産業連携・地域支援部会 産学官連携推進委員会(第10回) 議事録

1.日時

平成24年7月2日(月曜日)15時~17時

2.場所

文部科学省 東館 16F特別会議室

3.議題

  1. 大学が関与したオープンイノベーションシステム推進方策
  2. その他

4.議事録

【柘植主査】  時間が参りましたので、産学官連携推進委員会の第10回を開催いたします。

 お忙しいところ、ご参集ありがとうございます。本日は、大学が関与するオープンイノベーションシステム推進方策について、前回に引き続いて議論をする予定でございます。

 まず、事務局から、事務局の異動及び配付資料の確認をお願いします。

【石田室長補佐】  まず、冒頭でございますが、事務局の異動について、ご紹介申し上げます。7月1日付で大臣官房付に工藤が着任しております。また、専門官に鷲﨑が着任しております。異動の紹介につきましては以上でございます。

 引き続きまして、配付資料の確認をよろしくお願いしたします。お手元に配付しております資料の一番上に議事次第を置いておるところでございます。真ん中あたりでございますが、4.配付資料の一覧となっておるところでございます。1点1点、恐れ入りますが、確認をよろしくお願いいたします。

 まず、資料1でございます。「産学官連携施策検討課題」という1枚物資料となっております。資料2でございます。A4版横長、ちょっと厚めの資料でございますが、「大学が関与したオープンイノベーションシステム推進方策関連資料」というものでございます。続きまして、資料3でございます。「オープンイノベーションの時代に大学はいかにあるべきか」というA4版横長の資料となっております。続きまして、資料4でございます。「産学官連携に関するいくつかの論点」というA4版横長の資料でございます。ホチキスどめでございます。続きまして、資料5でございます。「大学が関与したオープンイノベーションシステム推進方策の課題と今後の検討性(たたき台)」という資料になっております。資料6でございます。1枚物で、産学官連携推進委員会の予定になっているところでございます。

 資料番号を付されたものは以上でございますけれども、このほか、机上配付参考資料といたしまして、紙のファイルにとじられた参考資料が用意させていただいているところでございます。一覧のとおりでございます。落丁等がございましたら、事務局にお申しつけいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【柘植主査】  ありがとうございます。

 それでは、本日の議題に入りたいと思います。今日の議題は先ほど申し上げましたように、議題1、大学が関与したオープンイノベーションシステム推進方策であります。

 本議題を議論するに当たりまして、産学官連携をめぐるこれまでの状況と前回までの議論について事務局から報告をしてもらいまして、その後、牧野委員及び渡部委員より、今後の産学連携についてご説明をいただき、議論を深めていきたいと思います。ご質問はお二方の発表後にまとめてお願いしたいと思います。また、両委員のご説明後に一旦質疑を行った後に、事務局から、大学が関与したオープンイノベーションシステム推進方策の課題と今後の方向性のたたき台についてご説明をした上で、これについても皆様に議論をお願いしたいと思っております。

 まずは、産学連携をめぐるこれまでの状況と前回までの議論について、事務局から説明をお願いします。

【橋爪室長】  それでは、資料2に基づきまして説明をさせていただきます。1枚おめくりいただきまして、まず、「第4期科学技術基本計画、科学技術・学術審議会における課題」というところと、あと、「産学官連携を巡るこれまでの状況と課題」ということでデータ等をまとめさせていただいております。

 続きまして、ページ数で参りますれば2ページ目からでございます。まず、産学官連携をめぐります各種委員会、審議会における議論の中で課題に挙がっている部分につきまして抜粋をさせていただきました。まず、第4期の科学技術基本計画からでございますけれども、まず2点、産学連携に関しまして直接的な課題が挙げられております。

 1つ目は、産学官の「知」のネットワークの強化ということでございます。科学技術の複雑化、研究開発活動の大規模化、グローバル化等の進展に伴いまして、これまでのモデルということではなくて、オープンイノベーションの取り組みが急速に進んでいる状況でありまして、こういうことを受け、我が国におきましても科学技術におけるイノベーションを促進するための「知」のネットワークの強化に向けて一層取り組んでいくべきであるという点が1点でございます。

 もう1点は、産学官協働のための「場」の構築でございます。イノベーションを効率的かつ迅速に進めていくためには、産学官の多様な知識や研究開発能力を結集し、組織的、戦略的な研究開発を行う連鎖の「場」を構築する必要があるということでございます。

 この2点、ほかにもいろいろ課題はございますが、直接的に関係する部分として、この点が挙げられております。

 続きまして、3ページ目でございますが、科学技術・学術審議会における検討でございます。科学技術・学術審議会において今後の科学技術政策を展開する上での各種の視点というものが議論になってございます。そのうち産学官連携等に関係するような部分を少し抜粋しております。

 1つ目は、社会の要請を十分に認識する必要性という点がございます。また、次に、日本の科学技術のシステム化の必要性ということで、従来、日本の科学技術が要素技術の開発に隔たりがちであって、社会における実際の運用までなかなか考慮したシステム化が行われていなかったのではないかというような視点が示されてございます。

 また、課題解決のための政策誘導といたしましては、そのために、学術の世界においても学際研究、あるいは分野間の連携を進めていくシステム、メカニズムが必要ではないか。あるいはそうした学際研究、あるいは分野間連携を支える人材育成というものが必要ではないかという点が示されてございます。

 また、研究開発の成果の適切かつ効果的な活用ということで、社会的ニーズの把握と研究課題への反映、研究課題を設定する段階でユーザー、応用分野の研究者、人文・社会学者等との広範かつ積極的連携などにより社会的ニーズを掘り起こし、それを適切に課題に反映する取り組みを強化することが必要ではないか。こういったことが視点として示されている状況でございます。

 続きまして、4ページでございます。これはこの前の期の産学官連携推進委員会でおまとめいただきましたイノベーション促進のための産学官連携基本戦略、平成22年9月に公表してございますが、それの概要でございます。そこの課題といたしましては、最終的なゴールといたしまして上の二重四角にありますように、イノベーション・エコシステムを確立していくということが必要であるということを指摘されております。そのために、この基本戦略で、この1、2、3にあるような施策を打つべきであろうというご提言をいただいておりますが、今回はさらにこれに加えて何か行っていく必要があるのかということを今ご検討をお願いしている状況でございます。加えまして、この基本戦略におきましては、一番最後の丸のところでありますけれども、教育、研究及びイノベーションの三要素を三位一体で推進する必要があるのではないかという大きな考え方を示していただいております。こうした視点を踏まえて、ここでの検討というのを進めていただいておる状況でございます。

 続きまして、5ページでありますけれども、ここから少し文科省のほうで大学の産学連携活動への支援のこれまでの取り組み時期等をご説明させていただきます。

 まず、5ページ目につきましては、大学の産学連携のための組織、あるいは活動というものの支援ということで、平成15年度から大きく2本のプログラムを実施してございます。まず大学知的財産本部整備事業ということでございまして、知的財産の創出・管理・活用を図るモデルとなる体制の整備というものを支援させていただいております。その後、大学等産学官連携自立化促進プログラムということで、例えば国際的な活動、あるいはその他、特色ある活動の強化、あるいはコーディネーターの配置支援等ということで大学の産学連携活動の強化というものを支援させていただいている状況でございます。

 6ページ目、7ページ目にそれぞれの支援先の大学の一覧がございます。それを受けまして、状況でございますが、8ページ目でございます。8ページ目のところに2つ、データを載せさせていただいております。右上のものは、大学の知的財産本部、あるいは産学連携本部等の整備の状況でございます。下のものは、産学官連携関連経費の内訳の推移ということでございます。これによりますれば、知財本部整備事業等によりまして、大学に産学官連携体制の整備がほぼ終わっているという状況でございますが、財政的にはある程度、その自立化が進展してきております。ただ、今、80%少しというところが補助金以外の経費で賄われておりますが、今後さらに自立化を進めていくということが課題になっている状況でございます。

 続きまして、9ページでございますが、その大学の産学連携関係活動経費の財源の内訳でございます。まず、どこからその財源が来ておるかと申しますと、18%が国からの事業費という感じになっております。また、使途の内訳につきましては、51%が人件費、26%が特許関連の経費ということでございます。

 続きまして、10ページ目でございますけれども、こうした支援をさせていただいた大学と、それ以外の共同研究、あるいは共同研究の件数と金額を比較させていただいておりますと、支援させていただいた大学のほうがその伸び率という意味では大きな違いが出てきているというデータでございます。

 続きまして、11ページでございます。11ページにつきましては、これは大学等に対しまして民間企業からの研究資金等の受入額の合計の推移でございます。20年度以降、若干下がっている部分がございます。あとは、中身を見ますと、大きいところは共同研究、受託研究、治験等というところになってございます。

 続きまして、12ページでございますが、ここから少し共同研究に関するデータの紹介でございます。

 民間企業等との共同研究については件数、受入額とも、左側のグラフにありますように総じて増加傾向を示してございます。景気の影響もありまして、右下にありますように、1件当たりの受入額は少し21年度に落ち込んでおりますが、件数自体の減りというものは微減にとどまっておりますので、22年度に例えば件数が最高を示しているということもかんがみますと、共同研究の意識は定着してきているのではないかと考えてございます。

 続きまして、13ページでございますけれども、それの規模、あるいは期間の分析でございます。共同研究件数の件数を受入額の規模別に見ますと、その比率に大きな推移はこれまであまりない状況でございます。1,000万以上の高額の共同研究の割合は、22年度では3.7%程度となってございます。また、共同研究の契約の期間については、ほとんどのものが1年ということで、比較的短期で更新しながら行われているという状況でございます。

 続きまして、14ページ以降、特許の状況でございます。

 まず、14ページでございますが、特許の出願件数は国内外合わせて約9,000件弱程度でございます。共同出願につきましては、大体過半数以上ということで推移をしてきてございます。

 また、次の15ページでございますけれども、特許の実施件数及び実施の収入につきましては、総じて増加傾向ということでこれまで推移してきてございます。

 また、続きまして、16ページでございます。知財に関しましてライセンスの成功率ということで、慶應大学さんのシンポジウムで使われた資料を活用させていただいてございますが、これを見ますと左側のところに青い線でアメリカがありまして、右側のところに緑の線で日本があるところでございます。アメリカのほうは20から30%の間を推移しておりまして、日本は上がってきておりまして、今、20%程度ということになっております。これは件数の成功率でございますけれども、これで見ますと遜色ない値であるということではないかと評価してございます。

 続きまして、17ページでございます。他方、大学の特許の利用率、これは大学の特許の特性もありますので、一概に単純に比較というのもできない部分はあるかもしれませんが、ほかの業界に比べますと30%というところにとどまってございます。また、外国への出願ということにつきましては、欧米に対して低い割合になってございます。また、右下にありますように、特許の群化、パッケージ化による価値の向上というのが今課題になってございます。

 続きまして、18ページでございます。産学連携に関する意識の調査につきまして、産業界さんのほう、あるいは研究者のほうということで、18ページ、19ページ、データを紹介させていただいております。まず、産業界さんのほうからの意識でございますが、産学連携の目的ということで、やはり多いところは、研究シーズ等の情報収集、研究開発案件の形成、事業化というところでございます。特に右側の四角の中、中ほどからございますが、この調査ではヒアリングというものも行っておりますが、主に大企業さんへのヒアリングでは、3社に対して行われたらしいですけれども、中長期的な研究開発につながる基礎研究部分、つまり、最先端の研究シーズや研究開発を行う上での考え方についての知見やアイデアを期待しているというような傾向でございます。

 続きまして、19ページでございます。これは2009年のデータでございますが、科学技術政策研究所さんのほうで行われた研究者に対する調査でございます。その意識調査の結果によりますと、当時の状況でございますが、研究の初期からの知財戦略の欠如、事業化の戦略の構築が不十分、産学官連携人材の育成システムが未確立、国際的な共同研究・知財ライセンスを推進する体制が不十分という点などが課題になってございます。

 続きまして、20ページでございますが、20ページは、日本経団連さんからの提言につきまして少し抜粋をさせていただいている部分がございます。幾つか今後のイノベーション立国に向けての提言をいただいているわけでございますけれども、少し今までの議論と関連するところを抜き出させていただきますと、まず、未来を創る「基盤」の整備というところがございますけれども、研究開発拠点の整備と研究開発法人の機能強化ということで、国は、企業のニーズを踏まえ、産学官連携による世界最先端の研究開発拠点の整備を進めるべきであるという点でありますとか、あるいは産学官協創の強化ということで、今後我が国が国際競争力を強化し、持続的な経済成長を実現するためには、産業界、アカデミア、政府がそれぞれの役割を着実に果たしながら、イノベーションを協創することが不可欠となるということで、さまざま連携についてのご提言をいただいております。また、その下には、具体的に今後重要となる分野の具体的プロジェクトについてのご提言がございますので、抜粋をさせていただいております。

 続きまして、21ページでございますが、こちらは産業競争力懇談会さんの報告書のほうから提言を抜粋させていただいております。主な提言のところでは、社会とつなぐイノベーションということでございまして、大学が理論のみならず、積極的かつ具体的に解を目に見える形にして取り組む。そして、産業界は必要な「知」をみずから探求する一方で、大学等に求めるスペックを具体的に提示すべきであると。この2つの流れが課題解決型イノベーションに求められるのではないかというご提言でございます。同じように、今後イノベーションを創出すべき対象領域の方として幾つか挙げていただいております。

 続きまして、あと2ページでございますけれども、前回、奈良先端科学技術大学院大学の久保先生、あと、大阪大学の馬場先生からご発表いただいた事例、課題の主なものをまとめさせていただいております。奈良先端科学技術大学院大学さんのほうでは、まず大学を日本の企業のR&D拠点として位置づけていく。キャッチアップではなく、イノーベティブな製品をつくっていく。スピード感を持って目標に到達するモデルということで、課題発掘型研究機関を取り組んでおられます。また、教員のモチベーションの向上であるとか、あるいは企業サバティカル、国際的事業プロモーターについてのご提言がございました。

 また、最後のページでございますけれども、大阪大学さんのほうは、大学内に産学融合拠点環境の整備ということ、あるいは研究課題発掘型の取り組み、若手研究者・学生の育成ということで、Industry on Campusの構想を進められておられます。課題といたしましては、人材確保や、知財の評価基準・戦略の見直し、広報力の強化等を挙げられておられましたし、新しいところでは、Proof of Concept構想による展開研究の強化や、CLICによる産学連携人材育成の進化ということを挙げていただいていた状況でございます。

 ちょっと駆け足になりましたけれども、以上、データと前回の議論を紹介させていただきました。

【柘植主査】  ありがとうございます。続きまして、牧野委員、よろしくお願いいたします。

【牧野委員】  本日はお話をする時間をいただきまして、ありがとうございます。京都大学の産官学連携本部の本部長の牧野です。よろしくお願いいたします。

 おとついテレビを見ていましたら、石川先生が出てこられてサイエンスの話をしておられて大変うらやましく思ったわけでありますが、私どもも基本的にどういう方針でやっているかというと、仮説を立てて、それを実験をやりながら、出てきたデータを解析して、それをもう1回、仮説に対してフィードバックする。仮説を磨き上げていって何遍もそのループをつくり変えていくということをやってきております。そういうことが私どものまず基本的な産学連携に対する取り組みになっていると思います。

 やってきましたのは、後でまた申しますが、組織的な改革です、組織がなくて事業はできない。事業の中の機能の合目化と合理化、迅速化、それから、3つ目は人材育成、教育です。こういうことをやってきております。

 それでは、早速中身に移りたいと思います。ここに私どものまず基本的な考えを書いておりますので、上から読んでいきます。斜めで指しにくいので、読ませていただきます。

 まず、簡単に発掘・応用開発できるようなシーズはもう掘り尽くされている。要するに地面にはもう大きな穴がいっぱいあいているということで、こういうものはもう既に模倣が可能になっていて、ほかの国でもできるから、低賃金を求めて企業が外へ出ていくということは当然起きてくるということで、雇用と税制が縮小していくということです。

 下の矢印に移りますが、残った狭い領域の中に新しいシーズを見つけて、新産業を興すということが重要になってきております。シーズというのがいかに多いかがニーズを引き出すということが考えられますので、シーズが今非常に大きな問題になってくるということになります。2.ですが、このためには多数の研究者と巨大な開発資金が必要になってきておりまして、このために企業の基礎研究が減少しており、論文数の減少が顕著に起きております。3.ですが、これはサイエンスをやっている者の特徴ですが、狭い領域で新しいシーズを発掘する。要するにほかの人がやっていないことをやるということがサイエンスをやっている者の特徴だと思います。ですから、こういうところを深く掘り下げることのできるのは、基礎研究を行っているサイエンスをやっている研究者であるということになります。すなわち産官学連携というのは、これは絶対的な必要なことであるというふうに認識しながらやっております。

 次の矢印ですが、大学研究の市場経済への組み込みは必須であるというふうに自覚しております。我が国が出おくれているというふうに下に書いてございますが、ほんとうかといいますと、私たちは徹底した国際展開をやってまいりましたが、ヨーロッパのほとんどの大学よりは私たちのほうがましだというのが私たちの考えです。私たちよりましな大学というのはイギリスの4つの大学プラスアルファかなというふうに思います。それはケンブリッジ、オックスフォード、それから、インペリアル・カレッジとUCLです。この4つだというふうに思っています。ドイツなんかでも、私どもが何を基準にしているかというと、ライセンス収入を基準にしているわけですが、私どもの半分いっているところはほとんどありません。ですから、そう思っています。あと、私たちのフィールドはアメリカの東海岸ですけれども、例えばカナダですと、うちのクルーが今行ってきて帰ってきたところですが、マギル、トロント、ゲルフ、ウオータールーの4つの大学を回ってきておりますが、私どもよりも少ないということで、我々はそんなに恥ずかしいところにはいない。確かにアメリカの飛び抜けた大学に比べたら、それは見劣りする、こういうことになります。あと、ここに書いておりますのは日経の最近の記事です。これはアンドリュー・ハミルトン学長ですが、オックスフォードも政府に頼らずに自立の道を行くんだというふうに言っておりますので、同じように、古くからある国立大学も頑張らないといけないということになります。

 次のページですが、これは簡単に示しておりますが、ここに企業の基礎研究の論文数が90年に入ってぐんと落ちてきているのがおわかりいただけると思います。国内の比較ですが、15%ぐらいシェアがあったのが15%から5%ぐらいまで落ち込んでしまって、今、5%を切っているかもしれませんね。ということで、基礎研究がやられていないということです。

本日の課題ですが、このような課題をいただきました。これについてお話をします。

 それにつきましては、ここに書いてございますように、5ないし10年後に新たな事業・市場を創出するために有効なシステムをどうするか。それから、2つ目は、産業界とより長期で大規模な連携を行うシステムはどういうものがあるか。それから、その他、産学連携本部に関して強化すべき機能はあるかということであります。大変な課題をいただいておりますが、少しずつお話をいたします。

 次のページに移ります。まず、産官学連携に関する大学一般の意識・取り組みがどのような段階に来ており、今後どのような方向に向かうべきかというところでございます。オープンイノベーション、まずこれは避けて通れない課題だと思います。要するに開発の高速化というのがこれで図れるわけで、ある企業に言わせますと、研究者が2けた増えたというのと匹敵するんだというふうに言っています。2けた大きくなれば非常に有効になるということであります。大事なのは、何か問題点はないかということですが、問題点はここに書いてございますように、シーズが枯渇してきているということです。先ほども言いましたが、シーズが多ければ多いほどニーズも顕在化してくるということでありますから、この辺は非常に大きな問題であるということです。ここに書いてございますが、80年代のベンチャーには、有能な研究者・経営者がこぞって参画をしました。これが今の大きな会社の社長になっている人たちです。大学の貢献はすなわち必須であるということになります。

 それからシーズ枯渇に対しては、どういうことがやられているかということですが、国家的に戦略的にやっている国がかなりありますが、例えば北欧諸国、それから、これはメディコンバレーとか言ってバイオでは呼んでおります。それから、シンガポールがありますが、小国の問題点としましては、シーズソースが非常に少ないということです。私どものところへこういう国がいっぱい来ますが、シーズを探しに来ているというのが現状であります。

 それから、我が国は何かといいますと、大事なことですが、1億以上の人口を抱える大国で、教育レベルは非常に高い。それから、開発能力も非常に高い。何が妨げになっているかというと閉塞感であるというふうに思います。この辺をどうにかして打破しないといけないということになります。

 私どもの大学では何をしてきたかということをここにお示しします。ここにまず従来の改革が書いてございます。まず、国際ネットワークを充実いたしました。コンタクトポイントは200以上あります。場所はヨーロッパの大体大きな国を中心に、それからアメリカの東海岸、カナダからワシントンDCのあたりです。これで非常に大きなコンタクトポイントを持ちながら情報を集めてきているということです。

 それから、2.産官学組織の改革。徹底的に改組をやってきております。学内では、何でそんなに変えないといけないかということをよく言われますが、1カ月1回変えてもいいと思っています。事業をやるのに、組織がよければそれでいいわけですから、それはやらせていただいております。

 それから、TLOを取り込んできております。40%の株を持っています。

 それから、私どもの特徴としては、法務体制が充実していることだろうと思います。国際的なこともこなすことができますし、契約書類等はほぼ完備しております。分厚いアメリカの契約書には対処することが可能です。京都大学の特徴的研究でありますiPSの特許がインターフェアレンスにかかっておりましたが、最終的に解決のところで頑張ったのは私たちの組織であります。あれによりまして、iPSの特許は動くようになりました。

 人材を確保して育成しております。弁護士レベルの人が3人ぐらいいます。知財を扱う方々とはまた別に持っております。それから、保有知財を徹底的に整理してきております。ということで、今の私どものライセンス収入ですが、2億円を超えるようになってきました。あまり恥ずかしい額ではないというふうに評価しているところです。急カーブで上がっておりますので、まだ上がっていくだろうと思っています。

 次に最近の成果ですが、これは非常に大きい。時間がかかったので最近の成果になっていますが、1つは、数十社と話をしまして共同研究契約書を見直させていただいたことです。共同出願特許の取り扱いを簡略化しました。知財に関しましては、出願費用は全部企業でやってくださいと。そのかわり、企業は好きなように書いてもらって結構です。権利は保有させていただきます。譲渡、独占的ライセンスをお願いします。だめでしたら非独占的ライセンスにしますが、非独占的ライセンスの場合にはお互いに好きにしましょうということです。ですから、PCT出願も企業が負担しますから、大学の経費の割合は少ない、ほとんどありません。

 それから、もう1つ、ライフサイエンス系が非常に難しいのですが、これに関しましてもやっと決着がつきまして、私どもが扱わせていただくようになりました。ということで、京都大学単独出願特許の取り扱いを自由にやることができるようなシステムがやっとですが、でき上がりました。

 ということで、アメリカの仮出願とPCT出願に重点的に向かいたいというふうに考えています。特にポートフォリオをきちんとつくるということに重点的に力を注いでいくことができます。それから知財事務所にもかなりちゃんとした話をしまして、我々が一筆も加えないでいい特許を書いてくれというので、かなり特許事務所とはきつい約束をしてきたところであります。以上のことができますと、共同研究が国際的にもできます。それからベンチャー起業育成にも専念できるだろうということで、オープンイノベーションへの参画、新産業創生の準備ができたところであるというふうに言えると思います。

 それでは、次の宿題です。さらなる産官学連携活動の促進に向け、足らない機能、課題ですが、たくさん書かせていただきましたが、まず一番上のところです。産官学連携事業にかかわる人材育成とシステムの強化が必要だろうさらなる熟成が必要だろうということです。

 それから、大事なところは、ここら辺ですが、選択と集中は絶対的に必要な段階に来ているのではないか、と考えます。ドイツがもうそのようにやっておりますし、日本もそのような段階に来ているかなというふうな気がしております。

 それから、2番目ですが、若手研究人材を育成するためには、1つだけ言いますと、研究費からの大学院生の給与支払いは絶対に必要であり、これを行って若い研究者を育てる基盤をつくるべきだろうと思っています。

 それから、あと産官学連携に携わる人の能力アップです。特にアメリカを見てみますと、例えばストロンケータリングの8名について、代表的に書いてございますが、PhDとMBAと企業経験10年以上というのが8人のすべての人のテックトランスファーの人たちのキャリアでございます。こういう人たちを育てて、ステータスを同時に向上する。非常に高い給料ももらっているわけです。こういうのが大事だろうと思います。プライドですね。

 それから、ここに大学間のネットワークというのを書いてございますが、これは非常に大事なところでありますが、日本はこれが乏しいわけです。例えばマンハッタンですと7医科大学がありますが、あの契約社会で契約書を交わさないで情報のやりとりというのは頻繁に行われています。そのおかげで、あの4人しかテックトランスファーのいないプリンストンで毎年40億円の知財収入が入っているというのは、それの顕著なあらわれではないかなと思っています。

 それから、次、大学知財の整理と強化、これも必要であります。

 それから、ベンチャー育成法及びシステムの向上です。私どもの大学では、ベンチャー起業に関する授業を徹底的に向上することをやってきました。今は学生が600人聞きに来ております。これは非常に多い数だというふうに思います。すなわち学生は興味を持っているのだ、ということです。あと、アクティブラーニング形式でやる授業もありまして、そこではビジネスプランを5人一組で書かせて、会社形式でつくらせます。それを12組ぐらいでやって、ほかとたたき合いをさせるわけですが、その結果、おととし、バークレーの国際大会に行きまして、二、三百候補がいたのですが、7位に入賞しました。それぐらいの力をつけてやることができるという自信を得ております。

 それから、あとは、グローバリゼーションへの対応です。こういう教育を経て若いリーダーを育てないといけないということです。特にベンチャー育成に関しましては、私いつも思っているのですけれども、有能な若い人でないとできない。ベンチャーファンドを集めるときに、お金は集める人を見て集まってくるというのが鉄則だと思いますので、このような方を育てたいというふうに思っています。

 シーズ活性化に関する新しい取り組みは後で見せますが、Academia Research Organization、それから、テーマ集中型サイエンスパーク、これらに対する対応が必要だと思っています。

 あと、オープンイノベーション参画のための産官学連携機能の国際化は絶対に必要だろうというふうに思っています。

 次、お願いします。あとの宿題、新たな活動形態・システムに関する提案及びそれに対する国の支援のあり方です。国家的支援が絶対的に必要であるというふうに結論しております。ここに書いてございますように、教育を徹底化しないといけないということです。詳細は省きますが、教育が基本であろうというふうに思います。

 それから、知財創出・ライセンス化の国際化への対応が絶対必要だろうというふうに思っています。特にポートフォリオです。これは絶対的に必要でありまして、去年も大事な、非常に大きなライセンスはポートフォリオの一角が抜けていただけで逃しました。そういう結果になります。

 それから、3.新産業創出を目指した選択と集中が徹底しないといけないということです。特にここにビジネスを我々はやっているわけですから、足かせをもう少し取っていただくと国立大学としてもやりやすくなると思います。

 それから、4番、戦略と評価システムです。特にこの辺を徹底していかないといけないだろうなと思います。何遍も言うようですが、我々は1億以上の大国であります。これを生かす方法を考えないといけない。ここに戦略性を持ち込むということです。

 それから、5番、国家予算等と民間資本の融合です。民間資本の投入がおくれていると思います。いろんな方に聞きますと、大型の寄附をすると税金を取られるから、寄附ができないのだとよく言いわけにおっしゃいますが、その辺、何とか解決できればいいかなと思っています。

 あとは、新しいAROやサイエンスパークへ対応する能力をつけることです。

 あとは簡単に紹介だけします。これは私がいた1980年頃のナショナル・インスティチュート・オブ・ヘルスです。3兆円の予算で3万人がいるので有名ですが、どのビルも歩いていくことができます。アンフィンセンやニーレンバーグといったノーベル賞受賞者に歩いていって、コーンバーグもそうですが、話を聞くことがいつもできました。こういうものをつくらないとだめだと思います。大きいだけではだめで、コンパクトに人がどうしても嫌が応でも接触するという場所です。そのためにライフサイエンスではARO、それ以外ではサイエンスパークが今出てきている。

 次のページはAROですが、説明は読んでいただくとして、どうしてこういうのが出てきているかということですが、大体80兆から90兆規模の薬の市場があるわけですが、これがここに書いてございますが、アメリカ、イギリス、日本、フランス、ドイツ、これで90%ぐらいを占めています。ここで何が起きているかというとパテントクリフです。要するにパテントが全部切れてきている。8,000から9,000億ドル中の5,000億ドルが今、切れようとしているわけです。大変なことが起きているわけです。大きな会社が明くる日は小さい会社になる、あるいは小さい会社が明くる日は大きな会社になるというのが薬関係の特徴です。この解決のために、AROが出てきております。これはデューク大学のAROで、一番大きな立派なAROです。1,100人の規模で、デューク大学の教員が200人参加しています。フェーズ1から4までが可能な研究施設を充実させています。

 これに対してシーズを送り込む施設がサイエンスパークですが、これはボストンです。皆さんご存じの三菱総研にいた人がつくったものです。それから、これは一番大きなフィラデルフィアのサイエンスパークです。今、35しかベンチャーいません。シーズが枯渇してきているのです。それから、今度はニューヨークに二、三百億かけてつくった新しいサイエンスパークで、これはアレキサンダーセンターというイーストリバー沿いのものです。こういうものがアメリカで出てきております。

 このAROですが、もう1つ、ルーズベルトアイランドに今、1,000億円の民間資本が投下されて、100億円のニューヨークシティからの援助で開発が行われているということです。中心の大学は1つ入っておりますが、コーネルです。ここにまとめておきましたので、見ていただきたいと思います。創薬以外はサイエンスパークで、フランスのMINATECが顕著な施設じゃないかなと思います。一、二キロ四方にすべてが入っている。これがその図であります。どこにでも歩いていける。大学も入っているということです。

 そういうことで、あと、まとめが書いてございますが、これは先ほどまとめましたのと同じでありますから、飛ばさせていただいて、最後に、何かエンジン周りの話をしろという宿題をいただきましたので、つくってまいりました。

 大学は、やはり基本的条件をもっと完備していく必要があるだろう。1つは、産連の機能です。それから、1つは、産連の組織。それから、教育、人材育成です。これを徹底してやるべきだと思っています。それによって、オープンイノベーションへ対応ができるだろうと考えます。積極的に展開すべきです。

 やはり企業に対しては大型の資金を入れていただく。文科省は働きかけをしていただいて、特に税金に関する特区をつくっていただき、あと、サイエンスパークとか、AROに匹敵するような日本独特のものをつくっていけば、新産業創出のためのオープンイノベーションに対して何とか貢献できるかというふうな感じを持っております。大事なことは、シーズをいかにふやすかというのがポイントであるというのと、選択と集中が大事な段階に来ているかなというのが申し上げたいことであります。

 以上です。ちょっと超過しました。

【柘植主査】  ありがとうございます。ご質問は渡部委員のご発表終了後にまとめていきたいと思います。

 続きまして、渡部委員、よろしくお願いします。

【渡部委員】  渡部でございます。私は東京大学で5つの組織を兼業しておりますが、本日は個人的な見解を、お話を申し上げますのでご理解いただければと思います。

 産学連携に関する幾つかの論点ということで、まず最初に、アメリカとよく比較になりますが、これはよしあしはあるのですが、やはり経済的にどのぐらいインパクトを与えたかというような数値で言えば、アメリカの数値が一番歯切れがいいわけであります。一昨年、バイ・ドール法が1980年ですのでちょうど施行30年でありました。そのときに、AUTMがバイ・ドール法施行以降30年を振り返って、どれだけの成果をアメリカは産学連携で上げてきたかということをウェブページをつくってプレゼンテーションしているわけですけど、そこにはこんなことが書いてありまして、今まで5,000の新しい会社をつくった。1日に1.6の新しい会社ができている。ビリオンズダラーズのダイレクトベネフィットを経済に対して毎年与えているというようなことが並んでおります。これを見ますと、だれが見ても、産学連携が役に立っているとかいないとかいうような議論はないわけで、経済に貢献しているのは明らかで、しかも、かつその内容が一般の人にも、例えばジェネティックとか、あるいはグーグルが大学発ベンチャーであることはだれもが知っているわけでありまして、そういう意味で一般の人たちが理解できるようなレベルの成果を出しているということは着目すべきであります。

 我が国はバイ・ドール法から十数年、そして、実質的なバイ・ドール法が機能するようになったのは国立大法人化以降ですから、2004年からだと10年たっていませんけれども、いずれにしても、30年たったら、これと比較し遜色ないような成果が出ていないといけないわけであります。そういうような意味で、今、何をしたらいいのかということを少し考えてみたいと思います。

 まず、産業界のほうのデータを少し見ていきたいと思います。大学の成果を利用し、事業を興して、それに経済的インパクトを与えるのは産業界でありますが、現在、民間企業の研究開発投資というのは、リーマンショック以降、平均で約12%落ち込んでいます。これは回復しておりません。そういうような意味で、企業の研究開発投資、これは、もともと日本は民間企業の研究開発投資の比率は非常に高かったわけでありますけれども、それが少しかげりを見せているという状況にあります。しかも、まず最近、研究開発投資が実際に企業の競争力や利益率に結実しているのかどうかというデータがはっきりしなくなっている。以前から、あまりその相関が見られなくなってはきたんですけれども、直近のデータでは、これは経産省の2008年の統計データを立命館MOTの玄場教授が分析したものですけれども、研究開発投資は1%有意水準で経常利益率にネガティブだという結果を出しています。ネガティブというのは、研究開発すると利益率が下がるというデータです。いろいろな制御因子を入れてもそうなるということで、非常に懸念されるような状況があるということであります。これについての解釈はまだ玄場先生はしていません、解釈に逡巡するような結果だということなんですけれども、手続的には間違いがないものだと思います。

 我々はさらに、その先、研究開発した特許がどういう役割を果たしているのかということをいろいろな面で研究しております。これは3年間ぐらいのスパンで見たときの特許と株価の関係です。これは、特許と株価というのはあまり関係ないように見えるんですけど、実は以前は結構リンケージがありまして、これは外国での研究でもリンケージがあります。実際やってみますと2000年ぐらいを起点にしますと多くの産業でリンケージがあったんですけど、最近はこのリンケージが非常に少なくなってきている。つまり研究開発の先で取得する特許と企業価値の関係というのも非常に脆弱化している。

 さらに個別の企業の中でプロジェクトごとに、この場合、国際特許出願と利益率とか、いろいろな企業の事業貢献との相関を見ているんですけれども、左側の会社は最終的に収益にも貢献しているという例です。こういう会社は実は今少なくなっています。右側の例は、ライセンス化には結びついたけど、収益にはもう貢献できていないというようなデータで、エレクトロニクスメーカーとITメーカーはおおむねこういうような状況が多いと思われます。

 これは経済産業省のデータで横軸がシェアで縦軸がマーケットサイズでありますけれども、この日本の産業というのは、もともとともかく世界ニッチグローバルトップシェアみたいな会社が非常に多くて、それは、マーケットサイズはそんなに大きくない、100億、200億とか、そんなようなものが多いんですけど、そこに関してはおおむね何らかの知財、これはノウハウも含めてそれが収益や競争力に影響していると見ていいと思います。

 しかしながら、左上のほうのマーケットサイズが大きなところに関しては、その関係が非常に脆弱化しているというような形です。これについては経済産業省、あるいは内閣府中心で、何でこういうことになったのか。特許があまり役に立っていないみたいな議論というのは、私たちの知的資産経営という東大の寄附講座のグループで突っ込んで議論してきておりまして、これはそこそこ皆さんの理解をされているところだと思いますけれども、簡単に言ってしまえば、いわゆるオープン・クローズ戦略みたいなものでイノベーションを起こすプロセス、それは技術や何かを社会的に普及させるプロセスと、そこから収益を獲得するプロセスは実は必ずしも一致しないと。特にオープンイノベーションになりますと、イノベーションを促進したとしても、特にオープンな領域でのイノベーション促進というのは収益につながるものでは必ずしもないので、そこの中に日本産業がぽこっと入っちゃうと、ビジネスモデルを持っていない限り収益化が難しいというような話であります。

 この辺のことは、ごく最近に産業界の中で議論がなされてきた話でありまして、私もこれで幾つかの会社で気がついたことがあるんですけど、今までの知財の使い方というのは、実施の自由が確保できれば、日本企業というのは非常に高度な技術力があったので、それで大体は収益になっていた。ところが、プロプラエタリーな領域というのを持つことをしていなかった企業というのは実は多いんですね。だから、そういうことを直していけば多分改善されると思うんですけれども、いずれにしても、知財の使い方というのはそんなにストレートなものでもなくなってきたということであります。というような議論をしておりますということであります。

 一方、産学連携の大学側の統計でありますけれども、これは先ほどもう出ました。簡単に行きますが、共同研究の件数は実はリーマンショック以降も堅調であります。件数はほとんど減っていないと見ています。金額は伸びていません。大企業は3分の2で、特に増えているのは大企業との共同研究。これは大学との共同研究だけではありませんで、技術研究組合に対する賦課金なんかも、実はリーマンショック以降もあまり減っていません。すなわち何を意味しているかというと、企業の研究開発投資は実はリーマンショック以降、外部研究開発投資が増えているということです、比率がです。これはある意味ではオープンイノベーションが進んでいるということで、先ほど説明のあった政府資料の示唆する方向にいるわけです。一方大学側の特許出願数は、一方で予算制約がありまして、頭打ちになっているということであります。頭打ちになっていることに加えて、内容を見ますと、共同出願特許の比率が先ほども説明がありましたように60%を超えており、これが徐々に増えている傾向にあります。

 さらに特許のライセンス先ということで言いますと、日本の場合は大企業、中小企業が半々ぐらいで、新規企業はほとんどありません、数%。これはアメリカと大きな違いでありまして、アメリカの場合は50%ぐらいが新規企業、ベンチャーに行きますので、大企業、中小企業はそれと同じか、少ないぐらいということであります。特許実施件数は少しずつ増えているけれども、アメリカとは収入が2けた違う。さらにベンチャーはこの図のような感じです。ここからどういうことを議論するかということであります。

 トレンドをまとめますと、こんな形で共同研究件数は増加しています。大企業中心で増加しています。これは堅調であります。金額は横ばい、特許出願横ばい、共願件数は増加傾向、ライセンス件数はやや増加傾向。まだ絶対値が少ないんで、これから大きくなる。大学発ベンチャーは創出数、横ばいだけれども、今回、文部科学省が新産業拠点事業をやりましたので増えてくることが期待されるということです。

 もともと知財システムを利用した産学連携活動の目的については、2007年の時点での専門調査会、総合科学技術会議の当時の専門調査会で使った資料でありますけれども、決して大学が収入を得るためではなくて、社会にその研究成果を根づかせるためであると。すなわち、それは最終的には事業化し、先ほどのAUTMの資料にありましたように、新産業をつくり、会社をつくり、望ましくは雇用を生みということにつながっていかないといけないわけであります。

 そうした場合、幾つか、たくさん論点はあるんですけれども、1つは、大学の知財が一体どういう行き先になっているのか、その構造はどういうことかということについて少し議論してみたいと思います。

 これは特許の実施率、先ほどの文部科学省のデータにもございましたけど、特許庁の調査です。日本の場合は、企業の特許は大体半分ぐらいは未利用だということであります。アメリカはここの数字は大きいんですけど、ちょっと試しに今回、中国の数字を載せてみました。最近の中国企業の特許のデータというのは、非常に件数も多いし、活用の比率も高い。国のサーベイでいきますと、企業の活用比率は80%だということでありまして、これはほんとうなのかなと思って、いろいろ実態を調べてみましたけれども、中国の企業というのは、使わない特許は二、三年でもう捨ててしまいますので、実際は活用率が高くなるのは当然かなというふうに思っています。

 こういう数字を先ほどの値に当てはめてみましたところ、こんなふうになります。これは米国の場合です。正確には丸の大きさをちゃんとはかってやっていないので、イメージと書いてありますけれども、数字を平均値で割って出しています。米国の場合、1万2,000件ぐらいの特許で、共願は600件以下でありまして、ほとんどが単願に行きます。単願に行ったものの中でさらに新規企業のライセンスと、実際はベンチャーに対してその後、またライセンスを行うというのが多いので、この辺が中心ということです。こういう構造の中で、先ほどのような成果を出してきている。

 日本の場合は9,000件あるんですけど、共願が5,400、半分というか、6割以上で、もしこの既存企業の未利用特許というのが半分だとすると、その半分は未利用になっているという構造です。大企業と中小企業の共願の特許で利用される可能性があるものが残りです。大企業のライセンスというのがこの下のほうです。

 ベンチャーはこの比率でいくと毎年72件ぐらいしかない。これで今まで1,900社もベンチャーをつくってきたということで、何かちょっとほんとうはおかしいですね。特許は、大発ベンチャーの定義が必ずしも大学技術を使っているということでなかったんで、それでつじつまが合うと言えば合うのかもしれませんけれども、実はこういう状況だということは認識すべきだろうと思います。

 では、大企業のほうは、知財がたくさん入っていてこれでいいかというと、必ずしも、そうではない。最近はベンチャーを買われる企業さんも多くなってきていて、ベンチャーを買う部門においては、共願特許の問題というのは買うときに障害になると。一方、研究開発部門は、むしろ上流技術の特許を大学と一緒にやって出願するということを盛んになってきていますので、ここは実はコンフリクトを起こしています。そういうようなことを考えますと、先ほどのオープン・クローズの話のようなことも含めて、大学の「知」を埋没させることのないような形で、みずから非常に貴重な知財をどうやって使っていくか、誰に委ねていくかということが重要です。これは、発明が使われないというのは、教員のモチベーションにも影響しますので、使われるような形でマネージできるためには、やはり戦略的な知財をやる人材の支援だとか、単独特許の出願経費の支援だとか、これはお金がないんでああいうふうになっちゃっているという部分もあるので、そういうことは必要ではないかというふうに考えられます。

 次の論点で共同研究についてです。日本は共同研究が多いということで、これは日本企業の特徴でありまして、日本企業は自社でものすごく練り上げた技術というのを使う。それが競争力の源泉であるから、簡単に人の技術を使いません。それはいいことであります。日本企業の競争力の源泉というのはそういうところにあるので、簡単にモジュールになっている技術を使わない。ただ、一方で、じゃ、共同研究ということの成果ということで見ようとすると、産学連携の今、機能評価調査という委員会をやっていますけれども、なかなかあまりはっきりした数字がつかめません。事業化が成果になっているような事例というのは、文部科学省にも上がっていますが、大企業は少なく中小企業中心でありまして、そこは、アカウンタビリティーという意味でもうちょっとはっきりさせないといけないんじゃないかなというふうに思います。

 先ほどの話では、この共願の部分です。知財面で言えば、共願の部分がどういうふうに使われているのかということが課題になります。そもそも共同研究というのは事業化を目的としたものかというと、必ずしもそうでないんです。これは国際・産学共同研究センターという、もう今、廃止してしまいましたけれども、そこでやっていた企業との共同研究のアンケート調査をやりますと、事業化とかいうことが目的になっている比率は非常に少なかったです。自社の技術の向上だとか、人材育成、これは多分同じようなことを言っているんだと思いますけれども、いわゆる学習と内部化、先端技術を学習することで将来の技術開発を支える。これは大変いいことでありまして、こういうのが悪いと言っているんじゃなくて、これは日本企業の特徴で、こういうことを大学とやることになって、それがリーマンショック以降も増えているというのは、ある意味このような連携が自立化しているということです。このような傾向は、国プロみたいなものでも実は同じです。事業化の比率はそんなに高くありません。

 では、当事者が事業化さえ目指せば実現するのかということになるかもしれません。その施策としては、ニーズとシーズのマッチングはうまくやりましょうという表現で頻繁に議論がされるんですけれども、ここのところは時間がないので割愛しますが、あまり実情にフィットしないんです。フィットしないというのは、特に大企業のときにフィットしないんです。

 例えばこれは企業への研究開発成果の事例でありますけれども、長年、研究開発を行っていたけれども、社内で研究しても実用化の可能性を見出せなかった。研究開発を終了させることになり、最後に学会発表を行った。その当日、学会発表で聴講していた人物から、それこそ自分の求めていた技術だと申し出を受け、その後、とんとん拍子に実用化が実現した。その聴講していた人物というのは同じ会社、A社さんの人だったという話であります。これはちょっと公開、会社名をまだ言ってくれるなと言われていて、まだというか、多分永遠にだめなような気がしますが、そんなに珍しい例じゃありません。統計的な分析で、企業内で技術の研究開発をやっているところの技術の内容を多面的に理解が進んでいるかどうかというのをやりますと、そんなに全社で理解できるものではないんです。これはそういうものなんです。

 知識というのは、特に技術というのは、実用化していればわかりやすいですけど、実用化していなければ単に科学的な知識なので、それは簡単に伝わるものではないということであります。この中の1項だけとらえて、そこからシーズだとか言うのは多分なかなか難しくて、特に大企業は非常に組織が大きいわけでありまして、仮説を立てて、それを検証していく作業を一緒にやるというようなことの中でより多くの知識を持っているセクターの人々が参画するということが重要だというふうに思っています。

 そういうような意味でいきますと、ニーズとシーズがこうやってと言っても、実際は現実はその会社の中のどこかでしかなかったりというようなことではなくて、それがもう少し多様な知識にアクセスできるような体制でやっていく必要があるだろうし、ほかの金融機関とか、そういうものを巻き込めば、そのほうがもっといいかもしれません。ただ、やり過ぎると複数大学とか、複数組織というのはマネジメントが難しいわけでありまして、そんなに簡単ではありません。適切なサイズで必要な知識、ほんとうはベンチャーというのは一番それに近いんです。一番マネジメントチームの中に事業化の知識も含めてそろえないといけない。それは今度は人材の問題が出てくるわけで、既存の企業の中にいるひとを使った場合、だけど、既存の企業の中にいるという方は組織の中のいろいろなプロセスの中でいい人がそこに集まるわけではない。それを解決していかないといけない。

 そういうふうに見れば、前回の奈良先端のお話は、質問のときの質疑のときに研究開発に責任を持つ大学、事業化に責任を持つ企業という言い方をされていましたけれども、こういう組織をつくろうということでありますし、私がかかわっている東大TLOと富士通の研究開発ではさまざまなネットワーク、組織の境界を超えたネットワークを活用しましょうというようなこと。あるいはJSTと東工大の細野先生なんかは、国内企業、海外企業含めて実用化ということの観点でパートナーを見出してきた。あるいは九大のヤスウラ先生のところなんていうのは数十年を見据えたグランドデザインというような社会主導型の産学連携、あるいは社会科学系研究者のプロジェクトに参加するという東北大MEMSプロジェクトなんか、そういうみたいなものですけれども、要はほんとうに事業化のために多様な知にアクセスできるような組織づくりをしていくことというのが重要なのではないかと。冒頭、牧野先生が、石川先生がテレビに出た話をされていましたけれども、これはフェイスブックとツイッターでどんどん拡散していまして、石川先生がこんなすばらしいことを言ったというので拡散してきましたので、今読み上げますと、書いてあることは現在までの事実、科学技術の新しい価値はどこにも書いてないと。未来の真実はみずからが設計するものだということを言われたはずなんですけど、そうなんでしょうか。

 いずれにしても、これは同じことを多分言っているんだと私は思います。必ずしも大学がシーズで、企業がニーズとかいうことじゃなくて、結集したチームをつくっていくということだと思います。現在やられているプロジェクトもそういうことだと思いますし、皆さんが試みられているものもそうだと思いますが、まだいろいろ工夫があると思います。共願特許をもとにしたカーブアウトベンチャーみたいな案件がもうちょっとで出てきそうです。あるいは非メーカー企業の組成する知財ファンドみたいなものとか、あるいはもっと言うと、韓国なんかはこういうのを全部、国主導でファンドをつくって活用させようみたいなことをやっています。いずれにしても活用ということです。

 論点3はちょっと時間が限られています。民間企業、実は海外への研究開発投資もリーマンショック以降も堅調であります。ということは海外の大学との連携も進んでいます。そんな中で日本の技術は外へ出さないなんていうことをポリシーとすると、かえって困りますと。これはもう多分、方針としては、国秘厳守のものについては、譲渡は政府承認になりましたので、ライセンスというのは別に流出とは限りませんので、これはフェアで効率のよい技術移転市場をつくるという考え方しかおそらくないと思っています。従って、ここはむしろグローバルなイノベーションシステムとして考えざるを得ないだろう。いずれにしても、いろいろなセクターのユニバーシティー、インダトスリー、コーポレーションはチームビルディング、組織の境界を超えて事業化に必要なチームをつくって、ほんとうにイノベーションを目指すというものを促進すべきである。

 自立化したのは企業の技術力の向上、あるいは人材育成のための共同研究は多分ほうっておいても増えていくと思います。そこはもう自立化したと。これは成果だと思います。それに加えて事業化を目指すようなプログラムを推進すべきではないかというのが私の私見でございます。

 以上でございます。

【柘植主査】  ありがとうございます。少し時間がオーバーしていますが、事務局、牧野委員、また渡部委員の全体を包含して、どういう切り口からでも結構ですので、15分ぐらい時間を割きたいと思います。いかがなものでしょうか。どうぞ。

【羽鳥委員】  牧野先生と渡部先生、貴重なお話、どうもありがとうございました。お二方に質問が1点ございます。共同研究は今後の大きなテーマだと私は思うんですけれども、そういう中で知財もまた大きなテーマでもありまして、先ほどの統計にもありました。日本は6割、7割以上共同出願がありまして、残りが単独出願ですね。アメリカは先ほどの渡部先生のお話ですと5%程度とか、あとはイギリスのランバート、アグリメント、これはもう基本的に単独を意図しております。そういった中で、日本がある意味で突出して大きいような感じもあったりするわけです。それがうまく実用化されていればいいんですけれども、まだ10年しかたっていないという理由なのか、いずれかは別としても、目に見える形で使われているとは思えない。そして、その7割もあるような共有特許を大学は何らかの形でマネージしているわけです。企業が基本的にはマネージしているんだと思いますけれども、大学もあわせてマネージしている。つまり、パワーを使っているわけです。そうしたときに、今後、我々はそこの部分をどうしたらいいのか。例えばアメリカやイギリスと同じように、割合を相当少なくして、ちょっと逆転するというんですか、今7、3だったら、逆の3、7みたいにしていくことがいいのかどうか。あるいは、特許はそういうこととは関係なく、共同研究で成果を出していけるというのか。特に知財のマネジメントからすれば、どうせ実施につながらないなら、その共有特許は少なければ少ないほうが大学にとってマネージの負担は減ると思うんです。それはその方向が役に立つのかどうか。実際に知財を活用する、共同研究の成果を実際に社会の中で実現するという視点から見て、どっちの方向がいいと思うんでしょう。よろしくお願いします。

【柘植主査】  今のご質問と関連しますので、今から申し上げる視点も含めて、もし意見がございましたら、今の質問に加えて答えていただきます。

 明らかに大学が特許を出す今のパートナーの話と、それと同時に、日本の大学は一緒に共同研究なり出願するのは、圧倒的に大企業が相手である。アメリカの場合とか出ましたけれども、大企業というよりは、むしろ小さな企業というか、ベンチャーを起こしている。つまり、どうもイノベーションを起こすエンジンの構造が違っている中で、今のご質問をどういうふうに考えるべきか、ということも視野に入れて、何かお二方、ご意見ございませんでしょうか。

【牧野委員】  なかなか難しい質問をいただきましたけど、私どもの簡単な統計では、共同研究から出てくる知財に関しては、何が起きているかほとんど追跡できない。ですから、大学の知財本部の能力に依存すると思うのですが、評価をして、それほどじゃないのはもう譲渡しますから買ってくださいということですね。大事だとわかっているものに関しましてはライセンスを独占的にきちんと結ばせていただく。そういうふうなところで対応しているつもりです。

 統計的に見てみますと、うちの大学の場合には実施許諾50件ぐらいが1年に出てきますが、半分ぐらいが中小企業です。半分ぐらいが大企業です。だから、統計とは少しずれているところはありますけれども、そういう意味では改良の可能性がないことはないけれども、うちの大学の場合にもまだ戦略性がありません。大事なところはそこだと思います。ポートフォリオをどれぐらいきちんと完成していくかが重要です。

 ポートフォリオに関しましても、私たちはかなり分析をした結果、ライフライセンス系と、それから、ライフサイエンスというか、医療以外のバイオやマテリアル、この領域のところはポートフォリオが大事であるし、国際出願が大事である。そういう自分たちの考え方を持っています。それ以外は単発でいけるということもありますので、そういう区分けとか、そういうものが必要になってきているし、そういう能力を産学連携本部が持つことが大事だというふうに、私たちは思っておりますが、ほかの本部のことはわかりません。

【柘植主査】  渡部委員、何か。

【渡部委員】  これはもう立場とか、見方によって幾つか変わるんですけど、まず1つは、この24ページの絵で、まずベンチャーに行くものが少なかったというのは明らかなんです。これで1,900社もベンチャーをつくったので、それは何か種なしブドウみたいになっていたんじゃないかというのは結構あります。

 今回の事業プロモーターの施策というのが文部科学省でやったのが、そういう意味では改善策になっていて、あれはVCの目でベンチャーに行く研究開発に予算を投じますので、基本的にはベンチャーに本来行くべきものが行きやすくなるという効果を生むのではないかというふうに期待をしています。それをもっと下ばかり行っちゃえというのはちょっと暴論でありまして、日本の場合は100年存続する企業がこんなに多いというのは、ある意味いいことであります。それは逆に言って、アメリカの企業なんか、こんなに長くもつ会社をどうやってつくったらいいんだろうというような意味では大変いいこと。そのために、長期的な視点で技術開発の底上げをするというために共同研究が利用されているんだと思います。その面では、ここから成果を出さないといけない。それはもう企業の問題なので、バイ・ドールの30年のときと同じように、あの内容と同じパラレルな成果を出す必要はないです。日本の企業がこの産学連携、基礎技術を獲得したことによって、成果を出せればいいわけです。だけれども、その部分はある意味自立化していったので、ここから先はその推移を見ていけばいいと思うんですが、さらにもっと1歩進んで、事業化に直接つながるようなプログラムをもっと強力に推し進めるべきではないかというのが重要だと思います。

 したがって、ここで言いますと、共願のところの大企業に行っている部分から、ほんとうに事業化に結びつくようなプログラムを支援するというような形をとることでベンチャーの話と両立するような方向に持っていけるんじゃないかというふうに思います。

 以上です。

【柘植主査】  ありがとうございます。野間口さん、お願いします。

【野間口主査代理】  お二人の先生、大変ためになるお話をいただきまして、ありがとうございました。

 聞きたいことは両先生に対してたくさんありますが、時間もあまりないと思いますので、1点ずつ教えていただきたいんですが、牧野先生のお話の中で、日本はいろいろとやっているけれども、閉塞感があるというお話がありました。私も全く同感で、現在の経済産業省の言葉を借りると六重苦の状況で、少々のことをやっても閉塞感だなと。私はもともと総合科学技術会議にしろ、JSTとか、NEDOにしろ、本当にいい戦略、その上に文科省とか、経済産業省があるんでしょうけれども、本当にいい施策をやっているなと。だけど、それが日本の産業競争力、社会の競争力につながらないというのは、ここで論じる範囲外の大きな問題があって、そこのところを直視しないと話にならないのではないか、どんなことをやっても話にならないのではないかと感じているのですが、そういう愚痴を言っていてもしようがない。

 ここで非常に示唆に富む話、寄附に対する税金の問題がありましたけれども、これにつきましてどうお考えか教えていただきたい。私は、産業界は長いんですけれども、何度かこれで頭を抱えるような目に遭ったことがあるんです。産学官連携を実りあるものにするためにも、もっと考え直すべきだというような声を大きく発することにつながれば、この会の非常に大きな成果じゃないかなという気がしましたものですから、それについて、どうお考えか教えていただきたい。

 それから、渡部先生についても1つだけ質問させていただきたいんですが、いつも渡部先生は知財戦略等、示唆に富む話をいただきまして、私ども非常に教えられることが多いんですが、資料の8ページから10ページを基にした先生のお話で、日本企業はもっとやりようがあるんじゃないかというようなトーンでお話しされたように思うんですが、実は私ももっとやりようがあると思っておりまして、例えば薄型パネル、テレビ等で日本は韓国メーカー等に追い抜かれたとか騒いでいますけれども、日本企業はものづくりで勝つという前提で国内で競争しておりましたので、国内の競争で有利に立つために、社内の先端的な成果をどんどんオープンにして、ここまでできました、あそこまでできましたという自慢競争をしながらマーケットの関心を得るというやり方でやってきたと私は思っていまして、日本企業のそういったところを台湾や韓国などのメーカーは、あそこに問題がある、ここに問題があるというのをじっと見ていて、後からフォローした。二番手というのは非常に楽なんです。そういうことで、あまりにもオープン・クローズ戦略と書かれたこの考え方が脆弱だったんじゃないかと思って、その辺をもうちょっとしぶとくやれば、戦える可能性をまだまだ大いに残していると思うんです。その辺、そういう考えであったのかどうかという点を教えていただければと思います。

【柘植主査】  まず、牧野委員からどうぞ。

【牧野委員】  閉塞感のお話ですが、我が国の産学連携は10年の歴史だと考えていいと思います。あのアメリカでも使ったお金と収入が大体とんとんになるのは一番早かったMITで15年かかっているというふうに聞いています。僕らは先人を見ているのでもう少し割り引いて考えないといけないのでしょうけど、大体いいところまで来ているかなと思います。。先ほども言いましたように、ライセンス収入2億円というのはそんなに悪い数字じゃないんです。まだどんどん上がりつつありますから。

【野間口主査代理】  寄附に対する税制、税金の話はどうですか。

【牧野委員】  閉塞感を払うために、サイエンスパークとか、そういうものを高密度の研究組織をつくるというのは非常に有効な手段だと思うのですが、政府のお金だけではできません。アメリカは先ほど言いましたように、例えばルーズベルトアイランドですと民間のお金を1,000億円投入しているわけです。それぐらい大きなものをやってやれば閉塞感も吹っ飛びますし、会社のほうも出したのだから、みんなでやろうというと考えられると思います。大学もそこまでくれば、そのままほうっておくわけにいきませんので、必ずちゃんとしたことをするだろうと思います。大事なことは、そういう声がすぐ届くようなシステムが日本にないことです。これをどうやってつくるか。これにはお金が必要で、このようなお話をすると、大概の大きな会社の偉い方は、税金さえ何とかなれば、うちだって出すよとおっしゃいますよ。ですから、そこのところをもう選択と集中で結構ですから、そこだけ特区にして、そういうお金を流れ込みやすくするというのが1つであって、先ほどおっしゃった閉塞感を除いていく手段ではないかなというふうに僕個人的には思っています。

【野間口主査代理】  ちょっと補足ですが、日本企業が例えば1,000億の利益を出しますと400億の税金を取られるんです。だから、寄附できるとなったら、大いにそこの需要は増えるんです。ところが、今、寄附しますと、その上に寄附に対する税金の話が出るので、ついつい寄附の話がとまってしまうんです。こういったところを何とか打破しなければいけないのではないかと。

【牧野委員】  と思います。

【野間口主査代理】  京都大学のようなところからもっと大きな声で言っていただくと、インパクト大きいんじゃないですか。

【牧野委員】  今日、初めて言ったんですけど、ちょうどこれからは言おうかなと思っているところです。アメリカの場合に税金は要りません。だから、お金が出てくるということであろうかと思います。

 以上です。

【柘植主査】  渡部委員のコメントをいただいて、次に進みたいと思います。

【渡部委員】  短めにやれという指示だと思いますが、おっしゃるとおりでありまして、この11ページの本がよく売れているんですが、この本は過去の観察をして、こういうことが起きているんじゃないかという本でありまして、これからどうしたらいいかと必ずしも書いてないんです。それは我々の責任で、ほんとうにどうしたらよいのかということをもっと突っ込んで議論しないといけないと思っています。

 先ほどちらっと言ったことは、まさしく野間口さんの言われていることと同じで、日本企業というのは基本的にプロプラエタリーな領域を技術領域の中で設定することを、特にエレクトロニクス系の大企業はあまりやってこなかったんです。それは実施の自由で基本的には勝てるというモデルだったと思います。それは多分対米との関係だけで考えている時代は正しかったんだと思うんですが、それが新興国が出てきて、アメリカと新興国が組んで何かするみたいな形になって、その力を失っていったという構造なので、その中で競争力を獲得するためには、やはりプロプラエタリーな技術領域をつくってイノベーションの収益化を図るということが多分基本だと思います。そういう意味ではおっしゃったとおりだと思っています。

【柘植主査】  ありがとうございます。議論を続けるのにプラス、今、資料の5をベースに事務局から今後の方向性についてのたたき台を、まさにたたかれ台かもしれませんけれども、まずこれを説明してから、もう1回、議論に戻りたいと思います。よろしくお願いします。

【橋爪室長】  それでは、資料5の紹介をさせていただきます。主査のほうからもございましたが、これは前回までの議論をベースにしておりますので、ぜひ今日は先生方からいろいろご意見を伺ってブラッシュアップをしていければということの前提でございます。少し簡単にご紹介させていただきます。

 アイテムといたしましては、まず、これまでの議論の主な課題をまとめた、これもたたき台でございます。

 次のページがその今後の方向性のたたき台ということと、それに対する具体的な提案のためのたたき台、それと、全部たたき台ですが、最後のところはさまざま形でのマッチングの形態ということで、少しこれまでの議論の中での資料から参考になるものを抜粋したものでございます。

 戻りまして、課題のところで、前回までのところを大体エッセンスをまとめたつもりでございます。ご紹介をさせていただきますが、まず、現状の状況でございますが、大学に産学官連携に関する基盤的な機能は備わり、主にマッチングや知財のライセンシング等による産学官連携活動は量的に拡大してきているのではないか。ただ、一方で、大きな社会的なインパクト、あるいは新たな市場を創出するようなイノベーションにつながるシステムがなかなかできていないのではないかというのが問題意識の1点目でございます。

 また、それに加えまして、中長期で産学が実用化まで連携する一気通貫のシステムがまだ不十分なのではないか。あるいは、幅広い分野の研究者、金融機関、その他の新しい関係の機関のさらなる巻き込みが必要なのではないか。また、産学官での人材の移転、あるいは若手の研究者や学生の産学官連携活動への巻き込みが不十分なのではないか。

 それと、あと中長期の戦略やプロジェクト立案・展開、あるいは状況への柔軟な対応、グローバルな事業展開、知財戦略を可能とするような組織システム、専門人材が必要なのではないかというのが問題意識のまとめの案でございます。

 続きまして、2ページ目でございますが、それではということで、方向性のエッセンスでございますけれども、キャッチアップではなく、独創的なイノベーションを生み出す新しい産学官連携の拠点、これはいろいろなところで産学協働のための場というものの重要性が指摘されてございますが、そうしたシステムを日本の強みを生かす形で構築していくことが必要ではないでしょうかという点が1点目でございます。

 また、その拠点では、金融機関、商社、シンクタンク等のポテンシャルも積極的に活用して連携を強化することによって、より知のネットワークを強化していく必要があるのではないか。さらに、先ほどから戦略の話もございましたが、実用化に向けて、単に研究開発戦略のみならず、知財の戦略、あるいは事業化戦略、ファイナンスも含めた戦略等を持って進めていくモデルが必要ではないか。ただ、それを行うために、その知財戦略等の専門家、戦略強化のためのそういった専門家の支援人材というものを強化するとともに、人材育成や移転機能というものも備えていくことが必要ではないかというのがこれまでのところから導き出される方向性ではないかということで提示させていただいております。

 3ページを飛ばしていただいて、まず4ページ目に行っていただきたいのですが、これは2年前の産学官連携基本戦略の検討の過程で小委員会で石川先生のほうからご発表いただいた資料の一部抜粋でございます。これはシンプルに少し分析したものでございますので、必ずしも大学側がシーズ、産業界側がニーズという一律の分け方をするというのは難しい部分もございますが、あくまでシンプルに分析ということでお聞きいただければと思います。

 シーズ、ニーズをそれぞれ今顕在化しているかどうかということで4つのブロックに分析をしますと、今の状況としては、ニーズが顕在化している部分についての対応というのはA、Bの部分でございますけれども、これまでの取り組みである程度、量、質ともに実績が積み上がってきているのではないかということでございます。ニーズ不明、あるいはニーズをこれからつくり出していくような部分、CとEの部分というのが一部始まっている事業もございますけれども、さらにここを強化していくというところが必要なのではないかという問題意識ではないかということでございます。そのために、3ページ目にお戻りいただきたいと思いますけれども、産学が新しいニーズを発掘・創出して、グランドデザインを描くような場を大学に構築していくということが1つ、案として施策というか、取り組みとしてあるのではないかということでございます。

 少しこの図がいろいろなことを言っているので、特徴的なところだけ申し上げますと、まず3点ほどあるかと思いますが、1つは、大学に新ニーズのグランドデザインを描く場を構築して、出口まで見据えた事業化戦略のロードマップを企業と大学で共有して、民間資金・資本、あるいは政府の研究開発資金等と連携しつつ、中長期にイノベーション創出に取り組む新しい産学連携システムを構築してはどうかというのが1つでございます。

 2つ目の要素といたしまして、こうした場の中には、従来、ともすれば大学では専門分野の研究者の方で、企業の方でも研究部門の方というつながりだけでありましたけれども、それ以外の方もいろいろな方が参画をしていただいて知を結集していく必要があるのではないか。ただ、どうした形にするのかというのは今後の議論、いろいろお知恵をいただく部分があるかと思います。

 3番目としまして、そうした場を有効に機能させていくためには、やはり先ほどから知財戦略、あるいは知財のポートフォリオ化、事業化戦略等々、戦略の大切さという話が多々ございましたが、そうしたことに通じた専門人材を集積して支援する体制を強化していくことも必要なのではないか。いろいろありますけれども、そうした点を特徴にした新しい産学連携の拠点というものを構築していくというのが一案ではないかということで議論のためのたたき台として紹介させていただきました。

 以上でございます。

【柘植主査】  ありがとうございます。先ほど来からの議論にプラス、特にこの3ページの今までの我々の議論を、本当に産業力強化に資することのもう1歩の進め方について、3ページにおいてコンセプトを出していただいています。これも含めまして先ほどの議論の延長をしたいと思います。どうぞ。

【郷治委員】  この図で言うと3ページの右下の金融の民間資金、続いて投資の集中に関してなんですが、先ほどの野間口先生と牧野先生の議論にも絡むんですが、大学に企業の資金がいかに寄附の税制などを通じて流れやすくなるかというお話がありましたが、私は以前、大学院でおりましたスタンフォード大学の場合、昨今、ヘネシー総長のイニシアチブで集まった寄附の額は6.5ビリオンと、65億ドルと、大体5,000億強です。そのうち、大学の中のいろいろな研究にも使うんですが、約10%から12%をベンチャー起業に投資をするようなベンチャーファンドであるとか、あるいは未公開企業に投資するプライベート・イクイティ・ファンドに流していると。要は寄附で集まったお金のうち500億円ぐらいベンチャー起業などにさらに投資で流れているというような仕組みがありまして、以前、文科省さんの旗振りで、今まさに始まっている大学発新産業創出プロジェクトとあるわけですけれども、政府の資金も限界もあるので、いかにその後に民間の資金を引っ張ってきて、大学発ベンチャーなどに流していくかという施策にも取り組んでいただけるといいなと思っておりまして、ちょっとご提案したいと思います。

【柘植主査】  ありがとうございます。どうぞ、森下委員。

【森下委員】  この3ページのところのオープン・イノベーションコンソーシアムという概念なんですけど、これは非常にニーズがなかなか今わかりにくくなっている中で、新しいニーズを選ぶというのはいいと思うんです。いいと思うんですけれども、これは大学の中へつくるというよりも、日本全体でこういう仕組みがないんじゃないかと思うんです。ですから、各大学というよりも、最初にまず日本全体でこういうのを考えるところをつくらないと、例えば京都大学とか大阪大学に持ってきても小さくなる一方で、そうではなくて、国全体というか、文部科学省の下にこういうのを置いて、こういうものをつくるというのを明確にした上で、それを各大学なりに割っていかないといけない。そうしないと、あまり意味がないんじゃないかと思うんです。どこの組織のところでもいいと思うんですけれども、ニーズというのは大学から出るというより、国策として考えるべきだと思いますから、ちょっとその場所が間違えているんじゃないかなというような気がいたします。概念としては非常にいいので、むしろ日本全体でやる仕組みとしてやられてはどうかというふうに思います。

【柘植主査】  ありがとうございます。北澤委員。

【北澤委員】  私、JSTを辞めたから言うわけではないんですけれども、森下委員が言われたようなことで、各組織が自分自身の業績だけを思っていると、みんながうまくいかないというのが特許関連であるように思うんです。例えばどういうことかというと、例えばJSTがいろいろな特許を持っていて、それを産業革新機構が使いたいというようなときに、産業革新機構としては、JSTが独自に権利を主張している特許だと使いたくない。いろいろなところからかき集めてから使いたい。使えるか、使えないかわからないうちに、安く譲り渡してほしい。日本全体としてはどこかに集めた方が特許は利用しやすい。そのほうがいいから、そうしましょうと、それをやろうとすると問題が生じる。特許を1つ取るときには幾らかかるか、それ以上で譲り渡しているかが査定されるようなことが起こる。1つ1つのプロセスで黒字になるかどうかなんて考えたら、それはならない。例えば産業革新機構が集めて、そして、ライセンスができたとすると、日本全体としては得をする。そのとき、じゃ、JSTはそれで損したんじゃないかと言われるロジックもないわけじゃない。ただ、そのときに、そういうことをやるか、やらないかということなんですけど、実はやった。みんなで特許を持ち合っていて、それでうまくいかないというようなことがある。

 細野さんの特許の場合には、細野さんの特許が非常に強かったということもあって、そのほかの人たちのものをみんなあらかじめ約束してもらい、JSTがまとめてライセンスしてもいいですねということをあらかじめ決めておいた。特許を集めてしまうというのは結構重要なことで、いろんな大学の特許をどこかが安く集めてしまうということができるようになると、実は非常に多くの特許がライセンシングできる可能性が強くなるわけです。

 各大学がどこかに特許を譲り渡すことを評価するようなやり方がないか。JSTでは、大学の知財本部の事務局向けに、人件費などの支援というのをつくったんです。ポートフォリオをつくって特許を戦略的にライセンシングする。1個1個のプロセスはどこかが損をしても、全体としてうまく行くという論理のもとにやれるようにすると、もっと各大学の知財が生きるようになると私は非常に強く思っています。

【柘植主査】  ありがとうございます。永里委員、それから前田委員、お願いします。

【永里委員】  たくさん言いたいことはあるんですけれど、時間がないようなので、まず、森下委員のおっしゃったことが正しいというか、ここの最後の資料の3ページ目に書いてある、大学等でオープン・イノベーションコンソーシアムをつくり新ニーズのグランドデザインを描くなんてことはちょっと無理だろうと思うんです。それで、無理だけど、こういうことをしなきゃならないことは事実だと思うんですが、なかなか難しいだろうと思います。

 本来ならば、ほんとうはこういうことができるようなインフラを整備していくほうが重要であって、先ほどの話じゃないですけど、税制の改革とか、それから、規制緩和とか、要するに新しいイノベーションが起こるような方向のまずそういう改革、地盤をどんどんつくっていくということが重要だろうと思います。それは大学側から言える話ではなくて、経済界のほうから、経団連か何処かが言うべき話だろうと思います。そういうようなことをして大学と企業が連携していけば、この3ページ目のこういう資料ができるんじゃなかろうかと思います。

 時間がないのでこの程度にしておきますけれども、閉塞感が実は企業のほうにも非常に漂っています。簡単に言いますとリーマンショック以後、ウォンとか、元とか、それから、ドルとかに比べて、日本は35%円高になっているんです。考えてください。1.35倍をもし1.0にしたら、日本の製造業は大丈夫なんです。これは政治の無策というか、非常に言いにくいですけど、そういうことです。この20年来、GDPが全然増加していません。20年前もGDPが500兆円あったんです。もし年率で名目3%、実質で2%成長していたら今、名目で900兆円になっていまして、今のような税収不足問題はなくて、赤字国債なんていう問題もこんなになっていないんです。だから、成長戦略が重要だということで、そのためには今、ここの3ページ目に書いてあるようなことをしなきゃいけないんだけど、その前にやるべきことがどうもあるということを私は言いたいんです。

 以上です。

【柘植主査】  ありがとうございました。前田委員、それから本田委員。

【前田委員】  さっき渡部先生のご発表で、日本は大企業と共同研究が非常に多いし、共同出願が多いので、成果がなかなか見えにくい。このやり方はいいとも言うけれど、アメリカと大分違うねというお話があったと思います。私は東京医科歯科大と、今、京都府立医大と医大をかかわらせていただいて感じているのは、企業さんから見て知的財産本部とか、産学連携本部が大学にできて非常によかったんじゃないかと思っているんですね。活発な先生というのは、すごくいろいろな企業さんと組みます。ご自分の頭の中でいろいろなものを組みますので結構グレーなことをしていまして、同じことをいろいろな企業さんに言ったりとかもしています。どこで何がやりとりがされているのかがほんとうにわからない状態になっているのが医学系です。そういうときに、きちんと共同出願契約を結んだり、または譲渡したっていいと思うんですけれど、どこの分野をどの企業さんと先生がやるのかということを先生お一人ではなくて、学校としてちゃんとわかっているということで、企業さんも非常にやりやすくなったんだと私は思っているんです。

 例えばエーザイさんでしたか、今年から、いわゆる先生のところに一生懸命足しげく製薬会社が通うのではなくて、こういうテーマで先生方、やりたいと思う人をコーディネーターの方を見つけてくれませんかというプロジェクトをやっています。コーディネーターの方がこういうところをつないでくれれば、コーディネーターの方の申し込みでつなぎますというようなプログラムを今やっていらっしゃるんですけれど、大企業さんこそ、特に医学系は、大学の中で先生お一人が自由にやっていらっしゃるよりも、組織でいろいろかかわったことのメリットはあると思っていますので、ライフサイエンス系は特に大企業の方がそれを利点として上手に活用していってもらえるようになるといいのかなと思っています。

 あと、また、技術研究組合とか経産省のほうで結構進めていますけど、あそこの賦課金は非常に税制優遇があるようにつくられていますので、ある意味共同研究をしたいと思ったら、あそこにお金を投じてやってもらえば、税金面では相当得になると思うんです。そういうような感じで、大企業との共同研究が進むようなふうに日本はやっていけばいいのかなと。私は特に大企業との連携ばかり医学系でやらせていただいていたんですけれど、それはありかなというふうに思っています。

 あと、もう1つなんですけど、コーディネーターの方の話を前回させていただいたんですけれど、日本というのはスーパーマンみたいに、自分がイノベーションを生み出せるようなコーディネーターの方はそんなにいないと思います。ですから、すばらしいイノベーションを生み出す、突拍子もない若手をつぶさない。そういう人たちを発掘してあげられるような、背中を押すのもコーディネーターなのかなと思っていますので、すばらしいスーパーマンみたいなコーディネーターだけではなくて、そういう人を支えるというか、背中を押してあげられるというコーディネーターというのも日本らしいコーディネーター職なんじゃないかなというふうに思っています。

【柘植主査】  ありがとうございます。それでは、本田委員、常本委員で、そろそろ議論を打ち切ります。

【本田委員】  今日のたたき台の3ページなんですけれども、森下先生や永里先生がおっしゃられているように、大学でこれをやるというのは非常に難しいんでないかというのは、私としてもそう感じております。まず、今応用開発をするといったときに、大学にそういうプロジェクトとして研究開発費が出ているんですけど、やはり先生方というか、大学の得意分野というか、得意ステージというのがあるのではないかなというふうに思っております。基礎研究というようなベースのところから応用といったところをほんとうに大学がきちんとそこまで持ち上げられるかというと、難しいときもあるんではないかというふうに感じております。

 ですので、大学と企業という役者が2人でほんとうに足りるのかなというのが最近感じていることでして、そこにベンチャーさんのような組織がきっちりあれば埋めてくれるのかもしれないんですけれども、そこの人材というのが日本の中では不足していて、前回の久保先生が企業サバティカルというような言葉を使われていたと思うんですが、そういうふうに企業に行かれて少し応用開発をするような人材を育てるとか、今日、牧野先生がお話しされていたようなAROみたいな組織をつくっていくとか、そういうことをしていかないとなかなかギャップの部分を埋められなくて、きちんとした一気通貫の開発というのは難しいというか、役回りとして、そこの部分が日本の中では不足しているので、そういう人材であったり、組織であったりというものの開発というのを真剣に考えていかないと、やはり今の役者だけでは足らないように感じております。

【柘植主査】  ありがとうございます。常本委員でそろそろ。

【常本委員】  今、この3ページを読みながら、少しずれるかもしれませんけれども、日本の閉塞感を打破するには、イノベーションが重要であることはもうどなたも当然同じ意見だと思うんです。そのためには、国の政策を重点化して、こういうものがつくられるのは当然必要であるというふうに思っていますけれども、上のほうを成長させるために、底辺を広げる算段も必要ではないかというふうに思っています。先ほどの共同研究の件数を見ましても、大企業は産学連携を非常に貴重なものとして利用し始めているというのが目に見えているんですけれども、中小企業がほとんど一定で、3割ぐらいでずっと停滞しています。日本の企業、産業界は1%の大企業と99%の中小企業ですから、先ほどの4ページにもありました中小企業にあるニーズを大学との連携の中でうまくつなげることによって新しい発想も出てくるので、どこか、これは文科省が対応するのか、経産省が対応するのかなと思いながらも、中小企業の支援策についても一定の方向性を持っておかないと、上だけが伸びるわけがないなという気がしております。この3ページの例で言うと、こういうものが中央にあったら、地方にもあってという格好でもよろしいですから、地方、中小企業もしっかり頑張れるような体制づくりも考えていただきたいなと思っています。

【柘植主査】  ありがとうございます。非常に大事な話で、しかも広範な話の議論が進んできたと思うので、しかしながら、時間の都合で、今日、1つの区切りをつけねばなりません。今日のお二方のお話、事務局からの前半の話、それから、資料5の3ページの今後の方向についてのたたき台が出たわけですが、それを統括してみますと、統括し足りないところもあるかもしれませんが、やはり先ほど野間口委員もおっしゃったように、それぞれの持ち場、持ち場で、大学にせよ、それから、地域にしても、産学連携の初期の目的を達成しようということでしっかりベストを尽くしているということは事実ですけれども、しかし、先ほど閉塞感という言葉も使われましたけれども、やはり日本の産業力なり、国力にどうも結びつくメカニズムがまだ弱いんじゃないかというようなことが総括として言えます。

 その中で、資料5の3ページの今後の方向としては、今までの産学連携で我々が投資して、かつもう全国的に実を結びつつあるものをさらに生かして、産学連携の初期の目的、社会価値、経済価値を生んでいく、それに伴って人も育てると、こういうことに向けて次の1つのアップグレーディングしたコンセプトが3ページに提案されたと評価できます。その提案に対していろいろな重要な意見を今日はいただいたと思います。1つ、非常に大きなものは、この3ページの絵というのは、地域ごとの努力も必要だけど、日本全体のフレームワークという視点の設計等を含めた重層化といいますか、こういう進め方で3ページをやる以上は実践する必要があるだろう言えます。その中には当然、先ほどありましたIPも含めて、IPの全体ポートフォリオというものも、各地域ごとの話と日本全体の話という視点も要るということのご発言があったと思います。特に前半の話と3ページを見て、私自身が感じますのは、今日の議論の中で明らかに、アメリカの産学連携というものと日本の産学連携は、どちらかというと日本の産学連携は大企業とのコラボレーションと。したがって、日米のいわゆるオープンイノベーションシステムのエンジン構造が違うということを見える化して、その結果、この3ページのものについて地域と、それから日本全体という視点でのエンジン構造に落とし込んでいく。こういうことが必要と私も感じていました。

 ちょっと言い忘れましたけれども、牧野委員がおっしゃったんですが、大学院の教育研究に研究費の直接投入の仕組み、これはアメリカでは当たり前なんですが、日本の場合だと教育を受ける立場だという形で制限があるわけですけれども、ぜひとも3ページの人材育成のところに、そういう大学院教育の教育研究の実質化という面で牧野委員のおっしゃったことも3ページの中に、いわゆる制度改革をしていかないといけません。それを妨げている制度を打破するということも非常に大事なエレメントだなと思っております。

 したがって、今日の1つの事務局からの我々への投げかけとして、「3ページの思想で今後、これを深めていくようなことをしたい」との提案です。私としては、今日、全面的に3ページのことを肯定もされなかったけど、やっぱり3ページの方向で、今日のご発言を生かしていく作業をすべきではないかというのが、今日のこの委員会の大体大きな方向じゃないかなと思います。そういうことで、今後、この3ページのものをベースに、今日の議論を踏まえながらブラッシュアップする、具体化する、見える化するということの作業に行きたいと考えます。事務局のほうから、里見課長、何か。今の私の総括は、大体委員の皆様方、そういう方向で行ったらどうかということで感触を私は受けていますが、何か今後の方向について決意表明といいますか、基本的には頑張ってほしいと、やはり予算化が必要でしょうから。

【里見産業連携・地域支援課長】  ありがとうございます。今日は応援をいただいたと感じておりまして、今日の先生方のプレゼンテーションでもはっきりと出ておりましたように、問題意識についてはおそらく正しい方向でまとめさせていただいていると思うのですが、解として出ているところがもう少し検討が必要だというご指摘ではないかと理解いたしました。

 今日、オープンイノベーションの部分についてのみ提示しております。そのほか、コーディネーターの部分、あるいはそれ以外の研究開発費の部分、そういったものも含めて全体として産学官連携システムをつくっていく必要があると思っておりますので、その全体の姿を整理しまして、改めてオープンイノベーションの部分をどういう位置づけで見ていただくかお示しできればというふうに考えております。前向きに頑張らせていただきます。ありがとうございます。

【柘植主査】  決意表明をいただきまして、そろそろ時間が参りましたので、今後の予定について事務局のほうからお願いします。

【石田室長補佐】  今後の予定でございます。もし可能でしたら、資料6をお手元にご用意いただければ幸いでございますけれども、なければ、それはそれで結構でございます。当面の日程でございますけれども、次回、第11回の開催でございますが、7月27日、金曜日、15時から17時までの予定とさせていただいております。さらにその次の回、第12回でございますが、8月24日、金曜日、13時から15時を予定させていただいております。さらに、その次の回ですが、9月中旬に開催を予定させていただいているところでございます。こちらについては調整の上、改めて連絡をさせていただこうと思います。

 具体的審議内容の予定でございますが、この資料6の右側に記載しているとおりで予定をしているところでございます。

 以上でございます。

【柘植主査】  今の事務局の今後の進め方について、何かご提案はございますか。よろしいでしょうか。

 それでは、ちょうど時間となりましたので、本日の産学官連携推進委員会を閉会といたします。どうもご苦労さまでございました。

 

―― 了 ――

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