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人材委員会(第79回) 議事録

1.日時

平成30年2月15日(火曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省 3F2特別会議室

3.議題

  1. 平成30年度政府予算案等について
  2. 研究人材の育成・確保を巡る主な論点について
  3. 科学技術・学術審議会人材委員会・中央教育審議会大学分科会大学院部会合同部会の設置について

4.出席者

委員

宮浦主査、宮田主査代理、長我部委員、勝委員、狩野委員、川端委員、鈴木委員、高橋(真)委員、竹山委員、塚本委員、豊田委員、林委員、柳沢委員

文部科学省

松尾大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、勝野科学技術・学術総括官、塩崎人材政策課長、石丸人材政策推進室長 他

5.議事録

科学技術・学術審議会人材委員会(第79回)

平成30年2月15日


【宮浦主査】  皆様、お集まりいただきありがとうございます。ただいまから科学技術・学術審議会人材委員会第79回を開催いたします。本日の会議は、冒頭より公開となっておりますので、よろしくお願いいたします。
 本日は、飯澤委員、隅田委員、髙橋修一郎委員、萩谷委員、原田委員の5名の委員が御欠席でございますが、13名の委員が出席ですので、定足数を満たしております。
 また、今回より、株式会社日立製作所の理事をお務めで、ヘルスケアビジネスユニットのCSO/CTOであられる長我部委員を本委員会の委員として新たにお迎えしておりますので、御紹介させていただきます。
【長我部委員】  長我部と申します。よろしくお願いいたします。
【宮浦主査】  よろしくお願いいたします。
 また、事務局に人事異動がございましたので、紹介をお願いいたします。
【広瀬基礎人材企画係長】  事務局でございます。
 まず、本年1月16日付で大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)に松尾が着任しております。
【松尾大臣官房審議官】  松尾でございます。どうぞよろしくお願いします。4年前まで人材政策課長を務めており、人材委員会の委員の皆様には大変お世話になったところですが、この度担当の審議官として再び人材委員会に戻ってまいりました。また、本日の議題に、大学院部会との合同部会との設置がありますが、前職が高等局担当でございましたので、高等局との施策の連携を含めて御議論いただけるのではないかと期待しております。どうぞよろしくお願いいたします。
【広瀬基礎人材企画係長】  続きまして、同じく本年1月16日付で人材政策推進室長に石丸が着任しております。
【石丸人材政策推進室長】  石丸でございます。お世話になります。よろしくお願いします。
【宮浦主査】  それでは、議事に入ります前に、事務局より、本日の資料の確認をお願いいたします。
○事務局より配布資料について説明
【宮浦主査】  それでは、議題に移らせていただきます。
 お手元の議事次第の議題1でございます。資料1-1から資料1-4となっております。
 まず、昨年末に閣議決定されました平成30年度の政府予算案のうち、本委員会に関連する内容につきまして、事務局より報告を頂きたいと思います。
 また、関連事項といたしまして、第1に、卓越研究員事業の平成29年度の実施状況及び平成30年度における改善事項について、第2に、昨年の秋の年次公開検証、いわゆる秋のレビューにおける指摘事項について、第3に、秋のレビュー等を受けて設置され、先週第1回会議を開催した「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)支援事業の今後の方向性等に関する有識者会議」についても御説明を頂きたいと思います。
○事務局より資料1-1から資料1-4に基づいて説明
【宮浦主査】  ありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明に関連いたしまして、御質問ございます方は、挙手でお願いいたします。いかがでしょうか。
 竹山委員。
【竹山委員】  卓越研究員事業について、企業とのマッチングがうまくいっていないとのことでしたが、例えば、企業が博士人材を独自で積極的に採り始めている現状が少しずつ出てきている中で、卓越研究員制度で採用することのメリットは何があるのか教えてください。補助金が交付されるという点は、企業にとってメリットになると考えていますか。例えば、私たちの周りを見ると、博士号取得後に企業に行っている学生はたくさんいますが、普通のプロセスでの採用です。企業の研究所などでも、博士号を持っている人を中途採用で採用している例も多々あります。その中で卓越研究員制度がどのような役割を果たすのか疑問に思っています。
【宮地人材政策課課長補佐】  企業との関係は非常に難しいと思っておりまして、御指摘、御疑問、非常にごもっともだなと思いながら聞いておりました。
 企業にとってのメリットとしては、通常のルートではなかなか自分たちでは手に届かない人が、ある一定程度のプールとして見える化するところがあると思います。
 例えば、製薬会社さんが、日頃から採っている生物系の人を探す場合には、確かに余りメリットはないかもしれませんが、自分とは余り関係ない化学とか、そういった人を採ろうとするときには、魅力的なプールに見えるのではないかと思っております。
 また、例えば、平成29年度に決まった3名のうち2人は、ベンチャー企業に決まっております。ベンチャー企業にとってはなかなか手が届かない人材をプールとして見せるというところも企業にとってのメリットとしてあると思っております。改善していかなければいけない点もあると思いますので、御示唆を頂けたらありがたいと思ってございます。
【宮浦主査】  関連しまして、産業界の委員も含めて、いかがでしょうか。
 塚本委員。
【塚本委員】  ありがとうございます。
 今の宮地補佐と同じような意見ですが、今回の事業に関して、アメリカ商工会議所のメンバーの人たちにも、持参金付きで博士人材が採れると話してみたところ、実際には、応募はありませんでしたが、関心は高い状況でした。このため、ベンチャーですとか、外資系ですとか、そういう優秀な人材が採りづらい企業にとってはいい出会いになるのかもしれないと思いました。
【宮浦主査】  ほかはいかがでしょうか。
 はい、どうぞ。狩野委員。
【狩野委員】  「卓越」の方向性は合っているのでしょうか。つまり、学術における「卓越」というのは、論文業績的卓越を言う場合が多く、それと企業様が欲しておられる「卓越」というものが合っているのかどうかということに興味があります。合っていない可能性もあるのではないかと思っています。この点が分かると、どのような方を卓越研究員制度で選んで、何のために卓越研究員に補助金を交付するがはっきりすると思いまして、是非伺いたいと思います。
【宮浦主査】  アカデミアと産業界が、同じ仕組みの中で人材活用できるかという部分かと思います。
【狩野委員】  はい。
【宮浦主査】  何か御意見、御質問、いかがでしょうか。
【宮地人材政策課課長補佐】  大変難しい問題だと思っております。大きなチャレンジだと思っております。
 審査の基準をこの場で御説明することは難しいですが、アカデミア、産業界両者に共通する部分があるかと思っております。1つは、サイエンスメリットの点でして、学術的な裏付けがしっかりしているというところは共通として持つべきではないかと思っています。あとは、双方で活躍できるという人物的なところについて、どのような基準で卓越性を判断するか難しいですが、そういった人物評価なども併せて、卓越研究員としての評価ができればなと考えているということでございます。
【狩野委員】  加えますと、科学の考え方に演繹的、つまり、定理や法則が決まっていて、その中での新しいことを出すという考え方と、もう1つ、全く新しいよく分からないことが多くある中からルールを見付け出すという帰納的な考え方があると思っています。いわゆる論文業績が上がりやすいのは、演繹的な考え方である印象がありまして、この演繹的な考え方ができる人たちが本当に企業活動で欲されているのかどうかが心配になるときがあります。要は、企業の方々は、市場を発見して、新しい製品を作って収益を上げていくという考え方だと思いますが、こういう考え方ができる人たちが卓越研究員候補者に入っているかどうかについて興味があるということでございます。
【宮浦主査】  竹山委員。
【竹山委員】  その点は疑問があります。通常の採用試験では、応募人材から企業自身が独自の基準で選ぶのですが、卓越研究員制度では、何らかの基準で選抜された候補者から選ぶことになります。審査員の目線が、企業が欲しいとする人材を残しているかという点が課題です。卓越した研究者として選考された人たちが必ずしも企業希望ではない、逆に企業側からは適した人材ではないという可能性もありえます。企業とのマッチングに関しては、少しわざが要るのではないでしょうか。
【宮浦主査】  川端先生。
【川端委員】  民間がドクターを採る風潮が強くなってきて、採用する新卒大学院の中のドクターの割合も増えてきていますが、この卓越研究員制度は、この研究者層とは違う研究者層で制度を実施している。卓越研究員制度で採用される人は新卒のドクターではないはずなので、セクター間の人材の異動をプロモーションしているようにも見えます。卓越研究員候補者として選ばれる成果を出した人だから、ポスドクか、助教をやられている方々になりますが、それが次に民間に移られるというような動きがここで本当に成立するかということを考えると、もともとそのような人はほとんどない。それが少数でも出てきただけでもよかったと考えるべき、研究者層だと思います。このため、新卒のドクターとはまた違う次元の基準がこの制度の中でだんだん培われていけばいいと思いながら見ております。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 今の点は、どういう人材を対象としてこの事業を打っていくか、事業が真に有効活用されているかという非常に重要なところです。
【狩野委員】  もう1つ、よろしいですか。
【宮浦主査】  はい。
【狩野委員】  重ねて恐縮ですが、SSH事業についても同じことを思っています。アカデミアの就職率が余りよろしくなく、これから学生の数も減っていって大学の数をどうしようとかと言っている時代に、どういう人たちをSSHから輩出したいのか、いかがでしょうか。さきほど申し上げたような帰納的な考え方ができる人を育てたいのか。そうだとすると、今の大学の講義体系が概ね目指していると思われる演繹的な考え方のできる人とは違う人を育てたいのか。あるいは、ノーベル賞を後で取れるような人の層を厚くしたいのか。このようなところも考えどころかなと思っております。
【宮浦主査】  豊田委員。
【豊田委員】  民間企業の採用基準が本当にいい採用基準なのかという問題があります。この問題とも関連してくるのですが、前回の委員会の場で狩野委員から、どういう人を社会的に育てるべきなのかという人材像をちゃんと明確化すべきではないかという話があったと思います。私もとても共感します。このため、そのようなことをこの場で改めて、明確化した上で事業そのものの在り方を見直すということが必要なのではないでしょうか。私も個人的に卓越研究員の方は実は出会ったことがないので、どういう方なのか分かりません。事業としてうまくいっているという見方もあるかもしれませんので、一概に見直すべきと言えないかもしれませんが、そもそもどういう人を事業の対象とするかを改めて言語化すべきかということを改めて感じました。
【宮浦主査】  どうぞ、高橋委員。
【高橋(真)委員】  ありがとうございます。
 最後に補足で言おうかなと思っていましたが、文脈上、今申し上げます。
 日経新聞で、博士人材が企業に行くと、その企業の生産性が下がるという記事が出ていました。因果関係ではなく相関関係であるという表現でしたが、無視できないデータだと思います。当事者の間ではSNS上でたくさんの議論があり、まだ続いています。ミスリードさせるメッセージを出してはいけないなと強く思っています。
 結論は、今、皆様に言っていただいたとおりです。企業が期待する博士人材の役割は、長期的な研究開発能力の向上であり、簡単に言うと、博士人材を雇うことで基礎研究の能力の向上を図っています。それにもかかわらず、生産性の向上を指標とするのは間違っていて、相関がないのは当たり前かもしれません。企業が何を求めていて、だからこういう人をこのくらいの割合で入れる、それに対して我々はどういう支援ができますか、といったようにもう少し分解して話ができるいいタイミングなのかなと思いました。
【宮田主査代理】  文脈上、ちょっと反論します。
 卓越研究員事業は、失業対策なのかをまず議論しなければいけないと思います。今の生産性の問題は、平行現象で因果律は検証されていませんが、見掛け上のデータでは生産性が下がっています。私どもが思うに、企業は長期の基礎研究を担う人材なんて求めていません。新規事業を立案できる人材を博士人材として求めています。ですから、そこにそもそも考え方のミスマッチがあります。
 したがって、卓越研究員候補者が企業に行かないのは、いろいろな問題があると思いますが、確かにミスマッチが存在している可能性があるし、人材を養成する大学の人たちとの間にもミスマッチがあると私は思っています。
 少なくとも日本の大手製薬会社、大企業に関しては、基礎研究志向はどんどん小さくなっているのが現実だと考えております。このような平行的なデータは、いろいろな悲喜劇を及ぼします。例えば、研究費当たりの生産性ペーパーを見ると東大が最低であり、研究費が多くなれば多くなるだけ生産性が上がるわけではありません。我々はどうも違うところをさすりながら議論している感じがしており、皆さんとこれからしっかり議論したいと思います。
【宮浦主査】  関連いたしまして、御意見ございますか。
 どうぞ。
【狩野委員】  研究のステップは、一番初めに課題の認識があって、次にそれに対して問いを立てられて、それに対して仮説が立てられて、それを検証できて、さらに人に伝えられるという5ステップぐらいに分けられるように考えております。このうち、大学がどのステップを大事にしているかをもう1回見直してもよいと思います。とりわけ理系においては、検証のステップや伝達のステップは一生懸命やっていると思いますが、ほかのステップはそうでもないかもしれない。他方、研究のステップの中で、企業活動にも通用するところは、多分、初めの幾つかのステップである可能性が高い気がしております。これらのステップをどうやってうまく強めていくかという考え方も一案かと思っておりますが、いかがでございましょうか。
【宮浦主査】  長我部委員、どうぞ。
【長我部委員】 アカデミアのトレーニングを積んだ人の能力というのは、基本的に今おっしゃったような研究の方法論を実践できるということです。つまり、周辺状況を理解して、仮説を作って、演繹的であろうが、帰納的であろうが、検証方法を自分で考え出して検証して、それを知らしめて、また課題を新たにそこから見つけてスパイラルに発展していくことができます。これは研究だけではなくて、企業において事業を作るのも全く同じことです。企業の活動は、マーケティングもそうですし、生産にしても非常にクリエイティブであるべきです。データを集めて分析して、何が改善できるか仮説を作って実践する、まさに研究の方法論と同じものが求められています。したがって、それを一通りできると定義されているドクターは、企業でも非常に役立つはずです。
 ただし、問題は、その関心を専門と違ったところに当てはめられるか。経営の問題もある意味ではやるべき事は明快ですから、興味さえ持てれば、地頭のいい人は必ず実践できる。私は講演で必ず言っているのですが、関心さえ持てれば、ベーシックな研究の方法論は、すごくユニバーサルに使えます。関心の向け方のところをうまく開拓していけば、私は本当に産業界でも卓越研究員事業は非常に役立っていくのではないかと思います。
【宮浦主査】  川端委員。
【川端委員】  ドクターベースにマーケティングをやったことがありまして、ドクターが一体何を今こだわって就職を考えようとしているか、ドクターをたくさん集めて、彼らは一体何を売りにしてどうしたいかというのを調べました。すると、ドクターで研究した専門を生かしたい人ばかりかと思っていたら、ドクターで経験したことを生かしたいという人がメジャーでした。それが我々にとって一番印象的だったところで、自分の専門以外に関心を持てない人ではなく、ドクターで経験したことを多様なところで多様にやりたいですという人たちがドクターの一番メジャーにいました。
【宮田主査代理】  それはよく分かりますが、そこの内容をよく見ないといけなくて、今、イノベーションのスピードが上がり過ぎてしまっています。例えば、ちょっと前、インターネットが出る前だったら、イノベーションは60年周期でした。コンドラチェフの波です。でも、インターネットが出て知識共有のスピードが上がって、それから国際的な交通網が発達して人が会うようになると、多分10年から15年、バイオだと10年ぐらいで破壊的イノベーションが起こってしまいます。そうなると知識は役に立たない。うちのスタッフもマスターで採りますが、毎年知識の半減期が短くなっています。だから、大学で教えるべき研究員は、知識も教えますが、知識は1つのケーススタディーであって、その知識の体系がどうやって作られて、その次の疑問を探して知識の体系をどうやって伸ばすか。その教育が本当に日本の大学院で行われているのかというのは、すごく疑問です。
 また、卓越研究員事業において、自分のエフォートの中で自由に使える時間をどのように保証しているのかも疑問です。
 今度の革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)では、若手研究員に対して、エフォートの20%は自由に使えるようにし、自立的な研究員を作るための制度になっています。卓越研究員事業がミスマッチだけを解決する事業だったら、単なるリクルートのための新しいサービスです。それだけではなく、卓越研究員に50%ぐらいのエフォートは自由に研究していいと、補助金も自由な研究に使っていいぐらいの態度を示すべきだったのではないかと思います。そうすれば、本当に使える研究者と使えない研究者を中間評価で選別することができます。自立的研究員を作ってこなかったのです。
 私たちは、明治時代にサイエンスを輸入するときに「科学」と訳しましたが、「科学」とは学を分けるという意味です。だから、研究はどんどん細分化されてしまって、各研究室には、まるで家元制度のように古くさい知識体系と様式が伝統美として存在しています。大学を変えなければならないです。卓越研究員制度はそのための制度となっているはずだと思っていたのですが、公募要領を読む限りでは、宴会に使ってはいけないとか、くだらないことがいっぱい書いてあって、イノベーションの機会を創出できていないのではないかと思います。だから、そこをもう少し工夫した方がいいと思います。
 自立的な研究員が出てくれば、企業も大学も欲しがるはずです。自立的な研究員を作るという価値観が乏しいような気がしています。
【宮浦主査】  柳沢委員、どうぞ。
【柳沢委員】  2点申し上げます。
 1つは、卓越研究員制度は、雇用の不安定化を背景の1つとして開始した制度ですので、卓越研究員になった方々が実質的にどういう種類のポジションを大学から得られているのか、形式的にテニュアトラックと言うだけでなく、本当に安定した、少なくとも彼らが安定していると自覚できるような、10年ぐらいは腰を落ち着けてやりたいことができるポジションが与えられているか、調査するべきではないか。そのような調査をやらなかったら、普通の科研費とかスタートアップ的な若手向けの研究費と同じような制度になってしまうと思います。もう事業開始から2年くらいたっているのでそういう調査ができると思います。それからもう1点は、資料1-2に、卓越研究員候補者へのアンケートからは「研究分野を過度に限定するポストが多かった」との回答が多かったとありますが、これは出来レースだったということではないかと思います。要するに、募集している側の教授なりPIが、お弟子さんか知り合いに明らかな候補者がいた上でポストを提示しているということであって、それではこの制度は成立しないわけで、そういうところはきちんと分かっているのでしょうか。
【宮浦主査】  まず、2年ぐらいたちまして、様々な問題点も解決しつつ進んでいるところで、実際、卓越研究員が5年ぐらいのスパンでどうなったか、どのように活動されているかということは、今後、しっかり見ていかなくてはいけない部分だと思います。あと、やはりシステム上の問題を御指摘いただいた点と、審査で本当に企業が欲しかった人が落ちていませんかという点は非常に重要な点で、博士人材が産業界に余りにも動かないので、そこに風穴を開けようという目的に向かって動いているかという部分で様々な問題があろうかと思います。
【勝委員】  卓越研究員事業の目的は非常に理解できるのですが、先ほど宮田委員が言われたように、これが任期付きの教員が増えている中での失業対策となると、まさにこの資料1-3で、行政改革推進会議が指摘しているようなばらまきというところになってしまう。重要なことは、リーディング大学院や卓越大学院プログラムもそうですが、かなりシビアに、公的なお金をどのように使っていくか。それが日本の科学技術の向上にどのぐらい役立つかというところを検証していかなくてはならないだろうと思います。そう考えると、国立大学法人の運営費交付金の問題にもつながりますが、国がどのように資金を配分するのか。リーディング大学院の場合、大学側からしても非常に手間がかかって、調書を書くのも非常に大変です。この辺をシンプルにしていく。なおかつ、大学法人や研究開発法人の自立的な取組を支援し、基礎研究の裾野を広げていく方が、むしろ日本全体の博士人材の育成、裾野の拡大に貢献するのではないかと思います。
 この前、たまたまJSPSの若手研究者奨励賞の表彰式に行きましたが、25人ぐらい若手の研究者の方が表彰されていて、皆さんの経歴を見ると、1つの機関にずっといるのではなくて、いろいろな経験をしています。彼らを自分の力で主体的にやったのだろうと思いますし、それぞれの方に資質があったということだと思いますが、若手がいろいろな経験をすることを後押しするような施策が重要なのかと思いました。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 どうぞ、鈴木委員。
【鈴木委員】  外資の企業の観点から申し上げますと、卓越研究員事業のようなシステムを使ってユニークな人材が入ってくるのはすごくうれしいです。多様性とインクルージョンが重要な中で、少し変わった視点を持つ方々がこのシステムで入ってくるといいなと思います。そのように考えると、採用枠については、研究職に限らず、例えば事業開発かもしれないし、何かの調査チームかもしれないし、薬価の観点をゼロから考えるチームかもしれないし、そういう自由度のある枠の中で卓越研究員の方が企業に来てくださるというのはうれしいと思います。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
竹山委員、どうぞ。
【竹山委員】  そのようなユニークな人材が日本でどんどん評価されていくべきですが、卓越研究員事業ではそういう人材は審査で落ちているのではないでしょうか。
【宮田主査代理】  そうですね。
【竹山委員】  申請書では、何編論文を出したか、どんな賞を受賞したか、外部資金を獲得したかなどの業績で評価するのが基準であり、ユニーク性とかはおそらく審査しようがないのではないでしょうか。企業にとっては選考後では欲しい人材は取れないかもしれませんね。また、企業希望の学生の新卒生は独自に就活をしており、卓越研究員事業の活用はあまりしていないのではないでしょうか。この事業は、やはりアカデミア志向の任期付きのポジションに入っている若手やポスドク研究者用という印象を多くの方が持っていると感じています。このため、企業が本当にユニークな人材が欲しければ、卓越研究員事業を使わず、一本釣りで採るとか、100人面接していいのを3人採れたらとなってしまうのかと思います。また、新卒の人に周知が不十分だと思います。卓越研究員事業が、企業に行くためのものと受け止められていなくて、大学で助教とかになっている人がほかの大学に行くためのものとしか受け止められていない印象があります。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
【宮田主査代理】  1ついいですか。
【宮浦主査】  はい、宮田委員。
【宮田主査代理】  「Takuetsu in terms of what」というのをもう少し明示しなければならない。この制度は是非善用しなければいけないので、そこを少し詰めて、ある種の小さな実験をやりながら維持していくべきだと思っています。
 審査体制に問題があるかもしれないし、公募書類に問題があるかもしれない。卓越と言っても多様な卓越があるので、一本のものさしではかるのではなく複数の基準で評価したり、一芸を評価したりしてもよいのではないでしょうか。マッチングの事業なのだから、落ちた人のデータベースも公開してもいいのではないかと思います。さっき発言があったように、いい人が実は全部落ちていて、落ちた人たちから企業がどんどん拾い上げていくという実態が出てきたら、落とすことにも意味があるような気がします。新しい制度になる可能性があると思います。
【宮浦主査】  どうぞ。
【塩崎人材政策課長】  いろいろ御意見を頂きましてありがとうございます。
 卓越研究員制度には、いろいろな目的が盛り込まれております。1つは、先ほどもありましたが、インブリーディングをなるべく排除したいということです。同じ研究室から上に上がるのは排除するということを条件にするなど、採用過程を透明化するという話を入れ込んでいます。また、研究者に大学だけではなく企業にも行ってほしいということで、対象機関に企業も入れたという背景もあります。しかし、実際に事業を運営して分かってきたのは、やはり「卓越」という言葉のせいなのかもしれませんが、研究者のアカデミア志向が強いということです。ですから、実際に企業にマッチングができていない背景として一番大きいのは、そもそも候補者になった方が企業にアプローチしていないことと考えています。それがそもそも問題なのかもしれませんが、先ほど、川端先生がおっしゃったように、この事業は新卒の方ではなくて、ある程度、ポスドクを経験された、中でもさきがけや特別研究員を経験された非常に優れた方々が対象となっており、そのような方が企業に行くということ自体が確かに難しいです。そういう難しいところを切り拓けるよう取り組んでいるところでございますが、一方、事業はこのままでいいのかという議論はまた別途あります。我々も企業が求める人材とアカデミアが求める人材は必ずしも一致しないだろうと思いますので、卓越研究員をアカデミアタイプ、民間タイプと分けたらいいじゃないかという検討もさせていただいたことはあります。ただ、やはり申請者に「アカデミアでうまくいかなかったら企業だ」みたいなところがあるので、同じ事業の中で2つに分けてしまうと、1軍、2軍みたいなことができてしまうのではないか、そういった懸念も我々は持っております。1つの事業で2つの目標を追っているがゆえの難しさがあるところでございますが、その中で少しずつ改善しているところでございます。先ほど、書面審査で落ちた人の中にも企業の方が欲しがっている人材がいるのではないかというような話がありました。確かにこれまでの事業では、落ちた方々の情報は機関に全然いきませんでした。すると、企業からは、是非落ちた人を含めた申請者全体の情報を頂きたい、先ほどうちの宮地の方から言いましたように、通常のルートではなかなか手に届かない人が申請してくるので、申請者の情報が得られれば企業から逆アプローチができる、という声がございました。このため、先ほど少し紹介をさせていただきましたが、平成30年度からは、できる限り、申請者の情報をポスト提示機関の方々にも提供するという形で、企業の要望に応えております。企業の方々は、ほとんど補助金を受け取りません。企業としてのメリットは持参金ではなくて、多様な分野で本来集まってこないようなところを開拓できるということと、あとは、ある程度、国が能力を保証した人材を少し安心して採れるということ、その2つが一番大きいと聞いています。そのようなところをうまく生かせるような形にしていくというところを盛り込んで、より改善をしていきたいということで、我々としてもいろいろ悩んでいるというところを御理解いただければと思います。
 以上でございます。
【松尾大臣官房審議官】  多分、能力と言ったときに、どういう能力か整理するのが一番重要です。先ほど宮田先生が言われたように、本当に卓越の定義が重要だと思うんです。例えば、能力と言っても、アカデミックな能力と、ニッチをいく能力と、飛び跳ねて分野を変えていく能力と、いろいろな能力があるので、卓越の意味や能力の意味をもう少し整理することが重要です。その上で、落とす、落とさないということになると思います。出来レースではないか、といったシステムの問題も見ていく必要がありますが、やはり卓越と言ったときの語感といいますか、持つ意味をもう少し整理をしていく。そしてアプライしてこられる方も、さきがけとか、CRESTとか、そういうところを経験した方ばかりではなく、いろいろな人がちゃんと出してきてもらう。その能力の審査は難しいですが、こういう能力だということでちゃんと伝えていく。そういうことは整理した方がいいと思っています。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 幾つか非常に貴重な話題が出たと思います。「卓越とは何か」という卓越印の付け方の問題点、審査に落ちた方の中にも優秀な方がいるという点、そもそもアカデミア志向の方に産業界に向いていただくことが本質的にどれぐらい可能で、どういうシステムでやるべきかという点等々、具体的な御意見も頂きました。
【宮田主査代理】  先生、もう1ついいですか。
【宮浦主査】  はい、宮田委員、どうぞ。
【宮田主査代理】  多分人材委員会の今後の議論にも通じると思いますが、アカデミアといわゆる民間の間の流通をもっと自由にするという根本的な問題だと思います。イノベーションのサイクルが早くなったときに、アカデミア志向の人が頼りとしていたアカデミアのスキルセットが全く役に立たなくなってしまう可能性だってある。そうなったときに、アカデミア志向の人たちが、大学でぬくぬくと生きていけるとはとても思えませんし、多分そういう大学を文科省は許さないと思います。
 だから、人材の流動化を進めて、例えば企業に10年ぐらい勤めて、1回イノベーションを経験して、その後破壊的イノベーションが起こってしまってこの企業はだめだなと思ったときに、大学に行って、新しいスキルセットを得た上で違う企業に行くみたいな、往復運動をしていくと、根本的に問題はある程度解決していくと思います。だから、この制度をある種のきっかけにして、往復運動をいかに促進できる制度設計にしていくか。特に退職金の問題とか、そういった問題の制度整理も含めて、もっと自由に民間と大学が交流できるような仕組みを作らないと、この問題を解決するのは難しいのではないかと思います。今まで人材というと、大学だけが作っていましたが、今まで経産省の範疇だと思われていた企業群も教育とか人材育成にインボルブするような仕組みを作っていかないと、この「Takuetsu in terms of what」などというくだらない議論を我々は10年ぐらい続けなければいけなくなってしまいます。だから、そこに大きな問題があることは認識していただきたいと思います。
【宮浦主査】  人材流動化や年俸制等々にも波及してきますので、この事業をきっかけに人材をいかに活用するかという面をより議論していくとともに、すぐにできる改善はしていくという方向で、御意見を生かしてまいりたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、議題2に移らせていただきます。
 議題2は、「研究人材の育成・確保を巡る主な論点について」でございます。本委員会において議論していく論点ですが、前回の論点を含めて、事務局で少し案を整理していただいております。事務局からまず御説明を頂いた上で議論をさせていただきたいと思います。
 後ほど、議題3で中教審との合同部会の話題も出てまいりますけれども、そちらでも集中審議をしたいと思っているところです。それでは、事務局より御説明をお願いいたします。

○事務局より資料2-1から2-3に基づいて説明
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 幾つか論点があったと思いますが、先ほど来、御議論いただいておりますこととも関連いたしますが、特に少し議論しなくてはいけないのは、国際的な動向の中での我が国の人材育成の問題点です。特にアジア、中国をはじめ、イノベーションの速度を牽引している海外の動きに日本がついていけているのかという問題。人材育成についても、国際的動向を考えつつ、新たな手を打たないと、もうかなり手遅れに近い部分も発生しているということがございます。
 もう1つは、博士課程の進学状況の低下ということが、景気の上昇に伴ってかなり顕著になってきている部分もあります。また、先ほどの若手博士の育成とも話がリンクしてきます。すなわち、アカデミア側で非常に問題になっている博士課程への進学状況の低下と関連して、活躍の場である若手の雇用環境の問題ともリンクしてくるということになります。
 国際的な動向の点は、1つ重要な部分かと思いますが、御意見、御発言ございますか。
【狩野委員】  国際的な観点は、もちろん人口対比のデータが必要だろうとはまず思いますが、加えて、日本で博士課程に行きたい人は何に魅力を感じたときに行きたいと思うのかということも問うてみてもいいかと思っております。博士課程に行くとお金がもらえるから行けるという国もあります。こういう金銭的な魅力で人材を集めるのか。できればそうではなくて、博士に行ったからこそ得られる能力を求めて能動的に人材が集まってほしいところです。しかし、先ほど申し上げたことと関連して、博士人材の能力の定義がこの国ではあまり明確ではないような気がしております。
 私の近くの学生の動向を見ておりますと、博士課程に行きたい人というのは、余程今まで学部あるいは修士までにやった研究が好きだったので、そのまま行きたい人です。一方、教員の背中を見ていて、余り最近うれしそうでも楽そうでもないので、なかなか行きたくないと思っている人もどうもたくさんいるような気がいたします。加えて、社会の問題に興味がある層は、企業で活躍した方が、社会の問題と関わりを持ちやすいと思っているところがあり、博士課程に行くとお金がもっとかかることもあいまって、博士課程にあまり進学しないという印象を持っております。
 もう1回問い直しを申し上げると、「研究人材」というのは一体何なのか、です。論文を産生する人を作りたいのか、それとも何か広く世の中でさっき申し上げたような思考回路を回せる人を作りたいのか、ここが大きな問いの分かれ目になってきているような気がいたしますが、いかがでしょうか。本来は、両方が要るのかもしれませんけれども。
【宮浦主査】  柳沢委員。
【柳沢委員】  私、アメリカが長いのですが、言い古されたことかもしれないですが、アメリカではPh.D.はカレンシーですよね。Ph.D.を持っている人と持っていない人はあらゆる点で全く違う。例えば、日本にある外資系企業、例えば外資系の製薬企業では、Ph.D.を持っている人の扱いと、そうでない人の扱いは最初から全然違う。そういうPh.D.のカレンシー化が日本ではどうやったら進むのか。具体的なアイデアはすぐに思い浮かばないのですが、Ph.D.のカレンシー化が進み、医師免許のように、研究者として認められるにはPh.D.は最低限必要という考え方が広まる必要があるのではないかと思います。
 それから、黒川清先生が最近よく言っていますが、アメリカでPh.D.を取る人数が日本人は200人しかいない。中国人は非常に多いですが、韓国とか台湾でも千何十人とか、日本の数倍、下手をすると一桁多いです。どうして日本の若者は外国へ行きたがらないのでしょうか。
 私がどこかで見た資料では、2001年から2010年の10年間で、北米に比較的長期滞在する研究者の数が3分の1に激減しています。3割減ったのではなくて7割減った。これは研究者の話ですが、学生も激減しています。学部学生も大学院生も減少、もしくは増えない状況にある。奨学金を出すなど、海外へ行くことを制度的にうまくブーストできないかと感じます。
【宮浦主査】  竹山委員。
【竹山委員】  今の話にもつながりますが、グローバル化と何十年も言われているわりには、大学でのグローバル化は、まだ遅れている面があると感じています。留学制度も研究時間の制約からうまく活用できない、させないという研究室もあるのも事実です。また、これら留学制度も博士課程の学生限定が多く、その予備軍の修士には開かれていません。修士の時のグローバルな経験が博士課程への進学や研究の視野拡大につながるので非常に重要だと思います。ドクター人材を増やすのであれば、修士のときからの育成が重要かと思います。海外への研究インターンシップでは、海外研究室にいる大学院生はみな博士課程の学生であることなどを知り日本の事情が世界標準ではないことを実感するようです。また、国際舞台の折衝の場には博士号を持つ人材が活躍していることも知ることができます。
 語学能力は実戦で磨かれますし、流暢でなくてもサイエンスの内容に相手が興味があれば相手も一生懸命聞いてきます。 本当の意味のグローバリゼーションをもう少し早い時期から進めてほしいと思います。博士課程への進学者を増加させるには、修士学生をエンカレッジする仕組みを、場合によっては学部からも必要かもしれません。また、いつも平均値で議論していますが、まずは意識の高い学生にはどんどん支援するべきかと思います。
 あともう1点。日本はドクターの就職率が6割と資料に書いてありましたが、こういう平均値の書き方は良くないと思います。分野によっても実情は異なるかと思います。海外でも博士取得者がすべて望むような道を歩んでいるわけではないので、比較の仕方をもう少し工夫する必要があるかと思います。
【林委員】  なぜドクターに行くのかという話やカレンシーという話に関連しますが、アメリカの博士課程へ行っている学生のモチベーションは、基本的には、卒業後に起業して稼ぐことがメインという調査があります。それから、海外の行政官はドクターを持っているという話に関連して、資料には理工系分野の博士号取得者が比較されていますが、実際に国際的に比較してみると、日本がほかの国と比べて割合が低いのは、人文社会系、社会科学系のドクターの割合です。それは結局、企業や、行政府の中で博士号取得者が活躍できる場面がないからです。ただ、そうなると単純に現状のままで博士号取得者を増やしても、行き先に困るだけという状態であると思います。
 一方で、イギリスの経産省に相当するところの省ではオーバーエデュケーションの議論があります。理数系の教育を受けて高度な博士号取得くらいの能力を身に付けたものの、実際に就職してみると、修士、学士レベルの知識しか使っていないというものです。実はオーバーエデュケーションはほかの国でも議論されていますが、ほかの国と日本とは状況が違います。先ほど、博士号の定義や卓越の定義の議論がありましたが、ほかの国は博士号取得者の能力を何とか定義付けをしようという文章がいろいろあります。また、各学会で博士号取得者はこうで、修士号のレベルだったらこうでという定義があります。日本でも例えば厚労省とか内閣府とかが、シニア研究者はこういうことができるみたいな、そのくらいのことは作ってはいますが、ほとんど使われない。企業にヒアリングに行っても、外で作られた能力定義ではなくて、組織の中で能力定義していたり、あるいは昇進していたりしている。そのような文化で、ほかの国のように能力定義をしても、それがカレンシーになって流動していくという状況が日本には文脈として恐らくないと思います。
 そうすると、資料にも、社会人からの博士号取得者は就職率が高いというデータがありますが、恐らくそこを攻めないと、この状況は変わらないと思います。さきほどから企業からの還流、大学に帰ってきてと、そういう話がありましたが、企業人の大学院への入学や、あるいは教員としての雇用など、そこから攻めていかないと、このような状況は変わらないのではないのかなという感じが私はいたします。
【宮田主査代理】  いいですか。
【宮浦主査】  宮田委員。
【宮田主査代理】  林さん、全く賛成です。日本は2004年から国勢統計で人口が減少しています。それまでは人口オーナスの社会と言って、同じことを繰り返していれば市場が大きくなって、係長が課長になれたのです。あるいは助教授が教授になれたのです。ところが、2004年を境にイノベーションが必要になる。新しい事業を起こすか、海外に打って出るかしか我々の成長余力はないのです。2004年までの段階では、素直ないい子で言うことをきくというところが一番重要でしたが、2004年を境に、言うことをきかないひとを教育するシステムを大学も高校も中学校も小学校も作らなければいけなくなった。その認識が政府とか、特に文科省に薄過ぎた。はすごい変化が実は起こっています。
 中国もあと3年ぐらいすると人口オーナスになりますし、韓国は今年あたりで人口オーナスになるので、彼らも直面することですが、今までどおりの、さきほども言った家元制みたいに自分の学問体系を継承するためのアカデミアの人材の再生産はもう役に立たない。しかも、インブリーディングを防ぐために卓越研究員と言っていますが、実は彼らはクローンを巧みに作っているので、クローズドコロニーになっており、インブリーディングを防ぐだけでは家元制を防げない。もっとハイブリッドな人材を作るためには、審査基準とか公募基準を精査する必要があると思います。
 大学院の主力は、企業から戻ってきた人になる時代です。だから、純粋培養の大学院生が少なくなったからといって、嘆くのはもうやめていただきたい。むしろ、一度企業へ行って、企業に見切りをつけ、たっぷり貯金をして資力を持って戻ってきて、自分が何をやるべきかを明確に意識した人たちを大学院で鍛えることによって、実は大学の教官も鍛えられると思っています。純粋培養の、学部から修士課程、博士課程に行く学生が減っていることはいいことなのではないかと居直るしかない状況に今の大学院はあると思っています。だから、むしろ企業からどのように呼び入れるか。それのための施策を行った方がいい気がします。
【宮浦主査】  川端委員。
【川端委員】  学士課程の10%が修士に行って、その10%が博士に行くため、博士課程に進学するのは学士に入った人間の1%です。ということは、18歳人口が下がろうが上がろうが、ほんの1%の動きが少し上がったり下がったりすれば、十分にドクターコースを増やすこともできるということです。
 私たちのところで、なぜドクターに進まないかというマーケティングをやりました。意思決定がいつされているかを調べました。それはずっと追いかけていくと、大学ごとや
分野ごとにきっと違います。それをみんな追いかけるべきです。彼らが意思決定した後に、「なぜドクターに行かないの?」と聞いたら、「いやあ、職がないから」とか、「お金がないから」とか、大人に対する言い訳を言います。彼らは、行きたいという思いがあれば意思決定しています。
 極端な例では、ある大学の理学部の宇宙と化石をやっているところで、ドクターの進学者数が5年間増え続けたのです。就職もない、お金ももらえるとは思えない、なのにドクターが増え続けたのは、そこでちょうど恐竜の化石が見つかったとか、宇宙の何かが起こったとか、そういうことが起こった。だから、彼らの意思決定は、別にお金があるからとかで決まっているわけではない。
 じゃあ、何が一番彼らにとって問題なのかというと、タイミングが合っていないのです。修士課程学生は、この企業に行きたいといって就職活動するのではなくみんなするから就職活動しようと動いています。そこにバリバリした企業のリクルーターがやってきて、「夢はこうだ」と語って帰っていく。そうしたら学生さんたちは、すごいなと思うのです。なのに、ラボにいるドクターはどうかというと、学部生が、「私、ドクターへ行きたいかもしれない」と言ったときに、ドクターはそいつらに「おまえ、覚悟があるのか」と言うのです。「給料もないぞ、職もどうなるか分からないぞ、覚悟があるのか」と言うのです。一方で、企業から来たリクルーターは、夢がこうです、あなたの給料はこうですと言いますから、当然そっちへ行くのです。だから、修士課程学生がアカデミアのドクターに行かないのは、民間のリクルーターに負けているからであるというのが私の基本的な今の結論です。要するに、彼らがアカデミアに失望しているわけではなく、彼らの中の一定の割合は博士課程に行きたいと思っているのに、それが徐々に消えていく。アカデミア側に優秀なひとをリクルートするという考え方が全然発達していないのが問題です。このタイミングの問題に一番関係するのは学振DC1です。DC1はM2の秋に決まります。学振がとれますよというのが決まるのはM2の秋なのに、M1の春にリクルーターがたくさん来て、あなたの給料は幾らです、あなたは何ができますとみんな言って帰るのに、ドクターに行った場合の自分の給料や奨学金は何も決まらない。だから、余程のめり込んだひとだけがアカデミアに残っていくことになる。だから、大体大学の人間に聞くと、目利きがきくような優秀なやつが消えていくというのです。だから、私としては、学振DC1の決定はM1の4月に決めてほしい。企業のリクルーターと私たちが戦える状況の下で、アカデミアがリクルートをするということが非常に有効なのではないかと思っています。内容の話ではなくて、方法論としての話です。
【宮田主査代理】  ちょっと反論します。
さっき言ったように、自立的に自分の人生を構築していくスキルをなぜ大学で教えていないのかというのが最大の問題ではないかと思います。
学問をやりたいやつは、やっぱり大学に残るべきだし、大学はそういう部分もあっていいのです。全員がお金のためにPh.D.を取らなくてよくて、自分の知識を羽ばたかせるために取る人が何%かいていいのです。しかし、今の大学院生は、自立的に自分の人生を構築していく能力を付けられていません。自立的に自分の人生を構築する能力がないから、企業に流れてしまっているのではないか。
【川端委員】  いや、今は情報がいっぱいあるからです。昔は情報がなかったのです。また、昔は「博士はすごい」「大学の先生はすごい」というイメージが受け入れられていた。
【宮浦主査】  まず、塚本委員。
【塚本委員】  皆様のような本質的な話ではないかもしれませんが、先ほど、高橋委員がおっしゃった博士号は生産性の向上に結び付かずというのに対応して、博士号がプラスになったというようなことが言えるとしたら何かと考えていました。資料2-2の13ページに、「人口100万人当たり博士号取得者数と一人当たりGDP」とありますが、この国どれを見ても、アメリカ以外はそれほどGDPが高くないのです。しかし、次のページの「各国企業における博士号取得者の状況」を見ると、ノルウェー、アイルランド、アメリカ、シンガポールといった一人当たりGDPが高い国が入るので、企業における博士号取得者が多い国の一人当たりGDPは高いみたいな話を報告書に入れてもらえると、各企業が、やはりドクターだと思うようになるのかと思いながら見ていました。
【宮浦主査】  次、竹山委員。
【竹山委員】  日本の大学と政府に余裕がないことが問題ではないでしょうか。
 海外では、学部終了後1年間ぐらい今後を考える時間を取る学生がいます。日本でいう浪人ではなく、積極的に海外や異分野でのインターンシップ等を経験して進むべき道を模索する時間をもつ学生をちらほら見かけます。
 例えば、学部の理工系は、3年秋や4年から研究室に所属して研究をスタートしますが、研究の継続性を考えると修士2年間含め少なくとも3年間研究をしてほしいと指導教員は考えます3年ぐらいの蓄積がないとデータに繋がらないからです。研究の主体が学生に依存している部分があるからです。
現在は若手支援の制度が多いです。その分若いうちに実績を上げてその波に乗ることが重要になってきます。博士号を取って数年しか経っていない頃から、卓越性を持ち選抜に勝ち抜く必要性があります。ですので、博士課程に在籍しているときに研究業績を蓄積することが求められてきます。研究者としての余裕は出にくいですね。研究者としての倫理にかかわる人格育成も影響が出そうです。当然、先生方も余裕が無くなっています。
 それに比べると、海外では、進学にしても課程にいる間でも余裕を持ちやすい気がします。政策的に、幅のあるプログラムを作ってほしいと思います。プログラムに余裕がないから、私たちも必死になって走っている感じがします。日本が追いかけなければいけないという点に必死になりすぎることで、本当の意味での人材育成に支障が来ている部分もあるのではないでしょうか。
【宮浦主査】 柳沢委員も御発言を何か。
【柳沢委員】  竹山さんが言ったことは、本当に私、大賛成です。武者修行と筑波大では言っているみたいですけれども、学部学生、修士のときでも、行きたい子は外国に行かせる制度を是非充実してください。本当に人が変わります。
 私のラボにいる学生の一人が修士のときに、筑波大学と提携しているボルドー大学にほんの3か月ほど行ってきて、それでもう彼女は変わりましたよね。それまでものすごく迷っていて、僕がいくら言ってもきかなかったのです。
 これも言いたかったのですが、学生は教員の言うことはきかないです。先輩と周りの人、それから企業のリクルーターの言うことしかきかないです。
 何が言いたかったかというと、その子は、ボルドー大学へちょっと行ってきて、外を見てきたら、博士に来ました。帰ってきた途端にです。すごいインパクトですよね。そういう制度を是非、多分、筑波大学の制度も文科省さんの何かを利用しているのだと思いますが、是非もっと充実していただけるとうれしいです。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 勝委員、どうぞ。
【勝委員】  私は大学で国際化について8年ぐらい行った経験から一言言わせていただきます。資料2-1にいろいろ書いてありますが、本当にいつもこれが議論されていて、修士課程あるいは博士課程に行く人材が非常に少ないであるとか、論文数が少ないであるとか、あるいは、外国に留学する学生が少ないとか。これは本当にずっとこの議論があって、多分根っこは同じで、結局は、やはり日本の社会自体がそういった人材を表向きには必要としていないということです。特に企業の場合、先ほどのデータにありましたが、諸外国に比べて企業における博士号取得者数が少ないというのは、やはりニーズがないからという一言に尽きるというふうに思います。ただ、これは未来も変わらないかというと、そんなことは全然ない。例えば国際化についても、多分5年前、10年前は、それこそアメリカや欧米に行く学生の数はすごく少なかったと思います。私の経験ですと、グローバル30であるとか、あるいはスーパーグローバル大学であるとか、先ほどのリーディング大学院もそうかもしれませんが、そういう制度があって、海外に行く学生がどんどん増えてきているというのは事実です。それに加えて、やはり企業も変わってきていて、海外の経験ある子を採りたいという、そういったニーズが増えてきているということがあります。社会としてはそういったニーズがないかもしれないけれども、それを少しずつでも改善していくということは可能ではないかと思います。これは先ほど言った卓越研究員制度も何らかの改革を加えてそういった起爆剤になるかもしれない。あるいは、中国、これは論文数が非常に増えていますし、共著が増えていますが、これは恐らく中国は、政策的に、例えば欧米のトップスクールと共同学院を作って、それで向こうに行かせて、一緒にペーパーを書かせてということが非常に多い。急激に増えているというのは、そういったところにお金が多分つぎ込まれているからだというふうに思います。そうすると、例えば、我々の大学でも、アメリカの大学とダブル・ディグリーをやって、学部と大学院のディグリーを取るという学生を、今、送り出しをしているんですけれども、その成果はだんだん出てきて、彼らはそれを終えた後に、かなりいい職を得る。外資系銀行であるとか、そのようなところのポジションを得ます。それを見て、ほかの学生も行くだろうし、それを見て、日本の企業もそういった学生を採ろうと変わるというようないいサイクルができてくれば、これは日本にとっては非常にいいことと思います。そういったことについて、是非前向きで建設的なアイデアがこの委員会から出るといいと思います。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 産業界の方は、今や海外事業がメインである企業も非常に多いので、グローバル人材を当然求めていらっしゃるわけで、ニーズは非常に高いと思います。
 では、一言どうぞ。
【狩野委員】  四つの視点を加えさせていただければと思います。
一つ目の視点として、制度だけ作れば動くかということです。確認の、マインドセットの要素もあるということは、思い起こしておきたいと思います。
 それから、二つ目の視点として、「卓越」は少人数に対する方策ですが、大人数につまり裾野の形成に対してどうしたいのかということも、人材という意味では考える必要があると思います。
 それから、三つ目の視点は、行動規範の不整合の可能性です。日本あるいはアジア近辺の社会での行動規範は、「同じグループに入っていれば同じように振る舞わねばならない」と表現できるかと考えます。科学は、しかしながら、「あなたと私は違わなければいけない」行動規範の社会から発したものと考えます。全く逆の行動規範を持つということです。日本社会の行動規範と科学のそれをどんなバランスをとるように持ってきたいかは1つの問いです。
 関連して、「考え方」と「モノ」とどちらが大事かという価値観も日本は逆である気がしています。アメリカに留学するかどうかという件でも、もう日本にはモノ(機械)があるから要らない、行かなくていいという発想が結構見受けられます。実際には、考え方を学びに行くのではないのか、と思いますが、そうした発想が余り感じられない気がします。
 四つ目の視点は、危機感の不足とその対策案です。危機感を持っていない人が若者にもたくさんいて、チャレンジしていく気持ちが余り見受けられない印象があります。危機感が少ないのはなぜか、ということを考えたときに、身の回りの課題を知らないのではないかと考えます。教育の場で「既に知られている」ことはたくさん教えますが、「今知らないこと」はあまり教えていないのではないでしょうか。今から何にチャレンジするべきなのかを教えてあげると、もしかすると目が開かれる人がいるのではないか、これは結構具体的にすぐにできそうなこととしての御提案です。
 四つ目の視点に関連して、SDGsというのが最近ありまして、これを大学として推進することに最近頑張ってみております。その意義は、今申し上げた、課題を知るということに意味があるのではないかと思って言及してみた次第です。以上です。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 それでは、残り時間で議題3を迅速にやらせていただきます。
 科学技術・学術審議会人材委員会と中央教育審議会大学分科会大学院部会の合同部会の設置につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局より資料3-1に基づいて説明
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 ただいま御説明いただきました中教審の大学院部会との合同部会について、設置を進めさせていただきたいと思っております。何か御質問よろしいでしょうか。
 それでは、案のとおり、合同部会を設置させていただきたいと考えております。
 これは非常に画期的なことだと思います。中教審の大学院部会とこの委員会が縦割りの壁を取っ払って、同じような議論も中教審でも出ていることがしばしばありますので、それを全体的に議論して、次の大きなステップにつながるような議論にしていければと思っているところです。
 それでは、この合同部会につきましては、審議状況、内容につきまして、この人材委員会についても適宜御報告していただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 議題4、その他ですけれども、事務局から何か連絡事項等ございますでしょうか。
【広瀬基礎人材企画係長】  事務局でございます。
 次回の人材委員会の開催日時につきましては、主査と御相談をさせていただきまして、また委員の皆様に日程を改めて相談させていただいた上で、追って御連絡させていただきたいと存じます。
 また、本日の会議の議事録につきましては、作成次第、委員の皆様にお目通しいただきまして、主査に確認の上で、最終的にはホームページで公表をさせていただきます。
 以上でございます。
【宮浦主査】 それでは、本日はこれで閉会とさせていただきます。ありがとうございました。


―― 了 ――


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