資料11‐3 国際競争力向上のための研究人材の養成・確保を目指して -科学技術・学術審議会人材委員会 第二次提言- (骨子)(案)

科学技術・学術審議会
総会(第10回)
平成15年6月2日

平成15年 月

はじめに

(第一次提言における提言事項)

科学技術・学術審議会では、知の創造により世界に貢献し、科学技術創造立国を目指す我が国にとって、その担い手となる研究に関わる人材をいかに養成し確保していくかが極めて重要な課題であることに鑑み、幅広い観点から研究人材の養成・確保について検討を行うため、平成13年10月に本「人材委員会」を設置した。
その後、本委員会では、研究人材に関する様々な課題の中から、最も基本的かつ重要性の高い問題として、世界トップレベルの研究者の養成に係る諸問題を取り上げ、昨年7月に第一次提言「世界トップレベルの研究者の養成を目指して」を取りまとめた。同提言においては、世界トップレベルの研究者の養成を目指す上で、その求められる能力、人材像として、「幅広い知識を基盤とする高い専門性」が重要であることを指摘したうえで、研究者の養成を直接担っている大学院博士課程の教育機能の強化、大学院組織の人材の多様性の確保、博士課程学生への経済支援の充実、人材養成における産業界との連携などを中心に改革方策を提言したところである。

(第二次提言に向けた検討課題)

もとより、研究に関わる人材(以下「研究人材」という。(注))の養成・確保に関する課題は、第一次提言で示した改革方策ですべてがカバーされるものではなく、本委員会では、第一次提言の取りまとめ後も、昨年8月以来、引き続き、現在我が国がかかえる研究人材の養成・確保に関する諸課題について、客観的なデータを基に、さらなる検討を進めた。
この検討においては、激しさを増す国際競争の中で、我が国が知の創造とその活用により社会・経済の持続的発展を図っていくためには、国際的に優れた科学技術・学術水準を維持、向上する上で必要な人材の養成・確保が急務であること、さらに、科学技術の急速な発展や社会・経済の急激な変化のスピードに対応していくためには、研究人材養成にかかる科学技術研究開発システム等について、大胆かつ迅速な改革を進めることが重要であるとの認識の下に、以下に示すとおり、より多角的な視点から人材養成・確保にかかわる諸問題の分析と、これに基づく改革方策の提言を目指した。
すなわち、
○ 国際的視点から我が国の研究人材の養成・確保を見た場合に、欧米を中心とした諸外国への我が国研究者の渡航が増大しているのに対し、優れた外国人研究者が我が国に集まりにくく、「知の空洞化」といわれるような懸念の指摘があるが、どのような方策をとることが必要であるか。
○ 我が国において少子高齢化が進む中で、研究活力の維持・向上を図る観点から、多様な研究者が活躍することが求められるが、例えば女性研究者、外国人研究者、若手研究者、高齢研究者など多様な研究人材が能力を十分に発揮できる環境が整備されているか。
○ 研究者全体をより効果的・重点的に養成・確保する上で、科学技術の急速な発展や社会のニーズの変化による需要に適切に対応した人材の養成・供給が図られているか。
○ さらに、これらを考える上の前提として、我が国をはじめとする先進諸国の知識基盤社会への一層の移行と、我が国特有の問題として少子高齢化の急速な進展が、中長期的な人材養成にどのような影響を及ぼしうるか。
などの視点から、現状分析を試み、諸問題について改革の方策を検討し、今回、ここに第二次提言としてとりまとめたものである。
なお、第二次提言においては、第一次提言で対象とした世界トップレベルの研究者のみならず、より広い研究人材を視野に入れ、多様な研究人材が能力を発揮できる環境の在り方や研究人材の需給の在り方などを検討したところであるが、基本的に我が国の科学技術・学術の国際競争力の強化等の観点から必要な事項を取り上げたものであり、研究人材の養成・確保に関し、今回の検討において対象としなかった事項も少なくない。このため、本委員会として、今後引き続き、必要な課題について検討を進める予定である。

(注)研究人材   第一次提言と同様、研究者、技術者、研究支援者、研究を管理する人材から科学について社会に普及・啓蒙する専門家など、研究に関わる多様な人材をさす。

1.研究人材の養成・確保に関する我が国の現状と課題

(1)知識基盤社会への移行と少子高齢化の急速な進展が研究人材の確保に及ぼす影響

我が国の研究人材は過去増加してきており、総数は世界的にみても高い水準にあるが、今後の知識基盤社会への移行を踏まえれば、引き続き、研究人材の量的・質的確保が必要である。特に、今後の我が国の急速な少子高齢化により、研究人材においても中高年齢層の比率の増大や若手研究者の供給の減少が想定され、研究活動への影響への配慮が求められている。

(知識基盤社会と研究人材)

我が国における研究人材の現状に関し、「国勢調査」における職業分類別の就業者数の推移をみてみると、研究者や技術者といった研究人材のほとんどは職業分類上「専門的・技術的職業従事者」に該当するが、この数は一貫して伸び続けており、また就業者総数に占める割合も拡大傾向で推移してきている(昭和50年の7.6%から平成12年には13.5%に拡大)。このように研究人材は増えてきているにもかかわらず、厚生労働省「労働経済動向調査」による、製造業の労働者の過不足感の推移を職種別に見ると、最近の経済情勢を反映して全体的に労働者が過剰と回答している職種が多い中で、研究人材が含まれる「専門・技術」職については景気の変動の影響が少なく、不足感が継続して高い状態にあり、今日の知識基盤社会において、研究人材の需要が高い状況がうかがえる。

(研究人材のストック)

我が国の研究者数については、総数で米国についで世界第2位(日本75.6万人(平成14年)、米国126.1万人(平成11年))、人口1万人当たりで世界第1位(日本59.4人(平成14年)、米国46.2人(平成11年))と他国に比べ遜色ないが、知識基盤社会への移行の進展等に対応し、研究者の量的、質的確保は引き続き重要であると考えられる。
(今後の研究者総数の需給については、統計データや予測手法の未整備に加え、試算の前提となる社会構造の変化、経済成長等の条件に左右される部分が大きいため、推計は極めて困難であるが、例えば、過去の研究者数とGDP、タイムトレンドとの関係をもとに今後の経済成長等について一定の前提をおいた場合、研究者の需要は、平成12年の実績55.8万人から、15年後の平成27年に77.9万人となり、約22万人、40%の増加が見込まれるとの試算もある。)

(研究人材のフロー)

自然科学系大学の卒業者数について見ると、我が国の平成14年3月の学部・大学院卒業者数は約22万人となっており、米国と比べると半数であるものの、人口1万人当たりの卒業者数でみるとほぼ同じである(日本17.2人、米国17.5人)。我が国の場合は米国と比較すると修士以上の割合が低くなっており、米国の方が高学歴化が進んでいる(日本23%、米国34%)。
また、我が国の自然科学系の学部・大学院卒業生の産業別就職先を見ると、学士卒業者の就職先としては、近年、製造業からサービス業にシフトしてきており、一方、修士の場合には工学を中心として依然として製造業に多数が就職している。また、博士課程卒業者ではサービス業(教員、特に大学教員)が多くなっている。
職業別就職者数については、おおよその日米比較が可能となるが、研究者・技術者への就職について、我が国の専門的・技術的職業従事者のうち研究者・技術者・大学教員になっている割合と米国において科学者・技術者になっている割合をみると、学士、修士ともに我が国の方が研究者・技術者に就く割合が米国より高くなっている(日本 学士58.3%、修士85.2%、米国 学士48.3%、修士73.9%)。米国では、特に学士レベルでは管理、販売、マーケティング等の科学技術に直接関連しない職種にも幅広く就業している。一方、博士になると研究者・技術者に就く割合は逆転し、米国の方が高くなっている(日本56.5%、米国75.8%)。

(少子高齢化の進展が研究人材に及ぼす影響)

これまでの研究人材の年齢分布を見ると、若い世代の層(特に25~29歳)が厚いが、我が国社会全体の高齢化が急ピッチで進行している中で、専門的・技術的職業従事者も中高年齢層の比率が上昇している。他方、今後少子化の急激な進行により、創造的活動の担い手である若手研究者の供給減少が予測されるなど、研究人材の年齢構成の変化と、その研究活動への影響を考慮することが必要である(若年層(25歳から39歳)の人口は、平成17年の27百万人から37年の19百万人に減少、同年齢層の生産年齢人口に占める割合は平成20年の約32%から37年の約26%に減少することが見込まれている。)。

(2)国際的視点からみた我が国の研究人材の養成と確保

知識基盤社会への移行や今後の人口動向を踏まえ、諸外国において研究人材の養成・確保についての取組みが強化される中で、我が国においては、外国への研究者の渡航が増大する一方、優れた研究者が我が国に集まりにくいなど「知の空洞化」が懸念されている。また、我が国の大学院博士課程等の教育機能について、国際的にみた強化が求められている。

(諸外国における研究人材の養成・確保への取組みの強化)

今後の知識基盤社会への移行や人口動向などを踏まえ、諸外国においても研究人材の養成・確保が喫緊の重要課題と捉えられており、人材確保のための計画の策定などの取組みが推進されている。
例えば、フランスでは、今後の政府部門の研究機関において見込まれる研究者・技術者等の大量退職を踏まえ、研究人材の更新や若手博士の将来の確保、定年退職者のポストの重点分野への再配分、研究機関と大学の間の人材流動化などを内容とする計画が策定されているほか、スウェーデンでも高齢研究者の退職による人材不足の懸念から、女子学生等従来とは異なる領域からの人材供給の促進や、若手研究者を中心とした新たな研究者の採用を通じた新分野の研究等の推進のための集中的な資金の投入などの対応がとられている。このほか、韓国や中国においても、今後の知識基盤社会に対応するため、研究者、技術者等の増加を図る計画が策定されている。

(米国等における外国人研究者等の受入れ状況)

グローバリゼーションが進展する中、IT技術者をはじめとする高度な技術や知識を持つ人材の獲得競争が激化しており、各国においては、海外からの受入れ促進のための施策が講じられている。
米国は、これまでも世界中から人材を受け入れることにより発展してきた国であり、科学技術についても多くの人材が世界各国から米国に流入している。1999年時点において、米国での博士号取得者のうち、自然科学では37%、工学では49%を外国籍の学生が占めており、大学において就労している博士号取得者の28%、民間において就労している博士号取得者の3分の1が外国籍である。さらに米国では、専門家の一時労働許可ビザであるH-1Bビザの発給枠を拡大(2001年からの3年間)して、人材の受入れの拡大を図っている。このように、米国は外国人研究者を積極的に受入れ、その研究開発活動の活性化を図っている現状にある。
これに対し、米国以外の各国においても受入れ促進のための様々な施策が講じられており、例えば、ドイツでは情報技術専門家がドイツで一定期間就労することを認める「グリーンカード制」が導入(2000年)され、イギリスでは高度な技術や経験を有する労働者の確保を目的としたポイント制が導入(2002年)されている。また、EUの枠組みの下で、研究者の流動性を高めるための各種プログラムとして、EU域内の研究者を対象に域内他国で研究を実施するための経費等(1~2年)を支出する制度や、域外の他国で研究を実施するための研究費等を支出する制度(域外で2年を限度:頭脳流出を防止するため、2年間の研究後、域内での1年以内の研究実施が求められている)などが設けられている。
またアジア地域では、中国、シンガポール、タイ、マレーシア等の国々において海外の自国研究者を対象に、帰国後の研究費等の支援や帰国者・家族に対する優遇措置等の帰国奨励策の実施や外国人研究者を積極的に登用した研究拠点の形成が進められている。

(我が国における研究者等の国際流動状況)

これに対し、我が国においては、例えば北米・欧州への留学生数が平成13年までの10年間で約1.5倍、北米における「留学生、研究者、教師」の長期滞在者が平成12年までの10年間で約1.8倍となったり、大学における研究者交流の派遣者は平成13年度は平成9年度の1.1倍であるなど、欧米を中心とした外国への我が国研究者、留学生の渡航が増加しているが、その一方で、たとえば、大学等における研究者交流の受入者に対する派遣者の比率が3.7(平成13年度)であったり、ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムの長期フェローシップでは我が国をホスト国とする研究者が少ないなど、海外から優れた外国人研究者が我が国に集まりにくい、また来日しても我が国に定着して研究を行なう者が少ないことが指摘されている。
このように、我が国においては、欧米を中心とした外国への研究者等の渡航が増加する一方で、海外からの優れた研究者が集まりにくいなど、いわゆる「知の空洞化」の懸念が指摘されている。

(我が国と海外の研究環境の比較)

このような現状に関し、我が国と海外の研究環境の比較について文部科学省が研究者を対象として実施した調査結果(平成9年度)では、海外の研究機関の方が優れている点として、雑用を排し研究に集中できること、研究補助者等の人材が豊富であること、研究施設・設備が優れていること、研究交流が盛んであることなどが挙げられている。今後、海外の優れた研究者が我が国に集まりやすく、また、我が国にとどまって研究を行いやすい環境を整備するためには、これらの問題への対応が必要であると考えられる。

(我が国の大学院博士課程等の教育機能の現状)

我が国への留学生は増加しているが、大学院生や博士号取得者の中の外国人の割合は米国等諸外国に比べ低い現状にある(平成10年度から11年度の理工系分野の大学院生の中の外国人の割合は、米国の26.7%、英国の31.5%に対し、日本は9.6%。また、理工系分野の博士号取得者中の外国人の割合は、米国の34.2%、英国の33.4%に対し、日本は26.4%)。
また、例えばOECD諸国間での入国留学生数、出国留学生数を比較すると、先進国から日本にやってくる外国人留学生は米国をはじめヨーロッパの主な国に比べ、学生千人当たりにして極めて少なくなっており、また、入国率(入国者数/出国者数)が1に満たないのは主要国中我が国だけとなっている。
この要因については日本語という言語の壁なども挙げられるが、優秀な外国人留学生を惹きつけるためにも、今後さらに我が国の大学等の魅力を高めていくことが求められている。
また、我が国の大学院博士課程修了者の能力については、既に第一次提言において、国際的にみて視野や関心の広さ、変化への柔軟な対応力などの面で改善が必要であることを指摘したところであるが、内外の優れた学生をひきつけるためにも、グローバルレベルの大学院改革を目指した取組みが急務である。

(3)多様な研究人材が能力を十分発揮し、研究に専念できる環境

多様な研究人材の活躍のためには、人材の能力、業績を適切に評価し処遇に反映するシステムが整備されることが必要であり、そのために研究人材の流動化が促進される必要があるが、我が国においては流動性は依然として低い状況にある。また、女性研究者、外国人研究者、若手研究者、高齢研究者などの多様な研究者がそれぞれの能力を十分発揮できるような研究環境の整備を図る必要がある。
さらに、研究者が研究に専念できるような研究支援体制や研究施設・設備の整備の推進が必要である。

1.研究人材の流動化の推進

(研究人材の流動化の必要性)

第一次提言でも指摘したとおり、大学、研究機関等の研究能力を高めるためには、多様なバックグラウンドを有する研究人材を集めるとともに、それらの者が相互に刺激しあい影響されるような研究環境を整えていくことが重要である。
多様な研究人材が活躍するためには、様々な人材が能力を十分発揮できるよう、それぞれの実情等に応じた環境整備が進められることが重要であるが、あらゆる人材が活躍し、能力を発揮できるための基本的な前提条件として、各人材の能力、業績を公正・適切に評価し、処遇に反映するシステムが整備されていることが必要である。このため、大学、研究機関等においては、任期制の導入や公募の実施による研究人材の流動性向上など、関連する取組みを積極的に推進していくことが期待される。

(我が国の流動化の状況)

我が国においては、依然として、欧米に比べ研究社会の流動性が低い状況にあり、文部科学省が研究者の在籍した機関数(経験機関数)を調査した結果でも、半数以上の人が一つの機関のみにしか在籍したことがないと回答している(「我が国の研究活動の実態に関する調査(平成14年度)」)。また、流動性向上を目的として導入された任期付任用制についても、その採用等の現状は、例えば国立試験研究機関等において29機関(平成15年1月時点)、国立大学において65大学(平成14年10月時点)となっている。
流動化の向上を妨げている要因としては、多くの研究者が「社会システムが整っておらず負担」と回答しており、転職によって退職金や年金などにおいて不利となる社会システムが研究者の流動性を妨げていることが考えられる(「我が国の科学技術政策の効果と課題に関する調査」平成11年度科学技術振興調整費調査研究報告書)。また、任期付任用制度の問題点に関して、「任期後の受け入れ先が未整備」、「短期間で成果を出すために必要な環境が整っていない」、「任期中及び任期後の社会保障制度の未整備」などの回答が多くなっており、流動的であることが雇用不安に直結している現状が現れている(文部科学省前掲調査)。これは、任期付研究者という一部の集団のみが流動的である一方で、全体の流動性が未だ低いことが背景として考えられ、流動性をさらに高めるとともに、流動性を前提として各人がより良い環境を求めて自己研鑽をするような科学技術システムへとさらに変革していく必要があると考えられる。

2.研究者が研究に専念できる環境

(研究支援体制の充実)

多様な研究者が研究に専念できるようにするためには、研究支援者、事務職員等のスタッフなど研究支援体制の整備が重要であるが、我が国は、例えば研究者一人当たりの研究支援者数が減少しており、諸外国に比べ少なくなっている(日本0.29人(平成12年)、ドイツ0.88人(平成10年)、フランス0.90人(平成10年))。研究者の間でも、国内に比べ、海外の研究環境が優れている点として、雑用を排し研究に集中できること、事務スタッフ・技能スタッフなどサポート体制が充実していることなどが多く指摘されており、研究支援体制が国際的に見て不十分であることが認められる。
これまでに、競争的研究資金改革の一環として、研究費による研究支援者の雇用が多くの制度で可能となってきたが、研究支援者の雇用に係る資金は競争的研究資金全体の約4%で、単純な比較はできないが、米国と比べ少なくなっている。また、機関の管理部門のスタッフの充実に充てることのできる競争的研究資金の間接経費については、第2期科学技術基本計画において、研究費の30%程度を当面の目途とすることとされているが、政府全体の競争的研究資金におけるその比率は3.4%(平成13年度)となっている。
さらに、今日、研究支援のために求められる業務の内容も、知的財産の活用など多様化、高度化しており、支援者等の養成、資質の向上も課題となっている。

(研究施設・設備の計画的整備)

大学、研究機関等においては、活発な研究活動を展開し、優れた研究成果を生み出すため、安全で効果的に研究に専念できる研究施設・設備の整備が必要である。このため、第2期科学技術基本計画に基づき、「国立大学等施設緊急整備5か年計画」が策定されるなど、大学、研究機関等の施設・設備が計画的に整備されているが、今後とも、国内外の優れた研究者等を引き付ける魅力に富んだ世界水準の優れた研究施設・設備の整備が課題となっている。

3.女性研究者に関する環境

(女性研究者の割合等の現状)

我が国においては、女性研究者の割合は増加しているものの、平成13年度で研究者全体(人文・社会科学分野の研究者も含む)の10.8%であり、米国(23.7%)の1/2未満であるなど、諸外国と比べて依然として低い。

(就業前の進学等の現状)

就業前の状況をみると、大学学部、大学院への女性の進学率は向上し学生に占める女性の割合も向上しているが、理系においてはまだ女性の割合は低く、ほとんどの分野で大学学部、大学院修士、博士と進むにつれて女性学生の割合は減少している。(全分野で学部38.9%、修士28.1%、博士27.9%、理学系で学部25.7%、修士21.6%、博士16.9%、工学系で学部10.5%、修士9.2%、博士10.6%)

(大学等における処遇、研究環境等の現状)

大学の教授等のポストにおける女性の割合も増加しつつあるが、助手、講師、助教授、教授とポストが上位になるほど女性の割合は低くなっている(平成14年度で、助手21.7%、講師21.0%、助教授14.4%、教授8.8%。なお、理学系では助手16.9%、講師10.1%、助教授6.7%、教授3.8%、工学系では助手8.1%、講師6.9%、助教授3.8%、教授1.1%となっている)。また、女性研究者は、男性研究者に比べ、非常勤職に就く者の割合が多くなっている。
また、女性研究者の数が少ないため、大学等における意思決定の場や研究費等の審査への参画も少ない状況にある。
さらに女性研究者の処遇、研究環境に関し、採用、昇進、評価、雑務の負担等について性別による処遇格差があるとする女性研究者が多くなっている。また、例えば、海外での学会、出張、研究等の経験について女性研究者は男性より少ないなどの現状がある。
また、女性研究者の割合や、上位のポストに就く女性が少ないことから、研究者を志す女子学生等にとって、ロールモデルがない、あるいは研究活動・研究生活についての将来のキャリアが見えにくいといった問題が指摘されている。

(出産、育児等による研究活動への影響)

研究活動を中断した経験のある者の割合は男性で10.9%、女性で33.3%となっており、中断の理由は男性が「健康上の理由」や「その他」が多いのに対し、女性は7割以上が「出産育児」となっている。研究費の受給期間中や特別研究員制度等の支援期間中にやむなく研究を中断することにより、その後の支援を受けられなくなるなど、研究者のキャリア形成上に支障を生じる場合もあるほか、研究の中断を期に退職する率も高い。また、研究者社会全体の流動性が低いため、退職後の再就職が難しい状況にある。

4.高齢研究者に関する環境

(研究者の高齢化)

我が国においては、全就業者や様々な職業に就いている人の平均年齢が年々上昇しているが、研究人材全般についても高齢化が進展しつつあると考えられ、特に大学教員では全就業者の平均よりも5歳程度高めで推移している。

(高齢研究者の活躍等の状況)

年齢の上昇とともに研究者の創造性がどのように変化するかということについての調査研究によれば、知識能力、身体能力の推移を総合的にみて、65歳付近でも研究能力を長期に維持できると予想する研究者は約4割いるとの結果が出ている。
また、産学官の研究機関を対象とした中高年研究者・技術者に対する将来の望ましい処遇の在り方についてのアンケート結果によれば、各機関は、中高年研究者について業績等を評価した結果適切であれば、研究の継続を可能とする処遇を行うことが望ましいと考えている。民間企業においては、研究者の平均年齢は比較的低く、早くからマネジメント部門等他の職種へ進んでいる人が多いと考えられるが、管理職以外に専門職としてのコースを設けたり、嘱託等で雇用するなど、能力のある研究者が長く研究者と行って活躍できるような対応を行っているところも多い。

(定年後の優れた研究者の処遇等)

他方、我が国の優れた研究者が、定年によって国内のポストを失うことを契機に海外の研究機関に流出する事例が生じており、我が国の国際競争力の維持・向上の観点から問題であるとの指摘もなされている。

5.外国人研究者に関する環境

(我が国における外国人研究者の状況)

「研究」、「教授」の在留資格で日本に滞在している外国人数は急速に増加しており、平成13年においては「研究」が3,141人、「教授」が7,196人となっている。国別で見ると、「研究」については約7割がアジア籍であり、欧州からは約2割であるが、北米からは約3%と少ない。「教授」についてはアジア47%、欧州21%、北米26%となっている。
科学技術政策研究所の調査によると、平成10年度に国立試験研究機関及び特殊法人研究開発機関について調査した47機関のうち、38機関に外国人研究者が在籍しており、対象機関の研究開発者総数に占める比率は19.2%であった。国籍別では中国(20.8%)、米国(10.9%)、韓国(9.5%)が多くなっている。
また、産学官の研究者に対する意識調査において、自分の所属する研究室、あるいは研究グループにいる外国人研究者の人数を調査した結果では、1人以上の外国人研究者がいると回答した者は、わずか3.4%であり、回答者の所属する研究室あるいは研究グループの研究者総数に占める外国人研究者総数の割合は0.9%であった。研究分野別では「材料・ナノテクノロジー分野」が最も多く5.8%、ついで「フロンティア分野」5.3%、「ライフサイエンス分野」3.0%であった。「材料・ナノテクノロジー分野」は我が国の国際的な論文数シェアやインパクトファクターが比較的高く、我が国の研究レベルが世界的に評価されているために、外国人研究者を吸引していることが考えられる(文部科学省「我が国の研究活動の実態に関する調査(平成14年度)」)。

(外国人研究者の研究環境)

優秀な外国人研究者を我が国に引き付けるためには、研究に専念し、安定して生活を送れるような環境を整備することが重要と考えられるが、そのためには、職場である研究機関や関係する周囲の研究者などだけの問題でなく、同伴する家族の生活環境、私生活での言語の障壁などの問題がある。文部科学省の調査においても、外国人研究者を受け入れて悪かった点として「宿舎の確保や子弟の学校問題等、生活環境の確保に手間がかかった」とする意見が多く見られており(28.3%)、家族も含めた外国人研究者への十分なサポートが求められている。

6.ポストドクター等若手研究者に関する環境

(ポストドクター等若手研究者に対する支援の現状)

我が国の大学院博士課程修了者数は年々増えており、平成13年度には13,642人と、5年前の平成8年度の9,860人に比べ、約1.4倍と大きく増加している。このような中で、第1期科学技術基本計画に示された「ポストドクター等1万人支援計画」に基づき、ポストドクター等若手研究者に対する支援は大幅に拡充されており、平成15年度予算においては全体として10,598人に対する支援が措置されている。
現在実施されているポストドクター等に対する支援は、日本学術振興会の行う特別研究員等のフェローシップ型と、競争的研究資金等による雇用型の2つに大別される。このうち、前者は、優れた若手研究者に、その研究生活の初期において自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を与えることにより、我が国の研究の将来を担う創造性に富んだ研究者の養成・確保に資することを目的とするものである一方、後者は競争的研究資金等により特定の課題につき研究を推進する中で、研究指導者の下でポストドクター等を参画させ、そのスキル・アップなど資質の向上に資するものである。
特に、日本学術振興会の特別研究員制度については、若手研究者の主体性を尊重し、特定の研究分野に限らず幅広い研究分野にわたって優れた若手研究者を確保できる点に特徴があり、優れた若手研究者の重要なキャリア・パスの一つとして定着している。また、運用上、研究に従事する場を出身研究室以外の研究室とすることで、研究者の流動性の向上にも資するものとなっている。
他方、第2期科学技術基本計画においては、研究指導者が明確な責任を負うことができるよう研究費でポストドクターを確保する機会の拡充を図ることが掲げられており、これらを踏まえ、競争的研究資金等による雇用型の支援が近年大きく拡充されている。
このように、ポストドクター等に対する支援が拡充され、多様化する中で、支援全体の在り方や、各制度の改善についての検討が必要となっている。

(ポストドクター等に対する支援の在り方や多様なキャリアパスの確保)

我が国において、ポストドクター等に対する支援が拡充される中で、それらの支援を受けたのちに、その経験を活かした仕事に就くことが出来るような「出口」を確保することが重要であることなどが指摘されている。
米国における博士課程修了者の活躍の状況を見ると、大学における教授、助教授等のほか、政府機関の行政官や研究資金の審査担当者、民間企業の経営者、研究者・技術者など極めて多様な職業に就いている。また、米国では民間企業に多くが所属している技術者の平均年収を見ると取得学位によって明らかに差があり、博士号取得者は修士号取得者に比べ収入が約11%多くなっている(学位取得後19年)のに対し、我が国の民間企業では博士課程修了者の初任給を学士、修士より優遇している企業の割合より、学士、修士とほぼ同等か差を設けていない企業の割合の方が高くなっているなどの状況がある。
こうした中で、今後、我が国においても、博士課程修了者が適切に処遇されるような多様なキャリア・パスが確立されることが課題であると考えられる。

(4)科学技術や社会のニーズの急速な変化の下での研究人材の需給

科学技術の急速な発展や社会のニーズの急激な変化に伴い、研究人材に求められる専門性、能力が大きく変化しつつあるが、大学等における人材の養成・供給がそうした社会の需要の変化に十分に対応しておらず、研究人材の需給に関する適切な調整が必要であるとの指摘がある。

(研究人材の専門性を巡る需給の状況)

科学技術の急速な発展や社会・産業構造の急激な変化に伴い、研究人材に求められる専門性、能力が大きく変化しつつあり、特定の分野の研究人材の不足や養成の必要性等についての指摘がなされている。
例えば、政府関係の報告書等においては、知的財産、産学官連携、ライフサイエンス、情報、環境・エネルギー、ナノテクノロジー・材料などの分野で人材の養成の必要性等が指摘されている。
また、企業においては、研究分野に関し、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料のほか、製造技術の研究分野で人材の不足が指摘されている。また研究者の不足の要因として、研究者採用の事情等により、自社の研究者の絶対数が不足していること、専門分野が多様化しているため、対応できる研究者が新規採用を含め不足していることなどが多く挙げられており、研究者不足への対応としては中途採用、外部への研究委託又は共同研究、その分野の新卒研究者の採用、現有の研究者のスキルアップや研究の生産性向上などが多く挙げられている。
一方、研究者から見た様々な科学技術人材の不足感としては、量の方が不十分な人材として研究支援人材(技能者、研究補助者)、質の方が不十分な人材としてマネジメント人材(技術経営(MOT)人材、評価人材)が挙げられ、質量ともに不十分な人材として科学技術と社会を媒介する人材(知的財産関連人材、起業支援人材、インタープリター、目利き人材)が挙げられている。
このような状況の中で、特に研究者の供給に関して、社会(研究コミュニティー、産業界、地域社会等)の多様なニーズに応える専門性や能力を兼ね備えた人材をよりタイムリーに供給すべきではないか、海外との比較において人材が不足しており、特定の分野については、当該分野の国際競争力強化のために供給を強化すべきではないか、あるいは将来の成長分野を見定め、長期的観点から戦略的に人材養成に取り組むことが重要ではないかなど、研究者の専門性や能力に関して、需要と供給の間の適切な調整を図る必要性が指摘されている。

(問題の要因)

このような研究人材の専門性等を巡る問題が生じている要因としては、以下のような背景、事情が相互に関連していることが考えられる。
○ 社会・産業構造の急激な変化に伴い、研究者に求められる専門性、能力が大きく変化しつつある中で、供給側と需要側で情報のやり取りが必ずしも十分ではなく、結果的に需給調整のメカニズムが十分機能していなかった。
○ 企業内での人材養成が行ないにくくなり、外部に即戦力を求める調達のニーズが増大し、特定の専門性等を有した人材の不足が顕在化した。
○ 研究者個人も変化に十分対応できる教育、訓練を受けていないために、変化への対応が柔軟にできない。
○ 供給側が組織内の慣性等により社会の変化のスピードに対応できていない。
○ これまでのキャッチアップ型社会では、人材養成の目標設定が比較的容易であったが、フロントランナー型の社会では目標設定等のアプローチが次第に困難になってきた。
○ 急速な技術革新が進む分野や、新興の研究開発分野では、人材の不足を補うために、大学、企業等を問わず既存の研究者の再教育・訓練が必要であるが、そのための体制が必ずしも十分でない。

(需給の調整に向けた検討課題)

人材の養成には長期間を要するものであり、変化する社会のニーズ等を予見して、長期的かつ計画的に人材を養成することはますます困難となっている。
このため、こうした人材養成の特性を踏まえつつ、今後の科学技術の進展や社会のニーズの変化に対応した専門性や能力を有する研究者をタイムリーに供給するためには、社会と人材養成機関との間でどのような需給調整メカニズムを構築すべきかが検討課題となっている。
また、需給の適切な調整のために、国、人材養成機関、産業界・学会が協力することが重要であることから、それぞれが各々の立場からどのような役割を果たすべきかも課題となる。

2.我が国の国際競争力を高めるための改革方策

(1)改革を進めるに当たって

研究人材の養成・確保に関する施策を検討・実施するに当たっては、以下のような諸点に留意することが必要である。

1.関係施策の体系的推進

研究人材の養成・確保に関する施策は多岐に及ぶことから、諸施策を全体として効率的・効果的に実施するため、既存の施策を含め、関係施策を体系化し、総合的に取組むことが必要である。

2.明確な目標設定と施策の重点的な取組み

研究人材の養成は長期的な取組みを要するものであり、その性質上、数値的な目標を設定することになじみにくい面もあるが、施策の効果的な実施を図るため、可能な限り明確な目標を設定し、競争的環境の下で施策の重点的な取組みを図ることが重要である。

3.国立大学法人化のメリットを生かした自主的取組みの推進

特に、国立大学については、平成16年度からの国立大学法人化に向けた法律案が国会で審議されているところであるが、法律案が可決・成立し法人化が実施された際には、人材養成・確保に関しても、法人化のメリットを最大限生かした、各大学の自主的取組みが積極的に図られることが期待される。

4.大学、産業界等の協力

優れた研究人材の養成・確保のためには、大学等の人材養成機関のみならず、需要側である企業等産業界にも適切な取組みが求められるものであり、それぞれの役割を踏まえた協力が図られることが重要である。

5.長期的視点に立った人材養成・確保とのバランス

もとより、研究人材の養成・確保については、社会的ニーズの変化への機動的な対応と、長期的視点に立った対応との適切なバランスが図られることが必要である。

6.国における財政支援

優れた研究成果の創出・活用や将来性の見込まれる分野・領域への戦略的対応等については、国においてもそれに対する支援が図られることが重要である。

(2)改革方策

1.世界水準の研究人材養成機能の整備

(改革の方向)

激化する各国の高度研究人材の養成、人材獲得競争の状況等に鑑み、我が国が世界的水準の研究人材を養成し、科学技術・学術の国際競争力を高めていくためには、本格的な国際的研究環境を導入し、国際的にも高く評価される研究者の養成を行う、国際競争力のある研究人材養成機関を早期に拠点的に整備する必要がある。また、若い時期に異文化に身を置き研鑚を積むため、海外の一流機関への派遣を通じた人材養成の一層の促進を図る必要がある。

(具体的施策例)

ア.国際競争力ある研究人材養成拠点の整備
○ 第一次提言においては、研究者養成の中核である大学院博士課程における教育機能の強化として、教育的視点の強化、カリキュラムの改革、自立性の養成、組織の多様性の確保等の重要性を指摘したところである。
本委員会では、同提言に沿った大学院での教育改革と同時に、激化する各国の高度研究人材の養成、人材獲得競争の状況等に鑑みれば、本格的な国際的研究環境を実現し、内外の優秀な学生、研究者が競って集い、そこで教育・訓練を受けた研究者が国際的にも高い評価を受けるような、国際競争力のある高度な人材養成機関(大学院や公的研究機関)を、早期に相当数整備していくことが必要な状況にあると考える。
このため、例えばトップレベルの外国人研究者の受入れを含む国際的研究環境の実現、海外の優れた教育・研究機関と提携した研究人材の養成、英語環境を含むグローバルスタンダードな若手研究者養成環境の構築など、本格的な国際的研究環境の導入に総合的に取り組む大学院や研究機関を、競争的環境のもとで重点的に支援することが考えられる。これらについては、従来の国際共同研究支援や、個別の研究者の派遣・受入れ支援といった個別の施策では量的、質的に十分な対応が困難であり、体系的かつ総合的な支援が求められるところである。

イ.海外一流機関への派遣を通じた人材養成
○ 諸外国との国際交流は、競争と協調が求められる研究の世界において不可欠な要素であると同時に、若い時期に異文化に身を置き自らを切磋琢磨することは、特に日本人研究者にとって重要である。今後我が国が、真に国際化を図り、内外の優れた研究者を引き付ける環境を実現するためには、特に中核となる機関については、相当の割合の研究者が長期の海外経験を有する者で占められることが望ましく、そのためにも、若い時期に海外の一流機関で、いわば「武者修行」の経験を積むことは一層促進されるべきである。
このため、国においては、海外特別研究員制度の拡充、特別研究員の一定期間の海外における研究活動の奨励、大学院博士課程後期に在学する学生を海外に派遣する制度の整備拡充など、若手研究者の長期海外派遣を促進するとともに、中堅研究者の長期海外派遣を拡充することが重要である。
ただし、我が国の留学生や機関からの派遣研究者は、派遣期間が短く、また帰国後のポストが保障されている場合が多いことなどにより、アジア諸国からの留学生等に比べハングリー精神に乏しく取組みが中途半端となっているとの指摘がある。また、海外で自立した研究活動を経験した者が、我が国に戻って研究を継続しようとする場合には、十分なポストがないとの指摘もある。このため、派遣制度の拡充に当たっては、派遣期間、評価について改善を考慮するとともに、海外で活躍する優秀な邦人研究者が日本国内でのポストに応募する場合には、海外での業績を積極的に評価するなどの配慮が必要である。

2.多様な人材が能力を発揮でき、研究に専念できる環境の実現

(改革の方向)

多様性を育む創造的・競争的環境の醸成を図るため、大学、研究機関等においては、能力、業績を適切に評価し、処遇に反映する人事システムを早急に構築する必要がある。また、女性研究者、外国人研究者、若手研究者、高齢研究者等多様な人材が能力を十分発揮できるよう、大学、研究機関等においては必要な環境整備を組織的、計画的に進めるととともに、多様な研究者が研究に専念できる支援体制の整備や研究施設・設備の整備を推進することが必要である。

(具体的施策例)

ア.多様性を育む創造的・競争的環境の醸成
(1)能力、業績が適切に評価され、処遇に反映される人事システムの構築
○ 多様な研究人材が活躍するためには、基本的な前提条件として、性別、国籍、年齢等を問わず、各人材の能力、業績を公正・適切に評価し、処遇に反映するシステムが構築されることが必要である。
このため、各大学、研究機関等においては、総合科学技術会議の方針に沿った「流動化促進計画」を整備し、公募を積極的に実施するとともに、採用、処遇、業績評価が公正で評価基準に基づき客観的に行われるシステムを構築する。また、選考基準・結果を公開し、透明性、公正性の向上を図ることが重要である。

(2)多様性向上に向けた各機関の自主的取組みの推進
○ 研究人材の多様性の向上による研究活動の活性化は研究機関において重要である。このため、各大学、研究機関等においては、第一次提言で指摘された自校出身比率の低減や、以下の各項目で述べるような対応を含め、研究人材の多様性向上に向けた計画を自主的に策定し、公表するとともに、国において、それらの取組みに対する支援を行うことが重要である。

イ.研究者が研究に専念できる環境の実現
(1)研究支援者の確保

○ 多様な研究者が研究に専念できるようにするためには、それを支える研究支援者の確保が不可欠である。
このため、今後、第2期科学技術基本計画において指摘された競争的研究資金の倍増や間接経費比率の拡充(当面30%を目安)を速やかに図る中で、大学や研究機関等はそれらの資金による研究支援者の確保を積極的かつ計画的に進めることが考えられる。
また、上記1ア.で述べた国際競争力のある研究人材養成拠点において研究支援者の拡充を推進することが考えられる。

(2)科学技術と社会の接点に立つ人材等の養成
○ 研究支援に関連する人材として、今後、科学技術と社会との接点に立つ人材や、大学、研究機関等において経営の観点も含め組織における研究開発をマネジメントできる人材の養成が重要となる。
このため、国においては、研究マネジメントを含む技術経営やアカデミック経営、知的財産の専門家等の養成を目指す専門職大学院等に対する支援を検討する必要がある。

(3)研究施設・設備の整備・充実
○ 大学、研究機関等において活発な研究活動を展開し、優れた研究成果を生み出すため、優れた研究施設・設備の整備が必要である。
このため、「国立大学等施設緊急整備5か年計画」を着実に推進するなど、今後とも、国内外の優れた研究者等を引き付ける魅力に富んだ世界水準の優れた研究施設・設備の整備が重要である。

ウ.女性研究者の参画促進と能力発揮
女性研究者の参画促進、能力発揮のための改革方策については、内閣府の男女共同参画会議基本問題専門調査会が本年4月にまとめた「女性のチャレンジ支援について」最終報告や、文部科学省生涯学習政策局の「女性の多様なキャリアを支援するための懇談会」が本年3月にまとめた「多様なキャリアが社会を変える」第一次報告(女性研究者への支援)において、様々な具体的提言がなされており、各大学、研究機関等においては、それらを踏まえ、具体的な取組みを実施することが重要である。
これらの諸提言を踏まえつつ、本委員会では、研究者の養成・確保という観点から、特に以下のような方策について取り組むことが重要であると考える。

(1)各大学、研究機関等における組織的取組みの推進
(組織的な取組み体制の整備)
○ 研究分野における男女共同参画促進に向け、各大学・研究機関等において組織的な取組みを推進していくことが必要である。
このため、各大学、研究機関等においては、男女共同参画促進委員会などの体制を整備し、中・長期的な目標の設定、具体的な行動計画の策定等を行うとともに、取組み状況を積極的に公表していくことが重要である。
また、これらの取組み状況を、自己評価・外部評価の評価項目に組み入れ、その評価結果等を踏まえて大学、研究機関等が自主的改善に取り組むことが望ましい。

(女性研究者の割合の計画的増加)
○ 特に、女性研究者の割合については、各大学、研究機関ごとや研究科等の組織ごとに目標や理念、女性研究者の実態、大学院の女子学生の割合等が異なるところであるが、今後の女性研究者の参画を促進する観点から、それらの目標・理念、実態等を踏まえつつ、各大学、研究機関等が自主的に数値目標を設定し、計画的に割合を増加させていくことが重要である。

(2)出産・育児後の研究継続など女性研究者が働きやすい環境の整備
(競争的研究資金や特別研究員制度等における運用の改善等)
○ 研究への意欲・能力がある女性研究者が、出産や育児との両立ができないためにキャリアを断念することのないよう、研究の中断や、その後の研究の継続、職場への復帰が容易に行えるような環境を整備することが必要である。
このため、国において、競争的研究資金や特別研究員制度等について、出産・育児に伴う受給の一定期間の中断や期間延長を認めるなどの弾力的運用を可能とするよう検討することが重要である。また、出産・育児により研究を一時中断した研究者の復帰を支援する再教育や訓練等の方策を国や大学、研究機関等において検討することが重要である。

(女性研究者が働きやすい環境の整備)
○ 女性研究者がより働きやすい環境を整備するため、各大学、研究機関等において、出産・育児、介護等で一時的に大学、研究機関等を離れる場合にも自宅で研究が継続できるようなネットワーク・システムの整備やその間の研究を支援するスタッフの雇用の促進、ワークシェアリングや勤務時間管理の在り方の弾力化などの柔軟な就労形態の導入、保育施設の整備充実等の環境整備を行うことが重要である。

(3)意思決定機関等への女性研究者の参画の促進
○ 大学、研究機関等における男女共同参画を推進するためには、意思決定を行う機関等に参画する女性研究者が増えることが重要である。
このため、各大学、研究機関等において、大学、研究機関等の評議会、部局長会議等の意思決定機関等に積極的に女性研究者を登用するための取組みを進めるほか、学位論文の審査等においても、女性研究者の能力・適性を踏まえつつ、女性研究者の参画が促進されるよう、各大学の自主的かつ積極的な取組みが重要である。

(4)女性の研究職への進出の拡大
○ 女性の研究職への進出の拡大を図るためには、科学的素養や研究職に対する関心の涵養を図るとともに、研究者としてのキャリア形成に対する支援を行うことが必要である。
このため、青少年の科学技術に対する理解増進の充実を図るとともに、優れた女性研究者のロールモデルを示し、女子学生に対して研究者の世界の素晴らしさや課題の乗り越え方等を伝えるため、国や大学、研究機関等において教員や研究者を対象とした研修会の開催や事例集の作成などを行うことが考えられる。

エ.優れた外国人研究者等の受入れ等の促進
(1)外国人研究者の積極的受入れ
(外国人研究者の積極的受入れ・登用の促進)
○ 我が国の研究人材の多様性を向上させるとともに、分野によっては研究者の量的不足を補う観点や優秀な指導者を招き人材養成に資するという観点からも、各機関・分野の特性を踏まえつつ、研究リーダーや研究機関幹部への登用も含め、優れた外国人研究者の積極的受入れを促進することが必要である。
このため、各大学、研究機関等において、国際公募の徹底による開かれた採用や積極的な求人情報の発信を進めるとともに、各機関の裁量によって処遇、雇用期間等について魅力ある条件提示を行うなど雇用・受入れ条件の弾力化を図ることが重要である。

(外国人研究者の研究・生活環境の整備充実)
○ 優れた外国人研究者の受入れを促進するためには、外国人研究者が我が国で研究を円滑に実施できるよう、研究・生活環境の整備充実を図ることが必要である。
このため、各大学、研究機関等においては、優秀な外国人スタッフの拡充や国際担当副学長等の特定、国際担当部門の整備、優れた専門職員、ボランティアの採用、確保や研修の強化などの大学・研究機関の組織・体制の強化を図るとともに、宿舎の整備、配偶者の雇用機会の提供、子供の教育への配慮など、研究者やその家族の生活に対する支援の充実を図ることが重要である。
また、外国人を引き付ける魅力ある研究環境を形成するため、世界トップレベルの研究水準の実現や研究施設・設備の整備充実を図ることが重要である。

(外国人特別研究員制度等の改善)
○ そのほか、優秀な外国人研究者の受入れを促進するため、国においては、外国人特別研究員の招致の対象の拡充と期間延長についての運用の弾力化、将来の来日意欲の喚起や若手研究者の養成のための外国人大学院生の短期受入れの拡充などの環境整備を進めるほか、社会保険制度や入国審査制度等についての改善の検討を進めることが重要である。

(2)優秀な留学生の受入れ
○ 研究人材の多様性を向上させる等の観点から、優秀な留学生の受入れを推進するとともに、引き続き我が国で研究者として研究に従事できるような環境を整備する必要がある。
このため、国において、ポストドクター制度による支援や競争的研究資金による雇用の充実など研究を継続できる経済的支援の充実を図ることが重要である。また、卒業者の企業による雇用の促進を図るため、大学、研究機関等と企業との間で情報交換等を実施することなどが重要である。

(3)海外で活躍している邦人研究者の受入れ等
○ 我が国において、いわゆる「知の空洞化」が懸念されている状況も踏まえ、海外で活躍している邦人研究者の受入れや、優れた研究者が引き続き我が国にとどまって研究を続けることができるような環境の整備を進めることが重要である。
このため、各大学、研究機関等において、国際公募による開かれた採用や積極的な求人情報の発信を行うとともに、機関の裁量による魅力ある処遇等の提示を行うなど雇用条件の弾力化を図ることが重要である。

オ.若手研究者の能力発揮
(1)ポストドクター等に対する支援の多様性の確保
(フェローシップ型と雇用型のバランスのとれた支援)

○ 将来の我が国の研究を担う優れた研究者を養成・確保するとともに、創造性に富んだ研究生活初期の若手研究者に研究に専念できる環境を整備し、我が国全体としての研究活動の活性化を図るなどの観点から、ポストドクター等の若手研究者に対する支援を充実する必要がある。
現在、ポストドクター等に対して行われている特別研究員制度等のフェローシップ型の支援と競争的研究資金等による雇用型の支援は、それぞれ異なる趣旨・目的や意義を有するものであり、優れた若手研究者の養成・確保、資質の向上のためには、いずれか一方でなく、双方の支援がバランスよく講じられることが必要である。

(フェローシップ型支援の意義等)
○ 特に、若手研究者の主体性を尊重し、特定の研究分野に限らず幅広い研究分野にわたって優れた若手研究者を確保する観点からは、特別研究員等のフェローシップ型支援のもつ意義は大きい。
このため、国においては、当面、第2期科学技術基本計画に示された方向性に沿って、競争的研究資金による雇用型の支援を拡充していくことは重要であるが、それとともに、特別研究員等のフェローシップ型についても引き続き推進していくことが必要である。

(各支援制度の改善の検討)
○ 同時に、国においては、ポストドクター等に対する支援制度が多様化している現状を踏まえ、各支援制度がそれぞれの趣旨に添って一層効果的に機能するよう、人材養成・確保や資質の向上の観点からの成果を検証しつつ、各制度の改善についても議論を深める必要がある。

(2)若手研究者に対する研究費等の拡充
○ このほか、若手研究者が十分に能力を発揮できるようにするためには、競争的・流動的な研究環境の下で、様々な支援を充実していくことが重要である。
このため、国や大学、研究機関等においては、若手研究者に対する研究費の拡充に努めるとともに、海外の一流の機関で研究を行う機会の拡充や、大学院博士課程学生に対する競争的研究資金等による雇用などの経済的支援の拡充などを図ることが重要である。

(3)研究者の多様なキャリア・パスの構築等に向けた検討
(ポストドクター等の現状把握)
○ 今後、中期的には、国において、ポスト・ポスドク問題(ポストドクター等支援制度による支援終了後の問題)も含めた若手研究者全体に対する支援の規模、内容の在り方、研究者としての生涯におけるポストドクターの位置付け等を検討するため、我が国におけるポストドクター等の現状把握など必要なデータの収集に努めることが必要である。

(研究者の多様なキャリア・パスの構築に向けた支援等の検討)
○ この現状把握等も踏まえつつ、今後、研究人材の多様なキャリア・パスを確保するための国の支援や大学、産業界等に求められる取組み、研究人材に係る施策の体系的な充実等について検討を進めていくことが重要である。
また、その際には、我が国の研究人材の流動的かつ競争的研究環境を整備し、若手を含め優れた研究者がその能力を最大限発揮できるようなシステムを実現する観点から、日本型のテニュア制度の導入についても検討することが適当である。
なお、中央教育審議会大学分科会では、「助教授」、「助手」の職務規定の見直し等の議論が行われることとなっているが、いずれにせよ若手研究者の独立性や研究者のあり方についてさらに検討を深めることが必要である。

(多様なキャリア・パスを構築するための人材養成)
○ 研究者の多様なキャリア・パスを構築するためには、研究者自身に高い専門性に加え、幅広い視野や関心、変化への柔軟な対応力を身につけさせることが必要であり、第一次提言で指摘した大学院博士課程の教育機能の強化が必要である。

(4)優れた研究者の養成を促進する評価の推進
○ 優れた研究人材を養成するためには、適切な評価を実施することが極めて重要である。
このため、各評価実施主体において、研究機関やプロジェクト、研究費等の評価の中で、人材の養成の観点から適切な評価を実施するよう努めめるとともに、若手研究者の流動性や独創性の発揮などを阻害することのないよう留意することが重要である。

カ.優れた高齢研究者が引き続き能力を発揮できる環境の整備
(1)定年後も研究を継続できる仕組みの導入
○ 少子高齢化が急速に進む中、今後とも我が国が優秀な研究人材を確保し、国際競争力を維持・向上させていくためには、優れた高齢研究者が引き続き能力を発揮できる環境を整備することが重要である。他方で、年功主義を残し、能力主義を徹底しないまま安易に雇用期間の延長等を行うことは、若手の登用の機会を奪い、研究現場の活力を失わせるおそれもある。
このため、各大学、研究機関等においては、公正・適切な評価を行った上で、優れた能力、研究業績を有すると認められる高齢研究者については、定年後も専門職、嘱託等何らかの立場で研究を継続できる仕組みの導入を検討することが重要である。その際には、競争的研究資金の活用等も検討すべきである。

(2)教育、社会貢献活動等での活躍
○ 高齢研究者が引き続き研究者として活動を継続することが困難な場合にも、例えば、学生等に対する授業、講義、研究指導といった基礎的な教育等を行ったり、技術移転などの社会貢献活動を行う立場でその能力を活用することも考えられる。

3.急速に変化する需要に対応する研究人材の機動的供給メカニズムの導入

(改革の方向)

科学技術の急速な発展や社会のニーズの変化に適切に対応した研究人材の養成・確保を図るため、大学等は社会のニーズ等の動向を十分注視し、自主的な判断に基づき、柔軟・機動的な対応を行うことが期待される。また、今後特に大きな需要の増大が見込まれる新興分野については、国において可能な限りニーズの把握等を行い、それに基づく人材養成機関への支援方策を検討することが適当である。また、他の分野からの研究人材の参入に対する支援や人材養成に関する産学パートナーシップの確立を図ることが重要である。

(具体的施策例)

ア.柔軟な人材養成システムの確立
○ 科学技術の急速な発展や社会のニーズの変化に対応した人材の養成・確保を行うに当たっては、まずは大学等の人材養成機関において、それらの動向に機敏かつ柔軟に対応した人材養成が行われることが基本である。
このため、大学等においては、社会のニーズ等の動向を十分注視し、その自主的な判断に基づき、学部等の編成や学生定員につき、より柔軟かつ機動的な対応を行うことが期待される。
特に、国立大学の法人化や学部、研究科等の設置認可の弾力化により、組織編成や学生定員等に関する大学の自由度が増大することから、これらの事項は各大学の経営上の重要な問題であるとの認識に立った対応が重要である。また、今後、社会のニーズに機敏に対応するため、大学の経営への学外者の参加による大学と社会の連携の強化が期待される。

イ.変化に対応できる人材の養成
○ このように今後の我が国の研究者には、従来以上に変化への迅速な対応や、追従者から先駆者への転換の要請の中で、独創性、創造性、未知のものにチャレンジする精神等が求められる。
このため、第一次提言でも指摘したとおり、大学院教育などにおいて、高い専門性に加え、視野や関心の広さ、変化への柔軟な対応力を養うためのカリキュラム上の工夫等の教育機能の強化が必要であり、また学部のレベルにおいても、これらの基礎を培うための特色をもった教育機能の強化が必要である。

ウ.今後需要の増大が見込まれる分野の人材養成への支援
(人材養成ニーズの把握等)
○ 特に、今後大きな需要の増大が見込まれる新興分野や重要分野については、可能な限り今後のニーズを踏まえ、必要な人材の養成・確保に向けた取組みを行うことが重要である。
このため、例えば、ライフサイエンス、情報、知的財産等の分野については、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会等の関係部会等において、各分野の今後の人材養成に対するニーズの把握等を可能な限り行うとともに、それに基づく各分野の人材養成機関への支援のあり方を検討していくことが必要である。
また、国や人材養成機関においてニーズの把握等を的確に行うため、産業界からも、今後必要とされる人材や分野についての具体的かつ積極的な情報の発信が期待される。

(他分野からの研究者の参入の支援)
○ 他方、人材養成については、一定の養成期間を必要とするものであり、あらかじめ将来の社会ニーズ等の動向を予測して、新興分野等の人材養成・確保を過不足なく行うことは極めて困難である。このため、現実的な対応として、新興分野等の研究者の養成を図るため、他分野から新規に参入する研究者を育て、支援する制度の確立を図ることが重要である。
このため、例えば、学校を卒業した後でも、全国各地の大学等による講座、インターネットなどを通じ、企業等の技術者、研究者等が、多様な最先端の科学技術について学ぶことができるような教材や機会の提供などの再教育機能の充実や、新分野の出現に対応するモデルカリキュラムの開発支援を行うことも有効と考えられる。

エ.産学人材養成パートナーシップの確立
○ 社会のニーズに適切に対応した人材の養成・確保を円滑に行うためには、人材養成に関する需要側である産業界と養成側である大学等との間のパートナーシップを確立することが重要である。
このため、大学、研究機関等と産業界の間で、上述のような人材の養成に関する産業界の情報発信等も含めた相互のニーズの理解促進のほか、研究者等の交流、インターンシップの充実、産学共同プロジェクトや連携大学院による大学院生やポストドクターの企業での研究経験の促進等の取組みを推進することが重要である。
また、このような取組みの推進を通じ、企業における優秀な博士課程修了者の雇用の一層の促進が期待される。

オ.社会全体の人材の流動性の向上
○ 人材の需給の適切な調整のためには、研究人材のみならず、我が国社会全体として必要な人材の流動性向上に向けた取組みが不可欠である。
このため、給与や社会保障等の面での移動による経済的不利益の解消等について、経済財政諮問会議、総合科学技術会議はもとより、政府全体の対応を働きかけるなど社会全体の取組みについて政府一体となった検討が進められるべきである。

おわりに

(提言の着実な実施に向けて)

この提言では、「はじめに」において述べたように、研究人材の養成・確保に関して、第一次提言で示した世界トップレベルの研究者の養成のための改革方策のほかに、我が国全体の科学技術・学術に係る国際競争力を維持・向上する観点から特に重要と考えられる事項について改革方策をとりまとめたものである。ここに示した改革方策の中には、国、大学・研究機関、学会、産業界等がそれぞれの立場で実現に向けて努力すべき事項が含まれており、今後、それぞれの主体が協力しつつ、改革に向けた取組みを真剣に行うことが強く期待されるものである。文部科学省においては、本提言を含め人材施策の総合的かつ着実な実施に向けた取組みを求める。
また、研究人材の養成・確保に関しては、今回の提言に向けた検討で取り上げるに至らなかった課題として、例えば、技術者の養成・確保、科学技術分野の理解増進活動、研究者のキャリア・パス全体の在り方などが残されているところであり、本委員会としては、今後引き続きこれらの課題について検討を進める予定である。

お問合せ先

科学技術・学術政策局政策課

(科学技術・学術政策局政策課)

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