生命倫理・安全部会(第53回) 議事録

1.日時

令和5年8月31日(木曜日) 13時00分~15時00分

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 総合科学技術・イノベーション会議報告第三次報告を踏まえたヒト胚関係指針の見直しについて
  2. その他

4.出席者

委員

小川部会長、梅澤委員、大岡委員、大須賀委員、金井委員、神里委員、久慈委員、小板橋委員、霜田委員、祖父江委員、日山委員、深見委員、三浦委員、吉田委員、米村委員、渡辺委員

文部科学省

釜井ライフサイエンス課長、畑山安全対策官、市原室長補佐

5.議事録

【小川部会長】  それでは、ただいまから、第53回科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会を開催いたします。
 委員の皆様方におかれましては、お忙しい中、御出席を賜り、ありがとうございます。
 まず、事務局より、本日の委員の出席等の連絡事項の確認をお願いします。
【市原室長補佐】  事務局でございます。私、文部科学省生命倫理・安全対策室、市原です。よろしくお願いいたします。
 本日は、16名の委員の皆様に御出席をいただいておりますので、定足数を満たしております。なお、戸田委員におかれましては御欠席、大須賀委員におかれましては14時で退席されるという御予定です。
 本日ですが、Webを併用して開催させていただきます。会場からは、小川部会長と、事務局から、ライフサイエンス課長釜井と安全対策官畑山、そして私市原が出席しております。本会議の模様はYouTubeにて配信しておりますので、御承知おきください。
 次に、配付資料の確認をさせていただきます。オンラインで御出席の委員の皆様は、事前にお送りさせていただきましたPDFファイルにて資料を御確認ください。資料は8点、参考資料は8点ございます。不明な点がございましたら、事務局までお知らせください。
 また、本日ですが、御発言時以外はマイクをオフ、御発言の際は、挙手ボタンを押していただき、部会長の指名の後に御発言をお願いいたします。なお、本日は速記者が入っておりますので、会議の中で御発言をいただく際は、お名前をお伝えいただき、その後に御発言をお願いできればと思います。
 事務局からは、以上でございます。
【小川部会長】  それでは、議題(1)、総合科学技術・イノベーション会議報告第三次報告を踏まえたヒト胚関係指針の見直しについてに入ります。
 事務局より、御説明をお願いします。
【畑山安全対策官】  文部科学省生命倫理・安全対策室の畑山でございます。私から、資料の説明をさせていただきます。
 資料53-1-1を御覧ください。CSTI第三次報告を踏まえたヒト胚関係指針の改正案につきまして、これまでも本部会で御議論いただきましたけれども、今回、パブリックコメントを踏まえた最終案について、審議いただきたいと考えております。
 では、説明に入らせていただきます。ほぼおさらいという形にはなってしまいますけれども、まず、背景につきまして、説明させていただきます。令和4年2月1日に、CSTIにおいて「「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」の見直し等に係る報告(第三次)」が決定されております。これまでヒト胚の取扱いについては、CSTIにおきまして科学的合理性及び社会的妥当性に見合った研究につきましては容認するという考えが示されてきておりましたけれども、今回、第三次報告において容認された研究は、この箱に囲んでありますとおり、ゲノム編集技術等を用いた遺伝性・先天性疾患に関する基礎的研究、それから、核置換技術を用いたミトコンドリア病に関する基礎的研究、これらにつきまして新たに研究用に受精胚を作成してもよろしいということでございます。
 実際の見直しですけれども、まず一つ、ゲノム編集技術等を用いた遺伝性・先天性疾患に関する基礎的研究のうち、新しく受精させることにつきまして、これまでのART指針を見直すこととしております。一方、核置換技術を用いたミトコンドリア病に関する基礎的研究、こちらに新しく研究用新規胚を作成して行うものを手当てするために、卵子間核置換技術を用いる研究につきましては、ART指針の対象となりますので、ART指針を見直す。受精胚核置換技術を用いる場合は、特定胚指針の対象になりますので、特定胚指針とクローン法施行規則を見直すこととして、これまで作業をしてまいりました。
 では、具体的な指針の見直しにつきまして、説明させていただきます。まず初めに、ART指針の見直しにつきまして、説明させていただきます。こちら(5ページ)、遺伝情報改変技術等を用いる遺伝性・先天性疾患研究、卵子間核置換技術を用いたミトコンドリア病研究をART指針の対象として手当てすることが今回の改正の見直しポイントでございます。そのため、箱の中に書いてありますとおり、新しく、ART指針の目的とする研究に遺伝情報改変技術等を用いる遺伝性・先天性疾患研究と卵子間核置換技術を用いるミトコンドリア病研究を加えることとなります。一方、これまで余剰胚に遺伝情報改変技術等を用いる研究につきましてはゲノム編集指針で対応してきておりますが、こちらとART指針の関係性が、今回、目的を追加することによって変わってくることになりました。ART指針のほうは生殖補助医療研究だけに限定した指針ではなくなりましたので、ゲノム編集指針と違うところは、受精胚を新規に作成して行う研究であるということが考えられます。ですので、ART指針は新規胚を作成して行う研究を対象とすることがきっちり分かるように、名称のほうも見直しております。「ヒト受精胚を作成して行う研究に関する倫理指針」と考えておりますが、こちら、略称としては新規胚研究指針ということを考えております。一方、それに伴いまして、ゲノム編集指針のほうは内容の改正はありませんけれども、名称について、これに対比する形で改正する方向で考えております。この場合、余剰胚を用いて行う研究であるということは明示した上で、そのうち遺伝情報改変技術等を用いる場合に限って対象となるということが分かるように、「ヒト受精胚の提供を受けて行う遺伝情報改変技術等を用いる研究に関する倫理指針」とさせていただいております。こちら、略称は提供胚研究指針とさせていただいています。
 次に、具体的な条文の見直しにつきまして、説明させていただきます。まず、研究の要件でございますけれども、目的に遺伝性・先天性疾患に関する基礎的研究を追加しております。また、研究の要件につきまして、遺伝情報改変技術等を用いる遺伝性・先天性疾患研究、それから、卵子間核置換技術を用いるミトコンドリア病研究を追加しています。また、卵子間核置換研究ですけれども、これは、第三次報告における定義を踏まえまして、「卵子から核を取り出し、その核を、他の核を除いた卵子に移植した後に受精させる技術」と規定しております。また、受精させる段階の核につきましては、紡錘体の形を取ったりとか、いろいろ、純粋に核ではない形もあり得るということで、「核」の定義について議論ありましたけれども、その詳細につきましては、指針に記載するのではなく、ガイダンスのほうで規定したいと考えております。
 定義ですけれども、先ほど説明したように、卵子間核置換技術の定義を規定しております。
 次に、インフォームド・コンセントに係る説明ですけれども、こちら、所管省庁につきまして、実はこの改正の前にこども家庭庁ができたことによりまして、所管省庁が厚生労働省及び文科省が、現行ではこども家庭庁長官及び文部科学大臣というふうになっておりますけれども、今回の改正で遺伝性・先天性疾患研究の部分が入ってまいりますので、こちらは厚生労働省の所管となっておりますため、厚生労働省を追加する改正をいたします。
 次に、医療の過程にある提供者から卵子の提供を受ける場合ですけれども、これまでART指針は生殖補助医療研究に限っていたということもあり、入手するのも生殖補助医療の患者さんということで規定していましたが、今回、遺伝性・先天性疾患の治療を受けているということもあり得ると考えておりますので、こちらは、説明補助者の規定ですけれども、生殖補助医療だけではなくて、遺伝性・先天性疾患研究を行う場合には、そちらに詳しい深い知識を有している方も追加しております。
 次に、生殖補助医療研究を行う研究機関の基準ですけれども、遺伝性・先天性疾患の場合には、遺伝性・先天性疾患に読み替えて適用する規定を追加しております。また、卵子間核置換技術を用いる場合にあっては、当該技術に十分な実績・技術的能力を有することを追加しております。
 続きまして、研究責任者ですけれども、こちら、遺伝性・先天性疾患を行う場合の要件に、先ほどと同様、生殖補助医療研究を行う場合の要件を準用する規定を新設しております。その際、卵子間核置換技術を用いる場合は、遺伝情報改変技術と同様に、その技術に関して十分な知見を有するということを規定しております。
 先ほどの見直しで主治医の定義を削除しておりますので、今回初めて「主治医」というワードが出てくる、この(第4章)4項に規定しております。一方、これは前回の部会以降に見直した部分ですけれども、倫理審査委員会の部分に、遺伝性・先天性疾患に関する研究計画を審査する場合には、遺伝医学の専門家に意見を求めることということを追加しております。こちら、ゲノム編集指針のほうには同様の規定が書かれているのですけれども、ART指針の今回の見直しでは規定していなかったということで、今回、追加することにいたしました。
 次に、研究計画の実施のパートでございますけれども、こちら、所管省庁に厚生労働省が入ってきますので、そちらを追記しております。
 ART指針の見直しにつきましては、以上になります。
 続きまして、特定胚指針の見直しにつきまして、説明させていただきます。内容といたしましては、受精胚核置換の研究で研究用に受精を新たにしてもいいということを認めることとするということでございます。
 初めに、定義ですけれども、この実験に使わせていただく試料を提供いただく医療機関ですが、「提供医療機関」はこれまで受精胚のみ規定していたのですが、ヒトの生殖細胞も同様に提供いただく機関を、ここに一本化しております。それに伴いまして、「未受精卵等提供医療機関」を規定する必要性がなくなりましたので、削除しております。
 続きまして、今回の内容の改正には関係ない、クローン胚の作成のパートですけれども、こちらも、今回の改正に伴いまして、並びを合わせるということで改正するところがございます。説明は省略いたします。
 体細胞、クローン胚の規定と動物性集合胚の規定ですけれども、こちらも並びで、電磁的方法による同意の取り方ですとか、そういったところについて改正しております。説明は後ほど行います。
 ここ(22ページ)からが今回の改正ポイントですけれども、ヒト胚核移植胚の作成の要件につきまして、ヒト受精胚の新規の作成を可能としましたので、生殖細胞の要件を新たに設ける必要が出てきました。そのため、委員会での議論におきましては受精胚の凍結保存をどうするかということを議論していたのですけれども、こちらにつきまして、最終的には受精胚の凍結保存の要件というものを引き続き規定することといたしました。余剰胚として提供いただいた受精胚は入手する時点で既に凍結されているということもあると思いますし、同意の撤回期間を確保するため、そのまま凍結保存するということとしております。そのため、十七条の5項の一号から三号までに、「提供を受けたヒト受精胚を用いる場合は、」というふうに限定しております。一方、「受精後十四日以内のものであること」、こちらは、余剰胚、新規胚、どちらも受精後14日以内の培養期間は守るということで、ここは残しております。生殖細胞の入手の要件につきましては、ART指針をほぼ準用という形を取っております。
 続きまして、今回、新規胚を容認したわけですけれども、こちらを作成する場合であっても、研究に必要不可欠な数に限るということを規定いたしました。また、これも委員会で御議論いただいた点ですけれども、分割して作成した胚をヒト除核卵の作成に使用できることとしました。こちら、CSTIのほうでも御議論いただきまして、最終的には、第二次報告、第三次報告の補遺という形でCSTIにて決定いただきました。その内容ですけれども、受精胚核置換の定義につきまして、もともとの第二次報告、第三次報告における定義では、読み上げますが、「受精胚(1細胞期)から核を取り出し、その核を、他の核を除いた受精胚に移植する技術。」とあったのですけれども、こちらを、「受精胚(1細胞期)又は受精胚の胚性細胞(胚から搾取された細胞又は当該細胞の分裂により生ずる細胞であって、胚でないものをいう。)から核を取り出し、その核を、核を除いた他の受精胚、未受精卵又は卵割期の受精胚を分割した胚に移植する技術。」と、修正いただいております。
 次に、ヒト受精胚の提供者の同意の件につきまして、説明させていただきます。まず、「ヒト受精胚」を、生殖細胞も提供いただくということも含めるために、「ヒト受精胚等」と修正しております。また、IC(インフォームド・コンセント)の方法につきまして、同意を電磁的方法により取ることができることと改正しております。箱の中の一番下ですけれども、こちら、同意撤回期間を保障するために現行ではヒト受精胚を30日間保存するというふうに規定しておりましたが、こちらを、「ヒト胚核移植胚作成者に移送しないこと。」と、改正いたしました。どういうことかといいますと、もともと、この30日間保存するということですけれども、ガイダンスで、この保存は、凍結保存であって、移送しないで提供医療機関内に置いておくことを意味するというふうに説明しておりました。つまり、提供医療機関に、凍結保存、置いておくことによって、実質、核移植胚を作成する人の手に渡らないので、その期間については研究が進むことは絶対ないということで、少なくとも、その期間、30日間は同意を撤回できるというふうに規定していました。今回、新しく受精胚、新規胚を作成することを可能にしたということですので、場合によっては卵子の摘出手術前に自発的な卵子等の提供の申出があるということも期待されます。このとき、生殖細胞を提供いただいて実験のために新たに受精するということを考えた場合、わざわざ凍結保存をしなくてもいいということもありますので、そういった場合も含めて同意を得た後、ヒト胚核移植胚作成者に移送しない、これをもって同意撤回期間を担保することといたしました。
 次ですけれども、同意を電磁的方法により行うことができるよう、規定を追加しております。また、「ヒト受精胚」を、生殖細胞も入るように、「ヒト受精胚等」と修正しております。また、同意撤回期間の確保につきまして、移送前は提供者が同意を撤回できるということを明確に規定しております。
 以上が、特定胚指針の見直し内容でございます。
 これ以降はクローン法施行規則の改正案になりますけれども、こちら、これまで説明しました電磁的方法によるICができるように、「書面」といった紙を表す言葉を「説明書」に言い換えたり、生殖細胞の入手につきまして読めるようにといった、技術的な改正をしております。
 改正案の説明は、以上でございます。
 引き続きまして、パブリックコメントの結果等につきまして、説明させていただきます。こちら(資料53-1-2)は、ART指針の改正案につきましていただいた、パブリックコメントでございます。計5件、御意見いただいております。この御意見の概要と、国の考え方について、説明させていただきます。
 まず、一つ目のコメントでございます。こちら、研究の範囲ですけれども、遺伝性・先天性疾患研究といった場合に、特定の遺伝子の異常等による疾患に限定することなく、基礎的な研究を対象とすべきではないかといった御意見でございます。こちらの回答といたしまして、今回、あくまでも容認された研究の目的といたしましては、遺伝性・先天性疾患の病態解明ですとか治療法の研究に限るのですけれども、その研究内容としては、例えば、ゲノム編集の効率ですとか正確性を向上させる研究、こちらは治療法・予防法の開発のためということであれば、認められる対象となるというふうに考えられます。実際、個別の研究計画が指針に適合しているかどうかということにつきましては、それぞれ研究機関の倫理審査委員会ですとか国の専門委員会で確認をすることになるというふうに回答したいと考えております。
 次ですけれども、改正の趣旨には賛同するということでしたが、こちら、実績がヒトと動物の両方で必要なのではないかというふうに間違った捉え方をされていたコメントでございまして、それに対する回答といたしましては、ヒトと動物、両方ではなくて、「若しくは」ということで規定しておりますので、両方の研究実績を有することは求めていないということで回答をしたいと考えております。
 次のコメントですけれども、「提供されたヒト受精胚は死ぬため、倫理的な観点から研究は実施するべきではない。」というコメントでございます。こちらにつきましては、ヒト受精胚を用いた研究につきましては、CSTIの生命倫理専門調査会におきまして慎重に議論が行われた結果、科学的合理性、安全への配慮、社会的妥当性、これらの条件を満たす研究に限り容認してきたと考えております。ですので、こういった考え方に基づいて、我々としても、指針を定め、運用を行っていきたいと考えているということを回答しております。
 次のコメントですけれども、指針の名称に対するコメントです。ART指針の改正案、「ヒト受精胚を作成して行う研究に関する倫理指針」ということであると、「作成して行う」ということで、ヒト受精胚を作った後にその受精胚を使って行う研究というふうに見えるので、そうしないほうがいいのではないかということですけれども、これまで委員会でも大分、この名称の関係は御議論いただきました。ART指針は、新たに受精を行う研究、ゲノム編集指針につきましては、余剰胚を活用する研究、こういった整理で今の名称案とさせていただいておりますということを説明しております。ただ、研究者に対して分かりづらいのではないかという御指摘についてはごもっともだと考えておりますので、しっかりと周知をしてまいりたいと考えております。
 次に、「14日ルール」ですけれども、今回の見直しでは、関係ないといいますか、改正内容にはないのですが、今後、「14日日ルール」というものを見直していく必要があるのではないかというコメントでございます。「14日ルール」の見直しにつきましては、現在もCSTIの生命倫理専門調査会におきまして今後の検討事項の論点の一つとして挙げられていると認識しております。ですので、CSTIのほうで結論をいただければ、それに対応して我々のほうでも指針改正等を進めていくことになろうかと思います。
 最後のコメントですけれども、食物に関しても同様であるが、ヒトの受精胚にゲノム編集で手を加えるということは神の摂理に反するということで、大反対であるというコメントでございます。こちらも、同様の回答になりますけれども、CSTIで慎重な検討をいただいた上で出された結論なので、我々としては、これは受けまして、しっかりと指針の改正を行い、運用してまいりたいと考えております。
 以上が、ART指針に対するパブリックコメントでございます。我々といたしましては、このコメントを受けまして、改正案を修正する必要があるコメントはなかったと認識しておりますので、改正案につきましては以前と同様のものでございます。内容につきましては、先ほど説明資料において説明させていただいたとおりでございます。
 続きまして、特定胚指針のパブリックコメントの説明をさせていただきます。資料53-1-4になります。こちら、3件、提出がございました。
 まず、一つ目ですけれども、提供者の同意を取る手続について、今回、電磁的方法により行うことを可能とするという改正を行うわけですが、こちらにつきまして、システムについてはセキュリティーを完備したものにする必要があるのではないかといったようなコメントでございます。我々の考え方といたしましては、特定胚指針の対象となる研究において同意を得る対象ですけれども、それほど大人数にはならないのではないかと考えております。ですので、特定胚指針の対象となる研究をする同意を得るためだけにセキュリティーを完備したシステムを構築するということは必要ないというふうに考えております。コメントの中に、同意を得ることができるのは提供者が了解したときとされているけれども、説明もそうではないのかと、こういったコメントがあったのですが、当然ながら説明と同意はセットでございますので、説明についても提供者が了解した場合のみ電磁的方法によることになるというふうに考えています。また、先ほどの話ですけれども、システムを改めて整備する必要はないと考えておりまして、例えば、リモートでのテレビ電話等で、身分証の確認、それを画面上で確認する等で確実に行われるのではないかというふうに考えております。これらについては、ガイダンスのほうで詳細につきましては説明させていただくことにしております。
 次に、規制を緩和してほしいというシンプルなコメントですけれども、こちらについては、CSTIの生命倫理専門調査会で議論され、出された方針にのっとりまして、我々、指針を手当てするということになっておりますので、CSTIが示した方針に基づきまして、我々としても速やかに関連する指針の制定・見直しを行っていくように努力してまいりたいと考えております。
 次に、最後のコメントとなりますけれども、施行規則の改正、様式の改正につきまして、法人の場合には法人番号を記載したほうが公正性に資するのではないかというコメントでございます。法人番号につきましては、指針の適合性を確認するために必要な内容かというと、そうではないというふうに考えておりますので、これまでどおり記載を要しないという整理にさせていただいております。
 パブリックコメントは以上でございまして、こちらのほうも改正案を修正する必要があるコメントはないというふうに認識しております。そのため、ART指針、特定胚指針ともにこのパブリックコメントで何か修正をするというようなことはないというのが結論でございます。
 説明は、以上でございます。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 それでは、本件について、御質問や御意見等がございましたら、お願いいたします。
 米村先生、どうぞ。
【米村委員】  米村でございます。1点だけ、ART指針の改正案につきましてお尋ねいたします。以前、こちらの生命倫理・安全部会の会議におきまして、私から、全ての研究計画についてこども家庭庁、文部科学省、厚生労働省の3省庁の確認を取らなければならない手続にするのは過剰ではないかという意見を申し上げ、御対応いただける旨の御回答が事務局よりあった記憶があるのですが、本日提示されている指針の改正案を拝見しますと、やはり全ての研究計画について3省庁全ての確認手続が必要となるという書きぶりになっているように見えます。この点はどうなっているのかにつき、御説明いただけるとありがたく思います。よろしくお願いいたします。
【畑山安全対策官】  御説明いたします。結論から申しますと、厚生労働大臣が審査に入るのは遺伝性・先天性疾患研究に限るという整理にしております。どこで規定しているのかということですが、説明資料(53-1-1)の9ページ、今、画面に出しますけれども、こちらは所管省庁が一番最初に出てくるところですが、ここで「厚生労働大臣にあっては、遺伝性又は先天性疾患研究に係る部分に限る。以下同じ。」というふうに規定をしておりまして、要は、この後出てくる審査の段階でも、厚生労働大臣が入るのは遺伝性・先天性疾患研究に限るという整理にしております。文科省とこども家庭庁は全ての審査に携わるという整理にしております。
【米村委員】  なるほど。「以下同じ。」という書き方が、法令の書き方としてはやや曖昧で、どこの部分について「以下同じ。」なのか、これだけ見ると分かりにくいような気がしましたが、しかし、御趣旨は分かりました。ありがとうございました。
【小川部会長】  ほか、いかがでしょうか。
 神里先生、どうぞ。
【神里委員】  今回、特定胚指針において電磁的方法による同意の取得も認めるということになるわけで、その詳細についてはガイダンスに記載していただけるということなのですけれども、ART指針には既に電磁的方法による同意取得についてガイダンスにも記載されています。しかし、その内容はいわゆる医学系指針のガイダンスがそのままが貼られている状態になっています。それゆえに、単にホームページでの掲載だとか、メールで送ればいいとか、そういうものも含む内容になっています。ヒトの受精胚を用いる研究というのは、体細胞を用いる研究とは違う、特別な配慮をするというのが大前提ですので、そこの書きぶりというのはこの機会にART指針のほうも変えていただきたいですし、また、特定胚のほうも特定胚指針に合ったガイダンスの内容にしていただきたいと思いますので、この点、どうぞよろしくお願いいたします。
【畑山安全対策官】  私の思いは神里先生と同じですので、検討してまいりたいと思います。
【小川部会長】  ほか、いかがでしょうか。
 金井先生、どうぞ。
【金井委員】  金井でございます。まず、御説明、どうもありがとうございました。大変よく分かりました。1点、確認させていただきたいのですが、第3章のICの手続、先ほど出していただいたスライドの「第3 医療の過程にある提供者からの卵子の提供」ということで、今回、新規胚ということなので、卵子とともに精子提供ということも考えられるかと存じますけれども、そちらについて少し御説明いただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。
【畑山安全対策官】  先生、特定胚のほうですか。
【金井委員】  ART指針です。こちらのスライドで結構でございます。新規胚ということですので、恐らく卵子とともに精子ということもあるのですけれども、そこに関しては特定の規定がないという解釈でよろしいのでしょうか。
【畑山安全対策官】  ART指針は、もともと研究の中で新たに受精させてよいという指針ですので、生殖細胞の提供の在り方についても、現行で既に規定されております。今回の改正案では改正した部分だけしかお示ししてないので見えないですが、精子を入手する場合にも、しっかりとICを取るということは規定されております。ただ、精子に関しては、入手するのに手術等が必要なわけではございませんので、規定については大分あっさりとしていたかと思います。
【金井委員】  承知いたしました。ありがとうございます。
【小川部会長】  小板橋先生、どうぞ。
【小板橋委員】  御説明、ありがとうございます。先ほどの米村先生の御質問のところで、私、理解ができなかったのですけれど、厚生労働省が関与するのはどことおっしゃいましたか。
【畑山安全対策官】  資料53-1-1の9ページ、こちらはICの説明になりますが、こちらのところで初めて所管省庁が出てくるのですけれども、こちらで「こども家庭庁長官、文部科学大臣及び厚生労働大臣により確認されていること。」というフレーズが出てくるのですが、ここに、「厚生労働大臣にあっては、遺伝性又は先天性疾患研究に係る部分に限る。以下同じ。」というふうに規定をしております。ですので、これ以降に出てくる厚生労働大臣はすべからく遺伝性・先天性疾患研究に係る部分に限るということになりますので、後ろのほうの研究計画を実際に審査するところでは「厚生労働大臣」というふうに裸で書いておりますけれども、ここにつきましても遺伝性・先天性疾患研究に関係するときだけ厚生労働大臣に出すという解釈になります。
【小板橋委員】  分かりました。ありがとうございます。遺伝性又は先天性疾患研究じゃないものってあるんですか。
【畑山安全対策官】  もともとART指針の対象は生殖補助医療研究ですので、そちらの場合には厚生労働省に出さなくてもいいという整理です。
【小板橋委員】  これはARTだからということですね。なるほど。了解しました。ありがとうございます。承知しました。
【小川部会長】  ほかにいかがでしょうか。
 私のほうから、一つよろしいでしょうか。特に、久慈先生、大須賀先生にお伺いしたいのですけど、卵子という言葉が出てきて、卵子置換等々が出てくるのですが、学術的には、受精するときは卵子にはまだなってないということなのかなと思うのですけど、この辺の言葉に関する話題というか、解釈というか、議題になりましたでしょうか。
【久慈委員】  久慈ですけれども、用語は多分、この中で規定されているのだと思うのですが、一般的に言えば、「受精卵」という文言は出てきますから、受精する前の卵子が「卵子」ということになるんだと思います。
【小川部会長】  ありがとうございます。僕も、そうだとは思っています。ただ、これは厳密にそうかどうか分かりませんけど、「卵子」と、「子」がつくと半数体ということだと、どこかの教科書で見たことがあったものですから、そうなるとちょっと齟齬があるなというふうに思った次第で、別にそこを取り立てて追求するつもりはありません。皆さんがそういう認識であればいいのかなと思っています。ただ、同時に、となると、未受精卵というか、半数体にはなってない細胞を扱うと。それはどれぐらい成長した段階の卵を扱うのかというのは問題にはならないのかなという気が若干したのですけど、逆に言うと、例えば卵原細胞なんかはこれには入ってないですよね。
【久慈委員】  そうですね。ただ、「卵子間核置換技術」という文言は出てくるので、これは成熟卵子ではなくて核のある卵核後期の卵だと思いますから、受精前の雌性配偶子は一応、成熟段階にかかわらず、入っていると考えたほうがいいんじゃないでしょうか。
【小川部会長】  もしそうだとすると、卵原細胞というか、まだ減数分裂が始まってないような細胞も含んで対象になるというか。
【久慈委員】  減数分裂の途中ですね。
【小川部会長】  途中ですか。じゃあ、減数分裂が始まってない卵原細胞は、この内容には入ってない。
【久慈委員】  それは入ってないんだと思います。どこかに多分、卵子というものの定義が書いてあるんじゃないかと思うのですけれども、第三次報告の中に見えない部分ですが、概念的には、卵原細胞以外の、減数分裂に入った、成熟卵に至るまでのものを「卵子」と呼んでいるんだと思います。
【小川部会長】  ありがとうございます。実は、用語に関しては、いわゆる学術的な用語とここに出てくる用語は僕の中ではちょっとコンフュージョンがあって、19ページの一番下のところに「<参考>クローン法第二条定義」というのがあって、「生殖細胞」というのは、精子と未受精卵という、事実上の卵子と精子というだけなんですね。一方、「配偶子」というのもあって、配偶子は精子と卵子という定義になっているんですよ。ちょっとしっくりこないなというのがありまして、以前も実は……。
【久慈委員】  確かに曖昧です。
【小川部会長】  でも、これは法律の言葉らしいので仕方ないのですけど、研究者にはコンフュージョンがあるのかなというふうに思いました。
 
【久慈委員】  先生がおっしゃるように、精子のほうを考えると、精子というのは少なくとも成熟精子しか指してなくて、その前の核ある細胞を精子と言うことはほとんどないですからね。ですけど、卵子間核置換技術と言うと、大体は核がある細胞を取って核置換をするわけですから、ちょっと曖昧というか、普通の概念とは違うような書き方になっているというのは、僕も今初めて気がつきました。
【畑山安全対策官】  そこは、法律用語にする場合、明確に定義されているということが必要ですので、それも我々役人が作っている文書ですから、我々が認識できるフレーズを使うということで今の形になっているのだと思います。ただ、考え方としては、どこまで許容されるかという研究計画自体の審査は専門委員会で行うことになりますので、実際、それが許容されるかどうかというのは、研究機関の倫理審査委員会と我々関係省庁の専門委員会のほうで議論をして、認められるということであれば、認められるという結論になるんだと思います。
【小川部会長】  ありがとうございます。細かいことを言って、申し訳ありません。
 ほか、何かございますか。
【米村委員】  米村ですけれども、今の点、ちょっとよろしいでしょうか。
【小川部会長】  どうぞ。
【米村委員】  小川先生から御指摘のあった「生殖細胞」という言葉に関しては、私は以前、CSTIのほうで定義を明確にしないと規制対象の範囲が明らかにならないのでまずいのではないかという意見を申し上げて、CSTIのほうからは対応するというふうにおっしゃっていただいた記憶があります。そこで事務局にお尋ねしますが、「生殖細胞」の定義規定は、どこかに入っておりますでしょうか。
【畑山安全対策官】  クローン法の定義は、19ページに書いてある定義になっております。
【米村委員】  これは「生殖細胞」の定義ではないですよね。提供医療機関の定義の中に「ヒト生殖細胞」というのが入っているだけで。
【畑山安全対策官】  いえ、下のほうに参考という形でクローン法第二条の定義を抜粋させていただいておりますけれども、こちらにある「生殖細胞」は、「精子(精細胞及びその染色体の数が精子の染色体の数に等しい精母細胞を含む。以下同じ。)及び未受精卵をいう」。こちらが生殖細胞の定義になっております。
【米村委員】  なるほど。法律の本体にもともと入っているということなんですね。
【畑山安全対策官】  はい。クローン法は、定義を法律に書いてあります。
【米村委員】  分かりました。それであれば結構です。ありがとうございました。
【小川部会長】  ありがとうございます。
 それ以外、ほかにございますか。
 大丈夫でしょうか。
 それでは、資料案のとおり了承することとさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。挙手というか、拍手でもいいですけど、マークが出るとありがたいのですが。
 異議なしということで、ありがとうございました。事務局においては、本日の御意見等も踏まえ、今後の手続を進めていただければと思います。
【畑山安全対策官】  ありがとうございます。
【小川部会長】  続きまして、本件の今後の予定について、事務局から御説明いただけますでしょうか。
【畑山安全対策官】  資料53-1-7になります。今後の予定につきまして、説明させていただきます。
 今、部会のほうで了解いただいたということで、次のステップに移らせていただきたいと思います。特定胚指針につきましては、CSTIに諮問・答申をするということがクローン法において位置づけられております。そのため、CSTIに対してそういった手続が必要になります。ですので、今後、生命倫理専門調査会におきまして、指針見直しの検討状況につきまして報告することとしております。こちらにつきましては、第三次報告の結果、指針の報告ということの性格もございますので、ART指針の改正案につきましても、報告させていただく予定です。その後、CSTIの本会議へ、特定胚指針は諮問・答申、併せてART指針は改正の報告をさせていただく予定です。その後、告示、施行ということになっております。
 以上でございます。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 それでは、議題(2)のその他について、事務局から説明をお願いいたします。
【畑山安全対策官】  では、その他の議題ということで、前々回の部会におきましても小板橋委員のほうから問題提起がありましたが、同意文書の保存期間につきまして、整理させていただきました。こちらの説明をさせていただきます。
 まず、クローン法の施行規則ですけれども、こちらに届出者に記録を義務づけているのですけれども、その記録をすることの中には、提供者の同意に関する事項を含むというふうに整理されております。そちらの保存期間は、特定胚を作成した後、譲渡、滅失または廃棄といった、特定胚の扱いをやめてから5年間というふうにされております。一方、クローン胚と核移植胚を作る場合には、核移植胚等の作成者に対して提供者の個人情報が移送されないことということが規定されております。こちら、作成者が同意を取る際に説明する事項の中でそういったことをうたいなさいということが規定されておりまして、つまり、作成機関の記録の保存義務につきましては、同意文書そのものには当然ながら個人情報が入っているというふうに解釈できるので、同意文書には適用されないといった解釈をせざるを得ないというところがあります。一方、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」では、情報の保存について以下のように規定しております。研究機関の長に対してですけれども、「当該研究機関において保管する情報等について、可能な限り長期間保管されるよう努めなければならない」と規定されておりまして、ただ、侵襲を伴う研究であって介入を行うものについては、少なくとも終了を報告してから5年もしくは結果を最終的に公表したときから3年、どちらか遅いほうまでの間、適切に保管されるようにきちんと監督をしなさいということが規定されております。ただ、こちらの規定の趣旨ですけれども、科学的な信頼性を保障するとか、後からその研究内容について外からの指摘に耐えられるようにといったような趣旨から、これが定められております。ですので、可能な限り長くというふうに規定されている一方、5年間というのは、カルテの保存期間も踏まえて、最低、終わってから5年は保管するようにということを規定しているということでございます。
 一方、部会のときにも議論が少しありましたけれども、日本学術会議のほうでも平成27年に考え方を示しておりまして、資料については発表後10年間、サンプルについては発表後5年間、保存することを原則とするということで位置づけられております。こちらもどちらかというと研究者自身の身を守るためというような性格が強いかと思います。
 1ページ目に戻りますけれども、特定胚を取り扱う研究というのは、それ以外の生命・医学系研究よりも情報は慎重に扱うべきと考えられます。ですので、少なくとも生命・医学系研究より短い保存期間を設定するというのは適切ではないと考えておりまして、これらを踏まえますと、研究機関としては、最初に述べました届出者が義務づけられている保存期間、5年間は最低限置いていただく必要があるかと思いますし、研究者に当たっては、自分の身を守るということが大事だと思いますので、できるだけ長く、日本学術会議でも10年ぐらいは保存しておくという考え方が望ましいのではないかと考えております。ただ、指針にこれを改めて書くかといいますと、施行規則にここまで書いてあるということもありますので、この辺を付け加えるということは考えておりませんけれども、こういった考えで各自研究者は運用していただきたいということを考えております。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 ただいまの御説明に、御質問、御意見ありましたら、お願いいたします。
 小板橋委員、どうぞ。
【小板橋委員】  小板橋です。御丁寧に対応いただきまして、ありがとうございます。研究者の方が参照しやすいように、分かりやすいところに、ガイダンスとかにも入っているといいのかなと。研究者の方が混乱しないようにしていただけるとありがたいです。よろしくお願いいたします。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 よろしいでしょうか。
 それでは、本日の議題は以上です。最後に、事務局から連絡事項がありましたら、お願いいたします。
【市原室長補佐】  では、最後に、事務局から連絡事項をお伝えさせていただきます。
 本日は、YouTubeによるライブ配信で公開させていただきましたが、後日公開します議事録が公式な記録となります。本日の議事録につきましては、事務局にて案を作成した後、委員の先生方にお諮りし、確認をいただきました後に、文部科学省のホームページにて公開させていただきます。
 また、今後の委員会の開催予定につきましては、改めて御連絡をさせていただきます。
 以上です。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 それでは、本日は閉会といたします。皆さん、ありがとうございました。

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