資料13‐1 「技術士試験における技術部門の見直しについて」(答申案概要)

科学技術・学術審議会
総会(第10回)
平成15年6月2日

1.技術部門見直しに当たっての視点

平成12年に行われた技術士法改正の趣旨との整合を図る。あわせて前回の技術部門見直しから約9年が経っており、この間の科学技術の進展を踏まえるとともに、技術部門に対する新たな社会的需要に対応する。

2.「原子力・放射線」部門の設置

1.部門名称および対象技術分野

対象技術分野は、原子炉システム技術、核燃料サイクル技術、放射線に関する原子力技術分野とする。部門名称は、放射線利用等に係る技術者も対象とすることを明確にするために、「原子力・放射線」部門とする。

2.原子力技術に関する社会的認識と視点の変化

近年の原子力システム関連のトラブル、不祥事の発生等を踏まえ、国や組織としての安全性等の担保にあわせて、技術者一人一人が組織の論理に埋没せず、常に社会や技術のあるべき姿を認識し、意識や技術を向上させる仕組みとして、技術者倫理や継続的な能力開発が求められる技術士資格を活用することが有効である。

3.「原子力・放射線」部門の必要性

(1)原子力技術の社会的役割

現在、我が国においては、52基の原子力発電所が稼働し、発電電力量の約34%を占める。また、医学・医療、農業、工業等における放射線利用は、益々進展することが想定される。これら原子力産業の基盤を支える原子力技術を今後とも継続的に維持・向上させていくために、技術士資格を活用する。

(2)総合技術としての原子力技術

原子力技術は、機械、電気、化学等多分野の技術体系にわたるとともに、その中核として原子力工学という固有の技術体系をもつ総合技術である。
原子力技術分野の技術者に必要な総合的な専門能力を確認するには、既存技術部門を一部手直しするだけでは不十分であり、原子力工学の他関連した技術体系を幅広くカバーする独立した技術部門を設置することが必要である。

(3)原子力システムの安全性との関わり

  1. 原子力技術分野の技術者のレベルアップ
    原子力技術分野の技術者が自己研鑽を行うに当たっての具体的目標を設定することにより、個々の技術者の総合的な能力の向上を図る。
  2. 事業体における安全管理体制の強化
    技術士が、属人的な資質の高さを表す資格であることから、事業体内において技術的事項に対する組織中立的な意見を述べる役割を果す者として活用され、事業体への信頼性の向上につながることが期待される。
  3. 原子力システムに関する安全規制への活用
    原子力技術に関する総合的視野を踏まえた業務遂行をより一層促進するために、国等の行政機関担当者が、「原子力・放射線」部門の技術士(以下原子力・放射線技術士という)の資格を取得することが望ましい。
  4. 国民とのリスクコミュニケーションの充実
    原子力技術に関する高い専門能力と安全、倫理、社会との関わりについて高度な見識を持った原子力・放射線技術士が、リスクコミュニケーションにおいて重要な役割を担うことにより、国民に対する説明責任を果すことが可能となる。

(4)国際的な活用

技術士の中に原子力・放射線部門を設立することにより、APECエンジニア・プロジェクト等を通じた我が国の原子力技術者の国際的な認知が可能となり、我が国の原子力技術者の国際展開に資する。

4.「原子力・放射線」部門の成立性

原子力技術に携わる技術者数は約4万人存在し、新たな技術部門を設置するには充分な規模がある。

3.既存の技術部門に係る見直し

1.第一次試験専門科目

技術士法改正により、第一次試験が、従来の技術士補になるための試験という性格に加え、第二次試験を受験するための要件としての性格を持つことになったことに伴い、第一次試験専門科目について、4年制理工系大学で教えている程度の内容を基本とする趣旨を、より強く反映させる。

2.第二次試験選択科目

技術士法改正により、経験年数4年で受験する者が大幅に増えることを踏まえた内容とする。

3.技術部門名変更

技術部門がカバーする範囲の拡充等の理由から、1「電気・電子」→「電気電子」、2「船舶」→「船舶・海洋」、3「林業」→「森林」、4「水道」→「上下水道」とする技術部門名の変更を行う。

4.技術部門大括り化について

技術者の幅広い基礎力を養うことを目的とした技術部門大括り化の準備段階として、第二次試験必須科目に技術体系別の共通問題を導入することを検討したが、専門性確保等の観点から問題があり、今回は見送ることとした。
今後、技術部門大括り化の具体的な実施方策を検討するに当たっては、技術士制度の趣旨、及び技術部門毎の活用状況などの運用実態等を踏まえ、その適切な在り方を検討することが必要である。

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