産業連携・地域支援部会 産学官連携推進委員会(第5回) 議事録

1.日時

平成23年8月4日(木曜日) 13時~15時

2.場所

金融庁12F 共用第2特別会議室

3.議題

  1. イノベーション・エコシステムの推進方策について
  2. リサーチ・アドミニストレーターについて
  3. 平成24年度に措置すべき施策について(骨子案)
  4. その他

4.出席者

委員

柘植主査、石川委員、長我部委員、高橋委員、橋本委員、南委員、森下委員、井口委員、宇野委員、郷治委員、土田委員、永里委員、羽鳥委員、原井委員、藤本委員、前田委員、牧野委員、三木委員、渡部委員

文部科学省

合田科学技術・学術政策局長、常盤科学技術・学術総括官、池田産業連携・地域支援課長、橋爪大学技術移転推進室長、寺崎産業連携・地域支援課長補佐、寺坂地域研究交流官、石田大学技術移転推進室長補佐、井上大学技術移転推進室専門官 他

5.議事録

【柘植主査】  時間ですので、科学技術・学術審議会産業連携・地域支援部会の産学官連携推進委員会(第5回)を開催いたします。
 初めに、事務局から配付資料の確認をお願いします。

【石田室長補佐】  お手元に資料を用意させていただいております。資料の一番上に議事次第があるかと存じます。真ん中あたりに配付資料の一覧がございますので、念のため、この順に確認させていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 まず、資料1-1、産学官連携推進委員会(第4回)における主な御意見という資料でございます。続きまして、A4判横長カラー刷りで、イノベーション・エコシステムの確立に貢献する産学官連携基本戦略イメージという資料が1-2でございます。1-3、イノベーション・エコシステム拠点構想(案)という資料でございます。
 続きまして、資料2、これもA4判横長で、ちょっと厚めのホチキス留めでございます。リサーチ・アドミニストレーターの日本での発足及び定着にむけてという資料でございます。
 続きまして、資料3、リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備というホチキス留めになっております。
 資料4、A4判縦長1枚物で、平成24年度に措置すべき施策について(骨子案)という資料でございます。
 続きまして、資料5、A4判縦長ホチキス留め資料で、産学官連携推進委員会の当面の予定という資料になっております。資料番号が付されたものは以上でございます。
 その他、机上配付といたしまして、ファイリングした参考資料を用意させていただいております。
 資料は以上でございますが、落丁等がございましたら、お申し付けいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 それでは早速、本日の議事に入りたいと思います。今日の議事次第をご覧のごとく、議題が3つありまして、1、2が今日のメーンでございます。1、2を踏まえて、3の「平成24年度に措置すべき施策について(骨子案)」に入りますが、1番目の議題の「イノベーション・エコシステムの推進方策について」と2番の「リサーチ・アドミニストレーターについて」が土台になります。
 早速、議題1の「イノベーション・エコシステムの推進方策について」のまとめを、本議題は前回と前々回と議論をいただきまして、これらの議論を踏まえまして事務局のほうで意見を取りまとめましたので、まず説明をいただきまして、それから、質疑応答を行いたいと思います。それでは、お願いいたします。

【寺崎課長補佐】  では、事務局より、資料1-1、1-2、1-3の順に説明させていただきます。資料1-1でございますが、前回の産学官連携推進委員会における主なご意見をまとめさせていただいてございます。この中でも特に主なご意見については、本日の議論の論点にもさせていただいておりますので、詳細は割愛させていただきます。
 前回特にご議論があったのは、もし事業プロモーターを設定する場合の資質に関するご意見でございました。いかに優秀な人材を据えることができるかという点でございます。また、関連で、公募制の是非についてもさまざまなご意見をいただいてございます。本日の論点としても、後ほど説明させていただきます。
 また、さらに2つ目として、地域性の考慮という視点もご意見をいただいてございますので、こちらについてもさらに本日ご意見をいただければと思っています。
 また、グラントとエクイティフェーズの話を明確にしていくべきではないかというところのご意見もいただいておりますので、こちらについても追加の資料を本日付けさせていただいてございます。
 資料1-2でございます。こちら、「イノベーション・エコシステムの確立に貢献する産学官連携基本戦略イメージ」というタイトルでございますが、昨年の9月におまとめいただきましたイノベーション促進のための産学官連携基本戦略のご提言の中で使用している、基本戦略のイメージ図でございます。まさに本委員会でご議論いただいている内容、フェーズを明確化するために、図に該当部分を追記させていただいてございます。
 昨年のご議論のご提言の中では、大学等が行う研究開発を支援するだけではなくて、大学発ベンチャー等に対する事業投資を推進する観点から、省庁の枠を超えて、研究開発独法と公的事業投資機関の連携による事業化の推進をご提言いただいてございます。
 今回ご議論していただいているフェーズ、内容は、その前段階、ベンチャー企業の前段階における支援のあり方でございます。大学発ベンチャー等を設立する前段階において、研究開発支援、事業化支援の最適なあり方はどのような形なのかというところで、前回に引き続きご議論いただければと考えてございます。
 資料1-3でございます。前回の委員会でも事務局案ということで提示させていただいたものをリバイスしたものでございます。イノベーション・エコシステムの拠点構想(案)といたしまして、前回の議論を踏まえ、特に今回、4つの論点の提示と、また、後ろのページで関連の資料を添付させていただいてございます。順に説明させていただきます。
 本日、大きく、論点1から4を挙げさせていただいてございます。論点1といたしましては地域で機能する仕組みづくりということで、前回のご議論のご意見の中でも、東京と地方では事情が違う、地方での仕組みを考えての制度構築が必要というご意見をいただいてございます。そのような観点から、どのように地域性を担保した制度設計が必要なのかというところでございます。
 論点2といたしましては、前回も論点として挙げさせていただいております、専門人材をいかに集められるかという点でございます。こちらについては、前回ご意見が特にございませんでしたので、再度、関係のデータとともに論点を挙げさせていただいてございます。
 また、論点3といたしましては、グラントとエクイティの連続性の観点です。これも先ほども申し上げましたが、グラントフェーズとエクイティフェーズで、国がビジネスに近いほうに乗り出すのは問題であるというご意見をいただいておりますので、今回のコンセプトにおけるターゲットを明確化するために、論点3として挙げさせていただいてございます。
 また、論点4といたしまして、事業プロモーターは公募で行うべきか、また、決め打ちのような形のほうが適切なのかという点でございます。前回のご議論の中でも、民間で優秀な人は公募では応募してこないのではないかというご議論もございました。また一方で、公募の場合においては、プロモーターのキャリアパスをあわせて検討していく必要があるというご意見もございましたので、このあたりについても再度ご議論いただきたいと思ってございます。
 ページをめくっていただきまして、2ページ目でございます。論点ごとに観点のデータ、資料を少し整理させていただいてございます。2ページ目の左側、「地域別投資状況」という点でございます。先ほどの論点1で、地域で機能する仕組みづくりをどのように行っていくべきかという点でございますが、地域別の投融資残高を見ても、東京都が約4割弱を占めている、特に東京都に集中しているという現状がございます。一方で、大学発ベンチャーというのは、企業の母体となる研究室の近くに設置される傾向がございまして、地域経済の発展に寄与する可能性があるという議論もございます。そのような観点からも、地域性を考慮した仕組みづくりを考えていく必要があると考えてございます。
 では、どのような仕組みづくりが必要かという点で、事務局の考えといたしましては、その下にございます、「実施体制と地域科学技術の視点」とさせていただいてございます。吹き出しの2つ目、事業プロモーターの考え方でございますが、事業プロモーターは、分野、地域性を考慮して選定される必要があるのではないかと。前回のご議論でも、多様な事業プロモーターから多様な仕組みづくりが必要ではないかというご意見をいただいてございます。
 またその一方で、考慮しておく必要があるべき点として、吹き出しの一番下の点でございます。地域性を考慮しつつも、地域をあまり限定し過ぎると、今度、シーズが限定されてしまうリスクがあるのではないかということが挙げられております。それで、事務局といたしましては、「ゆるやかな地域性」という考え方を示させていただいてございます。あまり各大学各大学で地域性を限定するのではなく、もう少し広い範囲の地域、拠点づくりというイメージではないかと思ってございますが、こちらについても本日ご議論いただければと思ってございます。
 また、右側でございますが、事業プロモーターの役割を少しイメージ化させてございます。論点2で、優秀な起業家、知財専門家をどのように集めることができるかということで、前回も論点として挙げさせていただいてございますが、事業プロモーターの役割を明確化させていただいております。その中で、優秀な起業家、知財専門家というのは、現在の事務局案で申し上げますと、事業プロモーターの役割の1つで、事業プロモーターのネットワークにかなり依存している部分がございます。果たしてこれで十分かどうか、また、ほかにいい人材、優秀な人材を集めてくるような仕組みづくりがあるかどうか、さらにこのあたりについてもご議論していただければと思ってございます。
 ページをめくっていただきまして、3ページ目でございます。論点3といたしまして、グラント段階とエクイティ段階の連続性という点を挙げさせていただいてございます。現在の事務局の構想案を整理させていただいたのが、左側の図でございます。グラントとエクイティ段階がある中で、現在、独立行政法人中小企業基盤整備機構は、創業段階等に投資するファンドに対して出資を行ってございます。これはいわゆる起業支援ファンドとかベンチャーファンドと呼ばれているものでございます。
 一方で、現在ご議論いただいておりますイノベーション・エコシステム拠点構想におきましては、ベンチャー立ち上げ前段階において研究開発支援と事業育成を一体的に実施するシステムを構築することができないかという点でございます。このようなシステムによって、有望な大学発ベンチャーを創出し、エクイティ投資の段階で、まさに中小機構がやっております起業支援ファンド等につなぎ、民間の資金を呼び込んでくる仕組みづくりができないかというものでございます。
 グラント段階で民間の事業化ノウハウを活用することによりまして、有望ベンチャーの創出、また、有望なベンチャーが創出されることによって、民間資金が集まる仕組みでありますベンチャーファンドのフェーズが活性化されて、結果として、大学の研究成果の社会還元の促進につながるのではないか、このようなモデルを作れないかというのが事務局の案でございます。ここについてもご議論いただければと思ってございます。
 最後の論点といたしまして、論点4の事業プロモーターは公募か決め打ちか、どのように選ばれる必要があるのかという点でございます。3ページ目の右側でございますが、前回のご議論の中で、最終的にエクイティが持てるぐらいの制度にしないと動かないのではないかというご意見がございました。仮に将来のエクイティ投資のインセンティブを与えるような仕組みを考える場合には、公募等により最適な人材を選ぶ、つまり、入り口を広くするし、選ばれた事業プロモーターにより事業を実施する必要があるのではないかという論点がございます。
 ただし、前回もご議論がありました、優秀な人が応募してこないのではないかというご議論もございました。使命を全うできる優秀な人材が選ばれる仕組みがいずれの場合においても大前提になってくるかと思います。
 また、事業プロモーターに一定の権限を持たせる必要があるというご意見もございましたが、もしそのような場合は、事業プロモーターのパフォーマンスも評価していく必要があるという考えもあるかと存じます。このあたりについてもご議論いただければと思ってございます。
 引き続きまして、4ページ目でございます。大学等発ベンチャーの起業までのケースを少しわかりやすく分析したものでございます。大きく3つの状況に分けて整理してございます。まず1つ目のケースとして、有望シーズに対して研究開発資金が中心の場合。
 これは現在、事務局のイノベーション・エコシステム拠点構想で想定される研究開発事業化フェーズというのは、この青色で塗っている部分が現在検討しているフェーズでございます。仮に、競争的資金を活用した研究開発がある程度実施できる場合、一方で民間による事業化支援が十分でない場合の課題として、最適な事業化構想や知財戦略が構築できない状況が生じる可能性がある。これは前回のデータでもお示しさせていただいたとおり、販路、市場の開拓とか、収益確保の課題がベンチャーが立ち上がった後の段階で生じてくるという問題がございます。
 (b)のケースでございます。有望シーズに対して事業化サポートが中心になる場合でございます。これは先ほどと反対のパターンでして、例えばエンジェル、シーズ・ベンチャーキャピタル等による事業化支援が起業前段階で行われている場合でございます。一方で、競争的資金による研究資金が十分でない場合でございます。
 この点に関しましての課題といたしましては、先ほどのベンチャーファンドなど民間のリスクマネーをまさに起業の前段階で集めてくるのが非常に難しいという現状がございます。民間のリスクマネーが十分に入り込めず、また、十分な研究資金が獲得できないという状況が生じますと、まさに研究開発資金を獲得できるかに事業の進捗が依存してくるという状況が生じてくるというものでございます。
 (a)と(b)の状況を踏まえて、今、事務局が考えておりますイノベーション・エコシステム拠点構想というのは、(c)の状況、つまり、事業プロモーターによるハンズオンと専門家チームによる事業化構想、知財戦略構築などの事業化支援と、マイルストーンを設定しながらの市場ニーズに応じた研究開発を一体的に推進することによって、起業前段階の支援の最適化が図れないかと考えているものでございます。
 最後、5ページ目でございます。イメージを少し具体化させるために、具体例として挙げさせていただいてございます。ただ、これは成功事例という位置付けのものではなくて、具体的なイメージを持っていただくためのものというご理解をいただければと存じます。
 今回、アネロファーマ・サイエンスの例をここで提示させていただいてございます。これは信州大学の教授らによって発明された特許によってベンチャーを興したケースでございます。この場合においても、起業前段階において民間のシーズキャピタルがシーズ段階から参画して、事業化構想を構築する支援をしてございました。一方で、競争的資金に関しましては、基礎研究の段階では、科研費などはとっておらず、シーズ段階においてNEDOの競争的資金を2年程度獲得することができたと。その後はJSTの支援などが行われているという状況でございます。
 事務局のイノベーション・エコシステム拠点構想においては、この起業前段階において政府資金と民間の事業ノウハウを組み合わせることによって、ポテンシャルの高いシーズに関して研究開発支援と事業化支援を一体的に推進して、市場や出口を見据えた事業化を目指すシステムができないかというものでございます。
 事務局からは以上でございます。

【柘植主査】  ありがとうございます。資料1-1、1-2、1-3ということで、どの順序でもいいんですが、もし資料1-1の論点の整理が足りなかったら、ここのところを充実したいと。できたら、それを資料1-2、1-3ともリンクさせながら、どの順序でも結構でございますので、約20分ほど時間をとりまして、ご意見をいただきたいと思います。
 そのご意見は、先ほど申しましたように、1つは、出口として、24年度に措置すべき施策という、今日の議題3のほうに反映をすべきものはしていくと、こういう位置付けでご意見をいただきたいと思います。順序はどれからでも結構です。ご発言いただけますでしょうか。
 寺崎さん、理解を深めるという意味で、資料1-3のイノベーション・エコシステム拠点構想のこの絵の設計思想について、もうちょっと説明してもらえませんか。どういうふうに目を追っていったらいいのかというのが、私自身もまだよく理解していないところがありますので。

【寺崎課長補佐】  では、資料1-3の、特に最初のページの設計思想でございますが、まず今までの分析からすると、キーとしては、ベンチャーの立ち上げ前段階、先ほどもちょっと資料で出ましたが、エクイティが入る前段階、グラントの段階で、殊に、大学の技術移転に関する手段としての大学発ベンチャーに対していかに政策を出していくかという点でございます。
 その点から申し上げますと、ベンチャーの起業前段階で、今までは、四角く囲ってあるところの下の部分、大学と研究者による事業化に向けた研究開発が中心に行われてございました。ただ一方で、果たしてこれだけでほんとうにいいベンチャーが出てくるかという視点がございます。ですので、事業化構想と一体的に推進する必要があるのではないかと。
 では、事業構想を今までのベンチャーも立てていなかったかというと、やはりここで構想はもちろん立てていた、計画などもしっかり作っていたと考えております。ただ、それがほんとうに将来の市場、特に例えば国際市場とか大きなマーケットを見据えた、そういう計画をしっかり立てていたかというと、前回のデータでも少し示させていただいたように、その辺がまだ十分ではなかったのではないかと。だとすれば、もう少し民間のノウハウなどを活用した事業化構想をこのフェーズにまで持ち込んで、一体的に支援するような仕組みづくりができないかというものでございます。
 そのためには、事業プロモーターという方を置いて、その方が全体をコーディネートして、進捗管理などもしながら、事業をこのフェーズにおいても進めていって、将来のベンチャー立ち上げ、エクイティ投資の段階につなげていく。そのフェーズも一体的に推進することで、結果として、大学の研究成果の技術移転が促進されるのではないかというようなコンセプトに基づいてございます。

【柘植主査】  これからの議論も踏まえまして、この資料1-3の1ページ目のものが、今言われたような話で、まさにリテラリーじゃないんですけれども、見たら、目が追えるようなブラッシュアップをトライしてほしいなと思います。
 どうぞ、じゃあ、藤本委員。

【藤本委員】  事業プロモーターのこういう人物がいたら非常にすばらしいなと思うんですけれども、前回も森下委員のお話からもあったように、地方でそういう人材をなかなか見つけるのが難しいということです。東京には優秀な人材がフローティングな雇用形態でもマルチに動ける人がたくさんいらっしゃると思うんですけれども、地方にそういうことを担える人がいないと。
 この話に想定されている中で、アドバイスを受けながらそういうことができるというようなことで、例えばシリコンバレーでこういう仕事をしている、つまり、日本に居住していない、アドバイザーみたいな人に、海外に居住地があって、だけれども、そういうベンチャーに関するアドバイスとか、うまくいかないときの残務整理とか、また、ご自身も起業経験があるというような人をアドバイザーに据えるような、そういうことは想定されているかというのがちょっと気になりまして、そういうことも含めて議論してもいいのではないかと思いました。

【柘植主査】  こちらに来てもらわなくても、現地にいてでも、契約のもとでのアドバイザーという感じですか。

【藤本委員】  そういう方で、日本にたびたび来られている、もちろん日本人の方でも向こうでも成功しておられる方、皆さん、たくさんご存じだと思うんですけれども、毎日は日本にはいられないけれども、例えば一月に1回とか、あるいはもちろんテレビ会議等で、アメリカもリーマンショック以降、出張が随分減って、テレビ会議だけで済ませることが多くなりましたけれども、そういう人の存在も、日本で必ずしも全部が調達できない場合、議論してもいいのではないかなと思った次第です。

【柘植主査】  今の点について、事務局、特にそれに対する障害物はあるかないか。

【寺崎課長補佐】  深く議論しているわけではないんですけれども、特に障害はないと思います。まさにそのあたりもどういう制度設計が適切なのかというのをご議論いただければと思っておりますので、全く排除されるということでは全くございません。

【柘植主査】  今、藤本委員のアイデアは、私は非常に魅力を感じます。ほんとうに世界的な視点、世界的なレベルでのまさに事業プロモーターの質を上げるのに、随分ために、プラスになるかなと感じますので、何か実現の方向で議論をしていただきたいと思います。
 関連か、ほかのものでも結構でございます。どうぞ。

【羽鳥委員】  私も前回の議論がちょっとうろ覚えでありますけれども、その事業プロモーター、これが大学の中の職員というか、大学に属しているか、あるいは、そうじゃなくて、大学とは独立に位置付けられる人たちなのか、その辺も大分影響があるかと思うんです。
 例えば東大であれば、シーズもいっぱいある。研究所もいっぱいあります。したがって、そこに専属でいてもいいんですよね。先ほどの地域ということを考えますと、多分、ベンチャーが出る大学もあれば、出ない大学もいっぱいあるでしょう。そうすると、シーズみたいなものもない、あるいは、ニーズはあるかもしれませんけれども、あまりベンチャーが出ないにもかかわらず、張りついているみたいなこともおかしいかなとは思います。
 その意味では、日本全体のネットワークというか、そういったことも頭に置きながら、階層構造というんですかね、全体も見られて、スーパーバイズする人がいて、「あの辺に何かいいベンチャーの種がある」といったら、そこにリソースを集中するような、先ほどの藤本先生のご意見じゃないですけれども、時々そういったシリコンバレーのノウハウみたいなものも注入したりして、そういったトータルで考えるようなプロモーター配置が可能な、そういった組織があるといいのかなと思いました。

【柘植主査】  今の羽鳥委員のご発言は、例えば今の資料1-3の2枚目の左の図なんかと重ねて見たら、何か関連があると思うんですけれども、そう理解してよろしいでしょうか。
 これについては、事務局は何か。今の考えの構想と今のご発言ですね。

【寺崎課長補佐】  まさに主査と羽鳥委員のおっしゃるとおりで、2ページ目の左下にございますように、「ゆるやかな地域性」という概念で、先ほど羽鳥委員からもおっしゃられましたように、シーズがないのに人だけがいるというような状況は制度としては適切ではないと思いますので、仮にこういうものをやる場合というのは、まさにそういう視点を少し入れながら、制度設計をしていく必要があるのではないかとは考えてございます。

【柘植主査】  今の関連で、委員長自身もちょっとその辺で理解をしたいんですけれども、この今の絵を見ますと、事業プロモーターが3人ほど丸でかいてありますけれども、この事業プロモーターは、そうすると、この所属は大学なり、独法なり、公設試なり、どこかに一応籍はあるけれども、機能としては、この絵にかいてあるように、全国的なネットワークのもとである事業目的を完成する活動をすると。
 言い換えると、今、各大学の職員として採用しています例の産学連携コーディネーターですか、あれは各大学の中での活動というふうに限定されていると私は理解しておるんですけれども、ここに言う事業プロモーターは、どこかに所属するけれども、全国版も動くと、こういう構想とこの図は読んでいるんですけれども、そういう理解でよろしいんでしょうか。

【寺崎課長補佐】  イメージといたしましては、例えばこのフェーズで今、研究開発支援が行われているものの中にA-STEPという事業がございます。それ以外にも競争的資金がございまして、その中で例えばプログラムオフィサーという方がいらっしゃいます。そのような方々というのは、もう少し全体の課題について評価をされたりとか、ある程度の支援も行ったりしてございます。ですので、個別個別の大学というよりも、もう少し全体を見ていくようなイメージでとらえております。

【柘植主査】  関連か、ほかのでも。はい、森下委員、どうぞお願いします。それから、渡部委員。

【森下委員】  今のに少し関係するんですけれども、先ほど大学に張りついているなんていう話も出ましたけれども、この場合は、ある程度地域性を見ながら、むしろシーズが類似しているというか、同じような分野のシーズを育てていったほうがいいのではないかと思うんです。
 というのは、大学ごとにやりますと、農業案件、アグリ案件があって、いわゆるバイオ案件があって、いわゆるリサーチツールがあって、それから、創薬もあると。こういう形でやるんでしたら、今の大学内にある、いろいろな産学連携のプログラムとあまり変わらなくなってきて、ここで目指すところの、ベンチャーを支援して育てるというところでは不十分じゃないかと思うんです。
 むしろそれよりは、ある程度地域性を持って、例えば関西であれば関西全域の創薬というところに焦点を絞って、そのシーズを集めていって、その中で育てていったほうが。これはM&Aも含めてですけれども、やっぱり1つの会社では無理な話が結構多いので、2つ3つのシーズを集めて1つの会社をつくるというような形じゃないと、やっぱり有望にならないと思うんです。そういう意味ではむしろ、シーズのところで一連性のある程度の群をつくっていって、それで考えていくというやり方のほうがいいのではないかと思います。
 その中で、先ほども、どこまで地域を優先するのかと少し出ましたけれども、例えば上限として、支援する案件のうち20%あるいは40%でもいいんですけれども、それは例えば外部、ほかの地域からでも、類似であればいいと。そのことによって相乗効果が出るのであれば、そうしたものも一緒に支援していったほうがより効率的じゃないかと思います。
 また、公募する人材なんですけれども、これはやっぱり本人の問題ももちろんありますけれども、もう1個は、ここで出てくる周囲の支援する人材が非常に大事だと思いますので、公募段階である程度、アドバイザーも含めてチームをつくってもらって、そのチームで公募に応じてもらうという形でやらないと、なかなかおひとりだけ来て、それで育てられるかというと、これは非常に難しいと思います。
 先ほどご紹介したように、例えば創薬であれば、創薬に詳しいチームをつくってもらって応募してもらって、そういうシーズを中心に育てたいと。やっぱりそうした形の仕組みにしないと、従来と同じようなことで、結局、頓挫というんですか、うまくいかないという話になりかねないと思います。
 同じような話でいけば、工学系であっても、有機ELとか、やっぱりある程度、事業分野というのはどの会社でもありますので、そうした発想でいったほうが、よりプロモーターの方の専門領域で例えばどこかの会社との提携等もまとめやすいかと思いますので、そういう意味では、シーズの内容も最初の段階からやっぱり公募の中で少し考慮する必要があるのではないかと思います。

【柘植主査】  渡部委員のお話の前に、今の話で、私も、今、森下委員のおっしゃったお話をぜひ具現化すべきだなと思います。一方では、先ほど羽鳥委員がおっしゃった、大学に既にいる人材、そことの、どういう言葉をおっしゃいましたか、アーキテクチャーと言いましたか……。

【羽鳥委員】  階層構造。

【柘植主査】  階層構造。それとの重ね合わせの一種の制度設計になるんですけれども、それについては今、寺崎さんたちはどのように考えられていますか。森下委員がおっしゃったことと、それから、羽鳥委員がおっしゃった、既存の、既に大学の中でも類似の活動をされていて、どちらかというと、もちろん全国あるいは世界視野で動いておられる教員・職員がおられるわけですけれども、それとの重ね合わせ方で、これの制度設計はどういうふうな考え方をしようとしているか。

【寺崎課長補佐】  制度設計は、まさにこのご議論をいただいて、ご意見をいただいた上で、もしやる必要があるということであれば、さらに詳細を詰めていくということになりますので、まさにここでのご意見を踏まえてということになるかと思います。
 そういった意味では、前回も高橋委員から、現在活動されていらっしゃるコーディネーターとの連携とかそういうところも制度の中でしっかり検討する必要があるということをご指摘いただいていますので、これだけが単独で動くということは、まず国の制度設計としても適切ではないと思っておりますので、うまく連携して、相乗効果を生み出せるような仕組みづくりが大前提としては必要ではないかと考えてございます。また、さまざまなご意見をいただいた上で、まさにそれを事務局としても反映していきたいと考えてございます。

【柘植主査】  そうですね。前回の高橋委員のご発言、それから、今の森下委員、羽鳥委員の話は、これが予算化できる段階になったときには、公募の段階でもそのコンセプトが設計図として見える化されていることが必要だなと思いますので、今のはぜひ残していただきたいと思います。
 渡部委員、どうもお待たせしました。

【渡部委員】  前回、たしか、事業プロモーターの責任と権限の話があったと思うんですけれども、それが結果的にこの絵の中でどこでどういうふうに読むのかというのが聞きたいことです。
 これ、たしか、わりに新しい絵だと思うんですけれども、4ページのこれを見ると、上が民間リソースで公的研究資金、これ、リソースの下にノウハウと書いてありますけれども、ここはお金も多分含まれるのかなという気もします。これで、公的研究資金だけだとだめで、上だけだとだめで、両方一緒と、こういう話だと思うんですが、事業プロモーターが民間リソースのほうに書かれている。ということは、民間リソースのマネジメントをする権限とか、そういうようなイメージに見えてしまうんですけれども、これ、この絵にこだわらないんですけれども、ともかく、今の段階で事業プロモーターのミッションと権限はどういうふうに考えればいいのかということです。

【柘植主査】  事務局、何か回答はありますか。

【寺崎課長補佐】  渡部委員がおっしゃるとおり、4ページ目の一番下、民間リソースは、上との比較がしやすいようにこういうふうにさせていただいたんですが、ちょっと語弊があるような表現になってしまっていますので、一体的に推進する場合は、国の制度の中で行うということなので、ここもしっかり整理が必要かと思ってございます。
 また、責任と権限という話におきましても、前回、事業プロモーターにしっかり権限を与えないといけない、その権限は、資金、お金というところの権限を与えるべきではないかというご意見もございましたので、そのような制度で、かつ、スーパーバイザーとのバランスをどういうふうに考えていくのかというところもございましたので、まさにそのあたりはこれからしっかり整理していくということになるかと思います。

【渡部委員】  まだかなりプリミティブな検討なのであれなんですけれども、結局、やっぱり政府資金と民間資金が混ざるような、並行して動くような話というのは利益相反的な問題が起きやすいので、それは責任と権限と、その人がどこに所属してというようなところまで少しはっきり絵にしてみないと、そういう細かい検討ができないんだと思うんです。ある程度そういう具体的な話もたたき台として検討していかないと、実現性が検討できないかなと思いました。

【柘植主査】  大事なことだと思います。ぜひ今のところの視点で、最終的にはやっぱり事業プロモーターの責任と権限に対しては、一種のミッション・ディスクリプションをきちっと書くことだと思うんですね。書くと、4ページ目の(c)の絵は多分変わってくるだろうと。そういうことですので、やはりミッション・ディスクリプションをきちっと書くことが大事だと思います。
 関連か、そのほか、いかが……、郷治委員、どうぞ。

【郷治委員】  事業プロモーターというのは2、3名のユニットということで、決して1人だけで全部仕切るのではなくて、チームでやるということだと思うんですが、このプロモーターの役割というのは、技術の評価から、市場性の評価から、ほんとうに企業として成り立つかどうかの評価、育成とか、かなり総合的な視野と行動力が求められると思うので、例えば同じようなバックグラウンドの人だけが3人、例えば研究者の人が3人で申し込んでくるようなケースとかはあまりよくないのかなと。逆に金融だけの人間が3人でというのもあまりよくないと思いますし、そういうユニットの中の役割分担とかもある程度ちゃんと決めた上で応募してくるようにするであるとか、そういった仕組みが必要なのではないかと思います。

【柘植主査】  永里委員、どうぞ。それから、後で三木委員。

【永里委員】  どうもありがとうございます。事業プロモーターの役割が資料1-3の2ページ目の右上に書いてありますけれども、その中に、「起業経験者、ベンチャーキャピタリスト等を想定しつつも、人材を育てる視点も必要」と書いてあるんですが、私が考えますに、このプロモーターというのは成功体験者が望ましいと。だから、成功体験者みたいな人がリーダーになるべきです。
 そうなると、地域にそういう人がたくさんいるのかというような問題が出てきます。そういう意味で、藤本委員のご発言というか、ご意見というのは非常に参考になると思います。成功体験者が人を育てていくというようなことをしないと、非常に効率が悪いのではないか、人材が育つというのはなかなか難しいのではないかと思います。以上です。

【柘植主査】  大変大事なことだと思います。
 三木委員、どうぞ。

【三木委員】  ちょっと観点が違う意見になるかもしれませんけれども、この事業プロモーターは、有望案件にいわゆるドリームチーム型で集中的な支援をしていく。しかも、地域性ということも考慮しながらという、これはよく理解できるんですけれども、もう1つ、こういう施策をある程度打っていかれた後の将来像として、どういうオーガニゼーションでということを考えていく必要があるんだと思うんです。
 そのときに、例えば今のような「ゆるやかな地域性」ということになると、今、国の関係機関でいうと、例えばこれをオーガニゼーションとしてどこかに機能を持たせるとしたら、JSTさんなんかが1つの核になるんだろうと思うんですけれども、もう一方では、そういうドリームチーム自身は機能したとしても、もう1つは現場の問題が残っていると思うんです。
 大学の機能で、今回はほとんど触れられていないんですけれども、こういう機能を生かすときに、何か改善すべき問題点、改革すべきことがあるんではないかと。そういったものについても、何らかの整理を委員会としてはしておいたほうがいいのではないかと。そういうことで、トータルとして将来像を考えると、大学の中にも、それぞれの個々の大学ではないかもしれませんけれども、幾つかの大学が連携しながらやるのか、それとも、分野ごとで何かをやるのか、こういう機能をオーガニゼーションとして持っていくのか、その辺も意識していくと、自立的にやれる仕組みを少し見越したことも、論点5になるのかどうかわかりませんけれども、そういったことも今後詰めていく必要があるだろうと。
 ただし、そういう議論をするには、何か動かしてみないとわからないというところもありますので、今、この段階であまり詰めてみても、机上の空論になってしまいますので、段階的に詰めていくことが必要でないかなと思います。以上です。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 どうぞ、じゃ、石川委員、井口委員、それから、時間の関係なんですけれども、前田委員で一応終えたいと思います。はい、どうぞ。

【石川委員】  柘植委員長が1枚目のコンセプトとおっしゃったのと、それから、皆さんの議論を聞いていますと、起業コーディネーターのイメージが皆さん少しずつずれているかなという感じがいたします。
 これ、基本コンセプトの一番基本にあることは、ファンド、つまり、グラントをもらって国のお金で出した成果を事業につなげられていないというところが問題意識にあるわけですね。それが例えば共同研究に持っていくのに関しては別枠でやっているわけで、これは新規分野開拓なので、わりとリスクの大きい案件をやっている。
 アメリカは、それに対して、プライベートセクターがちゃんとした仕組みができ上がっている。台湾は国策としてやっている。じゃ、日本はどうするかというのに答えるべき仕組みのわけです。その答えるべき仕組みなので、リスクの高い案件に対して、プライベートセクターのマネーをどうやって引っ張ってくるかというところが事業プロモーターの最も重要なところです。
 それからもう1つ、皆さんちょっと誤解しているかもしれないんですが、これ、政府のお金をリスクマネーとして扱う仕組みじゃないわけですね。リスクマネーは民間から持ってくるのであって、それのマネジメントを政府が人材として提供する。場を提供する。三木先生がおっしゃられたふうに言うと、組織として提供するという話であって、これ、大学へこの人材をつけたらば、利益相反の巣窟になってしまって、とてもできない。これはやっぱり独立した世界じゃないと。うち、東大でいうと、エッジキャピタルをつくるときに、エッジキャピタルを大学の中につくろうなんていう話はまず出ないわけです。
 だから、これを大学の中につくったらば、投資の部分で完璧な利益相反が成立しますから、あり得ない。外部でやる。外部なんだけれども、研究成果という価値は大学にあるのであって、その価値をどうやって事業化につなげるかという橋渡しをする組織体、しかも、リスクマネーをまさに完璧なマネジメントできる人材ということになると思うんです。その人材をどう集めるかと、そこに対する仕組みをどうするかというのがポイントである。
 そうすると、ここにくる事業プロモーターに対して、どういった自由度を与え、どういったリスクテークをしてもらうかという制度設計が重要なので、その制度設計は、渡部委員が言うように、ほんとうにちゃんとやらなければいけないので、具体案で議論してなければいけないのであって、早く具体案が出るといいかなと思っています。
 もう1つ、注意点は、これが目指しているのは、新規分野開拓のところで、日本が一番だめなところのわけですから、大学が出した研究成果に価値があるんだ、その研究成果、グラント、国が出したお金でできた成果を事業化に持ってくるときには、成果というものに価値があるんだということを理解している人が事業プロモーターにならないといけないわけですね。その理解している人、成果を新たな価値へつなげていくということをやる人、そういう人物像というのがこの事業プロモーターだというふうに考えます。

【柘植主査】  井口委員、それから、前田委員。

【井口委員】  皆さんのご意見をお聞きして、もっとものようなご意見がいっぱいあるわけですけれども、2ページのところの「地域別投資状況」というところを見ていると、東京が俄然トップで、産業がある、あの中部地方でさえこのレベルのわけですね。
 それで、実は地域性というものの、さっき、古い地域性とか、いろいろお話が出ましたし、それぞれのシーズ等でうまくまとめていくというようなことがこれから非常に重要だというのは、私、北海道、東北にいると、非常に強く感じております。
 現在、JSTのプラザとサテライトにかなりコーディネーターがいるわけですけれども、来年3月でということもあって、続々と地域から中央にそういう方が戻りつつあるんですね。そうすると、何年かかかって、地域でかなりいろいろな点で、大学とか地域の中小企業との連携もあったり、知識も持っている人たちがまたまた中央に戻っていってしまうと。そうすると、地域はそういう人材でも疲弊していくということで。
 別にコーディネーターを事業プロモーターと比較するつもりは全くないんですけれども、すばらしい事業プロモーターを見つけ出すのももちろん重要なんですけれども、従来型のコーディネーターというような方も、若手も含めながらこの中に取り込んで育成していかないと、地域は非常に厳しいなと、そのように思っております。

【柘植主査】  それでは最後に、前田委員、お願いします。

【前田委員】  すばらしい構想だと思うんですが、この事業プロモーターは成功経験者とか起業経験者がなられるというふうに書いてあるんですけれども、民間とかで事業を経験したり、成功した人というのは、インセンティブというか、自分の出世に関係したり、確実に自分のお給料が増えたり、自分の組織が大きくなるというものがあって、背負って立って、リスクを負ってやっているんだと思うんですね。その経験でやってあげても、インセンティブが明確じゃないと、結局、コメンテーターになってしまうのかなというのがちょっと気になっています。
 私、JSTのプログラムオフィサーを7年やっているんですけれども、「こうであったほうがいいですよ」「ああであったほうがいいですよ」というのを大学さんにアドバイスさせていただいたりしているんですけれども、最終的責任は自分にないわけですよね。そうすると、絶対の権限でやらせられないですし、やはりコメンテーターでしかないというのをすごく感じています。
 この事業プロモーターというのも、やはり経験者というのは、自分の生活だったり、家族だったり、いろいろなものを背負っているからこそ、リスクを負って成功したんであって、最後、自分に何も返ってこない、例えば、最後、このベンチャーの社長さんになるんだというような形になるんであれば、すごく一生懸命やると思うんですけれども、雇われている期間、コメントしてくださいだと、やっぱりコメンテーターなのかなというような気がして、インセンティブがもっと明確にならないとだめなのかなというような気が、ちょっと民間の感覚になってしまうんですけれども、しています。

【柘植主査】  時間が過ぎてしまったんですが、今の話も、それから、先ほどの石川委員のおっしゃった、やっぱり大学の外の立場であると。土田委員から、今の全体の中で、この制度設計の中で、特に利益相反の排除を含めて、何かコメントいただけませんか。

【土田委員】  今、前田委員のお話にございましたけれども、最後のページに出ているアネロファーマというのは、産業革新機構が投資をしまして、ライブディールであるので、詳細はご遠慮させていただきますけれども、私が案件の主担当者です。
 1つあるのは、今、事業プロモーターのお話がすごくたくさん出てきているんですけれども、私どもが、ライフサイエンスの中でたくさん案件が来ている中において、今、投資しているのはこの1件だけでございます。事情はたくさんございますけれども、事業プロモーターも大事ですけれども、この中にいて、特に1ページ目にあります論点2の専門人材、いわゆる研究段階あるいは事業段階につなげる段階において、実際的にほんとうに橋渡しができて、ビジネス化あるいは次のほうに大きなお金が入ってくるような仕組みをつくる専門人材、これはいわゆる常勤の方だと思うんですけれども、やっぱりここの方のクオリティーも非常に大きいと思っております。
 アネロファーマのケースでいえば、そういった常勤の方々に大変すばらしい方がいらっしゃったというのも、もともとの持っている知財といいますか、シーズの力もありますけれども、やっぱりその力を2年から5年の間に大きく育てると、こういう専門家人材の部分と、事業プロモーターがきちんと議論されて、そこがやはりコインの裏表のような、先ほど羽鳥委員からもお話がございましたけれども、階層的な、やはり高い次元での、全国区あるいは世界、こういったものを見渡したアドバイスと、それから、常勤の人間がそのシーズを育て切るという、こういう責任感、こういったものが結びついていくと、こういったものがワークするんではないかと思っております。

【柘植主査】  ありがとうございます。時間がちょっと15分ほど食ってしまいまして、オーバーして、打ち切らざるを得ないんですが、それぞれの委員のご発言から見ますと、やはりこのコンセプトは、資料1-3で象徴されるように、アイデアとしての方向は価値があるけれども、詳細の制度設計、あるいは公募をしていったときに、公募するほうに対しても、しっかりとした仕様書といいますか、そういうものが見える化するまでに、今日のご発言のあったものを採用して、そして、見える化していくというのが相当まだ残っているなというのを1つにまとめます。ぜひこれは事務局のほうで今日のご意見をまとめながら、資料1-3がもう1つ、基本設計図になるぐらいのものに仕上げていっていただきたいと思います。
 まだたくさん意見がございますでしょうが、残念ながら、次の議題のほうに移らせていただきたいと思います。
 次の議題2でございまして、リサーチ・アドミニストレーターについてです。まず、本議題の具体的施策を議論するにあたり、高橋委員よりリサーチ・アドミニストレーターについてご説明いただきまして、その後、事務局から、これの育成・確保についての資料を説明いただきたいと思います。
 では、高橋委員、よろしくお願いいたします。

【高橋委員】  ありがとうございます。では、お手元の資料2を用いまして、ご説明させていただきます。本日聞いていただく委員の方々のおそらく半分くらいは、どこかでこの話を聞いてくださったり、既にコメントをいただいておりますので、今日の話題は、2ページ目ですけれども、私からは2点に柱を絞ってご説明いたます。
 1点目は、リサーチ・アドミニストレーターの概略の整理、主にその必要性、スキル、業務範囲ということで、こちらは皆さんそれぞれに土地勘がおありかと思うので、ごくピンポイントでまいります。
 今日のメーンは2点目です。今のプロモーターの議論も同じなんですけれども、今後、人材関係の施策について、事業はそれはそれで進むと思うんですが、その終了後にどういうふうにやってその職種を組織に定着させていくか、まさにそのための事業設計の部分を、私が見える範囲で、今日は検討の素材としてお見せしますので、ぜひその後のご議論をお願いしたいと思っております。
 では早速、1点目なんですけれども、リサーチ・アドミニストレーションとは何かということです。定義のところを簡単に読ませていただきますと、まず、所属は研究機関もしくは大学で、ミッションとしては、先ほどの石川先生のプロモーターに関するデフィニションがすごくわかりやすかったのでその順番でいきますと、大学に所属して、研究者とともに研究活動を組織として円滑に実施することをミッションとして、例えば業務としては、公募事業の研究者への提供、それから、申請書を一緒につくる。そして、もしいろいろな種類のお金がとれたところで、それをきちんと動かしていく。具体的には、予算管理や経理、報告書作成などが含まれております。
 特に最近重要度が増してきたものとして、まさに今の仕込みの部分、最初の上流のところで、どんな体制で、どんな人と、どんなお金を使って、研究プログラムを動かしていくかという、その企画の部分に、このような研究者ではない人間の知見が含まれることが重要であるということが指摘されていまして、こうした業務をアメリカでは専門職として、ユニバーシティ・リサーチ・アドミニストレーターと言っております。
 そして主にアメリカでは、サーティフィケートもあります。また、グラントの予算申請までを担う部分が前半部分、Pre-Awardと、採択後の実施を担う部分、Post-Awardと2つに大きく分かれます。
 日本ではこれらについてどういう指摘があるかというと、この二、三年の間に、政府の大きなところでも、その必要性がいろいろ指摘されているところです。その事例が赤い枠の中にありますけれども、これは割愛させていただきます。
 次の4ページ目、5ページは、何故必要か? というのを私の視点で2つにまとめております。まず、4ページ目は、今、大学が持っている機能を100%発揮するために必要だという視点。1点目はまず研究者が研究を進めていく中で周辺業務が多過ぎるのではないかと。なので、この部分はそのプロに任すことで、研究者が研究の質を高めるため研究者にしかできない検討に時間を使えるようになるだろうと、そういう観点からの必要性の指摘が1点目。
 2点目としては、国として研究開発予算が大きく投入されているわけですけれども、それを一番いい形で運営するためにも、研究者と一緒にこういう仕組みをやる人間が必要だということ。いずれも、今持っているポテンシャルを100%発揮するという観点です。
 5ページ目、次のページに行っていただきますと、さらに、今、大学を取り巻く周辺状況が大きく劇的に変化していると思います。そういう意味で、これから時代の要請にこたえて新しい機能を発揮するためにも、リサーチ・アドミニストレーターの必要性が言えるのではないかというのを3点にまとめました。
 1点目は、ここにもご経験者がいらっしゃると思いますが、大型の国プロ、それから、産業界が複数者一緒になって大学と組んでやる研究開発コンソなど、大型のプログラムを運営するときに、その体制整備をやる人間。
 それから、2点目ですけれども、振興調整費など、大学が新しい機能を発揮するために、教育事業なども含めて、大学として研究推進機能をきちんとセットするという観点からも、このプロ人材が必要じゃないかと。具体的には知財とか、コンプライアンスとか、プロジェクトマネジメント等も必要な背景になっていると思います。
 さらに3点目ですけれども、大学で研究を経験した人間が活躍する場がもっといろいろなところにあるのではないかと考えたときに、研究者自身ではなく、それを俯瞰する立場で一緒にやっていくという位置付けも一部の人間には楽しくチャレンジングな職種になり得るのではないかという観点です。
 次の2枚は、現在の大学にはどういう仕事が必要なのかということを、具体的にイメージしていただくための絵です。まず、6ページ目の、上のほうにある水色の矢印は、大学の先生という集団をみたとき、左側の若手の方から、右側の「スター」「カリスマ」といういわゆるアクティブな研究者まで、いろいろな方たちが大学の研究者として一群でいるということを示しています。
 この一群を組織としてどうサポートし、その人たちがより機能的に働いてもらえるようにするかということを考える時、組織として持つべきサービスというのは、その下ですけれども、2種類に分かれるのではないかと思います。
 まず、一番下は、いわゆるユニバーサルサービスとして、全ての研究者におしなべて必要なサービス。おそらく大学では、部署、組織名で既にきちんと確立されている機能です。
 その上は相手によって、カスタマイズされた機能。例えば若手の人であれば、申請書の種類自体もまだ知らないところから、スター、カリスマになると、先ほどのプロモーターの話でも同じだと思いますが、研究分野がライフ系なのか、材料系なのか、もしくは、半導体の制度設計と試作機をつくるなんていうような、研究展開に応じて異なる支援が必要になってきますということを示しています。
 7ページ目は今度は、お金の種類によってまとめてみました。左側は、四角で青、赤、オレンジというふうに並んでいますけれども、細かいところは割愛しますが、要は、研究費毎に事業趣旨が異なり、それぞれ求めているミッションが違う、いろいろなお金が今、大学に入ってきていますという話です。
 ブルーは、比較的、研究の内容のみで審査される、科研費に代表されるもの。これが研究内容重視とすると、赤は産学連携等の外部との連携体制を重視して、フォーメーションや知財の管理も含めて問われるお金。
 それから、オレンジは、例えば振興調整費の先端融合とか、世界最先端等に代表される、大型のいわゆるコンソーシアムをつくるようなもので、研究内容もさることながら、それ以外の体制設計とか、相手となる企業の役割分担も含めて問われるものだと思います。
 図の真ん中はそれを担当している部署を記しています。「Japan 日本の業務区分」と書いてあるブルーのラインですが、研究者とともに執行管理しているのは、研究協力部や経理部というような人たちと、その下、知財本部やTLOというような人たちが、資金の種類によってマネージを分担しているというのが現状かと思います。
 このような業務整理の中で、リサーチ・アドミニストレーターの必要性の指摘の根拠は、その右側のピンクの部分、アメリカにおける業務整理との対比の中で示されます。アメリカではまず、いろいろな種類の外部資金を、先ほど申し上げました、申請書をつくるまでのPre-Awardと、とった後、きちんと管理、運営するというPost-Awardのまず2種類に性格を分けて、それぞれのスタッフがついています。そして、赤い星がついておりますけれども、この最初の仕込みの部分――、いろいろな種類の金の情報をとってきて、それに適切なメンツを集めて、体制を組む。この部分が、大型研究開発コンソーシアム等がうまく運営されるためには、体制企画の時点で重要ということを2008年のアメリカでのリサーチ・アドミニストレーターの全国大会でも指摘されており、日本においてはまだ可視化されていない業務です、という整理です。
 次の2枚は、企業の方から見て、何故この機能が必要かを具体的にイメージを持って頂くために整理したものです。1件当たりの研究予算が非常に大きいものは、よくこのような体制で実施されることが多いと思いますけれども、まず、オレンジの丸がポンと目に飛び込んでくると思います。大学の複数の研究者、特に複数部局に所属していると、経費管理、予算番号が違ったりして、この中だけでもややこしい世界があります。
 それに加えて、企業毎の参加目的により成果の考え方の違いがあります。緑の参加企業は製造技術の基盤をやるので、「物の特許なんてあんまり要らない」なんて言ってみたり、ブルーの参加企業は、最終消費財をつくるので、物だったり、回路設計の部分の知財が重要だというように、企業によって主張が異なることも多々あります。このような複数のメンバーを集めて、数年間大きなお金を動かしていく。この業務が今の大学に求められています。
 さらに、昨今、大型研究開発プロジェクトの成果の展開方策として、オープンイノベーションに向かう中で、メンバー以外の企業にも展開していこうとか、時には海外企業も視野にベストパートナーを探していこうという発想もあります。それを実現するためには、どういうふうな決め事で、どういう期間、どういう人達が意思決定するかというような実行体制のコンセンサスが大きく問われます。この時、その体制設計の段階からリサーチ・アドミニストレーターが機能して、バランスのいい体制を作るというのが中心となる大学に求められる機能であり、参加企業にも大切なことになると思われます。このような事例で、少しイメージが具体的になったかと思います。
 めくっていただきまして、この機能を提供するために必要なスキルについてです。アメリカで2008、2009年に実務者の年次大会(NCURA)に参加した際、会長やプログラム委員等大会の中核的な人物とディスカッションしながら抽出したものです。
 上からいきますと、研究経験がある。会計の知識がある。契約・知財の知識がある。それから、コンプライアンスがわかって、交渉能力がある。等が必要なスキルです。このすべてを1人の人間がフルセットで備えることはなかなか難しいと思うんですが、まさに専門の得意な部分が異なる何人かのチームをつくって、Pre-AwardとPost-Awardでうまく回していくというのがアメリカの体制かと思います。
 では、日本ではどうするかが我々の議題になるのですが、今現在この機能が全く無いのかというととんでもなくて、このような仕事をしっかりやっている人たちが一部の研究現場には既に存在しています。例えば、赤字で書いてありますけれども、TLOだったり、知財本部のコーディネーター。また、雇用体系が大学によりまちまちですが、教育義務を持たない、産学連携専任の、大体は特任という形で処遇されていますが、そういう人達。また、研究協力課など従来からの事務組織に所属して先生から頼りにされる事務系職員、ERATOなどのプロジェクトの事業総括だったり、NEDOでもプロジェクトマネジャーの中にも実際にはこのような仕事を担っている方がいます。さらに、若手の研究者の中には、自分で実験をやるよりこういうことがすごく得意だったり、おもしろくこういう仕事がこなせる研究者もいることは、皆様、想像にかたくないかと思います。
 10ページ目です。日本版の普及・定着に向けてあるべき姿というのはどういうものだろうかということで、先ほど、必要性で挙げさせていただいた2本の柱をコアに整理いたしました。
 上の部分、大学が今持っている能力を100%発揮するためにという関連からは、マル1ですけれども、URAの配置によって、研究者の時間がより有効に使われる状態を実現することが重要というのが1つ目。2つ目としては、こういう人たちが配置されることによって、研究開発プロジェクトの計画時から組織的に配置されて、個々のプロジェクトが最適に運営される基盤ができるというのが2点目。この2点は今年度から実施されるURAの事業によって、実際に人が配置されることによって、個々の現場ではある程度解決されるのかなと思います。
 この委員会で中心にご議論いただきたい点は、その下です。当初3年間、5年間と、文科省の事業によって人員が配置されるわけですが、この機能を担った人たちが事業終了後に、きちんと組織に認められて、インセンティブがあって、モチベーションを上げてやっていくためにどうすればいいのかという課題が3、4、5です。
 まず1点目は、URAが一番相手とすることになる研究者から認められることが必要だろうということです。URAが存在するメリットが研究者に認知され、そして、個人的に知り合いで手伝ってもらうのではなくて、組織的に配置したほうが適切であると認識されていること。
 次に、マル4ですけれども、所属組織から認められること。必要な専門性のあるURAがどこにいて、配置可能なのかがわかるように、ネットワークされる団体があって、URAは所属組織から専門職として処遇されること。
 そして、次にマル5ですけれども、同業者同士で認め合うという環境をつくること。つまり、個々のURAが専門職として相互に啓発し、必要なスキル、知識を獲得し、専門性がそのネットワークの中で相互に評価される環境にある。このようなことが満足されないと、おそらく継続性のあるURAがあり得ないのではないかと思います。
 この課題をURA事業の設計実施体制を事業開始の今考えておくことが必要ではないかと思います。具体的には、事業が終了した後に必要なこととして2点あると思います。Aとして、優秀なURAを所属させることが、組織――大学と読みかえていただいても結構です。大学にとって明確にメリットとなること。2点目として、Bで、URA人材がモチベーションを高められるような国全体の仕組みをつくることです。特に指摘したいのは3番目で、怖いのは、このURAという概念が文科省事業が終わったときに消滅したり、さらにまずいのは、実質が伴わずに職名等の形式だけが残ること、これがおそらく一番避けなくてはいけないことだと思います。そのために今、ここで何を議論すべきかということが必要なのかと思います。
 このポイントは、95年以降今まで、産学連携関連人材に関連する施策が色々なされていますし、活躍されている方も個々の現場にはいらっしゃるものの、システムとして見たときには共通の対応が必要な課題ではないかと思います。特に処遇とキャリアパスという観点からは我々は考えなくてはいけないことかと思います。
 ということで、最後に、今の、あるべきというA、B、それから、避けなくてはいけないCにどう対応すべきかということを、具体例で思いつくところを書いてみました。
 まず、上のオレンジの四角ですが、組織としてのインセンティブを高め、URAの組織内での存在認識を向上させるために、URAの存在が組織にとってメリットとなるような仕組み作りです。例えば外部資金の適切な管理執行組織に対して、NEDOやJSTの研究予算をきちんと管理、運営、報告している大学に対し、その執行管理実績に比例して、翌年度以降、流用額等の予算の自由裁量幅を増加することはとてもわかりやすいメリットシステムだと思います。もしくは、競争的資金の審査項目に、組織としてURAをちゃんと機能する形で配置している等もあると思います。つまりは、国のシステム設計でこういう制度を促進することを考えてもいいのではないかと思います。
 2点目として、互学互習の環境を提供するというものです。専門職として、所属組織ではなく、個人をベースとした職能団体の組織化が必要かと思います。これは先ほどからご紹介しております、アメリカでNUCRA(ヌクラ)というふうに短縮しますけれども、これがいわゆる学会と同じで、大学の組織ベースの集合ではなくて、あくまでもプロの個人の集合として非常に長い歴史を持っておりますし、数万人の会員を持ってワークしています。
 日本においては、経産省、文科省の施策により、大学技術移転人材がいろいろな職名で配置されていますが、それを1つ束ねる例として、UNITT、大学技術移転協議会がワークしており、年に1回、実務者の協議会があります。既にあるそういう取組を支援し活性化することで、現在の所属組織に従属している業務としてではなくて、所属や組織が変わっても個人の資格でキャリア構築のためのプラットフォームが整備されることが大切だと思います。このようなプラットフォームによって、国全体としては人材の流動化になりすまし、URA経験のある人が後にプロモーターになるようなキャリアの幅が増す効果が期待できると思います。
 これにより、全体としては人的リソースを把握することができますし、同業者によって相互にモチベーションを高めるような場が結成されます。さらに、新たな人材獲得の場としても動くでしょう。将来的には、大学間だったり、独法やファンディングや省庁等も含めた人材循環システムが動くと思います。
 以上、申し上げたような仕組みがうまく回っていくことによって、13ページですが、先ほどのあるべき姿の後半部分のそれぞれが満足されるのではないかと思います。
 1個目の、人としてという話ですと、雇用されたURAが研究者や所属組織にメリットをもたらすという、組織におけるURA雇用のインセンティブが働くことがまず実現すると思います。
 また、2個目ですけれども、URAの専門性の発揮や認知度の向上によって、大学の執行陣が変わった時、個々のプロジェクト期間に限定されていた雇用が、より安定性のあるものになります。この時雇用財源はとても大切ですが、定員枠の充当は短期的には難しいかもしれませんが、例えば間接経費だとしても部局毎のものではなく全学の学長裁量経費等により安定財源による雇用が可能になると思います。所属組織に長く居続けることでノウハウや学内人的ネットワークが充実すれば、ますます存在感のあるURAが実現するのかと思います。
 それから最後に、URA同士の専門職ネットワークによって、継続的な人材育成の場が開け実際にこの業務に当たる人材が、意識高く働く場所ができるのかと思います。
 パワーポイントのご説明は以上ですけれども、最後に1点申し上げたいのは、先ほどのプロモーターの話も一緒ですが、思うに、人材関係の事業の精神というのは、制度設計の細部に宿るものだと思っています。雇用財源や間接経費の自由裁量幅の増加等、組織に対してURA導入のインセンティブになるようなものと合わせて設計することが重要と思いまして、あえて申し上げたいと思います。以上です。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 引き続きまして、事務局のほうから、リサーチ・アドミニストレーターの育成・確保について説明いただいた後、質疑をしてまいりたいと思います。お願いします。

【石田室長補佐】  事務局から、説明させていただきます。資料3をお手元にご用意いただけますでしょうか。タイトルに、「リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備」と記載しております。これは平成23年度、本年度からスタートさせていただいている事業の総称でございます。この内容を中心に、できるだけかいつまんで説明をさせていただこうと思います。
 必要性と概況の整理については、先ほど来、高橋先生に大変丁寧に解説いただいたこともありまして、私どもといたしましては、今回開始させていただいた事業の内容等から始めさせていただこうと思います。
 左上に、「リサーチ・アドミニストレーターとは」と書いてございますが、大学等において、研究者とともに、研究活動の企画・マネジメント・成果活用促進を行う人材群ととらえております。この事業の目的としては、右側に丸が3つございます。研究者の研究活動活性化のための環境整備とか、大学等の研究開発マネジメントの強化とか、さらには、科学技術人材のキャリアパスの多様化といったところを目的として据えております。こういったことを通じまして、あわせて、大学のシステム改革を図るものというのが私どものねらいでございます。
 事業の概要としては、その下のほうにマル1とマル2と書いてございますけれども、本年度から開始するものは、マル1、スキル標準の策定、研修・教育プログラムの整備といった、定着させる全国的なシステムを整備すること、これが1点でございます。マル2でございます。研究開発に知見のある人材を大学等がリサーチ・アドミニストレーターとして活用・育成することを支援、言いかえますと、配置支援と私どもは位置付けておりますけれども、人件費等を大学に支援することによって、具体的に今、大学の現場にリサーチ・アドミニストレーターの配置・活用を進めていただこうというのがマル2でございます。
 下のほうにブルーの箱が並んでおりますけれども、スキル標準の策定、研修・教育プログラムの整備がございますが、3番目にございます、システムの整備というのがいわゆる配置支援に当たるものでございます。
 若干補足しておきますけれども、ここで、補助金によって配置・活用を進めていただくと申し上げましたけれども、補助金が得られなければリサーチ・アドミニストレーターを配置できないということではなくて、独自に大学で配置されてもよろしいわけなんですけれども、これまでこういうシステムが必要と言われながら進んでこなかったということを私どもは考えておりまして、そういったものをシステム改革等を含めて進めていただくべく、一部分を配置支援という形で進めようというものでございます。
 2ページ目をご覧いただけますでしょうか。導入の必要性を整理しております。先ほど来の高橋先生の解説ともかなり重複します。具体的な業務としては、Pre-Award、Post-Awardというところでこういった業務等が考えられますし、さらに、必要とされる能力、スキルとしても、ここに掲げたようなものが考えられると考えているところです。
 3ページ目と4ページ目にございますのは、一点一点の紹介は省略いたしますが、近年、リサーチ・アドミニストレーターに関する各種提言等が各方面でございまして、いずれについても、大学の現場においてリサーチ・アドミニストレーター人材を配置していくことが非常に重要であるという趣旨でご提言等をいただいております。
 4ページ目にございますのが、イノベーション促進のための産学官連携基本戦略でございまして、昨年の本委員会でご議論いただいて、ご提言いただいたものでございます。その中で、リサーチ・アドミニストレーターの育成・確保を短期的・中期的に進めるべきであるとされているものでございます。
 かいつまんでご説明しますと、この内容の4行目あたりから、すぐれた人材をリサーチ・アドミニストレーターとして育成・確保する施策を具体化し、大学等が必要とするリサーチ・アドミニストレーターの育成・確保を支援することが必要であるということを国がやるべきだというようなところでご提言いただくとともに、さらに、下から5行ほどでございますけれども、あわせて、大学等においては、それぞれの大学等の事情に応じ、リサーチ・アドミニストレーターの処遇や受け入れ体制を整備するとともに、将来のキャリアパスを明示していくことが重要。
 さらにその下2行目ほどでございますが、大学等においては、リサーチ・アドミニストレーターによる研究マネジメント活動を適切に評価し、評価に応じた処遇の改善や能力開発の向上等を検討していくことも重要であるということをご提言いただいているところでございます。さらにその下段でございますが、総合科学技術会議による概算要求における優先度判定というものがございまして、ここにおいてもコメントをいただいております。最終的には、A評価という評価をいただいたことも受けまして、平成23年度から予算措置されたという経緯がございます。
 5ページ目でございます。リサーチ・アドミニストレーター導入の政策的効果でございます。これも先ほど来の解説とかなり重複するところがございます。簡単に申し上げますが、一番上の箱囲み、研究者の研究活動活性化のための環境整備という観点で、例えば、十分な研究時間の確保とか、最適な研究企画・実施体制の構築といった直接的な効果とともに、右側には、さらに期待される効果の例として、研究の質の向上・加速とか、若手研究者が活躍できる環境の整備、こういったものも効果として考えられるのではないかととらえております。その他、ほかにも2つほど箱囲みがございますが、省略させていただきます。
 次のページをご覧いただけますでしょうか。リサーチ・アドミニストレーターの導入イメージ、私どもの事業としての導入イメージでございます。丸が3つございます。1点目、大学における研究推進体制の高度化・効率化に向けた将来構想を踏まえ、リサーチ・アドミニストレーターに係る組織・体制を整備していただくとともに、2個目の丸、雇用に当たっては、教員・職員のみならず、いわゆる中間職等の第三の職種も活用いただくというような、なかなか大学に根付いてこなかったようなところも構想しているということ。さらに、3個目の丸、1行目に、リサーチ・アドミニストレーターに係る組織に配置された者は、その組織を中心にキャリアを積んでいただいて、最終的にはキャリアパスの構築も目指していただくということで、下段には、導入のイメージもかかせていただいておりますが、必ずしもこの形にしなくてもいいというものでございます。あくまでイメージでございます。
 7ページ目でございます。リサーチ・アドミニストレーター施策の当面の取組と将来像、これもイメージでございます。左側にございますのは、具体的に走り出したものもございます。先ほど来ご説明申し上げておりますように、事業としては大きく5つに分かれるわけでございます。スキル標準、研修・教育プログラム、リサーチ・アドミニストレーションシステムの整備、いわゆる配置支援、この3つについては、本年度からスタートしております。昨年度、この委員会でご提言いただいた中には、人材養成プログラムの開発とか全国ネットワークの構築、こういったものも必要であるとご提言いただいているところでございます。こういったことを並行して進めていくことによって、右側にございます、全国レベルで構築が必要と考えられる機能が醸成されていくんではないかと考えているところでございます。
 8ページ目は、これはあくまで参考でございます。これは先行して取組が進んでいる米国における職能団体の紹介でございます。既に先ほど来ご説明もありましたが、米国ではこういった人材が非常に厚く配置されていて、既に職能団体も機能しているということで、これらの団体の努力によって、リサーチ・アドミニストレーターの専門性も確立しているというような背景がございます。
 9ページ目に移っていただきたいんですけれども、これが今年度、予算措置いただいた中で進めている3事業の現状でございます。一番上にございますのは、スキル標準の策定に関するものでございまして、間もなく採択機関を決定させていただいて、委託事業に着手していただこうと考えているところでございます。
 2段目が、いわゆる配置支援でございまして、補助金で人件費等を交付し、大学に具体に配置・活用いただこうというものでございます。6月下旬に、本委員会とは別に、リサーチ・アドミニストレーターを育成・確保するシステムの整備をご審議いただく推進委員会を別途立ち上げております。こちらを開催いたしまして、審査の実施要領を決定いただきました。
 それを踏まえまして、7月上旬に公募を開始し、7月下旬、去る7月21日でございますけれども、事業の説明会を開催させていただきました。後ほど出てまいりますけれども、非常に限られた機関を対象とした公募であったんですけれども、関心が高くて、約100機関の申し込みがあったというような説明会となりました。
 この事業も、審査を経まして10月上旬ごろには採択機関を決定して、事業を開始していただきたいと考えているところでございます。
 10ページ目をご覧いただけますでしょうか。先ほど、非常に関心の高い公募となりましたということを若干触れましたけれども、いわゆる配置支援補助金の公募のダイジェストでございます。ポイントとして、どのような公募をさせていただいているのかというのをピックアップいたしました。今回、支援対象を5機関程度に限らせていただいており、さらに、補助金で雇用していただくリサーチ・アドミニストレーターを1機関当たり10人程度以上支援対象として応募してくださいということを申し上げさせていただいているところでございます。
 ここを若干補足させていただきますけれども、昨年この委員会でご提言をいただいたこと等も踏まえて概算要求をした際には、1機関あたり数名程度、30機関ぐらいを対象とする概算要求とさせていただいたのですが、概算要求後、総合科学技術会議の優先度判定とか、政策コンテストにおける意見等々も踏まえまして、最終的には重要性をご理解いただいて予算が認められたわけでございます。
 その際、この補助金というのは、やはり単なる人件費支援ではなくて、システム改革のための補助金であるということも踏まえまして、単に幅広い支援とするのではなく、選択と集中により、極めて効率的、効果的な支援とすることが求められたということを受けたということがありまして、対象機関としては限定的にし、対象となった機関におかれては、手厚く支援をするという形をとらせていただいている背景がございます。
 主な実施条件として、先ほど来、高橋先生からのご説明にもありましたように、補助金が終わったら、そのまま、リサーチ・アドミニストレーションシステムがどこに消えたのかわからないというようなことになってはいけませんので、例えば、主な実施条件の1つ目のポツ、大学等の中長期的な構想における研究推進体制の高度化・効率化に向けた将来構想を踏まえたURA組織体制の整備構想と、そのうち、補助事業によるURA組織体制の整備構想が整っていることとか、さらにずっと下のほうに移っていただきまして、下から3つ目のポツ、補助事業期間終了後も、大学等独自の経費によりURAに係る組織体制を維持していただくこと。さらにその次のポツ、本補助金による配置支援を受けるURAの雇用形態は、原則としていわゆる常勤雇用とすること。
 こういう難しい条件設定をして、それを承知の上で応募いただく機関だけを対象にするとともに、その他として、複数年度の補助事業期間終了後は、活用・育成を通じた研究推進体制の充実強化に関する効果・効用について追跡調査をさせていただくというのも要件化しているところでございます。繰り返しになりますが、単なる人件費補助で終わってしまうことのないように、いろいろな条件のハードルを上げているということがポイントでございます。
 最後になりましたけれども、11ページ目にございますのが、24年度以降に向けた主な論点として用意させていただいたものでございます。これに限らず、前広にご議論いただきたいところでございますけれども、とりわけ私どもとして特にご議論いただきたいとポイントとしては、23年度における本補助金による支援は、先ほど来申し上げているような、選択と集中の徹底が求められていることも踏まえて、支援対象機関を極めて限定的にするとともに、支援要望員数を10人程度以上とするという公募をさせていただきましたけれども、全国規模でのリサーチ・アドミニストレーターの定着を図るためにどのような方策が今後必要と考えられるか、例えますと、支援対象機関をどうすべきかとか、支援対象員数をどうすべきか、こういったところの考え方について、できますればご議論いただきたいこと。
 さらには2点目、「研究開発マネジメント人材プログラムの開発」等の取り進めについてということで、1個目の丸、今年度から、スキル標準の策定とか、研修・教育プログラムの整備に着手するということはご説明申し上げましたけれども、昨年度ご提言いただいた研究開発マネジメント人材プログラムの開発とか、全国ネットワークの構築というのは、7ページ目でも若干触れましたけれども、やっていくことが必要だというご提言をいただいております。こういった事業を効果的、効率的に実施するためにどのような方策が必要であるかということを、例えばこういった支援が必要だということも含めてご意見を賜れればと考えております。
 最後に、12ページ目にございますのは参考情報でございますけれども、先ほど、どれぐらいの機関を対象にしていくことが考えられるのかというようなご意見を賜れればと申し上げましたけれども、私どもとしては、研究開発を積極的に活発にやられている大学等においては、リサーチ・アドミニストレーターの配置がやはり進むべきであるという基本的な考え方に立っております。
 その中で、国費を投じて配置支援対象とするのはどういった機関が考えられるのかということで、1つには、私どものほうで情報をとっております、共同研究とか受託研究の受け入れ額の実績を掲げております。例えばこれらを合算して、研究費総額2億円以上を受け入れている機関数というのは106機関ございますし、科研費でございますけれども、これも例えば直接経費2億円以上を受け入れている機関数は111機関あるというようなデータがあります。
 着目していただきたいのは、こういった機関で受け入れているのは、総額のうちほとんどの金額はこういった機関で受け入れられて研究活動が行われているというのが実態でございます。こういったことも含めまして、いろいろとご議論を頂戴できればと考えているところでございます。
 説明は以上でございます。

【柘植主査】  ありがとうございます。今のお二方の、高橋委員のご説明、それから、資料3のご意見をいただきたいと思います。20分弱ぐらいを予定したいと思います。
 三木委員からどうぞ。

【三木委員】  高橋委員の資料の11ページの指摘、Cのところに「怖いのは」という形で出ておりますけれども、やはりここは今後この政策を進めていくための非常に大きなポイントになると思います。今回のURA、それから、以前から展開してきたコーディネーター、こういったものについて非常に大きな変化が今回起こっているという認識をまずしておかないといけないと思います。
 大学の法人化のころに、知的財産本部をつくっていくということで、知的財産ポリシーを各大学でつくっていた。それから、産連本部のこともありましたので、産学連携ポリシー。これはポリシーを定めることによって、その大学は、学長が変わろうとも、機関分掌をはっきりさせようということだったと思うんです。
 今回のURA、それから、従来のコーディネーターも含めた形で、ひょっとしたら、イノベーション創出力も含むのかもしれませんけれども、研究力強化ポリシーを私は各大学が定めていくことが重要だろうと思うんです。この段階では、当然、リサーチ・アドミニストレーション機能とかコーディネート機能も含めた形で、大学の研究力強化ポリシーを定めて、これによって、個々のいろいろなことはあるんですけれども、まず、高橋委員の言われた上位概念のところを各大学に押さえてもらうということが非常に大事ではないかと思っております。
 その中で、今後、先ほど、全国規模でURAの定着を図るためには何をするかと。やはりそういうポリシーは1年から1年半ぐらいかかるかもしれませんね。対象機関、それから、1機関当たりの支援というのは、そういう中でやはり状況を把握しながら、ここの部分を、どのくらいの期間それができるかというように、ほんとうに説得力ある形で構築していくのがいいのではないかと思っております。以上です。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 ほかに。どうぞ、羽鳥委員。

【羽鳥委員】  すみません、研究力強化ポリシーという、まさにそのとおり、三木先生のとおりだと思うんですけれども、そういった中で、若手研究者、これをいかに引き出して、そういった人に資金獲得のノウハウ、これは若手研究者はわからないわけで――わかる人もいるんですけれども、そうでない人が多い中で、そういった研究資金を若手研究者に、ちゃんとポテンシャルを持っている方に配分できるような、そういった仕組みがうまく機能すると、ポリシー的にいいのではないかと思いました。それによって、日本の優秀な研究者層の層を厚くし、広げるという、こういったことを実現していくのが、このURAの1つの大きな成果になっていけばいいなと思います。
 あとはもう1つ、どのくらいの人が1つの機関当たりにいたらいいのかというあたりでは、今回、10人ということがあって、だけど、それが終わったときに10人そのまま採用するというと、1つの大学ではかなり厳しいところがあるかもしれないので、例えば数人程度のものであれば、1つの大学でも終わったところでも雇っていけるかもしれないということを考えると、もうちょっと小規模のスタイルのものもあってもいいのかなと思います。まあ、今後のことでありますけど。以上です。

【柘植主査】  今のお二方のご発言と関連するんですけれども、既に各大学なり研究独法は、リサーチ・アドミニストレーターの機能が大事だということで、既にかなり工夫してやっておられるわけですね。それを三木委員がおっしゃったように、トップが変わってもちゃんとそれが続くための研究力強化ポリシーということで、そのようになりますと、ちゃんとしたオーソライズした名前も必要になってくるでしょうから、これがリサーチ・アドミニストレーターなのかもしれません。
 アプリオリに10名と、こういう話以前に、今まで相当それに努力している機関を見える化して、そして、URAの趣旨に沿って、それをさらに効率よくしたいんだと、そういうところをきちっと支えていくというのが正攻法ではないかなと感じておりますけれども、ほかの方、どうぞご発言お願い……、どうぞ。

【長我部委員】  今の委員長のお話に関連しまして、こういう機能は民間の研究開発組織というのは皆持っていて、戦略企画とか企画とか、いろいろな名前で呼ばれていると思います。トップは基本的には研究の経営にかなり強く結びついていて、事務的には研究者の研究とか資金獲得のサポートという点で、非常に幅広く研究母体の経営の質を上げるという組織だと思います。そういう意味でも、独法とか大学とか、個々にそういう動きがあって、それをさらに補強するというのは必然の流れですし、評価もそういうことを中心にするのかなと私も思います。
 それから、先ほどの資料にもありましたけれども、こういったアドミを置くことによる効果をぜひうまく可視化するような追跡調査の方法をよく仕込んでおくといいと思います。こういう話は、コストに対してパフォーマンスがどれだけ上がるかというところがやはり最終的なメジャーだと思います。
 例えば若手の獲得できるファンドが増えたとか、あるいはクオリティーなのか、いろいろなメジャーがあると思います。それは、大学が意図する目的に対して、アドミを置くことによって、それが達成できたかというようなメジャーであるべきで、大学ごとに違っていいと思います。効果の可視化によって、さらにアドミを置くことの大切さが理解されて、大学の構造がいろいろ変化していけるような、そういう評価の仕組みをうまく埋め込んでおくといいように思います。以上です。

【橋本委員】  よろしいですか。

【柘植主査】  橋本委員、それから、前田委員と渡部委員ですね。

【橋本委員】  我々の大学でもこの職種に類する仕事はもうやっているわけですね。それをどうやって見えるようにするかということがあります。大学の中の職種、教員と職員というのがあって、どちらなんだと。第三というのはなかなかうまくつくれないということがあって、同じ中でも、役割によっては教員に近い者、職員に近い者、あるいは仕事の内容によっては、研究推進に関連するところにいるんだけれども、研究規制課みたいなことになっていたりと、ある意味では非常に評判が悪いという、一生懸命やればやるほど評判が悪くなるというようなことがあったりということもある。
 また一方で、教員あるいは研究者プロモーションみたいな仕事にもなるわけですね。これをやって成果が上がったものをどうやって評価して褒めるかというか、インセンティブをつけるかということをまだ大学の中できちっとできていないということがあります。こういうプログラムを基点にして、そういうものをもう一度大学として考えてみたいと思っているわけです。
 大学の中のほかの職種でいいますと、例えば技術職員とか技官というのも、そういう意味で日陰で頑張らなくてはいけないということになっているわけです。研究では非常に役に立っているし、活躍しているんだけれども、なかなか世の中で光が当たらない。学内でも、光が当たるのは教員の研究者が中心になっていて、それを陰で支えている技術職員、非常にスキルのいい技術職員がいて成り立つ研究というのは非常にあるんですけれども、それがなかなか表に見えないし、職種として、大学の中にラインがきちっとできないというようなことがあります。リサーチ・アドミニストレーターにはもっと広いマネジメントも入っていますので、きちっとした確立された職種になるような努力をぜひやりたいと思っています。
 もう1つ思いますのは、医療関係でもやはり同じように、お医者さんを頂点にして、パラメディカルというか、いろいろな人が活躍しているわけです。ある意味ではお医者さんが王様になっているわけですけれども、それでも、それぞれの医療技術者が地位を保っているのは、資格を持っているからですね。資格を認定されてやっているわけです。ただ、URAに関しては、資格で縛るのは次善の策というか、いい方法ではない。そうではなくて、もう少し、それぞれがリスペクトできるような仕組みをつくる必要があるだろうと思います。
 最悪なのは、これはこんなことを言うとやぶ蛇になりますけれども、例えば研究費申請において、研究者がいること、それが力があることと、プラス、このアドミニストレーターがきちっといることというのが条件になってきたりというのは一番よくないことだと思うんですけれども、1つの考え方としてはあるかもしれない。あるいは、研究大学を認定するときに、設置の認可の要件として、こういうものがきちっとあるかというようなことも考えられるだろうと、そういうことを言っている人もいます。
 私は、そうならないようにするために、大学自身がどういうふうにこういう制度をきちっと持つかというところが今、試されているのだろうと思います。これはかなりしっかりやらないと、あんまりいいことにならない、しっかりやりたいと思います。

【柘植主査】  では、前田委員、それから、渡部委員ですね。

【前田委員】  大変細かいことなんですが、前回、リサーチ・アドミニストレーターの説明会に行ったときに、ここで雇用されたURAの方の退職金の引当金とか退職金に対してとかは、なかなか難しいというお話があったんですね。もしかしたら、ポスドクの方かもしれないですし、事務職員で、技術系とかを専門としていて、こういうようなお仕事をしたいと思って、かわりたいと思ってらっしゃる方がいるかもしれないんです。そうしたときに、これになろうと思ったら、一旦辞めて、退職金とか、公務員でいることができないという形になってしまうと、かえって弊害になってしまいかねないと思います。
 この予算では出せないにしても、できれば永続的に勤められるような職を推奨しますみたいな形を推していただくとか、やはり何か一工夫しないと、この予算をとるがために、一旦これに入ってもらうと、この期間、文科省さんで助成している間だけこれになってくださいというと、かえって期間雇用みたいなことになりかねなくなってしまったら、若い人にとってかえって不幸になってしまうなと思うんですね。
 ですから、永続的に雇用するような体制にある学校こそいいんだという、そこの一部が助成してあげられるような形をもし工夫していただけますと、むしろずっと勤められるようなふうに支援してあげられるような制度設計をしていただけますと、より皆さんがモチベーション高くお仕事ができるようになるのではないかなと思っています。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 渡部委員、先ほど、たしか。お願いします。

【渡部委員】  先ほどの高橋委員の説明の、もとのもくあみにならないようにということと、それから、文部科学省からの説明で、これは目的はシステム改革であるということで、先ほども文科省の資料の10ページのところで非常に強く強調されて、ともかく組織体制を維持することが条件です、追跡調査までしますと、ここまで言われているので、非常にハードルが高い状況で応募してくるだろうということで、それで結構だと思います。
 そういう状況であれば、これはシステム改革に直接つながる施策ということなので、ニーズがあれば拡大をしていくということも結構だと思いますが、この資料をちょっと見ていますと、例えば6ページのところなんですけれども、思い切って、ともかく第三の職種とか、臨時制度、専門職化も進めなさいと一方で言っているようにも見えるけれども、この導入のイメージの絵を見ると、教員、職員のみならず、中間職、第三の職種も活用とか、何となくここの絵は、先ほどの強調された部分と少しトーンが違うような感じがします。こちらのほうが大分前につくった資料なのかなという気もしますが、ちょっとそういう意味では、多分、本物はこの後ろのほうの説明だとぜひ理解したいと思います。
 そういう意味で、実はこれ、システム改革が目的であって、しかも、かつ、先ほど柘植委員長が言われたように、現在いないわけではない。いろいろな工夫をして、私のいる職場も外部資金が非常に多いので、間接経費を使って、特任教員のような形で、全くこの仕事を随分やっている人もいるわけです。そういう意味で、そういうところを後押しするということであれば、10人新規雇用とか10人の雇用というのはやっぱりちょっと大きいので、むしろもうちょっと小さくして、必要に応じて出すというふうな形を、継続されるのであれば、来年度以降はそういうことを考えていただいたほうがいいと思います。
 ただ、そういう話を先ほどちょっと森下委員としていまして、「いや、うちはそんな人はいない」と言われていますので、やっぱり大学によって相当事情が変わっているとは思います。なので、来年度の設計をする上では、私の理解だと、後押しする部分ということでよいのかなとは思っていますが、実態の調査を並行してやりながら、適切な設計をされるべきではないかと思います。以上です。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 そうしたら、永里委員、藤本委員、牧野委員でちょっと時間になりますので、お三方にお願いしたい。

【永里委員】  時間が押していますので、簡単に言いたいと思います。まず最初に、職種及び施策の重要性については同感でして、これを否定するものではございません。
 その中でちょっと心配事がありますので言いますと、例えば資料3の2ページの「リサーチ・アドミニストレーターとは」という定義のところで、「単に研究に係る行政手続きを行う意味ではなく」と書いてあります。これは極めて親切に書いていると思うんですが、別の言い方、うがった見方をすると、研究者の下にいるイメージがここで強調されているということになります。
 それから、2ページの一番下、「潜在的なリサーチ・アドミニストレーター人材」の最初に、ポスドクと書いてありますね。これはポスドク対策のための予算化なのかというふうにまたとれます。断っておきますが、私、最初の職種及び施策の重要性について否定しているのではないんですけれども、書きっぷりその他からそういう心配が出てきます。
 ですから、先ほど座長が言われましたけれども、成功しているところもあるはずでして、その成功事例をつくっていくことが非常に重要なのではなかろうかと。ほんとうにこの制度でいい人材が集まるんだろうかという心配をして思います。だから、リサーチ・アドミニストレーターを採用した大学はパフォーマンスが絶対向上するはずでして、それを今後トレースしていって、そういうところから生かしていくべきだろうと思います。
 それから、次年度の応募に当たっては、補助金が切れても、大学として金をつけて、しっかりとしたシステムを確立するというようなことをちゃんと念書みたいに書いているような、はっきりそういうことをうたっているようなところから採用すべきじゃなかろうかと思います。以上です。

【柘植主査】  じゃ、藤本委員、お願いします。

【藤本委員】  永里委員がおっしゃったことと私も全く同じことを申し上げようと思っていましたので、そこの部分は短くあれなんですけれども、やっぱりオーバーポスドク対策ではなくてとなると、例えば2回ポスドクの経験をすると、2回目には半分はURAの修行に入るとか、何回も任期付きを繰り返してというような人に、「しょうがない。もうこっちに行きなさい」というような状態になると、やっぱりメンタル的に、先生にずっと「研究こそ命」と言われていて、だめだから、僕はこっちというのでは、モチベーションはかなり厳しいのではないかと。
 それから、「でも、人がいないから、とりあえず君、やって」ということになると、その人に任せっ放しで、我流のマネジメントをされるのが一番よくないと思います。シニアのURAが少ないということが決定的に非常に厳しいとは思うんですけれども、先ほども、どうしてもアドバイザーになりがちというようなこともありましたけれども、その人に「全面的に君が責任を持って頑張るんだ」みたいなのではなくて、いろいろな知恵袋がその人たちの周りについて、徐々にシニアに育っていくような、東京だったら、ほんとうにそういう人材がたくさんいらっしゃると思うんですけれども、少ないところには、最初、やっぱりそういう担う人と、URAではないけれども、アドバイスがかなりできる人たちの知恵が必要かなと。
 それと、私はMOTのところで社会調査をしにずっと長く行っていたんですけれども、驚くほど理系の先生のところのMOTの院生というのは、理系の先生の発想の指標で、括弧つきの社会調査をされて、かなり誘導的にいろいろなデータを集めて、誘導的な結果になって、それで、周りの理系の先生方がそれに違和感を持たずに、社会的ニーズはこうだというふうに出てきて、それでいろいろな施策を提案されたりとか、いろいろなマネジメント提案をされたりしていたんですけれども、実際もう少しニュートラルな、ちゃんとした社会調査の方法を説明すると、全然違う結果になるというようなことがあります。
 そういう意味では、座学のMOTの方に、先ほどの事業プロモーターもそうなんですけれども、例えばM1からとか、Dからでもいいんですけれども、半分ぐらい実習でずっとシニアのそばについて、実際現場を見て、何が必要かということも含めて、適当につくったデータで施策を提案するとかいうようなトレーニングではなくて、半分実学として実習現場をたくさん踏んでいただくというようなことを義務化してもいいのではないかと思いました。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 そうしたら、最後ですが、牧野委員、よろしくお願いします。

【牧野委員】  すみません、時間がなさそうなので、簡単に申します。今、こういうリサーチ・アドミニストレーターを置くということは、現在の大学では、教員の力が0.5あるいは0.8とか、それぐらいのところまで抑え込まれているのが1に戻るということだろうと思います。高橋さんの図とかを見ていますと、2とか3にもっと総合的に力を持っていくということが書いてあるような気がするんですけれども、多分、そうでないと意味がないと。1に戻すのであれば、それは学内のいろいろなことでできるわけです。
 そのために大事なことは、やはり外国なんかでは、特にアメリカとかで行われているような会社のインターンシップ導入とかは、もう1980年代ぐらいからやられていると思いますが、あるいは、オープンイノベーションと言いながら、ほとんどこういうのはない、この国の実態、そういうところにも力が限定される要因があると思うんです。やはり大事なことは、そういうことをやることによって、1という力を2から3倍にどうやって持っていけるか考えないといけない。
 そのためには、このリサーチ・アドミニストレーターとかを5年で首とかいうのでは全く話にならんわけで、社会的地位、これの向上をどうやって図るかを考えなければいけないと思う。海外の場合には、そこのところがかなり強く担保されてきているというのが、我が国との大きな違いだと思います。
 私どもは京都大学ですが、中間職を設けております。珍しい大学かもしれないんですが、今のところ、まだ2人です。大学は今、予算的にも大変な時期を迎えていて、人間を増やすことはなかなか難しいだろうと。ですから、そこのところの解決策をどうやってやるかが1つ大事なテーマだと思います。そういうところが解決されないと、力を2倍、3倍にするのは難しいだろうと思いますし、また引き続き、検討の課題になるのではないかと思います。以上です。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 時間が参りました。まだまだあるし、また議論の機会もあると思いますが、今日の貴重なご意見も、第3の議題の24年度に措置すべき施策にも生かしていくということが大事だと思います。
 それでは、議題3に移ります。「平成24年度に措置すべき施策について」、事務局、お願いします。

【井上専門官】  それでは、事務局よりご説明申し上げます。資料4と資料5の別添をお手元に置いていただきまして、資料4をご覧いただけますでしょうか。
 項目といたしまして、平成24年度に措置すべき施策についての骨子案を挙げさせていただきました。今期ご議論いただきました2つの点ですが、本日の議題にも挙げさせていただいております、イノベーション・エコシステム拠点構想、リサーチ・アドミニストレーターについて、この2つを項目立てさせていただいております。こちらの2つの点を中心に、平成24年度に措置すべき施策についてまとめさせていただきたいと考えております。以上でございます。

【柘植主査】  何かご質問、ご意見ございますでしょうか。次回、この24年度に措置すべき施策は主議題になるわけですが、それに向けての宿題でもよろしいですが、何かコメントいただけますでしょうか。永里委員、どうぞ。

【永里委員】  先ほどもちょっと臭わせたんですけれども、この職種とか施策とか、そういうのは非常に重要で、これは認めているんですが、逆にここのところの予算が増えますと、ほかのところの予算を減らさないでいくと、どんどん肥大化していくわけです。牧野先生もおっしゃっていましたけれども、大学で一生懸命抑え込まれているのと同じようにやらないと、どんどん肥大化していくわけです。ですから、ここを拡大するということは、どこを減らしていくのかなと。その辺のこともちょっと念頭にないと、拡大する根拠が何なのかということを考えないといけないと思うんです。

【柘植主査】  ぜひというワンポイントのアドバイスがございましたら。
 よろしいでしょうか。次回、また議論できると思います。
 それでは、時間がまいりましたので、今後の予定について、事務局からお願いいたします。

【井上専門官】  今後のご予定についてですが、資料5の表紙をご覧いただけますでしょうか。第6回といたしまして、次回、3週間ちょっとになりますが、8月26日金曜日、「平成24年度に措置すべき施策について」をご審議いただきたいと考えております。その後、状況によりまして、9月以降に予備日を設けております。以上でございます。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 大変有意義な示唆をいただいたと思います。次回に向けて、事務局のほうでぜひ今日のコメントも生かしながら、それから、それを生かした結果の図面類なんかも、もうちょっとコンセプチャルから基本設計図になるぐらいの改良をしていただきたいと思います。
 それでは、本日の委員会を閉会いたします。大変ご苦労さまでございました。

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科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課大学技術移転推進室

(科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課大学技術移転推進室)