科学技術・学術審議会(第68回)議事録

1.日時

令和4年10月13日(木曜日)16時00分~18時00分

2.場所

文部科学省3階3F1特別会議室及びWeb会議

3.議題

  1. 各分科会等の報告について
  2. その他最近の科学技術・学術の動向について
  3. その他

4.出席者

委員

濵口会長、須藤会長代理、大野委員、小縣委員、小川委員、越智委員、小原委員、梶原委員、春日委員、勝委員、岸本委員、栗原委員、小長谷委員、鈴木委員、高梨委員、高橋委員、田中委員、仲委員、長谷山委員、宮浦委員、観山委員、明和委員、村山委員、門間委員、安浦委員

文部科学省

永岡文部科学大臣、井出文部科学副大臣、山本文部科学大臣政務官、柳文部科学事務次官、柿田科学技術・学術政策局長、佐伯科学技術・学術政策研究所所長、阿蘇大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、木村大臣官房審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、原大臣官房審議官(研究開発局担当)、須藤科学技術・学術政策研究所総務研究官、赤池科学技術・学術政策研究所上席フェロー、北山科学技術・学術総括官、齋藤計画課長、山下高等教育企画課長、神谷研究開発戦略課長、黒沼大学研究基盤整備課長、山之内研究開発局海洋地球課長、河村学術企画室長、馬場大学研究力強化室長、佐野科学技術・学術戦略官(制度改革・調査担当)、ほか関係官

5.議事録

【濵口会長】  それでは、お時間になりましたので、科学技術・学術審議会総会第68回を開催させていただきます。御多忙中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 本日は、永岡桂子大臣、井出庸生副大臣、山本左近大臣政務官に御出席を賜っております。
 それでは、まず、永岡大臣から御挨拶を賜りたいと存じます。よろしくお願いいたします。

【永岡大臣】  皆様、こんにちは。文部科学大臣の永岡桂子でございます。第68回の科学技術・学術審議会総会の開会に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、一部オンラインではございますが、3年半ぶりということでの対面の開催と伺っております。委員の皆様方におかれましては、御多忙のところを御出席いただきまして、本当にありがとうございます。
 これまで、第11期の科学技術・学術審議会におきましては、第6期科学技術・イノベーション基本計画を踏まえました研究開発の在り方などにつきまして、活発な議論が行われていると伺っております。近年、我が国の研究力は相対的に低下しており、研究力の強化が喫緊の課題でございます。科学技術・学術審議会には今期、大学研究力強化委員会が設置されまして、多様な研究大学群の形成に向けて御議論いただいているほか、我が国の研究力強化に向けましたエビデンス把握につきましての議論も行っていると伺っております。
 科学技術立国の実現は、岸田内閣が掲げます成長戦略の重要な柱でございます。本日は、各界を代表する委員の皆様より忌憚のない御意見をいただくとともに、引き続きまして科学技術・学術行政の支援を賜りますことをお願い申し上げまして、御挨拶とさせていただきます。
 本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 次に、井出副大臣より御挨拶を賜ります。よろしくお願いいたします。

【井出副大臣】  皆様、こんにちは。8月に副大臣を拝命しました井出と申します。大変浅学非才の身ではございますが、皆様の御指導を賜りますようお願い申し上げます。
 昨今、安全保障ですとか経済安全保障、食料の安全保障、様々なことで安全保障が言われておりますが、私にとりましては研究、言わば知の安全保障といいますか、そういうことはやっぱり知の基盤を広く厚くする努力というものをやらなきゃいけないのではないかなということを、この短い期間ですが痛感してまいりました。それは当然これから取り組んでいくような博士課程の皆さんへの支援といったものからスタートしますし、様々なこれまでやっていただいている科研費ですとか創発、ただそれもだんだん支援の持続性に難しいところがあるとも聞いておりますが、そうした知の基盤を守る、そのことがあっての国の力、国の発展、世界への貢献だと思っておりますので、そうした観点で御指導いただければと思います。
 政治や社会というものはとかくその成果を求めがちだろうと思いますが、成果というものはやはり基盤があっての成果だと思いますので、皆様に御指導いただきながら、そういう思いで取り組んでまいりたいと思います。どうぞ本日はよろしくお願いいたします。

【濵口会長】  ありがとうございました。
 次に、山本大臣政務官より御挨拶を賜ります。どうぞよろしくお願いいたします。

【山本大臣政務官】  皆様、改めましてこんにちは。8月に文部科学大臣政務官を拝命いたしました衆議院議員、山本左近でございます。永岡大臣、井出副大臣に続いて、一言御挨拶申し上げます。
 本日は大変御多用のところ、科学技術・学術審議会総会に御出席いただき、誠にありがとうございます。科学技術・イノベーションは「新しい資本主義」の重要な柱として、我が国の生命線というべきものですが、近年その研究力の相対的な低下が指摘されております。また、若手や女性の研究者の方のさらなる活躍促進やSTEAM教育の推進等を通じたイノベーション人材育成は、未来への投資として極めて重要です。第6期科学技術・イノベーション基本計画においては、世界最高水準の研究力を取り戻すことが目標として掲げられており、文部科学省といたしましては、委員の皆様の御知見を賜りながら研究力強化のための対策を立てていきたいと考えております。
 本日は、ぜひとも委員の皆様からの忌憚のない御意見をいただきますようお願い申し上げ、私の挨拶といたします。本日はありがとうございます。

【濵口会長】  ありがとうございました。
 ここで、永岡大臣、山本大臣政務官は御予定がございまして退出されます。どうも御出席ありがとうございました。

【永岡大臣】  ここで失礼いたします。どうぞよろしくお願いいたします。

【濵口会長】  それでは、再開させていただきます。
 先ほど永岡大臣からも御発言がありましたとおり、ウェブ会議を併用した形ではありますが、本日は平成31年3月以来、3年半ぶりの対面開催とさせていただいております。今期初めての対面開催ということもあり、ぜひお顔を拝見しながら活発な意見交換ができればと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入る前に事務局から説明をお願いいたします。

【佐野科学技術・学術戦略官】  それでは、事務局から説明させていただきます。
 本日の総会は、科学技術・学術審議会令第8条第1項に定める定足数の過半数を満たすことを御報告いたします。
 続きまして、事務局に人事異動がございましたので御紹介させていただきます。
 まず、文部科学事務次官、柳孝でございます。

【柳事務次官】  柳でございます。よろしくお願いします。

【佐野科学技術・学術戦略官】  科学技術・学術政策局長、柿田恭良でございますが、本日は公務のため、遅れて出席予定でございます。
 次に、審議官(研究振興局及び高等教育政策連携担当)、木村直人でございます。

【木村大臣官房審議官】  よろしくお願いいたします。

【佐野科学技術・学術戦略官】  科学技術・学術政策局科学技術・学術総括官、北山浩士でございます。

【北山科学技術・学術総括官】  よろしくお願いいたします。

【佐野科学技術・学術戦略官】  高等教育企画課長、山下恭徳でございます。

【山下高等教育企画課長】  山下でございます。よろしくお願いいたします。

【佐野科学技術・学術戦略官】  科学技術・学術政策局研究開発戦略課長、神谷考司でございます。

【神谷研究開発戦略課長】  よろしくお願いいたします。

【佐野科学技術・学術戦略官】  次に、本日のハイブリッド形式による会議の開催に当たりまして、委員の先生方にお願いがございます。
 まず、会場にお越しの先生方におかれましては、御発言の際は挙手をお願いいたします。御発言の際はお手元のマイクをオンにしてください。御発言時以外はマイクをオフにしていただきますようお願いいたします。
 オンラインで御出席の委員の先生方におかれましては、御発言の際は手のマークの挙手ボタンを押すようにお願いいたします。御発言後は、再度挙手ボタンを押して挙手を取り消してください。御発言時以外はミュートにしていただき、御発言時のみ「ミュートを解除」を御選択いただくようお願いいたします。
 以降は共通となりますが、会場及びオンライン上でも、聞き取りやすいように御発言の都度、お名前をおっしゃっていただくようお願いいたします。
 御発言の際、資料を参照する際は資料番号、ページ番号、またページ内の該当箇所などを分かりやすくお示しいただくよう御配慮をお願いいいたします。
 本日の資料につきましては議事次第に記載のとおりでございます。なお、参考資料1-1といたしまして最新の委員名簿をお配りしております。
 説明は以上でございます。

【濵口会長】  それでは、議事に入ります。議題1の各分科会等の報告について、まずお諮りします。第11期における各分科会等の活動状況全体について、事務局から簡単に説明をいただいた後、分科会等からの主な活動報告について1件、御報告いただきます。
 それでは、まず、各分科会等の活動状況について、事務局から説明をお願いいたします。

【佐野科学技術・学術戦略官】  それでは、資料1-1-1について説明させていただきます。通し番号の3ページ目を御覧ください。資料1-1-1の1枚目、通し番号の3ページ目でございます。こちらにつきまして、科学技術・学術審議会の構成が3ページ目に記載がございます。4ページ目には審議会の会長、分科会長、代理等の記載をさせていただいているところでございます。
 5ページ、6ページ目でございます。こちらに本審議会の第11期が開始して以降の総会、総会直下の分科会、部会、委員会について、主な審議事項・報告等及び開催状況についてまとめさせていただいてございます。
 この審議会本総会でございますが、5ページ目に記載のとおり、前回は本年4月に開催させていただいておりますが、当該総会以降、総会直下の14の分科会等のうち11の分科会等で開催が行われているところでございます。
 この分科会等の中で、5ページ目の上のほうに記載の研究計画・評価分科会におきましては、記載のとおり航空科学技術分野に関する研究開発ビジョンと分野別研究開発プランが決定されているところでございまして、分野別研究開発プランにつきましては、本日の資料1-1-2、14ページからでございますが配付させていただいているところでございます。この研究計画・評価分科会におきましては、分野別研究開発プランに基づきまして研究開発課題等の評価を行っていくこととしております。
 また、このページの下のほうでございます。海洋開発分科会でございますが、「今後の海洋技術の在り方」という提言が取りまとめられているところでございまして、この後御説明いただく予定となってございます。
 また、7ページ目は昨年度の本総会で各分科会長等から御説明いただきました第11期の科学技術・学術審議会各分科会等における活動ということで、併せて配付させていただいているところでございます。
 説明は以上でございます。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 それでは、続きまして、分科会等からの主な活動報告について、海洋開発分科会長代理である小原委員から報告をお願いいたします。

【小原委員】  小原でございます。本日は、分科会長の藤井委員が御欠席のため、代わりに発言させていただきます。
 海洋開発分科会では、8月30日付で「今後の海洋科学技術の在り方」という提言を出しました。その概要を御説明いたします。通し番号ですと190ページです。資料1-1-3-1になります。
 まず、冒頭に本提言の位置づけを記載してございます。本提言は、来年度に改定予定の次期海洋基本計画に向けて、海洋科学技術が果たすべき役割について、国連海洋科学の10年や第6期科学技術・イノベーション基本計画なども踏まえて、幅広い視野で検討させていただいたものになります。文部科学省の施策として進めるべき内容とともに、内閣府に対して次期海洋基本計画に盛り込むべき施策を説明する資料としての役割も想定し、取りまとめたものになります。
 では、各項目について簡単に御説明したいと思います。1ポツ目は、将来的な海洋調査観測システム及びデータ共有の在り方をまとめております。
 (1)は海洋調査データの取得について、でございます。箇条書で3つ並んでおりますが、1つ目、AUVなどの新しい海洋調査技術の研究開発の加速と、他分野の技術を積極的に取り入れていくこと。2つ目、国際連携による持続的な観測体制を構築し、また国内の観測人数を戦略的に国際枠組みに提案していくこと。3つ目、北極域などの観測空白域のデータ収集を強化することを盛り込んでございます。
 次、(2)はデータ連携や通信について、でございます。データ連携・解析基盤に海洋のデータを提供し、またITの専門家と連携するなどしてデータの付加価値を高めていくこと。次は、国内の各機関が収集するデータの共有・公開の範囲について、統一的な整理を内閣府を中心に政府で行うべきということ。次は、先端的な情報通信技術を海洋調査に積極的に取り入れて、海洋分野のデジタルトランスフォーメーションを加速していくことを盛り込んでございます。
 次に、2ポツから4ポツまでは社会課題を意識した項目として整理してございます。2ポツについては気候変動問題解決に資する取組として、まず産学官が連携して我が国周辺の持続的な観測体制をつくること。次は、我が国周辺に加え、北極域や南極域の観測も促進すること。次は、気候変動の緩和策・適応策の評価に向けたシミュレーション研究を行うこと。さらに、海洋を活用してCO2を減らすネガティブエミッション技術開発を強化することを盛り込んでございます。
 3ポツは安全・安心な社会の構築に資する取組として、まず、地震・津波予測の精度向上のため、海底調査や地殻活動のモニタリングを進めること。次に、気象災害の予測・予防に向け、海水観測の精緻化やシミュレーション研究を進めること。次に、リアルタイム観測網など、災害への即時対応や復興などに活用可能な研究も進めること。さらに、海底資源の探査・確保に必要な技術の開発を進めることを盛り込んでございます。
 4ポツ目になります。持続可能な海洋利用に向けた海洋生態系の理解に資する取組ということで、まず、海洋生態系の理解に向けたモデリング研究や、環境DNAのような新しい生命科学的手法を検証すること。次に、持続可能な海洋利用に向けたビッグデータの収集、機械学習などの活用といった各種取組を実施することを盛り込んでございます。
 最後、5ポツになりますが、海洋分野における総合知の創出及び市民参加型の取組については、第6期科学技術・イノベーション基本計画も踏まえて、まず、研究者を含めた海に関わる多様な人々の協働で総合知を創出していくこと。次に、海洋科学における市民の研究参加を広げていく手法の体系化、この2つを海洋分野での新たな取組として整理してございます。
 以上、簡単でありましたが提言の概要を説明させていただきました。なお、提言の本文につきましては時間の関係で割愛させていただきますが、次の資料1-1-3-2として配付させていただいておりますので、御参照いただければ幸いでございます。
 以上、説明を終わりにさせていただきます。ありがとうございました。

【濵口会長】  ありがとうございました。
 それでは、各分科会等の活動状況及び分科会等からの主な活動報告について、5分程度意見交換の時間といたします。御質問、御意見等はございますでしょうか。膨大な資料がありまして、御意見いただくのも大変かと思いますが、何でも結構でございます。思われることがございましたら御意見をいただければと思いますが、よろしいでしょうか。
 梶原委員、どうぞ。

【梶原委員】  ありがとうございます。梶原でございます。
 先ほどの海洋科学技術の在り方のところで、いわゆる経済安全保障政策との関係性に触れられていました。今後の科学技術政策において、経済安全保障の影響は広く出てくると思うのですが、海洋以外の分野でも分科会で検討や議論がされているのか、何か把握されていることがあれば教えていただければと思います。

【小原委員】  その辺りについては、事務局から回答させていただきたいと思います。
 海洋地球課からお願いできますか。

【濵口会長】  いかがでしょうか。

【山之内海洋地球課長】  海洋地球課長の山之内でございます。御質問、どうもありがとうございます。
 ご質問が海洋分野以外ということですので、私どもの所掌の範囲外にはなるのですが、例えば宇宙などは多分あるのではないかと思います。他の分科会については、総会事務局の方から、答えていただけますでしょうか。

【濵口会長】  事務局、いかがでしょうか。

【佐野科学技術・学術戦略官】  手元に情報がございません。申し訳ございません。

【濵口会長】  多分、全体としては議論が今進みつつあるところだと思います。なかなかナイーブな問題が出てきていますけど、キーワードとしてはデュアルサポートとかいろいろな形で経済安全保障を保ちつつ、科学技術、日本の経済を発展させるための方策というのをこれから策定していかないといけない時期へ入ってきていると思いますので、本当に先生の御意見は大変大事な時期に入ってきていると思いました。ありがとうございます。
 ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、御意見ありがとうございました。
 本日は、各分科会等の活動状況及び1件の主な活動報告をいただきました。次回開催の総会が今期最後の総会となる予定でございます。前回の総会の際にもお願いいたしましたように、今期最後の総会においては、昨年10月の総会で各分科会長等から御報告いただいた第11期科学技術・学術審議会各分科会等において取り組むべき活動を踏まえた各分科会等の今期の活動について御報告いただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、続きまして議題の2、最近の科学技術・学術の動向についてお諮りします。ここでは1番目に大学研究力強化に向けた取組について、これは今本当に焦眉の課題になっていると思いますが、2番目に我が国の研究力強化に向けたエビデンス把握について、3点目として令和5年度概算要求について意見交換を予定しております。
 まず、1番目の大学研究力強化に向けた取組について説明いただいた後、意見交換を行います。
 黒沼大学研究基盤整備課長及び北山科学技術・学術総括官より、よろしくお願いいたします。

【黒沼大学研究基盤整備課長】  大学研究基盤整備課長でございます。
 お手元の資料204ページからをお開きいただければと思います。こちらは大学研究力強化に向けた取組ということで、議題1の各分科会等の報告のうち大学研究力強化委員会での議論の報告も兼ねているということかと思っております。大学研究力強化委員会では、現在10兆円大学ファンドの対象となるような大学、それから地域の中核あるいは特色ある研究大学、それぞれがともに発展できる関係を構築していくことで多様な研究大学群を形成すると、そういうことを目標として議論を進めていただいております。そのうち前半の部分、国際卓越研究大学法に基づく基本方針につきまして、私から御説明させていただければと思います。
 207ページに行っていただけますでしょうか。これは10兆円大学ファンドの対象となる国際卓越研究大学が目指すゴールのイメージでございます。左のほうに3つほどポツが並んでおりまして、世界最高水準の研究環境(待遇、研究設備、サポート体制など)を整備することによって世界トップクラスの人材が結集するような大学を目指したいということと、3番目にあるような博士課程学生の環境改善なども行っていくことを目標としています。人材・知の好循環、あるいは資金面でも好循環が生まれていくような大学を想定しているところでございます。
 具体的には、208ページにあるような各種の指標がございます。例えば上から2つ目の大学の教官・教員の待遇ですとか、3番目にあります教員1人当たりの職員数などバックオフィスの機能といったところが典型ですけども、こういった環境の差を埋めていくということを狙いとしているところでございます。
 209ページを御覧いただきますと、そこに向けてどのように進めていくのかという制度の全体像を図でイメージしたものがございます。右上が今し方申し上げたような目指す大学のゴールでございまして、そこに至る過程を示しております。今現在、我が国の大学でここのレベルに達しているところはないという前提に立ちまして、左下の緑のところから右上のゴールを目指せるポテンシャルを持っている大学、これを研究力、事業・財務戦略、ガバナンス体制の3つの観点から選んでいき、そこに対して大学ファンドからの助成をしていくことによって右上のゴールを目指していくと、そういうようなイメージでございます。
 210ページがそのスケジュールでございます。左端にあります大学ファンドの設置自体は令和2年度に既に法改正を行っておりますけれども、現在のフェーズは真ん中の黄色で色づけしたところでございます。国際卓越研究大学法が今年5月に成立しまして、それに基づく基本方針、支援対象となる大学をどう選ぶのか、助成額をどのように算定していくのか、そういったものを盛り込んだ基本方針を策定するプロセスに入っております。今日までパブリックコメントを実施中でございまして、11月中旬に決定していく予定でございます。それが決定しましたら、年内に大学を選定するための公募を開始して、最終的には令和6年の秋ぐらいから、運用益次第ではございますけども支援を開始していきたいというスケジュールでございます。
 次のページ、211ページからが現在パブコメにかけている基本方針の概要の資料になります。ポイントだけ御紹介いたしますと、1ポツは目指す大学像ということで、先ほど申し上げたような大学像を列挙しております。
 2ポツは、それをどのように選定していくのかということです。これまでの実績だけで判断するわけではなくて、変革への意思とコミットメントに基づいて選定していくという基本方針にしております。
 また、選定対象数としては数校程度ということにしておりますけれども、一気にそこを選ぶということではなくて、運用状況も勘案しながら段階的に認定、認可を行っていくということにしてございます。
 また、その選定の要件につきましては、先ほど申し上げた研究力、事業・財務戦略、ガバナンス体制、この3つの観点から選定していきます。審査プロセスは、ポテンシャルの認定と今後どう伸びていくかという計画の認可、この審査プロセスを一体的に実施していくということと、大学側との丁寧な対話を実施しながら研究計画を煮詰めていくと、そのような審査を行っていくことにしてございます。
 212ページでございます。これは体制強化計画、これからどう伸びていくかという計画に盛り込んでいただく中身をまとめたものでございます。3-(1)でアウトカム目標を書いていただくことにしておりまして、その際、世界トップレベルの研究大学をベンチマークしていただいて、そこの目標に沿ったアウトカム目標を定めていただくということ。それから(2)で実際に行っていただくことを書いていただく際に、長期的な視野に立って次世代の知・人材の創出というものを意識していただきたいとしております。短期的に稼げる分野だけではなくという、そういう意味合いを込めているところでございます。
 また、イ、ロ、ハ、ニ、ホとして実際に行っていくこと、これが支援対象となる事業内容にもなるわけでございまして、それを例示しております。博士課程学生の支援、若手のポストの確保や、ハのところで研究マネジメント人材や技術職員、ファンドイレイザーなどなど、そういったバックオフィスの充実などにもお金を使っていただきたいということを例示しているところでございます。
 次のページ、213ページを御覧いただければと思います。体制強化計画がどの水準であれば認可していくのかという基準を整理したものでございます。研究力、事業・財務戦略、ガバナンス、それぞれで書いてございます。特に重要な事業・財務戦略のところで申し上げますと、3-(3)マル1のロのところで大きく2点ございます。外部資金獲得(年平均5%以上の増加)を基に、継続的な事業成長(年平均3%以上)を果たす蓋然性が高いことという事業拡大の計画と、それからファンドからの支援が終わった後の卒業後にも同様の成長が果たせるように大学独自基金の造成も計画に盛り込んでいただくことにしてございます。この事業拡大をしていくことによって基礎研究あるいは社会貢献、これを両立していくというのを目標としているところでございます。そういった趣旨の計画を立てていただきたいということでございます。
 そのページの下でございます。計画期間は最長25年で、その範囲内で大学で定めていただきまして、一定期間ごとに支援の継続の可否について検討していくことにしております。
 214ページの4ポツ、これは各大学への助成額をどのように算定していくのかという基本的な考え方を示したところでございます。ひし形の2つ目でございます。外部資金獲得実績、それから大学ファンドへの資金拠出額を踏まえて助成額を算定していくことにしてございます。これは、毎年の事業成長だけではなくて、卒業を踏まえた大学独自基金の積立てを目指していただくと申し上げましたけども、その積立てについては大学ファンドにお金をためておいていただくことを想定しておりまして、そういう計画を立てていただいたら、その分助成額を算定していくという考え方でございます。
 なお、5ポツはその他の施策との関連を書いてございます。大学ファンドの支援対象大学だけが伸びればそれだけで我が国全体の研究力向上が図られるというわけではなく、地域中核・特色ある研究大学の支援ですとか博士人材の育成強化、これらが相まって初めて結果が出ていくのだということをここに記載しておりまして、国際卓越研究大学はそこを意識しつつ、学術研究ネットワーク全体を牽引していただきたいということを記載しているところでございます。
 そのほか、大学からの規制緩和については引き続き意見交換をしていく機会を設けることなどが書かれてございます。
 次のページからは、伸びていく計画の部分ではなくて、ポテンシャル認定に関してどのような指標を使っていくのかということを、非常に細かいことになりますけども整理したところでございまして、御参考に後ほど御覧いただければと思っております。
 前半につきましては、雑駁でございましたが以上でございます。

【濵口会長】  ありがとうございました。
 次に、北山さんからお願いします。

【北山科学技術・学術総括官】  続きまして、御説明申し上げます。資料は通しの223ページというところからになります。私からは、地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージについて御紹介申し上げます。
 このパッケージですが、上の囲みの中にありますように日本全体の研究力向上のために、今説明のありました大学ファンドによるトップレベルの研究大学への支援と同時に、地域の中核となる大学や特定分野に強みを持つ大学の機能強化を図るということを目指して取りまとめられたものでございます。
 量的・質的な充実の在り方として下に2つの箱を書いておりまして、令和5年度概算要求においては全体で658億円を要求しております。
 次のページをお願いいたします。こちらですが、左にある地域振興パッケージによって支援される大学と、大学ファンドによって支援される右側にある大学が相乗的・相補的な連携を行っていく、それは人材流動であるとか共同研究といった形を取りますが、そういった連携を行うことで日本全体の研究力発展を牽引する研究システムが構築されることを目指しているということを示した資料でございます。
 次のページをお願いします。地域振興パッケージ拡充の文部科学省の関連部分というのがこちらになります。資料の真ん中あたりに魅力ある拠点形成等による大学の特色化とございますが、こちらはWPIであるとか共創の場形成支援といった事業の拡充を図ることで魅力ある拠点形成等による大学の特色化を図ります。
 その上で、右上のほうにありますように研究力の飛躍的向上に向けて、強みや特色ある研究力を核とした経営戦略の構築、具体的には、これは大学の強みを何にするのかということを明確化してリソース配分であるとか財源、機材、スタッフの在り方等を具体化するということが想定されますが、そういった経営戦略の構築を前提に研究活動の国際展開や社会実装の加速・レベルアップを実現できる環境を整備するべく、左上のほうにございますタンクの中にありますように、地域中核・特色ある研究大学強化促進事業というものを新規要求しているというものでございます。
 また、同時に大学を超えた連携を拡大・促進していくために、ブルーのところにございますように共同研究システムを構築するべく共同利用・共同研究システム形成事業を拡充したいと考えております。
 以下、この2つの事業について簡単に御紹介いたします。次のページをお願いいたします。
 まず、地域中核・特色ある研究大学強化促進事業についてです。背景・課題の部分は既に御説明申し上げましたので、具体の事業内容についてですが、こちらは強みや特色ある研究力を核とした研究戦略の構築を前提に、研究活動の国際展開や社会実装の加速・レベルアップを実現するための環境整備に対する支援を行うこととしております。
 8月末の概算要求の段階では、事業実施期間は最長10年間、5億円程度を7か所程度、別途施設整備支援の20億円というものを想定し、総計56億円の要求としております。
 こちらにありますが、強みや特色ある研究、社会実装の拠点などを核とした研究力の向上戦略を構築の上、全学的にそれを推進する大学というものを念頭に置いておりまして、支援内容としては、URA等の専門人材の配置や活動の支援、研究設備・機器の共用のための体制構築、運用といったものを想定しております。
 また、公私立大学については、特に効果的な取組が見込まれる場合に、オープンイノベーションシステムやインキュベーション施設等の整備も支援したいということを考えております。
 次のページをお願いします。もう一点の共同利用・共同研究システム形成事業について、でございます。こちらは、大学研究力強化のためには全国の国公私立大学等に広く点在するポテンシャルを引き出す必要があるという認識の下、この共同利用・共同研究システム形成事業として27億円を要求いたしました。従来は公私立大学を対象として運営費の支援を行うための3億円の事業でしたけれども、今回新たに国立大学をも対象として増額要求を行ったものになります。大学共同利用機関、共同利用・共同研究拠点が新たに他の機関を巻き込みつつ、新分野を創出するような取組を進める際に支援を行っていくというものになります。
 具体的には、事業概要の事業内容のところにありますように、大学共同利用機関や国公私立大学の共同利用・共同研究拠点等がハブとなって、異分野の研究を行う大学の研究所等を巻き込んで実施する学際共同研究費、設備整備費等を支援いたします。
 また、支援要件のところにありますように、広く研究機関が連携する体制を取ることを要件とすることを考えております。組織間連携や分野融合といったものを促しまして、さらには大学の規模に関わらず、特色・強みある元気を推進されている全国の国公私立大学等に参加していただける内容にしたいということを考えております。
 この事業を通じて全国の国公私立大学にいらっしゃる研究者の皆さんが組織の枠を超えて新たな学際的研究に参加する機会を生み出し、アカデミア先導型の学際研究領域の形成・開拓につなげていきたいということを考えているところでございます。
 また、WPI、共創の場形成支援については次とその次のスライドで御紹介しておりますが、こちらについてはそれぞれ拡充要求しているということで説明に代えさせていただければと思います。
 私からの説明は以上です。ありがとうございました。

【濵口会長】  ありがとうございました。
 それでは、ただいま説明いただきました大学研究力強化に向けた取組につきまして、15分ほど意見交換の時間といたします。御質問等がございましたら、どうぞ、お願いします。

【小長谷委員】  小長谷です。
 研究力強化のための必要な2つのプログラムを丁寧に御説明いただき、ありがとうございました。この2つのプログラム、これから応募に入ったり、皆さんが申請していくと思うのですけれども、その申請要件として、ジェンダーバランスに対していかに克服しようと努力しているかということを必ず入れていただきたいなというお願いがございます。お願いしたいと思います。
 この今期の委員会の名簿を御覧ください。この名簿を頂いたときに、私はもう本当にすばらしいなと思いました、40%が女性だったのです。それはすばらしい割合でしたけれども、すばらしいのはそれだけで、そこから以下、各大学へ行くと、もう全然マネジメントに従事されている方というのは20%もないし、女性の教員も今日頂いた資料では208ページに16%ということで、頑張っているところでも18%です。「ニーマルサンマル」というのは2020年までに30%という社会全体の目標だったわけですけど、ほかのところに言えないぐらい科学技術・学術の分野というのは遅れを取っているわけです。日本の中でも遅れを取っているし、ましてや世界的には研究環境として非常に問題があると認識されております。
 研究力向上とジェンダーバランスの問題というのは別々のことではなくて、研究力向上のためにこそジェンダーバランスを克服しなくてはいけないという認識の下、それを申請要件として、どんなことにチャレンジするかはその大学それぞれの個性があると思うのですけれども、何らかのアファーマティブアクションを採っていることを求めるぐらいにしていかないと変わっていかないのではないかなと思います。よろしくお願いします。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 事務局、何かありますでしょうか。

【黒沼大学研究基盤整備課長】  御指摘ありがとうございます。ジェンダーバランスを含めまして、含めましてと言ってしまってはあれなのですけども、研究体制の多様性という観点につきましては、国際卓越研究大学の基本方針の中でもポテンシャル認定の1つの条件としてうたっているところではございます。御指摘いただいた208ページの指標について、あえてこれを例示させていただいたのは、我々の問題意識の表れと御理解いただければと思っております。審査の中では丁寧な対話をしながら目標設定も含めて議論していくことになろうかと思いますので、そういった中で御指摘の観点をうまく拾っていきたいと考えております。

【北山科学技術・学術総括官】  地域中核のほうの事業につきましては、これからどういう取組を指定していくのかということについて検討していくことになろうかと思います。その中で、今御指摘いただきましたようなことも踏まえて検討を進めていきたいと思います。ありがとうございます。

【濵口会長】  よろしくお願いします。

【小長谷委員】  せっかく大臣も女性でいらっしゃることですし、さきほど政務官も言及されていましたので、よろしくお願いします。

【濵口会長】  かなり今、進みつつあるとは思うのです。パーセントはなかなか上がらないのですけれども、例えばWPIでは毎年のように各拠点に何%増えたかという報告をしていただいております。海外の委員からは、特にそこのチェックは厳しく見ていただいている状態であります。
 オンラインで、仲先生、お願いいたします。

【仲委員】  どうもありがとうございました。仲でございます。大変詳しい御説明と魅力的なビジョンを見せていただきまして、どうもありがとうございました。
 この運営に当たってぜひお願いしたいことなのですけれども、今、日本の大学を見てみますと、運営費交付金の多くは、例えば東京大学と、それから京都大学と、そしてかつての帝国大学系の大学というように配分されている形で、もう既にそういう経費のばらつきがあり、あとそういう大手の大学が競争的資金をたくさん取っているというような形で、既にお金の配分というところで言うと格差のようなものがあると思うのです。そうすると、この国際卓越研究大学に応募できる大学は数が限られてくるだろうと思います。そうでないところは、例えば地域の中核・特色ある研究大学というようなところになっていくのかなと。これもまた、今ある状態で既にどういうところがどういう形でやっている、みたいなことが、ある程度見えているところはあると思うのです。
 お願いしたいのは、こういった計画が大学間の格差を広げたり、あと、今地道に地域で活動しておられる、研究教育をされている大学の力を下げるものであってはいけないなと思いまして、もうぜひ、何もしなくても研究に使えるという運営費交付金のような形のものは、やはり2割でも3割でも全体として上げていただいた上で、こういう特別な特色とか方向性を目指すような基盤形成をしていっていただけるといいなと強く思うところです。
 以上です。

【濵口会長】  いかがでしょうか。

【北山科学技術・学術総括官】  ありがとうございます。御指摘いただきました点、全くこれは今予算要求を行っているところで、それが獲得された際に、先生からの御懸念のような点をちゃんと払拭できるような形で、大学の研究力向上といったことのためにサポートしていけるよう制度設計を進めていきたいと思いますので、引き続き御指導をよろしくお願いいたします。

【仲委員】  どうぞよろしくお願いいたします。

【濵口会長】  それでは、続きまして観山先生、オンラインでお願いいたします。

【観山委員】  観山でございます。ありがとうございます。
 国際卓越研究大学とか研究大学強化促進、それから共共拠点の新しい支援の在り方、ありがとうございます。一つ非常に評価したいのは、25年とか10年という割と長期の支援をするということは、大学にとって計画性が随分つくのではないかと思いまして、これは非常にありがたいことだと思います。一方で、適切な評価をしないといけないと思うのです。最近の話というか、評価をどんどんして先生方の研究時間を消耗させてしまうというのは本当によくないので、ぜひその評価の在り方については非常に考えていただければと思います。
 1つの参考は、例えば非常に評価が高いWPIというのはプログラムオフィサーがいて、外国人のワーキンググループも含めたワーキンググループがあり、サイトビジットするというふうにしています。資料をたくさん集めてくるのではなくて、サイトビジットのときにほとんど全員が集まっていろいろディスカッションするということで対応します。国際性の観点からも外国人のWGメンバーが、その場に行って評価するということが良いと思います。そういうことで本当に研究時間を確保するような形で資金を導入していただくということが重要だと思います。評価の在り方はいろいろ検討されていると思いますが、ぜひそのような点を考慮して適切な評価に努めていただければと思います。
 以上です。ありがとうございました。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 事務局、いかがでしょう。適切な評価に関してどういう視点で考えておられるか。

【黒沼大学研究基盤整備課長】  御指摘ありがとうございます。我々もWPIの仕組みは非常に参考にしているところでもございますし、評価の在り方については、御指摘を踏まえてやっていきたいと思っています。
 ただし、我々として国際卓越研究大学は25年としておりますけれども、毎年のように評価を繰り返すということではなくて、毎年のほうは定期的な指標をモニタリングしていくことを基本としながら、評価については区切りでという形でやっていこうと思っております。
 また、国際卓越に限らずもろもろの事業の評価とかがありますけれども、そちらについてもいろいろ事務的な簡略化とかも含めて工夫していきたいと考えております。

【濵口会長】  WPIではインターナショナルアドバイザリーボードが非常にしっかりした視点で評価していただいて、それから例えば外国人教員の採用率であるとかジェンダーバランスをきちっと整えろと、それから融合型研究が本当に進んでいるかどうかという視点でチェックが入っています。そういうインターナショナルアドバイザリーボードのようなシステムをこの国際卓越という名前の下につくられるかどうかというのは、どうなのでしょう。

【黒沼大学研究基盤整備課長】  ありがとうございます。
 法律上は、科学技術・学術審議会と総合科学技術・イノベーション会議の意見を聞いて認定・認可していくことになっておりますけれども、この科学技術・学術審議会の中にどういう体制をつくっていくのかというのは、会長にまた御相談させていただきたいと思っております。少なくとも法律上、外国人を入れることができるという法改正はさせていただきましたので、その趣旨を踏まえてまた御相談させていただければと思います。

【濵口会長】  アドバイザリーボードは評価というよりもアドバイスをしっかりして、寄り添いつつ発展に協力するという姿勢が非常に強い方がお見えになりまして、私も実感としては非常に効果があるなというのをいつも感じておりますので、御検討いただければと思います。

【黒沼大学研究基盤整備課長】  承知いたしました。

【濵口会長】  ほかはいかがでしょう。
 高梨先生、どうぞ。

【高梨委員】  高梨でございます。
 今、評価のことが出たので、それに関係してちょっとお話ししておきたいのですけど、適切な評価と同時に柔軟な評価というのをお願いしたいと思うのです。212ページの資料に、アウトプットだけでなくアウトカムについても記載すると、その目標のところに、そういうところがあって、今は何事もアウトカムというのが非常に求められるところです。
 私はナノ材の委員会の主査をやっているのですが、そこで研究開発プランを議論しているときにちょっと出た意見なのですけども、イノベーションなんていうのは当初予定したアウトカムではなくて、全然違うところにアウトカムが出てくるから本当にイノベーションになるのだと、初めからこう決められてアウトカムを出せというのは、必ずしも適切ではないのではないかという意見がありました。私自身は、アウトカムというのは初めに予想しておくことというのは大事だとは思うのですが、それ以外の全然違ったものが出てきても、それはそれでちゃんと評価するというか、そういう何か初めに決められた計画どおりで成果が出ないといけないということではなくて、そこら辺の柔軟な評価というのはぜひお願いしたいと思います。
 以上です。

【濵口会長】  よろしくお願いします。
 では、岸本先生、お願いします。

【岸本委員】  ありがとうございます。
 日本の研究力がなかなか上がらない、また大学がうまくマネジメントできない1つの要因として、職員の中でマネジメントの専門の職員だとか技術系の職員ですとかの数が圧倒的に海外に比べて少ないという状況があるということがいろいろなところで指摘されています。今回の中でもそこのところを支援しようというのがあるのですが、支援された大学の中だけで閉じてこういう活動をしていっても、うまくキャリアパスができていかないのではないかなと。これらの職を教員と事務職員に対して第3の職と今言われているかもしれませんけども、そういった大学を運営するに当たって必須の職に対してどうしていくかということも併せて検討しつつ、こういった支援を受けた大学がそれを率先してうまくやっていくというような、そういう環境もちゃんとつくりながら取り組んでいただけるようになるといいのではないかなと思っておりますので、ぜひその辺も御検討いただければと思います。

【濵口会長】  大変重要な指摘ですね、よろしくお願いします。
 では、明和先生、お願いします。

【明和委員】  明和でございます。御説明ありがとうございます。
 国際卓越研究大学も、特色ある大学のほうも、本当にうまく展開すればいいなと思っております。海外の動向を私も間近で見ておりまして、うまくいっていると感じる国も多くありますので、ぜひ頑張って、私たちの子ども世代には学術の重要性、そしてそこに面白さを強く感じることのできるステージにもっていければと思います。
 私は京都大学の学部つき研究機関におりますので、その立場からお話しさせていただきますと、例えば224ページにありますように、様々な大学が横に連携、つながり合って学生を教育していくということになりますと、研究というアウトカムだけではなく、教育のシステム自体を見直さねばならないと私自身は常々思っております。例えば、単位認定の在り方など、大学の教育の側面との関連はどこまで具体的に議論されていらっしゃるのでしょうか。

【山下高等教育企画課長】  高等教育局高等教育企画課長の山下でございます。
 それで、特に大学の教育の側面からの議論ということで申し上げますと、中央教育審議会の中に大学分科会を中心にこれまでも議論してきているところでございます。例えば、質保証システム部会というものが大学分科会の中にございまして、大学設置基準を見直したりとか、大学における教育の質を保証していくというような評価の在り方も含めて、そのような議論をいろいろしてきて、3月に提言を出したりというような動向、あるいは教育未来創造会議が内閣官房にございますけれども、そこからも高等教育に関し、特に成長分野を中心とした大学の教育研究の在り方について提言が出されてございますので、そういうものを踏まえた高等教育のシステムの見直しというようなことを中心に、高等教育局において取組を進めている状況にございます。
 以上です。

【明和委員】  研究と教育を両輪として進めていかないと絶対に持続的に発展しないと思います。その辺りは、ぜひまた御議論を深めていただければありがたいです。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 それでは、オンラインで栗原先生、お願いします。

【栗原委員】  ありがとうございます。栗原です。
 国際卓越研究大学の基本方針についてのポイントの3-(3)で、体制強化に関する具体的な基準に財務戦略的な事項が書いてあると思いますが、研究の内容等ではなく、このような財務戦略の具体的な基準が示されたこと、しかもその考え方が今までの考え方と方針転換しているように受け取れることは、大きなことだと思います。この考え方については賛同しますが、実行するための大学の機関の在り方ですとか、研究の出口、それから予算が縮小するのではなく、むしろ事業成長、支出成長性が年3%程度あること、外部資金を年5%程度以上増加させるというようなところについては非常に高い目標ですので、ここをしっかりと考えていかなければいけないのではないかと思います。
 これを、学部やコース、プログラムだけでの話ではなく、大学全体で達成しなければいけないとすると、非常に大きいというかハードルの高い目標だと思います。日本の経済のGDPですら今後は年2%成長を目指すことも非常に大変な水準なので、大学の支出を3%以上増やすということ、それに伴う収入があるような形で増やすということは、研究の選択等の発想の転換も必要になってくると思いますので、ここの意味するところを受け止めながら、研究費を増やしていく全体の方針を立て、実りあるものにしていただきたいと思います。

【濵口会長】  いかがでしょうか。

【黒沼大学研究基盤整備課長】  ありがとうございます。
 おっしゃるとおり、かなり大きな転換を求めていくというのは確かでございます。今回、研究体制強化計画という言い方をしておりますけれども、研究そのものの中身を変えていただくというよりはバックオフィスの在り方、大学事務組織の在り方とかも含めて、そういった大学の資金構造を変えるための事務局の在り方、研究支援組織の在り方などなどをむしろ計画に盛り込んでいただきたいと思っているところでございます。大学から御相談いただくときにも、そういった考え方はきちんと示しながらやっていきたいなと思っております。
 事業拡大についても、単にもうかるものだけをやる体質になるのではないかという御批判をいただくこともありますけど、そうではなくて、新しい研究分野をどんどん開拓していく、かつ、社会貢献にもお金を使っていくためにはスクラップ・アンド・ビルドで、決まったお金の中でやっていくことだと非常に難しいので、事業成長、規模を拡大しないとそこは両立できないという考え方に立っています。大学が成長していくためにもそれを支える事務組織などなどを含めて変わっていかないといけないと、その考え方はしっかり共有できるように進めていきたいと思います。ありがとうございます。

【栗原委員】  ありがとうございます。
 ぜひ研究に積極的に投資をしていいのだ、挑戦していいのだということの前向きなメッセージと、それに対してはガバナンスを働かせるという、現実的な財務戦略をつくっていく必要がありますので、ぜひ両立していただきたいと思います。
 以上です。

【濵口会長】  ありがとうございます。重要な御指摘をいただきました。
 1点だけ確認ですけど、この3%程度、5%程度と書いてあるのは単利ですよね、複利じゃないですよね。

【黒沼大学研究基盤整備課長】  年平均ですので……。

【濵口会長】  複利ですか。

【黒沼大学研究基盤整備課長】  そうですね、ここの目標設定自体は諸外国のトップレベルの大学が年平均で3%成長しているというのを基にしてやっているものです。

【濵口会長】  相当ハードルが高くなるように思います。ありがとうございます。
 御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。この件に関しては引き続き御議論いただきたいと思います。
 それでは、続きまして、2番目の我が国の研究力強化に向けたエビデンス把握について説明をいただいた後、意見交換を行います。
 神谷研究開発戦略課長、よろしくお願いいたします。

【神谷研究開発戦略課長】  ありがとうございます。
 それでは、我が国の研究力強化に向けたエビデンス把握について、資料2-2について御説明させていただきます。ページ数は230ページになります。
 まず、NISTEPが8月に公表いたしました科学技術指標、それから定点調査に関してプレゼンさせていただきます。その際に、我が国が韓国にトップ10%論文で抜かれたことが話題になりましたので、本日は世の中の関心も踏まえまして、韓国の論文数の増加に向けた取組も紹介させていただきたいと存じます。
 では、232ページをお願いいたします。科学技術指標2022のポイントでございます。おおむね全体としては昨年同様の順位でございますが、先ほど申し上げましたように真ん中あたりにトップ10%補正論文数、こちらが10位から12位に落ちておりまして、右を見ていただきますとスペイン、韓国に抜かれているという状況でございます。
 次のページをお願いします。こちらは整数カウントと分数カウントの相違でございまして、国際共著論文が増えると分数カウントが減るという構図でございます。
 次のページをお願いします。論文指標における世界ランクの変動ということでございまして、先ほど申し上げましたように特にトップ10%は2006年頃から右肩下がりになっています。これは各国の順位を示したものでございます。
 次のページをお願いします。論文数、それからトップ10%及びトップ1%の補正論文数でございまして、整数カウント法で計算したものでございます。この順位はそれぞれ10年前と比べて落ちていますが、その絶対数というか論文数そのものは全て増加傾向にある状況でございます。
 次をお願いします。分数カウントになりますが、論文数は左です。順位は全て落ちていますが論文数自体は増えておりまして、ただトップ10%とトップ1%は本数そのものも落ちているという状況でございます。
 次のページをお願いします。責任著者カウント法による計算でございますが、こちらのほうはトップ10%でも順位を落とすとともに、数字そのものも落ちているという状況でございます。
 238ページは整数カウントによる主要国の論文数変化ということで、今申し上げたこと、経年のトレンドを示したものでございまして、中国、アメリカが非常に大きな伸びを示したという状況でございます。
 次のページをお願いします。分数カウントも同様でございまして、論文数、日本がこの赤の丸になりますが、左側は論文数ですけどもやや横ばいと。ただトップ10%とトップ1%では右肩下がりというか、若干下がっているというような傾向でございます。
 次をお願いします。国内論文と国際共著論文における論文数に占めるトップ10%補正論文数の割合になります。御承知のことかと思いますが、論文数に占めるトップ10%補正論文数の割合、これをQ値と呼んでおりますが、平均すれば当然10%になるのですが、イギリスは16.6%、中国が12.5%、韓国が9%、そして日本は8.2%ということでかなり低い数字になっております。さらに、国内論文だけに注目いたしますとこのQ値は年々下がっておりまして、20年ほど前の6%から4.5%に下がっていると。さらに真ん中あたりを見ていただきますと、日本の赤枠で囲った15.1%、これは国際共著論文におけるQ値ですが、国際共著論文にすると引用数が高くなってQ値も高くなるというような状況でございます。
 次のページをお願いします。これは国際共著率ですが、日本は10年前と比べると25%から35%ということでかなり増加しています。中国、韓国よりも国際共著率は高い一方で、欧州のイギリス、ドイツ、フランスに比べるとかなり見劣りするというような国際共著率になってございます。
 次のページをお願いします。日本の論文数とトップ10%補正論文数における共著形態の時系列変化でございます。トップ10%で国際共著率、色のついた部分ですが、この辺りのウエートが高くなっているということが見てとれます。
 次のページをお願いします。主要国の分野別論文数割合の推移ということで、各国の論文のどこが伸びているかと、どこがシュリンクしているかというのはそれぞれ特徴がございまして、例えば日本であれば一番左、臨床医学が少し伸びているという状況でございます。
 次のページをお願いします。主要国の分野別論文数のシェアです。我が国は一番左になります。外側が論文の世界シェアで、中側がトップ10%の論文シェアになりますが、我が国は化学、物理、臨床医学の分野で論文数、それからトップ10%論文数のシェアが高いという状況です。
 次のページをお願いします。主要国・地域別特許出願の特徴ということで、日本は10年前から引き続きパテントファミリー(2か国以上への特許出願)数で世界1位でございます。ただ2位のアメリカがどんどん追い上げてきていまして、10年前に比べるとかなりその差は縮まってきていると。また、中国のシェア増加に伴いまして、情報通信技術、電気工学、一般機器といったものも日本のシェアは低下してございます。下のもう一つの図を見ていただければその辺が明らかになるかと思います。
 次のページをお願いいたします。こちらが研究開発費の総額、それから部門別になります。アメリカが青の点線、そして中国がオレンジの三角で、どんどん右肩上がりに伸びてきている一方で、日本は赤の丸になりますが横ばいということで、研究費総額も横ばいになっているという状況です。さらに韓国は水色のバツになりますが、大体日本の半分ぐらいのところにございまして、右肩上がりで成長してきていると。これは企業、大学においても同様の傾向が見られます。
 次のページをお願いします。こちらは科学技術予算ということでございまして、先ほどものは支出になりますが、こちらは予算です。2021年の補正予算等で大学ファンドがかなり積まれたこともあって、かなり右肩上がりでどんと大きく伸びているということが見てとれます。
 次のページをお願いします。研究者数の推移になります。日本の専従換算でいきますと67.8万人ということで、後ほど御紹介させていただきます韓国の大体3分の2程度になります。
 次のページをお願いします。主要国の、労働力人口1万人当たりの研究者数の推移ですが、20年前、2002と書いた青の棒グラフでは日本がトップだったのですが、現在韓国に大きく水をあけられておりまして4位という状況でございます。
 次のページをお願いします。我が国の高等教育と科学技術人材でございますが、博士課程の入学者数、右のグラフを見ていただきますと右肩下がりになっているという状況でございます。
 次のページをお願いします。博士号取得者の国際比較でございます。アメリカは一番上で右肩上がりになっておりまして、さらに中国、三角が伸びております。日本は赤になりまして停滞していると。その間に韓国が徐々に人数を伸ばしておりまして、2019年あたりで抜かれているという状況でございます。
 次のページをお願いします。こちらのほうはNISTEPの定点調査でございまして、一般的には日銀短観の科学技術版と言われているものです。アンケート調査の結果を天気予報のマークで表したものでございまして、晴れが「十分」、晴れのち曇りが「概ね十分」等々となってございます。
 次のページをお願いします。この結果につきまして、前回の総会で「我が国の研究力強化に向けたエビデンス把握について」という同じ題名で提出させていただいた資料ですが、その検討事項というところで挙げさせていただいたのがこの5項目になりまして、この5項目に関して、どういったアンケート調査だったかというのを示したのが次からのページになります。
 この辺りは時間がありませんので少し省略して御説明させていただきますが、例えば254ページ、若手研究者が腰を据えて研究に取り組める環境を確保するためにどのような取組を行うべきか、Q101を見ていただきますと「若手研究者に自立と活躍の機会を与えるための環境の整備は十分だと思いますか」と、そうしますと、例えば大学の自然科学系の研究者、一番左を見ていただきますと、全体といったところでは晴れ後曇りということで「概ね十分」という結果が得られております。その他の各項目についてアンケート調査を掲載させていただいておりますが、韓国の技術動向のほうに移らせていただきます。
 262ページをお願いいたします。韓国の科学技術関連指標ですが、人口は約半分ほどということでGDPも約半分ほどとなっております。
 次のページをお願いします。韓国の研究開発費、研究者数、論文数の推移でございますが、青の棒グラフが研究開発費になりまして、かなり右肩上がりでどんどん伸びていると。さらに研究者数についても右肩上がりということで、これはヘッドカウント、頭数になりますが右肩上がりで伸びていると。さらに論文数は、整数カウントでございますがこれも右肩上がりで伸びていると、これをブレークダウンして分析してまいります。
 次のページをお願いします。韓国と日本の部門別研究開発費の比較でございます。2011年から2020年ということで、これは9年間の増加率を示しておりますが、ほかと比較するために9年間のこの数字が最大公約数と言いますか、これを見れば全体で比較できるということであえて9年間の数字を取っております。まず、企業部門を見ていただきますと、韓国は9年間で88.2%伸びていますが日本は12.9、大学は62%伸びていますが日本はマイナス2.1と。ただここで、先ほど申し上げましたように絶対数を見ますと韓国は約1兆円、日本は2兆円ということで約ダブルスコアとなっております。
 次のページをお願いします。韓国と日本の部門別の研究者数、FTE換算ということで専従換算、いわゆる教育と研究に50%ずつエフォートを割いている大学の先生は2分の1とカウントする計算の方法ですが、この計算方法では9年間で韓国は企業が63.4%、日本は5.1%、韓国は大学で10%、日本は8.7%増えております。左の下の図を見ていただきますと韓国の研究者数の増加がかなり大きく伸びているのですが、一番下の大学のところは何となく横ばいと、これが10%の増加を示しています。絶対数で言いますと韓国の大学は4.5万人、日本の大学は13万5,000人程度ですので、大体3倍程度となってございます。
 次のページをお願いします。こちらのほうはブレークダウンしただけですが、実数でみますと韓国の大学部門の研究者数は21%伸びていますが、先ほど申し上げましたようにFTEカウントだと10%という伸びになっております。
 次をお願いします。こちらのほうも韓国の論文数でございますが、こちらは整数カウントとして伸びております。
 次のページをお願いします。こちらのほうが本日のポイントになりまして、韓国の研究主体別論文数ということです。韓国の大学研究者数は10%ほどしか伸びてないのですけども大学の論文数は同期間に63%伸びているということで、1人当たりの論文数の伸びがかなり激しいということが言えると思います。研究機関、企業も70%ほど伸びていますが、こちらのほうは研究開発費と人も増えていますので、特に大学に注目して分析させていただきました。
 次のページをお願いします。ここは御参考までですが大学ランキングということで、韓国の大学の順位ということで3つのメジャーなランキングを掲載させていただいております。
 次のページをお願いします。教員ごとの被引用数というものは各ランキングとも重視していまして、20%から30%のウエートでランキングに活かされているという状況でございます。
 次のページをお願いします。韓国でどのような取組を行っているかということで、一つ紹介させていただきます。この「BRAIN KOREA」事業というものでございます。院生を中心とする研究人材と世界クラスの大学と大学院を育成する事業ということで、選定の仕方とかは異なると思うのですが、日本の卓越大学院制度というか、大学院を応援するという制度でございます。この制度は1999年に開始されまして、7年事業として行われているのですが、政権の交代に関係なく継続されている数少ない大型のR&D事業と言われております。
 この事業選定に当たって、SCI論文を大学の研究力を評価する指標にしていると。さらにはBK2という2期目についてその成果が書いてあるのですが、BKプロジェクトに参加した教員の論文1人当たりのインパクトファクターが2から3に上がったということとか、QSランキングでトップ200の大学が12年の6機関から19年は11機関に上がったといったような実績が示されております。
 次のページをお願いします。韓国の、論文1本当たりの被引用数のトップ12機関ということですが、蔚山科学技術院がトップになっておりまして、どちらかといいますと研究機関とか研究中心大学の論文の被引用数が高い傾向にございます。
 次のページをお願いいたします。こちらは韓国の論文数のトップ5と増加率トップ5でございまして、例えばソウル大学や延世大学というメジャーな大学はこの5年間で、これは9年間ではなくて5年間ですが、増加率が23%と29%となっております。この間、左の下を見ていただきますと、参考として記載してございますが、同期間にどれだけ研究者数が伸びたかということで、ソウル大学であれば7.7%伸びて、論文数が23.67%伸びたと。
 さらに下のほうが増加率のトップ5でございまして、こちらのほうは5年間で蔚山科学技術院は約2倍、世宗大学も約2倍となっております。この間、蔚山科学技術院は右下を見ていただきますと45%の研究者の増、それから世宗大学は17%の研究者の増ということで、世宗大学に至っては17%の教員の増で論文が倍以上に伸びているという状況でございます。
 次のページをお願いします。本来であればソウル大学などがどういった取組を行っているかというのを調べたかったのですが、全て情報が公開されておりませんでして、こちらの光州科学技術院、GISTと言われているものですが、日本のOISTのような機関だと聞いております。少数精鋭の教育機関でございまして、研究者の手厚い支援、研究に集中できる環境づくりなどでかなり手厚い支援を行っているという記載がございます。
 次のページをお願いします。この大学は学生にも非常に手厚い手当てが行われていますが、下のほう見ていただきますと、括弧で囲われたところです。採用時に例えば教授は直近5年間でSCI論文を4本以上とか、もしくは契約更新時にはSCI学術誌に投稿する論文数が年平均0.5以上ということで、かなり論文に力を置いたような条件を設定しているということが見てとれます。
 次のページをお願いします。次は蔚山科学技術院の場合ですが、真ん中あたりに教員評価制度と記載しておりますが、インパクトファクター上位7%のジャーナル誌に研究成果を発表することがテニュア資格付与の必要条件ということで、ここも論文に特化したような指標を置いてございます。
 次のページをお願いします。次は、先ほど申し上げた世宗大学です。教員1人当たりでかなり論文数の伸びが激しいといった大学ですが、こちらのほうはサムスン電子にいらっしゃったキムさんという方が経営経済学部長に就任されまして、かなり論文に力を置いた施策を導入したと。これはキムさんの言ですけれども、「各種大学ランキングで論文の数が指標となっている。学生が大学を選ぶ際に、大学ランキングを重視し、R&Dプロジェクトや支援金の取得――いわゆる先ほど説明したBKプロジェクトですが――こういったものでも大学のランキングは重要である。研究における充分な支援金がないと、研究成果は生み出せない。そのため、論文数を増やすしかなく、論文数に対して義務化した」ということをおっしゃったということです。
 次のページをお願いします。こういった状況で不満の声はないのかということで、JSTのアジア・太平洋総合研究センターに調べていただいたのですが、いろいろ調べていただくとかなり不満の声はあると。特に最後のところ、ソウル大学等の大学が研究者評価方法改善を求める共同宣言文というのを政府に提出いたしまして、その中では定性評価を実施すべきだと、定量評価は避けるべきというような提言を出しているということでございます。
 次に、281ページをお願いします。韓国の博士課程の現状です。全博士課程に占める学業専念者、いわゆる社会人ではない学生というのが46.5%になっております。博士号の取得者は2016年の1万3,800人から2021年の1万6,400人ということで増加傾向にありますが、就職率は年々低下しているという状況でございます。社会人以外の博士号取得者、これはいわゆる学生ですが、その就職率は5年間で60.8%から47.3%に落ちておりまして、そのうち正規職が47.4%、非正規職が52.6%となっております。この非正規職の中にはポスドクとか、いわゆる時間単位で雇われる講師などが入ってございます。
 次のページをお願いします。こちらのほうが、横に見ていただきますと博士号取得者の中で公的研究機関に何%の方が行っているかという就職先になります。企業に23.9%行っておりまして、縦に見ていただくと、上のほうですが企業の中でいわゆる研究者の6.9%が博士号取得者ということになります。
 次のページをお願いします。韓国における留学生数です。インバウンドとアウトバウンドで、左側が学部、右側が大学院になります。青が韓国から海外に行っている学生ですが、いずれも減少傾向にあると。一方で、韓国に来る外国人はオレンジで増える傾向にあるという状況です。
 1点、日本にはない制度でございますが兵役制度というのがございまして、専門要員制度、これは科学技術分野における研究人材の研究が兵役により中断されないよう、3年間指定機関で研究を行うことで兵役を代替する制度でございます。ただいろいろ不祥事が多い制度でございまして、議論の多い制度となっていると聞いております。2020年の募集人員は600人と。
 まとめといたしましては、韓国の論文数は最近飛躍的に伸長しておりますが、大学の研究者数(FTE)の伸びは1割程度にもかからず大学部門の論文数は63%伸びていると。この要因としては、官民の研究開発投資の大幅な増加、科学技術院の充実、理工人材の育成など様々考えられますが、職員採用、昇進、任期延長、業績評価等に論文数やインパクトファクターなどの定量的な指標を重視する政府、大学の方針、制度が大きな役割を果たし得る可能性は否定できない。また、就職環境の厳しさによる業績競争がこの傾向に拍車をかけている可能性もあるということです。
 最後、287ページです。こういった状況ではありますが、研究評価に関する最近の動向ということでございまして、この辺りは先生方、皆さん御承知のことかもしれませんが、10年ほど前にサンフランシスコ宣言というものが出されまして、この中では資金助成、職の任命や昇進の検討の際に、インパクトファクターのような雑誌ベースの数量的指標の手法を排除する必要性。また、7年ほど前に出されましたライデン声明では、定量的評価は、専門家の定性的評価の支援に用いられるべきであるといったよう10の原則。さらには、欧州では欧州委員会において、質的な評価への大転換を模索するための動きを加速させる。さらに中国でもSCI論文と関連指標の使用を規制するということで、基礎研究では雑誌のインパクトファクターやSCI関連指標ではなく、論文の革新性や学術的貢献を評価するといったような取組を行おうとしている。さらに、日本では内閣総理大臣の大綱的指針を踏まえて文部科学省でもガイドラインをつくっておりまして、研究開発課題の強化においては、数量的な情報・データ等を評価指標として過度に安易に使用することについて警鐘を鳴らすといったことがされております。
 すみません、長くなりまして、以上でございます。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 それでは、ただいま説明いただいた我が国の研究力強化に向けたエビデンス把握につきまして、少し意見交換の時間を取りたいと思います。御質問、御意見がありましたら。
 越智先生、どうぞ。

【越智委員】  私は整形外科医なのですが、2013年に日本整形外科学会の会長をしたときにちょっと分析したことがあるのです。整形外科領域も、頸椎とか手の外科とか膝とかスポーツとかに分かれているのですけど、その詳細なデータをちょっと分析いたしました。というのも、もう2013年ぐらいに中国、韓国がかなり日本のその領域の論文に追いついてきているということがあったので、ちょっと私も危機感があって、整形外科の先生方2万5,000人全員に知っていただこうということで分析してみました。
 このBK2の頃にかなり力を入れて論文を増やす努力をしています。韓国の先生方も、全員が正直に答えてくれたわけではないのですけれども、例えば整形外科は、病院によっては1本トップジャーナルに出ると、例えば数十万円のお金が出る。それは、ある大学病院では10編書いたら掛ける10になる。ほかの地方の大学はもっと高額で、1編以上書くと何十万かのお金、インセンティブが与えられるというような方法です。したがって、あめとむちで、むちばっかりで押さえているだけではないというようなことが分かりました。
 膨大な資料でなかなか難しいと思うのですけど、私自身は、今韓国が追い上げてきて、抜かれたということで日本が韓国に対してきちっと分析しようということだと思います。そのためには、例えば全体的、医学なら医学の中でも整形外科、呼吸器、内科、心臓外科とか、それぞれの領域についてそれぞれの学会にお願いして、もうちょっと詳しいデータを出してもらう、物理でも例えばいろいろな方面の分野がありますので、それを出していただき、もう少し詳細に分析する必要があるのかなと思っております。
 ここで私がちょっと気になるのは、先ほど調べたのですけども、研究力を上げていくためには研究時間と安定したポジション、そして博士号の数とかいうのが関係しているのではないのかと思います。博士号の数は経済的な支援と、もう一つは出口の戦略だろうと思うのです。会社のほうがきっちり博士号を持った人を評価して採ってくれる、あるいは非常にいい条件で採るというところについてどのように韓国はなっているのか。それとか、例えば研究時間を確保するためにURAの数とかが増えているのかとか、教授で、非常に優秀な教授は、講義は要らないというようなことがあったのですけども、ほかにどういう取組をしているのかというようなところまで踏み込むと、もう少し使えるデータになるのではないかなと思います。また、韓国だけではなく、もうちょっと上位の国の分析というのも、あるのかも分かりませんけれども同時に教えていただけると大変ありがたいと思います。
 以上です。

【濵口会長】  ありがとうございます。分野別のもう少し詳細な分析、それから、日本だと論文を投稿すると投稿料を払わないといけないのでむしろ貧乏になるのですよ、研究者は、逆ですね。そこら辺の違いとか、あと、やっぱりドクタコース、Ph.Dを取った人の就職の問題はもう少し分析が要るかのように思いますので、よろしくお願いいたします。
 岸本先生、お願いします。

【岸本委員】  御説明ありがとうございました。
 研究力のお話をすると、ここで出ているデータが非常に大事なデータとして皆さん議論しているような傾向になっているかと思いますけども、研究力の測り方というのもいろいろあるのではないかなということと、今日お話しされた287ページに書かれていることと、要するに評価というのは定量的評価でないところ、定性的な評価をもっとやらなきゃいけない、そういうところを組み合わせてこのデータを出していかないと、こちらのほうのデータばかりが独り歩きしてしまうとなかなかいい状況にならないのではないかなという心配もあります。
 例えば社会課題が出てきたときに、それに対して日本の研究者はどのぐらい取り組むかということで、以前濵口先生がCOVID-19のことに関して、日本の研究者はすぐに取り組んでなくて、世界的にはどんどん論文が出ているのだけどもと、それはまだ引用とかそういう段階じゃなくて、そういうところに日本の人たちが積極的に取り組んでないという、これがまさに研究力かなというときに、こちらのほうの数字ばかりを追いかけていくとその辺のところとの乖離が出てくるのではないかなという懸念もあるのです。その辺りで、これから研究力をどう測っていくかについての議論というのはされていく必要があるのではないかなと思いますけども、いかがでしょうか。

【濵口会長】  いかがでしょうか。

【神谷研究開発戦略課長】  287ページの一番下になりますけども、内閣府で第6期科学技術基本計画を踏まえて、従来の論文数や被引用度といったものに加えて新たな指標を開発ということで、こちらは恐らく今年度中ぐらいに何かしらの結論が出るのかなと思っております。

【岸本委員】  ありがとうございます。

【濵口会長】  どうぞ、お願いします。

【須藤会長代理】  須藤です。
 今、岸本委員の言われたことと少し関連するのですけども、私は産業界なので、大学と共同研究、産学連携というのに結構力を入れていまして、文部科学省のいろいろなプロジェクトにも参加させていただいているのですが、産学連携をやるとどうしてもいい論文が出づらい、これは一般論だと思うのですけども、そういう傾向が出てくると思いまして、じゃあ、どうするのだということで、今岸本先生が言われたように別の評価軸がちゃんとあるのだから、それをしっかりとつくるべきだろうというのが1つの考えだと思います。
 もう一つは、そうはいっても、ヨーロッパなんかの動きを見ていると産学連携をやっていてもちゃんといい論文、トップ10%とかそういう論文が出ているという例もあるので、両立するようなやり方というのも考えなきゃいけないのかなということで、産業界から見ても、ある程度論文が少なくなったと言われると責任を感じてしまうのですけども、うまく両立したり、あるいは先ほど岸本先生が言われたように別の評価軸をきちんとつくって、国策として出口を見据えた研究やるのだと言っているので、そういった評価軸もつくるという2つのやり方をそろそろしっかり考えていかないとまずいのではないかなと思いますので、よろしくお願いします。

【濵口会長】  貴重な御指摘をいただきました。

【大野委員】   大変膨大な資料とデータをまとめていただきまして、ありがとうございます。2点、発言させていただきます。
 1点目、社会課題解決は極めて重要です。先ほどの、例えば総合振興パッケージなども見ますと、社会課題解決の方向にも矢印が出ています。それは社会が期待していることで間違いはないと思います。一方で、大学の学長の中で話すと、大学が本気で例えば地方創生であるとか課題解決に取り組むと、そこに予算と人員を入れたときに必ずしも論文につながらないという話がでます。今、須藤先生も別な形でそれを御発言されたのだと思います。産学連携と論文の引用が逆相関を持つというデータもあります。
 それぞれに合った2つの指標を作り、2軸で測れるようにすることはやっていかなければいけませんが、一方で、ここで気をつけなければいけないことは、例えばヨーロッパのHorizon Europeで、13兆円を7年間に出すと。3つ柱があって、1つは社会課題解決なわけですけれども、そこはプロジェクトをやるときに3か国以上で集まらなければいけないといった条件があって、プロジェクトの成果を論文にしたときに多く引用される仕組みも、意図したかどうかは別にして、あるわけです。社会課題に取り組んだからといって引用が減るというような仕組みを、ここでは作っていないので、そこは我々も賢く設計していく努力が必要かと思います。
 2点目です。学術情報については今回あまり出てこなかったのですが、国際頭脳循環を含めて世界とつながるということは極めて重要なので、そこをエクスプリシットに出していくべきだと思います。
 学術情報は特に、前回安浦先生がおっしゃったのだと思いますけれども、大学によって読める論文、読めない論文が全然違うのです。ですから、まず学術情報へのアクセスで格差があることと、被引用が多くなるオープンアクセス論文(事務局注)に対してはお金を支払う必要があり、今、濵口先生がおっしゃったようにお金がないと論文を出せないという、被引用の高いところに論文が出せない、そこをどうするのかということはちゃんと考えていかなければいけないと思います。円安もあり、オープンアクセスの最高峰の論文誌に論文を出そうとすると今は120万円かかります。これでは、若手の1年間の研究費が全部飛んでいくようなことになりますし、加えて、研究期間が終わった後に成果が出たときにはどうするのかということに関しては、我々はあまりケアをしてないので、そういうところもきめ細かにケアしていく必要がある時期だと考えています。
 どうもありがとうございました。以上です。
(事務局注)オープンアクセスとは、インターネット上で論文を全文公開し、読者への無料閲覧を確保することである。その際、オープンアクセス論文には次の2種類が存在する:
(1)ゴールドオープンアクセス論文:
 査読済みの論文の雑誌への掲載が確定した著者が、出版社等にAPC(Article Processing Charge:論文処理費用)を支払って、当該査読済み論文のオープンアクセスを実現するもの。その雑誌が読者の購読料で成り立つビジネスモデルの場合、APCの支払いの選択は著者に委ねられており、支払いを拒否しても当該査読済み論文の雑誌への掲載自体は行われる(ただし、読者には購読料が課される。)。
 他方、近年、その掲載するすべての論文についてゴールドオープンアクセス論文の掲載を前提とした雑誌(フルオープンアクセス誌)も存在する。この場合、原則として著者のAPCの支払いを条件に論文が掲載される。
(2)グリーンオープンアクセス論文:
 著者が機関リポジトリ等を利用し、インターネット上に自ら、自身の論文(主に査読後の最終原稿)を公開してオープンアクセスを実現するもの。雑誌の規定によって掲載から一定以上期間経過した後に公開可能となる場合がある。
 
【濵口会長】  ありがとうございます。重要なポイントをいただきました。
 宮浦先生、お願いします。

【宮浦委員】  ありがとうございます。
 韓国との比較の資料を頂いて、ありがとうございました。恐らく資料になかったと思うのですけれども、我が国では若手教員が過去5年から10年の調査によって、研究に専念する時間が相当減っているというデータがありますので、その辺りの比較が韓国とどうなっているかというのが、研究型教授は授業をやらなくていいとか、先ほどもちょっと出ましたけれども資金と時間だと思うのです。その時間の部分で何か比較、研究時間の確保何%、日本は特に若手の場合は相当低下しているのですけれども、韓国が増加しているとか、もしそういうデータがあれば教えていただければと思います。

【濵口会長】  このデータはありましたでしょうか、韓国の。
【神谷研究開発戦略課長】  日本のほうは確かにあるのですが、韓国のほうは、現在手元になく、今お答えできないという状況です。

【濵口会長】  調査させていただきます。お時間をいただければと思います。

【宮浦委員】  ぜひ調査して、比較していただけるとありがたいと思います。ありがとうございます。

【濵口会長】  それでは、春日先生、お願いします。

【春日委員】  ありがとうございます。
 NISTEPの皆様からいつも大変詳細な分析結果をいただきまして、ありがとうございます。特定の場所に対する質問が1つ、それから全体に関する感想が2つございます。
 まず、質問させていただきたいのは若手研究者の環境に関する分析のところです。具体的に254ページ、こちらで若手研究者に対する取組の結果をお示しいただいています。こちらは定点調査の結果ということなので、アンケートに回答された方は第一線で取り組んでいる研究者、有識者ということで、むしろシニアの方が多いのでしょうか。つまり、こういう結果を見せていただいた場合と、実際に若手研究者に対してアンケートを取った場合の結果が変わる可能性があるのではないかという課題意識に基づく質問です。
 あと、全体的なところで研究力強化に関して感想があります。1つは評価の観点です。基礎研究それから開発、応用研究、社会課題への対応に関する研究、それぞれ別の評価軸が必要だと思います。ですので、質的・量的基準に関わらず多様な評価を組み合わせていく、それから研究の質、タイプに対して使い分けていくということを検討する必要があるのではないかと思います。
 それから、特に大学ですが分野を超えた交流、それからもう少し狭いところで研究室を超えた交流が、いまだに非常に難しいところが現実にはあるのではないかというように感じています。これがいろいろな面で日本の研究教育の壁になっているのではないかと思います。ここの風通しをよくしないと若手の研究者の待遇、それから研究へ向かう意識の向上だけではなくて、ジェンダーの問題も解決できないのではないかと思います。
 感覚的なところで本当に申し訳ないのですけれども、いまだにハラスメント講習で習うような典型的なハラスメントが実際に行われているということをちらちらとお聞きします。そういうことが若手の研究者の意欲をそいで、特にジェンダーのアンバランスをいまだに解決できない根っこの問題として現実にあると思います。そういうことは分野を超えた、あるいは研究室を超えた風通しのなさが非常に問題の根源にあると思います。こういう点で、全体の分析に加えて、研究教育に携わる一人一人の倫理の向上ですとか、そもそも何のために研究をしているのだという振り返りが必要ではないかと思います。
 以上です。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 もう少し御意見をいただきたいのですが、お時間が押しておりますので、またこの件は改めて継続的に議論を続けたいと思います。よろしくお願いします。
 続きまして、3番目の令和5年度概算要求についてお諮りしたいと思います。科学技術関係の概算要求について、まず、北山科学技術・学術総括官から説明をお願いいたします。

【北山科学技術・学術総括官】  去る8月末に財務省に提出いたしました令和5年度予算の概算要求に関し、御説明申し上げます。
 資料の1ページ目をお願いします。こちらになります。この資料に概算要求の全体像を整理しております。科学技術・イノベーションの推進のため1兆1,818億円の要求を行っており、別途事項要求を行っております。ちょっと字が小さいですが、左上のところに書かせていただいたとおりです。
 あと、科学技術予算の1つ目の柱でございます。左上のところ、我が国の抜本的な研究力向上と優秀な人材の育成として、我が国の研究力の総合的・抜本的な強化に向け、先ほど御紹介しました地域中核・特色ある研究大学総合振興パッケージの拡充を図ることとしております。中心事業は、先ほど御紹介しました事業2つでございます。
 また、少し下にありますが博士課程学生の処遇向上と研究環境確保や、創発的研究支援事業等による若手研究者への重点支援についても拡充要求を行っているところでございます。
 さらに、戦略的トップダウン型の国際共同研究・頭脳循環を推進するため、新たに先端国際共同研究推進事業というものを要求しているところでございます。
 科学技術予算の2つ目の柱は、Society5.0を実現し未来を切り拓くイノベーション創出とそれを支える基盤の強化としております。その中で、世界と伍するスタートアップ・エコシステムの形成に向けたイノベーションの創出のため、大学発新産業創出プログラム(START)の拡充、また共創の場形成支援の拡充を要求しております。
 また、研究のデジタルトランスフォーメーションの推進に向けては、量子コンピュータとスパコンのハイブリッドによる研究DX基盤の高度化のための事業を新規要求しております。
 さらに、世界最高水準の大型研究施設の整備・成果創出促進のための所要の経費を要求しております。
 右上のほうになります。3つ目の柱は、重点分野の研究開発の戦略的な推進です。AI、量子技術、バイオものづくり、再生・細胞医療・遺伝子治療等の国家戦略を踏まえた重点分野の研究開発を戦略的に推進するために、新規に革新的GX技術創出事業や、再生・細胞医療・遺伝子治療実現加速化プログラムを要求しております。
 また、経済安全保障のための重要技術の育成支援を行うプロジェクトの強化として、内閣府において事項要求を行っていただいております。
 最後の4つ目の柱は、国民の安全・安心やフロンティアの開拓に資する課題解決型研究開発の推進でございます。そこにある5つの分野、宇宙・航空、海洋・極域、防災・減災、環境エネルギー、原子力という各分野における研究開発の推進のため、所要の経費を要求しております。特に宇宙分野におけるH3ロケット関連の取組に係る事項要求、アルテミス計画への参画に係る増額要求、環境分野でのカーボンニュートラル実現に向けた革新的なGX技術開発に係る新規要求などを行っているところでございます。
 今後、年末の閣議決定に向け、財務当局との折衝を進めてまいります。
 以上、来年度概算要求に関して御説明申し上げました。

【濵口会長】  ありがとうございました。
 次に、高等教育局関係について、山下高等教育企画課長から説明をお願いします。

【山下高等教育企画課長】  よろしくお願いいたします。
 ページ番号は304ページからと思います。まず、1つ目でございます。国立大学改革の推進ということで、運営費交付金などで1兆1,170億円でして、対前年度330億円の増で要求しております。
 それから、2つ目は高等専門学校の高度化・国際化でございまして、こちらは対前年度160億円増の785億円で要求しております。この中で、2つ目の四角は特に新規ということで、高等専門学校におけますスタートアップ教育環境を整備するという事業に57億円を計上しているところでございます。
 それから、3つ目でございます。私立大学等の改革の推進等でございまして、私立大学や私立高等学校の経常費補助、それから施設整備等で4,401億円となっており、対前年度300億円の増で要求しているところでございます。
 それから、その下の4つ目、こちらは新規でございまして、大学・高専の機能強化に向けた継続的支援策の創設ということで100億円でございます。こちらは説明にもございますようにデジタル・グリーン等の成長分野を牽引する高度専門人材の育成に向けて、意欲のある大学等が成長分野への学部転換等の改革を図っていただけるよう、複数年にわたる継続的・機動的な財政支援を行うもので、基金を含めた継続的支援策というものを念頭に置いての要求ということでございます。
 さらに、一番下の項目でございます。大学・大学院における教育改革の推進でございまして、31億円ということで対前年度16億円の増で要求しております。中身は3つありまして、1つ目の地域活性化人材育成事業、これは本年度から創設した事業でして、さらに一部拡充しようということでございます。
 それから、2つ目でございます。価値創生に向けたネットワーク型人文・社会科学系大学院構築支援事業でございまして、これは中教審の大学分科会の大学院部会の中間まとめなども踏まえまして、人文・社会科学系の大学院におけます組織改革等を大胆に進めていこうという大学院に対する支援ということで、約7億円の新規要求でございます。
 それから、その下の成長分野における大学院教育のリカレント機能強化事業は新規で7億円の新規要求でございまして、成長分野におきます大学院における教育プログラムの高度化等を図っていこうという大学院の支援のための事業でございます。
 それから、その次の305ページでございます。1つ目の項目は数理・データサイエンス・AI教育の推進で、こちらは昨年からやや増加の24億円の要求でございます。
 その次は高度医療人材の養成で、新規で約32億円を要求しております。柱は2本ございまして、1つ目が次世代のがんプロフェッショナル養成プランでございまして、がん医療の新たなニーズや急速ながん医療の高度化に対応できる医療人の養成のために、大学院レベルにおける教育プログラムの開発・実践をしようとする拠点を支援する事業でございます。
 それから、2つ目は質の高い臨床教育・研究の確保事業でございまして、こちらも大学・大学病院における、より効率的で質の高い臨床教育・研究実施のための基盤強化、体制構築などの取組を支援していくという内容であり、新規で合計32億円の要求でございます。
 その次でございます。グローバル社会で我が国の未来を担う人材の育成については、対前年度21億円ほどの増で394億円の要求となっております。
 その中で、1つ目の大学教育のグローバル展開力の強化については、48億円の要求でございます。我が国にとって戦略的に重要な国・地域との間で、質保証を伴った学生交流等を推進する国際教育連携やネットワーク形成の大学における取組を支援しようという事業でございます。
 その下の大学等の留学生交流の充実については、346億円の要求ということで、コロナ禍で留学生交流が激減している中、特に日本人学生の海外留学が少なくなっておりますので、そこへの支援の拡充などを図っているところでございます。
 それから、2ページの一番下でございます。高等教育の修学支援の確実な実施でございまして、こちらのほうは事項要求ということでございます。高等教育の修学支援新制度の確実な実施、JASSO、日本学生支援機構で実施しております無利子奨学金における貸与基準を満たす希望者全員に対する貸与の確実な実施に必要な費用などを要求しているところでございます。
 高等教育局からは以上でございます。

【濵口会長】  ありがとうございました。
 それでは、最後に文教施設企画・防災部関係について、齋藤計画課長から説明をお願いします。

【齋藤計画課長】  よろしくお願いいたします。国立大学等の施設整備に関する概算要求のことでございます。
 325ページをよろしくお願いいたします。右側のほうに国立大学のキャンパスとか施設のイメージが描かれております。国立大学の施設は人材育成や地方創生、イノベーション創出の場であり、社会の様々な人々との連携により創造活動を展開する共創の拠点となる重要な基盤ですが、老朽化が深刻な状況です。
 概要のところですが、このために、令和3年3月に大臣決定しました第5次国立大学法人等施設整備5か年計画に基づき、キャンパス全体を社会の多様な関係機関と連携して新たな価値を生み出す共創拠点とすることを目指して、計画的・重点的な整備を進めております。
 事業内容としては左側の3点でございまして、老朽対策をやりながら安心・安全、イノベーション拠点、カーボンニュートラルに向けた取組などを推進するという要求になっております。
 右上です。これらの必要な経費として1,000億円プラス国土強靱化関係予算を事項要求しているところでございます。
 説明については以上です。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 それでは、ただいま説明いただきました令和5年度概算要求全体につきまして意見交換の時間を取りたいと思いますが、いかがでしょうか。
 どうぞ。

【村山委員】  村山です。
 今、予算編成で防衛費をGDPの2%にするというのが大きな課題になっていまして、その中で科学技術予算を安全保障の観点でどう位置づけるかという議論がされていると思うのです。これは文部科学省の科学技術予算にも非常に大きな影響を与えるものだと思うのですが、この種の問題というのはこの審議会ではどういう扱いをするのでしょうか。

【濵口会長】  事務局いかがですか、この点は。

【柿田科学技術・学術政策局長】  科学技術・学術政策局長でございます。会議が別にあり、遅参いたしまして失礼いたしました。
 今、村山先生から御指摘があった件は、今政府全体で関係の大臣、それから有識者から成る検討会というものが始まったばかりでございまして、まずはそちらのほうで全体的な議論をしていただくというような状況でございますので、私どもといたしましては、科学技術関係の予算全体、総合科学技術・イノベーション会議のところが各省も束ねた形での予算全体を取りまとめておりますので、まずはそちらとしっかりと連携しながら基本的な考え方を、どのようにこれから向かうべきか、ということを、今いろいろそちらの事務局とも相談しながらしております。ですので、少し状況が見えてきた段階で、またこちらの審議会にも御報告できる段階になったらさせていただければなと思っております。

【村山委員】  それでは、どういう議論になっているかというのは逐次報告していただけるという、そういう理解でよろしいでしょうか。

【柿田科学技術・学術政策局長】  恐らく年末に防衛3文書の改定とかということに向けて、そちらのほうの議論が進んでまいります。それから年末の予算編成、そこで防衛費を幾ら計上するかというようなところで年末に向けて大きな動きが進んでまいりますので、予算編成の結果のタイミングでまた予算の御報告をこの審議会でさせていただくことになると思いますけども、恐らくその段階になっておりますと、大体どのような状況になるかというのは御報告できるかなと思っております。

【村山委員】  よろしくお願いいたします。

【濵口会長】  それでは、オンラインで安浦先生、お願いします。

【安浦委員】  私からは2つほどお願いがございます。1つは人材育成の予算のところで、いろいろ大学院のほか学生に対する支援等を充実していただいてありがとうございます。私はSPRINGの委員会の委員長をやっておりまして、これは通常予算ではなくて補正予算で行われているのですが、令和5年度、来年度入学生まではJSTの補正予算でやると。その後は大学ファンドのほうに移管するということになっているのですけど、ほぼ6,000人、大学の数で59校を支援しております。その学生たちの支援が令和6年度以降はどうなるのが決まるのが令和5年の例えば夏ということでは、せっかくこの事業があるので大学院博士後期課程に進もうかと思っていた学生たちにとってどうなるか分からない、自分の大学が取れるかどうか分からないというような問題が、もう現場の事業統括の先生方から出てきていて、これはできるだけ早く連続的につないでいただきたいという強い御要望が出ております。ぜひこの点は文部科学省のほうでも円滑な連続性を担保できるような時点で、できれば令和4年度中に方針を決めていただいて、令和5年になればすぐに大学の選定は行うというぐらいのペースで進めていただければありがたいと思います。
 現在、このSPRINGの対象になっている博士課程の学生の中で女性比率は34%です。実際にSPRINGの対象になっている学生は32%います。これは各大学にもジェンダー比率を考えてくださいということをお願いしてこういう形になっておりますので、最初に春日先生がおっしゃっていたようなジェンダーバランスの問題にまで大きく影響を与える問題であるという認識も踏まえて御対応いただきたいというお願いが一つでございます。
 もう一点は、資料の295ページに情報関係の予算が2つほど挙がっておりました。これの左上の研究データエコシステムというのは、いわゆるオープンデータの時代に対応した仕組みをつくるということで、NIIを中心としたリサーチデータクラウドをつくる事業が選定されたわけで、これが進み始めております。ただこれはシステムをつくっただけでは意味がなくて、各分野の先生方が、まずは味見程度でもいいので使ってみるという、小さなグループで各領域のコミュニティでこういうデータマネジメントのシステムを使っていく、そしてオープンデータの仕組みをどのようにこの国で構築していくかということを一緒にやらせていただきたいと思っております。これは経済安全保障、学術データ安全保障と言ってもいいかと思いますし、そういう問題とも絡んできますので、ぜひよろしく御協力のほど、お願い申し上げます。
 以上です。

【濵口会長】  重要な御指摘をいただきました。大学ファンドで次世代研究者挑戦的研究プログラム、SPRINGは受けるということで、いいですね。当時そういう合意があったように思います。初年度200億円、それから次年度、次々年度で400億円の補正をいただいて、その後は大学ファンドにシームレスにつなぐという決定であったと思うのですが、いかがでしょう。

【北山科学技術・学術総括官】  ありがとうございます。
 その従前あった約束というところがどういうところなのかというところも踏まえて十分研究していきたいと思いますが、とにかく、今実際に進められている59校の支援、6,000人というところをしっかりサポートしていけるような取組をすべきだという御指摘だと理解しましたので、どういうことができるのかを考えさせていただければと思います。

【濵口会長】  ぜひよろしくお願いします。年間200億円の経費がかかっていると思いますので。
 お時間が押しておりますが、仲先生、お願いします。

【仲委員】  時間がないところをすみません。
 本当にこの経済状況の中で、少しでも数字が増えた予算を確保してくださっていること、たいへんありがたいところです。
 一方で、今、円が147円とかというようになっていて、価値で言うと本当に円の力が弱くなっているということがありますので、特に国際交流であるとか、あと設備を動かすための電気とか、試料とか、海外に頼らなくてはならないセミコンダクターとかそのようなことが研究、科学技術・学術を圧迫しているというようなこともありますので、どうにかこの特殊な時代を乗り切るような予算も、どういう形でも基盤的な経費として充てていただければと思うところです。

【濵口会長】  ありがとうございました。
 お時間となりましたが、絶対残しておきたいということがございましたらいただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 ちょうどお時間となりましたので本日はここで終了させていただきたいと思いますが、最後に事務局から連絡をお願いしたいと思います。

【佐野科学技術・学術戦略官】  ありがとうございます。
 本日の議事録でございますが、後日事務局よりメールで送付させていただきますので、御確認いただくようお願い申し上げます。御確認いただいたものを文部科学省ホームページに掲載いたしますので、御承知おきくださいますようにお願いいたします。
 以上でございます。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 長時間ありがとうございました。それでは、これで科学技術・学術審議会総会第68回を終了させていただきます。本日は、御出席どうもありがとうございました。

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科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官(制度改革・調査担当)付
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