教育情報の公表の促進に関する諸施策について(審議経過概要)

平成22年4月26日
中央教育審議会大学分科会質保証システム部会

  中央教育審議会大学分科会は,中長期的な大学教育の在り方について審議を行っている。
 質保証システム部会は,平成21年2月以降,それまでの大学分科会の検討に基づき,公的な質保証システム(設置基準,設置認可審査,認証評価の三つの要素)に関する経緯と現状を整理してきた。その内容は,同年8月に審議経過概要として取りまとめており,大学分科会が同年8月に公表した「第二次報告」にも掲載されている。公的な質保証システムの課題に関しては,今後も審議を続けることとしている。
 あわせて,質保証システム部会では,公的な質保証システムや,大学の自主的・自律的な質保証を促す仕組みの検討の一環として,「社会的・職業的自立に関する指導等」の法令上の明確化を審議し,平成21年12月に審議経過概要を公表した。大学分科会は,その審議に基づいて,本年1月に,大学設置基準等を改正するよう答申しており,翌2月には大学設置基準等が改正され,平成23年4月から施行されることになっている。
 並行して,質保証システム部会は,大学の質保証を確保する方策として,教育情報の公表の在り方を審議してきた。教育情報の公表は,既に,平成21年6月の大学分科会の「第一次報告」で「教育研究活動に関する情報公開の促進」が「検討課題(例)」として掲げられており,その後「第二次報告」でも「学生に対する学びの内容と水準の提示及びそれらに関する情報公開」を論点として提示している。質保証システム部会は,そうした審議の蓄積を踏まえて,同年10月以降,具体的な検討を行っており,その内容は,本年1月の大学分科会の「平成21年8月から平成22年1月までの大学分科会の審議経過概要について」(以下,「第三次報告」とする。)でも整理されている。
 その後,質保証システム部会では,この課題について,さらに検討を進めており,その結果を踏まえ,関連する法令の改正を含めて,以下の通り,これまでの審議経過を整理した。

1.教育情報の公表に関する現状と課題

(1) 現状

 学校教育法第113条により,大学は,教育研究の成果の普及及び活用の促進に資するために,その教育研究活動の状況を公表することとされている。また,大学設置基準第2条により,大学は,刊行物への掲載その他広く周知を図ることができる方法によって,積極的に情報を提供することとされている。
 このほか,大学における教育情報の公表に関連して,法令上,次の規定が設けられている。

  • 人材養成目的その他の教育研究上の目的の公表(大学設置基準第2条の2)
  • 授業の方法・内容,年間授業計画,成績評価基準,卒業認定基準の学生に対する明示(大学設置基準第25条の2)
  • 自己点検・評価の結果の公表(学校教育法第109条)
  • (これらの詳細は(参考1)を参照)

 このほか,国立大学法人,公立大学法人及び学校法人の財務・経営に関する情報公開に関する規定がある。

(2) 課題

 こうした制度的な枠組みに基づき,多くの大学では積極的に情報の公表が進められ,着実な進展が見られる。
 一方,一部の大学では,大学の強みや特色を分かりやすく公表し,外部から適切な評価を受けながら,教育水準の向上を図っていこうとする観点がいまだ十分でないとの指摘もある。認証評価を含めて,各大学の教育の状況が明らかとなるような仕組みを,大学の機能別分化を踏まえて整備していくことが求められる。
 そこで,教育情報の公表に関し,以下の方針に基づいて検討を行った。

  1. 教育情報を公表する基本的な考え方を整理すること。
  2. 対象となる教育情報の項目を明らかにすること。
  3. これらの教育情報の公表を進める際の検討課題を整理すること。

 以下の「2.教育情報を公表する基本的な考え方と公表が望まれる情報」では,1と2を整理し,「3.教育情報の公表に関する検討課題」では,3を整理している。

2.教育情報を公表する基本的な考え方と公表が望まれる情報

 教育情報を公表する基本的な考え方としては,次の3つが挙げられる。

(1) 公的な教育機関として,学生,保護者,社会に公表が求められる情報

 第一として,大学は,学生や保護者が,適切に情報を得られるようにするとともに,学校教育法で定められた目的を実現するための教育研究等を行う公的な教育機関として,その活動や取組について,社会への説明責任を果たすことが求められる。
 そのための政策手段は,法令による義務化とし,各大学が取り組む教育情報の公表は,法令に定める基準を満たしているかという観点も踏まえて,認証評価で確認される(認証評価の取扱いは(参考2)を参照)。
 こうした考え方に基づき,現行の大学設置基準の規定や学校基本調査の調査項目(詳細は(参考3)を参照)等も踏まえ,以下の項目を公表の対象とする情報として挙げることができる。

公的な教育機関として,学生,保護者,社会に公表が求められる情報(法令により義務化する事項の考え方)

    1. 教育研究上の基本となる組織に関する情報:
      学部,学科,課程等の名称
    2. 教員組織及び教員数並びに教員の保有学位,業績に関する情報:
      教員数,教員が教育を担当するにあたっての専門性に関する情報(教員の保有学位又は職務上の実績等)
      (「教員数」は,「学校基本調査」の最新値に準じて整理する。「職務上の実績」は,教員の専門性に関するものを示す。)
    3. 学生に関する情報:
      入学に関する基本的な方針,入学者数,収容定員,在学者数,卒業者数,卒業後の進路(進学者数,就職者数,主な就職分野等)
      (「入学者数」「在学者数」「卒業者数」「進学者数」「就職者数」は,「学校基本調査」の最新値に準じて整理する。なお,働き方が多様となっている状況において,起業や資格取得準備等を行う者等を各大学の判断で公表することも考えられる。)
    4. 教育課程に関する情報:
      授業科目の名称,授業の方法及び内容並びに一年間の授業計画の概要
    5. 学修の成果に係る評価及び卒業の認定に当たっての基準に関する情報:
      学修成果に係る評価,修業年限及び修了に必要な修得単位数,取得可能な学位(「修業年限及び修了に必要な修得単位数」は,必修科目,選択科目及び自由科目の区分ごとの修得単位数をあわせて示す。「取得可能な学位」は,学科・専攻ごとに,付記する専攻分野の名称とあわせて示す。)
    6. 学習環境に関する情報:
      所在地,主な交通手段,キャンパス概要,運動施設の概要,課外活動の状況
      (「キャンパスの概要及び主な交通手段」は,キャンパスマップ,アクセスマップ等を示す。「運動施設の概要」は,運動施設の機能と規摸を公表する。「課外活動の状況」は,学生のサークル・団体等の活動状況等を示す。)
    7. 学生納付金に関する情報:
      授業料,入学料その他の費用徴収,利用できる授業料減免の概要(「授業料,入学料その他の費用徴収」は,費用徴収の種類,金額及び納入時期等を示す。「利用できる授業料減免の概要」は,減免対象の種類と要件,必要手続等を示す。)
    8. 学生支援と奨学金に関する情報:
      学内の学生支援組織,利用できる奨学金の概要(「学内の学生支援組織」は,就職支援,メンタルヘルス等学生生活に関わる組織及びその機能を示す。「利用できる奨学金の概要」は,奨学金の種類や要件,申込み方法等を示す。)

 

 これらは,すべての大学に求められる内容であり,このことを踏まえて,教育研究活動の公表を規定する学校教育法第113条等に基づき,その施行規則で,公表を義務付ける項目を明確化することが適当と考えられる。その際,後述の「教育力の向上の観点から公表が求められる情報」のうち,既に公表等が義務化されている事項をあわせて規定し,教育情報に関する公表が求められる事項の一覧性を高めることが適当である。
 また,こうした取組が認証評価を通じて確実に確認できるよう,認証評価の基準を定める省令を改正することが適当である。

(2) 教育力の向上の観点から公表が求められる情報

 第二として,基本的な組織等に関する情報のほか,教育情報の積極的な公表を通じて,教育力の向上を図ることが重要である。学生がどのようなカリキュラムを通じて,どのような知識・能力を身に付けることができるかなど,実質的な教育情報を分かりやすく公表し,大学の特色ある教育活動を積極的に発信することが求められる。
 そのための政策手段は,法令による努力義務化を図るとともに,例えば各種の競争的資金等の申請の要件とするなどにより,情報の公表を推進することとし,各認証評価機関が大学を評価する際の参考に供されることが期待される。
 こうした考え方により,公表の対象とする情報として,以下の項目を挙げることができる。

教育力の向上の観点から公表が求められる情報(法令による努力義務とする事項の考え方(既に大学設置基準等で義務化されている項目を含む。))

    1. 学部・学科・課程,研究科・専攻ごとの教育研究上の目的
    2. 教育課程を通じて修得が期待される知識・能力の体系
      ・どのようなカリキュラムに基づいて,どのような知識・能力を身に付けることができるのか
    3. 学修の成果に係る評価や卒業の認定に当たっての基準

 

 これらのうち,1・3は,(1)で整理した「公的な教育機関として,学生,保護者,社会に公表が求められる情報」としての性質も併せ持つため,既に大学設置基準等に規定されている。これに関しては,法令上の関係規定を整理しつつ,(1)とともに適当な改正を行うことが必要である。
 また,2に関して,各大学では,教育課程を通じて修得すべき知識・技能の体系を明らかにする取組が,自主的・自律的に進められている。こうした取組をさらに促進する観点から,可能な限りその実施を目指すことを促すことが適当である。
 このほか,教育力の向上に関連する情報としては,各大学が取り組む教育研究水準の向上のための取組(各種評価の結果を踏まえた教育改善,特色ある教育研究活動の状況,教職員の職能開発の状況等)が考えられるが,これらの情報については各大学が自らの判断により,積極的に公表していくことが望まれる。

(3) 国際的な大学評価活動の展開や我が国の大学情報の海外発信の観点から公表が考えられる情報(国際的な大学評価活動に関するワーキンググループで現在審議中の事項)

 第三として,積極的な教育研究への取組を国際的に示すことを通じて,大学教育の国際競争力の向上を図ることである。
 (1)及び(2)で述べた観点から教育情報を公表していくことは,国際的に各大学の質を保証していくためにも重要である。その上で,各大学の国際的な教育研究活動の戦略的な発信に取り組むことが考えられる。
 その場合の具体的な対応は,各大学の戦略にゆだねるべきである。例えば,

  • 大学院教育,とりわけ博士課程の教育に重点を置く大学,
  • 国際的な教育研究活動や学生交流に特色を発揮する大学,

では,海外からの学生を受け入れ,また,我が国の学生を海外に送り出すに当たり,大学でどのような知識・能力を身に付けることができるのかなど,学位プログラムや学生支援に関する情報等を積極的に公表することが考えられる。このことは,アジアを含めた外国の大学と組織的・継続的な教育連携を加速するためにも不可欠の課題である。
 国際的な大学評価活動に関するワーキンググループでは,こうした考え方に基づき議論を行っており,現時点までに,公表が考えられる対象とする情報の例(案)

として以下の項目を挙げている。このワーキンググループは,今後,大学が戦略的に公表する際に参考となるような項目を議論して整理する予定である。

(参考)国際的な大学評価活動の展開や我が国の大学情報の海外発信の観点から,各大学の戦略に基づき公表が考えられる情報の例(案)

 以下の項目は,各大学の戦略に基づいて発信すべき状況を定める際の参考として作成した項目例である。なお,これらの項目は,英語を含む外国語で発信することが想定される。

    (1) 教育活動の規模と内容

    1. 基本的な情報
      (指標の例)
      • 修業年限期間に卒業する学生の割合
      • 教員の構成に関する情報
      • 教員当たり学生数(フルタイムとパートタイム教員)
      • 各授業の平均学生在籍数
      • インターンシップの機会の提供状況
      • 中途退学率
      • 卒業後の進路状況(進学率,就職率,資格取得の状況等)

      (明確な方針に基づく教育課程とその水準)

      • 修得すべき知識・能力の明確化と,それを体系的に修得できる教育課程
      • 上記に基づく学修成果を明示するのにふさわしい学位の名称
      • 計画的な履修方針に基づいた授業科目名や,その体系(いわゆるナンバリング)とシラバス(学内の関連する学問分野で共通化)
      • 単位認定,学位認定,成績評価の基準(大学として統一方針)
         
    1. 学位授与数
       
    2. 外国人教員数
       
    3. 研究成果の生産性や水準
      • 論文数・論文被引用数
      • 海外研究機関との共同研究・連携に関する情報
      • その他優れた研究成果を示す指標等
         
    1. 教育外部資金の獲得状況

    (2) 教育の国際連携の状況

      • 協定を締結している海外の大
      • 上記大学との教員・学生交流や単位互換,ダブル・ディグリー等に関する実績を示す指標
      • 国内外の大学によるネットワークへの参加状況等

    (3) 大学としての戦略

      • 明確な目標の設定
      • 国際的な諸課題への取組の姿勢
      • 情報を収集,分析する機能の充実

    (4) 留学生への対応

      • 入学手続に関する項目:入学要件(年齢・学歴)及び卒業資格要件,渡日前入学や独自の現地入試実施,日本留学試験の利用状況等
      • 入学後の生活に関する項目:宿舎整備,日本語指導,カウンセリング,学内文書の英語化,経済的支援等
      • 入学後の教育に関する項目: T A , R A によるサポート, 留学生のTA,RAとしての活用
      • 学位取得に関する項目
      • 学位取得後の就職等の状況に関する項目:大学における学生支援の体制,就職後の進路,海外におけるインターンシップを含む企業との連携状況,OB会など卒業後のネットワーク形成状況等
      • 英語による授業のみで学位を取得可能なコースの設置状況等

    (5) 外部レビュー等の実施状況

 

3.教育情報の公表に関する検討課題

 教育情報の公表に関連して,今後さらに具体的な検討を要する課題として,以下を挙げることができる。
 第一として,これまでの大学審議会や中央教育審議会の答申,また,それを踏まえた大学設置基準等の改正を通じて,各大学では,授業科目名やシラバスを学内に明示することが定着しつつある。しかしながら,現段階では,同一大学内でも,異なる学部や,異なる専攻分野の間で,その取扱い方針が統一されていないことが少なくない。シラバス等の教育情報の公表を進めるに当たり,こうした組織間の差異を克服し,計画的な履修方針に基づいた授業科目名や,その体系(例えば,ナンバリング)を,大学としての統一方針に基づいて構築していくことが求められる。
 第二として,教育情報を,各大学が同じような形式で,ホームページに公表できるような仕組みの開発や,海外の事例を踏まえたデータベースの構築等,学生や保護者に分かりやすい情報が提供されるよう検討を進めることが望まれる。
 第三として,上記と関連して,ユネスコの「高等教育機関に関する情報ポータル」は,大学教育の質保証に関する国際的な情報ネットワークであり,既に多くの国が参加しており,こうした国を越えて各国の大学情報を客観的に発信する取組を充実していくことが期待される(UNESCO Portal on Higher Education Institutions ※ユネスコのホームページへリンク)。
 第四として,大学に関する情報の取扱いについては,質保証システム部会や,国際的な大学評価活動に関するワーキンググループのほか,大学規模・大学経営部会が,大学の財務・経営に関する情報公開に関して検討を進めており,その議論の進展を期待したい。

(備考)大学分科会「第三次報告」の「財務経営に関する情報公開の促進」(抜粋)

     大学の財務・経営情報の公開を検討する際には,1.学校教育法に定める学校として,2.公益を目的とする活動を行う法人・団体として,3.公費が支出されている法人・団体として,それぞれの観点からの公開の在り方を考慮する。
     また,情報公開の方法としては,

    1. 法令による一律の義務化,
    2. 国からの指針の提示及び自主的公開の働きかけ,
    3. 大学関係者による指針の作成及び自主的公開,

    が考えられる。この場合,国・公・私立大学を通じて,同等程度の情報が自主的に一般に公開されることを促すべきである。
     そこで,財務・経営情報の公開の促進に関し,将来的には,状況に応じて必要な事項を法令等で明確にすることも視野に入れながら,当面,以下の「検討課題(例)」に沿って検討を進める。なお,大学規模・大学経営部会の課題提起を受けて,私立大学の関係団体により「大学法人の財務・経営情報の公開に関する調査研究会」が発足し,具体的な検討が始まっており,その取組に期待したい。

     検討課題(例)

      (略)

 

(参考1) 教育情報の公表に関連する法令の現状

 大学教育に関する情報の公表については,学校教育法第113条と大学設置基準第2条が包括的に規定している。加えて,大学にある特定の活動を実施するよう義務付ける際に,その活動の状況や結果の公表を定める規定がある。

(1) 教育研究活動の公表(学校教育法第113条)と情報の積極的な提供(大学設置基準第2条)

 学校教育法と大学設置基準は,大学の教育研究活動等の状況の公表義務を規定している。
 平成17年の文部科学省通知は,情報の一層の積極的な提供を図るべき事項を例示している。また,平成17年の「我が国の高等教育の将来像(答申)」は,大学として公表が求められる情報の内容について提言している。

    ○学校教育法
    (教育研究活動の公表)
    第113条 大学は,教育研究の成果の普及及び活用の促進に資するため,その教育研究活動の状況を公表するものとする。

    ○大学設置基準
    (情報の積極的な提供)
    第2条 大学は,当該大学における教育研究活動等の状況について,刊行物への掲載その他広く周知を図ることができる方法によつて,積極的に情報を提供するものとする。

    1.  平成17年の通知で例示されている事項
      • 大学の設置趣旨・特色
      • 開設科目のシラバス等の教育内容・方法
      • 教員組織や施設・設備等の教育環境及び研究活動に関する情報
      • 評価結果等に関する情報
      • 学生の卒業後の進路,受験者数,合格者数,入学者数等の入学者選抜に関する情報
    1. 上記の他,平成17年の「将来像答申」で提言されている事項
      • 大学が,自らが選択する機能や果たすべき社会的使命
      • 社会に対する「約束」とも言える設置認可申請書や学部・学科等の設置届出書
      • 学則等の基本的な情報

 

(2) 人材養成目的の公表(大学設置基準第2条の2)

 大学が,学位を付与するための教育課程(学位プログラム)を行う存在として,その人材養成目的を明確にし,その内容を公表することを制度化(大学院では平成19年度,大学全体としては平成20年度に施行)。

    ○大学設置基準
    (教育研究上の目的の公表等)
    第2条の2 大学は,学部,学科又は課程ごとに,人材の養成に関する目的その他の教育研究上の目的を学則等に定め,公表するものとする。

    平成19年の施行通知
    「目的の策定に当たっては,各大学のそれぞれの人材養成上の目的と学生に修得させるべき能力等の教育目標を明確にし,これらに即して,体系的な教育課程を提供するとともに,責任ある実践のための人的,組織的体制,物的環境を整えることに資するよう留意すること。また,組織として目的を共有するため,学則,学部規則又は学科規則などの適切な形式により定めるとともに,大学のホームページ等を活用し,これを広く社会に公表するよう留意すること。」

 

(3) 授業の方法・内容,年間授業計画,成績評価基準,卒業認定基準の明示(大学設置基準第25条の2)

 大学が,学生に対し,授業の方法・内容,年間授業計画,成績評価基準,卒業認定基準をあらかじめ明示することを義務化している(大学院では平成19年度,大学全体としては平成20年度に施行)。
 これらの項目は,社会全体への公表ではなく,大学教育の対象となる学生に対する明示として定められている。

    ○大学設置基準
    (成績評価基準等の明示等)
    第25条の2 大学は,学生に対して,授業の方法及び内容並びに一年間の授業の計画をあらかじめ明示するものとする。
    2 大学は,学修の成果に係る評価及び卒業の認定に当たつては,客観性及び厳格性を確保するため,学生に対してその基準をあらかじめ明示するとともに,当該基準にしたがつて適切に行うものとする。

    平成19年の施行通知
    「学修の成果に係る評価等の基準については,各大学が作成するいわゆるシラバスに記載するなど,学生に対して明確に提示するよう留意すること。」

 

(4) 自己点検・評価の結果の公表(学校教育法第109条第1項)

 平成3年に,自己点検・評価の実施に努めることが規定され,平成11年には,自己点検・評価を実施することと,結果を公表することが義務化されている。
 平成10年の大学審議会の「21世紀の大学像と今後の改革方策について(答申)」は,結果の公表に当たっての工夫を提言している。

    ○学校教育法
    (自己点検・評価及び認証評価制度)
    第109条大学は,その教育研究水準の向上に資するため,文部科学大臣の定めるところにより,当該大学の教育及び研究,組織及び運営並びに施設及び設備(次項において「教育研究等」という。)の状況について自ら点検及び評価を行い,その結果を公表するものとする。

    (第2項以下は認証評価に関する規定であり省略)

    ○学校教育法施行規則
    第166条大学は,学校教育法第109条第1項に規定する点検及び評価を行うに当たっては,同項の趣旨に則し適切な項目を設定するとともに,適当な体制を整えて行うものとする。

    大学審議会「21世紀の大学像と今後の改革方策について(答申)」の提言

    ○ 各大学においては,実際に評価を行う際に,国公私立の別や専門分野の別,新設,既設の別等の実情に応じ,教員組織,施設・設備,管理運営・財政,自己評価体制,国際交流や社会との連携等,各大学等の判断により適切な項目が設定されることが望ましい。
     もちろん,自己点検・評価は,不断に行われるべきであるが,教育研究活動に関する総括的な点検・評価の実施は,学問の進展や社会の変化に対応しつつ,充実した内容とするため,少なくとも4年に1回は実施することが適当である。
     また,自己点検・評価の実施組織の単位については,「全学」及び専門分野での教育研究上の基本的な組織である「学部」(必要に応じて大学院研究科)を単位とすることが適当である。

    ○ 自己点検・評価の結果の公表については,分厚い報告書を作成しても,学内の関係者以外には読まれていないとの厳しい指摘もある。各大学が教育研究活動の改善に取り組んでいる状況を学生や国民に対して分かりやすく示すために,自己点検・評価報告書の概要を要約した資料を作成して広く提供するなど,工夫することが望ましい。

 

(参考2) 認証評価における教育情報の公表に関連する取扱い

 認証評価の評価基準に関する省令(学校教育法第110条第2項に規定する基準を適用するに際して必要な細則を定める省令)は,認証評価の基準に含めるべき事項を列挙しており,それらは大学設置基準の第2章(教育研究上の基本となる組織に関すること)以降の主な章と対応している(下の囲みの1~5参照)。
 そのため,現在の大学設置基準の第1章(総則)の「情報の積極的な提供」(第2条)と「教育研究上の目的の公表等」(第2条の2)は,認証評価の基準に含むかどうかは認証評価機関の任意とされている。
 ただし,各認証評価機関では,既に,大学の教育情報の公表の状況を,それぞれの評価項目として位置づけており,それに基づいて認証評価の結果も公表している。

(評価基準に関する省令に規定されている概略)

    ○学校教育法と大学設置基準に適合していること。

    ○大学の特色ある教育研究の進展に資する観点からする評価に係る項目が定められていること。

    ○自己点検・評価の結果の分析,大学の教育研究活動等の状況についての実地調査を行うこと。

    ○以下の事項について評価を行うこと。

    1. 教育研究上の基本となる組織に関すること(大学設置基準第2章)
    2. 教員組織に関すること( 〃第3章)
    3. 教育課程に関すること( 〃第6章)
    4. 施設及び設備に関すること( 〃第8章)
    5. 事務組織に関すること( 〃第9章)
    6. 財務に関すること
    7. そのほか,教育研究活動等に関すること

 

(参考3)学校基本調査

 学校基本調査は,統計法や学校基本調査規則に基づき,学校教育行政に必要な学校に関する基本的事項を明らかにすることを目的として,文部科学省が毎年度実施している調査である。
 統計法は,「公的統計の作成及び提供に関し基本となる事項を定めることにより,公的統計の体系的かつ効率的な整備及びその有用性の確保を図り,もって国民経済の健全な発展及び国民生活の向上に寄与することを目的」とする(同法第1条)。
 学校基本調査は,学校基本調査規則第5条第1項により,次に掲げる事項の全部又は一部を対象に行われている。

    一 学校調査

    1. 学校の名称,種別及び所在地
    2. 学校の特性に関する事項
    3. 学部,学科,課程又は学級に関する事項
    4. 教員及び職員の数
    5. 幼児,児童,生徒又は学生の在籍状況及び出席状況
    6. 幼児,児童,生徒又は学生の入学,卒業及び転出入の状況

    二 学校通信教育調査(略)

    三 不就学学齢児童生徒調査(略)

    四 学校施設調査

    1. 学校の名称,種別及び所在地
    2. 学校の特性に関する事項
    3. 土地又は建物の用途別,構造別等の面積
    4. 土地又は建物の増減の状況

    五 学校経費調査

    1. 学校の名称,種別及び所在地
    2. 学校の特性に関する事項
    3. 経費に関する事項
    4. 収入に関する事項

    六 卒業後の状況調査

    1. 学校の名称,種別及び所在地
    2. 学校の特性に関する事項
    3. 卒業者の卒業時における所属に関する事項
    4. 卒業者の進学,就職等の状況

 

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高等教育局高等教育企画課高等教育政策室