生命倫理・安全部会(第54回) 議事録

1.日時

令和6年3月14日(木曜日) 14時00分~16時00分

2.場所

WEB会議

3.議題

  1. 遺伝子組換え研究の規制の見直しについて
  2. その他

4.出席者

委員

小川部会長、梅澤委員、大岡委員、金井委員、神里委員、久慈委員、小板橋委員、霜田委員、祖父江委員、戸田委員、日山委員、深見委員、三浦委員、吉田委員、米村委員、渡辺委員

文部科学省

畑山安全対策官、市原室長補佐

5.議事録

【小川部会長】  皆さん、こんにちは。定刻となりましたので、ただいまから、科学技術・学術審議会生命倫理・安全部会、第54回を開催させていただきます。
 委員の皆様方におかれましては、お忙しい中、御出席を賜り、ありがとうございます。
 まず、事務局より、本日の委員の出席等の連絡事項の確認をお願いいたします。
【市原室長補佐】  事務局でございます。文部科学省研究振興局ライフサイエンス課生命倫理・安全対策室の市原です。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 本日は、Webを併用して開催させていただいており、会議の模様につきましてはYouTubeにて配信しておりますので、御承知おきください。
 本日は、16名の委員の皆様に御出席をいただいており、定足数を満たしています。大須賀委員におかれましては御欠席、戸田委員におかれましては14時20分頃で御退席となります。
 続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。オンラインにて御出席の委員の皆様は、事前にお送りしましたPDFファイルにて資料を御確認ください。資料でございますが、資料54-1から54-3の3点と、参考資料は1から4の4点ございます。不足がございましたら、事務局までお知らせください。
 本日ですが、オンラインでの御出席の委員におかれましては、御発言以外の場合にはミュート設定に、御発言の際は、「挙手ボタン」でお示しいただき、部会長の指名後に御発言をお願いします。なお、発言をいただく際には、先にお名前をお伝えいただき、その後、御発言をお願いいたします。また、システム障害などあった場合には、チャットなどにて事務局に御連絡ください。
 事務局からは、以上です。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 それでは、議題(1)、遺伝子組換え研究の規制の見直しについてに入ります。
 事務局より、説明をお願いいたします。
【畑山安全対策官】  文部科学省の畑山でございます。私のほうから、説明させていただきます。
 今回、御議論いただく遺伝子組換え研究の規制につきまして、まず、発端となった背景・目的と、それから、具体的に検討いただく事項について、説明させていただきます。
 資料54-1につきましては今後の検討体制及び検討事項について説明した紙ですが、資料54-2のほうでプレゼンを用意しております。そちらのほうで現在の遺伝子組換え研究の規制に係る執行状況について後ほど御説明させていただきますが、その後に、具体的な検討事項について、説明させていただきます。説明の都合上、資料を行ったり来たりしますけれども、御容赦いただきたいと思います。
 まず初めに、背景について、説明させていただきます。遺伝子組換え生物の研究に係る規制につきましては、「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」、通称、カルタヘナ法と申しておりますけれども、こちらによって規制されております。生物の遺伝子を組み換える、ある生物の遺伝子の一部をほかの生物に導入する、こういった研究を行う場合には、国が定める基準に則って研究を行う必要があります。具体的には、その遺伝子組換え生物が一般環境へ漏出して生物の多様性等に影響を及ぼすことがないように、一定の拡散防止措置を執る必要があります。その拡散防止措置にはレベルの高低がございまして、特に、病原性とか、感染力が高い、病原性があるウイルスのようなものとか、リスク評価が定まっていないようなウイルスを扱う場合には、研究機関において拡散防止措置を検討した後、大臣の確認を受けることが義務づけられております。研究開発段階の場合においては、文部科学大臣、我々のほうで確認をすることとしております。
 一方、新型コロナウイルスによるパンデミックの経験上、今後、パンデミックが発生した際には、迅速にワクチンとか医薬品の開発・研究を行うためには、この大臣確認制度は、時間がかかってしまうということで、それを遅らせる原因になるということが研究者から指摘されているところです。
 一方、このカルタヘナ法自体、施行されて20年が経過いたします。ちょうど、この4月1日で丸20年経つということでございます。この間、遺伝子組換え技術によって実際に作成された酵素とか医薬品も活用されておりますし、農作物を使用した食品も流通しているなど、社会情勢が変化していると言えるかと思います。また、こういった実績の積み重ね、科学的知見の集積が進んだことによって、研究現場で実際に遺伝子組換え研究を行う方々の経験も積まれてきたと考えております。文部科学大臣が行ってきた閉鎖系での研究開発の研究計画の確認の実績では、ほぼ研究機関から提案された拡散防止措置でよろしいのではないかというふうに、実際、確認を行っているということがあります。
 これらの背景を踏まえまして、この大臣確認制度は、カルタヘナ法の目的・趣旨を踏まえてリスク管理を行うということは前提ですけれども、今の状態ですと若干過剰な手続を行っているのではないかということが考えられます。よって、これらが適正かつ合理的な範囲で大臣確認という行為が行われるように、一方、先ほどちょっと触れましたけど、新型コロナウイルスのパンデミック当時の経験も踏まえて、これらのワクチンや医薬品の開発を不必要に抑制するものにならないように、見直しを考えたいと思っております。具体的には、研究開発分野に係る第二種使用の状況とか、海外の規制等も踏まえまして、実際に大臣確認を必要とする研究範囲を検討いただくということと、あと、パンデミックに対応した規定も考えていきたいと考えております。
 検討いただきたい内容についてはこの続きにあるのですけれども、ここでまず、現状について御説明したいと思います。
 まず、法律、この制度の簡単な概要について説明させていただいた後、運用の現状につきまして、御説明したいと思います。
 初めに、法律の概要でございます。カルタヘナ法は、生物の多様性に関する条約に基づく、「生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書」を担保する国内法として、平成15年に制定されまして、平成16年4月に施行されております。関係する省庁、環境省、財務省、文科省、厚労省、農水省、経産省、6省の共管法律となっております。各省入っているのは、文部科学省は研究開発段階を担当しているのですけれども、その実用化の面に関しましては、それぞれ業を所管している省庁が行うということで、財務省、厚労省、農水省、経産省が入っており、また、全ての取りまとめとして環境省が入っているということでございます。
 この法律、大きく二つの枠組みがございまして、第一種使用等と言っておりますけれども、こちらは環境中への拡散を防止しないで行うもの。つまり、普通の自然界で遺伝子組換え生物を使ったりするということであります。例を挙げますと、遺伝子組換えした農作物を圃場で栽培するといったことが考えられるかと思います。この第一種使用等を行う場合には、研究機関において、第一種使用規程、生物多様性影響評価書を作成いただきまして、それを、主務大臣、関係する大臣の承認を受けるといった行為が必要になります。主務大臣は、承認に当たりまして、審議会にお諮りしたり、パブリックコメントを聴取したりというようなことをすることとされております。今回、御議論いただくのは、この第一種使用等ではなくて、次の第二種使用等になります。
 第二種使用等といいますのは、閉鎖系で拡散防止措置を講じた上で遺伝子組換え生物を取り扱うことでございます。例を挙げますと、研究室、ラボ内で行う微生物の遺伝子組換え実験とか、こういったことが挙げられるかと思います。これは拡散防止措置を必ず取って行うように規定されておりまして、それぞれの実験のリスクやレベルに応じて執るべき拡散防止措置は変わるのですけれども、レベルいかんに関わらず何らかの拡散防止措置は全ての組換え実験で行うこととされております。その拡散防止措置は、取り扱う生物、核酸が入れられる側、遺伝子を入れられる側の宿主、それから、核酸の由来である核酸供与体、それぞれのクラスといいますか、危険性やリスクの分類に基づいて、どういった核酸防止措置を執る必要があるかということが決まる仕組みになっております。どういった場合に大臣確認の対象になるかということですけれども、拡散防止措置が定められていない場合というふうに法令上は規定しております。法令上はそういうふうな書き方をしているのですけれども、具体的には、省令のほうで、こういう場合には大臣確認の対象になるということが決められております。後ほど、詳しく説明させていただきます。
 第二種使用をする場合には、繰り返しになりますけれども、実験に用いる微生物等の特性に応じた拡散防止措置を執る必要があります。その拡散防止措置は、「研究開発等に係る遺伝子組換え生物等の第二種使用等に当たって執るべき拡散防止措置等を定める省令」、研究二種省令と称していますけれども、こちらに規定されております。
 まず、遺伝子組換え研究を行う場合には、研究機関において、遺伝子組換え実験に係る研究計画を作成していただく必要があります。こちらは、もちろんですけれども、法令を理解した上で研究計画をつくっていただき、実験の種類とか使用する生物の性質に基づいて拡散防止措置も設定いただく。その設定した拡散防止措置については、研究機関の中に設置してある、名称は各機関によってばらばらかもしれないのですけれども、機関内委員会で精査いただくことにしております。その後、大臣確認が必要かどうかということで、そこでまず仕分けされるわけですけれども、大臣確認の必要がないものについて、つまり、研究二種省令に定められた拡散防止措置を執る場合は、そのまま、機関の責任の下、実験を行っていただくことが可能であります。一方、大臣確認の対象となる場合には、文部科学省にその研究計画の確認を申請いただく必要がございます。確認を受けた後、機関の責任の下、研究を実施いただくということになります。
 どういった場合が大臣確認の必要があるかということですけれども、微生物実験と動物実験の例示をさせていただいております。微生物を使用する実験に当たっては、宿主もしくは核酸供与体の実験分類のいずれかが未定、つまり、リスクの評価ができていない場合。
 ちなみに、ここで言っているクラス4とかクラス3というのは、まず、ウイルスや細菌といった病原性微生物の場合、BSL(biosafety level)が決められておりまして、一番、リスクが高い危険なウイルス、エボラウイルスなどは、皆さん、お聞きしたことがあるかと思いますけれど、そういったものはクラス4で、クラス1の場合は普通の実験室で行っていいというような形になっております。クラス3の場合ですと、実験室自体が陰圧、研究室の中の空気が外に漏れないような形で行うということが、クラス3とクラス2の大きな違いでございます。
 話は戻りますが、宿主もしくは核酸供与体の実験分類のいずれかがクラス4である場合は、大臣確認の対象になる。それから、宿主の実験分類がクラス3である場合。宿主の実験分類はクラス2程度ですが、そこに入れる遺伝子が薬剤耐性を付与するような遺伝子である場合。それから、自立的に増殖力・感染力があるウイルスであって、増殖するような研究を行う場合。また、タンパク性の毒素を産生するような遺伝子を入れる場合、こういったものが大臣確認の対象になっております。
 動物使用実験ですけれども、微生物使用実験で大臣確認の対象となるような微生物を動物に感染させるような実験をする場合。次に、書いてあるのはちょっとややこしいのですが、要は、ウイルスが動物に感染する場合、特定の受容体にくっつくことによって感染が始まるのですけれども、動物によって持っている受容体は異なるのですが、例えば、ヒトに感染する原因となる受容体をマウスに導入するような実験を行う場合には大臣確認の対象になっているということでございます。
 実験分類を簡単に書いてありますが、先ほど申したように、クラス1からクラス4まで、リスクに応じてこういった分類がなされているということであります。
 実際の大臣確認制度の運用でございますが、研究機関において研究計画中に執るべき拡散防止措置を定めていただき、申請いただくということになるのですが、文科省の審査体制といたしましては、この部会の下部委員会である遺伝子組換え技術等専門委員会のほうで、御議論・審査いただいております。その意見を踏まえまして、大臣が確認しましたという通知を研究機関に出しているということでございます。専門委員会ですけれども、これまでおおむね二、三か月に1回程度開催してきておりますが、特に最近につきましては、審査期間の短縮ということも考えまして、2か月に1回程度開催させていただいているところでございます。申請されたものにつきましては、全ての案件を委員会にかけているわけではなく、以前審査を行った研究計画と同じような宿主と核酸供与体の組合せの場合には、事務方で確認をするということも行っております。後ほど実績をお示しさせていただきますけれども、全体の8割~9割を占めているというのが今の状況でございます。
 こちらが大臣確認の実績でございます。実数を出していますので御覧いただければと思うのですけれども、法施行以降、だんだん増えてきていると言えるかと思います。新型コロナの関係で研究する方々が増えたということもございまして、令和2年度につきましては、ほかの年度に比べて若干多いというのが実績でございます。FTの割合で見ましても、当初は実績が積み重なってなかったということで10%ちょいから始まっていますけれども、今では、8割~9割、FT案件、事務方のみの確認で手続をしているということでございます。あと、数字には出てこないのですけれども、大臣確認の過程、いただいた計画から、拡散防止措置を変えなさいと、こちら側から変更を求めたケースというのは、記録が残っている限り、ありませんでした。どういうことかといいますと、拡散防止措置の設定は、皆さん、ほぼ同じ物差しで判断できているということだと思います。
 大臣確認の申請内容につきまして、どういった理由で大臣確認の対象になったかということを整理した図でございます。一般的には、一のヘに当たりますが、自立増殖可能なウイルスの研究と、三のイになりますけれども、動物に感染させる実験が多いという実績になっております。令和2年度につきましては、新型コロナの関係で、皆さん、新型コロナ感染症の研究に集中したということだと思いますけれども、クラス未分類の研究が突出しているというのが実績でした。
 こちらは、新型コロナでの大臣確認を行った実績でございます。令和2年の春過ぎから、皆さん、かなり精力的に研究を行われていたということが分かるかと思います。実際に行われていた実験系といたしましては、例えば、大腸菌でのクローニングとか、組換えタンパク質の作製、また、ウイルスベクターワクチンの作製とか、中には、組換えウイルス、新型コロナウイルス自体を組み換えたウイルスを作製するといった実験をやられている方もいらっしゃいました。
 これまでは大臣確認の実績なんですけれど、最後に、不適切な使用等でどういう例があったかということをお示しさせていただきたいと思います。これまで研究開発段階の第二種使用等において報告されている事案ですが、例えば、拡散防止措置、本当は大臣確認を受ける必要があったのだけれども、その手続を踏まずに機関内だけで行っていたという手続の不備。あとは、遺伝子組換え生物の不活化が適切に行われていなかった。例えば、土の中に入っていた組換えを行った種子が、ちゃんと熱が通っていなくて、そのまま域外に出てしまったといったケースや、組換え実験を行っていたガラス器具を殺菌せずに洗ってしまった。つまり、流してしまった。また、組換えマウスの管理が適切に行われていなくて、ごみ袋の中から発見されたですとか、そういったことがございました。ただ、総じて、どこまでだったらいいということではないのですけれども、こういった手続の不備とか管理上の不手際が中心となっておりまして、少なくとも、生物多様性に影響が出るような、自然界に影響が大いにあるような、そういった事案というのはなかったかと存じております。また、拡散防止措置の設定に問題があったせいで何か不適切な事案が起こったという事例はなかったと承知しております。
 参考までに、海外ではどういった考えで行われているのかということをお示ししております。アメリカにつきましては、そもそもカルタヘナ条約自体を批准してないということもありますけれども、遺伝子組換えに特化した規制というものは行っておりません。遺伝子組換え研究についても、規制というよりは、実際にファンディングをしているNIH(アメリカ国立衛生研究所)がガイドラインを整備している。つまり、お金を出したところについては、これに則ってやるようにということにはなっているのですけれども、そうではないところについては、明確な規制があるわけではないということでございます。大体が機関内でしっかり審査を行った上でやりなさいということではあるのですが、一部、NIHの承認を必要とする研究といたしまして、これは日本でも手当てしていますけれども、薬剤耐性を持たせたりとか、毒を作ったりとか、こういった研究をする場合にはNIHが承認をするということになっているようでございます。
 片やEUですけれども、EUで理事会指令を出してはいるのですが、実際にはそれぞれの加盟国において運用されているということになっております。EUの制度は、簡単に申しますと、施設登録を当局にした上で、レベルに応じて当局のほうに届出をしたり、そういった手続を行うということになっています。基本的な、封じ込めレベルの考え方については、日本と若干違うところもあるようですけれども、日本みたいにきちっと決まっているわけではなくて、研究機関の中での自由度が高いようでございますが、基本的には宿主のBSLに応じてレベルを設定しているようでございます。
 では、資料54-1のほうに戻ります。これらを踏まえまして以下の2点の検討を行っていただきたいと考えておりまして、実際の具体的な検討につきましては、遺伝子組換え技術等専門委員会において検討していただきたいと考えております。
 検討事項を説明させていただきます。1点目はパンデミック対応でございます。パンデミックを引き起こしたウイルスのワクチンや医薬品の開発を念頭に置いた規定でございますが、サミットでも100日ミッションというものが提起されまして、次回、パンデミックが生じたような場合には100日以内にワクチンや医薬品が使われることを目指して研究開発をするということになっておりますけれども、そちらを進めるに当たって、大臣確認という制度自体が、そこをスポイルするような、障害となるようなことがあってはいけないと考えております。ですので、そういったパンデミックが起きたときには、そのウイルスに関する研究については、大臣確認の対象から外すということを考えております。
 具体的には、条文のほうをちょっと説明させていただきますけれども、カルタヘナ法の施行規則の第十六条に主務大臣の確認の適用除外という規定がございます。こちらを読み上げます。「人の生命若しくは身体の保護のための措置又は非常災害に対する応急の措置として、緊急に遺伝子組換え生物等の第二種使用等をする必要がある場合として主務大臣が別に定める場合」、こういったケースに当たる場合には主務大臣の確認の適用から外すという規定がございます。これまでこの規定を使ったことはないのですが、次期パンデミックの際にはこういうことを考えてもいいのではないかということで、今回、提案している次第です。
 具体的な措置といいますか、法令上の手当てとしては、告示を制定するということになります。研究開発の第二種使用の部分だけで考えておりますので、環境大臣が入るかどうかというのは今後検討していきたいとは思っておりますが、文科大臣の告示になるかと思います。ただ、当該ウイルスの研究をやる場合には、何でもかんでも勝手にやっていいよという世界にはならないと考えておりますので、その告示に要件を設定する必要があると考えております。例えば、病原性を増すような研究ではないとか、当該ウイルスのリスク相当の拡散防止措置を執る。BSL3のウイルスだったら、BSL3の実験設備が整った上で、そういった手法でしっかり管理して行う。そういったことが担保される場合には、大臣確認を省略して、研究機関の判断で適切に研究を開始できるようにするといったことを考えております。
 こちらは、どういったことを要件づけする必要があるかといったことを主に御議論いただき、実際には、政府の法令上の考え方として、当然、文科省だけではなくて、感染症対策を行っている厚生労働省とか感染症危機管理統括庁と密に連携しながら、この規定は作っていく必要があるというふうに考えております。
 もう1点は、これまでの経験、科学的知見、運用実績を考えて、研究機関の判断で研究を開始しても問題がない、そういった研究もあるのではないかというふうに考えております。具体的には、どういった事項を大臣確認の対象から外すということになるかと思うのですけれども、というのは今後御議論いただくことだと考えておりますが、出口としては、先ほどの研究二種省令の改正につながるものだというふうに考えております。
 環境省のほうでは、カルタヘナ法の施行状況を踏まえた必要な措置についての調査審議、こちらは中央環境審議会の自然環境部会野生生物小委員会において御議論されるということになるかと承知しております。
 大臣確認の対象となるものを規定している研究二種省令でございますが、具体的にどういったものかということを紹介させていただきますと、別表第一というところで規定されております。日本語がかなり分かりづらいのですが、要は、先ほど、パワーポイント、プレゼン資料において説明させていただいたような事項がここに書かれているということでございまして、最終的な出口といたしましては、特にこの別表の改正になろうかというふうに考えております。
 私からの説明は、以上とさせていただきます。
【小川部会長】  説明、ありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明に関して、御質問や御意見等がございましたら、お願いいたします。
 御意見、ございませんでしょうか。
 小板橋委員、お願いいたします。
【小板橋委員】  御説明、ありがとうございます。ちょっと確認させていただきたいのですが、(1)は「パンデミックを引き起こしたウイルスの」と、ウイルスに限定していますが、コロナはウイルスでしたけれども、今後、パンデミックを引き起こすのはウイルスに限るのかというのは断定できないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
【畑山安全対策官】  確かに、結核とか、そういったバクテリアが引き起こす病気もありますので、そこもスコープには入る思います。
【小板橋委員】  ウイルスというふうには限定はしないという感じということで。
【畑山安全対策官】  はい。
【小板橋委員】  分かりました。あともう一つですけど、政府が、今、パンデミックだというふうに言う時点で研究開発というのもちょっと遅いような気も個人的にはするのですが、その辺りというのはどう思われますか。
【畑山安全対策官】  そこのトリガーはどうするかというのは、実は我々もすごい悩ましいと思っていまして、実際にはこれから危機管理統括庁とか厚生労働省と何がベストかということを詰めていきたいとは思っているのですけど、今がパンデミックですよということを政府として打ち出したときに自動的に発動するような規定にはしたいと思っています。
【小板橋委員】  なるほど。分かりました。ただ、政府がパンデミックと言うときというのは、どちらかというと、行動変容とか、いろいろな、国民を守るというのが強くなった段階かと思うので、少し前にできたらいいのかなという気もちょっといたしました。ありがとうございます。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 吉田先生、お願いします。
【吉田委員】  東京医科歯科大学の吉田です。御説明、ありがとうございました。
今回、大臣確認を外すという議論だと聞いていましたが、先ほど御紹介いただいた資料54-3の第十六条のところで、既に適応除外は可能となっていますが、今回さらに主務大臣の確認を外すということを議論するというようなことになるという理解でよろしいのでしょうか。
【畑山安全対策官】  施行規則の十六条というのは、こういう規定はあることはあるのですけれども、具体的にどういった場合にこれに当たるかというのがないのですね。あるのですけれども空規定のような形になってしまっていまして、これを実際に使えるようにこれから考えていくということです。
【吉田委員】  分かりました。あともう1点は、ここで言う主務大臣というのは文部科学大臣ですか。
【畑山安全対策官】  今回の話は研究開発段階に限った話ですので、文部科学大臣です。
【吉田委員】  研究開発段階に限ったものということですね。
【畑山安全対策官】  そうです。あと、カルタヘナ関係はすべからく環境大臣も入っていますので、恐らく環境大臣と文科大臣の告示になろうかと思います。
【吉田委員】  ありがとうございます。
【小川部会長】  ほかにいかがでしょうか。
 三浦先生、どうぞ。
【三浦委員】  文科省の遺伝子組換え技術等専門委員会の委員長をしております、三浦です。今回の議論については、皆さん御承知のとおり、新型コロナのときに、リスクがない研究とリスクがかなり高い研究が同じ手続を踏んで、本当に必要な研究、例えば単純にタンパク質を作る研究等がなかなか立ち行かなかったということを踏まえての改正となっているわけです。さらにこの法律自体制定から20年たちますので、かなり様々な知見の蓄積があり危険度の評価が固まっていますが、危険度が低い研究であっても、まだまだ大臣確認をしている、あるいは危険度が高い実験と同じ手続になっているという、時代に合わない部分も出てきているので、そういう点も含めて委員会で再度議論をして、整理していこうということかと理解しております。
 以上です。
【小川部会長】  三浦先生、ありがとうございました。
 米村先生、御発言、どうぞ。
【米村委員】  東京大学の米村でございます。今の三浦先生の御発言も踏まえて、2点ほど、お尋ねしたいと思うのですが、まず、現行法の仕組みとして、適用除外の規定があるのだけれども、それが必ずしも明確化されていないというお話が先ほど事務局からあったかと思います。今回の検討の方向性というのは、この適用除外規定を精緻化するということなのかというのが、第1点目の質問です。
 考え方としては、現在存在する十六条の適用除外を精緻化するというのももちろんあり得ると思うのですけれども、直前の三浦先生の御発言にもあったとおり、そもそもカルタヘナ法の仕組み自体があまり現状に合わなくなってきているという状況で、適用除外を広げるというよりは、そもそもの規制要件を見直すということも考えたほうがいいのではないかというふうに思いました。そうするとパンデミック対応というのに限定した話にならないと思うのですけれども、それはそれで問題ないと思います。もしもパンデミック以外の場面でも適切でない規制運用がされているということであるならば、一般的に見直すということがあってもいいと思いますので、それは一つの方向性ではないかと思います。そういうことも視野に入っているのかどうかというのが1点目でございます。
 2点目は、そもそも大臣確認の仕組みというのが私はよく分からないところがあるのですけれども、仮に適用除外規定を拡張するというような形になると、結局、緊急だからということで、本来は確認すべき研究や実験についても、確認されずにずっと行ってしまうということもあり得ると思います。当座はそれで仕方がないかもしれませんが、それがいつまでも続くというのも本来の制度趣旨からすると問題があるような気がしますので、どこかの時点では確認をするということがあってもいいんじゃないかと思います。要するに事後確認のような形にするわけですけれども、全く確認の必要がないような危険性の低い研究については適用除外でいいと思いますが、一定の危険性はあるけれども研究に必要なので当座は進めてもらう必要があるというふうなものについては、事後確認というような手続を設けることも一考に値するのではないかというふうに思いますが、この辺りはいかがでしょうか。
 以上2点、よろしくお願いします。
【畑山安全対策官】  今、米村先生から指摘されたことに対する答えは、(1)と(2)を分けて検討を行うということにもなるのですけれども、(1)につきましては、まさにパンデミック対応で、パンデミックの対象となったウイルス、新型コロナで言えば新型コロナウイルスになりますが、そのウイルスだけに限定した取組、これが先ほどの施行規則の十六条の規定を使ってやれるようにするということですけれども、施行規則自体を修正するわけではなくて、施行規則では、どういう場合かということを主務大臣が規定をし直さなければいけないということになっていまして、「主務大臣が別に定める場合は」と、こちらが告示をつくるという話になるのですが、その告示をつくることによって、これを使うというのが1点。これはパンデミック対応です。
あと、このパンデミック対応ですけれども、1回、パンデミックの対応が発動した場合に、ずっと発動されるかといったら、そういうことは考えておりませんで、パンデミックを終わりにする、どこが終わりかという、お尻を決めるというのも大変難しい作業にはなるのですが、パンデミックが終息した後には、そのウイルスの研究を行う場合には、当然、大臣確認の対象となるということです。
 リスクがない研究について大臣確認から外すというのは(2)のほうで考えておりまして、「現在の科学的知見やこれまでのカルタヘナ法の運用実績に照らし」というのは、まさにそういうことを検討いただくということになろうかと思います。具体的には、これは当然、委員に御議論いただく話ではあるのですが、我々といたしましても、新型コロナウイルスの説明でさせていただいた、大腸菌で一部のタンパク質を増やすとか、そういった研究に関しては、リスクが高いウイルスから核酸供与体を持ってきたとしても、そんなにリスクが高い研究ではございませんので、そういった研究は大臣確認の対象から外すということは十分あり得ることだと思いますし、どこまで大臣確認を残しておくべきかどうかということをこれから御議論いただくということかと思います。
 先生、答えになっていますでしょうか。
【米村委員】  分かりました。(1)と(2)を別個独立にきちんと検討していただくということであれば、大変結構かと思います。ありがとうございました。
【小川部会長】  ありがとうございます。
 ほかにございますか。
 よろしいでしょうか。皆さんに御議論いただいて確認した範囲では、資料54-1の案に沿って遺伝子組換え技術等専門委員会で詳細な検討を進めてもらうということになるかと思います。よろしいでしょうかね。
 それでは、資料54-1の案のとおりとしたいと思います。ありがとうございました。
【畑山安全対策官】  御審議いただき、ありがとうございました。本件、これから遺伝子組換え技術等専門委員会のほうで御議論いただくことになりますけれども、その検討結果につきましては、またこちらの部会にお諮りさせていただくことになるかと思いますので、そのときにはよろしくお願いいたします。
 なお、この遺伝子組換え技術等専門委員会ですけれども、先ほど2か月に1回くらい開催して審査いただいているというお話をさせていただきましたが、ふだんはそれぞれ個別の研究計画を審査しているということで、当然ながら秘密事項も含むということですから、非公開で行っておりましたけれども、今回、この制度改正の話をしていただくということを踏まえまして、制度改正の検討をしている部分につきましては公開で行うことを予定しております。そういう意味で、この遺伝子組換え技術等専門委員会は初めて公開で行うということになるのですけれども、初回の検討を1週間後の21日に開催することを予定しておりまして、そちらの傍聴登録のプレスリリースもさせていただくこととしております。
 以上、報告でございます。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 本日予定していた議事は以上となりますが、委員の皆様から、何かほかにございますでしょうか。
 小板橋委員、どうぞ。
【小板橋委員】  確認ですけれども、(1)のほうを先に審議して、何かあったときのために対処できるような形をつくるという理解で大丈夫ですか。並行してやるのだと思うのですけれど、(1)のほうはなるべく早くみたいな感じで。
【畑山安全対策官】  先生の御指摘のとおりでして、(1)のほうは、恐らく科学的に詰めていただく事項というのもそれほど多くないというふうに我々のほうでも考えておりまして、できるだけ早く、関係省庁間の調整も済ませて、出したいと思っています。
 (2)のほうは、時間をかけていろいろな関係者の方からお話を聞きつつ検討を進めるべき話だと思いますので、こちらのほうは時間をかけてじっくりと御議論いただきたいと考えております。
【小板橋委員】  ありがとうございます。
【小川部会長】  ありがとうございます。
 ほかにございますか。
 それでは、最後に事務局から連絡事項があれば、お願いいたします。
【市原室長補佐】  本日は、ありがとうございました。事務局より、御連絡です。
 このたび、祖父江先生におかれてましては、本年度末をもって本部会委員を御退任される御意向をいただきました。
 祖父江先生より、一言、御挨拶をお願いいたします。
【祖父江委員】  大阪大学の祖父江です。がんの疫学を専門としておりまして、今まで研究倫理指針等を担当していましたけれども、この3月で阪大のほうを退官します。長い間、どうもありがとうございました。疫学関係の委員がまた引き継ぐと思いますので、引き続き、よろしくお願いします。
 以上です。ありがとうございました。
【小川部会長】  ありがとうございました。
【市原室長補佐】  祖父江先生、ありがとうございました。
 続いて、連絡事項でございますが、次回の部会の開催につきましては、また皆様の日程調整の上で、改めて御連絡をさせていただきます。
 なお、本日はYouTubeによるライブ配信にて公開させていただきましたが、後日公開いたします議事録が正式な記録となります。本日の議事録につきましては、事務局にて案を作成後、皆様にお諮りし、部会長の確認を得た後に当省のホームページにて公開させていただきます。
 事務局より、以上です。
【小川部会長】  ありがとうございました。
 それでは、本日の生命倫理・安全部会を閉会いたします。ありがとうございました。

―― 了 ――  

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