質保証システム部会(第5回) 議事録

1.日時

令和2年11月25日(水曜日)10時~12時

2.場所

WEB会議

3.議題

 (テーマ)質保証システム全体を通じた考え方、「質が保証されている大学」について
   (1) 質保証の国際通用性について有識者ヒアリング
   (2) 意見交換
   (3) その他

4.出席者

委員

(部会長)吉岡知哉部会長
(委員) 永田恭介委員
(臨時委員)浅田尚紀,飯吉透,杉谷祐美子,瀧澤美奈子,谷本和子,
土屋恵一郎,長谷川知子,濱中淳子,宮内孝久の各委員
(専門委員)大森昭生,小林浩,林隆之,前田早苗,吉見俊哉の各委員

 

文部科学省

(事務局)淵上高等教育企画課長,森下大学設置室長 他

オブザーバー

東北大学国際戦略室副室長・教授 米澤彰純氏

5.議事録

【吉岡部会長】 おはようございます。所定の時刻になりましたので,第5回質保証システム部会を開催いたします。
本日は,新型コロナウイルス感染症対策のため,Webexによるウェブ会議として開催し,その様子をYouTubeライブ配信にて公開いたします。本日はヒアリングのために東北大学国際戦略室副室長,教授の米澤彰純先生に御出席いただいております。米澤先生,どうぞよろしくお願いいたします。

【米澤教授】 どうぞよろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】 では,議事に参りたいと思います。まず,事務局から連絡事項をお願いいたします。

【奥井高等教育企画課課長補佐】 本日,ウェブ会議及びライブ配信を円滑に行う観点から,御発言の際,挙手マークのボタンを押して御発言いただき,また御発言の後には,再度,挙手マークのボタンを押して表示を消していただきますようお願いいたします。また発言時以外はマイクをミュートにしていただくなど御配慮いただけますと有り難く存じます。いろいろと不都合等あるかもしれませんが,御協力のほどよろしくお願いいたします。
また,会議資料につきましては,議事次第のとおり,昨日メールにてお送りしておりますので,御確認いただければと思います。以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
それでは議事に入ります。本日は,質保証システム全体を通じた考え方,「質が保証されている大学」というテーマでヒアリングを行い,その後,各委員から御発言いただきます。事前に御提出いただいた意見もございますので,それも踏まえて意見交換をさせていただきたいと思います。
ヒアリングに入る前に,事務局より資料1,2,6について説明があります。

【淵上高等教育企画課長】 高等教育企画課の淵上でございます。
資料1を御覧ください。今期の大学分科会質保証システム部会の進め方(案)でございます。これまで4回,御審議いただいております。1回目,2回目は委員同士の自由討議,3回目,4回目は大学関係団体からのヒアリングという形で進めさせていただきました。5回目以降,今期中の進め方についての案でございます。今期中の部会においては実質的な議論に入っていくための前提作りといたしまして,「質保証システム全体を通じた考え方」や「質が保証されている大学」について,どのような視点で見ていくべきかという共通認識を図るべく,多角的な観点から有識者ヒアリングを行って,具体的な質保証システムの見直しに入る土台を形成してはいかがか,ということでございます。第5回,第6回,第7回の3回を有識者の方からの意見発表を踏まえた御審議の会にしてはいかがかと考えております。
今回は質保証の国際通用性について有識者ヒアリングということで2名の先生から御発表いただいた上で,委員の皆さまによる御議論を頂いてはどうかと考えております。また,第6回につきましては,学生の観点,学修成果の保証や質保証を担う人材について有識者ヒアリングの上,御議論頂ければと考えております。さらに,第7回は大学における質保証の取組について,内部質保証の実態などについてのヒアリング及び御議論といったことを考えております。
そして,2ページ目でございますが,年明け以降,第11期に入ってまいりますけれども,具体的な設置基準,認証評価といった具体のシステムの見直しについて議論を深めていってはいかがかと考えております。
続きまして,資料2でございます。本日,御審議いただきます大きな2つのテーマ,「質保証システムの全体像」,「質が保証されている大学とは」に関しまして,これまでの本部会での御議論をまとめたものでございます。
1ページ目は,「質保証システムの全体像」として,質保証システムの存在意義,これは設置基準による事前チェックと認証評価を含めた事後的なシステムが基本的な枠組みであるということ。あるいは,各大学の個別の質と日本の高等教育の質全体を確保していく,このために質保証システムはあるのだといった御意見。
また,「トータルシステムとしての質保証システム」ということで,事前規制から事後チェックという大きな流れの中で,社会の変化に柔軟に対応できる大学の多様化が進んできた一方,劣悪大学は自然淘汰(とうた)されるという市場原理が考えられていたが,これが十分に機能していないのではないかといった御意見。
さらに,三つ目の丸は,設置基準や設置認可審査のプロセスは単なる必要条件であって,内部質保証を含めたトータルで質保証の問題を十分条件として考えていくことが必要ではないかといった御意見でございます。
次のページに参りまして,設置基準で規定されるものに関して,時代に合わないものを考え直していくことが必要だといった御意見。今後求められるものについて,設置基準に盛り込むのか,あるいは認証評価などで見るのかの仕分を考えていく必要があるだろうということでございます。
一つ飛ばしまして,リスクベースの質保証システムを取り入れていく必要があること。質保証に問題のある大学はしっかり確認をして,問題のない大学は認証評価を簡素化するといったコンセプトが必要になってくるのではないかといった御意見でございます。
また,次の丸で,大学の自己責任で情報公表をより共通化,義務化していく方向が考えられるといった御意見。今日の御発表にもありますけれども,質保証システムの国際通用性という観点での御意見も頂いております。
2ページ目の下からは,「質が保証されている大学」についての根本的な部分をまずしっかりと議論した上で個別具体論に入り,また全体の議論に戻っていくことが必要ではないかという御意見です。
3ページ目からは,「学修成果による質保証」ということで,現在の学生数,教員数,施設面積,設備といった外形的な基準により大学教育の質保証を行うという考え方から,学生が何を身に付けたのか,何ができるようになったのかという学修成果による質保証へと変わっていくべきではないかといった御意見がございます。
また「授業内容・授業方法」として,細切れの授業科目を多く薄く学ぶという体制から,深く学ぶという体制に大学教育を変えていくことが必要だという御意見。この他,「多様化の中での質保証」についての御意見や,「質保証を担う人材」として,大学,教職員レベルまで考え方を浸透させていく,あるいは業務を遂行できる人材を育成することが必要といった御意見がございます。
最後の4ページ目でございます。「質保証への学生の参画」ということで,学生も大学の重要な構成員として捉えて,内部質保証の中に組み込んでいくことも重要ではないかといった御意見。「情報公表」として,情報発信を一層充実させていく必要がある。また,情報公表の質保証も必要だといった御意見を頂いているところでございます。
続きまして,資料6でございます。これは,その他諸会議の動向について御参考までに配布しております。
資料6の1ページ目は,前回までにも御報告いたしておりますけれども,教育再生実行会議の動向でございます。2ページ目以降に高等教育ワーキング・グループの構成員,ワーキング・グループの主な論点というものがございまして,6ページ目からが,前回,第4回に配られました教育再生実行会議におけるこれまでの意見の概要でございます。ニューノーマルにおける大学の姿に関するようなことが幾つかの視点で論じられておりますし,大きな2つ目の論点としまして,12ページからはグローバルな目線での新たな高等教育の戦略ということで,留学生の問題や学事歴の問題が議論されているところでございます。内容の詳しい御説明は割愛いたしますが,また御参照いただければと思います。これまで4回の議論が行われているところでございます。
それから,21ページからは別の会議でございますが,「国立大学法人の戦略的な経営実現に向けて」ということで,この9月に中間取りまとめが行われております。新しい時代における国立大学法人と国との関係をどう形作るかということで,「自律的契約関係」という言葉で表しておりますが,新たな国との関係を作っていくということで,目標や評価の在り方あるいは様々な規制緩和の在り方が議論されているところでございます。資料の説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】 ありがとうございました。今の御説明につきまして,何か御意見,御質問等ありますか。かなり多岐にわたっておりますが,テーマが少しずつ絞られているとも言えると思います。いかがでしょうか。資料1はこのような方向で進めるということで,今年度はヒアリングと討論を中心に問題を深めていき,11期以降にそれを更に絞っていくという格好になるだろうと思います。資料2のテーマの分け方等についても,今後議論の中で,例えばこのようなテーマを取り出して議論した方がいいのではないかという御意見も出てくるかと思いますので,その場合は整理し直しつつ,先に進めていくということになると思います。いかがでしょうか。もしも今後の議論の中で戻ることがあれば,その都度,御発言いただければと思います。ありがとうございます。
それでは,ヒアリングに入りたいと思います。
最初に東北大学国際戦略室副室長の米澤彰純教授に御説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【米澤教授】 貴重な発言の機会をお与えいただきましてありがとうございます。私の役割はこの質保証部会でお話になっている内容についての一種のセカンドオピニオンを差し上げることかと感じております。私は基本的には1人の研究者として高等教育の国際的な動向をマクロに追っておりますので,その観点からお話をさせていただきます。ただ,同時に,私自身,現在の大学改革支援・学位授与機構の評価部門の立ち上げに関わったことがございますので,この質保証の仕組みが名誉はあるとしても,基本的にはその見返りとして金銭的なメリットとかがあるわけではなく,熱意やミッションみたいなものがなければ成り立たないことを理解しておりますし,国際的に見た場合にもそれが前提となっている話だと考えていただけたらと思います。
個人の立場で話しますけれども,私が今,勤めている東北大学では,先ほど御紹介がありました国立大学の戦略的な経営という観点から大学がどのような役割を果たし得るのかという議論をしており,総長の大野が発表した内容をここにお示しいたします。今まで大学が政府に対して説明責任を果たし,そこに例えば,質保証のための認証評価機関などが大学と政府との間に入るわけですが,その政府の背後に社会を想定していたわけです。このような考え方から,私立大学についてはもともと当たり前かもしれませんが,大学が直接学生,産業界や国際社会と関わっていって,一緒に価値を創造していくような方向性へと転換することを議論しているところでございます。
このような考えに立つと,国際的に見たときに産業界や学生が日本の大学をどのように考えているかということについて議論へとつながります。これについてはもちろん,国の文脈が相当違いますので,単純に比較するとミスリーディングになることは承知の上ですが,例えば,Times Higher Educationが現在,日本,アメリカ,ヨーロッパでそれぞれ国,地域ごとの教育を中心としたランキングを始めていて,その中で学生に対して共通の質問をしています。すると,もちろん,アメリカがポジティブに答える回答傾向があると思うのですが,基本的には日本の学生の満足度が低く見えてしまう。同じことは雇用者についてエマージングという会社がランキングのために調査をしているわけですけれども,この中でもアメリカ,イギリスに比べて,日本,韓国が,評価が低い。もちろん,日本と韓国は労働市場と大学との接続の在り方が違いますので,一緒くたに比較することは意味がないわけですけれども,このように見えてしまうという現実をお伝えしたいと思います。
その中で,私が今回,主張したい前半の部分は,大学と外部社会との質保証のロジックのずれをどのように考えるかということでございます。初めに,国際的通用性は何かということですが,私は,日本は政府も大学も外形的には比較的まじめに取り組んでいるのではないかと理解しております。これは,2005年にOECDとユネスコが出した国境を越えた教育の質保証についてのガイドラインを,10年後にOECDがフォローアップをし,それに日本政府が答えたものを更にアップデートをしたものをまとめたものですけれども,単純に言えば,そこで求められている様々な仕組みについて,日本政府はほぼ整えていると言うことができます。
また,国際的標準というものがあるのかについては,答えから言えば,ないのだと思います。そのようなものは共有されておらず,例えばヨーロッパの場合は,ヨーロッパの高等教育圏を作る必要があり,それなりにまとまったものがあるわけですし,国際標準にもっていきたいという彼らの考え方があるわけですが,アメリカは当然ながらアメリカを中心として国際的な秩序を作りたいと考えます。また,英国,オーストラリアのように高等教育のサービス輸出に関わっているところでは,また別の考え方があることになります。東南アジアに比べて東アジアは,そのASEAN+3するという形では関わっているわけですけれども,東アジア独自では地域高等教育圏ができている状態ではありませんので,どちらかというと国際的な認知そのものが自己目的化するようなところがあるのではないかということを感じるところでございます。
同時に,いろいろな形で産業界の方々,日本経済団体連合会の方もいらっしゃいますし,経済同友会の関係者の方もいらっしゃると思いますけれども,社会の中核的部分に関しては,就職,キャリア形成につながるルートが確立されていて,それが機能しているということがあり,それを内部から変革する動機付けが比較的弱いのではないかと感じております。
それに対して,政府,産業界,外部に接する高等教育機関の危機感というのは,例えば PEAKSでの会議などで博士課程の人材養成みたいなことが議論されているわけですが,かなりシリアスな話になってきているということも感じます。
それから, Covid-19の感染拡大による学習活動・生活の制約下で,学生の大学・高等教育の価値への見方は厳しさを増しているということがあります。
そのような中で,例えば,ユニバーサルに開かれた,職業志向の第三段階教育とか,国際的な環境での高度人材育成が求められる大学院・プロフェッショナル教育,あるいは,オンラインメディアによる学習・訓練サービスについては,どのように社会との相互信頼関係を作っていくのかが求められていると思います。
基本的に質保証部会での議論の中心は,主に卒業率の高い,一貫性のある学士課程教育とその改革促進を測定して,一種,一元的に直線的に考えて,中等教育との接続を点で考え,労働市場との接続を点で考える傾向があると思います。
ところが,これは荒井先生という方が入試選抜の中でよく使われている図ですけれども,例えば高大接続を考えた場合に,高校教育と大学教育では目的と深さが違って,その接合点の面のところで入試が行われているという議論があります。ただ,今,教育再生実行会議などで話されている個別最適化を考えた場合には,ここで面に留(とど)まらない深さがある,3Dの連携になってきている。すなわち,入学後の学びの転換教育,リメディアル教育,入学前の教育,さらにはアメリカ,オーストラリアなどで見られる,中等教育段階で高等教育相当の学習単位取得が前もって可能であるという仕組みの中で考える必要が出てきています。これは労働市場との関係でも同じように,最終的に価値観が違うところはあると思いますので,その中でメンバーシップ型からジョブ型へ,あるいはSociety5.0といった議論が出てきたときには,3Dで考えていく必要が出てきて,例えば,リカレント教育,キャリア教育,インターシップ等については,既にこの部会の中でも議論が出ていることは承知しております。
このような観点の中で私が後半で必要と思うところを4点述べますと,1点目が内部質保証システムの充実です。これに関しては,私が答えるよりも委員の皆さま方,それから,林委員の発表に譲りたいと思います。
2点目は飯吉委員が既にこの部会の中でたくさん議論をされておりますが,マイクロ・クレデンシャルあるいはオルタナティブ・クレデンシャルと言われている従来の学位などよりもはるかに小さな学習モジュール,これは日本では履修証明プログラムなどがあたると思いますが,その開発・普及・活用をいかに支援するかということでございます。これは,基本的には大学の中で,例えば,修士号でMBAのような専門的な知識を付けたいという場合,社会人にとって非常にハードルの高いものになっています。これは日本の労働市場の仕組みと伝統的に合わないということもありますし,最近働き方改革で少しゆとりが出るとしても,どうしても働きながら勉強することが難しいということはあります。これは世界的にも同じような傾向がありまして,より短いモジュールで必要なものを必要なときに学ぶことをやっていこうという考え方が広がってきています。これは,日本でも,履修証明プログラムを単位化する,あるいは論理的には職能団体や企業と連携し,それを職業能力証明書として位置付けることも制度化は進んできているわけですが,実態としてこれが利用されることが大事になってきます。
3点目は,日米を除く世界150か国以上で制度化されている「国家学位・資格枠組み」というものです。これは単純に言えば,今お話ししましたような学位と,医者なども含めた様々な資格を一つのフレームワークとして整理するプラットフォームを用意しようという話です。中身としてはこのような形で整理されているもので,日本でも何度も議論されていて,特に専修学校系の議論の中ではずっとできるべきだと議論がされているのですが,いろいろな形での省庁を超えた議論が必要でございますし,今のところ実現していません。ただ,この仕組みは単純に労働者の保護という問題ではなくて,産業側から見ても活用する価値があるのではないかといった議論をしたいと感じております。
4点目として,様々な学修・訓練やキャリアの情報を学修者,ワーカーが自らの学修・キャリア開発のために活用できるようなEポートフォリオのデジタル・プラットフォームを準備して,国際的に接続して活用することを促進することが世界的に今進んでおります。国際宣言として「グローニンゲン宣言」というのがあるのですけれども,これに準拠した形で学修履歴証明の国際化を意識したデジタル化が進んでおりまして,これは東洋大学の芦沢先生という方が今,リーダーになって実証実験を国際基督教大学などが入って進めていっていらっしゃると伺っております。このような中に,例えばオーストラリア,中国等が国としてこの仕組みに乗っていっておりまして,これを先ほどのNQFと合わせて整理した上で,そこに学位を位置付ける,あるいはマイクロ・クレデンシャルを位置付けることがシステム的にできると,全てを大学・高等教育機関側で抱え込むのではなくて,産業界,職業団体などの主体的な取組と連携して個別最適な学修・キャリアを国際的に質保証することで,多様な人材の集まる多様な大学を実現する質保証システムという,この部会が目指しているところにつながっていくのではないかと思います。これを考えたときに,それぞれの国は当然ながらそれぞれ固有の仕組みがあって,かなり複雑な文脈でありますので,どの国のモデルを持ってくればいいという単純な話ではないのですが,ここでは中身としてそれぞれの質保証システムが優れているというよりは,全体としての見えやすさというところでニュージーランドの事例を御紹介したいと思います。
ニュージーランドの特徴は,単純に言えば政治的な問題として,まず,地政学的にはオーストラリアの隣で,人の流動というものが世界的にも,地域の中でも非常に盛んで,ニュージーランドで勉強した人がオーストラリアで働くということが普通に行われる社会であります。
もう一点は,新自由主義的な考え方と社会民主主義的な考え方でしょうか。労働者保護みたいな考え方が交互に政権交代の中で影響を与えているので,学修者と産業双方のニーズを重視したものになっている。更に人口が少ないことがありますので,わりと簡潔な仕組みの中で全体像が見えやすくなっております。このような中で国際的な動向を意識した上で早い時期にこのNQFを導入し,マイクロ・クレデンシャルを組み入れているわけですけれども,ここでの最大の論点は大学をどう扱うかということです。NQFは端的に言えば,職業資格との関係が強いですので,どちらかといえば,日本でいえば専門職大学,専修学校のようなタイプの機関が中心となって議論され,これに厚生労働省が関わってくるような仕組みなのだと思います。そのような意味でいえば,大学は,NQFに参加はしているけれども,ある意味で距離を置いた存在でありますし,また,ある意味でそれが国によって直接介入を受けるよりは,大学が何らかの関与しているバッファーとなっている機関が質保証をやるべきだという話になるのだと思います。これはニュージーランドに関しては,学長会議というものが委託する形でCUAPという組織を作ってやっている。このようにして大学の質保証における実質的な主体性が尊重されているということがあります。
最後に,これが日本で認証評価に当たるわけですけれども,日本と同じようにINQAAHEの世界的な質保証ネットワークの「グッドプラクティスのためのガイドライン」に準拠した形でのオーディット,第三者評価が行われているという仕組みになっています。
以上で大体のお話を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。

【吉岡部会長】 米澤先生,どうもありがとうございました。非常に興味深いお話でした。
続きまして,林委員にお話を伺いたいと思います。御質問等はその後にまとめて2人の発表の後にさせていただきます。 では,林委員,お願いいたします。

【林委員】 では,私から「国際通用性ある質保証のための論点」ということでお話ししたいと思います。「先に結論のようなもの」というページを作っていますが,私は認証評価機関におりましたので,そのときに第3サイクルの認証評価を評価機関の中でも国際的な動向を見ながら検討してきたわけですけれども,そのときの議論の内容,そのときに課題として分かっていてもすぐには日本では導入できないところもありましたので,そのようなところを御報告したいと思っています。結論としては,国際的な状況並びに日本の現状を考えると,以下が必要ではないかと私は思っております。
一つは,将来的には認証評価を「リスクベース・アプローチ」へ移行していく。これまでも質保証の能力が「2極化」しているという議論は中央教育審議会の中でもありましたけれども,質保証ができていない大学にはしっかりと外部からチェックして,自分でできている大学は自らの教学マネジメントで向上を進めてもらうという体制にもっていく。
ただし,そのリスクベース・アプローチに移行する前提として,内部質保証,大学の中の質保証が国際水準で実現されている必要があります。そのためには,後ほど御説明しますが,プログラム単位の内部質保証を充実することを日本でもう少し進める必要があるということです。先ほどの米澤先生の御説明にあったNQFがない中で最低限の水準をいかに保証するか。大学は多様ですので,多様性に合わせた水準をいかに向上させていくか。このあたりがポイントとなりますが,何らかの形で外部の視点,学術面,専門職業面等からそのようなものをどう入れていくか。そして,将来社会・産業に必要な人材形成を進めるための外部からの助言をどう入れていくかというところがポイントかと思っています。それから,学生参画を日本の中の,日本的な在り方の下でどう実施していくかというところもポイントかと思っています。そして,国としてのインフラ整備,特に学修成果の可視化のようなものをどうインフラ整備していくかがポイントかと思っています。
結論はこのようなところですので進めたいと思いますが,まず,「内部質保証」とは,です。これは学位授与機構の用語集から持ってきていますが,大学の教育研究活動の質や学生の学修成果の水準等を自ら継続的に保証することを指す。後ほどの議論も出てきますが,教育活動,教育の提供の質という側面と学修成果の水準という2つの側面を考えていくことが重要だということです。
そもそも質という概念についていろいろな考え方があるというのは,質保証の議論が始まったときからあるものです。Harveyたちの1990年代の質保証の概念が五つあるので,それを踏まえて質保証の考え方と測定の考え方を私なりに整理してみました。そうすると,例えば,完全性,教育プロセスが基準を満たしているかであるとか,あるいは大学それぞれのミッションに適合したような教育活動が行われているかという,教育プロセスの基準遵守やPDCAサイクルに基づく目的達成というのが,恐らくこれまでの認証評価,一巡目,二巡目で焦点が置かれてきたところであろうと思います。一方で欠けているのは,各学位を授与するに足るアウトプット水準が実現されているかや,顧客としての学生の目的の達成ということで顧客満足度あるいは学生の学習成長実感のようなもの,それから,費用に見合う価値のような教育の効果,効率性の話。そして,学生のエンパワーメント,学生参画や学生自身による学びの振り返りのようなものも入りますけれども,このような質の測定が日本ではこれまで十分には議論されてこなかったのではないかと考えています。
国際通用性のある質保証の議論をするときに,取りあえず今日の報告では,「諸外国で共通的に求められている事項を満たしている状態」を国際通用性のある状態と考えて,日本の状況を考えてみたいと思います。これ以降,先ほど米澤先生のところでもありましたが,欧州全体では質保証の共通的なガイドラインがありますので,それを確認した上で英国を事例にして説明をしていきたいと思います。
まず,欧州共通のガイドライン,ESGと呼ばれるガイドラインです。これを踏まえて各国の質保証機関がそれぞれに質保証,大学評価,認証評価の基準を作っていく形になりますが,その中で内部質保証としてどのようなものが必要かということが整理されています。2015年版では1から10までの項目が整理されていて,例えば,質保証の方針がちゃんと学内にあるか,学習資源があるか等がですが,第3サイクルの認証評価を検討したときに日本で弱いなと議論をしたのは,ここの三つになります。一つ目,二つ目が,この「プログラムの設計と承認」あるいは「プログラムの継続的点検及び定期的評価」ですが,学内で学位プログラムあるいは学位につながらなくても様々な教育プログラムについての点検をしっかりと行う,あるいは,新設するときにそれを承認するような仕組みを持っている。そのようなことが日本ではまだ質保証として十分に行われていないだろうと考えています。それから,「学生中心の学習,教授及び評価」ということで,学生が学習プロセスの構築に当たって積極的に関与するような体制が弱いということを第3サイクルの認証評価を考えるときには認識しておりました。
欧州全体の枠としてはそのようなところですが,特に英国の事例について見ていきたいと思います。
まず,冒頭でもリスクベース・アプローチに移行すべきではないかということを申し上げましたが,イギリスはリスクベース・アプローチに移行している一つの例になります。英国では教育評価を1992年より実施しておりますが,97年に専門評価機関ができて実施してきました。2018年からは「リスクベース・アプローチ」によって負担軽減を図っているという状況にあります。新規の登録時点では詳細な評価をするということで,後ほど説明しますが,「クオリティ・コード」と呼ばれているような評価基準に相当するものに適合しているかチェックされることがメインになります。
一方で,既に一度登録された大学は簡素なモニタリングをする。例えば,学生数,入学者数とか,このような「リード指標」と呼ばれるようなものがありますが,その指標に大きな変化がなければ,簡素なモニタリングを続ける。もし大きな変化があった場合は,登録要件,先ほどの「クオリティ・コード」の評価基準等に抵触するリスクが高まった可能性があるということで詳細な調査を行う。このような形で評価をパスしているようなしっかりとした質保証ができている大学は簡素な形でできるような状態になっている。
最初に登録されるための要件ですが,ここにあるように財政的な持続可能性であるとか,ガバナンスであるとか,そのようなものもあるのですが,このBとなっているところが教育の質や水準に関するところです。この中でも赤字になっているところについては,後ほど御説明しますQuality and Standards Reviewという,日本で言えば認証評価のような質保証を外部から受けることになっております。それがこの英国質保証機構(QAA)が行っているものですが,後ほど示しますクオリティ・コードを満たしているかを評価して,その結果をOffice for Studentsに報告するという形になっています。
このページ以降,クオリティ・コード,イギリスの大学評価の基準を御説明するのですが,それプラス,国際通用性ある質保証ということですので,このイギリスの大学評価の基準に日本の大学がパスすることができそうかどうかを検討してみました。大学評価コンソーシアム,大学の評価担当の方々にオンラインで集まっていただいて,どのような項目が日本の大学はパスできなさそうかというところを検討いただいたということをざっと御紹介していきたいと思います。
クオリティ・コードですが,冒頭で申し上げましたように,教育の水準と,それから,教育を提供する側(がわ)の質という2つの側面があります。まず,水準に関しては,期待事項,中核的活動とあって,この中核的活動にパスしていないといけないのですが,コースの学術的な水準が国の資格枠組み,NQFが典型ですが,NQFの枠組みを,要件を満たす。あるいは,高等教育業界で認められた水準に対応しているということが,まずは大きな期待事項になります。その上でチェック項目,評価される項目としては,NQFに合致している,あるいは学修成果がほかのイギリス内の高等教育機関で達成されるような水準に匹敵したものになっている。それから,ほかの機関と連携した教育を提供している場合は,それがきちんと信頼できるものになっている。そして外部の専門家の意見をちゃんと利用している。その四つの評価項目になります。
それから,提供する質については非常に細かいことがいろいろ書いてあるのですが,コースが入念に設計されて,質の高い学術的経験を提供し,学生の成果が信頼できる方法によって測定できている,あるいは支援がされているということで,実際に確認されるのは入学者選抜システムがどうか,質の高いコースが設定されているか,教員を十分有しているか,施設・設備はどうか。そして,学生と積極的に連携をしているか。また,不平・不服申立ての対処,研究環境,ほかの機関と連携している場合の注釈。そして,学生支援という項目になっています。
先ほど申し上げたように水準が四つあって,質が九つの項目があるのですが,それごとにどんな根拠資料を提出することが必要か。そして,それを満たしている状態というのはどのような状態であるのかというのが大学評価の基準に説明されています。赤字にしているところが,恐らく日本の大学は受けるとパスできないだろうというところになっています。
まず,国の資格枠組みに合致したものになっているか。日本ではNQFがそもそもないので,そのようなことが説明できないのですが,それプラス学外試験,要は学外の人が,その水準がちゃんと学位に足るものであるということをチェックするような体制が十分に存在していないので,そのようなものを大学が提出することは難しい。あるいは,専門職団体による評価というのがプログラムごとに多数行われているのですが,そのようなものも日本では一部の医学とか工学を除いて行われていませんので,専門ごとに提出することも難しい状態になっています。
それから,ほかの機関と匹敵する水準にあるということをきちんと確認するような計画があるかというところもかなり厳しい。このあたりは今の上の話と同じになります。
四つ目も繰り返しになりますが,外部の専門家の意見を利用することになりますので,外部の専門家の専門知識の使用を求めて成績評価と評点付けのプロセスを説明する,学内規則があるか,外部の専門家を活用する計画があるか,そのようなものからのレポートであるとか,そのような根拠資料というのは恐らく日本の大学が出すのは難しいと思います。
先ほどプログラムごとに第三者機関,専門職団体による評価を受けていれば,そのレポートを出すと申し上げました。イギリスの統計データを見てみます。プログラムごとに授与している学位でBachelor of Artsからずっと並んでいます。そのようなコース,その学位を提供している学部レベルのコースが英国の中にどのくらいあるか。そして,何らかの第三者機関,専門職団体のような第三者機関から認定を受けている,評価を受けているコースがどのくらいあるかというのをここに示しています。ここに割合がありますけれども,人文系は低いのですが,工学,法学,50-60%,それから,サイエンス,理学も40とか20%。そして,これはイギリスのマスターですので,学部3年プラス1年でマスターが取れる形になっていますが,そのようなものについても70%ぐらいのプログラムが第三者から認定を受けているということで,内部質保証重視という状況がありながらも,一方で専門職団体からの評価は,積極的に大学は受けている状況にあるというのがイギリスの状態になります。
それから,今までのところが水準の話でしたが,質のところについて日本がパスできるか,です。恐らく入学選抜システムは問題がないだろうと思います。それから,質の高いコースを設計するというのは,質の高いコースを設計するための計画というのが抽象的ですが,出しにくいというところはあるかと思います。この辺,赤いところは,専門職団体の評価ですので今までと同じですが,残っているのがこのQ5で,学生参画,学生と積極的に連携するということで,そのための学内規則はきちんとあるか,あるいは学生参画,学生との連携の計画があるか。そして,学生参画がなされたことによって大学の学習,教育は改善しているような事例がどのようなものがあるかと。このような根拠を出すというのが,まだ日本の大学はなかなか厳しいのではないかと考えております。
今のようなものが評価基準ですが,イギリスの場合は更にその下に評価基準ではないのですが,このAdvice and Guidanceという形で,どのような取組が望ましいかというのを説明するような附属の文書が多数作られております。例えば,先ほどの学生参画というものについても,評価基準ではないのですが,このような活動が望ましいということで,例えば,学内の意思決定プロセスの中に学生を参画させる,あるいは,学生参画に関する合意書を大学の学生団体と大学の間で結ぶ。また,学生参画のKPIを開発する。学生を対等な立場で委員会に入れる,学生調査を学生代表と相談して設計する等が望ましい取組だと文書で設定されています。
それに伴って各大学,例えば,マンチェスター大学ですと理事会に学生が1人入っているであるとか,大学独自のアンケート調査を学生とともに設計しているであるとか,内部質保証の取組の中に学生が参画しているであるとか,そのような情報がしっかりと公表されている状態になっています。
最後に今,内部質保証の話をしましたが,それプラス,国がインフラとして整備するようなところとして,国際通用性という点から指摘する必要があるところは,全国調査になります。イギリスの場合ですと,「在学生への全国共通学生調査」というのが行われていて,最終学年の学生31万人が回答しているような状態がある。
それから,同じように卒業生に関する全国調査もあって,卒業後15か月たったところで,現在,50%が回答していて,進路状況や現在の給与額のようなものがしっかりとデータとして取れている。
また,今申し上げたようなアンケート調査だけではなくて大学や国が保有しているような納税のデータであるとか,学生個人の教育歴のデータなどから,卒業後にどのくらいの給与水準にあるかといった情報も分かるようになっています。このようなデータを使いながら,TEFと呼ばれるような認証評価ではないのですけれども,また別の教育評価もしっかりと行われていますし,そのような情報が学生の大学選択の情報として大学間を比較できるような形で提供されていますし,各大学のウェブサイトにもバナーとして学生満足度がどのくらいであるとか,共通した形での情報提供がなされている形になっています。
ということで,結論としては,申し上げましたようにリスクベース・アプローチを移行するのが日本で必要ではないか。イギリスだけを御紹介しましたが,一部の国では内部質保証が不十分な場合にはプログラム単位の外部質保証を外からチェックをしているような仕組みを取っている国もありますので,めりはりをどう設計していくのかがポイントかと思っています。
また,内部質保証を国際水準で実施ということで,日本も内部質保証重視にシフトしているのですが,プログラム単位の質保証をどう充実させていくか。今日御紹介しませんでしたが,例えば,博士課程なら博士課程で,博士学位とはどのようなものかという文書があって, Vitaeという機関は博士学位を持っている人はどのような能力を持っているかというフレームワークの開発を行っており,そのようなものが参照されながらチェックされている状態がありますので,そのようなQualificationのフレームワークをどう整備していくのかというところがあります。そして,外部の目を入れていく。日本の場合は評価というかたい形ではなくて,類似した大学間でチェックをする,学会の中で各分野の教育を検討する,あるいは産業界の人がアドバイザーのような形で入るといったソフトな仕組みも考えられるのではないかと思っています。
そして,学生参画ですが,日本の場合は学生団体が未成熟ですので,必ずしも学生代表という形ではなくても学生への意見聴取であるとか,学生を巻き込んだFDのようなものが考えられるかと思います。
最後に国としてのインフラ整備ということで,先ほどイギリスの例で申し上げたような調査を日本でも進めていくことが必要かと考えられます。以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございました。
それでは,ただいまのお二人の御発表に関しまして,質疑応答,意見交換を行いたいと思います。御発言のある方は挙手ボタンを押していただければと思います。よろしくお願いいたします。小林委員,どうぞ。

【小林委員】 米澤先生,林委員,どうもありがとうございました。とても勉強になりました。米澤先生に1点,林委員に1点,御質問があります。
米澤先生にお聞きしたいのですが,NQFが今,専修学校では盛んに議論がされているのですけれども,大学ではまだ議論が進んでいないというところがあると思います。NQFについては,ヨーロッパではかなり進んでいるのですが,東アジアではなかなかうまく機能していないという話があります。日本でも以前,内閣府がキャリア段位制度というのを作ったのですけれども,ほとんど機能せずに終わってしまったというところがあると思います。日本は職能団体ではなくて企業がメンバーシップ型,ポテンシャル型で採用していくという独特な就業形態があると思うのですが,そうした中で,日本でNQFみたいなものをきちんと機能させていくには何が必要なのか,どうしたら成立し得るのかというのが1点目です。
林委員には今,イギリスのお話をしていただきましたが,クオリティ・コードというのを国が作って,水準と質を見ていくということですが,日本でいうと認証評価団体が幾つかあって,それがそれぞれに基準を若干ずれているようなものの中で評価しているような気がするのです。日本の,国としての水準みたいなものを作れるとか,あるいは認証機関の整合性を取る,統一化していくというのは可能なのでしょうか。この2点,お話を伺えればと思います。よろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】 では,米澤先生からお願いいたします。

【米澤教授】 ありがとうございます。小林委員がおっしゃっていたように,東アジアはヨーロッパあるいはオセアニアほど明確な形ではNQFができていないというのが一般的な議論だと思います。ただ,少なくとも韓国,中国はNQFを構築していると言っていて,その実態を見るとかなり新しいものであるし,定着していないところもあるけれども,少なくともグローサリーには載っている形にはなっていますので,そこは意思が必要なのかと思います。日本でどうやっていくのかを考えるときにあえてニュージーランドを出したのは,次のような理由があります。NQFの中に資格を作っていくわけですけれども,それを担う団体として大学,かなりポリテクニックに当たるところ以外に産業側が用意した訓練機関とか,職能団体が用意した訓練プログラムが入っているのですね。恐らく今,日本にとって客観的に見て一番大事なのは,働き方改革をしていく中で,あるいはジョブ型を強調していく中で,今まで企業内教育あるいはその延長線上にあるオフ・ザ・ジョブ・トレーニングで培われてきたものに関して,ある程度外部化していく。それを競争的な形でいろいろなプロバイダーが,これには大学が入ってもいいと思いますけれども,担っていくといったプラットフォームを作ることが大事だと感じております。資料の中で日本経済団体連合会の主張を見たわけですが,恐らくそのような話なのかと思って伺っていたところでございます。そのような意味では,産業側が乗りやすい形でこのプラットフォームとしてのNQFという議論をできるかどうかが鍵になってくると思います。すなわち,これは単純な職能団体と大学との関係ではなくて,もう少し広いレベルでの産業政策として考えることができるかどうかが,次のステップになるかと思います。以上です。

【林委員】 御質問ありがとうございます。
まず,複数の評価機関があることについて,例えばドイツやオランダはそのような状態にあります。そうすると,評価機関に対する評価やある程度の共通的な枠組みみたいなものはそのような国ではある形になっています。日本はどうかと言うと,日本も細目省令で評価機関が何を見なければいけないかという項目は決まっているので,そのような意味では共通性があると思うのです。そのようなところで例えば,内部質保証を見なければいけないという話になっているのですが,もう一個下りて内部質保証はどのようなものであって,どこをどのように見なければいけないかというところについては十分な共通認識はないのではないかと思っています。ばらつきがあることに関しては,質のばらつきみたいな,恐らく共通的な内部質保証とは何かといった共通的な概念を作っていけばいいと思うのですけれども,学習水準のばらつきに関しては,日本の大学は多様ですので,先ほど議論にあったような最低水準というものを学士だけではなくて修士,博士,最低水準の学位を授与するに足るレベルというのはどのようなものかというのは設定することは必要ですが,それ以上のところは同じレベルの大学同士で,例えば,相互に確認し合うであるとか,相互にコンソーシアム的に水準を上げていくとか,そのような取組をきっと日本はやっていかないといけないのかと思っております。以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございました。
それでは,浅田委員,濱中委員に御発言いただいて,まとめてお二人から御回答いただいきたいと思います。では,浅田委員からお願いいたします。

【浅田委員】 浅田でございます。二人の先生,御講演ありがとうございます。私からは林委員に2点,質問があります。
1点目は,スライド2ページの学修成果の可視化。もう一つは,9ページの簡素なモニタリング。その2点です。
まず,1点目ですけれども,教学マネジメント指針の中でも,学修成果,教育成果の把握や可視化が難しいということが言われています。網羅的に把握することはできないし,必ずしも可視化できるわけではないという点が指摘されています。スライドでは,国としてインフラ整備ということで,学修成果の可視化が指摘されていますが,このインフラ整備,みんなが共通で使える可視化手法について,可視化の現状と今後どうなるかということを教えていただければと思います。
もう一つは,リスクベース・アプローチで,簡素なモニタリングをするというこの取り組み方は非常にいいと私も思うのですけれども,日本の認証評価に置き換えると,7年間あると学長が交代している可能性がある。学長が交代すると執行部が代わり,その間に教員や職員なども変動があったりする。それから,学部学科も再編あるいはカリキュラムの変更等でいろいろ変化が生じる可能性があり,特に最近の国際性を考えた時代には活発に動きがあります。簡素なモニタリングというのは,一度質が保証され,その後,数字が特に動かない限りは保証されているという考え方だと思うのですけれども,7年間に様々な変動が起こっているときのチェック機能はあるのでしょうか。特に学長が交代すると大学の方針なども大きく変更されたりします。学長選考基準は多くの大学で公開されていますが,そこに内部質保証を重視する人という項目は見たことがありません。大学が変化していくということについて,簡素なモニタリングはどのように機能していくか,そのあたりを教えていただければと思っています。よろしくお願いします。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
それでは,濱中委員,お願いいたします。

【濱中委員】 濱中でございます。米澤先生,林委員,興味深い話をどうもありがとうございました。
林委員に1点,外部の目についての質問があります。林委員の外部の目に関する指摘をうかがいながら,私自身が大学入試センターに勤務していた時代を思いだしました。センター試験は確かに外部の点検,評価というものをふんだんの取り入れており,それによってあれだけの質が担保されていたところがございます。外部の目は大事だと思いながらも,お聞きしたいのは,外部の「誰」が言及するのかということによって,その指摘の意味付けは変わってくるはずで,その点についてのことです。日本でも大学教育に関しては,これまで産業界の方等がいろいろ御発言されてきました。しかし,大学には大学のロジックがあるといった感じで,なかなかかみ合わないところがあったのもたしかです。例えば,この29ページに「類似した大学間やコンソーシアム」だったり,「学会等」とか「産業界」だったり,そのようなことが書かれていますが,イギリスでの外部の目について,どのようなところがメインになって発言しているとか,外部の目の意見を採り入れることに関しての大学での抵抗というか受入れ感といいますか,そのあたりについての状況を教えていただきたいです。よろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】 それでは,瀧澤委員まで御発言いただいて,まとめてお二人からお答えいただければと思います。よろしくお願いします。

【瀧澤委員】 瀧澤です。お二人の先生方,たくさんいろいろなことを教えていただいてありがとうございます。国際的な状況ということで,伺いたいのですが,その前にNQFなど国際的に既にやられている優れた仕組みというの是非日本でも積極的に検討していただければいいと思うのです。逆に欧米諸国,19世紀以降,高等教育をすごく発展させてきた歴史があると思うのですけれども,今,国際的な状況が非常に急激に変化している中で彼らの中でも課題として認識されていることは何か是非教えていただきたいと思いました。以上です。お願いします。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
それでは,一旦ここで。まずは林委員から御発言いただければと思います。

【林委員】 分かりました。まず一つ目,学修成果の可視化ですが,イギリスでも様々に学修成果を可視化することに対する調査研究プロジェクトがあって,ただ,タイムズの記事によると,多くが失敗しているという批判も書かれているので,なかなか難しいというのはあると思います。今日,報告のところは,全国学生調査ということで持ってきました。皆さん御承知のように,日本でも学生に対するアンケート調査はどこの大学ももう既にほぼやっています。認証評価でも出てくるのですが,各大学みんなばらばらな形式でやっていますので,評価者が見たってそれがいいのかどうかというのはよく分からないのです。そうすると,海外のようにある程度共通したものを用いると,もちろん,そこには各個別大学の質問項目が追加で入ったってかまわないのですけれども,共通的なものを用いることによって評価者だけではなくて入学する学生などがちゃんと理解しやすいようなものとして作っていくことが必要ではないかということで,今日御説明を申し上げました。
二つ目の点ですが,リスクベースのところで大きく変わった場合にどうするかという話ですが,リスクベース・アプローチの発想は,大学自身がプログラム等の質保証ができるということで,例えば,新しくプログラムをつくったときに設置審査のようなものを学内でできているかということが確認されているわけです。ですので,大きく学部,学科との改組みたいなことをしたとして,学内にちゃんとそのような新しいプログラムを認証するような仕組みがあれば,それはある程度質が担保された状態であるということを考えることができると思います。ただ,そこで大きく学生数であるとか,いろいろな数字が変わっているようであれば,もしかしたらそれがうまく機能していないということでチェックが入るという発想だと思います。
それから,三つ目で外部の目というところですが,今日御説明したのは,基本的には評価基準が入っているのはプログラム単位のところで外部の目をどう入れるかという話で,そうなったときには一つはイギリス独特の方式ですが,外部試験員制度ということで,ほかの大学の同じ分野の先生が来て,例えば,テストの答案を見る,あるいは評価基準をチェックするなどして,学術的にチェックをするというのが一つです。それから,先ほど出てきました専門職団体のようなところがしっかりと評価をしているということで,そこで産業界の雇用側の視点が入ってきていて,そこで認証を受けているという状態があります。そのように教育内容については学術的あるいは専門職のところからの視点が入っているということで,それ自体が大きな混乱を招いていると言うことは,私は聞いていなくて,基本的には第三者機関評価を受けるのも大学が自分で評価を,プログラムは自分で評価を受けるわけですから,そのような意味では混乱があってはいけない。もしかしたら御質問はもっとトップレベルでの外部のアドバイザーをどう入れるかということかもしれませんが,私はそこについての知識はなく,お答えできかねます。瀧澤委員の今の議論は,米澤先生から御回答いただければと思います。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。
では,米澤先生,今の点について直接先生向けの御質問でない場合でも,それも含めて御発言いただければと思います。よろしくお願いします。

【米澤教授】 ありがとうございます。瀧澤委員がおっしゃることはごもっともで,今回の話を作る過程でマイクロ・クレデンシャルの話をしたのは,デジタル化が急速に進んでいることと関連しています。これは,コロナで加速されていますし,その前から進んでいた議論の中でも,「マイクロ・クレデンシャルはやっぱり大事だよね」という話が,例えば,OECDの議論とか,あるいは高等教育の専門家仲間の間でも出てきています。分かりやすく言えば,例えば,オンラインで授業をしたときに,1番問題になったのは,学生のインセンティブをどこまで保(たも)てるかということです。これは通信教育を体験されたことが一度でもある方はすぐ分かると思うのですけれども,対面でキャンパスにいるという状態とは異なり,いつでもスイッチを切れるという中でどうやって長い間一貫した教育ができるかが課題となります。そのときに逆の発想ができるわけで,短くコンパクトにユニットを作ってその中でやっていく,細切れのものを重ねていくという形のプログラム設計というものを考えるわけですね。このように,デジタル化が,教育における密接な教員個人と学生個人との関係に対してかなり大きな破壊をもたらすにもなるわけですので,そこへの抵抗感というのは,世界各国で同じように存在するのではないかと思います。あえてその上で,濱中委員の話につなげますと,私がこの話をするときに,飯吉委員と御相談する機会があったのです。そのときに飯吉委員からおっしゃっていたのは,恐らくアメリカでマイクロ・クレデンシャルというのが出ているのですけれども,企業側から作ったマイクロ・クレデンシャルと,大学側が作ったマイクロ・クレデンシャルというのは,最終的には分離しているような気がするということです。大学と産業とで価値観の違いは存在すると思うのですが,そのような中で,両者の違いを超えた何か共通のプラットフォームを作っていくことの必要性を国として感じるかどうかというのが,先ほど言ったNQFのところにつながっていくのではないかと感じております。以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。では,永田委員,よろしくお願いします。

【永田委員】 評価のレベルは,大学における個々の教育プログラムのレベルと大学全体のレベル,さらに,外部の第三者による統一的な評価があります。しかし,本日の資料と議論を聞いていると,それらの論点が交錯して議論されているのではないかと思います。例えば,企業を含む社会からの視点をどう入れるかについては,個々の大学による評価ではなく第三者の評価で統一的に見るような仕掛けを作らないといけないのではないかと思います。
次に,英国の事例紹介の中に学生調査について説明がありました。特にこれは国がやるべきことですけれども,英国は徹底的に実施していますが,我が国は決定的に足りていません。各大学が,卒業した学生の職業や収入を含め全てフォローアップをするというのはほとんど不可能です。これを英国は国として非常に徹底的にフォローアップしており,最終的に国のGDPの何%に大学の卒業生が関与しているかまで計算し尽くしているわけです。これは各大学でも各企業・団体でもできないことであり,正に国が方策を決定してやらなければいけないのではないでしょうか。これが教育のアウトプットとして非常に意味のある評価だと思います。
さらに,国際的な視野で,英国の例は非常に詳しく御説明いただきましたし,米澤先生からも御説明いただきました。私は大学基準協会でいろいろなアジアの大学団体と交渉をしており,先ほど中国・韓国の話題が出ましたけれども,両国はアチーブメント評価であり,どれだけ論文が出た,どれだけ学生が何々したかという観点です。日本及びアメリカの,あるいはタイやベトナムの内部質保証を元にした評価というのは,基本的には狙ったものに到達できる水準に環境が整備されているかをチェックするわけです。ですから,先ほど林委員がおっしゃったように,自分の大学に教学マネジメントシステムを持っていて,設置,アフターケア,認証評価のような機能を備えシステムが動いていることを見るのです。研究で言えば「ノーベル賞を獲(と)るぞ」と言ったときに,実際に獲(と)れるかどうかは問題にならないのと同じです。自分たちの目指す水準のための準備ができているかできていないかを調べているのがアメリカや日本やタイ,台湾などの評価システムだと思います。ですから,評価の視点をアチーブメントに置くのか,あるいはアチーブメントを得るための水準が確保されていることに置くのか,ということだと思うのです。この点は分けて考えた方がいいのではないかと思います。とにかく国が全学生のフォローアップ調査を20年,30年単位でやってほしいと思います。以上です。

【吉岡部会長】 お二人の先生方,ありがとうございました。今日のお話は非常に刺激的でした。私もお伺いしていて,それぞれの国が違ってもある種の共通的な重要性,大学ならこのようなことを考えなければいけないという取組についてはある種の共通性があるという気がいたしました。もちろん,お二人がそのように切り取ってくださったということがあると思います。
また,例えば,イギリスなどの大学の在り方と,日本の大学の在り方は歴史が違うし,日本の場合,国公私立という形態も違っているという,歴史的あるいは社会との関係が国によって非常に違う中で,どのように制度化されているものを日本に組み込んでいくかというのは,なかなか難しいと思いました。つまみ食いしないで,かつ,重要なシステムに乗せていくということを考えなければならないので,その辺りはもう少し勉強していかなければいけないと思います。濱中委員の御発言にもあったことですけれども,評価者というものがどのように組み立てられているのかが結構重要だということです。誰が評価するのかということで,それは裏から言うと,評価者に対する大学側の信頼みたいなもので,それをどのように評価する側(がわ)のシステムが組み立てられてきたのかということは関心を持ちました。それが分からないと日本にうまく入れられないかと。大学は外部から言われると,大学のことを分かっていないという反応をするわけですが,一方で大学基準協会もそうですけれども,ピアレビューのシステムとして歴史を作ってきているので,その点とのすり合わせを考えながら,我々の議論としては基準を作っていくという方向に結び付けていかなければならないと思いました。ということで,この点につきましてはまた少し議論を続けていきたいと思います。
それでは,次に本日のテーマである,質保証システム全体を通じた考え方,「質が保証されている大学」ということについて,意見交換をしていきたいと思います。今までの議論と重なる御意見ももちろん御発言いただいて構いません。事前に資料を提出されている方はそれについて触れていただくという形で結構ですので御発言をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。では,飯吉委員,お願いいたします。

【飯吉委員】 ありがとうございます。まず,今回の論点案として事前にお知らせいただいたトピックの一つである「事前チェックと事後チェックのバランス」についてですが,これまでの議論にもあったように,大学の質保証の「事後」に当たる部分については,「認証評価自体が目的化している」ということが大きな問題の一つかと思います。提案したいのは,「入学定員の弾力化と見直し」です。護送船団方式で学生を4年間で卒業させ続けていく中で,教育的な内部質保証がおざなりになりがちだと思いますので,個人的には入学枠を緩め,卒業要件のチェック,出口評価,審査等をよりしっかり行う必要があると考えます。大学で3ポリシーの策定等に携わっていると,最近感じられるのが,DPが矮小(わいしょう)化してきているのではないかということです。つまり,以前は,ディプロマ・ポリシーは割に壮大な,「世界に羽ばたける人材を」みたいなことを言っていたわけですが,「それは測定・検証することが難しいから,いずれそのようなものを大学として評価しなさいと言われたときに備えて,測定・検証できないものは外す」ということになりがちで,そうすると測定・検証できるものだけをディプロマ・ポリシーに入れていくことになります。極端に言えば,「単位を幾つ取得したか」のように数値的に確認可能なことに偏ることになります。ですから,大事なのは学修成果を可視化することと,授業レベルを超えて教育的な評価や質保証を包括的にしっかり行っていくことだと思います。例えば,科目や科目群で得られる知識・技能が,ディプロマ・ポリシーとしっかり連関しているのかどうか。今は,個々の授業の中での学修評価を行い,単位が取れる成績を取れればそれで完結,単位が幾つ取れたら学位が取得できるという考え方が中心だと思うのですが,ディプロマ・ポリシーと各科目や科目群がどのように紐(ひも)付いていて,ディプロマ・ポリシーが実質的にどのように評価されるのかということを,内部質保証として各大学が考えることは非常に大事だと思います。そのために,例えば,eポートフォリオのような,多様な学修成果のエビデンスを可視化・共有するための方法・仕組みは,今後より一層大事になっていくと考えます。これからは,より多くの人たちが複数の教育機関を跨(また)いで高等教育を受けていく時代になっていくと思いますし,オンライン授業をアラカルト的に受講していくこともできます。このような中で継続的に学修成果やその蓄積を可視化していくことが大事であり,今日,米澤先生にマイクロ・クレデンシャルのお話もしていただきましたが,履修証明等,その学修成果をよりポータブル(portable),ユーザブル(usable),ユースフル(useful)にすることが,特に社会と「人を育てる組織としての大学」との関わりにおいて,非常に大事になるのではないかと思います。以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。大森委員,よろしくお願いします。

【大森委員】 事前に提出していた資料に沿ってお話をしたいと思います。この議論が,「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)」(以下,「グランドデザイン答申」という。)が一つ大きなバックボーンにあることをもう1回確認しなければいけないと私は思っています。その中で言われている大きな柱の2つが,学修者本位ということと多様性の確保ということだったと思います。それでいくと,学修者本位ということで言えば,今,飯吉委員もおっしゃっていましたけれども,教学マネジメントがちゃんと確立されている。それに沿ってちゃんと改善がされているという事前事後のチェックは分かりやすい話かと思います。
一方で多様性というところがすごく今回強調されたわけで,私はずっと一貫して多様性ということをこの会議でも言っているのですけれども,学生とか教員とかも「多様な」ということが「グランドデザイン答申」で言われていて,そうするとその学生とか教員の定理みたいなものもこの質保証の中で,あるいは設置基準等の中でその多様性を担保できるようなことが必要になってくるのではないかと思います。だから,私が言うとどうしてもこれをもっと緩くしていく方向の議論になってしまうのですけれども,今後のこの大学の在り方を考えると必要ではないかと思っています。教育プログラムとか,ガバナンスに関しても,学部・学科などの設置や見直しがもっと柔軟にスピーディーにできるような状況をやっていかないと,この社会の動きとか,地域の人材ニーズの変化などに本当に地方大学が追い付いていかないです。また,大学の多様な強みを強化というのも「グランドデザイン答申」で書いていただいていますけれども,国際通用性が絶対必要な大学,研究大学はもちろん地域の中でどのような役割を果たしていくのかということが重要な大学等も,800大学ある大学の役割,役目というのは,余りにももう既に多様に機能分化しているので,かなり一律の部分のハードルはグッと下げていかないと駄目なのではないかと感じているということを申し上げたいと思います。以上です。

【吉岡部会長】 それでは,谷本委員,よろしくお願いいたします。

【谷本委員】 谷本です。大森委員のおっしゃったことにかなり重なるところが多いのですけれども,大学教育のユニバーサル化というのは,地方の大学や短期大学で進んでおります。学生の学ぶ目的も年齢層も,そして大学に至るまでの高等学校教育,単位制の高等学校や通信制の高等学校を卒業して入学してくる学生も増えております。そのような多様化した大学の中で,例えば,基準の中でリメディアルの教育を強化していくであるとか,教員も教育における取組を重視していくであるとか,その学修成果の可視化に至る,その前のところで入学した学生たちへのリメディアルやきちんとした高等教育の土俵に乗せていくような取組も考えていかなければいけない時期に入ってきているのではないかと思っております。その中で本日マイクロ・クレデンシャルのお話がありましたけれども,リメディアルの何らかの学力の補習であるとか,あるいは教科の補習であるとか,それをマイクロ・クレデンシャルのようなコースで補っていくこともありかとお話を伺って思いました。もちろん,産業界に出ていく,将来就職に関係するといったものと直結するような学位も必要ですけれども,何かしら大学でこれから高等教育を受けていく,Qualificationをきちんと付けてあげるような学生たちの学修者の目線に立ったような何かを準備できたらと思いました。私からは以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。では,長谷川委員,お願いいたします。

【長谷川委員】 ありがとうございます。既に御意見が出ているところと重なる部分が多いのですけれども,日本経済団体連合会でも大学改革をいろいろと議論しております。また「採用と大学教育に関する産学協議会」においても,大学設置基準についても議論しておりますので,それらの議論を踏まえて,質保証システム改革の視点というところで少し意見を述べさせていただきたいと思います。
まず,将来の大学の多様化,グローバル化,そしてオンライン化という,この三つの方向性に沿った質保証システムの見直しと改革が必要だと考えております。大学の多様化については言うまでもないですが,非常に多様な大学ということを考えますと,最初に林委員の御説明にもあったとおり,これは個人的な意見になりますけれども,大学の二極化を踏まえた「リスクベースのアプローチ」も必要なのではないかと思います。
また,グローバル化は産業界としては非常に強い問題意識を持っているところですが,学生の国際流動性を更に促進できるような,国際的な通用性を持つ学位という視点からの質保証システムの見直しが必要ではないかと思います。
さらに,三つ目のオンライン化ですけれども,これは産学協議会でもいろいろと議論しておりますが,産学で,意見が一致しているところとしては,大学教育のオンライン化と対面教育の両立,ハイブリッド化は,コロナが収束したとしても元には戻らない,不可逆的なものであって,そのようなハイブリッド教育を前提とした質保証システムを考える必要があると思います。
また,ハイブリッド教育を前提とすると,デジタル技術の変化のスピードが非常に速いことから,「VUCA」といった時代背景もございますが,時代の変化のスピードに対応し得る質保証の仕組みも必要ではないかと思っております。
もう一つは,前にも言いましたけれども,学生の人数や面積,施設要件といった外形標準ではなくて,学生が大学教育を通じて何が身に付いたか,何ができるようになったかという学修成果に基づく質保証という視点が非常に重要だと思っています。特に,日本の採用,雇用形態がこれまでの新卒一括採用,又はポテンシャル重視採用から,ジョブ型,能力重視型の採用雇用形態に移っていくという文脈の中では非常に重視すべき視点ではないかと思っております。ですから,学修成果又は学生本位ということを考えますと,最初の議論でも指摘されていた学生が質保証システムに参画するということも非常に重要な視点ではないかと思っております。以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。では,前田委員,お願いいたします。

【前田委員】 ありがとうございます。質の保証された大学という視点から,2つの認証評価機関の委員をやっていて感じることですけれども,今の機関別の評価では質ということに関してはとても限界があります。林委員のおっしゃっていたプログラムの部分ですけれども,その評価の基準となるものがないものですから,そこのところが一番重要なのかと思います。理念,目的とか学位授与方針というのはどこの大学でも明確になさっているのですけれども,それに対して提供しているプログラムがどう適切なのかは,評価委員から見て判断するのは難しいです。特に大規模大学を数人の評価委員で担当しているので,同じ専門分野ではないと評価が困難です。大学側がきちんとどう適切なのかを説明するというシステムが必要ではないかと思います。
もう一つ重要なのは,教員組織です。これはよいことだとは思うのですが,規制緩和されて学位名称が変わらない限り教員審査がなくなっていますので,その教員が本当にそのプログラムに適切なのかは,機関別認証評価で提出を求めている資料では分かりません。これは大学が説明するべきだし,いろいろプログラムは変化していくわけですから,それに現有の教員をどう適応させているのか,その適切性をきちんと大学が説明していること,それが内部質保証のシステムとして見えてくることが重要なのだろうと思います。もう一つ非常に気になっているのが,評価で訪問した際に,なるべく多くの方にお話を聞きたいと思っても,いろいろな場面を設けても対応される方が皆同じということがよくあります。本当に質保証への理解が学内に浸透しているのか,教職員が自律的に質保証に取り組めているのか確認ができないままに,出される資料と責任者による説明で終わることが多いです。自律的な内部質保証ができているのかというところだけに重点を置いて,あとの資料のチェックは,どこか別室に当日に置いておいてもらってチェックすればいいわけで,重要な点について確認をする。それができているということが分かれば,質が保証されている大学ということになるのかと,認証評価の経験からはそのように感じます。今のシステムでできるのは,大学が自ら説明をしていき,その説明が十分かどうかということと,本当にそれが学内で上手(うま)くいっているのかをいろいろな方と接して確認することかと考えました。以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。では,吉見委員,お願いいたします。

【吉見委員】 ありがとうございます。今日は米澤先生と林委員の御発表で大変いろいろ勉強させていただきました。米澤先生のスライドの中で,この質保証の仕組みに関して,その国際的認知自体が目標化してしまうというリスクが掲げられていました。もう一つ,国際的な動向のパッチワーク的な導入によって主体性が喪失する,国内の教育実践との行き違いが拡大するという御指摘もありました。これは非常によくわかることで,これがどうしたらそうならなくできるのかということがすごく気になっているのですね。原理原則というところに戻ると,先ほど大森委員もお話になっていましたけれども,質保証の問題で誰が誰をどうやって質保証していくのかというときの,「誰を」というところが既に「グランドデザイン答申」ではっきりしていて,目標地点は多様な学修者の成長と達成の質保証なのだと思うのです。そのときに,「誰が」というところと,「どうやって」というところが,今日いろいろ専門的な御意見を頂いたのですけれども,すごく重要で,「どうやって」というときに,その教育プログラムの単位,つまり,機関の単位よりも教育のプログラムの単位に注目していくと,そこで学部,学科,大学等と対応しなくなってくる次元が出てくる。つまり,学部を超えて,あるいは大学を超えて,あるいは国を超えて,あるプログラムを質保証していくということをどのように非常に容易にしていくのかという問題意識と,それから,もう一つもっと重要なのは,先ほど永田委員のお話もございましたが,「誰が」というときに,これが全て大学単位で考えていくと,評価と同じですけれども,どんどん手間が大変になっていって疲弊していって,形式ばかりが先行することになってしまう。そうではないということは,国がどこまでできるのか,あるいは大学側の教員や職員が手間にならない形で,しかし,実質あげて一人一人の学修者に焦点を絞った実行的な仕組みをどうすれば作れるのかを,もっと突きつめていく必要があるということを感じました。以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。では,土屋委員,お願いいたします。

【土屋委員】 ありがとうございます。皆さんのお話を伺っていて大変勉強になりました。話を元に戻すことになるかもしれませんけれども,こうした質保証システムの議論がもしかすると逆に質の劣化につながるのではないのかという心配もあります。それでも大学が独自性を持ってやっている努力に対して国のシステムをかぶせていく。あるいは,リスクを回避するためにいろいろな基準を作っていくのはいいのですが,結果的に今,それぞれの大学がしている質向上の努力を逆戻りさせるのではないか。質保証システムが逆に質を劣化させるという心配を大変いたします。ですから,大森委員もおっしゃいましたが,私たちにとって問題なのは,21世紀に向けての大学をどうするのかということなので,そのためには今,吉見委員がおっしゃいましたが,それぞれの大学間の異動であるとか,国際的な流動性であるということがまさしく課題であります。それをどのように保証していくのかが議論の中心になっていかないといけないと私は思いますので,質保証システムが質を劣化させないような議論の仕方,あるいは21世紀に向けての大学の質をどうやって保証していくのかという議論の方向性だけはきちんと守っていきたいと思っております。以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。質保証と言いますか,設置基準等を含めてのシステムが足を引っ張ることをしないようにというのは本当に大きな原則だろうと思います。たしかに制度は作ると独自に動き始めて,それが足を引っ張ったり,枠をはめてしまうのでなかなか難しいのですが,その辺は非常に重要な点だろうと思います。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
米澤先生も何か御意見があれば,せっかくの機会ですので御発言いただければと思いますが,よろしいでしょうか。

【米澤教授】 吉見委員に御指摘いただいた点は,私も大変気になっているところで,ありがとうございます。もう10年以上前ですが,法科大学院が話題になったときに,アメリカに評価の調査に行って,ロースクールの評価に関して大学側の法学教育の専門家,それから,バー・アソシエーション,つまり,弁護士会の代表の方が一緒になって,それぞれ独自に評価をされて質保証するようなところに出くわしたことがあります。最終的にその大学側として,教育としてあるいは学問としてやりたいことと,何らかの形で社会の専門職団体あるいは産業そのものがやりたいことの間にはどうしても乖離(かいり)が最後まであるのだと思うのです。それをプログラムレベルで専門職とつなげていこうという発想は,専門職大学院の評価が開始されたときに一応は議論されていて日本でもやろうとしたのですけれども,これが制度として,あるいは実態としてうまくいっているかどうか問われているのが今の状態だと思います。今日申し上げたのは,デジタル化というもので,一番大きな話は,職能団体と大学の教授団との関係を超えたところに話が起きていて,それは釈迦(しゃか)に説法かもしれませんけれども,大学自体が特にイギリス,オーストラリアなどを見ていると,知識産業の本当にど真ん中に位置付いていて,それは伝統的な大学の考え方とはかなり違うかもしれませんが,産業政策としてその問題を考えていくというところに入り込んでしまっているのだと思うのです。そのような部分をうまく,伝統的な大学の在り方あるいはアイデンティティというものを壊さない形で組織の中に入れていくためには,少し引いた目で考える必要があるのではないかと思います。つまり,今やっている質保証システムの中にいろいろな外部の視点をどんどん入れていけば解決するという話ではなくて,どこかでそこは外に出していくとか,社会全体で考えるような仕組みを国全体として考えないと,どこかで破綻するのではないかという気がいたします。以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。私も職能団体という観点はとても重要だと思っておりまして,ヨーロッパの場合,完全にこれはもう職能団体として成立したもので,その伝統があるわけですけれども,日本はそうではないわけですよね。日本の場合,個々の大学である意味閉じていて,それが議論の中で教員の異動をもう少し積極的に考えるべきだということと結び付いていると思うのです。大学を超えた形で教育者の職能団体的な意識というのがどこまで日本にあるかというのは非常に難しいのではないか。日本の学会は正に研究者の集合体で,必ずしも教育まで含めた教育者の職能団体にはなっていないわけですね。内部質保証というのを実際に機能させていく,あるいはピアレビューを実質的に機能させていくためには,学会の働きが少なくとも背後にはあってしかるべきかと思います。ただ,研究については,学会の評価というのは日本ではそこそこ機能していると思うのですが,教育までそれが含まれていない。これはこれから日本に作っていくことが現実的かどうかというのは別の問題かもしれませんが,なかなかそこは難しいかと思いました。教育者としての連合性,共同性のようなものを作っていくシステムを先に見ていかなければならないのではないかと思いました。ほかに御発言ございますか。
では,飯吉委員,お願いいたします。

【飯吉委員】 「質が保証されている大学」について,本部会で是非お考えいただきたいことがあります。今後の高等教育を考えていく場合に,例えばマイクロ・クレデンシャルについて考えても,企業や大学が提供する教育プログラムを部分的に組み合わせて利用していくというような「ミックス型の活用」が出てくると思います。その一方で,学位については,現在各大学が出しているわけです。工場での異なった製品で使う部品の共通化のような話ですが,例えば異なった大学同士が授業を共通化していった場合に,「自分の大学の学位というものが,一体どのような意味を持ってくるのか」といった議論になります。ですので,自分の大学の学位を出すことが一体どのような意味をもっていて,その学位に対しどのような質保証を求めていくのかということを是非お考えいただきたい。さらに,そのような質保証をオープンにしていくことも重要だと思います。例えば,留学をした場合,海外の大学で取った単位については,カリキュラム・ポリシーやディプロマ・ポリシーが満たされている限りは,自分の大学の学位要件の一部として単位認定するという大枠の考え方が一般的にはあると思いますが,同様に,先ほどのマイクロ・クレデンシャルや授業の共通化については,どのように考えていけばいいのか。つまり,個々の大学の質保証と複数の大学や機関に跨がって受ける高等教育の質保証をどう両立させていくか,ということです。ここは,大いに気になるところなので,是非今後御議論いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。では,前田委員,お願いいたします。

【前田委員】 今,新しい取組としてオンライン教育があるわけですけれども,オンライン教育の質保証との関係で現行の設置基準で考えなければならないこととして,1単位45時間の学習という考え方がオンライン教育に適切かどうかという問題ですとか,定員に対して施設・設備がどのくらいなければいけないというときに,例えば,ハイブリッド型の授業が進んでいった場合に,この設備の考え方もまた新たに考えていかなければいけないのではないかと思っています。そして更に難しいのは,先ほど飯吉委員がおっしゃった,学位につながっていく一つ一つの授業の成績評価の在り方ですね。このあたりも設置基準と成績評価がどこまでつながるかわからないのですが,やはり検討していかなければいけないのではないでしょうか。オンラインを恒常的なものとして取り入れる際,私は余り把握できていませんが,アメリカではダイレクト・アセスメント・プログラムが以前より取り上げられるようになっているように見えます。学習時間とか授業の成績ではなく,ダイレクトにその人が何を身に付けたのかを評価していこうというもので,恐らく限定的に使われなければいけないだろうと思います。その方法の適切性を誰が認定するのかという仕組みも作る必要があるように思いますが,オンラインがこれから進んでいくようであれば,見直すべきポイントは幾つかあると思っております。
あと一つ,国が制度として質保証すべきところというのは,対外的に,これだけはやっていますと,何を伝えればよいのかです。法令で決まっていることを並べても,具体的に見えてきません。認証評価機関がやっています,認証評価機関はこれを見ています,というのは,細目省令に挙がっているものだけになってきますので,このあたりどこまで踏み込んでいくのか,認証評価機関だったら最低ここまでは評価していますということを国としてどこまでどのように発信していくのかを考えることが必要と思います。そこから先は認証評価機関に任せればいいのですけれども,その線引きのところはもう少し明確に,設置認可で見ること,認証評価機関がやること,それをまとめて一国の制度としては,これが質保証制度として最低限でやること,この辺の整理をして,発信し,それ以上は,国は余り細かいことに口を出さないということがいいのかと思っています。以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。小林委員,お願いいたします。

【小林委員】 私も資料を提出させていただいたのですが,林委員の御講演の中にほとんど含まれていたことと,今,前田委員がおっしゃった,国としての最低基準,多様化を担保するための基準とは何かというところを書かせていただきました。ここに書いていないこととして,私,大学の外から見ていて一つ気になるのは,今,大学で通信教育課程というのがあります。今,高校もオンラインでの通信教育課程が増えていて,この子たちが将来的に大学に入ってくるという時代がやってくると思います。そうしたときに通常の授業もオンライン化,ハイブリッド化して,60単位以上取れるようになってきたときに,通信教育課程と通常の課程の質保証はどのように違いが出てくるのかというのが外から見ていて分からないものですから,お伺いしたい点として挙げさせていただきたいと思います。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。高校の問題もあるかと思いますので,事務局で少し検討して次回にでも御発言いただくようにしたいと思います。米澤先生,どうぞ。

【米澤教授】 ありがとうございます。落ち穂拾い的になると思うのですけれども,私自身,今,国際戦略を考える部署にいるので,国を超えて学生がどうやって移動するのかということと,それに対してどのように質保証するかというのはどうしても考えるところですが,単純に言えば,日本は日本の仕組みの中へ留学生を受け入れて日本社会とのつながりを作っていく。他方で自国の学生を海外に出すときには向こう側の社会に合わせてやってきたので,余りそこで国際共通のフレームワークを作ってやろうというヨーロッパとか,あるいは英語圏の話にはのらないところでやってきたところが圧倒的に多かったのですね。ただ,その部分がこの留学の,国際的な学生の移動のかなり主要な部分であって,しかも,基本的には留学生は学びたいから留学するわけではなくて,仕事に就きたいから留学するのだということを,まず考える必要があって,その上で日本がこの流れに乗らなかったことの強さと弱さがあるのではないかと思います。今,トランスナショナル・エデュケーションというものが盛んに議論されていて,要するにパンデミックのために留学ができないので,特に輸出国側から見たときには留学生を受け入れる代わりにトランスナショナル・エデュケーション,つまりオンラインでの授業を国際的に展開することでビジネスを展開しようと動いているわけです。その部分の質保証,受入れというのは,多分,2000年頃にあったアジア経済危機の後の第一次トランスナショナル・エデュケーションの拡大よりもはるかに大規模で,かつデジタルな世界で起きていくということについて,どこかで単純に保護的ではなくて,そのような産業的な動向に乗れるかどうかも含めて御議論いただくことが必要かと思います。以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。濱中委員,お願いいたします。

【濱中委員】 ありがとうございます。本日の議論で,「国として」といったキーワード,また林委員の御報告でイギリスの全国共通学生調査の話が出ました。私も今日,委員提出資料を提出させていただいておりますので,その点について触れさせていただければと思います。全国の学生調査をどのように質保証に利用していくのかという観点は,この部会で外してはいけないのではないかと思っております。委員提出資料にも書きましたけれども,実際に文部科学省と国立教育政策研究所では全国学生調査の検討に着手しており,既に試行調査も実施されています。こうした調査の活用可能性も議論する必要があると思うのですが,配布されています次回以降の予定(資料1)からは,この点を一体どこで扱うのかというのが見えませんでした。調査や一覧化した情報によって質保証の機能を設けるということは,「グランドデザイン答申」から読み取れることでもございます。この部会で欠かせない観点だと思いましたので,言及させていただきました。以上です。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。ほかによろしいでしょうか。
永田委員,よろしくお願いします。

【永田委員】 オンラインの授業の保証ですけれども,まず考えなければいけないのは,単位についての国際的コンセンサスを得られるようにしないといけないということです。日本ではこう考えたと主張しても,国際的には違いますよと言われたときに通用しません。国立大学協会でフランスの大学協会で調整した際に,お互いの国の単位の考え方を述べあって,実際に単位読替えをするまでに1年半ぐらいかかりました。ですから,これからのオンライン授業についての単位の考え方というのは,当然,日本がこう考えるではなく,国際基準で考えないといけません。また,オンライン授業を用いてどのように学ぶかは各大学の考え方ですが,オンライン授業だから15回授業を聞くだけで単位がとれる,というわけではありません。外国では,授業時間の3倍ぐらい自学が必要であり,この点はオンライン授業でも同じです。そのことを考えて,国際的な通用性と言うときに,そもそも単位とか,シラバスをどのように考えどうあるべきなのか,そのような考え方をしなくてはいけないと思います。
【吉岡部会長】 ありがとうございました。先ほどの飯吉委員の御発言に関わりますが,委員の中に大学設置・学校法人審査会の方もたくさんいらっしゃいますけれども,設置の際には非常に形式的な数字だけではなくて,むしろディプロマ・ポリシーに沿ったカリキュラムが組まれているかということはきちんと見るようになってきていると思います。ただ,それも設置の際の組み立て方の問題で,その後ちゃんと機能しているのかということを調べるのは非常に難しくて,前田委員がおっしゃったとおり,実際にそれが大学ないし学部の中できちんと共有されているのかよくわからないというのはそのとおりだろうと思います。考え方としては入っているのですけれども,それが実際に個々の大学ないし,個々の学部のレベルまで共有されて,その教員たちがそのように考えているのかというと,よくわからない。そこをどのようにしていくかということがなかなか難しいのかと思います。これは今回いろいろな方々の意見の中で共通して出てくることですけれども,内部質保証がきちんと行われているならば,多くの問題が解決するという,それはそのとおりだろうと思います。質とは何かということについて外から決める必要は必ずしもなくて,質は何かということ自体が議論の対象であって構わないのだけれども,自分たちはこのような形で教育の質を担保し,教育のカリキュラムを組み立てているのだということについて自分たちがきちんと検証するシステムを持っているかということが,質保証のシステムを成立させているということだろうと思います。だから,質保証ができている大学というのは,質保証についてきちんと考えていて,自分たちが内部質保証のシステムを機能させるということをちゃんと努力している大学ということになるのかと思います。国はそれを外側から支援すると言いますか,外側から考えていくということだと思うのです。最初に戻りますけれども,それすらできていない大学をどうするかというのが,リスクの問題と絡んでくるのだろうと思います。
また,幾つかありましたけれども,それぞれの大学が職業人を育てるということに重点を置いているのか,あるいはもう少し学術的なことに置いているのかによって考え方が違ってきている。システムの持ち方も変わってくるのだろうと思うのです。その辺りのところは大森委員の話にもよく出てきますが,地域ということを重点化していった場合の質保証の在り方というのは,例えば,学術の研究者を育てるということを重点に置いているという場合とは変わってくる。日本の大学はそのようないろいろな役割を持っていて,一つの大学もいろいろな役割を負わされているので,その辺のところを議論の中で考えていかなければと考えています。
ということで,今日はお二人の先生に非常に勉強になる御発表を頂きました。ありがとうございました。
今日の議論はこれで終了させていただきたいと思います。様々な論点が出ておりますので,また整理して次回につなげていきたいと思います。各委員の方々,何かありましたら,御意見をいただければ議論が凝縮していきますので,どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,今後の質保証システム部会の開催日程等につきまして,事務局からの説明をお願いいたします。 
【奥井高等教育企画課課長補佐】 本日も活発な御議論を頂きまして,誠にありがとうございました。
次回の質保証システム部会は,12月23日の水曜日,10時から12時を予定しております。また,開催方法等は追って御連絡をさせていただきます。 本日御発言できなかった内容がありましたら,事務局まで御連絡いただければと思います。以上でございます。

【吉岡部会長】 ありがとうございます。今の状況を考えると来月はオンラインで実施する可能性が高いと思いますけれども,また御連絡させていただきます。
皆様,何か最後に是非という御発言があればと思いますが,よろしいでしょうか。 それでは,第5回質保証システム部会はこれで終了させていただきます。
皆様,どうもありがとうございました。

―― 了 ――


 

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