3.科学技術システムの改革等

 研究開発資源の重点配分に対応し、優れた研究成果が生み出され活用されるよう、科学技術システムの改革等を行う。

(1)競争的研究資金の改革及び拡充

 競争的研究資金については、科学技術基本計画に基づき、平成13年度からの5年間で倍増を目指して重点的に拡充する。これに併せ、競争的研究資金の効果を最大限に発揮させるため、各府省は、競争的研究資金制度の改革を、大学改革、研究者のキャリアパスの再構築と一体的に取り組み、科学技術分野の構造改革を推進する。また、総合科学技術会議は、制度改革が着実に実行されるよう、全体読整を実施する等必要な調整を行う。

  1. 間接経費比率30%を目指して、さらに間接経費の拡充に努める。
  2. これまでの個人補助制度を改善し、所属する研究者の実施する研究に係る経費は、研究機関が、その業務として申請、交付を受け、直接に責任を負って補助金を管理する。
  3. 研究者の自由な発想に基づく研究の推進を目的とする制度は、それぞれの目的を踏まえ、できるだけ多くの研究者がその所属を問わず応募できるよう措置することを検討する。
  4. 研究者の経歴や業績ではなく、研究計画の内容を重視して審査し、併せて中間評価及び事後評価を実施する。その際、適切な評価者の選任、厳正な評価の実施と評価コメントの開示等、公正で透明性の高い評価システムを確立する。
  5. プログラムオフィサー(PO)・プログラムディレクター(PD)の設置等プロジェクトの二元的管理・評価体制を整備する。各配分機関は、平成15年度の配置を踏まえ、P0・PDの平成16年度以降の配置計画を、平成16年度概算要求時に総合科学技術会議に提出する。
  6. 研究費交付時期一の一層の早期化、繰越明許による予算の年度間繰越を実現するとともに、年複数回の申請書の受理を検討する。
  7. 各省の下で細切れとなっている制度については、その目的・内容を精査し、効率的運用の観点からその整理・統合を図る。
  8. 科学研究費補助金及び厚生労働科学研究費補助金については、その実態を勘案しつつ、独立した配分機関に配分機能を委ねる方向で検討する。
  9. 独立行政法人で所管する競争的研究資金については、原則として交付金の形で予算措置を講ずるとともに、独立行政法人であるが故に、一律に予算上の制約が課されることのないよう配慮する。

(2)産学官連携の推進

産学官連携の推進のため、以下の施策を講ずる。

  1. 大学等・公的研究機関においては、産学官連携や知的財産の管理・活用を推進するための体制整備や研究成果の積極的な発信を行うとともに、産学官のマッチングによる共同研究や実用化研究、中小企業と大学等との連携を促進する。
  2. 国の研究機関等は「研究人材流動化促進計画」を策定し、任期制及び公募の適用を促進する。
  3. 私立大学での研究開発を推進するため、学校法人への寄附促進のための取組、支援のあり方について検討する。

(3)研究開発型ベンチャーの振興

 研究開発型ベンチャーの創出と育成を推進するため以下の施策を推進する。

  1. 研究開発型ベンチャーの起業時、初期段階における資金を支援するため、
    ・公的機関によるファンド出資を活用した政策的観点からの集中的・重点的投資と創造支援型ベンチャーキャピタルの育成
    ・補助金制度の改善・充実(前払い、通年公募、経理事務の合理化等)
    ・大学・公的研究機関による調達の促進(研究機器の共同研究と随意契約の活用、開発実績要件を重視した入札)等について積極的に推進する。
  2. 起業家及びその支援者を輩出するため、マッチングファンドの改善と拡充や起業教育の普及等の教育環境の整備、税制措置の検討も含め・スピンオフ体制の整備を推進するとともに、再挑戦できる環境の整備という観点から、個人保証・連帯保証によらない融資手段の活用や差押禁止財産・自由財産の範囲の拡充、確定拠出年金制度の拡充等を検討する。
  3. ベンチャー企業の結集による総合的な技術開発の支援やクラスター事業により、総合的な支援を推進する。

(4)地域科学技術の振興

 公共事業依存型の地域発展から、科学技術駆動型の地域経済発展への流れを一層推進するため、以下の点を中心に地域科学技術の振興を図る。

  1. 地域の中堅・中小企業等を中心とした、産学官連携等による多様で優れた実用化技術開発、特に、地域の独自性、特性を活かした研究開発課題等に対する国の支援を推進する。
  2. 「知的技術革新集積(知的クラスター)」及び「地域再生・産業集積(産業クラスター)」の両計画の密接な連携を図りつつ、知的技術革新・産業集積(地域クラスター)の形成を促進する。

(5)知的財産の戦略的活用

 国の先端技術分野等への研究開発投資の拡充に対応し、その成果を国際競争力の強化、社会への還元に結びつけるため、以下のとおり、優れた知的財産の創造・保護・活用を最大限に支援する。

  1. 大学等における効果的・効率的な権利の取得・活用を図るため、特許関連費用の確保、知的財産本部及びTLOの設置推進、知的財産権の原則機関帰属下での知的財産取扱ルールの明確化等、国立大学の法人化も踏まえた抜本的な環境整備を図る。
  2. 国の研究開発プロジェクト等において、研究開発、知的財産権取得、標準化の一体的な推準を図るとともに、我が国発の技術の世界市場への普及を促進するため、国際規格の積極的な開発・提案に取り組む。
  3. 先端技術分野の技術革新に対応し、審査奉準の明確化等により機動的に権利の保護を行う。
  4. 産業活力再生特別措置法第30条(日本版バイ・ドール条項)を、各府省の全ての委託研究開発制度に適用を拡大し、米国並みの仕組みを導入する。

(6)各府省における研究開発評価システムの改革

 各府省は、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」に基づき、評価に必要な資源を確保して評価体制を整備し、公正さと透明性を確保して評価を実施し、評価結果を資源配分へ反映させる。
 各府省が実施する評価に必要な資源の確保と評価体制の整備については、以下の点に取り組む。

  1. 評価部門への研究経験者の配置
     評価実施主体は、評価体制を充実するため、評価部門を設置し、国の内外から若手を含む研究経験のある人材を適性に応じて配置する。
  2. データベースの整備
     評価者の選任、評価者の評価等の業務の効率化、研究開発の不必要な重複の回避、効果的・効率的な研究開発の企画立案等を図るため、各課題ごとに研究者(エフォートを含む。)、資金(制度、金額)、研究開発成果(論文、特許等)、評価者、評価結果(評価意見等)等を収録したデータベースを構築・管理する。
  3. 電子システムの導入
     審査業務・評価業務を効率化するため、申請者の受付、書面審査、評価結果の開示等に電子システムを導入する。

(7)研究開発型特殊法人等の改革の推進

 平成15年10月以降、新たな独立行政法人の設立又は既存独立行政法人との統合が行われる研究開発型特殊法人等については、法人が果たしてきた役割の重要性を踏まえ、新法人への円滑な転換を図る。
 この際、各法人の使命達成と科学技術基本計画に示された重要政策等の実現を図るため、研究開発のメリハリをつけつつ、その十全な実施を図る。このため、独立行政法人であるが故に、一律に予算の制約が課せられることのないように配慮する。
 また、中期目標の策定に当たっては、科学技術の特性を踏まえた適切な評価指標を用いて目標設定を行うとともに、各種政府方針に示された施策、「競争的研究資金制度改革について」(平成15年4月21目総合科学技術会議決定)に示された制度改革への取組等が確実に実施されるよう、中期目標に必要な事項を定める等適切な措置を講ずるべきである。
 さらに、毎年度の評価を踏まえて、法人において研究開発資源の弾力的な配分が行われるようにすることが必要である。

(8)大学改革の推進

 平成16年4月から法人化が予定されている国立大学については、これまで我が国の科学技術の振興において、大学が担ってきた役割の重要性に鑑み、新法人への円滑な移行が行われるよう配慮しつつ改革を進める。特に、人事や給与等について競争原理を導入するとともに、研究活動等の大学の特性に考慮した適正な評価を通じて、資源配分を行うことが重要である。

(9)大学等の施設整備

 国立大学等の施設については、第2期科学技術基本計画に基づき、5年間に緊急に整備すべき施設に重点を置き、計画的な整備を進めているところであり、平成16年度においても、計画的な整備を着実に実施する。
 また、国立試験研究機関及び独立行政法人研究機関の施設についても着実な整備を推進するとともに、私立大学についても、その研究能力を活用するため、優れた研究施設整備に対する補助等について、重点配分を基本に充実する。

(10)知的特区

 科学技術関係の構造改革特区については、地方公共団体等からの要望を踏まえた規制緩和の実現等に努めるとともに、申請が認められた構造改革特区については適切な運用が図られるよう、引き続き構造改革特別区域推進本部と連携して推進する。

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科学技術・学術政策局基盤政策課

(科学技術・学術政策局基盤政策課)

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