資料2-2 第5期科学技術基本計画(抜粋)

第5期科学技術基本計画(平成28年1月22日閣議決定)
【人材関係部分抜粋】

第4章 科学技術イノベーションの基盤的な力の強化

 先行きの見通しが立ちにくい大変革時代において、持続的な発展を遂げていくためには、国として、いかなる状況変化や新しい課題に直面しても、柔軟かつ的確に対応できる基盤的な力を備えておく必要がある。そのためには、高度な専門的知識に加え、従来の慣習や常識にとらわれない柔軟な思考と斬新な発想を持つ人材を育成・確保するとともに、イノベーションの源である多様で卓越した知を生み出す基盤を強化していくことが不可欠である。
 このため、科学技術イノベーションを支える人材力を徹底的に強化する。新たな知識や価値を生み出す高度人材やイノベーション創出を加速する多様な人材を育成・確保するとともに、一人ひとりが能力と意欲に応じて適材適所で最大限活躍できる環境を整備する。さらに、我が国からイノベーションが創出される可能性を最大限高めるため、異なる知識、視点、発想等を持つ多様な人材の活躍を促進するとともに、人材の流動性を高める。
また、近年、企業等においては、国際競争環境の変化の中で短期的な成果を求める傾向が高まっており、知の創出における大学や公的研究機関の役割の重要性が増している。オープンサイエンス等の新たな潮流にも適切に対応しつつ、学術研究と基礎研究の推進に向けた改革と強化を進めるとともに、研究開発活動を支える施設・設備、情報基盤等の強化を図る。
 さらに、これらの科学技術イノベーション活動を支える資金の改革を推進する。特に、政府が負担している資金をより効果的・効率的に活用するため、基盤的な力を強化する上で重要な役割を担う大学について、組織改革と研究資金改革とを一体的かつ強力に推進する。

(1)人材力の強化
 科学技術イノベーションを担うのは「人」である。世界中で高度人材の獲得競争が激化する一方、我が国では若年人口の減少が進んでいる。こうした中で、科学技術イノベーション人材の質の向上と能力発揮が一層重要になってきている。
 しかし、我が国の科学技術イノベーション人材を巡る状況、とりわけ、その重要な担い手である若手研究者を巡る状況は危機的である。高い能力を持つ学生等が、知の創出をはじめ科学技術イノベーション活動の中核を担う博士人材となることを躊躇するようになってきており、このことは、我が国が科学技術イノベーション力を持続的に確保していく上での深刻な問題である。このため、大学等における若手研究者の育成と活躍促進のための取組を強力かつ速やかに推進する。
 あわせて、科学技術イノベーション人材が、社会の多様な場において適材適所で活躍できるように促していくことも重要であり、産学官が科学技術イノベーション活動を共に進める中で、多様な職種のキャリアパスの確立と人材の育成・確保を進める。また、科学技術イノベーション人材の質の向上を図るため、初等中等教育段階から大学院教育段階に至るまでの教育改革を進め、加えて、社会人を対象とした学びの充実を図る。
 さらに、我が国からイノベーションが創出される可能性を最大限高めるためには、女性や外国人といった多様な人材の活躍を促進するとともに、分野、組織、セクター、国境等の壁を越えて人材が流動し、グローバルな環境の下での知の融合や研究成果の社会実装を進めていく必要がある。これまで、こうした取組は必ずしも十分でなかったことから、人材の多様性確保と流動化促進のための取組を強化する。
 なお、人材力の強化に当たっては、大学及び公的研究機関等が、組織として人材育成や雇用する若手研究者のキャリアパス形成に強い責任感を持って取り組むことが重要である。同時に、博士課程学生やポストドクターをはじめとする若手人材自身も、自らのキャリアパスは自ら切り拓くものとの意識を持ち、自らの持つ能力を高め、社会の様々な場でその能力を発揮していくことが求められる。
 これらの取組を通じ、我が国において、多様で優秀な人材を持続的に育成・確保し、科学技術イノベーション活動に携わる人材が、知的プロフェッショナルとして学界や産業界等の多様な場で活躍できる社会を創り出す。

1  知的プロフェッショナルとしての人材の育成・確保と活躍促進
1 )若手研究者の育成・活躍促進
 科学技術イノベーションの重要な担い手は、ポストドクターをはじめとする若手研究者である。しかし、大学等における若手研究者のキャリアパスが不透明で雇用が不安定な状況にあり、若手研究者が自立的に研究を行う環境も十分に整備されていない。
このため、博士課程修了後に独立した研究者・大学教員に至るまでのキャリアパスを明確化するとともに、若手研究者がキャリアの段階に応じて高い能力と意欲を最大限発揮できる環境を整備する。
 大学及び公的研究機関においては、ポストドクター等として実績を積んだ若手研究者が挑戦できる任期を付さないポストを拡充することが求められる。その際、シニア研究者に対する年俸制やクロスアポイントメント制度の導入、人事評価の導入と評価結果の処遇への反映、再審査の導入、外部資金による任期付雇用への転換促進といった取組を進めることが必要である。また同時に、こうした若手研究者を研究室主宰者(PI:Principal Investigator)候補として新規採用する際には、任期を付さないポストを確保の上で、その前段階としてテニュアトラック制又はこれと同趣旨の公正で透明性の高い人事システムを原則導入することが求められる。その際、海外での経験や、その間の新しいスキルの修得状況及び研究業績が適切に評価されること、また、より経験を積んだ者から適切な助言を受ける機会を設けること等が重要である。国は、国立大学法人運営費交付金における重点配分や、国立研究開発法人の業務実績評価等の枠組みなども活用しつつ、各機関におけるこうした人事システムの構築を促進する。
 また、国は、若手研究者が研究能力を高め、その能力と意欲を最大限発揮できるための研究費支援等の取組を推進する。特に、優れた若手研究者に対しては、安定したポストに就きながら独立した自由な研究環境の下で活躍できるようにするための制度を創設し、若手支援の強化を図る。
 さらに、国は、若手研究者の育成・活躍促進の観点から公募型資金の改革を継続的に進める。その一環として、国立大学(大学共同利用機関を含む。以下同じ。)における人事給与システム改革の実施を前提として、公募型資金の直接経費から研究代表者等への人件費支出が可能となるよう直接経費支出の柔軟化に向けた検討を進め、必要な措置を講ずる。
 こうした取組を通じ、まずは、大学における若手教員割合が増えることを目指す。具体的には、第5期基本計画期間中に、40歳未満の大学本務教員の数を1割増加させるとともに、将来的に、我が国全体の大学本務教員に占める40歳未満の教員の割合が3割以上となることを目指す。

2 )科学技術イノベーションを担う多様な人材の育成・活躍促進
 大学及び公的研究機関等において、高度な知の創出と社会実装を推進するためには、研究開発プロジェクトの企画・管理を担うプログラムマネージャー、研究活動全体のマネジメントを主務とするリサーチ・アドミニストレーター(URA:University Research Administrator)、研究施設・設備等を支える技術支援者、さらには、技術移転人材や大学経営人材といった多様な人材が必要である。また、企業等においても、知の社会実装を迅速かつ効果的に推進するためには、新規事業開発やビジネスモデル変革の経営戦略を担う人材、技術経営や知的財産に関して高度な専門性を有する人材等が求められている。こうした人材が、各人の持つ高度な専門性を生かしつつ、適材適所で能力を発揮できる環境を創り出すことが不可欠である。
 しかし、大学と産業界等との間における人材の質的・量的ミスマッチが生じていることもあり、こうした職に就く人材は不足し、また、各人の持つ能力が社会の急速な変化に対応できていないなどの問題が生じている。
 このため、科学技術イノベーションを担う多様な人材について、キャリアパスの確立と人材の育成・確保のための取組を推進する。国は、産学官がこうした多様な人材の育成方策について検討する場を設けるとともに、学生等が多様な経験を積み、様々なキャリアパスに対する展望を持てるようにするための産学官協働による大学・大学院教育改革を促進する。加えて、博士人材のデータベースの整備・活用等を推進する。また、プログラムマネージャー、URA、技術支援者等の人材に関して、職種ごとに求められる知識やスキルの一層の明確化等を図る。
 さらに、科学技術イノベーションは、企業等に在籍する多くの技術者によって支えられており、国は、技術者育成に向けた教育改革を促進するとともに、特に人材不足が顕著な情報通信分野等における技術者について、大学、高等専門学校、専修学校等において産学が協働し育成・確保を進めることを促す。あわせて、技術士制度について、産業界での活用が促進されるよう、時代の要請に応じた見直しを行う。

3 )大学院教育改革の推進
 科学技術イノベーションを担う人材の質を高める上で、大学院教育が果たす役割は大きい。特に、大学院教育を通じて、高度な専門的知識と倫理観を基盤に自ら考え行動し、新たな知及びそれに基づく価値を創造し、グローバルに活躍する高度な博士人材について、産学官の連携の下で育成することが求められている。
 このため、大学と産業界等との協働による大学院教育改革を推進する。博士課程を有する大学においては、博士号取得者の質を保証するための取組を実施するとともに、産業界との協働による教育プログラムの開発、教職員が社会の多様な場で経験を積む機会の充実、企業等の研究者・技術者等に対する博士課程教育の充実といった取組を進めることが求められ、国はその促進を図る。
 また、優秀な学生、社会人を国内外から引き付けるため、大学院生、特に博士課程(後期)学生に対する経済的支援を充実する。大学及び公的研究機関等においては、ティーチングアシスタント(TA)、リサーチアシスタント(RA)等としての博士課程(後期)学生の雇用の拡大と処遇の改善を進めることが求められる。国は、各機関の取組を促進するとともに、フェローシップの充実等を図る。これにより、「博士課程(後期)在籍者の2割程度が生活費相当額程度を受給できることを目指す」との第3期及び第4期基本計画が掲げた目標についての早期達成に努める。
 さらに、大学院教育改革を強力に進めるため、国は、世界最高水準の教育力と研究力を備え、文理融合分野など異分野の一体的教育や我が国が強い分野の最先端の教育を推進する大学院形成のための制度を創設し、推進を図る。
 また、以上のような取組を中心に、第5期基本計画期間中における大学院教育改革の方向性と体系的・集中的な取組を明示した計画を策定し推進する。

4 )次代の科学技術イノベーションを担う人材の育成
 我が国が科学技術イノベーション力を持続的に向上していくためには、初等中等教育及び大学教育を通じて、次代の科学技術イノベーションを担う人材の育成を図り、その能力・才能の伸長を促すとともに、理数好きの児童生徒の拡大を図ることが重要である。
 このため、創造性を育む教育や理数学習の機会の提供等を通じて、優れた素質を持つ児童生徒及び学生の才能を伸ばす取組を推進する。国は、 学校における「課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び(いわゆるアクティブ・ラーニング)」の視点からの学習・指導方法の改善を促進するとともに、先進的な理数教育を行う高等学校等を支援する。また、意欲・能力を有する学生・生徒が研究等を行う機会や、国内外の学生・生徒が切磋琢磨し能力を伸長する機会の充実等を図る。さらに、高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的な改革を進める。
 また、児童生徒が、科学技術や理科・数学に対する関心・素養を高めるための取組を推進する。国は、課題解決的な学習や理数教育の充実等を図った学習指導要領に基づく教育を推進するとともに、高度な専門的知識を有する人材や産業界・地域人材を活用した先進的な理数教育の充実等を図る。

2  人材の多様性確保と流動化の促進
1 )女性の活躍促進
 多様な視点や優れた発想を取り入れ科学技術イノベーション活動を活性化していくためには、女性の能力を最大限に発揮できる環境を整備し、その活躍を促進していくことが不可欠である。我が国の研究者全体に占める女性の割合は増加傾向にあるものの、主要国と比較するといまだ低い水準にとどまっている。組織の意思決定の場に参画している女性研究者は少なく、第4期基本計画が掲げた女性研究者の新規採用割合に関する目標値(自然科学系全体で30%、理学系20%、工学系15%、農学系30%、医学・歯学・薬学系合わせて30%)も達成されていない状況である。
 この状況を打開すべく、女性が、研究者や技術者をはじめ科学技術イノベーションを担う多様な人材として一層活躍できるよう取組を加速する。その際、男女問わず、公平に評価する透明な雇用プロセスの構築と、より多様な人材の活躍と働き方の改革が科学技術イノベーション活動を活性化するとの認識を幅広い関係者が共有することが重要である。
 国、大学、公的研究機関及び産業界においては、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」を活用し、各事業主が、採用割合や指導的立場への登用割合などの目標設定と公表等を行う取組を加速する。特に、女性研究者の新規採用割合については、第4期基本計画が掲げた上記の目標値について、第5期基本計画期間中に速やかに達成すべく、国は、関連する取組について、産学官の総力を結集して総合的に推進する。 また、国は、女性が、研究等とライフイベントとの両立を図るための支援や環境整備を行うとともに、ロールモデルや好事例を幅広く周知し、情報共有を図る。さらに、組織の意思決定を行うマネジメント層やPI等への女性リーダーの育成と登用に積極的に取り組む大学及び公的研究機関等の取組を促進する。これらを通じて、組織のマネジメント層を中心とした意識改革等を図る。
 また、国は、次代を担う女性が科学技術イノベーションに関連して将来活躍できるよう、女子中高生やその保護者への科学技術系の進路に対する興味関心や理解を深める取組を推進するとともに、関係府省や産業界、学界、民間団体など産学官の連携を強化し、理工系分野での女性の活躍に関する社会一般からの理解の獲得を促進する。

2 )国際的な研究ネットワーク構築の強化
 我が国として、国際的な研究ネットワークを構築し、その強化を図っていくことは喫緊の課題である。そうした中、我が国の研究者等の内向き志向を打破し、海外での活躍を積極的に促すことは、世界の知を取り込み、我が国の国際競争力の維持・強化に資するのみならず、国際的な研究ネットワークにおいて確たる地位や信望を獲得するために不可欠である。同時に、優れた外国人研究者を受け入れ、活躍を促進していくことは、国際的な研究ネットワークを一層強化するとともに、多様な視点や発想に基づく知識や価値を創出する観点から重要である。
 このため、海外に出て世界レベルで研究活動を展開する研究者等に対する支援を強化する。具体的には、国は、大学及び公的研究機関等における、高いポテンシャルを有する海外研究機関との組織間ネットワーク構築、国際共同プロジェクトへの参画、国際機関及び海外の大学等の研究機関への研究者派遣、グローバルヤングアカデミーへの参画等を促進するとともに、海外派遣研究者及び在日経験を有する外国人研究者等のネットワーク構築等を推進する。
 また、世界レベルで研究活動を展開する研究者が、帰国後に自立的環境の下で研究を行えるようにすることも重要であり、大学及び公的研究機関等においては、海外派遣中の研究者等が応募しやすい公募・採用プロセスの工夫や海外経験を積極的に評価する評価方式の導入等の取組が求められる。
 さらに、優秀な外国人研究者や留学生の受入れ及び定着に向けた取組を強化する。国は、世界レベルの研究者獲得のための処遇の改善・充実を図るとともに、外国人ポストドクター等の優れた若手研究者や留学生の受入れを促進するための奨学金制度等の支援の充実、新興国・途上国等との科学技術・教育分野における連携・交流の強化等を図る。さらに、こうした優秀な外国人の受入れ及び定着を促進するため、同伴する子供の教育、配偶者就業対策等の生活環境の整備、大学及び公的研究機関における英語による研究支援等の研究環境の整備、高度人材ポイント制の活用促進等の取組を推進する。

3 )分野、組織、セクター等の壁を越えた流動化の促進
 人材の流動性を高めることで、それぞれの人材が資質と能力を高め、また、多様な知識の融合や触発による新たな知の創出や研究成果の社会実装の推進等が図られる。しかし、我が国では長期雇用を前提に人材を育成・確保する考え方が基本となっており、多くの社会システムもその考え方に基づいて整備されていること等から、分野や組織、セクター等を越えた人材の流動性が高まっていない状況にある。
 このため、若手からシニアまであらゆる世代の人材が適材適所で活躍できることを目指し、科学技術イノベーション人材の流動性を高めることのできる仕組みを構築する。大学及び公的研究機関等においては、年俸制やクロスアポイントメント制度といった新たな給与制度・雇用制度を積極的に導入することが求められるとともに、採用時において組織間の移動経験を積極的に評価する、内部昇格を前提としない等の取組を広く実施することが期待される。さらに、大学等の研究機関において、人文社会科学及び自然科学のあらゆる分野間の人材の交流が推進されることも重要であり、学際的・分野融合的な研究を促進する組織的取組の実施が期待される。加えて、セクターを越えた移動の促進のためには、学生の段階から企業等の外部の研究機関で経験を積む機会を充実することも重要である。国は、こうした人材の流動性向上のための取組を促進するとともに、科学技術イノベーションを担う多様な人材を育成するための取組を推進する。また、科学技術イノベーション人材のキャリアパスを多様化し、研究機関のみならず、起業・経営、初等中等教育、公務といった社会の様々な場において、科学技術イノベーション活動で培われた知見や能力が活用されることを促す。

第5章 イノベーション創出に向けた人材、知、資金の好循環システムの構築

 グローバル競争の激化により、いかに迅速に科学技術の成果を社会に実装し収益を得るかが問われる時代となっている。その際、組織の内外の知識や技術を総動員するオープンイノベーションの手法が優位性を持つ。
イノベーションを結実させるのは主として企業であるが、イノベーションに必要な新たな知識や価値は、今や、世界中の大学、公的研究機関、企業、消費者などを発信源として生み出されている。他方、我が国の状況を見ると、イノベーションに必要な人材、知識・技術、資金は、大企業、中小・ベンチャー企業、大学、公的研究機関に偏在している。
 我が国の企業、起業家等がこうした国内外の知的資源を活用し、迅速な社会実装につなげる機会を拡大するには、組織やセクター、さらには国境を越えて人材、知、資金が循環し、その各々の持つ力を十分に引き出すことのできる仕組みを社会全体として構築していくことが必要である。また、迅速な社会実装の実現により、我が国の企業や起業家等が収益を確保し、再度その収益の一部が我が国の科学技術イノベーションの基盤的な力の強化に再投資されることで、関係者にとって互恵的かつ自律的なイノベーションシステムが構築される。
 このため、オープンイノベーションを本格的に推進するための仕組みを強化する。企業、大学、公的研究機関が、それぞれの競争力を高めるとともに、人材や知の流動性を高め、適材適所に配置していくことを促す。これに伴って産学官連携活動を本格化する。
 また、スピード感を持ち、機動的又は試行的に社会実装に取り組むポテンシャルを有するベンチャー企業の創出・育成、知的財産の社会全体での有効活用、イノベーション創出に向けた制度の整備・見直しを図ることにより、人材、知、資金の好循環を促し、迅速かつ柔軟な市場化を下支えする。さらに、イノベーションの源となる知識や技術、ニーズやビジネスの機会が、国内の様々な地域、世界の様々な国・地域に存在していることを踏まえ、グローバルな視点に立ってイノベーションの創出を促す。
 これらにより、これまで進めてきている大学及び研究開発法人の改革強化を軸とした「イノベーション・ナショナルシステム」の取組を更に深化させる。そして、我が国全体の国際競争力を強化し、外需を効果的に取り込み、経済成長を加速させていく。

(1)オープンイノベーションを推進する仕組みの強化
 イノベーションを結実させるのは主として企業であるが、迅速な社会実装のためには、大学や公的研究機関との協働は欠かせない。グローバルな次元でオープンイノベーションを推進するためには、企業、大学、公的研究機関といった各主体がそれぞれの強みを生かし、その力を補完的に連携・融合させることのできる仕組みを構築していくことが重要である。
このため、各主体に対し、オープンイノベーション推進に向けた取組の強化を促す。また、大企業、中小・ベンチャー企業、大学、公的研究機関に偏在する人材、知、資金の流動性を高め、イノベーションが興りやすい環境を整備するとともに、産学官の人材、知、資金が結集し、共創を誘発する「場」の形成を進める。
 こうした取組を通じ、我が国の企業、大学、公的研究機関のセクター間の研究者の移動数が第5期基本計画期間中に2割増加となることを目指すとともに、特に移動数の少ない、大学から企業や公的研究機関への移動数が同期間中に2倍となることを目指す。あわせて、大学及び国立研究開発法人における企業からの共同研究の受入金額が同期間中に5割増加となることを目指す。


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