科学技術・学術審議会(第60回) 議事録

1.日時

平成30年10月31日(水曜日)15時00分~17時00分

2.場所

霞山会館「霞山の間」

3.議題

  1. 文部科学省における第5期科学技術基本計画の進捗状況の把握・分析についての中間とりまとめについて
  2. 我が国の研究力強化に向けた研究人材の育成・確保に関する論点整理について
  3. 最近の科学技術・学術の動向について
  4. その他

4.出席者

委員

濵口会長、庄田会長代理、安西委員、稲永委員、浦辺委員、大垣委員、梶原委員、勝委員、鎌田委員、岸本委員、栗原和枝委員、栗原美津枝委員、小長谷委員、白波瀬委員、辻委員、平田委員、福井委員、宮浦委員

文部科学省

山脇文部科学審議官、松尾科学技術・学術政策局長、磯谷研究振興局長、坪井科学技術・学術政策研究所長、藤野サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官、渡辺大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、千原大臣官房審議官(研究振興局担当)、勝野科学技術・学術総括官、藤井文教施設企画部計画課長、蝦名高等教育企画課長、角田科学技術・学術政策局政策課長、中村科学技術・学術政策局政策課専門官、ほか関係官

5.議事録

【濵口会長】  時間になりましたので、科学技術・学術審議会第60回総会を開催させていただきます。御多用中、御出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 まず初めに、事務局の人事異動について、事務局から紹介をお願いいたします。

【中村専門官】  失礼いたします。前回3月の総会以降、事務局に人事異動がございましたので、紹介させていただきます。
 まず、文部科学事務次官の藤原でございますけれども、公務のため遅れての出席となります。
 続きまして、文部科学審議官の山脇でございますが、こちらも少し遅れての出席ということでございます。
 続きまして、科学技術・学術政策局長の松尾でございます。

【松尾科学技術・学術政策局長】  松尾でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【中村専門官】  大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、渡辺でございます。

【渡辺大臣官房審議官】  渡辺でございます。

【中村専門官】  大臣官房審議官(研究振興局担当)、千原でございます。

【千原大臣官房審議官】  千原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【中村専門官】  科学技術・学術政策局政策課長、角田でございます。

【角田政策課長】  角田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

【中村専門官】  科学技術・学術政策局企画評価課長、井上でございます。

【井上企画評価課長】  井上です。よろしくお願いいたします。

【中村専門官】  以上でございます。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 それでは続いて、資料の確認をお願いします。

【中村専門官】  今回もタブレットPCを御用意しております。ペーパーレス会議ということで実施させていただきます。全ての資料はタブレットPCで御覧いただけるようになっていますので、タブレットPCに不具合、若しくは操作で分からない点等ございましたら、お知らせいただければと思います。
 なお、今回から説明資料も含めまして完全にペーパーレスとさせていただいておりますので、説明者の皆様におかれましては、説明の際にまず資料番号を明確にしていただいてから説明を始めていただければと思います。
 お手元に配付資料の一覧といたしまして、各資料の資料番号を掲載した紙をお配りしておりますので、こちらも適宜御活用いただければと思います。よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 それでは早速議事に入ります。本日の議題は議事次第のとおりでございます。
 最初に、議題1「文部科学省における第5期科学技術基本計画の進捗状況の把握・分析の中間とりまとめについて」、お諮りします。本中間取りまとめは、私が主査の総合政策特別委員会で取りまとめましたので、私から報告させていただき、補足等は事務局からお願いしたいと思います。
 それでは、資料1-1から1-3に基づいて説明させていただきます。
 資料1-1でありますが、「文部科学省における第5期科学技術基本計画の進捗状況の把握と分析結果について(中間とりまとめ)」という題でございます。大変長いですが、大きくポイントを挙げますと、我が国を取り巻く研究の現状としては、論文成果が減少傾向でありますが、特にTop10%論文数の割合(Q値)がかなり落ちていることが分かっております。一方で、公的研究機関の論文数割合は増加傾向でありますが、企業の割合は低下しているという特徴が見えます。
 2番目、人材力としては世界第3位の研究者数であります。ノーベル賞受賞者も、米国に次いで、2000年以降、2番目ということで、蓄積が図られておりますが、一方で、若手研究者の伸び悩み、頭脳循環参画の遅れ、産学官の流動性の低さ、女性研究者の参画の遅れ等の課題がございます。
 知の基盤としましては、最先端の大型研究基盤の整備と活用の促進が着実に伸びております。一方で、我が国が国際的に注目度の高い研究領域が増えている中で、挑戦的参画が不足しているということでございます。
 プラスとマイナス、常に見えるところでありますが、研究資金としては、特許出願件数を始め、知的財産活動は高い水準を誇っておりますが、一方、大学のオープンイノベーションに向けた意識は高まってはいるんですが、外部資金の受入額は、諸外国と比べるといまだ小規模にとどまっているということがございます。従来の改良型アプローチにとどまらない政策的対応が必要であるという認識でございます。
 俯瞰(ふかん)マップを踏まえた把握・分析及び今後の方向性について、まとめとして、俯瞰(ふかん)マップ7にある人材力としては、修士課程修了後の博士課程への進学が減っているということと、優秀な人材の博士課程進学の促進が必要であるということ、それから大学における若手人材に対するポストの増加が見られていないということで、ここら辺の研究環境の整備が必要であるということが挙げられます。
 今後の方向性として、博士課程進学を促進するため、多様な経済的支援が充実、進路決定プロセス等を踏まえた効果的な進学促進方策の検討が必要であると。
 さらに、若手研究者の安定かつ自立した研究環境の実現が必要であるということで、卓越研究員等の運用改善を図ることが必要であると考えております。
 それから、人材の多様性・流動性、これは俯瞰(ふかん)マップ8でありますが、女性研究者については、大学における登用が増加しておりますが、まだ低い水準にございます。
 それから、海外への研究者の派遣者、海外からの研究者の受入れは微増しておりますが、2000年頃をピークに研究者の特に長期の派遣受入れが停滞しているということで、頭脳循環の課題がございます。
 今後の方向性としては、女性研究者のさらなる活躍促進を図ることが非常に重要だと思います。それから国際流動性の不足については、高校生・大学生の段階から根本的な原因の精査を引き続き行い、流動性を確保する取組が必要だと考えております。
 学術研究・基礎研究推進関連でございますが、WPI、世界トップレベル研究拠点プログラムにおいてはすぐれた研究論文を多数輩出しておりまして、1%被引用件数のコア論文では世界の3番目に今あると思います。それから、iPS細胞、IGZOの開発等、すぐれた成果が創出されておりますし、科研費においては研究種目を創設し、挑戦的な研究を促進しております。
 一方、サイエンスマップにおける国際的に注目を集めている研究領域への参画は伸び悩んでいることが指摘されております。
 今後の方向性としては、我が国全体の研究力強化に向けて、引き続き着実に世界トップレベルの研究拠点形成、成果の横展開に取り組むと。それから、若手研究者が自立的に挑戦的な研究に取り組むためのファンディングの充実、こういうところが大切だろうと。
 それから、学術研究を担う若手研究者の自律的な研究を支えるため、科研費について、若手研究者を中心とした種目への重点的な配分の見直し等が必要であるということになっています。
 研究基盤の強化関連ですが、知の基盤については、大型研究施設の整備・共用が進んでいるが、今後ともこれまで以上に、利用者ニーズを踏まえた施設の整備・共用を図ることが課題となっております。
 それから、大学等の研究設備機器等については、新たな共用システム導入支援プログラムにより研究組織単位での共用が進んでおります。これはかなり新しい動きとして評価できると思います。それから、継続的な共用システムの維持・運営のために、自立的なシステムの確立、機関内での水平展開が課題となっているということでございます。
 それから、安全・安心な教育研究環境の整備、国立大学の機能強化への対応については、さらなる老朽化の進行が課題となっておりますので、ここが重点的に施設整備が必要ではないかと考えられます。
 大学研究施設の共同利用、産学連携を支える学術情報ネットワーク(SINET)は安定的に運用されております。
 一方、オープンサイエンスについては、研究データの共有・公開が進んでいる研究機関等はまだ一部にとどまっておりまして、これは欧米の今の急速な進捗状況を見ると、改善を図る大きな課題ではないかと考えております。
 今後の方向性としては、今後の特定先端大型研究施設、共用プラットフォーム、新たな共用システム機能について、検討を行うと。
 それから、新たな共用システム導入支援プログラムにおける好事例を広く国内の大学に周知する活動を進めると。
 それから、相互に研究設備機器を共用する仕組みの構築を検討するということであります。
 それから、今後の国立大学法人等の施設整備については、安全性の確保とともに、社会の変革に応じた機能強化が一層必要であります。
 SINETも引き続き整備が必要であると。
 それから、オープンサイエンスを推進する観点から、研究データを搭載できるシステム整備、各機関のデータ管理・利活用方針の策定、ここら辺、大変大きな作業が控えているように思います。
 資金改革の強化でありますが、進捗状況及び分析では、大学及び国立研究開発法人の基盤的経費、競争的資金はほぼ横ばい状態となっておりまして、競争的研究費以外の競争的研究費について間接経費を30%措置するなど制度改善を進めております。また、オープンイノベーションの進展に伴い、大学及び国立研究開発法人が企業から受け入れた研究費は増加傾向にあります。
 今後の方向性としては、科研費の柔軟な使用の促進、科研費改革を引き続き実施、使いやすさの向上が大きな課題であります。また、組織対組織の大型共同研究の本格的な推進も大きな課題となっております。
 オープンイノベーションの推進でありますが、研究資金について、大学等における産学官連携活動の規模は着実に拡大しておりますが、1件当たりの規模は諸外国に比べるとまだ小さいので、組織対組織による本格的な共同研究の拡大に課題がございます。
 今後の方向性としては、現在実施している大型産学官連携拠点の構築、大型共同研究の集中的なマネジメント体制の構築等が課題でございます。
 技術シーズの事業化、これは俯瞰(ふかん)マップ13でございますが、大学等発ベンチャーはピーク時と比較すると設立数の水準は低いものの、ここ数年は増加傾向にあります。これは新しい波が始まっているような実感がございます。
 それから注目すべきは、上場している大学等発ベンチャー企業の株式時価総額合計が1兆円を既に超えております。これは10年前には考えられないような大きな流れであります。技術シーズの事業化に向けた取組は着実に進捗しております。
 今、個人的な実感として思いますのは、この時価総額の大きさがうまく大学の資金に循環してくるような整備が必要かなというのは、実感としてございます。
 大学等における特許権の保有件数と実施等件数は両者とも増加しておりますが、実施等件数に比べて保有件数の伸びが大きい状況にあり、研究成果の幅広い活用を見据えた知財の取扱い等が必要であると考えています。
 今後の方向性としては、企業家人材の育成、大学発ベンチャー創出等の支援を引き続き行う。ここ、日本は諸外国と比べて遅れているという指摘を受けておりますので、重要な課題だと思います。
 それから、地方創生でございます。これは俯瞰(ふかん)マップ14、研究資金でございますが、まず進捗状況としては、地域の特色を生かしながら、事業化実現やベンチャー企業の創出、技術移転等の地域科学技術イノベーション施策に取り組んできたところでございますが、方向性として、事業化の成功モデルの全国展開が必要であります。成功している地方と、うまく成功例を作り切れていない地方が分かれ始めているような状況がございます。そこで、高校生・大学生を含めた文理融合の多彩な人材が糾合して、地域が抱えるような課題を洗い出し、それを科学技術イノベーションの適用により解決するという、地域が世界に誇れる強みが最大化された未来像を描き、その実現を目指す取組を通じて、地域が主体的に科学技術イノベーションに取り組むことを推進する方向性が必要でございます。
 国際関係強化でございますが、国際共著論文、伸び悩んでおりますが、国際シェアが低下しているということで、今後は国際共同研究の支援、国際的な研究拠点の形成を促進し、ネットワーク構築の支援を行う等の支援が必要であると考えております。
 社会との関係深化については、若い世代を中心に科学技術に対する関心が減少しております。これは長期的には非常に深刻な問題になりかねないと思っております。
 今後の方向性としては、幅広い世代に自然や科学の面白さを伝える、そういう科学と社会の関係を深化させる活動が必要であろうということで、具体例がそこに示してあります。
 3.今後必要と考えられる全体的な検討の視点として、大学・国立研究開発法人を所管し、研究開発の現場と近い文部科学省は、現場立脚の課題認識の下、産業界・アカデミアをはじめとする関係者と共有すべき技術・研究ビジョンを示していくことが重要ではないかと考えます。
 また、新興・融合領域を発見し、将来の重要課題や研究領域を先取りして、迅速に文部科学省の政策へのフィードバックを行うべきではないかと考えます。
 それから、必要な研究開発投資を確保するとともに、官民ともに研究開発投資費が限られている中、好事例を基に考えられる戦略は何かということをもっと詰める必要があると考えます。
 その際、大学改革等の動きを踏まえながら、文部科学省として推進すべき方策を検討すべきではないかと。また、大学における科学技術のアウトプットを担う経営力を強化することも重要であるということがまとめられております。
 以上が大まかなまとめでございます。
 補足等、事務局からお願いしたいと思います。

【井上企画評価課長】  ありがとうございます。企画評価課長の井上でございます。
 第5期基本計画の進捗状況の把握と分析結果につきましては、ただいま濵口会長から詳しく御披露いただいたとおりでございます。
 総合政策特別委員会におきまして議論の土台となった資料につきまして、事務局より簡潔に御紹介させていただきます。
 資料1-2をお開きいただければと存じます。今回の中間取りまとめに添付された資料で、把握・分析の基となった基礎データ等を示してございます。
 総政特の会議では、先ほど濵口会長から御紹介いただきましたが、我が国の各分野の強み・弱みを抽出していただきました。そのほか、非常にうまくいっている事例、いわば元気の出る事例を集積・発信することが重要であるのではなかろうかという御議論を頂きました。
 そこで、この別添の資料では、例えば21ページから、WPI、世界トップレベル研究拠点プログラムでありますとか、戦略的創造研究事業などの具体例を記載させていただいたところでございます。
 続きまして、資料1-3を御覧いただければと思います。資料の2ページ目でございます。濵口会長から俯瞰(ふかん)マップの番号ごとに御紹介を頂きましたが、実はこの基本計画の章立てに対応した政策領域ごとに、政策体系を見える化した俯瞰(ふかん)マップを作成して、議論の基といたしました。また、その分野で注視すべき指標群あるいは関係各分野において深掘りして御審議いただいた内容、そして実際に実施した具体的プロジェクト等を分野ごとにまとめているという資料になります。
 今回の基本計画の章立てに対応した文部科学省に関係する政策領域を18分野に分けて分析・御議論いただいたわけですが、その対応状況、章立てとマップの関係につきましては、4ページに表形式でまとめてございますので、御覧いただければと思います。
 実際に俯瞰(ふかん)マップ等による分析につきましては、18分野に分けたわけですが、5ページ以降に実際のものを添付させていただいておりますので、御参照いただければと存じます。
 以上、補足して御説明をさせていただきました。

【濵口会長】  ありがとうございます。私の舌足らずな説明で御理解いただけたか、ちょっと心配でございます。全体を俯瞰(ふかん)的に見るということと、前進面と弱点をしっかり見つめるということ、それから、一定、定量的な分析を入れるということを全体としては進めてきた作業でございます。
 今までの報告に関しまして、御意見、御質問等ありましたらお願いいたしたいと思います。いかがでしょうか。どうぞ。

【梶原委員】  資料1-1、2ページの冒頭で、最先端の研究活動を支える研究基盤で成果が出ている一方、挑戦的参画が不足していると書かれてございますけれども、その原因になるような要素はどのような形で見えているのでしょうか。また、3ページのサイエンスマップのところ、(3)の3点目に、国際的に注目を集めている研究領域への参画数が伸び悩んでいるという記述があり、今後の方向性では、共同利用・共同研究体制については大学改革等の動向を踏まえて、と書かれています。冒頭の挑戦的な参画が少ないというお話や、サイエンスマップの分析を見ると、研究分野がサイロ的で、オープン性がやや不足しているがゆえに、挑戦的な研究が生まれず、国際的に進んでいるような新しい分野の研究が少なくなっているのではないかと感じます。学際的な連携などの取組が重要だと思うのですがいかがでしょうか。

【濵口会長】  この基になったデータは、サインスマップ、844領域ございまして、2014年までのデータでございますが、このデータのベースになっていますのは、引用件数、被引用件数、Top1%のいわゆるコア論文の領域別のスポットを国別に比較したデータを見ますと、先進国あるいは中国と比較しますと、日本だけが比率の高いスポットが下がっているんですね。
 それが1点と、2点目としては、坪井所長のところでおっしゃっている大陸型研究が日本では主体になっている。以前からある研究者の人口が相対的に多い伝統的領域にかなり集中していて、孤立したアイランドだとかスモールアイランドと呼んでいる新しいスポット、それから大陸から伸びてくる半島と呼んでいるような領域が日本は占有数が少ない。
 相対的にアメリカは非常にダイバーシティがあって、非常にたくさんのスポットが出ていますし、ヨーロッパはかなり共通したパターンが見えます。それから中国は独自のスポットがしっかり出ていて、アメリカ、ヨーロッパ、日本が相対的に空白になっているエリアに非常に占有率の高いスポットがはっきり出てきているわけですね。
 これがなぜかというのは、恐らく多段階・複合的な理由があると思うんですけど、坪井所長にも補足していただきたいとは思うんですが、私、研究者の目で見てみると、伝統的には日本はすごくサイロ型の研究のパターンになっていると思うんです。例えば私、医学部ですと、医学だけの研究しかずっと知らない形で成長してきますけれども、私がアメリカにいた頃にいた大学院生は、例えば今、デューク大学の学長をやっている女性は、元は学部はイングリッシュリテラチャーをやっていて、大学院でモレキュラバイオロジーでがん遺伝子を研究して、大学院を出たらポスドクでイギリスへ渡って、イギリスでアポトーシスを研究して、それからアメリカへ戻ってと、こういうすごい幅広い領域を個人のキャリアパスとしてもちゃんと踏んでいるわけですね。
 その中で必然的に融合領域が出てくる。しかも、その融合的な新しい革新的な領域にファンディングするシステムがよく働いています。民間のファンディングですけれども、ハワーヒューズの場合、一番力点を置いているのは、その人しかない技術を持っているかどうか。その人の技術がなかったら特定の領域が欠損してくるようなものと評価できるか。つまり、オリジナリティーを非常に高く評価していますけれども、日本はそこはもう少し縦割りになっていると。
 それからずっと出ておりますが、若手の自立が少し遅れているので、ある種、ボスの下で、そのボスのテーマを解決するための短期の雇用になっているところで、どうしても伝統的な領域に集中して、新しい領域を開発する勢いが下がってくるのではないかということが少し見えております。
 今の日本の文化と政策と研究者の育成システムの中で、いかにして改善していくかというのがすごく大きな課題になっているのではないかと思いますが、坪井さん、御意見ございますか。

【坪井科学技術・学術政策研究所長】  サイエンスマップについては、本日後ほど、最新の成果の御報告をさせていただきたいと思いますが、なかなか一言で原因は言えるものではなく、まさに今、濵口会長がおっしゃったことなど、様々あると思います。
 あと、資金提供機関ごとの違いも新しく分析ができていますので、また後ほどの御報告の中で御紹介させていただきます。

【濵口会長】  よろしいでしょうか。どうぞ。

【井上企画評価課長】  すいません、補足して述べさせていただきますが、記述のところのデータですね、関係のデータとしては資料1-2の10ページを御覧いただければと思います。各国と比較して新しい領域にどれだけ研究者が踏み込んでいっているかというところの資料ですが、棒グラフの資料がございます。これは新しくできていった領域を示して、一番左側が世界ですけれども、各国がどのようにそこに参画していっているのかというところ。日本も世界に踏み込んでいく数は伸びているんですが、非常に緩やかになっていると。
 折れ線の部分は割合を示した同じ数値ですが、ほかの国々が右肩上がりで参画を伸ばしているところ、日本は減少傾向にあるということが見てとれたということでございます。
 同じページに円グラフがございます。これはNISTEPでアンケート調査していただいたものを載せさせていただいております。挑戦的な研究にどういうところが影響しているかというところですが、中長期的にわたり安定的な資金供給が予見できる環境にあると、一歩踏み出せるんだというようなところが表れているかと思います。
 参考まででございます。

【濵口会長】  ほか、何か御意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。今後、総合政策特別委員会では、この中間取りまとめを踏まえ、引き続き関係各分科会等の協力を得て、更に掘り下げるべき事項の検討を行って、来年1月には論点の最終取りまとめを行う予定ですので、どうぞよろしくお願いいたします。今のうちにしっかり御意見を賜れればと存じますので、よろしくお願いいたします。
 よろしければ、議題2に移らせていただきます。議題2は、「我が国の研究力強化に向けた研究人材の育成・確保に関する論点整理について」でございます。人材委員会主査の宮浦委員より説明をお願いしたいと思います。
 先生、よろしくお願いいたします。

【宮浦委員】  それでは、資料2を御覧ください。資料2の17ページにポンチ絵がございます。そちらの下の方に枠で囲った今後の取組の方向性というのがございますので、そちらを御覧ください。
 平成30年3月13日に設置されました科学技術・学術審議会人材委員会と中央教育審議会大学分科会大学院部会の合同部会におきまして、計6回の審議を経まして、我が国の研究力強化に向けた研究人材の育成・確保に関する論点整理を同年7月31日に取りまとめたところでございます。
 本論点整理は、我が国の研究力の低下が懸念される中で、研究力の強化に向けた研究人材の育成・確保の在り方について議論を行いまして、今後の取組の方向性を示したものであります。
 具体的には3つの柱がございます。第1に、研究者コミュニティの持続可能性の確保について。第2に、研究者の研究生産性の向上。第3に、若手研究者がすぐれた研究者として成長し活躍できる環境の整備等について、提言をしております。
 詳しくは科学技術・学術政策局人材政策課の楠目人材政策推進室長から御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

【濵口会長】  どうぞお願いします。

【楠目人材政策推進室長】  科学技術・学術政策局人材政策課人材政策推進室長の楠目でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 資料についてですけれども、引き続き資料2の17ページを御覧いただければと思います。
 今回の論点整理でございますけれども、経緯等につきましては、ただいま宮浦先生から御説明いただいたとおりでございます。
 経緯等の下でございますけれども、今回の議論の背景となりました研究人材の育成・確保をめぐる状況につきまして、5つほどグラフを載せているところでございます。背景の状況といたしましては、進学・雇用の状況に関しては、左側の2つのグラフですが、博士課程への入学者数・在籍者数につきましては社会人入学者が増加する一方で、修士課程からの進学者が減少しているという状況が、雇用の状況につきましては若手教員の在籍割合が低下しているという状況が見られるところでございます。
 また、研究環境や研究生産性に関しては、右側の3つのグラフ等になりますけれども、論文数に関する我が国の国際的な地位が低下していることや、大学教員の研究エフォートが減少傾向にあること、また、イギリスのポンチ絵が載っておりますけれども、海外での先進的な取組なども踏まえて御議論いただいたところでございます。
 以上のような研究人材の育成・確保をめぐる状況の変化等も踏まえた上で、今後の取組の方向性として、宮浦先生からも御説明いただきましたけれども、大きく3点の御提言を頂いているところでございます。
 今後の取組の方向性と書いてあるところを御覧いただければと思いますけれども、まず1点目が、研究者コミュニティの持続可能性の確保でございまして、人事給与マネジメント改革等を通じた優秀な若手人材の確保と活躍の推進でありますとか、ライフイベントに応じた支援の充実等による女性研究者の活躍の促進、それから効果的なインセンティブ付与のための運用改善等による優秀な人材の博士課程進学の促進といったことの重要性につきまして、主に組織レベルでの取組につきまして、まず1点目の柱として御提言いただいているところでございます。
 2点目といたしましては、真ん中の欄になりますが、研究者の研究生産性の向上でございまして、世界水準の研究・マネジメント能力を身に付け、世界で活躍できる研究リーダーの戦略的育成ということで、アカデミア、産業界を問わず、求められるTransferable Skillsの育成でありますとか、国際ネットワークの戦略的形成でありますとか、そういった具体的な事項も含めて御提言いただいているところでございます。
 あわせて、科研費等の研究費の若手研究者への重点配分や、研究インフラの整備と若手研究者のアクセスの確保といったことの重要性につきましても御提言を頂いております。
 こうした個々の研究者の能力開発等に係る事項につきまして、2点目として御提言を頂いているところでございます。
 最後、3点目といたしましては、若手研究者がすぐれた研究者として成長し活躍できる環境の整備でございまして、こちらは1点目、2点目とも大きく関わることですが、個々のポストやエフォートのマネジメントに関するような事項につきまして、御提言を頂いております。
 具体的には、任期付きポストの任期を、一定期間(5~10年程度)確保するような取組の促進でありますとか、URAや研究支援人材の配置などにより、研究者の負担を軽減し、研究者の研究時間を確保すること、それから若手研究者が活躍できる環境とのマッチングの促進といった事項につきまして、御提言を頂いているところでございます。
 これらの施策に関しては、多岐にわたりますし、相互に関連するものも多いことから、全体としての好循環を生み出すことの重要性に鑑みまして、こうした取組を総合的に推進し、我が国の研究力を強化するということにつきまして、最後に記載を頂いているところでございます。
 なお、こうした提言の内容につきましては、来年度予算の概算要求等にも反映させていただいているところでございます。
 補足は以上でございます。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 ただいま報告のありました件に関して、御意見、御質問等ございましたらお願いしたいと思います。

【稲永委員】  ありがとうございます。若手研究者に注目して、彼らをいかに研究の第一線に呼び込むかということについて様々な検討がなされているとお聞きしました。私は地方の県立大学に勤めておりますが、いい先生が公募をしてもなかなか来てくださらないという状況があります。地方創生が叫ばれている今こそ、地方にあっても、優秀な先生に学生を師事させたいと思っております。
 今回出していただきましたデータを見ますと、若手研究者はやはり研究環境のいいところ、雑用の少ないところで研究をしたいという希望が強いことが分かります。至極もっともだと思います。もう1つ、このデータにありますが、最近、大学教員等に占める若手の割合は減っているのに対して、その上の世代は増えているという傾向が示されています。地方にもっと中年教員が来ていただけるようなインテンシブを設ければ、研究環境のいい、若手が望むようなところの若手採用ポストは増えるのではないかと思います。
 全国的な研究者、教員の流動性を検討されていると思いますので、その辺についての御検討状況をお聞かせ願えればと思います。

【濵口会長】  お願いします。

【宮浦委員】  ありがとうございます。今回の合同部会では、中教審の大学院部会の方は特に博士後期課程の研究者の最初の育成のところにかなり着目しているのと、人材委員会の方は研究者あるいは教員のところでございますので、合同部会をやったことによって、博士課程の学生が育成して若手の研究者になってくる、そのプロセスを一括で議論できたというのは非常によかったんじゃないかと考えております。
 御指摘の点、もっともな点でございまして、やはり大型大学に若手研究者、研究中心の若手が集中しやすいという状況、研究資金がそういうところに集中しやすいという状況はあろうかと思います。
 一方で、研究型大学ですと、とにかく若手のポストがないということで、ポストが足りないというポストの問題。また、流動性の確保も重要ですので、テニュアトラックと5年任期は一般的になってまいりましたけれども、5年では短いんじゃないかという議論も出まして、5年ないし10年ぐらいのスパンで育てていかないと、5年ですと、3年の時点で残り2年になりますので、そういう意味で、いい意味での流動性を、仮に10年にしても、10年固定するものではなく、10年のスパンで育成ができるという考え方ですので、そうしますと、若手か中堅にある程度育ったところの方が、様々な機関に動きやすい側面もあろうかと思います。
 例えば若手の教授あるいはテニュアの准教授として動くには、七、八年、博士後期課程が終わってからトレーニングを受けた段階で、逆に動きやすくなってくる面もあろうかと思いますので、御指摘の点も十分議論いたしまして、一部の大学に集中しているんじゃないかと、博士後期課程は国立大学に40%ぐらいですか、集中しているという数字もございますので、そのあたりが、任期を、流動性も確保しながら、5年ないし10年のスパンで育成することによって、御指摘の点の流動性も担保されてくると。若手の教授で異動するですとか、そのあたりがポスドクからテニュアトラック初期の異動よりもむしろ異動しやすくなる可能性もありますし、教育経験も出てまいりますので、総合的に判断、議論する必要があろうかと思います。
 ありがとうございます。

【濵口会長】  本当にこの若手の問題は非常に大きな転換点に入っていると思いますが、最近、近隣の国から、日本の職にあぶれている若手をもっと送ってほしいというリクエストとか、給料はこれだけ出ますというような……、今朝も実はある地域の方から言われたんですけれども、国際的なイノベーション拠点を作って、そこへどんどん集めたいと。
 実際、今、そういう若手の動きが始まっているように思います。ある種の頭脳流出の現象が起きています。これ、かなり従来とは違うフェーズでしっかり考えていかなきゃいけない時代に入ってきているかなと思いますので、先生、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

【宮浦委員】  関連しまして、その議論もいたしました。優秀な学生がアジアの近隣の大きな国からお呼びが掛かっていると。給与体系がかなり違いますので、かなり高給で引き抜きが掛かっているという議論もいたしまして、逆に外国人の方あるいは外国で定着しつつある日本人の呼び戻しの給与体系、なかなか提案しにくい部分もあるということで、そのあたりも、システム上の問題も多々あるという議論はいたしました。

【濵口会長】  ありがとうございます。ほか、ございますか。じゃあ、補足を。

【楠目人材政策推進室長】  若干補足させていただきますと、今、宮浦先生から御紹介いただいた議論も踏まえまして、来年度の卓越研究員事業につきましては、海外から戻ってこられる方の特別枠を設けるような改善を図っております。
 また、全国的な人材の流動性という観念からは、研究人材キャリア情報活用支援事業、いわゆるJREC-INの事業を行っておりますけれども、こちらにつきましても、来年度、マッチングの機能を強化するような形の充実を要求しているところでございますので、こうした事業等を含めて、取組を進めてまいりたいと思っております。
 以上でございます。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 ただいま報告のありました委員会以外の分科会等の審議状況も、資料3にまとめてありますので、適宜御覧いただければと存じます。
 少し時間も押しておりますので、よろしければ議題の3に移らせていただきたいと思います。議題3は、「最近の科学技術・学術の動向について」であります。事務局から説明をお願いいたします。

【角田政策課長】  それでは、資料4をお開きいただきたいと思います。幾つかの項目がある中で、最初に政府の統合イノベーション戦略について、説明をさせていただきます。
 資料4の2枚目をお開きいただければと思います。本年6月に総合科学技術イノベーション会議が中心となりまして、統合イノベーション戦略が策定されたところでございます。その内容につきましては、既に報道等ございますので、説明は割愛させていただきますが、資料の中では10ページ、11ページにございますので、後ほど御覧いただければと思います。
 この戦略は、第5期の科学技術基本計画の折り返し地点でございます今年度、科学技術イノベーションに関連する政策や経済社会システムを検証し改善していくために策定をしたものでございます。
 内容といたしましては、知の源泉、創造、社会実装、国際展開、さらには特に取り組むべき主要分野、具体的には、AI、バイオ、環境エネルギー、安全・安心、農業等について、目標や方向性が示されております。
 この戦略におきましては、イノベーション関連の司令塔機能、ここに6つ掲げてございますが、これらの司令塔機能の強化を図る観点から、特にイノベーションに関連の深い総合科学技術イノベーション会議、又はIT本部、知財本部、健康・医療本部、宇宙本部、海洋本部、6つの本部について、官房長官を中心とした横断的かつ実質的な調整推進機能を構築するということで、真ん中のところでございますが、新たに統合イノベーション戦略推進会議を設置することが盛り込まれ、この7月に第1回の会議が開催されたところでございます。
 体制は、2枚目の資料にあるとおりでございます。官房長官を議長といたしまして、科学技術担当大臣を議長代理、また、関係大臣を副議長といたしまして、全ての大臣で構成されるものでございます。
 また、その下のところでございますが、推進会議の実効性を高めるために、専門的な事項の調査を行います会議といたしまして、有識者会議を設置すること、また、その右側のところでございますが、各省庁の実務者によるチームといたしまして、強化推進チームを設置し、その中に主要テーマごとにタスクフォースを置くこととしているところでございます。この主要テーマということで、現在、AIあるいは産学連携、大学改革等のタスクフォースが置かれているところでございます。
 推進会議におきましての議論の内容でございますが、次のページ、3ページ目、4ページ目に掲げてございます。これら統合イノベーション戦略において盛り込まれた各事項のうち、調整の必要のある事項について、点検・整理、調整・推進を行うことにしてございます。中でもAIにつきましては、有識者会議が他の分野に先んじて設置されるとともに、9月に開催されました戦略推進会議におきましても議論が行われているところでございます。
 次の5ページ目以降がその際の資料ということで、有識者から説明のございましたAI戦略案、全体俯瞰(ふかん)図、さらには文部科学大臣から高校、大学、各段階の人材育成に加え、研究開発についても説明を行ったという状況でございます。
 今後も、これら動向については、本審議会におきましても随時御説明させていただきたいと考えているところでございます。
 私からの説明は以上でございます。

【蝦名高等教育企画課長】  引き続きまして、現在、中央教育審議会において検討が行われております「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申(案))」につきまして、御説明をさせていただければと思います。
 お手元の資料5-1が概要のポンチ絵、5-2が答申案の本文でございます。本件につきましては、昨年3月に文部科学大臣から中教審に対して諮問が行われまして、その下に設置されている大学分科会将来構想部会を中心に、2040年を見据えて目指すべき高等教育の在り方や、それを実現するための制度改正の方向性など、高等教育の将来像について御議論を頂いております。
 昨年12月に論点整理を行い、今年6月に中間まとめを取りまとめ、この11月下旬に答申が取りまとめられるよう検討が進められてきているところでございます。
 本答申の位置付けといたしましては、様々な学修者に対しまして「我が国の高等教育はこれからどう変化していくのか」ということを提言するということが今回の答申の目的でございます。
 資料5-2が答申案の本文でございまして、これからの高等教育改革の指針として位置付けられるべきものとして、実現すべき方向性について、4ページ目に3点にわたって整理をしてございます。
 1つ目は、「学修者が何を学び身につけることができるのか」ということを明確にし、学修の成果を学修者が実感できるように教育を行っていくということ。
 2つ目は、2040年、18歳人口が88万人まで減少し、現在の7割程度の規模となるといった推計を前提に、規模の適正化を図った上で、18歳のみならず、社会人あるいは留学生の受入れ拡大が図られているといったような姿を目指していこうということ。
 3つ目は、地域における高等教育のグランドデザインが議論される場が常時あり、地域のニーズに応えるという観点からも、高等教育が充実し、強みや特色を生かした連携や統合が行われているといったような姿を描いていこうということ。以上3点を、大きな方向性として答申案が整理されてございます。
 資料5-1が概要のポンチ絵でございまして、こちらを御覧いただきながら御説明を続けさせていただきます。
 「ローマ数字1 .2040年の展望と高等教育が目指すべき姿」では、2040年に必要とされる人材像と高等教育の目指すべき姿、そこから2040年頃に予測される社会変化、そして高等教育と社会との関係を整理してございます。
 予測不可能な時代に求められる人材は、普遍的な知識・理解と汎用的技能を文理横断的に身に付けていくことが重要であり、こうした人材が時代の変化に合わせて積極的に社会を支え、社会を改善していくことが必要であるとしてございます。
 これに加え、Society5.0の到来などを見据えて、特に数理・データサイエンスなどを基盤的なリテラシーと捉え、文理を超えて共通に身に付けていくことが重要であるということを指摘してございます。
 こういった人材を育成するために、高等教育が目指すべき姿として、学修者本位の教育への転換ということを掲げてございます。何を教えたのかということから、何を学び身に付けることができたのかという学修者目線の教育へと転換をしていく。個々人の学修成果の可視化でありますとか、学修者が生涯学び続けることができる体系への移行といったことが重要であるとしてございます。
 2040年頃に予測される社会変化については、国連が提唱するSDGsが目指す社会、Society5.0や第4次産業革命が目指す社会、人生100年時代と言われる社会、グローバライゼーションがこれまで以上に進んだ社会、地方創生ということが極めて大事な事項として取り扱われる社会といったようなことをキーワードに、高等教育機関としてどうしていくかということの詳細な検討成果がこの中に整理されてございます。
 特に社会との関係について、社会と高等教育機関との間で好循環が生まれるようにしていく必要があるのではないかということで、高等教育の役割としては、世界が抱える課題に教育と研究を通じて新たな社会経済システム等を提案していくこと、その成果を社会に還元することなどを通じて、社会からの評価と支援を得るというような好循環を形成することによって、知識の共通基盤としての機能を継続的に発展させていくことが必要であるということ。
 また、研究の面では、多様で卓越した新しい知はイノベーションの創出や科学技術の発展に大きく資するものであって、科学技術の成果を社会的・経済的価値の創造に結び付け、社会からのニーズに応えていくことが重要であるということ。
 産業界との関係に着目すると、特に社会人などの多様な学生が相互に学び合うことを実現するためには、産業界と連携・協力し、雇用の在り方、働き方改革と高等教育が提供する学びのマッチングが必要不可欠であるということ。
 また、地域という観点から見ると、各人が望む地域で自らの価値観を大切にして生活していくことができる社会を実現するといったような形で、高等教育と社会との関係を見直していくことが重要であるということを提言してございます。
 その上で、求められる教育研究体制については、ローマ数字2 の部分で整理をしてございます。個々人がその能力を最大限に発揮し、AI時代やグローバル時代を生きていく能力を獲得するためには、画一的な教育を提供する側が考える教育というものから脱却し、多様な価値観を持つ多様な人材が集まることにより、新たな価値が創造される場に高等教育機関がなることが必要であるということで、多様性をキーワードに、「多様な学生」、「多様な教員」、「多様で柔軟な教育プログラム」、「多様性を受け止める柔軟なガバナンス」、大学の多様な強みの強化ということについて、整理をしているところでございます。
 この中には、リカレント教育でありますとか、あるいは多様な教員ということからしますと、実務家や若手、女性等の登用、それから多様な教育プログラムという観点からすれば、学位プログラム、学部等の壁を超えた柔軟な教育プログラムの提供が可能になるようにといったようなことなどが提言されてございます。
 また、ガバナンスという点につきましては、国立大学が一法人一大学となっております現在の仕組みを、より柔軟な形に見直していくことでありますとか、国公私立の枠組みを越えた各大学の強みを生かせるような連携を可能とできるような新しい制度的な枠組みを考えてはどうかといったことなどが提言されてございます。
 「ローマ数字3 .教育の質の保証と情報公表」でございますけれども、学びの質保証を再構築していくために、質保証と情報公表をどう進めていくかということについて、整理を行ってございます。
 まず、教育の質の保証のためには、一義的には大学自らが率先して取り組んでいただくことが重要であるとした上で、3つのポリシーに基づく体系的で組織的な大学教育を推進することが重要であるとした上で、各大学における教学面での取組を充実していくために、教学マネジメントに係る指針を、今後、中教審で議論し、大学に対してお示ししていく必要があるのではないかということをお示ししてございます。
 また、国が行う制度的な見直しとしては、現在の大学設置基準につきまして、制定から60年近く経ているということがございますけれども、現在の教育研究のありように照らしてこれが妥当なものであるかという点から、抜本的に見直す必要があるのではないかといったことが提言されてございます。
 「ローマ数字4 .18歳人口の減少を踏まえた高等教育機関の規模や地域配置」でございます。将来推計を中教審として行ってございますが、それによると、これは1つの試算ですけれども、現在の大学進学者数はこれまでよりも1学年当たり約12万人減少するといった推計が出ており、これを受けて、大学全体の規模をどう考えていくかということについて提言をしてございます。
 18歳を中心とした学生の受入れということでは、現在の規模を維持することは極めて困難であるということを認識しながら、社会人や留学生といったような、これまで大学として取組が必ずしも十分でなかったところについて、それらをどう受け入れていくかといったことについても整理をしてございます。
 また、地域における高等教育機会の確保や地域の産業への大学としての貢献といったようなこと、地域において大学をどのように活用できるのか、大学はどういう役割を果たしていけるのかということを、地方公共団体や産業界とともに語ることができるような場として、「地域連携プラットフォーム(仮称)」ということなども提言してございます。
 そのほか、全体として、各高等教育機関の役割や高等教育を支える投資について、必要な提言を行っているところでございます。
 冒頭申しましたように、11月下旬にこれらの答申を行うことができればということで、引き続き検討を行っているところでございます。

【角田政策課長】  それでは引き続きまして、長くなって恐縮でございますが、平成31年度概算要求の内容について、それぞれの担当から御説明申し上げたいと思います。
 最初に、科学技術関係の概算要求について御説明申し上げます。資料は6-1でございます。
 1ページ目に全体像がまとめてございます。総額でございますが、左側の一番上のところにございますように、1兆1,680億円、前年度比で2,054億円増、21%増の要求となっております。
 柱としては4つございます。1つ目が、Society5.0を実現し未来を切り拓(ひら)くイノベーション創出と基盤の強化。そして研究力向上と人材育成。それからいわゆるビッグサイエンスの分野等でございますが、国家的・社会的に重要な課題解決のための研究開発。さらには国家戦略上重要な技術開発という4つの柱によって構成されるものでございます。
 まず1つ目の柱でございますが、内容としては、未来社会の実現に向けました先端研究の抜本的強化ということで、AI、材料、そして光・量子に関わる各プログラムを要求しております。
 また、大型研究施設ということで、ポスト「京」、また、次世代放射光施設の整備。さらには、既にございますSPring-8等の先端大型研究施設の整備・共用についての予算を要求しております。
 さらに、オープンイノベーションの推進又は地域イノベーションの推進、ハイリスク・ハイインパクトな研究開発の推進ということで、必要な事業を実施する予算を要求しております。
 2つ目の柱の人材のところでございますが、研究力向上加速プランといたしまして、先ほど説明の中にもございました若手の研究者を支援するということで、リソースを重点投下する。さらには、新興・融合領域を開拓するための予算、また、若手の研究者が海外で研さんを積み挑戦できるような予算を要求してございます。また、小中学校、高等学校段階の次世代の科学技術イノベーションを担う人材の育成、SSH等の予算を要求しております。
 次に、国家的・社会的ということでございますが、健康・医療、防災・減災、特にこの防災・減災につきましては、南海トラフにおける新たな地震・津波観測網の構築、さらにはクリーンで経済的なエネルギーシステムということで、次世代半導体やITER等の予算を要求しております。
 最後に、大きな国家戦略上の技術ということで、宇宙科学、H3ロケットや次世代人工衛星、航空科学技術についての予算を要求しております。また、海洋・極域分野といたしまして、北極域研究、南極地域観測事業等の推進、また、原子力分野といたしまして、廃止措置等の研究開発あるいは「もんじゅ」の廃止措置等についての予算を要求しているところでございます。
 この要求している予算につきまして、年末の予算編成に向けまして努力をしていきたいと考えているところでございます。
 これに加えまして、政府全体の研究開発関係の予算の総額について御説明申し上げます。資料は6-2でございます。内閣府でまとめております資料でございまして、2ページに全体の額を掲げているところでございます。政府全体として、科学技術関係予算、4兆3,510億円、対前年度比で5,109億円、13.3%増の要求となっているところでございます。
 説明は以上でございます。

【蝦名高等教育企画課長】  続きまして、高等教育局関係の予算につきまして、資料6-3に基づきまして概略を御説明させていただきます。
 高等教育局の所管する予算につきましては、大きく3本柱を設定しており、1つ目が「生産性革命」、2つ目が「人づくり革命」、3つ目が「大学改革」でございます。
 1つ目の柱であります「生産性革命」につきましては、Society5.0に向けた人材育成といたしまして、まず、大学院や社会人を対象とした産学連携におけるサイバーセキュリティ人材やデータサイエンティスト等の人材育成ということで、11億円の要求をいたしているところでございます。また、学部段階におきましては、文系・理系を問わない全学的な数理データサイエンス教育を拠点校において実施するとともに、その下に更に協力校を得まして、できるだけ面的に大きな規模で展開していければということで、9億円を要求しているところでございます。
 2つ目の柱であります「人づくり革命」でございますけれども、1つには、学びのセーフティネットの構築ということで、大学等の奨学金事業の充実を掲げているところでございます。具体的には、今年度から給付型奨学金を本格実施し、来年度で2年目ということになりますけれども、その着実な実施のため、4.1万人を対象として給付型奨学金を実施していくということや、無利子奨学金の希望者全員への対応が可能となるよう所要の経費を計上いたしているところでございます。また、2020年度からの高等教育の負担軽減に向けた議論が、昨年来、なされてございましたけれども、これにつきまして、2020年度からの本格的な導入にむけた検討を進めているところでございますが、その準備のために必要な経費を計上いたしているところでございます。
 さらに、リカレント教育の推進ということで、産学連携による人材育成を掲げているところでございます。具体的には、実務家教員が今後、各大学でこれまで以上に活躍できるよう、実務家教員の育成プログラムを開発し、動かしていくといったようなこと、さらには企業と大学をつなぐマッチングシステムも構築できたらと考えてございまして、そのために必要な経費を要求しているところでございます。
 3つ目の柱であります「大学改革」でありますけれども、国私の基盤的経費の充実といったことで、国立大学法人運営費交付金につきましては、1兆1,286億円を要求いたしているところでございます。特に3つの重点支援の枠組みを踏まえたメリハリある重点支援の推進や、経営改革に係る共通指標の導入を通じた改革インセンティブの向上といったことを重要な項目として、要求を行っているものでございます。
 私立大学につきましては、私立大学等経常費補助につきまして、3,189億円を要求してございます。教育の質保証や経営力強化に向けたメリハリある配分を引き続き行っていけるようにということで、こうした金額を計上いたしているところでございます。
 国立高等専門学校につきましては、650億円を計上いたしてございます。
 そのほか、世界に誇れるトップレベルの教育研究活動の実践というところで、高度な博士人材育成のために、今年度からスタートしてございます卓越大学院プログラムについて、来年度、増額の要求をいたしてございます。
 また、グローバル人材育成では、留学生の交流あるいは大学教育のグローバル化、グローバルな展開力の強化といったことで、所要の経費を要求いたしているところでございます。
 最後に、高大接続につきましては、来年度、大学入学共通テストの準備などに要する経費として、78億円を要求するということでございます。
 高等教育局の関係につきましては以上でございます。

【藤井計画課長】  それでは続きまして、国立大学等の施設整備に関する概算要求について御説明いたします。資料6-5を御覧下さい。タイトルの「国立大学法人等施設の整備」の「国立大学法人等」の「等」ですが、これは国立大学法人、大学共同利用機関法人、それから、国立高専機構の施設整備ということでございます。
 まず4ページを御覧下さい。2019年度の概算要求の御説明の前に、若干その背景をお話しさせていただきます。国立大学法人等の施設整備につきましては、施設整備5か年計画に基づきまして、計画的・重点的な整備を進めているところでございます。
 この「5か年計画」というのは、科学技術基本計画を策定根拠としておりまして、現在取り組んでおります第4次5か年計画は、第5期科学技術基本計画を踏まえたものとなってございます。具体には、科学技術イノベーションの基盤的な力の強化というところの中で、国立大学法人の施設整備につきましては、国立大学法人等、全体の施設整備計画を国が策定し、計画的・重点的な整備を進めること、また、併せて戦略的な施設のマネジメントや多様な財源を活用した施設整備を推進する旨が掲げられております。
 4ページの上部に書いておりますが、今、国立大学法人等の施設につきましては、ライフライン等も含めまして老朽化が深刻な課題となってございます。ライフラインの不具合や事故の発生、教育研究機能の低下が大きな課題となってございます。
 この5か年計画におきましては、老朽施設やライフラインの改善整備を中心に、その方向性、整備の狙いということで、3つの柱を立ててございます。
 1つが、「安全・安心な教育研究環境の整備」ということで、老朽化対策、ライフラインの計画的な更新によって安全性を確保するということでございます。
 それから、「国立大学等の機能強化等変化への対応」ということで、各大学が取り組んでおります機能強化、人材育成や研究開発の面での様々な機能強化の取組に施設面で応えることができるような機能改善やスペースの再配分・最適化を行うということを考えてございます。
 また、サステイナブル・キャンパスの形成ということで、省エネルギーの推進や維持管理コストの低減を施設の整備として推進することを考えてございます。
 1ページを御覧下さい。来年度の概算要求でございますが、概算要求額823億円ということで、前年度比で447億円の増額要求になっております。要求内容でございますが、ただいま御説明いたしました5か年計画の柱立てに沿って、「安全・安心な教育研究環境の整備」と「国立大学等の機能強化等への対応」を柱にしてございます。
 2つの柱を立ててございますが、特に建物の整備につきましては、これら2つを併せてやることを考えてございます。研究のアクティビティーが高くなると、スペースのニーズが出てきますが、老朽施設を抱えていながら新たな建物を整備するということは、これらの維持管理の負担が大学経営に大きくのし掛かるということで、老朽施設を改善する中で、スペースをマネジメントすることによって、スペースの共用化や稼働率の低い部分の洗い出しなどを行いながら、スペースの集約を行って、新たに建物を建てることなく、既存の施設の改善を通じて新たなスペースを創出していく。これを例えばプロジェクト研究のためのオープンラボ化するなど、単に古いものを新しくするだけではなくて、より付加価値の高い機能を付けていくということを事業の内容としてございます。
 以上でございます。

【濵口会長】  ありがとうございました。
 ただいま一連の動向について御報告いただきましたが、この内容について、御質問、御意見ございましたらお願いいたします。
 浦辺委員、お願いします。

【浦辺委員】  御説明ありがとうございます。実は昨日、私、先ほど説明ありました統合イノベーション戦略推進会議の下にありますSIPというプログラムのプログラムディレクターが集まった会に出席しました。SIPは5年で基礎研究から出口戦略まで一気通貫でやれという大変難しいものです。
 その会の中で最も強くプログラムディレクターの方から出てきた意見は、基本的には、やはり基礎研究がやれないという非常に悲痛なものでございました。出口を求められるために、いい基礎研究でも、それを切ってもう少し出口に近いものを選ばなくちゃいけないと。これは非常に矛盾があるという意見でした。
 今お聞きしていますと、資料2の中で研究力の強化が非常に大事だと。それから先ほどありましたイノベーション会議では、AI等に集中しろという要求が出ていて、それに見合う必要があると。それから資料5の高等教育も、非常に多様な要求がある。そういうのを聞いていますと、めまいがするような感じがして、これは文部科学省の中で、それらの政策の相互の関連を図化して、一体どういう関係があって、その中で何を一番重点化すれば、何が可能になるのか、プライオリティーを付けるというか、むしろ構造化をきちんとしないと、これだけのことを大学の先生、はい、やってくださいというのは無理だという気がします。
 それで、私の経験から言えば、大学では、ある程度長期的な予算、それから人材の確保ということが基礎にあるわけですから、そういうのを長期的な視点で作っていくことによって、ほかのいろいろな要求も解決するのかなと思いますので、構造化した図を見せていただいてからこの説明を受けないと、頭がいっぱいになっちゃうという気がしました。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 これ、どなたが対応を。松尾局長、お願いします。

【松尾科学技術・学術政策局長】  本当に多種多様でありまして、我々も全体像をどうつかみ切って、課題にどう対応するかという、様々な問題があります。
 今、浦辺委員が言われたとおりでありまして、その構造化のために、文部科学省だけではなくて、各省庁のいろいろな施策もありますし、いろいろな課題との対応関係もあるので、これは総合科学技術・イノベーション会議の方で、先ほど委員が言われた、SIPだけでなくて、イノベーションの戦略を練っております。
 我々もいろいろなところをどう見せていくか、どう関連付けていくか、これは工夫が要ると思います。これまでも多様なことをやっていましたけれども、例えば大学と研究との関連性であるとか、人材はまさに、例えば博士課程からいえば、研究者の養成でありますので、そことの関連のために人材委員会と中教審の大学院部会の合同会議をさせていただいておりますので、すぐに浦辺委員のお答えになるようなことはなかなか難しいわけですが、我々としても工夫をして、しっかりと対応していきたいと思います。
 今すぐここで全体がどうなっているかというのは、これは統合イノベーション戦略の中でマッピングはしています。それが一応の政府としてのお答えにはなりますが、それで十分かどうかというのはございますので、ここは我々として少し受け取らせていただいて、またいろいろな点で改善させていただければと思います。

【濵口会長】  お気持ちよく分かりますので。お時間頂ければと思います。

【岸本委員】  資料5-1、5-2で、2040年に向けた高等教育のグランドデザインということで御説明いただいたんですけれども、ここに書かれていることを拝見すると、直ちにしなきゃいけないことが示されているように思います。2040年になると高等教育そのものがもっと大きく変わっている中で、これ、2040年に向けた答申というので果たしていいんだろうかという疑問があるんですけれども、ここでのグランドデザインというのは、どのぐらい本当に将来に向けて考えておられるんでしょうか。
 要するに、科学技術の在り方だとかも大きく変わっていく中で、2040年というのは現在の延長線上で考えるのとは異なった世界になっているような気もするんですけど、そういった議論はされていらっしゃるんでしょうか。

【濵口会長】  いかがでしょうか。

【蝦名高等教育企画課長】  ありがとうございます。この答申の中でも2040年にはこういうふうに社会が変わっていくのではないかということに触れておりますが、一方では予測不可能なということも出てきております。現在存在する材料から2040年はこういった方向に変わっていくのではないかといった議論を一定程度した上で、今から、足元から変えていくためにはどっちの方向に向かっていくか。したがって、かなり大くくりな議論だと思います。本当にこのように世の中が変わっていくのか、もっと違う将来があるのではないかということはおっしゃるとおりだと思います。ただ、今、恐らくこの方向に変えていかないといけないのではないかというような議論だったように思います。
 2040年を目標として設定しましたけれども、その後の状況の変化がありますれば、当然ながら引き続き、その地点での知見を踏まえた在り方の議論はなされていくだろうと思っております。
 したがいまして、お答えになっているかどうか分かりませんが、そのようなことで議論が行われています。

【濵口会長】  多分このデータは、文部科学省が2040年を見据えたというところにすごい価値があると思って。今までなかったお話ですから。トライアルだと思います。
 ピーター・ドラッカーの言葉を借りれば、人口動態以外は未来の予測というのは大体当たらないと。人口動態はきちんと踏まえられていると思います。
 あと不確定要素は、AI、IoTがどれぐらい実際インパクトのあるものになってくるのか、ならないのか、専門家でもかなり意見が分かれておりますし、不確定要素が幾つかある中で、どういう人材育成をしていくかというので出てきた優しい言葉、柔軟という言葉かなと思っております。よろしいでしょうか。
 ほかの方。どうぞ、先生。

【栗原(和)委員】  似た観点ですが、最初に濵口会長が新しい領域や融合領域での人材育成について、外国の先生のことを言われて、日本では多様なバックグラウンドのある研究者が少ないとおっしゃったのですが、そういう観点で資料5-1を拝見しますと、いろいろな領域をまたいで、学部、修士、ポスドクと進める研究者を育てるにはどういう基本的な知識を持たせるべきかということを考えるのが、1番の普遍的な知識や理解というところに通じるのかと思います。例えば多様な教員を雇うという価値観で、大学がもう少し幅広く人材を雇用することも必要なのだと思います。
 今、若手の30代の方々が流動ポストに就いているということは大きな課題ではあると思うのですが、課題だというメッセージを伝えるだけではなくて、彼らにとってチャンスでもあると思ので、外国で雇われるぐらいの力を持って、どんどん外国に出てもらってもいいのではないかと思います。
 ただ、その場合、課題は、そういう人たちを呼び戻す、その中の何割かは帰ってきてほしいと。そういうようなところの人材の採用とか、そういうところをもう少し大学は幅広く考えていくべきだと思いまして、この多様性と柔軟性の確保というところにかなり多くの課題解決の鍵があるように拝見しました。
 以上です。

【濵口会長】  ありがとうございます。多分ブレインサーキュレーションで今一番ミッシングリンクになっているのが、帰ってくるところのスムーズな移行、そこが保証されると、もっとどんどん海外へ行くと思うんですね。
 今年、帰国のサポートをするお話が、さっき、予算でも出ておりましたので、具体化されるプロセスにあるかなと思っております。
 ほか、いかがでしょうか。どうぞ。

【白波瀬委員】  1点だけです。私、人口学も専門分野ということで一言だけ意見です。高等教育のところで2040年に向けたということで、人材育成はいわゆる投資でありその期間とその効果を図るにも長期的な視点が求められます。そのメッセージというのは肯定的に捉えることができますが、現在進行形で変化している子供たちというか、若者に対して何をできるかということに対して逃げになっちゃいけないなという感想を正直持っているんです。将来に向けた政策を語る際、18歳人口の減少というのは枕言葉で出てくるんですね。人口動態を無視できないことはおっしゃるとおりなんですけれども、やっぱり質と規模のことがあります。人口減少という前提条件を変えて多様性というのは展開されなきゃいけないというところがあると思うんです。
 どう考えても少ない、小さくなっていく対象に対して小さくなることを前提とする議論ではなくて、1人当たりの投資額はかなり違って、全体の投資のサイズは同じかもしれないというデザインはあり得るわけです。そのあたりが18歳人口の減少と言った瞬間、前提条件がずっと何十年も変わっていない、そういう印象を、ごめんなさい、受けますので、そこはもともとのところが違いますよというのも大切かなと。それこそが、これから2040年に向けて必要な1つの理念のある意味前提にもなってくるんじゃないかなと思います。
 以上です。

【濵口会長】  重要なポイントを頂きましたが、コメントはございますか。
 個人的に答えれば、多分地方創生がリンクしてくると思うんですね。地元で相対的に生活コストの掛からない環境の中で生活できる仕事と、それからやりがいが確保されることによって、特に女性ですね、若い女性、20歳前後のところの活躍が促進されると、人口は増えると思います。
 OECDのデータでいけば、女性の就労率と特殊出生率はリニアな、プラスな関係であります。就職率が高いほど出生率も増える。そこが今、日本は改善されていないところに一番の根本的な問題があると個人的には思っておりますが、文部科学省の見解はいかがでしょうか。

【松尾科学技術・学術政策局長】  すいません、今、正確に申し上げる材料はないですが、確かに委員が言われるように、今のこの推計は、18歳人口をベース、そして40年には88万人になるので、それに対する個人への投資も、多分今の投資をベースにして算定をしているものだと思います。
 ただし、人口が変われば投資の在り方も変わりますし、いろいろなものが変わっていきますが、そこまでのミクロに精緻なデータ分析ではないと思います。ただ、先ほども言いましたように、人口だけは確実に減っていきます。投資の在り方とか、いろいろなものは社会状況によって随分変わってくると思います。そして、社会も2040年はどうなるかというのは不確定な部分がございます。
 そういうことを全部相殺してどうなるかというのは、果たして本当にそこまで見通せるかということがあるので、そういう意味でいうと、高等教育の在り方もそうですし、これから我々、第6期の科学技術基本計画も作らねばならないのですけれども、計画自体にどんな意味があるのかというのはよく考えていかないといけないと思います。
 したがって、特に人材育成、養成について言えば、いかなる変化にもどう対応していける人材を作るというのが恐らく重要なのだと思います。その上で、ミクロにどう変化していくかということに対応していく、まさにアジャイルな人間を育てる環境を整備していくという感じだと思います。
 先生が言われるようなミクロな分析まではしたものではないのではないかと思います。

【濵口会長】  よろしいでしょうか。ほか、御意見ございますか。どうぞ。

【福井委員】  最初のところのテーマからでもよろしいでしょうか。今思い付いたことですが、私は、全ての研究分野を日本の研究者が網羅することは難しいと思っています。もしそうであるなら、今までの膨大な研究に関するデータを大型コンピューターなりAIで分析をして、どういう分野に優先度を付けて投資すればいいのか、まさにAIを活用できるテーマではないかと思います。また、外国の研究者がそういうことをしているという記事を読んだことがございます。
 もう一点、2040年のことだけではなくて、いろいろな問題点がかなり明らかになっていますので、できることなら、時間軸を入れてPDCAサイクルを回す具体的な解決案も是非出していただきたいと思います。
 直近のことで申し訳ありませんが、たしか科研費は英語での申請を受け入れてくれないんですね。たしか日本語だけでして。

【濵口会長】  今は英語でも。

【福井委員】  それだったら結構です。私たちの大学で、外国人の教員を雇用していますが、英語でのアプリケーションが出せなくて、いろいろな要因が重なって帰国してしまった人もいるものですから。結局、日本では余り研究できないということで、そういう問題点を一つ一つ潰していっていただければ有り難いです。

【濵口会長】  何か御意見ありますか。よろしいですか。
 PDCAサイクルのところは少しトライアルをやっているんですけれども、今一番の難点は、不確実性の高いデータがあるのと、ソースがいろいろなソースがありまして、直近のものしかないとか、ずっと古いデータしかないとか、ここら辺の整理が政策的にはかなり大きな課題になっているようには思っております。もう少し定量的解析を入れるような作業は進めていかなきゃいけないんじゃないかと思っております。
 ほか、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。どうぞ。

【小長谷委員】  高等教育の現場におりましたので、もう遅いなと思うことがあります。でも、教育を放棄してしまうことはできません。これだけ先のことを見据えるなら、18歳をターゲットにすることだけが高等教育ではなくて、子どもたちが小さいうちに何をするか、自然とたわむれるとか、いろいろな知的な刺激をどのように小さいうちからするか、あるいはそれを生んでくださる人がどう育てるかを念頭に置いていただきたいです。小さいうちから学歴や偏差値だけを思うようなら、有能な人材にはならないわけです。
 だから、幼児教育こそ高等教育と言うように概念を入れ替えるぐらい、こつ
 ありがとうございます。

【濵口会長】  よく分かります。やっぱり我々の力の及ぶところと及ばないところがあって、かなり届きにくい問題は、日本の社会構造の変化、文化の変化があって、今一番の苦しみは、核家族化が進む中で、幅広いサポートがないまま若い夫婦が孤立して、特にお母さんが孤立して、どうしたらいいか分からないという状況が結構増えていて、それがいろいろな問題を生み出しているようには思うんですけど、これを、どうアウトリーチしていくかというところはもっと考えないと。初等中等教育局の大きな課題ですね。

【小長谷委員】  せめて文部科学省の中だけでも仲よくやっていただければ有り難いと思って。

【松尾科学技術・学術政策局長】  受けまして。仲よくやってはいますが、教育は委員が言われたように、幼い頃から、そして初等中等の流れと高等教育の流れと、あと研究者の流れがあります。
 見せ方として、全体もそうですが、今のところターゲットが2040年に向けた高等教育の在り方なので、こういう形で見せていますが、しっかりと連携してやっておりますので、よろしくお願いいたします。

【濵口会長】  御寛容のほど。
 大分議論も出尽くしたと思いますので、よろしければ、続きまして、科学技術・学術政策研究所からの報告を、科学技術・学術政策研究所の坪井所長からお願いしたいと思います。

【坪井科学技術・学術政策研究所長】  お手元の資料7-1に基づき、前回総会以降に当研究所から公表した定点調査、科学技術指標、サイエンスマップに関する御報告をいたします。
 まず2ページからがNISTEP定点調査2017ということで、これは産学官の第一線の研究者、有識者への継続的な意識調査を通じて、科学技術、イノベーションの状況変化を定性的に把握する調査を毎年行っているもので、第5期科学技術基本計画の5年間、実施します。今回はその2年目の調査です。
 回答者は有識者等2,800名おり、大きく2つのグループに分かれますが、これらの方々に毎年同じ質問をし、その質問に関わる事業を6段階で評価いただき、その変化を見ていくという調査です。
 質問票は、この紫色にあります6つの質問パートに63問で構成されています。
 事前調査は昨年の9月から12月で、回答率92.3%、非常に高く御回答いただいています。
 また、これらの質問に関連した自由記述とか回答理由として約9,000件、56万字という大変多い量のコメントも頂いていまして、これをキーワード検索したり、回答者の属性別に整理したりできるように、ウエブ上でファイルを公開しているものです。
 3ページは、先ほどの回答者について具体的に書いておりますが、分析の際にはこれらのグループ別の認識の差の分析も可能になっています。
 4ページに今回の調査結果のポイントを書いています。1つは、大学・公的機関の研究活動の基盤に対する危機感は、前年に引き続いて継続しています。
 また、基礎研究の状況に対しては、不十分という認識が前回の調査よりも増えている点がポイントとして挙げられます。
 また、産学官連携については、大学・公的機関側の方は比較的取り組んでいるとしている一方、産業界の方はまだ不十分ということで、ほかの質問に比べると、この認識ギャップが大きいという特徴が見られるものです。
 あと、多くの質問に関して、評価を上げたという回答者もいますし、下げたという回答者も一定割合存在するので、平均化してしまうと変化がないという結論に陥りがちなところがあるので、その辺は詳しく、個々には分析もしております。また、大学・公的研究機関では、よい事例などが提出されてきているところもあるので、そういったところをしっかりピックアップして評価していくことも重要ではないかという点があろうかと思います。
 あと、5ページ以降は具体的な結果の代表例を載せています。時間の関係で省略させていただきます。
 続きまして、9ページからが科学技術指標2018です。この科学技術指標については、1991年に初めて公表し、2005年からは毎年公表しているもので、ここにある5つのカテゴリー、157の指標を使って、日本と主要国の状況を把握し、分析しているものです。
 時系列データが入手可能なものは、1980年代からの変化も分かります。毎回、適宜指標の見直しも行っており、今回は新たに18の指標を取り上げています。
 10ページと11ページにそれぞれのポイントをリストアップしています。
 12ページから個別の論点ですが、まず12ページは論文に関するもので、ここはよく取り上げられているところですけれども、10年前よりも順位を下げています。昨年と比べますと、順位は昨年と同じ状況です。
 13ページは、これは新しく取り上げたもので、主要国における企業の産業分類別の研究費の状況で、日本、ドイツ、韓国は製造業が大きく、日本はコンピューター、電子・光学製品製造業は減少する一方、輸送用機器製造業は増加し続けています。米国は、これ、スケールも違うんですが、非製造業の中で特に情報通信業が突出して増加している状況が見てとれます。
 14ページは、各学位団体の取得者の各国との比較になります。ここは人口当たりですけれども、各国共通として見られる傾向は、学位が上がっていくほど自然科学の割合が増えていく傾向があります。最も右が博士号の取得者ですが、日本だけが2008年から2014年にかけて下がっている一方、ほかの国は上がっているという状況です。
 15ページは、日本の大学と民間企業の共同研究実績等が着実に上昇していることが見てとれます。
 あと16ページは、企業の論文数に関するもので、1997年をピークに減少し続けてきています。ただ、そのうちの産学共著論文の割合はずっと増加してきており、企業の論文を生み出す研究活動における大学の重みが増していることが見てとれるとも言えます。
 次の17ページからサイエンスマップ2016となります。NISTEPでは、サイエンスマップを2年おきに作っており、今回のものは8回目で、今回は2011年から2016年までの6年間の論文を対象として分析を行っています。
 論文データベースから国際的に注目を集めている研究領域を抽出することを目的とする分析ですが、いわゆるキーワードからスタートするのではなく、他の論文から頻繁に同時に引用される論文の研究内容は関連が深いはずであるという考え方の基に、論文の共引用度を数値化することで研究領域を抽出・可視化しているものです。
 具体的には、先ほど、濵口会長からも御紹介があったのですが、Top1%論文をまず抽出して、それを引用している論文のうち、共引用の関係にあるものをグループ化していくことで、注目を集める研究領域を確定していくものでございます。
 18ページには、そうして出来上がった2次元のマップを載せています。今回は895の国際的に注目を集める研究領域が抽出されています。
 また、それをまとめた研究領域群も示しておりますが、今回のマップにおいては、人工知能に関わる研究領域を含む20番のソフトコンピューティング関連研究とか、IoTに係る研究領域を含む21番の社会情報インフラ関連研究といった研究領域群が新たに立ち上がったという特徴があります。
 19ページと20ページもポイントをリストアップしているものですけれども、21ページに行かせていただきまして、ここが注目される研究領域数の推移と主要5か国についての参画研究領域数の割合の水準を示しているものです。
 日本の参画領域というのは、抽出された研究領域のうち、日本の論文がコアペーパーとして含まれている研究領域を指します。世界全体では598から895まで拡大している中で、日本の参画領域数は、この間、停滞又は2008年の41%をピークとして、その後、減少しておりましたが、2016年は33%で、2年前は32%で、1ポイント、わずかですが上昇した結果が出ています。
 ただ、米国は減少傾向であるものの90%、英国63%、ドイツも56%、中国も毎回大きく拡大してきて、今回は初めて5割を超えて51%という状況が見てとれます。
 22ページは、今回の日本の参画領域数の拡大が、国際共著を通じた研究領域への参画の増加が主要な要因であることが分かる図です。
 あと23ページは中国に着目したもので、中国の先導により形成される研究領域数の拡大で、中国のシェアが50%以上を占める研究領域数が前回の50から大きく伸びて79研究領域になっております。
 ちなみに米国は261研究領域で、これは前回と同じです。日本は、残念ながら4研究領域のみです。中国に関しては、中国国内で論文を引用し合っているので引用度が高めに出るのではないかという見方もありますが、研究領域を形成可能な規模の国内の研究コミュニティが形成できているという見方もあろうかと思います。
 左側に掲げている4つの研究領域群の中が、中国が非常に強いという分野です。
 次の24ページが、これも先ほど議論がありましたSci-GEOチャートで、前回のサイエンスマップとの継続性の有無という時間軸と、他の研究領域との関与の強弱という2軸で、4つのカテゴリーに分けているものです。
 図の右上の茶色がコンチネント型で、いわゆる大きな研究領域で、たくさんの研究者が集まり、かつ長い時間研究を継続しているものです。一方、左下の青い領域が、スモールアイランド型で、今回の2016のマップで初めてキャッチされて領域として小さく、いわば新しい研究がエマージしている領域と言えるものです。
 これについて、全体と各国の割合を見ると、日本は他国と比べるとスモールアイランド型のパーセンテージが小さく、コンチネント型のパーセンテージが大きいということで、国際的な傾向とは逆となっていることが見られるものです。
 あと25ページは、特許との関係で、イノベーション、技術とのつながりを分析したものです。特許に引用される論文を調べてみた結果で、サイエンスマップ2002から2016について、パテントファミリーからコアペーパーへの引用数における主要国の割合をまとめたものです。
 日本は、2006から2010までは10%を超えていて、米国に次いでいたんですが、その後は減少傾向にあり、2014からは、ドイツ、英国のみならず、中国、フランスよりも小さい割合になっているというものです。
 26ページが、論文の謝辞に載っている資金配分機関を抽出して分析した結果です。日本学術振興会、これはいわば科研費ですが、スモールアイランド型が最も多く、コンチネント型が他に比べて低いという状況が見てとれ、文部科学省、JST、厚生労働省、内閣府、AMEDときて、NEDOは最もコンチネント型に寄っている傾向が出てきています。
 なお、これらを施行的な分析と書いている理由は、謝辞はまだ表記の仕方とか表記の義務化に必ずしも徹底した取組がなされていないので、分析の精度が低いという意味で、試行的な分析としています。
 27ページにあるように、今後はこうした分析の精度が上がるように、謝辞情報を表す統一した課題番号や事業のコード等が整備されることが望ましいという考えの下で、実は2年前のサイエンスマップ2014からこの情報を載せており、既に科研費やJSTの戦略創造研究推進事業とAMEDにおいては導入されていると承知していますが、さらに幅広く拡大されることを期待しています。
 なお、3つの報告書のそれぞれの概要は、資料7-2から資料7-4と別な資料に載せております。時間の関係で説明を省略いたしますが、資料7-5には民間企業の研究活動に関する調査報告2017を載せています。
 簡単ですが、以上です。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 それでは、ただいまの報告に関して御意見、御質問ございましたらお願いいたします。
 どうぞ、お願いいたします。

【栗原(美)委員】  分析の御報告、ありがとうございます。課題ですとか示唆に富むいろいろな要素が入っていたかと思います。
 4ページの産学官連携のところで、大学・公的研究機関と産業界に意識のギャップがあるとのご説明でした。大学・公的機関は十分やっているとの意識がある一方、産業界の方は不足感があるということなのですが、産業界の方の不足感というのは、具体的に、産業界側の問題なのか、あるいは大学・公的機関と連携しづらい課題があるのかというところを教えていただきたい。もし、不足感があるとすれば、逆に言うと、そこは埋められるチャンスだとも思うので、ギャップを埋める成長性があるというように捉えて、より進めていただきたいと思います。
 それと関係するのですが、今日の議論の中で、2019年度の予算を見ても、国家戦略的なR&Dを見ても、大学、研究機関だけにとどまらず、産業界とのタイアップが相当色濃く出ています。しかし、人材の流動化については、セクター間の人材の流動化が資料1でありましたけれども、企業から大学には人を送っているのですが、大学から企業への流れはむしろ細っているので、このようなところが先ほどの認識のギャップに繋がっているのだとすると、人材面での相互交流というところを解決していく必要があるのではないかと思います。

【濵口会長】  いかがでしょうか。

【坪井科学技術・学術政策研究所長】  産業界との認識のギャップですが、先ほどのグループ別に回答を集めた結果の資料で、個別の質問に関して満足度が違っており、産業界の方は割と低い評価、大学側の方は高い方に評価点があるという差があります。結果として、そういう差が出ているので、この調査の結果からこういう判断をしたんですが、その原因がどちら側にあるのか、大学側が産業界に十分伝えられていないのか、産業界側が大学側の取組を十分知っていないのか、そこまでの分析はまだ十分にできていませんが、担当者の方から補足があれば、させていただきます。

【伊神科学技術・学術政策研究所科学技術・学術基盤調査研究室長】  調査を担当しております政策研の伊神と申します。
 お手元の資料7-2の17ページを御覧いただきますと、我々もこの産学の認識のギャップをどう解決すればいいかという問題意識は持っておりますが、本年度の調査では、産業側が自分の問題は何なのか、大学側は自分の問題が何なのかと認識しているというのを聞いてみました。
 それが今お示しした17ページですが、これは企業規模別に示しておりますが、例えば大企業が自社の問題は何と考えているかといいますと、目利き力、この部分に問題があると思っているという結果である一方、中小企業は、組織的な研究体制が構築できないところに問題意識を持っている。ベンチャーになると、資金の部分ということで、企業側も決して問題がないわけでなくて、こういう部分があるので、こういう部分をいかに解決してあげるかというのが、ひとつ、ギャップを埋める可能性のある部分と考えています。
 もう1つ、大学側に関しては、ここにはお示ししておりませんが、企画能力、企業側に魅力的な提案ができないことを問題意識として挙げていて、よくある調査では、大学は企業側、企業側は大学側の課題を挙げていますが、今回の調査では、それぞれがどう問題意識を持っているかを聞いて、少しでも一歩前に進むヒントになればということで、こういう質問も行っております。

【坪井科学技術・学術政策研究所長】  同じ資料の14ページに戻っていただきますと、私が先ほど申し上げた産業界と大学等のグループでこれだけギャップがあるという資料がここにあります。

【濵口会長】  大学にいた者としてバックグラウンドをちょっと言いたいのは、大学の給料が安過ぎるんですよね。ぽろっと言っちゃいますけど。だから、企業から来ようと思うと、給料が半分か3分の1になるからなかなか動けないと。アメリカはそんなことないんですよね。
 でも、そんなことないアメリカのようなやり方をすると、入学金、それから奨学金が上がっちゃって、スチューデントローンがどーんと増えて、バンクラプトになるような学生がいっぱいいてという深刻な問題が片方である。
 どこかを立てればどっちかがまたおかしくなるような、風が吹けばおけ屋がもうかるような非常に複雑な方程式の中で、ベターアンサーは何かということを探していく作業であると思います。その作業をやるベースが、このデータをどこまでしっかり読み込むことかなと思います。
 本当に大変なことは確かなんですけれども、すいません、給料を上げてください。
 ほか、よろしいでしょうか。どうぞ。

【宮浦委員】  今の話題に追加させていただきたいんですけれども、給与体系の問題も非常に重要だと思うんですが、セクター間で動かないというのは、10年来、議論になっていて、動かないんです。要因の1つが給与で、大きな理由だと思います。
 もう1つは、大学側が何をもって採用するかというと、すぐにパブリケーションリストと論文リストを要求するので、そのリストが埋まらない限り、大学側は雇用しないというスタンスが旧来からある。
 産業界で研究開発して非常によいお仕事をされていても、URAのような特殊な職種は別として、通常の研究科で採るかというと、中堅でしたら論文何十本というような話になるわけですね。
 そこがやはり1つの理由で、そんなもの埋めるよりも産業界でお仕事された方がいいですよねということになりかねないわけで、それが産学連携ですと、お互いに、大学の人間は論文を書いていて、シーズも持っている場合に、産業界から出ていらっしゃった場合には、研究開発の本丸でお付き合いするんだと思うんですけれども、人が動くときには、給与の問題と、すぐにパブリケーションリストをもって採用という形が、1つの大きな、様式が変わるだけで随分違うと思うんですけれども、そういう抜本的なことをやらないと、セクター間の異動が0.何%から上がってこないというのがある。

【濵口会長】  0.0何%ですよね、あれ。

【宮浦委員】  そうですね、目的……。

【濵口会長】  10年前より、また悪くなっているというのをずっと繰り返して。

【宮浦委員】  そうなんです。
 もう1つは、先ほど調査いただいた中で、人口当たりの後期の博士取得者数が減っているというのが非常に危機的だと思っておりまして、ドイツも英国も増えているんですね。もともと多いんですけど増えている状況で、日本は減っていると。間もなく人口ベースにしても中国に抜かれるであろうということを考えると、確かに18歳人口は減るんですけれども、研究開発をするイノベーション人材のところというのは、何か戦略的に増やすようなことをやらないと、右肩下がりになっていくという状況かと思います。
 それは人材育成についても同じだと思います。

【濵口会長】  ドイツが成功しているというか、相対的に日本よりいいバックグラウンド、もう1つは、工学系は企業での就業経験5年以上の人を教員として採用するとか、だから、産業界と大学はもともと非常に近い関係にある土壌が育っている。フラウンホーファーが更に組織的にそれをオーガナイズするという構図ができているんですが、日本は150年の歴史の中で出来上がってきたセクター間の壁の非常に高い、リジットな社会になっていて、これがもともとは高度成長期には成功の原因だったんですけれども、今は弱点になっている。
 どうするかということですね、本当に。
 ほか、御意見ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。

【庄田会長代理】  資料7-1の16ページ、あるいはその前後に、企業の論文数の話がありました。産業分野別に様相が違うとは思いますが、アカデミアとは異なり、企業においては、論文化よりも特許等の知的財産の取得、製品・サービスの創出の方が重要です。逆に、論文化することによって公知になり、知財面では不利にもなります。企業の研究者は、必ずしも論文数ではなく、特許等の知的財産の取得、製品・サービスの創出で評価をされます。企業による論文数の低下が、企業が基礎研究を徐々に少なくしたというような分析もあり得るとは思いますが、企業における論文化の意味が明らかにアカデミアとは異なっている点もあります。
 また、SIPについて先ほど浦辺委員が指摘されたように、基礎研究に重点を置くのか、あるいは最終出口に重点を置くのかは、構成員で意見が異なることはよくわかります。
 濵口会長が言われるように、人材の流動性にも関連する点かと思います。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 議論は尽くせぬ状態でございますが。もう1人、じゃあ。

【平田委員】  それでは短く。人材育成については、地震や火山についても非常に問題で、色々と議論しております。地震・火山学において、火山の観測研究をする人が非常に少ないということで、文部科学省が特別なプログラムを作って研究開発事業を進めています。日本全体で40人しか火山の観測をする研究者がいないのが現状です。これを倍増して80人にするという計画を作って、10年計画で今進めているところでございます。
 最大の問題は、ドクターを取った学生が就職するところがないというところです。つまり、国立大学や気象庁、その他の観測の現業機関や研究開発法人の観測研究・業務をするポストが少ない。そうすると学生はその分野に来ないので、ますます研究者・技術者が減っていくという悪循環があります。その辺を改善する方策をトータルに考えているところでございますけれども、非常に弱小な分野の場合には、研究予算を付けて教育のプログラムを作っていただいていますけれども、それでもなかなかうまく進んでいないというところを紹介したいと思います。
 以上です。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 もう少し議論を続けたいんですけれども、お時間となっておりますので、きょうはこれぐらいで中締めさせていただきたいと思います。
 最後に、事務局から連絡事項をお願いしたいと思います。

【中村専門官】  2点ございます。
 本日の議事録につきましては、皆様に御確認の上、公表させていただきます。
 また、次回につきましては、今期最後の総会となりますが、平成31年1月30日水曜日13時から15時で開催を予定してございます。開催場所については、また後日お知らせいたしますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【濵口会長】  ありがとうございます。
 どうも長時間の御議論ありがとうございました。これで本日は閉会とさせていただきます。

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