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将来構想部会(第9期~)(第18回) 議事録

1.日時

平成30年5月18日(金曜日)10時~12時

2.場所

文部科学省 旧庁舎6階 第2講堂

3.議題

  1. 我が国の高等教育に関する将来構想について
  2. その他

4.出席者

委員

(部会長)永田恭介部会長
(委員)有信睦弘委員
(臨時委員)麻生隆史,安部恵美子,石田朋靖,金子元久,小杉礼子,小林雅之,佐藤東洋士,鈴木典比古,鈴木雅子,伹野茂,千葉茂,福田益和,古沢由紀子,益戸正樹,両角亜希子,吉岡知哉の各臨時委員

文部科学省

(事務局)義本高等教育局長,常盤生涯学習政策局長,藤野サイバーセキュリティ・政策立案総括,瀧本大臣官房審議官(高等教育局担当),信濃大臣官房審議官(高等教育局担当),塩見生涯学習総括官,中川総括審議官,伯井文部科学戦略官,森友主任大学改革官,蝦名高等教育企画課長,三浦大学振興課長,丸山私学助成課長,石橋高等教育政策室長 他

オブザーバー

米澤東北大学インスティテューショナル・リサーチ室長・教授,黒田早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授・早稲田大学国際部長・教授

5.議事録


(1)     我が国の高等教育の将来構想について,佐藤委員,福田委員から御発表があり,その後意見交換が行われた。


【永田部会長】  定刻になりました。第18回の将来構想部会を始めさせていただきます。

 前回の将来構想部会では,2040年を見据えた高等教育の姿をそれぞれの立場から石田委員,鈴木委員,但野委員に御発表いただきました。皆さんからも大変活発な御議論を頂きました。本日は前回に引き続きのテーマで、佐藤委員,福田委員から御発表いただき,更に議論を深めたいと思っております。

また,後半部分では,東北大学のインスティテューショナル・リサーチ室長米澤教授,早稲田大学の大学院アジア太平洋研究科黒田教授に高等教育の国際的な動向について御発表いただいて,我々の議論に資することを考えております。

 それでは,事務局から資料の確認をお願いいたします。

【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。配付資料の確認をさせていただきます。議事次第を御覧いただきまして,不足がございましたらお申し付けください。

【永田部会長】  6月に取りまとめを目指している中間まとめに向けて,いよいよ我々の2040年を見据えた高等教育の将来像の議論も深まってきたと思います。

 それでは,佐藤委員,福田委員,それぞれにあらかじめ10分程度の御発表をお願いしております。

 佐藤委員から,御発表をお願いいたします。

【佐藤委員】  桜美林学園の佐藤東洋士です。

 2040年を想定した大学の在り方について議論をしているわけですが,自分のことを言いますと,私学に勤めてからもう既に48年になります。過去経験したことを含めて,私自身が感じていることを取り上げて提供したいと思います。

 委員の方々の発表等を伺っていると,様々な観点から貴重な意見が取り上げられています。私自身は,過去20年以上にわたって大学分科会で様々な取りまとめをしてきたわけです。そのことをしっかりと踏まえて先に進んでいくべきだと考えています。本日は,限られた時間ですので,若干違和感を持ってきたことについて指摘をしておきたいと思います。

 私どもは,過去に幾つもの中間のまとめあるいは答申を出してきました。その流れについては資料に書いてあるとおりであります。

 思い起こしてみると,第四次全国総合開発計画の頃から,新幹線網や高速道路網を整備して地方を結び付けて全国のネットワークを整備していくという計画の中に,高等教育機関についても地域的に整備をしていこうという議論がございました。その中で,工場等制限法が高等教育機関にも適用されましたから,大都市圏,首都圏や近畿圏にある学校は,一定以上の定員は認めないということで,規制を行いました。それから,1度規制が緩和されて,今度また,大学の偏在ということで東京23区は抑えましょうということになっています。そのようなことを繰り返している気がしています。様々な高等教育への機会均等の観点から,日本全国を一つのものとして考える必要性は理解しますが,高等教育機関の設置者側からいうと,履修者や進学者がいるところが整備されていったとしても,地域に均等に配置するわけにいかないというのも現実であると思います。そういう意味では,定員抑制を更に進めていくのであれば,地方の大学も大都市の大学も同じような通学型の大学キャンパスの環境を整備するのでなくて,もう少しキャンパスそのものがコミュニティとして学生も長時間コミットできるような環境にすべきだと思います。また,教職員もコミットできるような環境を整備していくことも必要だと思います。

 もう1点ですが,大学像について長い間議論されて,様々な施策を作ってきました。大学院の重点化の流れについても1991年11月に「大学院の量的整備について」という答申が出されたと記憶しております。この頃から大学院重点化の名の下に,国立大学では大学院強化がなされた。また,私立大学でも,大学院の設置数が増えました。それも小さな大学院が増えたということを感じております。新設の大学設置申請をすると,研究科を置くことは当然と考えて,大学としての研究の質を担保するシンボルのように設置するようになったのではないかと言っても過言ではないと思うわけです。

 そこで,幾つかの大学院の課題について考えてみると,我が国に依然として多いのは,基本となる学部の上に同じ分野の研究科を設置するという,いわゆる煙突型の大学院であります。学部を卒業して,そのまま研究科に進むことは必ずしも悪いことではありません。けれども,外国あるいはほかの大学の出身者,社会人の優秀な学生を集めるという点において,これが全ていいのかも考えさせられるところであります。平成20年12月の「学士課程教育の構築に向けて」という答申で,学士課程は,幅広い教養と専門の基礎的知識を学ぶことが必要とされると示されています。これはある意味,旧制高校の役割を学士課程にも課したような形になっています。それ以降,大学院の重点化が進んだのではないかと思っています。そのとき,私立大学も国立大学の大学院重点化に倣って研究科を置く大学が増えました。多くの私立大学は,極めて定員の少ない研究科を持って,定員充足をしていないといけない状況にあります。これはある意味で,必ず必要な教員とカリキュラムを置かなければならないということから見ると,私立大学の経営負担にもなっているのではないかと考えています。また,教員の側の負担にもなっていると言えないだろうかと考えています。国立大学法人でも2000年度から予算の仕組みが変更されて,大学院重点化に伴う予算上のメリットがなくなったとも聞いています。私立大学でも私学助成の特別補助の項目に大学院における研究の充実という項目があります。 日本ではしばらくの間,機能分化ということも話してきました。小さな規模の私立大学が学士課程教育における人材輩出に力を注(そそ)ぎ,高度な専門教育課程では,国立大学の大学院を量的に強化してきました。役割分担の在り方を検討することも,将来の大学の在り方について議論する中で一考する価値があるのではないかと思います。

 アメリカでは,公立大学612校,私立大学1,752校,合わせて2,364の大学があると言われています。その中でも学士課程しか持っていない大学は公立大学の101校,私立大学の546校,合わせて647校になります。つまり,約27%は大学院を持たない大学ということです。しかし,大学院を持たない大学でも,学士課程の教育に力を入れることにプライドを持っているのではないかと思っています。例えば,桜美林大学の名前の由来でもあるアメリカのオベリンカレッジは,1833年の開学以来,一貫して学士課程,BAしか教育をしないという学校でありました。しかし,オベリンカレッジの卒業生の75~80%はグラデュエートプログラム,あるいはプロフェッショナルスクール,メディカル・ロー・レビニティー・エデュケーションというようなプロフェッショナルスクールにも進んでいて,アドバンス・ディグリーを継続して取得しています。アメリカ国立科学財団(NSF)の統計によると,1997年から2006年において学士課程のみの大学の中で,博士水準の学位(Ph.D.)を取得した卒業生の数はオベリンカレッジが突出して1位でありました。また,日本のように学士課程から直接大学院に進む例が少ないというのがアメリカの特徴であります。卒業した学部と必ずしも同じ分野ではなくても,ほかの分野の大学院でも学びが続けられる。また,ほかの分野からの大学院進学者に対しては,補助的なカリキュラムも十分に準備されているということであると思います。

 結論としては,アメリカにおいては,学士課程の教育のみを行う大学が約27%。そして,学士課程修了者の多くは,卒業後,一旦社会に出て,ほかの経験をして,それから更に大学院に戻ってくるということであります。アメリカのどこの大学院を見ても,アンダーグラデュエートもグラデュエートも同じだという学生は少ないのではないかと感じております。そういう意味でも,日本において,全ての私立大学に大学院を設置し,大学院教育を行わなくてもよいのではないかと感じます。

 桜美林大学は,創立者が1925年にオベリンカレッジを卒業しましたけれども,ユニバーシティと言うことは許さなかった。うちはカレッジなのだ,アンダーグラデュエートなのだという非常に強い思いを持っていました。そういう学校が存在していてもよいのではないか,存在できるような環境を作ることが必要なのではないかなと思っております。そういう意味では,グラデュエートプログラムについては十分な財源を持って国立大学が対応していくというような分担の仕方も考えられるのではないかなと思います。

 2005年の将来像答申でも,大学の機能分化として7つの類型等を提示しました。しかし,国立大学,公立大学,私立大学の役割分担について,どのように分担していくかという議論は余りなかったのではないかと思っています。そういう意味で,役割分担をするということは大学の質を変えるという議論には重ならないわけですから,タブー視することなく議論をしたいと思うわけであります。

 ほかにもそれぞれの委員の方々の発表にありますけれども,学生の多様化,教育財源,大学キャンパスの環境の在り方等々,論点として取りあげてあったと思います。けれども,今日は,機能分化と同時に従来の答申を検証し,役割分担についても踏み込んで議論してもよいのではないかとの思いからの発言をさせていただきました。ありがとうございました。

【永田部会長】  ありがとうございました。御意見はまとめてお聞きしたいと思います。

 それでは,福田委員,よろしくお願いいたします。

【福田委員】  ありがとうございます。専門学校の立場から,2040年を見据えた中で,特に職業教育の在り方について述べさせていただきたいと思います。

 2ページ目,3つのカテゴリーで発表させていただきます。

 3ページ目,実践的で高度な職業教育の推進,職業及び職業教育の理解促進ということでございますが,実践的で高度な職業教育を推進していくとともに,職業や職業教育に対する中高生,またその保護者の理解を促進することも非常に大事と考えてございます。このことは,以前出ましたキャリア答申にも述べられております。初等中等教育段階のキャリア教育の実質化,そして成人の継続教育の促進になる仕組みの整備が必要というようなことで考えてございます。

 4ページ目,専門学校における教育の姿(目指すべき姿)についてございます。専門学校においては,平成25年度から文部科学大臣認定の職業実践専門課程制度が創設され,そこで規定された職業教育を実践するための要件は,認定を受ける,受けないに関わらず,全ての専門学校において共有されるべきだと考えてございます。

 資料の16ページには,「職業実践専門課程」の認定要件が,17ページには,「直近の平成29年度「職業実践専門課程」の認定状況を記してございます。

 4ページへ戻っていただきまして,職業実践専門課程は,それまでほとんど議論がされてこなかった高等教育段階による職業教育の在り方,これを産業界との関わりの中で明確な制度として改めて構築されたものだと思っております。そこには長年積み上げてきた専門学校教育のノウハウが詰まっていますし,更に言えば,専門職大学制度の議論も,職業教育の質を保証する職業実践専門課程を基本として,その延長線上で行われたと認識してございます。文科省の職業実践専門課程に対する調査でも,この課程の認定を受けたことによって教育活動が改善し,学生の満足度が向上した,企業等と連携した実践的な教育の充実,また,教職員の意識と指導力の向上などの効果が見られたという結果が出ています。

 今後,職業実践専門課程の認定を受ける学校はますます増えていくと考えております。都道府県でも年々,助成措置が予算化されてきております。これからの専門学校,また専門学校教育の振興におきましては,この職業実践専門課程を中心として行っていくことが期待されております。専門学校の魅力を発信するということは,質保証・向上に取り組む専門学校の結果的には定着を図ることが重要であります。また,これまで以上に産学官連携の体制,学修成果向上への取組,これらの自助努力並びに行政の支援が必要と考えてございます。

 続きまして5ページ,専門学校が貢献できる領域としまして,地方創生ということでございます。この資料にございますように,三大都市圏以外にも多くの学校があり,職業教育・人材育成を通して若者の流出を防ぎ,有用な人の流れを生む機能を持っております。地方創生の取組が様々なところで展開されつつございますが,専門学校の活用はまだ少ないのではないかと思います。地方人材育成のノウハウを持つ専門学校を積極的に活用すべきではと思っております。

 7ページ,社会人キャリア形成支援に必要な仕組み,いわゆる社会人の学び直しということでございます。社会人の学び直しの目的は,キャリアアップとキャリアチェンジに大別されます。厚生労働省の専門実践教育訓練の受講者,専門実践教育訓練は3年課程までが対象だったと思います。ですが,キャリアチェンジは国家資格系の専門学校の正規授業が大変多く,これは資料の類型で申しますと第1類型ということでございます。また,キャリアアップは専門職学位取得のMOTなどが多いのが現状でございます。これは第3類型に属します。ただ,キャリアアップにつきましては,ほかの類型を見ていただきますと分かりますとおり,短期の大学のPPも含まれると思いますが,受講者が非常に少ないという現実もございます。これは,職業能力の評価に対する社会の認識が不十分ではないかと考えております。企業が個人の能力アップに対しまして給与や待遇を評価する仕組みがまだまだ確立できていないということもあろうかと考えております。働き方改革で議論されているように,これからは就労形態も大きく変化することと思います。人生100年時代で,40年も50年も,若しくはそれ以上長い間仕事をする。そのときに,能力を評価する物差しを持つことが今後更に重要ではないかと思ってございます。

 3つ目の留学生への対応でございます。労働力人口の減少対策として,高度な専門外国人材の活用は非常に大切ではないかと思います。8ページですけれども,専門学校の留学生は直近で5万9,000人,年々増えております。更に増えることが推測されております。私どもの団体でも,留学生の適切な受入れやガイドラインの策定,研修等々を実施しております。けれども,一番の課題は,卒業後の我が国での就職・就業でございます。生産年齢人口が少なくなり,特に地方からの若年者が流出しています。そのような中で,留学生が専門学校を卒業した後,高度専門人材として就労可能な在留資格を作って,我が国で就労できるような仕組みをつくることが非常に重要ではないかと思っております。

 次に9ページ,高等教育段階における日本型職業教育の海外展開の推進ということでございます。海外では,まだ職業教育を,特に東南アジア等ですが,中等教育レベルとみなしているところもあると聞いております。一方で,母国の大学を卒業後に,高度な職業教育を希望して専門学校へ留学する学生も平均全体で2割ぐらいいると聞いています。特にミャンマーや台湾は6割,7割が専門学校に入ってきております。また,先進国中心に輸出産業と捉えて積極的に売手も図っている事例もあり,専門学校の職業教育を人材育成システムとして海外へ移転する取組も出てきております。昨今,東京規約も締結されたことでもございますし,そのスタートラインはできてきたと思います。専門学校の海外展開への支援もお願いをしたいと考えています。特に今後,主流となってきております東南アジア・ASEANからの質の高い留学生をいかに受け入れるかが,我が国の生産性あるいは母国の生産性を高める上で大きな課題ではないかと考えています。また,その仕組みとして,日本での就職機会の拡大,専門学校教育の海外展開が重要ではないかと考えてございます。

 将来的に望まれる高等教育のフレームということで,10ページをお開きください。職業教育体系の構築と複線型教育制度の明確化ということでございます。専門職大学制度ができまして,我が国の職業教育体系として必要なラインアップはそろいました。しかしながら,職業教育に対する社会的認知は依然として低いことから,職業教育体系の構築が重要です。専門高校から専門学校,若しくは専門職大学を経て専門職大学院へと連なる教育体系が別の大きな柱として構築されることは,重要と考えてございます。

 最後になりますが,11ページ,職業資格・能力と学位の対応関係の明確化ということでございます。以前にも少し申し上げましたが,職業に必要な能力と習得に必要なプログラムや教育課程の修了を明確化して,卒業者がどのような能力を身に付け,その能力がどこでも同様に評価されるための仕組みとして,国家学位・資格枠組みを構築することが重要でございます。この国家学位・資格フレームワーク(NQF)が構築されることにより,我が国の教育・人材育成における一つの物差しとなるだけではなく,これまで以上に国際通用性の獲得がなされるものと思ってございます。このことは,18歳人口だけでなく,社会人の学び直し,留学生の受入れといった今後の高等教育の活性化につながっていくと同時に,ASEANを含めた海外の人材の流動性も高め,ひいては我が国の生産性向上に資するものと考えているところでございます。

 この国は20年以上デフレーションでした。経済成長率で20年間もマイナスであった国はほかにはございません。また,1人当たりのGDPも年々下がってきておりまして,直近では25位となっています。2040年に向けてもう一度キャッチアップしていくために,専門学校の可能性について申し上げさせていただきました。ありがとうございました。

【永田部会長】  ありがとうございました。

 それでは,委員の方々,御意見若しくは御質問をよろしくお願いいたします。有信委員,どうぞ。

【有信委員】  佐藤先生の御発表にございました役割分担を進めるべきというのは,基本的には賛成です。そういう観点で福田委員に幾つか質問があるのですけれども,役割分担という観点で考えたときに,もともと大学は,高度に専門的な職業に就く人に対する教育というのが基本的な使命としてありました。ただ,大学理念等の議論の中で,職業に対する備えが大学で十分に行われていないということが言われておりました。そして,いわゆる学士力答申が出て,学士課程で学士課程教育をしっかり行い,学生に就職力を付けさせるというような答申が出されてきています。そういう流れの中で,大学で専門的な知識を身に付けさせて,ある程度のコンピテンシーを持った人たちを社会に送り出すということについて専門学校が果たすべき役割と,どのように役割分担を分けて考えるかついて教えていただきたいというのが1つ目の質問です。

 それから2つ目の質問は,AIやICTという様々な技術的な進歩によって,今ある職業の少なくとも50%あるいは40%がなくなってしまうと言われています。そのような中で,どのように若者に技術を身に付けさせるか,どういう訓練をやるべきかというのは非常に深刻な問題になると思います。そういうことに対して専門学校は,今ある職業が将来なくなってしまうということに対して,どういうような備えをしようとしておられるのかということについて教えていただきたいと思います。

 それから3つ目の質問は,国際的な相互認証は,世界的な動きでWTOの専門的な職業を各国がそれぞれ相互に認証し合うというTBT協定であります。国際的な相互認証が進んでいくのは多分確かだろうと思います。そのときに,専門的職業資格については専門学校で対象としているようなレベルと,それから専門職大学院の課程を経て就くような専門的な職業でのレベルと,階層分化があるのだろうと思います。その辺については何か考えておられますか。

【福田委員】  就職,大学と専門学校,出口の違いについては,今まで自然に切り分けが今まではございました。専門学校生は,年間約27,8万人が卒業していきます。そして,ほとんどが中小企業に就職します。大学生は大企業に就職します。なぜかといいますと,高卒若しくは専門学校卒を入り口から排除しているということがございます。ところが,私どもの学生でも大企業に就職します。大学を出てからうちへ来ているもので,大学を出た資格で応募して,結果的にはどなたも御存じの一部上場会社に入っているというのが現実です。ですので,自然に地元密着型,都道府県から出ていかない,昨今の人手不足で,一部上場企業からも専門学校に多く求人が来ています。残念ながら,基礎学力のところで落ちてくることもありますけれども,そういう意味では,人手不足の影響によって切り分けがだんだんなくなってきています。ますます人手は少なくなるのか,先は見込めませんが,失業率が多々増えることというのは,この人口減少社会の日本において,特別な制度でも作らない限りはないのではないかなと思います。

 それから,国際的な通用性を担保する意味では,相互認証というよりも,資格がどれだけキャリアアップにつながるのか,それが待遇にどう変わるのか。自分が持っている資格と,それから目指すべき仕事等々が整理されていれば,自分の今まで持っているキャリアあるいは学歴に対して他のことにトライするハードルについてスタンダードなものがあればすごく分かりやすいと思います。なおかつ,今,ASEANでされているような旅行関係,観光業あるいは建築等の資格をASEAN10か国で互いに認めていくようなことが必要だと思います。

【有信委員】  全体の話としてはよく分かりますが,そこで専門学校としてはどういう部分を分担しますかという話ではないでしょうか。

【福田委員】  やはり一専門学校,一団体ができることはございませんので,こういうことは是非お願いをしたいという希望でございます。

【永田部会長】  千葉委員,どうぞ。

【千葉委員】  専門学校は言うまでもなく,企業が求める人材を,社会が求める人材を輩出するということをこれまでずっとやってきました。そういう意味では, AIやIoTの方面で,総務省が発表したITスキルスタンダードに対していち早く対応したのは,専門学校だと思います。これから新しい情報社会が生まれる中で,ITのスキルスタンダードも変更されてくると思います。いわゆるカリキュラムだとか将来の人材像を企業と一緒に作っている編成会議が職業実践専門課程の制度の中にもあります。新しい社会が求めるIT人材には十分対応できる制度を持っていると思います。

【永田部会長】  職業資格を取得するということと,専門学校の教育課程で学び卒業したという資格,どちらの価値が重いのでしょうか。つまり,専門学校は職業資格を取得できなくても魅力が十分出せるものかどうか、というのが有信委員の御質問の趣旨だと思います。福田委員,どうぞ。

【福田委員】  資格をということでございます。

【永田部会長】  千葉委員も同じご意見でしょうか。

【千葉委員】  これについては,専門学校もローカル型とセントラル型がありまして,ローカル型については資格ということが中心になると思います。

【永田部会長】  お伺いしている趣旨は、今後,2040年を目指して,職業資格の取得を目指すことが専門学校の目的という考え方ではなく,専門学校における教育内容そのものがこの国にとって価値あるものに変わっていくとお考えかどうか、という点についてお答えいただけますか。

【千葉委員】  プロダクションというところで専門学校は持ち味を出して,大学に編入してクリエーションを更に積み重ねていく,こういうような学びの仕方が一つあるのではないかと思います。

【永田部会長】  麻生委員,どうぞ。

【麻生委員】  福田委員に質問させていただきます。10ページ,将来的に望まれる高等教育のフレームの職業体系で,ここでは複線化教育制度のことが述べられております。平成31年から開学する専門職大学や専門職短期大学という制度のこともここに書いてあります。専門学校関係の方々にも様々な御意見はあるのでしょうが,専門学校関係の方々は将来に向かって専門職大学や専門職短期大学を目指していかれようとしているのか,若しくは専門学校のよさを残しながら続けていかれるのか,2040年に向けてどのような方向性をお持ちなのかということをお尋ねしたいと思います。

【福田委員】  個人的な意見ですが,専門学校を専門職大学にしていこうとは思っておりませんし,関係者の方々からもそういう声はよく聞きます。専門職大学を目指すのであれば,中規模の大学を目指すという意見が多いような気がいたします。それは要件等々の問題と,専門職大学がまだできてない中でしばらく様子を見るという方もいるからかと思います。

【永田部会長】  古沢委員,どうぞ。

【古沢委員】  佐藤委員にお伺いします。役割分担が必要だというのはそのとおりで,重要な視点だと思いました。この資料の中で,一番下に「都市圏大学の活性化の必要性」に触れていらっしゃいます。今まで地方大学の活性化を議論してきたのですが,抜け落ちている部分があると思いました。その点について少し詳しくお伺いできればと思います。また,「キャンパス内で生活し,学修に集中できる環境のコミュニティキャンパス」も,諸外国の例を見れば,必要なことだと思います。そういった大学の在り方は求められると思うのですが,この中で「財源の見直し」というのも書かれていて,少し具体的に伺えればと思いました。以上です。

【佐藤委員】  ありがとうございます。後の御質問の方からお答えすると,キャンパスそのものに学生が滞留する時間が長い。つまり,そこに生活の場があるということが日本では非常に珍しいのではないかと思います。そういう大学については非常に成果が上がっていると思っています。そういう意味では,学修に集中できる環境のコミュニティキャンパスについて重点的に,何らかの知恵を出してサポートをしていかないといけないんじゃないかと考えています。国立大学は随分量が増えてきたんだと思います。多分,筑波大学は相当な学生がキャンパスの中で生活しているんだと思います。そういう在り方をしないと,大学はきちんと機能しないのではないかということが1つ目の回答です。

 それからもう一つは,「地方大学の活性化とともに,都市圏大学の活性化の必要性」ということです。キャンパスのコミュニティ化とリンクしていると思うのですが,大都市圏の大学でも住まいが遠い学生は地下鉄などの路線を使い,乗り継ぎをしながら,2時間半かけて登校しています。片道2時間半掛けて学校に通学することがロスを作っているのではないかと思っています。地方だけではなくて,大都市圏でも活性化は必要だと思います。すぐには財源がないかもしれませんが,例えば,東京都のUR等の住宅公団みたいなところが過疎のコミュニティになっています。それを上手に使えないかというような話もあります。どういう知恵を出すかというのはそれぞれの学校次第だと思います。大都市圏の中でも更に中心に学生が集まっているというのが現状です。その辺のことも含めてこれから検討する課題であると思っています。

【永田部会長】  ありがとうございます。益戸委員,どうぞ。

【益戸委員】  佐藤委員のお話を聞いて共感することが多くありました。その中で特に「財源の見直し」についてです。2040年を見据えると,その間には様々な社会の変革があります。都市計画上の教育機関の位置付けも大切な課題です。先進企業の横に、その企業価値を更に高める事に貢献出来る研究を行う大学があったり,利便性に考慮された学び直しのための高等教育機関があったりというのは,当たり前の時代になるでしょう。すでに先進的な都市計画はスタートしています。日本ハムは、2023年を目途に,野球場を札幌市から北広島市に移転します。その計画では,球場が移転するだけではなくて,その新規地域内の住宅・オフィス・教育機関なども含めて計画がなされています。このような都市計画では、教育機関の移転費用を文部科学省予算や各大学などの負担で行う事には違和感があります。各省の横断的な都市計画の見直しの中で、総枠として考えていかなければいけないと思います。ライフスタイルや社会構造が変化し,ICTが発達するとサテライトキャンパスも沢山出てきます。この物理的な構造変化を議論の中で忘れてはいけないと思います。

 又、福田委員のお話に関連しますが、内閣府は沖縄振興策の一つとして、今年度予算から専門学校生の給付型奨学金予算を手当てしました。大学だけでなくその範囲を広げる事は重要です。

永田部会長から,資格が必要なのか,能力的なことが必要なのかというお話がありましたけれども,採用側からすると,資格を持っているというのは第一段階です。その資格保持を鵜呑(うの)みにして,その方がその資格通りに完全な能力があるとは思いません。国家資格取得やその資格保有者の質の議論は両方とも大切です。又、その取得を希望する方が住んでいる地域にそのための高等教育機関がなかったら,どうしても移動しないといけません。そのための補助を国策とする事は重要です。福田先生の資料を見ましても,専門学校は約半数が東京,名古屋,大阪に集中しています。それ以外の地域の皆さんの事についても我々は考える必要があると思います。

【永田部会長】  吉岡委員,どうぞ。

【吉岡委員】  佐藤委員のお話に関連して,機能分化や役割分化という話のときに,自分の大学がどうなっていくだろうという,その発想からなかなか逃れられないと思います。ですが,今,起こっていることは,物理的と言っていいかどうか分かりませんけれども,施設を持っている存在としての大学,例えば研究施設と教育施設、キャンパスを持っている大学の在り方と,それから組織としての大学の在り方,それから,その組織を構成している構成員である学生・教員・職員といった人たちの在り方というもの自体が、分化して動いているということなんだろうと思います。

 例えば,完全に学部中心の大学を想定したとしても,教員は研究にも関わるべきだし,若手の研究者の養成にも関わるべきです。できれば,学部学生にも研究者の立場からも関わるべきだと思います。そうでなければ,教育のレベルは下がるし,研究についても研究者は若手の研究者と一緒に仕事することによって新しい研究が進んでいくという大事な面が抜け落ちる。様々な分化が起こってきているときに,例えば,大学人があるときはA大学院で教え,Bの学部でも授業を教え,それから研究もできると,そういうようなことができるような形を作っていかないとならないと思います。機能分化ではそういうことを想定しないと,どうしてもこの大学はAタイプの大学というような話になってしまいます。専門学校も含めたダブルスクールや,卒業してから専門学校などの異なるタイプの教育機関に入学することが容易なシステムを作ることが,学生にとってもよいし,研究の進展にとってもよい。研究者・教員の研究と教育を結び付けるということも可能になっていくだろうと思います。ですから,何が機能分化しているのかということを少し整理しないと,話が混乱するのかなと思いました。以上です。

【永田部会長】  役割分担について、吉岡委員からも最後に御意見がありました。これまで機能分化については何度も議論してきているのですが,役割分担について全員が一緒に頭を悩ませているのは初めてです。この論点は,中間まとめの中で今後の検討課題として挙げようと考えていたので,大変有り難い議論でした。

 現在は、それぞれの組織が複数の機能を持っているのは当然です。その中で、吉岡先生の御意見を踏まえて言えば,それぞれの組織がどれを主な強みとするか,そこに教員や学生による自由なアクセスをいかに保証するかを考えればよいと思います。そのうえで,強い明確な意志を持った連携が生まれ,その連携の中にいる幾つかの大学がそれぞれ意見を出し合っていくことによって,連携の大きなくくりの中で教員も学生も自らに適した多様な機会を享受できるのではないでしょうか。


(2)高等教育の国際化の動向について,東北大学インスティテューショナル・リサーチ室長米澤教授,早稲田大学大学院アジア太平洋研究科黒田教授から御発表があり,その後意見交換が行われた。

【永田部会長】  それでは,先に進ませていただきます。

先ほど申し上げましたけれども,高等教育の国際化の動向,現状と未来について,お二人の先生からそれぞれ発表をしていただきます。

 それでは,まず,東北大学の米澤先生,よろしくお願いいたします。

米澤東北大学教授】  このような機会を頂きましてありがとうございます。事務局の方からは,この構想部会において質の保証の在り方や人口減少の在り方等についてどう対策するかについては,もう既にかなり議論が進んでいらっしゃるというお話を伺いました。その上で,そもそも「大学とは何か」ですとか,「高等教育とは何か」ということについてもう少し深掘りをしたいというような課題を頂きました。したがって,高等教育全体の動向というよりも,高等教育をめぐる議論の動向についてお話させていただければと思います。

 資料3を見ていただきまして,2ページ目から進めさせていただきたいと思います。最初,大上段のところは社会全体の動きです。例えば地政学的な状況の変化ということで言えば,国際政治・経済の多極化とか,ナショナリズムの台頭があるということは御存じのところだと思います。その後で日本にとって深刻なこととして,イノベーション,学生の国際移動の国際構造・バランスの変化,教育・研究費の負担問題というのが起きています。大きな変化としては,ひとつはブレグジット(英国の欧州連合(EU)離脱)が挙げられます。それからもうひとつは,アメリカの政策変化が挙げられます。去年,イギリス,アメリカの留学生の受入れが,かなり大きく減ったということがありました。その一方で,ドイツ,オーストラリア,日本等の周辺国において留学生の受入れが増えているというようなことがあります。このような地政学的な変化が非常に大きな役割を果たしつつあります。

 高等教育とは何かであるかとか,大学とは何かという議論も,2,3年前はグローバル化に対してどう対応するかという議論が中心でした。これがかなり変わってきていまして,より多極的に世界を捉えた上でどのようにに新しい世界を考えていくのかということが議論の中心になってきています。

 3ページ目に進ませていただきます。様々な資料に記載の5つの点が議論になっています。この中で2番目,3番目,4番目に関しては既に議論が進んでいると思います。ここでは特に高等教育への参加拡大とガバナンス・システム分化・公正の問題,いわゆる機能分化の問題と,それから日本で言えば高等教育の無償化に関わるような問題,それから大学ランキングの影響について主に話をさせていただきたいと思います。

 これも結論から言えば,国際化がかなり日常的に,どのような機能・役割を果たそうが高等教育の中に入っていく中で,逆に,大学の高等教育に対しての一元的なグローバル・スタンダードを求める議論が揺らいできている感じがあるということでございます。その中で具体的に何を求めているかというと,自国地域における高等教育の発展にアイデンティティーを見いだそうという議論とか,あるいは,ある国あるいはグローバルなスタンダードが一元的に支配するのではなくて,様々な国が多極的に連携あるいは競っていくような形の在り方というものを考えるべきなのではないかとか,あるいは,新自由主義とかグローバル競争モデルに対してのオルタナティブを提示していった方がいいのではないかという議論が今進んでいるところでございます。

 4ページ目に進めさせていただきます。いわゆる高学歴社会については,ほぼ50年前に,マーチン・トロウが示したエリート・マス・ユニバーサルという機能分化があります。これは機能分化の議論における一つのスタンダードになっているわけですけれども,恐らく日本は高学歴化が先に進んだ国なので,この議論が割と早い段階で起こったのですが,過去10年ぐらいの間にヨーロッパを含めて浸透した中で見直しがありました。その中で現代の視点からどういうふうに考えていけばいいか様々な議論を行った結果が資料にございます。この中で一番大きな問題は,高等教育に参加をしていく人たちが増えていくということは,高等教育が大多数の人にとって自分たちの問題になっていくということがあります。実態として、思ったほど社会格差が縮まらない,あるいはむしろ拡大していくのではないか,あるいは,高等教育の機能分化というのは絵に描いたようには進まないところがあります。むしろミドルレンジ,中間層の方々が進学するような,割と真ん中辺りを請け負うようなマルチバーシティ,大規模な総合大学が拡大していくところに収れんしていくような可能性があるとか,そのようなことについて,格差の問題,それからグローバル化の問題,それから垂直的な多様化はどういうふうに進むのかということについて,その全体的な動向というのを整理したものがこちらの資料でございます。かなり複雑な形で議論が進んできているということでございます。

 5ページ目に進めさせていただきます。一方で,大学とは何かというのは,本来は大学のそれぞれの日常的な営み,あるいは高等教育のそれぞれの日常的な営みから生み出されていくべきものだと思います。ですが,ここ15年ぐらいの間に我々にとってかなり深刻なのは,世界大学ランキングが普及してきたことです。その中で特にトップ大学が大学の在り方というものを世界大学ランキングの中で考えるようになってきているということがあります。同時に国も世界大学ランキングに巻き込まれているところがございます。特に,新興国が国際的な競争として資源を集中してトップ大学を創っていこうとするわけですが,先進国も同じように対抗して巻き込まれていくということがあります。同時に,研究者の在り方というものも,例えば引用の仕方に関しても変化してきているところがございます。

 ランキングに見られるもう一つの傾向は,参加大学数が増えているということでございます。今,ランキングはそれぞれ約1,000の大学がランクされるようになってきまして,日本の大学も数十の単位で入ってきているようになってきています。そうすると,この影響を受ける大学の数が増えてくるだけ,それだけ多くの大学の理念そのものに影響を与えているところがございます。

 その中で,今度は資料の右下のところですが,様々な特にアジアにおいて今起きていることは,アジアの大学の順位がどんどん上がってきているということです。そういう中でアジアの大学も自信を付けていますし,その中で自分たちの大学像というのをいわゆる西洋型とは違うものとして位置付けられないかということについての議論が進んでいます。この議論は,日本の中で考えていくと,多分20年前,30年前に我々は既に日本についてはすでに議論をしていると思います。これが世界の中では特にアジアで起きていて,日本では既にやってしまった議論ではあるんだけれども,このアジア全体で現在起きている議論にあらためて日本が参加できるかどうかというのが問われているところにありまして,議論が進んでいるところでございます。これが5ページ目です。

 そこから6ページ目,10年ぐらい前に世界大学ランキングについて議論がありました。 新興国の人たちに対して世界銀行にいらっしゃったSalmiさんという方が,どうすれば世界水準の大学あるいはワールドクラスユニバーシティーを創れるのかという議論をしたものがこちらの資料でございます。これはこの時点で,要はランキング競争というものにただ巻き込まれていくだけではなくて,大学あるいは高等教育というのは,こういうような在り方が望ましいんだということを様々なケースを重ね合わせることで示そうとしたガイドラインだと思います。この中で注目していただきたいのは,もちろん,「才能の集中」であるとか「有り余るほどの資源」ということも大事なのですが,「適切なガバナンス」が必要だということを言っています。その中でかなり議論になっていたのですが,自治や学問の自由ということも大事だということがその時点で既に言われていました。

 ランキングの基本的な流れとして,レピュテーションの部分はそんなに毎年変わるものではない。つまり,様々な専門家あるいは関係者がこの大学はすばらしいというふうに言っているアンケート結果は,実は毎年大きくは変化してはいません。変化しているのはむしろ方法論の部分です。どういうふうに論文の数を測るかあるいは引用度を測るかという部分はかなり技術的にも変化しております。ここが大きく変化していて,かつ日本が大学ランキングにおいてかなり厳しい状況におかれています。

 それから,国際化に関して,これはむしろエリート大学だけではどうしようもない部分として,日本全体としてかなり厳しい状況にあるということはずっと指摘されてきているところです。

 8ページにございますように,大学の在り方はランキングを上げるためにやっているわけではありません。どういう大学が望ましいかということについて,我々の場合は指定国立大学法人というスキームを与えていただいて,それに応募することでかなり真剣に考えさせていただきました。様々な大学ごとに様々なパターンがあると思いますが,ある意味でこのスキーム自体がイノベーションと非常に関わっているので,ややイノベーションに寄っているところがございます。東北大学では,4月から新たな総長を迎えておりますので,その下でより教育・研究,社会貢献というバランスのとれた大学としてのビジョンづくりを進めているところでございます。

 このような大学のビジョンづくりについては,国際的にも様々な形で進んできております。最新のものとしましては,カリフォルニア大学バークレー校のJohn・Douglassさんという方が作っていらっしゃるものが研究大学の望ましい在り方として注目を浴びています。これはどちらかというと,ランキングに対して批判的な考え方に立っているもので,それぞれの国が置かれている,あるいは社会に置かれている位置付けというのを考えていこうという考え方になっています。大学の自治,自立性,ガバナンス,学問の自由について注目がされているところを御覧いただければと思います。この議論はそういう概念的な議論だけをやっているわけではなく,かなり膨大なデータに基づいて議論しています。

 10ページを御覧いただきたいのですが,カリフォルニア大学バークレー校では,SERUというStudent Experience in the Research Universityというアメリカの研究大学,それから中国,その他の大学も参加しているんですけれども,研究大学の間の学生調査というのを行っております。この調査はエビデンスを積み重ねてこのような議論がされているということを注目いただきたいと思います。

 その中で,例えば日本でも大阪大学はこちらに参加されていて,海外の大学と大阪大学の学修時間の比較をして,どのような問題があって,どういうふうにやっていけばいいのかというような議論がなされています。例えば東北大学の例というのは11ページ目ですが,特に大学院生というのが思ったよりはよく勉強していて,かつ仕事もしていて,1日12時間,仕事と勉強しているということです。我々としては,大学院,特に博士課程の学生に対して経済的な支援をしていかなければいけないのではないかというような議論をしているということを申し上げたいと思います。

 12ページ目からは,Marginsonさんという方が出された「New Geo-Politics of Higher Education」という最新のレポートに基づいた議論です。こちらはマクロな膨大なデータを教育経済学の方々,それから社会学の方々,それから政策・制度論の方々が世界から参加して作り上げたモデルです。その中で特に強調しておきたいのは,「象限Ⅲ」「象限Ⅳ」です。国家による擬似市場であるとか,それから商業市場としての大学,あるいは大学をめぐる議論の在り方というものになりますが,知識というものについてかなり深いところで,議論を重ねております。例えば,ハーバーマスであるとかアマルティア・センであるとかを引用してきて議論しています。その中で,知識というものは,一般的な財として考えたときに,共有することでウィン・ウィンの関係とすることでゼロサムではないポジティムサムの関係を作れる,かなり特殊な財なのではないかということについて改めて正面から議論をされております。そういうところに立ったときに,我々は何ができるかということについて,幅を広げて考えておくということが大事だと感じています。

 更に詳しく見たものが13ページになりますけれども,ここは省略させていただきたいと思います。

 その上で,14ページ目,恐らく日本で議論をするときに主に問題になるのは資料の「グローバルな公正」になると思います。つまり,機能分化をして,例えばトップ大学に資源を集中していくようなことを考えていくというのは一つの考えだと思います。一方で,高等教育の無償化という形でアクセスの拡大・平等というのを考えているのが現状だと思います。この問題というのはグローバルに考えるときにも大きな問題でありまして,どういうふうに世界的な富の格差を考えるのか。これは単純な慈善ではなくて,自分たちの問題,ウィン・ウィンの関係を作るためにもどういうふうにすればいいかについて,少し幅広く公正の問題を考えながら考えていく必要があるのではないかというのが考えです。それから,特に国境を越えた学生に対しては,国と国の間でどうしても間隙があるというか,完全な人権が与えられてないという状況について,我々はどういうふうに考えるのかを考えていく必要があるということでございます。

 最後に,高等教育の国際化についてどのような議論があるかについてなのですけれども,こちらは,15ページの左側の真ん中に記載しています。高等教育が国際化することがワクワクしたものだと考えられていた時代が終わってかなり久しくなっています。その中で,高等教育あるいは大学の中で,国際化という問題は特別な人たちにとっての問題ではなくて,誰もが考えなければいけないのではないかということが議論に出てきています。これがメインストリーム化あるいは包括的な国際化(Comprehensive Internationalization)という考え方です。

 それを具体的にやることが議論されています。次の16ページ,様々なプレーヤーが国際に関わっていくような形が望ましいと考えられています。

 最後の提案ですけれども,日本の大学の日常に立った国際発信力のある将来構想を作っていただければ有り難いと思っています。1点目は,アジアの高等教育の台頭を機会として活用した方がいいと思います。西洋型グローバル化論,アジア主義のいずれにもくみしない,多面的・現実的な視野に立った社会課題へのコミットメントを考えていただければ有り難いと考えております。2点目は,日本の大学・学術の伝統におけるプラスの側面に再注目していただきたい。やっぱり日本の中で科学的な思考のアプローチ,それから人文社会科学というものについて,私自身も,アジアの研究者,それから世界の研究者と付き合うことが多いのですけれども,その中でやっぱり伝統というのは非常に大きな意味があって,それが世界に果たせる貢献力というのは相当あると思うので,それをどうやって発信して接続していくかについて考えていただければ有り難いと思います。その上で,機能分化において,ある一部だけが国際化すればいいという考え方ではなくて,国際を機能分化とは独立の軸として考えていただきたいなということが1点と,それから,大学の持つ普遍的・歴史的な価値,例えば自治や自由への確固たるコミットメントを忘れないでいただきたいなということでございます。

 以上でございます。

【永田部会長】  ありがとうございました。

 御質問や御意見は,黒田先生の御発表の後とさせていただきます。

 それでは,早稲田大学,黒田先生,よろしくお願いいたします。

【黒田早稲田大学教授】  本日はこのような機会を頂きましてありがとうございます。私の今日の発表は,「日本の高等教育の将来構想における『国際化』『アジア』そして『SDGs』と名付けさせていただきました。

 次の2ページを御覧ください。今,もう既に米澤先生からお話がありましたので,繰り返す必要はないのですが,社会・経済のグローバリゼーションが進む中で,高等教育がその対応を迫られているということで,様々な国際化ということが進展している。この状況をどのように読み解くかというところですが,今お話のありました世界大学ランキングであるとか,若しくは留学生の移動,若しくは教員の国際的な移動が拡大していますので,国境を越えた大学間競争の激化,若しくは国際的な擬似市場が誕生してきているという,競争的な環境ができているということが1つ。それから,その一方で,大学の国際的アライアンスであるとか,若しくは国際共同教育であるとか国際共同研究であるとか,高等教育の国際協力というものも進展してきていると。つまりは,一番下の世界の高等教育は競争しながら協力し,協力しながら協力のエンティティー同士がまた競争するというような状況が生み出されてきていると考えます。

 その次の3ページ目ですが,2009年のユネスコ世界高等教育会議で議論された高等教育の国際化というのはどんなものを言うのかということについて,ここに例示的に示してあるわけですけれど,まずはもちろん学生の国際移動ということ。それから,教職員の国際移動から,国際共同で様々なことをやっていくというような状況というのが大きくなっていて,また最後には,ICTによる国境を越えた高等教育の提供ということも拡大しているという,様々な高等教育の国際化の形があるということです。

 次のページに行きます。これは,JICA研究所と私が数年前に東アジアの300有力大学に対してアンケート調査を行ったときの結果ですけれど,この様々な形での国際化というのを過去から現在,現在から未来にかけて,将来にかけてどんどん活性化していっている状況が,若しくはそれを予測する状況というのが見てとれるということです。

 5ページ目は省略をいたします。

 6ページ目では,そういうような高等教育の国際化という状況を国際社会はどう見ているのか,どのような役割を期待しているのかというところですが,伝統的には,国際理解と国際平和の達成ということを高等教育の国際化,国際高等教育交流に対して期待するというところが1つございます。このユネスコ憲章の前文や,若しくはフルブライト計画というのは,正にそういった理念の下で行われてきて,国際高等教育関係者にはそういったことを考える方はたくさんいらっしゃいます。これは,古いといいますか,伝統的な理念ではあるわけですけれど,現在の文化対立が,若しくは文明対立が紛争の重要な原因になっている状況を考えますと,現代的な意味は更に大きいかもしれないと思います。

 ただ,もう一つ,国際社会,その次のページですが,重要なところは,開発政策・競争力強化策として高等教育の国際化を捉えるという考え方です。これは近代化の時期において,明治時期,日本をはじめとして多くの途上国が開発政策として留学生派遣を行った。それだけではなくて,最近では,留学生の派遣だけでなく受入れが開発効果を生むというようなブレインゲイン政策として高等教育国際化を考えていくというようなこと。それから,最近では,ブレインサーキュレーション,ブレインシェアリングというような形で,例えばヨーロッパでは競争力を地域で高めるために国際化,流動性を高めていくということをやっているということです。

 次のページに行きます。高等教育市場においても,デファクトで済むグローバリゼーションに対して,高等教育市場が健全な形で形成されるということが必要だから国際化をやっていくというような形もあると。

 では,大学にとって国際化というのは何であるのかというのが9ページ目ですけれど,大学は,様々なことが言われていますが,教育・研究の質向上のために大学を国際化していくことであるとか,頭脳獲得や収益確保,ブランド戦略として国際化を目指しているというような,大学のための国際化というところもあれば,公的な役割として国際理解や世界的な課題解決を目標とした国際化ということも大学は意識していると。

 次のページに行っていただきます。先ほど申し上げた東アジアの大学のサーベイなんですけれど,これでも,例えば最初にはレピュテーションといいますか,名声を高めるため,国際的なビジビリティーを高めるための国際化といいながら,教育や研究,それから国際理解のための国際化ということもあわせて,東アジアの有力大学は国際化の理念としているということが分かります。

 では,本当に大学の国際化というのが生産性といいますか,競争力を高めることができるのかというところで,これは様々な実証研究がございます。ここに挙げていますノッティンガムの研究であるとか,香港大学のホルタ先生の研究とかあるんですけれど,次のページ,12ページを見ていただきたいんですが,これは,一昨年から昨年にかけて文部科学省の科学技術・学術審議会の国際戦略委員会というものの委員を,させていただいていたんですけど,そこでJSTの濱口理事長が発表されたものがすごく示唆的だったので,それから引用させていただいているんですけれど,まずはこのグラフを見ていただいて分かるのは,主要国のトップ10%の論文なわけですけれど,中国の躍進が物すごいと。一方で,これ,スケールが違う,アメリカはもう絶対王者だということが分かるわけですけれど,よくよく見て見ますと,イギリス,ドイツ,フランスというのがこの20年で非常に大きく伸びているということが分かります。日本は残念ながらそこでかなり停滞しているというのが,少しは伸びてはいるんですけれど,分かります。何がヨーロッパと日本で違ったのかというと,国際共同研究,国際共著論文というところで,イギリス,ドイツフランスというのがすごく伸びているということが分かるわけですね。EUはなかなか,最近は失敗したというふうな言い方をされますけれど,この点においては,つまり科学技術振興,学術振興という点では,EUのファンディング若しくは域内の流動性を高めて共同研究をやっていくというようなところはかなり効いているのではないかというのがこの読みでございます。

 つまりは,その次のページ,日本の国際性が非常に低く位置付けられているわけですけれど,その国際性の低さというものが日本の競争力の低下といいますか,低減につながってしまっているのではないかということです。

 続きまして,14ページ目を御覧ください。この上の表というのは英仏米という欧米における最も大きな留学生のホスト国なわけですけれど,それぞれこの30年で大きく留学生数を伸ばしてきています。イギリスなんか特に大きく,サッチャリズム以降のフルコスト政策のおかげで留学生をどんどん入れていくという形になっていますので,大きく伸ばしてきていて,約3倍,この3か国を合わせると伸びているのですが,その次のページの日中韓を見ていただきますと,もともとの86年,30年前の数字が小さいということもあるわけですけれど,中国30倍,韓国40倍,日本も結構な伸ばし方でして,トータルで20倍ぐらいの留学生が来るようになっていると。まだまだ実はこの留学生数という意味では欧米に水をあけられているんですけれど,アメリカのIIEなんかは,これからアジアが留学生獲得市場の中心になっていくのではないかというような予測まで発表しているぐらい,アジアは今,高等教育の伸びが大きいと言われています。

 その次のページを御覧ください。16ページ,もちろん東アジアというのは留学生の輩出地域ですけれど,その留学生がどこに行っているのかというと,実はその多くが東アジア自身に行っている。そして,従来の受入れ国である北米やヨーロッパがそれに続くという状況が出てきております。つまり, ASEAN+3の中での域内流動が非常に拡大している。つまり,アジアのアジア化というのが高等教育では起きているということです。

 次のページで,大学間の協力というところで一つの象徴であります大学間協定というのを日本の大学がどこと結んでいるか。1981年以前は北米,ヨーロッパ,アジアの順だったのが,2000年代になってきますとアジアがもう圧倒的に多数の提携先という形になって,ヨーロッパ,北米が続くと。

 各国別に見てみますと,その次のページ,18ページですけれど,中国がこれもアメリカを数年前に抜かして圧倒的に1番という形になっておりまして,韓国や台湾,それからこの5位も平成24年から27年にかけてイギリスからタイに移っていくというような形で,アジア,日本の協力相手国としてのアジアというものが非常にプレゼンスを拡大しているということでございます。

 次のページ,これも先ほど申し上げたJICA研究所の調査ですけれど,どこの地域と主に交流を行っているかというのを東南アジアの主導的大学に聞いたら,東南アジア自体だと。そして,その次に北東アジアで,そしてヨーロッパ,北アメリカという形で,認識のレベルでもアジアのアジア化というのは東南アジアにおいては非常に進んでいると。

 次のページに行って20ページ,北東アジアにおいてはどうかというと,北東アジア,今も一番は北アメリカですけれど,ほとんど変わらない形で東南アジア,北東アジアとの協力関係というものを強く認識しているということです。

 このような認識,それからデファクトレベルの状況を鑑みまして,背景としまして,21ページ,アジア地域内における域内ネットワークの多層的な形成というのが起きております。多層的といいますのは,アジアの場合,ヨーロッパと少し異にしまして,東南アジア,北東アジア,ASEAN+3,それからアジア太平洋というような形で多層的な形でアジアというものが存在して,そこの枠組みの中で様々な協力が起きていると。例えば大学のアライアンスであっても,AIMSとか,Campus Asiaとか,それから最近では一帯一路政策でアジアユニバーシティーアライアンスというような形で新しい大学連合ができている。

 その次のページに行っていただいて22ページですが,アジアにおいては大学のアライアンスだけではなくて,高等教育の質保証・単位互換のシステムというのも多層的に展開されていますし,また,政策対話というのも多層的に起きているということでございます。

 つまりは,地域的なフレームワークはヨーロッパで起きたことで,それが違った形になってアジアで起きているわけです。このアジアの中で進む連携というのを日本は取り込む形でこれからの国際化を行っていくことが,日本の競争力の強化につながるのではないかということです。

 続いて, SDGsについて,SDGsは地球的規模課題若しくは越境課題,クロスボーダーの課題を解決するために,進展しつつあるグローバルガバナンスの基となる枠組みだと思います。これに先行しましたMDGs(ミレニアム開発目標)というのが,途上国に対してのアジェンダだったところがあったわけですけれど,このSDGsはユニバーサルなアジェンダとして,これからの各国の政策若しくは世界における政策課題の一つのプラットフォームになっていくような,非常にこれから主流化していく可能性が高くある枠組みだと思います。つまりは,例えば公的な資金や民間資金というのもそちらの方向に流れていく可能性があって,また,これは国家政策・政府だけではなくて,大学をはじめとした様々な民間というところもこの中で役割を果たしていくことが期待されるということです。

 その次のページ,26ページ目を見ていただければと思うのですけれど,つまりは,このSDGsに対して,もちろんユネスコの高等教育世界宣言にあるような形で,SDGsに対して大学が貢献するということはあるわけですが,一方で,オーストラリアのグループが出している提言書の中には,SDGsが大学を助けるか,つまりはSDGsの枠組みを使うことによって,高等教育,大学は伸びていくことができるのではないかということを言っております。先駆的に,日本の中でも東京大学であるとか,それから岡山大学であるとか,そういったところが大学の政策策定,改革のところにSDGsを位置付けていくというようなことをされつつありますけれど,そういったところで,これからSDGsというプラットフォームを使うことによって日本の高等教育を伸ばしていけるのではないかというのが最後のメッセージです。

 27ページに1つまとめさせていただいております。つまりは,世界の高等教育は競争しながら協力し,協力しながら競争している状況にあると。一方で,日本の高等教育における国際性の低さというのが,競争力の低下の一因ではないかと。一方,アジアの高等教育の域内連携,アジアは進展しつつある。日本の高等教育は,この伸び盛りのアジアの高等教育と連携・協力することによって,その競争力を高めることができるのではないかと思います。EUのようにですね。また,将来のグローバルガバナンスの基となるSDGsを大学運営や教育研究の指針とすることで,自身の競争力を高めながら,世界の課題解決に貢献する日本の高等教育を育成できるのではないかというのが,私からの提言です。

【永田部会長】  どうもありがとうございました。

有信委員,どうぞ。

【有信委員】  お二人の先生方の,ちょっと観点は違いますが,グローバル化に関して今の大学の状況が非常によく分かりました。特に日本の大学の状況が理解できましたが,例えば民間企業であると,人材,特に先端技術に関する人材確保のために,現実に言うと,世界から人を集める前に,まずあちこちに研究所を作ってしまうわけです。例えばGEがインドのバンガロールに研究所を作ったのはもう随分前ですけど,急速な勢いで拡大をしているはずです。それから,ベトナムや中国にも様々な研究所ができて,そこで人材を確保しているということがあります。大学の重要な目的はやはり人材育成だということで,必要とされている人材が大学の中で育つ。育つためには,それぞれ大学の役割がここで説明していただいたようにあるわけで,その中で先端的な研究を進め,教育をして人材を育成するときに,やっぱり世界で一番先端的なことをやっていかなければいけないというときに,例えば留学生を待っていたのでは,人材確保はできないという部分もあります。例えば欧米の大学は,ベトナムに大学を創り,それから例えば東北大学はノボシビルスクにたしか拠点がありました。そういう観点で外に出ていきながら人材を育成し,その上で大学全体のグローバル化を進めるというような,そういう視点もないのかというのがお二方への質問です。

【永田部会長】 米澤先生,どうぞ。

【米澤東北大学教授】   多分,一つの答えは,大学自体が基本的には公的な資金で成り立っていることがあって,そんなに簡単に――教育に関しては,実は例えばノッティンガム大学みたいな形でマレーシアに創ったりとか,様々な形でできるんですけれども,研究に関して公的資金を持っている中で外に出ていくというのは,多分,EUを除いては非常に難しいのかなということはあります。それから,ブランドの問題として,例えばMITが非常に分かりやすいんですけれども,ボストンを出ないことでむしろブランド価値を保とうとするとか,そういうような部分というのも一方ではあるんだと思います。ただ,大学間で国際的なネットワークを作ったり協力をしたりという形で,事実上それに近い形のコードシェアみたいなことは行われているのが1点でございます。

 具体的な例として東北大学の例ですけれども,東北大学は研究大学強化促進事業というものについてお金を頂いておりまして,その中で,例えばシカゴ大学,それからケンブリッジ大学みたいなところと研究交流を進めていて,向こうの先生方にクロスアポイントメントで東北大学の教員になっていただき,あるいは共同でポスドクを雇うというようなことをやっておりまして,それを使って,実際に,例えば東欧の学生がイギリスのケンブリッジで研究をしていて,身分は東北大学のポスドクだということは実はありますね。それはポスドクとして仙台にも来ているんですが,そういうような形での国際連携がかなり日常的に行われております。また,日本の中でも,御存じのように,例えば豊田工業大学などはシカゴ校をシカゴ大学の中に創るという形で,本当に先端的なものが必要であれば出ていくということは既に行っていると考えております。

【黒田早稲田大学教授】  確かに,今,有信委員がおっしゃったとおりで,英語圏の大学というのは確かに出ていきやすいと。フルコストリカバリーのあるような形で外に教育プログラムを提供することが可能ですから,それ以外のところについてはかなり公的資金を使って外に出て行っているところは,例えばフランスやドイツ,日本でも日越大学とかありますけれど,あのような形で行われつつあると。今,日本の大学の海外展開については,文部科学省で数年に一度調査されていますけど,どんどん伸びているのは事実だと思います。ただ,一方で,今おっしゃったように,MITもそうですが,ハーバードとかスタンフォード等も基本的に外に海外分校を創らないというような形でブランドを守っていくということをして,ある意味で世界に展開していくことを保留していくようなところが実は多くあって,それよりも国際共同研究を進めていく,国際共同教育を進めていくという形で国際展開を進めていく方が,ある意味,ブランド価値を守りながら高等教育を展開できる。一方で,受け手の側で見てみますと,中東のようにエデュケーションハブを創ることによってそこに知識を集積していこうというようなアプローチはありますので,反対に日本がエデュケーションハブになっていこうというような方策をお持ちであれば,それも一つの方向性なのかなと思います。

【永田部会長】  ありがとうございます。小林委員,どうぞ。

【小林委員】  米澤先生に御質問です。高等教育政策と,様々な公正の問題についてかなり議論されているので,その辺についてお伺いしたい。2005年以来,政策誘導によって市場型で大学間競争させるという政策をとってきたが,それは擬似市場であるということは前回も述べさせていただいたわけです。今日はそれに対して,サイモン・マージンソンの議論を使われて,公正という観点からすると非常に問題があるという御指摘だったと思います。大学間競争は格差を生むわけです。それが一つの問題だということ。それからもう一つは,社会学で言うと,国民の社会階層の再生産につながっているのではないかというマージンソンの議論です。そういう意味で非常に問題があるのが今日の御議論だったと思います。これについても,大学進学率が拡大すると,社会の格差がどうなるかということは社会学では様々な議論があるわけです。今日の議論は,高等教育のシステムとしての格差と社会の格差というのがどうつながっているかという議論だったと思います。それについて,これは一般論でお話しされたのですが,ここでは機能分化という形で議論しているわけです。それとの関係について,もし御意見があれば伺いたいと思います。

【米澤東北大学教授】  ありがとうございます。2点あると考えています。機能分化に関する議論は,もう既に相当に蓄積されてきた議論の中で現実的に行われている議論なので,それを全否定する気は全くないんですけれども,50年前にカリフォルニアマスタープランとかトロウの話を聞きながらやっていたような形での機能分化がベストなのかということは,一旦保留してもいいという感じは受けております。

 具体的なところで言えば,日本の中でも,例えば中間的な位置づけにある私立大学が多いということは言えます。ただ,ひとつの大学や学校法人が,大都市においてはエリート的な存在を標榜しながら,一方で大学や学校法人・集団全体ではかなり幅広い層に広がっていって,専門学校まで持っているような形というのはあるわけです。そういうような形で,1つの組織あるいはグループが中間層を中心に多様な機能を抱えていく姿は,現実的にあります。しかしながら,それを理念的に機能分化としてうまく整理していくかどうかというのはまた別の問題ではないかというのは1点です。

 もう1点は格差の問題を考えて言えば,マージンソンの議論における最大のポイントは,高等教育システムは機能分化したときに最終的にその社会の構造に似てしまうという話です。それはそうだろうと思うのですが,再生産に結び付くという話として考えた場合,これが国の中であれば,簡単に言えば,富める人から取って貧しい人に回せばいいという話になるかもしれません。ですが,グローバルに戦わなければいけないという位置づけにある大学の存在を考え,あるいはある国の高等養育システムがグローバルな展開を意識しなければいけないというところを考えたときに,一部の人たちが実はグローバルに富を生み出すことでその社会に戻ってくるかもしれないという別の論理を考えなければなならないということがあります。あるいは,高等教育自体の知識を作り出すというものが生み出す公益みたいなものがあって,それは格差とはある意味で対立するのですが,そこまで考えなければいけないということです。次元としてグローバルに何かということは単純なお題目ではなくて,現実に自分たちに関わる問題として,もう一歩国としての政策を考えるときにも考えなければいけないのではないかということがポイントかなと思います。

【永田部会長】  そのほかいかがでしょうか。いつも議論している中に幾つか新しい視点を頂きました。小林先生が最後にご質問された点はとても重要なポイントだと思います。機能分化,役割分担についてちょうど議論していましたが,それが今度,社会にどういう形で影響を及ぼしていくのかということは,なかなか複雑な問題だというのは認識できました。

 それでは,米澤先生,黒田先生,本当にお忙しいところどうもありがとうございました。大変勉強になりました。


(3)資料5-1,資料5-2,資料6に基づいて事務局から報告が行われた。

【永田部会長】  本日,情報共有をさせていただきたいことがございます。はじめに,第7回の「人生100年時代構想会議」が開かれまして,林文部科学大臣も御発表いただいたということなので,事務局側から簡単に御説明を頂きたいと思います。

【森友主任大学改革官】  失礼いたします。資料5-1と5-2で御報告をさせていただきます。5月16日に開催されました第7回の人生100年時代構想会議の概要でございます。当日は,今年の2月8日の第5回会議に引き続きまして,大学改革について議論が行われたところでございます。

 議論の内容でございます。2月8日の第5回会議で総理の御指示がございましたが,それを踏まえまして,有識者の議員から提起をされました大学改革に関する論点の結果につきまして,特に資料5-1の中頃にございます「大学改革について」の資料でございまして,まず2ページのところで,各大学の役割・機能の明確化というのがございます。私立大学についても,大学として中軸となる強みや特色を明確化するため,人材養成の3つの観点も踏まえた各大学の機能強化・特色化を加速する改革を促すといったことです。

 そして, 4ページでございますが,教育機能の充実ということで,大学教育における質の向上のために,大学・学部間の教員や授業科目のシェアリングを可能とすること。社会の新たなニーズに柔軟に対応できる教育プログラムによる学部横断的な教育の実施。実務経験を有する教員の登用促進によって教育機能の充実を図るということ。

 それから, 5ページでございます。学生が身に付けた能力・付加価値の見える化ということで,シラバス記載の充実等々,教学面に係る指針を作成して,大学に対しまして,学生の学修時間・学修成果等の情報の公開を義務付けることが重要であるといったこと。

 そして,6ページでございます。経営力の強化ということで,大学における経営力の強化のために,大学経営の学外理事の活用促進をして,客観的・複眼的な外部の視点からの意見を反映していくということ。

 それから,7ページでございますが,国公私を通じた大学の連携・統合等ということで,地域連携プラットフォームを構築して,地域の高等教育の在り方を議論するためのガイドラインの策定,国公私の枠を超えた連携を可能とする大学等連携推進法人制度の創設について検討などといったことに触れております。

 8ページのところで,国立大学法人における1法人複数大学制度の導入,私立大学の連携・統合等の支援についても触れております。

 そして,これらの発表の後,経団連の榊原会長からも産業界における新卒採用体制についての検討状況に関する御報告がございまして,発言の要旨でございますが,学生が在学中に身に付けた能力・付加価値の見える化は,学生の成長を大きく促していくものであって,大変重要な取組と考えている。経団連は,会員企業に対して,新卒採用に当たっては,学業重視の観点から文理の枠を超えた基礎的で幅広い知識やリベラルアーツなどを重視していることなどを学生に明確なメッセージとして発信していく。そうした学修の成果について可視化された多面的な情報が大学から提供されるようになった際には,企業の選考活動において活用していくことを経団連として積極的に促していきたいといった御発言がございました。

 そして,これらの議論を踏まえまして,資料5-2でございます。安倍総理大臣から締めくくりの発言がございまして,特に大学改革の関係では,下の方,下の4分の1ぐらいのところでございますが,本日の審議に即して,各大学の役割・機能の明確化,教育の質の向上,学生が身に付ける能力の見える化,企業側の選考活動への活用,外部人材の登用による大学の経営力強化,連携・統合の環境整備といった課題について,これから取りまとめる100年会議の基本構想,そして政府の骨太方針において,明確な方向性を決定していきたいというような御発言がございました。

 100年会議の点については,御報告は以上でございます。

【永田部会長】  ありがとうございます。小林委員,どうぞ。

【小林委員】  今審議している内容のことがかなり書かれているので確認ですが,大臣が御説明されたということですけれど,決定した事項のように書かれているのですが,あくまで審議中だということでよろしいですか。

【石橋高等教育政策室長】  はい,文部科学省としては,中央教育審議会における今の議論の方向性,状況を御報告しながら,まだ決定していないという観点から御発表させていただいたところでございます。

【永田部会長】  ありがとうございます。最後に,「高等教育段階における負担軽減方策に関する専門家会議」について事務方から御説明をお願いいたします。

【森友主任大学改革官】  失礼いたします。資料6でございます。第4回の高等教育段階における負担軽減方策に関する専門家会議の概要の御報告でございます。

 先般御報告させていただいた際には第3回の会議の内容ということで,主に支援対象者となる学生の要件,それから支援対象となる機関の要件につきましての論点を御報告させていただきましたが,今回は,支援対象者の範囲,特に所得基準の関係,それから給付型奨学金,また減免措置,授業料減免額等についての考え方に係る論点でございます。

 まず,資料をお開きいただきますと,資料対象者の範囲(家計基準)というのがございます。そちらの3ページ,こちらにつきましては,新しい政策パッケージの中で既に,住民税非課税世帯の学生を対象とするということと,それから住民税非課税世帯に準じる世帯の子供たちにつきましても段階的に支援を行って崖をなだらかにしていくということが規定されております。

 特に主な論点としては,かなり細かい取扱いの内容も書いておりまして,例えば主な内容といたしましては,丸3にございますように,資産要件をどう考えるのかということ。家計支持者及び学生本人の資産,例えば預貯金など,一定額以上資産を有している場合の取り扱いをどう考えるかといったこと。あるいは,丸5のところにございますけれども,授業料減免と給付型奨学金の家計基準は原則として同一のものとしてはどうかといったような内容を整理しております。

 5ページでございますが,これも現行の奨学金の中でも対応しているものでございますが,丸2として,例えばですが,家計急変への対応ということで,在学中に学生の家計が急変した場合については,家計急変後の所得や資産の状況等々に基づいて支援対象とすることとしてはどうかといったような内容について,細かいところも御提示して議論してもらったところでございます。

 それから,授業料減免額の考え方でございます。7ページをお開きいただきますと,これも内容はパッケージの内容をなぞっているような形の論点の提示なんですけれども,主な論点の丸1,大学として書いているところですが,国立大学の場合には,省令において授業料標準額が規定されている。この額を免除することとしてはどうかといったこと。それから,特に私立大学の場合には,パッケージ上,国立大学の授業料に加えて私立の平均授業料の水準を勘案した一定額を加算した額までの対応を図ることとされているけれども,加算額をどう考えるのか。その際,私立大学等の授業料設定の裁量性に鑑みて学生の負担軽減をどのように考えるかといった論点でございます。

 それから,下の(2)の入学金のところですけれども,入学金につきましては,入学料の標準額についてその額を免除する。私立については,私立大学の入学金平均額が国立大学の入学料標準額を下回っているということから,入学金平均額を上限として減免することとしてはどうかといった論点提示でございます。

 それから最後,給付型奨学金の考え方ですが,9ページをお開きいただきますと,これは,それぞれの給付型奨学金の内容を考えるときに費目ごとにどう考えていくのかということの提示でございますが,まず総論として,主な論点の白丸の1つ目でございますが,まず,学生生活費の実態を踏まえて,学生が学業に専念するのに必要な生活費を支給すると。それがパッケージ上の考え方でございますが,支給することとして,住居・光熱費など,あるいは食費も違いますが,自宅と自宅外での分け方,それから,国公立と私立,そして学校種に応じた額を支給することとしてはどうかという大きな論点提示です。あとは,居住形態,自宅・自宅外で必要経費に差が生じる費用と,そうした差が生じない費用について,そういった実態を勘案することが必要ではないかといった,それぞれ議論がございます。下から2つ目でございますが,授業料以外の学校納付金につきましては,特に私立の大学等において費用負担が行われる一方で,金額設定の裁量性や納付の内容等も踏まえて,私立の大学等の在籍者に限ってどういうふうに勘案していくのかといった論点でございます。最後,受験料については,必要な受験料を勘案することとしてはどうかといった論点提示でございまして,例えば御意見といたしまして,学納金につきましては,授業料として対応できないということであれば,しっかりと給付型奨学金の中で見てほしいということですとか,あるいは受験料についても低所得者層にとってみるとかなりの負担になるので,しっかりとこの辺も見てほしいといった御意見がございました。

 簡単でございますが,以上でございます。

【永田部会長】  何か御質問等ございますか。

 それでは,全体を通しまして何か御意見ございますか。

ないようですので、事務方から次回の予定等の御報告で終わりにさせていただきます。

【石橋高等教育政策室長】  失礼いたします。本日は御議論ありがとうございました。

 次回ですけれども,引き続き,村田委員,麻生委員に御発表いただくこととしておりますので,よろしくお願いいたします。

【永田部会長】  ありがとうございました。次回以降も引き続き、御協力をお願いしたいと思います。

 それでは,ありがとうございました。


── 了 ──

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-- 登録:平成30年07月 --