制度・教育改革ワーキンググループ(第14回) 議事録

1.日時

平成30年5月15日(火曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省東館13階 13F1~3会議室(東京都千代田区霞が関3-2-2)

3.議題

  1. 社会人の学び直しに係る制度改正等について
  2. 実務家教員の登用促進について
  3. 認証評価制度について

4.出席者

委員

(臨時委員)安部恵美子,上田紀行,金子元久,川嶋太津夫,篠田道夫,鈴木典比古,福島一政,伹野茂,濱名篤,本郷真紹,前田早苗,溝上慎一,美馬のゆり,宮城治男の各委員

文部科学省

(事務局)小松文部科学審議官,義本高等教育局長,藤野サイバーセキュリティ・政策評価審議官,瀧本大臣官房審議官(高等教育担当),蝦名高等教育企画課長,三浦大学振興課長,石橋高等教育政策室長 他

5.議事録

【鈴木主査】  所定の時刻になりましたので,第14回の制度・教育改革ワーキンググループを開催いたします。皆さん,御多用の中,御出席いただきまして誠にありがとうございます。
 前回は,学部等の組織の枠を超えた学位プログラム及び工学系教育改革について御議論いただきました。また,高等教育の国際化という議題で,大学の海外展開について,留学生30万人計画の後を見据えた留学生政策及び,大学の国際化に対応する大学入学資格の見直しについて御意見を頂いたところであります。
 本日は,2月13日の本ワーキンググループでも御議論いただきました履修証明制度など社会人の学び直しに係る制度改正について,事務局で資料を準備していただいておりますので御説明いただき,委員の皆様から御議論いただきたいと思っておりす。
 次に,実務家教員の登用促進については,これまでにも本ワーキンググループで御意見を頂戴しており,登用促進の観点から,事務局で取りまとめられた検討の方向性について,委員の皆様から御意見を頂戴したいと思います。
 最後に,これまで本ワーキンググループでも御議論いただき,論点整理にも取りまとめられております認証評価制度について,さらに議論いただくこととしております。
 それでは,事務局から本日の配付資料についての確認と,前回の工学系教育改革の制度改正に係るフォローアップについて,続けてお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。配付資料に関しましては,資料1から資料5までの5点になっております。不足がございましたらお申し付けいただければと思います。
 また,工学系教育改革の制度改正につきましては,前回御議論いただいておりまして,例えばFDの義務化に関して,資料から抜け落ちていたというような観点であったり,今日御議論いただきます,みなし専任教員,実務家教員の考え方など,先生方の御意見を賜ったところでございます。それらの御意見につきましてはきちんと制度改正において反映させていただいて,その形で準備をさせていただきたいと思っておりまして,次回のワーキングなどにおいても,進捗状況を御報告させていただきたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。
【鈴木主査】  工学系教育改革につきましては,引き続き,本ワーキンググループに進捗状況の御報告等をお願いいたします。
 それでは,議事を進めます。本日は,まず多様なニーズに応じた社会人の学び直し,すなわちリカレント教育の推進についての検討状況を御説明いただきまして,それに関連するものとして,社会人の学び直しに係るニーズに対応できるよう,履修証明制度の課題と改善策等について,事務局において資料を準備しておりますので御説明いただいた後,委員の皆様から御意見を頂きたいと思います。
 それでは早速ですが,事務局から資料1,資料2について御説明をお願いいたします。
【中湖専門教育課課長補佐】  資料1をご覧ください。3月26日の本ワーキングでも御説明しましたが,多様なニーズに応える大学等のリカレント教育を推進するために,産学連携による教育プログラムの抜本的な拡充と,その全国展開が必要だとおります。そのため,大学等におきましては企業と連携して,産業界からのニーズを踏まえた教育プログラムを開発し,全国展開を図っていくとともに,20程度の教育プログラムを先行開発することを考えております。
 下のところに行きまして,今後職業実践的な短期プログラム,BPと言いますが,その質の保証と対象拡充を図るため,短期かつ魅力的なプログラムの開発を促進するための制度改正として,プログラムの作成への産業界からの参画促進と内容等の公表を推進すること,また,現行の120時間以上から60時間以上の短期プログラムを認定対象としてはどうかと考えております。さらに,この後資料において御説明しますが,これらを促進するための履修証明制度等の見直しについて議論できればと考えております。
 2ページ目をご覧ください。リカレント教育を推進するために実践的な教育を行える人材の確保が重要であるということから,その方策としまして,実務家教員を対象とした研修プログラムを開発・実施することにより,大学等における質の高い実務家教員の確保を図っていくとともに,当該研修修了者の情報を登録する仕組みを整備するなど,大学とのリカレント教育を円滑に実施するために必要な取組を検討してはどうかと考えております。
 最後,3ページでございますが,参考といたしまして,3月23日の人生100年時代構想会議においての文部科学大臣からの説明資料を添付しております。
 私からの説明は以上でございます。
【髙井大学振興課課長補佐】  引き続きまして,資料2をご覧いただければと思います。社会人の学び直しに係る制度改正等について,本日は履修証明制度の課題,それに対する制度改善ということで,4点ほど課題を挙げて御説明させていただきます。
 お開きいただきまして,2ページ,3ページ,これは本年2月13日の制度・教育改革ワーキンググループにおいて御議論いただいたものの振り返り,取りまとめでございますので,ご覧いただければと思います。
 4ページをおめくりください。現行の履修証明制度でございますが,皆様御案内のとおり,履修証明制度は原則として社会人等に交付されるもので,体系的な知識や技術等の習得を目指して,総時間数120時間以上という形で交付されるものになっておりまして,平成19年の学校教育法の改正により創設されたものでございます。
 現在の利用状況でございますが,履修証明プログラム,5ページをご覧いただければ,全大学の15%程度での開設にとどまっている状況でございまして,交付についても3,000人弱程度にとどまっているという活用状況であり,まだまだ不十分という状況でございます。
 6ページ,7ページをおめくりいただきまして,現在の履修証明制度120時間以上という最低時間数がございます。課題の1点目,最低時間数の考え方についてでございます。
 この最低時間数についてですが,そのままおめくりいただきまして8ページで,大学が作成しているプログラムで,履修時間が最も多いとされているプログラムが,61時間から90時間以上のものになっております。
 9ページをご覧いただきますと,幾つかそういったプログラムの例を挙げさせていただいておりますが,例えば一番上の大阪府立大学「植物工場における中核的専門人材養成」というプログラムでございます。これについては座学から実習,演習に至るまでの,いわゆるトータル的な植物工場を管理・運営する人材を育成するようなプログラムになっておりまして,60時間でもうかなりきちんとした設計をされているということで,おめくりいただきまして10ページでございます。
 そういったプログラムも多い中で,やはり最低時間数というものを120時間以上から60時間以上に見直してはどうかという御議論でございます。これによって魅力的な短期プログラムの供給の促進をより図っていくということ,あるいは大学等における履修証明プログラムの活用の促進につながるのではないかということで,こういった改正を考えているところでございます。
 課題の2点目です。履修証明制度の社会的認知・評価の点でございます。履修証明制度は先ほども申し上げたとおり,なかなか活用が進んでいないということで,学校教育法施行規則上は,履修証明制度としてあらかじめ公表すべき事項等は定まっていますが,12ページをおめくりいただきますと,企業がどのように履修証明制度を捉えているかと申しますと,例えば教育訓練を外部でお願いする場合にないという御感想であったりとか,何を提供しているかが分からないという御感想であったり,あるいは教育内容が実践的ではないという意見が挙げられており,およそ8割の企業が基本的には民間の教育訓練機関を活用し,大学の履修証明制度を活用していないという状況がございます。
 こういった状況を改善するために,13ページですが,わずかな改善ということではありますが,あらかじめ公表すべき事項に,例えば単位授与の目安であったり,実施体制であったり,そういったことを付け足していくことで,履修証明プログラムの透明性を高め,より分かりやすくしてはどうか,また,施行規則を改正するに当たっては施行通知などを出しまして,その社会的通用性といったものについて,例えば社会や企業の教育ニーズを踏まえてプログラム内容を改善していくといったことを含めて,各大学に文部科学省として再周知をしていきたいと考えているところでございます。
 おめくりいただきまして14ページです。論点,課題の3点目です。3点目は履修証明制度の単位授与の在り方についてでございます。一つの履修証明制度プログラム全体として,現在は単位を付与することはできません。例えば学位課程の授業科目が入っている部分については,「科目等履修生に対する単位」として単位授与は可能ですが,やはり全体として授与ができないと,なかなか活用が進みにくいという部分もございます。
 そこで15ページをご覧ください。単位授与については,履修証明制度は様々でございますので,内容・水準,学修成果等について大学で御判断いただき,単位授与の際の目安というものを設定いただきます。これは例えば,6単位であったり2単位であったり,履修プログラムによってそれぞれ様々かと思われます。
 それについて,単位授与が可能であるという制度改正を行いまして,例えば学位授与機構における単位累積加算制度に活用いただいたり,大学以外の教育施設等における学修の単位認定,あるいは入学前の既修得単位等の認定についても活用できるようにしてまいりたいという制度改正の御提案でございます。
 おめくりいただきまして16ページ,これは履修証明プログラムの例ですので,後で御参照いただければと思います。
 最後に17ページ,4点目の課題でございます。学修証明の在り方。これは少し履修証明制度自体からは離れますが,履修証明制度が適用されているもの以外についても,各大学から様々な学修証明というものは交付されています。分かりやすいところで言うと,例えば副専攻プログラムであったりとか,様々なコースについて学修証明というのは交付されていますが,なかなか通用性というか,社会的認知も含めて,まだまだ進んでいない。
 おめくりいただきまして18ページです。とはいっても,履修証明プログラムとして組まれたものを,本大学以外の学生であったり社会人であったりが活用する以外にも,大学に入ってミスマッチがあったり中途退学する者であっても,転職活動や転部・転学の際に活用できるようにということであったり,あるいは社会人であっても,履修証明プログラムという形ではなくて,ユニット的・モジュール的に必要な学修をしていって,それをもって証明していく,こういったものに関する社会的意義もあるのではないかということを考えておりまして,こういった履修証明制度以外の学修証明についても,社会的認知や評価を高めるために,何らかの形で法令上に位置付けてはどうかということを考えているところでございます。
 以上,課題4点でございました。よろしくお願いいたします。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 それでは,ただいまの事務局の説明及び資料を踏まえまして,御意見,御質問等がございましたらお願いいたします。
 濱名委員,どうぞ。
【濱名委員】  私はたまたま科研費でこういうテーマを今やっておりますし,学会発表も今年予定しておりますので,幾つかお尋ねしたいと思うのですが,大きな方向性として,社会人のリカレントの仕組みをどう定着させていくかということについて御検討いただいているのは,もうそれしかないというか,方向についての異論はないのですが,ただ今回の制度改正を見ていくときに,問題は何かと思っていらっしゃるのかというところがいま一歩よく分からないのです。
 要するに,学習者の問題なのか,使用者の問題なのかというのが,最初の段階ではっきりしない。どうも問題は,使用者側がこういう職業訓練を受けるということに対して価値を置いていないこと,これは大きな問題であるのですけど,これは実は現段階で言うと後ろの問題です。現在の社会人学修者はほとんど自らのためにやっているので,職場で評価してもらうためにやっているわけではない。
 そうすると,まず現在の学習者に対する対応ということが優先して図られるのが必要ではないかと思うのですけれども,学習者の調査を東大が以前おやりになったので言うと,一つは金の問題,それと時間と場所,コンテンツ,この四つになります。
 時間と場所というのは,どこでやるか,どういう形態でやるかというので,今回の提案の中には余り具体的ではないです。専門教育課が言われた話というのは,これから,さあ教育プログラムをこれから開発しますよという話で,20のパイロットプログラムというわけです。私はそんなことよりも市場原理を活用して,もっと短期にやっていかないと難しい,モデルカリキュラムを作っているという状態ではもはやないと思うのです。学習者からすると,お金をどうしているかというと,全部自分の財布から出しているのです。
 そうすると,専門教育課が若干書いていらっしゃいますが,雇用保険,税制との連携というのが資料1の3枚目のところに出てきますが,学習者に対する支援措置というのをそれまで具体的にどう考えておられるのか。これはほとんど厚生労働省マターです。職業訓練給付金制度とのリンクが,今回のこの検討の中でどこまで盛り込まれているのかということです。
 職業訓練給付金のプログラムは現状から言うと,1回目にもらうとき,雇用保険から来ていますけれども,最初は1年未満,初職は1年未満,2回目以降は3年に1回しかもらえない。3年に1回しかもらえないプログラムの対象がどうなっているのかと言うと,実際には民間のプログラムも活用しているという調査結果も,私は甚だ信頼できなくて,実際に学習者が使っているので言うと,この職業訓練給付金の対象はBPプログラムと,あとは職業実践専門課程の専修学校でやっているプログラムだと思うのです。そこらの状況とのリンケージをどう考えていらっしゃるか。
 私は大学側をやっている愛媛大学や高知大学に調査に行きましたけれども,BP対象のプログラム利用者はほとんどこの職業訓練給付金を利用していない。なぜかというと費用が安過ぎて,1度使うと3年たたないと次に利用できないからということもあるようです。だからその費用問題に対する設計と,他省庁,厚生労働省の制度とのマッチングを,今具体的にどこまで検討して言われているのか。僕は非常に危険だと思うのは,プログラム開発,内容がないから利用されていないという問題設定自体に甚だ疑問がある。
 もう一つは,使用者側の話から言うならば,基本的には税制と書いていらっしゃいますが,具体的に何を想定されていますか。例えば促進と書いているのだけど,法人税の減免の対象として,こういう補助制度を使っていくことを考えているのかどうか。私は多分,経団連企業はほぼ関心を持たないと思います。なぜかというと,いくらでも人は採用できると思っている企業は,こういう人材育成のためとか,人材確保とつなげた人材を再教育するためのプログラムには関心を示していないと思うのですけれども,そこらのまず現状認識というか,課題の整理をどこまでおやりになっていらっしゃるのかということを,お尋ねしたいと思います。
【中湖専門教育課課長補佐】  どうもありがとうございます。先ほど先生から御意見がありましたけど,お金の問題と場所の問題等たくさんあります。先ほども先生が言いましたけど,プログラム数が少ないというのもありますし,多くのプログラムは大都市の開講でなされており,地域的な偏りがあるといったこと,また,プログラム企画を実施する教員の確保が問題であるといった,様々な課題等があるところであります。
 我々といたしましても,今後具体的に検討を進めていくところではあるのですが,予算的なものも含めて,戦略の一つとして考えていきたいと思っておりますし,あとは厚生労働省の教育訓練給付金制度も連携していければと考えております。厚生労働省等とも,今後話し合いの場を持っていければと考えております。課題等も含めて,今後対策を考えていきたいと考えております。
【濱名委員】  制度設計するときに,課題がどこにあるのかということを先にきちっと究明してやらないと,結局プログラム開発にお金を使いました,こういうことができる制度にしました,だけど実際に利用者がいないという形になると,これまで20年社会人教育がうまくいかなかった理由は,そういうやり方をやってきたからだと思います。
 現在社会人学習者が増えているのは大学院で,学部レベルでは増えていないので,こういう社会人をどう市場化するかというときに,もう少し大きなフレームワークで問題の整理をして制度化に入っていかないと,まず先に制度検討ありきという形になってくると,これは非常に断片的,パッチワーク的な作業で,我々から見れば,大学にとって社会人を大きな市場としていかに取り込むかという大戦略です。大戦略の割には出てくる現状分析と対応策が非常に断片的に見えるのですが,そのあたり,どのように今後進めていかれるのか。
 だからこれはどうですかと小出しにされて,賛否を問うやり方でやっていくので,戦略になるのかというところが非常に疑問です。
【中湖専門教育課課長補佐】  3ページにも書いてあるとおり,さらに現状,課題等を詳細に分析した上で,戦略,改革等取り組んでいって,整備していきたいと考えておりますので,また当然,関係省庁とも連携しながら検討していきたいと考えております。
【鈴木主査】  よろしいですか。今,戦略になるのかという問いでしたけれども,非常に大きな問題であることは分かってきましたので,その点についても御配慮いただければと思います。
 美馬委員,どうぞ。
【美馬委員】  これは大学の制度から検討しているので,こういう単位授与をどうするとかということになっているのですけれど,少し視点を変えて,ニーズとか現場から考えることをした場合に,ここで言っている社会人個人としてではなくて,その人たちが所属する組織から連携して何か行うことはできるのではないかと思います。
 そのときに,自分のところに関わる課題があって,小学校でプログラミングが2020年から始まる。しかもそれは単独の教科で教えるのではなくて,様々な教科の中でそれを使っていくといったときに,情報系の大学ですので,教育委員会から教員の研修をやっていただきたいという依頼があります。
 その場合に,小学校の教員がプログラムを子供に教えるということは,単発の1,2時間の教員の研修では難しい。しかもそれはハウトゥーではなくて,やはりどうしてそこでプログラミングなのか,今,文部科学省のところではホームページでも,プログラミング的思考というふうに,そういう思考形態を育むこともうたわれています。
 そうすると,今この社会人の学び直しといったところで,教員の学び直し,学び足しということが,非常に切迫した問題の喫緊の課題としてあるわけです。特に教員の場合は,単に個人が何か能力を付けていくだけではなくて,次世代を育成するところに関わっているので,より多くの人に影響する問題だと思います。
 そのときに,今こういったニーズがある,課題がある中で,これは情報系の話だけではなくて,小学校の英語の問題もそうだと思うのですけれども,それが専門職大学院があればいいかというとそうではない。より多くの日々学校で教えている教員というニーズがあって,先ほどの単に大学の制度で単位を取るとかいうことではなくて,いろいろなことを考えることがこの枠でできないかなと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  答えはありますか。よろしいですか。今のことも社会人のニーズということから少しずれるかもしれませんが,小学校教育全体に関わる問題であります。
【美馬委員】  すみません,一言。最後に,教員個人がそこに通うとか,勉強するということではなくて,今,教員の研修制度があるので,そういうところと何かすり合わせていくことは可能ではないかなと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 本郷委員,どうぞ。
【本郷委員】  いろいろなケースで社会人の学び直しというのは捉えられるとは思うんですけれども,私の経験から申しますと,いわゆる実践的という内実化を図る,この概念というか,この具体的な構想というのは,非常に難しい問題があると思います。
 例えばメーカー系の方々に専門的な先端のスキルを身に付けてもらうためにリカレントする。そのためには実務家教員が必要であるということになってくると,何のために大学というのはそこでやらなければいけないのか,ただ単に場を提供し,単位と証明を提供するだけの存在なのか,ポリシーとの関係はどうなのか,そういう問題が必ず出てきます。そうした場合に,なかなか実践的ということについての理解が,特に大学内部で教員に対して得られることが難しいと思います。
 過去に私も取り組んできた事例で申しますと,むしろ逆に,それぞれの職種の方に,職種とは直接関係のない,センター的なスキルアップとまた別の次元のいろんな情報なり知識を提供する方が,かなり高評価を得るというケースがあります。
 例えばメーカー系のいわゆる研究所でいつもお仕事をなさっている方に,改めて哲学,思想,あるいは歴史,文学というような人文系の基礎科学を提供する。逆にまた第一線で活躍されておられる,いわゆる流通系の方々に,むしろリベラルアーツというものをもう一度提供する。こういう形の方が,たとえ単位保証というような,結果として与えられるような証明がなくても,場合によったら自腹を切ってでも集まっていただけるというのは,こういう側面の方が強い。
 そうすると,余り最初から実践的な側面をより重視するというか,そこを内実化を図って,そのための云々ということを考えると,やはり次元が異なってくるのではないかと思います。ですから幾つかその辺のところで課題を分けて,もう少し過去のいろんな事例というものを照合した上で,いろんな形での学び直しというものを考えていただいた方が,効果的なのではないかと思う次第であります。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 金子委員,どうぞ。
【金子委員】  今,先生方がおっしゃっていたのはそのとおりだと思うのですが,一つは例えばプログラミングのようにかなり特定の需要がある。もう一つは,今本郷委員がおっしゃっていたように,もう少し実践だけではなくて一般的な教育も必要だという御意見もあるでしょう。それから濱名委員がおっしゃったように,実際に学修している人は職場のニートというよりはむしろ自分自身が,端的に言って,この職場でやっていけるのかと悩んでいるような人が入っているとか,そういったところも結構あるわけです。
 問題は,成人の教育需要というのは,物すごく多様なのです。一つのパターンでいけないのです。だからそれに対して,かなりロットは小さいけれども多様な機会を提供していくというのがないと,結局要するに,今まで余り大学院が拡大してこなかったのは,それなりの努力をしてよりよい大学院にしようとしているわけですけれども,一括してやろうという発想がどうもやはりよくなかったのではないかと私は思います。
 アメリカの大学院もものすごく多様でして,彼らは明らかにマーケティングとか言っていますから,いろんなマーケットがあるのだと思います。だから大学院の社会人参加はかなり学部等の発想から転換しないといけない。しかもそれは大学院の組織が専攻とか研究科とかというのでやっていると,やはりうまく適用しないと思います。ですからプログラム化は必然であって,今度の単位の柔軟化,これはやはりプログラム化とセットだと思います。
 そのプログラムを必ずしも120単位にしていなくても,60単位程度までできるとハードルを下げるというのは,私はそれはそれでいいといいますか,必要であろうと思います。そういう意味では,私は前から120単位は多いと思っていたのですけれども,60単位にすることは大変結構だと思います。ただ柔軟化とセットだということをやはりきちんと言うべきであろうと思います。
 ただ,これについて一つの問題は,やはり単位と結び付けないと,学修者にとっては一種のインセンティブとして,これがどの程度公的な組織とつながっているのかというのは非常に重要な問題ですから,単位化というのは,ある程度オプションとしては絶対必要だろうと思います。
 ただ単位化するのは,かなり実は問題がいろんなところにあって,なぜかというと,単位化するのは大学院の単位とつなげなければいけないのですが,今の日本の大学院の修士の単位というのは非常にアカデミックな考え方からできていまして,修士課程の必要単位は御存じのように30単位なんです。学部の2年間と比べれば半分しかなく,要するに修論でもって,修論がない人は卒業研究でもって半分やるという思想です。
 この単位とどう結び付くのかというのはかなり大きな問題で,しかも,話がぐるぐるして申し訳ないですが,今,学校教育法には1年で修士を出せると書いてあるところがあって,実際に1年で修士課程をやっているところが幾つかあります。そういう意味で,修士課程の単位制度自体がこのままでいいのかという問題があって,私はとりあえずこれについてはこうやっていっていいと思いますが,修士課程の単位制度というのを今のままにするのか,それとも卒業論文とか試験も一応単位化してしまうのかというようなことは,やはり考えておく必要があるだろうと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 安部委員,どうぞ。
【安部委員】  ありがとうございます。BPプログラムに関して,120時間以上を60時間以上にした,時間を半分にするとか,単位化するとかということで,プログラムの改正を図られることは,利用しやすいようにという目的でされているとは思いますけれども,実際に私どももこのBPプログラムをやって,それで利用者が少しは出ているんですけれども,その利用者を見てみても,やはり履修をして,その履修をどういうふうに活用されるのか,それが非常に見えないということで,なかなか履修が増えないということがあるんです。
 実践性を増やしたり,使い勝手を良くしても,出口にしっかりと受け止めるところがないと,特に地方ではこの履修プログラムの受講者は少ない。先ほど濱名委員が,人が潤沢に採用できる大企業は学び直しには余り関心がないと言われました。そういう大学院レベルの学びを求められる方は,もう自己負担で学ばれるのですけれども,地方などで実践的なBPプログラムを受講したいという方は,大学卒ではない,技術等を学びたいみたいな方々が来ておられます。
 だからプログラムそのものをいじるよりも,そういう方が学びやすいように,私は学び直しの必要な人は誰かということをまず考えなくてはならないと思っています。これは人生100年時代の課題にもなりますけれども,地方などでは高等教育を十分に受けていない,まだアクセスしていないような方々が,今後地方の労働生産性を上げるためにはいろんなことを学ばなければいけない。
 そのためのプログラムを,文部科学省,そして厚生労働省絡みで開設していただかないと,学び直しというものを幾ら大学が提供しようとしても,それに参画する,いわゆる利用者というのがなかなか現行で増えないのではないか。もう10年,20年と生涯学習とか学び直しとかの必要性を言ってはいますが,なかなか増えていかないのは,その辺のところに原因があるのではないかといつも思っております。
 ただ地方の高等教育機関として,小規模のところが多いので,こういう学び直しの機会を提供するときには,一つの大学のみではできにくいところもあるし,それからこの地方,地域のニーズを拾うときに,やはりそのプラットフォーム的なものが必要になってくると思っています。
 受講希望者を集めたり,あるいはここにもありましたけれども,履修済みの人たちの人材バンクを作ったり,地方のいろんな企業,自治体のニーズをつかんだりするためのプラットフォーム的なものを作って,それで各大学の力を集めて,それぞれの専門分野で,場合によっては共同で,社会人の学び直しの場を作っていく,そういう流れを是非作っていただければ,本当に学び直しが必要な人に学び直しの機会が提供できるのではないかと考えています。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 濱名委員,どうぞ。
【濱名委員】  この資料2で,前回の制度改正のワーキンググループのところがありますが,最後にある単位累積加算制度のさらなる活用の促進という全体像を示していただくものと議論をやっていかないと。例えば資料1では60時間に下げてということを前提とされているわけですけれども,これはやはり階層構造があると思います。それで全体のフレームワークが,これはディグリーに対するプロファイルもきちんと作れていない,上位のところもできていない状態の中で,社会人の学び直しについてもやはり,誰を見て作るのかという話です。
 それで,この資料1の最後の整理も,私はぴんとこないところがあって,いろいろな対象があって,先ほど金子委員が言われたみたいに,いろいろな対象層があります。それをその対象層をこうしてまとめてしまうと,実はどの対象層に対する対応なのか全然分からないのです。これでは大きな流れから言うと,結局単位累積加算制という方向の中で,どのユニット,どういう呼び方のものをどうすればいいのか。
 御承知かと思いますが,現在BPはほとんど地方ではないわけです。北海道は今年初めてできて2本,東北,北海道ではもう数本しかない状態で,この専門教育課が提案されているようなことをやれば,北海道や東北でできるか。私はできないと思います。
 やはり拠点を作ってというのは,美馬委員が先ほど言われたようなことは,実際これから必要となってくるシーズとか,文部科学省が全省内にある新たな技術とか,それをサーティフィケートやクレデンシャルにしていくものと一体化する形でプログラム開発していくのは,まだ次のステップに向けて必要なことだと思いますけれども,最終的にどういうふうにしてモジュール化というか,どういうモジュールの作り方があるのか。それは先ほどの話のように,いろんなニーズがあるわけですから,どのニーズにはどう組み合わせができるのかということをやっていかないと,この今日の御提案だけで,いいとも悪いともいいようがないのではないか思います。
 やはり社会人の学び直しというものに対して,学習者が主体となって,自分のスキルアップであるとか,あるいは転職を目指していくものと,職場の中で今後新しいテクノロジーに対する対応をしていくものとか,専門職領域が進化していくための対応とかという,まず概念整理をやらないで,私はこの二重プログラムとかというのはもう全然効果がないと。
 こういうやり方をやっていくと,今までこの種のスキームで成功した事例があるかというと,大変申し上げにくいのですが,ほとんどうまくいっていないです。やはり先に現状分析と戦略の方向性を決めて,そのための事例と文部科学省自身が提供できる領域はないのかというようなことを。これは実はこの後出てくる,大学院の実務家教員の登用もそうでしょうし,先ほどのプログラミング教育であったり防災教育であったり,新たな専門知識を体系化した形でモジュールを作っていかなければいけないものがあるわけですから,そういうものの整理を先にしていただく必要があるのではないか。そうでないと,断片的なものだとやはり最初に申し上げたようにパッチワークになってしまって,効果が上がらないと思います。
【鈴木主査】  どうぞ,川嶋委員。
【川嶋委員】  今回の御提案は御提案として承った上で,意見を述べさせてもらいます。今日頂いた資料2の8ページ,9ページを見ると,先ほど御説明があったように,現在社会人向けで一番供給量が多いのは60時間から90時間のプログラムということであったり,9ページの具体的な事例を見ても,120時間には達していないけれども,履修者がかなり多いという事例が挙げられているところを見ると,履修時間の問題ではない。つまり履修証明プログラムの要件として120時間を60時間に下げたからといって,もちろん60時間でも何がしかの証明書が出るということ,それはいいことですけれども,実際課題になっているのは何時間必要かという制度の問題じゃなくて,今日の資料を拝見する限り,やはり中身,プログラム内容の問題だと思います。
 この9ページの具体的な五つのプログラムを拝見すると,二つ目の滋賀大学の例では,募集定員20名に対して受講者数は9名しかないですね。ほかの四つの事例は全て募集定員を超えた受講者がいますが,その内容を見ると,これは基本的に理工系の内容です。つまり,科学技術の分野は日進月歩で,様々なスキルや知識をキャッチアップしていかなければいけないということで,これらの分野のプログラムにはニーズがある。大阪大学でも医学部が提供しているものは非常に人気が高いと聞いています。
 では,日本の大学教育のボリュームゾーンである人文系と社会科学系では,社会科学系ではある程度実社会に関連したようなプログラムを提供できるかもしれないのですが,人文系の分野で社会人のニーズに対応した,社会人対応のプログラムをどのように作っていくかということは大きな課題です。そして,この問題は,社会人の学び直しの分野だけではなくて,高等教育全般にわたって日本の人文系の教育を今後どうしていくかという,非常に大きな課題でもあると,この本日の資料とかを見ていると思わざるを得ません。
 自分もその分野出身なので,人ごとのように話しているわけにもいかないのですが,繰り返しになりますが,そういう人文系の教育の在り方について,正規の学位プログラム以外のところも含めて,今後どう充実させていくのかという課題が改めて見えてきたなというのが1点です。
 それから,これも資料2の中で,民間の教育訓練機関に企業の方は依存していて,大学がそういうプログラムを提供しているとは,はなから思っていなかったという調査結果がありますけれども,これもとりわけ人文社会系になるのかもしれませんが,これまでの日本の高等教育は非常に学術志向の面が,特に人文社会系には強くて,そういう点で大学は実践的な教育訓練を提供している組織,機関ではないという思い込みが,社会的にも常識化していたのだろうということの表れかと思います。日本の大学の在り方,とりわけ人文系については,この分野を縮小せよとか,無くしてしまえということは逆に,その在り方と存在意義をきちんと考えていくことが社会人の呼び込みにしろ,留学生の呼び込みにしろ,日本の高等教育の非常に大きな課題だろうと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 溝上委員,どうぞ。
【溝上委員】  皆さんの御意見と重なるところはありますけれども,私も思うところを少しコメントしたいと思うのですが,本郷委員がおっしゃったような,大学ならではのリベラルアーツとか人文系,そういうことだけが今回のターゲットではないとは思いますけれども,民間が提供するプログラムとは違った大学ならではのというところを,どこかで押さえておかないといけないなと思うところは,やはりどういうプログラムを提供していくとしてもあるかなと思います。
 ただ,金子委員がおっしゃったように,あるいは安部委員がおっしゃったように,いろいろプログラムの多様性というのもありますし,例えばリベラルアーツの本郷先生のおっしゃるようなものは,リーダーシップとかエグゼクティブの研修とかでは非常に求められますけれども,やはり多くの社会人の若手とか,あるいは30代とか40代ぐらいのまだまだ中間の年代の人たちというのは,即戦力といいますか,すぐ役立っていくような,そういう研修プログラムが必要になるということもありますので,いろいろそうやって総体的に考えていくと,様々なプログラムが必要だという話になって,安部委員のおっしゃるように,自分の資格とか単位を取って,何に役立つかということを問わずにやれる人というのは,それほど多くないのかなと思うところもあって,そう考えたら,安部委員が人材バンクとかおっしゃっていましたけれども,この出口がどうつながっていくかは,こういう社会人プログラムの基本になるというところを改めて,重複しますけれども,私もそう思うというコメントをしたいと思います。
 私なりに思うのは,アイデアとしては出ているのですけれども,学修者の個人のニーズとか,あるいはモチベーションに依存した施策というか,考え方では,なかなか進まないところがあるのだろうと思います。幾らいいプログラムをたくさん用意して提供しても,要は,おもしろかったらそこに来てくださいと,そういう話が結構中心のように聞こえますけれども,何かそういう意味で出口を人材バンクとかで整備していく,あるいは出口につながるところをしっかり見せたプログラムとして整備していくことが必要だと,私はいろいろ御意見を伺っていて考えましたけれども,これは結局,中間支援の組織が必要ということだと思います。
 ですから大学がそれぞれできるプログラムをいろいろ用意して提供していくだけではなくて,そのプログラムを社会人とつないでいく。この組織がどういうものかというのは分かりませんけど,ただ多分大学単体ではないのだろうと思います。
 何より今回の社会人の学び直しというのは,国家を挙げての施策ですから,プラットフォームにならないといけないと思います。だから各大学の一つ一つのプログラムの話に落とし込み過ぎるのでなく,もっともっと手前の国家的なプラットフォーム,私は今それを中間支援組織みたいな言葉で表現しましたけれども,そういうところの整備も併せて進めていかないと,なかなか進まないのではないかと思います。
 最後は少し余計,この場で述べるべき意見かどうか分からないのですけれども,今申し上げたように,ニーズとか欲求というのはないわけではないと思います。ただ,そういう大学が提供するプログラムとつないでいったり,あるいは大学に行って,こういうことを学んだらこうなるだという社会人自身のビジョンとか戦略が弱い,育っていないと言ってもいいと思います。
 それがしっかり個人の中にある人はいろいろ探して,大学にもたどり着いて受けたりするのですけれども,そもそもそういう考えを持っていない社会人というのが多過ぎて,提供しないとやらないのかという話もありますけれども,そういうビジョン,自分の人生のために学び直していくのだという学びのモチベーションみたいな個人のドライブが弱いわけです。
 これはやはり日本全体の教育と社会との関係にも私は起因すると思っていて,中間組織を作っていくのが実践的なアクションだとは思いますけれども,もっと長期的には,大学生ぐらいからこういう卒業後,学び直していく機会とか大学を利用してということが,何かどこかで入っていくのが必要なのかなと。
 私はこれはどこで考えるようになったかというと,この学び直しも含んでいると思いますけど,人生100年なんです。人生100年の時代の中で,キャリアとかいろんな学び直しを何フェーズかでしていくことが想定されていると思いますが,よく現場の中で出てくる話として,60代,70代では遅いのです。そういうところに行って学ぼうという意欲がもうそもそも起こってこない。
 その中で意欲のある人たちは参加していろいろ勉強したり,いろいろ新しい社会活動を作ったりしているのですけど,そこに行こうという意欲とか,もう定年を迎えたら,あとは人生ゆっくりと。人生ゆっくりって,あと40年ありますよとかと私はよく言いますけれども,そういう意欲とかビジョンが弱いのです。そういうところでよく議論されるのは,もう60代ぐらいになってからでは遅いと。やはり50歳とか40歳ぐらいから次のステージのビジョンを見据えて,いろいろ学び直しとか社会活動,セカンド,サードで作っていく。
 この話を進めていくと出てくるのが,40代ぐらいまで考えたことがなかった人が,その40代,50代になって考えるようになるのかといったら,ならない。大学生から将来という,この人生100年はもちろん言い過ぎなので,そこまで言っているわけではないのですけど,何か国の大きな教育と社会をつないでいくプラットフォームとして,つないでいく教育の考え方とか,組織というのですか,そういうものがどこかに,今後に向けて,そういう言葉があればいいなと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 続いて金子委員,それから宮城委員という順番で,それで本日の御意見も頂いて,事務局の方でなお考えていただきたいと思います。金子委員,どうぞ。
【金子委員】  今,委員の皆さんの発言をお聞きしていて,全くそのとおりだと思うのですが,この履修証明の時間数の議論がぽっと出てくると,皆さんおっしゃっているのは,要するに,この社会人の学び直しについてピクチャーというか,もっと大きな議論が必要ではないかということがいっぱい出てきているのですが,考えてみると,大体中央教育審議会でその学び直しについてまともに議論したことが,ここ2,3年はなかったのではないかと思います。
 大学院部会はありますが,大学院は基本的に既存の大学院をどうするかという話で,そこに社会人を入れるという話は出てきますけど,学び直しについて余り体系的に議論したことはなくて,いきなりこの履修証明制度が出てくると,やはりそういうお話が出てくるのは当然で,もう少し一般的なレベルできちんと話をしておいた方がいいのではないかと思います。どこでやるのか,それは文部科学省が決めることだと思いますが。
 ただ,一つだけ申し上げたいのは,この履修制度自体は非常にその中の一部の議論ではありますけれども,これは結構ある程度きちんと考えておかなければいけないので,学校教育法に書いてあります。105条ですか。学位に準ずるようなもので,しかしその位置付けは非常に曖昧です。どのように質を保証するのか。
 今120時間と決めてあるのは施行規則ですから,その120時間の内容は何であるかとかそういうことについてはほとんど何も決まっていない状況で,さきほど申し上げたように,私は柔軟化という意味では60時間にするのはいいと思いますけれども,これは正式な学位とどう結び付くのかとか,あるいは質をどう保証するのか,私はやはり個々の大学がきちんと保証することが前提だと思いますけれども,そういったことについてはもう少し考えなければいけないのではないかと思います。
 この時間のリクワイアメントをとりあえずもう少し小さくしてフレキシブルにするのは,私はもうそれで方向だろうと思いますけれども,制度だけを見ても,もう少し考えなければいけないところはある。それから議論全体としては,この場だけではなくてもう少し違う場できちんと話した方がいいのではないかと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 宮城委員,どうぞ。
【宮城委員】  皆様の御意見に重ねてなんですけれども,濱名委員がおっしゃった大戦略というか,戦略性の問題であったり,溝上委員のおっしゃられた中間支援組織という観点もとても共感するところです。やはりこのテーマというのは,制度もとても大事ですけれども,その持つ影響力はどうしても限定的になる領域だと思います。そういう意味では,インセンティブの全体的な設計であるエコシステムみたいなものを,セクターや領域を超えて設計していくことがすごく大事なのかなと思います。
 そういう意味では,プラットフォームだとか中間支援組織だとかということが,どうしてもむしろ必須になってくるような内容になってくるのかなと思っています。そういう意味では,例えば国内外でそういう中間支援機能だとかプラットフォームが,こういう領域のエコシステムを作っていくことにおいて機能した事例を,幾つかリサーチしていだたくなどして,少しそういうことをたたき台にした議論みたいなものも,こういう場でできたらいいのではないかとも思いました。
 このエコシステムのような発想というのは,恐らく今回のこのワーキンググループ全体で,常にやはり念頭に置かなければならないものなのかなと思っています。その制度の話がどうしても中心になるのですけれども,結果的にそれが機能していくためのインセンティブだとか,関係性の全体設計みたいなものを意識していくときに,どういう座組みだとか基盤が必要になっていくのかということを常に意識した中で,事例を見ていくことも是非できたらなと思いました。
【鈴木主査】  ありがとうございます。もっとお時間を差し上げて,議論を広め,あるいは深めていきたいところですが,本日はこのくらいにさせていただきたいと思います。
 テーマ自体が社会人のニーズ,学び直しということで,非常に入りやすいとは思いますが,なかなかに広くて深くて,また個人,それから企業,あるいは人生100年といういろいろな見方がございますので,結論的なものは今日は出ないと思いますけれども,本日の御意見を踏まえまして,制度化に向けた具体的な検討を進めていただいて,その結果も踏まえて,再度本ワーキンググループで御議論いただきたいと思います。事務局におかれては,制度化に向けた具体的な検討を進めていただきたいと思います。ありがとうございます。
 それでは次に,実務家教員の登用促進についてでございます。これまでにも実務家教員等について御議論いただきまして,論点整理にも取りまとめたところでございますけれども,本日は実務家教員の登用促進の観点から,さらに議論をしていただきたいと思っております。
 それでは,事務局から資料3について御説明をお願いします。
【髙井大学振興課課長補佐】  それでは,資料3をご覧いただければと思います。
 1ページでございますが,これまでの検討状況ということで,実務家教員は専門職大学院等で幅広く活用されてきているところでございますが,実務家教員は専攻分野における実務の経験を有し,かつ高度な実務能力を有する者ということで,おおむね5年以上の実務の経験を有している者が専門職大学院における定義になっております。
 専門職大学院,大学等では,みなし専任教員制度も導入されておりまして,基本的には1年に付き,例えば6単位以上,大学院の場合は4単位以上の授業単位を担当し,教育課程等に責任を負う者という形になっております。
 現状,導入状況等でございますが,大学においては,これは実務家教員に限りませんが,企業等から毎年1,500名から2,000名程度,いわゆる採用教員数の二,三割が本務教員として採用されているような状況がございます。一方で,専門職大学院における実務家教員の導入率については5割程度ということになっております。
 おめくりいただきまして,2ページでございます。こういう活用状況が進んでまいりました中で,やはり大学においても,学生の社会的・職業的自立や,AI等の新分野への対応も含めて,実務家教員の実務に関する深い知識というものが必要になってくるだろうということで,実務家教員の導入を進めていく方策が必要だという議論がございます。
 実務家教員,これは大学院等でも一緒ですが,人数が十分でないこと,時間的制約があることで確保が難しいという部分があって,ではどういう制度設計をすれば確保が進められるか,本日御検討いただくということでございます。なお,やはりその際には,安易な利用を防ぐ観点から,要件等についての検討も必要であろうということを考えております。
 この件に関しましては,昨年11月においても御議論いただいておりまして,御意見等取りまとめたものが3ページ,4ページにございますので,こちらを御参考いただければと思います。
 5ページをご覧いただければと思います。四つの図が載せてありますが,三つ,上の二つと左下については現状の制度のおさらいということになります。そして,今後の検討の方向性をお示しさせていただきます。
 一番上の図ですが,専門職大学院における実務家教員の活用状況です。専門職大学院におきましては,実務家教員についてはおおむね3割以上を入れていくこととされておりまして,そのうち,みなし専任教員としてみなせるのが3分の2以下,このみなし専任教員については,担当授業科目は年間4単位以上という形になっております。
 先般法改正されました専門職大学,こちらにつきましては,おおむね4割以上について実務家教員とすること,そのうち,みなし専任として採用できるのが2分の1以下,6単位以上授業科目を担当する者ということになっております。
 前回のこちらのワーキンググループで御議論いただきました工学系教育改革,こちらについては制度改正はまだですが,どういう制度設計にしていこうかということで,実務家教員を入れていくのが,通常の専任教員の枠の外にはなりますが,上乗せするような形で,企業等との提携による授業科目を実施すること,これが努力義務として入ってまいりまして,その科目を置く場合には実務家教員を置くこと,その実務家教員はみなし専任教員でも足りるという制度設計になっているところでございます。
 さて,では学部段階に広く導入するに当たってはどうするかというところで,工学系教育改革のように,実務家教員の導入に関する授業の努力義務化ということは,学部はいろいろ広範でございますのでなかなか難しいところもありまして,実務家教員を必要専任教員――これは外枠ということは変わりませんが――に上乗せで配置することができる旨を規定してはどうかと。これ自体はできる規定ですので,今でもできることはできるのですが,改めて再認識するという意味で,できる規定を置いてはどうかと。
 その上で,みなし専任教員的にという言い方もあるのかもしれませんが,こういう形で上乗せをされた実務家教員については,例えば一定以上の担当授業科目数を担当する場合には,教育課程の編成等に対して責任を負う者とするように,努力義務,努めるべきとしてはどうかということを考えているところでございます。
 ここで言う実務家教員につきましては,雇用形態の別,非常勤,常勤等について問うているわけでもなく,あるいは職務についても問わない,これは大学の運営に任せるという形にはなってまいることを考えております。
 おめくりいただきまして6ページです。この改正等に向けての論点でございますが,まず学部等に導入していく実務家教員の人材像,これについてはやはり分野特性,大学による特性が非常に多岐にわたるために,一つとして,一定的なものを提示するのが非常になじまない部分もありまして,各大学において明確化されていくことが望ましいのではないかということがございます。
 質保証の部分になりますが,先ほど申し上げたとおり,今回の実務家教員については,一律にその登用を義務付けるものではなく,実務家の確保をしやすくすることを前提の制度改正になります。
 どういう形で質保証をしていくかということ,これは設置基準上であったり内部質保証システムの中でやっていくもの,いろいろだと思いますが,丸1から丸5を示させていただいております。
 丸1,丸2については,導入する実務家教員,これが大学院と同じような形でよいかという話でございます。実務家教員のところで,例えばFDの部分,実務家教員に対する体系的なFD,一般的な教員は義務付けられていますが,これを義務付けるべきかどうかということ,あるいは実務家教員の定義,これが専攻分野におけるおおむね5年以上の実務の経験を有し,かつ高度の実務の能力を有する者としてよいか,差し支えないかということがございます。
 丸3,丸4,丸5は,先ほどの,仮に実務家を置いた場合に教育課程の編成等に対して責任を負う,この考え方についてどう考えるかということでございまして,では教育課程の編成等に対して責任を負うということが,教授会への参画を想定しているのか,カリキュラム委員会等への参画を想定しているのか,どういうことを考えるべきかということがございます。
 丸4ですが,それとともに,実務家教員の教育課程の編成等に対して責任を負う者の必要単位数,こちらを6単位とするのか。一般の教員は24単位程度とするのであれば,どの程度とするのがよいのかといったこと。あるいは,仮にそういった責任を負う者を入れる場合に,実務家教員で採用している方々のうち,何割という割合を定めるべきかどうかといった論点もあろうかということで,掲載させていただいております。
 (3)のところで,こういった制度改正以外でも,実務家教員を確保していくことも目標でございますから,育成・確保等において有効な方策,これがほかにどのようなものが考えられるかということについてでございます。
 おめくりいただきまして8ページです。留意事項のところでございますが,先ほどから申し上げている話ではありますが,やはり実務家教員については,全ての大学・学部に対して一律の割合でこれらの配置を義務付けるものではないといった留意事項を付す必要はあるのではないかというところと,あとは実務家教員を導入すれば世界がバラ色という話ではなく,やはりFDはもちろんのこと,教育課程の改革や教員の意識改革による不断の教育改革が必要であること,こういった留意事項もしっかりと通知等で付与していく必要があるのではないか考えているところでございます。
 今回の議論におきましては,本当に分野ごとに特性が様々なところでございますので,今申し上げた案も含めて気になったポイント等を御議論いただきまして,また引き続き議論させていただければと考えております。よろしくお願いいたします。
【鈴木主査】  ありがとうございます。それではただいまの事務局の説明,あるいは資料を踏まえまして,御意見,御質問がございましたらお願いいたします。
 濱名委員,どうぞ。
【濱名委員】  先に質問させていただきたいのですが,最初のところ,1枚目です。大学においては,企業等から毎年1,500人から2,000人,採用教員数の二,三割が本務教員として採用されておりということなのですけれども,これはおそらく分野によって全く違うと思います。
 私や川嶋委員の教育社会学とか社会学といった領域で言うと,実務家教員と言われても,どんな人が実務家教員という分野もあれば,私どもの大学にある看護とかで言えば,ほぼ100%実務家教員ということで,この全体の二,三割というのは,今後の議論の前提として,分野ごとによる違いをまずファクトとして確認された方がいいのではないか。
 専門職大学院でこの実務家教員が入ってきたときも,その実務家が必要な領域であるという是認の下に入ってきたわけでありまして,これを全分野にという話になると,現状把握からまず明確にして,そこで問題は発生していないのか,あるいはならしてみると二,三割だけれども,分野によって物すごく分差が大きいとするならば,制度設計上もそのあたりを念頭に置いた議論が必要ではないかと思いますが,いかがでしょうか。
【髙井大学振興課課長補佐】  先ほど申し上げた企業等から毎年1,500人,2,000人というところで,例えば,いわゆる総採用数に占める実務家の割合がどれだけかを見たときに,非常に多い分野が確かにいろいろございまして,多い分野であれば,例えば商船であったり,芸術の分野であったり,社会科学も実はそれなりに多い形になっていたり,あるいは工学といったものが想定される。一方で,人文科学,理学等は統計上は少なくなっているのではないかというところがございます。確かに分野特性はそれぞれだということはあると思います。
【鈴木主査】  よろしいですか。
 そのほかいかがでしょうか。では前田委員,どうぞ。
【前田委員】  少し細かいことになってしまうかもしれませんが,実務家教員は,いつまでも実務家なのかという意見があったと思いますけれども,今は専門職大学院には実務家教員を入れなければいけないということがあるので,実務家たるゆえんというところに関しては,やはり普通の専任教員よりもチェックを掛けていかないといけないのかなと。そのことは何か考えられているのかどうかということを,お聞きしたいと思います。
【鈴木主査】  どうぞ。
【髙井大学振興課課長補佐】  実務家教員の在り方についてはいろいろ確かに何度も御議論いただいていて,5年たって,その後ずっと10年間もいた方がどうかといったことも含めてということにはなってくるかと思います。
 現状のところでは実務家自体が非常に多様だということがあって,では,どの人が実務家であり,どの人が実務家でないかというのが非常に一律に決めにくい部分もございまして,基本的な要件として,まだどうするかというのは議論のところですが,大学院と同様の形でやっていくという話はされているところで,質保証についてはまだまだ議論が必要かと考えているところでございます。
【鈴木主査】  但野委員,どうぞ。
【但野委員】  高専の状況,実務家教員のことをお知らせいたしますと,設立から高専というのは実践的教育,工学教育をやるということで,ここに言う実務家教員とか企業経験者をたくさん雇用しております。現在約3割が企業経験だというところでございます。
 それで,一つ教育の質保証等で大学授与機構等から認証評価を受けるときに,今高専が専攻科で学位を出すときに,それぞれの実務家教員の最初の資格というのは,学位を有すること,あるいは技術士を有することで採用になった場合が非常に多いのですが,その認証のところで,学位を指導できる教員で学位がないことで,非常に今苦慮しているところも実際にあります。
 ただ,今質保証等で非常に高専の中で制度をするとなると,やはりしっかりした教育研究という立場をとっている教員が,きちんと論文を書くような,基礎的な研究もしっかりやれることが非常に目立ってきていますので,だんだん実務家教員の立ち位置について最近は考えるところもあるという状況でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 福島委員,どうぞ。
【福島委員】  私自身,実務家教員の端くれとしておりますので,そういう見地も含めて申し上げたいと思いますけど,ここで言われているのは,おそらく専任教員であるのと,プログラムを担当する教員である,両方含まれているような気がするのですが,それでよろしいですか。
【髙井大学振興課課長補佐】  専任教員というのは,「一の大学に専任として,かつ専らその教育研究に従事すること」という定義がございまして,その中で,みなしとされるものについては,専任教員でない者であっても6単位を超えていて,一定の条件があればみなせるという形になっていまして,今回は,みなし専任という形ではないですが,それに近いようなイメージのものを実務家教員として位置付けていく形のことを想定しております。
【福島委員】  いずれにしても,例えば専任教員として実務家教員を雇用するというのは,既に多くの実績があると思いますけれども,前のときも申し上げたと思いますが,やはり実務家教員で実際に大学の教育に携わると,私の感覚ではおおむね5年ぐらいでなかなか厳しいなという状態になっていく。要するに研究の上でなかなか十分できないということがあって,難しいということがあるので,専任教員としてさらに実務家教員を積極的に登用せよということであれば,研究上の業績もきちんとないといけないのかなと。
 それからここでも指摘をされていますけれども,やはり管理運営のところで,今までの教員に対して大学としてきちんとやってくれというのは,教育と研究と社会連携と,そして管理運営,この四つについてはきちんとした仕事をやってくれということで,それについての評価をするわけですから,教育だけの評価というのは,大学として本当にいいのかどうなのかと思います。
 現に私どもの大学でも,実務家で教員になっている方も何人もおられますけれども,その四つとも全部要求しているということがございますので,そのあたりはやはり積極的に奨励する場合でもきちんとやる必要があると思いますし,それからFDについても,大学院の場合はともかくとして,とりわけ学部段階での教育という場合には,実務家の方々にはどうしてもFDについてはきちんとやってもらわないと,いわゆる学力レベルの高い大学はともかく,そうでないような大学の場合には,学生に対してどう教えるか,学びの動機付けをどうするかということについては,きちんとやっていただくようにしなければ,せっかくの知識が全く学生たちに通らないことになりますので,そのあたりのことについてはやはりきちんと位置付ける必要があるかなと。
 実務家教員の場合でも,企業を定年退職して来られる場合と,途中で退職される場合とあると思いますけれども,それらについてもいろいろ配慮が必要なのかなとは思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 続いて,金子委員,それから濱名委員という順でお願いいたします。
【金子委員】  基本的な問題が幾つかあると思いますが,一つは今おっしゃったように,この専任教員というのは採用のときのカテゴリーなのか,ずっと専任教員という定義が付いて回るのか。専門職大学院の場合は,この付いて回るというか,そういうカテゴリーを作っているのだと思います。統計が大体できています。やはりそういう人はそういう位置付けになっていると思いますが,これは名称の問題とも関係しまして,准教授,教授という名称をそのまま付けて,その中で専門職,又は専門職以外という身分が続くのかどうか。
 今までの議論を聞いていると,その両方があるのではないかと思うのですが,採用するときに,その資格として実務経験がある人となっていて,あとは入ってしまったらば,それでもう普通の教員と同じ。これはかなり基本的な問題で,やはり身分としての教員,別のカテゴリーを作るのかどうかという問題。
 それは今おっしゃったことに関わりますが,普通の教員は教授の資格として,一応研究業績を持っている者となっています。学位があると同時に研究業績を有する者と。業績というのは,学術的には今までの過去の業績と同時に,これからも自立的に研究教育をやっていく能力を持っているのだということを暗黙に意味しているわけですが,専門職の場合は,前に専門職にいたから,常にそういったアップデートしたものを持っているとは限らない。ですからこれをどのように考えるのかということは非常に重要です。
 端的に言えば,FDも重要ですが,大学のFDは教え方について教えられますが,技術的なアップデートは大学の外にあるのです。だからこそ実務家教員を必要としているので,そういった意味での専門的な技能がアップデートしているかどうか等について,私は定期的に評価をすべきだと思います。この評価の問題は本当はもう少し大きな問題があって,日本の大学の教員について一定期間における評価というのは,どのように使うかは別として,日本の大学では遠ざけられていて,タブーになっていますが,私はやるべきだと思います。
 前に言いましたけど,日本の大学の先生は教授と准教授の差が6対4くらいです。圧倒的に諸外国と比べて教授が多い。どうも年功的に決めているところがあって,その評価の問題というのはどうしても避けて通れないのだと思いますが,いずれにせよ,そういった問題をはっきりしないと,これは導入の時点は,こういう人があり得ると言うのはいいと思いますが,その後でもいいです,仕方がないのかもしれませんが,今言ったような問題をきちんと整理しておかないと,非常に無秩序な問題になって,各大学が責任を持って決めると言いますが,これはほっておけばかなり,教員の力が強いところは何もやらないということになり得るだろうと。原則的に教員の力が強いのが悪いというわけではありませんが,何らかの秩序は考えておかなければいけないのではないかと思います。
【鈴木主査】  濱名委員,どうぞ。
【濱名委員】  おそらく設置基準は最終的に下げるつもりでやっておられるだろうと思います。現在の設置基準は,今,金子委員がおっしゃったところで言うと,なぜ教授が多いかというと,設置基準上50%は教授であるという定めがあるわけで,それを触らない限りにおいては,教授を一定数プラスアルファで確保しておこうという結果がおそらく60%ということで,それを年功制でやっているのかどうかは,大学によって違うと思います。
 ただ今回の御提案で非常に分かりにくいのは,5ページ目の米印のところで書いてある実務家教員についての注釈を見ると,実務家教員というタイプを大学教育の中に取り込もうということなのか,教育に当たる教員組織自体の見直しの中に,その構成を高めていきたいということなのかが,どちらとも取れるという提案だと思います。
 まず基本的に先ほど私が御質問したように,分野によって実務家教員というものの資格であるとか条件は,かなり違うし実態も違うので,一律にとか各大学にお任せするというのはやめた方がいいと。各大学にお任せすると,カオス状態が起こるので,それはやはり一定の例示であるとかルールというものを示して,分野別の実態把握を十分した上でやるべきだというのが,まず1点目です。例えば看護師の実務家教員,経験5年の看護師なんて,とてもでないですけどという状態だと思います。だからそれは分野による整理がまず必要だろうと。
 それとFD云々のところの話で言いますと,要するにプラスアルファで,この実務家教員をどう扱うことを期待して議論するのかということだと思います。だから新しい要素を持ち込んでもらうためだったら,プラスアルファで上乗せだから別に構わない。だけど,それがいわば学修成果の取りまとめとメタ化していく,端的に言えば卒業研究や卒業論文の指導をやっていくことまで期待するのかによって変わってくる。
 どちらでもいいと書いていますが,卒業論文の指導をする教員が週何日かしか来ない教員でやれるのかという問題は出てくるので,やはりそこはどちらでもいいという場合には,名称と立場による整理は,いずれにしてもセットで行わないと難しいのではないかということが一つです。
 それで,FDに過剰な期待はされない方がいいと。FDを各大学が義務化して,全国の大学は今の状態ですから,私どもの大学では今,その実務家教員に卒論を持たせるのはやはりリスキーだということで,1年間を通じて高等教育開発センターというところに,トレーニングプログラムをやってくれと言っています。
 その上時間がかかるので,そのことを教員にやらせようとして,あるいは教員の予備群にやらせようとしたら,一定のサーティフィケートプログラムを提供する。今日の専門教育課の話ではありませんが,それは逆に言うと標準化はある程度できるし,モデル化できる分野の一つかもしれません。
 だけど,そのことを考えていくと,その役割と名称と雇用形態のものを,いついつにどうでも構わないというよりは,やはり考えられるパターンを例示した形で議論した方がいいのではないかというのが一つです。
 それともう一つは,「上乗せで」と書いていらっしゃいますが,上乗せするメリットが大学にあるのかということです。今のところ何もない。要するに,今でも恐らく各大学,実務家を非常勤で雇っているケース,だから非常勤で雇うのは実務家が雇いやすいわけですから,それと同じわけですから,これをにぎにぎしく言わなくても,恐らく今調査した段階でも,非常勤の中で実務家がどれぐらいいますかというと,すごい数字になりますよ。
 それでもう既にやっていますと,外から言ってこられているところにお返しすることだって,現状としてできます。だからやはりそれはきちんと実態把握をしてやっていくのと,それをこういう形でやっていく狙いとメリットというものを,社会に対しても大学に対しても,もう少し説明できる整理が要るのではないかと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 美馬委員,どうぞ。
【美馬委員】  もう一回ここで何か目的がよく分からなくなってしまったのですけれど,実務的な経験がある人が入ってくることによって,教育の内容が豊かになる,アップデートになるというのはいいのですけれど,採用するとき,あるいは採用した後に,こういった実務家教員,みなし専任教員として入ってきた人をなぜ分ける必要があって,その名称をずっと延々使い続けるのか,どうしてここまで踏み込んでやる必要があるのかがよく分からなくなりました。
 つまり,例えば今までも大学の中で専任教員として,私の勤める大学は設置審に出して通ってきたわけですけど,その中で芸術系の教員,デザイン系の教員はいます。情報系の大学ですけど,そこに数名いて,その人たちは,教育できないのかというと,我々は情報系の教員とチームで教えていますし,情報系もそういう企業から来た人もいますし,実際採用した後は,専任教員は皆同じで,毎年研究業績も評価するし,教育業績も評価するし,運営や社会貢献というのも教員評価でしている。
 だからそこで実務家教員ということを分けて,どうしてそのような区別をしなければいけないのかというのがよく分からなくて,その分野によっても,今まで,例えば芸術系やデザイン系の教員で,修士しか持っていない人とか,実は学部卒の人でいても,資格を取って実際に大学院の指導をして,優秀な研究者にもう育っているわけです。それなのに,そういう人たちをなぜ実務家教員として,制度として専任教員と分けて,何か差別化しなければいけないのかということがよく分からないので,もう一回改めてそこのところを教えていただきたいと思います。
【髙井大学振興課課長補佐】  実務家教員,みなし専任教員については特にという形にはなるのでしょうけど,例えば実業界の方で,本務を忙しく持っていらして,大学に短時間しか来られない方であったり,非常にその分野においては顕著なものを持っているけれど,必ずしもアカデミアに準ずるような資格を持っていらっしゃらない方,そういった方にもやはり教育に入っていただいて,最先端の知識なり技術なりを教えていただく必要があるであろうと。そういう方々を一定数入れるためには,やはり仕組みが何らかの形で必要であろうということも含めて,制度上の位置付けがされてきたところかと思います。
【美馬委員】  それは非常勤ということですよね。だったら今まで非常勤講師でそういうことをやっている人はいっぱいいるのではないですか。専任教員ではなくて,本務が忙しくてと言って,そっちでいるのだったら別にそれは専任教員じゃないわけですよね。
【鈴木主査】  どうぞ。
【三浦大学振興課長】  まさにおっしゃるとおりでございまして,言い方としては非常勤の教員としての位置付けを今回,特に実務家背景の人の場合どうするかということでございます。だから最初の方で御議論がありました,フルタイムで来るのであれば,5ページの表のプラスの中じゃなくて,設置基準上の専任教員としてカウントできますので,その下の四角の方の中にフルタイムで入れても構わないわけです。
 今回はそうではなくて,いわゆる非常勤と今言われているような方々についての位置付けをどうするのかと。下の四角の中,設置基準の必要専任教員数としてカウントできるかどうかというときに,「みなし」という言葉が出てきますので,今回はそのカウントの中の外の話としての位置付けという形で御提案をしていますので,「みなし専任」という言葉も今回の中では余り関係ありません。
 その上で,一般に非常勤講師ということになりますと,教育課程の編成に責任を担う,責任を持つという位置付けになることはまれでございますので,そういった方でも,そのカリキュラムの編成,構成に当たって参画していただけるような制度的な裏付けができないかなということを,今回意図しているものでございます。
 それで,その前にございました実務家教員の賞味期限みたいなものはいつまであるのかという話は,今回の場合で言えば,フルタイムで来ていただくわけではありませんので,実務を持ちながらということを一応前提としておりますので,ないのかなと思いますが,もちろんその議論というのは極めて重要なことだと思いますので,今回専門職大学も制度化されました,また専門職大学院の中での実務家のカウントの仕方をどう考えていくのかということは,もちろんきちんと議論していただかなくてはいけないと思っていますし,蛇足ですが,実務家としての賞味期限だけでなくて,私自身はアカデミアの先生方についてもきちんと定期的にチェックをすべきだと思います。実務家の先生だけが悪いわけではないと思いますが,これは蛇足でございました。それもきちんと別途検討していかなくてはいけないことかなと思っております。
【美馬委員】  今ここで議論している実務家教員,みなし専任教員というのは,設置審のときにどうするかというだけの話なのですか。設置審に出すときにこれをカウントできるかどうかということで,その制度をどうするかという話だとしていいのですか。
【三浦大学振興課長】  この5ページの表ですと,丸1とか丸2,専門職大学院とか専門職大学のことは,カウント上どうするのかというのは,まさにそのことでございます。今回の話は,設置審上どうこうという話とは,直接的には関係ございません。
【美馬委員】  何かよく分からない。
【金子委員】  関連して。
【鈴木主査】  金子委員,どうぞ。
【金子委員】  要するに,おそらく今度のアイデアは,端的に言うと,私は東京工業大学あたりから出てきた案にかなり対応しているのではないかと思いますが,工学系のアイデアとしては,非常勤で来て,この科目を担当してくださいといって,一定の時間担当するだけでは,現場で何か分かっているのかよく分からない。その現場の先生に参加してもらって,会議録も作って,そこの責任を持ってもらう,そういったことが必要なのではないかという欲求があると思います。そういったことができるようにするのが今回の提案だと思います。
 ですから非常勤でできないことはあるわけですが,今はその代わりできているところもあるわけですから,こういった制度を使うべきときにはどれくらいのハードルというか,あるいはどういうリクワイアメントがあるかということははっきりしていかなければいけませんし,私は教員の定期的な評価というのは絶対必要だろうと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 それでは,川嶋委員,そして上田委員,お願いします。
【川嶋委員】  美馬委員の御意見にも関連しますが,基本は教育課程ありきで,実務家教員をどれだけ入れるかという問題ではなくて,それぞれの大学,学部でどういう教育課程を編成するか,それを教えるにふさわしい教員はどういう人かというところが原点だろうと思います。これは三浦課長がお話しされているとおり,やはり今の大学教員だけでは,今の社会で活躍できる人材を育成するような教育課程は不可能だろうから,実社会の人も教育課程編成に参加させて,もう少し実践的な教育課程にさせようという趣旨だろうと思います。
 ただし,さらに検討すべき幾つか論点があると思います。既にこのペーパーにまとめられているのと重なりますけれども,一つは,もし教育課程の編成に責任を持てるような形で,実務家教員のみなし専任教員を参加させるということであれば,職業大学では年間6単位を要件とすると先ほどの資料に出ていましたけれども,どなたかもおっしゃっていましたが,この6単位というのはもともと専門職大学院で,修士相当の修了要件の30単位の中の6単位で5分の1ぐらいのコミットメントということなので,それなりの責任があるのかなと思いますけれども,124単位のうちの年間6単位でそこまで求められるかどうか。資料に出ていますけれども,現在専任教員の教育負担というのは学期ごと12単位で年間24単位ぐらいだということです。
 そういう中で,6単位を担当するだけで本当に教育課程の編成に十分コミットできるのかどうか疑問です。それからみなし専任というのは専任ではなくて,別に本職を持ちながら大学の教育も担当することになりますので,その辺が6単位という条件で十分なのかということが懸念されます。
次の,そもそもこれも前の議論に出ましたけれども,専門職大学院ができたときに,実務家教員という一つのカテゴリーができましたが,諸外国では,教員を幾つかのカテゴリーに分けることは余りないということなのですが,現行の制度の中で実務家専任教員については,どれくらい実務経験が有効なのかという,いわゆる賞味期限が問題になっていますが,専門職大学院の先駆けだったロースクールが,法曹界から2年から3年でローテーションで実務家教員を派遣してもらっているように,賞味期限が切れないためのローテーションの仕組みが不可欠かと思います。
 その場合には当然FDが必要になりますけれども,既に専門職大学院で実務家専任教員の賞味期限の問題が顕在化していますが,このみなし実務家専任教員の場合は企業で働きながら大学でも教えるという形で,賞味期限切れということはないかもしれませんけれど,実務家教員の専任教員の在り方についても併せて,この際検討する必要があるのではないかなと思います。
 以上です。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 上田委員,そして濱名委員,お願いします。
【上田委員】  これについては前回も申し上げたところですけれども,よしあしが両方ありまして,先ほど来伺っていますと,例えば野球のピッチャーで言えば,先発完投型と,そこでリリーフで出てきて1回ぴしゃっと抑えて去っていくというか,あとは左バッターのときだけ出てきて,その人だけ打ち取って,快刀乱麻のそのときだけ切れで去っていくというのがあるわけで,そういうタイプをしっかりと分けてもらわないと,ミスマッチが起きると大変なことになると思っています。
 専任教員でやはり先発完投型はそれなりに9回まで行くということを考えて,いろいろと研究教育実績を積み上げながらやる。私のところでも人文社会分野で相当今回の改革で実務的な,もちろん名声のある作家であったりいろんな方を入れたのですけれども,企業でものすごく経験があると。でもやっぱり授業でものすごく苦労されています。
 だからだてに余り名前は出ていなくてもこつこつやっていた方は,15回の授業を4パターン,5パターンできる授業計画を持っていて,やっぱり積み重ねているわけで,そこでびしっといい球を投げられるのだけれども,果たしてその授業ができるか,あるいは大学院生まで含めて幅広い指導ができるかということになると,その方も単なるFD研修だけではだめで,3,4年ぐらいはものすごくシラバスを精緻化していったりとか,いろんなことを勉強していかなければいけないということはよく分かります。ですので,そういう意味ではその方も,先ほど金子委員がおっしゃったように,研究教育能力がどのくらいあるかということは,相当精査して採っていかなければいけないと思います。
 今度は工学系にしても,やはりその分野でものすごく実績を上げたということで乗り込んできても,結局いろんな研究教育,特に教育なんかのところで果たして息の長い指導ができるかどうかというのは,その方の資質によるところだと思います。
 そういう意味では,1回ぴしゃっと抑えて意気揚々と去っていく方と先発完投型をどういうふうに併用して,どううまく組み合わせるのか。それが逆のマッチングになると悲惨なことになるわけで,先ほど来三浦さんもおっしゃったように,先発完投型で育てているはずの専任教員が,1,2,3,4回と打ち込まれているのに,マウンドからおろせないということがあるわけで,そのことを相当おっしゃっていると思います。
 だけど,それをどうしたらいいのだということになりますが,そうすると全部のこつこつやっている教員に,1回ごとに評価をやるみたいなことを今やっているわけです。そうすると,先発完投で積み重ねている人を,この1回でおまえはどういう成果を出したか,2回で成果を出したかと,今度リリーバーに求められているような評価を,その先発完投型の人に課してしまうと,ものすごく疲弊して,完投できなくなってきます。
 だからそこの評価をどう両立させ,どういうタイプがあって,どのように使っていくのか,もう少し全体のシステムとして使えるようにしてもらわないと,ただこれだけばさっと出して,あとは大学で考えてくださいねといって,逆のマッチングがむちゃくちゃ起きてきたときに,教育現場はものすごく疲弊していくと思うので,そこら辺をよくお考えいただきたいなと思います。
【鈴木主査】  濱名委員,どうぞ。
【濱名委員】  大分議論させていただいて,狙いと課題が分かってきたような気がするのですけれども,これはもし誤った形で伝わると,文部科学省は実務家教員を優先して採用したがっている,したがって,大学院に行ってアカデミシャンとしてのトレーニングをやっても,大学の教員になる道が閉ざされていくというミスリードになってしまっては困るというのが,まず第1です。
 そのために,だんだん分かってきたことは,この際やはりなんちゃって教授の名称の整理と併せてやっていくのが一番妥当ではないか。すなわち,名称と役割のパターン化,つまり今でも非常勤でもコミットしてやっていらっしゃる大学もあるだろうし,大学にコミットするときに,何とか教授でも教授という肩書きで,あるいは一定の機会とか役割が保証されることを欲する方とか,それに参画してやろうという方がおられるのも事実ですから,だからそのことについてはもう少しきちんと整理をしていった方がいい。
 ただしその場合に,分野ごとの状況をきちんと見定めていただきたい。必要性であるとか果たすべき役割。例えば看護の状態で言うと,ほとんどの科目を複数教員で担当するわけです。しかし何単位担当と言っても,さきほども川嶋委員が言われたところでも,6単位だって全然意味が違うわけです。名目は6単位になっているけれども,10人で持っている6単位もあれば,1人で担当される場合とか,美馬委員が言われたみたいに複数で担当される場合もあるので,その辺の状態とか,例示とかももう少し整理して情報を出していかないと,きちんと伝わらないのではないかということが一つ。
 それともう一つはインプリケーションとして,せっかくこの実務家の議論をしたのだったら,私は前から申し上げているように,実務家教員がメタ化したり,あるいはちゃんと授業できることと教育をすることは違うということで,実務家教員の養成プログラムというのはきちんと考えていった方がいい。サーティフィケートプログラムという形です。産業界の方には,大学で教えたいと思っている方は山ほどいると,某大学の実務家教員に言われていました。
 非常にハードルが高いのは,実務家経験でほとんど募集はされない。博士取得者,若しくは同等の教育研究の実績がある者とか,レフェリージャーナル何本以上とかという業績で最初に公募されるので,実務家教員は,その一般の採用のところには手は挙げられないと言っていました。その方はそうでない大学に公募で応募して,なれて,その後むしろ自分が教えていくためのトレーニングをある程度4年間やって,やっと今まで何とかセンターだったのが,学部,学科に所属できるようになりましたという話を聞きました。
 だからやはりそういうプロセス等を整理していかないと,先ほどのお話と重なるところがあるとするならば,各大学とかにお任せしますとなると,おそらくこういう制度改正で問おうとしていた,あるいは改善しようとしていたポイントがぼけてしまうので,そこは丁寧にやった方がいいのではないかと思います。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 どうぞ,三浦さん。
【三浦大学振興課長】  今の最後の点についてだけですけれども,先ほどのまさに履修証明の議論ではないですけれども,この実務家教員のいわゆる広い意味のFD――と言ってしまいますけれども――については,特に各大学のときの取組というのはもちろん重要だと思いますが,いかに社会的な通用性がある取組を履修証明というか,サーティフィケートという形で出していただけるかというのは,我々としても課題としては大きく認識しておりますので,それは来年度以降どういった形があるのか,具体的に検討していきたいと思っています。
【鈴木主査】  ありがとうございました。
 美馬委員。
【美馬委員】  一言だけ。
【鈴木主査】  一言だけお願いします。
【美馬委員】  はい。一言だけ。そうしたら,さっきの前段に議論していた社会人の学び直しのところに,実務家教員養成モジュールとかを作って,教員養成みたいなことに1年間通って,そういうものを作るというのはどうでしょうと思いました。
【鈴木主査】  御意見として承っておきます。
 ありがとうございます。本日の御意見も踏まえまして,本ワーキンググループで引き続き御議論をいただきたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。
 時間が迫っておりますが,最後に認証評価制度についてであります。これまでにも本ワーキンググループにて御議論いただきまして,論点整理にも取りまとめたところですけれども,これまでの御意見を踏まえまして,事務局にて資料を準備していただいておりますので,説明をいただいて,委員の皆様から御意見を頂きたいと思います。
 事務局から資料4について説明をお願いいたします。
【竹中高等教育政策室室長補佐】  それでは,お時間もありませんので簡潔に御説明いたします。
 まず,資料4は4枚物で用意しておりますけれども,1ページ目,2ページ目は既に論点整理でごらんいただいている内容から,細かい文言修正は一部しておりますけど,ほぼそのままになっております。
 そして4ページ目は参考で制度の仕組みについて付けておりますので,本日は3ページ目,新たに加えた部分について御説明いたします。まず3ページ目の一番上,内部質保証に関すること,これは論点と検討の方向性として1項目加えたものですけれども,認証評価機関は,内部質保証の構築状況につきましては,この4月から共通の評価項目ですとか重点項目にしておりますけれども,その仕組みだけではなく,当該大学の教育研究活動の質的改善の状況を確認してはどうか,つまり内部質保証がしっかり機能しているかどうかについてまで確認してはどうかという検討の方向性でございます。
 そして(4)具体的な対応例でございますけど,これは2ページ目からの(3)論点と検討の方向性のそれぞれの項目に応じた対応としております。
 まず,効率的・効果的な評価ですけれども,認証評価機関の裁量によるものの,複数回にわたり認証評価を受審している大学等について自己評価書の記載内容を大幅に縮減したり,「財務に関すること」について,ほかの評価等を活用したりする。
 続きまして,認証評価機関は,大学のすぐれた取組を積極的に評価結果に記載するとともに,文部科学省と連携し,認証評価と評価結果における各大学等の特色ある教育研究活動を積極的に発信する。
 これまで委員の先生から,好事例についても積極的に発信してはどうかという御意見がございました。それを踏まえまして,好事例だけではなく,認証評価の制度そのものについても,やはり社会的な知名度というのはまだなかなか高いものではございませんので,制度そのものと結果における各大学の特色ある教育研究活動について,評価機関と文科省が連携し,積極的に発信することについてお示ししたものです。
 続きまして,法人評価と認証評価の関係性についてです。こちらは,「財務に関すること」は法人評価の結果を認証評価に活用すると整理するほか,より効率的な評価を目指し,引き続き検討するとしております。こちらについては,法人評価と認証評価は目的が異なりますので,そこは引き続き緊密な検討が必要ではないかと考えているところでございます。公立大学法人評価についても同様でございます。
 続きまして,分野別認証評価と受審期間についてでございます。認証評価機関は,評価結果において自らが定める大学評価基準に適合しているか否かの認定をすること,また受審期間に関すること(機関別認証評価と分野別認証評価をそろえること,大学評価基準に適合していないと認定された場合は受審期間を一時的に短くすること)については,認証評価に関する法令において規定するとしました。
 まず認証評価機関が,自らが定める大学評価基準に適合しているか否かの認定をすること。実質的にただいま行っているかと承知しておりますが,これをきちんと法令において規定してはどうかということでございます。
 また受審期間につきましては,今,機関別と分野別のそれぞれの年数が異なっておりますけれども,やはり分野別と機関別が年数が異なっていて,それぞれ別々に行われていることで,認証評価の目的である,みずからの状況を見直し,改善につなげていくことに支障がもし出ているんであれば,両者を一体的に行うことをもって,よりその改善に結び付けることがいいのではないかという問題意識でございます。
 また,評価基準に適合していないと認定された場合は受審期間を一時的に短くすることというのは,以前から論点整理でお示ししているとおり,評価結果を改善につなげやすくする観点からでございます。
 最後,内部質保証でございますけれども,認証評価機関は,今後,学修成果等に関する情報公開が各大学に義務付けられた際には,共通の定義に基づいて整理された各大学における学修成果等のデータを相対的に活用し,単位の取得状況や学修時間等について,人材育成目的や規模が近い大学の状況等と比較したり,経年比較により改善状況を確認したりすることにより,教育研究活動等の改善を継続的に行う仕組み(内部質保証)がしっかり機能しているか否かの確認を行う。
 また,教学マネジメントに係る指針が策定された際には,その内容にも留意することとするとして,これは,今学修の質保証の向上について御議論いただいている状況によりますけれども,それが取りまとめられた際には,そこで公表受講等もしされた単位の取得状況ですとか,学修時間について,ほかの大学や自らの大学の経年変化によって,しっかり内部質保証が機能しているかどうかの一つの指標として,それを認証評価機関に活用してもらうことを考えております。
 教学マネジメントに係る指針の留意については,以前御議論いただいた内容と重複しておりますので,転載という形で記載しております。
 以上でございます。
【鈴木主査】  ありがとうございます。ただいまの事務局の説明,あるいは資料を踏まえまして,御意見,御質問がありましたら,どうぞお願いします。
 前田委員,どうぞ。
【前田委員】  退席させていただきたいので先に失礼いたします。
 一つは,今回適合しているかどうか,認定ということをきちんと明確にするということがありましたので,それに関しまして,今認定というラインが機関ごとによって,もしかしたらまちまちかもしれない。ここのところはきちんと,誰がどうやって見ていくのかというシステムが,もしかしたら必要なのではないかということです。
 要するに,認証評価機関の評価の適切性というのは,やはり例えばどこかのところを受けて落ちて,次のところを受けて受かったときに,それはそこが改善しているから受かったのかどうかという問題も出てくるかもしれないということが一つあります。
 あとは法人評価と認識評価の件ですけれども,もちろん効率化できるといいとは思いますが,認証評価は内部質保証を重視するということをうたっているのですが,法人評価には内部質保証という観点はないので,最初に法人評価ありきではなく,やはり大学がきちんとした質を持って運営しているということを,認証評価と法人評価とそれぞれに対して提出していくという考え方が,本当は先にあるべきだろうと思いますので,法人評価をやっていれば認証評価が軽くなるという考え方は,やはり少し違うであろうと思っております。
 以上2点が一番言いたかったことです。
【鈴木主査】  ありがとうございます。
 篠田委員,それから濱名委員,お願いします。
【篠田委員】  資料の2ページ目の冒頭のところに書かれております,もう既に評価をかなり積み上げてきておりますので,これまで特段問題なかったところについて,評価データ,評価の仕方について縮減をしていく方向について,これは賛成ですし,それから2番目の丸のところに書いてある,特にすぐれた取組について積極的に記載をする,あるいは各大学の特色ある教育研究活動を推進させるような評価ということで,画一化の方向ではなくて,むしろ個性を伸ばしていく,励ましていく方向の評価という基本的な方針については,非常に重要なところだと思っておりますけれども,具体的な評価基準,特に教育に関わる評価という点については,これは評価基準に持っていけば,かなり全大学を拘束するもので,影響は非常に大きいと思いますので,ここのところを評価基準として,あるいは評価をしていくに当たっては,かなり慎重にといいますか,留意をしながらやっていかなければいけないと思います。
 3ページ目のところで書かれている,特に内部質保証について,今回追加されたということですが,内部質保証は,今,前田先生がおっしゃっているように,次のサイクルの評価基準の最も重視するところであります。ただ,今回の評価について言うと,内部質保証のここで書いてある文言で言えば,「構築状況」というところに重点を置いた評価になっている。つまりシステムを構築して,システムが機能して,稼働しているかというところを見ていくところが,各評価機関の基準を見ても中心だと思います。
 成果をどう見ていくのかという点で言うと,各教育の成果は,自らのディプロマポリシーだとか,人材養成目標に照らして,やはりきちんと自ら,こういう成果が上げられていることを証明する,そういう証明ができているかを評価することに中心を置いていますので,この文章の中の後段に書かれている「質的改善の状況を確認する」ということをどのようにやっていくのか,つまり成果を何で見ていくのか。
 他大学の平均的な状況だとか,統一したある種の基準を作って見ていくということになると,これは一方で画一化を促していく方向にどうしても行かざるを得ませんので,このあたりのところを非常に注意して見ていかなければいけないのではないかなと思います。
 その点で,同じページの一番最後のところに,内部質保証の具体的なやり方について書かれているわけですけれども,この情報公開が進んでくれば,各大学が教育の質保証について,あるいは内部質保証についてどんな取組をしているのか,どんな成果を上げているかというのは当然出てきますので,それと比較をすることは,一つの重要なやり方だと思います。
 ここに述べられているような単位の取得状況だとか学修時間等について,規模が近い大学の状況と比較したり,こういうことは一定の参考にはなると思いますけれども,これは質的な改善状況とは少し違うとも思います。ですからそこのところに踏み込むときに,一体どうしていくのか,どのように迫っていくのか。
 その次にありますような経年変化で見ていくということですと,これは自大学が,過去はこうだったけどこういうふうに成果を上げてきているんだということ,このあたりをエビデンスで示していくことで可能かと思いますけれども,どのようなイメージか,もし何かあれば御説明いただきたいということと,やはりこのあたりの基準,特にこれは認証評価機関がそういう評価をしろとなっておりますので,慎重にしていただく必要があるのではないかという意見も併せて申し述べたいと思います。
 それからもう一つ,前のページに戻っていただきまして,2ページの三つの丸のところの「財務に関すること」で,これは私立大学が独自に実施する外部評価等において,内容,期間,体制に関する一定の要件を満たしたものについては,財務の評価を受けていると判断することになっておりまして,これも非常に方向としてはいいと思いますけれども,この場合に独自に実施する外部評価というのは,具体的にはどういうイメージでおられるのか。
 これは御質問だけですが,外部評価の機関,第三者評価の機関というのは,現に存在しているものも幾つかありますので,そういうのを使うということももちろんあるのかもしれませんけれども,ここで言われているのは,大学が独自に,つまり自分が外部評価を委嘱して,委員会を作って,それで定められた書式というか,様式に従って,きちんと経年的に評価を受けていると認定するという意味合いで取ってよろしいかどうか,このあたりのところを御説明いただければ。
【鈴木主査】  いかがでしょうか。
【濱名委員】  先に言っていいですか。
【鈴木主査】  どうぞ,濱名委員。
【濱名委員】  内部質保証,私は余り信用していないというか,内部質保証という言葉が,大学外とか教育界以外にほとんど遡及していないというのが私の現状認識で,というのは,内部チェックしていますということを製造業が言ったとして,それは社会的に通用しないわけです。だから,内部質保証と言いますが,仕組みと今も篠田委員がおっしゃいますが,アセスメントポリシーの立案状況は14%しかやっていないわけです。
 だから,内部チェックをやっているのではれば,内容,方法,尺度を明確に,それぞれDPは各大学の自主性を尊重して定めているわけですから,それをやるのがまずベースだと。それをやっていれば,逆に言うと,評価疲れはなぜなるかというと,評価機関とか評価の機会ごとに違うわけですから,各大学が自分のところの到達目標を達成できているかどうかの内容,方法を明示して,それをやっていくことであるならば,何のロスも出てこないというのが,私が申し上げたい第1点です。
 評価結果をもっと活用されるというのであれば,自己評価点検報告書のPDFが奥の方にあるのではなくて,バナーがちゃんと頭に出てくるとか,そのサマリー,PDFを読んでもらえないわけだから,その強みとか弱みをちゃんと出してもらうようにというインセンティブなりを文部科学省がやるべきだと思うし,認証評価機関は,いいところを評価したならば,そういうもののデータバンクを作って,文部科学省がこうして作ってくる資料の中にそれを参考にしているか。私は参考にしていないと思います。つまり認証評価機関の各大学の強みのところのバンクの中から,リファレンスできるような関係が出てくれば,認証評価でいいと認められたことがプラスになってくるという,好循環につながるのではないかというのが一つです。
 もう一つは,認証評価を受けることだけ,制度設計の段階ではそれでよかったのですけど,最近だんだん世知辛くなってきて,定員充足率とか超過率が0.01倍上がったり下がったりすると,来るお金が違うのに認証評価を受けただけで評価されなくてもという,この仕組みでいいのかと。
 大変外圧がいろいろ掛かってきて,いろんな状態で外から持ってこられた尺度で,大学に来るインセンティブマネーとかが変わっていく状態であるにもかかわらず,認証評価のこの在り方は認証評価を受けないでも,受けただけでいいというのは,制度発足当時と状況が変わっているので,この点については再考していく必要があるのではないかということです。
【鈴木主査】  ありがとうございます。そのほかございますか。
 この認証評価につきましても,引き続き御議論をいただくことにしておりますので,今日結論を出すということではないのですが,事務局で何かございますか。
【竹中高等教育政策室室長補佐】  篠田委員から御質問のあった点について。
 まず,1点目の内部質保証が機能しているかどうかの確認として,単位の取得状況とか学修時間等について,ほかの大学のものと比較するということについて,確かに内部質保証がしっかり機能しているかどうか確認することと,学生の学修成果が,完全にイコールではないと思いますけれども,一つの指標としてこのような学修時間とか,教育内容がしっかりと改善されていれば,学生の学修時間の方にもその時間が延びるとかして,反映されるのではないかという考え方でございます。
 そしてまた,自らの大学の経年変化だけですと,ほかの大学より明らかに低い水準であっても,前年より改善していればそれが評価されるというよりは,やはりある程度ほかの大学との比較をすることを通じて,そこに問題意識を持ってもらう,そこについて改善してもらうことが大事ではないかというものでございます。
 そしてまた,2点目の財務に関すること,特に私立大学の独自の評価でございますけれども,ここは委員御指摘のとおり,認証評価と同様とか,それ程度以上の第三者評価を実施していると認証評価機関が判断すれば,その評価結果を認証評価の方に流用できるというものでございます。
【鈴木主査】  ありがとうございました。本日の議題は以上となります。
 最後に,今後の制度・教育改革ワーキンググループの開催日程等について,事務局から説明をお願いいたします。
【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。資料5でございますけれども,次回は第15回ということで,6月29日の金曜日,15時から17時ということで予定しております。開催場所については追って御連絡をさせていただきます。
 資料については,御送付の方々は,机の上に置いていただければと思います。
 以上でございます。
【鈴木主査】  それでは,本日の議事は終了いたします。どうもありがとうございました。
――了――

お問合せ先

高等教育局大学振興課