば女子の美術大学。彼らが求めているのは、かわいい文化って何なのかと。かわいさはどこから出てくるのかというところ。これはある意味、教員では教えられない部分があります。ファシリテーターとしての役割しかない。あるいは、ゲームなんかもそうなんですけど、今、もうこれはある意味アカデミックな先生は怒っているんですけれども、日本画に入学する学生、初めからゲームの背景画を描きたいと言って入ってくる学生がいる。これもやはり、彼らは彼らなりにある意味ユーザーとしてのさまざまな知識を持っていまして、その中で展開していく。そういったところ、やはり我々教職員、もちろん社会との接点の中で果たすべき役割はあるんですけれども、先ほど申し上げたように主体は学生であるということです。
 その中で、こういったデザイン知財ルール整備と。要は、我々も一つの事業所として発明規定などは既に持っておるわけでありますけれども、これは組織人としての教員の在り方を規定しているだけでありまして、学生の権利をどう保障するか、ここら辺は非常に未整備なところがあります。その部分につきまして、ここの日刊工業新聞さんに取り上げていただいた本学あるいは東京造形、長岡造形、いずれもある意味小さな美術大学、単科大学なんですけど、こういったものが協力してこれからどうやっていくかということを連携しながら考えていくということであります。我々としては、基本的な考え方は、この学生の作品があるわけですから、これは個人に所属するものとして、それと企業なり社会との関係を取り持つ仲介という形にはなると思います。それをどういうふうに学生たちの将来にとって不利のないようにしていってあげるか、そこら辺を整備しなきゃいけないというふうに思っております。例えば、文科省さんの名刺の中にも使われているみたいですが、2020年オリンピック招致のロゴマーク、あれは本学の学生が去年、4年生のときにデザインしたものであります。あれはコンペですので、最初からもう権利関係はある意味処理された、それに同意する形でコンペに申し込んでいるわけですから、特に問題は生じないわけなんですけれども、同じようなことがやはり地域との連携の中で出てきます。先ほど申しました学生の感性をもらいたいということでいろいろ連携していく。これはコンペじゃないときには、我々としてはその権利関係どうするか、大学として仲介してあげなきゃいけない。そこら辺のことはこれからやっていかなきゃいけないというふうに思っております。そういったことが今やられたということでこの新聞の記事があるということです。
 雑ぱくでしたけど、以上、ちょっと発言させていただきました。
【柘植主査】  ありがとうございました。私は典型的なエンジニアリングの分野ですが、今、お二方のお話を聞いて目が開かれる思いであります。
 今から約20分ぐらい時間がございますので、質疑応答お願いいたします。どうぞ、羽鳥委員。
【羽鳥委員】  大変すばらしいお話をありがとうございました。両先生にお聞きしたいんですけれども、デザインについての日本の立ち位置というんでしょうか、それはおくれているのか、進んでいるのか、普及しているのか、普及していないのか、その辺のところですね。というのは、背景として何かというと、例えばアップルのいろんな製品がデザインがよくて売れたところもあるかもしれないんですね。一方、なぜ日本はそういうことが起きなかったのか。もちろん、デザインだけじゃなくて、もうちょっと別なところ、すなわちビジネスモデルがあったかなと思いますけれども、もしデザインの要素もあったとするならば、それは日本はおくれているのか、いや、おくれてはいない、あれは単にスティーブ・ジョブズの強い独自性だけだったのか。その辺で何か御感想があったら教えていただきたいと思います。
【湯本教授】  結論から言えば、日本のデザインというのは非常に進んでいると思います。ただ、先ほど十分お話しする時間がなかったんですが、デザインにはいろんなレベルがあるんですね。スティーブ・ジョブズに負けたのは、要するに戦略のデザインというところで完全にしてやられて、性能は多分日本のウォークマンのほうがきっとよかったと思うんですが、iPodのほうが全体の社会システムとしては非常にすぐれていたというふうな面があると思います。デザインだけいうと、いろんなデザインをバンドルして一つにするというものとして象徴的なのが建築のデザインということだと思うんですが、世界のいろんな国際コンペで日本の建築家が次々グランプリとっておりますし、いろんな意味で独特の感性を持っているということで高い評価があると思うんですね。問題は、何をデザインするかとか、その課題をつくる、そのデザインというのが非常に弱いので――弱いというのか、まだそこまで目が行ってないというのか、そういうところでいろんな問題が時におくれをとっているのかなというふうに思っております。
【柘植主査】  はい、よろしいでしょうか。
【羽鳥委員】  はい、ありがとうございました。
【野間口主査代理】  よろしいですか。
【柘植主査】  どうぞ、野間口委員。
【野間口主査代理】  私お二人の先生に伺いたいのですが、まず横山先生が示していただいた資料の後ろの方にありますように、デザインやコンテンツの画面を実施したときの権利の定義がまだはっきりしていないと思います。日本はしっかりと関係者が権利の定義を合意してから決めるという文化であり、それに対して、米国などは実際に使いながら使える範囲を広げていこうといった様に見えます。日本としても、そこに少しずつ風穴を開けていこうという取り組みを始めているとしたら、私、知財戦略に関わる者として非常に良い取り組みであると思いますが、この辺の動向を御教示いただければ有り難く思います。
 それから2点目ですが、湯本先生のお話では、パワーポイント資料の6頁目に「米国主導の知財権で良いか?」という文言がありましたが、この米国主導の領域では、例えばソフトウエアの特許やホームページのデザインの権利を認めたり、あるいはビジネスモデル特許を認めるなど、次々と自らルールを拡大しているわけです。このような動きに対して、日本もその先を行った方が良いとおっしゃっているのか、あるいはこれらの動きが良くないというので何か別の新しいコンセプトを打ち出そうという意味なのか、その辺の御意見をいただければと存じます。
【湯本教授】  はい。じゃあ、後ろのほうからよろしいでしょうか。90年代、要するにアメリカはそれまでアンチパテントだったのがプロパテントに転換をして、そして裁判制度から何からみんな変えますよね。日本の特許庁に当たるものも審査会を倍増して、ほんとうに10年で倍増するという中で、はっきりしているのは、とにかくどんどんどんどん新しい知財権をつくって、そしてそれはアメリカンスタンダードなんだけど、グローバルスタンダードにどんどんなっていって、これが世界中縛っているわけですよね。やっぱり工業の話もそうなんですけれども、スタンダードのところをちゃんとさわらない限り、どういうふうに戦っても負けるはずなんですよね。もし負けたら彼らはルール変えるだけですから。ですから、やっぱりそこのところの考え方というのはもっと国際機関も含めてちゃんとやっていかなきゃいけない。ところが、なぜか国内のそういう体制が、この委員会もそのためにやられているかもしれませんけれども、必ずしも御意見がまとまっていない、あるいは、この後どうしていくのかという戦略があんまり見えない。そうすると、どんどんまたやられていきますよね。そういうことをちょっとちらっと書いたんですけど、先生、そこを見ていただいて大変ありがたく思います。
 じゃあ、そちらの話、いいですか。
【横山学長】  コンテンツの話は、私の感覚からするとやっぱりブレークスルーを学術関係からやっていくという、そういう意味では大学の力というのはあると思うんですけれども、国としての考え方は三木先生のほうからちょっと補足していただければありがたいと思いますけれども。
【三木委員】  コンテンツだけでなく、今、先ほど横山先生がお話しになられていたように、特許庁、INPITとしてデザイン関係の大学連携を支援しているわけですけれども、基本的な考え方は、我々はデザインとものづくり、またはサービスの融合、これを図っていこうということが中・長期的な目標です。イノベーションというのは、例えばシュンペーター流に言うと、技術革新をベースに、消費者が便利であると受け入れられるような商品であったりサービスを未来の先取りとして実現すると。シュンペーター流に言うとそういう言い方をしていますよね。ということは、技術革新をベースになんですけれども、それと消費者が便利であって受け入れやすい商品サービスという、ここの融合のところにデザインが当然関与するという考え方をしています。それで、例えば文部科学省さんとも一緒に特許庁、それから日本弁理士会、INPITでずっと長年やっている、学生を対象にしたパテント・デザインパテントコンテストという、パテントは特許だけ、デザインパテントのほうは当然意匠のコンテストを長くやっているわけです。ここには大学生、高校生を主たる対象にしてやっておりますが、実は出願料も、これは優秀作品については全て弁理士会が見てくれて、その上で、特許の場合は権利化されると向こう3年間は弁理士会が見てくれる。さらに、意匠についても1年分は弁理士会が見てくれると。こういう制度を文部科学省さんと一緒にやっているんですけれども、その中から実はかなりいいものが最近は出てきています。先ほど先生方のほうからお話ありましたように、若い方がやっぱりクリエーターなんですね。
 例えば高校生の作品で、地域貢献に非常に寄与しているものが最近はかなり出てきております。そういったものが地域の産業、高校生の分は、例えばある離島のツバキ油のラベルをデザインし直したとか、それによって、今の昭和レトロのようなラベルしか田舎ではなかったものが今風のものになって、今から販路拡大が期待できるとか、いろんなことが地域貢献で動いています。そういったものは当然、グローバルビジネスにだんだん展開していくことも可能だろうと思っています。例えばある沈滞している温泉街のところに、あんどんみたいなものなんですけれども、それのデザインをやっている高校生がいます。これはですね、実は完全にグローバルにも通用するようなデザインを高校生が出しているんですね。こういったようなことが現実、現場では起こっているということで、非常に可能性はあると考えています。あと、これをものづくりとどういうふうに融合していくのかという、実際の産業の場、特にものづくり産業の場の中に融合していくのはまだまだ少し時間がかかるかなと、そういう印象でございます。ただし、そこを目指していくのが最終的な目標であろうと考えています。
【柘植主査】  ありがとうございます。
 前田委員、どうぞ。
【前田委員】  今、三木先生のほうからお若い方のアイデアがという話がありましたけれど、私、東京医科歯科大に行ったばかりのときに、学生さんが学校に知財を譲渡したくないという話がありまして、機関帰属の考え方で学生さんを縛って大学のほうで特許取れないという状況があって、契約書、やはりどこの大学も大変だと思うんですね。こちらのほうで、ここに書いていらっしゃいますように、やっぱりデザインとか若い人の感性が、それに若い人の知財権というものが非常に大事になってきて、契約書とかが整備されると思います。工学系のほうでも、また、ライフサイエンスのほうでも、非常に参考になろうかと思いますので、いろいろな場合のケースに合わせて契約書が整備されて、それがほかの分野のほうでも使えるようになると、ほかのところでも大変有効なんじゃないかなと思いながら拝見させていただきました。
【柘植主査】  よろしいですか。じゃあ、まず。
【横山学長】  すみません、せっかくこういう場所にいるので。先ほどの日本のデザインはどうなのかというお答え、女子美としてちょっとお答えをさせていただきたい、主張させていただきたいところがあるんですけれども、日本のデザインのレベル、トップレベルだと思います、世界の中で。ただ、先ほどスティーブ・ジョブズのお話がありましたけれども、例えばiPhoneにしても、日本で開発というか、販売するチャンスは幾らでもあったと思うんですね。ソニーにもシャープにもあったはずです。ただ、よくクールジャパンと。だから、経産省も文科省の方も日本のデザインがすぐれているということはよく御存じだと、そういったカテゴリーの中で。ただ、先ほど申し上げましたように、日本のデザインにはかわいさがないんですよ。要は、iPhoneはかわいかったからあれだけ爆発的に売れたと思うんですね、私は。つまり、クールであると同時にかわいさがなきゃいけない。その部分というのが、どうも日本のデザイン産業界の中に欠けていると私は思います。どういうことかというと、それは女性をコンシューマーとしてどれぐらい捉えているか。シャープのデザインも、それから……あ、あんまり企業の名前言っちゃいけませんね。日本の企業のデザインというのは、おじさん向けのデザインなんです。クールだったけれども、若い女性には受けなかった。これが一番の間違いだと。これは女子美だから言うわけですけれども。女子美術大学の学長として言わせていただければ。
【柘植主査】  どうぞ。
【湯本教授】  先ほどコンテンツの話がありましたけれども、今一番、知的財産権で急速に広がっているのが著作だと思うんですね。今、私たちがこうやって話をさせていただく、これも著作ですし、これはまたインターネットに載れば、それも著作ですよね。ですから、文部科学省の下の文化庁がやられていると思うんですけれども、あるところでフィックスするとまた増えますよね。どんどんどんどん広がっていってしまうと思うんですね。ですから、そこの辺の長期的な戦略というのを少し時間をかけてやっていただくということが必要だと思いますし、それから、「ひこにゃん」の話がありましたね、ゆるキャラの。あれで随分、作者と彦根市が争っていましたけれども、あの話の中でどうも私が腑に落ちないのは、著作権と著作人格権は違うということが一体彦根市はどのくらいわかっているんだろうと思うんですね。著作人格権は、これは買い取れるものじゃありませんから、同一性保持権というのは作者にずっとあるわけですよね。そういう無理解というんですかね、それもやっぱりちょっと文部科学省の仕事としてもうちょっとキャンペーンを打つとか、あるいは教育の中に入れていくとか、そういうことも必要だと思います。
 最後に、日本の小・中・高の中にデザイン教育ってほとんどないんですよね。美術教育は若干ありますけれども。それと、建築空間とかそういうものに対する教育もなかなかない。ないわけじゃなくて、私も教科書つくったことあるんですけれども、残念ながら教える先生がいないということですね。やっぱりちょっと根底からいろんな仕組みを考えていかないと、表面的な対応では難しいんじゃないかなということを感じております。
 以上です。
【野間口主査代理】  よろしいですか。
【柘植主査】  はい。
【野間口主査代理】  1点コメントさせて下さい。。
【柘植主査】  関連ですので、じゃあ先に質問していい……。
【野間口主査代理】  私も今、湯本先生のおっしゃったことに賛成します。文化庁や特許庁といった権威のある機関に検討していただく場合、1度作るとなれば二度と変えなくても良いようなものを作る傾向があります。しかし、デザインやクリエーティブな仕事をどう評価するかということについては、日々変わっていくものではないかと考えます。したがって、資料にもありますように、若い人の感性を活かして試行的に実施してもらい、そして、それが通用するのであるならば、デファクト的に位置付けて良いのではないかという位の心構えで臨んだ方がより進むのではないかと思います。DVDの例では、DVDが出る時代から延々と著作権論争が起こっています。産業界や文科省も議論をしていますが、全然進んでおりません。米国では、インターネット上のコンテンツをどのように取り扱うかについては、ある程度実用ベースで手が付けられています。様々な案が出てきて最終的には確立していないが、動いているような状況です。このような状況にしなければ、クリエーティブな環境にはならないように考えます。
【柘植主査】  ありがとうございました。
 井口委員、どうもお待たせいたしました。どうぞ。
【井口委員】  まさしく今、お二人の先生の、この辺は非常に若い人たちとかそういう感性、非常に大事だと思います。さっき三木先生もおっしゃっていましたけれども、今、私も知財学会の中の一つの分科会で、小・中・高・高専・大学と、こういうことの知財の権利化ということをいろいろやっているんですけれども、今、非常に悩んでいるのは、やっぱり大学も2年ぐらいまでだと未成年なんですね。それで、ここを出願する、このときに、法定後見人と、こういう名前が出願するとき必ず公になってくると。従来は――従来でもあったかもしれませんけれども、家庭は両親そろって子どもと、こういう家庭が大部分を占めたんですけど、最近はそうでなくて、両親が違うとか片親が違うとかこういうときに、出願するときにその名前がもろに出てしまうということで、今、非常に悩んでいる点があります。ですから、逆に、コンテストみたいのだともう権利がそこに初めから帰属してあって、発明人というところだけが生きていきますので、これまた非常にすっきりしているんですけれども、個人で申請するときにそういうことで今悩んでおりまして、知財学会の12月の大会で我々の分科会でも、そういう法的なものをどうするかということをシンポジウムでやるんですけれども、その辺、現在は、権利だからなかなか難しいんですけれども、どこかでほんとうは御検討していただくと、といつも思っております。
 以上です。
【柘植主査】  いいですか。はい、じゃ、ほかに何かございますでしょうか。どうぞ、橋本委員。
【橋本委員】  今日お話を伺って非常に目が覚めたようなところがあります。最初の渡部先生のお話の中で評価指標のお話で特許の話がありましたけれども、そこに、例えばノウハウだとか、いわゆる特許でない知財をどういうふうに評価しようとして組み込むのかということを考えたらどうかと思っていたんです。今のまさに意匠とかいうものもそうですし、あるいは流通させるオープンなソフトウエアとか、そういうものも結構ITの中ではありますね。そういうものも、やはりこういう産学連携の中で生み出される大きな成果かと思うんですけれども、それと今のデザインあるいは商標とかいうことに加えて一つ指摘したいのは、いわゆる標準化という考え方、これはもう少し産業寄りのほうの話ですけれども、ローカルな標準化とか、あるいはもっとグローバルな標準化というのも重要です。、何か製品に近いものをつくっていったときに、独自のデザインということのプラス何らかの意味の標準化あるいはルール化みたいなものがないと、なかなか商品として広がらないだろうと思うんですね。その辺のところも多分成功した産学連携というのは暗黙のうちに含まれているんじゃないか。ルールづくりみたいなことがですね。そういうものも評価としてどうやってくみ上げていったらいいのかということを考えたらどうかなというふうに思いましたので、一言申し上げます。
【柘植主査】  何か渡部先生、御感想を、今の。
【渡部委員】  おっしゃるとおり特許以外の知財も大切ですが、実際利用するのは産業界なので、例えば意匠権は実は出願が激減しているんですよね。実は、意匠権みたいなものっはもっと中小企業なんかは使ってしかるべきだという意見は随分ありますが、特許のように訴訟になりにくい。どんぴしゃ同じ意匠なら、訴訟にならない。そうするとあまり効果がないみたいに思われるところもあるんだけど、実際は相当効果があるのではないかという議論もあります。また、新興国なんか行きますと意匠権のほうが即効性がある。技術論争しなくていいので。というように、デザインの全体の保護とか意匠権の問題というのは、今、それこそ、重要だという議論をしているところなので、そう言っていながらさっきの指標の中には意匠は入ってなかったんですけど、検討すべき内容だと思います。
 ちなみに、さきほど著作権の話が出ました。著作権は無方式主義で発生するような権利で、意匠権はわざわざ審査してもらって公示されている権利なんだけど、それの効力も実は何か下手すると逆転してしまったりするケースがあるんじゃないかみたいな議論もあります。、全体的に今、デザイン保護法制というのはちょっとバランス悪いんじゃないかみたいな話もございます。これも省庁またがっているので、なかなか難しい話なんですけど。
 以上でございます。
【柘植主査】  ありがとうございます。
 常本委員、永里委員で。
【常本委員】  今、お話を伺っていて、今、日本の産学連携が第3段階で、第4段階に入りつつあるというお話を大変おもしろく聞かせていただいたんですけれども、このボトムからの事業創出というのは、多分、地方大学は大体こういう格好で動かれているんだろうなというふうに思っています。もう一つ、先ほどお話をいただいた中で大事なのは、やっぱり現教員・研究者が新しいイノベーションを起こすということは大事なんですけれども、次の時代の若者にイノベーションを起こさせるために、やはり産学連携の必要性を教育の中にもっと取り込むということが、先ほど美大が現役の方を活用されていると同じように、日本中の大学全体がそういう取り組みが必要かなという気がして、お伺いしているので、かなりの大学がそういう科目を持ち始めていますけれども、まだまだ少ないかなという気がするので、ぜひ文科省のほうも後押しをするようお願いしたいと思いますね。
【柘植主査】  よろしいですか。
【常本委員】  はい。
【柘植主査】  ありがとうございます。
 じゃ、永里委員、どうぞ。
【永里委員】  湯本先生に、最初の「デザインとは何か?」の次に、「単純論としてのシーズニーズ主体論」というのが書いてありまして、「シーズ・ニーズのマッチング論は成立可能か?」という下の中に、「ニーズとは何か? ニーズは地下に埋まっている/掘り出し作業が重要」と。「ニーズを発見するにはプロセスデザインが必要」と、こう書いてあります。それは、例えばi-modeのことに関しましては、あれはNTTがつくった一つのスペックであって、あれはほんとうのニーズではないというふうに読めるんでしょうかね。それが一つの質問。
 それからもう一つは、「ニーズを発見するにはプロセスデザインが必要」と。我々、物をつくる重厚長大の企業としては、プロセスデザインというのは概念わかるんですが、この場合のニーズを発見するプロセスデザインというのはどういうものか、ほんとうはここが知りたいんですが。
【湯本教授】  ありがとうございます。実は二つの御質問の答えは同じでありまして、ニーズというのは、もう地下に埋まっていて、掘ればカチンと当たって出てくるというふうには私は思っておりませんで、あるプロセスをもってだんだん形になってくるものだと思うんですね。ですから、最初からもうある形があって、それを目指してやるということが正しいのではなくて、幾つかの段階を踏みながら大きくニーズが開いてくるというふうに思いますので、そういう意味でプロセスデザインという言葉を使っているわけであります。
【柘植主査】  時間が参りましたので、この2番目の議題は閉じたいと思いますが、やはり今の活発的な議論を伺いますと、特許に象徴されます狭い意味の技術移転のみが産学連携というものではなくて、今、今日のお二人のお話に見られますように、言うならば人文・社会科学と工学あるいは自然科学との融合、こういう特徴的なアプローチが産学連携にとって新たな展開の原動力になるものとの思いを新たにいたしました。このアプローチは、私も経験からしますと、産業の新しいパイの創造、それが実際起こっているわけですけれども、そういう産業の新しいパイの創造につながるという、こういう可能性を今日は見たと思います。この件は、ぜひこういう視点で来年の新たな審議会の活動で議論を深めていきたいと期待しております。
 それでは、最後の議題に移りたいと思います。本日の3番目の議題、東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の在り方についてであります。こちらは親部会での議論を簡単に報告させていただくという形で済ませたいと思いますので、事務局のほうから報告をお願いいたします。
【工藤室長】  はい。それでは、資料3のほうを御説明したいと思います。資料3を1枚めくっていただきますと、そこに参考資料といたしまして、「東日本大震災を踏まえた今後の科学技術・学術政策の在り方について(中間まとめ)」を踏まえた検討についてでございます。これは、参考資料1としてつけさせていただいている冊子がございますけれども、これの最終報告をまとめるに当たっての各コメントを科学技術・学術審議会野依会長からの各部会に報告を求めたものでございます。
 具体的な議論は、今、柘植主査から御説明あったように、この委員会の親部会のほうで御議論いただいております。中間報告の中の6ページに、大きな2として「地震及び防災に関する検証、復興、再生及び安全性への貢献」という枠がございます。この中に「研究機関の復興支援」という形で述べられている部分について、赤字で新たなコメントというのを入れさせていただいております。こちらについてお目通していただければと思います。
 もう一つコメントにつながる部分がございまして、中間報告の12ページの第4章の「研究開発の成果の適切かつ効果的な活用」という形で、この中に当委員会に非常に関連の深いセンター・オブ・イノベーション関係の記述がもともと入ってございます。ここに幾つか表現ぶりのを赤字で修正してございます。こちらの内容を次回科学技術・学術審議会総会――これは11月28日になりますけれども、部会長から御説明いただけるという形で聞いております。
 以上でございます。
【柘植主査】  はい、ありがとうございます。
 今日の三つの議題を終えまして、最後に、今年度の本委員会の結びといいますか、次年度に向けた申し送り事項も含めまして、今後の予定について事務局のほうから説明お願いできますか。
【工藤室長】  それでは御説明いたします。前回の委員会で御議論いただきました産学官連携システムの見える化という議題、それから、本日、渡部先生、湯本先生、横山先生に御紹介いただいて議論いたしました、国による戦略的な知的財産活用の支援、それから成果指標の活用方策及び大学知財本部・TLOの連携、それから社会的要請への対応につきまして、約4点が、これまで9月13日に御提言いただきました「イノベーション・エコシステム確立に向けて早急に措置すべき施策~イノベーション創出能力の強化に向けて~」において、積み残しになっていた議題でございます。前回と今回を含めて御議論いただいた内容を整理させていただきまして、案として御提示させていただき、次回第15回――12月10日(月曜日)の14時から16時で御案内させていただいておりますけれども、御議論いただければというふうに考えております。また、当面の予備日といたしまして、12月19日(水曜日)午後1時から3時の間にも会議予定日がございますので、またその辺については事務局のほうから御連絡差し上げたいと思います。
 私からは以上です。
【柘植主査】  それでは、ちょうど時間になりましたので、本日の産学官連携推進委員会を閉会いたしたいと思いますが、本日は御多忙のところ、特に渡部先生、湯本先生、横山先生、ほんとうに時間を割いていただきありがとうございました。
 それでは、閉会といたします。御苦労さまでございました。

―― 了 ――

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