[5]総合科学技術会議の役割(基本計画第5章関連)

(基本計画のポイント)
  • 総合科学技術会議は、科学技術基本計画に示された重要政策推進の司令塔として、また「知恵の場」として、顔の見える存在となり活動することを目指す。
    • 政府研究開発の効果的・効率的推進
       ⇒科学技術連携施策群の本格的推進、調査分析・調整機能の強化
    • 科学技術システム改革の推進
    • 社会・国民に支持される科学技術への取組
    • 国際活動の戦略的推進
    • 円滑な科学技術活動と成果還元に向けた制度・運用上の隘路の解消
    • 基本計画や政策目標達成に向けた適切なフォローアップとその進捗の促進

(1)平成21年度資源配分方針と科学技術関係施策の重点化の推進

 「資源配分方針(平成20年6月19日  第76回総合科学技術会議決定)」を関係府省庁に示し、個別施策毎の優先度判定(SABC評価)により、最重要政策課題(1.革新的技術、2.環境エネルギー技術、3.科学技術外交、4.科学技術による地域活性化、5.社会還元加速プロジェクト)への重点化を図った(平成21年度予算額:3,277 億円、対前年度比15%増)。
 また、科学技術関係活動の的確な実施を確保する観点から、独立行政法人、国立大学法人等の科学技術関係活動に関する所見の取りまとめを報告した。

(2)総合科学技術会議の主な取組

【主な決定事項】

○「国の研究開発評価に関する大綱的指針」の改定
 平成20年10月31日  第77回総合科学技術会議  決定
 ・各府省や研究独法が実施する評価における現行の問題点([1]評価結果がその後に継続する研究開発に生かされない、[2]評価の負担感の増大、[3]国際的視点の不足)を解決すべく、改定案(1.評価時期の見直し、2.自己点検の活用、3.国際的水準に照らした評価)を決定した。

○革新的技術戦略
 平成20年5月19日  第75回総合科学技術会議  決定
 ・持続的な経済成長と豊かな社会の実現を目指して、(1.)産業の国際競争力強化、(2.)健康な社会構築、(3.)日本と世界の安全保障の観点から、世界トップレベルの革新的な技術(23の革新的技術、5つの国家基幹技術)を特定すると共に、オールジャパン体制で「革新的技術」を戦略的に推進する新たな仕組み(革新的技術推進費の創設、「革新的技術」に係る研究開発のマネジメントの整備、「スーパー特区」制度を活用した革新的技術モデル事業の実施)及び「革新的技術」を持続的に生み出す環境整備(大挑戦研究枠の新設、コア・サイエンス・ティーチャー養成拠点構築事業)を決定した。

○環境エネルギー技術革新計画
 平成20年5月19日  第75回総合科学技術会議  決定
 ・地球環境温暖化問題を解決するための低炭素社会の実現に向けて、2050年までに世界の温室効果ガス排出量を半減する戦略として「環境エネルギー技術革新計画」(1.短中期的対策(~2030年)、2.中長期的対策(2030年~)、3.普及策・制度改革)を決定した。

○知的財産戦略
 平成20年5月19日  第75回総合科学技術会議  決定
 ・知財フロンティアの開拓に向けて知的財産戦略を推進するため、(1)グローバル化、(2)先端技術分野、(3)産学官連携、の観点で我が国が取組むべき施策(1.国際競争力の強化、2.iPS細胞関連技術の知的財産の保護、3.国際的な産学官連携体制の強化等)を取りまとめて決定した。

○科学技術による地域活性化戦略
 平成20年5月19日  第75回総合科学技術会議  決定
 ・地域拠点のエコシステム(動的な複合体)の形成を目指すべく2つの戦略:多様性強化戦略(地域の独自性と国全体としての多様性の確保)とグローバル拠点強化戦略(「グローバル科学技術拠点」候補への重点投資)について決定した。

○科学技術外交の強化に向けて
 平成20年5月19日  第75回総合科学技術会議  決定
 ・科学技術外交を推進するための基本的方針を示すと共に、1.発展途上国との協力、2.先端科学技術を活用した協力において、科学技術外交の強化を図るべく具体的施策(アフリカとの共同研究プログラム、環境エネルギー技術開発の推進等)を決定した。

○科学技術の振興及び成果の社会への還元に向けた制度改革
 平成18年12月25日  第62回総合科学技術会議  決定
 平成20年5月19日  第75回総合科学技術会議  報告
 ・科学技術の振興や成果の還元上障害となる制度的な阻害要因として研究現場等で顕在化している諸問題を解決するため、7項目全66提言を決定・意見具申した。その後、平成20年5月に制度改革の実現に向けた取組の進捗状況を把握し、これら取組を一層強化していくため、フォローアップを行った。

○イノベーション創出総合戦略
 平成18年6月14日  第56回総合科学技術会議  決定
 ・第3期科学技術基本計画が「科学の発展と絶えざるイノベーションの創出」を大きな方向として明示したことを踏まえ、25兆円に込められた国民の期待に応えていくため、イノベーション創出の総合戦略を取りまとめた。

【主な報告事項等】

○長期戦略指針「イノベーション25」
 平成19年6月1日  閣議決定
 ・人口減少・高齢化が進展する日本は、1.2025年までを見据えた20年にわたる長期戦略、2.社会システムと科学技術の一体的戦略、3.世界のリーダーの一員としての戦略に基づき、技術革新や新しいアイディア・ビジネスによるイノベーションの創出により、持続的成長と豊かな社会の実現を目指す、とした。また、イノベーションで拓く2025年の日本の姿として [1]生涯健康な社会、[2]安心・安全な社会、[3]多様な人生を送れる社会、[4]世界的課題解決に貢献する社会、[5]世界に開かれた社会を構築すべく、早急に取組むべき課題と中長期的に取組むべき課題を整理し、「イノベーション立国」に向けた社会基盤整備(社会制度、人材等)を行っていく、とした。

○社会還元加速プロジェクト
 平成20年5月19日  第75回総合科学技術会議  報告
 ・総合科学技術会議有識者議員(プロジェクトリーダー)の下、専門家の参画と関係府省・官民の連携により、技術施策とシステム改革を盛り込み、研究成果の国民への還元を加速していくことを報告した。

 ○大学・大学院の研究システム改革~研究に関する国際競争力を高めるために~
 平成19年11月28日  第71回総合科学技術会議  報告
 ・高水準の研究成果が生まれ、国際的研究コミュニティでの存在感のある大学・大学院の実現に向けた方策について、研究人財や研究推進基盤の側面から検討した。

○競争的資金の拡充と制度改革の推進について
 平成19年6月14日  第68回総合科学技術会議  報告
 ・競争的資金の現状と課題を分析し、若手研究者向け競争的資金の充実・強化等の方策を示した。

○iPS細胞研究の推進について(第一次取りまとめ)
 平成20年7月24日  基本政策推進専門調査会決定
 ・ヒトiPS細胞の樹立が免疫拒絶のない再生医療の実現の可能性が提示されるというパラダイムシフトをもたらしたことを踏まえ、当該研究開発の強力な推進を図るための方策を取りまとめた。

○健康研究推進会議
・基礎研究の成果を活用し、新しい治療法や医薬品・医療機器を開発し、社会に還元させることによって、国民生活の向上及び国際競争力の強化を図るためには「健康研究」(橋渡し研究・臨床研究)の推進が不可欠である。このため、関係府省における健康研究について、我が国として一つの戦略に基づき統一的かつ重点的な取組を進めることが必要であり、「健康研究推進会議」を平成20年7月に開催した。当該会議は、科学技術担当大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣及び有識者で構成され、これまでに先端医療開発特区(スーパー特区)の創設・選定、平成21年度健康研究概算要求方針の策定等を行った。

(所見)

  • 総合科学技術会議は、日本の科学技術政策の司令塔として高い期待が寄せられているが、「外部からはその活動が見えにくい」との指摘もあり、国民各層へのアピールを工夫すべきである。また、法的な権能、予算、人員体制等の制約はあるものの、府省縦割りによる施策の重複を排除し、連携を強化すべく、より強力なリーダーシップを発揮することが必要である。
  • 科学技術関係施策の優先度判定等では、各省連携を促し、あるいは、プロジェクトのより効率的な実施に向けた適切なガイダンスの提示など、付加価値を高める取組が必要である。
  • 総合科学技術会議においては、第3期基本計画の策定時には必ずしも想定されていなかったような科学技術をめぐる諸情勢の変化に対応するため、毎年の科学技術政策の重要課題の提示に加え、「革新的技術戦略」や「環境エネルギー技術革新計画」などの新たな方針を適時に打ち出してきており、今後ともこのような時代の流れに即した迅速な対応を行っていく必要がある。

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科学技術・学術政策局計画官付

(科学技術・学術政策局計画官付)