質保証システム部会(第8回) 議事録

1.日時

令和3年6月15日(火曜日)16時~18時

2.場所

WEB会議

3.議題

(1)部会長の選任等について
(2)質保証システムの見直しについて
(3)その他
 

4.出席者

委員

(部会長)吉岡知哉部会長
(副部会長)日比谷潤子副部会長
(臨時委員)浅田尚紀,飯吉透,大森昭生,川嶋太津夫,小林浩,杉谷祐美子,瀧澤美奈子,谷本和子,土屋恵一郎,曄道佳明,長谷川知子,濱中淳子,前田早苗,宮内孝久,吉見俊哉,米澤彰純の各委員
 

文部科学省

(事務局)伯井高等教育局長,森私学部長,森田大臣官房審議官(高等教育局及び科学技術政策連携担当),淵上高等教育企画課長,西田大学振興課長,武藤高等教育政策室長,草野大学設置室長,髙橋高等教育企画課課長補佐,堀家高等教育政策室室長補佐,竹花大学設置室室長補佐,一色大学振興課課長補佐,大塚専門教育課課長補佐,片柳私学助成課課長補佐
 

5.議事録

(1)部会長の選任等について
 中央教育審議会令に基づき,委員の互選により吉岡委員が部会長に選任された。
 副部会長については,吉岡部会長から日比谷委員が指名された。
 質保証システム部会の会議及び会議資料の公開について説明があり,資料3の原案のとおり決定された。
 中央教育審議会大学分科会質保証システム部会の会議の公開に関する規則に基づき,この時点から会議が公開された。

【吉岡部会長】  それでは,ただいまから,第11期の初回の質保証システム部会を開催いたしたいと思います。部会長に選任されました吉岡でございます。一言御挨拶をさせていただきます。
 この質保証システム部会,今期3名の新しい委員をお迎えしてスタートすることになりました。21世紀における社会の変化,学問の進歩を背景にして,大学教育,高等教育をどのように考えていくかということで,2018年のいわゆるグランドデザイン答申が出されました。この質保証システム部会は,それを基にして,高等教育の質保証システムの具体的なデザインを考えていく部会であると承知しております。
 ところが御存じのとおり,昨年からは当初予想していなかった新型コロナウイルス感染症のパンデミックが起こりました。これは高等教育全体に非常に大きな影響を与えて,キャンパスが閉じる,あるいは授業をオンライン化するということが起こりました。また,国際交流が事実上停止するということも起こったわけです。そういう意味では,大学教育の在り方そのものにも大きく影響してまいりました。もちろん,社会の中での大学の役割ということについてもいろいろ考え直さなければならないということも起こってまいりました。一方,デジタル化の進歩等も進んできたという側面もございます。そういういろいろな現在進行形の事態を注視しながら,質保証のシステムというものを具体的に考えていくというのが,今期の役割でございます。
そういうことで,かなり大きな問題とつながっている議論になりますので,議論を整理しながら進めていきたいと思います。どうぞ御協力をよろしくお願いいたします。
 では,続きまして,文部科学省を代表して,伯井高等教育局長から御挨拶をお願いいたします。

【伯井高等教育局長】  文部科学省高等教育局長,伯井でございます。第11期の大学分科会質保証システム部会第1回会合を開催するに当たりまして,私より一言御挨拶申し上げます。
 委員の先生の皆様方には,御多忙の中,委員をお引き受けいただき,また,オンラインという形でございますが,本日御出席いただきましてありがとうございます。感謝申し上げます。
 中央教育審議会におきましては,平成30年に「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」について答申を頂きました。その中では,高等教育の学修者本位の教育への転換と,それを実現するための質保証システムの確立の必要性について御提言を頂きました。これを受けて,前の期,第10期の大学分科会におきまして,質保証システム部会が設置されました。本部会では,前期の議論を引き継ぐ形で,更に発展させるという形での御審議をお願いしたいと思っております。
 これまでの議論におきましては,時代の変化や情報技術の進歩,大学教育の進展を踏まえ,質保証システムを時代に即したものに見直す必要があるとの御指摘がなされております。また,先ほど吉岡部会長からもお話がございましたが,新型コロナウイルスの感染拡大を始め,高等教育を取り巻く環境が非常に大きく変動する中で,世界中がニューノーマルにおける大学教育の在り方を模索しております。
 我が国におきましても,新たな高等教育の仕組みを構築していく必要がありますが,その中で,高等教育の質をいかに保証していくかという点は,極めて重要なテーマでございます。本部会における御審議は,今後の高等教育政策の中核になるものと考える次第であります。
 前の期の部会では,関係団体や様々な有識者の方々からヒアリングを実施していただきました。今期は,その結果も踏まえつつ,多岐にわたるとともに,相互に連関,関係している質保証システムの各要素について,今後の大学の在り方を見据え,具体的な改善方策に関して御検討を賜れればと存じます。
ポストコロナ社会における新たな大学教育の在り方の検討に資する自由かっ達で充実した御審議をお願い申し上げまして,私から第1回の御挨拶とさせていただきます。何とぞよろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 それでは,進めていきたいと思います。
 まず,本日の議事ですが,審議を開始するに当たり,今期の質保証システム部会における審議のスケジュールについて御確認いただきます。第10期では論点の洗い出しとヒアリングを基にした議論を行いましたが,今期はそれを基にして回ごとに論点を分けて議論を進めてはどうかと考えております。
 お手元資料4を御覧ください。第10期で議論すべきとされた論点について,およそどの回で扱うのかということについて配置をしてございます。このような見通しを持ちつつ,一方で,質保証システムは相互に非常に深く関連しておりますので,全体のバランスについて意識をしながら議論を進め,議論の進行に伴って適宜変更を加えていくとしたらどうかと考えているところですが,いかがでしょうか。
 一応年度内10回という形で振っておりますけれども,議論の進行とか重要性が変わったりした場合には,これも配置を換えながら進めていきたいと考えております。
 では,そのようにさせていただきます。
 それでは,本日の審議事項に入ります。本日は,質保証システムの見直しについて御審議いただきます。
 まず事務局より,関連する会議の提言等,それから,検討の方向性についての説明をお願いいたします。

【堀家高等教育政策室長補佐】  失礼いたします。事務局でございます。
 まず初めに,関係する諸会議の提言等の状況ということでございまして,資料5-1,5-2,5-3,5-4を用いて御説明させていただきます。
 まず,資料5-1でございます。こちら,教育再生実行会議の第十二次提言が先日6月3日に提出されております。教育再生実行会議においては,委員でいらっしゃいます日比谷先生も議論に御参画いただきまして,この提言を取りまとめいただいてございます。
 この一番冒頭のニューノーマルにおける教育の姿というところで,学修者主体の教育への転換や,もう一つのポツ,データ駆動型の教育への転換ということがうたわれてございます。
 また,その中で,2ポツ,右側のところですけれども,ニューノーマルにおける高等教育の姿,国際戦略と実現のための方策ということで,ニューノーマルにおける高等教育の姿や,(2),グローバルな視点での新たな高等教育の国際戦略ということについて御提言を頂いております。
 具体的な内容につきましては,資料5-2の提言の中身を少し御覧いただきながら御紹介させていただきたいなと思っております。
 まず,資料をおめくりいただきまして,18ページ目でございます。ニューノーマルにおける高等教育の姿,国際戦略と実現のための方策というところでございます。
 19ページ目に行きまして,ポストコロナを見据えた高等教育の在り方を考えるに当たって,次の3つの視点が重要であると言われております。
 第一が,遠隔・オンライン教育は,高等教育の新たな可能性を開くものであって,新型コロナウイルス感染症が収束したとしても後戻りすることはあり得ないという点。
 第二が,大学等は,単に知識・技能を修得するための場ではなく,正課外活動も含めた学生生活全般において,教職員・学生間,留学生や社会人も含めた学生間における多様な協働・交流を通じた社会性や対人関係能力の養成等が行われることに価値があるという点。
 そして,第三として,多くの大学等においては,遠隔・オンライン教育の取組は緒に就いたばかりであり,試行錯誤しながら改善を図っている段階にあるという点が確認されてございます。
 真ん中から下のところ,括弧で囲われております,ニューノーマルにおける高等教育の姿といたしまして,学修者が「何を学び,何を身に付けることができるのか」を明確にし,学修者本位の教育を実現することが求められるという点。
 また,次のパラグラフでございまして,社会経済の不確実性が一層高まる中,社会変革のけん引役として,人類にとって未知の領域を切り開き,主体的・創造的に解決策を提示すること,そしてそのための人材を育成していくことが重要だと提言されております。
 また,20ページ目ですけれども,学修管理システム(LMS)等のデータ駆動型の教育への転換を図っていくこと,また,「入り口での質保証」から「出口における質保証」への転換ということがうたわれてございます。
 そうした中で,具体的な方策に関して提言をされております。この四角で囲われている部分ですけれども,この中から,特に質保証システム部会において関係が深い検討事項に関して御紹介していきたいなと思います。
 まず20ページ目,大学のDX化のところでございます。高等教育のDXを迅速かつ強力に推進するということで,その下のポツですけれども,面接授業と遠隔・オンライン授業を効果的に組み合わせたハイブリッド型教育の実施ということが求められております。
 21ページ目,一番下のところでございますけれども,国は,ニューノーマルにおける大学等の姿を実現するための仕組みを構築する視点から,遠隔・オンライン教育の単位修得の柔軟化の検討と併せて,通学制と通信制の区分を含めた大学設置基準の在り方や設置認可制度,認証評価制度の見直しなど,時代に即した質保証システムの在り方について見直しに向けた検討を速やかに行う。また,その際,教育施設の在り方についても,大学教育の質保証の観点も踏まえて検討するということが提言されております。
 続きまして,ページが飛びまして,24ページ目でございます。上から4つ目のポツですけれども,多様な学修ニーズへの対応や「出口における質保証」の観点から,通信制課程において,特に遠隔・オンライン教育を積極的に活用する。また,現在は通信制課程を置いていない大学においても,コロナ禍において蓄積された知見・ノウハウを生かして,遠隔・オンライン教育による新たなカリキュラムの開発・実施を検討するということが提言されております。
また,次の丸ですけれども,リカレント教育を推進するという観点から,遠隔・オンライン教育の積極的な活用や個別の単位に分けて学修するマイクロクレデンシャルの提供など,より多くの人がアクセスしやすい取組を促進するということが提言されております。
 続きまして,少しページが飛びますけれども,31ページ目の下から2つ目の丸でございます。国は,大学による責任をもった適切な在籍管理を前提としつつ,優秀な留学生の獲得に向けて,大学の戦略に応じた柔軟な運用が可能となるよう,留学生の受入れ方策を検討するということや,33ページですけれども,2つ目の丸,学びの多様化に対応した学事暦・修業年限の多様化・柔軟化を進める観点から,大学等の早期卒業・修了制度に係る解釈の明確化・周知,ギャップタームの取組成果の普及促進,定員の設定・管理の在り方や授業料の設定・徴収の在り方に係る考え方の整理など必要な支援を行うといったことが提言されております。
 こちらの教育再生実行会議における提言も踏まえまして,今年度,充実した御審議をお願いしたいなと思ってございます。
続きまして,資料5-3でございます。こちら,6月1日にまとめられました規制改革推進に関する答申というところになってございます。
 少しページが飛びますが,この中の21ページ目に,デジタル時代を踏まえた大学設置基準等の見直しということが書かれてございます。この中のb,cは措置済み,a,d,e,f,g,h,iに関しては,令和3年度に検討・結論,結論を得次第速やかに措置ということになっております。
 ページをお進みいただきまして,具体的な実施事項といたしまして,22ページ目ですけれども,aのところですと,通学制と通信制の差異が相対化していることを踏まえ,それぞれの長所を生かした形で大学が独自性を生かすことができるよう,更なる見直しが必要ということ。
 また,dのところですけれども,オンライン授業の普及・利用状況を踏まえ,また大学に今後期待されるリカレント教育の実施に向けた社会人の利便性等の観点から,「校舎等施設」,「校地の面積」,「校舎の面積」,「運動場」等の基準について,大学の独自性を考慮した上で,柔軟な対応ができるよう見直しを実施する。また,体育館を始めとした施設の設置義務化の妥当性について検討し,見直すとともに,必ずしも「紙の本」の図書館や教員の個室は必要ないという点と併せて,周知をするということが求められております。
 また,eについては,「単位」を取得した場合には,4年未満であっても卒業できるように見直しを行うことや,fとして,対面教育のみを前提とした現行の厳格な定員管理は,より柔軟な合理的な定員管理に見直す必要があるということ,そしてまた,定員管理について,「学部単位の入学定員」をより柔軟化し,単年度での管理についても,複数年度の平均値での管理など,より現実的な方法に変更を行うよう求められております。
 また,gのところですと,専任教員数の規定について,学部の種類や各大学の実態に即して見直すように,また,hですと,「実務家教員」の定義や学校名等について,学校等の設置認可の申請に当たり,誰もが分かりやすい形で明示化すること。また,iとして,単位互換制度の在り方についての議論ということが提言されております。
 続きまして,資料5-4でございます。こちら,経団連の採用と大学教育の未来に関する産学協議会からおまとめいただいた提言でございます。この中に,長谷川委員も,この提言の取りまとめに当たって大変御尽力いただいたと聞いてございます。
この中で,当部会に関係する部分として御紹介させていただきますと,スライドのページ番号で7ページが振られているところですけれども,ニューノーマルを踏まえた新たな大学教育の在り方として,DX/ニューノーマルを踏まえた新たな大学教育の在り方として,オンライン教育の利点を活用する,対面授業とリモート授業の組合せによるハイブリッド型教育への流れは不可逆と。そこでハイブリッド型授業の常態化を目指すべきだということが提言されております。
 そして,8ページ目ですけれども,急ぎ対応が必要なもの(緊急性が高いもの)といたしまして,ハイブリッド型教育の実施に係る環境整備,また,ハイブリッド型教育の質保証の強化ということが提言されています。
 また,丸2 といたしまして,中長期的な対応といたしまして,ハイブリッド型教育に応じたカリキュラム体系の再構築,また,国内外の大学との連携の推進・強化,そして,定員管理の見直しといったことに関して提言がされているところでございます。
以上が,関係する諸会議の提言の状況に関しての情報共有というところでございます。
 続きまして,資料6に基づきまして,昨年度,第10期における御議論を踏まえまして,今年度,先生方皆様方に御議論いただく,見直しに係る議論の方向性ということで,共通認識を持って御議論を進めていただければなと思っておりまして,部会長とも御相談いたしまして,資料を作成させていただいております。こちらに関して御説明させていただこうと思います。
 冒頭,1ポツ目,グランドデザイン答申における記載というところでございます。今回の質保証システムの見直しの議論の端緒としては,やはり平成30年11月にまとめられましたグランドデザイン答申がございます。その中で,教育の質保証システムの確立というところで,1つ目の丸のところですけれども,時代の変化や情報技術・大学における教育研究の進展等を踏まえた大学設置基準とするため,抜本的な見直しを検討すると提言されています。そして,具体的には,定員管理,教育手法,施設設備等について,学生/教員比率の設定や,教育課程を踏まえた教員組織の在り方,情報通信技術を活用した授業を行う際の施設設備の在り方などを含めて検討するということが言われております。
 また,丸を2つ飛ばしまして,アンダーラインのあるところですけれども,認証評価の結果に応じて,受審期間を一時的に長くしたり,短くしたりすることを検討であったり,機関別評価と分野別評価の在り方について,受審期間をそろえるといったこと,また,分野別の評価に関して,分野について細分化せずに,一定の基準に基づいて整理することを検討,また,認証評価機関に関して,今後学修成果や教育成果に関する情報公表が各大学に義務付けられた際には,共通の定義に基づいて整理された当該データを相対的に活用することなどの取組を進めることを検討といったことがグランドデザイン答申において提言されておりました。
 昨年度,第10期の質保証部会におきましては,先ほど部会長からも御説明がございましたけれども,関係団体からのヒアリングや,質が保証されている大学とは,また,質保証システムの全体像についてということで,今年度具体的なこの制度に関して御検討いただくに当たっての足場固めのための共通認識を得るための議論を進めていただいておりました。そこで,吉岡部会長におまとめいただきました資料として,「今後の議論の進め方について」というものを抜粋させていただいております。
 質保証システム部会における議論においては,「グランドデザイン答申」やその後のコロナ禍を経て表出した大学像を踏まえ,時代に即した在り方を検討していくことが求められるとまとめていただいております。
 そして,その際,学修者本位の観点から最低限保証すべき「質」についての共通理解を深めるとともに,質保証システムは単に大学を評価するものではなく,大学の自主性・自律性に基づく自己改善を促進するためのものであり,大学は,そうした一定の営みを通して社会から理解と支持を得られること,また,必要な情報を社会に公表し社会との対話を進めることで教育研究等の更なる充実が可能となることを意識しつつ,いわば「社会に開かれた質保証」の実現を図る観点から,議論を進めていきたいとおまとめいただいております。
 裏面に行っていただきまして,3ポツ,見直しのコンセプトというところでございます。グランドデザイン答申と昨年度の議論を踏まえますと,(1)として,大きな方針といたしましては,学修者本位の大学教育の実現,そして,「社会に開かれた質保証」という2つの大きな方針が今回の質保証システムの見直しにおいては存在すると考えております。
そうした中で,「学修者本位の大学教育」と「社会に開かれた質保証」の2つの方針の下で,具体的な質保証システムを構成する個別の制度の見直しを行っていくに当たりまして,もう少し具体的な視点を導かれればなと思っておりまして,以下4つのように整理させていただいております。
 まず,1つ目でございます。「学修者本位の大学教育」と「社会に開かれた質保証」を実現するために,学修者にとっても社会にとっても,質保証の仕組みやそれぞれの大学教育の状況が,分かりやすくかつ予見可能性があることが必要であると考えます。すなわち,学生や保護者,社会一般の関係する誰もが理解可能な,客観性のある質保証システムであることが求められると。そこから,客観性の確保というものが導かれるのではと思っております。
 また,2つ目でございます。学修者等が適切な情報を得ることができ,社会に対して大学が教育研究の状況について説明責任を果たしていくためには,客観的な情報が適切に公開され,学修者や社会が当該情報にアクセス可能になっていることが必要であると考えます。すなわち,透明性の向上ということが導かれるのかなと思ってございます。
 また,3つ目でございます。社会との往還によって大学教育を充実させ,より学修者本位の大学教育を実現していく上では,常に変化し続ける社会に対応するための先導性・先進性を確保する必要があります。加えまして大学は社会変革を促すための知と人材の集積拠点であり,先進的・先導的な取組を常に行い続けることが期待されるということから,先導性・先進性の確保というものが導かれるのかなと思っております。
 そして,さらに,社会の変化に対応していくためには,柔軟性を発揮して先進的な取組を講じることと併せまして,学修者の学びを保証するとともに質保証システムの実効性を確保するという観点から,厳格性が担保されるということも求められるということで,厳格性の担保と。
 以上,客観性の確保,透明性の向上,先導性・先進性の確保,そして,厳格性の担保といった,この4つの方針に基づいて,大きな学修者本位の大学教育の実現と「社会に開かれた質保証」という2つの方針を実現するための4つの視点として設けることができないかと考えているところでございます。
 具体的な例といたしましては,客観性の確保といたしましては,設置基準を今の時代に合ったより客観性のある分かりやすい基準として,その基準に基づき,設置認可審査について内規や運用に基づく審査からの転換を図るということや,透明性の向上といたしましては,不適合や指摘事項の根拠の開示等によって,設置審査の透明性を向上するということや,情報公表の徹底・一覧化によって透明性を向上するということ。また,先導性・先進性の確保という観点からは,時代の変遷に対応した教育研究組織を容易に編成しやすくなるよう,設置基準の見直しや設置審査における審査体制の柔軟化,そして,厳格性の担保というところですと,情報公表・評価結果に基づく対応の厳格化といった見直しの方向性が考えられるのではないのかということで,案としておまとめさせていただいてございます。
 不足する観点等がないか,是非委員の皆様方に御議論を賜れればと思っております。よろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 それでは,少し時間を取りまして,今事務局から説明がございましたここ以外の様々な会議体での議論を踏まえた上で,とりわけ資料6のところで,見直しのコンセプトという形で非常に分かりやすい形で事務局がまとめてくださっていますが,それを見ながら少し議論をしたいと思います。
 何か御質問等を含めて,御意見がある場合には,手を挙げるボタンを押していただくか,あるいは,画面で手を挙げてくださっても結構です。よろしくお願いいたします。
 どなたか,いかがでしょうか。
 飯吉委員,お願いします。

【飯吉委員】  質問に近いのですが,これまでの議論で,やはり柔軟性が大事だということだと思いますが,これは,この中で言うと,例えば,先進性とか先導性の中にも,柔軟に色々と対応するというようなことが入る感じでしょうか。
柔軟性というのはなかなか扱いにくいところもありますけれども,ある程度,機敏に柔軟に対応できるという意味での柔軟性みたいなものがどこかに入るといいのかなと思います。このような理解でよろしいのかどうかということをお聞きしたいということです。よろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】  事務局から何かございますか。

【堀家高等教育政策室長補佐】  失礼いたします。事務局でございます。
 飯吉先生,今御指摘いただきましたとおり,柔軟性という観点は非常に重要だと思ってございます。大変分かりにくくて恐縮でございますけれども,丸4 の中に,柔軟性を発揮して先進的な取組を講じることとあわせと書いておりまして,そうした意味で,丸3 の先導性・先進性の確保という中に柔軟性という意味も読み込んでと思っているところでございました。よろしくお願いいたします。

【飯吉委員】  ありがとうございます。
 丸4 にも入っていましたが,この場合,柔軟で厳格ということを両立させるという理解でよろしいでしょうか。

【吉岡部会長】  そうだと思います。

【飯吉委員】  難しいところですね。ありがとうございます。

【吉岡部会長】  大変難しいところですが,一方で,ここでの議論というのは,やはりシステムとして客観性を保たなければならないという議論と,それから,刻々と変わっていく事態にどう柔軟に対応していくかという,そういう意味では,おっしゃるとおり,かなり難しい2つの方向を見据えなければならないということだと思っております。大変なことですけれども,そういうことです。

【飯吉委員】  ありがとうございました。

【吉岡部会長】  では,吉見委員,お願いいたします。

【吉見委員】  ありがとうございます。
 私も,今回の見直しの基本コンセプトが,学修者本位の大学教育,これはグランドデザイン答申で出した非常に大きな柱でございますけれども,それをどう質保証のシステムに具体化していくのかということと,「社会に開かれた質保証」をどうやって実現していくのかという,2つが柱になるということには全く異存ございません。
 その上で,私,よく文科のこの会議で,どうも日本の官僚システムは足し算がすごく得意だけれども,割り算が苦手で,全部足そうとするからだんだん無色透明なよく分からないものになっていくと申してきました。優秀な官僚のみなさんは,異なる意見を非常に抽象的な概念でまとめるから,全部きれいに金太郎あめみたいになるが,結局,何を言っているのかよく分からなくなることがある。どうも,この客観性,透明性,先導性,先進性,厳格性って,これら自体に異論ある人はそんなにいないでしょうが,こうやって抽象化してまとめちゃうと,対立する意見も何でも入っちゃうのですね。今の柔軟性と厳格性の議論も正にそうですけれども,何でも入れられるので対立点が見えなくなる。それで,自分たちで何を議論しているのかよく分からなくなっちゃうというリスクがある。
 ですから,報告書に最終的にまとめるときには,こういう抽象的で,何を言っているかよく分からない言葉を最後に小見出か何かに付けるのも作文術のひとつでしょうが,やっぱり議論していくときに重要なことは,もっと実質的なところで具体的な論点を示し,対立点を明確にしていくことです。そもそも学修者本位の大学教育を実現するために,定員管理の問題はどう考えられなければならないのか。そのときに,基本単位といいますか,学修者本位の大学教育を実現する基本単位は実質的に何なのか。また,「社会に開かれた質保証」を実現するキーになる具体的な柱は何であるのかをきちんとまず議論していくことがとても重要だと思います。客観性,透明性うんぬんかんぬんは,異なる人によって異なる意味づけができてしまう概念なのではないでしょうか。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 おっしゃるとおりだと思います。それで,先ほど資料4でお示ししたように,これ,うまくいくかどうか分からないと言えばそうですけれども,かなり具体的に,例えば定員管理の在り方とか,それから,これは直接どこに入れたかちょっと覚えていませんけれども,例えば,教員と学生の比率の問題であるとかという。つまり,正に制度化していくということを念頭に置いて議論を進めていきたいと考えている次第です。
 抽象的に客観性とは何かという議論みたいになりがちなのですけれども,そちらの方に行かないようにしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは,大森委員,お願いいたします。

【大森委員】  ありがとうございます。大森です。
 今,客観性とは何かという議論に行かないようにということだったので,ちょっと行きかけたのですけれども,今ちょっと言われたことですが,ここでいう客観性とはシステムが客観的であるということで理解したいと思います。つまり,奥までたどっていかないと,なぜこれが認められているのかとかが一般の人には分からないということよりも,例えば,ホームページとかでぱっと見ると,「なるほど,こういうことだからか」と理解できるというようなニュアンスとして捉えていいのかなと理解はしているのですが。
 客観性と言ったときに,一方で,教学マネジメントなんかで学修成果を可視化していきましょうと言ったときには,いわば各大学の主観,主観と言ってしまうと語弊がありますが,主体性というか,ディプロマ・ポリシーがそれぞれ違う中にあって,その成果の可視化の方法やそういったものもそれぞれ工夫しながら,自分の大学としてこれで保証していくということを考えていきましょうねというようなことがベースに,それこそが学修者本位にもつながるという理念だったと思うのです。その辺が,さっきの柔軟性,私も非常に重要だと思っているのですけど,一方で,厳格性というところの微妙な矛盾と同時に,大学の主体性と客観性の間に食い違いが生じないような説明,何を客観的に示さなければいけないのかというのが,もう少し……。つまり,それはシステムの客観性なのであってみたいなことがもうちょっと明確だといいのかなとは感じたところです。
 以上です。もし趣旨と合っていなかったら申し訳ありません。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 米澤委員,よろしくお願いいたします。

【米澤委員】  初めて参加いたします。よろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】  よろしくお願いいたします。

【米澤委員】  既にもう出ているお話かもしれませんが,ちょっと進め方で理解できないところがあって。例えば,定員管理をこれから話し合うことになると思うのですけれども,定員管理というものを考えた場合に,その在り方を考える場合に,当然,質保証だけでは済まないいろんな問題が背景には幅広くあって,例えば,公正の問題であったり,国際移動の問題であったりとか,いろんな問題が出てくると思いますが,そういうことは,ある程度,学修者本位も含めて,幅広く議論にする背景としては持っていてよくて,その上で,具体的に何をするかというときに,質保証に焦点を当てて議論をしろというような趣旨で理解してよろしいでしょうか。

【吉岡部会長】  そういうことだと思います。殊に,やはり制度の問題から離れてしまわないようにということが一方にございます。私,設置審におりますけれども,設置審での審査,これは正に行政が行っている,最終的には行政処分に関わる問題なので,それは先ほどの議論にありましたように,客観性であるとか,透明性であるという,そういう問題とも結びついている。
 ただ,一方で,大学等が行っていく教育の自主性であるとか,自発性であるとかというものを担保しないと,それこそ学問の進歩の足を引っ張ってしまいますので,その辺のバランスが非常に難しいのですが,一方で,大学に入った学生が,入ってみたら全然表に見えているものと違ったりするというのも困る。それをどういう形で社会に対しても透明にするか,それから,制度として客観性を保つかということを頭に置きながら,議論を進めていかなければならない。その背景には非常に大きな課題があると考えております。

【米澤委員】  ありがとうございます。

【吉岡部会長】  前田委員,お願いいたします。

【前田委員】  ありがとうございます。
 今までいろいろ出た御議論と重なる部分は多いのですが。私は,認証評価の実務的なことに関わっているので,客観性という言葉は極力使わないというところがあって,それよりは,公正性というんでしょうか,その大学にとって,それがきちんと説明がつくとか,そういうことの方を大事にしてきたような気がしておりまして,皆さん,もう十分御議論なさっているのですが,その客観的というのは,これだけ大学が多様になっている中で,数値で切ってしまうことで,その数値だけが定着していくと,みんな,その数値に合わせることを目指してしまいがちです。それが客観性の持つちょっと怖い部分でもあると感じました。
 以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 では,杉谷委員,お願いいたします。

【杉谷委員】  ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 こちらの方に挙げられている4つの観点自体には異存はございませんけれども,前の期においていろいろとヒアリングをお聞きしてやっぱり実感しておりますのは,大学の現場でどれだけしわ寄せがなく,きちんとした評価システムが機能するのか,それが改善に結びついていくのかということだったように思っております。ですので,この4点に加えるということではないかもしれませんけれども,特に大学の現場においての実行可能性ということについて御留意いただきたいなと思っております。
 ともすると非常に理念的にいろいろな制度改革が進みやすいかと思いますが,それが実際に行われたときに,どれだけ現場にとってどんな影響があるのかということもある程度予測しつつ,やはり実行可能なシステムを作り上げていくことが非常に重要なところなのではないかなと思っております。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 曄道委員,お願いいたします。

【曄道委員】  曄道でございます。ありがとうございます。初めて参加させていただきます。お願いいたします。
 既に御議論なさっていることかと思いますが,1点教えていただきたいのは,見直しのコンセプトの丸1 にあります,質保証の仕組みやそれぞれの大学教育の状況についての予見可能性という言葉ですけれども,この場合には,学修者にとって予見する対象というのは何を指しているのか教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】  事務局,いかがでしょうか。

【堀家高等教育政策室長補佐】  失礼いたします。
 曄道先生,御質問ありがとうございます。ここで予見可能性と書かせていただいている意味といたしましては,例えば,学修者にとって,大学に入学したときにどのような教育が行われることになるのか,また,社会からすると,その大学で行われている教育はどのような成果を生むのか,そうしたことが予見可能な形で,そしてまた,質保証システムといたしましても,システム全体が予見可能な形で表れているということを想定して書かせていただいております。

【曄道委員】  分かりました。ちょっと予見という言葉がピンとこなかったので,ありがとうございます。

【吉岡部会長】  では,濱中委員,お願いします。

【濱中委員】  よろしくお願いいたします。濱中でございます。
 先ほど杉谷委員の方から実行可能性のお話が出ましたが,そのことに関連して少し意見を述べたいと思います。気になっているのは,質保証システムを支える人材の問題です。いくらシステムを整えたところで,各機関に適切な人材がいなければ,現場は不必要な混乱に陥る可能性があります。スムーズな評価,実行可能性というような観点から,人材の問題についても視野に入れるべきかと思います。今回提示された「客観性の確保」や「透明性の向上」といったものについて異論はまったくないですが,いいシステムを作っても,それを動かす人がいなければどうにもなりません。制度としてどのように落とすかというのは悩ましいところがあるのですが,実行可能性という点に関連して申し上げさせていただきました。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 この4つの項目を立てているのは,1つは,やはり先ほど言いましたように,制度として客観性を持たせたいということが念頭にあるので,ちょっとその部分が強めに出ているかもしれません。
 一方で,客観性とか透明性とかということは非常に重要ですけれど,同時に,先ほども申しましたように,各大学が具体的にやっていくようなものに対して,それをある種個別的に判断していかなければならないところは常に出てくるだろうと思っております。前田委員が先ほどおっしゃっていたことと重なりますけれども,とりわけ評価の段階になった場合には,質保証についても内部質保証ということが強調されてきたというのは,そういうことだろうと思います。それぞれが立てた教育の目標なり理念なりというものに合わせて,具体的な教育課程が進んでいるかということを考えていく。その場合には,数値化できるかどうかという問題とはちょっと別の点を考えていかなければならないということだろうと思います。その辺,なかなか難しくて,例えば,設置基準の文言にどうするかみたいな議論と,その背景にどのような方向性を含ませるかということを両方やらなければならないというのが,ここでの議論だろうと考えているところです。ありがとうございます。
 川嶋委員,お願いいたします。

【川嶋委員】  川嶋です。これまでの委員ご意見と重なっているところもありますが,2点お話しします。
 重なっている点としては,今のご意見でも指摘されましたが,実行可能性ということです。幾ら客観的で透明性があって先導的なシステムを作っても,現場の大学で実行できない限りは絵に描いた餅になってしまうので,その辺をきちんと考慮した形の論点整理をしていただきたいと思います。と言いますのも,これまでも様々な制度改革は行われてきましたが,なかなかそれが現実に大学教育の現場でインプリメントされないということが多々生じていますので,その点は非常に重要な論点かと思います。
 それから,もう1点は,丸3 のところですが,システムのことを論点として整理されているのですが,丸3 のところは,個別大学の取組とか,それを記載している内容に思われます。大学が常に変化し対応する先導性・先進性な取組をしていかなければいけないようなことを書いてありますが,ここは全体としてはシステムの話なので,個別大学のことではなく,システムとしてどういう特徴を持っているべきかという観点からまとめた方がいいと思います。そういう点で言いますと,先ほど飯吉委員が最初におっしゃったように,ここはむしろ柔軟性に関しては,システムとして,社会の変化,時代の変化に柔軟に対応していくような仕組みを内在化しているという,そういう特性が必要ではないかと思いました。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 それでは,土屋委員,お願いします。

【土屋委員】  今までの議論とも重なると思いますが,私も,先ほど吉見委員のおっしゃったように,どうもこのコンセプトのまとめ方が,ある意味では整理はされていますが,非常に抽象的で,こういう形で最終的にまとめられてしまうと,一体何のために今まで議論をしてきたのかということが分からなくなってしまうのではないかという心配をいたします。
 例えば,資料で今回提供されている教育再生実行会議の資料や,あるいは,大学と経団連との間で行われた産学協議会の資料等は,もっと具体的に,かなり将来展望を含めて提案をしていると思います。そういう意味では,これまでの議論の中で,私どももそうした教育再生実行会議や,あるいは経団連との会議なんかの議論も踏まえながら,もっと具体的なテーマ,例えば,オンライン授業に関しましても,あるいは国際化に関しましても,具体的な提案をしてきたつもりでおりますので,できればこの会議においても,定員管理を含めて,具体的な議論に進んでいただきたい,そのことを強くお願いしておきたいと思います。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 それでは,今,土屋委員の御意見もございましたので,全体的な議論は,またその都度御発言いただいて構わないのですけれども,スケジュールに従いまして,今のところにも関わります「定員管理」の問題に入っていこうと思います。
 まずこのテーマを持ってきたのは,設置基準の設置認可審査その他の,それこそ具体的な制度の運用のところで,定員管理というのは非常に具体的なメルクマールとして使われているということが,まず問題として取り上げようという点でございます。
 まず,事務局から説明をお願いいたします。

【堀家高等教育政策室長補佐】  失礼いたします。事務局でございます。
 資料7-1,7-2,参考資料1を御覧いただきながら御説明させていただこうと思います。
 定員管理に関しましては,まず参考資料1ですけれども,裏面のところを御覧いただければと思います。こちら,昨年度先生方に御議論いただきました中で出てきました論点ということになってございます。
 定員管理の在り方についてというところですけれども,1つ目の丸,設置基準や同基準に基づく設置認可審査,認証評価における定員管理のほか,国立大学運営費交付金や私立大学等経常費補助金,設置認可に係る定員管理に監視,今日的な役割・目的についてどのように考えるのか。
 また,2つ目の丸,定員管理について,入学定員から収容定員へ,学部単位から大学単位へ,単年度単位から複数年度単位へ見直すことについてどのように考えるか。その際,学部等専門分野別の教員数確保や学生の学修環境確保の観点についてどのように考えるか。このような点に関しまして,論点として御議論いただいておりました。
 それを受けまして,資料7-1でございますけれども,「大学等の質保証に資する定員管理の在り方について」というところで資料をまとめさせていただいております。
 定員管理に関しましては,設置基準において,収容定員当たりの専任教員数や,収容定員当たりの後者面積を規定するなど,大学における学生数と教員数や校舎の在り方等の関係を規定する,前提となるような考え方でございます。そういうことから,設置基準,設置認可審査,経常費の配分など,様々な制度が具体的に絡まり合う問題でもございまして,先ほど柔軟な在り方を目指すという観点からも,実現する上でも検討の大きな論点になると認識してございます。
 では,おめくりいただきまして,2ページ目のところです。論点1といたしまして,先ほど御紹介した論点の1つ目のところ,定員管理に関し,今日的な役割・目的についてどのように考えるかというところを記載しております。
 1つ目の丸ですけれども,これまでの定員管理の役割・目的といたしましては,「教育環境の確保」というものがあったと考えられます。
 少し先に行きまして,3ページ目を御覧ください。大学設置基準の規定の仕方ですけれども,第18条第3項におきまして,大学は,教育にふさわしい環境の確保のため,在学する学生の数を収容定員に基づき適正に管理するものとすると規定されてございます。この考え方が大前提としてあると思います。
 そうした観点から,具体的に教育環境の確保というものを担保するための措置といたしまして,大学設置基準,認証評価,設置認可審査,基盤的経費の配分,経営指導といった観点で様々な措置がとられてきているという状況でございます。
 一方で,2つ目の丸ですけれども,大学を取り巻く近年の環境変化ということで,丸1 ですけれども,育成すべき人材像を表明する必要性ということで,3つのポリシーの策定及び公表の義務化や教学マネジメントの実施によって,各大学で育成すべき人材像を社会に対して公表する必要性が出てきております。
 また,丸2 ですけれども,社会との関係性の変化というところで,吉岡先生にも,社会に開かれた質保証という形でまとめていただいておりますけれども,大学の活動を社会に対して広く説明することで,理解と支持を得ることができるとともに,社会との対話を進めることで教育研究の更なる充実にもつながるエンゲージメント型の大学運営の必要性も生じております。
 また,丸3 ですけれども,社会状況の急激な変化というところで,Society5.0やDX化,グローバル化が進展するとともに,人口減少下にある我が国社会におきまして,社会の変化に対応するとともに,新たな社会変革を促していく人材を育成する必要性が生じてございます。
 こうしたところから,下の網かけの部分ですけれども,大学を取り巻く近年の環境変化を踏まえまして,「定員管理」の今日的な意義・目的について,どのように考えるか。
 例えば,従来の「教育環境の確保」に加え,各大学が自らの機能や使命を踏まえた一定の資質を有する者を,一定の規模で社会に輩出することを「定員管理」の意義・目的として位置付けることについてどう考えるか。
 また,「教育環境の確保」と「人材育成の使命」という観点から,引き続き定員管理の仕組み自体は維持しつつ,あわせて,次の論点でお示しいたしますけれども,弾力化・柔軟化を図ってはどうかということを論点として記載させていただいております。
続きまして,4ページ目をお願いいたします。論点の2つ目でございます。入学定員から収容定員へ,学部単位から大学単位へ,単年度単位から複数年度単位へ見直すことについてどのように考えるのかという点でございます。
 1つ目の丸,定員管理の単位の現状でございます。次ページも参照いただければと思いますけれども,まず大学設置基準においては,学部ごとに定める収容定員を単位に管理してございます。
 こちらですけれども,5ページ目を御覧ください。もともと「大学基準」時代から,平成3年の設置基準大綱化されるまでの間,教員組織,施設設備等を総合的に考慮して定める「学生定員」,すなわち入学定員として規定されておりました。こちらが,平成3年の設置基準の大綱化の際に,編入学定員の設定の必要性と。これは女子の進学希望者が増加する中にあって,短期大学から4年制の大学への編入が相当数発生することが予想されること,また,産業構造の変化に伴って社会人の編入学の要請が強まることが予想されるという中にありまして,入学定員に基づく管理から収容定員に基づく管理へと変更されたという経緯がございます。
 また,2つ目,設置認可審査ですけれども,こちら,学部単位の平均入学定員超過率に基づいて管理ということが行われてございます。
 5ページ目を御覧いただければと思いますけれども,新たに大学等の設置等に係る認可をするに当たりまして,過去の平均入学定員超過率が一定の基準未満であることを要件とされております。
 こちら,2つ目のポツが,規定が少し古くて恐縮ですけれども,当初は入学定員に対する入学実員の割合で算定されておりましたが,平成3年の今御説明申し上げました設置基準の大綱化に併せまして,収容定員に対する在学者数の割合で算定されるということになりました。しかしながら,平成10年の「21世紀答申」におきまして,厳格な成績評価と合わせて留年者の定員上の取扱いにおける配慮が求められたことを踏まえまして,入学定員に対する入学者の割合という形で現在の方式になっているという経緯がございます。
 また,丸3 ですけれども,基盤的経費の配分というところでございます。
 こちらも5ページ目を御覧いただければと思いますけれども,私学助成に関しましては,入学定員充足率が一定の基準を超えた場合に全額不交付とする措置がとられております。また,学部等ごとの収容定員に対する在籍学生数の割合に応じた私学助成の増減調整も併せて実施されております。
 また,国立大学法人運営費交付金につきましては,各学部の定員超過率が一定基準以上になった場合に,超過した学生数の授業料収入相当額を国庫に返納するという形で措置がとられております。
 また,丸4 ,その他の財政支援というところでございますけれども,大学教育再生戦略推進費や修学支援新制度において,入学定員や収容定員に基づく対応がとられているという状況でございます。
 続きまして,2つ目の丸,社会状況の急激は変化,こちら,先ほども御説明した内容とかぶりますけれども,Society5.0や社会のDX化,グローバル化が進展するとともに,人口減少下にある我が国社会におきまして,社会の変化に対応するとともに,新たな社会変革を促していく人材を育成する必要が生じております。
 こうした状況を踏まえまして,まず1つ目の網かけの部分ですけれども,現在,定員管理については,それぞれの政策手段に各々の管理の仕組みがとられているが,それぞれの関係は合理的なものとなっているか。また,大学や社会に対して分かりやすい制度となっているか。
 また,社会が加速度的に変化する中にあって,大学の自主性・自律性を生かした取組を促すため,定員管理の弾力化・柔軟化についてどう考えるか。例えば,入学定員ベースから収容定員ベースに,また,単年度から複数年度での管理,学部学科単位から大学単位への管理というような見直しが考えられるのではないかというふうに考えてございます。
 以降は参考資料でございまして,例えば,6ページ目から7ページ目にかけては,大学設置基準上の定員の規定の変遷に関して紹介しているものでございます。
 8ページ目に関しては,今も御紹介いたしましたけれども,設置認可審査における取扱い,私学助成,国立大学法人運営費交付金における定員管理の仕組みに関して御説明している資料でございます。
 9ページ目と10ページに関して御覧ください。これは質保証の仕組みや設置認可上の取扱いに関して,それぞれ入学定員と収容定員,どの観点で見ているのかというものをマトリックスにして整理をしたものでございます。
 まず質保証システムという観点でございますと,大学設置基準においては,原則としては,右側,教育にふさわしい環境確保のために,在籍学生数を収容定員に基づき適正に管理するということになってございます。また,収容定員に応じ,専任教員数や校地校舎の面積等をそれぞれ算定しているという現状があります。
 一方で,入学定員に関しましては,入学定員を設けるときには,入学定員及び編入学定員を明示するということが規定されております。
 続きまして,認可・届出に関して,こちらは収容定員に基づいて届出等の措置がとられております。
 続きまして,情報公表ですけれども,大学が情報公表すべき事項といたしまして,入学者数の公表とともに,収容定員及び在学する学生の数を公表という,入学定員,収容定員,どちらにもかかるものが公表することになってございます。
 また,認証評価におきましては,各認証評価機関が定める評価基準によって異なっておりますけれども,定員管理の状況について確認するということになっております。
 続きまして,設置認可上の取扱いですけれども,大学設置認可に関しては,先ほど御紹介いたしましたとおり,学部単位の平均入学定員超過率が一定値以上の場合には認可しないという措置がとられております。
 また,設置計画履行状況等調査ですけれども,一定以上の入学定員の未充足又は超過があれば改善を要求するという仕組みになってございます。
 また,財政支援に関しましては,入学定員,収容定員,それぞれに基づいた措置がとられていると。
 また,経営指導に関しても,同様に入学定員,収容定員に基づいたそれぞれの措置がとられているという状況でございます。
 以降,参考資料となりますので,御覧いただければと思います。
 事務局からの説明は以上でございます。御審議のほど,よろしくお願い申し上げます。

【吉岡部会長】  ありがとうございました。
 結構複雑な話でございます。歴史的な変遷も今説明いただきました。
 この後,少し時間を取りまして,大学における定員管理をどのように考えるかということについて,自由に御発言いただければと思います。時間の問題がございますが,40分ぐらいそのような時間を取れると思います。次回のときには,少しその点をまとめていくというふうにさせていただきたいと思います。
 では,御意見を頂ければと思いますが,米澤委員,手を挙げていらっしゃいますか。

【米澤委員】  手短にさせていただきます。
 さっきちょっと発言した趣旨のとおりですけれども,全体的な流れは大まかによく分かって,この中で,特に収容定員の話と,それから,大学全体でというのは,現実的には非常によく分かるところですけれども,論旨の立て方が質保証なのかなという感じがします。
 具体的には,論点1というのは,まじめに考えると,一番は当然教育環境の確保で,これは分かりやすいのですが,2つ目の丸の丸1 ,丸2 ,丸3 は,いずれもどっちかと言えばファンディングの話をしているような感じがするんですね。つまり,日本として育成すべき人材があって,それに対してどうファンディングを行うのか。あるいは,社会の関係に対してどういうふうに支援するのか。それから,急激な変化に対して,どういう人材が必要だから,どういうような形でそれを準備するのかということですね。
 今度,論点2に行った場合も,実は,かなりのところがマーケット的な話が半分入っていて,例えば,8ページ目の議論はよく出てくるところですけれど,定員管理でぎちぎちにだんだんやっていますが,普通に考えれば,これはマーケットのコントロールだと思います。つまり,放っておけば定員超過,要するに,供給超過になってしまうところを,定員をこういうふうに少しずつコントロールすればある程度緩和できるということは,誰もが想像する範囲のことだと思います。
 そういうようなことをかなり正直に議論していいのかというようなことが1つで,その上で,先ほど杉谷先生から出たフィージビリティというか,実行可能性を考えた場合に,私は,1つは,2ページ目にある教育環境の確保というところに,質保証であるならば,きちんと議論の焦点を置いた上で,ほかのところは必ずしも質保証の問題ではないというか,もうちょっと幅広い話だということを認めた上で議論した方がいいのではないかというのが1つの提案です。
 その上で,私どもの東北大学の大野英男総長がかなり推しているのですけれども,例えば,留学生定員というのを内数にするのか外数にするのかというのは,かなり議論があるところで,ここでの意図は,諸外国を見た場合に,特に学部の定員を考えた場合に,基本的には自分たちの国民,あるいは在留する市民が教育をする機会をきちんと確保するための財政づけとその収容力の確保という観点と,それから先に,より卓越した人材,あるいは,教育サービスの輸出でも構わないと思うのですが,そのために留学生にどんどん入ってきてほしい,あるいは,その先により幅広い形で,オンラインで提供したいというときの話というのは,場合によっては税金を使わないで,自己負担を原則に広げてもいいのではないかというような議論も当然あり得ると思います。むしろそっちの方が今主流になっていると思うのですが,その辺のところまで含めて話を広げてしまっていいのか,あるいは,そこは縦割りにして,もうそういう話はしないのかというところは,始めにはっきりさせておいた方がいいという感じがいたします。
 以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 今の点で言いますと,議論をそこで排除する必要はないと思っております。かなり細かい話になると,例えば,留学生というものをどういうふうに位置づけるかというのは,かなり大学によって違う。それから,財政上の問題というのはありまして,例えば,それは私学と国立大学と違ったりするところもあるので,幾つか考えなければならない点があるとは思いますけれども,しかし,その部分を考えずに議論をしても,その後,それこそフィージブルなものにはならないので,それは議論の中に入れていっていいのだろうと思っております。
 それでは,少し議論を進めたいと思います。
 米澤委員,どうぞ。

【米澤委員】  観点で,もう一つだけ。仮に大学全体で定員を管理するという話になった場合には,当然,教員の方はそんな簡単にはいかないので,中での教員の専門性の確保,それは別の論点として挙げる必要はあるかと思います。
 失礼いたしました。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 では,瀧澤委員,お願いします。

【瀧澤委員】  どうもありがとうございます。
 私,大学の個々の事情がよく分からないものですから,今の資料7-1の4ページ目の網かけの部分の問題提起の意味がよく分からない。正直言って。
 教育の質を高めるためには,教員1人当たりの学生の数というのは少ない方がいいわけですね。世界的に見ても,日本の大学の学生数というのは教員に対して多いと思います。それで,教育の質が担保されていない面がある。あるいは,先生方が非常にお忙しくて,研究の時間を削って教育に対峙(たいじ)しているというような現状ですので,やっぱり質を担保するためには,幾ら社会が急激に変化しても,定員管理というのをきちっとやらないと,教育の質という1点から見ると,こういう観点ですけれども,この2つの観点が,実際にはどういう問題が起きているのかを教えていただきたいという質問です。
 以上です。

【吉岡部会長】  事務局,何か付け加えることはありますか。

【堀家高等教育政策室長補佐】  失礼いたします。事務局でございます。
 資料の2ページ目のところですけれども,定員管理の意義として,一定程度の資質を有する者を一定程度の規模で社会に輩出するというところの必要性ということの御質問かなと理解いたしましたけれども,1つとしては,定員の未充足の状況というところがあると思ってございます。
 一般的には,今,瀧澤先生おっしゃっていただきましたとおり,定員が未充足の状況というものは,教員1人当たりの学生数が少なくて済むという意味では,教育環境としては望ましいという見方もある一方で,18歳人口が減少している中において,多くの大学が設置されていて,その中で定員未充足に陥っている大学も多く存在していると。そうした中において,定員未充足というのは,教育環境という意味では良いことだと捉えることになるのですけれども,果たしてそれで良いのかという問題意識がございまして,大学が果たすべき使命として,社会との間で約束した人材をきちんと育成していかなければならない,そうしたところを定員管理の1つの意義として設けてはどうかという趣旨で記載させていただいたところでございます。

【瀧澤委員】  ありがとうございます。
 今2ページの網かけのことで御説明いただいたと思うのですが,質問は,4ページの社会状況の急激な変化のところの網かけについて質問させていただいていました。未充足の問題も今分かりまして,ありがとうございました。
 4ページの方はいかがでしょうか。

【堀家高等教育政策室長補佐】  失礼いたしました。4ページのところの社会状況が変化しているというところでございますけれども,社会の変化に応じて,より柔軟に学部等の改組を行い,社会のニーズに応じた教育研究を学生に対して提供していくことが必要ではないのかと。そうした観点から,現在行われている定員管理の仕組み,それは設置基準上だけではなくて,設置認可審査や,各種のファンディングにおける定員管理の仕組みが,そうした大学の自律的といいますか,先導的な取組を実施するに当たって,何か律速になっていることがあるのではないのかと。もしそうしたものがあるのであれば,大学の創意工夫をより促すという観点から,定員管理の見直しが何か考えられないのかという観点で記載させていただいているものになります。

【吉岡部会長】  ちょっと分かりにくいかもしれません。定員管理が,今,実際の設置基準等のところで問題になっているのは,例えば,新しい学部をつくろうとするときに,既存の学部のところで大きく定員がオーバーしていたりすると,新しい学部をつくることができない仕組みになっている。それは,例えば,個々の授業で何人規模がいいかとかという,そういう問題とは別に,今のところは,それぞれの大学の入学定員の管理,それから,もう一つの考え方は,大学全体の管理という考え方が一方にあるわけですが,現在のところは,入学定員を基礎にして,そのような規制をかけているわけです。
 それは,放っておくとどんどん学生が増えていってしまって,教育が希薄になっていく可能性があるというのが,多分基本的な考え方だと思います。今ここでの課題として出てきているのは,今申し上げたように,新しい学部をつくったり,学部の改編を行ったりするときに,設置基準上の規制が足手まといといいますか,新しい試みを阻害することになっているという意見がある。そのことが,ここのところでちょっと議論になって,論点として挙げられている背景です。大学人でないと,大学の中にいないと分かりにくいことかもしれませんが,ここでこの論点が拾い上げられているのは,そういう背景があります。
 一方で,授業の質とか教育の質という点で言うと,おっしゃるとおり,教員と学生の比率というのは,1人当たりの教員が少ない方がいいと言えると思うのですが。ただ,その辺のところは,多分,今の考え方では,それぞれの大学で基本的に自分たちが考える,ちゃんと教育がやれるかどうか,そこは大学に任せるというのが基本にあるだろうと思います。工夫は各大学でせよと。
 ただ,それだけですと,逆に言うと,ほったらかしになってしまうので,そのことをどう担保していくかということで,例えば,学生数と教員数とか,教員の仕組みとかということをできるだけ公表していくべきだという,そういう議論が,それと結びついた形で展開している。そういうことだろうと思います。全部お話しできているとは思いませんが。

【瀧澤委員】  ありがとうございます。

【吉岡部会長】  濱中委員,お願いします。

【濱中委員】  今の瀧澤委員のお話とかなり重なる質問ですので,手短に。
 「教育にふさわしい環境の確保のための定員管理」というような一文が最初のページの方にありますが,やはり「教育の環境確保」と「人の数」というものをかけ合わせたときに大事になってくるのは,ST比だという見方もできるような気がします。
 ちょっと極端な話を申し上げますと,同じように定員管理をされているというお墨付きがあるところでも,ST比が40や50といったところと,10や20といったところとでは,教育の環境があまりに違います。
 ただ,「じゃあ,教育の環境確保のためにST比をこの基準値以下にしてください」ということもできませんから,もし,「教育の環境確保」を「人の数」という側面から行うのであれば,定員でもST比でもない,少人数の授業の確保をどうしているかといったものが切り口になるかどうかわかりませんが,いずれにしても別の基準を入れる必要があるように思います。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 では,川嶋委員,お願いいたします。

【川嶋委員】  川嶋です。2点お話しさせていただきたいと思います。
 1点目は,定員管理の問題については,これまでの大学分科会においても,現在の学部とか学科に定員を配分するという組織中心の制度では,先ほど部会長がおっしゃっていましたけれども,新しい教育ニーズが出てきたときに,それこそ柔軟・迅速に対応できないという問題意識が共有されてきたと思います。別の言い方をすると,学位プログラム化という観点から,改めて大学設置基準を作り直すべきだという御意見がずっと第何期にもわたって出ていたわけです。したがって,この定員管理の問題は,是非,先ほど御指摘にあった4枚目のところにあるように,社会からのニーズにどのように柔軟に対応できる,かつ,質保証した形で大学の教育プログラムを作っていくのかという観点からの迅速な検討が必要だと思います。
 そういう意味では,学部から大学管理定員にするというのも,大学の裁量でやり繰りできるという1つの方策かもしれませんけれども,一方で,先ほど出ていましたけれども,担当する大学教員の専門性をどう保証していくのかとか,今も濱中委員からありましたST比をどう考えるのかとか,具体や細部では様々な大きな課題があるかと思うのですが,そういう方向性での議論がこれまで続いていたという,これまでの議論のおさらいが1点。
 2つ目は,私が関係している大学入試の在り方に関する検討会議で指摘が多くの委員からあり,是非中教審にも伝えて検討してほしいということでした。それは,我が国の大学入試の課題として,1点刻みの入試からの脱却が必要だと様々なところで議論されてきましたが,一番大きな足かせになっているのは,入学定員ではないかと指摘されてきました。特に最近は厳格な定員管理が求められていて,先ほどから御説明にもあったように,入学定員の一定の割合を超えると新しい学部・学科の設置が認められないなどのサンクションが課されます。そうすると,定員が100名の場合には,1番から100番まで順番をつけざるを得ない。そのため,1点どころか,0.1点とか極端な場合は0.001点の差で合否が分かれるということも起きています。是非定員の在り方を考えていただきたいという御要望が多くの関係者から出ております。
 ただ,先ほど学位プログラム化のときに申し上げたように,教育の質保証の観点からは,単に大学の定員を柔軟化するだけではなく,教育の質の保証を厳格に行い,大学教育の出口の管理と合わせて議論することが不可欠で,それなくしては,1点刻みの入試から脱却する方法はないと今時点では考えております。入学定員の在り方も,是非この部会での検討の課題にも入れていただきたいということでございます。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 それでは,日比谷委員,お願いします。

【日比谷委員】  ありがとうございます。
 前半の話,定員管理のみにかかわらず,全体のことに関わることになりますけれど,時間も余りございませんので,その発言をしたいと思います。
 先ほど土屋委員からお話が出ましたが,冒頭御紹介がありましたとおり,私は今般,教育再生実行会議の下に設けられました高等教育ワーキンググループのメンバーになりまして,大変率直に申しまして,中教審の様々な分科会や,特別委員会とか,いろいろございますけれども,それとの議論の在り方の違いというものにかなり衝撃を受けました。
 どこが違うかというと,1つは,先ほどおっしゃったとおりですが,非常に具体性がある。意見発表,私もしましたけれども,大変にしっかりしたデータを示して主張するというようなことが多く,それから,書きぶりも,当初は,これ,提言案にまとめるまでに随分議論いたしましたけれども,結構抽象的なものとか,それから,ちょっとはっきり言ってしまいますが,中教審関連の文書ですと,「何々することが望まれる」とか「必要である」というような終わり方のものがたくさん並んでいたのですが,「もっと明確に優先順位をつけるべきである」,「メリハリをつけるべきである」という発言が相次ぎまして,最終的に今御覧になっているものは,かなりそっちの方に行ったと思うんです。
 それで,今日は定員管理の話をしていますけれども,この後,先ほど御覧になったとおり,いろいろなことについて質保証のシステムという観点から議論していくわけですけれども,やっぱりそれなりの具体性と優先順位付けというのを,この会議では是非今回は目指したいものだと痛感しております。具体については,またそれぞれの回に申し上げますけれども,全体的なこととして,是非そのことを申し上げておきたいと思います。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 では,小林委員,お願いします。

【小林委員】  ありがとうございます。
 先ほど御説明いただいた資料7-1の5ページ目のところに,過去の収容定員等の経緯が参考で示されていたのですけれども,その中の丸2 のところの設置認可審査における定員管理の2ポツのところ,制度創設当初は,収容定員に対する在学者の割合で算定されていたが,「21世紀答申」において厳格な成績評価と合わせて留年者の定員上の取扱いにおける配慮が求められたことから入学定員に対する入学者の割合で算定する方式へと変更ということが書かれています。
 この配慮というのはすごくあやふやな表現です。今後は厳格な成績評価であるとか,先日の教育再生実行会議の第十二次提言にも厳格な卒業認定という言葉がありましたので,やはり質保証という観点から,ここは私たちは逃れられない点なのではないかなと思います。厳格な成績評価の部分を我々はどう定義して,それを定員管理とどう結びつけていくのかという1つの論点はきちんと示さなければいけないのではないかなと思いました。これが,先ほどの第十二次提言の卒業時期や入学の柔軟性・柔軟化というところにもつながってくるのだと思います。その辺をきちんと議論する必要があるのではないかなと感じたところです。
 以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 すみません,手を挙げた順番に御指名できておりませんが,次は吉見委員,お願いします。

【吉見委員】  ありがとうございます。
 自分の意見を言う前に,結論的な立場を申し上げておけば,私自身は,先ほど事務局から話があった定員管理の弾力化・柔軟化,すなわち,入学定員ベースから収容定員ベースにすること,単年度から複数年度での管理にすること,学部・学科単位から大学単位の管理にすること,これらの弾力化自体には賛成です。
 ただ,その手前でかなり考えておくべきというか,議論しておくべきことがあると思っています。初回ですので,少し原理的なことを話させていただければ,やっぱり定員とは何なのかということをはっきりさせておく必要がある。グランドデザイン答申で,学修者本位の大学教育に移行すると言ったことは,ある種のパラダイムチェンジを目指していると思います。そうだとすると,学修者本位の教育というときに,定員とは一体何なのかということが問われます。単純化すれば,定員とは学修者の数になりますが,問題はその学修者はどこからどこまでなのか,その数はどう数えるのかが問題なのです。
 言葉を換えれば,一方で,我々はここで質保証の問題を議論するわけですけれども,質保証の裏側にあるのは,それぞれの大学のリソースです。リソースと質保証の関係を成り立たせるところに定員,つまり学修者の数の問題が出てくると思います。
 では,そのリソースとは何かというと,これまでの議論で言えば,もちろん教員の数がありますが,同時に数だけではなく,教員の質もあると思います。それから,それ以上に議論されていなくて非常に重要なのは,教員の時間の問題があります。教員が教育に割ける時間がどうなっているのか。つまり,リソースとしての教員の問題は,単純化すれば教員の数と質と,それから教員の時間の問題,この3つを考える必要がある。
 施設の問題というのは,オンラインになってきますと,通信環境とか,いろいろ出てくる。これらも,たしかにリソースの一部ですね。ただ,もう一方で,学生の側にもリソースの問題がやっぱりあるわけですね。これは,もちろん通信環境や学習環境のこともありますが,ある意味でそれ以上に学びに割ける時間の問題がある。
 そうすると,学生側のリソースの問題として,学びに割ける時間と通信環境,生活条件など,教員側のリソースの問題として,教員の数と質と時間,それに環境諸条件,これらの主要なリソースを質保証につないでいくときに,定員という概念はどう再定義され得るのかということを考える必要があると思います。ところが,定員をすでに所与の概念として議論を始めてしまうと,結論はもう分かっちゃうみたいな話になり,一番難しく重要なポイントがバイパスされてしまうのですね。そうではなくて,学修者本位の大学教育において,一体定員って何なのかということを議論の中ではっきりさせる必要がまずあるし,これとリソースとつなぐ連立方程式をはっきりさせなければいけない。そうすれば,おのずと定員管理の問題の答えはかなり自動的に出てくると私は思います。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 長谷川委員が先ほどから手を挙げていらして,すみません,遅くなってしまいました。お願いします。

【長谷川委員】  ありがとうございます。
 まず冒頭,資料5-4の産学協議会の資料について,これは,経団連の資料と御紹介いただいたのですが,実際には,経団連と国立大学協会,私立大学団体連合会,公立大学協会の代表と,ほかの主要大学のトップの皆様で構成する産学協議会で作成した報告書でございますので,産学で作成した報告書ということでございます。
 今回の報告書では,ポストコロナにおける大学教育の在り方について,DXの進展やニューノーマルを踏まえると,いわゆる対面とリモート授業を組み合わせたハイブリッド型教育が主流化していく,常態化していく,これはもう不可逆的であるということで産学が合意をいたしました。ですので,大学設置基準の在り方についても,基本的にはハイブリッド型教育を前提に考えるということだと考えています。まだ産学協議会では,結論は出ておらず,継続して議論をしておりますが,中長期的に検討すべき課題として,現在の設置基準における対面授業を前提とした授業の概念,時間数,単位の考え方,それから,国内外の大学との連携推進に向けた課題,そして,この定員管理のあり方は見直すべきということが指摘されています。
 これまでに,産学が既に合意した内容といたしましては,先ほど説明がございましたが,学部単位の入学定員から大学単位の収容定員で管理すること,それから,単年度ではなくて複数年度の平均を見ることということです。
 また,そもそも収容定員そのもの,今,御意見もございましたが,学生数で管理をするということの意義や必要性についても,ハイブリッド型教育を前提にする場合,抜本的に考え直す必要があるのではないかということも議論しております。
 また定員管理については,今後,推進が望まれる文理融合による学部の垣根を越えた多様な教育プログラムですとか,オンラインを活用した複数の大学による共同講座の開設といったことを可能とするような,より柔軟なものにしていくべきという方向で議論を進めているところです。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 では,飯吉委員,その後に谷本委員,お願いいたします。飯吉委員,お願いします。

【飯吉委員】  ありがとうございます。
 先ほど吉見委員が言われた,「根本的に定員について考えよう」ということと「学修者本位の教育」という点から,定員とは何かというところですけれども。
 まず,そもそも学部や学科をどれだけ柔軟に素早く変えられるかというのは,あくまでも教育機関側の建て付けに合わせた既存の定員の枠組みを踏まえての考え方だと思います。その一方で教育再生実行会議や本部会で,マイクロクレデンシャルの話などが出ており,先ほど米澤委員が言われていた「留学生の内数・外数」のような話とも関連しますが,マイクロクレデンシャルを利用して,例えば,もともと正規には入学していない人たちを定員の10倍ぐらいの数でMOOC等の受講を通じて競わせ,修了した人たちをさらに選抜し正規の課程の内数に入れていくという仕組みが作られています。このように,大学や大学院の正規の課程に入学していない人たちが高等教育に入ってきているということは,定員的には一体どのように考えればいいのか。
 また元来,教育機関・教育環境として,しっかりと責任を持って面倒を見られる学生数というのが定員だと思うのですが,この辺も,オンラインを利用した教育がより一般的になってくれば,かなり柔軟に考えられるのではないのかと思います。既存の定員の考え方は,それはそれでリアルのキャンパスベースの大学ということで考えれば,もちろん維持していく必要があります。ただ,その中で柔軟性を考えるというのもよく分かるのですが,今までとは違った形で,新たに付け加えて考えていかなければいけないところも出てくるのではないのかと思います。既存の定員の扱いをどうするかという話だけに終始してしまうと,「学修者本位の教育」という観点から,より柔軟に時間・空間等について考え,より柔軟に高等教育を受けられるようにするという可能性が死んでしまう気がします。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 では,谷本委員,その後,大森委員,それから,前田委員というふうに発言をお願いいたします。

【谷本委員】  今しがた,飯吉委員がおっしゃった事に重なり,付け加えのようになるかと思います。
 入学定員の考え方,収容定員の考え方で,入学定員を超える数の学生が入ってくるという状態では,限られた教育リソースの中で,適切な教育が行われる環境を担保するということが難しくなります。国際交流はとても大切だと思うのですが,今回のコロナ禍で,派遣も受け入れも中止となりました。私どもの短期大学では,卒業までに6人に1人ぐらいが海外で8週間から4か月の語学研修に行っております。今回,海外に留学する予定の学生たちが海外には行かないで日本に残りました。併設の4年生大学を含めますと,かなりの学生が海外に出ておりましたけれども,今回はコロナ禍で,その学生たちが海外の授業をオンラインで受講をしたということですね。
 教育の中身で,留学をした学生たちは海外の大学からオンラインで指導を受けたわけですけれども,本学に来るはずだった留学生は,日本からオンラインで指導しておりました。そうなってきますと,実際に入学定員があり,収容定員もあるのですけれども,学生の流動性ですね。1,000人ぐらい出ていき,数百人ぐらいが入ってくる。その学生の動きというのが毎年物理的にあったわけですけれども,それがなくても,オンラインでこれまでのような教育が実践できたという事です。
 この経験をもって,ウイズ・コロナの在り方の中で,どういうふうに今後教育の質を考えたらよいのでしょう。日本の大学で勉強を希望する外国人向けの授業,あるいは,日本人の学生が日本にいながら受講できる海外の授業の質や内容を,どのように担保していくのかという観点が必要になってくるかなと思います。
 つまり,責任をもって指導できる学生数を定員だと考えると,オンラインでの教育環境において,留学に参加する学生の物理的な流動性と,オンラインで海外から受講する学生,そしてオンラインで海外の授業を受講する学生の数をどのように考えるのか。その場合の,教育の質,その単位の認定といったところの観点を含めて議論していく必要があると感じました。
 以上です。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 では,大森委員,お願いいたします。

【大森委員】  ありがとうございます。
 私は3点ですけれども,まだかみ砕けていない部分があって,定員の学部単位から大学単位へというのは,大学を運営している側(がわ)からすると,運営の柔軟性という意味ではすごくいいなというのを思いますけれども,例えば,ある学部は定員が50%しか埋まっていなくて,ある学部は150%になっているけど,大学全体としては100%だからいいみたいなことで本当にいいのかというところですね。そこはもう議論が決着しているのかどうか。 やっぱり1つの単位は,さっき川嶋先生がおっしゃったように,学位プログラムだと思う。たまたま学位プログラムと学部がこれまでは一体だったので,学部単位ということが1つあったと思うのですが,それは学位プログラムに変わってもいいような気はしているのですけれども,そういう意味で,学修成果を可視化して質を保証していこうというときの単位が学位プログラム毎という考え方を本当に捨てちゃっていいのかどうかというのが,まだ私の中ではしっくりきていないなというのが1つです。
 どうしても定員に対して教員数というのが,まだ私の中にはこびりついている既成概念なので,そこの関係でいったときに,本当に学位の質保証というところとつながるのかどうか。大学単位で,教員をあちこちに移動させられるのだったら,十分あり得るのかなというのが1つ。
 もう一つは,ST比という話よりも授業規模という話というお話があったと思います。そこに私は賛同していて,ST比が小さくても,教員の担当授業は少なくていい,1個の授業は多いということだとすると,ちょっとそれは違うだろうし,これは実はオンラインに関連していて,オンラインだったら,1,000人の学生でも一気に教えられるよねという話かというと,やっぱり質保証のためには,双方向性を担保した学びということを考えると,1人の先生が教えられる範囲ってどうしても決まってくると思う。レポートを添削して1,000人に返せるのかみたいなことになってくると思うので,授業規模というのは非常に重要な考え方になると思っています。
 最後に,留学生の問題とか,あるいは,科目履修生のような正規ではない社会人学生,つまり,学生とは何かという定義を多分今回見直す必要が出てくる可能性があって,それに関しては,大学の多様性によって,それこそ東北大学さんであれば,日本人学生がたくさん入れるようにしてあげたいという思いはよく分かります。でも,一方で,例えば,地元の社会人を受け入れるときに,科目履修生として受け入れるぐらいしか地方のリカレントはあり得ないときに,それをたくさん入れても何のプラスにもならないみたいなところでリカレントが進まないというような部分もあったりして,その辺の学生とは何かというところは定義をする必要があるかもしれない。フルタイム学生だけなのかみたいな,そういうことですね。
 3点お話ししました。以上です。ありがとうございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 では,前田委員,お願いいたします。

【前田委員】  ありがとうございます。
 手を挙げてから,例えば,吉見委員の定員とは何かというようなお話もありましたし,学位プログラム制とか,ハイブリッドとか,いろいろな方がもっと大きい視点から話をされてきたので,ちょっと発言しにくくなってしまったのですけれども。
 私は大学評価に携わってきて,認証評価以前のことですが,現実的な話として,確信犯的に,片方の学科は人気がなくて,片方はあるから,学部全体としては定員管理ができているように見えるので,ずっとバランスの取れないままにしてきたという大学も現実にありました。それは駄目ですと言っても,認証評価になる前でしたら,「分かっていますよ。でも直しません」というようなお返事を頂いた大学もありました。
 この定員管理だけで,また全体というふうに戻していくと,さっき大森委員もおっしゃったように,ある程度きめ細かい確認というのは必要なのではないかと思うのが1点です。
 もう一つは,ST比の話ですけれども,ST比も非常に大事だと思うのですが,私はやはり常々思っているのは,前期のときにも申し上げましたが,設置基準で必要な教員数というのは,定員が大きくなればなるほど,それほど教員を置かなくてもいいという立てつけになっています。その場合,卒業に責任を持つ教員というのが学生に対してどのぐらいいるのかも重要と考えます。学位プログラムだったら,きちんと把握されると思うのですが,従来のような学部・学科制の大学も多いので,卒業研究とか,キャップストーンのようなことをやって,この学生は卒業させていいというようなことに責任を持てる教員と学生の比率というのが案外大事なのではないかなと以前から思っておりまして,これはST比でも出てきにくいものかもしれないと思っています。単位を積み上げれば自動的に卒業できるという大学もあるのかもしれないですけれども,やはり最後のところで仕上がりを見る,責任を持って見るということができるような体制になるということも重要ではないかなと考えました。
 以上でございます。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 いろいろ御意見が出て,これをどうやってまとめていったらいいのかとは思いますが。
私も,教員数ということを考えたときに,どのぐらいの教員の数がいいのか,あるいは,それに合わせて学生数をどう考えればいいのかということが,例えば,ST比という言い方をした場合でも,例えば,大学全体でST比を測るという考え方,基本的にはそういうところがある。何でそういうふうに考えるかというと,もともと教員全体が学生全体の面倒を見ているという発想が多分背景にあるだろうと思います。
 教育効果ということで言えば,個々の授業のST比の方が重要だと思います。例えば,科目によって,大人数でもやれる科目,あるいは,大人数でTAを置くことによって効率的にいく科目,あるいは,ゼミのように一定数の,あんまり少なくてはこれも駄目ですけれども,例えば20人ぐらいが適正な授業というのがあって,それは多分その都度考えなくてはいけない。ただ,これは,例えば設置基準でやるべきことではないような気がします。そこはやはり大学がきちんと教育のシステムとして考えていくべきことでしょう。
 その上で,にもかかわらず,学生数であるとか教員数というものをどのように考えるか。学部単位で考えるのか,大学単位で考えるのか。大学単位で考える場合,おっしゃるとおり,学部によるばらつきをならしてしまって抜け道ができてしまうという側面もあります。それから,学部によってキャンパスが違った場合に,学生の面倒の見方は全部変わってくるので,キャンパスごとの考え方というのも多分関わってくる。いろいろな問題が関わってくると,今御意見を伺っていて思いました。
 その場合,先ほど吉見委員からお話あったように,定員というものをどういうことで考えていったらいいのか。それが授業の効率であるとか,知識がきちんと伝達できるとかということ,あるいは,学生がちゃんと育つのかという視点。
 それから,更に言うと,大学というのは授業だけで学生を育てているわけではなくて,いろいろな側面で社会教育をしているわけで,そういうところまで含めて大学を考えていかなくてはいけないのかどうかという,これ,結構複雑で,難しい問題だろうと思います。
 土屋委員,どうぞ。

【土屋委員】  今の議論と直接関係あるのですけど,定員の問題で,特に私立大学が一番シビアなのは,定員を1名でも超えてしまうと経常費補助金が削減される,あるいは,新学部設置が認められないとか,いろんなことが実は関わっている。つまり,入学定員の問題で,結局,各大学は入試のときにものすごく神経を使って,それこそ入試のコントロールができないような学部がいれば,学長は多分にらみつけてでも,コントロールできないことに対して非難をすると思う。なぜなら,コントロールできないと,正に経常費補助金が削られ,大学がやりたいと思っているようなことができなくなってしまうので,そこのところが,つまり,入学定員の問題と,収容定員でもいいですが,入学定員の問題と文科省による私学に対する助成金とがリンクされているということが,やはり私は一番大きな問題だと思います。
 だから,私学としては,それを学部ごとにではなくて全体で評価してくれと,まず言いたいわけですよね。各学部でコントロールするのはとても大変なので,せめて大学全体の入学定員で,又は,そういう意味で,収容定員へ移行して評価してくれと。そうすれば,仮に一学部が入学定員を1名でも2名でもオーバーしたとしても,他学部で調整できれば,そこのところは何とかコントロールできるので,それは私学としては財政上非常にシビアな問題に直面しなくても済むわけですよね。だから,そういう意味で言うならば,まず入学定員と私学経常費補助金等がリンクされている状況をまずはやめてほしいと。その上で議論はしていただきたいと思う。
 しかし,同時に,やはり入学定員に関して言うならば,全学で評価してほしいというのは,もう大学そのものが学部ごとの教育というよりは,各学部が連携した教育,あるいは,学年横断的な教育へ移行しているのに,ここだけ学部単位で発想するのも,これもやめてほしい。そういう幾つかの問題もあって,こういうふうに産学協議会においても,あるいは,教育再生実行会議においても,入学定員の見直しを学部単位から大学単位にしてほしいと言っているので,ここのところは,私としては,やはり一歩踏み出して,ここは何とかその橋頭堡(きょうとうほ)をきちっと確立した上で議論していただきたいなと思っております。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 事務局から何か,今,全体の議論の中でお答えになることとか,感想とかあればと思いますけれども,いかがでしょうか。

【堀家高等教育政策室長補佐】  先生方,多岐にわたる,また本質的な御指摘,大変ありがとうございました。頂きました御指摘も踏まえまして,定員管理の在り方,どのように見直すことが可能なのか,少しまた事務的に整理をさせていただいて,御議論いただくという形にできればと思ってございます。ありがとうございました。

【吉岡部会長】  ありがとうございます。
 今,土屋委員がおっしゃっていた,本当に1人ずれていると,いろいろな形で財政的にも影響するというのは,特にここ数年間それが非常に厳しくなったというのは,各私学がとても苦労していることです。その部分は,多分,制度の問題と政策の問題と分けられる部分もあるのではないかとも思いますけれども,その辺はこれから議論の中で,場合によっては提言のような形ができるのかもしれないと思っております。
 いろいろな問題が出てまいりましたけれども,一応これでそろそろ時間ということもありますので,何か付け加えて御発言はございますか。よろしいでしょうか。
 それでは,次回は,定員管理につきましては,今日の議論を踏まえて,少しまとめていきたいと考えております。もしも何か付け加えることがありましたら,メール等で事務局の方に送っていただければと思います。よろしいでしょうか。
 それでは,以上をもちまして本日の主たる議題は終了ということにさせていただきたいと思います。
 今後の開催日程等について,事務局から説明をお願いいたします。

【堀家高等教育政策室長補佐】  事務局でございます。
 本日は,活発な御議論いただきまして,誠にありがとうございました。
 次回の質保証システム部会は,7月7日水曜日16時から18時を予定しております。開催方法・場所等につきましては,追って御連絡いたします。
 なお,本日時間の都合上,御発言できなかった内容等につきましては,事務局宛てにメール等にて御連絡いただければと思います。
 どうもありがとうございました。

【吉岡部会長】  ありがとうございました。
 今ありましたように,先ほども言いましたけれども,何かありましたらメールで送っていただければと思います。対面の議論ができないというちょっと不便なところは,終わった後でいろいろ調整ができないとか,言い忘れたことが伝えられないこと等ありますので,その点も含めて,こういうことを考えてほしいということがあったら,事務局の方に送っていただければと思います。
 以上でございます。どうもありがとうございました。本日の会議,これにて終了させていただきたいと思います。どうも失礼いたします。

―― 了 ――
 

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