人材委員会 次世代人材育成検討作業部会(第1回) 議事録

1.日時

平成27年5月27日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

科学技術・学術政策局会議室1

3.議題

  1. 議事運営等について
  2. 次世代の科学技術イノベーション人材育成について
  3. その他

4.出席者

委員

塚本主査、隅田委員、立澤委員、千葉委員、長谷川委員、宮浦委員

文部科学省

徳久総括審議官、片岡人材政策課長、唐沢人材政策推進室長 他

オブザーバー

奈良科学技術・学術政策研究所長

5.議事録

科学技術・学術審議会人材委員会
次世代人材育成検討作業部会(第1回)

平成27年5月27日


○議題1は人事案件を含むため非公開
【塚本主査】  改めまして、科学技術・学術審議会人材委員会の宮浦主査から、次世代人材育成検討作業部会における主査の指名を受けました塚本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 4回という限られた時間ではございますが、過去からの経緯、現在なされていること、また、世界の動きなども視野に入れまして、委員の皆様たちの現場感あふれる御知見を頂いて議事を進めていきたいと思います。宮浦主査の方にしっかり取りまとめを御報告させていただくようにしたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 それでは、主査代理に御就任いただきました千葉委員からも一言御挨拶をお願いいたします。
【千葉主査代理】  私、本務がお茶の水女子大学ですので、ふだん女子学生とよく接しておりますので、その辺のことも今回お話しできればいいかなと思っております。よろしくお願いいたします。
【塚本主査】  それでは、引き続いて、事務局を代表して、片岡人材政策課長より、一言御挨拶をお願いいたします。
【片岡人材政策課長】  人材政策課長の片岡でございます。作業部会の第1回に当たりまして御挨拶申し上げます。
 委員の皆様方におかれましては、お忙しい中、委員をお引き受けいただきまして、また、本日、御出席いただきましてまことにありがとうございます。
 この作業部会の親委員会でございます人材委員会の本年1月の提言にもございますように、次世代の科学技術イノベーション人材をどのように育成していくかということは大変重要なテーマでございます。文部科学省でもこれまで様々な取組を進めてきております。スーパーサイエンスハイスクールの支援でありますとか、あるいは、国際科学オリンピック関係の支援等々、様々やってきているところでございますが、今後どういうふうに施策を展開していくべきなのかということについて検討することが必要だというふうに考えております。この点につきまして、集中的に御審議を頂きたいということで、4月21日に開催されました人材委員会でこの作業部会が設置されたわけでございます。
 後ほど、主な検討事項の案につきましては事務局からお示しさせていただきますが、この次世代の人材育成に関しましては、トップレベルの人材の育成、あるいは女子の科学技術に対する興味関心の喚起等々の論点があろうかと思っております。これらの課題につきましては、人材委員会の提言でありますとか、それから、第5期の科学技術基本計画に向けた科学技術・学術審議会の総合政策特別委員会の中間取りまとめ、あるいは教育再生実行会議の第7次提言等においても指摘されているところでございます。先生方におかれましては、当面は7月の下旬から8月頃にも開催されます次回の人材委員会において検討状況を報告できるように、忌たんのない御議論を頂きたく、よろしくお願い申し上げます。
【塚本主査】  ありがとうございました。
 それでは、本日の議題2に入ります。本委員会の検討事項であります「次世代の科学技術イノベーション人材育成」について御議論いただきたいと思います。
 本日は、最初に事務局より、本作業部会の主な検討事項、次世代人材育成に係る現状や主な施策について報告していただき、その後、今後の議論に資するよう、千葉委員及び隅田委員より、次世代の人材育成に係る現状認識や今後の方向性等について御説明をお願いいたします。
 その後、委員の皆様から自由に御意見を頂ければというふうに思っております。
 それでは、まず事務局より御説明をお願いいたします。
○資料3及び資料4に基づいて事務局より主な検討事項、並びに次世代人材育成に係る現状や主な施策について説明。
【塚本主査】  ありがとうございました。
 続きまして、千葉先生より、「次世代人材育成の課題」の説明をお願いいたします。
【千葉主査代理】  私、今日はいろいろなことをお話ししたいなと思っております。まず、身近なところでは、この数年間、女子学生が余り発言をしなくなってきたと感じています。例えば授業中に質問しなさいと言っても質問しない。「分からないところはないの?」と聞くと、「そんなこともないんですけれども、今まで質問したことないから」とか、そういうことを言います。もしかすると、私と学生の年が離れただけではなくて、今の世代がそうなのかなとちょっと不安に思っていまして、同僚にも聞いてみたところ、やはり最近すごく発言が少ないというふうなことがありまして、それが時代の流れとどういうふうに関係しているのか、お茶大だけのことなのかというところははっきりとは分からないのですけれども、そういうことに関しても話してみたいなと思います。
 1枚めくっていただきましたら、26年度の全国学力・学習状況調査結果です。発言や活動の時間を確保した授業とか、学級やグループで話し合う活動、若しくは学級全体で取り組んだり、挑戦したりする課題やテーマを与えると、成績が上がる、若しくは成績が上のところがこういうことができている、いずれにせよ良い効果を与えるようです。
 特に、探求活動を行った図表2のところも非常に良い効果を与えるということで、科学人材養成で探求活動は非常に重要だと考えられます。
 ところで、この前、NHKで深夜の放送を見ていましたら、パックンが出てきて、パックンはもともと日本に来てお笑いをやっていたのですけれども、今は東工大の非常勤講師もやっていて、授業もやっているということです。彼は、私と同じ意見を持っていて、小学生の授業を参観すると、みんな「はいはい」と手を挙げるのですけれども、大学の授業では発言させるのにすごくエネルギーをかけているというふうなことを言っているのです。彼が言うには、また、ある時期に、急に発言するようになるとのことですけれども、これは分かりますか、誰がこんなに急に発言するようになるのかというのは。これは、ある程度年齢が上がっていくと、女性が急に発言するようになるのが、日本において不思議なところであるというふうなことを話していたのです。
 アメリカに留学した上林さんという方が書いていたのですけれども、アメリカでは授業中に発言数が少ないと成績が落ちるので、頑張って発言するようになったら、教授にも「面白い意見を言ってくれてありがとう」と評価されると非常にうれしくなって、今では発言できるようになったとのことです。この評価というのは、後ほども申し上げますけれども、非常に大切なのかなというふうに思います。
 次のページをごらんください。また26年度全国学力・学習状況調査に戻るのですけれども、やはり中学校でできていないのは、話すこと、聞くこと、目的に沿って話し合い、互いの発言を検討することに課題があるという、そういうふうなことが書いてありました。また、書くことも、根拠を明確にして自分の考えを具体的に書くことが依然として課題だということです。この発言と根拠、エビデンスに基づいて自分の考えを述べるというのは、科学的な態度として非常に重要なのです。
 次のページです。6ページをごらんいただけますでしょうか。放送大学の大橋先生が非常に面白いことを言っていらして、ここにちょっと引用させていただきます。日本の国語教育では、「論破されて得る智」を得る可能性が非常に少ないとのことです。これは別に日本の国語教育だけではなくて、日本人全体がそうなのですけれども、なかなか議論できにくいということです。先ほどの御案内にもありましたように、PISA調査では高得点が得られているということはあるのですけれども、やはり科学というのは議論を用いて進んでいくものであります。特にこの「論破されて得る智」というのは、エビデンスに基づいて議論するときに、場合によったら主張が間違っているということはよくあるわけです。しかし同僚の議論、主張に対して、論理的なところで問題があるというふうに切り込んでいくというのに、苦手意識がある。それはやはり、そうすると、人格否定になってしまうのではないかと恐れるということなのです。だから、本当にロジックの上で、ロジックだけでやりとりして、自分が間違っていてもそれはラッキーというか、いいことを教えてもらったから、あなたの意見をもらって、もっといいことを言ってしまいますというようには、なかなかいかないという状況があるということです。
 一方でアメリカでは、中学、高校の入学程度から担任の発言に対して疑義を呈するということがカリキュラムの中に入っていまして、そういうことも日本の中で、それは国語教育でやるのか、理科教育でやるのかは分からないのですけれども、やっていく可能性はあるのかなとも思うのですが、次の7ページを見ていただきますと、これは皆様もう既に御存じのように、日本人は以心伝心というか、同質性、垂直性にすごく優れている民族でありまして、言わなくても分かるはずという前提を持ってコミュニケーションが行われているという、高コンテキスト・コミュニケーションスタイルということで、空気を読むということが非常に得意な民族であるわけです。だから、何か問題があっても、議論で解決するのではなく空気で解決するということをしばしばやっているということで、いろいろなところでこれは指摘されていることだと思います。
 ここのところをどうするのか。つまり、次のページを見ていただければいいと思うのですけれども、空気を読むというのは悪いことなのかというと、必ずしもそうではなくて、グローバルな世界で勝ち残るためにはグローバル化されない性質を持つことが非常に重要だと私は思うのですが、そうすると、「おもてなし」は今、日本の重要なセールスポイントとされているのですけれども、これはまさに空気を読むということができる人でないとできないある種の能力であるのではないかなというふうに思うわけです。
 皆さん御存じのように、おもてなしというのは、客が要求する前に客が望むであろうことを客が意識化する前に察知して臨機応変に取り計らうということであって、これはサービス業にとって非常に重要な資質であるということなのですけれども、これを我々は温存したまま議論をどのようにすればいいのか、議論というのは空気を読まずにやるのが通常なので、それをどういうふうに両立すればいいのかということが問題になってくるのかなというふうに考えるわけです。
 9ページをごらんください。先ほどから問題になっていますように、そういうふうに証拠に基づいた結論を導く能力というか、その過程でディスカッションというのは非常に重要なわけなのですけれども、それを教育課程で行おうとしているのは、別に日本だけではなくて諸外国でもありまして、必ずしも証拠に基づいた結論を導くというそのことが、別に日本人だけが不得意ではなく、いろいろな民族において不得意なところもあるので、そこをアーギュメントというふうに言っているのですけれども、科学的原理を用いて主張と証拠を結びつけるというような、そういうふうな教育というものも主張されているということはあります。
 ただし、そこで反論ということがあるわけですけれども、そこをどういうふうに子供たち、若しくは我々が、我々の持っている特質というか、性格というか、空気を読むというようなことを、両立しながら進めていけばいいのかということは、やはり依然として問題として残るわけです。
 次のページで、1997年からPISAは始まっているのですが、同年度にDeSeCo(Definition and Selection of Competencies)というふうなプロジェクトも始まっておりまして、これは人生を成功させるためには、個人がどのような能力、性質を持てばいいのかを議論しているわけです。
 そこで分かったことは、次の11ページに書いてあるのですけれども、OECDは3つのコンピテンシーが重要であるというふうなことを主張しているわけです。「道具を相互作用的に用いる」、「異質な人から形成される集団と関わり合う」、「自立的に行動する」が重要であると主張しているわけです。
 これは現在の我々についてどういうふうな意味を持つのかというところが次のスライドに書いてあるのですけれども、まず「道具を相互作用的に用いる」、これは何のことか。これは結局、数学も道具、言語も道具、ITも道具、科学的リテラシーも道具というふうに考えます。それを相互作用、「interactively」はなかなか難しい言葉で、私の理解としては、道具によって影響されて自己が変わっていくように用いる意味で「interactively」を使っているのかなと思うのですが、これはいわゆるPISA調査が明らかにしている能力です。ここは日本の生徒は相当いいということです。
 「異質な人から構成される集団と関わり合う」ということでは、チームワークが必要であると思うのですけれども、日本にはチームワークはなくて、あるのはグループだけだという意見があります。ところが何かミッションを実現するときに、同質の人だけで集まって行っても、難しい。むしろ異質な異能な人が集まって、そこでミッションに向かって喧々諤々議論し合って、方針とかも決めて、そういうふうにしないとなかなか成功には到達できないのです。ここでまた議論が出てくるのですけれども、異質の人の間では、空気をお互いに読むということは難しいので議論する必要があり、こう考えると、同質性を好む日本人には大きな課題がやはりあるということが分かるのかなと思うのです。
 「自立的に行動する」というコンピテンシーに関しては、安西祐一郎先生によれば、受け身の教育から能動的な教育、教育の質的な転換が必要とされるということで、自分の生きる目的までを自分で見いだすということを主張されているわけなのですけれども、そういうことも重要なのかなというふうに考えるわけです。
 それで、我々も、日本版コンピテンシー選択と決定というものを考えた方がいいのではないかというふうに思うわけです。やはり日本では空気を読まないとうまくいかないのであるが、「異質な人から構成される集団と関わりあう」ために「議論をする」とどういうふうに折り合いをつけるのか。しかし空気を読めるというコンピテンシーを捨てるわけにいかない。なぜなら、それはグローバル化されない性質なので、我々の非常に重要な特質であるので、証拠に基づいて議論ができる、しかし相手の人格を否定することなく、そういうふうな文化をうまく両立させるような、何かそういうふうな態度を身に付けるということが非常に重要になってくるのではないかなと考えます。
 コンピテンシーの話はそのぐらいで、あとは、探求的な科学的な能力の育成ということについて考えます。課題研究や自由研究は非常に探求能力の育成に役立ちます。ところがいろいろな先生に面接をしたところ、多くの、小学校の先生は子供にヒントを与えるのが大変で困っているとのことです。
 中学校では生徒が、すぐみんな検索してしまうので、独創性みたいなものがなくなってしまうのではないかなというふうなことを先生は心配されている。
 高校の先生は、科学部活動などでみっちり指導する場合は、3つか4つぐらいのテーマしか指導はできないと、なかなかたくさん指導する時間もないということが非常に問題だと言っていらっしゃいます。
 そこで私ども独自にやっていますのは、次のページ、15ページなのですが、理科自由研究作品の検索システムというものを作って大学で公開しております。これまでの自由研究では、なかなか過去の自由研究を検索して参考にするということはできないというか、実際、過去の研究を検索しようとしても、ヒットしなかったのです。そこでいろいろな科学コンテストの作品を全部検索できるというようなデータベースを作ればいいのではないかということで、例えばアサガオとかというのを検索画面に入って入れていただくと、過去にアサガオで自由研究したものがバーッと検索される。これ、是非一度訪れて調べていただきたいなと思うのですけれども、すごく楽しいです。子供たちは驚くべきいろいろなことをやっています。実際に高校の先生は、このデータベースは非常に高校では役に立つとは言っていただいています。科学というのは文化でもあるので、過去の作品をどういうふうに調べていって、自己の研究に加えるのかを児童生徒に教育することはとても重要であると考えております。
 もう時間も余りないので進みたいと思うのですけれども、スーパーサイエンスハイスクールはすばらしくて、生徒の研究発表会では、すばらしい発表がたくさんあって、これは是非地域に浸透させていくことが非常に必要だと思うのです。でも、あえて課題を申し上げますと、テーマ設定・展開において、議論や考察が必ずしも深まっていない子供たちもまだ多いと感じます。と申しますのは、私は生物関係なのですけれども、生物の研究だったらある定石というか、こういったら次はここは調べるだろうとか、ここのコントロールはとるだろうとか、そういうふうな流れみたいなものがあって、そういうところを生徒に聞いてみたら、初めて聞いたみたいな、確かにそれをやらなければならないとかというような返事が返ってくることがあります。もっとふだんから議論をしていれば、必ず指摘を受けているはずだと思うのですけれども、なかなかそういうものを受けていない子が多くて、それを考えると、やはり先生方若しくは運営指導員、そういう方、若しくはもっと外部人材を入れて生徒と議論をふだんからして、生徒の課題研究を進めることが必要なのではないかと思うのです。
 それから、課題研究で得られた結果の解釈を生徒たちがするときに、初めに立てた仮説に固執しすぎて実験結果の解釈を無理に仮説に合わせてしまうこともしばしば見られます。それもやっぱり議論が少ないからそうなってしまっているのだと思うのです。
 やはり、先ほどの問題点ですね。議論するということが必ずしもうまくいっていないのではないかと思います。私はついつい夢中になって議論してしまうと、生徒を泣かしてしまうことがありまして非常にまずいのですけれども、あくまでもロジックで言っているのだけれども、相手の子はやっぱり人格を否定されていると思ってしまうのです。やはりそこのところを先生方には指導いただくというか、でも、それもなかなか指導するのはもしかしたら難しいのかもしれないのです。そこに大きな課題があるのではないかと思います。
 もう時間もないですので進めますが、あと女子の問題なのですけれども、先ほどの御紹介のように日本の調査でも、やはり自己尊重が低いということがあります。アメリカでも女子の自己尊重が低いということが問題になっていて、ピア・プレッシャーですか、女子仲間からの圧力みたいなものも多いのではないかと考えられています。そのようなことは、シェリル・サンドバーグさんなどが書いています。19ページの25年度の調査を見てみますと、やはり自尊感情みたいなものが、これは自己への満足感の推移なのですが、日本がずば抜けて低いのです。これは男女とも低いのですけれども、やはり問題があるのではないかと思います。
 最後のページですが、もう一度26年度に戻るのですが、児童生徒でどういう子がよかったかというと、結局、学級みんなで協力して何かをやり遂げ、うれしかったことがあるとか、先生は、自分のよいところを認めてくれていると思うという子は、やっぱりなかなか正答率が高かったので、ポジティブな評価の重要性とか、褒めて育てるというのはひとつ大きな点なのかなというふうに思います。
 スーパーサイエンスハイスクール、ポスター表彰はすごく表彰数を増やしていただいたり、科学の甲子園ジュニアで表彰を増やしていただいたりしているところがあって、大分その方向はいいと思うのですが、科学オリンピックは、半分は表彰されているとのことです。だから、是非日本でも半分ぐらいは表彰してあげて、文部科学大臣賞なども1割ぐらいの参加者にパーンとたくさんあげてしまうというぐらいの、そのぐらいでどんどん褒めて、特に女子を褒めてあげれば、大分いい効果も生まれてくるのではないかと思います。お茶大の学生を見ても、本当に自信がないのですよね。「是非大成功してね」と言っても、「えっ、私なんか」とすぐみんなこういってしまうのです。男は根拠のない自信で行くのですけれども、女子は非常に厳密に自身を評価して、根拠があるけど自信がないというところがありますので、そこはやはり褒めるとか、おだてるとか、いろいろそういう形で伸ばす、そういう機会を与えるとか、まだまだやることがあるのかなと思います。
 以上で終わります。ありがとうございます。
【塚本主査】  ありがとうございました。
 それでは、続きまして、隅田先生、お願いいたします。
【隅田委員】  それでは、続いてお話しさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 私は、科学教育を深化・拡充ということで、20分でどこまで何を入れようかというのが大変だったのですが、統一的な副題を考えると、この「‘one model fits all’ approach」という、単一の教育モデルを一律に適用する、そういうものをそろそろ違うオプションといいますか、違う方向を出していこうということでくくってみました。情報を提供して、最後にこんな考えがありますよということで話をさせていただきたいと思います。
 大きく分けますと、最初、‘one model fits all’ approachのある程度限界が見えてきているのではないかということと、学校教育を取り巻く状況が急速に変わっているということを御紹介して、最後に少し考えをということでございます。
 めくっていただいて4ページ目のスライドです。これは一部のデータですが、先ほどからたくさん出ている成績というか、達成度はTIMSS調査、PISA調査においても高いのです。一方で、楽しいと思わない生徒の割合が高いとか、科学は役に立たないと思う児童生徒の割合が低いとか、こういうのがよく出てきます。そうすると、これはアメリカ人の研究者に聞かれたのですが、じゃあ、どうして日本は、好きでもない、将来役にも立ちそうにもない科目をそんなに勉強するのだと聞かれたわけです。日本は科学技術の国じゃないのか、誰がソニーに入るのだとか、誰がトヨタをやっているのだとか聞かれるわけです。
 私がそのとき答えたのは、いや、それは日本の先生がすばらしいのだと、そういう興味がない子供の成績をここまで上げているのだと。アメリカ人はそこまで興味があるのだったら、もっと成績が上がるのではないのかと言ったわけです。TIMSSというのは、余りこれは紹介されないのですが、実はビデオ・スタディーというのをやりまして、理科と数学の授業の国際比較をやりました。それは私も関わりましたので、少し紹介いたします。
 それをやってみると、これは中学校の理科の授業でやったのですが、確かに日本のすごいというのは世界的に認められるものでした。一方で、ちょっと考えていたのは、世界的に見るとそれだけレベルが高い生徒が集まっている国なわけですから、学習指導要領というか、標準でやっていることが実は成績が高い子にとっては退屈な授業にもうなっているのではないかなというのは思っていたわけです。
 ということで、前半は、少し才能教育の話をさせていただきたいと思います。
 アメリカなどに行きまして調査をすると、才能児クラスにいる幼稚園K学年(5歳児)の子供とちょっと話をすると、3桁の足し算とか引き算とか平気でしますし、社会のことで話をしていても、大統領の話とかをしてきます。そういう子供たちが例えばそのまま小学校に日本で考えて入学したらどうなるかというと、本当に全部分かっていることをずっと聞かなくてはいけなくて、しかもそれをみんなと仲よくしなくてはいけなくてという状況が起こるわけです。アメリカではそういう子供向けの手当がある程度、制度化されているということです。
 1枚めくっていただいて6枚目の、これは非常に貴重な写真で、私が撮ったものなのです。これは才能児クラスの子供と通常クラスの子供が一緒に授業を受けていた授業です。先生もTTで入っていました。密度に関する授業で、天びん、水、メスシリンダー、石やネジなどを使って、質量を測っておいて、体積がどう増えたか密度を計算させています。日本でも例えば日常的なものを使って実験観察をしましょうとかいうと、大抵比較的良い授業の例で挙がるようなものではないかと思います。でも、授業が終わった後で才能コースの生徒に聞くと、非常にこれは評判が悪いです。なぜその子が面白くないかというと、まず、ある特定のものの密度を正確に測るのだったら、こういう実験では駄目だろうと言うのです。
 あるいは、日本でいう化学便覧のようなデータでちゃんと出ているものは出ているのだと、純物質だったらもっとちゃんとデータを見た方がいいのではないかとかと言います。しかも、こういうのは大体先生がちゃんと用意をしていて、準備物を取りにおいでと言って、取りに来させてやります。ワークシートがあって、その順に沿って穴埋めでやっていくような、これも日本でよくあると思います。もっと正確なことを、ほかの調べ方があるのに、先生が用意した内容に沿ってやらなくてはいけないというのがまず面白くないと言うわけです。
 3つ目は、別なやり方ならもっと正確なことが分かるかもしれない。しかしそれを決まったやり方でやらされる。しかもそれをやる気のないやつと一緒にやらなくてはいけないというわけです。
 こういうのは非常に面白い視点で、まさに‘one model fits all’ approachでやっていたのでは、そういう子のためにはならないかもしれない。しかし、その子が退屈そうにしているからと言って、やる気がないわけでは全然なくて、やる気があり過ぎて、あるいは能力があるからこそ逆につまらなくなっているような部分があるということが分かってきたわけです。
 日本の一般的な中学校理科授業の特徴ということで、これ、TIMSS Video Studyのアメリカのグループがサマリーを書いた中で日本の授業をまとめた部分です。非常に高く評価してくれています。小数の概念を多面的に取り扱っている。一方で、ちょっと気になるところをピンクで引いたのは、最後が1つの結論に必ずなるとか、あるいは問いは先生が決めているということです。そして、最後のところで、1つ出てきたとすれば、中身が挑戦的であったり、難易度が高いものはなかなか扱っていない。ただ、これはビデオで撮ったのは1990年代なので、後でも資料を出しますが、今は中学校に関しては発展的な事例とか随分変わってきてはいます。ただ、全体的な傾向とすると、こういったものを言われました。
 じゃあ、アメリカはどうなのかというと、実はアメリカはアメリカ人のグループが中心だったこともあって、比較的厳しくて、先ほど来で、授業中、確かに話し合い、発言が出ます。先生が手を変え品を変えといいますか、ロールプレイをやったり、ゲームをやったりとしています。でも、それに対しては非常に厳しいコメントを送っていて、確かに動機付けはやっているし、発言は多いけれども、内容に関係ない部分が多過ぎるというのをアメリカ人の研究者は言っていて、必ずしも発言が多ければいいというものではない。ただ、日本人の発言が少ないというのは指摘されています。
 次、8番をめくっていただいて、「「才能」とは何か?」ということで、教育省でステートメントがございます。これは成績だけではなくて、創造性とか、あるいは分野に言っても芸術性とか、あと、リーダーシップとか、いろいろな分野が出てきていまして、いかに多面的に、IQを超えて多面的に評価するかというのが議論で研究がなされております。
 9ページ目を見ていただきますと、科学才能教育に関わる調査ですと、例えばプログラムを受けた子を追跡調査しますと、やはり博士号とかを取る学生が多いとか、研究者が多いとか、社会で活躍しているとか、そういう研究をする人とかが多いようです。今度はさかのぼって、そういった賞を取った子供が幼い時期にどうだったかというと、やっぱり非常に強い関心を持ってやっていた時期があります。あるいは、今度は共同性といいますか、ノーベル科学賞を取った人は、やっぱりノーベル科学賞者がいた研究室とか、そのルートで研究をした経験があるとか、そういうことが出てき始めている、こんな研究も幾つかございます。
 めくっていただきまして、じゃあ、それはどれぐらいの割合なのかということで、実数はなかなかつかめないのですが、このNational Association for Gifted Childrenという学会が、2年に一度、全米で調査をしております。これは2013ですから、おおまかに6から10%と書かれています。6から10%ぐらい。データがないところもあるので、大体それぐらいです。低く見積もって6%と考えたとして、それはどれぐらいの数かというと、特別支援教育の対象の調査で出てきている子供の割合とほぼ一緒なのです。そうしますと、日本でも特別支援に関してはコーディネーターを作って、学部でも専攻がありまして、そういう制度がどんどん対応しているわけですが、それと同じぐらいの子が、アメリカはちゃんと才能児としても認定されている。日本の状況で数を単純に計算してみますと、毎年約90万人の子供が、もしアメリカであれば才能児と認定されて何かしらの手だてを受けることができていたかもしれないのですが、日本では放っておかれている可能性が高いということになります。
 才能教育の形態を考えた場合に大きく2つ、Acceleration、先取りして学習するようなやり方と、拡充、Enrichmentといって、学校では扱わないような科目を扱っていくような、こういうやり方が大きく2つありまして、それを公的な教育(Formal)でやる場合と、学校以外のInformalな教育でやる場合と、そういうので整理してみたのがこの図です。こうやってみますと、どういう施策がどこら辺に入っていて、どこら辺が日本はまだ弱いのかなとか、入りにくいのかなというのが整理できるのではないかと思います。
 やりやすいのは、やはりInformalでEnrichmentがやりすいわけです。もちろんこれはこれでいいのですが、そうしますと、そういう機関あるいは大学に近いところの子供が受益者になりやすいので、いかに格差をなくして平等に機会を提供するかとなると、本当はFormalでもこういう問題は扱ってほしいというのがございます。
 次をめくっていただいて12枚目のスライドは、そういう政策動向はどんな状況があるかという調査をしたグループがありまして、これはヨーロッパの調査です。そうしますと、やはり国によって違いはありますが、何かしらの法的なガイドラインをほとんどの国が持っている。フィンランドでもちゃんとございます。
 13ページから、我が国の政策動向に行きますと、第3科学技術基本計画で「才能ある子供の個性・能力の伸長」という言葉が入りまして、これがきっかけで、科学技術分野がまさにけん引する形で広がりつつあります。
 そしてもう1つめくっていただいて14ページですと、これは最初の助川さんのところから御紹介がありましたが、施策がどんどん行われていまして、JSTが中心に手掛けているこの施策を中心で、実践的に、才能の概念をどうするのだとか、そういうところはされていないのですが、ある意味、ボトムアップ的に施策がどんどんされているというのが日本の特徴で、日本科学教育学会でも2012年に特集を組ませていただきました。このとき私は部会長でやりました。
 もう1つ、現状ということで、OECDのPISA2012年が、日本が科学リテラシーで初めてOECD加盟国の中で一番になったときです。それがすごいのですが、それと同時に、右側を見てみると、これ、人口で書いています。トップ10の国では断トツで日本は人口が多い国なのです。そうしますと、それだけ多くの、ある意味、世界のトップレベルといいますか、高い生徒がいるわけなので、そう考えると、アメリカの才能児のレベルぐらいは日本では標準でやるぐらいのことをしてもいいのではないかというのがあります。
 次をめくっていただくと、そのトップに上がっていったときの時系列的に見てみますと、レベル5以上というのが高いグループで、レベル2以下が低いグループと思っていただくと分かるのですが、中間層はほとんど変わっていません。2006年から12年まで数は変わらない。それで、更に上に行くときは、やはりどうしてもトップを伸ばしながら下が下がるようなパターンでいかざるを得ないのではないかと、中間層をこれ以上増やすというのはなかなか難しい。
 同じようなパターンの東アジアで行くと、シンガポールがよく似た感じです。やはり下が下がって、トップが上がって、中間層は大体一緒。ただ、シンガポールの場合は、学校間格差が大きいというのが今出つつあるところでございます。
 あと、それに関わって男女差で行くと、男女差に関しては、必ずしも先進国だから男女差が解消されているわけでは全くなくて、むしろ準産業国とかの方が女性進出が進んでいるとかというデータもたくさんございまして、東アジアは、どちらかというと、男女差が小さい方で世界的には知られています。ただ、このデータで見ますと、日本だけ差があったりするので、日本は男の子がよく伸びたというのは事実なのですが、女の子も伸びるのだけれども、同じように伸びてほしいというのはございます。
 次、めくっていただきまして、科学教育を取り巻く状況ということで、学校があって、地域社会があって、家庭があってと、その1、2、3、4で少し考えます。
 めくっていただきまして1番、自然科学の急速な進展と構造変化ということで、科学の進歩のスピードというと、年間にどれぐらいの論文が出ているかというと、これぐらい出ているということで、100万本ぐらいは出ているということです。ということは、それだけ何かしらの新しいものが次々出ています。それがいわゆる知的資本として蓄積されている、こういう急速に蓄積されることと、急速に新しいものが出ている、それをどう考えていくかという時代になっています。
 次をめくっていただきますと、これは、ノーベル賞100年分ぐらいの科学者を分析してみたのですが、これは化学を例にしました。物理学も生理学も分析をしています。化学でいくと、例えば20世紀前半は、やはりヨーロッパです。これでグローバルに活躍しようと思ったら、ヨーロッパに勉強しに行かなければという感じがよく分かります。でも、20世紀後半になると、ヨーロッパでも拠点国ができてきますし、アメリカが大きく伸びています。21世紀になると、それが随分広がりつつあって、環太平洋あたりは、どちらかというと存在感を示してきているような部分がございます。
 ノーベル化学賞を受賞した人の専門分野を調べてみますと、やはり新しく出てきた20世紀後半のBiochemistryとか、構造化学(Structural Chemistry)とか、いろいろな領域交差的なことが出てきていますので、化学だけでも、Physical Chemistryとか、物理を知らなくて化学をやる。あるいは、生物をしなくて化学。生物でも生物物理とかが出てきたときに、高校の選択で生物をとるから物理をとらないとか、そういうのがいかにもったいないか、こういった新しいことを生み出していくときに、多分野が重要かというのが分かってきます。
 次、24ページをめくっていただきますと、これは受賞が単独受賞か共同受賞かで、共同受賞の場合は出身国が同じ国なのか、あるいは所属機関が違うのかというので分析しますと、やはり20世紀前半は単独受賞が大半でした。それが21世紀になると、基本的に共同受賞になっていて、それも国が違う人と共同受賞になっています。物理学もそうですが、物理学のアインシュタインの孤高の天才のイメージがありますように、20世紀前半はそうです。でも、21世紀に入って単独受賞はございません。ということで、位置は離れていても共同で何かをやっているという、そういう状況が見えてきます。
 ですから、キーワードとして、これももうありきたりとは思いますが、21世紀型だと、協働で何かをやるのと、国際的にやるのと、領域交差的にやる、こういうものが分かってくるところでございます。
 あとは、世界科学会議の宣言で、今までの知識精算としての科学だけではなくて、平和のための科学とか、あるいは経済発展のための科学とか、社会との結び付きとか、科学にもこういう多用なことが求められるようになってきたというのが世界的な動向でございます。
 どんどんいきますと、次、高等学校がどうかといいますと、28ページで、これは平成26年のSSH校を各都道府県で何校あるかというのを全部数字を打ってみました。204校で4%ぐらいだと思います。でも、先ほどの才能教育のもので行きますと、6%にはまだ足りませんし、実際、高校が指定されていても、その高校の全部の子供が受けているわけではないです。そう考えると、大分それぞれの県でどうにかアクセスができる高校が増えてきたようには見えますが、さっきの状況、世界的な文脈で見ると、こういうレベルのことをするのはまだまだあとあってもいいというのがあります。
 特徴をまとめますと、29ページのスライドで、やはり先進的な先取りのカリキュラムをやっているとか、クロスカリキュラムをやっていますとか、あと、大学の先生に関わりながら、通常の学校では教えないようなEnrichmentをやったりとか、あと、フィールドワーク、特徴的なことをやったりするところがあります。また、課題研究だと大学との連携とか、企業との連携とか、あと、地域の特性を生かしたような課題研究もあります。
 ネットワークとすれば、学内のネットワークと、学校間のネットワーク、コミュニティー、そして教育研修と関連させたような事例もございました。
 あと、2007年度から国際性ということが言われ始めて、共同研究とか、プレゼンテーションを英語でやるとか、海外に研修をするとか、海外で実際に実習をするようなものも出てきたということです。
 オリンピック参加者数は、やはり先ほどのデータで大きく増えていて、今年のIntel ISEFも受賞している。
 では、今度、下からどうなのだということで、実は下はもっと面白い結果がございまして、ノーベル経済学賞受賞者のHeckmanさんの予想、考え方で行くと、教育投資のリターンは幼い時期ほど有効だという図を出しました。これはOECDが出したことです。これはかなり大きなインパクトを与えまして、ヨーロッパを中心に幼児教育の建て直しが行われています。
 日本の現状はといいますと、残念ながらそこのあたりは全く空白になっていて、理科の授業時間が戻ったというのですが、中学校はかなり戻って、発展のところが外れたりとかになっているのですが、小学校に関して言いますと、ようやく平成元年に戻ったところという状況でございます。低学年は平成元年にも戻っていないということです。
 というわけで、私の大学で、幼い子供、幼稚園のKレベル、小1、小2、5歳から7歳、8歳ぐらいの子供を対象に、大学で実際に子供に科学教育をやってみようというプログラムを行っていまして、子供たちのスケッチなどを見ていただくと分かるのですが、かなりできます。思っている以上にできます。
 次をめくっていただきまして34ページ、これは自由研究の発表会もしています。自分で考えて10分くらい発表して、大学教員が質疑応答をしています。幼い子でも面白いことをやります。
 35ページ、これは図もありますが、科学の言葉を正しく使うということは、蓄積の上で非常に重要なので教えますと、小学校1年生ですが、固体、液体、気体のような言葉はきれいに使って、非常に豊かなことを書きます。
 めくっていただきまして36ページ、これは幼稚園の年長児の子供の女の子です。水の浄化のフィルターを作ったのですが、それぞれがデザインして作ったらうまくいかなくて、それが悔しかったみたいで、家に帰って全部分解して、何度も何度も設計し直しては試して、保護者の人が証拠の写真を撮って、科学なので証拠の写真を撮りましょうとかというのを中でやっていて、実験ノートも渡しています。そうすると、こんなことをやってきます。
 ちょっと試しにということでアンケートをとってみまして、これはTIMSSの問題をその子供たちにアンケートしてみました。水の質量保存についてはすごく面白くて、コップの水に氷を入れて、溶けて全体の質量がどうなるかという問題で、子供に聞くのは難しい。実際それは本当にやったら難しいのです。周りに水滴がつくかとか、蒸発するかとか、いろいろな要因があるので、問題を作った人はそれを考えて、溶けてしまったすぐ後の重さはどうかとTIMSSの問題をちゃんと考えているわけです。これは小学校の1年生の子供なのですが、回答で同じで書いた下に、ちゃんと「とけてすぐだから、水じょう気になって空気のなかにきえていないから」とか、問題作成者の意図に近いようなことまで言及して回答してくるような子がいるわけです。
 次の問題も、ヒトの心臓が動くリズムのお話で、これもTIMSSの問題で、日本の中学生の解答率が低い問題です。自分で実験計画を立てられないのです。でも、これは小学校2年生の女の子ですが、何を使わなくてはいけないのか、方法としてどうなのかというのを順番を打ってちゃんとやっていて、最後に、もし聴診器がなかった場合とか、そういうときはこれで代用できるとか、こういうふうに計画が立てられている。
 家庭環境のところで行きますと、これは余り私、データはなかったので、これ、刈谷先生のデータを引用させていただいただけなのですが、一方で格差が広がりつつあるのも事実で、‘one model fits all’ approachのもう1つの課題は、こういう格差が出始めたときにどうするかというのが重要な課題で、ジェンダーもありますが、こういう格差の問題とか、あと、移民の方も増えてきているような状況で、次にどうするのかなどというのも課題ではないかと思います。
 こういう情報をもとに、全部がダイレクトに関わるわけではないのですが、ちょっと提案を考えてみました。それが42ページからです。
 グランドデザインを考えるときに、1つのキーは、そういう意味では投資価値が高いというか、効果が高い幼年期から大学まで長期的に考えるということ。それと、自分たちの既存の枠に入ってしまわないで世界基準で考えるということ。それと量はある程度限界がありますから、いかに質を高めるかということを考える、そういうことを考えたらどうか。
 理科教育振興法なども、中身は、器具は改訂されますが、これ、1953年にできた法律で、先ほどの科学の進歩を考えると、もっと大きくやってもいいのではないかとか、あと、才能教育振興法、これは韓国が作りました。日本も何かこういう、ここまで施策が成功しているのだったら、何か法的なガイドラインがあったらいいのではないかというのがございます。
 あとは、学校だけではもうできない、ある程度、役割分担しなければいけない部分が出てくるときに、学校と家庭と社会が連携してほしい部分とすると、やはり自由研究の組織的拡充で、これは先ほど千葉先生がもっと賞を出したらと言った、もっと大会を増やせばいいと思うのです。地区大会があってもいいし、何とか杯みたいなものをたくさん作ってしまえばいいと。そういうものをどんどん支援してあげればいいのではないかということです。
 それと、地域の科学教育講座。私の近くでも公民館とかがやっていたりとか、いろいろなことをやってくれています。こういう特別講座と自由研究の出展者、その2つでスクリーニングをかけるだけで、かなり優秀な子供が集まります。こういうのをどんどん展開するということ。
 それと、学校とか大学でオープンラボのような、いつでも子供たちが来て、ちょっと実験かできるような、そういう場所があったりとか、特にサイエンスキャンプ、これは残念ながら今年度から募集がなくなった高校生向けの企画だったのですが、企業も関わって非常に面白かった。こういうものをもっと中学校とか小学校で、地域でサイエンスキャンプなどができるような支援があったらいいのではないかと思います。
 格差の問題などを考え、あるいは、情報格差も含めて考えると、やはりICTなどというのはもっとどんどん拡充した方がいいと思います。
 関係しますと、科学情報をみんながどんどん入手できる公開の促進とアクセススキルも共有する。ビッグデータをもっとみんなで使えばいい知恵が出ることがたくさん出てきたということです。むしろ知っておかなければいけない。
 あと、児童生徒の学習に関しますと、個人とか小グループで、答えが1つに決まるのではなくて、オリジナリティーを出して、その新しい考えを認めたり、自分で新しい問いを作るような、そういう21世紀型の探究、プロセス重視の探究ではなくて、共有化と個性化を兼ね備えた研究をやっていく必要があります。
 あと、科学図書の充実、先ほどの文献なども調べる専門書が欲しいということ。
 それと、内容に少し関わってしまいますが、やはり地球規模の問題、国際性とかを考える、特に外国に必ずしも行かなくても、中学生ぐらいであれば、地球規模の問題を考えることで、それで外国の中学生と議論が共通にできるようなことはたくさんありますから、そういうものがもっとあってもいいのではないか。
 理科以外の教科との連携とか、科学の社会的な役割とか意義とかになってきますと、歴史とか哲学とか倫理なども本当は重要ではないかと思います。
 長くなりましたが、最後に、一番後のところで、これに関わるときに、教員養成・研修がやはり1つのキーで、じゃあ、大学教員がいきなり全部子供と1対1でやっていくわけにはいかないわけです。そうしたときに、キーとなってくださるのは学校教員で、そう考えますと、幼稚園とか小学校の低学年の先生で理系の素養を持った人、あるいは高学年で課題研究とかをやろうと思ったら、テストの点数が上げられる先生ももちろんいいのですが、研究をやったことがある先生が非常に重要で、博士号を持った先生などがもっと増えてくれるといいのではないかということ。
 それと、能力もそうですし、ジェンダーとか、多様な個に応じた指導とか、評価、教材の開発をもっと研究してほしいということ。
 あと、学校の中とか学校間、あるいは国際的なところで、データとか知を共有するようなシステムを作っていくことが重要ではないか。
 あと、理科の先生で行きますと、そうは言っても、学位がある人をいきなりたくさん集めてくるわけにはいかないわけですね。そうすると、学会とかに入会していただくとか、発表とかそういうのを支援するとか、そういうのも研修のプログラムの1つにしてやるとか、そういうのがあると、新しいアイデアがどんどん入ってくるのではないか。
 あと、やはりこういうデータを蓄積して分析して提言を出してくるところがもっと必要です。千葉先生のところがサイエンス&エデュケーションセンターですが、全国的に科学教育の研究の拠点センターを地区に1つぐらいとか作っておいて、そういうところで分析、傾向、そして提言とかをしていくような、そういう箇所があったらいいのではないかなと思います。
【塚本主査】  どうもありがとうございました。
 まだ30分強ございますので、千葉先生、隅田先生への御質問ですとか、事務局への御質問などを含めまして、御自由に御議論をいただければと思いますが。
【長谷川委員】  意見というより、今、隅田先生のお話にあったように、小中高の連携の強化が必要ではないかというふうに私はかねてから思っております。確かに大学の出前授業だったり、都道府県教育委員会が主導している高等学校の先生の出前授業であったりと、そういう制度はあるのですけれども、もっとフットワークを軽くして、地域の高等学校を拠点として、中学校、小学校が連携をすることが、理科の教育力を高めていくと思います。
 例えば、千葉県は、小学校の初任者を対象として、初任研修の中で1日、わずか1日なのですけれども、理科実験に対する研修をやっております。また、千葉県の教育委員会の施策として、理科実験土曜塾なるものがありまして、理科指導に苦手な教員を集めて、県内6地区だと思うのですけれども研修をやっています。そういった試みをやっているのですけれども、なかなか初任研修のように、悉皆研修はともかくとして、自由研修には参加しにくい状況がある。だとするならば、地域の高等学校を拠点として、高等学校は専門性の高い理科教員がたくさんいますので、彼らを中心として、その市内にある小学校の先生を集めて研修をやったのです。実際、今、私は千葉県立匝瑳高等学校というところに在籍をしておるのですけれども、前年度まで銚子市立銚子高等学校の校長をしておりまして、市内の小学校の先生や教育委員会に働きかけて、ちょうど理数科がありましたので、理数科の先生を活用して研修をやっていました。しかしながら、そこには大きなハードルがありまして、服務の問題等々で教育委員会が悩んでいるのです。だとするならば、もっと大きなところから、こういったことを施策としてやりなさいというふうにおろしていただければ非常にやりやすいかなと思います。
 今、初任研修や5年研修のところで、ステップアップ研修だとか、フォローアップ研修だとか、国でも施策として立ち上げておりますので、その一環としてやっていけるようになればいいのかなというふうに思っております。
【塚本主査】  どうもありがとうございます。
 立澤先生、いかがですか。
【立澤委員】  冒頭に授業中に発言しないということがありました。それから、小、中とだんだん減ってくるということですけれども、中学校も今の学習指導要領の中で言語活動の重視ということで、かなり改善はされてきてはいると思います。みんなで話し合うとか、一方的な講義ではなくて、子供たちの発言も促すということも出ています。
 ただ、先ほどもちょっとありましたが、中学校というこの時期に特有なのかもしれませんけれども、異質な存在に自分はなりたくないというようなことで、目立ちたくないという部分もあるようです。要するに、理科という教科以外の人間関係の中で、「何、あの子」ということが結構大きく左右されているのが中学校の時代だと思います。そういうところで、実は中学校の教育自体も、生活指導上、余り変わったことをする子を抑えつけてしまうことも多いのかなと、反省しております。空気を読めと言っているのは、むしろ教師の方ではないかという感じがしております。
 それから、夏休みの自由研究です。こちらもかなり小学校に比べると授業が忙しいということもありまして、中学校は減ってきてしまっています。実は私のいる区で、昨年、区内の科学コンテストを開催したので各中学校必ず何点か出しなさいということで、一斉に夏休みの自由研究が復活しました。本校でもやっていなかったものをやるようにということで理科教員が始めたら、指導の蓄積がないので、出てくるものが全く自由研究になっていないということでした。
 それから、ネットで調べるというのがやっぱり非常に大きなことで、私もそれは分かっていたので、必ず観察・実験が伴うもので写真を撮ったものを添付するということでやっています。
 例えば、ちょっと理科とそれますけれども、中学校で今年話題になったのは、読書感想文コンクールで、読書感想文作成サイトというのがあるのです。何を読んだかということを入れると、自動的にできるのです。もしばれたときの対応の仕方というのも、保護者宛てにもちゃんとあります。
 また、私は学生科学賞の方にも携わっているのですけれども、そちらの方でもどこまでが自分の考えでやったのか、どこまでも教員の指導なのか、それを見極めるのが、非常に難しいところがありまして、大学などもそうなのでしょうけれども。やはり本人と直接話をするのが一番分かるかなと思っております。
 それから、ハイ・アチーバーが学校の授業がつまらないというのも、確かに現実かなと思いました。先日も英語の授業を観察をして、教員を呼んで、この1時間の授業でやった内容で、子供たちがどれだけ満足できたかという点について指導しました。確かにある程度分かっている子にとっては満足できない、これは理科だけではなくていろいろな教科であるのは事実ですが、ただ、そうかといっても非常に低い子もいますので、それを一緒に教えなくてはいけないというのが現場の非常に厳しいところです。
 最後に研究会等への参加に関してですが、私は全国中学校理科教育研究会の会長をやっているのですけれども、やはり参加者が少しずつ減ってきています。現場が忙しいので出ていく余裕がなくなってきているというのも事実で、自らが教科の研究を進めていくというのが、以前よりも少し落ちてきているのが現場であると思います。自主的な研究サークル、あるいは学会に入るとか、その辺も何とかしなくてはいけないかなと考えています。
 以上です。
【塚本主査】  ありがとうございます。
 宮浦先生、いかがでしょうか。
【宮浦委員】  今御指摘いただいた現場の先生の負担が大きいのではないかというのは非常に懸念されるところで、恐らくそれは各ステージの教員全体にいえることなのではないかと推測しています。小学校、中学校、高校の先生方が、やはりやらなくてはいけないことがもう既にあって、その中でいろいろ工夫されている中で、いかにプラスアルファの指導をしていくか、それに時間をかけられるかというのが、時間をかけられるシステムを作らずに、余裕のある方はやってくださいという形ですと、個人的努力のキャパシティの問題もあって、なかなか手が挙がりにくくなってくる傾向が懸念されますし、何か自由設定の活動を現場の負担感の更に上塗りすることなくできるようなシステムがないと難しいのかなという印象があります。それは大学にとっても同じでございまして、大学の教員が通常の教育・研究・管理・運営をやりながら、今度は、高大連携をやる、イベントをやる、出前授業に行く、といったように、いろいろなものがどんどん増えていくわけです。様々な活動をやりたいという気持ちと、絶対やらなくてはいけないこととの時間的な兼ね合いというのでしょうか。時間は有限ですので、優先順位が当然出てしまうわけなのですけれども、こういう活動はプラスアルファではなくて、国家的戦略で絶対優先順位の非常に高い位置付けを、連帯感を持って認識をすることによって、大学ですと、講義をやって、研究をやって、その他、時間があったら出前授業、誰か行ってもらえませんか、私は無理ですみたいな、そういう話ではなく、優先順位が高いところ、小学校から大学へ向けての優先順位が非常に高いシステムを構築すると、現場の先生方、大学の教員も含めて、非常に授業がやりやすいのではないかと思います。余裕のある方が手を挙げるのではなくて、国力増強の極めて優先順位が高い仕事であるという認識を現場の教員が持つにはどうしたらいいかというのも重要なファクターなのかなと思います。恐らく各ステージの先生方、非常にお忙しい、また生徒指導などで、優秀な生徒だけ引っ張っていられない現状もあるのではないでしょうか。中間層の数は多いですし、全体レベル低下も見過ごすわけにもいきませんし、そういうことを何かシステム上の工夫があるといいなというふうに思います。
 大学として、先ほど、隅田先生のお話の最後の提案のところで、これもよく議論になるところですけれども、非常におっしゃるとおりだと思いましたのが、Ph.Dの博士号を持った研究者が理科教育に関われない、関わりにくいシステムがあって、まず教員免許がないのです。博士号は持っていても、学生時代に教員免許を取っていなかったということは、理科を教えられないわけです。中学、高校の免許を持っている方はおります。ただ、小学校の免許は取れませんので、別途勉強した方、通信教育その他何かやった方でない限り、小学生には指導はできないわけです。そういうこともあって、何かそこの溝を埋めるようなことがあると、例えば博士号を持ったPh.D.コースの学生のキャリアパスをいかに多様性を持たせるかというのが人材委員会でも問題になっていまして、どうしても先端研究に走る傾向があって、大学や各種法人のポストは限られていますので、しかも任期制が入ってきて非常に厳しい中で、再チャレンジも非常にしにくいということもあり、博士号を持った研究者がもっと教育の現場に関われるような、それが別に教員免許を取り直して教諭として入っていく以外にも、先ほどおっしゃった全国的な科学教育拠点センターのようなものですとか、理科教員の研究会のような場を通して、そういう活動に具体的に参加できるとか、そういう場の設定があれば、恐らく博士号を持った研究者がどんどん教育へ参入してくるのではないかと思います。実際、大学でやる理科イベントみたいなもの、科学イベントのようなものに高校生とか中学生に来ていただくと、大学院生が結構目を輝かせて活動してくれるのです。いつも教員に指導されて怒られているわけですが、生徒さんに対しては、お兄さん、お姉さん、すごいねと言われて、喜々として指導しているのです。それを見ますと、すぐ教諭としてということでなくても、そういう教育センターのような形で関われる場があれば、それが現場の理科の教諭の先生方の負担軽減にもなるでしょうし、例えば中学、高校を対象に学校単位でやってきた授業で、採択校がやるというだけでなく、そういう関わりを作っていただけると、大学の研究者も非常に参加しやすいと感じました。
【塚本主査】  ありがとうございます。
 隅田先生、千葉先生、多分また言い足りないことがたくさんあるのではないかと思いますが、何かございますでしょうか。
【千葉主査代理】  今の宮浦先生のお話の中で、若い子を教育現場に入れるというのは、それは是非必要なことで大賛成なのですけれども、リタイアした人も結構資質の高い人がいるので、教育に適した人をスクリーニングするシステムでちゃんと現場に入れていって、そして課題研究等の指導を安くやらせるみたいなものも非常に効果的なのではないかとは思います。
【宮浦委員】  私も賛成でございます。特に研究者というよりは、企業で定年された方、例えば60歳プラスアルファぐらいの方が、社会貢献ということでいろいろな活動をなされていると思うのですけれども、その中で具体的な地域を生かした科学教育というところに、もう少し踏み込んでいただけるようなシステムがあれば、より有効活用と言うと失礼ですけれども、現場に携わっていただけるような形があるとありがたいです。
【塚本主査】  企業も65歳まで再雇用するのですが、60歳を過ぎるとかなり給料が下がってしまうので、自分でほかのことを始める方も多い状況です。そういったかたたちが地域への貢献という意味でもやっていただけるといい方向になることもあるかもしれません。
 ほかにいかがでしょうか。
【長谷川委員】  今の企業のリタイアした人の活用ということなのですけれども、私、千葉県の方でも地方部に住んでおりますので、そうなってくると、地域間の格差が生じてしまうのかなというふうに思っています。
 実は全国的な取組であったかと思うのですけれども、過去、小学校に理科支援員という制度があったかと思います。いつしか消えてしまったわけですけれども、同様に教員の中でも、特に高校の教員の中には、課題研究等の指導をできる教員がたくさんおりますので、そういった方にまた復活をしてもらえればなというふうに思っております。
 どうしてもSSH校等では、都市部の有力校が認定、指定をされる傾向がありますので、地方の才能を発掘する意味でも、そういった形も必要なのかなというふうに思っております。
【塚本主査】  高校の先生は、自分たちのなさっていること以上に、お忙しい中、あちらこちらに行くお時間というのはとれるのでしょうか。
【長谷川委員】  多分、小中の先生よりも高校の教員の方が時間が自由になるのかなと思います。ましてや地域の子供らが小学校で教育を受けて、中学校で教育を受けて、地域の学校に行きますので、その先取りということで、小学校の方に指導に行くことに関しては効果的であると思います。特に小学校の先生の中では、千葉県内の調査によりますと、文系出身者が多いですので、50%以上の先生が理科の指導に自信がないということで、じゃあ、学校の中でその先生を指導できる教員がいるかというと、そうではない。だとするならば、専門性を持つ高校の教員が小学校の先生を指導して、その先生が小学生を指導していくというふうな積み重ねが最終的には優秀な人材を育成していくのかなというふうに考えております。
【塚本主査】  隅田先生、いかがですか。
【隅田委員】  私、たくさんお話しさせていただきましたが、1点加えると、先ほどの講師間の連携も重要なのと、もう1つ、教科間の連携もすごく、学校は実は特性なのです。大学以上に、ある意味、異領域間のうまいプロジェクトというのができるところで、例えば大学において国際連携で何かをしようとしますと、英語ができるのかどうかとか、個別対応にどうしてもなりがちなのですが、学校で今、愛媛大学附属などはほかの外国の学校と提携を持っているのですが、そうすると、理科の専門家もいますが、英語の専門家もいますし、いろいろな教科の先生方がそれぞれ持ち味を出してやると、非常に面白い連携が比較的やりやすいのです。なので、理科で何かプロジェクトや課題研究などをやるときは、専門家として高校の先生に来ていただいてもいいですし、それを英語で発表しようと思ったら、自分たちではできなくても、英語の先生に入っていただいてもいいのだと思います。そういう教科間の枠なども少し取り払うとまた面白いものができるかなとは思います。
【宮浦委員】  教科間連携のお話があったので、先ほどちょっと頭にあったことを思い出したのですけれども、科学教育における国語の重要性が、どうしても文系、先ほども文系・理系の決まっていなかった生徒さんが文系に流れるというお話があったのですけれども、大学側としては、国語の重要性が理系の学生にかなり欠落している部分はあります。数学、物理は非常にできるのですけれども、3年生ぐらいになって文章を書いてもらうと、相当添削しなくてはいけないという現実もあって、国語教育の重要性、もちろん英語も重要ではありますが国語は大変大切だと思います。そのあたりが、どうしても入試科目に引きずられてしまうのですけれども、文章力をつけるよりも物理で点数をとらなくてはいけないというようなニュアンスが非常に強くて、そのあたりも本質的に優秀な次世代を育てるには、やはり言語能力、もちろん英語もですが、国語をいかに刷り込んでおくかというのが、基本的なところは中学から高校なのだろうなと思いますが、もしかしたら小学校かもしれません。そのあたりをもし共通認識が得られるとありがたいと思います。
【塚本主査】  一般的な能力として必要なのかもしれないですね。先ほどから女子児童・生徒など、リケジョ的な話があり、自分に対する意識が厳しいという話があったのですが、実際現場でも、女子生徒と男子生徒は大きく違うものなのでしょうか。
【立澤委員】  授業をやっている限りでは、そう違いはないのですけれども、先ほど言った人間関係上、異質になりたくないという気持ちは女子の方が高いので、そういうのもあります。
 ただ、そういう環境になってしまった学級集団は確かに発言もしないのですけれども、そうではない集団を作れれば、それは自由に発言できるし、教師が多少のアイデアを持って授業をやればできると思うのです。
 ただ、中学校の現場というのは、生徒指導で荒れているところもいっぱいありますし、授業規律を確保するというのは大前提になっておりまして、したがって、ざわざわとなると、もう本能的に教員が反応してしまって、「静かにしろ」という状況になるわけです。ですから、もしかすると、そのことが発言だとかいろいろなところにブレーキをかけている可能性もあるかもしれないです。生活指導上大変になったことを経験した教員ほど警戒心が強いということもあるかもしれません。ちょっと本質とは違うかもしれませんけれども。
【塚本主査】  難しい問題であることがよくわかりました。
【長谷川委員】  高校現場では、本校は理数科がありまして、あと、普通科も2年生から文系、理系に分かれるのですけれども、正直、女子生徒の数は理数科にしても理系にしても少ない。けれども、彼女たちは、目的意識を明確に持っておりますので、一生懸命努力をする。最終的に大学に行って、大学院に行ってとなると、今度は生活設計の部分に関わる部分がどうやら出てくるようで、どうやら資格取得に走って、例えば医歯薬看護系の方に進学をする傾向が強いのかなと思います。
【塚本主査】  ありがとうございます。
【隅田委員】  では、関連して。SSHのデータが随分と出てきたので、それを分析した報告書が出ています。それを見ますと、男女別に平均的な女子生徒の理系進学率と、SSH校の女子生徒の進学率を比較すると、3倍ぐらい違うのです。男子生徒よりも女生徒の方が高いのです。
 私が愛媛県で関わっている宇和島東という高校で評価をやったところ、やはり2年生から3年生ぐらいにかけて、男子生徒も伸びるのですが、女子生徒のところが大きく上がるのです。ああいう施策は意外と女子生徒に効果が高い可能性があるかなとはちょっと思っています。
【塚本主査】  面白いですね。SSH出身の学生さんとかはお茶の水女子大学に多くいらっしゃいますか?
【千葉主査代理】  それは残念ながら余り来ないのです。本当に残念ですが。SSHはすばらしいと思います。やはりプレゼンも上手で、積極的な子が多いですから。ただ、お茶大の場合は、やはりどうしてもペーパーテストができなければならないみたいな感じで捉えられているのかもしれないようで、今後、大学も変わらなければならないなと今考えているところです。
【塚本主査】  宮浦先生のところはいかがですか。
【宮浦委員】  女子大のお話を今伺ったら意外でございまして、お茶大が過去にすばらしい女性人材、科学者を大量に輩出されておられるので、女子の集団の方がもしかしたらリーダーが育ちやすいのかなというイメージも持っていたのですけれども、そうでもないのかもしれないなと思いました。
 あとは、よく女子中高生理系進路選択授業というのに関わっているのですけれども、進路に与える影響を調査したデータがありまして、男子生徒さんに比べて女子生徒の場合は、御両親の意見に大きく左右されるというデータがあったと思います。恐らく理系、文系の選択のとき、あるいは入学、学科の選択のとき、あるいは学部の選択のときに、御両親の意見として、理系はちょっとやめておきなさいとか、あるいは、理系だったら資格が取れるところにしなさいとか、女子の方が両親の影響を受けやすいというデータがあったと思います。
 実際、私のところは工学部で、物理工学に進学して入ってきている女子学生などは非常に積極的でいいのですけれども、物理ですと、工学部でもいいですし、理学部でもいいですし、いろいろな選択肢があるわけです。なぜ工学部へ来たかというと、両親が工学部の物理の方が就職に結びつきやすいとか、そういう両親の一言が影響するらしいのです。男子よりも女子の方が両親の一言に影響されやすいというデータはありますので、それをうまく活用する必要があるかなとは思っております。
【塚本主査】  隅田先生から御説明いただいた家庭環境のところで、もしかしたら親に向けてのメッセージも要るのかもしれないですね。
【宮浦委員】  そうですね。影響力が結構大きいと思います。
【塚本主査】  女性の方が両親とよく話をするのですか。
【宮浦委員】  そうですね。高校ですといかがですか。
【長谷川委員】  子供の性格だと思います。
【塚本主査】  一律にジェンダーの話ではないということでしょうか。
【長谷川委員】  はい。
【塚本主査】  そろそろお時間でございます。
 貴重な御意見をたくさん頂きましてどうもありがとうございました。
 本日頂いた御意見を事務局で整理していただきまして、今後の作業部会での議論に生かしていただきたいと思います。
 最後に事務局より、今後のスケジュールについて御説明を頂きます。
○資料7に基づいて事務局より今後のスケジュールについて説明。
【塚本主査】  ありがとうございます。
 それでは、本日はこれにて閉会いたします。どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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