専門職大学院設置基準における特例措置終了後の取扱いに関する大学院部会の審議結果概要

○ 中教審答申「グローバル化社会の大学院教育」(平成23年1月31日)では,平成25年度に専門職大学院の専任教員を他の学位課程に必要な教員数へ算入する取扱いの特例措置が終了するため,当該特例措置終了後の取扱いについて検討することを提言。

(1)専門職大学院について

    ○制度創設の目的

    • 専門職大学院は,平成15年度創設
    • その目的は,科学技術の進展や社会経済の多様化とグローバル化等を受け,社会的・国際的に通用する高度専門職業人の養成

    ○設置状況

    • 131大学/186専攻が設置(H23.5.1現在)
    • 主な分野として,法曹(法科大学院),教員(教職大学院),経営,会計,公共政策,公衆衛生,知的財産等

    ○主な特徴

    • 研究者ではなく,高度で専門的な職業能力を有する人材を養成(修士論文は修了要件として必須ではない)
    • 理論と実務を架橋した高度で実践的な教育の実施
    • 研究者教員とともに、高度な実務能力を有する実務家教員を一定割合配置
    • 認証評価は,7年以内ごとに行う機関別評価に加え,5年以内ごとに専門分野別評価を受ける

 

(2)現行制度の概要

    ○専門職大学院の専任教員
    1.専門職大学院設置基準上で規定する最低基準の教員(以下「必置教員」という。)は,専門分野の別に応じ,修士課程で必置とされる研究指導教員数の1.5倍の数+研究指導補助教員の数を置く
    <例>経営系分野の場合(経済学関係で算出)
     研究指導教員5×1.5+補助教員4=11名
    2.上記の必置教員は,学部・修士・博士課程に必要な教員の数に算入(以下「ダブルカウント」という。)できないことが原則(必置教員数分を超えて配置される教員は,法令上の規制がない。)
    <例>経営系分野の場合
     必置教員数が11名のところ、現在員総数が15名の場合、必置教員数以外の4名分は法令上の規制がない。
     

    ○ダブルカウントの特例措置(平成25年度までの特例)
    1.学部,修士課程,博士課程(前期)との間では,必置教員の1/3まではダブルカウント可能
    2.博士課程(後期)との間では,必置教員の全員がダブルカウント可能

    ※特例を設けた理由

    • 専門職大学院制度の発足時は,他の学位課程における教育との関連性を考慮し、優秀な教員を確保する観点から、平成25度まではダブルカウントを認め,当該特例措置の取扱いについては、改めて制度の定着状況を見つつ見直すこととしていた。
    • 博士課程(後期)については進学希望者への対応等のため,専任教員数のすべてのダブルカウントを認めている。

 

(3)兼務の現状と特例措置終了後の影響

    ○ 専門職大学院全186専攻のうち,他の学位課程と何らかの兼務を行っている116専攻(全186専攻の約6割)において,教員650名(全186専攻の教員総数の約2割)が兼務を行っている。
    ○ しかし,これらは必置教員数分を越えて配置される教員による兼務者数を含んでおり,特例措置終了後の影響として,必置教員数を下回るような専攻は3専攻。

 

(4)第5期(前期)における検討結果

    ○ 特例措置終了後の教員組織の在り方については,専門職大学院制度の趣旨(教育に専念する教員の充実等)を踏まえて対応。
    ○ 教員養成や進学希望者への対応等の観点から,専門職学位課程と博士課程(前期及び後期の課程に区分する博士課程における前期の課程を除く(以下「博士課程」という。))の接続を図ることが重要。

 

(5)今期における大学院部会の審議結果概要

    ○ 専門職大学院の必置教員については,ダブルカウントできないこととされているが,現在は,制度創設後10年間の特例として,認められている。
    ○ 現在の特例が終了する平成26年度以降,専門職大学院のダブルカウントについては,教育上支障を生じない場合には,一個の専攻に限り,博士課程のみ認めることが適当。

(考え方)

  • 専門職大学院では,その質保証の観点から,教員組織の一定程度の独立性を確保し,教育に専念する教員組織を充実することを制度創設の趣旨としているため,ダブルカウントを原則認めていない。
  • これに対し,博士課程とのダブルカウントができなくなると,将来の専門職大学院教育を担う専任教員の後継者養成等に支障を生じる懸念があることから,この点を踏まえ,特例終了後も,博士課程とのダブルカウントのみ認めることが適当である。
  • これにより,今回の整理は,一般の大学院において,博士課程の前期(修士課程)と後期の間でダブルカウントが認められていることと同様の扱いとなる。
  • その際,そもそも専門職大学院が,教員組織の充実を制度創設の趣旨としていることにかんがみると,博士課程とのダブルカウントを認めるにあたっては,教育上支障を生じない場合には,一個の専攻に限り認める旨を法令で明記することが適当である。

(留意事項)

  • 「議論の対象となる教員」について

 今回の議論は,専門職大学院設置基準において規定する最低基準の教員を対象。
 また,現行の特例終了後であっても,ダブルカウントせずに,いわゆる「兼担」として,自大学の別の専攻(学科)において、教育研究に従事することは可能。

  • 「法令上明記する条件」について

 ダブルカウントを行うにあたり,教育上支障を生じない場合に認めるとの条件については,専門職大学院における教育上の必要性と教員組織の充実を制度創設の趣旨としていることを踏まえた適切な対応が求められるものであり,これに基づく運用を図ることが,質保証の観点からは重要。

 

(参考)関係法令等

○学校教育法
第九十九条
2 大学院のうち、学術の理論及び応用を教授研究し、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うことを目的とするものは、専門職大学院とする。

○大学設置基準
(学部以外の基本組織)
第六条 学校教育法第八十五条ただし書に規定する学部以外の教育研究上の基本となる組織(以下「学部以外の基本組織」という。)は、当該大学の教育研究上の目的を達成するため有益かつ適切であると認められるものであつて、次の各号に掲げる要件を備えるものとする。(以下省略)

(教員組織)
第七条(前略)
2 大学は、教育研究の実施に当たり、教員の適切な役割分担の下で、組織的な連携体制を確保し、教育研究に係る責任の所在が明確になるように教員組織を編制するものとする。(以下省略)

(専任教員数)
第十三条 大学における専任教員の数は、別表第一により当該大学に置く学部の種類及び規模に応じ定める教授等の数(共同学科を置く学部にあつては、当該学部における共同学科以外の学科を一の学部とみなして同表を適用して得られる教授等の数と第四十六条の規定により得られる当該共同学科に係る専任教員の数を合計した数)と別表第二により大学全体の収容定員に応じ定める教授等の数を合計した数以上とする。

○大学院設置基準
(研究科と学部等の関係)
第七条 研究科を組織するに当たっては、学部、大学附置の研究所等と適切な連携を図る等の措置により、当該研究科の組織が、その目的にふさわしいものとなるよう配慮するものとする。

(教員組織)
第八条 大学院には、その教育研究上の目的を達成するため、研究科及び専攻の規模並びに授与する学位の種類及び分野に応じ、必要な教員を置くものとする。
2 大学院は、教員の適切な役割分担及び連携体制を確保し、組織的な教育が行われるよう特に留意するものとする。
3 大学院の教員は、教育研究上支障を生じない場合には、学部、研究所等の教員等がこれを兼ねることができる。

第九条 大学院には、前条第一項に規定する教員のうち次の各号に掲げる資格を有する教員を、専攻ごとに、文部科学大臣が別に定める数置くものとする。
一 修士課程を担当する教員にあつては、次の一に該当し、かつ、その担当する専門分野に関し高度の教育研究上の指導能力があると認められる者
 イ 博士の学位を有し、研究上の業績を有する者
 ロ 研究上の業績がイの者に準ずると認められる者
 ハ 芸術、体育等特定の専門分野について高度の技術・技能を有する者
 ニ 専攻分野について、特に優れた知識及び経験を有する者

二 博士課程を担当する教員にあつては、次の一に該当し、かつ、その担当する専門分野に関し、極めて高度の教育研究上の指導能力があると認められる者
 イ 博士の学位を有し、研究上の顕著な業績を有する者
 ロ 研究上の業績がイの者に準ずると認められる者
 ハ 専攻分野について、特に優れた知識及び経験を有する者
2 博士課程(前期及び後期の課程に区分する博士課程における前期の課程を除く。)を担当する教員は、教育研究上支障を生じない場合には、一個の専攻に限り、修士課程を担当する教員のうち前項第二号の資格を有する者がこれを兼ねることができる。

(研究指導)
第十三条 研究指導は、第九条の規定により置かれる教員が行うものとする。

○専門職大学院設置基準
(教員組織)
第四条 専門職大学院には、研究科及び専攻の種類及び規模に応じ、教育上必要な教員を置くものとする。

第五条 専門職大学院には、前条に規定する教員のうち次の各号のいずれかに該当し、かつ、その担当する専門分野に関し高度の教育上の指導能力があると認められる専任教員を、専攻ごとに、文部科学大臣が別に定める数置くものとする。
一 専攻分野について、教育上又は研究上の業績を有する者
二 専攻分野について、高度の技術・技能を有する者
三 専攻分野について、特に優れた知識及び経験を有する者
2 前項に規定する専任教員は、大学設置基準(昭和三十一年文部省令第二十八号)第十三条に規定する専任教員の数及び大学院設置基準(昭和四十九年文部省令第二十八号)第九条第一項に規定する教員の数に算入できないものとする。

附則第2項
 第五条第一項に規定する専任教員は、平成二十五年度までの間、第五条第二項の規定にかかわらず、第五条第一項に規定する教員の数の三分の一を超えない範囲で、大学設置基準第十三条に規定する専任教員の数及び大学院設置基準第九条に規定する教員の数に算入することができるものとする。ただし、大学院設置基準第九条に規定する教員のうち博士課程の後期の課程を担当する教員の数には、第五条第一項に規定する専任教員の数のすべてを算入することができるものとする。

○専門職大学院に関し必要な事項について定める件(平成十五年文部科学省告示第五十三号)
(専攻ごとに置くものとする専任教員の数)
第一条 専門職学位課程には,専攻ごとに,平成十一年文部省告示第百七十五号(大学院に専攻ごとに置くものとする教員の数について定める件)の別表第一及び別表第二に定める修士課程を担当する研究指導教員の数の一・五倍の数(小数点以下の端数があるときは,これを切り捨てる。)に,同告示の第二号,別表第一及び別表第二に定める修士課程を担当する研究指導補助教員の数を加えた数(第四項において「最小専門職大学院専任教員数」という。)の専任教員を置くとともに,同告示の別表第三に定める修士課程を担当する研究指導教員一人当たりの学生の収容定員に四分の三を乗じて算出される収容定員の数(小数点以下の端数があるときは,これを切り捨てる。)につき一人の専任教員を置くものとする。

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-- 登録:平成24年02月 --