第4期科学技術基本計画の策定に向け、本年4月28日、科学技術・学術審議会の下に基本計画特別委員会が設置され、審議が開始された。これを受け、情報科学技術委員会においても、第4期科学技術基本計画における情報通信分野の計画の策定に資する議論を集中的に行うとともに、構成員からのヒアリング等を実施した。本ヒアリング結果や、総合科学技術会議において実施された第3期基本計画の中間フォローアップ調査結果などを参考として、情報通信分野における重点領域を整理した。
総合科学技術会議が実施した第3期科学技術基本計画の中間フォローアップ(平成21年5月)においては、情報通信分野に求められる役割として、1.社会が直面する多様な課題の解決という「社会」面、2.国際競争力の維持・強化という「産業」面、3.情報通信技術の深化や多分野の研究開発活動の加速という「科学」面、4.利用者が安全・安心を実感できる情報通信基盤という「安全・安心」面という4つの役割を設定し、各項目について第3期基本計画策定後、すなわち平成18年以降、情報通信分野を取り巻く環境がどのように変化したか分析している。
さらに、これらの現状分析に基づき、将来の情報通信システムのあるべき姿と社会への展開・活用に向けたシナリオを明確化する必要があるとしている。特に政府として、世界的課題である少子高齢化問題をはじめ、環境問題や非常災害対策等を含む国際安全保障上の課題等の解決に向け、より高い視点から目標を設定した総合的取り組みが必要であるとしており、課題解決のために特に配慮すべき観点として、幅広い分野での情報通信技術の利活用専門家の育成や分野連携・融合の強化、新しい技術領域を拓く基礎・萌芽的研究に対する政府の取り組み強化、国際競争力につながる新たな研究開発の取り組み強化などを挙げている。
このほかにも、次期科学技術基本計画の検討の下支え等を目的として取りまとめられた「第4期基本計画で重視すべき新たな科学技術に関する検討」(平成21年3月文部科学省科学技術政策研究所)や、政府全体の情報通信分野の中長期的戦略を定めた「i-Japan戦略2015」(平成21年7月IT戦略本部)においても、情報科学技術により経済社会全体を改革して新しい活力を生み出す必要性や、基礎研究も含めた科学技術の総合的振興の必要性に言及している。
わが国を取り巻く世界情勢を俯瞰すると、第3期科学技術基本計画が策定された平成18年以降、世界同時不況の発生にはじまり地球温暖化問題や環境問題、エネルギー資源枯渇の深刻化など、複雑かつ困難な状況が一層顕在化しており、これらの社会的問題の解決に向け情報通信技術への期待はますます増大しつつある。また国内においても、少子高齢化の進展とともに、社会の活性化と安心をもたらすユビキタス社会への期待は非常に大きい。第4期科学技術基本計画の対象時期となる2011年からの次の時代を展望すると、このような環境問題やエネルギー資源問題、少子高齢社会への対応といった様々な課題がさらに深刻化し、大きな社会的問題として顕在化していくことが懸念される。このような課題の解決に向けて官民挙げて、社会・経済・文化・科学といったあらゆる観点から次世代の発展に向けた抜本的な構造の変革を図っていく必要がある。とりわけ、科学技術分野を所管する文部科学省としては、交通、物流、エネルギー、環境、医療分野等におけるあらゆる社会活動の基盤となりとなりつつある情報科学技術の潜在力をさらに集約、結集して、新しい時代の到来に対応した総合的な情報科学技術政策を講じるとともに、その成果の社会還元を効率的効果的に展開させていくためにも、2011年以降の向こう5年間に可及的速やかに講じるべき施策の洗い出しと重点化を行うべきである。
特に第4期科学技術基本計画においては、科学技術の発展のみならず、その成果を還元して、社会全体のイノベーションにつなげていく視点が重要であり、その観点から今後の社会システムを構築する上で重要な基盤となっている情報科学技術の果たすべき役割は大きいと考えられる。
具体的な重点化の検討にあたっては、第一に情報科学技術の効果的な利活用によって社会システムが再構築され、社会全体の効率化や生活の質の向上が実現されるという効用に着眼すべきである。すなわち、情報科学技術の利活用を通じて世界的な環境問題やエネルギー問題などのグローバル課題を解決し、文化など新たな価値を創出していくとともに、安全・安心な社会生活の基盤を構築するという視点に立脚した重点化を行うべきである。
さらに、このような視点に加え情報科学技術そのものを高度化していくという視点も不可欠である。情報科学技術は、研究開発において理工系の他分野のみならず、生命・生物系、人文社会系の多くの分野にとっての「礎の学」であり、多様な分野の研究開発や産業競争力の基盤となる情報科学技術のさらなる高度化を促していかなければならない。また、21世紀は天然資源に代わり知識そのものが資源となり、膨大なデータを活用し知識に変換するという面で情報科学技術の重要性は一層増す。
加えて、これらを支える横断的課題に対する取組も必要である。特に、情報科学技術があらゆる分野の社会基盤であることを踏まえ、幅広い分野での情報通信技術に対応し、分野連携・融合を図ることのできる人材の育成や、景気減速により民間投資が減衰している中での国による基礎・萌芽的研究の推進等についても検討を加えたうえで2011年以降の歩むべき方向性を明確化すべきである。
このような基本的考え方に基づき、第4期科学技術基本計画に盛り組むべき重点項目について、以下のとおり整理を行った。なお、検討にあたっては、情報科学技術の各分野におけるわが国の国際的な位置づけなどを勘案する必要があり、JST研究開発戦略センターが実施する科学技術・研究開発の国際比較等を参考とした。
《解決すべき課題(社会的・技術的ニーズ等)》
《重点的に推進すべき研究領域・課題等》
《解決すべき課題(社会的・技術的ニーズ等)》
《重点的に推進すべき研究領域・課題等》
※1 航空、自動車などの交通、物流、エネルギー、環境、医療等の社会活動の基盤となるシステムでは、実世界に広がる組み込みシステムと、当該システムからの情報を収集・解析し社会システム全体を効率化するサイバーシステムから構成される。サイバーフィジカルシステムとは、これら両者を機動的に統合し新たな価値を創出するソフトウエアシステムを指す。
《解決すべき課題(社会的・技術的ニーズ等)》
《重点的に推進すべき研究領域・課題等》
《解決すべき課題(社会的・技術的ニーズ等)》
《重点的に推進すべき研究領域・課題等》
《解決すべき課題(社会的・技術的ニーズ等)》
《重点的に推進すべき研究領域・課題等》
《解決すべき課題(社会的・技術的ニーズ等)》
《重点的に推進すべき研究領域・課題等》
《解決すべき課題(社会的・技術的ニーズ等)》
《重点的に推進すべき研究領域・課題等》
《解決すべき課題(社会的・技術的ニーズ等)》
《重点的に推進すべき研究領域・課題等》
《解決すべき課題(社会的・技術的ニーズ等)》
《重点的に推進すべき研究領域・課題等》
以上のとおり、第4期科学技術基本計画の対象時期となる2011年からの次の時代を展望したうえで、重点化すべき項目として、3つの大きな柱を軸として整理を行った。これらの各重点項目の推進にあたっては、2011年以降の国際社会情勢や情報科学技術分野を取り巻く研究開発環境等の動向をはじめ、以下の視点を勘案したうえで取り組む必要がある。その過程で、既存の研究推進方策のなかでも時代の潮流に沿わないと考えられるものや方針の見直しが必要なものがあれば、国としてもあらためてしっかりと検証し、時代に対応した新しいシナリオを描いていかなければならない。それによって、これらの重点項目の円滑な実施が期待できるとともに、2011年以降の5年間により効果的かつ効率的に研究成果の質の向上や、研究開発投資の効果の最大化を図っていくことができるのである。さらに、少子高齢化問題をはじめ、環境問題や安全保障といった今後わが国が抱える様々な社会的問題の解決に資するとともに、我が国の幅広い分野の科学技術の進展や産業競争力の強化につながる「礎の学」としての情報科学技術のさらなる進展が期待される。
情報科学技術分野で推進される政府のプロジェクトは、文部科学省のみならず各省庁にまたがっており、関連性のあるものについてはこれまでのような縦割りではなくお互いに連携させることにより、社会的により意義の高い大きな成果が得られたり、大型プロジェクトの推進につながっていくことが期待される。
また、情報科学技術が社会システムの基盤となっていることや社会経済の様々な分野で利活用されていることに鑑みても、情報科学技術分野の研究の推進に当たっては文部科学省のみならず、他の省庁や関係機関との連携を一層強化する必要がある。
さらに、我が国の情報科学技術分野の研究の推進に重要な役割を果たす大学や独立行政法人、その他の関係機関の特徴や取組方針等を十分勘案し、連携強化や役割分担の明確化を図ったうえで、効率的かつ効果的な重点化項目の研究開発が実現されるような環境整備を図っていくべきである。
第4期科学技術基本計画の推進に当たっては、科学技術の発展のみならず、その成果を還元して社会全体のイノベーションにつなげていくことが期待される。特に、情報科学技術は社会システムの重要な基盤となっており、情報科学技術の発展により社会システム全体の一層の効率化を図るとともに、社会全体のイノベーションにつなげていくことが求められるが、その際にはイノベーションを実現する上で関連する制度面についても検討することが重要となる。
情報科学技術分野におけるグローバル化の進展に伴い、研究開発を推進するうえでの国際的戦略の重要性は一層高まりつつある。このため、欧米における情報科学技術分野の予算規模動向をはじめ、資源配分方針、標準化動向等について、海外機関との連携や海外調査報告等も参考としながら、十分かつ綿密な調査分析を行ったうえで、重点項目等の推進を図っていくべきである。さらに、これらの分析等を踏まえて、少子高齢化問題や食糧自給率問題、レアメタル等の資源的課題など我が国固有の課題と、地球温暖化問題や環境問題といった国際的共通課題の解決について、各々における長期的戦略や展望を描いたうえで研究開発を進めていく必要がある。我が国固有の課題であっても、その解決が国際協調に繋がっていくことも想定されることから、各重点項目を取巻く国際動向については入念な調査分析を行い、国際協調と国際競争の間のバランスにも考慮した戦略的な取組が求められる。このほか、厳しい国際競争において我が国がイニシアティブを得られるよう、政府としても産学官連携や国際的連携にも十分留意し、これまで以上に国際標準化活動への積極的寄与を進めていく必要がある。
すでに述べたとおり、景気減速による民間部門の研究投資の大幅縮小という環境のなか、将来の技術立国を支える知的財産の創出のためには、基礎研究の推進・強化が不可欠であり、国として長期的視点からの基礎的領域等における情報科学技術分野の研究開発全体を主導していく必要がある。また、新しい原理に基づく技術革新を予感させる基礎研究の中から、実用化に繋がる可能性をきちんと見極めたうえで、次のステップに進めるべきものを選択し、プロジェクト化するという姿勢・視点をしっかりと持つべきである。
我が国の情報科学技術が世界を牽引し、発展させていくためには、情報科学技術の将来を担う優秀な若手研究者の養成が不可欠である。競争的・流動的な環境のなかで、独創性に優れた若手研究者をしっかりと育成し、この分野における知的資産を持続的に創出していくためにも、情報科学技術の研究分野の特徴を踏まえた評価方法等を含め研究推進体制全般のあり方について検討を深めていく必要がある。
《解決すべき課題(社会的・技術的ニーズ等)》
《5年後のわが国の展望等》
《国際動向》
《重点的に推進すべき研究領域・課題等》
《解決すべき課題(社会的・技術的ニーズ等)》
《5年後のわが国の展望等》
《国際動向》
《重点的に推進すべき研究領域・課題等》
《解決すべき課題(社会的・技術的ニーズ等)》
《5年後のわが国の展望等》
※1 AR(Augmented Reality=拡張現実感)とは、現実世界と仮想世界をリアルタイムで継ぎ目なく融合し、仮想現実と実世界を一体化する空間を作り出す映像技術。従来のVR(Virtual Reality=仮想現実感)はコンピュータによって仮想的な世界を作りだすものであるのに対し、ARはこれに現実の世界を取り込んでリアルタイムに融合するもの。
《国際動向》
《重点的に推進すべき研究領域・課題等》
《解決すべき課題(社会的・技術的ニーズ等)》
《5年後のわが国の展望等》
《国際動向》
《重点的に推進すべき研究領域・課題等》
《解決すべき課題(社会的・技術的ニーズ等)》
《5年後のわが国の展望等》
《国際動向》
《重点的に推進すべき研究領域・課題等》
《社会的背景、解決すべき課題》
《5年後のわが国の展望等》
《国際動向》
《重点的に推進すべき研究領域・課題等》
《解決すべき課題(社会的・技術的ニーズ等)》
《5年後のわが国の展望等》
《国際動向》
《重点的に推進すべき研究領域・課題等》
《解決すべき課題(社会的・技術的ニーズ等)》
《5年後のわが国の展望等》
《重点的に推進すべき研究領域・課題等》
《解決すべき課題(社会的・技術的ニーズ等)》
《5年後のわが国の展望等》
《重点的に推進すべき研究領域・課題等》
以上
研究振興局情報課