将来構想部会(第9期~)(第13回) 議事録

1.日時

平成30年2月21日(水曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省 東館3階 3F1特別会議室

3.議題

  1. 我が国の高等教育に関する将来構想について
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長)永田恭介部会長
(副部会長)日比谷潤子副部会長
(委員)村田治委員
(臨時委員) 麻生隆史,安部恵美子,石田朋靖,金子元久,黒田壽二,小杉礼子,小林雅之,佐藤東洋士,千葉茂,福田益和,古沢由紀子,前野一夫,益戸正樹,両角亜希子,吉岡知哉の各臨時委員

文部科学省

(事務局)小松文部科学審議官,伊藤文部科学審議官,常盤生涯学習局長,義本高等教育局長,村田私学部長,中川総括審議官,藤野サイバーセキュリティ・政策評価審議監, 瀧本大臣官房審議官(高等教育局担当),信濃大臣官房審議官(高等教育局担当),下間大臣官房審議官(初等中等教育局担当),塩見生涯学習総括官,蝦名高等教育企画課長,三浦大学振興課長,小山国立大学法人支援課長,角田私学行政課長,堀野高等教育政策室長,寺門主任大学改革官

オブザーバー

(オブザーバー)株式会社ソアーシステム大脇耕司代表取締役社長,共愛学園前橋国際大学 大森昭生学長,平安女学院大学 山岡景一郎理事長・学長

5.議事録

(1)     中小企業の求める高等教育及び小規模私立大学の振興について,3名の有識者からヒアリングを行い,その後意見交換を行った。


【永田部会長】  おはようございます。第13回の中央教育審議会大学分科会将来構想部会を始めさせていただきます。

 前回の本部会では,昨年末に行った論点整理に基づいて様々な御意見を頂きました。これからいよいよ次の段階に移るわけですが,本日は,以前から約束しておりました中小企業の関係者の方が高等教育に期待することという視点から御意見をいただきます。また,これまで国立大学,公立大学及び私立大学について比較的大規模大学からのヒアリングはしておりましたが,本日は比較的小規模な二つの大学からヒアリングをさせていただこうと考えております。その後,2040年に向けた高等教育機関の規模について,具体的な数字を元に議論を深めていきたいと考えております。そして最後の10分程度で,文部科学省の中に設置されている高等教育段階の経済的負担軽減方策に関する専門家会議での議論の内容について御説明いただくとともに,官邸に置かれている「人生100年時代構想会議」の第5回が開かれたとのことですので,その論点についても御紹介いただきたいと思います。

 それでは,事務方から配付資料について御説明ください。

【堀野高等教育政策室長】  配付資料につきましては,議事次第にございますとおり資料1-1から参考資料までとなってございます。不足の資料等がございましたら事務局までお申し付けください。

【永田部会長】  それでは,早速議事に入らせていただきます。最初は中小企業の求める高等教育について,次に比較的小規模な私立大学の振興という視点から,それぞれヒアリングをさせていただきます。まずは中小企業のお立場から,株式会社ソアーシステムの大脇耕司代表取締役社長に御説明いただき,その後,小規模私立大学のお立場から,共愛学園前橋国際大学の大森昭生学長,及び平安女学院大学の山岡景一郞理事長・学長に御説明いただきます。

 それでは早速,大脇社長,よろしくお願いいたします。

【大脇株式会社ソアーシステム代表取締役社長】  おはようございます。ただいま御紹介いただきました,株式会社ソアーシステムの代表をしております大脇と申します。私は中小企業家同友会という組織に属しておりまして,全国協議会では共同求人委員会の委員として,東京中小企業家同友会の共同委員会としては共同求人委員長として,採用の観点から様々な大学様と中小企業をどのようにつなげるかという立場として,本日はお話をさせていただきたいと思います。

 大変素晴らしい方々を前にして少し緊張しておりますが,自己紹介から始めさせていただきたいと思います。私は高知県の出身で,横浜国立大学から株式会社ソアーシステムに新卒として入社しました。技術関係の業務をずっと担っておりましたけれども,平成22年に代表になったという経緯でございます。

 会社は創業37年目になります。私は3代目の代表になります。社員は今40名ほどおりまして,飯田橋でシステム開発をやっております。お客様先に常駐しないで,持ち帰って開発をやるという昔ながらのスタイルの開発を続けており,お客様からは便利な開発会社として重宝いただいているものと自負しております。現在,東証二部に上場しておりますRVHというグループのグループ会社になっております。創業社長が退任するタイミングでM&Aで事業継承したという経緯がございます。

 続きまして,東京中小企業家同友会,あるいは全国協議会について少しお話しさせていただきます。東京中小企業家同友会をはじめとした全国の同友会では,お互いの経営事例を学び合うということで,「良い企業をつくろう,良い経営者をつくろう,良い経営環境をつくろう」という三つの目的の下,毎日いろいろなところで勉強会を開いているといった団体でございます。1956年に東京で設立されて,これが全国に広がっていっております。全国規模の団体としては唯一の中小企業団体と言えるのではないかと思います。全国では4万6,000社が参画しておりまして,東京では2,200社程度が活動しております。

 その中で大きな委員会が四つありまして,経営労働委員会,共同求人委員会,共育委員会(同友会では「共育」というのは社員,新入社員とかが共に育つといった意味でこういう字を書きます),それから多様な働き方を推進する委員会という四つの委員会がございます。その中で,共同求人委員会では大学様と中小企業をどうやってベストマッチさせるかというようなことを日夜考えて勉強を続けております。2016年からこの共同求人委員長を拝命して3年目となりました。

 共同求人活動の詳細を少しお話しさせていただきます。「1社の力でできないことを皆の力で」ということで,新卒を共同採用するために30年以上前から合同企業説明会を中心に活動しております。中小企業の魅力を伝えて,意欲ある優秀な学生の採用から人材育成までを一貫して進めるという立場です。入ってしまえばそれでいいということではなく,しっかりと共育を,共に育ち定着してもらうということを目標に求人活動を行っております。そのためには大学様,専門学校様と数十年にわたっていろいろな関係を築いてまいりました。合同企業説明会だけではなく,学校訪問でいろいろな情報交換をしたり,学内合同説明会をやらせていただいたり,好不況に関わらず雇用を創出してきたのではないかと思っております。

 合同入社式や新入社員研修,フォローアップ研修,3年目研修,幹部社員研修と人材育成をしっかりやっていこうという観点で,このような活動を通して新人,あるいは3年目,さらには若手の教育だけではなくて,その教育に携わる経営者あるいは先輩社員にも成長してもらおうといった意図でこのような企画を続けてきております。

 特徴的なインターンシップとして,社長弟子入りという,社長に1週間密着するような弟子入りインターンシップをやっています。実はまさに今,私に弟子がついておりまして,本日も1名来ているんですが,そのような弟子入りインターンシップであったりとか,キャリア教育授業,それから経営論授業を通し中小企業の魅力であったり課題であったりいろいろな現状を知っていただくというようなことを続けております。広く言うと社会に出る若者に中小企業のことや就職について,あるいは働くことの意義や,自分が考えることを君はどう考えているのといったことについて話させていただく中で,その方のベストマッチの会社を探すお手伝いをさせていただくというような活動を続けております。

 2枚目に移らせていただきます。そんな中,中小企業の現状について,お分かりのことは多いとは思いますけれどもお話をさせていただきます。日本の全企業の99.7%が中小企業であります。就業人口の約70%を占めるとも言われております。大切なことは大企業か中小企業かということではなく,大企業とは異なる役割を担う大事な存在である企業がたくさんあるということです。規模が小さいので専業特化して効率経営をやっているということ,あるいは日本の産業界を下支えしているということは皆様御存じのとおりだと思います。

 特徴としては経営がコンパクトであること,あるいはニッチ市場におけるイノベーションの担い手であったり,地域の雇用に特化して,雇用を創出しているという特徴があるかと思います。同友会に参加していただいている企業に関しましては,経営理念,経営計画に基づいて高成長を続けている企業も多いです。経営理念を持っている会社が非常に学生さんに受けがいいというのは,私たちも身をもって感じているところでございます。

 また4番目としまして中小企業の課題です。事業者は減少しております。倒産よりも休業廃業が増加しているような現状,あるいは経営者が高齢化しておりまして,現在経営者の平均年齢が59歳で,この年齢において後継者がまだ決まっていないところが65%以上あるとも言われております。日常的な人材不足でして,入ってくる人だけではなく,社員の高齢化も目立っております。このようなところに大企業とは別に中小企業の限界がいろいろと見えてくるかと感じています。専門の担当を置けないということであるとか,時間・費用に限界があるとか,そのようなところが問題になっているかと思います。これだけではなくて,様々なところに課題を持っております。

 高等教育との関わりということで,主に私たちが採用活動で感じているということをお話しいたします。まずは,中小企業のことを知ってもらえていないなという実感が非常にございます。知らないまま就職活動をされ,就職先の対象から最初から外されているという現状も多く見られます。更に今は空前の売手市場でございますので,この傾向が更に加速しております。このまま中小企業における有能な人材が不足していきますと,日本の経済を支える中小企業全体の生産性が確保できなくなるという可能性もあると考えます。企業の存在価値,それから仕事の中身を知ってもらうことによって中小企業の方が自分はマッチしているという学生さんもたくさんいるかと思いますので,キャリア教育の授業であったりとか,経営者との座談会であったりとか,面接指導会,インターンなどの機会を通じて,これからも学生さんにこのようなことを知ってもらいたいなと思っております。

 また,今は非常に情報を集めやすい時代でもあります。横並びを好むというような学生気質もあると聞いております。また社会人の常識が学生には非常識であるというような現状もあると聞いていますので,いろいろな情報を入手した後,どうやって判断するかというような教育,あるいは入社後のミスマッチを防ぐために,人生にどのような選択肢があるかといったような情操教育のような就職指導,教育が必要なのではないかと思っています。お金のために働くんだ,お金のためでなければ働く意味がないというような学生さんもたくさんいると聞いております。やりたい仕事ができなければ転職すればいいという考え方の学生さんもいらっしゃると聞いています。そのようなところを社会人がどうやって入社する前に正していくかというところも私たちが手を少し出していきたいなと考えているところでございます。

 その他,高等教育と言われる場面に私たちが期待することですけれども,社会人になってから学ぶ機会が少なくなっております。中小企業では社内で実施するというのも非常に厳しい状況でございます。様々な大学やそういった社外の機関で社会人が学ぶような機会ができないかというようなことは,個人的にも考えております。私が代表になったときに,法政大学大学院さんのMBA体験コースに行かせていただいて非常に勉強になったというようなこともございます。そのような教育の機会が幅広くあると社会人もいろいろと学んでいくことができるのではないかとも思います。

 あるいはこれからは多様な人材登用の可能性があります。シニアそれから外国籍,今までやっていた仕事をやめて新しいスキルチェンジをしたいというような方に,そのような学びの場を設けるのも高等教育としての役割であるのかなと思っております。

 また,中小企業でも毎年採用することができるような20人,30人の会社というのは限られておりまして,やはり5人とか3人とかそういった家族経営に少しプラスアルファしたような経営をやっていらっしゃる会社もたくさんございます。そのような会社に入る学生さんには,自分がこの会社を何とかしていくんだとか,いわゆる起業家精神やアントレプレナーシップといったことが精神として宿っていないとやっていかないかなとも思いますので,そのような教育も強化していっていただきたいと思っています。あるいはグローバル教育,コーチングといった技術的なところについても,今まで私たちが学んでいたときにはなかったような新しい考え方がたくさんございますので,そのような新しい考えを会社に取り入れられるような技術として特徴を持った学生さんとして受け入れたいというのもありますので,そのような教育も強化していただきたいなと思います。

 中小企業家同友会では経営理念の大切さというものを訴えております。理念に共感して,その理念を自分が一緒になって実現するんだというような気持ちを持った学生さんと一緒に仕事をしていきたいと思っています。

 次のページ以降は私たちがやっている活動の詳細が紹介されております。これについては御参考までに資料化しておりますので,御参考いただければと思います。

 とりとめなくなってしまいましたが15分というお時間を頂きましてありがとうございました。以上で発表を終わらせていただきます。

【永田部会長】  大脇社長,大変ありがとうございました。いろいろと示唆に満ちた内容になっておりました。

 それでは,続きまして,共愛学園前橋国際大学の大森学長から10分程度で御発表をお願いしたいと思います。それでは,大森学長、お願いいたします。

【大森共愛学園前橋国際大学学長】  皆様,おはようございます。群馬県から参りました共愛学園前橋国際大学でございます。今,大脇社長から中小企業家同友会のことをおっしゃっていただいたんですけれども,私どもも群馬県の同友会と本当にがっちりとタッグを組んで,COC+も中心的な役割を担っていただきながら学生を育てていただいています。私自身も同友会のメンバーに入れていただいて,日々学んでいるところですけれども,そんな地方の現場からのお話をさせていただければと思います。

 お手元の資料ですけれども,資料1-2「活性化に向けて」というタイトルを付けさせていただいて資料を作らせていただきました。そのあとにつづってある参考資料1と2ですけれども,これは本学の取組と成果をまとめたものです。本日の御報告は前半を本学の御紹介,その後に地方小規模大学のことについてお話をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは,資料をめくっていただきまして3ページの概要を御覧ください。本学を設置する共愛学園は,明治21年に新島襄らが発起人となり設立されました。今年で130周年を迎えます。大学は88年に短期大学,99年に改組して4年制大学を作っています。学園にはこども園から小・中・高・大と全ての学校がそろう県内唯一の総合学園となっております。大学は1学部1学科の中に2専攻・5コースを置いており,入学定員が,今年度から定員増により255名,専任教員が32名という非常に小さな大学です。それでも,こちらにありますように経営の指標は悪くないのかなと思っているところです。

 4ページに参ります。本学の特長は四つにまとめることができます。まず本学で最も重要な会議体は全教職員が参加するスタッフ会議で,教務や学生といった大学運営組織も教員と職員が対等な立場で参画して,その長(おさ)も互選によって誰でもなることができます。我々は教職一体のガバナンスと呼んでいます。

 本学は,また学生が大学運営のパートナーであるとも位置付けておりますし,小さい大学ですから当然教育の質転換は進んでいます。それから地学一体ということで,この資料にもありますけれども,本学は地域からお預かりして,地域にお返ししていくということが使命であると心得ています。私たちは,その下に書いたように一定の覚悟を持って取り組んでいくと,一般にはデメリットと言われている地方・小規模という要素はメリットになり得ると考えているところです。

 続いて5ページでございます。本学の受験者と入学者の推移です。御覧のように99年の開学以降定員割れが続いていく,少し厳しい時期がありました。ただ,そのときに本学は地域の大学になるんだという,いわばミッションの再定義をしました。それからそれにのっとって努力を重ねたことによって受験者はおよそ右肩上がりになっておりまして,今進行している入試でも過去最高の800と書きましたが,それを超えそうな受験者数になっております。ちなみにいわゆる偏差値も10年間で10ポイントほど上昇しているということになっております。また,右側にありますように各種補助事業にも採択いただけていることは,本学の教育の質を御評価いただいてのことかとも考えております。COC+の申請大学になっている私立大学は2大学ですが,そのうちの一つが本学です。

 6ページを御覧ください。ここは宣伝ですが,雑誌等で取り上げられている様々なランキング等です。一時は定員割れをしていた大学がここまで評価を頂けているということで,最近ではテレビ等のメディアでもたくさん御紹介いただいているところでございます。

 7ページからは,本学の教育の取組をお話しさせていただきます。早速ですが8ページにお進みください。グローバルですけれども,本学では次世代の地域社会を牽引(けんいん)するグローカルリーダーを育てるということを目標にしています。いわば飛び立たないグローバル人材を育てるということでございます。そのために,グローバルですけれども地域連携のスキームを組んで実践的なプログラムを企業さんと一緒になって展開しています。先ほどのランキングにもありましたように,短期留学の参加率が全国2位ですけれども80%が地元に就職していくといった,グローカルな人材育成ということをやっております。

 9ページですけれども,地元の前橋市とは緊密にタッグを組んで,協働で推進本部を置いて教育プログラムを作っています。特に半年間の地域留学であるサービスラーニングタームでは,自治体や企業で4か月の長期インターンをしたり,あるいは限界集落に4か月間入っていくなどの取組をし,それらはカリキュラムに組み入れられるとともに,COC+へと発展しています。

 足早で恐縮ですが10ページです。それらの学びの成果を可視化してキャリアへとつなげていく取組でございます。KYOAI CAREER GATEと呼ばれるポートフォリオに,学生は4年間の学びや活動,様々なものをため込みます。それをエビデンスとして本学の学習成果指標である共愛12の力をルーブリックを基に評価して,SHOWCASEの機能によって学びや活動を地域企業等にも見ていただくことで,目指すキャリアへと学びを接続させていくということを試みているところです。

 また,11ページですけれども,こういった取組は今,高大連携による学びの接続へと結び付いていることでございます。ある公立の高等学校では高等学校の授業を本学が担当させていただく,まさに学びの部分で高等学校と大学がつながってきているところです。これは大学改革が次の高等学校改革に資するものだということの証左かなとも思っているところでございます。

 12ページに示しましたのは,高大接続から高大社接続を目指した地域人材育成の取組です。若者の学びを大人たちがシームレスに提供していくという文化をこの地域から発信していきたいということで取組を展開しています。

 まとめますと,13ページにありますが,これまで本学が取り組んできたことを土台として,GGJ(経済社会の発展を牽(けん)引するグローバル人材育成支援)等の支援を頂くことでこれを高みに引き上げ,同時に改革総合や未来経営で基盤整備をさせていただきました。そして今地方創生拠点大学を自負してCOC+に取り組んでいます。本学のような地方小規模大学こそ取組を後押ししていただける支援は大学を大きく変え,学生たちを大きく成長させるものであると実感しています。

 14ページからは,大変僭越(せんえつ)でございますけれども,地方小規模大学の現場にいる立場からの意見を述べさせていただきます。なるべく本部会の御議論に即したつもりですけれども,ゆえにもう既に議論済みという内容もあるかもしれません。御容赦ください。

 15ページを御覧ください。はじめに全体として感じていることを申します。機能分化ということが言われて久しいわけですけれども,本学は地域人材育成という機能に自信を持って取り組んでいます。既に地方では機能分化は進んでいると感じています。そして地方小規模大学不要論というようなことを時々目にしますけれども,地方大学は本当に社会的なリメディアルを担っているのであって,それがないときに産業界は人材育成を一から展開していただけるのだろうか,というような疑問も芽生えてまいります。ここに書きましたとおり地方小規模大学の存在意義は多様ですので,地方大学の評価は定員の過不足だけでなく,地域の評価をしっかりと入れていただくべきではないかと思っております。小規模大学は分化した機能の一つとしてもっと注目・評価されてよいと思います。そして地方小規模大学は問題だという言説は,多くの地域で頑張っている地方小規模大学にとって,言葉を選ばず申し上げれば迷惑です。機能分化というのであれば,それぞれの機能をむしろ称賛し,その評価や地位を高めて,そこで頑張っている学生たちに自信を与えていくことこそが我々大人がなすべきことなのかなと思っております。

 16ページを御覧ください。細かいことですけれどもリカレント教育について,先ほど大脇社長からもありましたが地域にもニーズがあります。ただ,履修プログラム等の短期によるものが地域ニーズにあります。しかしそれでは学生数にカウントしていただけません。そうであるならば,大学は18歳に目が行くのは当然のことでございます。リカレントを促進するためには,一定の単位数を取得する受講生を学生数にカウントしていただくような仕組みが必要なのではないかと考えております。また地域人材需要に対応した学びを臨機に作ることは地方小規模大学には難しいです。需要はあってもその規模が小さいので採算が合わない,あるいは定員割れするのです。つきましては,より柔軟に対応できるように教員のカウント方法として,他大学や他企業に所属する方をみなし専任とするような仕組みを導入していただければ有り難いと思っております。

 17ページを御覧ください。連携というキーワードです。自治体との連携はもう今でも相当に緊密ですけれども,それは地方創生という共通の課題に向き合っているためであって,制度的には裏付けがありません。自治体が大学に関することを自分事と捉えられるためには交付税の算出も含めた設計が必要だと思います。また財政規模が大きくないところほど大学との協働が必要なのであって,余り大きな額の支援は手を挙げられるところを制限してしまいます。更に基礎自治体との取組こそが重要であって,そこにもしっかりと目を向けていただきたいと思います。

 大学間連携ですけど,これが進まないのには二つの課題があって,一つは地方の交通網の問題です。そこに書いておりますが,グーグルマップで本学から群馬大学まで十数キロ,車で20分と出ます。ところが公共交通機関での行程を調べると「検索できません」と出るわけです。というのが地方の実情でございます。僭越(せんえつ)ですけれども,大学間連携を首都圏の感覚では語れないということを御承知おきいただきたいと思います。

 もう一つは自ら開講です。本学の科目だけでディプロマを満たすのに,ほかの大学を受講する意義というのは学生たちにはありません。もし自ら開講が弾力化されれば,需要に応じた学習プログラムも更に迅速に対応できるかもしれません。

 18ページを御覧ください。最後に大学への御支援の方策についてですけれども,まず前提として地方小規模大学に支援を頂くと,その大学は大きく成長できるということ,そして無駄なお金の使い方はしないということは本学が一つの証左になれると思います。それを踏まえまして経常経費についてですけれども,現在,規模に応じて支援いただいております。しかし規模に関わらず基盤的な業務には同じ程度の予算が掛かります。そこには教務システムや教員1人を採用する例,ホームページを作る例などを挙げました。そこで経常経費の配分を基盤部分を,小さくて結構なんですが一定額にして,その上で規模に応じて計上という2段階方式を考えていただけないかと思っています。そうすれば各大学も安心して適正規模への転換ができるのではないかと思います。

 また競争的補助についても,億円単位を数か所よりも,数千万を100か所といった規模感が地方には望ましいです。

 最後に定員の過不足ですけれども,例えば入学定員の4%は本学にとっては10名です。つまり,96%未満が定員割れとなると10名分ですが,これは入試のちょっとした状況ですぐ変わってくる数である,ということも御理解いただければと思います。

 また無償化については,対象の大学を選ぶ基準を作るのだとすれば,機能分化を踏まえた基準をお考えいただきたいと思います。地方小規模大学が対象とならないことがあれば死活問題ですけれども,無償化が進めば学費ではなく教育内容で見てもらえるようになることを期待しているところです。

 以上,大変手前勝手なことを申し上げましたことを御海容ください。御清聴いただきまして誠にありがとうございます。以上です。

【永田部会長】  大森学長,ありがとうございました。

 それでは,続きまして,平安女学院大学の山岡景一郞理事長・学長からご発表していただきます。山岡理事長・学長、よろしくお願いいたします。

【山岡平安女学院大学理事長・学長】  ただいま御紹介いただきました平安女学院大学の理事長兼学長をしている山岡でございます。ここで一番の高齢ではないかと思いますが,私は今年で88歳になります。まだまだ頑張っていきたいと思っております。

 もともと平安女学院大学は小さな大学でございますけれども,大きな大学を目指して,京都御所の近くの一等地を売り,高槻市それから守山市に進出したことが破綻寸前となった原因でございました。巨額の財政赤字を背負っており,文部科学省から指導を受けたのが前の理事長であります。私が就任したときには債務が80億円,校舎はボロボロである一方,教員の年収は1,000万円以上,退職金は3,500万円から4,000万円という状態でありました。私は中小企業の経営指導をしておりましたので,元々学校とは縁がございません。そのような中で,この平安女学院に来たわけでありますけれども,なかなか学校の改革は難しいものでした。

 何せ労働組合が学校を経営しているような状態でしたので,学院関係者から理事長になってくれと言われたときに,まず私は学生のことを考えれば,大学は潰さず何とか残したい,ただ,大きな大学にするのではなく,コンパクトかつグッドネスな大学にしたいということを申し出たわけです。

 最初に労働組合を集めて,組合員の人たちにこのようなことを言いました。今,人件費に20億円かかっていて,これは全体の81%にもなる。そして毎年6億円ずつ赤字が出ていると。そこで,20億円の給与の3割をカットすれば赤字が解消できる。よって,皆さんの給料を3割カットすると言ったら,もう全員反対です。それを受け入れられないのであれば,この学校は潰すと,そこまで言って,ようやく渋々了解を取り付けました。

しかし,給与が7割ほどになったことによって,半数の教員は学校を去りました。本学教員の年収は平均で教授が605万円,准教授が508万円であります。ほかの学校の半分くらいではないでしょうか。その結果,人件費が半分になると同時に,残った教員は給料が安くても学生のためだったら残って頑張ろうという質の高い教員が残ったわけです。

 そして普通の学生を大きく育てるということをやろうと,学力よりも実力をと,具体的には,しつけや、社会人としてのマナー,スキル,それから愛,要するに相手を思う心を学校で養うべきだと考え,それらを象徴する意味で「貴品女性」という言葉を掲げました。これは私の造語ですが、商標登録しております。この「貴品女性」の育成を目指そうと教職員みんなが頑張ってくれたおかげで,今いる本学の学生はとても礼儀正しく、教室では起立,礼をし,廊下ですれ違ったら必ず挨拶をいたします。

 それから,国際観光学部では、希望する学生には約120万円の奨学金を貸与し,卒業したら返してもらわなくてもいいから、アメリカ、中国、カナダなど様々な国へ海外研修に行きなさいと言っています。その結果,TOEICで900点台,800点台を取る学生がたくさん出てきました。非常にこれは効果があったと考えています。

 また,本学の学長室は出入り自由で,いつも多くの学生が来ております。だから私は学生の名前を覚えております。これは名前を覚えるということが大事だ,と考えているためで,同じことを各教員に言っております。一々名簿を見ているようでは駄目だと,必ず覚えなさいと言っております。

 それから教員と職員の協働ということで,職員のいるところに教員の机を置いております。共同研究室にはいつも教員がいて学生と面談することができます。

 さらに,就職についても各企業に出向きまして,学生を4年間見てきた学長のほうが、1,2時間の採用面接よりしっかりとした人物評価ができるのではないだろうかと説明してきました。その結果,学長推薦で採用してくれる企業が出てくるようになりました。もちろん忖度(そんたく)ではありません。

 そのほかにもレセプショニストクラブといいまして,学生がこういうものを自分たちで作りまして,受付であるとか司会をします。それから、地域連携をめざし,京都市の交通局と提携しまして,駅のイベント運営などに取り組んでおります。平安女学院大学の学生は、京都の地下鉄の一日学生駅長も努めています。

 それから,学生が地下鉄の駅周辺の施設を取材し,「きゅんきゅんKYOTO」という情報誌を出版しております。また,学生が京都の有名旅館の集客プランを立て,それを旅館組合の青年部が実際に商品として販売するという取り組みも行っております。就職活動を終えた学生たちからは,面接官から君と一緒に働きたいと言われた,という話を何度も聞かされ,非常に喜んでおります。

 これからの大学政策というものは、全ての学生の力を伸ばす大学をいかに支え,エンカレッジするかが大切になります。普通の人間を普通以上の人間に成長させることです。偏差値教育ではありません。どのような調理器具であっても,どのような食材であっても,おいしい料理を作れるのが本当の名コックであると,それを束ねるのが料理長である学長の努めであると,こう確信しております。

 そのためにも,本日お集まりの先生方の御指導と御後援を頂きたいと思っております。どうもありがとうございました。

【永田部会長】  ありがとうございました。

 今三名の先生方にヒアリングをさせていただきました。これからしばらくの間,質問と意見交換の時間にしたいと思います。 それでは,金子委員,どうぞ。

【金子委員】  ありがとうございました。まず大脇社長にお伺いしたいんですが,お話を大変面白く伺わせていただきました。こういう席ですと,よく実業界からの要求といって,いろいろなことを企業の方がおっしゃるんですが,そのときに,やはり働くことに関連のある教育をもっとするべきだということをおっしゃいます。ただ具体的な内容は実はかなり多様ではありますが,大きく分ければ私は特定の企業,特定の職務に応じた具体的な教育をやるべきだという議論と,それから職務に対する心構えのようなものが必要だということの二つに大きく分けられるんではないかと思います。

 一般的にいえば中小企業に対しては大学はもっと特定の職務に関する訓練を行った方がいいのではないかというような意見があるように思うんですけれども,私が商工会議所でいろいろと話を伺ったときに非常に感じましたのは,具体的な職務やスキルというのは,実は中小企業で要求されるものは個々の職務ではあるけれども,大学に対してその点を要求しているかどうかは余り簡単には言えないと。むしろ必要なのは,中小企業こそ多様な職務内容があるのでそれに対する訓練が必要であるし,さらには中小企業は個性が非常にありますから,そこに同化して自分がそれに貢献するという意欲を持つということが最大の問題ではないかというようなことを伺ったんですけれども,大脇さんはそういった点についてはどうお考えでしょうか。

【大脇株式会社ソアーシステム代表取締役社長】  御質問ありがとうございます。おっしゃられるとおりでございまして,中小企業というのは大企業と違い,1人が担当する仕事の範囲が広く,助け合って仕事をするというようなことが必要とされる場面が多くございます。例えば私の会社であればシステム開発,技術を持って仕事をすることがほとんどなんですけれども,ある場面では営業的な側面であったり,企画的な側面であったり,あるいはそれこそ会社の経営に関わるような数字をまとめるといったような業務まで我が社のリーダー陣はやっております。そういったことが分業化できないのが中小企業の特徴かとも思いますので,いろいろな視点でいろいろなことを経験してきた学生さんの方が私たちは生き生きと働いていただけるのかなと思います。特にITだけではなく,業務知識あるいは業務で必要な技術というのは会社に入った後で,先輩から,あるいは会社で勉強してもらうというのがほとんどでございますので,その基礎になるような全体的な自分の興味をいろいろなところに持っていただけるような学生さんを私たちは求めているということでございます。おっしゃっていただいている内容とほとんど同じでございます。

【永田部会長】  ありがとうございます。今の質問に関連して,そうであれば、大卒者と高校卒で就職される方との違いをどうお考えでしょうか。要するに、業務で必要なことは会社で教えるとする一方で,大学の卒業価値や必要性は感じられているということかと思います。その価値や必要性とは何でしょうか。

【大脇株式会社ソアーシステム代表取締役社長】  はい,大学で勉強している基礎的な内容というのも非常に重要だと思っておりますけれども,やはり高校生のレベルでの社会的な視野というのと,大学を出たレベルでの社会を見る視野というのは大分違うと思っています。ですので,大学の4年間をどう過ごされるか,その学生さんがどのように勉強されるかというようなことは個々の学生さんで違うとは思いますけれども,中小企業もたくさんありますので,その会社とどういうふうにマッチングするかということで言えば,学生さん個々の特性として,勉強を一生懸命やってきた人でその勉強が生きるような会社さんもあるでしょうし,勉強は余りだけども,社会をたくさん見るようなアルバイトをたくさんしてきたよというような学生さんが生きるような中小企業もあるだろうと思います。そのようなことでマッチングが行われていくのではないかと思います。

【永田部会長】  それでは,小林委員,どうぞ。

【小林委員】  私の方からは大森学長にコメント一つと,大脇社長と大森学長に共通の質問をしたいと思います。初めに大森学長へのコメントですけれども,前回のこの部会で定員の管理というような考え方はもうやめた方がいいのではないかというかなり大胆なことを申し上げたんですが,本日の18ページ等の最後のところで定員超過率の問題,あるいは逆の定員未充足の問題については,そういった非常に具体的な例になっているのではないかと思います。おっしゃることは全く定員の問題性をよく表していると思います。それから教育の無償化についても同じようにこれから議論されることですけれど問題を指摘されていると思います。これはコメントです。

 それからもう一つ,お二人に御質問ですが,ここでは社会人の学び直しということについても今審議しておりまして,その中で前回,履修証明プログラムということについて審議したわけですが,それが有効に活用されているかどうかということについて,これも本日の資料の16ページのところで「履修証明プログラムやBPを有効活用し」と書かれておられます。特にこれは雇用者側がどのように評価しているかということがかなり重要だと思います。この将来構想部会で以前,社会人の学び直しに関してヒアリングをした際に,特にこれは修士の学位のことだったのですが,学位を取得したかどうかということは余り問題にしない,むしろその中身の方が重要だというようなことでコメントを頂いたのですけれど,私は,雇用者側が社会人が学び直したことを適切に評価,処遇していただかないと,なかなかこれは進まないと思っているのです。そういう意味で履修プログラムを実際に活用されているということについて,あるいは学位の評価について雇用者側の意見といいますか評価をお聞きしたいと思います。

【大森共愛学園前橋国際大学学長】  御質問ありがとうございます。

 リカレントのことに関して,正直に申し上げると,本学はまだ履修証明プログラムを設置できていないのです。それは先ほど申し上げたように,幾らそこに労力を割いても在学者数としてカウントしてもらえないので,そこまでいけないと。ただ最近大脇社長がおっしゃるように地域ニーズという中で事業承継の問題,それから小さな企業さんのイノベーション,それから自治体としても法人数を増加していく必要があるというような中から,商工会議所の会頭さんから「共愛学園さんでビジネススクールはできないか」という話がありました。そうこうしているうちに,今一緒にいろいろなまちづくりに取り組んでいる眼鏡のJINSの田中社長から「前橋でのビジネススクール,共愛学園さんならできるでしょう」と言われ,またそうこうしているうちに市長から「あれ,共愛学園さん,ビジネスを何でやらないの」と言われ,これはニーズがあるなと。ところが,うちがMBAを作るということはほぼ考えられない規模感ですし,とてもとても持ち出しですることはできません。そのときに,大学が証明を出すことによってオーソライズされることで,商工会議所等には社員さんをきちんと研修として出してやれるニーズがあるのではないかということで,実は市の方で今考えているプラットフォームを使いながら展開していこうと,そんなようなことを水面下で考えています。そうしたときに,履修証明プログラムというのは一つのまとまりとして企業さんや商工団体さんにお示ししやすいという意味で有効だと思っています。現実としては履修証明プログラムを設置した上でやはりBPを取っていって,その実利がある形にしていくということのベースとしての履修証明プログラムというものの有効性かなと感じています。

【大脇株式会社ソアーシステム代表取締役社長】  私が考えていたのは,やはり経営者が次の世代に経営を引き継ぐときに,経営に全く関わってこなかった人間がスムーズに経営を学んでいくためには,社内ではなくいろいろな高等教育機関で教えていただくというようなことが必要なのかなというのがまず1点です。

 それとその下の世代,リーダー層が改めて自分が今まで社会人としてやってきた経験を基にして次のステップに,あるいは別の分野に進出していくときに何か気付きを求めるような場面がありまして,そういった時に勉強する場面がなかなか世の中にはないので,そういうものがあったらいいよね,ということを中小企業家同友会の仲間と,全国でいろいろな話をさせていただく場合があるんですけれども,さらには大学さんとの関係でそういったことがあると,中小企業をもっと知っていただくということにもつながるよねということで話題が出たというようなこともございます。

【永田部会長】  ありがとうございます。

 それでは,小杉委員,どうぞ。

【小杉委員】  ありがとうございます。

 既に私が考えていたことは永田委員と小林委員に重なっている部分があるんですが,私は今高等学校卒業者の就職調査をしていまして,高校生を採用している企業さんにいろいろお話を聞いているんです。基本的に中小企業さんです。そこで大卒,高卒の仕事の違いがあるのかというと,大抵のところが違わないと言うのです。高卒を採用しているところだからと思うんですけれども,入り口の賃金は確かに相場が違うので違いますが,入ってから最初の初任配属も違わないし,中の教育訓練も違いません。ただその辺は先ほども御説明があったとおりそれぞれの企業の状況によって評価する部分が違うと思うんですが,今お話に出なかったところでは将来展望や期待というところで違いがあるのかどうかについて大脇社長にお聞きしたいと思います。

 2点目は小林委員と重なってしまうんですが,リカレント教育の場合,時間がないというのが一番大きな制約になってくると思います。中小企業さんで果たして何らかの形である一定の時間を使って集中的に学びに出せるようになるなためには一体何が必要なのか。ウェブ等で提供があればかなり可能なのか,それとも何か根本的に教育訓練のための休暇制度みたいなものが法的に決められるというようなきっかけが必要なのか,その辺をお伺いできればと思います。

【永田部会長】  では,大脇社長,お願いいたします。

【大脇株式会社ソアーシステム代表取締役社長】  ありがとうございます。

 1点目の高校生の就業の件につきましては,やはり企業ごとに違うとは思うんですけれども,将来的には高校生だけでなく,留学生の採用であったり,スキルチェンジをしたシニアの方の採用であったり,もっと言うと障害を持った方の採用であったり,そのようなことも含めてその会社でどういった働き方をするかといった教育訓練を,もっと個別の人に寄り添った形で作っていかなければいけないというようなことを思っております。中小企業家同友会の中にも多様な働き方委員会というものがございまして,そういったところではもっと踏み込んでニートや未就労者にもっと働いていただくにはどうしたらいいかといったところも含めて,会社に入っていただいた後にその人にどうやって寄り添ってその人と一緒に会社が成長していくかという観点で仕事を覚えていただこうと思っていますので,高校生,専門学校生,大学生,分け隔てなくやるということではなく,その人に合った形で教育を考えていくという立場でやっております。

 2点目のリカレントに関する時間については,確かに業務優先というところはございますけれども,幹部候補であったり,次世代の経営者であったりというものを担うためには,ある程度の時間の犠牲というものは将来への投資ということで必要なのかと考えています。

【永田部会長】  ありがとうございます。

 それでは益戸委員,どうぞ。

【益戸委員】  2つ質問がございます。まず1つ目は大脇社長に質問です。中小企業家同友会として30年以上活動をされ,地域の教育機関とは数十年にわたって強力な関係をお築きです。日頃から教育機関とは意見交換をされていると思いますが、にもかかわらず高等教育機関からは求めている人材が出てこないようですね。それが恒常的な人手不足に続いているようです。教育機関側は、大脇社長側のニーズを受け止めていないとお考えですか。

 2つ目は大森学長にお聞きしたいのですが,地元では共愛学園さんは信頼ができる。と企業や行政機関の評判を集めていらっしゃいますね。その地域には、共愛学園さんのように評判を集めている大学はないのでしょうか。

【大脇株式会社ソアーシステム代表取締役社長】  ありがとうございます。

 今までのつながりの中でということですけれども,実は全体的に見ると中小企業全体が人手不足で困っているという印象があるかと思いますけれども,例えば弊社あるいは私の周りの会社はある程度人手は充足できる形で採用できております。これは量も質もでございます。これは一生懸命会社の現状を考え,会社の改善を行い,学生さんに選んでいただけるような会社になって,それを学生さんに知っていただくという活動が一貫してできている会社が比較的そういうふうになっているのかなと思います。

 ただそういうことができている会社が一部であるのも現実でありまして,学校さんとの関係もなかなか構築できない,あるいは積極的に経営者が出てこないといったところで問題を抱えている会社,あるいはそもそも求めている人材と自分の会社のレベル・規模が合っていないといったいろいろな問題を抱えていることもあります。大学さんから出てこないとかそういうことではなくて,経営者の側(がわ)から,あるいは会社の側(がわ)から探しに行けていない会社さんがそういった人材不足に陥っている傾向があるのかなと思います。全国の中小企業家同友会ではもっと自分たちのアピール,自分たちを知ってもらう活動をやらないと,いつまでたっても待っている姿勢では採用はできないよというようなことで積極的に大学さん,あるいは学生さんのところの出掛けていくというようなことをやり始めているところでございます。30年前は待っていれば学生さんが来られたんですけれども,今は来ていただけないというような状況でございます。

【大森共愛学園前橋国際大学学長】  御質問ありがとうございます。ほかにも大学はあります。群馬県の大学進学者は約9,000人で、そのうち約3000人が県内に進学しますけれども,その中に国公立5大学を含めて20近い高等教育機関を群馬県は持っております。ただ,それはほかの大学さん云々(うんぬん)ということではなくて,「そのテーマに関しては共愛さんならできるよね」ということなので,会頭もほかのテーマではほかの大学さんにそういう話をしている可能性はあるかもしれません。ほかの大学さんの評価に関わる話では決してないということだけは申し添えたいと思いますけれども,COC+はうちがやっていますということでございます。

【永田部会長】  どうもありがとうございます。

 それでは,最後に日比谷副部会長から質問をお願いいたします。

【日比谷副部会長】  私も大脇社長に質問なんですが,先ほど永田部会長への回答の中で高卒と大卒を比べたら,大学に行ったことによって得た体験が重要だとおっしゃったんですが,その体験というのは具体的には何ですか。私は大学人なので一定の学問を修めたとかそういうふうなお答えを言っていただけると大変うれしいんですが,大学は体験を与えるところでは確かにありますが,ただ体験が良かったと言われると,同じお金を使って例えば4年間世界を放浪してきた方がもしかしたらもっと豊かな体験を得られるかもしれません。大学に行ってしか得られない体験というのは何ですか。

【大脇株式会社ソアーシステム代表取締役社長】  これは私の個人的なことになってしまいます。いろいろな会社さんでいろいろな判断があるとは思いますけども,やはり友人と何かを成し遂げたとか,失敗したとか,そのような何か自分が自分自身のことを理解するために心が動いたというようなことを経験していることが非常に重要なのかなと思います。よく会社に入ってきていきなりいろいろな環境が変わり,今まで否定されたこともないのに人格否定をされたりといったことが起きたときに,それを乗り越えていける何か自分の経験を持っているということが私は重要なのかなと思っています。私が採用面接をするときなどはそういったことをお聞きするようにしております。

【永田部会長】  ありがとうございます。率直な現場の御意見として伺いましたが,大学の価値とは何かという議論を進めるうえで,大変重要な御意見だと思います。

 大変お忙しい中,大脇社長,大森学長,それから山岡理事長・学長においでいただきました。本当に短い時間でしたがありがとうございました。我々にとっては大変糧になる議論だったと思います。

 ヒアリングについてはここまでとさせていただきます。


(2)大学への進学者数の将来推計について,資料2に基づき事務局から説明があり,その後意見交換が行われた。

【永田部会長】  それでは,先ほど申し上げました本日二つ目の議題ですが,これまで常に念頭に置いて議論してまいりました、高等教育機関の2040年を見据えた規模感についての議論に入りたいと思います。これまでも18歳人口減少のシミュレーションであるとか,各都道府県における流入流出のデータ等をいろいろとお見せしてまいりました。それを更に事務方の方で充実させた資料を用意しております。我々としては、いよいよこのあたりで実際に結論を導かなければいけません。本部会は理念だけ話し合っていてはいけなくて,実際施策につながるような,具体的な提言につながるような議論を行わなければなりません。委員の先生方におかれましては,それぞれいろいろなお考えがあるでしょうけれども,この規模感に関しては、是非ともまずデータを御理解いただいた上で議論をしていただきたいと思っております。

 それでは,事務方から資料等の御説明をお願いいたします。

【堀野高等教育政策室長】  それでは,資料2を御覧いただきたいと思います。大学への進学者数及び進学率の推計について,事務局としてまとめたものでございます。従来は2033年の入学者数について,現在の進学率のままであった場合どうなるかということでお示ししておりましたけれども,今回は進学率がどう変化していくかという推計を含めた上で進学者数を出してみたものでございます。

 一番初めにありますように過去の進学率の伸び率を参考にして将来の進学率及び進学者数を推計し,進学率については都道府県別,男女別で推計しております。考え方としては2014年度から2017年度の3年間の動き,伸び率を都道府県別,男女別に延長していったものをベースとしております。

 そしてポイントが三つありますけれども,一つ目は男性の進学率が2017年度と比較して5ポイント以上上回った場合は5ポイントを上限として以降据え置きとしております。これは非常に長い推計をしますので延々と伸びると仮定すると伸び過ぎるのではないかということです。二つ目に女性の進学率が男性の進学率を上回った場合は,以降,男性の進学率と同値と仮定とするということでございますが,こちらは後ほど詳しく説明いたします。そして三つ目に進学率伸び率が過去3年で既にマイナスの場合,そのまま減っていくというよりは現在の進学率が維持されるという仮定をして計算しております。総括表としては,2017年度は男女併せて52.6%,進学者数は62万9,733人ですけれども,この推計によると2033年の進学者数は約5万9,000人の減,2040年の進学者数は約12万3,000人の減となることと推計しております。

 この考え方について,2ページ,3ページで詳しく御説明いたします。その三つの仮定を置いた前提ですけれども,2ページにあるように過去3年間を延長しているということでございます。その考え方ですが,3ページに,過去10年間の男女別の進学率の推移がございます。一番上のオレンジが男,下のグレーが女性,そして真ん中の青が合計なわけですけれども,過去10年間をごらんいただきますと,男性については2007年と比べて2.4ポイント上がっているのみであるのに対して,女性については40.6から49.1ということで8.5ポイント増えております。男性のオレンジを見ていただきますと全体としては2010年の56.4%が最大値でありまして,ここからほぼ横ばい,既に進学率の増加が打ち止め傾向にあると考えられます。そして男女の傾向の違いというのを前提といたしまして過去何年間を延長すべきかという場合に,過去10年間を2040年まで伸ばすと非常に高い進学率が出てきて,そこまではいかないのではないか。一方で,女性につきましては過去の伸びが非常に高いということもありますけれども,この勢いのままどんどん伸びていって男性を追い抜いてどこまでもいくのかということも考えづらいということで,都道府県ごとに女性については打ち止め傾向のある男性の進学率に追いついた時点で男性と同率でいくという仮定にしております。この間,過去3年間とっておりますけれども,2012年と2014年の間の2013年が破線で抜けておりますが,18歳人口がこのときだけ大きく変化した年ですので,トレンドを見るには極端な数字が出ているということから省略しております。こういったことで過去3年間の延長ということで見ております。

 なお,これまでの推計で2033年まで出していたのは,基本となる18歳人口を,既に生まれている子供の数を前提に国研の方で推計したもので,ここまでの推計の方がより精緻であるためです。そしてそれより後,2033年以降,2040年までというのはまだ生まれていない方々も含めて,国立社会保障人口問題研究所による将来推計を使っているということで,若干2033年と比較して不確かな数値であるという前提でございます。

 そしてその結果について,次の4ページ,5ページを御覧ください。5ページは一個一個の数字が小さいんですけれども,都道府県別に男子・女子別の進学率の動向の集計であるということで御理解いただければと思います。

 そして4ページの部分がトータルでございます。一番上が進学者数で62万9,733人が2033年,2040年と御覧のように減っていく。進学率については微増いたしまして,男女差が収れんしていくという姿となっております。

 続いて,8ページ目を御覧ください。この姿をまた別の角度で見ますと,一番上のグレーで示された18歳人口は1990年をピークに減少し続けてきましたが,赤の折れ線グラフの大学進学率が上昇しておりましたので,結果として一番下のブルーで示された4年制大学の進学者数は,少しずつ増え続けてきました。ところが,去年の63万人をピークとして今年からは進学率が以後少し上がったとしても人口減少の影響の方が大きいということで,進学者数自体が純減していくという局面に入ると予測されるというものでございます。

 そして9ページからは都道府県別にその数字を示したものでございます。これまでは2016年ベースで2033年までの推計でしたけれども,2017年ベースとして進学率の変化も踏まえ2040年まで推計したものでございます。

 例えば岩手県を見ていただきますと,大学進学者数は今4,735人,大学進学率は37.8%となっております。大学数は6校ありまして,入学定員が2,826人,そして国公私立の内訳が御覧のようになっております。そして一番下,県外,県内の流出入状況も踏まえた,2040年の推計ですけれども,18歳人口は7,607人,大学入学者数推計が1,866人となっております。そうしますと全体での定員充足率は66%となります。つまり,2040年に入学者数が1,866人になるとすると,真ん中のあたりに書いてある現在の定員2,826人と比べますと1,000人ぐらい入学者不足になるということが予想されます。そして一番下の二つの欄のところに注が付いております。将来の2040年度の大学入学者数と定員充足率を国公私別に分けて書いておりますが,一番下の注にありますとおり,これは2017年の大学入学者数の国公私割合と仮に同じ割合で減ったということを前提に機械的に計算してみると,規模感としてはこんな感じになるというものをお示ししています。実際にはこういう結果にはならないのではないかという御意見もあろうかと思いますけれども,規模感を考える議論の材料として御覧いただければと思います。

 そのあとに加えるべき要素として,15ページに外国人留学生と社会人ということがございます。15ページの外国人留学生につきましては30万人計画というものが以前からございます。このグラフにありますように日本語教育機関も含めれば26万7,000人まできているということですけれども,近年の留学生の伸びというのは日本語教育機関だけではなく,学部生や専門学校生についても着実に留学生は増加しているという傾向にございます。

 次のページですけれども,青のグラフが二つございます。留学コーディネーターを配置して日本留学の魅力を発信する取組,あるいは外国人留学生の日本国内での就職に結び付ける取組というのがある程度功(こう)を奏して,着実に増えてきているということだろうと思います。

 そしてその下の括弧2のところですけれども,ざっくりとしたものではありますが,2020年に外国人留学生が30万人となるという目標がございますので,そのうちの学部正規生ということで見ますと,2017年1万6,445人の留学生数が目標を達成すれば1万8,475人になるという試算です。そうすると2,030人の増加ということになり,これはある程度実現可能な数字ではないかということです。

 次に社会人につきましては,最後の18ページですけれども,未来投資戦略の中で2022年までに枠囲みの中にありますとおり大学・専門学校等の社会人受講者数を約49万人から100万人にするという目標がございます。学部正規生というのはこの中のほんの一部でございますけれども,これも2の括弧2の一番下にありますように,仮に2022年に社会人受講者数が100万人となると仮定した場合,現在3,888人という社会人学生数が8,196人になり,4,308人増加するということとなります。

 したがいまして,この仮のざっくりとした試算で留学生は2,000人,それから社会人は4,300人増えたとして6,000人ぐらいの増加ということですので,全体として18歳人口が将来12万人減という数字と比べると,この減少をカバーするためにはかなり大きな変化をしていかなければならないということであろうかと思います。

 以上でございます。

【永田部会長】  ありがとうございました。

 今の資料は御説明のとおり推計でして,やや多めに推計されておりますので、条件については見直す必要があるかもしれません。一方で、この状況が続くと,このような現実を受け入れる事態が早晩やってくるわけです。留学生や社会人の数が例えば10倍になる、ということは想定しづらいですから,ある程度の確度の数字がここに出ているということを御承知おきいただきたいと思います。

 このような推計では,例えば先ほどの小林委員の御提案のように入学定員の枠という考え方を見直してはどうか、といった推計に影響与える条件についての議論がまずあります。もちろん、このような問題もあるわけですけれども,その前提として我が国全体の高等教育の規模感を考えなければいけない、という観点で本日は議論をしたいと考えています。

 その際の大変重要な観点が,大学の規模と機能の違いです。これまでは、大規模・中規模・小規模の大学を区別せず議論してきましたし,機能やミッションの違いも区別せず議論してきました。そのようにしてこれまで、今後の大学の在り方としてどうしたらいいかという議論をずっとしてきたわけです。しかし,この規模感を考えるに当たっては,当然のことながら今申し上げたような大規模・中規模・小規模という規模,それから各大学の持つミッションということも考えなければなりません。個々の大学のことではなく,全体として考えなければいけないだろうということです。先ほどの御発表の中にもありましたけれども,自らミッションの再定義をして機能はこうすると決めて進んできた大学も当然多々あります。そういう個々の大学の取り組みについて最終的には目配りするとしても,我々としては我が国全体の視点で考えなければいけません。

 それから,留学生や社会人についても最後に数字が出ておりました。もちろんリカレント教育を伸ばしていくというのは当然のことかと思いますけれども,その増加幅には自ずと限界があるんだ、ということも分かっていただけたかと思います。

 もう一つ非常に重要なことは,同時に我が国全体の国力としての地域の活性化ということも念頭に置かなければいけない、ということです。こういった複雑なマトリックスになっている問題をどうしたら解決できるかということになりますが,その際,2040年に向けた全体の規模というのは大変重要な問題であると考えています。

 その議論を今から始めますが,その議論の先に、例えば先ほどの小林委員の御意見のような推計結果を変える条件変更の具体例が出てきます。その中でも、今後の大学設置の在り方,さらには大学設置・学校法人審議会の在り方等については、制度・教育改革ワーキンググループで今議論されています。今後制度をどのように見直せば良いのか,ということと同時に,既存の大学がミッションを自ら立てて行っている改革をどのように評価して,その設置基準で立ち上がった大学が今後どのような価値を持っていくかということについても,当然考えなければいけないということになります。こういったことを念頭に議論を始めたいと思います。いかがでしょうか。

 それでは,麻生委員、どうぞ。

【麻生委員】  今永田部会長が言われたような点についてですが、2040年に向けてのデータを拝見しましたら,ここには4年制大学の数字が男女別で入っています。ここには短期大学の数字は入っておりません。やはり特に男女別で議論する場合は,短期大学生の90%が女性であるということを踏まえると,短期大学も含めたデータであるべきだろうと思います。ただし,今後議論していくに当たっては都道府県別という要素も加味した上で,将来の推計値をグラフ化していただきたいということが1点目です。

 もう一点は社会人の受入れについて,ここで短期大学,大学,大学院,専修学校(専門課程)と最後のところに書いてありますが,全体的な数としては変化があります。ただ,短期大学や大学,そして専修学校(専門課程)における全体の社会人の比率が,数字では見えませんけれども重要なポイントになるのではないかと思いますので,この点のデータ整理をしていただいた上で是非議論をさせていただければと思います。よろしくお願いします。

【永田部会長】  短期大学の数字は現在ありませんが、加えてはどうかという御意見でした。

 そのほかいかがでしょう。小林委員,どうぞ。

【小林委員】  私も麻生委員と同じことなのですが,短期大学だけはなくて高等専門学校や専門学校のデータも入っていないので,これだけで議論するとミスリーディングになりやすいということが非常に気に掛かります。私も高校生の都道府県間の流出流入について御報告させていただきましたけれども,流出流入については大学と短期大学しかデータがないのでできないのですが,各都道府県からの将来的な進学者数については,少なくとも高等専門学校と専門学校も同じような推計ができるはずなので,それを是非お願いしたいと思います。

 それから,18歳人口が減っているということが当然問題になっているわけですけれど,現在では非常に数が少ない社会人や留学生についても,それだけ逆に言うと比率は上がっていくことが考えられるわけですから,その辺を加味して議論していかなければならないと思います。

 以上です。

【永田部会長】  高等専門学校や専門学校についてもこの推計には入っていません。当然ながらデータとして入れたほうがいいと思います。また,社会人についてはそこにあるとおり、「未来投資戦略2017」のKPIである2022年目標値の100万人を念頭に、どのぐらい増えていくかということです。今後ももちろん増えることは予想できるけれども,例えば今の推計値には含まれていない科目等履修生なども含めればまた変わると思いますが,今ここでは大学の組織体としての全体像を把握する、という視点から議論いただきたいと考えています。もちろん、確度を最大限高めるため、詳細なデータを揃えることも重要ですが,先ほども申し上げたように、それによってこの推計値が数倍,10倍の単位で変わるものではないということだけは事実かと思っております。

 小杉委員,どうぞ。

【小杉委員】  データという意味では,パートタイム学生も今後間違いなく増えると思いますし,社会人の学び直しというのはそういう形も含めたものになると思いますので,その数字を何とか入れていくべきだと思っています。労働者の世界でもずっと正社員主義で統計を取っていたものが,パートタイムという層を加えていくようになりました。パートタイムの場合にはやはりフルタイム換算ということが必要です。同様に,全体としての大学の利用規模みたいな話でしたら,フルタイム換算みたいなことも必要になると思います。そういうパートタイム学生をこれから増やしていくという,社会人の学び直しというものはそのような方向だと思いますので,それを考えられるようなデータが必要ではないかと思います。

【永田部会長】  今の御意見について,例えば科目等履修生を正規学生に換算し直すことはもちろん可能です。しかし、教育課程上,同じものではありませんので,根本的には設置基準との関係の議論としてどう考えるかという問題があります。ですから,今ここで出ている推計はそのような制度や法体系を変えないことを前提に推計していますので,このような値になるわけです。そのうえで,もし小杉委員の御意見のとおり,全ての学生を正規学生に換算するにしても,そこに必要な教員や施設等に関していえば、また違う考え方をする必要があります。ですから,ここでは伝統的な意味での大学あるいは短期大学,専門学校の学生数を出しているということです。

 古沢委員,どうぞ。

【古沢委員】  私の方で,もし見落としていたら申し訳ないんですけれど,専門職大学について,このデータの中にどのような形で反映されているのかなということが気になっています。私も先ほど先生方がおっしゃるように高等教育機関全体で見ていくためのデータももちろん必要だと思ったのですが,専門職大学に転換したり,あるいは新規に設置することで学生数の増加ということをどのように見込んでいらっしゃるのかということも,できればお聞きしたいと思いました。社会のニーズとしてはやはりもっと実践的な教育をしてほしいという意見があるのは事実だと思いまして,海外では確かに先行事例もいろいろあると思うのです。そのようなことを踏まえて専門職大学などの機能をさらに伸ばしていけば,全体としてニーズは引き上げられるのではないのかと思います。

 それと,先ほど少し時間がなくて申し上げられなかったのですが,先ほどのお三方の発表の中で共愛学園前橋国際大学と平安女学院の方で学生の視点に立った改革を進めていらっしゃって,非常に感服しました。今回の議論の中でも是非そのような視点を反映していただければと思います。

 以上です。

【永田部会長】  ありがとうございました。古沢委員がおっしゃるとおり,専門職大学が創設されることによる学生の増加分は推計に入っていません。しかしながら,大学や短期大学,高等専門学校,専門学校を含めた高等教育機関全体の進学率は,すでに80%を超えていて,ほぼ伸び代はないとも考えられます。そうなると、結局今ある高等教育機関に進学している者が新たな別の高等教育機関に進学するということなのであれば,各機関の比率は変わりますが,絶対数は大きく変わりません。今18歳の人たちの8割強が何らかの高等教育機関に進学しているという現実があり、この割合をさらに伸ばすのは非常に厳しいということは認識すべきだと思います。

【古沢委員】  確かに非常に厳しいとは思うんですけれど,地方によってはまだまだ伸び代はあるかなと,私は取材などを通して思っていまして,特に交通アクセスのよくないところでは,高等教育機関に進学できる能力ある人がもっといるのではないかなと思います。ただ永田部会長がおっしゃるように非常に全体としては厳しいとは思います。ありがとうございます。

【永田部会長】  確実に言えることは、100人が120人になるのではなく,100人が80人になってしまうということです。端的に言えば,それを今ある機関で分け直すということになるわけで,我々はそのような厳しい危機感の中にいるわけです。そのような状況下でも、この国の将来を作る役割を担わなければならないわけですから,高等教育の規模について国全体としてどう考えるか,ということを今問われているのだと思います。

 それでは,金子委員,どうぞ。

【金子委員】  このような規模の推計を本格的にやっていただいた作業は結構だったと思いますが,これは今お話に出ていましたように従来型の大学生のコンセプトを中心とした推計であります。これは言ってみれば,このような型の推計の限界が見えているということを示したという点で非常に重要だと思います。特にパートタイム学生については,法制上,日本は学校教育法に学生とそれ以外と書いてあるので,学生は非常に明確に規定されているわけです。教員についてもそうです。そういうような考え方自体を柔軟に考え直すということ自体が必要になっているので,これはもう一つの制度・教育改革ワーキンググループで話題になっていましたけれども,そのようなことも考えなければなりません。

 それからもう一つ気が付いたのですが, 15ページにある留学生の統計が非常に伸びていて,こんなことがあったのかと思ってびっくりしてしまうんですが,よく見たら日本語学校と専門学校における留学生が増えているという意味で,半分ぐらい就職している人たちが入っている。要するに労働市場が流動化していることに対応している部分ではないかと思います。そういう意味でも学生の多様化が非常に進んでいるので,そのような点についてマクロの統計を行うときには相当気を付けなければいけないと思います。先ほど申し上げたように,今までの制度的な既成理念そのままで統計を行う手法では,だんだん限界が出てきているのではないかなと思います。

 それからもう一つ,少し余計なことかもしれませんが県別で推計することにも無理があるのではないかと思っています。県の中でも先ほどお話がありましたように通行圏があるところとないところでは非常に異なっていますし,二,三の県が一つの圏を作っているようなところもあります。そのような意味で,こういった作業は非常に重要ですけれども,ここから次に何をするのかということが問われているのではないかと思います。

 以上です。

【永田部会長】  ありがとうございます。まず、県別データに関しては,確かに金子委員がおっしゃる点はそのとおりです。しかし、国公立大学の県別の就職データを見てみると,流出流入に関しては大体同じ傾向で、例外の東京と京都を除き、入った大学の地域に概ね7~8割方が定着しています。ですから,私立大学を含めもっと詳細な就職データも必要かと思いますけれども,実は高等教育機関が地域の発展に貢献している,地域に人を供給しているという点では,専門学校、短期大学,四年制大学を含めて,同じような傾向であるということは付け加えておきたいと思います。

【金子委員】  それは大変重要な観点で,少し外れるかもしれませんが,私は内閣の地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議に出ていたんですが,そこでは東京23区の大学を一種のサイフォンとして優秀な人材を東京に吸い上げていると,それはけしからんという観念が強くあるわけですが,やはり地域の大学は非常に役割を果たしていて,しかも地域に貢献しているということがあるんだということを認識することは重要だと思います。

 それから,その中で実は一番大きな問題は,今までは優秀な学生が各地から東京に運ばれると,それが東京に行ったまま帰ってこないということが相当大きな危機感を作っている原因ではないかと思いますが,先ほどの共愛学園のお話を伺っていると地域の中で優秀な学生を地域にとどめて地域で就職させる,ただその地域で閉塞するのではなくて,途中で海外留学等のいろいろな経験をさせるというようなアプローチがきちんと評価されて,偏差値も上がっているというような事例は新しい可能性を示すものだと思います。

 以上です。

【永田部会長】  ありがとうございます。

 益戸委員,どうぞ。

【益戸委員】  この統計データを見て思ったことを素直に申し上げますと,これ以上の数に基づく議論は無駄ではないかと思いました。私は、過去40年弱近く企業の採用に携わりましたが,その経験では、採用候補者の分母が多いときは優秀な方が入ってくる確率が極めて高くなりました。企業の採用だけでなく、学生数の増加や減少も、同様に分母が大きくなると良いレベルの学生が確保できる結果となるのでしょう。今後18才人口が減少する事は、間違いない事実ですから、細かい数の議論をしてももうしょうがないと思います。一方で,減っていくときにどうやって質を担保するのかということを考えないと日本の将来はないのではありませんか,私たちは2040年を見据えて議論しているわけですから,今後の情勢に合わせて教育が機能分化し,どの分野にどうフォーカスしてどんな人を育てていくのかという議論に,今後は時間を割いていったらと思います。研究においても,必要な研究を考えると同様に,それを教える立派な教育者をどうやって育てるのかの議論も必要です。時代に合わせた修士課程や博士課程のあり方の議論もあります。本日お話を頂いた共愛学園、平安女学院のように地元のニーズに沿いながら優秀な学生を出していく方策の議論、もちろんこれには高等専門学校,専門学校,専門職大学等いろいろあると思いますので,いよいよ重要な機能分化の議論をするその時が来たのではないでしょうか。

 最後に,中小企業のお話の中でベンチャー企業というキーワードが出てきましたが,金融機関からしますと中小企業は本当にベンチャーの要素を持っているところなんです。ですから,いかに中小企業の中から更に発展するところをサポートするかは金融機関の一つの大きな仕事でもあるんです。ということは,今各大学で起業やベンチャーというものがキーワードになっていますが,それも機能分化の一つの中でどうやって中小企業を育てていくのか,貢献できる人材輩出も重要な点につながっていくと思います。

【永田部会長】  ありがとうございます。

 それでは,黒田委員,どうぞ。

【黒田委員】  ありがとうございます。

 このデータ集を見せていただいたんですが,先ほど益戸委員も言われたように明らかな数字が出ているわけで,細かい議論をしてもしようがないと思うのです。このデータの中で都道府県別のデータがありますけれども,2040年にそれぞれの国公私立大学で分けたときにどうなるかということが出ているのですが,これは国立大学も入学定員を減らすということで書いてあるのか,それともほぼ国立大学を現状維持とすると,公立大学,私立大学がどうなるかということが書いてあるのか。国立大学は現状の定員を維持していくということを,一般の国民は望んでいるのだろうと思うんです,授業料が安いですから。私立大学は今でも補完的な存在であるという人が多いわけです。そういう意味で非常に議論はあると思うのです。私立大学は私立大学なりにやっているわけですが,そのような中で2040年度までの推計でこういう比率でいくとすれば国立大学は当然今のままでは,規模としては減らさなければならないということになるわけです。これは教育の質に一番関わってくる問題です。日本の国を本当にいい環境の中で維持しようとすれば,大学の質を下げるということは非常に困るわけです。ランキングの話が出るとみんな嫌がるんですけども,自然ともうランキングはでき上がっていると思うんです。学生さんはそれを信じて進学しているわけですから,そういうことをきちんと踏まえながら定員管理をしていくということ,定員を減らすということをやっていかなければならないのだろうと思います。

 それから,先ほどお二人の地方の中小規模の大学のお話をお聞きしていたんですが,どうも東京で話をしていますと地方の実態を余り御存じないことが多いのです。だから東京で話していることが地方でそのまま当てはまるかといったら当てはまらないのですね。先般も地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議の話があって,来年は予算が付くみたいですけれども,これは知事のリーダーシップがなかったら付きませんとなっています。先ほどの共愛学園さんの話ですけども,その市が全面的に動いているので,知事が動いているわけではないと思うんですね。これは地方へ行けば行くほど知事よりもその中の市町村が大事になってくるのです。市町村の中で動いているわけですから,そういうところがきちんと見られるような制度を作る必要があると思っています。

 ほかに,私立大学の中小規模の大学というのは地方で生き残るためにいろいろなミッションを立てて改革を進めていると思うのです。今以上に改革しろ,改革しろといろいろなことを言っているわけですが,必死になってしっかりしたミッションを作りながら改革をやっています。その代表的なものが共愛学園さんの例ですし,それから平安女学院さんも倒産から現在のところまで立て直してきているわけです。立派に復活しているという実態がありますので,是非ともこういうことも踏まえながら今後ここで議論をしていただきたい。ですから,一括してどうだというのではなくて,こういう場合はこうなんだということをこれからはきめ細かくやっていかざるを得なくなってくると思っています。

【永田部会長】  ありがとうございます。2040年の推計については国公私立大学という設置者による区別はなく,全て今のまま減っていくようにしています。ですから,例えば滋賀県を見ていただければ国立大学も85%になっており,公立大学も84.3%,私立大学も83%となっています。ですからここで示した推計では,そうなるかどうかは別として,現況の国公私割合のままであればその人数配分がどうなるかを示しています。そのうえで、益戸委員がおっしゃるような,役割や機能の分担を実現するという視点からもう一度議論したときに、国公私の割合が変化する可能性はあると思います。

【黒田委員】  そのことが非常に重要だと思います。

【永田部会長】  福田委員,どうぞ。

【福田委員】  ありがとうございます。

 1点だけ意見を申し上げさせていただきます。留学生の問題です。留学生は世界中で370万人ぐらいおりまして,その中で日本に留学してくる数というのは先進国の中では極めて少ないということで,まだまだ伸ばせる余地はあるんですけども,大学,専門学校,皆高等教育機関を卒業した留学生の就職率は30%ぐらいなんですね。そういう意味ではやはりここの議論というのも国の10年先,20年先の労働政策等と大きく関連しますので,そことタイアップしていくような形で進めていけるようになれば有り難いなと考えてございます。

【永田部会長】  ありがとうございます。留学生の問題もいろいろな問題を実は含んでおりまして,受け入れるところから卒業後の就職まで議論の要点はたくさんあります。そのうえで、一切そういう要素を考えずに規模感だけを本日はお示ししています。

 それでは,千葉委員、どうぞ。

【千葉委員】  ありがとうございます。

 少し規模の話と外れるかもしれませんが,卒業率の問題も少し気になっておりまして,ここ10年ぐらいは社会の好景気ということで大学卒の就職率というのは極めて高い数字を維持しておりますけれども,それ以前の状況を見ますと相当就職率の悪い時期があったと記憶しております。そういう時代には大学を卒業しても就職できない卒業生たちが専門学校の方へ随分流れてきたという経験もしておりますけれども,そういう意味で今の景気の状況に合わせて大学教育の成果というのを見ることは,少し甘い面があるのではないのかなと思っております。やはり質の向上を図って,通常4年間で卒業させるということが一番理想ではありますけれども,社会へ出る準備の整っていない大学生については5年,6年掛けてきちんと社会との接続というのを少し見直していく。つまり大学への在籍する期間を延ばしていくということで質の担保をすることによって,留学生が学びたくなるような高等教育機関というところへもつながっていくんではないかということで,質の向上を図るということが少子化の影響を少し軽減することに寄与するのではないのかなと思いますので,そのことを申し上げました。

【永田部会長】  大変ありがとうございます。18歳人口が減ることの影響は,当然ながら研究において研究者数と論文数が正比例する,良い論文は更にそれに正比例する、ということと同じです。人数という量で考えるとそのようになるのですが、これを唯一補完できるのは今おっしゃった質です。これは各大学の機能によって目指す方向は違って当然なんですけれども,質についてはきちんと見ていかないといけません。

 本日はいろいろな御意見を頂きました。恐らくこのまま議論を続けていてもなかなか集約はしないでしょうから,次回は少したたき台に相当するような図なり文章なりを皆さんにお示しして,御意見をいただこうかと思っています。留学生の問題一つとっても,入学から卒業後の就職まであります。例えばアメリカの場合,州立大学であれば州の外から入学する学生の方が学費が高くて,州の中から進学する学生の方が安くなっています。一方で、日本では留学生への支援があることで、日本人学生と留学生の経済的負担がアメリカと逆になっていたりする,という問題も全部含まれてきます。本日は大きな規模感の話をさせていただきましたが,本日幾つか出てきた御議論を整理させていただいて,ある程度の今後の考え方や議論の方向性を示すようなものを作りたいと思っております。

 この話題は最重要テーマなので,これからまだまだ議論が続きます。本日御発言いただけなかった先生方も、これ以降も機会があると思いますので,また御発言をお願いしたいと思います。


(3)高等教育段階の負担軽減措置に関する検討について,第5回人生100年時代構想会議について,資料3,資料4に基づき事務局から説明があった。


【永田部会長】  それでは,最後に報告事項として,最初に申し上げた高等教育段階の経済的負担軽減方策に関する文部科学省の中の専門家会議の情報と,2月8日に開催された第5回の「人生100年時代構想会議」の内容を併せて情報共有したいと思います。

 それでは,事務局から,御説明をお願いいたします。

【寺門主任大学改革官】  それでは,資料3,資料4を御覧ください。

 まず資料3,高等教育段階の負担軽減措置に関する検討会の発足について御紹介いたします。昨年12月8日に閣議決定されました新しい経済政策パッケージにおきましては,高等教育の無償化の具体的に決まっていない詳細事項について,専門的検討を行って今年の夏までに一定の結論を得るということになってございまして,そのための検討会議を1月30日に第1回の会合として開催いたしました。検討体制の中ほどにございますとおり,本審議会にも御臨席の村田委員,千葉委員にも御協力を賜りながら,今後上段の検討内容の枠内にございますとおり幾つかの要件等につきまして検討を行ってまいりたいと考えてございます。

 また,ちょうど昨日締め切りましたけれども,この関連で調査をさせていただきました。年度末の大変お忙しい中に御負担を掛けましたこと,お詫びと御礼を申し上げたいと思います。

 次に,資料4の第5回人生100年時代構想会議の状況につきまして御報告いたします。昨年発足いたしました内閣官房に置かれました人生100年時代構想会議については,昨年に中間まとめを行ってございますけども,今後のテーマとしては大きく二つでございまして,一つがこの2月8日に行われました大学改革。そして今後リカレント教育を行っていくと承ってございます。

 2月8日につきましては,本日は時間の関係で御説明いたしませんが,事務局の資料,また構成メンバーからの資料等に基づきまして御発言がありまして,その最後に総理から発言がございました。その内容を簡単に御説明いたしますと,1枚目の資料の6行目からですが当日出た意見をまとめまして大きく四つの点で御発言がありました。第一は,大学の役割・機能の明確化,それから第二は,カリキュラム編成のプロセスについて。第三は,学生が身に付けた能力・付加価値の見える化,そして第四は,大学の連携・統合等の仕組みの検討というところについて意見が当日ございました。総理の方から,最終段落にございますとおり関係閣僚,特に林文部科学大臣には,本日の意見等を踏まえ,以上の論点について検討し,そして人生100年時代構想会議に検討経過・結果を御報告いただき,そしてこの場で再度議論したいと考えておりますのでよろしくお願いしたという御発言がございました。

 関連で,当日も林文部科学大臣の方から,この資料9に基づき,本審議会でおまとめいただきました論点整理を踏まえた大学改革の状況についての御発言がございまして,その発言の中で,構想会議の議論を踏まえながら具体的な方策について中央教育審議会で議論を進め,その状況を人生100年時代構想会議に報告したいという御発言がありました。

 概要は以上でございます。

【永田部会長】  どうもありがとうございました。それでは,本日はここまでとさせていただきます。どうもありがとうございました。


── 了 ──


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