産業連携・地域支援部会 産学官連携推進委員会(第1回) 議事録

1.日時

平成23年4月15日(金曜日) 15時30分~17時

2.場所

文部科学省東館3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 議事運営等について
  2. 今後の審議事項について
  3. その他

4.出席者

委員

柘植主査、井口委員、石川委員、北澤委員、郷治委員、高橋委員、土田委員、常本委員、永里委員、橋本委員、原井委員、前田委員、三木委員、南委員、森下委員、渡部委員

文部科学省

合田科学技術・学術政策局長、常盤科学技術・学術総括官、佐野政策課長、池田産業連携・地域支援課長、木村地域支援企画官、寺崎産業連携・地域支援課長補佐、寺坂地域研究交流官、石田大学技術移転推進室長補佐、井上大学技術移転推進室専門官 他

5.議事録

○主査代理の選任について
 柘植主査の指名により、委員了承のもと野間口主査代理が選任された。
○産学官連携推進委員会運営規則について
 資料2に基づき事務局より説明後、原案の通り了承、決定された。

【柘植主査】  それでは、ただいまより公開で産学官連携推進委員会を進めさせていただきます。
  改めまして本委員会の主査を務めさせていただいております柘植でございます。また、野間口委員を主査代理に任命しております。一言、主査からごあいさつ申し上げたいと思います。
  産学官連携、これはほんとうに言われてから久しいと思います。委員の各位はおそらく10年以上産学官連携という形で携わってこられて、その歴史を十分ご存じだと思いますが、私自身も産業界に長くおりまして、一時、行政のほう、それから今は高等教育のことにおりまして、その経験の中で産学官連携の歴史を見ておりますと、一言で言うと着実に進化してきたということは、私も思います。
  その中で、きょうの時点の私どもの軸足としては、お手元の参考資料3、これは前期の本委員会、産学官連携推進委員会がまとめました「イノベーション促進のための産学官連携基本戦略」、副題が「イノベーション・エコシステムの確立に向けて」ということで、さまざまな紆余曲折を経て進化してきた現状のまとめがこの参考資料3であると私は思っております。
  この中で、非常に私は歴史の中で進化したなと思いますことは、5ページの「人材」のところで上のところに、これらの施策を実効性のあるものにするためには、「研究」、「イノベーション」、それから、その持続的発展を支える「教育(人材育成)」という国づくりの三大要素を三位一体で推進していくことが重要であると、こういうことが記述されて、さまざまな掘り下げを行っていることが現状だと思います。
  そういう意味で、今、産学官連携の現状としては、ここまで「イノベーション・エコシステムの確立に向けて」ということで、「向けて」でございまして、まだ確立されていないが、ここまで進化してきたと言えるでしょう。
  一方、翻ってみますと、昨年来から、国の再生のために「新成長戦略」が行政側で打ち出されて、産業のほうも懸命になって何とかこの世界同時不況を乗り越えよう、克服しようということで動きをしてきて、第四期の科学技術基本計画に向けた総合科学技術会議の答申も「科学技術とイノベーション政策の両輪」を打ち出していた矢先に、今回の東日本大震災に見舞われ、まさに国難ということに直面を我々はしたということでございます。
  従いまして、産学官連携に対する社会からの要請という面において、参考資料3に書かれた「イノベーション・エコシステムの確立に向けて」で目指している姿と現状とは、かなりやはりまだ乖離があるのではないかということを、今期の本推進委員会の1つの考えの立脚点に立たざるを得ないと私は感じております。
  そういうことで、一方では、今、第四期の科学技術基本計画の再構築に向けて内閣府も作業をしておりますが、間違いなく言えることは、産学官連携の今までの我々の蓄積によって短期的に即効で効果を発揮できるものと、それから、やはり今までのようにじっくりと中・長期的にきちっと積み上げていくというものの2つの軸を同時に回していくことが不可欠だと私は確信しております。
  そういうことで、各委員皆さん方、ぜひとも知恵を出していただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。
  それでは、議題(2)の今後の審議事項につきまして入りたいと思います。事務局から説明をお願いいたします。

【池田課長】  それでは、資料3と、それから先ほど柘植主査からご紹介のありました参考資料3に基づきましてご説明させていただきます。
  資料3は、先ほどの部会でもご説明させていただきましたが、「産業連携・地域支援部会における調査審議事項等について」という資料でございます。
  1には、先ほど主査からもご紹介がありましたように、この委員会の前の期に当たる部会におきましていろいろご審議いただいており、特に大きなものとしては、1つ目の黒丸のところの第四期科学技術基本計画の策定に向けて重要事項をとりまとめていただいております。
  それからもう一つは、この前身の委員会のもとに小委員会も設置いたしまして、今後の産学官連携の基本戦略についてとりまとめをいただいております。これが参考資料3でございますが、全体の概要をざっとご説明させていただきます。
  参考資料3の30ページをごらんいただきますと、上のほうに「別添1」と書かれた基本戦略の概要がございます。
  この基本戦略におきましては、一番上の細長い括弧にございますように、科学技術駆動型のイノベーション創出に向けまして、国、自治体、大学、公的研究機関、企業、金融機関などのさまざまなセクターが相互作用をして持続可能なイノベーションを創出していくということで、これを「イノベーション・エコシステム」と位置づけて、この確立が必要であるということで提言をいただいております。
  具体的な策としては、真ん中の四角い枠に囲ってございますけれども、3つの事柄が提言されておりまして、まず1つは、「産学官による『知』の循環システムの確立」ということでございます。特に産と学が基礎研究レベルから対話をして産学連携を深め、課題を解決していこうという「知のプラットフォーム」ということもご提案いただいております。
  それから、2でございますが、「大学等における産学官連携機能の強化」ということも大きな柱でございます。
  具体的には、2-1にございますように「産学官協働ネットワークシステムの構築」ということで、特に産学官に加えて金融機関なども含めたネットワークの構築が大事だと。あるいは、出口イメージを共有した共同研究の推進の在り方ですとか、2-3のところで知財の戦略的活用ということで大学の特許の戦略的な集積やパッケージ化なども提言をいただいております。
  それから、3では、「専門人材の育成」ということが挙げられると思いますが、1つは産学官連携による教育プログラムの構築、もう一つは、特にその中でもリサーチ・アドミニストレーターなどの研究支援人材につきましてもご提言をいただいております。
  こうした取り組みによりまして、一番下のところにございますけれども、「教育」「研究」、それから「イノベーション」の3要素を三位一体で推進するということが全体の大きな流れでございます。
  もとの資料3に返りまして、こういった前期の部会でのご審議を踏まえて、今期2年でご審議いただきたい事項としては、2の(3)に挙げてあるような課題があろうかと考えております。
  大きく分けると2つのまとまりになろうかと思いますが、まず「産学官の「知」のネットワーク強化」、「産学官協働のための「場」の構築」、そして「地域イノベーションシステムの構築」、「知的財産戦略の推進」ということでございまして、これはどちらかというとシステムとか仕組みの在り方をご検討いただくことがポイントになろうかと思います。
  なお、先ほどの部会でもいろいろご意見が出ましたけれども、特にネットワーク強化を図る上では、産学官に加えて金融機関の知恵とネットワーク力もかりていくべきだというご意見もございました。
  それから、地域支援のところでは、「ローカリズム」と「グローバリズム」があるかと思いますけれども、地域支援に当たっても、常に「グローバリズム」の視点が必要であるというご意見もありましたし、一方では、地域支援ということを考えるために、地域支援のための産学官連携の在り方も考える必要があると、そういったご意見もございました。
  それから、大きな2つ目のまとまりでございますが、「社会と科学技術イノベーション政策をつなぐ人材の養成及び確保」、そして「研究活動を効果的に推進するための体制整備」でございます。
  これにつきましては、柘植主査からも部会でご発言がございましたけれども、「人材育成」という中には2種類考えられるであろうと。1つは、ここの3行の文章でイメージしやすいのは、先ほど申し上げたリサーチ・アドミニストレーターのような産学官連携を担う人材の育成と、もう一つは、高等教育の実質化にもかかわると思いますけれども、高等教育において大学院生や学生などの若手の教育をどう考えていくか、就業力といったようなことをどう培っていくかということと、その両面があるというご意見のご発言がございました。
  それから、枠で囲ってある下にございますけれども、東日本大震災を受けまして、先ほどもございましたけれども、第四期科学技術基本計画も、復興支援のために何ができるかということで現在見直しの検討中でございまして、この委員会におきましても、産学官連携や地域支援の観点から、復興の支援、我が国の再建のためにどういったことができるであろうかということもご審議いただければと考えております。
  これにつきましても、先ほどの部会では、安全・安心に向けた取り組みですとか、あるいは地域の再生支援という観点から5年から10年くらいを見通した支援も必要ですし、それから、当面すぐにできる支援も考えていく必要があるだろうといったようなご意見もいただいております。
  当面のスケジュールでございますが、(4)に書かせていただいておりますとおり、本日、部会とそれから第1回の委員会が開催いたしまして、部会のほうは8月をめどに第2回を開催させていただければと考えております。それまでの間は、この委員会を中心にご審議いただければと考えております。
  以上でございます。

【柘植主査】  ありがとうございます。
  いろいろなご質問とご意見があろうかと思いますが、本日は初回でございますので、まずは本委員会における検討課題と大学における産学官連携の現状、政府の動向、これについて事務局から説明いただきまして、それもあわせて委員の皆様からご意見を伺いたいと思います。
  では、事務局、お願いいたします。

【池田課長】  それでは、資料4を中心にご説明させていただきたいと思います。資料4は、「産学官連携推進委員会における検討課題(案)」というものでございます。この資料は、先ほどご説明した資料3をさらにブレークダウンしたような形でまとめさせていただいております。
  まず、1は、これは中・長期的に検討していただく必要がある総論でございますが、産学官連携は本格的に我が国でスタートしてから10年と少しがたったわけでございますが、かなり課題もいろいろ見えてきて、成果も上がっている一方で課題も明らかになってきておりますので、この辺である程度原点に立ち返って、大学の使命との関係でご議論いただく必要があろうかと考えております。
  それから、産学連携を推進していく上で国際関係も避けて通れなくなっておりまして、こうした国際協力の中で産学官連携の在り方を考えていただく必要がございます。それと、地域科学技術支援との役割分担とか関係の整理も必要かと思っております。
  続きまして2は各論でございますけれども、大きく分けると、(1)と(2)のようなことがございますが、1つは前期の基本戦略でご提言いただいたイノベーション・エコシステムを実際に産学官の連携の中でどう展開していくかということでいろいろな課題があろうかと思います。オープン・イノベーションを考える上での大学の果たすべき役割とか、あるいは研究の成果を展開していく上で競争的資金、これは昨年度の仕分けでも議論の俎上に上っておりますけれども、この適切な在り方につきましても課題であろうと思っております。
  それから、大学の成果の活用促進、あるいはベンチャー支援の在り方、4では産学官ネットワークの強化の在り方、特にTLOと大学の知財本部との連携の在り方も課題であろうかと思っております。
  また、5のところでございますが、これまでは特許の出願数ですとか、共同研究の件数や額ということに目が行きがちでしたけれども、そういった数値にあらわれない、例えば地方の自治体と連携した大学の取り組みですとか、地域で非常に存在感を発揮している大学もあろうかと思いますので、そうした取り組みをどう見える化していくか、そういった成果指標についても重要な課題だと認識しております。
  それから、2つ目のまとまりでございますけれども、イノベーション・システムの基盤強化ということで、先ほども申し上げましたリサーチ・アドミニストレーターにつきましては、23年度の予算で芽出しができたわけでございますが、これが若手の人材の新たなキャリアパスとして定着していくためには、どういった展開の仕方が考えられるかということが課題かと思います。
  それから、2のところでは、先ほど申し上げた教育の点についても、「産学官連携の人材育成」と言ったときに実際の若手をどうやって教育していくかということも大きなポイントかと思います。
  それから、これまで成果を上げている例も幾つも出てきているわけでございますが、こういった情報をどう共有して発信していくか。
  4のところでは、さまざまな社会的な要請がございまして、安全保障ですとか、あるいは利益相反に関する取り組み、各大学でいろいろ検討しているものもあろうかと思いますが、そうしたさまざまな課題への対応もあろうかと思います。
  それから、先ほど資料3でもご説明いたしましたように、東日本大震災を受けた復興対策で何ができるかと、こういったこともあろうかと思います。
  今申し上げたような検討課題につきまして、政府全体ではどんな方向で政策を進めているかというものをまとめたのが資料6-1でございます。
  資料6-1の横長の表がございますけれども、左側の見出しは先ほどの資料4に沿ってつけておりますが、資料4の各論の部分について、それぞれ左側の枠には今回の第四期の基本計画のもととなります昨年末の「科学技術に関する基本政策について」という答申の関係部分を抜粋してございます。それから右側の枠には、政府全体の知財を検討している中で2010年と11年の知財推進計画の骨子の関係部分でございます。
  まず、オープン・イノベーションにつきましてはいろいろな提言がなされておりまして、「共創の場」という、産学官が連携して研究開発と人材育成を行う拠点としての競争の場の形成促進ということが書かれていたり、あるいは、その下のところに、「競争」と「協調」によってオープン・イノベーション拠点を形成するというような、こういった提言もなされております。
  それから、その下に「先端融合領域イノベーション創出拠点」、これも私どもの課で担当させていただきますが、こうした拠点の形成が言われております。
  それから、2の「成果展開」の競争的資金制度の在り方につきましては、これは答申でも、それから右側の知財推進計画でも、同趣旨の提言・方向性が示されておりますけれども、マッチングファンド等によりまして民間資金の活用も視野に入れながら、大学が持つシーズをいかに社会に還元していくか、こういう仕組みが必要であると。それから、税制上の支援ですとか、規制緩和、こういったものも提言されております。
  それから、2枚目をごらんいただきたいと思いますが、知財を含む大学の研究成果の活用や大学発のベンチャー支援の在り方ということで、これもいろいろな観点からの施策が提言されておりますが、特に上から3つ目のところでは、起業家精神の涵養ですとか、起業体験教育、人材育成ということも言われておりますし、それからベンチャーの活性化ということで、エンジェル投資も含めて新たなベンチャー支援策を検討するということも言われております。
  それから、右側の知財の関係では、先ほど施策のところでも申し上げましたけれども、大学の特許のパッケージ化ですとか、公的投資機関の知財ファンドを通じての活用の仕組みを構築、といったようなことも提言されております。
  3ページ目に移りますと、「産学官ネットワーク強化方策」ということでございますが、ここでは左側の一番上にありますが、産学官に加えて特に金融機関などの関係機関との連携ということも言われておりますし、TLOと大学の産学連携本部との在り方についても言われております。
  それから5の「新たな成果指標の導入」のところですが、これは先ほどもご説明したように、産学官連携の成果を総合的に検証するような指標の確立ということが指摘されております。
  それから、(2)の「イノベーション・システムの基盤強化」というところでは、リサーチ・アドミニストレーターにつきましては、答申でも、それから知財推進計画でも大きな位置づけをしていただいております。
  それから、もう1枚めくっていただきまして2のところですが、教育における取り組みにつきましても、先ほどのご説明とも重複しますけれども、人材育成に関する共通理解を図るため、産学官の対話の場を設けるというようなことも、これは担当としては高等教育局に近いかと思いますけれども、こういった教育面についても提言がございます。
  それから、3の事例の共有・発信につきましても、ここに書いてあるようなことが言われております。
  それから、社会的要請への対応につきましてもここにあるとおりでございますが、特に科学技術を担う者が倫理的・法的・社会的課題を的確にとらえていくための指針が必要ということで提言をいただいております。
  それから、資料5といたしまして、大学等における産学官連携の現状について、これも先ほどの項目に沿ってまとめさせていただいております。これは時間の関係でご説明を省略いたしますので、後ほどごらんいただければと思います。
  それともう一つ、最後に参考資料2として、私どもの産学連携関係の施策をまとめておりますので、これも個々には説明いたしませんけれども、後ほどごらんいただければ幸いでございます。
  以上でございます。

【柘植主査】  ありがとうございます。
  約40分ほどございますので、できるだけ多くの委員の方々からご発言いただきたいと思います。
  幾つかの資料にまたがっておりますけれども、要約としてはやはり資料4が今回の産学官連携推進委員会における検討課題、これが主軸になろうかと思いますので、ほかの資料も引用しながら、資料4のところで充実すべきところとか、もっと深掘りすべきところとか、このあたりのご発言をいただきたいと思います。今後の審議の中で生かしていくということの自由なご発言をいただきたいと思います。
  どなたからでも結構でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
  石川委員、よろしくお願いします。

【石川委員】  資料4のご説明は、今の池田さんのご説明だと、「検討」「検討」という言葉が何回も出てきたのですが、今の産学連携でどこかにもう答えがあるということはまるでないので、ここで言う「検討」は、どこかから案が来たのをここでいい・悪いを検討することでは決してないという、そういう検討ではないのだということを我々は肝に銘じてやらなければいけない。つまり、新しい施策として何を出すべきかということを、検討よりは提案、施策へどうやってつなげていくかという議論をここでやるべきだと強く思います。
  それがないと、総論だけの絵にかいたようなもちになってしまって、総論はいいんだけれども、各論なしというのではだれも動けませんねということになってしまうので、私としては10年をやってきて、綿密な調査あるいは現状の把握をした上で次のジャンプアップをどうやって我々は施策として取り入れるかということをきちんと提言していく責務を負っているのではないかと思います。
  その背景には、ここにある資料5のような中でも、伸びてはいる。だからといって、伸びていることに対しては満足してはいけないわけで、さらに伸びないと、米国やヨーロッパに比べて非常に規模の小さな産学連携に陥ってしまう可能性がありますから、もっと上を目指すために我々は積極的でクリエーティブな、我々こそが創造的な施策の提案をしていくべきではないかと思います。

【柘植主査】  ありがとうございます。
  大変な、今の石川委員自身が10年以上、多分ご苦労されてきて、まさに今はそのときだと。普通の意味の検討ではないと。具体的施策の設計、提案、各論でということでございますね。ありがとうございます。
  ほかにいかがなものでしょうか。
  三木委員も相当長いご経験を、成功、苦い経験、それぞれあるんですけれども、いかがなものでしょうか。

【三木委員】  今、石川先生が言われたことは非常に大事なことだと思うのですが、それにプラスして、まだ具体的に詰め切れてはいないんですけれども、少し発言させてください。
  1つは、今回の大震災を機に、どういう国づくりというところが非常に今求められているのだと思います。ここでは、「復興」プラス「イノベーション」だと私は思っています。今までのこの委員会の中でずっと議論していたことは、どうしても国内の産学連携に非常に目が行っていた。一部、国際的な産学連携を進めていこうということをやってきましたけれども、おおむね国内がいろいろな統計データをとるときでもそこに焦点が行ってしまうというようなところがあったように思っています。
  今回の震災を機に、国際的にも我が国をいろいろな形で支援しようということが、諸団体、もちろん科学技術の関係のことは私などよりも北澤先生のほうがお詳しいのだと思うんですけれども、そういうネットワークを通じてもっと世界と一緒にやることを考えていいように思います。未曾有の危機ですけれども、これをどう捉え、教訓を引きだし対応していくかという視点で、第四期の科学技術基本計画の策定のこともございますので、従来、十分に検討されていなかった手段も含めもう一歩深めていくのがあるのではないかと思います。若干感想めいたことで申しわけないんですけれども、そんなふうに感じております。

【柘植主査】  大変重要な今の指摘だと思います。このチャンスの中で大学がどれだけ国づくり、「復興」プラス「イノベーション」にコミットできるかという視点、あるいは今の国際的にも日本を支援するコラボレーションの中で、日本側でグローバル対応能力を持った人材も育ってくるだろうし、さまざまな点で今のご指摘は大変に意味があると思うのですけれども、産業、今の第四期科学技術基本計画の見直しというかリストラクチャリングの中で経団連として永里委員、今の話について何か、もちろんほかのものでも結構でございますけれども。

【永里委員】  今のご発言に直接私が答えられるかどうかはちょっと疑問がありますけれども、産学官連携ということを考えたときに、あまりにも高等教育、あるいは高度人材に関しまして、アメリカと日本でちょっと違いがあるようで、アメリカのいわゆる大学院博士課程を出てきたような人たちは、非常に幅広いベースを学んでいます。だから、経済から、法律から、すべて学んだ、かつ、それが技術系、科学系の人たちなんですけれども、そういう人たちがこういう震災に遭ったときとか何とかというときには、かなり彼らは活躍できる素地があるのでしょうけれども、我々のほうの日本人は、博士課程を出た人が非常に専門化されていまして、ある部分では強いけれども、ある部分はあまり詳しくないということで、あまり人材が活用されるような場になっていないというようなことがあると思います。
  それで、ちょっと1つの例を出します。
  「インターンシップで米国有力大学の大学院生を使った。『ある化成品を生産するプラントを設計せよ』という課題を与えると、単なるプラント設計ではなく、エネルギー収支、コスト分析、特許分析などまで含めたトータルの最適設計をしたレポートを作成。日本の大学生では考えられないレベルであり、教育システムの差で知っている範囲が全然違ってくると。米国のドクターは知識ベースが広いのに比べて、日本はあまりにも専門化、タコつぼ化していて、テーマが変わると適合できない場合が多い。米国有力大学卒のドクターのエンジニアは企業で即戦力となる広い知識を持っており、専門知識以外適合できない日本のドクターとは格差あり」と。
  これはちょっと経団連といいますか、産業界側がつかんだアメリカの高度人材というか、高等教育、さらに大学院教育、博士課程教育を受けた人の人材のことを紹介しておりますが、まさしくこのとおりで、我が社なども、日本人で向こうのほうでドクターを取ってきた連中は大体こういう能力があるんですけれども、日本の大学のほうではこういう能力ではなくて非常に専門化している。
  それで考えなければいけないのは、今の大学教育における教員、大学教授の在り方から、資質からして変えてこなければいけないのではないかと思います。だから、産業界の経験を吸い上げて大学の国際競争力をつけることが必要であり、ビジネスの実情に詳しい産業界出身の教員を強化すべきではなかろうかと思います。
  私、今の柘植主査のお話に直接答えているとは思いませんけれども、間接的に答えているような感じになっているんですけれども、要するに国際的にコラボレーションするとか、あるいは今回の震災で応用動作を発揮するとかというときには、どうもこの日本の今の専門化された高度人材教育は、ちょっと欠点があるのではなかろうかと。だから、その欠点は、いわゆるノーベル賞をもらうための研究発表をするのが一番よかったという旧来の大学の在り方ではなくて、産学官連携を推進するような、こういう考えに立つと、大学教授の選定基準からしてちょっと変えてこなければいけないのではないかと。そうすることによって人材は強化され、今おっしゃったようなことにも対応できるような人材が育ってくるのではないかと。非常に時間のかかる話かもしれませんけれども。

【柘植主査】  あとは後ほどまた。ありがとうございます。
  今の永里委員のお話は、根っこ、先ほどのこの参考資料3の前期のこの本推進委員会がまとめた「イノベーション・エコシステムの確立に向けて」というのは、多分、避けては通れない、教育と、研究と、イノベーションというものを自律的に回していくイノベーション・エコシステムの確立に向けて避けて通れない命題だなと位置づけられるのではないかと思います。
  一方で、大学人としては、また、多分、言い分もあると思うんですけれども、どうぞ。
  井口委員、お願いします。

【井口委員】  今、3人の委員の方々が言われたこと、それぞれ、私もごもっともだし、以前からの前の委員会でもいろいろお願いしたりしてきたんですけれども、やっぱり今言われた、ここのところに、2の(2)の2に「産学官連携の教育における今後の取組の方向性【長期】」と書いてあって、これはかなり以前から言われて、やられてきているんですけれども、ぱっと盛り上がってはぱっと消え、これは通産省時代から、そのあと中小企業庁の支援もあったりして、そういう産業界の人といかに活用しながら人材育成をするというプログラムが結構走っているんですけれども、大体2年とか3年で終わるんです。
  それぞれ大学も、私ども大学と高専で、今、弘前大学なんですけれども、そういうところがやっぱり今、先生方が非常に忙しいものですから、そういうことのお金が来るとエクストラで非常勤とか、それこそ外国からも呼べていろいろできるんです。だから、やっぱりこれは長期というようなことでお金のほうも含めながらサポートしないとだめだなと。
  実は、ご存じだと思うんですけれども、経団連、それから文科省、経産省で「産学連携人材育成パートナーシップ」というのをやって、私も材料系、9部門あったわけで、それのまとめがほぼ出て、いかに産業界と連携しながら人材育成をするかというまとめが9分野でもう冊子も出ているわけで、あれもかなりカリキュラムを含めた実効的なんですけれども、さていつも話題になるときに、それではそういうことを教えられる人材が大学にいるだろうかと。徐々に徐々に産業界からとか官から大学にかなり入ってきているんですけれども、まだまだ実際に以前からいる先生方は法人化になってからものすごく忙しくなって、融合的とか境界的な勉強をする余裕がないと。ですから、そのために手助けしていただくのだったら、外からの方を呼べるようなシステム。大大学はかなりお金があるんですけれども、地域の大学だとか高専レベルだと、そういうプログラムがないとできないんです。
  だから、教育というのは、やっぱり長期ですので、その辺のことも――大学ができなかったという言いわけをするつもりはないんですけれども、それぞれのところを一生懸命やっていますので、ぜひ国の施策としては、「長期」と言った以上は教育はかなり長期にわたってそういうサポートをしていかないと、どんどん人材は育っていかないし、教えられない。ここで「アドミニストレーター」といいことを言っているんですけれども、その上の人が枯渇してしまっているわけですので、ぜひそういう点でも、この委員会とかそういうところでもんでいただきたいと、このように思っております。

【柘植主査】  産業界、大学、同じ命題ですが、別からのこの攻め方は今のお二人のご発言、両方とも私は今後の検討かつ具体的な施策に落とし込むべき論点だと思います。
  関連やほかのでも結構でございますけれども、どなたからかご発言いただけませんでしょうか。
  どうぞ、渡部委員。

【渡部委員】  検討課題、資料4に書かれていることは、私も随分いろいろ今まで議論させていただいたことで、先ほど石川先生がおっしゃった具体的・効果的施策をしっかりするということで参画していきたいのですが、一方で、大震災ということがあって、これはやはり大きく社会と大学の関係や社会、日本経済そのものに対する影響は大きいわけでありまして、これがこの施策1つ1つにどういう影響を与えるかというのは、大きな論点であろうと思います。私もまだ全然整理ができていません。
  実はこの産学連携をやっている10年の間にリーマンショックもありました。このときは、産業界が新興国市場でシフトした、それによってやはり大きな影響がありましたけれども、今回はそれ以上の大きな影響が出てくると思います。
  そういうことをまずやはり整理をしないといけないということですが、そのためには、今日の委員会には被災された3県の大学の方がおられないのですが、私は被災3県の現在の大学の方、あるいは産学連携をやっておられる方、そういう方の意見を聞く機会、それどころではないのかもしれないんですけれども、そういう現場の状況を踏まえる必要はあるのではないかと。
  私は、産学連携をやっている東北大学の先生から現状についてのメールをいただいたりしています。この文章にあるネットワークの確立というのも、これは今から始めるわけではなくて、今までずっと努力してやってきた。その先生の話によればそのネットワークが危機にひんしている。東北大学である企業とやっていて、企業さんがもう全壊、全く事業ができない状態で、そのときに何か自分のメモを破って「先生、これ、私はあきらめていませんから」というのを2週間後に避難所から届いたみたいな話を聞かされまして、これはまさしく、ここでは「ネットワーク」という格好いい書き方なんですけれども、産学連携のネットワークがひとつきずなになっている例ですが、大学も被災していてそれが継続できないかもしれない。
  こういうものをともかく絶やしてはいけない。何とかこれをしっかりした成果に結びつけて絶やさないようにするという、その何か支援をできないと、ここで意義が見えないと産学連携の今までの真価が問われてしまうと思います。
  したがって、まず、被災3県における産学連携の状況を把握すること、そして大学側も傷ついていますので、ほかの大学を含めてこれを何とか盛り立てていくというのがまずこの具体的なネットワーク、イノベーション・エコシステムのほんとうの実践になると。短期的な部分ですけれども、そのためにはどういう組織をつくって、どういうやり方をやっていったらいいかというような議論を必ず入れていただきたいと思います。それから、これに関係して、社会、特にエネルギー事情等に非常に今、切迫があって、そういうものに対して産学連携をどういうふうに活用していくのかということも、やはりこれは当然整理をしていく必要があると思いますし、それから、3番目に、外国との連携も、今まで国内の資源を使って重い荷物、雇用の問題ですとか、少子高齢化だとか、いろいろな荷物を何とか日本の資源を使って持ち上げようとしていたわけですが、ここでまたGDPの5%くらいと言っていますけれども、震災で傷ついてしまったわけです。ここは外国との連携でそれを補っていくということは、ますます今まで以上に必要になってくる。これは言葉としては「オープン・イノベーション」かもしれませんけれども、そういうようなところを大震災以降の施策を見直すということをぜひやっていただきたいと思います。
  以上です。

【柘植主査】  ありがとうございます。
  森下委員、どうぞ。

【森下委員】  今の渡部先生のご意見に大変賛成なんですが、私は大阪なので、阪神大震災を経験していますけれども、やっぱりこれは非常にほんとうに大変なんですね。日がまた上るのは間違いないんですけれども、阪神大震災でも15年、正直、関西はかかっているわけです。おそらく、東北の場合、多分、阪神の数十倍の規模ですから、ほんとうに20年、30年、このままいくと復興に大変な時間のかかる可能性が非常に高いと思うんです。
  そうした中で、やっぱり立ち直ってもらうというのは、これは日本全体で絶対やらなければいけないことです。そのために何をするかということで、今言われたように、被災している方の地区に、正直入れないというのが一番大きな問題です。
  この委員会として短期のことをどこまでやるかという問題はあるんですが、私としては、今お話があった被災3県の大学なりにコーディネーターを配属して、大学が何に困っているか、地域の中小企業は何に困っているか、地域支援ではなくて、やっぱり地域再生支援の具体的な施策を、まずニーズを取り出してほしいと思います。
  機械等がないのであれば、西日本の大学なりに余っている機械とかいろいろなものがありますから、そういうものをできるだけ早く届けてあげる。これは実は科研費の問題もあり、大学からの移転は非常に難しいんですけれども、その話は取り払って、とりあえずあげられるものといいますか、移転できるものは移転すべきだと思いますし、あとは海外の留学生等もそこでもう生活ができないというので卒業をあきらめなければいけない、あるいは卒業ができない、研究ができない人たちもいらっしゃると思うんです。それも一時的に西日本の大学を中心にして受け入れるということをすべきだと思うんです。
  できるだけ早急にやらないと、風評被害だけではなくて、日本としてせっかく日本に来てくれている人たちやその地区で悩んでいる大学に対して何かしてあげないというのは、これはあまりにひどいというか、よくないと思うんです。
  そういう意味で、ぜひ短期の施策もこの委員会の中でどこまでできるかは別にして、産学連携のかなめは、先ほどお話しのようにきずなだと思いますから、ぜひそこを支援してあげてほしいとほんとうに思います。
  それから、もっと長期的な課題なんですけれども、今回の中で変わったことの注目点は、首都の一極集中がよくない。これは以前からずっと言われていることですけれども、はっきりしてきた。ただ、これは首都機能の移転とかではなくて、今、各地区、クラスター形成の中で移転すべきものは移転したほうがいいのではないかと思うんです。あるいは、複合的な機能を持つ。以前から私どものバイオ領域であれば、東京だけではなくて大阪にも医薬品の認可の機能を持たせないかというような話をしていますけれども、別にこれはバイオ領域だけではなくて、工学系であったり、あるいはほかの情報関係とかいろいろなところで複合的な視点の中で、地域の活性化の支援策、産学連携の支援策を練っていくべきだと思うんです。そうした意味では、長期的な視点での日本全体を見たときにどういう機能分担をすべきかということも視野に入れてもいいのではないかと思います。
  最後の点としては、私自身は今回アジアの国、世界でもそうですけれども、日本に対して支援策は、正直、貧しい国も非常にやってくださったと思って、これに対して日本として何らかの貢献といいますか、お礼を打ち出す必要があるのではないかと思います。それは、アジアとの単なる「連携」という言葉ではなくて、日本しかできないことが幾つかあると思うんです。
  先ほども本会のほうで言いましたけれども、尊敬される日本にならなければいけないと思います。例えばバイオ領域であればアジアの難病支援であったり、あるいは感染症領域、そうしたものに対する支援策ですね。そうしたことに関連するクラスター形成とか、あるいは産学連携とかをトップダウンとか集中的に打ち出すような仕組みが要るだろうと。
  グリーンに関して言えば、やはりもう脱原発といいますか、原発をとめろとは言いませんけれども、ただ、今後、新規に日本にできるとは私は思えませんので、やはり太陽光なり、あるいは持続可能なある程度の自己発電型の住宅機能とか、そうした将来的なエネルギー政策を省エネも含めて方向性なりを打ち出していって、それにかかわるような産学連携のところを集中的に支援する。ポリシーがはっきりしたことを打ち出すべきではないかと思います。
  今まで、この委員会でもずっと議論をし、かなり内容は出てきたと思うんです。けれども、目に見えないというのが一番大きな問題点だと思うんです。今回は目に見えないと、この産学連携をやっている意味が非常に問われると思うんです。日本の復興の最初は、もうこれは国民全部挙げて支援すべきですし、その方向性を示すべきだと思いますので、何かそういう長期的な日本の方向性としてこういう領域を産学連携で盛り立てていくというところも一部出していきたいと思います。

【柘植主査】  今、短期、長期のことで大事なことをたくさん言われまして、これはぜひアジェンダとして取り上げたいと思うんですけれども、短期的な話で被災大学が地域のほんとうのニーズを酌み上げる活動は既に始まっていると思うんですが、我々、スキームとしてコーディネーターを既に置いています。先ほどの話はコーディネーターの強化ということもおっしゃったんですけれども、その組織の中で各大学が既に被災地域のこのニーズの吸い上げはされていると思いますが、コーディネーターを介してこの産学連携の推進委員会にフィードバックがかかってくるような動き方は既に、池田課長、何か動きを始めているか、あるいは、今後そういう視点でも動いてみたいというか、どういうふうにお考えかを聞かせてください。

【池田課長】  まだ現時点では被災状況を把握したりということにとどまっております。きょうも東北大学の方がお見えになって状況をいろいろお聞かせいただいていますけれども、徐々に私どもも産学連携の立場からというのももちろんございますけれども、研究振興局を中心に状況を把握して、短期的、中・長期的に何ができるかというのを検討している最中でございます。コーディネーターを活用することも検討してみたいと思います。

【柘植主査】  ぜひ、コーディネーターだけではないかもしれませんけれども、ほんとうにイノベーション・エコシステムが被災地域対応でできなかったら、どこでもできないのではないかと、そんな風にも思いますので、今の視点は非常に大事と思います。 

【森下委員】  済みません、1点だけ追加させてください。
  大学だけではなくて、高専を調べてほしいんです。特に水産関係の高専は多いので、正直、多分、バイオ・リソースとか、いろいろなものが失われている可能性が高いと思うんです。特に電源が切れているというのは実はすごくきいていて、もうかなり立ち直るのは大変なところがほんとうのところあるのではないかと思っていますので、メールベースでほんとうに個人でしか今は情報が入ってこないですね、渡部さんが言われるように。ここまで近代国家とは思えないような現状なので、もうぜひ近代国家としての統合的な形を見せてほしいと私は思っていますので、ぜひよろしくお願いします。

【柘植主査】  ありがとうございます。
  前田委員と――被災地域として、井口委員、どうぞ。

【井口委員】  私、東北で東北大学の現状と東北地区高専のデータ、3月31日まで八戸高専の校長だったので、全部の高専地域のデータを持っているんですけれども、東北大学は研究所群の片平地区は、ダメージは比較的少なかった。工学部系統の理学部系統の青葉山はかなりダメージで、建物もエレベーターが落ちてしまったとか、屋上の水槽が6階に落っこったりとかしたんですけれども、立入禁止になっているんですけれども、みんな入ってデータ等は取り出したり、重要な機器を取り出して、かなり動いてきつつあります。
  それで、東北大学の産学連携、多くは大企業なものですから、大企業は立ち上がりも早くて、大企業は点々と方々にありますので、多分、東北大学は今一生懸命、日夜やっているんですけれども、日夜の片づけが半月ぐらいでかなり終わってきましたので、立ち上がってきます。
  それで、研究所群と連携してやるというのが一番なんですけれども、なかなか学部と研究所は難しいところもないことはないんですけれども、ただ、岩手、福島、弘前とか高専は、地域の中小企業といろいろなことをやっているんですね、産学連携を。これは、中小企業は、なくなってしまった中小企業もあって、八戸は今、私も行っているんですけれども、八戸の中堅企業というか、大企業の傘下の工場群は立ち上がりつつあります。来月中と6月ぐらいにほとんど操業開始、輸出開始できるような状況になってきているんですけれども、姿をなくしてしまった中小企業も結構あって、それは高専もそういう連携をやっているんです。
  森下先生の言われた生物で、八戸高専も夏休みとか冬休みは絶対電気を絶やしてはいけないという動物とか生物があって、かろうじて私どもは生き延びさせました。そういうことでいろいろ高専のそういう生物系統のもので電気がとまってしまったところは非常に厳しいんですけれども、今のところ、一番厳しいのは福島高専。福島高専は原発で半分避難のところに入ってきているものですから、ここは非常に厳しい。
  ただ、人的被害があるのは仙台高専だけなんです。ほかは建物も、人も、ほとんど大丈夫で、かなりのスピードで機構も応援してくれているので、立ち上がりつつあります。八戸高専は年度末・年度始めのスケジュールも全部予定どおりやっておりますけれども、今月から通常の学事スケジュールに、今月末からほかの大学も入ってきつつあります。弘前大学も25日に入学式をやって、連休明けから授業を再開と。どの大学もそうでございます。
  そういう意味では、震災のところで、今言ったようなコーディネーターとか外から来たようないろいろな方の支援、これは非常に重要で、特にフォーカスしていただきたいのは、東北大学はもちろん大企業なんですけれども、東北大学だっていろいろ中小企業とやっている方がいますので、高専だとか、福島大学、岩手大学、弘前大学、それから私立大学ですね、その辺、石巻専修、あるいは郡山、そういうようなところと工業大学、そういうところの産学連携はものすごいダメージを受けております。そういう点で、ぜひいろいろな緊急とまた長期もそうなんです、先ほどはちょっと教育のことだけ言わせていただきましたけれども、みんな非常に日本人の底力で頑張っているところですけれども、今、震災後の1カ月ちょっとたって、だんだん息切れしてくる。ここでやっぱりひとついろいろな地域で支援と。弘前大学は被曝医療のセンターを持っておりますし、一番震災に遭っていませんので、ですから、もう何十人と、80人ぐらいの医師等を方々に出しておりまして、被曝医療の研究機関をつくったばかりです。我々は、青森県の被曝ということを念頭につくったばかりだったんです。被曝救急救命センターをつくったんですけれども、まさか福島の原発にすぐに役立つと思ってもみませんでした。おととい第7次の被曝医療のチームを送り出しました。
  どうも済みません、そんなことでした。

【柘植主査】  どうもありがとうございます。
  時間があと10分足らずなので、前田委員、それから北澤委員、何かご発言をお願いしたいと思います。

【前田委員】  先ほど、森下先生や井口先生からコーディネーターのお話しが出ましたので、コーディネーター事業についてお話しさせていただきます。私、2年ほど前に移りました機関でコーディネーターのネットワークの事業を池田課長のところから昨年、今年と受託させていただいております。コーディネーターの方々のネットワークをお手伝いし、種々の会議を行うお仕事をさせていただいています。昨年も18の大学のお手伝いをいただきまして、各地域でコーディネーターの会議をしました。
  産学連携を行うには、コーディネーターの方の力がすごく必要だなというのは日々感じていると共に、高専で行わせていただいた際に、高専の先生の意欲であったり、中小企業の方とつなぐときの高専の力はとても大事だなというのを痛感致しまして、先ほど先生方がおっしゃられていた内容とほんとうに同じだなと思っています。
  また、今回のコーディネーター事業の中にはウェブの拡充がありまして、中でも、発信機能、各々のコーディネーターの方がどんどん発信できるような機能をもっともっと充実させたいと思っています。今、仙台高専のコーディネーターの方からいろいろ聞いたりやりとりをしたりしておりますが、どんどん発信できてニーズが把握できるようになればいいのかなと思っています。
  この10年間、私も産学連携にかかわってきておりますけれども、産学連携が目的になるのではなくて、やはり手段にならなければいけないと思います。本来、産(業)と金(融)が上手にくっついて、それを手助けするために大学と官(公や支援機関)があるのかなというように思います。やはり、森下先生がニーズを上手にタイムリーに取り出してコーディネーターの方が的確に動くというお話しをされていましたけれども、そうであってこそ、世の中のみんなから、「産学連携が進んでよかったね」と思われると思いますので、是非とも、目的にならないような政策ができれば良いと願っています。

【柘植主査】  ありがとうございます。
  北澤委員、お願いいたします。

【北澤委員】  今、前田委員がああいうことを言われたので、私も産学連携は産学連携という指標で見ると、結構大学は頑張り始めたと褒めていいのではないかと思うわけであります。
  しかし、それがほんとうに社会に生かされたかということになると、なかなかまだそこまでいかないという意味で、石川委員が最初に言われたこともそういうことだと思いますけれども、どうやったらやるかというのは、どうしても本音で今度はつき合わなければいけないと。今までは、どちらかというと上辺でつき合っていたようなところがあるかもしれないなということなんですけれども、産学連携とは結局は何かというと、産業界と大学とがお互いにもうけなかったら、これはもう事は進まない。ところが、日本の場合には、国立大学というくびきのもとに、利益相反とかいろいろなことを言われて、「いかがなものか」という、こういう言葉があるわけです。そのためにどうしても前に一歩出るという勇気がわかずに、まあ産学連携でお金がもらえればいいかという感じで事を終わらせてしまっている面がありはしないかという、そういうことであります。その意味で、「いかがなものか」という言葉を一歩踏み越えて前に行かなければいけない。
  そのときに、私自身、非常に感じていることは、1つの組織、あるいは大学の1つの研究室とか、そういうレベルで考えると、つじつまが合わないことがあります。例えば私たちの組織で一番具体的に言えば、私たちのところへ大学から特許をお預かりしたと。その特許をどこかに安く売るということは、我々にとっては利益相反にもかかわる、そういった問題として取り上げられる可能性があります。
  そこでひるんでいたら特許なんていうのは活用されない。その特許を安く、しかも、譲り渡して、なおかつそこの組織がそれを国全体としては非常に有効に使ってくれるというようなことがあったときには、それをあえて特許をそういうところに集める。それを1つ1つの組織がみんな自分たちの都合でやっていたのでは、これはうまくいかないというようなことがあるわけですけれども、いよいよ産学連携が本格的に今度は成果を出すのだというそこにいったときには、この問題を避けては通れなくて、そのときにアメリカの場合には、これをやったらだめという規則がしっかり決まっている。だから、それをやりさえしなければ罪にならないわけですけれども、日本の場合は後づけで規則が決まって罰せられるという、そういうことになっているという、ここが最大のネックかと思います。
  それで、この産学連携の利益相反をきちんとやれとかといって答申には書いてあるわけですけれども、きちんとやれと言われたって、これはどうしようもないわけであります。おのおののメンバーはですね。ですから、これはやってはだめということをやっぱり決めないと前へ進めない。そういうたぐいの問題はたくさんあるかと思います。それで私たちも1つの組織ではとにかく判断して、これは国全体として褒められることであれば一歩前へ出ようと。そのときには自分の首ぐらい飛んでも仕方がないかと思ってやっていかないとできない問題が産学連携のこれからの一番の部分かなと思います。
  それでもう1点だけちょっと。被災地の問題なんですけれども、これは我々もいろいろとちょっと調べさせていただきました。それでわかってきていることの先ほどから出てきていない部分で申しますと、私たちはどっこい生きています、私たちを忘れないでくださいというのが被災地の研究者の一番の声。
  それで、そのときに彼らの心配は、例えば外国人のポスドク、あるいは日本人のポスドクも、逃げてしまったと。それで帰ってこないかもしれないというような、そういった、これは筑波ですらなかなか帰ってこないというような、そういうことになっていまして、そこのところで地盤沈下していくという、そういうおそれが非常に強い。それを何とか国際的な拠点としてやっていけるんだというような、そういう形で支援してほしいと。そして、例えばJSTの研究費にしても、あなた方は今回は応募してくださらなくてもいいですというような、そんな態度でやってほしくないと。むしろ、ふだんと同じようにやってくださいというのが我々に対してのリクエストであります。
  その意味では、研究の立ち上がりは思いのほか早くて、ダメージを受けていても彼らは一生懸命やっていると、そんな感じかなと思いますので、この産学連携でもそういう感じであまり遠慮せずに、ぐいぐいそういう被災地域での産学連携もむしろ押していったほうがいいのではないかと、そんなふうに感じている次第です。

【柘植主査】  ありがとうございます。
  時間がだんだん迫ってしまいまして、お二方くらい、3人――土田委員、どうぞ。

【土田委員】  私はおそらく産代表ということで、今回初めて、ご選定いただいたと思っております。先ほどお話がございましたとおり、私は金融機関をずっとやっておりましたので、金融機関と大学は、産業界ともう一歩離れていくような、そういうような印象を持っておりますので、またそういった経験もこの場で例示させていただければと思っております。
  まず、私ども産業革新機構として、この立ち上がり1年半の間に、今回のテーマに大変大きく関係がするようなテーマとしましては、知財ファンドというものを設けましたし、それからもう一つは、北澤先生のところのJSTさんとも提携させていただいて意欲的に取り組んでいこうと思っております。あとはライフサイエンスも含めた、森下先生もよくご存じのいわゆるバイオ関係、創薬ベンチャーへの投資ですとか、普通、民間ではまず今の時期にはできないようなリスクもとっていこうと思って、引き続きその励行をしていこうと思っております。
  そうしたなかで、産の立場から見た学はどうなのか。といいますと、産学連携という立場から見たときに、この10年間、非常に先生方も含めても、委員の方々も含めても、非常に大学も変わってきたというお話がございます。ただ、民間であれば、PDCAではありませんけれども、この成果物がどういうところで成功して、どういうところで失敗したのかといったことをもう少し違った局面で、ほんとうに生の声を聞くような形で、特に失敗から生まれる成功というものもあると思いますので、そこを非常に多く取り上げていくという意味では、成功・失敗例をこの場にたくさん持ち寄ることが必要ではないかと思っております。
  それから、大学発ベンチャーの支援というものは、私は個人的にはベンチャーになった以上は実は民間ではないかと思っているので、この場でご支援すると言うのはいかがなものかと思いますけれども、一方で、実は大学発のベンチャーの中で、大学の段階で非常に民、いわゆる「納品先」と言っていいのかわかりませんけれども、最終形をイメージした大学での研究の在り方、改めて申し上げますと、「三つ子の魂」みたいなそういったたぐいのものをやっていくことが重要だと思っています。例示的に言うと、実は私どもがライフサイエンスというのも、かなり多くのものを見ましたけれども、最初からプロトコルがしっかりしているものは5年、10年たっても崩れない。そういった意味では、投資というお金も誘引しやすくなるということからすると、やはり「三つ子の魂」を教育する大学の役割は、民を見据えた中においても大変重要だと思っております。
  それと1点だけ、前田委員からもお話がございました、やはり産学連携というのは手段になっているのではないかと。その中においては、今回、リサーチ・アドミニストレーターという新しい制度を設けられる中においては、ぜひ民の意識を持った、いわゆる産を、こういった方々を学からもう少し産に引き上げるような、そういった方を、日本はなかなか実はいないんですけれども、こういった方を引き上げていくのも一つの施策ではないかと思っております。
  以上です。

【柘植主査】  ありがとうございます。
  予定の時間が過ぎてしまいましたけれども、ぜひというご発言、1件。
  では、橋本委員、学のお立場からお願いいたします。

【橋本委員】  学の立場というより、いろいろ申し上げたいことはあるんですけれども、1つお聞きしたい。初めてなものですから。
  これは、このミッションの資料4のところに、「文部科学省が取り組むべき今後の施策」というのがありますけれども、これ、この前に例えば「日本が政府として取り組むべき」というのがあって、その中の文部科学省はどの部分というようなことの切り分けというか、そういう議論はこれまでいろいろされていると考えてよろしいのでしょうか。文部科学省というと、やはり教育機関のある意味の元締めという意味で言えば、産学官の中で特に大学に頑張れとかこう変われとかという話が中心になるというふうに考えてよろしいのか、あるいは、もう少し別の考え方なのかということなんですが。

【柘植主査】  後でまた文科省から答えてほしいのですけれども、前からのこの産学官連携推進委員会のメンバーの1人として、参考資料3が打ち出している教育と、「知」の創造の源である研究と、社会・経済的な価値を創出するイノベーションとを一体的に推進していくという、ここまで踏み込んだ答申、戦略を、実行しようとすると、経済産業省等の他の省庁や、あるいは文部科学省の中でも高等教育あるいは初等・中等教育を担っている局との、所謂領域・領空侵犯無しには、具体的な施策に落とせるはずがないと私は思っています。ですから、ぜひ「この戦略を具体的な施策に落とし込むというところで領空侵犯を禁止しない」、こういう視点を、私は今回の連携推進委員会の具体的施策に向けた検討課題として堅持したいと思います。
  文部科学省としては、常盤総括官、いかがですか。

【常盤総括官】  1つは、政府の中での位置づけということになりますと、今もちょっとお話がありましたけれども、まずは科学技術基本計画の中で政府全体としてどういうことに取り組むのかということが定められようとしておりますので、その中でそれぞれの官庁が分担するという形になるということで全体の構造はできているかと思います。
  それから、この産学連携との関係で言うと、いろいろご意見もあろうかと思いますけれども、事業仕分け等を通じていろいろ国のそれぞれの分担とか連携の在り方についてもご指摘をいただいているので、その中で予算を23年度予算でまた新しく組み替えたりする中で各省庁が連携して、研究開発の段階から実際の実用化の段階まで連携して例えば地域の産学連携をサポートするというような枠組みも、具体的にそういうスキームもできてきておりますので、そういう中でうまくそういう実際のニーズに合った形で、しかも縦割りにならない形で対応していきたいと思っております。

【橋本委員】  そうすると、ある意味ではかなり自由な立場で産学官連携について考えてよろしいと。で、いろいろ施策が具体的になってきたところで、これは文科省がやることだねとか、あるいは経産省がやることだねというような話があり得るというふうに考えてよろしいんですか。

【柘植主査】  私はそう理解しております。おそらくこれだけ10年やってきて、かつ、第四期の科学技術基本計画がどういう形になるにせよ、私はどこかで必要なことはやっている。
  ただ、問題は、先ほどのイノベーション、あるいは研究、あるいは源流である教育、これにお互いにリンクしないでやっているということです。そういう視点でもこの連携推進委員会の検討をしたいと考えます。価値創造のフロー、インターフェースも本連携推進委員会の着眼点に加えていただきたい。
  済みません、既に5分以上時間を過ぎてしまいまして、ご発言をまだいただいていない委員がおられますが、次の2点で締めたいと思います。
  第1点は、資料4は「本産学官連携推進委員会における具体的施策に向けた検討課題」と修正いたしまして、併せて今日のご指摘の論点を事務局にて整理する。
  第2点目は、きょうご発言いただかなかった委員の方々には、メールで事務局の論点整理の中にこれを入れるようにと、メールで結構ですので、池田課長に送っていただくようお願いします。
  それでは最後に、事務局から連絡事項を。

【石田室長補佐】  次回以降の開催でございますけれども、先生方のご都合をあらかじめ伺った上で当方で調整いたしましてご連絡申し上げたいと思います。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

【柘植主査】  時間が過ぎてしまいまして申しわけありませんでした。これで今日は閉会といたします。

お問合せ先

科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課大学技術移転推進室

(科学技術・学術政策局産業連携・地域支援課大学技術移転推進室)