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資料2
中央教育審議会大学分科会大学院部会
医療系WG(第4回)平成16年12月16日


医療系大学院の目的とそれに沿った教育等の在り方について
[これまでの意見整理(案)]


1. 医療系大学院の目的・役割について

 医療系大学院は、従来、研究者として自立するに必要な研究能力を培い、医学・医療における特定の専門分野について深い研究を行い得る研究者の養成を行い、また、学術研究を遂行することを主たる目的としていた。しかし、現在における医療系大学院は、これら研究者のみならず、医師・歯科医師など高度の専門性を必要とされる業務に必要な研究マインド等を涵養することも求められるようになってきており、医療系大学院が果たすべき機能は多様化している。

 医療系大学院は、このような状況を踏まえ、およそ専攻単位程度で、研究者養成を主たる目的としているのか、優れた臨床医、臨床歯科医等の養成を主たる目的としているのか、その目的と教育内容を明確にすることが必要。

 研究者養成を主たる目的とする場合にあっては、医学・生命科学等の領域で研究者として将来自立できるだけの幅広い専門的知識や、研究に必要な実験のデザインなどの研究手法や研究遂行能力と、専門分野を超える幅広い視野を修得させることが必要。

 優れた臨床医、臨床歯科医等の養成を主たる目的とする場合にあっては、当該専門分野で、研究マインドを持ち、必要に応じ研究を遂行できる能力を修得させるとともに、併せて、臨床を通じた研究を推進することが必要。

 医学・歯学系の修士課程の大学院は、医学部・歯学部卒業者以外を対象とし、当該課程修了後に医学・歯学系の博士課程に進むことを想定して設置されているが、実際には、課程本来の目的に沿って、4年の医学・歯学の博士課程と合わせた研究者養成のプロセスを担っている面と、医学・歯学に関する専門知識を有し、幅広く医療関連分野で活躍する高度専門職業人の育成を担っているという両面があり、このような現状に対応した教育が必要。

 研究遂行上又は職業上必要な資格の取得(遺伝子実験、放射線取扱いなど)や、関連学会における認定資格(専門医など)の取得のための講習や研修と、医学・歯学系大学院博士課程における教育とは、本来、趣旨・目的を異にするものであるが、専門分野の資格取得のための本人の負担等を考慮すると、大学院の教育課程の中に当該資格取得に必要な教育内容を取り組む工夫も必要。

2. 課程制大学院の趣旨に沿った教育課程や研究指導の確立

教育・研究指導の在り方について

〈各分野共通の教育・研究指導の在り方〉

 先に示した大学院の目的に沿って、専攻単位で組織的に教育活動を計画することが必要であり、従来のように各研究室の研究者に教育を任せきりにならないようにすることが必要。

 また、専攻を単位とする組織的な教育活動が、動物実験や遺伝子実験、放射線の取扱いなど、単にさまざまな診療上や研究上の規制に対応した知識・技術のみを習得させるのではなく、体系的な教育を提供するという課程制大学院の趣旨に沿った相応しいものとなるようにすることが必要。

 このための具体の方法として、例えば次のように、幅広い視野と当該専門分野での専門的知識を習得させるための専攻を単位とする組織的な教育活動が必要。
 幅広い視野を身につけるための関連領域に関する組織的な教育活動
 各専門分野に関する専門知識を身につけるための体系的かつ組織的な教育活動
 自立的な研究者として必要な能力や技法を身につけるための組織的な教育活動
 (例えば、各分野毎に研究テーマを設定し、それに応じて実験のデザインを行わせる など)
 
〈医学・歯学系大学院における教育・研究指導の在り方〉

 研究者養成を主たる目的とする場合においては、例えば、遺伝子に関する技術、RIの取扱い、タンパク質解析、細胞培養、統計処理など、研究者に求められる医学・生命科学研究の遂行に必要な基本的知識・技術をコースワークで修得させることが必要。

 優れた臨床医・臨床歯科医等の養成を主たる目的とする場合においては、例えば、医の倫理、臨床心理、医師と患者関係、臨床研究方法論など、臨床医・臨床歯科医に求められる資質や能力を涵養するために必要な内容をコースワークに盛り込むなど、体系的かつ組織的な教育活動が必要。
 また、併せて、新しい診断・治療法の開発・評価、臨床疫学など、患者に対する診療を通じた臨床研究のテーマを課すことなどが必要。
 
〈薬学系大学院における教育・研究指導の在り方〉

 4年制の基礎薬学等に係る学部を母体とする大学院は、5年制(区分制又は一貫制)の博士課程として研究者養成を主たる目的とすることが予想されるが、その教育内容については、今後、関係者による検討が必要。

 6年制の臨床薬学等に係る学部を母体とする大学院は、4年一貫の博士課程として優れた臨床薬剤師の養成を主たる目的とすることが予想されるが、その教育内容については、今後、関係者による検討が必要。
 また、その場合であっても、臨床を通じた薬学研究の在り方についても検討が必要。
 
〈看護学系・医療技術系大学院における教育・研究指導の在り方〉

 看護学系・医療技術系分野の区分制博士課程にあっては、同一専攻の中で、博士課程(後期)修了後に教育研究職に就く者のための研究者養成プログラムと、前期課程修了後に専門職に就く者のための専門職業人養成プログラムをあわせ持った一つの体系的な教育プログラムとするなどの工夫が必要。

 研究者養成を主たる目的とする場合、論理性と表現力の育成及び倫理性の涵養が重要。また、実践的な研究テーマと基礎的な研究テーマの両方が教育できるような体系的な教育プログラムが必要。

 また、修士課程における優れた看護師等を養成するプログラムを履修する場合のほか、研究者養成プログラムを履修する場合においても、専門職業人としての一定の実務経験を経てから入学させることが望ましい。
 
〈公衆衛生分野の大学院における教育・研究指導の在り方〉

 公衆衛生分野の大学院は、高齢化等の進展に対応して、公衆衛生分野における高度専門職業人の育成が、今後必要となっていることから、2年制の専門職大学院として、具体的な需要を踏まえ、その形成を徐々に進めていくことが必要。その教育内容については、各専門領域に共通するコア科目の修得と、各専門領域における専門科目の修得とを組み合わせるような工夫が必要。
 
修得単位数に関する大学院設置基準の改正について
 
 上記のような観点に立って、大学院設置基準に定められている修得すべき単位数、及び単位の数え方について見直すことが必要。

 特に、現在の単位の数え方は、学部の単位の数え方(一つの講義・演習につき、15時間から30時間までの範囲で大学が定める時間の授業をもって1単位となっていることなど)に準じているが、これを先に述べたような、例えば、研究テーマに応じた実験のデザインなどを各週毎に行うことにより、あわせて1単位とするなど1単位の考え方を見直し、修得すべき総単位数などについても併せて検討することが必要。
 
教員の教育・研究指導能力の向上方策について
 
 教員に対し、大学院の教育を実施するに際しては、学生に対する教育の在り方や、指導能力を高めるため、各専攻において、当該大学院の教育についての共通理解を高めることが必要。

 併せて、教員に対する研修などのファカルティ・ディベロップメント(FD)の努力が必要。

 教員に対する評価としては、研究実績だけでなく、教育に対する能力の評価が必要。

 さらに、臨床医学系、臨床歯学系分野等の大学院の教育・研究や機能を高める観点から、担当教員の臨床に係る実績や、臨床を通じた研究成果に対する評価が必要。
 
論文博士制度について
 
 諸外国における博士の学位が、博士課程において必要な教育プログラムを修めた者に授与されるという現状を勘案した場合、学位の国際的通用性の観点からみても、日本における論文博士の制度は独自のものである。課程制大学院の実質化が図られることを前提として、論文博士制度は廃止の方向で検討することが必要。

 その際、現に論文博士の制度を前提として研究を続けている者がいることや、課程博士の授与状況を踏まえて、十分な経過措置期間を設定することや、いわゆる満期退学者に対し数年間に限って課程博士を授与しているという状況を踏まえ、課程博士の授与に関する考え方を整理することが必要。
 
3. 学生に対する経済的支援

 
 医療系大学院においては、他の分野と異なり、大学院入学前において、臨床研修や一定の実務経験を必要とすることなどから、学生に対する経済的支援の充実が必要。
 特に、進路選択に当たって、経済的な事情から大学院に進むことを断念することがないように、大学院受験前に経済的支援が予約されるような措置を講ずるなど、学生が安心して進学できるようにする配慮が必要。

 現在、大学院生に対する経済的支援は、日本学生支援機構による奨学金や留学生給与の支給、国立大学法人運営費交付金や私立大学等経常費補助金に含まれるTA、RAによるもの、さらには日本学術振興会の特別研究員制度(DC)、科研費補助金等の競争的資金や21世紀COEに包含されるTA、RAなどがあるが、今後ともこのような各種4つのタイプを併存する形とするのか、あるいは競争的に配分される教育資金や研究資金に包含されることを主としていくのか検討する必要がある。
   
4. 教育・研究環境の整備

 
 医療系大学院における、研究者や高度専門職業人等の人材養成機能及び学術研究機能をさらに一層充実させるには、教員の増や施設・設備の整備等に伴う予算の充実など、国などによる財政支援が不可欠。


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