資料6-4 第2期教育振興基本計画における現状と課題(大学分科会関係)

平成28年3月29日中央教育審議会
教育振興基本計画部会配布資料


第2期教育振興基本計画における現状と課題
(大学分科会関係)

中央教育審議会
大学分科会

【はじめに】
○ 大学分科会では、第2期教育振興基本計画が掲げる8の成果目標のうち、特に関係が深いと考えられる「成果目標2 課題探求能力の修得」「成果目標4 社会的・職業的自立に向けた能力・態度の育成等」「成果目標5 社会全体の変化や新たな価値を主導・創造する人材等の養成」「成果目標6 意欲ある全ての者への学習機会の確保」「成果目標7 安全・安心な教育研究環境の確保」「成果目標8 互助・共助による活力あるコミュニティの形成」を中心に現状と課題を取り上げる。

【成果目標2について】
◯ グローバル化の進展や産業構造・就業構造の転換などによる大きな社会変動が進む中、そのような時代に対応できる人材の育成に関して大学教育に向けられる期待は増す一方、社会からの評価はいまだ厳しく、大学教育の質的転換の断行が強く求められている。

○ このため、教育振興基本計画では、成果目標2に「知識を基盤とした自立、協働、創造の社会モデル実現に向けて、「生きる力」の基礎に立ち、「課題探求能力」を身に付けられるよう、学生の主体的な学びを確立する」ことを掲げている。また、そのための具体的方策として、大学教育の質的転換や大学等の質保証の確立を図るとともに、高大接続改革など、子供の成長に応じた柔軟な教育システム等の構築を進めることとされている。

授業に関連する学生の学修時間について日米の大学生を比較すると、日本の学生は、米国の学生に比べ学修時間が短いことが指摘されている。また、自ら課題を発見し、他者と協力しながらそれを解決し、新たな価値を創造していくための資質や能力を身に付けさせるためにも、能動的学修(アクティブ・ラーニング)等の学生の主体的な学修を中心とする授業形式の導入・拡充などにより、学生の学修時間・密度の向上を図る大学教育の質的転換が求められている。文部科学省では、これまでに、こうした改革に取り組む大学等に対して支援を行ってきており、その結果、学生の主体的な学修を後押しする学修環境整備については、一定の進展が見られる(※)。
※ 例えば、
・アクティブ・ラーニングを効果的にカリキュラムに組み込むための検討を行っている大学:
  平成24年度407校(54.8%)→平成25年度454校(61.5%)
・ラーニング・コモンズ(大学図書館等における、学生が学習のために集うことのできる共有スペース)を整備・活用している大学:
  平成24年度321校(41.9%)→平成25年度389校(51.0%)
・学部段階において学生の学修時間・学修行動を把握している大学:
  平成24年度299校(40.2%)→平成25年度441校(59.8%)

○ 一方で、依然として一方的な知識の伝達にとどまる授業形態が多く、学生の主体的な学修を促すものとなっていないことや、教育活動全体が卒業時の「出口」を意識したものとはなっていないこと、また何よりも、上記のような取組が必ずしも学生の学修時間・学修密度の向上などの大学教育の充実につながっていないことなどが課題となっている。

○ 大学教育の質的転換を実現させるためには、こうした課題を重く受け止めながら、各大学において、社会の変化の動向も見据えつつ、卒業認定・学位授与の方針(ディプロマ・ポリシー)、教育課程編成・実施の方針(カリキュラム・ポリシー)及び入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー)の三つの方針を策定し、これらに基づいた、大学教育の充実に向けたPDCAサイクルの確立を進めることが必要である。
  また、各大学における、アクティブ・ラーニング等の導入・拡充などの学生の主体的な学修への質的転換を後押しするため、各大学における大学の教職員の組織的な研修等(ファカルティ・ディベロップメント(FD)・スタッフ・ディベロップメント(SD))の実施を促進するほか、先導的な取組の成果を全国の大学へ発信・普及していく必要がある。

○ また、こうした大学教育改革も含めて、引き続き、高大接続改革に取り組んでいく必要がある。この改革については、平成26年12月、中央教育審議会において「新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について(答申)」をとりまとめた。文部科学省においては、同答申を踏まえ、平成27年1月に「高大接続改革実行プラン」を策定・公表し、現在、「高大接続システム改革会議」において、高大接続改革の実現に向けた具体的な方策について、専門的な見地から検討が行われている。平成27年9月には中間まとめを行い、同年度内を目途に最終報告が予定されており、高大接続改革の方向性として、「学力の3要素」の確実な育成を重視して、高等学校教育改革では学習指導要領の抜本的な見直し、学習・指導方法の改善、多面的な評価の推進を、大学教育改革では上述の三つの方針に基づく大学教育の質的転換、認証評価制度の改善を、大学入学者選抜改革では、入学者受入れの方針に基づき「学力の3要素」を多面的・総合的に評価する入学者選抜への改革や「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の導入といった具体案が提示されている。今後は、同最終報告に基づき、改革の実現に向け、より実証的・専門的な検討を行いながら、適切な手順と十分な情報公開を踏まえ着実に取り組むことが必要である。

○ 大学等の質の保証については、制度の改善や教育研究活動の可視化の推進によって一層の質の向上を図っていく必要がある。質保証システムに関しては、中央教育審議会において、内部質保証を重視した評価への転換や多様なステークホルダーの意見を評価へ取り入れることなどを含めた評価への転換、さらには、認証評価制度と設置認可後の設置計画履行状況調査との相互連携の強化の必要性についての報告を取りまとめた。各大学においては、こうした状況も踏まえ、一層の質の向上に向けた取組が必要である。また、情報発信については、大学評価・学位授与機構において、平成27年3月より、データベースを用いた教育情報の活用・公表のための仕組みとして大学ポートレートを立ち上げたところであるが、更なる情報の充実・機能性の向上に向けた検討が必要である。
  また、国際的な質保証については、質の保証を伴った日中韓での大学間交流の試みとしての「キャンパス・アジア」パイロットプログラムの実施や、「ASEAN+3高等教育の流動性・質保証に関するワーキング・グループ」における「学生交流のためのガイドライン」の作成といった取組を進めてきた。今後は、「キャンパス・アジア」の新規プログラムの採択や「留学証明のためのガイドライン」の作成を行っていくことが必要である。

◯ 大学における教育研究機能を最大限に発揮していくためには、学長のリーダーシップの下で、戦略的に大学を運営できるガバナンス体制を構築することが重要であることから、大学の組織及び運営体制を整備するための法改正を行われた(「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律」 (平成26年6月27日公布、平成27年4月1日施行))。
  また、法改正の趣旨を踏まえた、各大学における内部規則等の総点検・見直しを状況把握するための調査を行い、各大学において内部規則等の規定の改正などの具体的な取組を実施し、ほぼすべての大学において、必要な内部規則等の見直しが行われていることを確認した。

【成果目標4について】
◯ 成果目標4では、「労働市場の流動化や知識・技能の高度化に対応し、実践的で専門性の高い知識・技能を、生涯を通じて身に付けられるようにする」ことを掲げている。グローバル化の進展とともに、知識・技術は日進月歩の進化を遂げ、産業構造の転換のスピードがますます速くなり、新しい産業・職業が次々と生まれる中にあって、実践的な職業教育の体系を明確にしつつ充実するとともに、社会人学生等が学びやすいシステムを構築する必要がある。

◯ 高等教育段階におけるインターンシップは、学生の大学等における学修の深化や新たな学習意欲を喚起するとともに、学生が自己の職業適性や将来設計について考えることで、主体的な職業選択や高い職業意識の育成を図ることを目的としている。インターンシップの推進については、大学等におけるインターンシップの推進を担う専門人材の育成や、中小企業におけるインターンシップ受入れ拡大等に取り組む地域インターンシップ推進組織の活動を通じ、地域全体へのインターンシップ等の普及・定着が図られている。大学における単位認定を行う授業科目として実施するインターンシップの実施率は平成24年度70.0%から平成26年度73.3%と増加しているものの、今後とも、産業界と連携しつつ、インターンシップの単位認定やより教育効果の高いインターンシップ(中長期・有給等)の普及・促進に取り組むことが重要である。

○ 高等専門学校については、産業構造の変化や技術の高度化、社会・産業・地域ニーズ等を踏まえ、それぞれの地域性や特色に応じた多様な発展を目指し、各高等専門学校において自主的・自律的な改革が進められており、平成27年度は7校が地域や産業界のニーズに対応した学科再編を実施している。また、実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関については、平成27年4月に中央教育審議会に諮問があり、現在、制度化に向けて検討を行っている。

○ 社会人の学び直しについては、今後、急速な経済社会の変化や技術革新の進展により、職業の在り方が様変わりしていく中で、生涯を通して社会で活躍していくためには、ひとたび、就職した後も、生涯で何度でも教育の場に戻って学べる環境を整備することが重要であり、平成27年3月に取りまとめられた教育再生実行会議の第六次提言では社会人の多様なニーズに対応する教育プログラムの充実や学びやすい環境の整備、女性の活躍支援等が提言されたところである。
  しかし、大学等での教育を改めて受けたいと考える社会人のニーズは高いにも関わらず、大学等において提供している社会人を対象としたプログラムの知名度が高くないこと、必ずしも社会人や企業等のニーズに合ったカリキュラムや教育方法が提供されていないこと、社会人にとって受講料が経済的な負担となることなどの課題があるため、大学等で学び直している社会人が増えていないのが現状である。
  第2期教育振興基本計画においても「大学・短期大学、高等専門学校、専修学校の受入れ状況の改善」として「社会人入学者の倍増」を成果指標の一つとして掲げているが、履修証明プログラムを開設している大学は平成24年度72校(9.4%)から平成25年度83校(10.9%)と増加しているものの、正規課程に加え短期課程の受講者等を含めても、社会人入学者数は、第2期計画前後で、文部科学省において把握しているところでは減少している(平成24年:約12万1千人から平成25年:約11万4千人)。
  この点については、平成27年7月に社会人や企業等のニーズに応じた大学等における実践的・専門的なプログラムを「職業実践力育成プログラム」(BP)として、文部科学大臣が認定する制度を創設し、厚生労働省の教育訓練給付制度とも連携を図り、同年12月に123課程を認定したところである。「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関」の制度化等の取組も進めつつ、引き続き、関係省庁が連携しつつ、社会人の職業に必要な能力の向上を図る機会の拡大に取り組むことが重要である。

【成果目標5について】
◯ 成果目標5では、「「社会を生き抜く力」に加えて、卓越した能力を備え、社会全体の変化や新たな価値を主導・創造するような人材、社会の各分野を牽引するリーダー、グローバル社会にあって様々な人々と協働できる人材、とりわけ国際交渉など国際舞台で先導的に活躍できる人材を養成する」ことを掲げている。このためには、大学院の機能強化や大学等の研究力強化、また、グローバル人材育成の推進を進めていく必要がある。

◯ 大学院教育については、文部科学省において、平成23年度より、広く産学官にわたりグローバルに活躍する人材を育成するための博士前期課程・後期課程5年一貫の教育プログラムを構築する「博士課程教育リーディングプログラム(以下「リーディングプログラム」という。)」による支援が開始され、平成27年度時点で33大学62プログラムに対し支援を行っている。約3,300名(平成27年6月時点)の学生が、本プログラムの下で学んでいる。
  今後は、平成27年9月に中央教育審議会大学分科会で取りまとめた「未来を牽引する大学院教育改革(審議まとめ)」を踏まえ、各大学院において大学院教育改革に自主的・自律的に取り組むことが重要である。リーディングプログラムについては、修了生の活躍状況を把握し、その状況に応じ継続に向けた取組を促すことが必要である。
  なお、本審議まとめで重要施策として提言された、世界最高水準の教育力と研究力を備えた「卓越大学院(仮称)」の形成については、平成27年度中を目途に、有識者会議において分野の設定や複数機関が連携する仕組みについて示すとともに、平成28年度以降、大学における企業との連携による構想作りなど、具体化に向けた取組が開始される予定である。
  また、文部科学省においては、優秀な学生、若手研究者に対する支援として、特別研究員事業を実施するとともに、テニュアトラック制を実施する大学等や、研究と出産・育児・介護等との両立や女性研究者の研究力向上のための取組への支援を行っている。今後の課題としては、若手研究者が挑戦できる安定的なポストの減少や、研究者の産学官のセクターを越えた流動性が低いことがあげられており、これらの課題の解決に向け、平成28年度に創設する卓越研究員制度をはじめとした科学技術イノベーション人材育成施策を実施していくことが必要である。

○ 研究力の強化については、世界で戦えるリサーチ・ユニバーシティを10年後に倍増することを成果指標の一つとして掲げている。被引用回数の多い(上位10%)論文数で世界100位以内の分野を有する大学数については、2007年-2011年平均では7大学であり、2009年-2013年平均では7大学である(科学技術・学術政策研究所 調査資料-243 研究論文に着目した日本のベンチマーキング2015を基に、文部科学省にて作成)。
  研究力強化のためには、「学術研究の総合的な推進方策について(最終報告)」(平成27年1月27日科学技術・学術審議会学術分科会決定)等も踏まえ、大学の基盤的経費を確実に措置するとともに、引き続き、世界水準の優れた研究大学群の増強に向けた「研究大学強化促進事業」や優れた研究環境と高い研究水準を誇る世界に「目に見える拠点」を形成するための「世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)」の推進、全ての分野にわたる学術研究を支援する「科学研究費助成事業」の改革・強化等を図っていくことなどが重要である。また、博士課程への入学者数の減少等を踏まえ、前述の若手研究者の育成・活躍に向けた取組を促進することが必要である。併せて、これらを支える大学の財政基盤の確立が重要である。

○ イノベーション創出に向けては、文部科学省において、大学等の研究成果を基にした産学の共同研究開発や知的財産の活用の推進等を実施している。また、平成27年度より産学官連携リスクマネジメントモデル事業が実施、7機関が採択され、「利益相反」及び「技術流出防止」等の産学の連携が本格化するにつれて顕在化するおそれのあるリスクに対するマネジメントモデルの構築が図られた。今後の課題としては、大学等と企業の「組織」対「組織」による「本格的な産学連携」の強化に向けて、大学等における研究経営システムの確立を図ることが重要である。

○ グローバル人材育成については、日本人の海外留学及び外国人留学生の受入れの双方について2020年までに倍増させることを成果指標として掲げている。日本人の海外留学者数は平成24年現在、60,138人となっている。一方で、大学間交流協定等に基づく短期の交換留学等も対象とした(独)日本学生支援機構が実施している日本人の海外留学状況調査では、平成25年度は短期留学を中心に69,869人の大学生等が海外に留学している。そこで、意欲と能力のある若者全員に留学機会を付与し、日本人留学生の倍増を目指すため、国費によって協定等に基づく短期の留学用を支援する奨学金を充実させることとともに、平成26年度より、民間の協力を得た新たな海外留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」が開始された。現在までに大学生・高校生等を約1,700人採用され、順次海外留学を開始している。今後も若者の海外留学への機運醸成や、奨学金等の拡充による留学経費の負担軽減を図っていくことが必要である。
  また、外国人留学生数は平成24年度の161,848人から平成26年度には184,155人と増加している。外国人留学生の受入れについては、我が国の国際化を推進し、国際的相互理解を促進するとともに、人材育成を通じた国際貢献や我が国の教育研究の充実に貢献するものである。このため、文部科学省においては、外国人留学生の受入れ促進のため、インド・ミャンマー・アフリカ・ブラジルに留学コーディネーターを配置し、日本留学の情報発信強化を図っている。また、宿舎施設の整備をはじめ外国人留学生が安心して勉学に専念できる環境づくり等に対する支援を充実させていくため、平成26年度より、住環境・就職支援等受入れ環境の充実事業等により、これらに取り組む大学や地方公共団体等を支援している。引き続き、「留学生30万人計画」の実現に向け、海外での学生募集・選考活動が効率的に機能するよう制度改善を図るとともに、日本留学の情報発信、就職支援等の受入れ環境充実のための支援を充実させていくことが重要である。

○ 大学の国際的な評価については、主要な世界大学ランキングの上位100位以内に入っている日本の大学数は、Times Higher Education(THE)誌の「World University Rankings」では、平成23年度2校から平成27年度2校と横ばい、QS社の「QS World University Rankings」では、平成23年度6校から平成27年度5校などと減少している。
  このうち、例えば今年度のTHE誌「World University Rankings」に関して日本の上位5大学に着目すると、国際性に関する指標がもとより低いことに加え、論文引用のスコアも低下している。これは、今年度から論文引用のスコアの算定方法が変更されたことも要因の一つと考えられるが、近年、論文数や論文引用における我が国の地位が相対的に低下傾向であることも影響していると考えられる。この点については、平成26年度から、大学の国際化を推進する取組として「スーパーグローバル大学創成支援」を実施し、採択された37大学において、大学教育の国際通用性の向上、研究力向上にも繋がる国際的な環境基盤の整備が図られており、将来的な効果として、国際共同研究および国際共著論文増加にも資することが期待される。これにとどまらず、我が国の大学の国際的な競争力を高めるためには、大学の教育力・研究力を向上させるための継続的な取組やそれを支える財政基盤の確立が必要である。
  また、大学の国際化を考える上での指標を見ると、外部試験(TOEIC、TOEFL等)のスコア等を到達水準の1つとして設定している大学は平成24年度262大学(35.3%)から平成25年度296%(40.1%)と増加、大学における外国人の本務教員比率は平成24年度3.8%から平成27年度4.2%と増加、学部段階で英語による授業を実施している大学は平成24年度241校(32.4%)から平成25年度262校(35.5%)と増加しており、今後も、こうした動向を把握しつつ、経済社会のグローバル化に対応した、大学の国際化の推進を図ることが必要である。

【成果目標6について】
◯ 成果目標6では、「様々な困難や課題を抱え支援を求めている者に対して、生涯を通じて多様な学習機会を確保する。また、能力と意欲を有する全ての者が高等教育を受けられるようにする」ことを掲げている。このためには、教育費の保護者負担を軽減するとともに、意欲・能力のある者の学習機会へのアクセスを可能とするための支援を行うことが必要であり、大学等進学に対する教育機会の提供については、平成26年8月に閣議決定された「子供の貧困対策に関する大綱」においてもその必要性に言及されている。

◯ 成果指標の一つとして、「大学等奨学金の貸与基準を満たす希望者のうち、奨学金の貸与を受けることができた者の割合の増加」を掲げており、平成24年度と平成26年度を比較すると増加している(予約採用段階で平成24年度71.46%、平成26年度83.73%、在学採用段階で平成24年度100%、平成26年度100%)。また、「低所得世帯の学生等のうち授業料減免を受けている者の割合」について、平成24年度と平成26年度を比較すると増加している(平成24年度7.35%、平成26年度7.67%)。今後は、授業料減免を充実し、また無利子奨学金の貸与人員を増員し、奨学金の「有利子から無利子へ」の流れを加速するともに、奨学金の返還月額が卒業後の所得に連動する、より柔軟な「所得連動返還型奨学金制度」を平成29年度進学者から適用することとされていることから、引き続き具体的な制度設計を進めていくことが必要である。

○ なお、諸外国における奨学金制度について、例えば米国においては、全学生の約48%が給付型奨学金を受給しており、学部学生の約62%が貸与型奨学金を受給している。また、イギリスにおいては、全学生の約49%の学生が給付型奨学金を受給し、全学生の約92%の学生が貸与型奨学金を受給している。

【成果目標7について】
○ 成果目標7においては、「若者等が安全・安心な環境において学習できるようにすること」を掲げている。このためには、学校等施設の耐震化、防災機能強化等の教育環境の整備を図る必要がある。

○ 成果指標としては、「大学等の耐震化の向上」を掲げており、国立大学等施設の耐震化率は、平成24年度89.3%から平成27年度96.4%と上昇。耐震化が進んだ一方で、今後、建築後50年以上を経過した施設の割合が急増(9.7%→23.1%)するなど老朽化が進み、安全面に深刻な課題があるため、引き続き老朽化対策等を計画的に推進する。私立大学等についても、耐震化率は平成24年度81.8%から平成27年度87.6%と上昇しており、今後は、引き続き、できるだけ早期の耐震化の完了を目指すことが必要である。

【成果目標8について】
○ 成果目標8では、「学校を地域の振興・再生に貢献するコミュニティの中核として位置付け、多様なネットワークや協働体制を整備し、個々人の地域社会への自律的な参画を拡大する」ことを掲げている。まち・ひと・しごと創生法(平成26年法律第136号)に基づく「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が閣議決定され、政府を挙げて地方創生に取り組んでいる中にあって、大学等についても、地域の中核的存在(COC)として、地域が直面している様々な課題解決に取り組むことにより、教育研究機能の向上や地域の活性化に貢献していく必要がある。

○ 成果指標に掲げている地域の企業等との共同研究数は、平成24年度5,240件から平成25年度5,762件と増加しており、大学及び短大における公開講座数は平成24年度36,135講座から平成25年度39,816講座と増加している。一方、文部科学省においては、自治体と連携して地域課題の解決に取り組む大学への支援として、平成25年度から「地(知)の拠点整備事業(大学COC事業)」を開始し、計77拠点で事業を実施してきた。平成27年度からはこの事業を発展的に見直し、複数の大学が、地域活性化を担う自治体のみならず、人材を受け入れる地域の企業、地域活性化を目的に活動するNPOや民間団体等と事業協働機関を形成し、それぞれが強みを活かして雇用創出や学卒者の地元定着率向上に取り組む事業を支援する「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC+)」を実施し、1拠点の規模を都道府県レベルに拡大した上で42拠点において取組を開始したところである。今後はこれらの取組の支援を継続し、若者の地元定着率の向上に貢献していくことが求められる。

○ なお、地方公共団体では、教育基本法第17条第2項に基づき、各地域の実情に応じた教育振興基本計画を策定しており、その中には、当該自治体が設置する大学に関するものを中心に高等教育に係る記述がなされていることがある。今後とも、地域の中にある高等教育機関の役割という観点から、大学等について計画の中で取り上げられることが期待される。

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高等教育局高等教育企画課高等教育政策室

-- 登録:平成28年06月 --