1.平成16年度に向けた基本的考え方

 科学技術は、新たな知を創造するとともに、技術革新を生み出し、人類の生活、福祉、経済社会の発展に一層貢献する。我が国は、科学技術が経済力の増強のみならず国力の維持・強化に不可欠であり、世界一の発展を牽引するという認識の下、科学技術基本法の制定以降、特に科学技術の振興に強力に取り組んできたところである。
 しかしながら、近年の内外の状況を見ると、国際的な競争の激化やアジア諸国の競争力の伸長に伴う我が国の経済の停滞、急速な少子高齢化等により、国民が将来に対し不安を抱いている。このような状況の中、国民の不安を払拭し、我が国が持続的な発展を遂げるためには、科学技術の一層の振興が不可欠である。また、科学技術により生み出される知識や知恵を世界に向けて発信し、人類共通の問題解決と、より豊かな社会の形成に貢献することは、世界第2位の経済規模を有する我が国の責務であると同時に、我が国の国益に合致することを改めて認識しなくてはいけない。
 科学技術に対する投資が質の高い成果を生み出していくためには、継続的な積み重ね(ストック)が極めて重要である。近年の政府研究開発投資の充実により、我が国の政府研究開発投資の年度毎の対国内総生産(GDP)比率(フロー)は、欧米主要国に比肩するところまで到達したが、ストックの点では欧米主要国に比べて決して十分とは言えない。このため、将来の成長の糧である科学技術に継続的・積極的に投資していくことが必要であり、欧米主要国並みの政府研究開発投資を確保することを定めた科学技術基本計画(平成13年3月30日閣議決定)に基づき、必要な施策を着実に進めていく。
 一方、我が国の財政事情が極めて厳しい中、貴重な国費を科学技術に投資していることを重く受け止め、科学技術に携わる者は、研究開発を効果的・効率的に実施し、質の高い成果をあげると同時に・国民や社会に対する説明責任を果たすことに真剣に取り組まなくてはならない。
 このような認識の下、総合科学技術会議は、科学技術基本計画に基づき、主導力を発揮し、平成16年度においては、中長期的な観点からの投資と即効性のある経済活性化施策を両立させつつ、「未来を切り拓く鍵」である科学埣術関係施策を強力に推進する。その際、これまで進めてきた科学技術の戦略的重点化や科学技術システムの改革に係る諸施策の中でも、以下の基本的な方針に合致する施策を重視する。なお、これらの施策を進めるに当たって、研究開発等の活動の担い手である優秀な科学者、技術者、技術経営専門家等の人材が不可欠であり、平成16年度においては、これら人材の育成・確保を特に強化する。

1.研究基盤の強化による国力の充実

 将来の知識の源一、国の発展の礎となる基礎研究を更に強化する。特に、基礎研究の推進に重要な役割を果たす競争的研究資金の拡充に努める。また、研究者の研究開発活動を支える知的基盤や研究施設等の整備を進める。

2.国際競争力の確保・強化による経済の活性化

 我が国の国際競争力を強化する経済活性化のための研究開発プロジェクトの強化・拡充に努めるとともに、科学技術の振興による地域経済の発展を促進する。また、研究成果を実用化・産業化に結び付けるために、実証実験を行うための環境整備、産学官の緊密な連携、知的財産の戦略的活用のための制度改革を進める。

3.少子高齢化等の諸課題に対応する安心・安全で快適な社会の構築

 少子高齢化社会における健康の維持・増進、食品の安全性確保、情報通信システムの安全性・信頼性向上、地球温暖化対策や循環型社会の構築、エネルギーの安定供給、災害に対する被害軽減など安心・安全で快適な社会の構築に資する重点分野の研究開発を強化する。
 ただし、現下の厳しい財政事情の下、科学技術の一層の振興に当たっては、施策の重点化や科学技術システム改革を行うだけでなく、施策の必要性、効率性等を見極め、整理・合理化・削減を図る。その際、科学技術関係施策について、その効果を高める観点から、各省及び総合科学技術会議による宣言(PLAN)、実行(DO)、成果(SEE(check,acti,cm))のプロセスを取り入れる。

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科学技術・学術政策局基盤政策課

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