将来構想部会(第9期~)(第23回) 議事録

1.日時

平成30年7月25日(水曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省 旧庁舎6階 第2講堂

3.議題

  1. 我が国の高等教育に関する将来構想について
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長)永田恭介部会長
(副部会長)日比谷潤子副部会長
(委員)有信睦弘,村田治委員,山田啓二の各委員
(臨時委員)安部恵美子,石田朋靖,金子元久,黒田壽二,小杉礼子,小林雅之,佐藤東洋士,伹野茂,千葉茂,福田益和,古沢由紀子,益戸正樹,両角亜希子,吉岡知哉の各臨時委

文部科学省

(事務局)小松文部科学審議官,常盤生涯学習政策局,村田私学部長,伯井文部科学戦略官,藤野サイバーセキュリティ・政策立案総括審議官,下間大臣官房審議官(初等中等教育局担当),瀧本大臣官房審議官(高等教育局担当),信濃大臣官房審議官(高等教育局担当),塩見生涯学習総括官,蝦名高等教育企画課長,齋藤留学生交流室長,福島専門教育課企画官,平野大学改革推進室長,石橋高等教育政策室長 他

5.議事録

(1)国公私を通じた機関や課程に着目した規模の在り方について,資料1-1,資料1-2,資料1-3,資料1-4に基づき事務局から説明があり,その後意見交換が行われた。

 

【永田部会長】  第23回将来構想部会を始めさせていただきます。お忙しい中,お暑い中,お集まりいただきまして,誠にありがとうございます。

 報道関係のカメラは議題に入るまでとさせていただきます。

 前回を思い出していただきますと,分科会との合同会議で,一般社団法人日本経済団体連合会及び公益社団法人経済同友会から御発表いただいて,御意見をいろいろと拝聴いたしました。また,新学習指導要領の説明も受け,御理解いただきました。また,国公私を通じた機関や課程に注目した規模の在り方という資料を御覧いただきました。さらに,Society5.0の実現に向けて五神委員から御報告がありました。

 本日は前回議論ができなかった、国公私を通じた機関や課程に注目した規模の在り方について,加えて大学院及び留学生,社会人の現在の状況をお示ししようと考えております。

 それでは,事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。配付資料ですが,資料1が4分冊になっています。資料1-1が国公私を通じた機関や課程に着目した規模の在り方,資料1-2が大学院について,資料1-3が社会人について,資料1-4が外国人留学生についてとなっています。資料2が今後の日程でございます。不足がありましたらお申し付けください。

【永田部会長】  ありがとうございます。

 それでは,早速議事を始めさせていただきます。資料1-1から資料1-4まで続けて,事務局から御説明いただきます。お願いいたします。

【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。冒頭,少し長めにお時間を頂き,事務局から説明させていただきます。

 まず,資料1について,御説明させていただきます。こちらは前回お話をさせていただいていますので,簡単に説明させていただきます。

 資料1-1の1ページ目,御議論いただきたい観点を整理したものになります。各機関,課程の国公私別の学校数(割合)及び学生数(割合)は,以下に示させていただいています。2040年の高等教育の姿をどう考えるかということで,本部会が行った推計によれば,2040年には18歳人口は約88万人,大学進学者数は約51万人と予想しています。その際,「できるだけ多くの学生が進学し,また社会に出た後にも学びを継続するために,魅力的な高等教育を提供していくことが必要と考える」とまとめさせていただいたところでございます。その上で,「課程ごとの規模をどう考えるのか(18歳人口の減少,諸外国との比較を踏まえた学士課程,短期大学士課程,博士課程・修士課程・専門職学位課程,高等専門学校,専門学校の規模 等)」,「留学生や社会人のさらなる受入れについてどう考えるか」,「国公私の設置主体ごとの規模をどう考えるのか」ということが,御議論いただきたい観点でございます。

 2ページ目以降は,国際比較の資料ですが,各国比較についてはどうしてもデータにばらつきがございます。例えば大学院,社会人,留学生等,詳細な比較ができてない部分については,この後の説明に代えさせていただきたいと思っています。

 2ページ目,「人口,大学数及び在学者数から見た高等教育の規模(国際比較)」というところで,各国の比較を示しています。また同じページ「学校数・学生数の国際比較」で,国立私立の各国の割合も比較させていただいています。

 3ページ以降は,日本,アメリカ,イギリス,ドイツ,中国ということで,各国の高等教育機関の状況をお示ししています。それから8ページ,9ページが参考資料でございまして,各国の概要を付けさせていただいています。

 10ページ以降は,これまで国公私の役割分担を中央教育審議会の答申でどのように触れてきたかということでございます。直近では,平成17年の将来像の答申で国立,公立,私学・私立について丁寧にそれぞれの性格,役割を書いているところでございます。13ページは,平成10年の答申で,どのように触れられているかを御紹介させていただいています。16ページは,更に遡りまして,昭和46年の四六答申における国公立大学の形態についての部分を掲載してございます。

 18ページ以降は,一般社団法人国立大学協会でおまとめいただきました国立大学の将来像の抜粋です。20ページ以降は,一般社団法人公立大学協会でおまとめいただきました御議論になります。23ページ以降は,一般社団法人日本私立大学連盟でおまとめいただきました将来像ということで,それぞれの抜粋を付けさせていただいています。これらも御議論の参考にしていただければと思います。

 資料1-1については以上でございます。

【平野大学改革推進室長】  続きまして,資料1-2を御説明させていただきます。

 「諸外国の比較」について,人口100万人当たりの学位取得者数を比較したグラフでございます。一番左側に日本がございまして,米国,ドイツ,フランス,英国,韓国,中国となってございます。1ページ目は,修士ということでございますが,我が国の修士号取得者は,人口当たりで見ますと諸外国の3分の1程度になってございます。また,深い緑の部分が人文・社会科学系を指しているわけでございますが,非常に割合が低くなってございます。諸外国の8年から14年度の推移を見ていただきますと,グラフが右に伸びていますが,我が国は横ばいという傾向になっています。

 2ページは,博士課程,博士後期課程についてです。こちらにつきましては,修士よりは多い割合で,2分の1程度になっています。注目すべきは,深緑の人文・社会科学系の割合が低いということです。諸外国は非常に伸びている中で,我が国は減少しているということが目に付くわけです。諸外国がSociety5.0,高度な社会を目指して,高度な人材の育成に力を入れている中,我が国はこのような状況です。

 3ページ,具体的なデータを御紹介させていただきます。修士課程の入学者数の推移です。修士課程の入学者の推移を見ていただきますと,平成22年度をピークとして減少しておりましたが,近年は横ばいから若干回復傾向にあるという状況です。内訳を御覧いただきますと,一般学生は緩やかに減少,社会人学生は微減,留学生は増加ということです。注意して見ていただきたいのが,平成22年度が8万2,000人と非常に多いのは,これは平成21年度にリーマンショックがありまして,この影響で進学者が増えたのではないかという指摘もございます。

 4ページ,博士課程入学者の推移です。こちらは,平成15年に1万2,000人,いわゆる一般の日本人学生で,留学生でも社会人でもない者ということです。こちらが平成15年の1万2,000人から,現在は6,271人まで減少しています。最大時の約半数という数字です。こちらが今後の我が国の研究者になる層という意味では,有力な層です。このようなところの減少が,今後の高度な社会を支えるという観点から懸念があるという指摘がされています。

 5ページ,修士課程修了者の進学率の推移です。はっきりと傾向が表れていまして,全体としては9.2%です。特に修士から博士については,工学の進学率が低いということがデータから見てとることができます。また,ほか分野も,極めて減少してきているという現状があります。

 6ページ,修士課程の入学者充足率,入学者を入学者定員で割ったものですが,近年低下傾向です。100%の部分に青い線が引いてありますが,100%を下回っているのが農学,社会科学,人文科学です。特に人文科学,社会科学の充足率が非常に低いというデータが見てとれます。

 7ページ,修士課程の専攻別入学者数の分布でございます。これは入学者ですので,入学定員ではございません。見方としましては,例えば,一番左の「0人」は誰も入学しなかった専攻の数ということです。一番右の「101人~」は101人以上が入学している専攻の数です。見ていただきますと,大学院は小規模な専攻が多いということです。8ページ及び9ページは各分野別の状況です。全体の傾向として,7ページの修士課程の状況ですが,いわゆる入学者が0人から2人という極めて小規模な専攻は,充足率が15%で極めて低い一方で,大規模専攻は,総じて103%で充足しています。

 10ページ,博士課程の入学者充足率の推移です。修士に比べて100%を下回っている部分が多い状況です。また,近年全体的に低下傾向です。平成25年度のデータですが,人文,社会,工学,農学の入学者定員の充足率は5割前後になっています。一番右側ですが,社会科学が45.4%,工学が52%,人文科学が54.3%というような形で,充足率が現れています。

 11ページ,専攻別入学者数の分布です。博士課程ですので,学問分野を継承するという観点から専攻が設置されているケースもありますので,一般的には小規模な専攻が多いという現状にあります。調査に回答した2,665専攻のうち23%が入学者0人という状況です。私学では入学者0人が約37%で,3人未満まで含めると約72%という状況です。また,先ほどと同じように0人から2人という入学者数の専攻を見ると定員充足率は20%程度です。51人以上の大規模な専攻で見ると112%というような状況になっています。

 12ページ,13ページは博士課程における専攻別入学者数の分布を分野別にお示しています。特に,人文科学,社会科学分野が博士課程入学者の少ない専攻の割合が多いという現状になっています。

 13ページ,工学分野も入学者の少ない専攻の割合が非常に大きいこと,また,保健分野は博士課程の入学者数が少ない専攻の割合が全般として多いということです。

 14ページ以降は参考資料です。14ページは大学院在籍者の国公私別の比率で,博士課程は7割弱が国立である一方で,専門職大学院は私学・私立の在籍者の比率が一番多いという現状です。

 15ページ,大学院の進学フロー推計ですが,平成25年度の学校基本調査から作成したもので,一部推計が入っていますが,全体のフローについて学部から積み上げてお示ししたデータです。

 16ページ,大学院部会における議論の状況を,将来構想部会の中間まとめより抜粋したものです。現在,月1回程度のペースで大学院部会にて議論しています。

 17,18,19ページは,研究の現状に関連するデータを載せています。

 資料1-2の説明は以上です。

【福島専門教育課企画官】  続きまして,資料1-3に基づき,社会人の受入れの状況について,専門教育課から説明します。

 1ページ,社会人学習者の現状ですが,全体で約50万人という推計でございます。内訳としましては,「正規課程」が6割,61.7%,「短期プログラム」が38.3%でございます。そのうち,「正規課程」の内訳を見ますと,大学が大体6割,大学院と専修学校がそれぞれ2割程度という状況でございます。短期プログラムの内訳を見ますと,履修証明が1割強,科目等履修が6割,聴講生が2割強という状況でございます。

 1ページの下の方に,大学の公開講座の受講者数を書いています。こちらは,平成26年度の数字ですが,140万人程度で,前年と同程度で推移している状況でございます。

 3ページ,大学・専修学校の社会人入学者数の推移ですが,大学,大学院等に分けたものでございます。大学,大学院,短期大学の正規課程の社会人入学者数は,ここ数年は横ばい傾向です。専修学校の正規課程の社会人入学者数は少し減少傾向が見られます。こちらが学校種別の状況でございます。

 4ページ,諸外国の状況ですが,高等教育機関における25歳以上あるいは30歳以上の入学者数の国際比較でございます。特に日本は数%と低い割合にとどまっています。30歳以上の割合において,修士で12.9%,博士で41%というのが国際比較の状況でございます。

 5ページ,このような状況を受けまして,リカレント教育においてどういったことに取り組むのかについて,平成30年6月の閣議決定の抜粋でございます。「2.産学連携のリカレント教育」と併せまして,「3.企業における中途採用の拡大」が打ち出されているところでございます。

 6ページ以降は,一般社団法人日本経済団体連合会が今年4月に出されたものですが,「産業界における大学等への従業員送り出しの現状と今後」で,過去5年間に従業員を大学へ送り出した実績についてのデータでございます。一般社団法人日本経済団体連合会の会員の企業では6割程度を送り出しているという状況です。図7-2,専攻分野につきましては,経済学・経営学が最も多いという状況でございます。図7-3,今後従業員を送り出したい分野につきましては,経済学・経営学が最も多いわけですが,情報・数理・データサイエンス,IT関連が上位3位までに入っております。これらの専攻分野が経営層にとって非常にニーズが高いという状況でございます。それから「今後」の一番下の項目ですが,過去5年間に大学等への従業員を出したことのない企業が6割ございますが,「今度も送り出しを考えていない」は15%に留(とど)まり,企業も大学への期待を高めているということも見てとれるところでございます。

 7ページ,「産業界が大学等に求めるカリキュラムや制度・環境」ですが,カリキュラムについては類似の調査と同じような結果ですが,専門性であるとか最先端の技術,それから実践性を求めています。もちろん,業種あるいは地域によってもニーズが異なるということですので,ニーズを把握していくことが重要と考えています。

 8ページ,「大学等における社会人受入れの推進に関する教育関連の仕組み」につきましては随時改正してまいりましたが,入学者選抜の工夫,あるいは授業時間等の配慮,それから多様なプログラムの開設等の状況を整理させていただいています。

 9ページ及び10ページは,放送大学の状況でございます。9ページは放送大学の概要です。10ページを御覧いただきますと,平成29年度の在学者数合計が約9万人です。そのうち,学生の属性等ですが,在学者の年齢では30代と40代を併せて約4割,50代と60代がそれぞれ2割程度という状況です。在学者の職業ですが,会社員が大体3割,資格取得ということから教員が1割弱,看護師が2割弱という状況でございます。

 11ページ以降はMOOCの関係のデータを御紹介しています。12ページは世界のMOOC事業者,13ページはMOOCプラットフォームの学習者数の状況です。一番学習者が多いのは,いわゆるスタンフォードが行っているCoursera(米),二番目がMITとハーバードが行っているedX(米)です。学習者数も多いのですが,コースの数も2,000以上あるいは1,500以上で非常に多い状況です。日本のプラットフォームでありますJMOOC(日)は,表の一番下ですが,学習者数が80万人,コース数が約200でございまして,拡大していく必要があると思っています。この表を見ますと,南米やスペインが伸びているという状況もあるようでございます。

 以上でございます。

【齋藤留学生交流室長】  資料1-4に基づき,外国人留学生の規模に関しましてデータを何種類か御用意させていただきました。1ページ目,まず観点として三つございます。一つ目は,全世界における留学生交流規模,すなわちこれから世界でどれぐらいの留学生の交流があるのかということ。二つ目は,在籍学生数に占める外国人留学生数の割合,これは日本が受け入れた場合に日本の大学において留学生がどれぐらいの割合を占めるのかというデータ。三つ目は,外国人留学生の卒業後の進路,特に我が国の産業界のニーズとの関係についてデータを御用意させていただいています。

 3ページ,世界の留学生の交流状況ですが,「世界の全留学生数」は2010年が420万人,2015年が460万人で,近年5年はおおむね緩やかに伸びています。年率ですと約2%の伸びで推移しています。この中で日本の位置付けは,「日本の留学シェア率」というその下のグラフ,濃い青でお示ししています。2015年は若干下がっていますが,実数でいいますと約13万2,000人でございます。今後世界のペースと合わせて日本も増加していくということを仮定しますと,2040年には約22万5,000人で,2015年から約9万3,000人増えるというような推計になります。これはあくまで世界のフローに合わせるということでございますので,これより更に増やすということですと,より日本の留学の魅力の発信を上げていくことになると考えています。

 4ページ目,日本における留学生の割合でございます。学士課程相当,修士課程相当,博士課程相当でそれぞれ状況が異なってございまして,日本のデータで申し上げると学士が2.4%,修士が6.8%,博士が18.2%でございます。それぞれOECD平均が4.3%,11.5%,25.7%で,それぞれ状況が違うということが見てとれます。

 5ページ目,国公私別の内訳ですが,それぞれの課程段階によって差がございます。学士相当は私立大学で留学生数が4万4,000人です。私立大学はかなり受け入れていただいている一方,国立大学・公立大学はかなり少ないという状況です。これに対して修士,博士では国立大学でかなりの割合で受け入れているという状況です。2015年ベースで留学生比率をOECD平均並みにした場合,学部で約5万2,000人,修士で約1万3,000人,博士で約5,000人,全体で約7万1,000人のギャップがあるという状況が見てとれます。

 6ページ目,外国人留学生の卒業後の進路でございます。留学生で大学・大学院を卒業された方の進路として一番多いのが日本での就職36%,次いで日本で進学される方が約15%,出身国に戻られるというケースが3分の1程度という内訳になっています。このうち日本で就職される方は,その下の棒グラフにございますように,数それから割合とも年々多くなっている状況です。

 7ページ目,外国人留学生の日本企業への就職状況ですが,業種別ですと製造業が15.7%で、大半がサービス業となっています。職務内容別では翻訳・通訳,販売・営業,海外業務,技術開発(情報処理),貿易業務で,一概にトレンドは言えませんが,恐らくバイリンガルといったことも含めた言語的な能力を生かした就職が多く見られるということかと考えています。

 これに対しまして,8ページ及び9ページ,国内の産業別労働者の過不足状況でございます。8ページ目,近年で申し上げると建設,運輸,郵便業,情報通信,宿泊,飲食,それから医療,福祉等の分野において不足という回答が多くなっています。9ページ目,職種別ですと,技能工,専門・技術職,単純工,サービスといったところに不足感があるということでございます。こういった関係も今後見ていかないといけないということでございます。

 これらに関連しまして10ページ目以降は,外国人材受入れに関する閣議決定等の参考資料を掲載しています。政府でも新たな外国人受入れに関して最近動きがございまして,新たな外国人材を受け入れるための在留資格を設けるといった議論がございます。主に中小・小規模事業者における人材不足を問題意識としまして,一定の専門性,技能を有し,即戦力を有する外国人材を受け入れる仕組みを構築するといったことで新たな在留資格を創設するということが書いてございます。また,併せて外国人留学生の国内での就職を更に円滑化するなど,従来の専門的分野の人材受入れを進めるといったことも書かれていているところでございます。受入れ業種としては,現在のところ農業,介護,建設,宿泊,造船等の5業種を中心に引き続き検討が行われているところでございます。

12ページ,こちらはまち・ひと・しごと創生基本方針2018でございます。こちらでも,地方創生の取組により,いわゆる地方においても外国人材の活用ニーズが高まるといった問題意識のところから,日本の大学を卒業した外国人留学生が専門能力を十分に発揮できるように一連の取組を行うということが書かれています。具体的には高度人材ポイント制の拡充,在留資格変更手続の簡素化等に取り組むといったことが挙げられていることが背景事情として御紹介できます。

 13ページ目,14ページ目ですが,一般社団法人日本経済団体連合会それから日本商工会議所,東京商工会議所においても,同様の観点から外国人材に対する期待といったことについて様々な観点から御意見を頂いているところです。

 17ページ以降が前回までの会議で提案させていただきました留学生政策の位置付けです。18ページ及び19ページで,前回も御紹介申し上げましたとおり学部の受入れを中心に拡充していくべきではないかといったことも書いてございます。産業界のニーズ等も踏まえてより求められるということ,さらには国公私ごとに差があるということもございましたので,それらも踏まえてやっていく必要があるということでございます。19ページ,例えば日本語準備教育(ファウンデーションコース)でございますが,特に私立大学では日本語教育はこれまでも積み重ねがかなりあるところでございます。その反面,国公立大学では日本語教育自体のノウハウが蓄積されていないという課題がございます。それから,産業界と自治体と一緒に就職に対しての産業界のニーズを踏まえた教育プログラムを作っていくといったところに関しては,どの学校種でもそうですが,主に地方大学や私立大学等でより取組が必要になってくるのではないかと考えています。

 以上でございます。

【永田部会長】  早速、御意見をお伺いしたいと思います。金子委員,どうぞ。

【金子委員】  データに関わることなので最初に申し上げます。社会人に関わるところですが,データが非常に分かりにくい。2ページ目はどうやって読んでいいのかよく分からない。

本題ですが,社会人教育がなぜ必要で,どこにデマンドがあるかを考えるときに,一般社団法人日本経済団体連合会が出しているデータは,会社単位で何が欲しいかというデータです。これが本当にいいデマンドの捉え方なのかということに疑問を持っています。このアンケート調査ですが,何社のうち何社といっても,実際にはどの程度の規模のデマンドがあるか分かりません。むしろ,社会人がどのように大学院を利用したいかという調査が他に幾つかあります。私どももやりましたが,約3万人の大学卒業生を対象に調査をしましたが,その調査によると,違う結果が出てきます。潜在的にどれくらいの人たちに学習したいというデマンドがあるかは,その調査でないと分かりません。

 もう一つ重要なことは,企業が必要だと言っているプログラムと,個々の社会人がどういう学習をしたいかは全然違う話だということです。特に,大学卒の社会人は,企業から命じられて社会人教育を受けていることが多い。そうではなくて,自分にとって何が必要かを考えて,主体的に学習することが非常に重要です。企業がプログラムを出すというよりは,むしろ働いている人自身がそれぞれ自分のテーマを設定して学習するということが,企業にとっても重要な考え方だと思います。それは企業が課題やスキルを設定するのではなくて,個人がキャリアとして何が必要かということを組み立てていく,その上で社会人教育が必要だというデマンドが出てくるという考え方だと思います。そういう意味で,将来構想部会で高等教育全体に関してどのようなデマンドがあるのかを考える際には,違ったデータの根拠があるのではないかと思います。

 それから,関連することですが,本日の資料に放送大学について在学者の年齢というデータがありますが,約4か月前の将来構想部会で,私は放送大学に通っている人たちが年齢別にどれくらい変化しているかを調べてグラフデータにしました。それを見ますと,中堅社員の層は全然増えていない。増えているのは中高年層です。放送大学は一定の役割を果たしていると思いますが,社会人の再教育という点では問題がある。しかも,放送大学の資料を見ていると,そこに対する自己批判が全くなく,自己分析もないと状況です。非常に大きい大学で,国の施策として運営しているわけですから,踏み込んだ議論が必要ではないかとの意見を出したのですが,それらが全く反映されていないことを,私は非常に残念に思います。

 以上です。

【永田部会長】  ありがとうございます。

 益戸委員,どうぞ。

【益戸委員】  説明の感想です。日本の大学院は海外に比べてニーズ,規模,質とも,相当劣後していると思いました。どの大学も大学院を持てばいいというものではありません。大学院がある事は、その大学のステータスではなくて,ニーズや質をとても重視していないといけません。我が国の大学院における質はさらに高めていかなければと思います。

 又、分野についても日本の強みはどこかをよく考えないといけません。私が外資系に勤めていて痛感していることは,世界のルールは欧米が決めているということです。残念ながら,日本はそれに追従している。ところが,日本にもすばらしい分野はたくさんあって,リードできる部分もたくさんあります。分野の取捨選択も再考すべきです。 

私たちの会社では大学院生も採用しています。インタビューにいらっしゃる日本の大学院生は、全体の印象として勉強マニア的な学生が多い。一方,日本人以外の学生は,もっと巾を持ちながらより深く勉強している印象があります。この点についても考え直す必要があるのではないかと思いました。

【永田部会長】  山田委員,どうぞ。

【山田委員】  社会人教育については,社会人の定義の問題があると思います。地方で仕事をしていて感じるのは,圧倒的な人手不足です。有効求人倍率が約1.5,福祉人材では有効求人倍率が約3.0です。そうしたときに,社会人教育は自分の希望とは違う仕事についている人たち,あるいは働きたい希望は持っているけれども働けない人たちのデマンドとどうやってうまくマッチさせるのかということが必要だと思います。例えば,私もたまに公開講座の講師をやりますが,圧倒的に60歳以上の方が多いです。そうした方々に対して,どういうものを提供していくのかということです。例えば,一旦主婦になられた女性に対してはどういう形で提供していくのか,若い人で会社から離脱してしまい,ひきこもりをしていた人たちに対してどういう形で教育をやっていくのかということです。今働いている人のリカレント教育もいいとは思います。ですが,地域のニーズからすると,圧倒的に人がいないので,働きづらい人たち,障害者の皆さんも含めて,働きづらい人たちのリカレント教育が重要になってくるのではないかと思います。

 留学生については,3ページの資料を見ると,楽観的な図になっていて,日本の留学シェア率が急に上がってくるように見えます。前に調べたときはオーストラリアやシンガポールは大学に行った場合,その国の就職に対してインセンティブが強かったと記憶しています。日本はそうしたインセンティブにおいて,ほかの国と比較してどうなっているのかを教えていただきたいと思います。

 また,規模の問題については,かつての中央教育審議会の答申でも出ていますように,地域というもう一つの軸を考えないと,全体としてのものと地域の軸というのは矛盾しているわけではありません。地域貢献や知の拠点を考えた場合に,そういう視点も今後入れていただければと思います。

 以上です。

【永田部会長】  小杉委員,どうぞ。

【小杉委員】  社会人の学び直しの政策に関心があります。金子委員がおっしゃるとおりですが,デマンドをどこで捉えるか,一般社団法人日本経済団体連合会の話だけを捉えて社会全体のデマンドとすることは非常に疑問に思います。さきほどのお話にありましたように,まだ働いていない人たちの潜在的なデマンドもあると思います。そういうデマンドをどう捉えるかは,組織的なものでなければいけないと思います。ある程度の地域の範囲で,産業界側あるいは潜在的デマンドをある程度つかむことができる地域の行政当局といった方たちが地域連携プラットフォームを作って,デマンドをきちんと捉えることが大事だと思っています。

 その際に大事なことは,最も効果的なカリキュラムを作るということです。例えば産業界の言うとおりに教育プログラムを作るというのは違うと思います。その教育デマンドが実は非常に短期のものであって,その先も一時的なデマンドにすぎなくて,それを学んでも労働者にとってプラスにならないというような俯瞰的な見方で評価できるのは学術サイドだと思います。プラットフォームにおいて対等に意見を出し合って最も効果的なカリキュラムを作る,そういう仕組みを作っていくことが重要だと思います。

 以上です。

【永田部会長】  村田委員,どうぞ。

【村田委員】  大学院とリカレント教育について意見を述べさせていただきます。

大学院につきましては,自然科学系の修士の進学率は高いのですが,人文・社会科学系が非常に低いわけです。どうして低いのかは深く考えて分析していかないといけません。逆に言うと,諸外国がどうして進学率が高いのかというところを見ていかないといけません。

 リカレント教育につきましては,放送大学の話もありましたが,学部へのニーズと大学院へのニーズは,年齢層や属性を含めて違うと思います。今働いている方にとっては大学院のニーズが中心になってくるのではないかと思います。リカレント教育の部分と,大学院とは少しクロスで考えていく必要があります。。一般的にリカレント教育をどうするかではなくて,どういった対象に対してはどういうリカレント教育をしていくのかというような細かな議論を始めないといけません。金子委員のニーズの問題もそうだと思います,リカレント教育が問題だとは言うのですが,具体的な問題を提示していかないと解決にはならないわけです。厚生労働省あるいは経済産業省等の他の省庁とも一緒に考えていく必要があると思いいます。以前,金子委員がおっしゃったと思いますが,個別の議論をちゃんとしていくことが必要だと思います。

【永田部会長】  千葉委員,どうぞ。

【千葉委員】  留学生についてお話をさせていただきます。アメリカの国家情報機関の調査を読みますと,全世界の人口は72億人から現在80億人に向けて増加中です。その中で中流世帯が現在15億人から20億人ぐらい,それが今後アジアを中心に30億人に向かって増加していくだろうということです。この中流世帯層を我が国の高等教育機関では留学生として受け入れていくべきではないかと思います。中流世帯以下の場合,日本の子供たちにしても高等教育の無償化のようなサポートがどうしても必要になります。ですから,中流世帯以下の留学生たちは学習に専念できない可能性が高いのではないかと思います。産業界では人手不足でワーカーとしての需要がある一方で,これまでの中央教育審議会でも議論されてきたとおり優秀な留学生あるいは教員も含めた高度人材を育てていくことを大学では目指すべきであろうと思います。何回かお話させていただきましたが,現在,日本は中国,ベトナム,ネパールといった国々の留学生が上位を占めています。アメリカでは中国,インド,韓国,サウジアラビア,カナダといった国々の留学生が中心になっています。優秀な中流世帯以上の学生や留学生たちが我が国の高等教育機関を目指すような,そういう教育の改革を進めていく必要があるのではないかと思います。

 最後に,資料の中で留学生の受入れが多い国というデータがありました。けれども,あれはおおむね3年間という最短で学位が取れる国々が留学生を大変多く受け入れているわけです。ですから,我が国も4年間に余り固執せずに,3年間でも卒業できるような体制であれば,中流世帯以上の留学生にも更に目を向けていただけるのではないかと思います。

 以上です。

【永田部会長】  古沢委員,どうぞ。

【古沢委員】  ありがとうございます。留学生に関連するのですが,大学段階だけではなくて,外国人労働者の受入れが非常に進んでいます。今後,更に増えると思われますが,小・中・高校段階でも子供たちが入ってきていまして,学習意欲が高い子供たちも非常に多い状況です。けれども,日本の公立学校での受入れ対応が非常に遅れているのが現状ではないかと思います。都立高校などでも外国人の受入れ枠は増えていますが,拡大していないという状況があります。教員養成大学などで日本語教育ができる教員を養成していくことも大事だと思います。高校,大学段階でそういった人たちの受入れをどうするかということを考える視点も必要ではないかと思います。

 以上です。

【永田部会長】  ありがとうございます。

 日比谷委員,どうぞ。

【日比谷副部会長】  資料について質問があります。大学院についてですが,1ページ及び2ページで,全国100万人当たりで修士,博士のそれぞれの学位取得者数比較というデータがあります。これはその国の人口の中で修士,博士の学位を持っている人が100万人当たりにしたら何人いるかという話ですから,どこの国で取得した学位かは関係ないということでしょうか。

【平野大学改革推進室長】  関係ないと思います。

【日比谷副部会長】  ということは,日本以外の国で学位を取得した人も入っているということですか。

【平野大学改革推進室長】  すみません,調べさせてお答えさせていただきます。

【日比谷副部会長】  分かりました。ありがとうございます。

 いずれにしても大変に少ないことに変わりはないということです。極端に少ない人文・社会系の博士号取得者として申し上げますと,日本の人文・社会系の博士課程は,プログラムとしての体を成しているところは非常に少ない,コースワークが貧弱であると言えます。大変にすばらしい先生は少なからずいらっしゃると思います。その先生の下でしっかり勉強することは,いいことだと思います。けれども,大学院,特に博士課程はそういうところではありません。何が大事かというと,同じレベルの大学院生で非常に優秀な人々が,できれば世界から集まってきて,アカデミックコミュニティを形成しているという,ここが一番大事だと思います。

 11ページ及び12ページを見ますと,学位取得者が極端に低い人文・社会科学系は3人未満までの専攻が大変に多いというデータも出ています。これはコースワークを改善しない限りは人も増えないし,学位の価値も上がらないと思います。大学院の学位を取るということはその特定の分野でそれまでになかった新しい知見をその分野に対して発見して加えていくということです。しかしながら,社会に出ると,それだけでやっていける人は少ない。例えば,大学教員になるとしても,その分野だけ教えていられる先生なんていません。学部の1年生も教えれば,大学院生も教える。人数にもよりますが,卒業論文だって広い分野の指導をしなければならないということになると,日本の大学って狭過ぎると思います。これは学部でもよく言われることですが,その分野を俯瞰(ふかん)する力やせめて三つぐらいは十分に専門家としてやっていけるような力を付けるようなプログラムも必要だと思います。大学院には解決すべき問題が多くありますが,特に人文・社会系についてはカリキュラム,プログラムの階層的な構造を作ることが一番大事だと思います。

【永田部会長】  ありがとうございます。

 安部委員,どうぞ。

【安部委員】  ありがとうございます。社会人のリカレント教育,学び直しについてですが,大企業にいらっしゃる方の学び直しだけではなく,地方の立場から学び直しを考えてみますと,地方には非熟練労働者や非専門職にずっと就いていらっしゃる方がいます。また,さきほどもお話がありましたが,高齢者が生涯社会との関わりを持つためにリタイア後に何か違うことを学んでみたいということがございます。今までの高齢者の学びというと教養を高めるということだったんですが,そうではなくて何らかの形で職業につながるような学び直しの機会を大学等がやらなければいけないと思います。例えば,地方の労働者の質や労働生産性を上げるためや,職業を転換するための学び直しというようなことです。その際,社会人のニーズに対応する非学位課程あるいは短期の教育課程を組む場合に,大学は正規の学生として社会人をカウントできないことになっているので,積極的にそういうものを開こうとしないという傾向があると思います。だから18歳にどうしても拘泥してしまいます。このことに対しては設置基準等を変えることによって,社会人の正規学生への組み入れ方を変えるのも一考ではないかと思います。地方の大学が定員割れだとか,経営が危ないと言われていますが,地方大学の機能の強化ということの一つの方策になるのではないかと感じているところでございます。

 以上です。

【永田部会長】  有信委員,どうぞ。

【有信委員】  御意見を伺っていると,これらの問題は随分長い間議論をしてきていて,オーバーラップしている部分もあるし,新しい視点もあると思いますが,一つ考えるべきは,過去と現在と未来という視点で見ないといけないということです。要するに,過去の集積が現在になっていて現状を表している。けれども,現状を未来の観点から見たらどういうふうに変えなければいけないのかという視点を入れる必要があると思います。そういう観点からすると,さきほど説明がありましたように国立大学の役割として我が国が継承すべき学問分野をきちんと残すというようなことが言われています。こういうことを踏まえつつ,未来の,例えば2040年で要求されているワークフォースとしてどういうものを育てるべきか,あるいは日本がその中でどういう役割を果たすべきかという観点から考えると,大学院がそれに対してどう応えるべきかという形で,応えやすい形の編成に大学院を変えていかなければいけない。学部は日本が基本的に継承すべきような学問分野,あるいは大学院で様々な研究や新しい教育訓練を受けるだけのポテンシャルを育てる部分と,こういう形で基本的に役割分担を考えつつ,新しい在り方を考えるべきだと思っています。

 それから留学生に関しては,前にも言いましたが,留学生30万人計画があって,2020年には留学生30万人になるはずだったのが,今では2040年で23万人となってしまっています。なぜ30万人に向かっていかなかったのかをよく考えないといけないということと,なぜ30万人にしなければいけなかったのかということも考えなければいけない。例えばSociety5.0のような社会が出現するときに,将来的に全体の社会がどうなって,どういうスキルや知識を持った人材が必要で,そういう人材をどういう形で育てていくかということです。さらには要求される人材はいろいろな形で変化しますし,研究分野も変化していくということを前提にしながら,対応できる形を考えなければいけないということです。もう一つは,日本の人口動態が明確に2040年代に向かって減るわけです。ワークフォースが減ることによって,どういう状況になるのかという危機感を持って,留学生やリカレントについて考える必要がある。そういう視点をきちんと入れる必要があると思います。

【永田部会長】  ありがとうございます。

 吉岡委員,どうぞ。

【吉岡委員】  覚えていらっしゃる方がどれだけいらっしゃるか分かりませんが,1979年に立教大学法学部が初めて学部の社会人枠を作って入試をしました。当初は25人の募集枠だったと思いますが,そのときは二百数十人の志願者が集まり、その後の志願者数も100人位で推移しました。戦後に大学に行きたかったけれども行けなかった,主婦の人,高等学校卒,短期大学卒あるいは専門学校卒で専門職に就いている人たちです。非常に優秀な人たちが集まったのですが,そのときの受験生は高等教育を受けたいと思っている層,それを受けたかったけども受けられなかった層,それから仕事と結び付いているので資格・能力を身に着けたいという層がいました。例えばキャビンアテンダントや看護師の人たちがある程度仕事をしながら組織の中で働いて,次のステップに上がっていくときに,大学教育,高等教育をきちんと受けたい,あるいはその資格が必要であるというニーズがありました。この人たちは非常に意欲もあるし,スキルとも結び付いていたし,非常に優秀な層を形成していました。一般の学生にも非常にいい刺激を与えました。

 これが10年ぐらい続きましたが,90年代に急速にそういう層が崩れてしまいました。そもそも受験生が10分の1に減りましたし,レベルも非常に下がってしまいました。それでも2000年代まで続けましたが,急速に層が変わりました。90年代に入ってバブルが壊れ,経済状態が悪くなって,特に主婦の層が大学に行くことができなくなりました。パートに出なくてはいけなくなったということもあっただろうと思います。それから,立教大学の場合は,社会人シフトの授業体系を持っていませんでした。社会人に特化した社会人コースがだんだん増えてきたということもあったと思います。経験から言いますと,社会がどういうふうに変わっていて,どの層にニーズがあるのかということを考えないといけないと思います。

 金子委員がおっしゃったように,大学に行くことで自分の先のキャリアパスがある程度見えないと,人は集まらない。単に、こういうスキルがないと今後生きていけないというだけでは人は動かないと思います。そのことと関連しますが,大学院が何となく伸びないのはその先のキャリアパスが見えないことが一番大きい要因だろうと思います。修士・博士でも,その後自分がどういう道を歩んでいくのかがよく見えない,給料も上がらないということがあると思います。

 留学生も発想の根本で似たようなところがあります。外国人の留学生に対して外国人労働者の供給源という発想が非常に強いと思います。例えば資料で出てきている技能工とか専門技術職とか単純工という人たちが育って,日本の企業の中でキャリアパスが見えるような仕組みにはなっていないと思います。大学での教育の問題もそうですし,企業の仕組みにおいて単純労働者が足りないから単純労働者の教育をしてくれというような議論では先へ進まないと思います。

 以上です。

【永田部会長】  ありがとうございます。

 黒田委員,どうぞ。

 【黒田委員】  2040年の高等教育の在り方を見据えて意見を述べることになっていますが,今まで発表された方の御意見を聞いて,将来像というのは随分前から議論されて同じことの繰り返しをやってきて,どう実現するかという段階に入ってきていると思います。だから,もっと具体性のあることをやっていかないといけないと思います。

 一番問題になっているのは,社会と大学の関係が非常に曖昧です。社会として博士は要らない,修士も要らないという時代がずっと続いてきた。就職するときも何もインセンティブが与えられないという時代が長く続き過ぎました。ですから,戦前言われていた「末は博士か大臣か」と言われた,そういう時代のアカデミックの研究者となるイメージが社会にはまだ根付いているということです。そうしますと,企業や社会には必要ないというイメージが強い,そのイメージをどう払拭していくか。博士も修士も産業界にとっては必要だということをどうアピールしていくかが重要です。

 それから,国公私を通じた学部段階における教育の在り方です。現在18歳を対象とした入学定員で補助金が決まっている。留学生や社会人も含めた定員という考え方を入れていかないと,経営が成り立たなくなる。ですから,入学定員については日本国内の18歳人口減少に合った定員の問題と,その大学が持つ入学定員の問題とを分けて考える必要があります。100人のうちの80人は18歳人口の定員,あとの20人は留学生や社会人の定員にするというような切り口を作っていかないと,いつまでたっても解決しない。学生数が減るから100人を80人の定員にしなさいと言っても経営が成り立たなくなる。そういう意味で各大学が工夫しながら,定員を維持しながら18歳人口の減少に対応していくことが必要です。

 留学生の問題ですが,日本の場合ほとんど無償で留学生を受け入れるような制度が私学にとっては非常な負担になっています。日本への留学生に住居の手当や授業料も出してあげているということです。今でも負担感が拭えない。そういうことのないように,本当に学びたい学生が日本に来て学ぶ,そういう姿勢を示しておく必要があると思います。奨学金制度で補うのであればいいのですが,各大学の負担でということはもう通用しないと思います。

社会人の受入れですが,リカレント教育のニーズを考える際に,企業にとって必要な学びなのか,本人にとって必要な学びなのかを明確に切り分けて教育する必要があると思います。本人が努力して行く上で自分の糧にしたい教育内容と,企業が必要とする内容が違う,このすみ分けをうまくやっていかないといけません。そうしなければ,社会人の受入れは進まない。今までのように,大学を出ていなかったら学部に入るという時代は過ぎつつあります。ですから,大学を1回出て,それから何を学ぶかということです。それは本人にとって必要な学びなのか,企業にとって必要な学びなのかを切り分けて教育をしていく必要があります。これは学部段階でも大学院段階でもそうです。私の大学でも学部段階における企業人の受入れを相当やっています。非常に安いコストで受け入れているのですが,社会人が学生に対して接していろいろなことを指導する,そのかわりに自分も新しいことを学ぶという,そういう制度によって動いていることが必要になってくると思います。学生でも社会人を切り離して学生だからという考えではなく,社会の中と大学の中が一体的に動けるような制度が必要になってくると思います。全体を考える上で,まず必要なことだけ申し上げました。

 以上です。

【永田部会長】  ありがとうございます。黒田委員から,規模や留学生、社会人それぞれの問題について,本質的な御意見を述べていただきました。2040年に向けて我が国全体でどのぐらいの規模で人材を育てるべきかという問題について,将来構想部会ではパーセントや人数を示すのではなく,大きな方向性を示すのが重要だと考えております。

 さきほど,山田委員から御質問のありました、「法制度的な意味も含めて、留学生にインセンティブはあるか」という点について,事務局からお答えします。

【齋藤留学生交流室長】  特に,豪州ということで御指摘がありましたが,在留資格等で,大学等で学位を取得した後に就職活動等のために3年から4年程度在留できるような法的なインセンティブがあると承知しています。また,米国や欧州にも同様のインセンティブがあると承知しています。日本については、従来は,御指摘のように学位を取った後,在留資格を直ちに切り替えられないという課題がございましたが,近年では少なくとも1年間は就職活動のために在留できるようになってございます。更に公的なインターンシップ等を行うことを条件として最大2年間は在留して就職活動できる状況であり、全体として,緩和する方向で進んでいると理解しています。

【平野大学改革推進室長】  さきほど日比谷副部会長から御質問のありました諸外国との比較,100万人当たりの学位取得者数の定義です。これは当該年度の学位授与数を100万人で割ったものです。我が国では留学生も社会人も含めた学位授与数を100万人で割っていて,諸外国もそのような計算方法でございます。

 以上です。

【永田部会長】  ありがとうございました。

 皆さんの御意見に共通して重要と言えることは、大学院でも,対象が留学生や社会人でも,きちんとしたプログラムを組んで教育すべきである、ということだと思います。それぞれの大学が教育方針と受益者である学生のニーズをマッチングできるように努力いただければもちろん良いですし,一つの大学で全てをマッチングさせることができなければ、他大学と補い合えば良いわけです。いずれにしても、しっかりとした教育プログラムとして提供するということが重要です。日比谷委員から改善が必要な例を挙げていただきましたが,きちんとプログラム化されれば,大学院生が増える可能性はあるという御意見だったと思います。同様に,大学院だけではなく,社会人や留学生についてもプログラム化されて,その内容が学生のニーズに合っていれば,学生は集まる可能性があると思います。

 もう一つの視点として,各大学、さらには各学部や研究科はいろいろな機能を持っている,ということが言えます。もちろん,例えば地域に貢献すると言ったからといって、世界は目指していませんと言っているわけではありません。しかし、自らの強みを最も生かす機能は何か、という視点で留学生を見ると,例えば、地域に人材を還元していくタイプのプログラムを持った場合,どういう留学生が必要かを考えなければいけません。また、例えば、ベンチャーでトップを目指す企業を起業できるような、世界を目指すタイプのプログラムを持った場合,どういう留学生が必要かを考えなければいけません。ですから,大学側もそれぞれの強みを徹底的に考えた上で,留学生のリクルートをすべきであり、冒頭に申し上げた魅力ある教育のプログラムを提供する、という視点は不可欠です。したがって、こちらからお金を払って留学生に来てもらうような状況ではいけないと思います。

 社会人に関してもたくさん御質問・御意見がありました。安部委員の御意見は,この問題を考えるときの核心であったと思います。社会人はオンライン以外で考えたら、どの方もその地域で働き,その地域で学んでいるわけです。実際,好事例はほとんど地域から生まれており,例えば、自治体と組んでいる大学で現場の社会人が戻りやすい環境を作っているような大学院,あるいは教育プログラムというのがあります。社会人はその地域に根差して働き生活している人ですから,地域のニーズを考えないということはあり得ないと思います。

 同様に,大学院の問題を考えたときに,それぞれの大学が目指すものに対して何を強みとし,どのような教育プログラムを組むか、ということが重要ではないかと思います。ニーズがなければ,教育プログラムを作っても仕方がないのですが,大学の強みを生かすという観点からもう一度御意見を頂ければと思います。強い連携・統合ということを中間まとめで書きましたが,それは大学の個性を生かすため,大学の強みをより強くするため、という趣旨であったわけですから,そのような観点から御意見いただければと思います。

 なお、さきほど黒田委員から、社会は大学院生の就職を好んでいないという御意見がでましたが,最近のデータでは,ほとんどの大学において学部よりも大学院の就職率が良い状況ですので,その点は御承知いただきたいと思います。

 最後に,益戸委員から,我が国の大学院修了者は勉強マニア的な学生が多いという御意見がありました。さきほど、人文・社会科学系の反省点が指摘されましたが,理系の分野でも見直すべき点はあると思いますので、理系人材と人社系人材とを一律にこうであるとは言えないと思います。留学生についても,社会人についても,大学院についても,様々な視点で見ないといけないと思います。

 各大学のそれぞれの個性を生かすために,留学生や社会人や大学院をどう考えるかという際に,ニーズについては多くの御意見をいただきました。今度は、大学の強みを生かすという観点から是非ともお考えいただきたいと思います。地方の大学もあれば東京の中に密集している大学もある、4年制の大学もあれば短期大学も専門学校もあります。それぞれに個性があるという視点からお考えいただけないでしょうか。

 有信委員,どうぞ。

【有信委員】  2040年の時点から今を考えるべきだと思っています。2040年まであと20数年です,この間に一体何が変わるか。世の中はグローバル化する,そのときに日本の教育の基盤がそのまま続くとは思えません。益戸委員がおっしゃっていましたが,様々な仕組みは欧米がリードしている。欧米リードで出来上がった世の中のグローバルスタンダードは,基本的に学位と職位が共通の次元で測られることになっている。それぞれの学位がそれぞれの職業に対して専門性や能力の裏付けになっているということです。例えば,国連の職員だと最低限マスターの学位を持っていなければ応募資格すらない,あるいは最低限PhDを持っていることが応募資格になるという仕組みがあるわけです。

 こういうグローバルスタンダードがジャパニーズスタンダードで置き換えられるのであれば,ジャパニーズスタンダードを強化すればよいのですが,基本的には全てグローバルスタンダードになっていきます。そうすると,職位や専門性で日本も共通の次元に立たなければいけません。

また,日本の人口動態を考えたときに,若者数が減る中で,一人一人が生み出す付加価値が倍増しないことには半減する労働力をカバーできません。したがって,今まで日本の中で担ってきたような労働階層の中で,より高付加価値な,新しい価値を創り出すような方向で学生を教育訓練していかなければならない。学生の数が減っていく中で,より手厚い教育ができるわけだから,そういう人たちがより高度な価値を生み出せる。そのときの価値の尺度は大きく世の中で変わってきていて,いわばソーシャルバリューのような新しい価値の中で新しい産業が生まれてきて,新しい付加価値を創り出す形に産業構造が変わっていかざるを得ない。そういうところを考えながら議論しなければいけないと思います。新しい価値,新しい産業の具体的な内容を将来構想部会で議論して決められるということではない。ただその行く末を見極めることができるのは,常に知識を研鑽(けんさん)し,知識を蓄積している大学人です。その大学人が将来を鑑みてフレキシブルに対応できるよう,制度的な障害等があればなくしていかなかればならない。将来構想部会で私たちが具体的に決めていることが大学人の発想なり,新しく打つ手を縛るようなことにならないような形で,しかも将来に向けて具体的に手が打てるようなことをやっていかなければなりません。

【永田部会長】  ありがとうございます。

 金子委員,どうぞ。

【金子委員】  クリティカルな社会人教育といいますか,働いている人の教育をどうするかということは,10年以上同じことが言われていて,ほとんど事態が全く進行していません。これは非常に深刻な問題で,何ができるのかということを,中央教育審議会として考えるべきだと思います。

 一つ目には,企業に問題があることは疑いありません。企業が働いている時間だけではなくて全時間を拘束するようなことを未(いま)だにやっているような状況があります。これが変わらない限り,日本の産業も変わりませんし,社会人教育もできません。例えば,社会人の学習権やキャリア権という言葉もありますが,一種のリーガルアクションも考えるべきではないかと思います。土・日曜日は拘束するべきではないということが言えることが必要です。

 二つ目には,大学院に問題があることは事実です。資料1-2,専攻別入学者数の分布が7ページにあります。これを見ますと,特に私立大学だけについて見れば,修士課程は約2,000専攻ありますが,4分の1は2人しかいない専攻です。約1,400専攻は10人以下しかいない専攻です。つまり非常に小規模で,充足率も低い。日比谷委員がおっしゃいましたが,日本の人文・社会学の教え方は属人主義的なのです。先生が自分の専門に近いところを自分の弟子にして教えてしまうということです。ですから,大体企業で役に立つわけがありませんし,かなりの部分はアカデミックにもなれないという構造ができています。結局,大学院が有効な教育手段になり得ていないことを典型的に表していると思います。社会人のデマンドに応じた教育体系にどうやって切り替わっていくかが,デマンド側,供給側の問題としてクリティカルだと思います。個々の大学にとってもクリティカルな問題で,要するにお金が入らないけれども,大学の先生は自分の仕事として大学院の授業をやっています。日本の大学の先生がどういうふうに時間を使っているかという調査をしますと,大学院のゼミが多い。平均して3分の1くらい大学院のゼミをやっている。これは,要するに1対1や2対1でやっているということです。先生としては後継者を作るという意味ではいいかもしれませんが,社会的なファンクションは満たしていません。だからこそ,プログラム化しなければいけないのです。個人属性の伝達ではなくて,目的に応じた教育プログラムに切り替えていく必要があるわけです。そのためにも現状の情報公開は,一つ出発点としては非常に重要だと思います。

三つ目には,デマンドと供給との結び付きを作るのは非常に重要だということです。永田部会長は地域というのは非常に重要だとおっしゃいました。地域は地域で重要ですけれども,大都市部でどういうふうにデマンドと供給を結び付けていくかということも非常に重要です。社会人の場合はデマンドと供給をマッチングする領域,ロットが小さいことから,両者を結び付けていく機能をどのように構築していくかが,非常に問われると思います。

 以上です。

【永田部会長】  ありがとうございます。

 小林委員,お願いします。

【小林委員】  話が戻るかもしれませんが,最初に全体規模の話が出ましたので,そのことに関連して意見を述べたいと思います。永田部会長が言われたように,パーセントや人数を示すのではなく,将来の方向性をどうするかという議論が大切だと思います。意味があるとすれば,議論のたたき台としてどう考えていくかということだと思います。

 それから,山田委員から地域配置について意見が出ましたが,国として,計画的な地域配置を考えていくことは非常に難しく,今後も誘導政策を続けていくということで,中間まとめとして結論が出たと理解しています。特に,地域配置は国立大学の問題ですが,公立大学はもちろん地方自治体によるわけですが,国の支援もかなり入っています。それらのことが余り明確になっていません。更に言えば,国立大学・私立大学に対しても,地方自治体から支援ができるようなフレームがあります。ですから,そういった支援が現実にどのぐらい行われているのかというエビデンスを出していただければ,次回財政を考えるときの議論の一つのエビデンスになると思っています。

 公立大学に対して国が支援しているということは,今までの答申でもほとんど触れられていません。公立大学については地方自治体の責任だという部分は,少し変わってきているのではないかと思います。

 それに関連して資料1-1,2ページにイギリスについて掲載されています。これは学校数,学生数とも公立が大部分だということになっています。非常に細かいことですが,4ページのアメリカは設置者別と書いてありますけれども,5ページのイギリスは維持者別と書いてあります。これはどういう意味かというと,イギリスの場合は国が税金によって大学を維持していますが,設置形態としては私立に近いため,設置者という言い方はできないのです。逆に,アメリカの公立の旗艦大学は現在州政府からの補助金は1割を切っているような状況で,日本の私立大学よりも補助金の割合が低いような大学もあります。逆に私立の研究大学の中には国からの研究費という形で大きく公費の援助を受けているような大学もあります。何を言いたいかといいますと,設置者と維持者というのはもうずれてきているわけです。日本の場合は国公私の役割分担ごとに議論されていますが,より根本的なことを考えていく必要があるのではないかと思います。2040年に向けて考えるということについても,方向性を考えるということですので,こういった設置者と維持者ということはもうずれているということも議論の一つではないかと思います。

【永田部会長】  いまの御意見は、小林委員の持論である学生定員の自由化という政策に繋がっていく、ということですね。

【小林委員】  はい。

【永田部会長】  佐藤委員,どうぞ。

【佐藤委員】  触れようと思っていたことは小林委員からお話しいただいたのですが,資料1-1の中に私立大学連盟から出された「未来を先導する私立大学の将来像」の抜粋が出ています。そこで公財政支出の在り方について述べられています。

 2040年の高等教育の全体像を考えるときに,現在の割合で言えば,大学の77.7%,短期大学の94.6%は私学です。そういう中で,教育費の負担についてどういうふうに考えるべきかということは議論していただきたい。特に無償化ということが言われていますけれども,無償化の中でも,国立・公立・私立の場合に給付額が変わるということまで言っているわけです。何のための無償化なのかということも含めて教育費の負担について,これは財務省も関わることですが,議論されたらいいと思います。

 以上です。

【永田部会長】  ありがとうございます。

 伹野委員,どうぞ。

【伹野委員】  工学系に限ってお話しさせていただきますと,工学系においても学部,修士等の留学生が少ないということは指摘されているところです。工学系に限ると,修士等のプログラム自体に何か問題があるかとは,なかなか思いにくいところがあります。いろいろな大学で,英語で全てを履修できるようなコースをそれぞれ併設しても,留学生が伸びないというところがあります。工学系の我が国の強みというのはたくさんあると思いますが,それをどうやって伸ばすかということでいつも気になっているのが,教育に対する質保証が,国内でも統一されていない,国際展開されていない。国際的な質保証が日本の工学教育でも非常に大きな課題だろうと感じています。

 特に単位の認定について,いろいろな大学で,交換留学やダブルディグリー,ジョイントディグリーといったいろいろな制度を進めていますが,なかなか軌道に乗らない,海外から日本の大学に来づらいというところからも,国際質保証の制度が大きな課題であると感じています。

 工学系の話ですが,海外からのインターンシップ学生の多くは,短期間から中期,数週間から半年という期間で日本の大学に来ています。そしてほとんどの場合その単位認定は出身大学で認定されるわけです。そういう短期留学の受皿として日本の工学系大学が機能しているというところがあります。ですので,来づらいというよりも,日本で学んだことを国際的にも保証されるシステムが必要だろうと思います。

 私は高等専門学校にいるので,国際貢献という見方ですが,大学等は欧米諸国を対象にした学生の交換は主流になっていると思います。けれども,高等専門学校の場合,これから発展する国に対してどういう支援ができるかということで,高等専門学校システムでは学校を東南アジアやベトナム,モンゴルに学校を作って,先生と学生をある期間日本に来てもらって,その中で留学生として教育支援するやり方もあるということで,国際貢献のやり方も二通りあると言えます。留学生として日本でしっかり勉強させて人材を育成するという方法もあると感じています。そこの部分も教育の質保証が非常に大きな課題になっています。高等専門学校の中では,国際的に展開できる方法はないかと考えているところでございます。

 以上です。

【永田部会長】  ありがとうございます。

 工学系に限ってというお話でしたが,現状では、修士,博士でも良いプログラムを持っていると思います。先ほどから申し上げていたのは,例えば今までとは違うニーズに対応するプログラムが開発されているか、というと難しいのではないかということです。工学系は就職状況が良いので、修士を修了すると就職してしまい博士が減るというような現象まで起こっているのが現状です。

諸外国と比較して,大学院生に給与を支払っていないのは日本ぐらいです。その中で,世界と勝負して大学院生を増加させるということは非常に難しいと思います。諸外国では,授業料が無料どころか給料まで出ることがあります。これでは、海外の大学院に流出するというのは当然です。

このような状況ですから、さきほど留学生は奨学金を出さないで勝負すべきだ、と申し上げましたが,大学院については,どんなに教育プログラムが魅力的であったとしてもかなり難しいと思います。

 小林委員,どうぞ。

【小林委員】  諸外国にもいろいろあります。多額の生涯所得が見込まれる大学院(ビジネススクール,ロースクール等)にはローンで対応していて,一方,基礎研究等は奨学金を手厚くするなど,メリハリをつけています。

【永田部会長】  千葉委員,どうぞ。

【千葉委員】  それほど詳しくはないのですが,学生に対する学費は誰が払っているのかということです。恐らく教授が研究費を持ってきたりすることが財源となっているわけです。ですから,財源を取得できない日本の大学の状況も反省しなければいけないと思いますが,間違っていますでしょうか。

【永田部会長】  基本的に、大学院生に対する給料はNSFやNIHのグラントにもともとプログラム化されています。つまり、日本でいうところのJSPSやJST等の研究費から払っているわけです。

 益戸委員,どうぞ。

【益戸委員】  大学院を充実させるためには捨てるものも必要だと思います。何でもよこせというのは,我が国の財政状況からすればあり得ない。過去の経験によりますと,博士・修士の皆さまは,会社の中で幹部となっていく確率が高いのです。それは,地頭がよく,研究を通じて勉強することの訓練がなされている。したがって,組織の中で活躍する期待感も大きいので,大学院生も採用します。今までの議論の中で,学部教育のレベルをもっと上げる議論してきたと思います。ということは,大学院も当然もっとレベルを上げていかなければいけないということだと思います。

 それから,残念ながら日本のグローバル化が進まないのは,世界を知らなかったり,先端のことを知らなかったりということがあると思います。研究者を輩出するための大学院だけではなくて,社会を本当の意味でリードしていける人たちを創ることも,2040年を考えるときに,大きなテーマだと思います。

【永田部会長】  大変心強い御意見です。先ほど有信委員が別の言い方で同様のことをおっしゃっていましたが,大学院の価値を高めるにはどうすべきか、ということだと思います。

 村田委員,どうぞ。

 

【村田委員】  益戸委員がおっしゃったこと,日本の大学院の内部収益率,大学生に対しての収益がどれだけあるかということは幾つか論文があります。私も共同研究をしたことがありますが,日本の大学院修了生の内部収益率は,学部卒業生と比較して7~16%程度高く評価されていて,実際に職位の上がるスピードは速く,生涯年収も高くなる傾向があります。一方で,企業は明示的には評価しておらず,初任給にも変化は付けていません。

そこをどうするかは人文・社会科学系の一つの課題だと思います。資料でもありましたが,経済学と経営学に関してはニーズがあり,本学の大学院もそうですが,かなりプログラム化されています。経済学に関しては,体系的な教育がどこの研究科でもされていると思います。

 以上です。

【永田部会長】  ありがとうございました。

 福田委員,どうぞ。課程認定

【福田委員】  ありがとうございます。2040年の共通認識がない中で,変わることだけは分かっているわけです。人口が減り,産業界では人が足らないという中で,日本人のレベルはどんどん下がっているのが現状です。そういった中では,質保証を考えていくのは当然のこととして,優秀な留学生を受け入れるためには就業保証をすればよいと思っています。御承知のように,大学の学部で8万人,専門学校で6万人の留学生がいるわけです。そのうち,4万5,000人は就職したいという希望をもっていますが,現状では3割,40%も就職していない。グローバル化の中で,世界から優秀な人に日本に来てもらうためには,就業保証,要するにビザの問題提起はしていただきたいと考えています。

【永田部会長】  ありがとうございます。それでは最後に、金子委員、どうぞ。

【金子委員】  すみません,社会人教育の問題について問題提起されているわけですが,具体的に制度・教育改革ワーキンググループで対応する問題は何なのか,どのように議論されるかをお聞きしたい。

【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。まず,リカレント教育についてお答え申し上げます。制度・教育ワーキングが7月31日に予定されております。リカレント教育について議論するということで準備させていただいています。今日の議論も踏まえまして,制度・教育改革ワーキングで専門的な議論をしていただければと思っています。

 【平野大学改革推進室長】  大学院部会につきましては,有信部会長の下で議論を行っています。各大学院が強み,特色を生かしてどのように教育プログラムを社会のニーズに即した形で作っていくのかを中心に議論しています。また,その過程においてはコースワークのお話,キャリアパスにどう組み込んでいくのかというような多岐にわたる議論を行っています。

 また,将来構想部会の大学院のパートにつきましては,来月上旬と来月下旬の2回を使って議論を行い,その内容を御報告したいと考えています。

【永田部会長】  本日は学士課程に加えて、大学院や社会人,留学生に焦点を絞ったせいか,議論が深まったと思います。

 最後に、今後の予定について,事務局からお願いします。

【石橋高等教育政策室長】  今後の日程について御報告申し上げます。資料2を御覧ください。次回は8月9日,10時から12時でございます。場所は追って御連絡させていただきます。財政の関係の御議論をしていただければと思っています。

また,答申案に向けての議論を引き続きしていただくということで,それ以降の日程も入れさせていただいていますので,御確認いただければと思います。

 以上でございます。

【永田部会長】  ありがとうございます。次回は8月9日です。9月からは答申に向けてまとめていかなければなりません。内容については粛々と書き進めていますが,もう少し時間が必要だと思っています。

 本日はこれでお開きです。ありがとうございました。

── 了 ──

 

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