産業連携・地域支援部会 産学官連携推進委員会(第4回) 議事録

1.日時

平成23年7月8日(金曜日) 9時30分~11時30分

2.場所

文部科学省東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. イノベーション・エコシステムの推進方策について
  2. その他

4.出席者

委員

柘植主査、井口委員、石川委員、宇野委員、長我部委員、北澤委員、郷治委員、高橋委員、常本委員、永里委員、羽鳥委員、原井委員、藤本委員、前田委員、牧野委員、三木委員、南委員、森下委員、渡部委員

文部科学省

池田産業連携・地域支援課長、寺崎産業連携・地域支援課長補佐、寺坂地域研究交流官、石田大学技術移転推進室長補佐、井上大学技術移転推進室専門官 他

5.議事録

 【柘植主査】  おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから、産学官連携推進委員会(第4回)を開催いたしたいと思います。
 初めに、事務局から配付資料の確認をお願いします。

【石田室長補佐】  配付資料でございます。お手元の資料、一番上に議事次第を用意させていただいております。4ポツのところに配付資料の一覧がございますので、この順にご確認をお願いいたします。
 まず、資料1でございます。東日本大震災からの復旧・復興と産学官連携施策(提言)という資料でございます。続きまして、資料2でございます。イノベーション・エコシステムの推進方策についてという横長の資料、ホチキスどめ版の資料でございます。資料3‐1でございます。イノベーション・エコシステム拠点構想(ベンチャー等による事業化を通じた大学の技術移転の場合)を検討するに当たっての主な論点という資料でございます。資料3‐2でございます。イノベーション・エコシステム拠点構想(大学発ベンチャー創出を中心として)【たたき台】という資料でございます。資料3‐3でございます。イノベーション・エコシステム拠点構想関連資料でございます。続きまして、資料4でございます。産学官連携推進委員会の当面の予定という資料でございます。A4判縦でございます。
 そのほか、参考資料1といたしまして、科学技術・学術審議会産業連携・地域支援部会産学官連携推進委員会(第3回)「イノベーション・エコシステムの推進方策について」の議事の抜粋でございます。1枚物でございます。参考資料2でございます。イノベーション促進のための産学官連携基本戦略(抜粋)という資料でございます。
 そのほか、机上配付参考資料といたしまして、先生方のお手元にファイリングした参考資料、内訳としてはこちらに記載のとおりでございます。これを用意させていただいております。
 もう1点、机上に資料2の別添といたしまして、投資事業有限責任組合の現状と総括という1枚物の資料を一番下に置いておりますが、これは恐れ入りますが、委員の先生方に配付しておりますけれども、会議終了後回収させていただきますので、あらかじめお含みおきいただきたいと思います。以上でございます。落丁等がございましたら、事務局にお申し付けいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 議題1に入る前に、前回、東日本大震災からの復旧・復興と産学官連携施策(提言)について議論しまして、いただいた意見を踏まえまして修正点をまとめましたので、事務局から報告願います。

【石田室長補佐】  資料1でございます。手短にご紹介申し上げますけれども、前回ご議論いただいて、ご議論の内容を踏まえて、最終的には主査に修文の内容についてはご一任いただくということで、ご決定いただいたところでございます。重立ったところのみ紹介をさせていただこうと思いますので、ご了承いただきたいと思います。
 大きな点といたしましては、まず1ページ目、1ポツ、基本的考え方の3行目あたりに出てまいりますけれども、大学等における学長等のリーダーシップに関するご意見がございました。それを反映させる形で修文をさせていただいているところでございます。
 続きまして、2ページ目に移らせていただきます。2.取組方策の(2)の10行目あたりになりますけれども、被災地域のニーズは多岐にわたるものであり、コーディネート人材には、ネットワークを活用しつつ、学際的な課題や分野間連携にも対応できる能力が求められるといった、学際的な課題や分野間連携に関するご意見を取り込む形で修文を図らせていただているところでございます。
 さらには、3ページ目をごらんいただけますでしょうか。3ページ目に(4)が真ん中より下のあたりにございます。ここは、被災地域の研究者、技術者の確保・育成への貢献というタイトル内容でございますけれども、これは被災地域に限定されることではないということで、被災地域の大学のみならず、全国の大学に拡大していくというようなところが視点として必要であると。
 こういったご意見が出たところでございますので、その辺を含め、修文を図らせていただいたということで、最終的には柘植主査に調整いただいて、この内容で提言としておまとめいただいたところでございます。以上、ご報告申し上げます。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 補足でございますが、4ページに、これが前期の本委員会でまとめた基本戦略を参考文献にしているということ、それから、我々の親委員会でありますものが、資料1の別添という形で、科学技術・学術審議会の決定が書かれております。これを踏まえているということで、今のような修文の完成が見られたわけでございます。
 それでは、本日の議事に入りたいと思います。本日の議題1、イノベーション・エコシステム推進方策というふうに名前をつけました。今も引用しましたけれども、本委員会の前期体制のもとでまとめました、イノベーション・エコシステムの戦略を具体的な施策をして実現するために、特に来年度の平成24年度に取り組むべき方策について、前回での議論に引き続き、今回も継続して議論を行いたいと思います。
 まず、事務局から、前回の議論のまとめについて、説明をお願いいたします。

【池田課長】  それでは、ご説明させていただきます。参考資料1と2をごらんいただきたいと思います。参考資料1は、前回の議事のうちの主なものをまとめたものでございます。アンダーラインを引いてあるところは、本日の議題に直接関係すると思われるところでございますので、ポイントだけご説明させていただきます。
 まず、3つ目の意見で、一部に非常にいいベンチャーの芽が出ているので、そういうものを絶やさないように、後押しをすることも必要である。もう少しという部分は投資も必要だというご意見がございました。
 それから、2つ下の丸のところで、ギャップファンドの重要性も触れられております。
 その下の丸のところでアンダーラインを引いてあるところでございますが、実際に日本の企業が求めているものは、大学のシーズ期というところから、ビジネスエンジェルが入ったり、ベンチャーが入ったり、そのような資金で上がってきたものではないかというご意見もございました。
 それから、一番下の丸でございますが、アメリカのベンチャーキャピタルは、特許戦略から、資金から、何から何までサポートしてくれると。1枚めくっていただきまして、もっときめ細かなやり方をしないと、日本の産学連携の歯車が回りにくいのではないかというご意見もございました。
 その2つ下でございますが、ここは線は引いておりませんけれども、ベンチャーでお金には困っているけれども、お金だけ出せば何とかなるかというと、決定的に違うのではないかと。どうやってビジネス化に続けていくのかという視点が重要だというご意見もございました。
 その下2つでございますが、アメリカのベンチャーだけが世界的にうまく機能しているけれども、日本でそのまままねをしようとしても、ハードルが高いのではないか。もっと日本的なやり方があるのではないかというご意見。
 それから、その下の丸でございますが、どういうふうにシードをコーディネートするか、そういう視点の教育や訓練も必要ではないか。さらにはシステム、仕組みも現状ではないのではないかというご意見がございました。これが前回のご意見でございます。
 参考資料2をごらんいただきたいと思います。先ほど柘植座長からご説明もありました、昨年9月にこの委員会の前期の委員会でなされました、「イノベーション・エコシステムの確立に向けて」という提言でございますが、そのうち、関係部分の抜粋をしたものがこの資料でございます。
 1枚めくっていただいて、2ページに、イノベーション・エコシステムの具体的説明がございます。真ん中辺より下のあたりに書いてございますが、生態系システムのように、それぞれのプレーヤーが相互に関与して、イノベーション創出を加速するシステム(「イノベーション・エコシステム」)を構築していくことが重要と。そのための牽引エンジンの強化が必要であるということでご提言をいただいております。
 その次の3ページをごらんいただきますと、公的事業投資機関との連携といった具体的な重点施策が提言されてございます。公的事業投資機関(産業革新機構等)の持つ事業評価能力、投資能力を活用し、ベンチャー等に対する事業投資を推進することが不可欠ということで提言をされております。
 それから、一番下のほうのアンダーラインを引いてあるところでございますが、やはり、公的事業投資機関は事業化を見据えて大学等の研究開発に対して適切な助言等を行うとともに、ベンチャー等に対する事業投資を行う必要性ということが提言されております。
 これを踏まえまして、昨年度の概算要求でも、JSTと産業革新機構との連携を強く打ち出した要求をさせていただいておりまして、これは本年度予算に反映されておりますし、JSTと革新機構とで今、連携が着実にスタートしているところでございます。
 ただ、2ページ目に戻っていただきますと、2ページ目の下の図がございますが、これがイノベーション・エコシステムの全体像を簡単に図示したものでございます。大きく分けると、3つのポイントがあると思います。1のところで、産学官による「知」の循環システムの確立。2のところで、大学の産学官連携機能の強化がございます。それから、3で人材育成がございます。
 1と2の間のところに、右側でございますが、出口に近い、市場に近いところで、公的事業投資機関による連携ということで、具体的には、今申し上げたような、産業革新機構とJSTとの連携を中心にして、実用化研究支援の強化とか、あるいは特許戦略ということでは連携が進みつつございます。これは実は出口に近いフェーズのところでございまして、シーズ側のところ、真ん中のピンクの公的事業投資機関の左側の、シーズに近いフェーズというのは、今、政策的には穴があいていると。ここを何とかしていこうということが今の課題であると考えております。説明は以上でございます。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 本日の議論をさらに深めるために、郷治委員より、大学発ベンチャーの実情・課題についてご説明をいただきまして、その後で議論を深めたいと思います。郷治委員、よろしくお願いします。

【郷治委員】  よろしくお願いします。来年度以降の実際の施策に少しでも参考になれば幸いですけれども、私どもがほぼ7年前から東京大学にて行っておりますベンチャー投資活動についてご紹介させていただければと思います。まだ不十分な点とか課題等も幾つかございますので、もしそういう点があれば、ぜひご議論いただいて、施策のほうにも反映いただければと思っております。
 まず弊社の紹介になります。1ページ目ですが、設立は2004年4月ということで、ちょうど国立大学の法人化のタイミングでございます。弊社の設立の検討は、その以前から、東京大学において、こちらにも委員でいらっしゃる石川正俊教授を中心に行われておりまして、産学連携のあり方の中では、大企業との連携以外にも、知的財産を活用して新しい会社をつくっていくという方法もあるのではないかという議論の中でできた構想に基づいて設立された会社でございます。
 私自身はもともと通産省のほうにおりまして、ベンチャー施策とかベンチャーキャピタルファンドの政策をつくっておったんですけれども、たまたま2003年の秋ごろに石川先生とお会いする機会がありまして、この会社の設立を契機に役所をやめまして、UTECのほうに参画したという次第でございます。
 ベンチャーキャピタルの投資をするためにファンドを2つ運用しております。1つはUTEC1号というものでございます。これは弊社ができた年に設立をしたものでございまして、約80億円強の規模でございます。もう1つ、UTEC2号という新しいファンドが一昨年から立ち上がりました。昨年に設立を完了いたしておりまして、今、新しい投資をこちらのほうで行っているという状況であります。
 2ページが、大学の産学連携組織との関係の図になります。東京大学には15の研究科、11の研究所、17のセンターがございます。全学横断的に産学連携を担当する本部として、産学連携本部が2004年4月に立ち上がりまして、こちらと密接な連携をとって、投資活動を行っております。例えば右のほうに知的財産部がございますけれども、こちらは東京大学の特許を一元管理しております。年間ほぼ600件程度の発明が上がっておりますけれども、こちらの中で、研究者の方が事業化に関心がある場合には、ディスクロージャーを弊社のほうにいただいて、その発明の段階から研究者の方と事業化の構想を練るといった活動を行っております。
 事業化推進部というところは、ベンチャー支援とか、起業家教育を担当しております。あと、ベンチャー支援をするインキュベーション施設、そちらのほうの管理を行っておりまして、そことの連携も密にとっております。
 知財部のもとに、これも株式会社なんですけれども、東大TLOがございまして、こちらは、知財のマーケティングとか、企業へのライセンシングを行っています。定期的にミーティング等の連携を行っておりまして、学内の事業化の可能性がある有望な技術についての情報交換等を行っております。
 3ページに参ります。私どもの投資を大きく4つのグループに分けますと、一番最初にあるのは、典型的な大学発ベンチャーと申しますか、知財をベースにした起業をされた会社への投資がございます。それ以外にも、幅広く、人材面とか、共同研究面とか、そのほか、相乗効果といいますか、シナジーの観点からも投資を行っています。
 例えば2番目であれば、在学生とか卒業生が研究成果を使って、あるいは学んだことを発展させて起業するような場合、こういったところにも投資を行っております。あとは、3つ目のところに出ていますけれども、東大と共同開発をして新商品をつくるとか、あるいは、東大の先生が顧問等で知的な貢献を行って、事業化に関与しているような場合とか、そういう投資先もございます。4番目、これはかなり外縁が緩やかになるんですけれども、東大と共同研究する可能性があるとか、あるいは例えば東大病院が使う可能性があるような医療機器をつくっている会社とか、そういったところにも投資を行っております。
 4ページが、基本的な私どもの投資の考え方です。多分、通常のベンチャーキャピタルとかなり違う点は、会社が起きる前を含めて、非常に早い段階から、案件の発掘とか、場合によっては、まだ案件とも言えないような段階から、議論をしながら投資をつくっていく、投資活動をクリエートしていくといったところかなと思っております。
 左下の図でいいますと、「創業投資」と書いてありますけれども、種、いわゆるシード、あと、アーリー段階から投資を行っていく。
 あとは、「技術の組み合わせ」と書いてありますが、これはもちろん最初のアイデアをオリジネートする先生の技術を中心として会社をつくっていくわけなんですが、必ずしも単独の先生の研究室、技術だけでなくて、関連する大学の技術、これは大学の壁を超えて、ほかの大学も含めて組み合わせていったりとか、場合によっては、関連する企業の知財も組み合わせていくとか、そういったことも行ってまいります。
 「投資タイミングの見極めとコントロール」と書いてあるのはどういうことかといいますと、案件として私どもが認知しても、直ちにすぐ投資すればいいというわけじゃなくて、やはり公的な支援をいただきながら、公的なサポートのもとで磨いていったほうがいい、ブラッシュアップしていったほうがいいものについては、そういったことでちゃんとやっていく。やっぱり私どもの資金はファンドでありますし、民間資金、機関投資家の資金が中心でございますので、ちゃんと投資収益を上げていかなければいけないので、そういったエクイティを入れるタイミングにふさわしいときまではやはり待つべきものもあるわけです。そういったことはちゃんと認識して、待つべきは待って、拙速を避けるといったことをやっております。
 実際、投資をした後はどうかといいますと、資金を当然出すわけなんですけれども、その後に、「人的な資本としても貢献」と書いていますが、いろいろな人的な貢献、そういったお手伝いもしていきます。
 リスクのコントロールといっても、いろいろなリスクがございます。テクノロジーリスクと言われるような、技術が不十分ということだけではなくて、当然、知財が全部必要なものがそろっていなくて、実は実用化のために必要な知財がほかのところにあって、それが侵害関係になってしまっているとか、そういったリスクもございます。
 あとは、資金が続かないと。これは一番典型例なんですが、ファイナンスリスクと私どもは呼んでいますが、会社が資金繰りに窮して倒産してしまわないように、早目早目に資金の手当てをしていくといったことも行います。
 当然、企業は人の集合体ですので、いろいろな人的な内部的なフリクションが起こったりすることもございます。インセンティブの付与とか、そういったこともございます。当然のことながら、チームをきちんとつくっていかなければいけないということで、人材の紹介等もございます。営業先の紹介等もございますし、さまざまもろもろご協力をしていくということです。
 あとは、これはファイナンスリスクにも関係しますけれども、追加投資がやはり非常に大事です。大学発ベンチャーの場合は、最初から利益が出るというのはまずありませんので、場合によっては3年から5年ずっと赤字、もっと長い場合もあります。そういうときに、まだ赤字だからお金を出せないということでは事業がとまってしまいますので、売り上げとか利益以外の進展をちゃんと認めてあげて、マイルストーンとしてちゃんと評価をした上で投資をしていくといったことが大事かなと思っております。
 私どもはどうしても民間資金でやっておりますので、いずれは株式を売却しなければいけないということです。一番いいケースですと、株式公開、あるいは場合によっては大企業にM&Aという形で買っていただくわけなんですが、そういったところも積極的にかかわっていくということをしております。こういった活動を通じて、骨太な技術を日本からきちんと出して、世界の市場をとっていくといったことに力を尽くしたいと思っております。
 次の5ページが、ベンチャーの設立前からの活動というのはどういうものがあるのかということで、やはり基礎研究の段階と会社ができるまでに非常にギャップがありますよということを申し述べております。最初の基礎研究の段階では、これは当然、大学での研究活動ですので、直ちにビジネスという話ではございませんし、それぞれビジネスを目的にして研究されているわけではないので、当然ギャップがあるわけなんですが、物によっては、事業化に関心があるというような技術を先生から相談いただくことがあります。発明届の開示というものです。
 先ほどもお話ししましたけれども、そういう場合には、私どもが相談に乗って、起業の可能性についてお話をする。もしステップ2に進んで、先生が起業の決断をされるような場合には、私どももいろいろと企業理念とか事業戦略のご相談に乗りまして、さらに進めば、Proof of Conceptといいまして、商品とかサービスのコンセプトをつくるお手伝いをいたします。それから、実際に事業計画、ビジネスプラン、売り上げ、利益をどういうふうに見るのかとか、コストをどういうふうに見るのかといったことを議論いたしまして、あとは、人を集め、ステップ5ですけれども、チームビルディングのいろいろなご議論をしまして、ようやく会社の設立に至っていくということです。
 実際に発明の情報をいただいても、直ちに設立に行くわけではございませんし、投資に行くにも時間がかかりますので、ファーストコンタクトから、場合によっては1年以上、2年、3年以上ということもざらにございます。
 あとは、こういったギャップを埋めるために行っているプログラムとしまして、サーチとEIRをご紹介しております。サーチというのは、大学院生などを、場合によってはポスドクの方もいますけれども、私どものインターンとして採用しまして、いろいろ技術分野を調査してもらって、事業計画をつくってもらうということをやっております。今年も50人ぐらいの大学院生の申し込みがありまして、そのうち、多分3割ぐらいを採用するかなと思いますけれども、こういった活動をしております。
 EIRというのは、Entrepreneur in Residenceという、日本語でいえば、住み込み起業家というようなプログラムです。まだ会社ができる前から、ちゃんと部屋を貸し与えるとか、試作品の資金を出してあげるとか、場合によっては人件費も出してあげるとか、そういったギャップファンド的なことをしておりまして、中には、これを通じて会社になったというものも幾つか出てきております。
 6ページが、UTEC1号という1つ目のファンドの投資先の分類です。こちらのほうは既に投資は基本的には終わっておりまして、34社に投資をしております。追加投資は今後も行い得るんですけれども、新規投資についてはもう終わっております。分野ごとに見てみますと、バイオテクノロジーが一番多いんですが、さまざまな技術分野をカバーする、いわゆるテクノロジーベンチャーへの投資が中心となっております。
 あと、リード投資、フォロー投資という分類が右のほうに出ております。このリード投資というのは、先ほど私が説明した基本的な投資戦略にのっとって、いわゆるハンズオンでかなりかかわって、経営とか、いろいろお手伝いをするというタイプの投資なんですが、それの件数を今、増やしてきております。金額的にも、そちらの投資を増やしてきているというところになります。
 そういった中から、幾つか成功事例もようやく出始めてきております。2つ事例をご紹介しておりますが、7ページの事例は、テラという会社になります。医科学研究所の細胞プロセッシング部門の研究員だった方が、矢崎さんというんですけれども、2004年に創業したベンチャーになります。
 こちらは、細胞培養技術を使いまして、樹状細胞と呼ばれる人間の免疫細胞を体から取り出しまして、それを培養して、そちらのほうに、自分自身のがんをすりつぶしたものとか、あるいはがんのペプチドと言われるものを与えまして、樹状細胞に自分のがんを攻撃するような機能を付与しまして、その上で樹状細胞を体に戻して、免疫力を強化する。それによって、がんを治療したり、予防するといった技術でございます。
 これをどういうふうに事業化するかということで当初から議論をしておったわけなんですが、私どもからご提案したのは、臨床研究とか臨床試験という形ではなくて、自由診療を行うクリニック、医療機関と連携した上でライセンスするビジネスモデルをやろうと。さっきもファイナンスリスクという話をいたしましたけれども、非常に資金がかかって、途中で息絶えてしまうということを避けるためにも、当然、合法的な、倫理的にも問題がない範囲内で、こういったビジネスをなるべく資金を使わずに事業化しようということで、ビジネスモデルを構築いたしました。
 2005年1月に5,000万円の初回投資を行いまして、これを最初の元手にして、クリニック展開をしていった。そういった中で、ようやく2007年から単年度黒字になりました。そこでまた増資も行いまして、売り上げと利益もだんだん伸びまして、2008年12月に上場申請をして、2009年3月にJASDAQに上場いたしまして、1つ目の私どもの投資の成功事例となったというものでございます。
 こちらも元は東大の医科研の技術なんですけれども、阪大の技術とか、金沢大学の技術とか、さまざまな技術を、事業化のために役立つのであれば、どんどん集約していって、それを全国の医療機関に提供するということを進めてまいったわけでございます。
 次の8ページです。これは分野は全然変わりますけれども、モルフォという会社になります。ちょうど今月21日に上場する予定です。こちらは学生発といいますか、卒業生発のベンチャーになります。コンピューターサイエンスを専攻していた平賀さんという方が、2004年に創業したベンチャーになります。
 デジタル画像処理技術を扱っておりまして、皆さんの一番なじみがあるものでいいますと、多分、携帯電話のカメラで写真を撮られたことは皆さんあると思うんですが、手がぶれると画像がぼやけてしまうんですね。それを補正する、手ぶれ補正技術というものをこの会社が提供しておりまして、国内ではほぼデファクトになっております。これが2006年から採用されまして、そこからだんだん横展開をして、普及いたしまして、黒字化に至っていったと。手ぶれ補正のほかに、例えばパノラマ写真を撮れるような技術とか、顔を認識する技術とか、QRコードとか、名刺の文字を認識するような技術とか、あるいは携帯電話でテレビを見るときのワンセグ放送の画像を滑らかに映す技術とか、さまざまなものがあるんですけれども、提供しております。
 元は、2004年5月に5,000万円の、シードマネーと言っておりますが、種銭、これを私どものほうから提供しまして、産学連携プラザという、事業化推進部が管轄しておりますインキュベーションルームで私どもインキュベートを開始いたしました。最初の2年間は赤字だったわけですが、このときは映像制作の受託をしておりまして、こういうビジネスですとやっぱりなかなか伸びないなと。
 転機が来たのは、2006年に携帯電話のカメラ、当時ちょうど携帯電話にカメラがつき始めたころだったんですけれども、なかなかコストの安い手ぶれ補正技術がなくて、そういった中で、メカニカルな方法でない、ソフトウエア的な解決で手ぶれ補正ができる当社の技術が注目された。それから、どんどん普及していったということでございます。
 今に至るまでには、NTTドコモさんの資本参加もいただきましたし、あとは、ノキアさん、こちらのほうからも資本参加をいただいております。あとは、事業の飛躍に非常に役立ったのは、やはり人材面の強化、役員の強化でございまして、2007年とか2008年には、業界経験者の方を実際に引っ張ってきて、担当の役員になっていただくと。そういった中で売り上げも伸びて、ようやく上場に至ったということでございます。
 別紙でお配りしている資料がございますけれども、この34社の投資のうち、エグジットを決定済みというのは、これは上場なり、M&Aなり、その他の形で私どもの株式譲渡が決まっているもの、あと、決まっていないものと分かれております。今のところ、上場済みが4社と、今月上場予定のものが3社と、合計7社が上場が決まっているという状況でございます。まだエグジットが決まっていないものについても、成功可能性があるものについては今、注力をしておりまして、より成功事例を増やしていきたいと頑張っている次第でございます。
 11ページは、今度はUTEC2号という新しいファンドになります。昨年の6月に設立を完了した、約80億弱のファンドでございます。こちらは7社に投資をしております。1号と違って、こちらは100%リード投資、シード、アーリーからの投資のみを行うということでやっております。
 理由は、そのほうがビジネスの面で見ても、リターンが高い。あと、成功確率が高いと考えているからでございます。当然、普通の投資の考え方ですと、シードだとリスクが高いんじゃないか、レイターでやったほうが、ビジネスもあるし、人もいるんだから、成功確率が高いんじゃないかというのはわかってはいます。ただ、実際の投資の経験を通じて、途中から入ってもなかなかリスクのコントロールもできないですし、やはり最初から一緒に創業するような形で、起業家、研究者の方と汗を流したほうが、いろいろな意味で事業もわかるし、信頼関係もできるし、長い目で見ると、リスクを低減することができると考えておりまして、それを徹底してファンドレイズをしたという次第でございます。
 投資先の例が幾つか出ておりますけれども、この中でも特に今、復興需要もあるという状況ですので、スマートソーラーという太陽電池の会社をご紹介したいと思っております。12ページ以降、スライドをつけさせていただいております。こちらは、東北大学、東京大学等の大学の連携の中から出てきたベンチャーでございます。創業者の方が、もともとシャープにいらした方で、太陽電池事業の統括していた富田さんという方なんですけれども、この方を中心に、さまざまな大学のオープンイノベーションを行いましております。あと、JST様の施設も、仙台にある施設も使わせていただいております。
 東北地方には震災の前から進出をしておりまして、半導体産業を中心とする産業構造から太陽光発電の構造に変えていこうという流れに貢献をしてきたという次第であります。今年の2月から宮城県大崎市のほうの工場を借りまして、実際に現地の方も雇用しまして、量産の準備を進めてきたというものでございます。
 技術の特徴といいますか、製品の特徴ですが、13ページです。通常の太陽電池パネルですと、フラットなものですので、太陽の出ている位置にかかわらず、一定のパネルの位置にあるということなんですけれども、こちらの太陽電池は追尾する。太陽が出ている位置に応じて、それを追いかけるということで、日の出とか日の入りといった時間であっても、かなり効率よく発電ができる。下の図は、Roof Topという赤のグラフは、これはパネル型の太陽電池ですけれども、スマートソーラー社の場合には、朝も日の入りのときもかなり効率よく発電ができるということをあらわしております。
 こういった商品をいよいよ量産していこうということで、ちょうど資金調達も今、行っています。こういった復興事業にミートすべく量産を開始して、復興に向けた緊急性の高い電源として活用できないか、避難所に使えないか、地方自治体の庁舎等に使えないかといったことで今、活動をしている次第でございます。
 将来的には、「東北版マスダール構想」と書いていますけれども、このマスダールというのは、アラブ首長国連邦のほうで実際に試みておりますエコシティ構想です。実際にアブダビのお金とかイギリスのお金を使って、ゼロエミッションといって、CO2を出さないようなまちづくりをしているわけなんですが、そういったことを東北の復興の中で当社が貢献できないかといったことを考えております。以上でございます。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 引き続きまして、事務局より、イノベーション・エコシステム拠点構想について、説明をいただきたいと思います。

【寺崎課長補佐】  では、事務局より、資料3‐1、3‐2、3‐3を用いまして、イノベーション・エコシステム拠点構想に関する説明をさせていただきます。前回のご議論等も踏まえまして、事務局といたしましては、イノベーション・エコシステムの確立に当たっては、大学発ベンチャー等による技術移転を考える際に、大学発ベンチャーの立ち上げ前段階から、研究開発だけではなくて、市場を見据えた事業の育成を同時に行うことが不可欠であるとの仮説のもとで、今回、事務局において、イノベーション・エコシステム拠点構想なるたたき台を提案させていただいております。
 この拠点構想におきましては、資料3‐1、主な論点のところの総論でも書かせていただいておりますが、ベンチャー立ち上げ前段階において、有望なシーズに対しまして、事業化に必要な研究開発だけではなくて、事業化に必要な人材を大学等に結集させて、市場や出口を見据えた事業化を目指していくというもので、そのようなコンセプトに基づいてございます。
 具体的なイメージについては、資料3‐2でございます。資料3‐2の概略を申し上げますと、ポイントといたしましては、起業に必要な知見を持つ、産業界の人材、例えば製薬会社の方とか、もしくは知財の専門家を大学に結集し、事業化を目指す構想でございます。
 第1段階といたしまして、シーズの発掘、育成に重要な役割を担う事業プロモーターを置きたいと考えてございます。この事業プロモーターというのは、公募により人選を行いまして、プロモーターが事業に入り込んで事業をコーディネートする構想でございます。さらに、この構想におきましては、研究支援を行うだけでなく、事業化構想の段階から、チームアップにより事業戦略、知財戦略を構築するなど、グラントによる研究開発支援とともに、チームによる事業育成を同時に行うというコンセプトでございます。
 資料が戻りますが、論点については、資料3‐1にまとめさせていただいておりますので、そちらで説明させていただきます。先ほども申し上げましたとおり、総論といたしましては、起業前段階から、政府資金と民間の事業化ノウハウを組み合わせて、市場や出口を見据えた事業化を目指す日本版イノベーションシステムができないかというように考えてございます。
 その具体的な論点として、今回、大きく6つ挙げさせていただきました。もちろんこれ以外にもあるかと思いますので、本日ご議論いただければと思ってございます。まず論点の1つ目でございますが、今までのシーズプッシュだけではなくて、市場を意識したニーズに対応したベンチャーを育成していくには、ベンチャーの立ち上げ前段階から市場を見据えた事業化構想、知財戦略が必要ではないかというものでございます。
 この関連の資料につきましては、資料3‐3についてございますので、資料3‐3をごらんください。まず、資料3‐3の1ページ目でございます。これは前回も説明させていただきました、大学発ベンチャーの設立累計の推移でございます。
 2ページ目でございますが、左側のグラフ、大学発ベンチャーの起業段階における準備状況でございます。こちら、左のグラフを見ますと、例えば赤線で引いてございますが、技術の知財戦略の検討、製品化される製品の競合他社との優位性の検討、想定される市場特性の把握などという項目につきましては、大学発ベンチャーの起業段階における準備としては行っているということが見てとれます。
 しかしながら、右側のグラフ、大学等発ベンチャーの抱える課題の、一番最初の大きな課題として、販路・市場の開拓、収益確保が挙げられてございます。つまり、大学発ベンチャーの起業段階においては、知財戦略とか他社との優位性の検討を行っているにもかかわらず、一方で、ベンチャーが立ち上がって実際に事業を行っていく中で、販路・市場の開拓とか収益確保が一番の問題に挙げられているという現状がございます。
 この背景を分析するに当たって、関連するデータを挙げさせていただいているのが次のページでございます。3ページ目の左側でございますが、大学発ベンチャーの起業段階における活用機関。これは大学が圧倒的に多くて、約54%を占めてございます。一方で、ベンチャーキャピタルとか、金融機関とか、コンサルタント、いわゆるハンズオンを行うような機関の関与は1割から2割弱で活用機関が少なくて、こうした状況が起業前の準備内容に影響を及ぼしていることは推測されます。
 また、例として、右側に、ベンチャーキャピタルによる創業早期における各種支援の有効性評価という資料でございます。こちらについても、青の線グラフというのが、ベンチャーの側から見て、ベンチャーキャピタルの支援で有効であったと考えているものでございます。ポイントの高いものといたしましては、例えばビジネスプランの助言とか、マーケティングプランへの助言、顧客候補先の紹介、業務提携先の紹介などがございます。先ほどの資料との関連といたしましては、例えば先ほどの資料の中では、販路・市場の開拓とか収益確保の課題が挙げられておりましたが、例えばベンチャーキャピタルの行っている支援というのは、そういうものに関連した支援で評価が得られているということが言えるかと思います。
 さらに次のページ、4ページ目でございます。では、大学発ベンチャーが、起業前の資金調達とか、起業段階の資金調達でどういう機関を利用しているかというものでございます。
 左側のグラフが、起業前の資金調達方法でございます。一番大きいのが国・地方自治体の補助金でございます。それで、スリーエフ――自己資金とか、家族とか、親しい友人からの資金調達。また、基礎研究段階のケースもございますので、科研費なども資金調達先となってございます。
 一方で、先ほどの、左側は起業前ですが、右側のデータは起業段階の資金調達方法でございます。ここにおきましても、自己資金が大部分を占めておりまして、例えば政府系金融機関とか、エンジェルとか、ベンチャーキャピタルのように、いわゆるハンズオンや経営支援を行うような組織というのは、大学発ベンチャーの起業段階ではほとんど関与できていないという現状がございます。
 これらの状況を踏まえまして、先ほどの資料3‐1に戻っていただけますでしょうか。繰り返しになりますが、論点1でございますが、ベンチャー立ち上げの段階では、知財戦略とかさまざまな戦略を行っているものの、それが実際に市場を見据えた事業化構想、知財戦略になっているかどうか、このあたりについてまず本日ご議論していただければと思ってございます。
 また、先ほどの資料でもございましたが、論点2、民間の事業化ノウハウを持った組織や人材が起業段階になかなか入り込めていないと。政府資金を例えば研究開発資金だけではなくて、政府資金と民間の事業化ノウハウ、ハンズオンをベンチャー立ち上げ前段階で組み合わせるような仕組みづくり、システムづくりができないかというのが、本日の論点2でございます。
 また、論点3でございますが、シーズを発掘・育成する事業プロモーターはどのような人材が適切であり、どのように選ばれる必要があるかというものでございます。こちらは、資料3‐2のイメージ図、ポンチ絵のほうをご確認ください。先ほどの繰り返しになりますが、この事務局の構想案におきましては、事業プロモーターという方が非常に重要な役割を担うと考えてございます。例えばシーズの発掘とか、事業のコーディネート、研究資金とかの提供機能なども想定してございます。このような非常に重要な役割を担う事業プロモーターというのは、どのような人が適切であり、どのように選ばれる必要があるのかというのが論点3でございます。事務局の案といたしましては、公募による人選も提案させていただいておりますが、こちらについてもご議論いただければと思ってございます。
 戻って恐縮ですが、資料3‐1の論点4でございます。大学発ベンチャーには、フェーズに応じてさまざまな人材が必要であると言われてございます。例えば起業家等による経営戦略や、知財専門家による知財戦略というのは、その後のベンチャーの育成にとって極めて重要でございます。そのような極めて重要な役割を担う人材を、起業の前段階、ベンチャーの立ち上げ前段階で、いかに適当な人材を集めることができるか。これが論点4とさせていただいてございます。
 引き続きまして、論点5でございます。リスクは高いが社会へのインパクトが大きくポテンシャルのあるシーズの事業化にチャレンジするにはどのような仕組み・評価が必要かということでございます。
 こちらについても、関係の資料をご用意させていただいております。資料3‐3の6ページ目に、リスクの高い有望シーズの育成ということで、新医薬品の研究開発の成功率のデータを挙げさせていただいてございます。創薬のような分野におきましては、基礎研究の段階の化合物数から、承認と販売が行われるまでの化合物の数の比から、約2万分の1の確率という非常にリスクの高い分野で、失敗がほとんど多い、失敗ありきの世界であると。このようなリスクの高い分野であっても、有望なシーズについては国が支援するような仕組みづくりはできないかというものが論点5でございます。
 事務局の提案といたしましては、例えばポートフォリオのような概念を導入いたしまして、シーズ一つ一つを評価するのではなくて、複数のシーズを同時に評価するような仕組みづくりができないかと考えてございます。そうすることによって、リスクの高いシーズにもチャレンジするようなシステムができないかということが事務局の案でございます。それ以外についても、評価の仕方とか、さまざまな観点があるかと思いますので、ご議論いただければと思ってございます。
 資料3‐1に戻りまして、最後に論点6、支援期間の論点でございます。日本においては、研究資金の連続性が担保しづらいのではないかと。米国のようなギャップファンドの仕組みだけで十分かという論点でございます。
 こちらについても、先ほどの資料3‐3の7ページ目、8ページ目に、前回も少しご議論いただいておりますギャップファンドの資料を改めてここで掲載させていただいてございます。ギャップファンドは柔軟性や即効性などを重視しておりますので、少額ではありますが、単年度で即効性のある、すぐにお金が出せるような仕組みで運用されてございます。
 一方で、日本においては、次のページの8ページ目でございますが、シーズを産業界にプッシュするような資金だけでなくて、シーズ、アーリーの段階で、慢性的に研究開発の費用、それ以外の費用もなかなか不足しているという現状がございます。先ほどの創薬のケースを見ましても、なかなか実用化になるまで、承認されるまで、非常に長いスパンがかかります。そのような中で、日本においてはどのような研究費とか、政府の支援期間、スキームが必要かというところが論点6として挙げさせていただいております。
 以上、論点1から6を説明させていただきましたが、本日の事務局案に関しまして、論点1から6に限らず、さまざまな視点から事務局案についてご議論いただければと思ってございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【柘植主査】  ありがとうございました。事務局からの説明、それから、郷治委員からの東京大学エッジキャピタルの状況、成功例も1例、2例紹介いただきました。これを踏まえて、約60分ほど時間を使って、ご質問、ご意見をいただきたいと思います。できたら、資料3‐1の論点のどれに対応するとか、それから、郷治委員からのお話なりとのリンケージをできたらできるだけ明らかにした上でのご意見、ご質問にしていただきたいと思います。いかがなものでしょうか。どうぞ。

【石川委員】  エッジキャピタルの生みの親なので、いろいろなことを思い起こしながら話を聞いておりましたけれども、大変頼もしい限りです。エッジキャピタルをつくるときに、これは思いつきでつくられたと思っている方が大分多いんですが、そんなことは決してなくて、証券会社、監査法人、ベンチャーキャピタル、商事会社、事業会社、30社から50社の方で3年間毎週会議をやって、すべてのモデルに対してどういう対応を大学はとるべきかというのをやった上で生み出した会社なので、かなりの場面、かなりのモデルに対して、我々は対応策を持っている。その対応策を持っているうちの一部がUTECに合っているんだと。
 産学連携の議論の中で一部に、例えばVCとファンディングエージェンシーをくっつければそれでどうにかなるんだというのは、これは大きな間違い。そんなもので物は動かない。その中でどうやって経営成果を出していくか。それも多様性のあるモデルなので、材料のモデルとソフトウエアのモデルは全く違うわけです。これに全部対応できるだけの組織体をつくっていかなければいけないんですが、東京大学はそれをつくるために、3年間、毎年40回ぐらいやっているから、百何十回の議論を重ね、証券会社、監査法人各会社に持ち帰ってもらって問題点を洗い出してもらった結果、エッジキャピタルのようなところが足らないと。
 もうちょっと一般論でいうと、いい成果が出ると、それは必ずイノベーションが起こるなんてばかな議論があるわけで、決してそれはない。ブレークスルーが起これば、イノベーションが起こるということは、必要条件ではあるけれども、十分条件ではないので、そういうところをわきまえた議論をしていかなければいけないわけです。そこも含めて、どういったモデルをこの全体像の中から、特に足らないのが、研究成果が出たところと事業化までの間のあたり、これは前の報告紙にもあるところなので、そこの埋め方をいろいろな観点から議論していくというのが重要なことだと思います。
 大手の事業会社はマーケットが全部わかっているとおっしゃるんですが、そのモデルは共同研究のモデルで、別のモデルなんですね。この場合は新しいマーケットを生み出していかなければいけないわけで、マーケット開拓も含めてやるということから考える。
 その観点から、この事務局案の中で幾つかのポイントがあって、形式論として体裁を整えるような施策あるいはプランはあってしかるべきなんですが、その中でどうやった動かし方をするか。例えばこれ、事業プロモーターというんですが、例えば私の今の第一印象では、事業プロモーターにレイトステージのベンチャーキャピタルの方は全く合いませんので、そういう方が来ても、役に立たない。事業プロモーターは、どういう人種をどういうふうな観点で運用していくかというところまで含めて、形式論、外形論ではなくて、内部の人材の性質論まで議論していかないとうまくいかないんじゃないかというふうに、今後の議論はそういったことも含めて議論いただければ、実のある議論にあるんではないかと思います。

【柘植主査】  重要な指摘が幾つかあったと思います。特に今の最後の事業プロモーターの持つべき資質、これについては、石川委員、東大での議論の中で、何か参照すべき事業プロモーターが持つべき資質、逆にこういう面で毒されている人は合わないとかいう、こういう消去的な観点もあったかと思うんですけれども、今、既にどの程度まで、資質についてのガイドラインというのは、どこに何がありそうだとかいうぐらいのご発言をいただけたらと思います。

【石川委員】  あまり具体的な発言をすると、今の人材をけなしたり、褒めたりすることになるんですが。場面場面によって資質が違うわけです。共同研究に関しては、東京大学は、「プロプリウス21」という別なモデルを使っているんです。ここはやはり技術に対する信頼性ないし理解力と展開力のある人が来なければいけない。技術者出身でいいわけなんですね。
 それから、UTECのような場合には、今のUTECの人材を見てくださいというのが一番いいんですけれども、ちょっと言いづらいところもあるんだけど、言ってしまうと、サラリーマンキャピタリストでは務まらない。B/S、P/Lを見せろなんて最初に言うようなキャピタリストでは、事業プロモーターはとても務まらない。技術内容を理解し、その技術内容の分野を開拓できるようなパースペクティブも持っているような人。研究者よりもすぐれた能力を持っていないとだめという、そういう人材が要る。
 それを言い出すと、今度はないものねだりになってしまって、世の中にいないということになるので、それを習得できる気概を持った人というふうに広げていくということかなと。人材を間違えると、この施策はほんとうに違うところに飛んでいってしまうものですから、そこは慎重にやられたほうがいい。
 それから、これ、来られる方から見ますと、来られる方にとって何がメリットになって、それから、国として何がメリットになるという、メリット、デメリットを考えないと、これ、マネーゲームと言ってはいけないのかな、マネーゲームに近い話になりますので、そのバランスをどこでとるかというのが相当に難しい。
 UTECにしても、我々は相当計算を何回もやり直していますので、これもかなりの計算をやらないと、これが運用でちゃんと動くかどうかというのはわからない。外形論だけでは済まない話があると思います。
 お答えになっていますでしょうか。

【柘植主査】  ええ、ありがとうございます。
 関連か、ほかの観点でも……、どうぞ、森下委員。

【森下委員】  このお話は非常にいいお話で、こういうものをしていただけるということは、ベンチャーにとっては大変意味があることだと思います。
 ただ一方で、やっぱり一番問題なのは、このプロモーターがどなたになるかということで、これは石川先生が言われるとおりで、ここを間違えてしまうと、何をやっているのかよくわからないということになりかねないと思うんです。必要な条件は、先ほど石川先生が言われたような条件に加えて、やっぱりパッションがあるかどうかというのは非常に重要だと思うんです。スタートアップのときというのは、正直、ハイリスク、ハイリターンのところですので、やはりかなり思い切った、情熱的な支援の仕方をしないといけないだろうと思います。
 そこで一番問題になるのは、公募による人選のところで、何年間この事業が続くかということも含めて、やっぱりその後の展開が応募する方にとってはなかなか見えないというところが一番問題だと思うんです。ここに例えば既存のベンチャーキャピタル等をやめて、応募してきたとしたら、何年間――これも多分5年間ぐらいの事業だと思いますが、その後、その方のキャリアアップはどうなるんだと。これ自体がベンチャーキャピタルになっていくということであればいいんですけれども、なかなかそうもならないでしょうし、逆に言うと、応募したら、ベンチャーは成功したけれども、その人は行き場所がなくなったというようなことになったら、やっぱり意義がないと思うんです。
 その意味では、既存のベンチャーキャピタル、特にこれは大手系のベンチャーキャピタルじゃなくて、日本の中にも独立系のベンチャーキャピタルが全国の地方に結構ありますので、そういう地方に密着したようなベンチャーキャピタルから応募していただいて、場合によっては出向とか、あるいはそうしたベンチャーキャピタルと連携をとりながらという形で、ある程度事業の先のところを応募するプロモーターの方が見られるような仕組みづくりをしないと、おそらくいい方が応募してこないんではないかと。そうした意味では、あまり公募のところの人選で、今までのところと連携を切ってくるというよりも、出向とか、あるいは連携しながら、母体があるといった形のつくり込みというのも私は必要じゃないかと思います。
 また、そうした形でないと、これは東京のようにたくさんのVCがあるところはいいんですけれども、大阪、関西あるいは九州とか、シーズはあるけれどもうまくいっていないところというのがこの仕組みは一番いいと思うんですけれども、そこでは、やっぱり地方にいらっしゃる方がある程度応募してこないと、おそらくスムーズな連携というのは難しいと思うんですね。いきなり東京から人が行って、そこのシーズ等を大学の先生と話して、意思疎通が図れて、ハッピーストーリーが増えるかというと、なかなかそれも難しいと思うので、いろいろなモデルを想定しながら、プロモーターという方を選んでいくということが必要じゃないかと思います。このプロモーターの公募の条件というのは、ぜひある程度間口を広げて、いろいろなビジネスモデルが存在するような形で考えてもらう必要があるんじゃないかと思います。
 また、この案件なんかは、当然、バイオでも、創薬のラインといいますか、パイプラインを含めたような非常に難しいやつも入ってくるでしょうし、一方で、もっとやりやすいような、工学系の技術なり、あるいはIT系の技術も出てくると思うので、それによってもかなり仕組みが変わってくると思うんです。
 ですから、仕組み全体としては、今回の仕組みはよくできていると思うんですけれども、実際の運営面では、より幅広い形でとらえて、一番大事なことは、やはりイノベーション・エコシステムができるというところに帰着すると思いますので、実際の公募あるいは運営のところで知恵を絞ったような形での形態をつくっていただきたいと思います。以上です。

【柘植主査】  ありがとうございます。非常に大事なことですね。
 羽鳥さん、何かご意見どうぞ。

【羽鳥委員】  すみません。事業プロモーターですけれども、こういった人が発生するというか、いるようになると、きっと大変すばらしいなと思います。
 このプロモーターにどんな仕事をしてもらうかといった中で、ふだん大学のところから見ていて、2種類あるのかなと思うんです。1つは、わりあい民間でも投資しやすい部分。今、郷治さんのエッジキャピタルがありますけれども、投資されている部分というのは、ハイリスクのところは多分無理だと思うんです。それは当然限界がありますよね。
 そうするとどうなるかというと、バイオ・医療関係でも、マテリアルそのものを提供できる部分とか、あるいは何とかキットとか、そういった部分かなと思うんですね。創薬というのはおそらく無理だろうと思います。あとは、エンジニアリング系のITシステムであれば、やっぱりそれはわりあい手が届く範囲かなと思うんです。
 そういったあたりでは、大学のシーズが投資家の目に見えるような形で表現できるような、そういった能力がある人、ビジネスプランがないと何とかと先ほど石川先生のほうからありましたけれども、そういったことができるような人が、プロモーターとして必要なのかなと思います。
 あともう1つは、ほんとうはここは大学が一番期待されている部分だと思うんですけれども、イノベーションということで、何のためのベンチャーかといったら、やっぱり将来の日本の産業がそれでもって発展できるような、そういった貢献が大学にほんとうは求められている。それは例えば創薬みたいなところで大きくもうかる部分かもしれないんですね。
 そこのところはかなり長い期間の支援が必要で、そのためにはシナリオがちゃんと描けないといけない。政府も資金を援助するのに、やっぱりいつまでたっても成果が出ないような感じだと、さすがに言いわけできなくなるようなこともあろうかと思います。そうすると、将来に向けてシナリオがちゃんと描けるような、長期、20年単位のシナリオが描けるような、そういったプロモーターがいるとまたすばらしいなと思います。そういった意味では、森下先生のおっしゃいますように、いろいろなタイプの人がいるといいんではないかと思います。

【柘植主査】  じゃ、郷治委員、関連だと思います。それから……。

【井口委員】  今の関連、ご返事じゃないですか。

【郷治委員】  どうぞ。

【井口委員】  いいんですか。

【柘植主査】  じゃ、順番で。

【井口委員】  それじゃ、よろしいですか。エッジキャピタルは、今、石川先生の、準備も十分やって、非常に成功しているベンチャーキャピタルだと私もいつも思って。私も地域のベンチャーキャピタルでは苦労しております。
 ここの事業プロモーターというのが、非常にアーリーステージのときからずっと立ち上がっていくとき、同じ人では……、同じ人でもいい人もいるんですけれども、やっぱりスタートアップに近いところと、今度はあるところまでベンチャーがずっと立ち上がってきたとき、この辺の資質というのはやっぱりかなり違ってきているような気がするんですね。
 私も、ベンチャーキャピタルがぜひこの人をといって、ベンチャーに、ぜひこのアドバイスを受けなさいとか派遣したりすると、特に学校側とか、ある年代になったベンチャーを経営している方とフリクションを起こして、私も何回かそういう間に入ったことがあります。
 したがって、事業プロモーターの資質も、公募で全期間にわたってやれるということではなくて、それぞれその方の特質を見ながら、ここで、UTECで出していた5ページのところのステップから、まずは法人を設立して、資金をあれなんですけれども、そこからさらに、そういうところの事業プロモーターもいれば、だんだん製品ができ始めて、そこからのマーケティングの開拓だとか、そして、さらに資金調達というところ、これまた事業プロモーターの資質も違ってくるんじゃないかなとこのように思っております。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 郷治委員、それから、常本委員。

【郷治委員】  私も事業プロモーターの資質についてなんですけれども、精神論みたいな話になってしまうんですが、当然、文科省がバックアップしてこういう制度をつくるのであれば、事業プロモーターになる方には成功していただかなければいけないと。
 ただ、文科省がバックだから成功できると思っているような人を採ってはいけないんじゃないかなと。当然、文科省がバックアップしているから成功しなければいけないんですよ。だけど、だから成功するというものじゃないんですね。文科省の政策であるか否かにかかわらず成功するような人。場合によっては、文科省の政策であるにもかかわらず成功できるような人。この3つの、ある意味矛盾するニーズがあるわけなんですけれども、これをすべてうまく立ち回りながらやるような人材が必要なのかなと。
 どういうふうに言えばいいか非常に難しいんですが、当然、政策としてのミッションもあるので、それを実現できる人じゃなければいけないんですけれども、それにしゃぶりつこうというような人は絶対だめだなと思いますので、よく選定いただければと思います。

【柘植主査】  常本委員、ちょっとお待ちください。
 今の観点で、資料3‐2のたたき台で、これも一種のイノベーション創出プロセスの1つの設計図なんですが、今の郷治委員のおっしゃったことと絡むんですけれども、当然この中にはもちろんベンチャーキャピタルの話の資金注入もありますが、例えば国としても、公的資金としても、文部科学省の、どちらかというと基礎研究の上流側の、それから、下流という言い方はよくないかもしれませんけれども、経済産業省とか農林水産省とか、そこの政府の中のいわゆるイノベーションのプロセスにおける、アーリーとレイトと言うといいんでしょうか、そういうものの公的資金もここの中にどう入れるかというのが、この資料3‐2の中でちょっと見えにくいんですが、どう見たらいいのか。あるいは、今後そういうのは掘り下げたいというのか、事務局のほう、補足できたらお願いしたいと思います。

【寺崎課長補佐】  こちら、ベンチャー立ち上げ前における事業化構想をしていくプレベンチャーの段階でいいベンチャーを育てていくという段階においては、文部科学省は科学技術政策をやっておりますので、まず、研究開発はしっかり政府資金で支えていかないといけないという大前提はございます。そういう意味で、真ん中の四角の中の下のところにあります、大学研究者による事業化に向けた研究開発、ここに関する支援はしっかりやっていきたいと。
 今までと違うのは、それだけではなくて、それだけではいいベンチャーはしっかり育っていかない。そういう意味で、プレベンチャーのところで、事業化構想とか知財戦略とかを立てるような人材をしっかり集めてきて、要は、民間のノウハウとかも大学にしっかり結集させて、ベンチャーを立ち上げていかないといけない。例えば事務局案としては、そのための人件費とかそういうものもしっかり支えながら、いいベンチャーを育てていくための資金を政府として支援していきたい。結果として、いいベンチャーができて、将来的にそのベンチャーにエクイティが入ってくるということ、もしくは大型の投資につながっていく。それが社会にインパクトを与えると。そういうような日本型のイノベーションシステムができればいいと思っております。
 そういう意味では、事務局案といたしましては、プレベンチャーの段階での研究開発費だけではなくて、それに関連する、事業化に必要なところの支援をしっかりパッケージとして、していきたいと考えてございます。

【柘植主査】  今のご説明が、事業プロモーターという個人、それから、組織全体が、今、寺崎さんが言われたことの、一種のイノベーション・エコシステムの構想として伝わるように。そうしないと、事業プロモーターの行動パターンが偏ったことになると思うし、我々司令塔としても、今のような寺崎さんが言われたことをやはり常時、設計図の基本図として見える化しておかないといけないなと思って聞かせていただきましたので、資料3‐2のアップグレードの中で、ぜひ今言われたことは、なるべく見える化をしていただきたいなと思っております。
 すみません、常本委員、それから、北澤委員。

【常本委員】  恐れ入ります。私、小さな大学でベンチャーを立ち上げた先生を目の前で見ていて思ったんですけれども、論点3の事業プロモーターの一番のプロモーターは、やっぱりシーズを持った先生であると私は思って、その先生を見ていたものですから。ところが、先ほどの資料にありますように、この数年間で、20年度でIPOがかかった企業が1社しかないとか、なかなか大学発ベンチャーの実態が見えてこないというのが現状になっています。
 これは思いがあっても、先生は時間がないという要素があって、ここを支援してあげないと、実際のプロモーターがいたとしても、先生は教育と研究と両立させながら動かなければいけないという状況なものですから、文科省として対応するときには、やっぱり先生に時間的な余裕を与えるような制度設計もあわせて対応してあげてほしいなという気がしています。
 あまり正確じゃないんですけれども、私、数年前にフィンランドの同じようなベンチャーシステムの視察に行ったときに、あそこのオウル市のところでは、経産省系の研究機関があるんですけれども、ここからスピンアウトする方は、もし失敗したら、戻ってもいいよという条件つきでスピンアウトするようなことをしていて、同じようなことが大学の先生にできるとは思いませんけれども、何かもう少し大胆なことをして、危険を保証してあげないと、なかなか動けないんじゃないかなという思いもあるものですから、少しご検討いただければなと思います。

【柘植主査】  大事なことだと思います。
 北澤委員、どうぞ。

【北澤委員】  東大の一キャピタルと今日の文科省の案との関連というか、何が違って、何が同じなのかという、そこのところなんですが、やっぱり大学発であっても、ベンチャーというのは、基本的には一攫千金を目指すという、それをやらなかったらベンチャーではない。もちろん千金といっても、社会的意義とかそういったものも含めての千金なんですけれども。
 そのときに、東大のエッジキャピタルは民間のお金を入れてと。それで、今日の案は、国のお金をあてにしているような形での提案がちょっとあるわけですけれども、そのときの国のお金というのは、民間から出てきたお金に対してどれだけの制約があるのかということがあんまりはっきりしていない。
 今度、ベンチャーのほうからすれば、投資として受け入れるか、融資として受け入れるか。そして、研究者や何かに対しては、ストックオプションとして何らかのメリットを与えるというような、そういういろいろなやり方があるわけですけれども、そこのところでのお金の制約とギブ・アンド・テイクがはっきりしていないと、ベンチャーはすぐに内部紛争を起こしてしまうという意味で、私はやはり精神論だけでは決してこういうのはうまくいかないと思うんです。
 そのときに、先ほどから問題になっている事業プロモーターは、何をもとに権限を持って、それで、その権限の源泉がお金なのか、技術なのか、それとも、地位なのか、その辺がはっきりしていないと、この事業プロモーターというのは孤立無援になってしまう。そうすると、私はやっぱりお金の権限もちゃんと握っていないと、プロモーターはやっていけないような気がしています。
 そうなると、東大のエッジキャピタルがうまくいき出したということになると、国が手を引くのが一番いいのか、それとも、国も、さあ、我々も乗り出そうといって乗り出すのがいいのかという、そこのところをちゃんと考えたいと。そういう意味では、乗り出したときに、例えば東大のエッジキャピタルがうまくいき始めたとしたら、あとどこのところがまだ不十分で、そういうところは国がやってくれるといいという、そういう形でこの案が考えられるべきなのか、それとも、それと対抗するような、ライバルとなってやっていくような案なのかというのが、私、さっきからまだどう理解したらいいかとちょっとわからないところがあるんですけれども、そこら辺に関してはどうなんでしょう。

【柘植主査】  事務局、今の話で何か言えることがありますか。あるいは、委員の方々からでもご意見。今の件に関して、事務局は何かありますか。それから、あれ……。

【寺崎課長補佐】  事務局の案でございますが、こちらについては、先ほど郷治委員のほうからも少し話がございましたが、研究資金、政府の資金で担う部分と、民間資金、いわゆるエクイティの部分で担う部分があると思っています。ベンチャーの、今回はプレベンチャー、さらにその前段階ということに限定しておりますのは、まさに政府資金の部分でやって育つ部分が大学発ベンチャーを育成する上で重要ではないかという仮説のもとで、まさにエクイティの入る前段階。
 そこの切れ目というのが一体どうなのか。緩やかにチェンジしていくのか、それとも、一気にチェンジしていくのか、そこももちろんご議論していただきたいと思っているんですが、政府の資金というのは、まさに民間の市場合理性を阻害するようなフェーズではなくて、あくまでもリスクマネーが入ってこないところで、プレベンチャーのところで育てていく段階で政府資金が投入されるべきだというのが事務局案でございます。

【柘植主査】  どうぞ。

【渡部委員】  この資料の私の理解は、米国のようなギャップファンドの仕組みだけでは十分ではなくて、もっと息の長いところ、プレベンチャーの段階のが必要だから、こういう仕組みを考えましょうというふうに読んだんですけれども、それで間違っていないかどうか。
 そうであるとすると、やっぱりどんな分野でもこれになるという話では私はないと受け取っていて、おそらくライフサイエンスとか、やっぱり結構時間のかかるようなものについて、こういう仕組みをもって対応しないといけないという話なのかなと。
 だから、2つに分けて、エッジキャピタルと、あとはギャップファンドみたいな話で、これはこれで、やっぱり政府支援もいろいろ考えていただく必要があるんだけども、もうちょっと息の長い、プレベンチャー段階のところ、郷治さんがこれはまだお金を出せないというところが長く続くようなところについて、こういう仕組みが要るのかなと私は理解しましたという話です。
 それにしても、やっぱり事業プロモーターの権限が一体どこから来るのかと、先ほどの北澤先生で、これはやっぱりお金しか多分ないんですよね。実際は政府支援。そうすると、そのときの「スーパーバイザー/評価委員会」というところが、よほど趣旨を理解した委員会をつくってあげないと、なかなか長期的に機能しないだろうなという気はいたします。以上です。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 前田委員、お願いします。

【前田委員】  前のご意見と全く一緒のところもあるんですけれども、北澤委員とか渡部先生とかと同じで、権限を持たせていただかないと、いろいろなところへプロモートできないというのはすごく感じています。
 あと、シーズをもともと持っていらっしゃる大学の先生なんですが、お時間が足りないと常本先生もおっしゃっていました。
 最近の状況は私、よくわかっていないんですが、利益相反が、日本の場合、結構大学に任されていて、非常に厳しくセットされている大学もあろうかと思うんですね。全くかかわれないというか、かかわっても全く得にならなくて、忙しいだけになってしまうような学校もないこともないんじゃないかなと思っています。
 やはり韓国とか中国を見ていますと、あれはあれでどうかと思うぐらい利益相反かなというところもありますので、日本らしい、節度のあるというものが必要なんだとは思うんですけれども、やはり学校任せで利益相反の基準をつくってしまいますと、あまりにも一生懸命先生が頑張っていても、利益は全く先生のところへ行きませんよ、だけど、頭はかしてくださいよとなっていると、どんどんモチベーションが下がっていってしまうと思うんです。
 その辺の状況が、最近の利益相反というのはどんな感じになっているのかとか、渡部先生とか、ご存じですか。どうですか。

【渡部委員】  全国的にですか。

【前田委員】  そう。いろいろ学校によって。

【渡部委員】  ちょっとわからないんですけど。基本的に、利益相反マネジメント、利益相反という状態は、産学連携であれば必ず発生します。いわゆる職務規則違反でない範囲をどういうふうに扱うかは大学に任されているということですよね。一時期、結構極端に、要は、職務規則違反的にとらえて対処したというような事例もあったようにも聞きましたけれども、最近そんなにあんまり聞かないですけどね。ある程度適切に行われているのではないかなという気はします。

【前田委員】  それであればうれしいんですけれども、やはり取締役にもちろんなれないし、株も持てないしとか、非常に厳しくなっている学校もあるのかなと見受けたものですから、変わっていれば全然構わないんですけれども、やはり先生がかなり手間と、さらにつけ足しの知恵を出していかないと仕上げられないと思いますので、そういうところもちょっとフォローをしてあげられるといいのかななんていうのは、いろいろなところを見ていて感じました。

【柘植主査】  ありがとうございました。
 永里委員、どうぞ。

【永里委員】  2つございます。1つは、事業プロモーターの話、もう1つは、国がどれだけ関与すべきかという話です。まず、事業プロモーターの話ですけれども、民間のほうから考えますと、優秀な民間の人材をここで公募して持ってきてするというのは、この案はすごくよさそうに見えるんですけれども、民間で、優秀な人で、はまっているような人じゃないとだめなんですよね。ところが、そんな人は民間は出さないです。ですから、そこで公募に応じる人は、少し外れた人か、あるいは何か個人的な理由で優秀な人が出てくる可能性はありますが、もともとないものねだりしているというか、民間の方からはそんな簡単には集まってきませんよ、民間は出しません。
 それに対して、また戻してあげるから、出向してやったらどうかということに関しましては、出向で腰かけ的に行ったようなことでいい仕事ができるはずがないですね。民間の人の場合はそうです。私は民間以外のことはちょっとわかりませんけれども、民間はそうです。そういう意味でも、出向者の問題もまたあるわけです。ただ、非常に志のある大企業が、これは国のためになるからといって、「おまえ、出向してこい」という場合はまた例外だと思います。それはその会社の姿勢だと思います。
 それからもう1つ、2つ目の話題です。国の資金というのは、研究段階にフォーカスすべきで、国がビジネスに近いほうに乗り出すのは私は問題だと。何が問題かというと、国はそういうことはなれていない。だから、民間の資金が入りやすくするようなシステムとかインフラを醸成するのを考えるほうが、国はそっちのほうを考えるほうが重要じゃないかと私は思います。以上です。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 今の関連で。ちょっと関連で……、ちょっとお待ちください。
 どうぞ。
 それから、長我部委員、産業側として、ぜひ今の関連でお願いしたいと思います。それから、三木委員。

【石川委員】  今のお話の中の、まず人材に関しては、ないものねだりになっているところがあるんですが、これは育てるということを入れないとだめだと思うんです。だから、モチベーションのある人をこの思想の中で育てていくというのを一文入れないと、ないものねだりになってしまうというのは確かにそうだと。
 それから、国の資金なんですが、エッジキャピタルの場合は東大の資金は一切入っていませんので、それを同じように、インフラを育て上げる、インフラを整備して、そこを盛り立てるという意味でやればいいわけです。このやり方は我々、いろいろな計算をしたんですが、こんな口先で話す話ではないので、計算を綿密にやらないとできない話。東大の場合は、あるお金をこうして、こうして、こうやって、こうなったという。
 渡部先生がおっしゃっている、これは息の長い話ですかというのは、総論としては正しいんですが、もう1つの意味合いが、エッジキャピタルがいくら成功しても、できるのは80億のファンドの問題である。日本全体の総量が足らない。アーリーステージに対する投資の、日本全体としての総量をどうやって上げていくか。これが日本の産業界の一番の欠点であって、新規分野創成のためのアーリーステージ、あるいは明日にかける橋をかけなければいけないところに、資金が、民間のリスクマネーが流れていないというのが問題なので、これを流すのにはどうしたらよいかというのは政府が考えるべきです。
 そこにお金を投資するかというのはまた別問題で、これはしないほうがいいと思うんですが、そこに資金が集まるような施策をするというのは政府としてはぜひともやっていただきたい。総量が足らないということに関しては徹底的に足らないので、長い目でという分野じゃなくて、足りていない部分を埋めるという意味があります。
 それから、あんまり大きなことを言うと怒られるんですが、東大は、いろいろな計算をした結果、ある金額の範囲内でやればどうにかなるということがわかったんですが、地方大学が私のところに、「うちでもベンチャーファンドを建てたいんですけど」とおっしゃって来るんですが、とても無理です。これは計算すればすぐわかります。小さな大学で同じことはできません。ですから、そういったことを含めて、国として、日本としてどうするかを考えるべきではないかと思います。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 長我部委員、どうぞ。それから……。

【長我部委員】  ありがとうございます。まず、プロモーターというか人材の件なんですけれども、私もやはりこれはぴったりはまる人というのはおそらくいなくて、やっぱり教育とか、育てる仕組みが必要だと思います。
 先ほど出たような、中程度以上の企業にいる人間というのは、基本的にはビジネスインフラが整っている中で、セールスチャネルがあり、保守のチャネルがあり、製造現場があり、ファイナンスもありという中で事業を育てるということにはなれていますけれども、ほんとうにベンチャーのような形での事業経験というのは非常に少ないわけですから、逆にそこのところは非常に弱いというのが多分実態だと思います。
 でも、プレベンチャーのところに関する能力はどうかというと、事業化構想とか、そういうものを立てる段階は、おそらくそういう訓練なり、あるいは実践をある程度積んでいると思います。ですけど、その後は多分経験がないということで、おそらくここのプロモーターに求められるような資質を持っている方というのは、民間の中にも非常に少ない。それはやっぱり教育なり、あるいは実践を通してやっていくしかないなと思います。そのときに、出向のような形で何年か勉強してこいというのは、これはなかなか難しくて、ほんとうに飛び出してやるぐらいの覚悟がないと、やっぱりほんとうのプロモーターにはなれないんじゃないかなという気がいたします。
 それから、先ほど来石川先生からもお話が出ました、リスクに対する総投資が日本全体で少ないのではないかというのは、まさにおっしゃるとおりだと思っています。論点5のところに書いてあるのは、やはりリスクが高いところに突っ込めるのは、総投資がリスクにちゃんと回っていて、成功例が出て初めて回収できるわけですから、そこの議論なしにここだけやるというのは非常に難しいと思います。
 そういう意味では、やはり基本的な、民間の研究投資が日本の場合、多いわけですから、税制とか、あるいは研究開発の減税とか、あるいは国家プロジェクトの民間と大学に入る割合とか、それこそお金の流れのエコシステムをちゃんと考え直していかないと、そこのところは難しいんじゃないかなという気がいたします。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 三木委員、どうぞ。

【三木委員】  全体のこのポンチ絵を見て、1つは、目標がもうひとつ明快にきちっと決まっていないように思うんです。1つは、先ほどから議論されているように、最終的な大学発ベンチャーが成功していくための最後のゴールは、それはIPOであったり、M&Aであったり。ただ、その前の、エッジキャピタルさんの話にもありますように、既存の民間企業さんが投資してくるというケースがある。じゃあ、そこまでをやっていくのか、どこまでがゴールなのか、そこをまずはっきりしておかないといけないと思うんです。
 そのための事業プロモートであるんだったら、そういう機能も整理する必要がある。ですから、目標は、先ほど来の議論でいきますと、このギャップを埋めていくということですので、既存企業とジョイントベンチャーみたいなものをつくっていく前の段階。そこまでをやるんだということを明確にするんだとしたら、そうしたら、それを何年間でやるのか、今度は期間の問題です。5年でそこまでやっていけるようなエコシステムの基盤をつくるのか、それとも、成功例まで出したいのか、ここをはっきりさせないと、多分プロモーターの人に対する、皆さんの頭の中で考えていることは、いろいろなパターンがめぐりめぐっているという感じがします。
 プロモーターのことに関しましては、私が思うのは、基本的に権限と能力と機能というのは三位一体で動いていますので、権限のない方はほとんど……、その権限を担保するのはやはりお金だと思います。その意味では、投資資金を最終的に判断することができるということがない限りは、何の役にも立たない、だれも言うことを聞かないということになろうと思います。
 それから、人材は公募でやるのはほとんど不可能で、一本釣り以外に手はないと思っています。案件も、具体案件がどういう候補案件があるのかによって人もすべて規定されるし、どういう人を一本釣りするかというのも決まってくる。その方はもちろんいい方が来るはずはないので、プラスアルファで、アドバイザー的な部分が非常に大事になると思っています。そういうアドバイザーの部分が、私どももあるベンチャーを支援しているときによくあることなんですけれども、既に上場されているベンチャーの方と同じような事業内容、全く同じ事業ではないですけれども、そういう場合には、そういう方が実は顧客候補をいろいろ紹介してくれたり、そういうことがございます。そういう非常に有能なというんですかね、そのビジネスに適したアドバイザーが、民間の方でリンケージをとっていくということが非常に大事になると思っています。
 それから最後に、政のほうで考えますと、これはどこかでほんとうに現場でやろうとしているところに補助金を出すのか、それとも、国としてどこまで踏み込んでやっていくのか、ここのところもしっかり設計しないと、場合によったら、どぶにお金を捨てることにもなりかねない。そういった課題があると思います。
 それから、事業プロモーターの方については、先ほどのように、公募じゃなくてということを僕が言っているのは、最終的にその方も、後々の、企業さんが投資をしてきたり、そして、M&Aをするときになったら、エクイティをやはり持てるぐらいの制度にしないと、私はこういうものはきれいごとでは動かないと思っているんです。その辺のところも含めて、検討整理する課題はいっぱいあると思っています。

【柘植主査】  ありがとうございます。今の三木委員のお話だけじゃなくて、ほとんどの委員を含めて、私自身も、資料3‐2について、現実に即して、いかに国の立場、それから、キャピタル市場にゆだねることの誘導という両面があります。
 この資料3‐2に至る前に、やはり産学連携と言って10年以上たってきているわけですけれども、今までのグッドプラクティスとノットグッドプラクティスというものがあり、それから、当然、どちらかというと、ベンチャーというのは欧米が先に進んでいるとは言いながらも、向こうのグッドプラクティスとか、あるいは日本に導入しようとしたら、それは合わないとか、やめたほうがよいとか。
 何かそういう事例の積み重ねでの、3‐2につながる、結びつく、一種の論理構成、それを見える化していくということが、この委員会でも必要だなというのが共通の考えですね。それは当然、政策に落とし込んでいくときにも、我々はやっぱり説明責任があるわけですから、それにも使えると。どうもその辺あたりがまだまだどうも基本設計が不明確だなということから、さまざまなご発言があったと私は感じております。
 引き続きどうぞ、郷治委員。

【郷治委員】  かなりご批判的な意見が多かったので、応援演説じゃないですけれども、既存の政府の施策と比べて、この構想は私が個人的に何がおもしろいと思っているかというのをちょっとお話ししたいと思います。
 経産省系の施策でいろいろ、例えば革新機構もそうですが、イノベーションといいますか、ベンチャー支援のいろいろな助成策があります。ベンチャーファンドでいいますと、例えば中小企業基盤整備機構さんという中小企業庁系のところがありますけれども、そこがベンチャーファンドに出資するという事業を行っております。これは投資事業有限責任組合法が98年にできたときにできた制度で、これまで非常に数多くのベンチャーファンドに出資をしてきております。
 実は弊社のUTEC1号にも10億円の出資をいただいて、2号のほうも30億円ものかなり大きな出資約束をいただいているので、大変ありがたいんですが、ただ、ファンドというのは当然リターンを上げなければいけないので、投資効率を上げるという観点からすると、実はファンドが大きければ大きいほど、それを何倍にも増やすのはどんどん難しくなるんです。ということは、ベンチャーに回す、あるいはイノベーションに回す資金が足りないから、ファンドに国がお金をつけましょうというだけだと、ベンチャーファンドのリターンを上げるという観点からは実は、逆にもらえばもらうほどリターンが上げにくくなるという難しさがあるんですね。ジレンマがあると。
 そういう中で、今回の構想の図を見ると、これは別にファンドに出資するわけではないんですよね。だけど、事業プロモーター、これが例えばベンチャーキャピタルだとすると、そこにもしお金の権限がいくらか、事業配分といいますか、プロジェクトに配分する機能が任されるんであれば、エクイティではない形でベンチャーの事業化の可能性があるものにベンチャーキャピタルはお金をつけることになれば、もしそれでうまくいくんであったら、投資効率は上がるんです。
 あとは、当然、エクイティではないので、リスクを取りやすくなるんです。もちろんそれは適正にリスクをとらないといけないと。変なごみばっかりこっちのほうのお金でやってはいけないわけなんですけれども、でも、今、僕が申し上げたような観点からは、経済合理的に回すやり方というのは、このラフなスケッチをもとに考えられるんじゃないかなとは思っております。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 では、森下委員、どうぞ。

【森下委員】  今の郷治委員に賛成なんですが、これ、東京の状況と地方の状況というのは一緒にとらえてはいけないと思うんです。正直、東京では、UTECさんはじめとして、VCもたくさんありますし、やっぱり地方とは状況がかなり違っていて、ある程度民間の力でもシーズを育てる仕組みは育ってきていると思うんです。
 一方、地方の場合は、今、民間からのお金がほとんど入らないので、先ほどの中小機構のファンドの支援があっても、残り半額の民間のお金が集まらない。したがって、ベンチャーキャピタルがファンド自体ができないという状況が、これ、正直、東京以外はほとんどすべてだと思います。
 そういう状況の中でこの仕組みをやるときには、事業プロモーターというのは個人でとらえるのか、先ほど郷治委員が言いましたけれども、ベンチャーキャピタルのような、地方の会社自体がプロモーターとして、個人という形じゃなくて参加するという形式もあり得ると思うんです。むしろこれは地方のイノベーション・エコシステムをつくるためのシーズの発掘事業であって、その育成事業であるというふうにとらえないと、やっぱりおかしな話になると思います。
 そういう意味ではどこでやるのかということを明確にしないと、本来民間でやるべきものを国がやるというのはおかしいんじゃないかという議論につながりかねませんし、実際に育ってきていないのは、やっぱり民間の、特に地方でのやっぱりこういうキャピタリスト、あるいはそれを育てるようなインキュベーターをするような人たちだと思うんです。ですから、そこを育てるというふうにとらえ直さないと、先ほど来お話が出ていますように、いろいろな形が出てくるので、もう民間でいいんじゃないかという議論にどうしてもなってしまうと思うんです。
 ただ、ほんとうに地方では今、この仕組みがなくて、大学でのシーズがなかなか事業化できないというのがよりひどくなっているというのが現状だと思います。しかも、東日本大震災以降、どうしても復興というところのキーワードが出てきますので、逆にそれ以外の地区は忘れられているんじゃないかという、逆の意味での恐怖感がやっぱりあるんですね。そうしたところも含めて、やっぱりぜひ地方での仕組みという観点も考えて、制度構築していただきたいと思います。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 あと5分ぐらいで打ち切りたい。まだご発言いただいていない方、もちろんご発言いただいた今までの議論を統括して、今後の検討の方向という視点でご発言いただけますか。
 はい、羽鳥さん、どうぞ。

【羽鳥委員】  プロモーターに権限というか、資金が配分できるようなという議論もいっぱいあったかと思うんですけれども、例えばA‐STEP。今、JSTの北澤先生いらっしゃいますけれども、それもたしかベンチャーのプログラムもあったかと思うんです。例えばプロモーターがちゃんとシナリオも描いて、ぜひともこれは政府資金が必要だというものについては、A‐STEPで優先的に支援してもらえるとか、例えばそういうフローというのはあり得るんでしょうか。

【北澤委員】  詳しくは後ろに座っているあの人に説明してもらってもいいんですけれども、そういうプログラムが現在でもあります。それですから、アーリーステージのどこまでアーリーという、そこがありますけれども、私が非常に乱暴に申し上げれば、このアーリーステージは大体二、三億から10億円ぐらいのお金でやっていくような、そういうレベルの話なんじゃないかなと私は思っているんです。
 これ、アメリカだと、例えばスタンフォード大学やMITにしても、何人かの教授が集まれば、あるいは1人の教授でも、自分が成功しているとそのぐらいのお金を持っているんですね。それで、そのお金をもとに、いろいろアドバイスしたり、あるいは自分が入り込んだりするものですから、その人たちもかなり権限はあるんですけれども、どちらかといえば、自分の後輩を育てるというような気持ちでやるケースが、アーリーステージでは多いと思うんですね。
 日本ではそういう人たちがまだできていないので、東大のエッジキャピタルあたりがたくさんつくってくだされば、そういう人たちが出てくれば、その次に回ると思いますけれども、まず全国でそういう最初の例をつくっていくとそういうふうに考えれば、今、羽鳥先生が言われた、我々のやっているプレベンチャーのそういう考え方でやっている支援システムを、これはもうちょっと組織だってやろうという形だと思うんです。
 ただ、プロモーターの性格というか、プロモーターというのは、やっぱりアメリカみたいにお金を持っている人だと非常にいいんですけれども、日本ではそういうわけにいかないから、国からお金を受け取って、どうやってそれを自由にその人の権限に切りかえられるかというのは、その辺がきっとポイントの1つかなと思います。

【柘植主査】  ほかに。どうぞ、牧野委員、それから、渡部委員。南委員、後ほど、個人的と同時に、メディアという立場からの今後の進め方の方向についてぜひご発言いただきたいと。
 牧野委員、どうぞ。

【牧野委員】  プロモーターのお話が大分いろいろな意見が出ていましたけれども、私もお聞きしていて、これは非常に難しい問題だと思います。
 それ以外のことで、2つほど、今後また考えの中に入れていかないといけないと思うことがあります。まずこういうベンチャーが育つためのベースとして、外国と日本の違いのところ、特に欧米についてのことなんですが、インキュベーションのシステムが、日本の場合に非常に弱いということが挙げられると思うんです。ここの改良がなければ、東京大学は随分頑張っておられますが、みんなかなり苦労しても、おそらく大きな成功例は出てこない可能性があると思います。
 今度もニューヨークにはアレクサンダーセンターができておりますが、どう見ても、二、三百億円ぐらいのビルが1個、今、建っておりますが、もう2つ、3つ建てると言っておるわけです。そういうものがあっという間に立ち上がって、それも非常に戦略的に、例えば製薬のところに近い研究が多いんですが、たんぱく製剤がやりやすいような場所と、それから、会社の組み合わせがきちんとでき上がっていて、その大きなビルが竣工のときには、8割以上がもう詰まっているわけです。
 そこで非常に大事なことですが、今まではベンチャーが育つのを待っていたんだけど、それではもうアメリカの株主は満足できないので、他社に先駆けてやるためには、自社で、芽の出そうなベンチャーをつくって、それで、おそらく、帰ってこなくていいよと言って、そういうインキュベーションの中に入れている。
 インキュベーションの中には、例えばフィラデルフィアのインキュベーションが世界で一番大きいというのはご存じだとは思うんですが、あそこの15の棟の中に4,000人のベンチャーの方がいらっしゃる。おそらく半分近くはワンマンだと思うんです。非常にうまくワンマンのベンチャーが育つようなシステムがそこにある。ということは、4,000人のうちの半分ぐらいだとしたら、2,000社ぐらいはあの中にあるんですね。それぐらいの種がないと、今、ベンチャーのアメリカでの成功の確率はもう数パーセント以下だと言われているんですね。ですから、2,000あっても、おそらく二、三十社成功例が出てきたらいいだろうと。そういうところを、やはり我が国もおくれているとはいえ、先人のたどった道をもう1回見ないといけないと思う。
 もう1つは、ここは文科省の集まりなのでとても大事なことなんですが、教育だと思っています。うちも地方ですから、大変不利な面もありますので、今、学生に対する教育を充実することをやっています。それは卒業生に対する教育のサービスです。二、三年前は、学生といっても、大体これぐらいが実態だと思うんだけど、10人ぐらいしか来なかったんです。今、五百数十名が来るようになってきました。どういうわけか、京都大学なんですが、うちの大学で絶対聞くべき授業ベストスリーの中に入るようになってきているんです。
 ですから、そういうのを育てていかないと、何千社というベンチャーをつくっていかないと、確率的にほとんど不可能なことをやるわけですから、そういうところに対する支援とか、そういうところもぜひ考えていただきたいなと思います。以上です。

【柘植主査】  じゃ、あとお二方で。それでは、ご発言は、高橋委員と、それから、渡部委員、ちょっと時間がないので、南委員で。
 じゃあ、高橋委員、どうぞよろしくお願いします。

【高橋委員】  ありがとうございます。では、手短に。人材関係の事業プロモーターや次回のリサーチ・アドミニストレーターについても同じような課題があると思います。一言で言うと、資料3‐2だけでは描き切れていない難しさがあると、今までのご指摘のとおりだと思います。
 何で難しいのかというところを考えてみました。おそらく95年、98年ごろからいろいろな施策が打たれて、当初のコーディネーターがやっていた範囲というのが、一部は、多分、この資料3‐2に書かれている活動ではないかと思います。何が申し上げたいかといいますと、難しいことの理由の1つに、ある程度やっている人たちがいるところのできてきないところを抽出することの難しさが絶対あるんだと思います。
 ですので、こういう、我々、ある意味、第2段階に入った産学連携をイノベーションにつなげていくというところに対して、今までやってきた制度や、今動いている人たち、現場でやっている人たちをちゃんと視野に入れて、では、事業プロモーターは何をやってもらうのかということを考えないと、やってきたことがあたかもないように、新しい事業プロモーターがポンと白地で動くような発想では、多分、現場が疲労するだけなのではないかと思いました。
 ではどうするかというと、既にこれもそれぞれの委員の方たちがおっしゃっているんですけれども、それぞれの現場に即した人間を選ばなくてはいけない。だから、おそらく一般化で公募して、スペックを合わせた人間を採るよりも、ある意味一本釣りで、名伯楽が責任を持ってその人を動かす、もしくはその地域で足りていないところにはまるような人間を採っていくしかないんだろうとすごく思います。
 ここのところを外すと、多分、せっかくの資料3‐2のような事業プロモーターが、どの地域でも、何ていうんですか、帯に、たすきにという話になりかねないというところを1つご指摘させていただきたいと思います。
 あともう1点、資料をいつも用意していただいて、具体的にはこういうパワーポイントのフィギュアなんですけれども、いつも思うのは、大学の先生はやはり研究資金が足りません、足りませんと常に永遠にこれからも言い続けると思います。とりわけベンチャーとかのお金に関していうと、そういう、当初のギャップファンドに近いところがないと言うんですけれども、これはもしかしたら、非常にうまくいっていると言われているスタンフォードでも、ファカルティーは言っているんじゃないかといつも思っております。せっかく2ページとかで起業前の政府資金等が足りませんということがあるので、アメリカではどうなんですか、アメリカでもやっぱり足りていないと言われていますよね、でも、この部分は日本とアメリカと差があるので、この部分に注力してみましょうというような、少し落とし込んだ分析が必要ではないかと思いました。以上です。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 それでは、南委員から、最後、できたら全体のことで、今後の進め方についてのサジェスチョンを含めて。

【南委員】  とんでもないです。もう時間も詰まっているところで、私があまりとりとめないことを言うのはちょっと避けたいと思いますが、ほんとうにここにいらっしゃるほとんどの先生方が現場のかなり具体的なご苦労とかをご存じの方々なので、発言の一つ一つが非常に重いと思って私は聞いているんですが、私が、知財とか産官学ということを特別専門にしていない全国紙の一般紙の記者として聞いていますと、やっぱりここの議論が非常に難しくて、ほとんど発言が毎回できないんですね。理解するのもやっという感じで。
 そういう意味で、前にもちょっと申し上げたと思うんですが、産官学ということにさかのぼれば、ほんとうに10年以上そういうことを耳にしてはいるんですけれども、今、この世の中の現状として、原発を見ましても、学問というものに対する信頼も、いろいろな新聞にいろいろな識者の方が書いておられますけれども、学者が自分の意見を世の中に直接発信することによって、いかに世の中が混乱してしまうか。
 もちろん発信するのが悪いという意味ではありません。いろいろなことが、情報が出ることはいいことだと思いますけれども、やはりその専門分野のコンセンサスというか、ある程度定まった意見みたいなものを社会に発信する仕組みみたいなものをきちんとつくってもらわないと困るということをいろいろな方が言われていると思うんですが、そういうことがもたらした学問の世界に対する信頼の失墜みたいなことが一方にはある。また、産業についても、今回の東電の問題とかそういうことで、信頼の失墜がある。
 なおかつ、非常にちょっと厄介なことには、私どもメディアも含めて、民間企業のわけですから、広告とかいろいろな形でそういう産業とも絡むという、そういう難しさもある中で、この産官学の重要性をどうやって世の中の人にきちんと理解してもらい、そこにお金をきちんと投資しないと、世界的に日本がもう科学技術立国と言って生きていけないということを、ほんとうに繰り返し繰り返しきちんと情報発信をしてわかってもらわないといけないとは思うんですけれども、この現状の中でそれがまず非常に手詰まりであるということです。
 それと、お話を伺っていますと、確かに今日の東大のお話なんかも、実際にかなりの業績があって、現在進行形ですばらしいことが進んでいるんだと思いますが、やはり地方に目をやれば、被災地も含め、とてもそういうことを、同じことをモデルとしてやれる状況にはないということ。
 それから、なぜ日本でイノベーションができないかとかという議論にいつもなるんですが、私は主に生命科学のほうをやっていますけれども、特に生命にかかわるところはそうですが、省庁の縦割りとかそういうこと以上に、日本人のやはりリスクを好まない国民性も非常に大きいような気がしています。
 ですから、そういうことを考えると、ものすごく世の中にこれを理解してもらって、ここにある程度の公費をそこに投入することへの難しさみたいなことが非常に大きいように思います。これを理解してもらうためのコミュニケーターというか、そういう人も含めて、きちんと育成していかないと、このテーマはとても先行き難しいと私は感じますので、それだけ申し上げます。

【柘植主査】  どうもありがとうございます。時間が来ましたので、今日のところはこの議論を打ち切りたいと思います。
 事務局の池田課長から、今日の議論も踏まえて、今後の作業等について説明をお願いします。

【池田課長】  いろいろなご意見ありがとうございました。今日の議論の中でも出ておりましたけれども、日本で産学官連携が本格的にスタートしてから十数年たって、この間、一定の成果は出てきたと思いますし、大学発ベンチャーも累計で2,000社を超えておりますが、まだまだ苦戦しているところが非常に多い。それから、大学でシーズはすばらしいものはたくさんあると思うんですけれども、それが実用化に結びついてイノベーションを起こすというところまで至っていないと。
 これをどうしたらいいかというのが、今日私どものご説明したたたき台でございます。これはある意味、今までは文科省は、どちらかというと、大学を所管しており、基礎研究を中心に支援し、各省庁が出口に近いところを支援してきましたけれども、今回、大学を支援しながら、出口を目指すという、そこを明確に出したというのが少し新しい取り組みなのかなとも思っております。
 本日いただいた意見をもとに、事務局としてもう少しブラッシュアップをしてまいりたいと思いますが、やはり私ども内部で議論している中でも、プロモーターをどういう方にしていただくか、そこが一番大事で、これがうまくいかないと、この仕組みは、課題も多いですけれども、プロモーターの人選次第ということであろうと思います。
 公募に関してもいろいろご意見が出ましたけれども、私どもの趣旨としては、広く人材を探したいということでありまして、いわゆる通常の公募のような形がいいのか、人の集め方はいろいろあると思いますので、本日出たご意見も踏まえながら、もう少し詰めてまいりたいと考えております。

【柘植主査】  それでは、資料4も説明していただいて、終えたいと思うんですけれども、これでいいのかな。

【池田課長】  今後の予定でございますが、資料4でございますが、次回は8月4日の13時から予定しておりまして、ここで、リサーチ・アドミニストレーター、これは今年度予算が初めてついた新規の事業でございますが、この状況をご報告し、将来的なあり方を議論していただくとともに、全体的な人材育成に関して、研究支援に関する人材のあり方についてをご議論いただきたいと思います。
 もう1つは、産学官ネットワークの強化をどう図っていったらいいかと、そのあたりもご議論をいただければと思います。
 4日の後が26日ということで、8月中に2回、先生方にご足労いただきますけれども、今日の議論も含めて、全体の、来年度の予算要求に向けてどういうことを考えているかと、この辺もご議論をいただけたらと思います。以上でございます。

【柘植主査】  ありがとうございます。
 今日ご発言いただかなかった方、いただいた方でも、プラス、今の池田課長のこの8月の作業に向けてこういう反映をしたほうがよいよということを、ぜひメール上でも事務局に届けていただきたいと思います。
 時間が参りましたので、これで閉会いたしたいと思います。大変ご苦労さまでございました。

お問合せ先

科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課大学技術移転推進室

(科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課大学技術移転推進室)