科学技術・学術審議会人材委員会・中央教育審議会大学分科会大学院部会合同部会(第6回) 議事録

1.日時

平成30年7月31日(火曜日)14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省3階 3F2特別会議室

3.議題

  1. 論点整理(案)について
  2. 若手からシニアまで研究者がライフステージを通じて活躍できる環境の実現に向けて(自由討議)
  3. その他

4.出席者

委員

宮浦主査、長我部委員、髙橋委員、沼上委員、湊委員

文部科学省

松尾科学技術・学術政策局長、山脇文部科学審議官、勝野科学技術・学術総括官、角田政策課長、坂本人材政策課長、石丸人材政策推進室長 他

5.議事録

科学技術・学術審議会人材委員会・
中央教育審議会大学分科会大学院部会 合同部会(第6回)

平成30年7月31日


【宮浦主査】  それでは、ただいまから科学技術・学術審議会人材委員会・中央教育審議会大学分科会大学院部会の合同部会の第6回を開催いたします。本日の会議は冒頭より公開となっておりますので、よろしくお願いいたします。
 本日は、5名出席となりまして定足数を満たしております。
 また、前回に引き続きまして、本日も小林広島大学高等教育研究開発センター特任教授にオブザーバーとして御参加いただいております。
 まず、事務局に人事異動がございましたので、御紹介をお願いいたします。
【佐々木基礎人材企画係長】  本年7月20日付で人材政策課課長補佐に浅井が着任しております。
【浅井人材政策課長補佐】  どうぞよろしくお願いいたします。
【佐々木基礎人材企画係長】  同じく本年7月20日付で基礎人材企画係長に私、佐々木が着任しております。よろしくお願いいたします。
【宮浦主査】  それでは、議事に入ります前に、事務局より本日の資料の確認をお願いいたします。
【佐々木基礎人材企画係長】  委員の先生方のお手元に資料1-1、1-2、資料2-1、2-2、2-3を配付させていただいております。また、委員の先生方のお手元に研究人材の育成・確保に関する主要な資料を配付させていただいております。議事進行の過程で不備等ございましたら、事務局までお知らせ願います。
 以上でございます。
【宮浦主査】  それでは、本日の議題1に入らせていただきます。前回に引き続きまして、本合同部会の論点整理について審議をしたいと思います。論点整理につきましては、前回の合同部会で御議論をいただいた後に、頂きました御意見を踏まえた案を7月3日の大学院部会及び7月5日の人材委員会で御報告させていただき、御意見を頂戴したところでございます。人材委員会等で頂戴しました御意見を踏まえまして、事務局において反映させた案を作成いただいておりますので、前回からの変更点を中心に御説明をお願いいたします。

○事務局より資料1-1、1-2に基づいて説明

【宮浦主査】  御説明ありがとうございました。この論点整理でございますけれども、前回の合同部会、5月31日の後に、委員の皆様にその時点でも御確認いただいておりますけれども、今、青字を中心に修正箇所を御説明いただきまして、修正漏れですとか、変更が必要な点など、お気付きの点がございましたら御指摘いただければと思いますが、いかがでしょうか。
 特に意見として出ましたのは、若手研究者の育成に、ある程度中心に議論をしたということを明確化するという点、また、若手研究者の研究時間の確保というところの点につきまして、特に具体的な資料も含めて議論をしたということで、研究時間確保の重要性を10ページあたりに明確にしたこと。
 また、URAにも通じるところでございますけれども、研究時間確保に関連しまして、研究支援人材あるいは教育業務に関わる教育スタッフ等の確保が若手研究者の研究時間の確保とリンクしてきますので、非常に重要だという点をしっかり加筆、修正いただいております。
 また、京都大学の例で、卓越大学院プログラムとの連携等も含まして、機会・環境整備等の加筆をいただいております。
 また、本日後半で議論の時間を用意しておりますけれども、若手に限らず全ての研究者、各年代層の研究者が活躍できる環境の整備が重要であるということを最後の方で明確にうたっておくことが重要であるという議論に基づいて、加筆をしております。特にメンターとしての若手研究者の育成という面で、中堅あるいはシニアの研究者が果たす役割の重要性ということを明記いたしました。
 ということで、若手研究者の研究力強化、確保、時間及び活躍推進ということで、議論の内容をある程度若手に絞ってまとまったところではないかと思います。その中で、年代別の役割ですとか、具体的に忙しくなってきているということがあって、研究時間の確保ということを明確にうたっておくということが重要であると。時間の確保といいましても、一人一人の確保のみならず、システムとしての確保、URAですとか研究支援人材ですとか、そのあたりは比較的、研究支援人材などはなかなか論じる機会が少なかったと思いますので、そこを明記したところがアドバンスになったところかと思っております。
 ここはまだ足りない、あるいは修正できていない、気になるというような御意見ございましたら、委員の方から頂戴できればと思いますが、いかがでしょうか。あるいはおおむねこれでいっていいのではないか等含めまして、御意見を頂戴できればと思います。いかがでしょうか。
【沼上委員】  済みません。何も発言がないと寂しい感じなので。今回のこれについて、私は、よくまとめていただいて、特に若手研究者の問題について焦点を当てて、いい提言ができているなというふうに思っております。もちろん長期的にはどこかに選択と集中で焦点を当てて、しかも、1つのステップが次のステップにつながるようなシナリオ性のあるプランニングができたらもっといいかなというふうに思いますが、それは次の課題ということです。
 私、今の状態で1つだけ感想、直すとか何とかじゃなくて、感想を一言だけ。多分、これは理系と文系の違いだろうというふうに思って見ているのですけど、先ほどの10ページの教育専任教員と研究専任教員の分業等々のところというのは、ちょうど我々の大学のようなところでは、経済学部系がこれに考え方が近くなってきている。どっちかというと、社会学部とか文学部系がこれにアンチですね。それは何かというと、ユニバーシティというのが共同体であって、1人1票を持って、研究と教育、両方を統合して各人がやっていると。一人一人がそれぞれ研究者であり、教育者である。それが同じコミュニティを形成している一人前の研究者であるという、その理念の下で生きている人たちからすると、この分業が嫌だという人たちは一方ですごくいるわけです。ところが、経済学のように極めて国際業績が求められて、研究と教育の両方をすごく頑張らなきゃいけないという国際競争のプレッシャーにさらされているところは、これはどうしても分業せざるを得ないという、そのモデルに変わってきていて。ある意味では、大学は何であるのかというもののイメージのすごく違うものが、今の文科系でも混在している状況。理科系はもう完全に国際競争の中に生きているので、これは違和感がないのだろうと思うんですけれども、文科系の場合は、若干、分業には嫌だという人が何人か大学院でいるかもしれないなというのを、私の方は感じましたということです。感想です。
【宮浦主査】  御意見ありがとうございます。今の点、非常に重要で、いわゆる分野による温度差ですとか、考え方の違いがあろうかと思いますので、若手研究者と一くくりにしても、それぞれの分野で各年代研究者となかなかくくれない部分があって、教育専任教員、研究専任教員と、そういう書きぶりがいいかという、しかも分業みたいな。
【沼上委員】  それでいいのだと思うんですけども。
【宮浦主査】  文理あるいは文理・英語分野において、そのあたり、研究者と教員というニュアンスの違いもございますので、若手研究者、博士研究員、あるいは助教以上の教員で、そのあたり、議論が分かれるところだと思います。今回の論点整理では、かなり分野に特化せず、若手研究者を中心に論点整理が掛かっておりますけれども、各論になりますと、それぞれの分野の特色を生かした議論がさらに各論ではなされるべきだろうというふうに感じますが、そういうことでよろしいでしょうか。
【沼上委員】  時間があるみたいなのでもう少しお話ししますが、私、一応組織論というのが専門で、組織論の専門でいうと、分業の原理というのは、この中の分業の原理というのは、基本的に、チャールズ・バベッジという人が言っています。バベッジの経済的なスタッフィングの原理です。要するに、例えばパン屋さん、パンの職人というのが、こねて、形を作って、焼いて、売るとか、全部1人の職人がやるとしたら、全部高い点を取っていないといけないわけですね。ところが、こねる人、焼く人、売る人と分けると、ある一部分だけ優れていればいい。そうすると、人材の配置の仕方からすると、組織全体として見ると生産性は明らかに上がる。そういう意味では、分業の原理は、言ってみれば、いろんなことができるといっても、すごくできる人に余りそれほど必要のない仕事もやらせていたという、そういう無駄なことをやらせていたシステムから、一番できることに、比較優位のあるところに集中してやらせるということで、その周りを助けてあげることでシステム全体としての生産性を上げる上でも、圧倒的にその方がいいというシステムです。
 唯一の問題は、どうやってそこの一番できるところにたどり着くかというキャリアパスの問題です。周辺的な仕事から入って、一番上の仕事にたどり着くキャリアパスがあるかないか、それをどう作れるかというのがもう一つの問題になってくるので、分業のシステムはすごくいいけど、プラスアルファ、工夫しなきゃならないのは、分業したときにどこから入って、どう成長していくかというキャリアパスを作っていくこと、これが1つ。
 もう一つは、我々、文科系の何人かは極めて保守的な人がいて、ノスタルジーがあって、「古き良き大学人とは」とかっていう考え方があって、それは教育だけやっていて本当に大学の先生なのかと。行政と教育と研究と全てをやって初めて一人前の大学人ではないかという、そういう気持ちを持っている人がもう一方にいると。この2つの問題がまだうちの大学には、文科系の一部には残るだろうなということを考えたということです。
 ただ、国際競争をしている上では生産性を上げなきゃならないので、分業のシステムを導入していかざるを得ないだろうというふうには思っています。
【宮浦主査】  ありがとうございます。今読み返しましても、10ページの分業というキーワードが若干引っ掛かるといいますか、完全に分業するものでもないだろうというニュアンスがどうしても出ますので、ちょっと検討してもいいかなと。教育専任教員と研究専任教員の組織内における役割分担とか、そういうヘッジングをして、分業等といいますと、今のような分野間の御議論がかなり出てきてしまうように思いますので、少しここの文言を検討したいと思うのですけど、よろしいですか。もともとは研究者が書類作成等、研究以外に使っている時間がすごく増えているというデータに基づいて議論してきたところではあるのですけれども、しかも専任が付いています。教育専任教員、研究専任教員がきっちり分業するのだというと、現場としては、ちょっとそれはどうかなという意見も出ますので、組織内における役割分担というような形で、少し微調整をさせていただければと思います。ありがとうございます。
 そのほか、気になる点等ございますでしょうか。はい、小林先生。
【小林広島大学特任教授】  9ページの間接経費のところですが、以前も事務局の方には、大丈夫かというところを確認したところですが、特に公的な競争的研究資金等の間接経費の使い方に関する共通指針がありますけれども、そこでは、恐らく、一般的な研究者の雇用のための人件費というのは、使途としては想定されていないのではないかと読めますが、それとの間での問題というか、矛盾はここでは生じないのだろうかということですが、いかがでしょうか。
【石丸人材政策推進室長】  9ページの最後のパラグラフでございますけれども、この点につきましては、先生からのコメントを踏まえまして、関係部局にも確認いたしました。特段、この表現で現状、運用等も問題はないと回答を得ておりますが、もう一度確認いたします。
【小林広島大学特任教授】  ということは、今の段階でも間接経費で研究者を雇用できるということですか。今、研究の次の段階の応用のためには雇えるというふうになっていますけども、実際にやる研究についても雇えるということですね。
【宮浦主査】  ありがとうございます。そのほか、よろしいでしょうか。
 それでは、ありがとうございます。本日頂きました御意見を踏まえて微調整をさせていただき、その上で、最終的には宮浦の方で確認させていただいて、最終的な段階になっておりますので、案の取りまとめをしたいと思います。ありがとうございました。
 それでは、議題の2の方に移らせていただきます。議題2ですけれども、先ほど御議論いただいた論点整理におきましても、今後の研究人材の育成・確保における留意すべき点として、若手のみならず中堅、シニアの研究者も含めた全ての研究者が活躍できる環境の整備という点を議論していただいたところでございます。そこで、本日は、お時間を頂戴いたしまして、流動性や安定性の関係を中心に研究者がライフステージを通して活躍できる環境を実現することに向けた意見交換を行いたいと思っております。
 まず、事務局より資料の説明をお願いいたします。
【石丸人材政策推進室長】  事務局より御説明させていただく前に、今、科学技術・学術政策局長が着席されました。松尾科学技術・学術政策局長が着任されましたので、一言お願いします。
【松尾科学技術・学術政策局長】  先週、科学技術・学術政策局長を拝命しました松尾でございます。審議官でおりましたので引き続きの担当ということになりますけれども、昨今、文科省で種々問題を起こしておりますけれども、一つずつ丁寧に仕事をさせていただきたいと思っておりますので、引き続き御支援、御指導のほどお願いできればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○事務局より資料2-1、2-2、2-3に基づいて説明

【宮浦主査】  ありがとうございます。各ライフステージを通じてどのように活躍・推進環境を確保するかという点になりますけれども、資料2-3、御説明ありましたように、第2期、第3期、第4期、第5期と振り返りますと、ポスドク1万人計画、若手の任期制、その後、テニュアトラックが導入されまして、かなり画期的な改革も進められてまいりました。また、それぞれの助教、准教授、教授につながるキャリアパスの問題、また、博士人材の任期制が入っている面で、流動性の重要性と安定性の確保の重要性、両方議論が進んできたという過去の経緯がございます。
 その過去の経緯を踏まえまして、一つは、若手からシニアに至るライフステージを通じて活躍できる環境の整備という点、もう1点は、関連いたしますけれども、研究者の流動性と安定性という2つの面をどのように考えていくかという、大きく分けて2点あろうかと思うのですけれども、どちらかに限らず、まず御意見を頂ければと思います。
 はい、湊委員。
【湊委員】  この若手の議論で、実は余り議論にならなかったのが研究費の問題ですね。たまたま数日前に私のアメリカの友達がおもしろい論文を送ってくれました。去年2017年のPNAS(Proceedings of the National Academy of Sciences)ですけれども、非常におもしろくて、アメリカでは大きなインパクトを与えた論文のようですが、そもそも若手のPIが減少しているというのは、アメリカでも実はもっと日本より顕著に出ています。
 これはなぜかということを研究費の面から解析した論文で、今手元にないので必要なら後で送りますけれど、非常にインプレッシブで、NIHのRO1 Grantについてです。RO1 Grantというのはコアになる研究費で、PIになってRO1 Grantが取れれば一応PIとして成功したというふうに言われます。それを、ここ数十年間にわたって、どちらかというとベーシックなバイオメディスンの領域に限りますけれども、年齢別に、例えば45歳未満の研究者、45歳から55歳の研究者、55歳以上の、アメリカは定年制がありませんから70、80歳までという3群に分けて、おのおのがどれくらいのパーセントを占めるかというのを見ています。グラントの数ですね。二、三十年前だと圧倒的に若い研究者が多いです。50代以降というのは、かなり少ない。しかし最近10年では完全にこれが逆転している、これはドラマチックな変化です。45歳以下が非常に減っています。45歳から55歳がよく言って横ばいから少し増えている程度、55歳以上が急激に増えていて、45歳以下の研究者を上回っている。これが主たる原因だと、つまりファンディングのアロケーションの問題で、日本ではどうしても研究費の額の問題が問題になるのですけど、年代別にグラントをどう分配していくかというのが、実は非常に大きな問題だというわけですね。これを問題と感じるかどうかですが、著者は実はイギリスの研究者ですけれども、これは問題だと言うわけです。つまり、それが原因となって若いPIの数が減っている。PIサクセスレートは45歳未満で大きく減少している、つまりPIになって、ちゃんと自分のグラントが取れましたよという研究者が相対的に減っている。グラントをアメリカで取れなかったら、さっき出ましたけど、しばしば教育専念に回されます。昔は55%、今は相対的に半分を切るほど非常に減ってきていて、55歳以上のサクセスの人が非常に増えている。逆転現象が起こっているわけで。これは問題だというわけです。
 なぜ問題かというと、特にアメリカの基礎研究力を見ると、確かにアメリカはいいと言われていますけれども、それでも若手の研究力は落ちていると言われています。一般論から言って、非常に革新的で、画期的ファンダメンタルな大発見ができる年代は、やっぱり45歳以下だというのは、大体そうなのですね。それ以上は横に広がりますけど、僕もこの年になると若いときにやった研究はどんどん広がりますけど、全く新しいことは多分もうできない。そういうフェーズに入ってくると感じます。だから、問題だと。問題だとすれば、対応しないといけない。かといって、例えば日本の場合、すぐ若手を手当するためにシニアの教員を減らす、そういう話になるのだけど、そうではなくて、これはアロケーションの問題なので、アロケーションを少し元へ戻すような施策が必要でしょうということですね。実際にアメリカでは既に対応が幾つかされていて、ミラプログラム、正確な略語を忘れましたが、要するに、ファンディングの効果をマキシマイズするような方法で、55歳以上、特に70歳を超えるようなシニアの研究者に対しては、研究期間を保証しますから研究を続けてください、その代わり金額はちょっと我慢してださいと言うわけです。つまり、辞めてくださいとは言わないけども、より少ない資金で、プロだから上手にやってくださいと言って、この世代にアロケーションした資金のかなりの部分を、若手研究者に移しつつあります。これはかなり成功しているようです。
 もう一つは、RO1 Grantというのは、その研究資金でポスドグを雇うことができる。そこで若手を育ててきたのですけど、今それがだんだんできなくなっているのです。それを、君たちはポスドクをきちんと雇うべきだ、そこでポスドクを育てなさいと確認する。つまり、シニアグラントの中にそれが入りますよということ、その責任をもう一度認知させるということです。加えて、新しいグラントを作って、どうしてもPI研究者に、日本で言えばボスのところへ雇われない若手のポスドクたちに対して、独立したポスドクに対してもグラントを付けています。大きい資金ではないのですけれども、ポスドクが自分で自分の研究をできるようなグラントフレームも作っているのですね。アメリカは先手、先手で対応している。それがこれからどれほど効果がでるかは別としても、とにかく手を打っている。
 翻って、日本の科研費はどうかと。私、先週、助成課へそのデータを見せてください、科研費は非常にはっきりしているので、年齢別のデータを見せてくださいと御願いしましたが、すぐには見せられないと言われました。ないのかと言ったら、委託でデータ処理を頼んでやってあるので、課内にそういうプログラムソフトはないと。回してくれれば、私の方で見ますと言うのだけど、個人の要請にはすぐに対応できないとおっしゃるのであきらめましたけれども。ただ、一応手に入るもので少しデータを見ると、アメリカほどではないけれど、今、アメリカで出てきているような傾向は出ています。日本は大体アメリカの10年後を追い掛けていますから、日本の10年後は多分そうなると思います。アメリカは手を打っているので、今から手を打たなければますます研究費の面で、若手がポジションをもらっても研究費がなければ研究なんかできないということになる。グラントのアロケーションの問題を、きょうのテーマの中で、どうしてやっていくかということです。日本でも今、シニア研究者は結構、大型科研費を取られています。例えば、40代の非常に優秀な研究者が基盤Sを取り、同時に70歳でもやれば必ずできる人が基盤Sを取ったとします。そこで研究費配分で何か按配するかというと、しないわけで、要求に従って配分する。公平性といえば公平性だけれども。そういったときに何らかの条件を付けるか、例えばポスドクを何人か必ず採用してくださいと言うか、何らかの年齢を考慮した、ある種の指導があってもいいのではないかと思います。そのためのデータも必要になります。
 本日出された年齢別の教員数の変化は、これは、ある種、当たり前のような気がします。これの原因と、その本当の要因は何かということを考えると、僕はやっぱり研究費というのは非常に大きい要素であると思います。卓越研究院制度が今一うまくいかないのは、要するにポジションだけ担保したらそれでいいかといったら、今の若手研究者はやっぱり研究したいので、研究費を担保してほしいと言うわけです。小さいグラントでもいいから。それから、きちんと研究ができる環境です。あなたはポスト付きのちゃんとした助教だからそれでいいだろうというわけではなく、それだけだったら企業へ行ってもいいわけです。 
それともう一つは、そういう若手が容易にコア・先端技術に、大型の研究費を持たなくてもそこにはアクセスできるという研究環境の担保が、いろいろ議論されているけれども、現実的にはまだ進んでない。若手が本当に新しい先端技術のところにアクセスできるか、そこで一緒に研究できるか、ポストに加えてそういう環境整備がないと本当に若手を育てることには僕はならないという気がします。
 結論から申しますと、若手を増やしてシニアを減らすという単純なことではなくて、全体として限られた研究資金や、いろんな先端設備を、どういうふうにうまくアロケーションしていくかということを、きちんとデータに基づいて対策を立てるべきではないかというふうに思っています。
【宮浦主査】  ありがとうございます。今御指摘いただきました点、特に若手も含めましてポストと研究費と研究環境を総合的に考えないと、ポストだけ増やしても研究費、研究環境が伴わないと活躍できない。ポストと研究環境を整えても、一人一人の採用した若手に研究費が付いていないと実際研究できないと。どうしてもポストを若手に回そう、あるいは研究環境を整えるので研究費は自力でやってくれという比較的別々の議論になっているので、そこをリンクして議論させないと、ポストを若手に渡しただけでは解決できないという視点を御指摘いただきました。
 どうしてもポストの点が話題になりがちですけれども、ポストを幾つ用意して、若手に幾つ付けると。各研究機関で若手のポストを増やす、外部資金で若手を雇用する。数の問題に議論が行きがちですが、実際、一人一人の若手の研究環境や研究費の議論が十分されていないという御指摘はごもっともな点であります。特に研究環境は、研究機関あるいは大学等によって大きく異なりますので、同じ能力のある方が得たポストの研究環境がどうであるかによって、その後が大きく左右されるということもよく指摘されるところでございます。そのあたりが大学と企業との違いということもありますけれども、企業ですと、ある程度、研究環境は、どこで研究するかによって大きく異なるということは大学よりも生じない確率が高いかなと思うのですが、そのあたり、長我部委員、どうでしょうか。
【長我部委員】  意見の前に、今のお話に対する質問をさせていただいてもよろしいでしょうか。比較的年齢の高い層にファンドが回るようになってきたという、その原因は、例えば審査のときに実績を重視するなど、レビューに何か原因があったのでしょうか。
【湊委員】  この論文では、その解析が対象じゃないのですけど、幾つかの要因を上げています。1つはNIHだとスタディセクションで審査しますね。審査委員たちが集まって合議審査をするのですけども、スタディセクションの年齢が少しずつ上へ動いています。審査というのは、もちろん原則はあるのだけど、経験則的に、審査する側の集団の平均年齢というものが、それに近い年齢の申請者の方へ有利に偏る傾向があるようです、統計をとると。逆に言うと、非常に若い研究者の申請は必ずしもきちんとした審査にならないような傾向があるのではないかと、この論文では書いているのです。採択が少しずつ高齢群へシフトするというのも、一つはこれが原因ではないかということも書いてあります。あと幾つかの要因が書いてありますが、それはアメリカの特殊な事情があるのかもしれないので、日本でもそういう傾向があるとすれば、それはなぜかということは、きちんと我が国でも見ていく必要はあるのだろうと思います。
【長我部委員】  ありがとうございます。
 それでは、御質問に戻りまして、企業の場合、研究テーマそのものがかなり選別されているということもあって、極端なファンドのアロケーションの差が付きにくいという事情はあると思います。レビューを受けて研究を開始しているので、普通のレベルまではちゃんとアロケートされるというような形になっているという事だと思います。それから、研究リーダー、PIに相当するようなものを選ぶときに、余り年齢のファクターが入っていなくて、意図的に若手がPIの役割をやるというケースが多くあります。本人のイニシアチブということもありますし、計画的育成という観点で、PIに相当するようなポジションに意識的に若手をつけて、意図的に世代交代させています。そういうような要因があるのではないかと思います。多分、そういう力が働かないと、どうしてもPI相当の研究代表者みたいなものは年齢が上がりがちです。無論、非常に飛び抜けた人に関しては、例えばフェローであるとか、特別のポジションをずっと年を取っても研究代表でいられるというような制度はありますが、非常にそれは制限が掛かっている。おおむね、次世代育成という観点でローテーションが図られるという点はあると思います。
【湊委員】  よろしいですか。今の話を聞いてそうだと思ったのですけど、さっきの御質問に戻れば、アメリカでもPIとしての研究持続期間が伸びている、手っ取り早く言えば、余りリタイアをしなくなっている。アメリカは元々そうだけど、その傾向はどんどん強くなってきている。しかし、先ほど言ったように、いわゆるエスタブリッシュしたPIが研究を持続するのは当然いいことだけれども、大体は次第にスケールダウンしています、つまりラボのサイズを小さくしていく。そういうある種の習慣のようなものがあって、それがもしうまくいかないと、成熟したサイエンスがずっと横へ広がるだけになりかねないという危惧はあるのだろうと思います。ただ、アメリカでもその傾向が少しずつ出ているとは書いています。
【宮浦主査】  今、御指摘いただいた点、企業では、むしろ戦略的な世代交代、次世代育成の視点でPIを選んで、そのテーマ自体も選定されるということが、非常に戦略的に動きやすい環境があろうかと思うのですけれども、その一方で、大学、研究機関等では、横並びで人がいて、各年齢層のPIがいるという中で、若手を戦略的に育成するシステムが組織にしっかり構築できているか、それを育成するシステムとして持っているかというところが、かなり企業と大学、あるいは研究機関との大きな違いかなと思うのですけれども、そのあたりが戦略的に動いていないと、なかなかポスト、資金、環境がうまく回っていないということにつながるのではないかと。
 例えば、今の長我部委員のお話ですと、戦略的に優秀な方に早めにPI、あるいはプロジェクトリーダーを任せるということが戦略として行われると思うのですけれども、それを大学や研究機関等で、そういう考え方でポストも含めてできるかというと、なかなか制限が掛かると。とはいえ、ある意味、企業の戦略性の人材育成の側面を大学等でも導入するような大学としてのやり方を変えつつ導入するということもありだと思うのですけれども、そのあたりの戦略性がうまく回っていないのが1つの要因であると。それが世代間で横展開の部分と、30代から40代に掛けて伸びる部分を伸ばし切れているかと。先ほど来、若手の任期制の問題ともリンクしてくるとは思います。特に30代中盤の助教の約半分に任期が入っていると。それを流動性として、よい側面と、安定性に欠けるということで、本当の優秀な若手が定着しているかという問題にもつながってまいります。そのあたりは、システムと研究費の問題を、ポストに話題が偏りがちですので、研究費と環境ですね。環境。なかなか個人、研究者一人一人では解決できない、研究環境が伴わないと、ポスト、研究費にだけでは解決できない、特に理系の場合はそれが大きいということでございますので、そのあたりを総合的に、平均何歳でこういう形で研究者がいるという数字の把握は重要なのですけれども、そこの中の議論をしていかないと、例えば、パーマネントのポスト、安定的だけれども、研究費がほとんど取れずに、ただポストだけが継続しているという部署にいるかもしれない。逆に、非常に研究費を取って、伸び盛りの30代に任期が付いているので、ポストを獲得しにくいという環境が出ている可能性もあると、様々な要因がリンクしてくるのですが、そのあたりを、単にライフステージに伴った環境整備といっても複数の側面があるので、それをしっかり議論する必要があるということであります。
 髙橋委員、今いらっしゃったのですけれども、ちょうど今、若手の各年齢層のライフステージを通した活躍推進に向けて、ライフステージを通して、若手からシニアまで活躍するステージの重要性ということと、研究者の任期の問題、流動性のなさと安定性の問題を論議していくべきということになって動いて、論点としているところなんですけれども、例えば、企業ですと、そのプロジェクトそのものがかなり選別されて、戦略的に動く。PIは戦略的に選ばれる。お金も付くと。それを、かなり30代のこれぞという若手を選抜して、決めてしまうことができると。一方で、大学等ではポストの問題、研究費が付くかという問題、研究環境が各機関で異なるという問題などがリンクしてきますので、そのあたりの議論は、なかなか、大学、研究機関ごとで環境が異なるということを研究費の面からもしっかり考えていくべきであるという議論をしているところですけれども、このあたり、研究費を取ると若手が取って独立するというあたりの重要性も、スタートアップの部分も非常に重要なところで、御経験の中で、やはりここのステージのこの要因、ポスト、研究費、あるいは環境で、力点を置くべき点など、お考えございましたら、お聞かせいただければと。ライフステージを追って、それぞれの役割があるという議論になったのですけれども、やはり若手を伸ばすにも、ポストの問題、研究費の問題、環境の問題の3つが大きくあるんじゃないかと、今、議論しているところ。
【髙橋委員】  今、お話を聞きながら考えていたのは、じゃ、果たして企業の方では、理想的に、そういうプロジェクトが回っているのかというのを、まず考えまして、特に大きい企業ですと、若手に対して、ポストだったり、予算だったり、十分に与えられているかということを考えますと、なかなかそうではないなと。なので、産業界との比較の部分で、例えば、大学に対して参考になる部分は何だろうかというのを、答えは今、ぱっとは出なかったのですけれども。ただ、もしかすると、学から産に1回出てきた経験を持つ博士人材たちに関しては、人材流動性みたいなところの自由度が高いので、自分に適したポジションに自分を置きに行こうとする力はあるのかもしれないなというのは、何人かを思い浮かべながら考えました。仕組みとして、若手にバンと研究費を付けてイニシアチブをとらせてとか、あるいは任期的なものですよね。任期があること自体というのは、やはり本人にとっては非常にプレッシャーになるわけですけれども、それに関しては、大きい企業も、例えば、私のようなベンチャーでもそうですけれども、正社員に任期というのはないですよね。逆に言えば、3年後まで保証される身分というのはない立場で動いているわけですので、そこの部分というのを保証することで、優秀な人材が優秀のままでいられるのかとか含めて、影響がちょっとわからないなというのは、今、所感みたいになってしまって恐縮ですけれども、感じました。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 任期をどのように考えるかということにも関わると思うのですけれども、いわゆるポストに任期が付いているかという大学としての考え方と、今、御指摘いただいたように、研究者として、そもそも3年後が保証されているとは思えないと、そういう環境では勝負できないという、実際、そういうことがございます。
 また逆に、先ほど御指摘いただいたように、研究費の面と研究環境がないと、なかなか3年で勝負することさえ難しいということもありますので、それぞれのベンチャー企業、あるいはある程度大手の規模感の大きな企業、また大学。大学でも、それぞれの環境で状況が異なるであろうと思います。
 先ほどのテニュアトラックの普及、定着もありまして、いわゆる任期制から、それを定着ポストに持っていくということが、かなり積極的に実施されたわけですけれども、そこで非常に新たに日本型のテニュアトラックが回ったということは評価すべき点だと思うんですが、そのテニュアトラックで入った若手が、今40代になり、そのうち50代になっていくという時点を迎えていて、今後の、これは卓越研究員にも通じるところかと思うんですけれども、育成ということを、お金と環境とポストを考えて、日本型育成。先ほどアメリカの例も御紹介いただいたのですけれども、特にグラントともリンクしてきますので、日本型育成ということで何か手を打つべきなのか、今の大学のシステムの中で、任期を入れながら、安定性と流動性を確保していくべきなのかというあたり。
【湊委員】  1つは、テニュアトラックもそうですけれども、要するに、若手を育てていくというキャリアパスの中で、やはり日本はどうしても一本道になるんですね。キャリアパスをきちんと行く、でもうまくいかない時にどうするかという話になる。そのオルタナティブキャリアパスというのが、どこかにやっぱりないと、こういうことはなかなか難しいのだろうと思います。いろんなやり方があるのでしょう。
 アメリカの例だけ言いますけれど、いいとか悪いとかではなくさっきの沼上先生の話とも関連しますが、ティーチングとリサーチの問題があって、例えば、ROグラントなどという基幹グラントいうのは、一生涯ずっととれるということは普通ないわけです。あるときはとれても、次はグラントがとれないかもしれない。グラントがとれないと、向こうは自動的に研究室が保証されるわけでもないですから、研究室は一気に縮小されるし、スペース自体もなくなりかねない。では、そういう人たちは、あなた方はもう大学には要りませんと言うかといえば。そういうことは言わないわけですね。でも、そのかわりティーチング・デューティーを果たして下さい、きちんと学生を教育してください、それも大事な仕事ですと。彼、彼女たちは、次のグラントを狙う人は、とりたくない人はそれでいいけれども、とりたい人は、それを目指し準備しながらも、きちんと学生のティーチングの仕事をきっちりこなしていく。次のグラントを狙いながら。次にリターンができれば、またティーチング・デューティーを減らして研究が続けられる、研究費が入れば、ラボスペースもまた大きくなって、テクニシャンも増やせる。そういう、オルタナティブなパスがあるのだろうと思います。
 何となしに私が見る限りは、日本は常に一本道で、非常に理想的な形をここでずっと議論するのだけれども、そのようなことは実際個々人の研究者レベルでは山や谷があり、いろんなパスがありうるわけで、そういうところに対してどれだけきちんとした対応ができるかどうかという現実的な話も、どこかでやっぱりやっていかないといけない。非常にバーチャルな理想的な研究者のパスばかりを議論していても、現実は必ずしもそうではないということではないでしょうかね。
【宮浦主査】  日本型のキャリアパスという以前に、個々の研究者の選択肢の問題も、一本道の中で非常にうまくいっているときと、一休みするときもあるかもしれませんし、その中で、ポスドクを相当雇っている時期もあるかもしれないし、一人二人でやる時期があるかもしれないという、その選択肢の多様化も必要ではないかと。各ライフステージの活躍推進を考えますと、全ての研究者が同じ環境でずっと行くことのシステムを作るのではなく、多様性ということも必要じゃないかという御指摘かと思います。
 そのあたり、アカデミアの多様性と、あと企業、産業界における組織の中の多様性ということを考えますと、いかがでしょうか。産業界の組織の中は、結構多様性の役割分担といいますか、あるのではないかと思いますけれども。
【長我部委員】  はい。確かにそういう御指摘は的を射ていると思います。研究をやるということにおいても、研究管理業務もありますし、研究の能力を活かして、それをさらに事業に持っていくところをやるとか、さらに大学とのブリッジングとか、かなりのところが先ほどの分業体制になっていて、いろいろな側面がある中で、やはり研究者のライフサイクルに応じて、若い発想力のあるときは研究そのものをやり、さらに少し社会性が出てきて、いろいろなコミュニケーション能力が上がれば、そういう分業のポジションに行くという、そういう意味では、キャリアパスの多様性という意味では、やっている活動が研究と教育ということに、かなり絞られる大学に比べて幅広いので、多様性は当然ながら自然とあると。そこにうまく人を乗せていくということですが、それでも、やっぱり人のローテーションは相当苦労しますので、多様性があるとは言いつつも、そこはいつも悩みの種であることは間違いないと思います。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 やはり組織の中で、例えば、知的財産ですとか専門家を育てる。大学でのURAですとか、実際、試験管を振る部署の人間と管理業務、開発のマネジメント業務、そのあたりの人のローテーションの問題、いかに適材適所と言うと少し平たいですけれども、活躍推進の場を多角的に用意していくかということかと思うのですけれども、髙橋委員なんか、そういう面で御意見ございますか。
【髙橋委員】  今、お話を聞いて思ったことですけれども、企業の中では多様なキャリア、例えば、研究員で入って、途中で研究企画の方に行って、いわゆるURA的な動きをして、また研究に戻ってとか、あるいは海外出ていってとか、そういう動きというのがプラスのキャリアとして見られるというか、最終的に経営陣になるときに、いわゆるCTOのような役割になるときや代表になるときとか、そういうときにプラスに作用する。多様な経験をしてきた人だよねと、いろんなものを見えているよね。
 ただ、今、これは印象でしか言えないですけれども、大学の中ですと、例えば、ポスドクをやって、助教をやって、あるいは任期付で、次、URAをやって、また次、研究をやってみたいなというのが、多分余りないのではないかなというのが、やっぱり研究職なのか、いわゆる事務職側なのかみたいなところの線引きとか、キャリアの断絶と言えばいいんですかね。そこが私の印象ですと、研究者側からURA側には行くけれども、じゃあ、逆の動きというのが果たしてあるのだろうかとか、あるいはそういう動きをしたい、した人というのが、経営人材としてプラスに評価をされていく何かあるのかとか、そういうところを考えたときに、今まだ、特にURAなんていう仕組みはできて間もないといいますか、世代が回るような時間はたっていませんから、今後そういうところが、いわゆるURAの方が経営人材としての候補としてというのですか、そういう目で見て、大学の中で、ある意味、育成やキャリアパスというものを作っていけたら、組織内のキャリアの多様性や評価というのも、それに付いてくるというのが大事かと感じました。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 URA人材の話がちょっと出たのですけれども、URA人材になってから、もう一度研究人材に戻るという例が比較的少ないと思います。研究人材かURA人材の、むしろ一方通行の側面がありますので、今後はURA人材からマネジメント、あるいは研究マネジメント人材にシフトしていくとか、あるいはある場合は、自らもう一度PIで仕事をするということもあっていいのではないかと。そのあたりが大学では比較的やりにくい状況になっているということなのかもしれません。
 また、セクター間の人の動きですね。産業界とアカデミアに人が動かないという話題がいつも出るわけですけれども、そこもやはり動いた後の活躍の場がしっかりしていないと動けないというか、動く意味がないといいますか、そういう意味でアカデミアから産業界に移動した場合には、じゃ、どういう人材として期待できるのか。逆に産業界からアカデミアに移動した場合に、どういうセクションで期待できるのかということで、特にアカデミアから産業界に動きませんので、そのあたり、なぜ動かないのかという議論もあるわけですが、動いた後の活用ポスト、あるいは活躍の場がなければ、引き受けることもできないし、動くこともできないという言い方もできるわけですけれども、そのあたり、産業界から御覧になって、御意見ございますか。例えば、中堅の教員、研究者が産業界に移った場合に、どういうセクション、あるいは……。
【長我部委員】  歴史的に見ると、何十年か前というか、1960年代とか、50年代とか、圧倒的に企業にテクノロジー、サイエンスの人材不足であった時代は、大学から相当人が来られていたと思います。実際、私のいた中央研究所も、東大生研から来られた星合正治先生が確か4代目の所長でした。そういう時代があって、それから企業がPh.D.含めて科学技術の優秀な人材を採用し始めた時代から、余りそういう動きがなくなっていると思います。今、私の関連していますヘルスケア関係の事業ですと、MDを持った人が入ってくることが少ないので、大学の医学部の教員クラスの人であれば、企業のポジションはたくさんありまして、というのは、ヘルスケアの場合ですと、大学の病院に勤めている方は、マーケットも実は分かっていらっしゃるし、そのサイエンスなり医学なりが分かっていて、そこにエンジニアリングを少し勉強すれば、産業側にも活躍できる余地がある。ちょっとこれは医療の特殊性だとは思うのですけれども、そういうアカデミアからどんどん人材が流れてきてほしい分野もあるということは言えると思います。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 逆に産業界からアカデミアに移動していただく問題点の1つは、どうしてもアカデミア側の人材ポストの公募等で各パブリケーションリストを要求すると、業績リスト、原著論文、総説とか、リストがあった時点で、なかなか通常の公募型では産業界から人が動きにくいのではないかと思うのですが、そこが1つ大きな問題だと思うのですが、髙橋委員、何か……。パブリケーションリストが様式にある時点で、産業界って動きにくいです。
【髙橋委員】  確かに大学に比べたらペーパーを書く機会というのは少ないかなと思うのですけれども、結構、共同研究等々で論文を書いてらっしゃる方々もいないわけではないなと思うので、それが致命的に流動化を阻んでいる要因だとは、正直、余り感じないなというのはあります。
 一方で、大学の側が、じゃ、例えば、産業界で実績を積んだ方に対して、どういう役割を期待するかとか、それこそポストがこれだけ厳しい中で、いろんな方がアプライしてくる中で、産業界の方にどういう役割を期待するのかとか、そういうあたりのすり合わせというかイメージというのが、気持ちの上のハードルも含めて大きいのかなというのは感じていて、人材が流動しない点に関しては、この前、シンガポールのASTARの方から聞いたと記憶しているのですけれども、KPIの中に、一定期間あたり何人が産業界側に動いているというものがあるらしいのですね。
 要は、何が言いたいかというと、人材の流動性というものをKPIに置くことによって、強制的に混ぜるというか、そういうふうにして、もちろん技術の産業化を促すというのと、逆に流入の部分のKPIはお聞きしなかったのですけれども、何かそういうところで引っ張っていっているものもあるなというのもあって、いずれにしろ、来て何するかとか、出てってどう活躍するかというものの裏返しだと思いますけれども、そういうところのイメージというのが、ロールモデル含めて、ちょっとまだ少ないので、難しい部分もあるのかなというのは感じています。
【宮浦主査】  人材の流動性とKPIと明確化してしまえば、あれということ……。
【髙橋委員】  個人的には、余り数字に追われてというのは本質ではないというか、それだけではないと思うので、数字を達成したからいいかとか、達成しなかったらだめかというのは違いますけれども、ただ、方向性や価値観を示すという意味では、人材の流動性みたいなものというのは、特に若手の方で、産業界への移動に関しては、そういうような価値観が大事だというのを示しているという意味において、人材流動化に目標を持っているというのは、1つの国の方針として見せている例なのかなとは感じました。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 資料2-2で、ライフステージということで数字を出してもらったのですけれども、ポスドクの平均年齢36歳、助教の平均年齢38歳、准教授47歳、教授57歳ということで、こういう年代別の人の動きは分かるのですけど、この中で少し抜けているのは、ポスドクと助教の間の、いわゆる任期付の特任助教ですとか、特定助教ですとか、そのあたりがポスドクと助教の間にあって、それだと30代で、助教のポストの問題もありますけれども、その年齢層の活躍が埋もれているところを、ぐっと出す必要性というのが1つ見えない部分であるのではないかと思っているところですが。准教授から教授は、かなりパーマネントの割合が8割、9割になってくるのですけれども、きょう御欠席ですけれども、川端委員と常々議論しておりますのが、各大学が特定助教や特任助教という形で、ポスドクに近い職種で30代。ポスドクを経験した後に優秀な人材がアカデミアに残っているけれども、テニュアトラックにアプライをしながら、まだ定着していないというあたりの問題がございます。そのあたりも分野によってかなり違うと思うけれども、ライフステージ考えますと、そのあたりの30代の伸び盛りのところをどう手当てするのかというのが非常に重要なところだと思うのですが。先ほどは研究費とポスドクの雇用ということにもリンクしてきますので、ポスドク並びに特任・特定助教等の活躍の場の確保。もっとも流動的ではあるのですけれども、そのあたり、若手にどうしても話が行きがちですが。ポストの不安定性というのが……。
 はい。湊委員。
【湊委員】  いいですか。質問です。
 この任期ありというのは、どういう任期のことを指しておられますか。
【石丸人材政策推進室長】  先生の御趣旨は、任期付のポストかということでしょうか。
【宮浦主査】  任期の年限とか、そういう。
【湊委員】  というか、大学の制度として、うちの京大の一部なんかそうですけれども、きちんとした定員助教にも任期を付けていますが、いわゆるプログラム雇用のような、あるプログラムの外部資金でプログラム期間に限り雇いますがあとは知りませんというものもありますよね。これはどういうものを指していますか。
【石丸人材政策推進室長】  申し訳ございません。調査における定義を確認すれば、お答えできるのですが、現在、調べてございますので、すぐには正確にお答えできません。恐縮でございます。
【宮浦主査】  恐らく任期付といってもいろいろなパターンがあって、1年、2年のパターンから、正式に期間として、5年任期、再任可とか。
【湊委員】  再任可というのは、評価を伴うものですね。テニュア制度では必ず評価をするわけで、例えば、30代、40代でメンバーシップ、つまり永年で(日本なら65歳まで)雇います、ということは普通ありません。例えば5?10年毎で評価し、それで次のところへプロモーションしますというのか、別のルートへ行ってくださいというのか決めるわけで、それもある種の任期です。他方、たまたま5年のプロジェクト、大きいプロジェクトがあるので、この資金の続く限りは雇うけれど、あとは知りませんというのも任期ですよね。これは、どちらのことを指しているか。両方含むのならば、どのくらいの割合なのか、というのを少し出していただいた方がいいと思います。
【石丸人材政策推進室長】  承知しました。ただ今事務局でも確認しておりますし、正確に申し上げないといけないところだと思います。
 正確なところは、ただ今調べていますが、56.1%という数字からしますと、プロジェクト雇用や、テニュアトラック制に乗っている正規の枠も含めた、恐らく任期付のポストで、かつ対象が11大学に限った母集団での統計ではないかと、感触としては持っています。恐縮でございます。
【宮浦主査】  恐らく混ざっているのだと思うのですけど、むしろ御指摘のように、制度として、期間として5年で評価、再任可というようなのは、任期付が通常型になってきている部分なので、むしろ話題になって問題になるのは、プロジェクト型で、あるプロジェクトにリンクして、1年と。ひどい場合は1年、2年、最大3年というような形の年度更新2年上限とか、そういう形が増えてきているのが問題だというのが話題になっていると。むしろ、そこはしっかり議論すべきで、5年任期、評価、再任可の部分は、ある程度、もう定着した制度ですので、それはいいのではないかということだと思います。
 流動性と安定性の問題が、ある程度、日本型でもしっかり見えて、見えにくいというのが、1つ、博士後期課程への学生の進学率の低下ということに反映といいますか、影響が出ておりまして、アカデミアのライフステージの見えにくさ、あるいは流動性がしっかりした形で伝わっていない、あるいは負の側面だけが伝わっている部分があるのかもしれないですけれども、それが博士後期課程の進学率というか、ということで、将来のアカデミアの研究者、教員確保に問題が生じる、あるいは影響するというのが1つ大きな問題だと思うんですけれども、博士後期の学生が減ってきているというのは確実な数字がございますので、そのあたりは十分に考えていく必要があると思いますが、沼上委員、何か御意見ございますか。学生から見た教員のライフステージへのシステム上の課題、あるいは……。
【沼上委員】  どうでしょうか。確かに、非常に困っている中年研究者がいると、それは身近に見ちゃうと、将来を危ぶんで進学しないという人が出てくるだろうということは、そのとおりだろうと思いますけど、ちょっと私、ずっとお話伺っていてというか、一番初めのペーパーを読んでから、やっぱり議論として、その種の困っている人を議論の対象にするのか、それともそこそこの人たちがどう生き生きと生きるかというのを議論するのかで、随分ニュアンスの違う議論になるなというのが、さっきから随分、それが行ったり来たりしている感じですね。
 例えば、この問題、一体何なのかと。これはやっぱりテニュアトラックとか、いろんなものを作っていったことで、あるいは大学院大学化したことで、雇用の問題とか雇用保障の問題とかが出てきちゃって、これが大学内の社会問題化していて、これどうにかしなきゃいけないねという、このニュアンスが片方に少し出ていると思うんですね。でも、それ議論していくと、何かすごく暗い話というか、日本の科学技術力をどう発展させるかの話とちょっと違うタイプの話になっちゃうかなと。
 もう一方で、私が身近で見ている限りで言うと、AIの技術者足りませんとか、コンピュータサイエンスのPh.D.はすごい高値で売れていきますとか、需給ギャップがものすごくいろんなところにあって、どんどん幾らでも採用していってもらえるところ。先ほどもお話ししましたように、MDだったら産業界でも幾らでも、まだまだ活躍する余地があるのだけど、全然出てこないと、不足しているわけですね、言ってみれば。そういうようなところもあって、もう一方で、多分、余っているところがあってですね。その意味でいうと、これは雇用保障の問題という以上に、専門分野がどのぐらいフレキシブルに、我々の国のシステムとして、需給バランスにどれだけフレキシブルに対応できているかと。完全にフレキシブルであることがいいことではないと思うのですけど、サイエンスはやっぱりきちんと、サイエンスによって需要が作り出されるという側面があるので、きちんとした軸をぶらさないようにする必要があると思うのですが、だけど同時に、あるフレキシブルに動く部分もあってしかるべきところが、うまく動いていないという、そういう議論があり得ます。
 会社内だと、私が研究しているようなタイプの会社だと、多角化して、ある分野がだめになれば、ある年齢層までの技術屋は再教育して部署を転換していくわけですね。そのときの再教育は、かなり分厚い再教育をした上で転換する。そうでなければ営業に回るとか、事務部門に回るとか、そういうような配置転換が行われるというようなことが行われるのだと思いますけど、その意味でいうと、一体どのぐらい日本の学問分野、ある程度の年齢まで行った人たちが、どのぐらい専門分野変えられるのかと、研究者の世界というのは、この問題というのは、やっぱりかなり大学の人事システム上はすごく難しい問題が付きまとっているのではないかというふうには思います。
 3つ目の議論として、私が今聞いている限りで思ったのは、競争の話ですね。過度な競争がという話ですけど、競争があること自体はいいことだというふうには一方で思うのですが、ポイントは、競争が何によって、何の基準で競争しているかなんだと思うのです。我々文科系だと、ジャーナルペーパー何本とか、どのジャーナルに何本とかというので、もちろん競争するわけですけど、もう一方で、例えば、ハーバード・ビジネススクールみたいなビジネスの研究の世界の中心地行くと、それと全然違う評価基準で独創的に評価します。だからペーパーそんなに一流ジャーナルに書いてないのだけど、圧倒的に評価されている人がいたりするという、世界の中心だからこそ、標準化された評価基準じゃないので評価できる、そういうところもあったりするというのがあって、その意味でいうと、多分、競争にも2段階ぐらいあって、最低限これだけできるというのを示すための競争と、その上で、こいつやっぱりただ者じゃないというのを示すための競争と2段階あって、前半部分の競争が過度になっちゃうと、恐らく非常に多くの淘汰者が出ちゃう。本当の能力あってもね。だから最低限のところをどう競争させるかと、その上の競争をどう作るかという2段階考えなきゃいけないのではと思うのですけど、その部分が、ただ競争が過度か過度じゃないかという区別にするのか、競争にはタイプが何種類かあるという捉え方をするのかで、システムの設計上変わってくるのではないのかなというのが、私が今、議論をお伺いしてというか、このペーパーを読んでいて懸念しているところです。
 いずれにせよ、上の方のクラスの議論するのと、少しどよんとしたところを議論するのかで随分違っていて、言ってみれば、流動性。雇用の流動性といったって、どんどんいろんな会社に引き抜かれていくというタイプの、あるいはほかの大学に引き抜かれていくという流動性を語る場合と、組織に捨てられていく人を語る場合は、全然タイプの違う話だと思うのですね。ですから、そこはもう明確に分けて政策的な議論をしないといけないかなというふうには思って聞いていました。
 以上です。すいません。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 流動性の議論をするには、どういうステージというか、どういう層の議論をしたいのかということをある程度明確化しないと、先端的な勝負の部分の流動性の議論をしたいのか、あるいは組織全体の人材100人という、それをいかに回していくかという組織論の議論をしたいのか、日本全体を含めてですね。人材の有効活用の議論をしたいのか、そこは焦点を少し絞った方がやりやすいだろうと。例えば、テニュアトラックにしろ、卓越研究員にしろ、やはりトップの人材をいかに活躍の場をポジティブにするかという議論ですけれども、安定性、流動性というと、それだけではない議論が必要ではないかというニュアンスも出てきます。そのあたり、少し絞った方が今後議論しやすいのかなというのは御指摘いただいたとおりであります。
 また、分野のこともよく考えませんと、日本全体全ての分野という数字が出てきちゃいますので、分野によって、そのバランス、状況、環境がかなり異なるので、文系、理系、文理融合、経済、その他、分野による違いを、もしかしたら分野でくくると、かなり年齢層も違ってくるかもしれませんし、分野による違いも含めて議論すべきであろうということかと思います。
 また、例えば、産業界では、必要な分野が生じたら、戦略的にその分野を強化して、ある分野をちょっとやめるという選択肢も十分に出てくると思うのですけれども、アカデミアですと、例えば、研究科ごとやめて、ほかの研究科を作るかというと、なかなか1年単位ですぐにできないということもありますので、そのあたりでライフステージをどう議論するか。先ほどお話ありましたように、例えば、AI人材が足りない、例えば、インフォマティクスの専門家が足りないとなった場合に、じゃ、その研究科を新たに複数の大学で作るのかというと、一気にそう動くか、あるいはそれを10年やった後のことも考えていくべきであるし、総合的に考える必要があると。その需要と供給のバランスの問題もあると思うのですけれども、産業界では需要と供給の分野バランスというのでしょうか、例えば、情報。先ほどのMDが是非欲しいという御指摘あったのですけれども、強化分野が決まって、プロジェクト、強化エリアが決まったら、一斉に戦略的にやるかという部分で、そのあたりのバランスの現状、いかがでしょうか。
【長我部委員】  企業ですとKPIが財務的な数字になりますので、ある集中分野を決めたら、そこは徹底的に人材を獲得する。内部の教育の転換も含めて、外部の獲得含めて、それは間違いなく需給バランスは満たすように採ると。
 ただし、大学は本当におっしゃるように、需給バランスに揃えてはいけない面もあって、多様性をキープするという意味では、ある一定の分野に人が散らばっているということの重要さというのも一方である中で、そこをどうバランスを考えるかというのがアカデミアの難しいところだと思うのです。一般的に、アメリカの研究者の動向と日本の研究者の動向を考えたときに、アメリカですと、ある分野で非常に注目で伸びるエリアが出ると、割と多くの研究者が自分の研究分野を、そんなに離れたところは行きませんが、移動して、大きな塊になるように見えます。日本だと、その動きが非常に遅いというように感じます。例えば、ある一時期、原子力から医療に人が、核医学とか放射線医学に人が動いたときがあるのですが、アメリカは非常に動きが速かった。それから、いろいろな競争型のテーマでいろいろな公募を掛けるときに、設計する側が基礎科学的にも社会にとっても重要領域だというのを設計しても、自分の研究とぴったり適合する研究がいないといったときに、なかなか手を挙げてくれなくて、重要テーマだけど、テーマとして立てにくいなという議論をいろんなところで聞きます。そういう意味で、日本の研究者の流動性、流動性と言うほど大げさなところではないかもしれませんが、自分の分野の隣りに、自分のエクスパティーズを活かしながら動くという事が不足しているように思えます。無論、余り動き過ぎてもいけません。バランスですけど、そういう流動性というか、分野間の移動度合いがアメリカと比較すると小さく見えますね。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 分野の流動性というキーワードが1つ出てきたように思うのですけれども、どうしても1つの分野でずっと行くという、いわゆる分野そのものを流動的にしていく、アカデミアで、そういうキーワードも重要かなと思いますけれども。逆に基盤的な研究力を各分野で強化するという意味では、出口志向が強過ぎるという指摘もございますので、各分野にきっちり研究者を将来にわたって育てておくことの重要性ということも、よく議論が出るところです。
 流動性といいますと、人がどうしてもポストとともに動く話になりますけれども、専門分野の流動性の推進、あるいは逆に確保ということも1つキーワードとして挙げてもいいかなと思います。
 先ほど来、少し、どこに、ライフステージといっても、上澄みの部分か中堅の部分かトータルで議論するのかというのを少し絞る、あるいは認識をした方がいいのではないかという意見が出たのですけど、事務局サイドでは、そのあたりの絞り込み的な御意見ございますか。
【石丸人材政策推進室長】  貴重な御意見いただきまして、ありがとうございます。
 このテーマを、本日、設定させていただいて、冒頭で申し上げましたように、視点の設定の仕方一つとっても、非常に多岐にわたります。流動性についても、御指摘いただきましたとおり、手前ども運用しております卓越研究員に該当するような方など、トップクラスの研究者というのは、何もしなくても需給バランスによって流動性が担保されています。また、それより少し下の層が、少し支援をすると活躍の場が得られるというような状況があります。研究者の方々の業績ですとか、能力、資質、こういったところが高ければ高いほど流動性が高く、そして、少しそうではないと流動性が低くなってきます。特にセクター間移動になった場合には厳しくなってくるというような状況があるということは間違いないところでございまして、本来であれば、そういった資料も少し用意して議論の設定をしておけば、事務局としても適切だったと、今、反省しているところでございます。
 その上で1つだけ、是非残りのお時間でお知恵をいただければありがたいところございまして、資料の2-2は非常にシンプルにデータだけを可視的にまとめさせていただいたところでございます。この中で任期付の有無、ここについては、先ほどちょっと定義のところについては後ほど補足させていただきたいと思いますけれども、これをまとめた上に、第7期の人材委員会では、流動性の世代間格差というような表現もありまして、いわゆるシニアの層についても流動性を高めていった方がいい、こういった議論も過去の人材委員会の議論の俎上にのぼったところでございます。ここについては、事務局といたしましても、どう考えていいのかというのがつかみ切れていないところもございます。資料の2-3に整理させていただきましたように、博士課程を修了しましてから、おおむね30代半ば、あるいは30代を通しまして、多様な研究環境の中で、研究経験を積まれ、そこの部分での流動性が重要だということは、これまでの議論の蓄積かと思います。先ほどの流動性の世代間格差、シニアにおける流動性をどう考えていくかについては、もしよろしければ、御議論いただければありがたいなと思う次第でございます。
 先ほどのデータについて、事務局より補足します。
【浅井人材政策課長補佐】  補足させていただきます。資料2-2の下の段の任期ありと任期なしですが、調査票上は、任期の有無を聞いているだけで、他には雇用財源を聞いています。そのため、現状、任期なしの方は、テニュアトラックを含んでいますけれども、ほぼ基盤的経費で雇われている方です。一方で、任期付の方には、半分以上は基盤的経費で雇われている方もいれば、競争的資金等で雇われている方も含まれています。したがって、赤い方には、財源によって性格の異なる任期付の方が入っているということになります。
【宮浦主査】  ありがとうございます。財源による線引きはしていないので、一応混ざっているということでございます。
 先ほどの流動性について、世代間の格差、流動性は分野ではなく人が動くという、任期も含めて、その流動性の世代間格差で、30代の方、比較的若手の流動性が議論されがちなところですけれども、シニアも含めて、世代間で、各世代間、各世代における流動性担保ということが重要ではないかという考え方も含めて、そのあたり、何か御意見はございますか。人事制度改革にも通じるところが出ますので、雇用システムにも関わりますので、なかなかちょっと返答しにくい部分もあるのですけれども。世代を超えて、一定のパーセントを任期付にする。あるいは任期とはかかわらず、各世代で機関間、あるいは産と学で人が動くことを促進するという考え方もあると思うのですけれども、人が動くということでは、アカデミアと産業界は若手中心ですよね。ただし、動く場合は。産業界で人動くって、流動性ですと、やはり若手、30代が圧倒的に多い。逆に戦略的にシニアの層を引っ張ってくるということもあるか。そのあたり……。
【長我部委員】  なかなか回答が難しいです。異動といったときに、企業間での異動と複合的事業内容の企業ですと、企業内部の異動でも大きな変化があります。日本の社会ですと、御案内のように企業間異動というのは少ないです。それでも年齢軸を横軸にとるとスマイルカーブに近いかもしれないですね。若い層は割と企業間異動が多いように見えます。それは若い年齢層が企業間異動に抵抗感が少ないという面もあると思います。それから上の年齢層も意外と動いています。人数は少ないのかもしれませんが、経営者層はいろいろ動いています。トップは、日本の企業も最近は、違う企業から呼ぶ例も増えています。それでスマイルカーブ的かなと。
 それから、同じ企業の中で見たときに、かなりサイズの大きい企業の場合ですと、異動は、例えば、研究に関わるところで考えると、研究者よりも、むしろその上にいる人の方の異動の方が激しいと思います。典型的な1つのポジションにいる年数が二、三年であり、ところが研究をしている人は、二、三年で動いたら、まとまったものができないということもあって、内部では、私の印象では、比較的、マネジメント層の方が激しく動く。もちろん例外はあるのですけれども、こんな形になっていると思います。そういう意味では、アカデミアと大分境界条件が違いますので、御参考になるかどうか分かりませんが。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 産業界、企業間で動くという、若手で結構動かれる。また、逆にトップ層も結構動いていると、そういう産業界の流動性と、逆に中堅層はある程度のスパンで動かずに仕事をするという傾向が、企業、産業界の場合は見受けられると。アカデミアの場合は、どうしても、いろいろ、そういった意味でも若手が流動的で、テニュアトラックがテニュアになると流動性が落ちると。数字でも10%程度の流動性ということで、人材系の委員会では、その流動性を各世代にもう少し分散させた方がいいのではないかというような考え方も出ていたところですけれども。
【沼上委員】  いいですか。
 普通に聞くと、55以上の人も流動化するというと、すごく悪いことする感じがするのですけど、腰折れ賃金、腰折れ退職金の、あるいは役職定年みたいな感覚のところもあるのですけど、ちょっと視点変えて、もし大学がダイナミックに自分たちの研究領域を組み替えていて、ここから先は、この分野を重点的に拡充するぞというのを大学間でいろいろ差別化をして、この分野をこの大学は重点化すると、この分野をこっちの大学は重点化すると、みんなフルラインでそろえるのではなくて、少しダイナミックに変えていくということになると、必要な研究者、変わってきますよね。そうすると、よりよい研究条件でうちに来てくださいというようなのが、その55歳ぐらいの人に声が掛かるとかということはあり得るのかもしれないと思うので、そうだとすると、というようなことを考えると、個別のある年齢層の流動化を考えるというのは、個別の個人に注目するというよりも、大学が、あるいは研究機関がどういうふうに研究領域の重点化をしていくのかというような大学の戦略とか、その種の資源配分を大学がどう変えていくかというところと併せて考えないと、何となくすごく暗い話になっちゃうかもしれないので、二重に考えた方がいいかなというふうに、レベルを個人と大学と、と思いました。
【湊委員】  よろしいですか。
 僕もまさにその点を考えていて、アメリカの大学は、そういう点になると、コンペティティブですから、あまり他と同じことはやらない。日本の、特に国立大学ということになれば、同じようなことをみんな考えてしまう。ですから、流動性という点でも、なかなか、大学間のポリシーの差が出てこないというのは、僕はあると思います。そういう意味では、アメリカの主要な大学が生き延びていくのは、主に競争原理です。それはどれだけ日本の大学間に、同等クラスの例えば研究大学の間に、どれほどコンペティションの原理が入ってくるかによって、今の話が生きてくるかということになると思います。今のままの形では、流動性といっても、同じようなポリシーの中で、人間を入れ換えろといっても、これは実はモチベーションは上がらないだろうと思いますね。
 それが1点と、もう一つ、先ほどの先生の御指摘であった、グラントが若手からシニアへシフトしているのは、実は僕は言いませんでしたが、論文では書いているのですけれども、先ほどの需給の論理とも関連するかもしれませんが、ひょっとしたらPI予備軍が多すぎるのかもしれない。たまたま、こういうことは言ってはいけないのでしょうけど、それは主査がずっと言われた大学院生の数の問題で、これがいっとき物すごく増えたわけですね。今、減ってきたことが問題になっているのだけど、何でも減ったら悪いように聞こえるけれども、どの程度減ることが問題なのか、ということになりかねない。
 それから、博士課程は確かに減っています。私のところも減っています。逆に修士はある時期から増えてきています。大学院の前期課程学生が増えて、後期課程学生が減っている。そうすると、大学院の在り方のコンセプトも、とくに修士課程と博士課程は、随分変わってきているのかもしれない。そういったことをいろいろ考えると、確かに減ったものは増やさないといけないと反射的に思うのだけど、じゃあ、どの程度増やしたらいいか、もともとまで本当に戻すのか、どの辺が適切な数なのかということになる。そういうことを考えると、余りこういうことは大きな声では言えないけれど、PI予備軍が過多なのではないかというような議論も、実は避けては通れないのではないかという気はします。
【髙橋委員】  ちなみに、これ、任期の話が先ほどあったと思うのですけど、任期なしの方々の流動性とかって調べたデータってあるのですか。それが年齢によって違ったりするのであれば、要は任期ありなしの話と流動性の話にどのくらい相関があるのかというのが、ちょっと私、分からなくて。任期がなくなったら、流動性がどの程度落ちるのでしょう。相関が強いなら、その任期というところも含めて考えなきゃいけないかもしれないですよね。ちょっとその辺が、任期の話と流動性の話というのが、どのくらい。特にここは職位で分けるので、何かそういうところで、もしデータがあったら、それというのは設計する部分で参考になるのかなと思ったのですけど。
【石丸人材政策推進室長】  その点につきましては、資料の2-2でございますが、先生おっしゃいますように、任期と流動性の話とかクロスさせていけば、いろいろ見えてくるかなというところがあるのですけれども、実は年齢層のデータが上のデータでございまして、下の方は、実は特定の11大学だけのサンプリングでしか、実は任期ありなしがとれていないですね。そこをクロスさせることも実はできてない状況でございまして、現実では、そこまで把握できてないというのが現状でございます。
【宮浦主査】  今、御指摘の点は、例えば助教が准教授の他機関の公募に出るという、教授選に出るということの動きも含めて、あるいは産業界に動くというあたり。
【髙橋委員】  そうですね。基本的に産業界で正社員として働いている人が流動するときって、任期切れはないわけですよね。一応、定年まであるぞと。だから流動する人は任期ではない理由で動くわけじゃないですか。任期があるなしというのは余り産業界側では考えられないかなと思っていて、一方で大学の場合、任期ありなし問題がある。任期ありの人は、もちろんどこかで流動しなければいけないわけですけれども、なしの方々というのが、果たしてどういうキャリア感なのか。年齢、職位によって違ったらというのがあれば、さきほどのスマイルカーブの話も含めて、何か見えてくるものあるかなと思った話です。
【宮浦主査】  それでは、そのあたりの議論を進めるに当たって、またデータの整理も少しお願いをしつつ、流動性というのは何かという、機関間の移動が流動なのかというのを含めまして、少し。
 あと視点ですね。どのあたりにフォーカスを当てて議論していきたいのかということも少し整理をして、今後議論できればと思います。ありがとうございました。
 それでは、最後に事務局より連絡事項ございますでしょうか。
【佐々木基礎人材企画係長】  本日は御議論ありがとうございました。次回の合同部会の開催については主査と御相談させていただき、改めて御連絡をさせていただきたいと思います。
 また、本日の会議の議事録につきましては、作成し次第、委員の皆様にお目通しいただき、主査に御確認の上、文部科学省ホームページを通じて公表させていただきます。
 以上でございます。
【宮浦主査】  ありがとうございます。
 本日は、これで閉会とさせていただきます。ありがとうございました。


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