資料2 文部科学省の研究開発投資における若手博士人材のキャリア開発支援に関する検討の視点(案)~審議用のたたき台~

1.指針策定の趣旨について

ポストドクターは現在1万8千人を超え、競争的資金等の外部資金により雇用される者が増えている。また、多くのポストドクターの専門分野は、産業界で人材需要の高い分野ではなく、産業界に活躍の場が少ないことなどから、ポストドクターを繰り返し、高年齢層の者が増えるなどの傾向がみられる。
このような現状を踏まえ、人材委員会は、第5期報告(平成21年「知識基盤社会を牽引する人材の育成と活躍の促進に向けて」)において、ポストドクターのキャリアパスを多様化するよう支援を進めることや、競争的資金の審査や運用に当たり対応すべき点について提言を行った。

  • ポストドクターや博士課程(後期)学生が、科学技術イノベーションの推進において果たしている意義についてどう考えるか。
  • ポストドクター等の多くは、競争的資金等によるプロジェクト研究毎に雇用されているが、任期終了後のキャリアパスについて、分野別に見てどのような課題があるか。
  • プロジェクト雇用型のポストドクターのキャリアパスは、大学・研究機関の研究者だけではなく、研究職以外の職業に就くなど多様化することが求められる。ポストドクター等という職は、どのような位置づけにある者と考えるか。
  • プロジェクト雇用型のポストドクター等に対し、キャリアパスの開発を支援する政策的な意義は何か。
    研究費の補助は、研究成果のみならず、将来の研究の発展基盤となる人材の育成も目的と位置づけることができるのではないか。さらに、研究による高度人材の育成を通じて研究成果を社会へ還元するという意義や、優秀な若者が積極的に科学技術の道を選択することを推進するという意義もあるのではないか。
  • 研究者以外の職業を含む多様なキャリアパス支援を推進するに当たり、大学・研究機関や研究主宰者(Principal Investigator ;以下PIという。)が果たすべき役割をどのように考えるか。
  • 指針は、文部科学省の研究開発投資の各事業の公募要領等に、キャリア開発支援に係る取組に関して反映すべき事項を、人材委員会として共通的に示すものとすることでよいか。

■第4期科学技術基本計画(平成23年8月閣議決定)
優秀な学生が大学院博士課程に進学するよう促すためには、大学院における経済支援に加え、大学院修了後、大学のみならず産業界、地域社会において、専門能力を活かせる多様なキャリアパスを確保する必要がある。
このため、国として、博士課程の学生に対する経済的支援、学生や修了者に対するキャリア開発支援等を大幅に強化する。

<推進方策>

  • 国は、優秀な学生が安心して大学院を目指すことができるよう、フェローシップ、TA(ティーチングアシスタント)、RA(リサーチアシスタント)などの給付型の経済支援の充実を図る。これらの取組によって「博士課程(後期)在籍者の2割程度が生活費相当額程度を受給できることを目指す」という第3期基本計画における目標の早期達成に努める。
  • 国、地方自治体、大学、公的研究機関及び産業界は、互いに協力して、博士課程の学生や終了者、ポストドクターの適性や希望、専門分野に応じて、企業等における長期インターンシップの機会の充実を図るなど、キャリア開発の支援を一層推進する。

2.指針の範囲

  • 文部科学省の研究開発投資の範囲をどう考えるか。
    • 科学研究費補助金、戦略的創造研究推進事業などの競争的資金
    • その他の公募型研究開発支援事業
    • 運営費交付金等の基盤的経費は、指針の対象とはせず、大学等の自主的な取組に期待するものとして整理。
  • 上記の資金により雇用され、本指針の対象となる若手博士人材の範囲をどう考えるか。
    • 博士課程(後期)学生
    • 上記の資金により雇用され、安定的な職に就くまでの職にある博士号取得後○年以内の研究者であって、研究主宰者(PI)の立場にはない者(例:博士研究員、特任助教)

3.キャリア開発支援に関する検討事項例

(1)大学・研究機関や研究主宰者(PI)には、どのようなことが求められるか。

1)大学・研究機関(学長等の組織の責任者を含む)が果たすべき役割や期待される取組として、どのようなことが考えられるか。

【各大学・研究機関の取組例】
企業と連携したサポート組織の設置、
研修プログラムの整備、長期インターンシップ
企業との交流会、カウンセリングなどの実施 等

2)研究主宰者(PI)が果たすべき役割や期待される取組として、どのようなことが考えられるか。

(2)文部科学省の各事業の公募要領等において、どのような事項を明記することが求められるか。

1)大学・研究機関や研究主宰者(PI)の取組を促すために、どのような事柄を求めることが望ましいか。また、インセンティブとしてはどのようなことが考えられるか。

【文科省の事例】
科学研究費補助金「新学術領域研究」の審査要綱
《研究領域の審査に当たっての着目点》
・研究領域の発展に向け、若手研究者の育成等に配慮しているか。

【文科省の事例】
「テニュアトラック普及・定着事業」の審査要領
・テニュアトラック教員がポストドクターを雇用する場合、当該ポストドクターの任期終了後のキャリアパスについて配慮する方針が立てられているか。
「博士課程教育リーディングプログラム」審査要項
《審査に当たっての着目点》
・終了者が各界のリーダーとして活躍するキャリアが見通せるプログラムが構築されているか。
・共同研究やインターンシップをはじめ実践性を備えた研究訓練等が設定されているか。

 

【アメリカNSFの例】
アメリカ競争力強化法(2007年成立 The America COMPETES Act)
《規定の要約》
NSF長官は、NSFに助成金を申請する全てのプロポーザルに対して、その研究プロジェクト内で学部生、大学院生、ポスドク研究者への適切な指導(例:メンタリング、キャリアカウンセリング、申請トレーニング、教授法改善指導、研究倫理トレーニングなど)を行う計画が記述されているかを確認する必要がある。

2)大学・研究機関や研究主宰者(PI)の取組や意識改革を促すために、費用面で、どのような配慮が考えられるか。
また、研究費により雇用されている者は、通常、雇用契約等において雇用元の研究業務に専念することが求められるが、キャリア開発支援との関係で見直すべき点はあるか。

3)博士課程(後期)学生をリサーチ・アシスタント(RA)として雇用する場合、どのような配慮が考えられるか。

【文科省の事例】
戦略的創造研究推進事業(CREST)の募集要項
《リサーチアシスタント(RA)について》
CRESTでは博士課程(後期)在学者をCREST研究のRAとして雇用する場合、経済的負担を懸念させることのないよう、給与水準を生活費相当額程度とすることを推奨しています。
<留意点>
給与単価を年額では200万円程度、月額では17万円程度とすることを推奨しますので、それを踏まえて研究費に計上してください。ただし、学業そのものやCREST以外の研究に関わる活動などに対する人件費充当は目的外使用とみなされる場合がありますので十分ご留意ください。

お問合せ先

科学技術・学術政策局基盤政策課

(科学技術・学術政策局基盤政策課)

-- 登録:平成23年11月 --