資料11 科学技術・学術審議会総会(第11回)議事録(案)

科学技術・学術審議会
総会(第12回)
平成16年6月8日

1.日時

平成15年7月24日(木曜日)15時~17時

2.場所

東海大学校友会館「阿蘇の間」

3.出席者

【委員】

末松会長、小林会長代理、青野委員、飯吉委員、池上委員、石井委員、石谷委員、石原委員、磯貝委員、川崎委員、川村委員、郷委員、小平委員、笹月委員、澤岡委員、鈴木委員、平委員、田中委員、土居委員、西野委員、長谷川委員

【文部科学省】

遠山文部科学大臣、御手洗文部科学事務次官、間宮文部科学審議官、結城官房長、林科学技術・学術政策局長、石川研究振興局長、今村科学技術政策研究所長、坂田官房審議官(官房担当)、井上科学技術・学術政策局次長、木谷官房審議官(高等教育局担当)、丸山官房審議官(研究振興局担当)、素川官房審議官(研究開発局担当)、尾山政策課長、川原田振興企画課長、藤木開発企画課長、他関係官

4.議事録

(1)地震予知のための新たな観測研究計画(第2次)の推進について」及び「第7次火山噴火予知計画の推進について」(建議案)

資料1、2に沿って田中測地学分科会長等から説明があった。
主な意見は以下のとおり(○:委員、△:事務局等)。

○ 総合科学技術会議では、安心・安全な社会を構築するということを基本方針としていろいろ議論が展開されており、予知というよりは、むしろ災害が起こった場合どうするかに力点が置かれていたと思うが、その点についてどうか。災害発生の予測については、十分なバックアップがあるのか。

○ この建議案では、地震の発生予測を目指して組織的な研究を進めることとしている。国全体として見れば、兵庫県南部地震の後につくられた地震調査研究推進本部が地震災害の軽減を目指して地震調査研究を行っており、指摘のあった点についても全体として検討されているのではないか。

○ 現在のところ、有珠山などの監視観測体制が整備されている火山については、ある程度の危険性やその噴火範囲等がいえるようになっている。その点について今回の予知計画をもって段階的に広く日本の火山について整備し、また、事前の活動度の評価の質を高めるために、基礎研究の充実が必要であると認識している。

今回出された意見については今後の検討において配慮することとし、答申案については、原案どおり了承され、末松会長から遠山文部科学大臣へ答申文が手渡された。また、末松会長及び遠山文部科学大臣より挨拶があった。

(2)

1.各分科会等の審議状況について

各分科会等の報告事項について資料に基づき、分科会長等から説明があった。
質疑のあった議題及び主な発言は、以下のとおり。

【人材委員会第二次提言について】

○ 人材育成を行う場としては、大学院だけではなく、もう少し広い場が検討の対象となっているのか。

○ 第一次提言では大学院博士課程を、第二次提言では少し広げて大学以上を対象にしたが、企業における研究者の問題はかなり議論された。特に、博士課程を出た人が欧米に比べると企業に行かないということが大きな問題となった。現在の日本の企業環境では短期的な国際競争力の成果を求める傾向が強いため、有能な人たちも海外へ行ってしまう。それに対し、教育機関や企業の中でも環境を整備して、海外からも優れた人が来ることによって切磋琢磨できるようにすべきという議論がなされた。

○ 企業の研究者が大学に移ると、企業ではもうあまり必要とされなくなった分野でも、大学で自分と同じような分野の研究者を養成する。企業として需要のない分野の研究者を養成すると、結局は学生が犠牲になるのではないか。

○ 人材委員会では、第一次提言の時に、講座にしばられるのではなく、できるだけ流動性を高め、様々な研究者と触れる場をつくるという議論を行った。また、学術分科会の研究費部会でも、科学研究費補助金により、若い人たちに自分の発想に基づいた研究を自発的に行うチャンスをつくるという議論や、自分がこうやりたいという人が挑戦できる枠組みをつくるという議論もあった。

○ 第一次提言の時に、例えば、大学院のコースで2つの専攻をとることについても議論がされた。

○ 医学の分野において、基礎医学では日本は非常に進展し、トップレベルの科学誌にも多くの人が論文を出しているが、臨床研究では日本からの論文数は非常に少ない。現実的にも、患者の診断・予防・治療技術の開発に関する日本発の貢献が少ない。臨床の医学者を育てないと、日本発の臨床医学の貢献、新しい技術、診断法、治療法が先行き心細いのではないか。

○ 学生が自分で発想して、苦労してアイデアを作り出すことをやらないと本当の人材養成にならない。そのためには、学生のオリジナリティーを社会全体が評価して、就職先もあるというような環境が必要ではないか。すぐ論文になるテーマを求めていては、世界をリードする人材は養成できない。
研究者レベルで言えば、日本の研究は仮説を検証するとか、後追い的な研究では優れているが、ものになるかならないか分からない仮説を上げるような研究が少ない。このような研究が社会、学会で評価される環境の中から優れた人材が養成されるのではないか。

○ 先ほどの臨床医学の問題について、日本の場合は、制度や薬の問題等で実際の実験やデータ取得が基礎医学に比べて難しいという状況があるのか。

○ そういうことはないと思うが、本当に臨床をやる人たちが、臨床のベッドサイドから問題を取り出してそれを研究し、またベッドサイドに戻すグループが少ない。

○ 仮説レベルで議論をしたり、問題の投げかけをすることが、日本の企業や教育、研究機関では比較的少ない。問題解決能力に加えて問題探求能力を養成していかないとトップレベルの研究者は出てこないのではないか。評価にも関連し非常に重要な問題である。

○ 萌芽的研究など、先がまだわからない研究を行うことも、人を育てる上で非常に大切ではないか。

○ 今までの日本では、特に組織のための人づくりが中心であったが、研究は組織がやるものではなく、今後は大学などの研究現場では個人がもっと前に出るべきではないか。個人が光り輝くような組織づくりを念頭においた背景ができれば、優秀な人材の養成の問題は、日本国内で解決できるのではないか。

○ 情報分野でシステムの構築をすると2、3年かかるため、その途中で論文は書けず、研究内容はあっても、論文の数の勝負には勝てない。このように全体の学術分野の評価基準に合わない分野もあり、評価の関数を一つだけではなく、分野によって変えていくことも必要ではないか。

○ 新しく生まれた研究分野の評価については、既存の評価体系とは違った、新しい評価体系を作っていくことが重要である。

○ 日本人は勤勉だが、突出してくる人の割合が少ない。冒険ではあっても、評価するシステムがあるということが若い人に浸透すれば、やる人は出てくる。論文数だけではなく、本当に重要なことをじっくりと研究することについても評価するような二重の評価システムがあることが重要ではないか。

【学術分科会の審議状況(ビックサイエンス関係)】

○ スモールサイエンスについて、金額が大きい教育研究基盤校費と私立大学の経常経費補助金は、教育と研究に切り分けたものか、全額が入っているのか。

△ 全額ではなく、研究相当分を計上している。これは、政府全体の科学技術関係経費に登録された金額で、教育部分は除外している。

○ ビッグサイエンスの定義について、例えば、水素の実用化や燃料電池のように目的は1つであるが多面的な研究が必要なものについては、ビッグサイエンスと定義され得るものなのか。

△ まさに、そういったところを含めてどういったものをビッグサイエンスととらえて資源配分を考えていけばいいのかというところを議論いただきたい。今、委員から指摘いただいたことについては、議論されていないが、大方の人が念頭においているのは、やはり、大きな装置を使うものというのが出発点としてあるが、本当にそれだけでいいのか、というのは論点の一つであると考えている。

○ あたかも、ビッグサイエンスとスモールサイエンスは別世界のもののように扱っているが、ビッグサイエンスの多くは、もともとはボトムアップ的なスモールサイエンスが、ある科学なり工学の目的を達成するためにビッグ化していったので、なんでも分析的に分けて定義しても意味がないのではないか。
例えば、「ハヤブサ」(宇宙科学研究所の工学実験探査機)が行う実験では、ものすごい科学的な成果が得られることになるが、達成するためあらゆる工学を駆使している。それで結果としてビッグサイエンスになっただけなので、個別に分解してみると本当はスモールサイエンスの集まりである。このことから、むしろ、日本のいままでの科学技術の在り方からすれば、大局的なところからいろいろ新規事項を打ち出す、そういう大構想を育てるようなところに本来は力を入れて行くべきなのではないか。

○ ビッグサイエンスの意義として、特に国際的な観点は非常に重要であるため、スモールサイエンスでも是非強調し、日本発信型の研究を更に発展させていく必要がある。
もう一点は、海洋の立場として、海に出かけるには、研究船等で大きな予算を必要とするものもあるので、配慮願いたい。

○ 目的がかなり指向していて、個々のものは研究開発段階でビッグサイエンスとは言えないスモールサイエンスの集まりであるけれども、目的がはっきりしているものを先行的に取り上げ重点化することや、あるいは研究者を集約すると言うことも有効なのではないか。
この件に関しては、アメリカなどは戦略的にやるので、スモールサイエンスでバラバラにやるよりは、一つの旗のもとに基礎的なところからやると対抗できるのではないか。

○ スモールサイエンスからある戦略性を持たせて分野を育てることについては、科学研究費補助金の特定領域研究において、どの領域を特定領域にするかを議論する場がある。ビッグサイエンスについては、旧学術審議会では、研究体制特別委員会等で審議があった。
現在、組織的に発展させたい、あるいは戦略的にどこを伸ばすかということを議論する場が不足しているので学術分科会でもそういう場を整備し、意見を反映できるような工夫をすることについて議論を行っている。

○ ビッグサイエンスとスモールサイエンスを分けることについては違和感を感じる。例えば、大きさではなくて、日本が先進国としてやっていくために環境、エネルギー、食糧、医療などのものを一つに括るなど、ビッグサイエンス、スモールサイエンスとは別の括り方についても検討する必要があるのではないか。

○ 総合科学技術会議としては、資源配分の方針の次元としてこの問題を論じている。本審議会としては、科学技術あるいは学術の観点からきっちり議論をし、しっかりした目で見ていくという必要がある。

○ 予算面だけでなく、科学技術・学術の視点からきちっと議論してほしいということで、この点については、学術分科会として本日の意見を汲み上げていただき、多角的に審議を続けていただきたい。

2.総合科学技術会議の審議状況について資料に基づき、事務局から説明を行った。


(3)その他

○ 例えば、競争的資金の改善に関する指摘など、総合科学技術会議とは十分な対話が重要ではないか。

○ 科学研究費補助金がいろいろな萌芽を育て、いろいろな対応に向かっているので、その点をアピールすべきではないか。

○ 良い点と悪い点を事務局として明確に整理することが重要である。

△ 総合科学技術会議で報告書等が出るまでに事務局で意見のすりあわせをする機会もあるので、本審議会で議論いただいたことを踏まえて対応していきたい。また、総合科学技術会議の審議状況をできる限り、本審議会、分科会、部会に御報告し、そこでのご指摘を踏まえ対応していきたい。

○ 今後、本審議会での意見については、予算にもかかわる非常に重要なことなので、是非、総合科学技術会議の御議論に反映させていただきたい。

○ 文科省の競争的資金の評価については、拡充という言葉が入っているが、シーリングの中で拡充を図れば、他のいずれかの資金が減ることになるので、その影響を十分検討する必要がある。基盤的な研究費を減らして競争的資金に回すと、マイナス効果がかなり出てくるのではないか。各省庁の準政策的な経費を競争的経費として展開していくことが適当ではないか。

次回総会については、改めて連絡することになり、会議は終了した。

お問合せ先

科学技術・学術政策局政策課

(科学技術・学術政策局政策課)

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